JP2023020064A - 射出成形機および射出成形機の制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】パワー素子ユニットの寿命劣化を抑制する射出成形機を提供する。【解決手段】モータに電力を伝達するパワー素子ユニットを備える射出成形機の制御方法は、(a)成形条件に対応するパワー素子ユニットへの電流指令値に基づいてパワー素子ユニット内の半導体素子の接合温度の変化を判定するステップ(S17);および(b)接合温度の変化が判定基準値よりも大きい場合は、接合温度の変化を抑制する処理を実行するステップ(S19)を備える。【選択図】図4
Description
本開示は、射出成形機および射出成形機の制御方法に関する。
射出成形機等の工場で用いられる成形機では、部品の故障に起因するマシントラブルが発生することがある。このようなマシントラブルを未然に防ぐため、部品管理が必要である。
特開2006-49411号公報(特許文献1)には、電動型射出成形機などにおいて、電力用半導体素子(以下、パワー半導体素子)の熱による破損を防止するため、パワー半導体素子の接合部温度を推定し、監視する方法および装置が開示されている。
特開2006-49411号公報(特許文献1)では、リアルタイムで接合部温度を推定し、許容温度と比較判定するため、パワー半導体素子の熱による破損を事前に防止することができる。
しかしながら、パワー半導体素子を搭載するパワー素子ユニットは、熱膨張係数の異なる複数の材料を用いて構成されている。このため、許容温度以下であっても、温度上昇および温度降下が繰り返されるような場合には、熱膨張応力により、ワイヤボンディングの剥離、接合材料の金属疲労などにより、寿命が短くなるという問題がある。特に、射出成形機などのように、同一成形条件での成形が多数回繰り返されるような場合には、成形条件によっては、著しく部品の寿命が短くなる場合がある。
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、パワー素子ユニットの劣化を抑制することができる射出成形機を提供することである。
一実施形態による射出成形機は、モータと、モータに電力を伝達するパワー素子ユニットと、パワー素子ユニットを制御する制御装置とを備える。制御装置は、成形条件に対応するパワー素子ユニットへの電流指令値に基づいてパワー素子ユニット内の半導体素子の接合温度の変化を判定し、接合温度の変化が判定基準値よりも大きい場合は、接合温度の変化を抑制する処理を実行するように構成される。
本開示に係る射出成形機によれば、射出成形機に含まれるパワー素子ユニットの劣化を抑制し、パワー素子ユニットの寿命を伸ばすことができる。
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
<射出成形機>
以下では、図1を用いて本実施の形態における射出成形機100について説明する。図1は、射出成形機100の外観図である。射出成形機100は、金型を型締めする型締装置10と、射出材料を溶融して射出する射出装置20と、表示装置30と、制御装置40とを備える。
<射出成形機>
以下では、図1を用いて本実施の形態における射出成形機100について説明する。図1は、射出成形機100の外観図である。射出成形機100は、金型を型締めする型締装置10と、射出材料を溶融して射出する射出装置20と、表示装置30と、制御装置40とを備える。
射出成形機100は、XY平面上に載置されている。XY平面に垂直な方向をZ軸方向とする。図1におけるZ軸の正方向を上面側または上方、負方向を下面側または下方と称する場合がある。
<型締装置>
型締装置10は、ベッド11と、固定盤12と、型締ハウジング13と、可動盤14と、タイバー15と、型締機構16と、金型17,18と、ボールねじ51とを備える。ベッド11は、固定盤12、型締ハウジング13、可動盤14等の型締装置10が備える構成を支持する。固定盤12は、ベッド11に固定されている。型締ハウジング13は、ベッド11上をX軸方向にスライド可能であるように構成されている。同様に、可動盤14は、ベッド11上をX軸方向にスライド可能であるように構成されている。
<型締装置>
型締装置10は、ベッド11と、固定盤12と、型締ハウジング13と、可動盤14と、タイバー15と、型締機構16と、金型17,18と、ボールねじ51とを備える。ベッド11は、固定盤12、型締ハウジング13、可動盤14等の型締装置10が備える構成を支持する。固定盤12は、ベッド11に固定されている。型締ハウジング13は、ベッド11上をX軸方向にスライド可能であるように構成されている。同様に、可動盤14は、ベッド11上をX軸方向にスライド可能であるように構成されている。
タイバー15は、固定盤12と型締ハウジング13との間に配置され、固定盤12と型締ハウジング13とを連結する。タイバー15は、複数のバーを含む。図1に示した射出成形機100は、4本のバーを含むタイバー15が備えられている。なお、タイバー15は、5本以上のバーを含んでもよい。
可動盤14は、固定盤12と型締ハウジング13との間でX軸方向にスライド可能であるように構成される。型締機構16は、型締ハウジング13と可動盤14との間に設けられる。実施の形態1における型締ハウジング13は、トグル機構を含んで構成される。
金型17,18は、固定盤12と可動盤14との間に設けられる。金型17,18は、型締機構16によって開閉されるように構成されている。ボールねじ51は、モータ50の回転運動を直線運動に変換することにより、型締機構16を開閉させる。なお、型締機構16は、直圧式の型締機構を含んで構成されてもよい。直圧式の型締機構とは、すなわち型締シリンダを意味する。
<射出装置>
射出装置20は、基台21と、加熱シリンダ22と、スクリュ23と、駆動機構24と、ホッパ25と、射出ノズル26と、ノズルタッチ装置27と、センサ55とを備える。基台21は、ベッド11のX軸の正方向側に配置され、駆動機構24等を支持する。スクリュ23は、加熱シリンダ22の内部に配置される。駆動機構24は、X軸方向を中心軸としてスクリュ23を回転させ、スクリュ23自体をX軸方向にスライドするように駆動させる。
射出装置20は、基台21と、加熱シリンダ22と、スクリュ23と、駆動機構24と、ホッパ25と、射出ノズル26と、ノズルタッチ装置27と、センサ55とを備える。基台21は、ベッド11のX軸の正方向側に配置され、駆動機構24等を支持する。スクリュ23は、加熱シリンダ22の内部に配置される。駆動機構24は、X軸方向を中心軸としてスクリュ23を回転させ、スクリュ23自体をX軸方向にスライドするように駆動させる。
ホッパ25は、加熱シリンダ22のZ軸の正方向側に設けられる。射出ノズル26は、加熱シリンダ22のX軸の負方向側の端部に設けられる。ノズルタッチ装置27は、射出装置20をX軸方向にスライドさせて、射出ノズル26を金型18のスプルーブッシュに接触させる。センサ55は、一例では、射出ノズル26の近傍に配置される熱電対である。熱電対は、配置された箇所の温度を検出する温度センサである。なお、センサ55は、熱電対ではない他の温度センサであってもよい。
基台21は、内部に制御装置40と、コンバータ153と、サーボアンプ53a,53bと、冷却用のファン54とを備える。制御装置40は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ等を搭載した制御基板52を含む。制御装置40は、熱電対等を含む各種センサ55の検出値を取得し、射出成形機100を統括的に制御する。各種センサの検出値は、たとえば、加熱シリンダ22の温度情報、または、型締機構16、金型17,18、射出ノズル26等の各種可動部品の位置情報等を含む。
コンバータ153は、3相交流電力を直流電力に変換して、サーボアンプ53a,53bに供給する。サーボアンプ53a,53bの各々は、対応するモータに対して三相交流電力を供給するインバータを含む。空冷用のファン54は、コンバータ153およびサーボアンプ53a,53bが過熱しないように送風する。
表示装置30は、射出成形機100のY軸の負方向側に設けられている。表示装置30は、ディスプレイ31と入力装置32とを備える。入力装置32は、たとえば、複数のボタンを含んで構成される。ある局面では、表示装置30は、複数のディスプレイおよびスピーカー等を備えてもよい。また、ディスプレイ31と入力装置32とは、タッチパネルとして一体的に設けられてもよい。
<射出成形機の概略ブロック図>
図2は、射出成形機100の概略ブロック図である。制御装置40は、記憶部44と制御基板52とを備える。記憶部44は、たとえば、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Flash Solid State Drive)等を含んで構成され得る。制御基板52は、演算部41と、入力インターフェース42と、出力インターフェース43とが搭載されている。演算部41は、CPU41aとメモリ41bとを備える。
図2は、射出成形機100の概略ブロック図である。制御装置40は、記憶部44と制御基板52とを備える。記憶部44は、たとえば、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Flash Solid State Drive)等を含んで構成され得る。制御基板52は、演算部41と、入力インターフェース42と、出力インターフェース43とが搭載されている。演算部41は、CPU41aとメモリ41bとを備える。
メモリ41bは、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を含み、CPU41aにより実行されるプログラム等を記憶する。CPU41aは、ROMに格納されているプログラムをRAMに展開して実行する。
なお、演算部41は、専用のハードウェア回路により構成されてもよい。すなわち、演算部41は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等により実現され得る。また、演算部41は、プロセッサおよびメモリ、ASIC、FPGA等を適宜組み合わせて実現してもよい。
演算部41は、入力インターフェース42を介して、熱電対等の各種センサ55から検出値を受信する。演算部41は、出力インターフェース43を介して、駆動機構24、表示装置30およびIO基板45へ制御命令を送信する。演算部41は、各種センサの検出値を用いて、サーボアンプ53を制御し、駆動機構24を駆動させる。演算部41は、各種センサの検出値に基づいて射出成形機100の状態を表示装置30に表示させる。
図3は、駆動機構およびサーボアンプの詳細を説明するためのブロック図である。駆動機構24は、モータ102a,102bを含む。モータ102a,102bは、たとえば、型締装置10の型締機構16を開閉させるボールねじ51を回転させるモータ50、射出装置20のスクリュ23を回転させるサーボモータなどが該当しうる。
射出成形機100は、サーボアンプ53a,53bに電源電圧を供給するコンバータ153を含む。コンバータ153は、商用3相電源200から、R相、S相、T相の各電力線を経由して3相電力を受け、P相、N相の電力線間に直流電力を供給する。コンバータ153は、パワー半導体素子154とリアクトル155等を含んで構成される。
サーボアンプ53aは、モータ102aがACサーボモータの場合には、U相、V相、W相のステータコイルに駆動電流を供給する。サーボアンプ53aは、パワー半導体素子101aと、パワー半導体素子101aの導通/非導通を制御する制御部100aとを含む。
サーボアンプ53bは、モータ102bがACサーボモータの場合には、U相、V相、W相のステータコイルに駆動電流を供給する。サーボアンプ53bは、パワー半導体素子101bと、パワー半導体素子101bの導通/非導通を制御する制御部100bとを含む。
パワー半導体素子101a,101b,154の各々は、たとえば、IGBP(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)などである。パワー半導体素子101a,101bは、モータ102a,102bの駆動電流をそれぞれ制御するインバータを構成する。なお、パワー半導体素子101a,101bの各々は、ダイオードを含んでも良い。パワー半導体素子154およびリアクトル155の各々は、R相、S相、T相に対応して複数設けられ、3相交流を直流に変換するAC-DCコンバータを構成する。
制御部100a,100bは、たとえば、CPUを含んで構成される。CPUは、プログラムを実行することにより、モータの回転位置を制御するように構成される。
パワー半導体素子101a,101bを搭載するサーボアンプ53a,53bおよびパワー半導体素子154を搭載するコンバータ153は、熱膨張係数の異なる複数の材料を用いて構成されている。このため、温度上昇および温度降下が繰り返されるような場合には、熱膨張応力により、ワイヤボンディングの剥離、接合材料の金属疲労などにより、寿命が短くなるという問題がある。
そこで、制御装置40は、ユーザから取得した成形条件(または予め設定されている成形条件、自動で作成された成形条件など)をチェックして、パワー素子ユニットの劣化を抑制するように、パワー素子ユニットの温度が急変しないように接合温度の変化を抑制する制御を実行する。
制御装置40は、接合温度の変化を抑制する制御として、たとえばパワー半導体素子101a,101bの駆動波形を補正する。駆動電流がゼロから大きい状態に変化すると、接合温度の上昇幅が大きい。また、駆動電流が大きい状態からゼロに変化すると、接合温度の下降幅が大きい。そのような場合には、制御装置40は、駆動電流がゼロである期間に、モータの回転に影響を及ぼさない無効電流をパワー半導体素子101a,101bに流すようにする。すると、駆動電流がゼロの期間でも、無効電流によってパワー半導体素子101a,101bが発熱するために、接合温度の変動幅が抑制される。
なお、パワー半導体素子101a,101b,154自体に発熱させても良いが、ヒータ103を設けて、パワー半導体素子101a,101b,154のケースを加熱して接合部温度の低下を抑制しても良い。
また、パワー半導体素子101a,101b,154を冷却するためのファン54が設けられている場合には、駆動電流がゼロの期間にファン54を停止して、放熱量を低下させることによって、接合部温度の低下を抑制しても良い。なお、ファン54は、パワー半導体素子101a,101b,154の冷却を独立して個々に行なえるように複数設けることが好ましい。
図4は、制御装置40が実行するサーボアンプに対する処理を説明するためのフローチャートである。図5は、パワー半導体素子に流れる電流および接合部温度の変化を説明するための波形図である。
図4のフローチャートの処理は、射出成形機の制御のメインルーチンから、1回の成形を実行開始する毎に呼び出されて実行される。まず、ステップS11において、制御装置40は、成形条件の変更があるか否かを確認する。成形条件の変更があった場合(S11でYES)、制御装置40は、ユーザから取得した成形条件(または予め設定されている成形条件、自動で作成された成形条件など)を実行した場合にパワー半導体素子の接合部温度に急変が生じるか否かを判断するために、第1回目の成形時にステップS12において電流指令が変化する各ポイントでの電流指令値または電流値を保存するとともに、ステップS13において成形の1サイクル内のモータの最大負荷率を保存する。
成形条件の変更がなかった場合(S11でNO)、ステップS14以降において、パワー半導体素子の接合部温度の変化を抑制する処理を実行する。
まず、ステップS14において、制御装置40は、寿命延長機能がON状態に設定されているか否かを判断する。寿命延長機能は、初期状態ではOFFに設定されている。したがって、通常は成形条件が変更された後に2回目の実行時には、寿命延長機能はONではないので(S14でNO)、ステップS15の処理が実行される。
ステップS15では、成形の1サイクル内でのモータの最大負荷率が60%以上であるか否かを判断する。なお、判定基準値を60%としたのは一例であり、判定基準値は適宜変更できる。
ここで、負荷率は、モータの定格トルクを基準として算出しても良く、モータを駆動するインバータの定格電流を基準として算出しても良い。たとえば、負荷率とはモータの定格トルクを100%として、発生トルク(負荷トルク)の割合を示したものである。負荷トルクは、電流値から計算できるので、1回目の成形時にS12およびS13において得られたデータに基づいて、ステップS15の判断を行なうことができる。インバータの定格電流を基準とする場合には、インバータの定格電流を100%としてインバータ電流が占める割合が負荷率である。なお、後に説明するコンバータに適用する場合には、コンバータの定格電流を100%としてコンバータ電流が占める割合を負荷率とすれば良い。
負荷率が判定基準値以上である場合には、接合部温度の変化を抑制する処理を実行すると過負荷となり、パワー半導体素子の温度が上昇しすぎてしまい、逆に寿命に悪影響を及ぼすおそれがある。また、負荷率が100%を超える場合は、成形条件を見直して対応することが求められて、一般に休止時間(負荷率を下げるための無駄時間)を追加する必要がある。このため、成形サイクル時間が長くなるという問題も生じる。このため、制御装置40は、負荷率が判定基準値よりも低い場合に(S15でNO)寿命延長機能をONに設定し、ステップS17の処理を実行する。ここでは、判定基準値を60%としたが、判定基準値は60%以外でも良い。パワー半導体素子の放熱状態によって判定基準値は適宜変化させても良い。
ステップS17では、電流指令値の減少率が判断される。これにより、接合部温度が急降下するか否かが判断される。1サイクル中に変化する電流指令値のn番目の電流指令値をI(n)で表わすと、制御装置40は、I(n-1)-I(n)が瞬時最大電流または定格電流の20%以上に該当するか否かを判断する。ここでは、電流の減少率の判定基準値を20%としたが、判定基準値は20%以外でも良い。パワー半導体素子の放熱状態によって判定基準値は適宜変化させても良い。
ステップS17で電流の減少率が判定基準値未満であった場合には、ステップS18において電流指令値の増加率が判断される。これにより、接合部温度が急上昇するか否かが判断される。1サイクル中に変化する電流指令値のn番目の電流指令値をI(n)で表わすと、制御装置40は、I(n+1)-I(n)が瞬時最大電流または定格電流の20%以上に該当するか否かを判断する。ここでは、電流の増加率の判定基準値を20%としたが、判定基準値は20%以外でも良い。パワー半導体素子の放熱状態によって判定基準値は適宜変化させても良い。
電流指令値の減少率が判定基準値以上であった場合(S17でYES)または電流指令値の増加率が判定基準値以上であった場合(S18でYES)には、制御装置40は、ステップS18においてモータ回転速度が1(rpm)以上であるか否かを判断する。モータ回転速度が一定値よりも低いときに無効電流を追加すると相バランスが崩れ、一部の相のパワー半導体素子に偏って発熱が生じる可能性があるからである。なお、ここでは、モータ回転速度の判定基準値を1(rpm)としたが、判定基準値は1(rpm)以外でも良い。
モータ回転速度が判定基準値以上であった場合(S19でYES)、ステップS20において、制御装置40は、n番目の電流指令値I(n)に無効電流を加算する。無効電流の加算は、制御装置40がモータのベクトル制御を行なっている場合には、d軸電流を加算すれば良い。無効電流を加算しても、モータの動作には影響を与えないので、ユーザから取得した成形条件(または予め設定されている成形条件、自動で作成された成形条件など)に影響を与えずに、パワー半導体素子を発熱させることが可能となる。なお、加算する無効電流の最大値は、減少率が判定基準値を超える場合には、I(n-1)-I(n)とし、増加率が判定基準値を超える場合には、I(n+1)-I(n)とすることが好ましい。
ステップS18で電流の増加率が判定基準値未満であった場合、および、ステップS19でモータの回転速度が判定基準値未満であった場合には、無効電流を加算する効果が得られないか、または、発熱するパワー半導体素子が偏るおそれがあるので、制御装置40は、ステップS20の処理をせずに、メインルーチンに処理を戻す。ここで、S17~S20の処理は、電流指令値I(1)から成形サイクルの最後の電流指令値まで、順次nを1から増加させて実行され、成形サイクル中の各電流指令値に無効電流を加算するか否かが決定される。
なお、ステップS15において、負荷率が判定基準値以上であった場合(S15でYES)、ステップS21において、制御装置40は、寿命延長機能をOFFに設定し、ステップS17~S20の処理を実行せずに処理をメインルーチンに戻す。
次に、ステップS14において、制御装置40は、寿命延長機能がON状態に設定されていた場合、第2回目の成形で寿命延長機能が実行可能と判定された以降の成形である。この場合であっても、無効電流を加算した結果、1サイクル内の最大負荷率が判定基準値(たとえば95%)以上となった場合(S22でYES)には、パワー半導体素子の温度が上限値を超えるおそれがあるので、ステップS23において、一旦ONに設定された寿命延長機能がOFFに設定される。
なお、ステップS12およびS13の処理は、成形の1回目に実測によって電流値および負荷率を得ても良いが、成形を実行する前に、成形条件から制御装置40が電流値および負荷率を計算し、その後ステップS14以降の処理を実行するようにしても良い。
図5には、上から、電流指令、ケース温度変化、接合部温度変化、接合部温度の各変化の様子が0~100%のスケールで記載されている。電流指令値は、時刻t0~t1においてI(0)が与えられ、時刻t1~t2においてI(1)が与えられ、時刻t2~t3においてI(2)が与えられ、時刻t3~t4においてI(3)が与えられている。さらに、電流指令値は、時刻t4~t5においてI(4)が与えられ、時刻t5~t6においてI(5)が与えられ、時刻t6~においてI(6)が与えられている。
図5に示す成形の1サイクルにおいて、ユーザから取得した電流指令を実行した場合の温度変化は、実線の波形に示されるように最大でdT1であった。
これに対して図4で説明した処理を実行することにより電流波形が補正される。すなわち、時刻t3における電流指令値の増加率が判定基準値を超えたため、時刻t2~t3における電流指令値I(2)=0に破線で示すように無効電流(d軸電流)が加算される。
また、時刻t6における電流指令値の減少率が判定基準値を超えたため、時刻t6以降における電流指令値I(6)=0に破線で示すように無効電流(d軸電流)が加算される。その結果、接合部温度の変化幅がdT1からdT2に減少する。したがって、温度上昇および温度降下が繰り返されるような場合の熱膨張応力が緩和されるので、サーボアンプ53a,53bの劣化が抑制される。
以上説明した本実施の形態では、寿命を改善する部品の例としてサーボアンプ中のパワー半導体素子について説明したが、サーボアンプに限らず、モータに電力を伝達するパワー半導体素子であれば他のユニット中のパワー半導体素子であっても良い。たとえば、図3に示すコンバータ153に対してパワー半導体素子の温度の変化幅を抑制する制御を行なっても良い。
図6は、制御装置40が実行するコンバータに対する処理を説明するためのフローチャートである。サーボアンプのインバータに電流指令値の補正を適用する場合には、適用条件の一つに「モータ回転速度」が存在したが、コンバータには回転速度という概念がないため、適用条件が1つ減る。
したがって、図6に示すフローチャートは、図4で説明したフローチャートと比較すると、ステップS19のモータ回転速度の判定が実行されない点が異なる。他のステップS11~S18およびS20~S23の処理については、図4と同様であるので、ここでは説明は繰り返さない。
なお、図4および図6に示したフローチャートの処理では、パワー素子の寿命延長機能のON/OFFは、射出成形機の制御装置が判断して設定することを想定しているが、消費電力が増えるため、ユーザがOFFできるようにしておいても良い。
(まとめ)
最後に、再び図面を参照して、本実施の形態について総括する。本実施形態の射出成形機は、図3に示すように、モータ102a,102bと、モータ102a,102bを駆動するサーボアンプ53a,53bと、サーボアンプ53a,53bを制御する制御装置40とを備える。制御装置40は、成形条件に対応するサーボアンプへの電流指令値に基づいてサーボアンプ53a,53b内のパワー半導体素子101a,101bの接合温度の変化を判定し、接合温度の変化が判定基準値よりも大きい場合は、接合温度の変化を抑制する処理を実行するように構成される。
最後に、再び図面を参照して、本実施の形態について総括する。本実施形態の射出成形機は、図3に示すように、モータ102a,102bと、モータ102a,102bを駆動するサーボアンプ53a,53bと、サーボアンプ53a,53bを制御する制御装置40とを備える。制御装置40は、成形条件に対応するサーボアンプへの電流指令値に基づいてサーボアンプ53a,53b内のパワー半導体素子101a,101bの接合温度の変化を判定し、接合温度の変化が判定基準値よりも大きい場合は、接合温度の変化を抑制する処理を実行するように構成される。
このような構成とすることによって、サーボアンプ中の半導体素子の劣化が抑制される。
制御装置40は、図4に示すように、電流指令値の増加度合いが第1しきい値より大きく(S17でYES)、モータ102a,102bの負荷率が第2しきい値よりも小さい(S15でNO)場合に、接合温度の変化を抑制する処理(S19)を実行するように構成される。
このような条件で処理を行なうことによって、ユーザから取得した成形条件(または予め設定されている成形条件、自動で作成された成形条件など)に大きな影響を与えることなく、サーボアンプ中の半導体素子の劣化が抑制される。
パワー素子ユニットは、モータを駆動するインバータまたはインバータに電源電圧を供給するコンバータであり、制御装置40は、接合温度の変化を抑制する処理として、図4のステップS19に示すように、モータ102a,102bの無効電流を流すようにサーボアンプ53a,53bを制御する。または、図6のステップS19に示すように、コンバータに無効電流を流すようにパワー素子ユニットを制御する。
射出成形機は、サーボアンプ53a,53bを加熱する加熱部をさらに備える。加熱部として、たとえば、サーボアンプのケースを外から加熱するヒータ103を用いることができる。制御装置40は、接合温度の変化を抑制する処理として、サーボアンプ53a,53bを加熱するように加熱部を制御する。
射出成形機は、サーボアンプ53a,53bを冷却する冷却部をさらに備える。冷却部としては、たとえば、サーボアンプのケースを外から冷却するファン54を用いることができる。制御装置40は、接合温度の変化を抑制する処理として、サーボアンプ53a,53bの冷却度合いが弱まるように冷却部を制御する。たとえば、ファン54を停止するか、または回転速度を下げる。
なお、サーボアンプ53a,53b以外であっても、コンバータ153の制御に同様な温度変化を抑制する制御を適用しても良い。
以上のいずれかの方法によって、半導体素子の接合部温度の変化幅を小さくすることができる。
図5の波形図に一例を示したように、制御装置40は、ユーザから取得した成形条件(または予め設定されている成形条件、自動で作成された成形条件など)に対応するサーボアンプ53a,53bへの電流指令値に基づいてサーボアンプを制御して第1回目の成形処理を実行し、制御装置は、第1回目の成形処理において、電流指令値に基づいて接合温度の変化が判定基準値よりも大きいと判定された期間に対して、第2回目以降の成形処理では、第1回目の成形処理時よりも接合温度の変化幅が少なくなるように、接合温度の変化を抑制する処理を実行するように構成される。
モータの負荷率などは、材料、条件などによって変化するので、1回目の成形によってデータを取得することにより、寿命延長機能を実行して良いか否かを正確に判断することができる。
本実施の形態は、他の局面では、モータに電力を伝達するサーボアンプ53a,53bおよびコンバータ153などのパワー素子ユニットを備える射出成形機の制御方法に関する。制御方法は、(a)成形条件に対応するパワー素子ユニットへの電流指令値に基づいてパワー素子ユニット内の半導体素子の接合温度の変化を判定するステップ(S17);および(b)接合温度の変化が判定基準値よりも大きい場合は、接合温度の変化を抑制する処理を実行するステップ(S19)を含む。
16 型締機構、17,18 金型、20 射出装置、21 基台、22 加熱シリンダ、23 スクリュ、24 駆動機構、25 ホッパ、26 射出ノズル、27 ノズルタッチ装置、30 表示装置、31 ディスプレイ、32 入力装置、40 制御装置、41 演算部、41a CPU、41b メモリ、42 入力インターフェース、43 出力インターフェース、44 記憶部、45 基板、50,102a,102b モータ、51 ボールねじ、52 制御基板、53,53a,53b サーボアンプ、54 ファン、55 センサ、100 射出成形機、100a,100b 制御部、101a,101b パワー半導体素子、103 ヒータ、153 コンバータ。
Claims (7)
- モータと、
前記モータに電力を伝達するパワー素子ユニットと、
前記パワー素子ユニットを制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、成形条件に対応する前記パワー素子ユニットへの電流指令値に基づいて前記パワー素子ユニット内の半導体素子の接合温度の変化を判定し、前記接合温度の変化が判定基準値よりも大きい場合は、前記接合温度の変化を抑制する処理を実行するように構成される、射出成形機。 - 前記制御装置は、前記電流指令値の増加度合いが第1しきい値より大きく、前記パワー素子ユニットの定格電流または前記モータの定格トルクに対する負荷率が第2しきい値よりも小さい場合に、前記接合温度の変化を抑制する処理を実行するように構成される、請求項1に記載の射出成形機。
- 前記パワー素子ユニットは、前記モータを駆動するインバータまたは前記インバータに電源電圧を供給するコンバータであり、
前記制御装置は、前記接合温度の変化を抑制する処理として、前記インバータまたは前記コンバータに無効電流を流すように前記パワー素子ユニットを制御する、請求項1または2に記載の射出成形機。 - 前記射出成形機は、
前記パワー素子ユニットを加熱する加熱部をさらに備え、
前記制御装置は、前記接合温度の変化を抑制する処理として、前記パワー素子ユニットを加熱するように前記加熱部を制御する、請求項1または2に記載の射出成形機。 - 前記射出成形機は、
前記パワー素子ユニットを冷却する冷却部をさらに備え、
前記制御装置は、前記接合温度の変化を抑制する処理として、前記パワー素子ユニットの冷却度合いが弱まるように前記冷却部を制御する、請求項1または2に記載の射出成形機。 - 前記制御装置は、前記成形条件に対応する前記パワー素子ユニットへの電流指令値に基づいて前記パワー素子ユニットを制御して第1回目の成形処理を実行し、
前記制御装置は、前記第1回目の成形処理において、前記電流指令値に基づいて前記接合温度の変化が判定基準値よりも大きいと判定された期間に対して、第2回目以降の成形処理では、前記第1回目の成形処理時よりも前記接合温度の変化幅が少なくなるように、前記接合温度の変化を抑制する処理を実行するように構成される、請求項1に記載の射出成形機。 - 以下のステップを含む、モータに電力を伝達するパワー素子ユニットを備える射出成形機の制御方法:
(a)成形条件に対応する前記パワー素子ユニットへの電流指令値に基づいて前記パワー素子ユニット内の半導体素子の接合温度の変化を判定するステップ;および
(b)前記接合温度の変化が判定基準値よりも大きい場合は、前記接合温度の変化を抑制する処理を実行するステップ。
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