JP2022528387A - アビド結合多重特異性抗体を作製する方法 - Google Patents

アビド結合多重特異性抗体を作製する方法 Download PDF

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Abstract

第1の(細胞表面)抗原に特異的に結合する第1の哺乳動物のまたは哺乳動物化された結合部位と、第2の(細胞表面)抗原に特異的に結合する第2の結合部位とを含む二重特異性抗体の(アビド)結合特異性を増大させるための方法であって、前記第1の哺乳動物のまたは哺乳動物化された結合部位が、免疫グロブリン軽鎖可変ドメインと免疫グロブリン重鎖可変ドメインとの少なくとも1つの対であり、前記第1の哺乳動物のまたは哺乳動物化された結合部位中で、前記軽鎖可変ドメインのCDR中のまたは前記重鎖可変ドメインのCDR1もしくはCDR2中のまたは前記重鎖可変ドメイン中のCDR3の直前の2つのフレームワーク位置中の位置において、少なくとも1つのアミノ酸残基を、前記哺乳動物のまたは哺乳動物化された結合部位のものと同じ哺乳動物種の生殖細胞系列免疫グロブリンアミノ酸配列中の前記位置に存在するアミノ酸残基に変異させることにより、前記哺乳動物のまたは前記哺乳動物化された結合部位のその抗原への結合アフィニティを減少させることによって、前記二重特異性抗体の(アビド)結合特異性を増加させるための方法が本書において報告される。【選択図】図1

Description

本発明は、抗体技術の分野であり、より具体的には、アミノ酸配列修飾によって作製される多重特異性抗体およびその変異型の分野である。本書では、単一特異性アフィン結合抗体から出発して、アビド結合特性を有する多重特異性抗体を作製するための方法を報告する。
背景
2つのモノクローナル抗体(mAb)の併用療法は、例えば固形腫瘍の処置において有望な結果を示している。しかしながら、2つのmAbの投与には、個々の規制上の審査および承認が必要となる。したがって、次世代の抗体治療薬には、一度に2つの標的を結合する能力を特徴とする二重特異性抗体(bsAb)が含まれる(TillerおよびTessier、2015;BrinkmannおよびKontermann、2017;Garber、2014;Haurum、2006)。これらのbsAbがどのようにして治療活性を改善し得るかについては様々なシナリオが存在する。1つは、治療標的に加えて特定の免疫細胞またはタンパク質を標的とし、これにより、それぞれエフェクター機能または特定の器官への抗体送達を増強する能力である(van Spriel,van Ojikおよびvan De Winkel、2000;Niewoehnerら、2014;Fesnakら、2016)。二重特異性によって抗体効力を改善するための他の方法は、2つの異なる生物学的経路の遮断または2つの個々の細胞表面抗原の二重標的化による腫瘍細胞に対する特異性を単純に増加させることである(Kontermann、2012)。
抗原は、専ら標的細胞上に提示されているのではなく、非病原性細胞上にも提示されているので、第2の抗原も標的とする抗体を設計することが望ましく、第2の抗原は、第1の抗原とともに、意図される治療または作用部位にのみ見出される。この場合には、優先的ではあるが、二重特異性自体が必ずしも特異性の増加を伴うとは限らない。bsAbの一価アフィニティが結合のために十分であれば、1つの抗原のみを発現する細胞はなお結合され得る。二重特異性によって特異性の増加を達成し、オフターゲット効果を回避するためには、アビド結合が必要とされる。このような状況では、一価結合アフィニティは、抗体を細胞表面に保持するのに十分ではなく、少なくとも2つの結合部位がそれらの特異的抗原に結合することができる場合にのみ、bsAbが細胞表面上に保持される。したがって、このような結合剤は、高い特異性で、ただし極めて低い一価アフィニティで標的抗原を認識する。
低アフィニティ結合実体を作製するための現在のアプローチには、例えば、抗体のデノボ作製、または既存の抗体のアフィニティを減少させるための変異の導入が含まれる。一価フォーマットで極めて低い(理想的な場合には検出不能な)アフィニティを有する抗体のデノボ生成は、困難であり、ヒット検出のために有意な結合を必要とする標準的な抗体生成技術と適合性がないことが判明している。この問題を回避し、それにもかかわらずアビド結合実体を生成するために、1つのアプローチは、既存の特異的結合剤を採用し、アフィニティを低下させるために結合領域中に変異を導入することである。したがって、それらの構造が決定され、抗原相互作用がモデル化され、妨害変異が導入される。今日では、アラニンスキャニング突然変異誘発が、タンパク質-タンパク質界面残基を探索するために選択される方法である(Mazorら、2017;Pons,RajpalおよびKirsch、1999)。これらのアプローチの欠点は、まず抗体-抗原複合体の結晶構造を知るかまたは決定する必要があること、構造の知識なしに変異を導入すると抗体構造が劇的に乱れ得ること、およびアラニン変異が多反応性を導入することのいずれかである(Chuangら、2015)。アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジンおよびヒスチジンを含む荷電アミノ酸のアラニン置換の計算結果は、研究室での実験から得られた値と一致しないことが多い(Kollmanら、2000;Wangら、2001)。
国際公開第2018/093866号は、抗MET抗体、metを結合する二重特異性抗原結合分子、およびその使用方法を報告した。Mazor,Y.らは、二重特異性抗体結合アフィニティおよびフォーマット価数を調節することによって増強された腫瘍標的化選択性を報告した(Sci.Rep.7(2017)40098)。Ho,M.らは、抗CD22免疫毒素の活性を増加させるための生殖細胞系列ホットスポットを標的とするインビトロ抗体進化を報告した(J.Biol.Chem.280(2004)607-617)。したがって、多反応性の非存在下で低下したアフィニティを有する抗体誘導体を作製するための一般化可能なアプローチが必要とされている。
アビディティ増強特異性を有する二重特異性抗体(bsAb)は、極めて高い特異性で標的細胞に向かわせるために使用することができる。このようなアビド結合bsAbは、bsAbの2つの抗原を発現する細胞のみに効率的に結合するが、これらの抗原の1つのみを発現する細胞には結合しない。このようなbsAbを構築するためには、高い特異性で、ただし、様々なアフィニティ(非常に低い一価のアフィニティを含む)で2つの抗原を有する結合剤の組み合わせが必要である。これは、2つの抗原が同じ細胞上にある場合に特に適している。
本発明は、少なくとも部分的には、高い特異性を有する抗体は、結合特異性を保持するが低下した一価結合アフィニティを有する変異型抗体に変換することができるという発見に基づく。このような変異型抗体、より正確にはその結合部位は、アビディティ増強特異性を有するアビド結合多重特異性抗体における結合部位として使用することができる。
本発明の1つの局面は、
第1の(細胞表面)抗原に特異的に結合する第1の結合部位と、第2の(細胞表面)抗原に特異的に結合する第2の結合部位とを含む多重特異性抗体であって、少なくとも前記第1の結合部位は哺乳動物のまたは哺乳動物化された結合部位であり、
前記第1の結合部位は、少なくとも一対の免疫グロブリン軽鎖可変ドメインおよび免疫グロブリン重鎖可変ドメインである多重特異性抗体の(アビド)結合特異性/アビド結合を増加させ/結合アフィニティを減少させるための方法であって、
((アビド)結合特異性/アビド結合を増加させること/結合アフィニティを減少させることは)前記第1の結合部位のその抗原に対する結合アフィニティを減少させることによるものであり、
前記第1の結合部位中で、少なくとも1つの位置において、アミノ酸残基を、前記第1の結合部位の種と同じ哺乳動物種の生殖細胞系列免疫グロブリンアミノ酸配列中の前記位置に存在するアミノ酸残基に変異させ、
それにより、第1の(細胞表面)抗原に特異的に結合する第1の結合部位と、第2の(細胞表面)抗原に特異的に結合する第2の結合部位とを含む二重特異性抗体の(アビド)結合特異性/アビド結合を増加させることにより、前記多重特異性抗体の(アビド)結合特異性/アビド結合を増加させ/結合アフィニティを減少させるための方法である。
本明細書で使用される「アビド結合特異性/アビド結合」という用語は、単一の、すなわち1つの分子(抗体)の複数の結合部位のそれぞれの標的(特異的抗原)との相互作用の複合された強度に基づく、1つ以上の細胞に対する分子の結合特異性/結合を表す。
本明細書で使用される「生殖細胞系列免疫グロブリンアミノ酸配列」という用語は、いかなる体細胞変異も有さないB細胞中での抗体成熟の間に出発配列としてインビボで機能する、生殖細胞系列遺伝子によってコードされるアミノ酸配列を表す(図1参照)。
本発明の一局面は、
第1の(細胞表面)抗原に特異的に結合する第1の結合部位と、第2の(細胞表面)抗原に特異的に結合する第2の結合部位とを含み、少なくとも前記第1の結合部位は哺乳動物のまたは哺乳動物化された結合部位であり、
前記第1の結合部位は、少なくとも一対の免疫グロブリン軽鎖可変ドメインおよび免疫グロブリン重鎖可変ドメインである多重特異性抗体の総結合アビディティを増加させるための方法であって、
前記第1の結合部位中で、少なくとも1つの位置において、アミノ酸残基を、前記第1の結合部位の種と同じ哺乳動物種の生殖細胞系列免疫グロブリンアミノ酸配列中の前記位置に存在するアミノ酸残基に変異させ、
それにより、第1の(細胞表面)抗原に特異的に結合する第1の結合部位と、第2の(細胞表面)抗原に特異的に結合する第2の結合部位とを含む二重特異性抗体の総結合アビディティを増加させることにより、前記第1の結合部位のその抗原への結合アフィニティを減少させることによって、前記多重特異性抗体の総結合アビディティを増加させるための方法である。
全ての局面の一実施形態において、多重特異性抗体は少なくとも二重特異性抗体である。好ましい実施形態において、多重特異性抗体は、二重特異性抗体である。
全ての局面の一実施形態において、第1の細胞表面抗原および第2の細胞表面抗原は同じ細胞上にある。
全ての局面の一実施形態において、少なくとも1つの変異されたアミノ酸残基は、
i)軽鎖可変ドメインのCDR中の位置に、および/または
ii)重鎖可変ドメインのCDR1またはCDR2中の位置に、および/または
iii)重鎖可変ドメイン中のCDR3の直前の2つのフレームワーク位置中にある。
全ての局面の一実施形態において、CDRはKabatに従って決定される。
全ての局面の一実施形態において、生殖細胞系列免疫グロブリンアミノ酸配列は、前記哺乳動物種の全ての生殖細胞系列免疫グロブリンアミノ酸配列の(BLASTp)アラインメントにおいて最も高いパーセント同一性を有する生殖細胞系列免疫グロブリンアミノ酸配列である。BLASTpは、https://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi?PAGE=Proteinsで入手可能である。
全ての局面の一実施形態において、重鎖可変ドメインのCDR1の最初の残基から重鎖可変ドメインのCDR2の最後の残基までを包含する配列断片のみが、重鎖可変ドメインの場合の生殖細胞系列免疫グロブリンアミノ酸配列の決定のために考慮/使用される。
全ての局面の一実施形態において、変異されるべきアミノ酸残基の側鎖は、溶媒露出されている(すなわち、完全には埋もれていない)。
埋もれたアミノ酸残基は、溶媒分子に露出することができない。したがって、本明細書で互換的に使用することができる「完全には埋もれていない」および「溶媒露出されている」という用語は、静電相互作用、水素結合相互作用、ファンデルワールス相互作用または疎水性相互作用によって溶質分子と相互作用することができるアミノ酸残基を示す。
全ての局面の一実施形態において、変異されるべきアミノ酸残基の側鎖はVH-VL相互作用に関与しない。
全ての局面の一実施形態において、変異されるべきアミノ酸残基の側鎖は、抗原との少なくとも1つの相互作用に関与する。
Fvにおける残基または表面または構造間の相互作用(すなわち、アミノ酸-アミノ酸相互作用またはVH-VL相互作用)は、抗原への接触および抗原の/抗原上の保持を提供するFvの残基または表面または構造間の相互作用であり、これらの相互作用は、静電相互作用、水素結合相互作用、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用などであり得る。
全ての局面の一実施形態において、変異された第1の結合部位は、変異されていない第1の結合部位と同じまたは低減した多反応性を有する。全ての局面の一実施形態において、変異された第1の結合部位、すなわち、減少したアフィニティを有する結合部位は、多反応性を有しない。一実施形態では、多反応性は、表面プラズモン共鳴またはイムノアッセイによって決定される。
本明細書で使用される「多反応性を有しない」という用語は、(抗体の)結合部位が、結合部位中の非特異的相互作用もしくは高い柔軟性のために、または単純な非特異的粘着性のために、複数の関連しない抗原に結合することができないことを示す。
全ての局面の一実施形態において、第2の結合部位は、免疫グロブリン軽鎖可変ドメインと免疫グロブリン重鎖可変ドメインの第2の対であり、第2の結合部位は哺乳動物のまたは哺乳動物化された結合部位であり、変異は第1および第2の結合部位中の少なくとも1つのアミノ酸残基のものである。
全ての局面の一実施形態において、哺乳動物はヒトである。
全ての局面の一実施形態において、免疫グロブリン軽鎖可変ドメインと免疫グロブリン重鎖可変ドメインの第1および/または第2の対は、ヒトのまたはヒト化された免疫グロブリン軽鎖可変ドメインとヒトまたはヒト化された免疫グロブリン重鎖可変ドメインの対である。
全ての局面の一実施形態において、前記方法は、多重特異性抗体の少なくとも1つの結合部位の一価結合アフィニティ/結合アフィニティを低下させることによって(アビド)結合特異性/アビド結合を増加させるための方法である。
本発明の一局面は、本発明による方法を用いて得られる多重特異性抗体である。
本発明の一局面は、本発明による方法で得られた多重特異性抗体をコードする単離された核酸である。
本発明の一局面は、本発明による核酸を含む単離された細胞である。
全ての局面の一実施形態において、細胞は、CHO、HEK、Sp2/0、PER.C6またはBHK細胞である。
本発明の1つの局面は、以下の工程:
- 抗体が産生されるように本発明による細胞を培養する工程と、
- 前記細胞または培養培地から多重特異性抗体を回収する工程と、
- 必要に応じて、1つ以上のクロマトグラフィー工程を用いて前記多重特異性抗体を精製する工程と、
を含む多重特異性抗体を製造するための方法である。
本明細書で言及される局面および実施形態の全ての並べ替えは、明示的に記載されることなく同様に開示される。
発明の態様の詳細な説明
アビディティ増強特異性を有する二重特異性抗体(bsAb)は、非常に高い特異性で細胞を標的とするために使用することができる。このようなアビド結合bsAbは、bsAbの2つの抗原を発現する細胞のみに効率的に結合するが、これらの抗原の1つのみを発現する細胞には結合しない。このようなアビド結合bsAbを構築するためには、高い特異性で、ただし、様々なアフィニティ(特に、非常に低い一価のアフィニティ)で2つの抗原を有する結合剤の組み合わせが必要である。本発明による方法は、アビド結合bsAbの一部を形成するのに適した結合剤を製造するための手段を提供する。
本発明は、少なくとも部分的には、高い特異性を有する(親)抗体は、結合特異性を保持するが、同じように増加した結合アフィニティとともに低下した一価結合アフィニティを有する誘導体に変換することができるという発見に基づく。結合特異性に影響を及ぼすことなく結合アフィニティを低下させるために抗体CDR領域中に導入されるべき変異は、抗体-抗原複合体のいかなる構造も必要とせずに同定され得ることが見出された。
本発明は、少なくとも部分的には、特に、高い抗原接触確率を有するCDR残基に対する選好性により抗体のアフィニティが増加される、B細胞成熟または哺乳動物化過程を逆戻しすることによって、高い特異性が維持されているが(非常に)低い一価アフィニティを有するそれぞれの抗原を認識する抗体を取得/作製することができるという知見に基づく。これは、インビボ/インシリコでの体細胞アフィニティ成熟または哺乳動物化過程中に変化された高い抗原接触確率を有するCDR残基/位置に、生殖細胞系列でコードされたアミノ酸残基を配置することによって達成される。それにより、その特異性を保持するが、異なる程度で「脱成熟化されている(de-matured)」VHドメインおよびVLドメインならびにFvの組み合わせが生成/作製/取得される。本発明の方法による脱成熟過程は、オン速度およびオフ速度に影響を及ぼし、例えば抗原結合が二価フォーマットにおいてのみ検出され得る非常に低いアフィニティを有する結合部位を生成することができる。
変異のための残基を同定するためにCDR中のアラニン置換に基づく方法(これまで最も頻繁に適用される技術)と比較して、本発明による方法は、例えば非特異的粘着性または多反応性の導入なしに、より信頼性が高い/予測可能であることが見出された。
定義
ヒト免疫グロブリンの軽鎖および重鎖のヌクレオチド配列に関連する一般的な情報は、Kabat,E.A.ら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service,National Institutes of Health、Bethesda,MD(1991)に与えられる。重鎖および軽鎖の全ての定常領域およびドメインのアミノ酸位置は、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service,National Institutes of Health、Bethesda,MD(1991)において説明されるKabat番号付けシステムにより番号付けすることができ、本明細書では「Kabatによる番号付け」と称される。具体的には、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service,National Institutes of Health、Bethesda,MD(1991)のKabat番号付けシステム(647~660頁を参照)を、カッパアイソタイプおよびラムダアイソタイプの軽鎖定常ドメインCLに使用し、Kabat EUインデックス番号付けシステム(661~723頁を参照)を、重鎖定常ドメイン(CH1、ヒンジ、CH2およびCH3、本明細書では、この場合には、「KabatのEUインデックスによる番号付け」と称することによってさらに明確にしている)に使用する。
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の言及を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「細胞」への言及は、複数のこのような細胞および当業者に公知のその均等物などを含む。同様に、「a」(または「an」)、「1つ以上」および「少なくとも1つ」という用語を、本明細書では相互交換可能に使用することができる。
また、「含む(comprising)」、「含む(including)」、および「有する(having)」という用語を、相互交換可能に使用することができることにも留意されたい。
当業者にとって、例えば、ペプチドリンカーまたは融合ポリペプチドのアミノ酸配列を、対応するコード核酸配列へと変換する手順および方法は周知である。それゆえ、核酸は、個々のヌクレオチドからなるその核酸配列によって、同様に、該核酸配列によってコードされるペプチドリンカーまたは融合ポリペプチドのアミノ酸配列によって特徴付けられる。
組換えDNA技術の使用は、核酸の生成誘導体を可能にする。このような誘導体を、例えば、置換、改変、交換、欠失または挿入によって、個々のまたはいくつかのヌクレオチド位置で修飾することができる。修飾または誘導体化は、例えば、部位特異的変異導入によって行うことができる。このような修飾は、当業者によって容易に行うことができる(例えば、Sambrook,J.ら、Molecular Cloning:A laboratory manual(1999)Cold Spring Harbor Laboratory Press、New York,USA;Hames,B.D.およびHiggins,S.G.、Nucleic acid hybridization-a practical approach(1985)IRL Press、Oxford,England)。
本発明を実施するための有用な方法および技術は、例えば、Ausubel,F.M.(ed.)、Current Protocols in Molecular Biology、第I~III巻(1997);Glover,N.D.およびHames,B.D.ed.、DNA Cloning:A Practical Approach、第IおよびII巻(1985)、Oxford University Press;Freshney,R.I.(ed.)、Animal Cell Culture-a practical approach、IRL Press Limited(1986);Watson,J.D.ら、Recombinant DNA、第2版、CHSL Press(1992);Winnacker,E.L.、From Genes to Clones;N.Y.,VCH Publishers(1987);Celis,J.,ed.、Cell Biology、第2版、Academic Press(1998);Freshney,R.I.、Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique、第2版、Alan R.Liss,Inc.、N.Y.(1987)に記載されている。
「約」という用語は、その後に続く数値の±20%の範囲を表す。一実施形態において、約という用語は、その後に続く数値の±10%の範囲を表す。一実施形態において、約という用語は、その後に続く数値の±5%の範囲を表す。
「アフィニティ」または「結合アフィニティ」は、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位と、その結合対(例えば、抗原)との間の非共有結合性相互作用の合計強度を指す。特に示されない限り、本明細書で使用する場合、「結合アフィニティ」は、結合対(例えば、抗体と抗原)のメンバー間の1:1相互作用を反映する固有の結合アフィニティを指す。分子Xのその対Yに対するアフィニティは概して、解離定数(K)によって表すことができ、解離速度定数と会合速度定数(それぞれkoffおよびkon)の比である。したがって、速度定数の比率が同じままである限り、等価のアフィニティは、異なる速度定数を含むことができる。アフィニティは、本明細書に記載するものを含め、当技術分野で公知の一般的な方法によって測定することができる。アフィニティを測定する特定の方法は、表面プラズモン共鳴(SPR)である。
用語「抗体」とは、本明細書では最も広い意味で使用され、それらが所望の抗原結合活性を呈する限り、モノクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体、三重特異性抗体)、および抗体断片が挙げられるが、これらに限定されない、様々な抗体構造を包含する。
抗体は、一般に、2つのいわゆる軽鎖ポリペプチド(軽鎖)および2つのいわゆる重鎖ポリペプチド(重鎖)を含む。重鎖および軽鎖ポリペプチドの各々は、抗原と相互作用することができる結合領域を含む可変ドメイン(可変領域)(一般にポリペプチド鎖のアミノ末端部分)を含む。重鎖および軽鎖ポリペプチドの各々は、定常領域(一般にカルボキシル末端部分)を含む。重鎖の定常領域は、i)食細胞などのFcガンマ受容体(FcγγR)を有する細胞への、またはii)ブランベル受容体としても知られる新生児型Fc受容体(FcRn)を有する細胞への抗体の結合を媒介する。重鎖の定常領域は、成分(C1q)などの古典的補体系の因子を含むいくつかの因子への結合も媒介する。抗体重鎖の定常ドメインは、CH1ドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含むのに対して、軽鎖は、カッパアイソタイプまたはラムダアイソタイプであり得るただ1つの定常ドメインCLを含む。
次に、免疫グロブリンの軽鎖または重鎖の可変ドメインは、異なるセグメント、すなわち4つのフレームワーク領域(FR)および3つの超可変領域(HVR)を含む。
抗体の「クラス」とは、その重鎖によって保有される定常ドメインまたは定常領域のタイプを指す。抗体の5つの主要なクラスがあり、即ち、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMであり、これらのうちのいくつかは、下位クラス(アイソタイプ)、例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgAおよびIgAにさらに分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γおよびμと呼ばれる。
「(抗原への)結合」という用語は、インビトロアッセイにおける、一実施形態では、抗体が表面に結合し、抗体への抗原の結合が表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定される結合アッセイにおける、抗体のその抗原への結合を表す。結合は、例えば、標的Aもしくは標的Bに対する抗体、または捕捉分子、例えば、抗体に対する抗ヒトFab捕捉に対する抗体の結合能の測定を意味する。
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体の集団から得られた抗体を指し、すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、同一であり、および/または同じエピトープに結合するが、例えば、自然発生突然変異を含有するか、またはモノクローナル抗体調製物の産生中に生じる、起こり得る変異型抗体は例外であり、かかる変異型は一般的に少量で存在する。典型的には異なる決定基(エピトープ)に対して指向する異なる抗体を含むポリクローナル抗体製剤とは対照的に、モノクローナル抗体製剤のそれぞれのモノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して指向する。したがって、修飾語「モノクローナル」は、抗体の実質的に均一な集合から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするように解釈すべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組み換えDNA法、ファージディスプレイ法、およびヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法を含むが、これらに限定されない多様な技法によって作製することができ、モノクローナル抗体を作製するためのそのような方法および他の例示的な方法が、本明細書に記載されている。
「超可変領域」または「HVR」という用語は、本明細書で使用される場合、配列において超可変性であり(「相補性決定領域」または「CDR」)、および/または構造的に明確なループ(「超可変ループ」)を形成し、および/または抗原に接触する残基(「抗原接触」)を含有する抗体可変ドメインのそれぞれの領域を指す。一般的に、抗体は、6個のHVRを含み、VHに3個(H1、H2、H3)、VLに3個(L1、L2、L3)含む。本発明の例示的なHVRとして、以下のものが挙げられる。
(a)アミノ酸残基26-32(L1)、50-52(L2)、91-96(L3)、26-32(H1)、53-55(H2)および96-101(H3)で生じる超可変ループ(ChothiaおよびLesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987));
(b)アミノ酸残基24-34(L1)、50-56(L2)、89-97(L3)、31-35b(H1)、50-65(H2)および95-102(H3)に存在するCDR(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service,National Institutes of Health、Bethesda,MD(1991));
(c)アミノ酸残基27c-36(L1)、46-55(L2)、89-96(L3)、30-35b(H1)、47-58(H2)および93-101(H3)で生じる抗原接触(MacCallumら、J.Mol.Biol.262:732-745(1996));ならびに
(d)(a)、(b)および/または(c)の組合せ、HVRアミノ酸残基46-56(L2)、47-56(L2)、48-56(L2)、49-56(L2)、26-35(H1)、26-35b(H1)、49-65(H2)、93-102(H3)および94-102(H3)を含む。
特に示されない限り、HVR残基および可変ドメイン中の他の残基(例えば、FR残基)は、Kabatらに従って本明細書では番号付けされる。
「価数」という用語は、本出願で使用される場合、(抗体)分子中の指定された結合部位数の存在を表す。したがって、「二価」、「四価」および「六価」という用語は、(抗体)分子中に、それぞれ2つの結合部位、4つの結合部位、および6つの結合部位の存在を表す。本明細書で報告される二重特異性抗体は、1つの好ましい実施形態では、「二価」である。
「結合アフィニティ」という用語は、単一の結合部位とそのそれぞれの標的との相互作用の強さを表す。実験的には、アフィニティは、例えば、平衡における抗体および抗原の会合(kA)および解離(kD)の速度定数を測定することによって決定することができる。
「結合アビディティ」という用語は、1つの分子(抗体)の複数の結合部位の、同じ標的との相互作用の複合された強度を表す。したがって、アビディティは、結合の合計ではなく、結合アフィニティの複合された相乗的強度である。アビディティに必要なものは、抗体などの分子のまたは機能的多量体の1つの標的(抗原)に対する多価性、すなわち、1つの可溶性標的上にある複数の露出されているエピトープ、またはそれぞれが様々な固定化された標的上にある1つのエピトープへの抗体の複数の結合である。
複合体会合は、アフィン結合とアビド結合との間で異ならない。しかしながら、アビド結合のための複合体解離は、関与する全ての結合部位の同時解離に依存する。したがって、(アフィン結合と比較して)アビド結合による結合強度の増加は、解離速度論/複合体安定性に依存し、複合体安定性が大きい(高い)ほど、関与する全ての結合部位の同時解離はより起こりにくく、非常に安定な複合体の場合、アフィン結合対アビド結合の差は本質的に0になり、複合体の安定性がより小さい(より低い)ほど、関与する全ての結合部位の同時解離の可能性がより高く、アフィン結合対アビド結合の差が増大する。
Wolfguy番号付けスキーム
Wolfguy番号付けは、CDR領域をKabatとChothiaの定義の和集合として定義する。さらに、この番号付けスキームは、CDR位置のインデックスがCDR残基が増加するループまたは減少するループの一部であるかどうかを示すように、CDR長に基づいて(および部分的には、配列に基づいて)CDRループ先端に注釈を付ける。確立された番号付けスキームとの比較を以下の表に示す。
表:Chothia/Kabat(Ch-Kb)、HoneggerおよびWolfguy番号付けスキームを用いたCDR-L3およびCDR-H3の番号付け。後者は、N末端の基礎からCDRピークまで数が増加し、C末端のCDR末端から始まる数が減少する。Kabatスキームは、2つの最後のCDR残基を固定し、CDR長に対応する文字を導入する。Kabat命名法とは対照的に、Honegger番号付けは文字を使用せず、VHおよびVLに対して共通である。
Figure 2022528387000002
Wolfguyは、構造的に等価な残基(すなわち、Fv構造中の保存された空間的局在化に関して非常に類似している残基)が可能な限り等価なインデックスで番号付けされるように設計されている。
Wolfguy番号付けされた完全長VHおよびVL配列の例は、以下の表に見出すことができる。
表:Wolfguy、KabatおよびChothiaで番号付けされたPDB ID 3PP4(21)を有する結晶構造のVH(左)およびVL(右)配列。Wolfguyでは、CDR-H1-H3、CDR-L2およびCDR-L3は長さのみに応じて番号付けされ、CDR-L1はループ長およびカノニカルクラスタメンバーシップに応じて番号付けされる。後者は、異なるコンセンサス配列に対する配列類似性を計算することによって決定される。ここでは、CDR-L1番号付けの単一の例のみを示す。
Figure 2022528387000003
Figure 2022528387000004
Figure 2022528387000005
多重特異性抗体
特定の実施形態において、抗体は、多重特異性抗体、例えば、少なくとも二重特異性抗体である。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原またはエピトープに対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。特定の実施形態において、結合特異性の一方は、第1の抗原に対するものであり、他方は、異なる第2の抗原に対するものである。特定の実施形態において、多重特異性抗体は、同じ抗原の2つの異なるエピトープに結合し得る。多重特異性抗体を使用して、抗原を発現する細胞に細胞毒性剤を局在化させることもできる。多重特異性抗体は、完全長抗体または抗体断片として調製できる。
多重特異性抗体を作製するための技術には、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組換え共発現(Milstein,C.およびCuello,A.C.,Nature 305(1983)537-540、国際公開第93/08829号およびTraunecker,A.ら、EMBO J.10(1991)3655-3659参照)および 「ノブインホール」操作(例えば、米国特許第5,731,168号明細書を参照)が含まれるが、これらに限定されない。多重特異性抗体はまた、抗体Fc-ヘテロ二量体分子を作製するための静電的ステアリング効果の操作(国際公開第2009/089004号)、2つ以上の抗体または断片を架橋すること(例えば、米国特許第4,676,980号、およびBrennan,M.ら、Science、229(1985)81-83を参照)、ロイシンジッパを使用して二重特異性抗体を産生すること(例えば、Kostelny,S.A.ら、J.Immunol.148(1992)1547-1553を参照;二重特異性抗体断片を作製するための「ダイアボディ」技術を使用すること(例えば、Holliger,P.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90(1993)6448-6444を参照)、および一本鎖Fv(sFv)二量体を使用すること(例えば、Gruber,M.ら、J.Immunol.152(1994)5368-5374を参照、および、例えば、Tutt,A.ら、J.Immunol.147:(1991)60-69)に記載されるような三重特異性抗体を調製することによっても作製され得る。
抗体または断片はまた、国際公開第2009/080251号、国際公開第2009/080252号、国際公開第2009/080253号、国際公開第2009/080254号、国際公開第2010/112193号、国際公開第2010/115589号、国際公開第2010/136172号、国際公開第2010/145792号または国際公開第2010/145793号に記載されている多重特異性抗体であり得る。
抗体またはその断片は、国際公開第2012/163520号に開示されている多重特異性抗体でもあり得る。
二重特異性抗体は、一般に、同じ抗原上の2つの異なる重複しないエピトープまたは異なる抗原上の2つのエピトープに特異的に結合する抗体分子である。
異なる二重特異性抗体フォーマットが知られている。
本明細書に報告されている方法を使用することができる例示的な二重特異性抗体フォーマットは、
- ドメイン交換を伴うIgG型抗体:第1のFab断片および第2のFab断片を含む多重特異性IgG抗体であって、前記第1のFab断片において、
a)CH1ドメインとCLドメインのみが互いに置き換えられている(すなわち、第1のFab断片の軽鎖はVLドメインおよびCH1ドメインを含み、第1のFab断片の重鎖はVHドメインおよびCLドメインを含む。);
b)VHドメインおよびVLドメインのみが互いに置き換えられている(すなわち、第1のFab断片の軽鎖はVHドメインおよびCLドメインを含み、第1のFab断片の重鎖はVLドメインおよびCH1ドメインを含む。);または
c)CH1ドメインとCLドメインが互いに置き換えられ、VHドメインとVLドメインが互いに置き換えられている(すなわち、第1のFab断片の軽鎖はVHドメインおよびCH1ドメインを含み、第1のFab断片の重鎖はVLドメインおよびCLドメインを含む。);および
前記第2のFab断片が、VLドメインおよびCLドメインを含む軽鎖と、VHドメインおよびCH1ドメインを含む重鎖とを含み、
ドメイン交換を伴うIgG型抗体は、CH3ドメインを含む第1の重鎖と、CH3ドメインを含む第2の重鎖とを含み得、例えば、国際公開第96/27011号、国際公開第98/050431号、欧州特許第1870459号、国際公開第2007/110205号、国際公開第2007/147901号、国際公開第2009/089004号、国際公開第2010/129304号、国際公開第2011/90754号、国際公開第2011/143545号、国際公開第2012/058768号、国際公開第2013/157954号または国際公開第2013/096291号(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるように、第1重鎖および修飾された第2重鎖のヘテロ二量体化を支援するために、両CH3ドメインは、それぞれのアミノ酸置換によって、相補的な様式で操作されている;
- 1アームの一本鎖フォーマット(=1アームの一本鎖抗体):第1のエピトープまたは抗原に特異的に結合する第1の結合部位と、第2のエピトープまたは抗原に特異的に結合する第2の結合部位とを含む抗体であって、個々の鎖は以下のとおりである、
- 軽鎖(可変軽鎖ドメイン+軽鎖κ定常ドメイン)
- 軽鎖/重鎖の組み合わせ(可変軽鎖ドメイン+軽鎖定常ドメイン+ペプチドリンカー+可変重鎖ドメイン+CH1+ヒンジ+CH2+CH3 ノブ変異あり)
- 重鎖(可変重鎖ドメイン+CH1+ヒンジ+CH2+CH3 ホール変異あり);
- 二アームの一本鎖フォーマット(=二アームの一本鎖抗体):第1のエピトープまたは抗原に特異的に結合する第1の結合部位と、第2のエピトープまたは抗原に特異的に結合する第2の結合部位とを含む抗体であって、個々の鎖は以下のとおりである、
- 軽鎖/重鎖1の組み合わせ(可変軽鎖ドメイン+軽鎖定常ドメイン+ペプチドリンカー+可変重鎖ドメイン+CH1+ヒンジ+CH2+CH3 ホール変異あり)
- 軽鎖/重鎖2の組み合わせ(可変軽鎖ドメイン+軽鎖定常ドメイン+ペプチドリンカー+可変重鎖ドメイン+CH1+ヒンジ+CH2+CH3 ノブ変異あり);
- 共通軽鎖二重特異性フォーマット(=共通軽鎖二重特異性抗体):第1のエピトープまたは抗原に特異的に結合する第1の結合部位および第2のエピトープまたは抗原に特異的に結合する第2の結合部位を含む抗体であって、個々の鎖は以下の通りである抗体
- 軽鎖(可変軽鎖ドメイン+軽鎖定常ドメイン)
- 重鎖1(可変重鎖ドメイン+CH1+ヒンジ+CH2+CH3 ホール変異あり)
- 重鎖2(可変重鎖ドメイン+CH1+ヒンジ+CH2+CH3 ノブ変異あり);
- 二重標的化Fab:VHおよびVLドメインの相補的な対中に2つの(重複しない)パラトープを含む抗体であって、前記第1のパラトープが、前記VLドメインのCDR1およびCDR3ならびに前記VHドメインのCDR2由来のアミノ酸残基を含み(からなり)、前記第2のパラトープが、前記VHドメインのCDR1およびCDR3ならびに前記VLドメインのCDR2由来の残基を含む(からなる)抗体、
である。
この文脈における「非重複」という用語は、DutaFabの第1のパラトープ内に含まれるアミノ酸残基が第2のパラトープ内に含まれず、DutaFabの第2のパラトープ内に含まれるアミノ酸が第1のパラトープ内に含まれないことを示す。
一実施形態において、二重特異性抗体はドメイン交換を有するIgG型抗体である。
一実施形態において、二重特異性抗体は1アームの一本鎖抗体である。
一実施形態において、二重特異性抗体は2アームの一本鎖抗体である。
一実施形態において、二重特異性抗体は共通の軽鎖二重特異性抗体である。
一実施形態において、二重特異性抗体は二重標的化Fabである。
組成物および方法
抗体誘導体のセットは、B細胞における抗体の生成および成熟の間に自然によって生成される(MacLennan、1994)(図1参照)。第1の工程の間に、組換えは、特定の抗原に特異的であるが比較的低いアフィニティの結合剤を生成する。VDJ組換えは、1つの所定のVLと組み合わされた、所定のVH生殖細胞系列上に初期H3を生成する。複数回の体細胞変異は、胚中心における抗原結合の方向への選択圧により抗体アフィニティの増加をもたらす。これらの成熟工程は、抗原結合領域の変動、より良好な結合剤選択を生じさせ、抗体の進化をもたらす。得られた成熟抗体のその抗原に対するアフィニティは、対応するナイーブB細胞受容体と比較した場合、何桁も増加し、その構造は生殖細胞系列にコードされた対応物とは異なる(ChanおよびBrink、2012)。
本発明は、少なくとも部分的には、所与の動物またはヒト由来のVHまたはVL配列に対するアフィニティ調節逆突然変異を同定することによって、B細胞における抗体成熟過程を「逆転」させることが可能であるという発見に基づく(図1参照)。したがって、本発明による方法は、(合成)ライブラリーのインビトロライブラリーパニング/選択アプローチから作製された抗体に適用することができない。
本発明による方法は、B細胞成熟(図2)または哺乳動物化を逆転させることによって、低下したアフィニティを有するが特異性は保持する抗体誘導体のセットを生成する。本発明による方法を用いて、成熟ツリーの異なる段階の抗体の機能を有する抗体誘導体を生成できることが明らかとなった。これらは異なるアフィニティを有するが、成熟した出発抗体の特異性を保持する。
本発明による方法は、最大5つの後続の工程、好ましくは3つの後続の工程を含み、そのうちの最初の2つは必須であり、3番目の工程は必要に応じて行われる(図2を参照)。
1)成熟/成熟された抗体が由来し得る生殖細胞系列の同定
抗体が由来した可能性があるVHおよびVL生殖細胞系列は、IGHVおよびIGKV/IGLV生殖細胞系列配列のデータベース、例えばIMGTのデータベース(Brochet,LefrancおよびGiudicelli、2008;Giudicelli,BrochetおよびLefranc、2011)に対して、例えばBLASTp(Altschulら、1990)検索を使用して配列アラインメントを行うことによって同定される。最も高いパーセント同一性を有する生殖細胞系列配列は、起源の生殖細胞系列であると仮定される。成熟の過程におけるさらなる突然変異の発生と組み合わせたVDJ組換えの複雑性のために、CDR-H3の最終的な非成熟(VDJのみ)タンパク質配列を決定することは不可能である。
抗体の起源の種を指定することにより、検索を絞り込むことができる。
入力配列がヒト化抗体に属し、起源の種が不明である場合、CDR-H1の最初からCDR-H2の最後までにわたる配列セグメントのみを用いてデータベースに照会することによって、手順を改変することができる。
フレームワーク領域およびCDR領域は、WolfGuy抗体番号付けスキーム(Bujotzek,Dunbarら、2015)を使用して、ソフトウェアANARCI(DunbarおよびDeane、2016)によって割り当てることができる。
最も可能性の高い生殖細胞系列配列が同定された後、その配列はWolfGuy番号付けに基づいて入力配列に対してアラインメントされる。入力配列と生殖細胞系列配列との間のあらゆるミスマッチは、成熟事象が起こる可能性を表し、したがって逆突然変異の潜在的な候補に相当する。
2)逆突然変異の選択
逆突然変異は、以下の基準を適用して選択される。
(i)アミノ酸は、工程1)で特定された生殖細胞系列に対して異なり、CDR領域またはCDR-H3の直前のフレームワーク位置(WolfGuy331および332)に位置し、CDR-H2の最終位置(WolfGuy295~299)は除外される;
ii)アミノ酸側鎖は完全に埋もれてはならない、すなわちドメイン間の界面中に/界面に位置する;「埋もれた」残基または配列区間または実体または表面は、溶媒分子に露出することができない;
iii)アミノ酸側鎖はVH-VL相互作用に関与すべきでない;抗体のVLおよびVHドメインはVL-VH対を形成し、これは抗原結合特性を有する機能性Fvとして存在する。VH-VL相互作用は、Fvヘテロ二量体としてVHおよびVLに会った際に接触する残基、配列、区間または表面である;
iv)この位置でのアミノ酸側鎖が抗原との化学的相互作用に関与する(例えば、PDB中の(Bermanら、2000))公知の抗体-抗原複合体構造が存在する。
これにより、抗原結合に関与している可能性が高い変異が同定される。
一実施形態における基準ii)およびiii)に必要な構造的読み出しは、抗体の可変領域の相同性モデルから抽出することができる。本発明の文脈における相同性モデルは、構造テンプレートとして使用されている類似配列の実験的に得られた利用可能な抗体結晶構造から構築された、(VHおよびVLの入力配列によって定められる)関心対象の可変領域の原子分解能モデルを示す。このようなモデルは、例えば、MoFvAb(Bujotzek,Fuchsら、2015)などの任意のモデル化ソフトウェアを用いて生成することができる。
iv)のために使用される抗体-抗原接触に関する統計は、一実施形態では、タンパク質結合抗体およびペプチド結合抗体が優先的パラトープ残基の異なるプロファイルを示すことを反映するために、例えばSAbDab(Dunbarら、2014)から検索され、関与する抗体のCDR配列に関して非冗長にされ、抗原の型によって「タンパク質」および「ペプチド」に細分化された抗体複合体構造の組から抽出される。
抗体-ペプチドおよび抗体-タンパク質相互作用に対する統計的抗体-抗原接触の例示的な組を以下の表に提供する。示されていない残基/位置は全て、列3、4、6および7のそれぞれにおいて0の値を有する。
Figure 2022528387000006
Figure 2022528387000007
Figure 2022528387000008
Figure 2022528387000009
*Bujotzek,A.ら、Proteins:Structure,Function,and Bioinformatics、83(2015)681-695。
Figure 2022528387000010
Figure 2022528387000011
Figure 2022528387000012
Figure 2022528387000013
Figure 2022528387000014
Figure 2022528387000015
*Bujotzek,A.ら、Proteins:Structure,Function,and Bioinformatics、83(2015)681-695。
3)選択された逆突然変異の階層化(必要に応じて実施)
必要であれば、単一の入力配列ごとに、退化(devolution)の度合いが増加した、すなわち、結合アフィニティは低下しているが、結合特異性は維持されている複数の変異型を得るために、基準iv)、すなわち、公知の複合体構造における抗原相互作用の平均数を特定の閾値で適用することによって段階的過程で変異を積み重ねることができる。
例えば、VLの初期変異型では、平均0.01超かつ0.25未満の抗原相互作用を有する全ての位置が生殖細胞系列へ逆変異され、結合アフィニティの極めて穏やかな喪失を目指す。次の変異型では、この閾値が0.5などに上げられ、逆変異される位置の数が増加し、結合アフィニティの喪失の確率が増加する。
4)最終チェック(必要に応じて実施)
上記で概説した本発明による方法を用いて得られた配列変異型は、本方法を実施している間に導入された可能性があるN-グリコシル化部位についてチェックすることができる。
重複配列も除去されるべきである。
必要に応じて、結合アフィニティの喪失をさらに増加させるために、CDR-H3の顕著な(相互作用しやすい)位置においてアラニン置換を行うことができる。
本発明による方法の最終出力は、出発抗体のVH配列およびVL配列の変異型の組である。これらの配列の組み合わせは、異なる退化の度合いを有する抗体変異型、すなわち、元の生殖細胞系列残基によって置換されたただ1つの成熟した位置を有し得る分子、VHおよび/またはVL中にいくつかの生殖細胞系列置換を有する分子から、生殖細胞系列配置中のCDR-H1およびCDR-H2のみならず、VLの全てのCDRを有する分子までを定義する。
本発明による方法の具体例
本発明による方法は、特定の抗体を用いて以下に例示される。これは単に例示として行われ、本発明の限定と解釈されるべきではなく、本発明の真の範囲は添付の特許請求の範囲に記載されている。
本発明による方法は、異なる結合特異性を有する3つの異なる抗体:米国特許第9,446,146号に記載されているような抗CD138抗体、米国特許第6,870,034号に記載されているような抗Her2/c-neu抗体(Hudziakら、1989も参照)、および米国特許第6,217,866号に記載されているような抗EGFR/Her1抗体を用いて以下で実証され、全て参照により本明細書に組み込まれる。
これらの抗体の配列を本発明による方法で処理して、各V配列に対するVHおよびVLの逆突然変異を定義する。その後、これらをVL-VH対として組み合わせて抗体変異型を生成した。これらの変異型(Kabat位置によって定義される、各鎖について高い抗原接触スコアを有するものが選択されている(JohnsonおよびWu、2000))および得られたVH-VL組み合わせを以下の表1に列挙する。
(表1)異なる抗体のVHおよびVLの変異型。位置は、Kabat番号付けスキームに従って定義される。*CDR1およびCDR2についてのみ定義されるVHの「生殖細胞系列」。元の入力抗体から逸脱しない配列は、HwおよびLw(「野生型」)と呼ばれ、CDRが生殖細胞系列に完全に復帰した配列(H-CDR3を除く)は、LgおよびHg*(「生殖細胞系列」)と呼ばれる。
Figure 2022528387000016
「-」は変化しないことを示す。
HEK細胞中でのCMVプロモーター駆動一過性発現を介して、表1に列挙される抗体変異型を、ヒト化IgG1分子として産生させた(実施例およびGroteら、2012;Thoreyら、2016を参照)。続いて、細胞培養上清中に分泌された組換え抗体を、それらの親抗体と同一の手段によって、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー、その後SECを適用して精製した。全ての変異型は、凝集する傾向が低く、標準的な精製手順との完全な適合性を有する「良性の」挙動を示した。SECおよびSDS-PAGEによって実証されるように、全ての抗体誘導体を均一に精製することができた。抗体変異型の発現収量は、50~300mg/L培養上清の範囲で、それらのそれぞれの親抗体の発現収量と同様であった。各産生された抗体の正しい組成および同一性を、エレクトロスプレーイオン化質量分析法によってさらに検証した。28個の産生された変異型のうちのいずれも、発現、精製およびさらなる取り扱い中に異常な/逸脱した特性または問題を伴わなかった。これは、本発明による方法によるFv中への変異の導入が、親抗体の生物物理学的特性または発現特性を変化させないことを示す。
変異型のアフィニティは、(一価結合を評価するために)分析物として単量体抗原を用いる表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して決定した。それらの親抗体と比較した変異型の可変領域のオン速度およびオフ速度ならびに解離定数(K)を、抗CD138抗体については図3に、抗Her2/c-neu抗体については図4に、抗EGFR/Her1抗体については図5に示す。
図3~図5から、本発明の方法によって、全ての特異性(CD138、Her2/c-neuおよびEGFR/Her1)の変異型を生成することができるが、アフィニティは異なることが分かる。これらの抗体を生成するために導入された変異は、オン速度およびオフ速度に影響を及ぼした。
全ての抗体誘導体のK(k/k)は常に、親分子と比較して同一の/類似のまたは低下したアフィニティを示した。オン速度の増加を示した変異型でさえ、より速いオン速度がさらに速いオフ速度によって過剰に相殺された変異型のように(例えば、CD138 Hb-Lg抗体、図3)、低下したアフィニティ(K)でそれらのそれぞれの抗原を結合した。異なる個々の変異およびオン速度とオフ速度の変異の組み合わせの(およびその結果生じるKへの)影響は、図6に、親抗CD138抗体およびその変異型のSPRプロファイルとして例示的に示されている。
アビディティ増強特異性は、一価様式で抗原を結合/保持しないが、アビド設定で抗原結合を示す抗体を必要とする。その結果、分析物として単量体抗原を用いたSPR分析は、特異的結合の完全な欠如を示す。しかしながら、同じ抗体は、二価の抗原接触を介したアビディティをカバーするSPRアッセイにおいて特異的抗原結合を示す。図7は、本発明による方法がそれらの特徴を有する抗体を生成することを示す。
効果的な結合のためにアビディティを必要とする抗体の一例は、抗体を固定化し、分析物として単量体抗原を適用するときにSPRによって抗原結合を検出/評価することができないCD138結合抗体Hg-Lwである(図6、中央のセンソグラム)。アビド結合アッセイ(図7、中央のセンソグラム)で、すなわち、SPR設定を逆にする(標的抗原の高密度固定化後に二価抗体でプローブする)ことにより同じ抗体を取り扱うことによって、特異的結合を「正常な」オン速度および速いオフ速度で検出することができる。アビディティ増強結合を示す抗体変異型の他の例は、極めて低いアフィニティで一価に結合するが(K3.9E-09または8.5E-09M)、アビディティを介して高い親和性結合特性を保持する(それぞれ、K8.0E-10および1.0E-10M)抗EGFR/Her1抗体の軽鎖生殖細胞系列逆変異されたHw-LbまたはHw-Lg変異型である。親抗体および変異型抗体のアビディティ駆動アフィニティ測定の結果を図8(抗CD138抗体)、図9(抗Her2/c-neu抗体)および図10(抗EGFR/Her1抗体)に示す。
抗体Fv領域を低下したアフィニティの方向に変異させる場合に対処する必要がある1つの懸念は、これが特異性に影響を及ぼし得ることである。特に、一般的な粘着性または多反応性が、このような変更によって導入されることがあり得、その例は、アラニン置換によって導入された低下したアフィニティを有する抗体について以前に報告されている(Chuangら、2015;Zhuら、2011)。したがって、カルジオリピン、ヘパリン、副甲状腺ホルモン、DNA、ヘモシアニン、ストレプトアビジン、BSA、HSP70、インスリン、ゼラチン、アルブミン、ヒストン、および以前に記載されたような大腸菌由来の全細胞溶解物(Miller,PaulsおよびFritzler、1991;Mouquetら、2010;Khandelwalら、2018;TateおよびWard、2004;FinneyおよびKelsoe、2018;Kellyら、2017)などの確定されたタンパク質を含む無関係な抗原の多様なパネルに親抗体および変異抗体を曝露することによって、多反応性評価を行った。陽性対照としての役割を果たすために、同族抗原を同じELISAアッセイにおいて同時に検出した。
これらの分析の結果は、本発明による方法を介したアフィニティ低下が特異性に影響せず、多反応性を導入しないことを確認する。親CD138結合剤、例えば(図11)は、その同族抗原に対して強い反応性を示すが、大腸菌溶解物への曝露時の弱いシグナルを除いて、他のプローブに対しては検出可能な反応性を示さない。同様に、本発明による方法を用いて得られた前記抗体の変異型は、増加したまたはさらなる非特異的シグナルを誘発しない。また、本発明による方法を用いて得られた抗Her2/c-neu抗体(図12)および抗EGFR/Her1抗体(図13)の変異型は、多反応性評価において増加したまたは追加の非特異的シグナルを示さなかった。したがって、本発明による方法は、低下したアフィニティを有するが、多反応性を導入することなくそれらの特異性を保持する抗体を生成する。
当技術分野による比較例
抗体のアフィニティを調節するために現在最も頻繁に適用されている方法は、アラニンによるCDR残基の置換(AlaR)である。置換位置は、ランダム走査または構造に基づく選択(Hongoら、2000;Vajdosら、2002;Kortemmeら、2004)のいずれかによって定められる。本発明による方法とAlaR手順とを比較するために、親抗体のそれぞれについて、親抗体から逸脱した位置に生殖細胞系列残基の代わりにアラニンを有する変異型を作製した(表2参照)。
(表2)CD138、EGFR/Her1およびHer2/c-neuのAlaR変異型。位置は、Kabat番号付けスキームに従って定義される。*現在同じ位置にアラニン残基を有している、以前に「生殖細胞系列」として定義されていた配列。
Figure 2022528387000017
「-」は変化しないことを示す。
対応する親抗体および本発明由来の抗体とのAlaR由来抗体の結合特性の比較を図15~図26に示す。
興味深いことに、本発明による方法およびAlaRは、異なる特性を有する抗体での3つの例のうち2つをもたらした(表3)。
(表3)「生殖細胞系列」対AlaR変異型のアフィニティ。アフィニティは、一価(表の上部)および二価結合様式(表の下部)で決定した。
Figure 2022528387000018
「生殖細胞系列」CD138結合剤(本発明に従って作製)およびAlaR変異型はいずれも、親抗体と比較して大幅に低下した結合を示した。Her結合抗体は、本発明による方法とAlaR由来変異型を比較すると、異なる特性を示した。多反応性アッセイも行った(図14)。本発明により得られたHer2/c-neu誘導体は、親IgGと比較して有意に低下したアフィニティを示したが、依然として一価および二価アッセイ設定で結合することができたのに対して、AlaRは変異型(同じ位置での置換)を生成したが、Her2/c-neuへの結合を喪失させた(一価では完全に喪失、アビディティアッセイでは極めて弱い/検出不能まで低下)。親抗体のK値は、図3~図5および図8~図10ならびに「実施例2」の表を参照されたい。
このように、本発明による方法は、特に(多反応性なしに)特異性を保持し、広範囲の低下したアフィニティをカバーする抗体の組を作製する必要がある場合に、AlaRよりも信頼性が高い。この理論に束縛されるものではないが、本発明による方法を適用することにより、アフィニティの低下は多反応性の増加を伴わず、より予測可能なアフィニティ調節ももたらすと想定される。これは、例えば、どちらかと言えば予測不可能な様式でアフィニティを調節する、生殖細胞系列残基に代わるアラニンでの同じ位置の変異に関して見ることができる。AlaRによって作製された抗体のアフィニティは、アフィニティに対する影響なし(無効)から徐々に減少したアフィニティ(所望される)ないし結合の完全な喪失(所望されない)まで及んだ。これに対して、本発明による方法は、改変の程度が増大すると次第に低下したアフィニティを有する変異型の組を同じ親抗体の組に対して確実に生成した。
上記を要約すると、本発明による方法は、突然変異由来と明確に確定することができる残基のみが復帰されており、その結果、全ての動物/ヒト由来のL鎖CDRならびにH鎖のCDR1およびCDR2に適用され得ると述べることができる。それらのそれぞれの生殖細胞系列と対比してCDR中に多くの変異を有する抗体の場合には、生殖細胞系列から逸脱する各残基に対して抗原接触の可能性を考慮に入れることによって、生殖細胞系列置換および組み合わせについて好ましい選択を定義することによって、数変異型(number variants)を制御することができる。
本発明による方法は、いくつかの工程において構造データを使用するが、入力構造の専門家による検討を必要としない。
あるいは、本発明による方法は、所与の残基の平均溶媒露出されている表面積およびその他の構造的特徴が、抗体-抗原相互作用の可能性に関する統計と同様に、前処理された構造データベースから推定される完全に配列ベースで実施することができる。
本発明による方法では、H鎖CDR3はその元の組成で完全に保持されている。その結果、本発明による方法を用いて産生された最も高度の修飾を有する抗体は、全てのL鎖CDRならびにH鎖のCDR1および2中に生殖細胞系列配列を有するが、親抗体のH鎖CDR3を保持する。
以下の実施例、配列および図面は、本発明の理解を助けるために提供されており、本発明の真の範囲は、添付の特許請求の範囲に記載されている。本発明の要旨から逸脱することなく、記載された手順に変更を加えることができることが理解される。
B細胞における抗体成熟。 本発明による方法を用いた抗体の脱成熟化。 本発明による方法を用いて得られた抗体変異型のそれぞれの抗原への一価結合を示すオン/オフ速度プロット。表面プラズモン共鳴を適用して、結合速度論の差を測定した。このプロットは、表1の抗CD138抗体変異型のデータを示す。 本発明による方法を用いて得られた抗体変異型のそれぞれの抗原への一価結合を示すオン/オフ速度プロット。表面プラズモン共鳴を適用して、結合速度論の差を測定した。このプロットは、表1の抗Her2/c-neu抗体変異型のデータを示す。 本発明による方法を用いて得られた抗体変異型のそれぞれの抗原への一価結合を示すオン/オフ速度プロット。表面プラズモン共鳴を適用して、結合速度論の差を測定した。このプロットは、表1の抗Her1抗体変異型のデータを示す。 親抗CD138抗体および本発明による方法を用いて得られた変異型のCD138への結合。分析物として単量体のCD138タンパク質を用いた表面プラズモン共鳴は、一価結合を評価する。 親抗CD138抗体および本発明による方法を用いて得られた変異型のCD138への結合。分析物として単量体のCD138タンパク質を用いた表面プラズモン共鳴は、二価結合を評価する。 本発明による方法を用いて得られた抗体変異型のそれぞれの抗原への二価結合を示すオン/オフ速度プロット。表面プラズモン共鳴を適用して、結合速度論の差を測定した。このプロットは、表1の抗CD138抗体変異型のデータを示す。 本発明による方法を用いて得られた抗体変異型のそれぞれの抗原への二価結合を示すオン/オフ速度プロット。表面プラズモン共鳴を適用して、結合速度論の差を測定した。このプロットは、表1の抗Her2/c-neu抗体変異型のデータを示す。 本発明による方法を用いて得られた抗体変異型のそれぞれの抗原への二価結合を示すオン/オフ速度プロット。表面プラズモン共鳴を適用して、結合速度論の差を測定した。このプロットは、表1の抗Her1抗体変異型のデータを示す。 本発明による方法を用いて得られた抗CD138抗体変異型のELISAをベースした多反応性評価。X軸:370nmでの吸収。 本発明による方法を用いて得られた抗Her-2/c-neu抗体変異型のELISAをベースした多反応性評価。X軸:370nmでの吸収。 本発明による方法を用いて得られた抗EGFR/Her1抗体変異型のELISAをベースした多反応性評価。X軸:370nmでの吸収。 本発明による方法およびアラニンスキャニングを用いて得られた抗CD138抗体変異型のELISAをベースした多反応性評価。X軸:370nmでの吸収。 対応する親抗体および本発明由来の抗体とのAlaR由来の抗CD138抗体の結合特性の比較。オン/オフ速度プロットが示されている。 対応する親抗体および本発明由来の抗体とのAlaR由来の抗CD138抗体の結合特性の比較。Hw-Lwの組み合わせについてのアフィニティ媒介性およびアビディティ媒介性結合速度論に基づくSPRプロファイルが示されている。 対応する親抗体および本発明由来の抗体とのAlaR由来の抗CD138抗体の結合特性の比較。Hg-Lgの組み合わせについてのアフィニティ媒介性およびアビディティ媒介性結合速度論に基づくSPRプロファイルが示されている。 対応する親抗体および本発明由来の抗体とのAlaR由来の抗CD138抗体の結合特性の比較。Hala-Lalaの組み合わせについてのアフィニティ媒介性およびアビディティ媒介性結合速度論に基づくSPRプロファイルが示されている。 対応する親抗体および本発明由来の抗体とのAlaR由来の抗Her2抗体の結合特性の比較。オン/オフ速度プロットが示されている。 対応する親抗体および本発明由来の抗体とのAlaR由来の抗Her2抗体の結合特性の比較。Hw-Lwの組み合わせについてのアフィニティ媒介性およびアビディティ媒介性結合速度論に基づくSPRプロファイルが示されている。 対応する親抗体および本発明由来の抗体とのAlaR由来の抗Her2抗体の結合特性の比較。Hg-Lgの組み合わせについてのアフィニティ媒介性およびアビディティ媒介性結合速度論に基づくSPRプロファイルを示す。 対応する親抗体および本発明由来の抗体とのAlaR由来の抗Her2抗体の結合特性の比較。Hala-Lalaの組み合わせについてのアフィニティ媒介性およびアビディティ媒介性結合速度論に基づくSPRプロファイルを示す。 対応する親抗体および本発明由来の抗体とのAlaR由来の抗EGFR/Her1抗体の結合特性の比較。オン/オフ速度プロットが示されている。 対応する親抗体および本発明由来の抗体とのAlaR由来の抗EGFR/Her1抗体の結合特性の比較。Hw-Lwの組み合わせについてのアフィニティ媒介性およびアビディティ媒介性結合速度論に基づくSPRプロファイルが示されている。 対応する親抗体および本発明由来の抗体とのAlaR由来の抗EGFR/Her1抗体の結合特性の比較。Hg-Lgの組み合わせについてのアフィニティ媒介性およびアビディティ媒介性結合速度論に基づくSPRプロファイルを示す。 対応する親抗体および本発明由来の抗体とのAlaR由来の抗EGFR/Her1抗体の結合特性の比較。Hala-Lalaの組み合わせについてのアフィニティ媒介性およびアビディティ媒介性結合速度論に基づくSPRプロファイルを示す。
引用
Figure 2022528387000019
Figure 2022528387000020
材料および方法
全ての構造解析は、BIOVIA Discovery Studio(’’Dassault Systemes BIOVIA,Discovery Studio 2017 R2,San Diego:Dassault Systemes’’2016)およびPipeline Pilot(’’Dassault Systemes BIOVIA,Discovery Studio 2017 R2,San Diego:Dassault Systemes’’2016)を用いて行う。
実施例1
発現および精製
hCD138、hHer2/c-neuおよびhEGFR/Her1に対する一価IgG抗体のアミノ酸配列を同定した。これらの配列をマスターとして使用して、アフィニティ変異型を作製した。全ての抗体を非接着性HEK-293細胞中で一過性に発現させ、AEktaシステム(GE Healthcare)を使用したプロテインAアフィニティークロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィーを使用して精製した(Groteら、2012;Thoreyら、2016)。抗体同一性を検証するために、TriVersa NanoMate(Advion,Ithaca,NY)を装備したmaXis Q-TOF(Bruker Daltonics、Bremen、Germany)でエレクトロスプレーイオン化質量スペクトルを取得した。
Figure 2022528387000021
いずれのタンパク質も異常に挙動せず、アフィニティ変異型の発現レベルは、それらの対応する非変異WT IgGと同等またはそれより高かった。このことは、本発明による方法に基づいて導入された変異が十分に許容され、折り畳みおよび抗体構造に対して個々のまたは組み合わされた突然変異の影響が存在しないことを示す。組み合わせの組の中で組み合わせた際にH-変異型およびL-変異型の構造的不適合は存在せず、分子量は各抗体について正しいと判定された。
Figure 2022528387000022
実施例2
抗体速度論を決定するための表面プラズモン共鳴
BIAcore T200装置(GE Healthcare)を使用して、対応する抗原の細胞外マトリックスドメインに対する全ての抗体アフィニティ変異型(抗hCD138、抗hHer2/c-neu、抗hEGFR/Her1)の速度論を評価した(Schlothauerら、2016を参照されたい。)。一価(アフィニティによって駆動される)および二価(アビディティによって駆動される)結合様式の両方で、会合および解離を決定した。
CD138アフィニティSPR
HBS-P+(GE Healthcare)中の30nMの抗CD138抗体アフィニティ変異型の溶液を、CM5センサーチップ上の抗huFc抗体(GE Healthcare BR-1008-39)によって60秒間捕捉した(捕捉レベル約900RU)。その後、30μl/分の流速で150秒の会合時間および600秒の解離時間を使用して、66nM~600nMの希釈系列において、hCD138(R&D-S.2780-TS)との相互作用を分析した。全てのBIAcore T200実験は、HBS-P+(GE Healthcare)pH7.4の泳動緩衝液中および25°Cで行った。T200評価ソフトウェアを使用して結合曲線を評価し、結合特性の計算には1:1ラングミュア結合モデルを使用した。
CD138アビディティSPR
アビディティによって駆動されるCD138への結合速度論を決定するために、pH4.5および1μg/mlでアミンカップリングキット(GE Healthcare)を使用して、240応答単位(RU)になるようにCM5チップ上に抗原を固定した。その後、60μl/分の流速で120秒の会合時間および600秒の解離時間を使用して、HBS-P+(GE Healthcare)中33nM~300nMの希釈系列において、CM5表面上のCD138と抗CD138抗体アフィニティ変異型の相互作用を分析した。表面再生は、3M MgClによる60秒の洗浄工程によって行った。全てのBIAcore T200実験は、HBS-P+(GE Healthcare)pH 7.4泳動緩衝液中および25°Cで行った。BIAcore T200評価ソフトウェアを使用して結合曲線を評価し、結合特性の計算には1:1ラングミュア結合モデルを使用した。Interaction Mapソフトウェア(Ridgeview Instruments AB)を用いて、異種相互作用のさらなる分析を行った。
Her2/c-neuアフィニティSPR
HBS-P+(GE Healthcare)中の5nMの抗Her2/c-neu抗体アフィニティ変異型を、CM5センサーチップ上の抗huFc抗体(GE Healthcare BR-1008-39)によって30秒間捕捉した(捕捉レベル約100RU)。その後、150秒の会合時間および720秒の解離時間を用いて、HBS-P+(GE Healthcare)中に希釈された19nM~300nMの濃度で、hHer2/c-neu ECDを注入した。全てのBIAcore T200実験は、HBS-P+(GE Healthcare)pH 7.4泳動緩衝液中および25°Cで行った。T200評価ソフトウェアを使用して結合曲線を評価し、結合特性の計算には1:1ラングミュア結合モデルを使用した。
Her2/c-neuアビディティSPR
アビディティによって駆動される結合速度論を決定するために、pH4.5および1μl/分でアミンカップリングキット(GE Healthcare)を使用して、60応答単位(RU)になるようにCM5チップ上にhHer2/c-neu ECDを固定した。その後、60μl/分の流速で、150秒の会合時間および600秒の解離時間を使用して、HBS-P+(GE Healthcare)中7nM~600nMの希釈系列において、表面上のhHer2/c-neu ECDと抗hHer2/c-neu抗体変異型との相互作用を分析した後、3M MgClでの60秒間の洗浄工程による表面の再生を行った。全てのBIAcore T200実験は、HBS-P+(GE Healthcare)pH 7.4泳動緩衝液中および25°Cで行った。BIAcore T200評価ソフトウェアを使用して結合曲線を評価し、結合特性の計算には1:1ラングミュア結合モデルを使用した。
EGFR/Her1アフィニティSPR
HBS-P+(GE Healthcare)中の5nMの抗EGFR/Her1抗体アフィニティ変異型を、CM5センサーチップ上の抗huFc抗体(GE Healthcare BR-1008-39)によって30秒間捕捉した(捕捉レベル約100RU)。その後、60μl/分の流速で120秒の会合時間および600秒の解離時間を使用して、19nM~300nMの希釈系列において、hEGFR/Her1 ECD抗原との相互作用を分析した。全てのBIAcore T200実験は、HBS-P+(GE Healthcare)pH7.4泳動緩衝液中および25°Cで行った。BIAcore T200評価ソフトウェアを使用して結合曲線を評価し、結合特性の計算には1:1ラングミュア結合モデルを使用した。
EGFR/Her1アビディティSPR
約200応答単位(RU)のhEGFR/Her1 ECD抗原でSAチップをコーティングした。120秒の会合時間および600秒の解離時間で、HBS-P+(GE Healthcare)中の1.1nM~90nM抗hEGFR/Her1抗体の希釈系列および60μl/分の流速を使用して、結合速度論を決定した。表面再生は、30秒の10mM NaOHの注入によって行った。全てのBIAcore T200実験は、HBS-P+(GE Healthcare)pH7.4泳動緩衝液中および25°Cで行った。BIAcore T200評価ソフトウェアを使用して結合曲線を評価し、結合特性の計算には1:1ラングミュア結合モデルを使用した。Interaction Mapソフトウェア(Ridgeview Instruments AB)を用いて、異種相互作用のさらなる分析を行った。
一価アッセイ設定で測定された抗体および対応する変異型のオン速度(k)およびオフ速度(k)ならびにK値を以下の表に列挙する。
「有効なシグナルなし」:弱い相互作用を示す可能性があるいくつかのCD138結合剤について非常に小さい「オン」シグナルが観察されたが、これらの一価SPR分析に基づいては、真の結合事象と呼ぶことができない。
Figure 2022528387000023
二価アッセイ設定で測定された抗体および対応する変異型のオン速度およびオフ速度ならびにK値を以下の表に列挙する。
「有効な結果なし」:弱い相互作用を示す可能性があるいくつかのCD138結合剤について非常に小さい「オン」シグナルが観察されたが、これらの一価SPR分析に基づいては、真の結合事象と呼ぶことができない。
Figure 2022528387000024
実施例3
多反応性アッセイ
非特異的抗原および特異的抗原を陽性対照として使用して、ELISAベースの多反応性アッセイを行った。4°Cで一晩、PBS中0.1μg/mL~2μg/mLの濃度で、384ウェルNunc-Maxi Sorpプレートに抗原をコーティングした。個々の工程の間に、PBST(1×PBS+0.1% Tween 20)でプレートを洗浄した。撹拌せずに室温で1時間、ブロッキングを行った(PBS中2%BSA+0.2% Tween 20)。撹拌せずに室温で1時間、抗体試料(One Step ELISA緩衝液中1μg/mL;1×PBS+0.5% BSA+0.05% Tween 20)をインキュベートした。二次抗体(抗ヒトIgG Fc特異的;Jackson#109-036-098;希釈OSEP中に1:7000)を添加し、400rpmでマイクロプレートシェーカー上において、室温で1時間インキュベートした。検出基質TMBを添加し(撹拌せずに4分)、Tecan Safire II ELISAリーダーを使用して、370nmの波長および492nmの参照波長で吸光度を測定した。370nmでのそれぞれの生の測定信号から492nmでの生の測定信号を差し引いた(吸光度補正)。それぞれの抗原上の吸光度補正されたシグナルから、ブランクのウェル(二次抗体のみ)からの吸光度補正されたシグナルを差し引いた(ブランク補正)。全ての測定は、3つ組で行った。

Claims (10)

  1. 第1の細胞表面抗原に特異的に結合する第1の結合部位と、第2の細胞表面抗原に特異的に結合する第2の結合部位とを含み、前記第1および第2の抗原は同一の細胞上にある、二重特異性抗体
    の結合アフィニティを減少させるための方法であって、
    前記第1の結合部位は、哺乳動物のまたは哺乳動物化された結合部位であり、
    前記第1の結合部位は、少なくとも一対の免疫グロブリン軽鎖可変ドメインおよび免疫グロブリン重鎖可変ドメインであり、
    前記結合アフィニティを減少させることが、前記第1の結合部位のその抗原への前記結合アフィニティを減少させることであり、
    前記第1の結合部位中で、前記軽鎖可変ドメインのCDR中のまたは前記重鎖可変ドメインのCDR1もしくはCDR2中のまたは前記重鎖可変ドメイン中のCDR3の直前に位置する2つのフレームワーク位置中の位置において、少なくとも1つのアミノ酸残基を、前記哺乳動物のまたは哺乳動物化された結合部位のものと同じ哺乳動物種の生殖細胞系列免疫グロブリンアミノ酸配列中の前記位置に存在するアミノ酸残基に変異させることによって、
    前記二重特異性抗体の結合アフィニティを減少させるための方法。
  2. 前記生殖細胞系列免疫グロブリンアミノ酸配列が、前記哺乳動物種の全ての生殖細胞系列免疫グロブリンアミノ酸配列の配列アラインメントにおいて最も高い同一性を有する前記生殖細胞系列免疫グロブリンアミノ酸配列である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記重鎖可変ドメインの場合の前記生殖細胞系列免疫グロブリンアミノ酸配列の決定のために、前記重鎖可変ドメインのCDR1の最初の残基から前記重鎖可変ドメインのCDR2の最後の残基までを包含する配列断片のみが使用される、請求項1または2に記載の方法。
  4. 変異されるべき前記アミノ酸残基の側鎖が、溶媒露出されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 変異されるべき前記アミノ酸残基の側鎖がVH-VL相互作用に関与しない、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 変異されるべき前記アミノ酸残基の側鎖が前記抗原との相互作用に関与する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記変異された、哺乳動物のまたは哺乳動物化された結合部位が、多反応性を有しない、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記第2の結合部位が、免疫グロブリン軽鎖可変ドメインと免疫グロブリン重鎖可変ドメインの少なくとも第2の対であり、または前記第2の結合部位が第2の哺乳動物のもしくは哺乳動物化された結合部位であり、前記変異させることが前記第1のおよび前記第2の、哺乳動物のもしくは哺乳動物化された結合部位中の少なくとも1つのアミノ酸残基のものである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記哺乳動物がヒトである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記二重特異性抗体の少なくとも1つの結合部位の1価のアフィン結合を低下させることにより、アビド結合を増大させるための、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
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