JP2022184825A - Tgr-5活性化用組成物、glp分泌促進剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、TGR-5を活性化することができるTGR-5活性化用組成物、GLP分泌促進剤を提供することを課題とする。【解決手段】上記課題を解決するために、ニンジン抽出物を含有するTGR-5活性化用組成物、GLP分泌促進剤が提供される。また、前記ニンジン抽出物が根又は種子に由来することが好ましい。本発明によれば、TGR-5を活性化することができるTGR-5活性化用組成物、GLP分泌促進剤を提供することができる。【選択図】図1

Description

本発明は、TGR-5活性化用組成物、GLP分泌促進剤に関する。より詳しくは、医薬品、健康食品などの分野で用いるTGR-5活性化用組成物、GLP分泌促進剤に関する。
TGR-5(Transmembrane G protein-coupled Receptor-5:Gタンパク質共役型膜貫通型受容体-5)は胆汁酸を内因性のリガンドとする受容体タンパク質で、小腸、脂肪組織、骨格筋などのほぼすべての組織で発現しているタンパク質である。その中で、腸管L細胞に局在するTGR-5は、胆汁酸等によって刺激されると、インスリンの分泌を促進する働きをもつホルモンであるインクレチンの1種であるGLP-1(Glucagon-like peptide-1:グルカゴン様ペプチド-1)分泌を促進することが知られている。また、近年においては、骨格筋におけるTGR-5の機能も明らかになりつつあり、その作用が注目されている。
例えば、非特許文献1には、TGR-5刺激がグルコース代謝や脂質代謝に影響を及ぼすことが記載されている。また、非特許文献2には、食事によるオバクノン(TGR-5アゴニスト)の補給が、筋肥大を刺激し、TGR-5およびPPARγ経路を介して高血糖症と肥満を抑制することが記載されている。また、非特許文献3には、骨格筋におけるTGR-5の活性化が筋細胞の分化と筋肥大を促進することが記載されている。
H. Kim, et al.,Lab Anim Res. 2018;34(4):140-146. Horiba T.,et al.,Biochem Biophys Res Commun. 2015;463(4):846-52. Sasaki T. et al.,J Biol Chem. 2018 Jun 29;293(26):10322-10332.
上記のようにTGR-5を活性化することにより高血糖症や肥満などの様々な症状に対して効果が得られ、また、GLP-1の分泌を促進できることから、TGR-5を活性化する機能を有する新規の組成物などが求められている。
本発明は、TGR-5を活性化することができるTGR-5活性化用組成物、GLP分泌促進剤を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、ニンジン抽出物が強いTGR-5活性化作用を有するという知見に至り、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[4]を提供する。
[1]ニンジン抽出物を含有するTGR-5活性化用組成物。
本発明により、TGR-5を活性化することができるTGR-5活性化用組成物を提供することができる。
[2]前記ニンジン抽出物が根又は種子に由来することを特徴とする[1]に記載のTGR-5活性化用組成物。
この特徴により、より効果の高い、新規のTGR-5活性化用組成物を提供することができる。
[3]ニンジン抽出物を含有するGLP分泌促進剤。
本発明により、TGR-5を活性化することによりGLPの分泌を促進することができる。
[4]前記ニンジン抽出物が根又は種子に由来することを特徴とする[3]に記載のGLP分泌促進剤。
この特徴により、より効果の高い、新規のGLP分泌促進剤を提供することができる。
本発明によれば、TGR-5を活性化することができるTGR-5活性化用組成物、GLP分泌促進剤を提供することができる。
ニンジン種子抽出物(エタノール抽出)によるTGR-5活性化の試験結果を示す図である。 ニンジン根抽出物(ヘキサン抽出)によるTGR-5活性化の試験結果を示す図である。 本発明のニンジン抽出物によるGLP-1の分泌促進効果についての試験結果を示す図である。 ニンジン種子抽出物(超臨界二酸化炭素抽出)によるTGR-5活性化の試験結果を示す図である。 島ニンジン根抽出物(エタノール抽出)によるTGR-5活性化の試験結果を示す図である。 ニンジン根抽出物によるTGR-5アゴニスト作用を介したPGC1α誘導活性化の試験結果を示す図である。 in vivo試験におけるニンジン根抽出物のGLP-1分泌促進作用を示す図である。
以下、本発明のTGR-5活性化用組成物、GLP分泌促進剤について説明する。
なお、実施形態に記載するTGR-5活性化用組成物、GLP分泌促進剤については、本発明を説明するために例示したに過ぎず、これに制限されるものではない。
[TGR-5活性化用組成物]
本発明のTGR-5活性化用組成物は、ニンジン抽出物を含有することを特徴とする。本発明により新規のTGR-5活性化用組成物を提供することができる。
TGR-5は、胆汁酸を内因性のリガンドとする受容体タンパク質であり、小腸、脂肪組織、骨格筋などのほぼすべての組織で発現しているタンパク質である。TGR-5の活性化により、代表的な効果としては、小腸においてはGLP-1の分泌が促進され、その結果、糖代謝機能が促進される。また、褐色脂肪組織及び骨格筋においては、β酸化などのエネルギー代謝、熱産生、エネルギー産生、筋細胞の分化、筋肥大が促進される。更にTGR-5の活性化は白色脂肪の褐色化を促し、ベージュ脂肪細胞として褐色脂肪細胞と類似の熱産生やエネルギー産生等を亢進させる。また、マクロファージに発現する炎症性サイトカインの減少なども確認されている。
これらのことから、本発明のTGR-5活性化用組成物により、糖代謝改善、血糖降下、糖化予防・改善、脂質代謝改善、肥満抑制、筋合成促進、フレイル予防、腸管吸収および栄養素の同化の増大、抗炎症活性、消化管粘膜の治癒および修復、及び腸透過性の向上などの効果を得ることができる。本発明のTGR-5活性化用組成物は、特にGLP-1の分泌を介して、2型糖尿病への効果を得ることができる。
本発明に用いられるニンジン抽出物とは、セリ科ニンジン属の植物の植物体の抽出物である。本発明のニンジン抽出物に用いられる植物体とは、根、種子、葉、茎、花などが用いられる。TGR-5活性化の観点から、好ましくは根又は種子であり、より好ましくは種子である。
本発明に用いられるセリ科ニンジン属の植物としては、特に制限されないが、例えば、ニンジン(栽培種、学名:Daucus carota subsp. sativus (Hoffm.) Arcang.)、ノラニンジン(野生種、学名:Daucus carota)、その他のニンジンなどが挙げられる。ニンジンとしては、西洋系品種、東洋系品種などが挙げられる。西洋系品種としては、例えば、フラッキー(Flakkee)ニンジン、ナンテス(Nantes)ニンジン、五寸ニンジン、子安三寸ニンジン、ミニキャロット、パリジャンキャロット、ホワイトニンジン(例えばWhite Belgian)、黄ニンジン(例えばYellow Belgian)、紫ニンジンなどが挙げられる。東洋系品種としては、例えば、金時ニンジン、熊本長ニンジン、沖縄島ニンジン、金美ニンジン、黒ニンジンなどが挙げられる。ノラニンジンとしては、ノラニンジン(Wild carrot)、ノラニンジン亜種(Wild D. carota subspecies)などが挙げられる。これらの中でも、TGR-5活性化の観点から、好ましくはフラッキー(Flakkee)ニンジン、ナンテスト(Nantes)ニンジン、ホワイトニンジン、黄ニンジン、沖縄島ニンジン、ノラニンジン、ノラニンジン亜種であり、より好ましくはホワイトニンジン、黄ニンジン、沖縄島ニンジンである。
本発明のニンジン抽出物としては、水又は各種の有機溶媒による抽出物、水蒸気蒸留により得られる蒸留物、二酸化炭素を用いた超臨界抽出物、乾燥粉末、すりおろしたものやすりおろしたものから絞ったジュースなどが挙げられる。好ましくは、TGR-5活性化の観点から、有機溶媒による抽出物、水蒸気蒸留物、二酸化炭素を用いた超臨界抽出物である。
水又は各種の有機溶媒による抽出は、溶媒として、水のほか、各種の有機溶媒およびそれらの混合物を用い、公知の抽出方法で行うことができる。抽出操作を行う前に、原料をそのまま、または粗く細断したものを、疎水性もしくは親水性溶媒単独または混合有機溶媒で洗浄し、色素等の不要物を除去してもよい。疎水性溶媒としては、クロロホルム、エーテル、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、ジクロロメタン、石油エーテルおよびベンゼンなどが挙げられ、親水性溶媒としては低級アルコール(例、メチル、エチル、n-プロピル、イソブチルまたはブチルアルコールなど)、酢酸エチル、アセトン、イソプロピルアルコールおよびアセトニトリルなどが挙げられる。所望により原料に水を適宜加え、原料を湿潤させてもよい。
水で抽出を行うには、例えば、原料1重量部に対し、水0.5~10重量部を加え、40~120℃で、5分~2時間、好ましくは10~60分間、さらに好ましくは10~20分間抽出を行うことができる。このとき、撹拌により抽出効率を高めることもできる。また、抽出は、加熱還流により行うこともできる。抽出後、濾布、フィルターまたはメッシュ金網などを用いて濾過または圧搾を行う。この場合、加圧して作業効率を高めてもよい。また、別法として、遠心分離(1000~20000rpm)により抽出物を得ることもできる。回収率を高めるために、この抽出・濾過工程を1~5回繰り返すことができる。
有機溶媒で抽出を行うには、例えば、原料1重量部に対し、溶媒0.5~10重量部を加え、水での抽出と同様にして抽出物を得ることができる。用いる溶媒としては上記した疎水性、親水性溶媒を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができ、含水溶媒も使用できる。特に、上記のように抽出前に原料を疎水性溶媒で洗浄して色素等の不要物を除去する場合、および下記のように抽出後の粗抽出物を疎水性溶媒で洗浄する場合において、抽出に用いる溶媒としては、水、低級アルコール、50~80%(v/v)含水低級アルコールが好ましい。これらの低級アルコールとしては上記と同様のものを例示できる。溶媒の除去は、濾過、遠心分離、蒸留などの常法に従って行うことができる。
[GLP分泌促進剤]
本発明のGLP分泌促進剤は、ニンジン抽出物を含有することを特徴とする。またニンジン抽出物が根又は種子に由来することが好ましい。本発明のGLP分泌促進剤により、TGR-5を活性化することによりGLPの分泌を促進することができる。
GLP分泌促進剤を構成するニンジン抽出物については、上記本発明のTGR-5と同様でもよい。
GLPは、インスリンの分泌を促進する働きをもつホルモンであるインクレチンの1種であり、TGR-5の活性化により小腸などにおいて分泌される。TGR-5の活性化により分泌されるGLPとしては、GLP-1、GLP-2が挙げられる。GLP-1の機能としては、肥満抑制、糖代謝改善、血糖降下、糖化予防・改善などが挙げられる。GLP-2の機能としては、腸管機能の恒常性の維持、腸管吸収及び栄養素の同化の増大、抗炎症活性、消化管粘膜の治癒および修復、腸透過性の低下、及び腸間膜血流の増大などが挙げられる。
これらのことから、本発明のGLP分泌促進剤により、糖代謝改善、血糖降下、糖化予防・改善、肥満抑制、腸管吸収及び栄養素の同化の増大、抗炎症活性、消化管粘膜の治癒および修復、腸透過性の低下、及び腸間膜血流の増大などの効果を得ることができる。本発明のGLP分泌促進剤は、特にGLP-1の分泌を介して、2型糖尿病への効果を得ることができる。
[TGR-5活性化用組成物、GLP分泌促進剤の用途、剤型]
本発明のTGR-5活性化用組成物、GLP分泌促進剤は、医薬品、食品、動物用薬品、飼料等の用途に使用することができる。
上記したように本発明のTGR-5活性化用組成物は、TGR-5の活性化を介して、肥満抑制、糖代謝改善、血糖降下、糖化予防・改善、脂質代謝改善、筋合成促進、フレイル予防など、効果を発揮するため、TGR-5活性化用組成物を含む製剤は、以下の用途の剤として用いることができる。
(a)肥満抑制剤:主に骨格筋におけるエネルギー産生を介して肥満を抑制する剤。
(b)血糖降下剤:糖の細胞内への取り込みを増加させ、血糖値を降下させる剤。
(c)糖代謝改善剤:糖の取り込み、骨格筋におけるエネルギー産生などを介して生体の糖代謝の恒常性を維持し改善するための剤。
(d)糖化予防・改善剤:生体内でタンパク質と余分な糖が結びついてタンパク質が変性、劣化して、老化物質であるAGEs(糖化最終生成物)を生成することを予防し、生体の環境を改善する剤。
(e)脂質代謝改善剤:骨格筋におけるβ酸化などの脂質代謝を改善する剤。
(f)筋合成促進剤:筋細胞の分化と筋肥大を促進する剤。
(g)フレイル予防剤:筋細胞の分化と筋肥大を促進することにより、高齢化などによる身体の虚弱(フレイル)を予防する剤。
(h)消化管粘膜の治癒及び修復剤とは、消化管の粘膜細胞の増殖を促進して粘膜の損傷を治癒、修復する剤である。
(i)腸透過性の改善剤:腸管の吸収能を改善する剤である。
また、上記したように本発明のGLP分泌促進剤は、GLP分泌促進剤を介して、糖代謝改善、血糖降下、糖化予防・改善、肥満抑制、腸管吸収および栄養素の同化の増大、抗炎症活性、消化管粘膜の治癒及び修復、腸透過性の低下、及び腸間膜血流の増大などの効果を発揮するため、GLP分泌促進剤を含む製剤は、上記した肥満抑制剤、糖代謝改善剤、血糖降下剤、糖化予防・改善剤、消化管粘膜の治癒及び修復剤、及び腸透過性の改善剤などとして用いることができる。
食品としては、通常の食品の他、栄養補助食品、機能性食品、健康食品、特定保健用食品等に上記の効果を目的として本発明のTGR-5活性化用組成物、GLP分泌促進剤を添加して用いることができる。
TGR-5活性化用組成物、GLP分泌促進剤の形態は、医薬品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、糖衣錠、バッカル錠、コーティング錠、チュアブル錠などの錠剤、丸剤、散剤、ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤、顆粒剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤などの液剤、トローチ剤、加工食品、健康食品(栄養補助食品、栄養機能食品、病者用食品、特定保健用食品、機能性表示食品など)、サプリメント、病者向け食品(病院食、病人食、介護食など)、菓子、油脂類、乳製品、レトルト食品、レンジ食品、冷凍食品、調味料、健康補助食品、飲料、栄養ドリンクなどが挙げられる。
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらの実施例のみに制限されるものではなく、本発明の技術的思想内において様々な変形が可能である。
実験1.TGR-5活性化の確認
TGR-5の活性化を評価するために以下の手順でルシフェラーゼレポーターアッセイを構築し、TGR-5の活性化をルシフェラーゼ活性による発光を用いて評価した。
(ニンジン抽出物の調製)
ニンジン種子(オランダ産Nantes種)及び根(ドイツ産黄ニンジン種)はエイチホルスタイン社より入手した。
ニンジン種子については、ミキサーにて粉砕したニンジン種子20gに約10倍量のエタノール(富士フィルム和光純薬社)で室温、マグネットスターラーにて撹拌し、約1週間抽出した。その後、不溶物を濾紙にて吸引除去し、濾液はロータリーエバポレーターを用いて減圧濃縮し、5.8gの抽出物(乾燥物)を得た。
ニンジン根については、ミキサーにて粉砕したニンジン根の粉砕物20gに約10倍量のヘキサン(富士フィルム和光純薬社)を加え、室温、マグネットスターラーにて撹拌し、約1週間抽出した。その後、不溶物を濾紙にて吸引除去し、濾液はロータリーエバポレーターを用いて減圧濃縮し、3.6gの抽出物(乾燥物)を得た。
それぞれの抽出物はジメチルスルホキシド(以下、「DMSO」という。)(富士フィルム和光純薬社)に再溶解し、各試験に供した。
(試薬、プラスミドベクター)
ヒトTGR-5のN末端にヘマグルチニン(HA)エピトープタグを付与するよう設計されたcDNAを挿入したpcDNA3.1発現ベクター(pcDNA3.1 HA-TGR5)は、GenScrip社より入手した。cAMP応答配列(CRE)をプロモーター領域に連結するcAMP依存ルシフェラーゼレポーターベクター(pGL4.29)はプロメガ社より入手した。
(ルシフェラーゼレポーターアッセイ系の構築)
以下の手順で、実験に使用するHEK/Luc安定発現細胞、及びHEK/HA-TGR5-Luc安定発現細胞を作製した。
10%FBS含有DMEM(gibco社製)にて培養したヒト腎臓由来HEK293細胞(ATCC)に、pGL4.29をトランスフェクションし、hygromycin B 耐性(最終濃度0.25mg/mL)を獲得した細胞をHEK/Luc安定発現細胞とした。更に、樹立したHEK/Luc安定発現細胞にpcDNA3.1 HA-TGR5をトランスフェクションし、G418及びhygromycin B耐性となった細胞をHEK/HA-TGR5-Luc安定発現細胞として実験に供した。
(cAMP依存ルシフェラーゼレポーターアッセイ)
透明底96ウェル白プレート(コーニング社製)に2×10細胞となるようHEK/HA-TGR5-Luc安定発現細胞を播種し、24時間後、被験物質のニンジン種子抽出物、ニンジン根抽出物あるいはDMSO(コントロール)を各濃度にて添加した。37℃、5時間の反応後、Bright-Glo(登録商標)Luciferase Assay System(プロメガ社製)を用いて発光させ、その強度をルミノメーター(テカン社製)を用いて検出し、ルシフェラーゼ活性とした。本アッセイは細胞内cAMP濃度の上昇をレポーター遺伝子であるルシフェラーゼの活性により評価する方法である。また、同様の操作をTGR-5の発現がないHEK/Luc安定発現細胞でも行い、被験物質のTGR-5受容体に対する反応特異性を検証した。実験の結果を図1、2に示す。
(実験結果)
ルシフェラーゼレポーターアッセイを実施した結果、ニンジン種子及び根抽出物にTGR-5アゴニスト活性を見出した。図1ではニンジン種子抽出物添加により濃度依存的にルシフェラーゼ活性が高まることを示している。すなわちニンジン種子抽出物の刺激によりHEK/HA-TGR5安定発現細胞においてcAMP濃度上昇が引き起こされていることを示している。
また、この作用はTGR-5を発現しないHEK/Luc安定発現細胞では見られなかったことから、TGR-5受容体を介したアゴニスト作用であることが明らかとなった。ニンジン根抽出物のルシフェラーゼレポーターアッセイ結果を図2に示す。ニンジン種子と同様、ニンジン根抽出物も、TGR5受容体を介したアゴニスト作用を有していることを示している。
実験2.GLP-1分泌の確認
実験1においてニンジン種子及び根抽出物にTGR-5アゴニスト活性を見出したことから、その機能としてGLP-1分泌を指標とした評価を以下に示す手順で実施した。
(GLP-1分泌の評価系の構築)
実験に使用するSTC-1/HA-TGR5安定発現細胞を以下の手順で作成した。
10%FBS含有DMEM(gibco社製)にて培養したマウス小腸由来STC-1細胞(ATCCより入手)に、上記入手したプラスミドのpcDNA3.1 HA-TGR5をFugene HD(プロメガ社製)を用いてトランスフェクションし、48時間後から最終濃度1mg/mLとなるようG418-sulfate(Wako社製)を加えて培養し、G418耐性を獲得した細胞をSTC-1/HA-TGR5安定発現細胞として以下の実験に使用した。
(GLP-1分泌の評価)
被験物質としては、実験1と同様のニンジン種子抽出物とニンジン根抽出物、及び陰性対象としてDMSO(コントロール)を用いて行った
実験は、24ウェルプレートに5×10細胞となるようSTC-1/HA-TGR5安定発現細胞を播種し、48時間後、上記した被験物質を各濃度(12.5μg、25μg、50μg)にて添加した。37℃、24時間の反応後、培養上清を回収し、14,000rpm、5分の遠心分離後、上清をGLP-1測定用サンプルとした。GLP-1の検出は、Human GLP-1(7-36 amide) Immunoassay kit(パーキンエルマージャパン社製)を用いて行い、Alpha化学増幅型ルミネッセンス プロキシミティホモジニアスアッセイ(パーキンエルマージャパン社製、Exitation:680nm、Emission:615nm)によりAlpha signalを測定した。実験の結果は、被験物質の結果のAlpha signalを陰性対象の結果のAlpha signalで除した比の値で示した。実験の結果を図3に示す。
(実験結果)
図3に示すように、ニンジン種子及び根抽出物はGLP-1分泌を促進した。ニンジン種子及び根抽出物のGLP-1分泌促進活性は、ニンジン種子抽出物の方がより低濃度にて強くGLP-1分泌を促進し、GLP-1分泌促進効果がより高いことが示された。この結果は実験1のTGR-5アゴニスト活性の結果と一致する。
以上の結果より、ニンジン種子抽出物及びニンジン根抽出物はTGR-5アゴニスト活性を有し、その機能としてGLP-1分泌を促進することが明らかとなった。
実験3.超臨界二酸化炭素を用いたニンジン種子抽出物のTGR-5アゴニスト活性の確認
実験1においてニンジン種子及び根のエタノール抽出物について、TGR-5アゴニスト活性を見出した。実験3では、超臨界二酸化炭素を用いて得られた抽出物について、TGR-5アゴニスト活性を評価した。
(ニンジン抽出物の調製)
エイチホルスタイン社より入手したニンジン種子(ノラニンジン)の粉砕物(ミキサーにて粉砕)70gを超臨界抽出装置(三菱化工機)に供し、25MPa、40℃、90分の条件下、抽出を実施し、ニンジンの成分が溶解した超臨界流体を、500mLのエタノール(富士フィルム和光純薬社、99.5%)を充填した回収槽に投入し、超臨界二酸化炭素抽出物をエタノールに溶解させた。その後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒除去し、超臨界二酸化炭素抽出物として3.36gを得た。抽出物のTGR-5アゴニスト活性評価は、DMSOに再溶解させ、試験に用いた。
(cAMP依存ルシフェラーゼレポーターアッセイ)
実験1と同様に、cAMP依存ルシフェラーゼレポーターアッセイを実施した。実験の結果を図4に示す。
(実験結果)
ルシフェラーゼレポーターアッセイを実施した結果、超臨界二酸化炭素抽出したニンジン種子抽出物にTGR-5アゴニスト活性を見出した(図4参照)。図4では、超臨界二酸化炭素抽出したニンジン種子抽出物は濃度依存的にルシフェラーゼ活性が高まることを示している。すなわちニンジン種子抽出物の刺激によりHEK/HA-TGR5安定発現細胞においてcAMP濃度上昇が引き起こされていることを示している。
また、この作用はTGR-5を発現しないHEK/Luc安定発現細胞では見られなかったことから、TGR-5受容体を介したアゴニスト作用であることが明らかとなった。
以上の結果よりニンジン種子の抽出方法としてエタノールを用いた抽出方法と同様、超臨界二酸化炭素抽出法においてもニンジン種子抽出物は、TGR-5受容体を介したアゴニスト作用を有していることを示している。
実験4.島ニンジン根抽出物のTGR-5アゴニスト活性の確認
実験1において西洋系品種のニンジン種子及び根のエタノール抽出物について、TGR-5アゴニスト活性を見出した。実験3では、東洋系品種である沖縄島ニンジンについて根抽出物を用いてTGR-5アゴニスト活性を評価した。
(島ニンジン根の抽出)
株式会社琉宮青果社より入手した島ニンジン根420gを輪切りに切断後、凍結乾燥により水分除去し40.7gの乾燥物を得た。島ニンジン根乾燥物はミキサーを用いて粉砕し、エタノール(富士フィルム和光純薬社、99.5%)230mLに懸濁後、マグネットスターラーを用いて攪拌し、室温、1週間の条件下、抽出を行った。その後、不溶物を濾紙にて吸引除去し、濾液はロータリーエバポレーターを用いて溶媒除去した。その結果、島ニンジン根抽出物として3.36gを得た。抽出物はDMSOに再溶解させ、TGR-5アゴニスト活性評価試験に用いた。
(cAMP依存ルシフェラーゼレポーターアッセイ)
実験1と同様に、cAMP依存ルシフェラーゼレポーターアッセイを実施した。実験の結果を図5に示す。
(実験結果)
ルシフェラーゼレポーターアッセイを実施した結果、エタノール抽出した島ニンジン根にTGR-5アゴニスト活性を見出した(図5参照)。図5では、島ニンジン根抽出物は濃度依存的にルシフェラーゼ活性が高まることを示している。すなわち島ニンジン根抽出物の刺激によりHEK/HA-TGR5安定発現細胞においてcAMP濃度上昇が引き起こされていることを示している。
また、この作用はTGR-5を発現しないHEK/Luc安定発現細胞では見られなかったことから、TGR-5受容体を介したアゴニスト作用であることが明らかとなった。
以上の結果より東洋系品種の沖縄島ニンジン根抽出物は、TGR-5受容体を介したアゴニスト作用を有していることを示している。
実験5.TGR-5アゴニスト作用を介したPGC1α誘導活性の確認
ミトコンドリア生合成のマスターレギュレーターであるperoxisome proliferators -activated receptor -γ co-activator-1α (PGC1α)は、TGR-5アゴニスト作用により上昇した細胞内cAMPを引き金に誘導され、白色脂肪細胞のベージュ化に寄与することが報告されている。そこで、TGR-5アゴニスト活性を有する種々のニンジン抽出物にPGC1α誘導活性が認められるのか、評価した。
(ニンジン抽出物の調製)
ナンテスニンジン種子の抽出物:実験1と同様にして得られたニンジン種子(オランダ産Nantes種)抽出物を使用した。
ノラニンジン種子の抽出物:ミキサーにて粉砕したノラニンジン種子(エイチホルスタイン社製)20gに約10倍量のエタノール(富士フィルム和光純薬社)を加え、室温、マグネットスターラーにて撹拌し、約1週間抽出した。その後、不溶物を濾紙にて吸引除去し、濾液はロータリーエバポレーターを用いて減圧濃縮し、2.8gの抽出物(乾燥物)を得た。
島ニンジン根の抽出物:実験4と同様にして得られた島ニンジン根抽出物を使用した。
各抽出物は、DMSOに再溶解させ、試験に用いた。
(トランスフェクション及び被験物質添加)
10%FBS含有DMEM(gibco社製)にて培養したヒト肝臓由来Hep3B細胞(ATCCより入手)を5×10cells/wellとなるよう24ウェルプレートに播種し、実験1に記載のプラスミドのpcDNA3.1 HA-TGR5をFugene HD(プロメガ社製)を用いて0.4μg DNA /wellとなるよう添加した。トランスフェクション48時間後、各濃度の被験物質(ナンテスニンジン種子、ノラニンジン種子、島ニンジン根)を添加し、4時間後、RNAを回収した。また、コントロールは0.1%DMSOを添加し、陽性対照はTGR-5レセプターアゴニスト(abcam:ab142091)を用いた。
(RNA抽出及びリアルタイムPCR)
キアゲン社より購入したRNeasy Plus Mini Kitを用いてRNA抽出を行い、ナノドロップ(サーモフィッシャーサイエンティフィック)にてRNA濃度を定量した。その後、PrimeScript RT Reagent Lit(タカラ)を用いて1本鎖cDNAを合成し、リアルタイムPCRに供した。リアルタイムPCRは、Premix EX Taq(タカラ)、Taqman probe、及びリアルタイムPCR装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック)を用いて実施した。目的遺伝子であるPGC1α(Hs00173304_m1)及びハウスキーピング遺伝子18S(Hs99999901_s1)のTaqman probeは、サーモフィッシャーサイエンティフィックより入手した。
遺伝子の発現量は、PCR産物の指数関数増幅領域の適当なところに閾値(threshold)を設定し、閾値とPCR産物増幅曲線の交点から得られるサイクル数(threshold cycle:Ct値)を算出し、ΔΔCt法により評価した。各被験物質間における発現量の評価は、コントロールである0.1%DMSOのPGC1αmRNA発現量を18S発現量で割った値を1とし、被験物質添加時の発現量と比較検討を行った。
(実験結果)
Taqman probeを用いたリアルタイムPCRを実施した結果、コントロールと比較してナンテスニンジン種子、ノラニンジン種子、島ニンジン根のエタノール抽出物はPGC1α誘導活性を示すことが明らかとなった。特に島ニンジン根抽出物は、陽性対照としたTGR-5レセプターアゴニストより強くPGC1αmRNAの発現を誘導した。
以上の結果、TGR-5アゴニスト活性を有する各種ニンジン抽出物は、ミトコンドリア生合成のマスターレギュレーターであるPGC1α誘導活性を有しており、白色脂肪細胞のベージュ化に伴う熱産生やエネルギー産生等の亢進作用に寄与することが示唆された。
実験6.GLP-1分泌促進作用の確認(in vivo)
実験1においてTGR-5アゴニスト活性を有する素材としてニンジン種子抽出物を見出し、実験2では、その抽出物がTGR-5機能の一つであるGLP-1分泌を促すことを細胞試験にて確認した(実験2、図3参照)。さらに、実験6では、ニンジン種子抽出物の経口投与による血中GLP-1分泌亢進作用を確認した。
(ニンジン抽出物の調製)
実験5と同様にして得られたノラニンジン種子の抽出物を使用した。
(in vivo試験)
C57BL/6Jマウス(8週齢、雄)に絶食下、被験物質を溶媒(注射用水、5%DMSO、0.5%カルボキシメチルセルロース(以下CMCと記載)、1%Tween-80)に溶解させ、強制経口投与(10mL/kg)した。被験物質投与30分後に注射用水に溶解したブドウ糖を投与(2000mg/kg/5mL)し、その15分後に後大静脈採血を実施した。回収した血液は1.5mg/mLEDTA-2Na(東京化成)、500KIU/mLアプロチニン(メルク)、DPP IV Inhibitor(メルク)入りチューブに移し、3000rpm、4℃、10分の遠心操作により血漿とし、GLP-1測定まで-80℃に保管した。血漿中GLP-1の検出は、Human GLP-1(7-36amide) Immunoassay kit(パーキンエルマージャパン)を用いて測定した。
各群(n=7)の設定は下記の通りである。
(1)Vehicle群(注射用水、5%DMSO、0.5%CMC、1%Tween-80)
(2)Control群(ブドウ糖単独、2000mg/kg)
(3)ブドウ糖群(2000mg/kg)+ニンジン種子(ノラニンジン)抽出物(500mg/kg)投与群
(4)ブドウ糖(2000mg/kg)+APD597(GPR119アゴニスト:ナミキ商事)30mg/kg投与群
(実験結果)
結果を図7に示した。ブドウ糖単独投与のControl群は溶媒投与のみのVehicle群と比較し、GLP-1分泌を促進した。この条件下、Control群と比較し、ニンジン種子抽出物は更に強いGLP-1分泌促進作用を示し、その強さはGPR119アゴニストであるAPD597とほぼ同程度であった。この結果より、ニンジン種子抽出物はGLP-1分泌促進作用を有することが示唆された。
本発明は、新規なTGR-5活性化用組成物、GLP分泌促進剤を提供できる。また、新規なTGR-5活性化用組成物、GLP分泌促進剤を含有する医薬品、医薬部外品、飲む化粧料、飲む化粧品、健康食品(栄養補助食品、栄養機能食品、病者用食品、特定保健用食品、機能性表示食品など)、サプリメント、飼料などを提供することができる。

Claims (4)

  1. ニンジン抽出物を含有するTGR-5活性化用組成物。
  2. 前記ニンジン抽出物が根又は種子に由来することを特徴とする請求項1に記載のTGR-5活性化用組成物。
  3. ニンジン抽出物を含有するGLP分泌促進剤。
  4. 前記ニンジン抽出物が根又は種子に由来することを特徴とする請求項3に記載のGLP分泌促進剤。

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