JP2023005857A - コーティング液およびそれを用いた積層部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】 優れたポットライフを有し、吸水性に加えて高い親水性を発現し、さらにそれらの特性が長期に渡って持続できるコーティング膜を形成し得るコーティング液およびそれを用いた積層部材を提供すること【解決手段】 本発明のコーティング液は、側鎖にエチレン性不飽和基を有する変性ポリビニルアルコール樹脂と、同一分子内に重合反応性基および親水性基を有する親水性モノマーと、水性媒体とを含有する。本発明によれば、優れた防曇性および/または防汚性を有するコーティング膜を備えた積層部材を提供することができる。【選択図】 なし

Description

本発明はコーティング液およびそれを用いた積層部材に関し、より詳細には、長期に渡って吸水性かつ高親水性を発現するコーティング膜を形成し得るコーティング液およびそれを用いた積層部材に関する。
吸水性および親水性を発現するコーティング剤は、ガラスに代表されるような部材において、視認性を確保するための防曇および/または防汚コーティングなどに使用されている。こうしたコーティング剤は、特に防曇性能の観点で、微小な液滴の形成を防ぐことが重要な使用環境下では、その吸水機構によって微小液滴の形成を防ぐ手法が採られている。しかし、吸水機構を利用するコーティングでは、コーティング膜が飽和吸水した後に曇りが生じるため、高い親水性を有しかつ水膜形成能を備えていることがより好適であるさらに、それらのコーティング膜は、汚れの付着を防止する、もしくは汚れが付着した場合も容易に除去できる防汚性も備えていることが所望されている。
吸水性かつ親水性のコーティング膜を形成し得るコーティング剤として、ポリビニルアルコール骨格に架橋性基および親水性基を導入した樹脂と架橋剤とを含有する組成物が提案されている(特許文献1)。また、ポリビニルアセタール樹脂とシリカ粒子を配合した有機/無機ハイブリッド型の吸水防曇層の上に、界面活性剤を含む水溶液を塗布することにより親水性を付与した防曇性物品が開示されている(特許文献2)。
特開2014-141625号公報 特開2012-117025号公報
しかし、特許文献1に記載の組成物は、ポットライフに劣り、加熱するとゲル化してしまうなど、溶液の安定性に課題を抱えている。また、特許文献2に記載の防曇性物品は、表面に塗布した界面活性剤が化学固定されていないため、流水に晒されると当該界面活性剤が容易に流失し、当該物品の親水性を保持することが困難である。
本発明は、上記問題の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、優れたポットライフを有し、吸水性に加えて高い親水性を発現し、さらにそれらの特性が長期に渡って持続できるコーティング膜を形成し得るコーティング液およびそれを用いた積層部材を提供することにある。
本発明は、以下の発明を包含する。
[1]側鎖にエチレン性不飽和基を有する変性ポリビニルアルコール樹脂と、同一分子内に重合反応性基および親水性基を有する親水性モノマーと、水性媒体とを含有する、コーティング液。
[2]前記親水性モノマーが、同一分子内に、ポリオキシアルキレン基およびイオン性基から選択される少なくとも1種の親水性基を有する、[1]に記載のコーティング液。
[3]前記親水性モノマーが、同一分子内に、前記親水性基としてポリオキシアルキレン基およびイオン性基の両方を有する、[1]または[2]に記載のコーティング液。
[4]前記親水性モノマーが、前記変性ポリビニルアルコール樹脂100質量部に対して0.1~100質量部の割合で含有されている、[1]~[3]のいずれかに記載のコーティング液。
[5]さらに、前記変性ポリビニルアルコール樹脂100質量部に対してSiO換算で1~250質量部のコロイダルシリカを含有する、[1]~[4]のいずれかに記載のコーティング液。
[6]さらに、前記変性ポリビニルアルコール樹脂100質量部に対して1~100質量部のアルコキシシランを含有する、[1]~[5]のいずれかに記載のコーティング液。
[7]前記エチレン性不飽和基が以下の式(I)で表される部分構造を含む、[1]~[6]のいずれかに記載のコーティング液。
Figure 2023005857000001
(式(I)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子、メチル基、カルボキシル基、またはカルボキシメチル基であり、Xは酸素原子または-N(R)-であり、Rは水素原子または炭素数1~3の炭化水素基であり、*は結合手である)
[8]前記変性ポリビニルアルコール樹脂が、以下の式(II)または式(III)で表される構造単位を含む、[1]~[7]のいずれかに記載のコーティング液。
Figure 2023005857000002
(式(II)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子、メチル基、カルボキシル基、またはカルボキシメチル基であり、Xは酸素原子または-N(R)-であり、Rは水素原子または炭素数1~3の炭化水素基であり、Yは置換基を有していてもよい炭素数1~10の2価の炭化水素基を表し、*は結合手である)
Figure 2023005857000003
(式(III)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子、メチル基、カルボキシル基、またはカルボキシメチル基であり、*は結合手である)
[9]前記変性ポリビニルアルコール樹脂が、式(I)で表される前記部分構造を0.05~8モル%の割合で含有する、[7]または[8]に記載のコーティング液。
[10]前記変性ポリビニルアルコール樹脂が4,400~220,000の数平均分子量を有する、[1]~[9]のいずれかに記載のコーティング液。
[11]前記コロイダルシリカの含有量が、前記変性ポリビニルアルコール樹脂100質量部に対してSiO換算で30~180質量部である、[5]に記載のコーティング液。
[12]前記アルコキシシランの含有量が、前記変性ポリビニルアルコール樹脂100質量部に対して7~45質量部である、[6]に記載のコーティング液。
[13]前記水性媒体が、水または40質量%以下のアルコール濃度を有するアルコール水溶液である、[1]~[12]のいずれかに記載のコーティング液。
[14][1]~[13]のいずれかに記載のコーティング液の硬化物を含有する、コーティング膜。
[15]膜表面の水接触角が、40℃の流水に24時間暴露させる前後の両方において50°未満に保持されている、[14]に記載のコーティング膜。
[16][14]または[15]に記載のコーティング膜と基材とを備える、積層部材。
[17]前記コーティング膜が最外層に配置されている、[16]に記載の積層部材。
[18]前記コーティング膜が前記基材と密着して配置されている、[16]または[17]に記載の積層部材。
[19]前記基材がガラス製成形体である、[16]~[18]のいずれかに記載の積層部材。
[20]前記基材が透明な成形体である、[16]~[19]のいずれかに記載の積層部材。
本発明によれば、優れたポットライフを有し、かつ吸水性に加えて高い親水性を発現し、さらにそれが長期に渡って持続することができるコーティング膜を簡便に作製できる。
(コーティング液)
本発明のコーティング液は、変性ポリビニルアルコール樹脂と、親水性モノマーと、水性媒体とを含有する。
(1)変性ポリビニルアルコール樹脂
変性ポリビニルアルコール樹脂は、側鎖にエチレン性不飽和基を有する。
変性ポリビニルアルコール樹脂が側鎖に有するエチレン性不飽和基の構造は特に限定されず、例えばラジカル重合性を有する不飽和基が挙げられる。変性ポリビニルアルコール樹脂のエチレン性不飽和基に基づく優れた架橋反応性を利用して、架橋性組成物から硬化物を得ることができる。特に、エチレン性不飽和基は、以下の式(I)で表される部分構造を含むことが好ましい。
Figure 2023005857000004
(式(I)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子、メチル基、カルボキシル基、またはカルボキシメチル基であり、Xは酸素原子または-N(R)-であり、Rは水素原子または炭素数1~3の炭化水素基であり、*は結合手である)
上記式(I)において、架橋反応性が良好であるとの理由から、RおよびRは水素原子であることが好ましく、得られるコーティング組成物と上記水性媒体との溶液安定性が良好であるとの理由から、Rはメチル基であることが好ましい。また、上記式(I)において、Xが-N(R)-である場合、Rを構成し得る炭素数1~3の炭化水素基としては、例えば炭素数1~3の飽和炭化水素基が挙げられる。具体的には、Rは炭素数1~3のアルキル基であることが好ましい。炭素数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、およびイソプロピル基が挙げられる。なお、反応性に優れるとの理由から、上記式(I)において、Xは酸素原子であることが好ましい。
本発明において、変性ポリビニルアルコール樹脂は、以下の式(II)または(III)で表される構造単位を含むことが好ましい。
Figure 2023005857000005
(式(II)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子、メチル基、カルボキシル基、またはカルボキシメチル基であり、Xは酸素原子または-N(R)-であり、Rは水素原子または炭素数1~3の炭化水素基であり、Yは置換基を有していてもよい炭素数1~10の2価の炭化水素基を表し、*は結合手である)
Figure 2023005857000006
(式(III)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子、メチル基、カルボキシル基、またはカルボキシメチル基であり、*は結合手である)
上記式(II)および(III)において、架橋反応性が良好であるとの理由から、RおよびRは水素原子であることが好ましく、得られるコーティング組成物と上記水性媒体との溶液安定性が良好であるとの理由からRはメチル基であることが好ましい。
また、上記式(II)において、Xが-N(R)-である場合、Rを構成し得る炭素数1~3の炭化水素基としては、例えば炭素数1~3の飽和炭化水素基が挙げられる。具体的には、Rは炭素数1~3のアルキル基であることが好ましい。炭素数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、およびイソプロピル基が挙げられる。なお、反応性に優れるとの理由から、上記式(II)において、Xは酸素原子であることが好ましい。
さらに、上記式(II)において、Yを構成し得る炭素数1~10の2価の炭化水素基としては、炭素数1~10のアルキレン基および炭素数1~10のシクロアルキレン基が挙げられる。炭素数1~10のアルキレン基としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基等が挙げられる。炭素数1~10のシクロアルキレン基としては、例えばシクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基等が挙げられる。これらのアルキレン基およびシクロアルキレン基は、メチル基、エチル基等のアルキル基を分岐構造として有していてもよい。またYを構成し得る炭素数1~10の2価の炭化水素基は、所定の置換基で置換されていてもよい。このような置換基としては、例えば水酸基;アミノ基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;アセチル基、プロピオニル基等のアシル基等が挙げられ、さらに当該置換基の構造中に、カルボニル結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合等を含んでいてもよい。Yはまた、変性ポリビニルアルコール樹脂の主鎖の一部と一緒になってアセタール構造を形成していてもよい。
本発明において、変性ポリビニルアルコール樹脂は、上記式(II)または(III)で表される構造単位を含む変性ポリビニルアルコール樹脂のうち、特に式(III)で表される構造単位を有する変性ポリビニルアルコール樹脂であることが好ましい。
なお、上記式(I)で表される部分構造を含む構造単位、ならびに上記式(II)および(III)で表される構造単位のより具体的な例としては、以下に示される構造単位が挙げられる。
Figure 2023005857000007
(式中、*は結合手である)。
上記式(IV-1)~式(IV-6)中、式(IV-1)~式(IV-3)は上記式(III)の具体例であり、上記式(IV-5)および(IV-6)は上記式(II)の具体例である。上記式(IV-4)は、上記式(II)および(III)に属さないが、式(I)で表される部分構造を含む具体例である。
本発明において、変性ポリビニルアルコール樹脂の全構造単位に対する、エチレン性不飽和基を有する構造単位(例えば式(I)で表される部分構造を含む構造単位)の含有量の下限は特に限定されないが、変性ポリビニルアルコール樹脂(A)の全構造単位を100モル%として、好ましくは0.05モル%以上であり、より好ましくは0.1モル%以上であり、さらに好ましくは0.2モル%以上であり、特に好ましくは0.5モル%以上である。また、エチレン性不飽和基を有する構造単位(例えば式(I)で表される部分構造を含む構造単位)の含有量の上限は特に限定されないが、変性ポリビニルアルコール樹脂(A)の全構造単位を100モル%として、好ましくは8モル%以下であり、より好ましくは5モル%以下であり、さらに好ましくは3モル%以下である。上記エチレン性不飽和基を有する構造単位の含有量がこのような下限および上限から構成される範囲内にあることにより、当該組成物から得られるコーティング膜は、優れた防曇性および防汚性を持続的に提供でき、かつそれらの耐久性も向上させることができる。さらに、変性ポリビニルアルコール樹脂は、その全構造単位内に2種以上のエチレン性不飽和基を有する構造単位を有していてもよい。例えば、2種以上のエチレン性不飽和基を有する場合、これら2種以上のエチレン性不飽和基を有する構造単位の含有量の合計量が上記下限および上限から構成される範囲内にあることが好ましい。なお、本明細書における用語「構造単位」は、重合体を構成する繰り返し単位を指していう。例えば、後述の「ビニルアルコール単位」および「ビニルエステル単位」もまた「構造単位」の例として包含される。
本発明において、変性ポリビニルアルコール樹脂の全構造単位に対する、ビニルアルコール単位の下限は特に限定されないが、変性ポリビニルアルコール樹脂の全構造単位を100モル%として、好ましくは60モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上であり、特に好ましくは85モル%以上である。また、上記ビニルアルコール単位の含有量の上限は特に限定されないが、変性ポリビニルアルコール樹脂の全構造単位を100モル%として、好ましくは99.95モル%以下であり、より好ましくは99.9モル%以下であり、さらに好ましくは99.5モル%以下であり、特に好ましくは99.0モル%である。ビニルアルコール単位の含有量がこのような下限および上限から構成される範囲内にあることにより、当該組成物から得られるコーティング膜は、優れた防曇性および防汚性を持続的に提供でき、かつそれらの耐久性も向上させることができる。
ビニルアルコール単位は、加水分解や加アルコール分解などによってビニルエステル単位から誘導できる。そのため、ビニルエステル単位からビニルアルコール単位に変換する際の条件等によっては、変性ポリビニルアルコール樹脂中にビニルエステル単位が残存することがある。よって、変性ポリビニルアルコール樹脂は、上記エチレン性不飽和基を有する構造単位以外のビニルエステル単位を含んでいてもよい。
上記ビニルエステル単位のビニルエステルの例としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニルなどを挙げられ、これらの中でも酢酸ビニルが工業的観点から好ましい。
変性ポリビニルアルコール樹脂は、本発明の効果が得られる限り、エチレン性不飽和基を有する構造単位、ビニルアルコール単位およびビニルエステル単位以外の他の構造単位をさらに含んでいてもよい。当該他の構造単位は、例えば、ビニルエステルと共重合可能な他の単量体に由来する構造単位である。他の単量体としては、エチレン性不飽和単量体が挙げられる。他の単量体に由来する構造単位は、エチレン性不飽和基を有する構造単位に変換可能な構造単位であってもよい。エチレン性不飽和単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、n-ブテン、イソブチレン、1-ヘキセンなどのα-オレフィン類;アクリル酸およびその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸i-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸i-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシルなどのアクリル酸エステル類;メタクリル酸およびその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸i-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸i-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシルなどのメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩(例えば4級塩);メタクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩(例えば4級塩);メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、i-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、i-ブチルビニルエーテル、t-ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、2,3-ジアセトキシ-1-ビニルオキシプロパンなどのビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル類;塩化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン類;酢酸アリル、2,3-ジアセトキシ-1-アリルオキシプロパン、塩化アリルなどのアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸およびその塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル;ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
変性ポリビニルアルコール樹脂におけるエチレン性不飽和基を有する構造単位、ビニルアルコール単位、およびその他の任意の構造単位の配列順序には特に制限はなく、変性ポリビニルアルコール樹脂は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体などのいずれであってもよい。
変性ポリビニルアルコール樹脂の分子量は特に限定されないが、数平均分子量(Mn)は、例えば4,400以上であり、好ましくは8,800以上であり、より好ましくは13,200以上であり、さらにより好ましくは22,000以上であり、特に好ましくは40,000以上である。また、変性ポリビニルアルコール樹脂(A)のMnの上限は、例えば220,000以下であり、好ましくは180,000以下であり、さらに好ましくは150,000以下であり、特に好ましくは100,000以下である。Mnが4,400未満であると、当該組成物から得られるコーティング膜に対して十分な耐久性を付与できない場合がある。Mnが220,000を越えると、当該組成物から得られるコーティング膜に対して、防曇性および/または防汚性についての持続性が低下する場合がある。Mnは、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、標準物質にポリメチルメタクリレートを用い、HFIP系カラムで測定した値として算出できる。
変性ポリビニルアルコール樹脂のJIS K6726(1994年)に準拠して測定した粘度平均重合度は特に限定されないが、好ましくは100~5,000であり、より好ましくは200~4,000である。粘度平均重合度が100を下回ると、当該組成物から得られるコーティング膜に対して十分な耐久性を付与できない場合がある。粘度平均重合度が5,000を上回ると、そのような変性ポリビニルアルコール樹脂の製造にあたりより高度な技術が必要となるおそれがあり、工業的生産性を保持することが困難となる場合がある。
変性ポリビニルアルコール樹脂のけん化度は特に限定されないが、好ましくは60~99.95モル%、より好ましくは70~99.9モル%、さらに好ましくは80~99.5モル%、特に好ましくは85~99.0モル%、最も好ましくは88~98.5モル%である。変性ポリビニルアルコール樹脂のけん化度が60モル%を下回ると、当該組成物から得られるコーティング膜に対して十分な耐久性を付与できない場合がある。変性ポリビニルアルコール樹脂のけん化度が99.95モル%を上回ると、当該組成物から得られるコーティング膜に対して防曇性および/または防汚性についての持続性が低下する場合がある。
変性ポリビニルアルコール樹脂の製造方法は特に限定されない。例えば、ポリビニルアルコールに対して、構造内にエチレン性不飽和基を有する化合物(例えばカルボン酸を有する化合物)を反応させることにより、上記式(I)で表される部分構造を側鎖に導入し、変性ポリビニルアルコール樹脂を製造することができる。当該反応の具体的な例としては、ポリビニルアルコールとアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルとのエステル交換反応;ポリビニルアルコールとアクリル酸またはメタクリル酸、4-ペンテン酸、10-ウンデセン酸との反応;ポリビニルアルコールと無水アクリル酸または無水メタクリル酸との反応;ポリビニルアルコールと塩化アクリロイルまたは塩化メタクリロイルとの反応;が挙げられる。
(2)親水性モノマー
親水性モノマーは、同一分子内に重合反応性基および親水性基を有する。
親水性モノマーを構成する重合反応性基は、炭素炭素二重結合を含むエチレン性基であり、例えば、α,β-不飽和カルボニル基、アリル基およびビニル基が挙げられる。α,β-不飽和カルボニル基の具体的な例としては、アクリロイル基およびメタクリロイル基が挙げられる。
親水性モノマーを構成する親水性基は、水(HO)との間に水素結合を形成し得る官能基を指して言い、対象物質の水への溶解を助けるか、または水に溶解しない場合でも水に濡れ易い表面を形成し得る性質を有する。親水性基の例としては、ポリオキシアルキレン基、およびイオン性基、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。ポリオキシアルキレン基の具体的な例としては、-(CHCHO)-または-(CHCHCHO)-[式中、nおよびmはそれぞれ独立して1~100の整数である。]で表されるポリオキシエチレン基およびポリオキシプロピレン基が挙げられる。イオン性基は、例えば酸または塩基の存在下でイオン化され得る基であり、電解質と親和性を有する基である。イオン性基は塩を形成しているものであってもよい。イオン性基としては、例えばスルホン酸基(-SOH)、スルホンアミド基(-SONH)、硫酸基(-OSOH)、ホスホン酸基(-PO(OH))、リン酸基(-OPO(OH))、カルボン酸基(-COOH)、およびアンモニウム基(-NH)、ならびにそれらの塩(例えば、ナトリウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、および塩酸塩)が挙げられる。イオン性基は同一分子内に2種以上導入されていてもよく、例えば、ホスホリルコリン基およびベタイン基、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
親水性モノマーは、得られるコーティング膜に十分な親水性を付与できるという理由から、同一分子内にポリオキシアルキレン基とイオン性基との両方を有していることが好ましい。
1つの実施形態では、本発明における親水性モノマーは、以下の式(V):
Figure 2023005857000008
(式(V)中、Rはアクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、ビニル基、または炭素数1~3のアルキル基であり、Rは-O-アクリロイル基、-O-メタクリロイル基、-O-アリル基、-O-ビニル基、または水酸基であるか、もしくはRはスルホン酸基、スルホンアミド基、硫酸基、ホスホン酸基、リン酸基、カルボン酸基、またはアンモニウム基、あるいはそれらの塩、あるいはそれらを2種以上有する官能基であり、nは1~100の整数である)で表される界面活性剤である。式(V)で表される親水性モノマーの具体的な例としては、ポリエチレングルコールジメタクリレート(n=14)、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート(n=9)、およびアクリル酸3-スルホプロピルカリウム、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
親水性モノマーの含有量の下限は、変性ポリビニルアルコール樹脂100質量部に対して0.1質量部以上、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは7質量部以上である。また、親水性モノマーの含有量の上限は、変性ポリビニルアルコール樹脂100質量部に対して、100質量部以下、好ましくは50質量部以下、より好ましくは35質量部以下、さらに好ましくは15質量部以下である。親水性モノマーの含有量が0.1質量部を下回ると、当該含有量を満たす組成物から得られるコーティング膜の親水性が低下して防曇性および/または防汚性を低下させることがある。また、親水性モノマーの含有量が100質量部を上回ると、得られるコーティング膜の硬度を低下させることがある。
(3)水性媒体
水性媒体は、例えば水またはアルコール水溶液である。また、水の例としては、純水、イオン交換水、蒸留水、RO水および水道水、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。アルコール水溶液に含まれるアルコールは、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの炭素数1~3の低級アルコールである。アルコール水溶液に含まれるアルコールの濃度は低く設定されていることが好ましく、例えば、40質量%以下、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
水性媒体の含有量は特に限定されないが、変性ポリビニルアルコール樹脂100質量部に対して、好ましくは100質量部~100000質量部、より好ましくは200質量部~50000質量部、さらにより好ましくは400質量部~10000質量部である。水性媒体の含有量が100質量部を下回ると、例えばコーティング液中の変性ポリビニルアルコール樹脂が十分に溶解できず、塗工性が悪化するおそれがある。水性媒体の含有量が100000質量部を上回ると、コーティング液から当該水性媒体を揮発させる際に多大なエネルギーを要することがある。
本発明のコーティング液はまた、上記水性媒体以外に、アセトンなどのケトン、ジエチルエーテル等のエーテル、ならびにそれらの組み合わせが希釈剤として含有されていてもよい。これらの希釈剤の含有量は、当業者によって適宜選択され得る。
さらに、本発明のコーティング液は、上記変性ポリビニルアルコール樹脂、親水性モノマーおよび水性媒体に加え、コロイダルシリカ、アルコキシシラン、光重合開始剤、架橋剤、酸触媒、および他の添加剤のうちのいずれか1種またはそれ以上を含有していてもよい。
(4)コロイダルシリカ
コロイダルシリカは、上記水性媒体によって均一に分散する二酸化ケイ素(SiO)の微粒子(シリカナノ粒子)で構成されており、シリカゾルとも呼ばれる。
コロイダルシリカの含有量の下限は、変性ポリビニルアルコール樹脂100質量部に対してSiO換算で、好ましくは1質量部以上、より好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上、さらにより好ましくは30質量部以上、特に好ましくは40質量部以上である。また、コロイダルシリカの含有量の上限は、変性ポリビニルアルコール樹脂100質量部に対してSiO換算で、好ましくは250質量部以下、より好ましくは200質量部以下、さらに好ましくは180質量部以下、さらにより好ましくは160質量部以下、特に好ましくは110質量部以下である。コロイダルシリカの含有量が1質量部を下回ると、当該含有量を満たすコーティング液から得られるコーティング膜の耐摩耗性が低下して耐久性に欠くことがある。また、コロイダルシリカの含有量が250質量部を上回ると、当該含有量を満たすコーティング液から得られるコーティング膜自体の防曇性および/または防汚性が低下することがある。
コロイダルシリカを構成するシリカナノ粒子の平均粒子径は特に限定されないが、例えば0.1nm~200nm、好ましくは0.5nm~100nm、より好ましくは0.7nm~70nm、さらにより好ましくは1nm~50nm、特に好ましくは1.5nm~30nmである。シリカナノ粒子の平均粒子径が0.1nmを下回ると、シリカナノ粒子自体の製造が困難になるおそれがある。シリカナノ粒子の平均粒子径が200nmを上回ると、シリカナノ粒子自体の着色が目立ち、得られるコーティング膜の透明性が損なわれるおそれがある。
(5)アルコキシシラン
アルコキシシランは、コーティング液の溶液安定性とともに、当該コーティング液から得られるコーティング膜の耐摩耗性を向上させることができる。アルコキシシランは、同一分子内に4つのアルコキシ基(例えば炭素数1~4の低級アルコキシ基)を有するテトラアルコキシシランであることが好ましい。テトラアルコキシシランに含まれる4つのアルコキシ基は互いに同一であっても異なるものであってもよい。汎用性に富み、入手が容易であるとの理由からテトラアルコキシシランを構成する4つのアルコキシ基は互いに同一であることが好ましい。
テトラアルコキシシランの具体的な例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ-sec-ブトキシシラン、およびテトラ-tert-ブトキシシラン、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。入手が容易でありかつコーティング膜に対して優れた耐摩耗性を提供できるという理由から、テトラエトキシシランが好ましい。
アルコキシシランの含有量の下限は、変性ポリビニルアルコール樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらにより好ましくは5質量部以上、さらにまたより好ましくは7質量部以上、特に好ましくは10質量部以上である。また、アルコキシシランの含有量の上限は、変性ポリビニルアルコール樹脂100質量部に対して、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、さらにより好ましくは65質量部以下、さらにまたより好ましくは45質量部以下、特に好ましくは30質量部以上である。
あるいは、アルコキシシランの含有量の下限は、変性ポリビニルアルコール樹脂100質量部に対してSiO換算で、好ましくは0.29質量部以上、より好ましくは0.86質量部以上、さらにより好ましくは1.4質量部以上、さらにまたより好ましくは2.0質量部以上、特に好ましくは2.86質量部以上である。また、アルコキシシランの含有量の上限は、変性ポリビニルアルコール樹脂100質量部に対してSiO換算で、好ましくは28.7質量部以下、より好ましくは22.9質量部以下、さらにより好ましくは18.6質量部以下、さらにまたより好ましくは13.1質量部以下、特に好ましくは8.6質量部以上である。
アルコキシシランが上記下限かつ上限の範囲内の含有量で含有されていることにより、コーティング液の溶液安定性が一層向上するとともに、当該コーティング液から得られるコーティング膜の耐摩耗性もさらに向上させることができる。
アルコキシシラン(as)とシリカナノ粒子(cs)との質量比(as/cs)は、特に限定されないが、例えば0~15、好ましくは0.001~8、より好ましくは0.002~3、さらにより好ましくは0.005~1、特に好ましくは0.01~0.8、最も好ましくは0.05~0.7である。アルコキシシランとシリカナノ粒子とが上記範囲内の質量比(as/cs)で含有されていることにより、コーティング液の安定性が一層向上するとともに、コーティング膜の耐摩耗性もさらに向上する。
(6)光重合開始剤
本発明のコーティング液は、当該分野において公知の光重合開始剤を含有していてもよい。光重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば2-ヒドロキシ-4'-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノンなどのプロピオフェノン系化合物;4’-フェノキシ-2,2-ジクロロアセトフェノン、4’-t-ブチル-2,2,2-トリクロロアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4’-ドデシルフェニル)-1-プロパノン、1-[4’-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-4’-メチルチオ-2-モルホリノプロピオフェノンなどのアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンジルジメチルケタールなどのベンゾイン系化合物;ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、2,2’-ジクロロベンゾフェノン、4-ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルスルフィド、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン[4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン]、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物;2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン系化合物;9,10-フェナントレンキノン、カンファーキノン(2,3-ボルナンジオン)、2-エチルアントラキノンなどのキノン系化合物;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド;ベンジルなどが挙げられる。
光重合開始剤は、特に限定されないが、例えば、変性ポリビニルアルコール樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部~10質量部、より好ましくは0.2質量部~5質量部である。光重合開始剤の含有量が0.1質量部未満であると、例えば変性ポリビニルアルコール樹脂にUV光が適切に照射されたとしても、当該樹脂による架橋構造が十分に形成されず、得られる硬化物(すなわちコーティング膜)について満足すべき耐水化が達成されないおそれがある。光重合開始剤の含有量が10質量部を上回ると、得られる硬化物内の架橋がそれ以上進まず、むしろ生産性を欠くおそれがある。
(7)架橋剤
あるいは、本発明のコーティング液は、上記(4)光重合開始剤の代わりに当該分野において公知の架橋剤を含有していてもよい。架橋剤としては、好ましくは1分子内に2つまたはそれ以上のチオール基を有する化合物、1分子内に2つまたはそれ以上のアミノ基を有する化合物等が挙げられる。1分子内に2つまたはそれ以上のチオール基を有する化合物としては、例えば1,2-エタンジチオール、1,3-プロパンジチオール、1,4-ブタンジチオール、2,3-ブタンジチオール、1,5-ペンタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,10-デカンジチオール、2,3-ジヒドロキシ-1,4-ブタンジチオール、エチレンビス(チオグリコラート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオナート)、1,4-ブタンジオールビス(チオグリコラート)、2,2’-チオジエタンチオール、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオール(DODT)、3,7-ジチア-1,9-ノナンジチオール、1,4-ベンゼンジチオール、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオナート)、トリメチロールプロパントリス(チオグリコラート)、ペンタエリトリトールテトラキス(メルカプトアセタート)、ジペンタエリトリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオナート)、チオコール(東レ・ファインケミカル株式会社製)等が挙げられる。1分子内に2つまたはそれ以上のアミノ基を有する化合物としては、例えばエチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、1,2-ジアミノ-2-メチルプロパン、2-メチル-1,3-プロパンジアミン、1,2-ジアミノブタン、1,4-ジアミノブタン、1,3-ジアミノペンタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1-メチル-1,8-ジアミノオクタン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、ビス(3-アミノプロピル)エーテル、1,2-ビス(3-アミノプロポキシ)エタン、1,3-ビス(3-アミノプロポキシ)-2,2-ジメチルプロパン、2,2’-オキシビス(エチルアミン)、1,3-ジアミノ-2-プロパノール、α,ω-ビス(3-アミノプロピル)ポリエチレングリコールエーテル、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4-(2-アミノエチル)シクロヘキシルアミン、イソホロンジアミン、1,4-フェニレンジアミン等が挙げられる。
架橋剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、変性ポリビニルアルコール樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部~20質量部、より好ましくは0.5質量部~10質量部である。架橋剤の含有量が0.1質量部未満であると、変性ポリビニルアルコール樹脂による架橋構造が十分に形成されず、得られる硬化物(すなわち、コーティング膜)について満足すべき耐水化が達成されないおそれがある。架橋剤の含有量が20質量部を上回ると、得られる硬化物内の架橋がそれ以上進まず、むしろ生産性を欠くおそれがある。
(8)酸触媒
本発明のコーティング液は、上記アルコキシシランの加水分解反応を促進する目的で酸触媒を含有していてもよい。酸触媒の例としては、硝酸、塩酸、硫酸などの鉱酸、およびその無水物(例えば塩化水素);ならびに酒石酸、フタル酸、マレイン酸、ドデシルコハク酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルナジック酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ジクロルコハク酸、クロレンディック酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水ドデシルコハク酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルナジック酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水ジクロルコハク酸、無水クロレンディック酸などの有機酸、およびその無水物が挙げられる。入手が容易であり、上記アルコキシシランの縮合反応を効率良く触媒できるという理由から、鉱酸が好ましく、硝酸がより好ましい。
酸触媒の含有量は、特に限定されないが、上記アルコキシシラン100質量部に対して、好ましくは0.1質量部~30質量部、より好ましくは0.5質量部~10質量部である。酸触媒の含有量が0.1質量部を下回ると、コーティング膜を形成する際のアルコキシシランの縮合反応が効率良く進まない場合があり、得られるコーティング膜が十分な耐摩耗性を有さないことがある。酸触媒の含有量が30質量部を上回ると、コーティング液を調製した際に所望でない重縮合反応を引き起こし液が白化することがある。
(9)他の添加剤
本発明のコーティング液はまた、本発明の効果を阻害しない範囲において、他の添加剤を含有していてもよい。他の添加剤としては、例えば充填材、加工安定剤、耐候性安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、他の熱可塑性樹脂、潤滑剤、香料、消泡剤、消臭剤、増量剤、剥離剤、離型剤、補強剤、防かび剤、防腐剤、ラジカル発生剤および結晶化速度遅延剤、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。他の添加剤の含有量は特に限定されず、適切な量が当業者によって選択され得る。
本発明のコーティング液は、後述するように例えば所定の基材に付与して硬化させた後、防曇性および/防汚性を有するコーティング膜を形成することができる。この点において、本発明のコーティング液は、防曇剤および/または防汚剤として使用できる。ここで、本明細書中に用いられる用語「防曇剤」とは、例えば所定の基材等に付与された後に硬化することにより、当該基材表面に防曇性能を有するコーティング膜を形成することができる当該硬化前の組成物を指していう。例えば、すでに硬化して防曇性能を有するコーティング膜自体は除外される。さらに、本明細書中に用いられる用語「防汚剤」とは、例えば基材等に付与された後に硬化することにより、当該基材表面に防汚性能を有するコーティング膜を形成することができる当該硬化前の組成物を指していう。例えば、すでに硬化して防汚性能を有するコーティング膜自体は除外される。
(積層部材)
本発明の積層部材は、上記コーティング液の硬化物(コーティング膜ともいう)と基材とを備える。
基材は、それ自体が無色または有色のいずれであってもよく、例えば一方の面から他方の面への視認性が保持されている程度の透明な成形体であってもよい。基材はまた、例えば平滑な平面を有するような板状の部材(例えば窓材)であってもよく、あるいは所定形状を有するように成形されたもの(例えば車両用ヘッドライトカバー、ならびに車両用フロントガラスおよびリアガラス)であってもよい。基材はまた、例えば、強度、耐火性または防火性、防音性、および/または防犯性の向上;熱線の吸収または反射;光の無反射性または低反射性の付与;温度伝導の防止または低減;等の観点から、金属線や充填材、基材用添加剤等を任意の割合で含有していてもよい。
基材の例としては、特に限定されないが、ガラス製成形体および樹脂製成形体が挙げられる。ガラス製成形体としては、例えば、フロートガラス、強化ガラス、耐熱ガラス、防火ガラス、デザインガラス、色ガラス、合わせガラス、すりガラス、複層ガラス、無反射ガラス、低反射ガラス、網入りガラス、線入りガラス、高透過ガラス、熱線反射ガラス、電磁波シールドガラス、サファイアガラス等のガラスでなる成形体が挙げられる。樹脂製成形体としては、例えば、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、脂環式アクリル樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリ-4-メチルテルペン-1樹脂、塩化ビニリデン樹脂、透明エポキシ樹脂等の熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂から作製された成形体が挙げられる。
基材の厚みは特に限定されず、当業者によって適切な厚みが選択され得る。基材はまた、例えばコーティング膜と密着して配置される場合、当該密着性を高めるために、コーティング膜が設けられる側に当業者に周知の方法を用いて研磨等の表面状態の加工が行われていてもよい。なお、基材とコーティング膜との間には、当該分野において公知の接着剤などで構成される中間層が配置されていてもよい。
一方、本発明の積層部材では、防曇性および/または防汚性を効果的に発揮するためにコーティング膜は好ましくは最外層に配置されている。例えば、基材が窓材のような部材で構成されている場合、コーティング膜は当該板状の部材の外表面のみ、内表面のみ、または外表面と内表面との両方に配置されていてもよい。
本発明の積層部材において、コーティング膜は水膜形成性を付与するために膜表面の水接触角が、40℃の流水に24時間暴露させる前後の両方において好ましくは50°未満、より好ましくは40°以下、さらにより好ましくは35°以下、さらにまたより好ましくは30°以下に保持されている。コーティング膜がこのような水接触角の性質を有していることにより、水膜形成性が付与され、防曇性および/または防汚性を高めることができる。
本発明の積層部材において、コーティング膜は充分な耐久性を提供するために所定の強度を有していることが好ましい。例えば、コーティング膜の硬度は、JIS K 5600塗料一般試験方法に準拠して、荷重1kg(9.8N)が加えられた鉛筆で膜表面を5回引っかき、膜の破れが2回未満であった該鉛筆の硬度を鉛筆硬度として評価することができる。本発明におけるコーティング膜の鉛筆硬度は例えばB以上であり、好ましくはH以上である。
コーティング膜は、基材全体に対して略均一な厚みで設けられていることが好ましい。コーティング膜の膜厚は、好ましくは0.1μm~200μm、より好ましくは0.2μm~100μm、さらに好ましくは0.3μm~50μmである。コーティング膜の膜厚が0.1μmを下回ると、当該コーティング膜が基材上に均一な防曇性および/または防汚性を付与できないことがある。コーティング膜の膜厚が200μmを上回ると、当該コーティング膜を形成するためにより多くのコーティング液が必要となるとともに、膜厚の増加によって得られる積層部材の透明性が低下することがある。
本発明の積層部材は、例えば以下のようにして作製できる。なお、ここではコーティング膜と基材とが密着して配置される場合について説明する。
まず、基材を構成する面または部分のうち、防曇性および/または防汚性の付与を所望する面または部分に対して、上記コーティング液が付与され、未硬化層が形成される。コーティング液の付与は、例えばスプレー塗布、ロール塗布、スピンコーティング、エアーナイフコーティング、ブレードコーティング、ハケ塗り、浸漬等の当該分野において公知の方法を用いることができる。ここで、基材上の未硬化層は含水状態であることが好ましい。未硬化層が含水状態であることにより、後述の高エネルギー線照射等の処理を通じて当該未硬化層中のポリビニルアルコール系重合体が含水状態で架橋され得る。その結果、架橋後のコーティング膜の吸水倍率が高まり、防曇性および/または防汚性が向上する。
その後、基材上の未硬化層に対して、高エネルギー線または電磁波が照射されるか、あるいは当該未硬化層を有する基材が所定の温度で加熱される。高エネルギー線としては、例えば電子線などが挙げられる。電磁波としては、紫外線(UV光)、可視光、赤外線などが挙げられる。加熱に供される際の温度としては、例えば50℃~200℃が挙げられる。中でも、複雑な設備等が必須とすることなく、変性ポリビニルアルコール樹脂をより均質に硬化できることから、UV光を用いることが好ましい。UV光については、紫外線ランプなどの光源から発せられるものが照射されるだけでなく、屋外に曝すことにより太陽光を通じて照射されてもよい。
このようにして本発明の積層部材を得ることができる。
本発明の積層部材は、例えば、部材表面の曇りおよび/または汚れの発生を回避することが所望される種々の用途に使用され得る。特に限定されないが、用途の例としては、車両(例えば、自動車、列車、建設機械)、航空機、船舶用の外装材、内装材、ウインドウ、ミラーおよびヘッドライトカバー;建築用(例えば、ビル、住宅)または構造物用外壁材(例えば外壁パネル、窓ガラス)や建築用内装材(例えば壁紙、鏡)、窓材(例えば窓ガラス)、浴室または洗面所用の鏡;ショーケース、水槽、インキュベーター;情報機器、家具、家電、ディスプレイ、各種コンシューマー製品;キッチン、水回り製品(例えば、シンク、換気扇フード、浴室製品);風力発電機用羽根(例えばプロペラ、多翼、セイル);道路交通用カーブミラー;防犯カメラレンズおよび筐体;デジタルカメラレンズおよび筐体;放送用カメラレンズおよび筐体;眼鏡レンズおよびフレーム;サングラスレンズおよびフレーム;スポーツまたはレジャー(例えば、スキー、スノーボード、シュノーケリング、スキューバダイビング)用ゴーグル;保護メガネ、フェイスシールド;医療用レンズ;工業用、スポーツ用、二輪車用のヘルメット;各種センサーカバー;農業ハウス構成材料(例えばプラスチックシート、プラスチックフィルム、窓ガラス);などが挙げられる。
本発明の積層部材は、コーティング膜によって、当該膜上に存在する水分から生じる曇りの発生を除去または低減できる。また、たとえコーティング膜上に塵、埃、砂、各種有機物(例えば、インク)等の汚染物が配置されたとしても、水拭き等の人為的操作または降雨等の自然現象を利用して、防汚性部材表面の汚染物を容易に取り除くことができる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「%」および「部」は特に断りのない限り、それぞれ「質量%」および「質量部」を表す。
(変性率の算出)
日本電子株式会社製核磁気共鳴装置「LAMBDA 500」を用い、室温にて合成例1~8で得られた変性ポリビニルアルコール樹脂のH-NMRを測定し、オレフィンプロトン由来のピーク(5.0~7.5ppm)の積分値から、変性率を算出した。例えば、後述の合成例1においては、5.6ppmおよび6.0ppmに表れるオレフィンプロトン由来のピークの積分値から変性率を算出した。エチレン単位を有する変性ポリビニルアルコール樹脂の場合は、例えば特開2000-309607号公報に記載の方法に従って変性率を算出した。
(ポットライフ)
撹拌機、還流管および添加口を備えた反応器に、各実施例および比較例で得られたコーティング液を加え、煮沸している水浴に浸漬させて1時間加熱し、当該加熱直後の状態を以下の基準で評価した。
A:ゲル化しなかった
B:ゲル化した
(膜厚)
コーティング層を設ける前の基材の厚みを任意の5か所について実測し、その平均値を算出した。次に、コーティング層を設けた後の部材の厚みを任意の5か所について実測し、その平均値を算出した。それぞれの平均値の差を膜厚とした。
(水接触角)
各実施例および比較例で得られたコーティング層(コーティング膜)が形成された積層部材に対し、接触角計(協和界面科学株式会社製DMo―501)を用いて、当該コーティング層の表面に2μLのイオン交換水を滴下し、室温で1分間静置した後の水接触角を測定し、それぞれ以下の基準で評価した。これらの評価結果を「初期」の水接触角として記録した。
A:水接触角が35°未満であった。
B:水接触角が35°以上50°未満であった。
C:水接触角が50°以上であった。
さらに、同一サンプルを、40℃の流水に24時間暴露させた後十分に風乾し、再度同様の方法で水接触角を測定し、それぞれ上記と同様の基準で評価した。これらの評価結果を「流水暴露後」の水接触角として記録した。
(防曇性)
各実施例および比較例で得られたコーティング層が形成された積層部材を、40℃に保持した温水が入ったビーカーの上に、当該コーティング層が水蒸気に晒されるように静置し、静置してから目視で表面に水が付着した確認できるまでの時間を測定し、以下の基準から評価した。これらの評価結果を「初期防曇性」として記録した。
A:50秒間を超えても水が付着しなかった。
B:25秒間以上50秒間未満で水が付着した。
C:25秒間未満で水が付着した。
また、上記試験の終了時にコーティング層の表面に水膜が形成されたか否かを目視で判定し、以下の基準から評価した。これらの評価結果を「水膜形成性」として記録した。
A:全体に均質な水膜が形成されていた。
B:やや不均質な水膜が形成されていた。
C:水膜が形成されず、曇りが生じていた。
(防汚性)
各実施例および比較例で得られたコーティング層が形成された部材に、汚れとしてコーヒー、うがい薬、および油性マジックをそれぞれ異なる部分に付着させ、室温で終夜静置した後、水拭きにより汚れを拭き取った。拭き取り後の状態を以下の基準で評価した。
A:いずれの汚れも色残りがなかった。
B:いずれか1つ以上の汚れが着色として残存した。
(鉛筆硬度)
各実施例および比較例で得られたコーティング層が形成された積層部材に対し、JIS K 5600塗料一般試験方法に準拠して、荷重1kg(9.8N)が加えられた鉛筆で膜表面を5回引っかき、膜の破れが2回未満であった該鉛筆の硬度を鉛筆硬度として、下記の基準で評価した。
A:H以上
B:B以上H未満
C:B未満
(合成例1)
撹拌機、還流管および添加口を備えた反応器に、メタクリル酸510.3質量部、酢酸24.0質量部、イオン交換水28.4質量部、p-メトキシフェノール1.3質量部、パラトルエンスルホン酸一水和物8.1質量部を順次仕込み、室温で撹拌しながら市販のポリビニルアルコール樹脂(粘度平均重合度1700、けん化度95モル%)100質量部を添加して、撹拌しながら65℃まで昇温し、スラリー状態で1時間反応させた。その後、室温まで冷却し、内容物をろ過して変性ポリビニルアルコール樹脂を回収し、大量のメタノールで洗浄した後、40℃にて1.3Paで20時間乾燥することにより、変性ポリビニルアルコール樹脂「PVOH-1」を得た。得られた「PVOH-1」の評価結果を表1に示す。
(合成例2)
撹拌機、還流管および添加口を備えた反応器に、メタクリル酸476.3質量部、酢酸62.4質量部、イオン交換水28.4質量部、p-メトキシフェノール1.3質量部、パラトルエンスルホン酸一水和物9.1質量部を順次仕込み、室温で撹拌しながら市販のポリビニルアルコール樹脂(粘度平均重合度300、けん化度82モル%)100質量部を添加して、撹拌しながら65℃まで昇温し、スラリー状態で2.8時間反応させた。その後、室温まで冷却し、内容物をろ過して変性ポリビニルアルコール樹脂を回収し、大量のメタノールで洗浄した後、40℃にて1.3Paで20時間乾燥することにより、変性ポリビニルアルコール樹脂「PVOH-2」を得た。得られた「PVOH-2」の評価結果を表1に示す。
(合成例3)
撹拌機、還流管および添加口を備えた反応器に、4-ペンテン酸510.3質量部、イオン交換水56.7質量部、p-メトキシフェノール1.3質量部、パラトルエンスルホン酸一水和物4.2質量部を順次仕込み、室温で撹拌しながら市販のポリビニルアルコール樹脂(粘度平均重合度1700、けん化度98.5モル%)100質量部を添加して、撹拌しながら60℃まで昇温し、スラリー状態で3時間反応させた。その後、室温まで冷却し、内容物をろ過して変性ポリビニルアルコール樹脂を回収し、大量のメタノールで洗浄した後、40℃にて1.3Paで20時間乾燥することにより、変性ポリビニルアルコール樹脂「PVOH-3」を得た。得られた「PVOH-3」の評価結果を表1に示す。
(合成例4)
撹拌機、還流管および添加口を備えた反応器に、メタクリル酸454.2質量部、酢酸5.7質量部、イオン交換水56.7質量部、p-メトキシフェノール1.3質量部、パラトルエンスルホン酸一水和物4.2質量部を順次仕込み、室温で撹拌しながら市販のポリビニルアルコール樹脂(粘度平均重合度1700、けん化度98.5モル%)100質量部を添加して、撹拌しながら90℃まで昇温し、スラリー状態で3時間反応させた。その後、室温まで冷却し、内容物をろ過して変性ポリビニルアルコール樹脂を回収し、大量のメタノールで洗浄した後、40℃にて1.3Paで20時間乾燥することにより、変性ポリビニルアルコール樹脂「PVOH-4」を得た。得られた「PVOH-4」の評価結果を表1に示す。
(合成例5)
撹拌機、還流管および添加口を備えた反応器に、メタクリル酸454.2質量部、酢酸5.7質量部、イオン交換水56.7質量部、p-メトキシフェノール1.3質量部、パラトルエンスルホン酸一水和物4.2質量部を順次仕込み、室温で撹拌しながら市販のポリビニルアルコール樹脂(粘度平均重合度2400、けん化度98.5モル%)100質量部を添加して、撹拌しながら90℃まで昇温し、スラリー状態で10時間反応させた。その後、室温まで冷却し、内容物をろ過して変性ポリビニルアルコール樹脂を回収し、大量のメタノールで洗浄した後、40℃にて1.3Paで20時間乾燥することにより、変性ポリビニルアルコール樹脂「PVOH-5」を得た。得られた「PVOH-5]の評価結果を表1に示す。
(合成例6)
撹拌機、還流管および添加口を備えた反応器に、メタクリル酸499.0質量部、酢酸39,7質量部、イオン交換水28.4質量部、p-メトキシフェノール1.3質量部、パラトルエンスルホン酸一水和物3.4質量部を順次仕込み、室温で撹拌しながら市販のポリビニルアルコール樹脂(粘度平均重合度2400、けん化度88モル%)100質量部を添加して、撹拌しながら75℃まで昇温し、スラリー状態で2.5時間反応させた。その後、室温まで冷却し、内容物をろ過して変性ポリビニルアルコール樹脂を回収し、大量のメタノールで洗浄した後、40℃にて1.3Paで20時間乾燥することにより、変性ポリビニルアルコール樹脂「PVOH-6」を得た。得られた「PVOH-6]の評価結果を表1に示す。
(合成例7)
撹拌機、還流管および添加口を備えた反応器に、メタクリル酸499.0質量部、酢酸39,7質量部、イオン交換水28.4質量部、p-メトキシフェノール1.3質量部、パラトルエンスルホン酸一水和物3.4質量部を順次仕込み、室温で撹拌しながら市販のポリビニルアルコール樹脂(粘度平均重合度1700、けん化度88モル%)100質量部を添加して、撹拌しながら75℃まで昇温し、スラリー状態で5時間反応させた。その後、室温まで冷却し、内容物をろ過して変性ポリビニルアルコール樹脂を回収し、大量のメタノールで洗浄した後、40℃にて1.3Paで20時間乾燥することにより、変性ポリビニルアルコール樹脂「PVOH-7」を得た。得られた「PVOH-6]の評価結果を表1に示す。
(合成例8)
撹拌機、還流管および添加口を備えた反応器に、メタクリル酸454.2質量部、酢酸5.7質量部、イオン交換水56.7質量部、p-メトキシフェノール1.3質量部、パラトルエンスルホン酸一水和物4.2質量部を順次仕込み、室温で撹拌しながら市販のポリビニルアルコール樹脂(粘度平均重合度500、けん化度98.5モル%)100質量部を添加して、撹拌しながら90℃まで昇温し、スラリー状態で5時間反応させた。その後、室温まで冷却し、内容物をろ過して変性ポリビニルアルコール樹脂を回収し、大量のメタノールで洗浄した後、40℃にて1.3Paで20時間乾燥することにより、変性ポリビニルアルコール樹脂「PVOH-8」を得た。得られた「PVOH-8」の評価結果を表1に示す。
(合成例9)
撹拌機、還流管および添加口を備えた反応器に、市販のポリビニルアルコール樹脂(粘度平均重合度500、けん化度98.5モル%)30質量部、イオン交換水100質量部を加え、90℃で加熱撹拌し完溶させた。30℃まで冷却した後、20%塩酸水溶液15質量部を添加し、ここにベンズアルデヒド7質量部を少しずつ滴下した。1時間かけて全量滴下した後、60℃まで昇温し、60℃で2時間反応させた。反応の進行とともに系が白濁、析出物を生じた。反応後、室温まで冷却した後、水酸化ナトリウム水溶液を所定量添加して塩酸を中和し、生成した樹脂を単離し、大量の冷水で洗浄した後、40℃にて1.3Paで20時間乾燥することにより、ベンズアルデヒドで変性されたポリビニルアセタール樹脂「PVOH-C1」を得た。「PVOH-C1」をH-NMRで分析した結果、アセタール化度は9モル%であった。得られた「PVOH-C1」の評価結果を表1に示す。
(合成例10)
特許第6041717号公報、実施例1に記載の方法に従い、オキシアルキレン基およびアセトアセチル基を側鎖に有するポリビニルアルコール樹脂「PVOH-C2」を得た。アセトアセチル基の含有量は5.0モル%、オキシアルキレン基の含有量は2.0モル%であった。得られた「PVOH-C2」の評価結果を表1に示す。
Figure 2023005857000009
(実施例1~12および比較例2)
(コーティング液の調製)
合成例1~10で得られた各PVOHを水に添加し、95℃で2時間加熱撹拌して濃度10%の水溶液を得た。得られた水溶液に、以下の材料を添加し、表2に示す組成になるよう混合して、コーティング液を調製した。コロイダルシリカを配合した組成において、PVOH水溶液の調製時に水が不足した場合は、コロイダルシリカの分散液にPVOHおよび水を加え、これを加熱することによりPVOHを溶解させた。光重合開始剤については、いずれの組成においても使用したPVOH100質量部に対して1質量部になるように添加した。各コーティング液についてのポットライフの評価結果を表2に示す。
例えば実施例1においては、PVOH-1の濃度10%の水溶液1000質量部に対して、イオン交換水50質量部、PEG-DMAを10質量部、光重合開始剤を1質量部添加した。
(添加した材料)
光重合開始剤:2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン
親水性モノマー:ポリエチレングリコールジメタクリレート(n=14)(以下、PEG-DMAと記載する、東京化成工業株式会社製)、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート(n=9)(以下、PEG-MAAと記載する、東京化成工業株式会社製)、アクリル酸3-スルホプロピルカリウム(以下、SPA-Kと記載する、東京化成工業株式会社製)、株式会社ADEKA製反応性界面活性剤「SR-10」および「SR-20」(エーテルサルフェート型アンモニウム塩)、
コロイダルシリカ:日産化学工業株式会社製「スノーテックスST-OS」(シリカ含有率20質量%の水分散液)、「スノーテックスST-OXS」(シリカ含有率10質量%の水分散液)
アルコキシシラン:テトラエトキシシラン(以下TEOSと記載する、信越化学工業株式会社製「KBE-04」)
(塗膜の形成)
コーティング液がTEOSを含む場合、TEOSに対し1質量%となるように69%硝酸を加え、室温で均一になるまで撹拌した。コーティング液を、洗浄したフロート板ガラス(ソーダライムシリケートガラス、厚さ3.1mm、サイズ100×100mm)上に、塗工液をバーコートした。次いで、紫外線を3000mJ/cmの強度で照射して架橋処理した後、80℃で熱風乾燥し、さらに120℃で加熱処理を実施することで、コーティング層が形成された積層部材を得た。評価結果を表2に示す。
(比較例1)
コーティング層を設けていないフロート板ガラスを評価した。評価結果を表2に示す。なお、比較例1はコーティング層を有さないため、水接触角、防曇性能、防汚性能、および鉛筆硬度の各評価をガラス面に対して行った。
(比較例3)
PVOH-C1を用いてコーティング層を形成し、界面活性剤(日油株式会社製「ラピゾールA-30」を表面に塗布した後、室温で風乾させたこと以外は、実施例1と同様にしてコーティング層が形成された積層部材を得た。評価結果を表2に示す。
(比較例3)
PVOH-C2の10%水溶液100質量部に、グリオキシル酸ナトリウムを0.5質量部添加してコーティング液を調製した。このコーティング液のポットライフの評価結果を表2に示す。このコーティング液を用いたこと以外は実施例1と同様にしてコーティング層が形成された積層部材を得た。評価結果を表2に示す。
Figure 2023005857000010
表2に示すように、実施例1~12で作製されたコーティング液はいずれも優れたポットライフを示した。これらのコーティング液を用いて作製された積層部材はいずれも、低い水接触角を示し、流水に暴露した後も高い親水性を維持するコーティング層を有していた。また、これらのコーティング層は、防曇性能、防汚性能および鉛筆硬度のいずれについても優れたものであった。一方、比較例1に示す通り、コーティング層を設けていない部材は水接触角が高い上に、水蒸気に暴露されると直ちに曇りを生じた。比較例2のように、親水性モノマー成分を有さない場合では、初期防曇性能、防汚性能および鉛筆硬度については優れていたものの、親水性が低いものであった。比較例3のように、界面活性剤を表面に塗布しただけのものは、初期の水接触角は低く、防曇性能も良好であった。しかし、流水に暴露した後に著しく親水性が低下した。比較例4のように、アセトアセチル基およびオキシアルキレン基を有するポリビニルアルコール樹脂と架橋剤とを含有する組成物は、加熱時にゲル化し、極めてポットライフに劣るものであった。
本発明によれば、優れた防曇性および/または防汚性を有するコーティング膜を備えた積層部材を提供することができる。当該積層材料は、例えば車両用ガラスとして利用できる。本発明は、例えば樹脂成形分野、自動車・鉄道・航空機・船舶関連分野、メディカル製品分野、農業・園芸分野、電気分野、建築分野等において有用である。

Claims (20)

  1. 側鎖にエチレン性不飽和基を有する変性ポリビニルアルコール樹脂と、同一分子内に重合反応性基および親水性基を有する親水性モノマーと、水性媒体とを含有する、コーティング液。
  2. 前記親水性モノマーが、同一分子内に、ポリオキシアルキレン基およびイオン性基から選択される少なくとも1種の親水性基を有する、請求項1に記載のコーティング液。
  3. 前記親水性モノマーが、同一分子内に、前記親水性基としてポリオキシアルキレン基およびイオン性基の両方を有する、請求項1または2に記載のコーティング液。
  4. 前記親水性モノマーが、前記変性ポリビニルアルコール樹脂100質量部に対して0.1~100質量部の割合で含有されている、請求項1~3のいずれかに記載のコーティング液。
  5. さらに、前記変性ポリビニルアルコール樹脂100質量部に対してSiO換算で1~250質量部のコロイダルシリカを含有する、請求項1~4のいずれかに記載のコーティング液。
  6. さらに、前記変性ポリビニルアルコール樹脂100質量部に対して1~100質量部のアルコキシシランを含有する、請求項1~5のいずれかに記載のコーティング液。
  7. 前記エチレン性不飽和基が以下の式(I)で表される部分構造を含む、請求項1~6のいずれかに記載のコーティング液。
    Figure 2023005857000011
    (式(I)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子、メチル基、カルボキシル基、またはカルボキシメチル基であり、Xは酸素原子または-N(R)-であり、Rは水素原子または炭素数1~3の炭化水素基であり、*は結合手である)
  8. 前記変性ポリビニルアルコール樹脂が、以下の式(II)または式(III)で表される構造単位を含む、請求項1~7のいずれかに記載のコーティング液。
    Figure 2023005857000012
    (式(II)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子、メチル基、カルボキシル基、またはカルボキシメチル基であり、Xは酸素原子または-N(R)-であり、Rは水素原子または炭素数1~3の炭化水素基であり、Yは置換基を有していてもよい炭素数1~10の2価の炭化水素基を表し、*は結合手である)
    Figure 2023005857000013
    (式(III)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子、メチル基、カルボキシル基、またはカルボキシメチル基であり、*は結合手である)
  9. 前記変性ポリビニルアルコール樹脂が、式(I)で表される前記部分構造を0.05~8モル%の割合で含有する、請求項7または8に記載のコーティング液。
  10. 前記変性ポリビニルアルコール樹脂が4,400~220,000の数平均分子量を有する、請求項1~9のいずれかに記載のコーティング液。
  11. 前記コロイダルシリカの含有量が、前記変性ポリビニルアルコール樹脂100質量部に対してSiO換算で30~180質量部である、請求項5に記載のコーティング液。
  12. 前記アルコキシシランの含有量が、前記変性ポリビニルアルコール樹脂100質量部に対して7~45質量部である、請求項6に記載のコーティング液。
  13. 前記水性媒体が、水または40質量%以下のアルコール濃度を有するアルコール水溶液である、請求項1~12のいずれかに記載のコーティング液。
  14. 請求項1~13のいずれかに記載のコーティング液の硬化物を含有する、コーティング膜。
  15. 膜表面の水接触角が、40℃の流水に24時間暴露させる前後の両方において50°未満に保持されている、請求項14に記載のコーティング膜。
  16. 請求項14または15に記載のコーティング膜と基材とを備える、積層部材。
  17. 前記コーティング膜が最外層に配置されている、請求項16に記載の積層部材。
  18. 前記コーティング膜が前記基材と密着して配置されている、請求項16または17に記載の積層部材。
  19. 前記基材がガラス製成形体である、請求項16~18のいずれかに記載の積層部材。
  20. 前記基材が透明な成形体である、請求項16~19のいずれかに記載の積層部材。
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