JP2022550825A - 尿サンプル中において結核の診断を行なうための方法 - Google Patents

尿サンプル中において結核の診断を行なうための方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、結核(TB)の診断および処置方法を提供する。当該方法は、TBが疑われる対象からの尿サンプルを、少なくとも2種のヒト由来バイオマーカー(そのうちの一方はSAA1であり、もう一方はRETNまたはRBP4である)が存在するか否かについて試験する工程を含む。また、尿サンプルを、LILRB4、IL18BP、SERPINA3、CD59、IGLV3.21、IGKV1.17、SAA2、CRP、TSP4、AXA81、A8MUE1、O53764_MYCTU(Rv0567)、I6Y0W5_MYCTU(fadE19、Rv2500c)、Q79FP1_MYCTU(PE_PGRS28、Rv1452c)、HTPG_MYCTU(htpG、Rv2299c)、RPOB_MYCTU(rpoB、Rv0667)、EFTU_MYCTU(tuf、Rv0685)、ACR_MYCTU(hspX、Rv2031c)、CH602_MYCTU(groEL2、Rv0440)、CLPP1_MYCTU(clpP1、Rv2461c)、および/またはCH10_MYCTU(10kDaシャペロニン、Rv3418c)から選択される1種以上のさらなるバイオマーカーが存在するか否かについても試験してよい。

Description

関連出願の相互参照
本願は、南アフリカ仮特許出願第2019/06422号に基づく優先権を主張するものであり、これを引用により本明細書に援用する。
発明の分野
本発明は、対象における活動性結核疾患(TB)の診断を行なうための方法であって、対象からの尿サンプル中における特定のバイオマーカーを検出する工程を含む方法に関する。
発明の背景
結核(TB)についての画期的かつ正確な試験が緊急的に必要とされている、というのは、結核が、人類にとって歴史上最大の死因であり、かつ、南アフリカにおいて現時点で最も一般的な死因であるためである。推定によると、TBは当該国の年間GDPに2~3%(1年あたり約2千億ランド)の打撃を与えている。
より良好なTB診断の開発にあたって未だ対処されていない重大な課題は、臨床的に有用なバイオマーカーがないことと、ベッドサイドおよびコミュニティの両方において痰に依存しない単純かつ手頃なTB検出プラットフォームがないことである。この問題は、患者の50%かそれ未満(HIVに同時感染していて、痰を産生できないまたは痰に含有される細菌が非常に少ない(菌50個未満/ml))にとって、特に緊急的である。多くのTB蔓延国において使用されているPCRに基づく現行最先端のTB診断試験(Gene Xpert Ultra;Cepheid)ではこの問題に対処できず、既存の尿リポアラビノマンナン(LAM)アッセイ(Alere Determine(商標) TB LAM Ag)は、感度が低く、TBおよびHIV同時感染患者の50%未満しか検出できない。効果的な診断がないことと相まって、世界のTB例のほぼ40%が診断されず、報告もされていない。世界的には1年あたりのTB例が400万件を超え、TB発病率が最も高い国である南アフリカにおいては、1年あたりの新規TB例が~150,000~200,000件である(WHO 2017 Global TB Report)。
発明の概要
本発明の第1の実施形態によれば、結核疾患(TB)の診断を行なうための方法であって、TBが疑われる対象からの尿サンプルを、SAA1とRETNおよびRBP4のいずれかまたは両方とが存在するか否かについて試験する工程を含む方法が提供される。
特に、尿サンプルを、SAA1およびRETN、SAA1およびRBP4、またはSAA1、RETN、およびRBP4が存在するか否かについて試験してもよい。
また、尿サンプルを、LILRB4、IL18BP、SERPINA3、CD59、IGLV3.21、IGKV1.17、O53764_MYCTU(Rv0567)、I6Y0W5_MYCTU(fadE19、Rv2500c)、Q79FP1_MYCTU(PE_PGRS28、Rv1452c)、HTPG_MYCTU(htpG、Rv2299c)、RPOB_MYCTU(rpoB、Rv0667)、EFTU_MYCTU(tuf、Rv0685)、ACR_MYCTU(hspX、Rv2031c)、CH602_MYCTU(groEL2、Rv0440)、CLPP1_MYCTU(clpP1、Rv2461c)、および10kDaシャペロニン(Rv3418c)からなる群より選択される1種以上のさらなるバイオマーカーが存在するか否かについても試験してよい。
特に、尿サンプルを、IL18BP、LILRB4、またはIL18BPとLILRB4との両方が存在するか否かについても試験してよい。
尿サンプルを、さらに、SERPINA3、CD59、RBP4、IGLV3.21、およびIGKV1.17からなる群より選択される1~5種のさらなるバイオマーカーが存在するか否かについても試験してよい。特に、尿サンプルを、SERPINA3、CD59、またはSERPINA3とCD59との両方が存在するか否かについても試験してよい。
尿サンプルを、さらに、HtpG、PE_PGRS28、EFTU_MYCTU、および10kDaシャペロニンからなる群より選択される1~4種のさらなるバイオマーカーが存在するか否かについても試験してよい。
また、尿サンプルを、SAA2、CRP、TSP4、A8MUE1、AXA81、およびRETNからなる群より選択される1種以上(1~5種など)のその他のバイオマーカーが存在するか否かについても試験してよい。たとえば、尿サンプルを、少なくともSAA1、RBP4、およびSAA2が存在するか否かについて;少なくともSAA1、RBP4、SAA2、およびTSP4が存在するか否かについて;少なくともSAA1、RBP4、およびCRPが存在するか否かについて;または、SAA1、RBP4、SAA2、CRP、TSP4、A8MUE1、およびRETNが存在するか否かについて試験してもよい。
より具体的には、尿サンプルを、さらに、以下のバイオマーカーが存在するか否かについても試験してよい:
a)SAA1、RETN、およびLILRB4;
b)SAA1、RETN、およびIL18BP;
c)SAA1、RETN、IL18BP、およびLILRB4;
d)SAA1、RETN、IL18BP、およびIGKV1.17;
e)SAA1、RETN、IL18BP、LILRB4、およびSERPINA3;
f)SAA1、RETN、IL18BP、LILRB4、SERPINA3、およびCD59;
g)SAA1、RETN、LILRB4、IL18BP、SERPINA3、ならびに、CD59、RBP4、IGLV3.21、CADM1、およびCFHR2のうち任意の2種;
h)SAA1、RBP4、HtpG、およびPE_PGRS28;または
i)SAA1、RBP4、HtpG、PE_PGRS28、EFTU_MYCTU、および10kDaシャペロニン。
本発明の第2の実施形態によれば、結核疾患(TB)を有する対象を診断および処置する方法であって、
上述される方法を実施する工程と、
サンプル中におけるバイオマーカーの検出に基づいて対象がTBを有するか否かを判断する工程と、
対象にとって必要である場合に対象に有効量のTB処置を投与する工程とを含む方法が提供される。
本発明の第3の実施形態によれば、対象における結核疾患(TB)の診断を行なうための、コンピュータにより実施される方法であって、コンピュータは、
対象からの尿サンプル中におけるSAA1とRETNおよびRBP4のいずれかまたは両方とのレベルについての値を含む、入力された対象のデータを受信する工程と、
任意に、尿サンプル中における1種以上のその他のバイオマーカーのレベルについての値を含む、入力された対象のデータを受信する工程であって、その他のバイオマーカーは、LILRB4、IL18BP、SERPINA3、CD59、RBP4、IGLV3.21、IGKV1.17、O53764_MYCTU(Rv0567)、I6Y0W5_MYCTU(fadE19、Rv2500c)、Q79FP1_MYCTU(PE_PGRS28、Rv1452c)、HTPG_MYCTU(htpG、Rv2299c)、RPOB_MYCTU(rpoB、Rv0667)、EFTU_MYCTU(tuf、Rv0685)、ACR_MYCTU(hspX、Rv2031c)、CH602_MYCTU(groEL2、Rv0440)、CLPP1_MYCTU(clpP1、Rv2461c)、SAA2、CRP、TSP4、A8MUE1、およびCH10_MYCTU(10kDaシャペロニン、Rv3418c)からなる群より選択される、工程と、
これらの値を、該当するバイオマーカーについての所定値と比較する工程と、
対象がTBを有するか否かを判断する工程と、
対象の診断に関する情報を表示する工程とを含む工程群を実施する、方法が提供される。
本発明の第4の実施形態によれば、対象における結核疾患(TB)の診断を行なうための、コンピュータにより実施される方法であって、コンピュータは、
対象からの尿サンプル中におけるSAA1およびRBP4のレベルについての値を含む、入力された対象のデータを受信する工程と、
任意に、サンプル中における1種以上のその他のバイオマーカーのレベルについての値を含む、入力された対象のデータを受信する工程であって、その他のバイオマーカーは、HtpG、PE_PGRS28、EFTU_MYCTU、および10kDaシャペロニンからなる群より選択される、工程と、
これらの値を、該当するバイオマーカーについての所定値と比較する工程と、
対象がTBを有するか否かを判断する工程と、
対象の診断に関する情報を表示する工程とを含む工程群を実施する、方法が提供される。
本発明の第5の実施形態によれば、上述される方法に従って、対象からの血液サンプル中において結核の診断を行なうためのキットであって、
患者からサンプルを受け取る手段と、
少なくともSAA1とRETNおよびRBP4のいずれかまたは両方とに結合する捕獲剤と、
捕獲剤が上記バイオマーカーに結合した際にそれを示す少なくとも1つの指標とを含むキットが提供される。
当該キットは、さらに、
尿サンプル採取デバイス、
バイオマーカーに対する抗体をつけたメンブレンおよび/もしくはテストストリップ、
LILRB4、IL18BP、SERPINA3、CD59、RBP4、IGLV3.21、IGKV1.17、O53764_MYCTU(Rv0567)、I6Y0W5_MYCTU(fadE19、Rv2500c)、Q79FP1_MYCTU(PE_PGRS28、Rv1452c)、HTPG_MYCTU(htpG、Rv2299c)、RPOB_MYCTU(rpoB、Rv0667)、EFTU_MYCTU(tuf、Rv0685)、ACR_MYCTU(hspX、Rv2031c)、CH602_MYCTU(groEL2、Rv0440)、CLPP1_MYCTU(clpP1、Rv2461c)、もしくはCH10_MYCTU(10kDaシャペロニン、Rv3418c)、SAA2、CRP、TSP4、A8MUE1、もしくはこれらの任意の組み合わせに結合する捕獲剤、
上記診断方法を実施するための説明、ならびに/または
上記診断を行なうためのソフトウェアを含んでもよい。
本発明の第6の実施形態によれば、TB診断方法において使用するためのキットまたは検出剤の製造における、SAA1とRETNおよびRBP4のいずれかまたは両方とのための捕獲剤の使用が提供される。
TB陽性個体およびTB陰性個体の間で有意に差次的に発現(FDR≦0.05)している尿中のヒト由来タンパク質の、未加工のlog2変換iBAQデータの使用によるヒートマップ。 TB陽性個体とTB陰性個体との区別において最も影響の大きいタンパク質の順で並べた、活動性結核尿中のヒト由来タンパク質(Giniインデックスにおける平均低下が大きいほど影響が大きいことを示す)。 TB陽性個体およびTB陰性個体の間で有意に差次的に発現(FDR≦0.05)している尿中のマイコバクテリウム・ツベルクローシス由来タンパク質の、未加工のlog2変換iBAQデータの使用によるヒートマップ。 TB陽性個体とTB陰性個体との区別において最も影響の大きいタンパク質の順で並べた、活動性結核尿中のマイコバクテリウム・ツベルクローシス由来タンパク質(Giniインデックスにおける平均低下が大きいほど影響が大きいことを示す)。 TB陽性個体とTB陰性個体との区別におけるヒトおよびマイコバクテリウムのバイオマーカーの各々についての曲線下面積データを示すヒストグラム。 TB陽性(n=60)個体およびTB陰性(n=58)個体における(A)SAA1および(b)RPB4の相対的な存在量レベルを示す箱ひげ図。 TB陽性個体およびTB陰性個体の間で有意に差次的に発現している尿中のヒト由来タンパク質の、iBAQデータの使用によるヒートマップ。 TB陽性個体とTB陰性個体との区別において最も影響の大きいタンパク質の順で並べた、活動性結核尿中のヒト由来タンパク質(特徴を除去した場合の低下が大きいほど予測力が大きいことを示す)。 バイオマーカーの分布および頻度を示す箱ひげ図。
発明の詳細な説明
対象からの尿サンプル中において結核(TB)の診断を行なう(かつ、任意にこれの処置をも行なう)ための方法と、そのための、コンピュータにより実施される方法とが、本明細書中に記載される。好ましくは、当該方法は、潜在性M.ツベルクローシス感染(LTBI)または初発TBの診断を行なうためではなく、活動性TBの診断(TBの兆候および症状ならびに/または一貫した画像エビデンスと、微生物学的な追認(培養での陽性、および/または増幅DNAの存在))を行なうためのものである。当該方法は、HIV同時感染ステータスとは無関係である。
当該方法は、TBが疑われる個体からの尿サンプルを、少なくとも2種のヒト由来バイオマーカー(そのうちの一方はSAA1であり、もう一方はRETNまたはRBP4のいずれかである)が存在するか否かについて試験することを含む。一実施形態において、当該方法は、尿サンプルを少なくともSAA1およびRETNについて試験することを含む。別の一実施形態において、当該方法は、尿サンプルを少なくともSAA1およびRBP4について試験することを含む。さらなる一実施形態において、当該方法は、尿サンプルを少なくともSAA1、RETN、およびRBP4について試験することを含む。当該方法は、当該個体がTBを有するか否かについて診断することをさらに含む。
また、任意に、サンプルを、LILRB4、IL18BP、SERPINA3、CD59、IGLV3.21、IGKV1.17、SAA2、CRP、TSP4、AXA81、およびA8MUE1などのその他のヒト由来バイオマーカー、またはこれらの任意の組み合わせが存在するか否かについても試験してよい。特に、尿サンプルを、IL18BP、LILRB4、もしくはIL18BPおよびLILRB4の両方が存在するか否かについても試験してよい、ならびに/または、SERPINA3、CD59、もしくはSERPINA3およびCD59の両方が存在するか否かについても試験してよい、ならびに/または、SAA2、TSP4、CRP、および/もしくはA8MUE1が存在するか否かについても試験してよい。
また、サンプルを、表1中に列記されるものなどの、本出願人が尿中において特定した1種以上のマイコバクテリウム由来バイオマーカーが存在するか否かについても試験してよい。
Figure 2022550825000002
より具体的には、サンプルを、以下のM.ツベルクローシス由来タンパク質のうちの1種以上が存在するか否かについて試験してもよい:O53764_MYCTU(Rv0567)、I6Y0W5_MYCTU(fadE19、Rv2500c)、Q79FP1_MYCTU(PE_PGRS28、Rv1452c)、HTPG_MYCTU(htpG、Rv2299c)、RPOB_MYCTU(rpoB、Rv0667)、EFTU_MYCTU(tuf、Rv0685)、ACR_MYCTU(hspX、Rv2031c)、CH602_MYCTU(groEL2、Rv0440)、CLPP1_MYCTU(clpP1、Rv2461c)、および/またはCH10_MYCTU(10kDaシャペロニン、Rv3418c)。さらにより具体的には、サンプルを、HtpG、PE_PGRS28、EFTU_MYCTU、および/または10kDaシャペロニンが存在するか否かについて試験してもよい。たとえば、試験されるマイコバクテリウム由来タンパク質は、HtpGおよびPE_PGRS28;HtpG、PE_PGRS28、および10kDaシャペロニン;HtpG、PE_PGRS28、およびEFTU_MYCTU;PE_PGRS28、またはEFTU_MYCTUおよび10kDaシャペロニンであってもよい。
以下のバイオマーカーの組が特に有用であることを確認した:
a)SAA1およびRETN;
b)SAA1、RETN、およびLILRB4;
c)SAA1、RETN、およびIL18BP;
d)SAA1、RETN、IL18BP、およびLILRB4;
e)SAA1、RETN、IL18BP、およびIGKV1.17;
f)SAA1、RETN、IL18BP、LILRB4、およびSERPINA3;
g)SAA1、RETN、IL18BP、LILRB4、SERPINA3、およびCD59;
h)SAA1、RETN、LILRB4、IL18BP、SERPINA3、ならびに、CD59、RBP4、IGLV3.21、CADM1、およびCFHR2のうち任意の2種;
i)SAA1およびRBP4;
j)SAA1、RBP4、およびSAA2;
k)SAA1、RBP4、およびCRP;
l)SAA1、RBP4、SAA2、TSP4;
m)SAA1、RBP4、SAA2、TSP4、およびCRP、A8MUE1、RETNのうち1種以上;
n)SAA1、RBP4、SAA2、TSP4、およびCRP;
o)SAA1、RBP4、SAA2、TSP4、およびA8MUE1;
p)SAA1、RBP4、SAA2、TSP4、およびRETN;
q)SAA1、RBP4、SAA2、CRP;
r)SAA1、RBP4、SAA2、CRP、およびAXA81;
s)SAA1、RBP4、SAA2、CRP、およびTSP4;
t)SAA1、RBP4、SAA2、CRP、AXA81、およびTSP4;
u)SAA1、RBP4、SAA2、CRP、AXA81、TSP4、およびA8MUE1;
v)SAA1、RBP4、HtpG、およびPE_PGRS28;
w)SAA1、RBP4、HtpG、PE_PGRS28、およびEFTU_MYCTU;
x)SAA1、RBP4、HtpG、PE_PGRS28、および10kDaシャペロニン;
y)SAA1、RBP4、HtpG、PE_PGRS28、EFTU_MYCTU、および10kDaシャペロニン。
当該方法は、とりわけ、結核性胸膜炎、結核性髄膜炎、尿路性器結核、粟粒結核、ならびに、骨および関節における結核などの、肺TBおよび肺外TBの両方の診断を行なうために使用できる。
TB処置は、活動性TBを有することが確認された対象に投与できる。
本明細書中において使用される場合、「備える」、「備えている」、「含む」、「含んでいる」、「含有する」、「含有している」などの用語、およびこれらの任意の変形体は、非排他的な包含をカバーすることを意図しており、具体的には言及されていないその他の要素を排除しない。
用語「マーカー」および「バイオマーカー」は区別なく使用されて、個体における正常もしくは異常なプロセスまたは個体における疾患もしくはその他の状態を示す(またはその徴候である)標的分子を指す。より具体的には、「マーカー」または「バイオマーカー」は、特定の生理学的状態またはプロセス(正常または異常のいずれも)の存在に関連する解剖学的、生理学的、生化学的、または分子的パラメータである。バイオマーカーは、小分子、ペプチド、タンパク質、および核酸を含み得る。
「バイオマーカー値」、「値」、「バイオマーカーレベル」、および「レベル」は区別なく使用されて、生体サンプル中のバイオマーカーを検出するための任意の分析方法を使用して得られる測定値であって、かつ、当該生体サンプル中の当該バイオマーカーの(またはこれについての、またはこれに対応する)存在、非存在、絶対的な量もしくは濃度、相対的な量もしくは濃度、力価、レベル、発現レベル、または測定レベル比などを示すものを指す。この「値」または「レベル」の厳密な性質は、当該バイオマーカーの検出に使用した具体的な分析方法の具体的な設計および構成要素に依存する。
バイオマーカーは、一般的には、個体における正常なプロセスを示すまたは疾患もしくはその他の状態の欠如を示す(またはその徴候である)当該バイオマーカーの発現レベルまたは値との比較において、過剰発現している、過少発現している、または差次的発現している、というように記載される。したがって、あるバイオマーカーの「過剰発現」、「過少発現」、および「差次的発現」は、当該バイオマーカーの「正常」または「コントロール」発現レベルからの変動ともいえる。
一実施形態において、バイオマーカーのサブセットまたは組(panel)とするのに有用なバイオマーカーの数は、その特定のバイオマーカー値の組み合わせがもつ感度および特異度の値に基づく。「感度」および「特異度」という用語は、本明細書中において、生体サンプル中で検出されるバイオマーカー値に基づいて個体のTB診断を正確に分類する能力に関して使用される。「感度」は、陽性TB診断(すなわち疾患のエビデンス(EVD))を有する個体の正確な分類に関するバイオマーカーの性能を示す。「特異度」は、陰性TB診断(NED)を有する個体の正確な分類に関するバイオマーカーの性能を示す。たとえば、コントロールサンプルとTB診断サンプルとの1セットを試験するのに使用される一組のマーカーについて、特異度85%および感度90%であるということは、コントロールサンプルのうち85%が当該一組によってNEDサンプルとして正確に分類され、陽性サンプルのうち90%が当該一組によってEVDサンプルとして正確に分類されたことを示す。
以下にさらに詳細に記載される通り、TB陽性/HIV陰性群、TB陽性/HIV陽性群、TB陰性/HIV陽性群、およびTB陰性/HIV陰性群に臨床的に階層化された120人の尿プロテオームを調べるために、非標識プロテオミクスアプローチを採用した。当該120人に共通する尿プロテオームは、マイコバクテリウム由来の26種を含む1870種のタンパク質を含んでいた。予期されたとおり、尿中のタンパク質のセットは個体間で大幅に異なっているようである。
活動性TB患者の尿中で差次的に発現していてTB診断を行なうのに好適なマイコバクテリウム・ツベルクローシス特異的タンパク質とヒトタンパク質とのセットを特定した。これらのセットは、表2の遺伝子識別子、タンパク質、および/またはペプチド、ならびに、M.ツベルクローシス桿菌またはヒトのいずれかにおけるそれらの下流機能を包含する。とりわけ、これらのバイオマーカー組の特定を、HIV陰性個体およびHIV陽性個体の両方の尿中にて行なった。本出願人の知る限りでは、これらのバイオマーカー組は、TBが疑われる患者の尿中では報告されていない。また、これらの組を構成する個々のタンパク質についての知識から、または、TB患者の他の体液中に見られるタンパク質についての知識からは、到達できないと考える、というのは、多くのタンパク質は尿中に現れる前に著しく分解されるためである。
Figure 2022550825000003
表2のバイオマーカーの大集団から、TB診断のために、2種のヒト由来タンパク質からなる中核的なセットを特定した(SAA1およびRETN、SAA1およびRBP4)。任意に、表2中に列記されるものなどの、その他のヒト由来タンパク質を、これら2種のタンパク質に加えて、バイオシグネチャの順列を創出できる。
また、高い感度および特異度を有する3、4、5、6、および7種の宿主由来タンパク質からなる組も特定した。
これらのタンパク質は、TB陽性個体の尿中においては信頼性をもって検出されるが、TB陰性個体においてはそうではないようである。尿中の宿主由来バイオマーカーシグネチャは、個々の尿サンプル間でのばらつきが大きく、とりわけ、特定した上位のバイオマーカーのうちいくつかが急性期炎症反応タンパク質であるために、信頼できないと考えられるが、しかしながら、このコホートにおいては、これらのタンパク質が尿中に存在するかしないかによってTB陽性/TB陰性がほぼ完全に説明された。総合すると、これらの提案されたバイオマーカーのセットの組み合わせは、その他の炎症性または非TBの呼吸器疾患と区別してTBを診断するための特異度に寄与している可能性がある。
また、表1中の1種以上のマイコバクテリウムタンパク質を加えることによって、尿中に特異的に見いだされるヒト宿主特異的バイオマーカーおよびM.ツベルクローシス特異的バイオマーカーの両方を含む組み合わせ型の多次元バイオシグネチャを創出することもできる。マイコバクテリウム・ツベルクローシス由来およびヒト由来のタンパク質および/またはペプチドであるバイオマーカーを選択することによって、活動性結核の包含(陽性予測試験値(PPV)>0.8)および除外(陰性予測試験値(NPV)>0.8)の両方が可能となる。
一実施形態において、試験したバイオマーカーのうち2、3、4種またはそれ以上が検出された場合に、または、検出されたバイオマーカーのレベルが、TBを有さない対象における同バイオマーカーの典型的なレベルよりも高い場合に、TB陽性と診断できる。
カットオフまたは閾値は、活動性TBを有するまたは有さない対象において典型的に見られるバイオマーカーのレベルに基づいて決めることができ、対象が活動性TBを有しているか否かを判断する際に、当該サンプル中で検出されるバイオマーカーの測定レベルを、当該カットオフレベルと比較することができる。言い換えると、この方法は、活動性TBを有さない対象を基準として、当該組中のバイオマーカーが過少発現しているかまたは過剰発現しているかを検出できる。
一実施形態において、尿サンプルをアッセイすることによって、目的のバイオマーカーの存在を検出し、かつ、各バイオマーカーについてのバイオマーカー値を求める(典型的には、マーカーRFU(相対蛍光単位)として測定する)。バイオマーカーを検出してバイオマーカー値を割り当てたら、当技術分野において周知される様々な方法によって各マーカーをスコア化または分類する。次いで、マーカースコアを合計することにより、当該個体が疾患のエビデンスを有するか否かを反映する合計評価スコアを提供する。
バイオマーカーレベルを比較、スコア化、および/または分類するためのソフトウェアを備えるコンピュータを使用して、対象がTBを有するか否かを診断することができる。
いくつかの実施形態において、捕獲剤を使用してバイオマーカーの各々に特異的に結合させ、捕獲剤とバイオマーカーの各々との結合が生じた際に、指標がそれを示すことができる。捕獲剤は、典型的には抗体であるが、その他の可能な捕獲剤の例は、アフィボディ(affybodies)、アンキリンリピートタンパク質、アルマジロリピートタンパク質、核酸アプタマー、ペプチド、炭化水素配位子、合成配位子、および合成ポリマーを含む。
「抗体」という用語は、任意の抗体産生哺乳類(たとえば、マウス、ラット、ウサギ、およびヒトを含む霊長類)に由来し、目的とするポリペプチド標的に特異的に結合する抗体およびその抗体断片を含む。抗体の例は、ポリクローナル、モノクローナル、および組換え抗体;多重特異性抗体(たとえば、二重特異性抗体);ヒト化抗体;マウス抗体;キメラ、マウス-ヒト、マウス-霊長類、霊長類-ヒトモノクローナル抗体;ならびに、抗イディオタイプ抗体を含み、かつ、任意の完全な分子またはその断片であってよい。抗体断片は、全長抗体に由来またはこれに関連し、好ましくはその抗原結合または可変領域を含む、部分である。
指標は、熱量測定用、電気化学的、発色性、光学性、蛍光性、または放射標識性の指標などであってよい。
一実施形態において、尿サンプルを、固相支持体または担体と接触させることができる。「固体担体」は、本明細書中において、分子が直接または間接的に共有結合または非共有結合により付着できる表面を有する任意の基材を指す。「固体担体」は様々な物理的様式を有し得て、これには、たとえば、メンブレン;チップ(たとえばプロテインチップ);スライド(たとえば、スライドグラスまたはカバースリップ);カラム;たとえばビーズなどの、中空状、固体状、半固体状の、孔または空洞を有する粒子;ゲル;光ファイバー材料を含む繊維;マトリックス;およびサンプル収容部が含まれ得る。サンプル収容部の例は、サンプルウェル、チューブ、毛細管、バイアル、およびサンプルを保持できるその他の任意の容器、溝、またはくぼみを含む。サンプル収容部は、マイクロタイタープレート、スライド、およびマイクロ流体デバイスなどのマルチサンプルプラットフォーム上に含まれ得る。支持体は、天然または合成の材料、有機物または無機物から構成され得る。捕獲試薬を付着させる固体担体の組成は、一般的に、付着方法(たとえば、共有結合)に依存する。収容部のその他の例は、微小滴およびマイクロ流体制御またはバルク油性/水性エマルション(その内部でアッセイおよび関連操作を実施できるもの)を含む。好適な固体担体は、たとえば、プラスチック、樹脂、多糖、シリカまたはシリカに基づく材料、機能化ガラス、変性シリコーン、炭素、金属、無機ガラス、メンブレン、ナイロン、天然繊維(たとえば、シルク、ウール、およびコットンなど)、およびポリマーなどを含む。固体担体を構成する材料は、たとえばカルボキシ、アミノ、またはヒドロキシル基などの反応性基を含み得て、これらが捕獲試薬の付着に使用される。ポリマーの固体担体は、たとえば、ポリスチレン、ポリエチレングリコールテトラフタレート、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリテトラフルオロエチレン、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、天然ゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、(ポリ)テトラフルオロエチレン、(ポリ)フッ化ビニリデン、ポリカーボネート、およびポリメチルペンテンを含み得る。使用できる好適な固体担体粒子は、たとえば、Luminex(登録商標)型のコード化された粒子などのコード化された粒子、磁性粒子、およびガラス粒子を含む。
バイオシグネチャは、光学式、SERS、蛍光性、電気化学的、熱的、比色、またはその他の検出プラットフォームを含み得る好適なイムノアッセイ検出プラットフォーム上において使用できる。特に、ELISA様式および/またはラテラルフロー様式での多重定量のために当該バイオシグネチャのバイオマーカーを表面上に捕獲できる抗体を創出できる。次いで、これらを使用して、TB疾患のためのポイントオブケア診断試験を開発できる。
また、本発明を実施するためのキットも提供できる。
市販されている他の方法とは異なり、本方法では、活動性結核と潜在性結核とを区別でき、このことは、対象のための処置を決定するために重要である。活動性結核は、生体の体液もしくは組織がスメア顕微鏡法もしくは培養によりM.ツベルクローシス陽性であるような、または、活動性TB疾患の臨床的および放射線学的特徴を有する対象における核酸増幅試験によりM.ツベルクローシスを検出可能であるような、疾患状態であり、多くの場合には、体質的な症状がある。潜在性結核感染では、生存できる可能性のあるM.ツベルクローシスがヒト組織中に存在するが、その個体は無症候性であり、活動性疾患の臨床放射線学的特徴を有さない。
以下に、下記の非限定的な例を用いて、本発明がより詳細に記載される。
実施例1:
材料および方法
コホート募集および臨床分類
南アフリカ国の西ケープにある複数のTBクリニックにおいて、患者を募集した。胸部X線、培養/スメア、GeneXpert、およびLAM検査の結果に応じて、患者を4つの臨床群に分類した(TB陽性/HIV陽性、TB陽性/HIV陰性、TB陰性/HIV陽性、およびTB陰性/HIV陰性)。初回通過尿サンプルを途中で採取して、処理するまで-20℃において保管した。最初にサンプルを匿名にし、無作為に12個のバッチに分けて処理した。
タンパク質沈殿
尿サンプルを室温で解凍し、ボルテックスにかけて、沈殿物があればそれを均質化した。4mlのアリコートをガラスバイアル中に移し、メタノールおよびクロロホルムを1:0.75の比率で加えてタンパク質を沈殿させた。4000rpmで2分間遠心分離することによって、沈殿を複数の相に分け、上相を慎重に除去した。残りのタンパク質沈殿を1倍体積のメタノールで洗浄し、4000rpmで2分間遠心分離することによってペレット状に沈殿させた。上清を除去し、ペレットをドラフト中で1時間かけて乾燥させた。次いで、ボルテックスしながら、200μlの変性バッファー(10mMのtris(pH8.0)中の6M尿素、2Mチオ尿素)中にペレットを再懸濁し、次いでサンプルをエッペンドルフチューブに移して、使用するまで-20℃において保管した。
溶液中でのトリプシン消化
改変されたブラッドフォード法(Bio-Rad)を用いて、0.1MのHClを90μl添加して、タンパク質サンプルを定量した。各サンプルの100μgのアリコートを、新しいエッペンドルフチューブ中に移した。サンプルを、1mMのDTT(ジチオトレイトール)で1時間かけて室温で還元し、5.5mMのヨードアセトアミドで20分間かけて室温でアルキル化し、次いで50mMの重炭酸アンモニウムで5倍希釈した。各サンプルにトリプシン(New England Biolabs)を比率50:1で添加して、サンプルを室温で一晩、16時間かけてインキュベートした。0.1%ギ酸(FA)を添加して、トリプシン消化を停止した。
C18 stage tipによる脱塩
トリプシン処理したペプチドを、研究室で作製したC18 stage tipで脱塩した。まず、C18の栓を、溶媒B(60%アセトニトリル(ACN)、0.1% FA)で活性化し、次いで溶媒A(2% ACN、0.1% FA)で平衡とした。各サンプルについて、低速で遠心分離することによってペプチド10μgをC18に結合させ、次いで溶媒Aで3回洗浄した。エッペンドルフチューブ中にガラスのインサートを入れ、このガラスインサートの中に、脱塩後のペプチドを、40μlの溶媒C(80% ACN、0.1% FA)を用いて3回溶出させた。次いで、ペプチドを真空遠心分離機で35℃において1時間乾燥させ、使用するまで-20℃において保管した。
液体クロマトグラフィー質量分析(LCMS)
ペプチドサンプルを溶媒A中で再構成して、最終濃度200ng/μlとした。サンプルを、複数の無作為のバッチで、Dionex Ultimate 3000オートサンプラーに入れた。各サンプルにつき計400ngを、研究室にて充填した4cm Luna C18 5μm トラップカラムに載せた(流速5μl/分)。次いで、弁を切り換えて、トラップカラムと、研究室にて充填した40cm Aeris peptide C18 3.6μm分析カラム(ID 75μm)とが直線状になるようにした。移動相の勾配は、B(0.1% FAを含むACN)を6~35%とした(190分、0.4μl/分、40℃)。被検物質をThermo Q Exactiveハイブリッド四重極Orbitrap機器中に直接溶出させ、これにより、最高の10モードにてMSスキャンおよびMS/MSスキャンを得た。MSスキャンは、分解能70000で、AGCのターゲット値3e6または注入時間250msで得た。MS/MSスキャンは、分解能17500で、AGCのターゲット値5e4または注入時間80msで得た。動的除外ウィンドウは30秒、標準化した衝突エネルギーは28であった。
データ処理
データ分析を、MaxQuantのバージョン1.5.3.12を使用して、ランとランの間にマッチを行ない、iBAQおよびLFQをオンにして実施した。使用したデータベースは、2016年8月にUniprotからダウンロードしたもので、ホモ・サピエンスとマイコバクテリウム・ツベルクローシスH37Rvとを組み合わせたデータベースであった。研究室で作製したQCパイプラインを使用してRでMaxQuantの出力フォルダ「.txt」を分析し、ランの品質を評価した。データからコンタミネーションおよびリバースヒットを除去した。MaxQuant分析の終了後、各サンプルについて臨床階層化を明らかにして、サンプルを非盲検化して統計分析に供した。
統計分析
MaxQuant iBAQデータの下流分析を、Rで、Rパッケージcaret(Kuhn (2008), “Building Predictive Models in R Using the caret” www.jstatsoft.org/article/view/v028i05/v28i05.pdf)およびランダムフォレスト(Svetnik, V., Liaw, A., Tong, C. and Wang, T., “Application of Breiman's Random Forest to Modeling Structure-Activity Relationships of Pharmaceutical Molecules”, MCS 2004, Roli, F. and Windeatt, T. (Eds.) pp. 334-343)を使用して実施した。データセットを無作為に分割して(臨床群に関係なく)、2/3をトレーニングセット(N=79、TB陽性が41、TB陰性が38)、1/3をテストセット(N=39、TB陰性が20、TB陽性が19)とした。トレーニングセットに対して、繰り返しの10分割交差検証により、ランダムフォレストを実施した。次に、トレーニングセットに対する再分析を、影響の大きい方から上位4つの特徴だけを使用して実施した(10分割交差検証に基づく;予測誤差を最小限(9%以下)とするためには4つの特徴で十分だと考えられる)。最後に、ランダムフォレスト(RF)分類の予測値を、上記の上位4つの予測特徴を用いてホールドアウトテストデータセット(N=39)において評価した。
RパッケージedgeR(Robinson MD, McCarthy DJ and Smyth GK (2010)。edgeRはデジタル式遺伝子発現データを差次的発現分析するためのBioconductorのパッケージ。Bioinformatics 26, 139-140)を使用して、差次的存在量試験を、log2変換したiBAQ値について実施した(最初にゼロ値を1に設定)。まず、未加工のiBAQデータを存在量でフィルタリングして、5%未満のサンプルにだけ存在するタンパク質を外し、ここでは、FDR≦0.05および倍数変化≧1.5を有意とみなした(Benjamini-Hochberg補正)。
Statisticaのバージョン13.3を使用して、さらなる統計分析を実施した。
結果
合計1870種のタンパク質の群をFDR<1%にて確たる自信をもって特定し、26種がマイコバクテリウム由来、残りはヒト由来であった。各サンプル中における個々のマイコバクテリウムペプチドの頻度は低く、個々のマイコバクテリウムペプチドのほとんどはサンプルの10%未満でしか特定されなかった。しかしながら、ヒトタンパク質およびマイコバクテリウムタンパク質はいずれも、普通は複数の固有のペプチドによって特定され、1672種のタンパク質は、2つまたはそれ以上の固有のペプチドによって特定された。
TB陽性個体およびTB陰性個体の間で有意に差次的に存在するタンパク質を特定するために、iBAQ値に対して差次的存在量試験を行なった(図1および図3)。差次的に存在するタンパク質が102種あった(FDR≦5%、倍数変化≧1.5)。これらのタンパク質について、String DBを使用した機能的エンリッチメント解析を行なって、エンリッチされたGOtermおよびパスウェイを特定した。
TBステータスについての上位予測因子の重要性ランクを、精度の平均低下によって判断した(特徴を除去した場合の低下が大きいほど予測力が大きいことを示す)(図2および図4)。上位7種のヒトバイオマーカーは、SAA1、RBP4、SAA2、A8MUE1、TSP4、CRP、およびRETNであった。これらの7種のバイオマーカーのランダムフォレスト分析を、10分割倍交差検証にて、トレーニングセット(TB陰性サンプルおよびTB陽性サンプルがそれぞれ41および38)に対して行なった結果、精度は94%であった(感度=89%、特異度=99%、陽性予測値(PPV)=97%、陰性予測値(NPV)=91%)(表3)。
Figure 2022550825000004
バイオマーカーの段階的減少に関連する交差検証エラー率から、エラー率9%以下でTBステータスを予測するためには4種のバイオマーカーで十分であることが明らかになった。これらの上位4種のバイオマーカー、すなわち、SAA1、RPB4、SAA2、およびTSP4について、無作為に選択した検証セット(TB陽性サンプルおよびTB陰性サンプルがそれぞれ19および20)を使用して再度試験した結果、精度は92%、PPVは100%、NPVは87%、感度は84%、特異度は100%であった(表4)。
Figure 2022550825000005
また、2種のヒト宿主特異的バイオマーカー(SAA1およびRBP4)、ならびにSAA1、RBP4、および2~4種のM.ツベルクローシスバイオマーカーを含む組み合わせ型の多次元バイオシグネチャを、TBの包含および除外について評価し、これらをSAA1のみのバイオシグネチャと比較した(図5および図6)。バイオシグネチャは以下の通りであった:
SAA1、RBP4、HtpG、PE_PGRS28、10kDaシャペロニン、EFTU_MYCTU;
SAA1、RBP4、HtpG、PE_PGRS28;および
SAA1、RBP4。
これらのバイオシグネチャについてのランダムフォレスト分析の結果が、表5中に示される。
Figure 2022550825000006
BM、バイオマーカー;UBM、尿バイオマーカー;AUC、曲線下面積;BER、balanced error rate;Sens.、感度;Spec.、特異度;PPV、陽性予測値;NPV、陰性予測値;SAA-1、血清アミロイドA;RBP-4、レチノール結合タンパク質4。
実施例2:
材料および方法
臨床分類法
上記のコホート(N=118)を、TBステータスに従って、TB陽性(n=57)およびTB陰性(n=61)という2つの大きな群に分類した。
データ処理
上述されるように生成したLC-MSデータの分析を、MaxQuantのバージョン1.6.14.0を使用して、ランとランの間にマッチを行ない、iBAQおよびLFQをオンにして実施した。未加工データの分析に使用したデータベースは、2019年11月にUniprotからダウンロードしたもので、ホモ・サピエンスとマイコバクテリウム・ツベルクローシスH37Rvとを組み合わせたデータベースで、74053個のヒト配列と3999個のM.ツベルクローシス配列とを含むものであった。研究室で作製したQCパイプラインを使用してRでMaxQuantの出力フォルダ「.txt」を分析し、ランの品質を評価した。データからコンタミネーションおよびリバースヒットを除去した。
統計分析
個々のバイオマーカーについてのiBaq値に対する統計検定を、上述されるランダムフォレスト分析と差次的存在量分析とを使用して、図2中に示される以下の24種のヒトバイオマーカー候補に焦点を当てて行なった。
Figure 2022550825000007
結果
iBAQ値に対して差次的存在量試験を行なって、TB陽性個体およびTB陰性個体の間で有意に差次的に存在する24種のバイオマーカー候補のセット中のタンパク質を特定した(図7)。
TBステータスについての上位予測因子の重要性ランクを、24種のバイオマーカー候補のセット中において、精度の平均低下によって判断した(特徴を除去した場合の低下が大きいほど予測力が大きいことを示す)(図8)。上位2種のヒトバイオマーカーはSAA1およびRETNであり、上位3種のヒトバイオマーカーはSAA1およびRETNとLILRB4またはIL18BPのいずれかとの組み合わせであり、上位4種のヒトバイオマーカーはSAA1、RETN、LILRB4、およびIL18BPであった。
トレーニングセットの分析
2種のバイオマーカーからなる組(SAA1およびRETN)のランダムフォレスト分析を、10分割交差検証にて、トレーニングセット(TB陽性サンプルおよびTB陰性サンプルがそれぞれ38および41)に対して行なった結果、感度=89%、特異度=91%、陽性予測値(PPV)=90%、陰性予測値(NPV)=90%であった。
3種のバイオマーカーからなる組(SAA1、RETN、およびLILRB4)のランダムフォレスト分析を、10分割交差検証にて、トレーニングセット(TB陽性サンプルおよびTB陰性サンプルがそれぞれ38および41)に対して行なった結果、感度=92%、特異度=93%、陽性予測値(PPV)=92%、陰性予測値(NPV)=93%であった。
3種のバイオマーカーからなる組(SAA1、RETN、およびIL18BP)のランダムフォレスト分析を、10分割交差検証にて、トレーニングセット(TB陽性サンプルおよびTB陰性サンプルがそれぞれ38および41)に対して行なった結果、感度=97%、特異度=95%、陽性予測値(PPV)=95%、陰性予測値(NPV)=97%であった。
4種のバイオマーカーからなる組(SAA1、RETN、LILRB4、およびIL18BP)のランダムフォレスト分析を、10分割交差検証にて、トレーニングセット(TB陽性サンプルおよびTB陰性サンプルがそれぞれ38および41)に対して行なった結果、感度=97%、特異度=95%、陽性予測値(PPV)=95%、陰性予測値(NPV)=97%であった。
7種のバイオマーカーからなる組(SAA1、RETN、LILRB4、IL18BP、SERPINA3、CD59、およびCADM1)のランダムフォレスト分析を、10分割交差検証にて、トレーニングセット(TB陽性サンプルおよびTB陰性サンプルがそれぞれ38および41)に対して行なった結果、感度=89%、特異度=98%、陽性予測値(PPV)=96%、陰性予測値(NPV)=93%であった。
7種のバイオマーカーからなる組(SAA1、RETN、LILRB4、IL18BP、SERPINA3、CD59、およびCFHR2)のランダムフォレスト分析を、10分割交差検証にて、トレーニングセット(TB陽性サンプルおよびTB陰性サンプルがそれぞれ38および41)に対して行なった結果、感度=95%、特異度=95%、陽性予測値(PPV)=95%、陰性予測値(NPV)=95%であった。
7種のバイオマーカーからなる組(SAA1、RETN、LILRB4、IL18BP、SERPINA3、IGLV3.21、およびRBP4)のランダムフォレスト分析を、10分割交差検証にて、トレーニングセット(TB陽性サンプルおよびTB陰性サンプルがそれぞれ38および41)に対して行なった結果、感度=92%、特異度=98%、陽性予測値(PPV)=97%、陰性予測値(NPV)=93%であった。
試験セットに対する統計学的検証
次いで、これらの上位バイオマーカー組について、無作為に選択した検証セット(TB陽性サンプルおよびTB陰性サンプルがそれぞれ19および20)を使用して再度試験した結果、表7中に示される精度(AUC)、感度、特異度、PPV、およびNPV値となった。
このセットの各バイオマーカーの分布および頻度を、箱ひげ図(図9)を使用してさらに分析して、特定したバイオマーカー組の有用性についてのさらなる洞察を得た。
臨床的に有用な診断組における理想的なバイオマーカーは、高い割合の症例および/またはコントロールにおいて発現されているべきであり、症例とコントロールとの明らかな区別を提供できるべきである。このデータおよび根拠と、上述されるランダムフォレスト分析(表7)および差次的存在量試験(図7)とに基づいて、TB疾患の診断にとって好ましいヒト尿バイオマーカーのセットを、SAA1、RETN、LILRB4(A8MUE1)、IL18BP、SERPINA3(AACT)、CD59(E9PNW4)、RBP4(Q5VY30)、IGLV3.21(LV321)、およびIGKV1.17(KV117)を含むリストから抜き出す。
Figure 2022550825000008
本発明の第5の実施形態によれば、上述される方法に従って、対象からの尿サンプル中において結核の診断を行なうためのキットであって、
患者からサンプルを受け取る手段と、
少なくともSAA1とRETNおよびRBP4のいずれかまたは両方とに結合する捕獲剤と、
捕獲剤が上記バイオマーカーに結合した際にそれを示す少なくとも1つの指標とを含むキットが提供される。

Claims (16)

  1. 結核疾患(TB)の診断を行なうための方法であって、対象からの尿サンプルを、SAA1とRETNまたはRBP4のいずれかとが存在するか否かについて試験する工程を含む、方法。
  2. 前記尿サンプルを、SAA1およびRETNが存在するか否かについて試験する工程を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記尿サンプルを、LILRB4、IL18BP、SERPINA3、CD59、RBP4、IGLV3.21、IGKV1.17、O53764_MYCTU(Rv0567)、I6Y0W5_MYCTU(fadE19、Rv2500c)、Q79FP1_MYCTU(PE_PGRS28、Rv1452c)、HTPG_MYCTU(htpG、Rv2299c)、RPOB_MYCTU(rpoB、Rv0667)、EFTU_MYCTU(tuf、Rv0685)、ACR_MYCTU(hspX、Rv2031c)、CH602_MYCTU(groEL2、Rv0440)、CLPP1_MYCTU(clpP1、Rv2461c)、および10kDaシャペロニン(Rv3418c)からなる群より選択される1種以上のさらなるバイオマーカーが存在するか否かについて試験する工程をさらに含む、請求項1または2に記載の方法
  4. 前記尿サンプルを、IL18BPが存在するか否かについて試験する工程をさらに含む、請求項2に記載の方法。
  5. 前記尿サンプルを、LILRB4が存在するか否かについて試験する工程をさらに含む、請求項2または4に記載の方法。
  6. 前記尿サンプルを、SERPINA3、CD59、RBP4、IGLV3.21、およびIGKV1.17からなる群より選択される1~5種のさらなるバイオマーカーが存在するか否かについて試験する工程をさらに含む、請求項2、4、または5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記尿サンプルを、HtpG、PE_PGRS28、EFTU_MYCTU、および10kDaシャペロニンからなる群より選択される1~4種のさらなるバイオマーカーが存在するか否かについて試験する工程をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記サンプルを、以下のバイオマーカー:
    a)SAA1、RETN、およびLILRB4;
    b)SAA1、RETN、およびIL18BP;
    c)SAA1、RETN、IL18BP、およびLILRB4;
    d)SAA1、RETN、IL18BP、およびIGKV1.17;
    e)SAA1、RETN、IL18BP、LILRB4、およびSERPINA3;
    f)SAA1、RETN、IL18BP、LILRB4、SERPINA3、およびCD59;または
    g)SAA1、RETN、LILRB4、IL18BP、SERPINA3、ならびに、CD59、RBP4、IGLV3.21、CADM1、およびCFHR2のうち任意の2種
    が存在するか否かについて試験する工程を含む、請求項3~7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記尿サンプルを、SAA1およびRBP4が存在するか否かについて試験する工程を含む、請求項1に記載の方法。
  10. 前記尿サンプルを、SAA1、RBP4、HtpG、およびPE_PGRS28が存在するか否かについて試験する工程を含む、請求項9に記載の方法。
  11. 前記尿サンプルを、SAA1、RBP4、HtpG、PE_PGRS28、EFTU_MYCTU、および10kDaシャペロニンが存在するか否かについて試験する工程を含む、請求項10に記載の方法。
  12. 結核疾患(TB)を有する対象を診断および処置する方法であって、
    a)請求項1~11のいずれか1項に記載の方法を実施する工程と、
    b)前記尿サンプル中における前記バイオマーカーの検出に基づいて前記対象がTBを有するか否かを判断する工程と、
    c)前記対象にとって必要である場合に前記対象に有効量のTB処置を投与する工程とを含む、方法。
  13. 対象における結核疾患(TB)の診断を行なうための、コンピュータにより実施される方法であって、前記コンピュータは、
    a)前記対象からの尿サンプル中におけるSAA1とRETNおよびRBP4のいずれかまたは両方とのレベルについての値を含む、入力された前記対象のデータを受信する工程と、
    b)任意に、前記尿サンプル中における1種以上のその他のバイオマーカーのレベルについての値を含む、入力された前記対象のデータを受信する工程であって、前記その他のバイオマーカーは、LILRB4、IL18BP、SERPINA3、CD59、RBP4、IGLV3.21、IGKV1.17、O53764_MYCTU(Rv0567)、I6Y0W5_MYCTU(fadE19、Rv2500c)、Q79FP1_MYCTU(PE_PGRS28、Rv1452c)、HTPG_MYCTU(htpG、Rv2299c)、RPOB_MYCTU(rpoB、Rv0667)、EFTU_MYCTU(tuf、Rv0685)、ACR_MYCTU(hspX、Rv2031c)、CH602_MYCTU(groEL2、Rv0440)、CLPP1_MYCTU(clpP1、Rv2461c)、およびCH10_MYCTU(10kDaシャペロニン、Rv3418c)からなる群より選択される、工程と、
    c)これらの値を、該当するバイオマーカーについての所定値と比較する工程と、
    d)前記対象がTBを有するか否かを判断する工程と、
    e)前記対象の診断に関する情報を表示する工程とを含む工程群を実施する、方法。
  14. 請求項1~11のいずれか1項に記載の方法に従って、対象からの血液サンプル中において結核の診断を行なうためのキットであって、
    a)患者からサンプルを受け取る手段と、
    b)少なくともSAA1とRETNおよびRBP4のいずれかまたは両方とに結合する捕獲剤と、
    c)前記捕獲剤が前記バイオマーカーに結合した際にそれを示す少なくとも1つの指標とを含む、キット。
  15. d)尿サンプル採取デバイス、
    e)前記バイオマーカーのための捕獲剤をつけたメンブレンおよび/もしくはテストストリップ、ならびに/または
    f)請求項1~11のいずれか1項に記載の方法を実施するための説明をさらに含む、請求項14に記載のキット。
  16. g)LILRB4、IL18BP、SERPINA3、CD59、RBP4、IGLV3.21、IGKV1.17、O53764_MYCTU(Rv0567)、I6Y0W5_MYCTU(fadE19、Rv2500c)、Q79FP1_MYCTU(PE_PGRS28、Rv1452c)、HTPG_MYCTU(htpG、Rv2299c)、RPOB_MYCTU(rpoB、Rv0667)、EFTU_MYCTU(tuf、Rv0685)、ACR_MYCTU(hspX、Rv2031c)、CH602_MYCTU(groEL2、Rv0440)、CLPP1_MYCTU(clpP1、Rv2461c)、またはCH10_MYCTU(10kDaシャペロニン、Rv3418c)、またはこれらの任意の組み合わせに結合する捕獲剤をさらに含む、請求項14または15に記載のキット。
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