JP6050596B2 - 核内受容体活性促進剤および核内受容体活性促進方法 - Google Patents

核内受容体活性促進剤および核内受容体活性促進方法 Download PDF

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Description

本発明は、核内受容体活性促進剤および核内受容体活性促進方法に関し、より詳細には、ギンマメの処理物を有効成分とする核内受容体活性促進剤およびギンマメの処理物を含む飲食物を利用した核内受容体活性促進方法に関する。
核内受容体は、転写因子であり、核内受容体によって転写調節される遺伝子は、性分化や細胞分化、糖や脂質、薬物の代謝や細胞増殖など多くの生命現象に重要な機能を示すことが知られている。このため、核内受容体の活性を促進する物質(核内受容体活性促進物質)は、生活習慣病や癌などの疾患の予防や治療、あるいは健康増進における効果が期待され、特に、飲食物として経口的に摂取可能な、安全な核内受容体活性促進物質の探索が進められている。
一方、ギンマメ(Amphicarpaea edgeworthii)はマメ科ヤブマメ属(Amphicarpaea属)に属しており、日本では北海道から九州に至る山野に自生している、つる性の1年生草本であり、「ヤブマメ」あるいは「藪豆」とも呼ばれ、北海道のアイヌ文化においては「アハ」、「エハ」とも呼ばれている。ギンマメは、マメ科植物に通常見られるような開放花由来の地上果の他に、閉鎖花由来の地中果を形成し、アイヌ文化では、この地中果が塩ゆでや混ぜご飯など、食用とされている。
上述の通り、従来、ギンマメについては食用とされること以外の利用例はほとんど知られていないが、例えば、マメ科ヤブマメ属(Amphicarpaea属)に属する他の植物であるアメリカヤブマメ(Amphicarpaea bracteata agglutinin)について、アメリカヤブマメ(Amphicarpaea bracteata agglutinin)由来のレクチンを用いる糖化タンパク質の分析方法(特許文献1)、あるいはアメリカヤブマメ(Amphicarpaea bracteata agglutinin)の抽出物を含むバイオディーゼル燃料添加剤(特許文献2)が、マメ科ダイズ属(Glycine属)植物であるヒロハヤブマメ(Glycine tomentella)について、ヒロハヤブマメ(Glycine tomentella)から得たセコイトール含有抽出物を有効成分とする糖尿病およびその合併症の治療薬(特許文献3)が存在する。
特開2005−527835号公報 特開2009−524733号公報 特開2010−528063号公報
しかしながら、特許文献1に記載の糖化タンパク質の分析方法は、アメリカヤブマメ(Amphicarpaea bracteata agglutinin)由来のレクチンを糖化タンパク質の炭化水素側鎖に結合させて、その結合体を検出することにより当該タンパク質を分析する方法であること、特許文献2に記載のバイオディーゼル燃料添加剤は、バイオディーゼル燃料が燃焼する際の汚染放出物を低減させるとともに、バイオディーゼル燃料の潤滑性を増強させるためにアメリカヤブマメの抽出物を含むバイオディーゼル燃料添加剤であること、特許文献3に記載の糖尿病およびその合併症の治療薬は、マメ科ダイズ属(Glycine属)に属するヒロハヤブマメから得たセコイトール含有抽出物を有効成分とするものであることから、いずれもギンマメ由来のものではないばかりか、核内受容体活性促進剤でもない。
本発明は、上述の通り、飲食物として経口的に摂取可能な、安全な核内受容体活性促進物質の探索という課題を解決するためになされたものであって、核内受容体活性促進剤を提供することを目的とし、より詳細には、ヤブマメ属(Amphicarpaea属)であるギンマメ(Amphicarpaea edgeworthii)の処理物を有効成分とする核内受容体活性促進剤およびギンマメの処理物を含む飲食物を利用した核内受容体活性促進方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究の結果、ギンマメの抽出物が、その抽出方法にかかわらず、レチノイド受容体α(RARα)、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体α(PPARα)、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体γ(PPARγ)、肝臓X受容体α(LXRα)、ビタミンD受容体(VDR)、プレグナンX受容体(PXR)、レチノイドX受容体α(RXRα)、エストロゲン受容体α(ERα)およびエストロゲン受容体β(ERβ)の活性を強力に促進することを見出し、下記の各発明を完成した。
(1)ギンマメ(Amphicarpaea edgeworthii)の処理物を有効成分とする核内受容体活性促進剤。
(2)ギンマメ(Amphicarpaea edgeworthii)の処理物が果実に由来するものである、(1)に記載の核内受容体活性促進剤。
(3)果実が地中果である、(2)に記載の核内受容体活性促進剤。
(4)ギンマメ(Amphicarpaea edgeworthii)の処理物がギンマメ(Amphicarpaea edgeworthii)の抽出物である、(1)から(3)のいずれかに記載の核内受容体活性促進剤。
(5)核内受容体が、下記(a)、(b)または(c)のいずれかの核内受容体である、(1)から(4)のいずれかに記載の核内受容体活性促進剤;(a)甲状腺ホルモン受容体型サブファミリー、レチノイドX受容体型サブファミリーおよびエストロゲン受容体型サブファミリーからなる群から選択される核内受容体サブファミリーに属する核内受容体、(b)レチノイド受容体グループ、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体グループ、肝臓X受容体型グループ、ビタミンD受容体型グループ、レチノイドX受容体グループおよびエストロゲン受容体グループからなる群から選択される核内受容体グループに属する核内受容体、(c)レチノイド受容体α(RARα)、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体α(PPARα)、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体γ(PPARγ)、肝臓X受容体α(LXRα)、ビタミンD受容体(VDR)、プレグナンX受容体(PXR)、レチノイドX受容体α(RXRα)、エストロゲン受容体α(ERα)およびエストロゲン受容体β(ERβ)からなる群から選択される核内受容体。
(6)(1)から(5)のいずれかに記載の核内受容体活性促進剤を含んでなる飲食品用組成物。
(7)ギンマメ(Amphicarpaea edgeworthii)の処理物を含む飲食物を経口的に摂取させる工程を有するギンマメ(Amphicarpaea edgeworthii)の処理物により核内受容体の活性を促進させる方法(医療行為を除く。)。
本発明に係る核内受容体活性促進剤によれば、核内受容体の活性を促進することができることから、糖代謝異常、脂質代謝異常、骨代謝障害、慢性炎症あるいは甲状腺機能障害などを改善することができ、さまざまな疾患の予防や治療、症状の緩和、健康の維持や増進をすることができる。例えば、エストロゲン受容体α(ERα)およびエストロゲン受容体β(ERβ)の活性促進作用は、骨粗鬆症、更年期障害、前立腺肥大症あるいは皮膚病などの予防、治療ないし症状の緩和や、皮膚の皺の改善などに有用であり、肝臓X受容体α(LXRα)の活性促進作用は、高コレステロール血症、動脈硬化症、高血糖、炎症あるいは乾燥肌などの予防、治療ないし症状の緩和に有用であり、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体α(PPARα)およびペルオキシソーム増殖剤応答性受容体γ(PPARγ)の活性促進作用は、糖尿病、高脂血症、肥満、アルツハイマー症候群あるいは乾燥肌などの予防、治療ないし症状の緩和に有用であり、プレグナンX受容体(PXR)の活性促進作用は薬物代謝障害などの予防、治療ないし症状の緩和に有用であり、レチノイド受容体α(RARα)の活性促進作用は皮膚疾患などの予防、治療ないし症状の緩和に有用であり、レチノイドX受容体α(RXRα)の活性促進作用は、糖尿病、癌あるいはアレルギー疾患などの予防、治療ないし症状の緩和に有用であり、ビタミンD受容体(VDR)の活性促進作用は、乾癬あるいは癌などの予防、治療ないし症状の緩和に有用である。
また、本発明に係る核内受容体活性促進剤によれば、従来、地中果が食用とされてきたギンマメの処理物を有効成分とすることから、摂取しても安全な核内受容体活性促進剤の他、例えば、ギンマメの処理物あるいは本発明に係る核内受容体活性促進剤を含んでなる飲食品用組成物ないし飲食物として利用することができる。なお、ギンマメの処理物がギンマメの抽出物である場合は、抽出方法を問わず、抽出作業にかかる手間やコストを抑えることができ、かつ核内受容体活性促進剤、飲食品用組成物ないし飲食物としてのさまざまな製品形態に柔軟に適用することができる。
さらに、本発明に係る核内受容体活性促進方法によれば、ギンマメの処理物を含む飲食物を経口的に摂取することにより、医療行為によらずに核内受容体の活性を促進させることができる。
エストロゲン受容体α(ERα)、エストロゲン受容体β(ERβ)または肝臓X受容体α(LXRα)を検討対象とする検討用細胞に対し、ギンマメの抽出物I群を作用させた場合の評価値を示す図である。 肝臓X受容体β(LXRβ)、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体α(PPARα)およびペルオキシソーム増殖剤応答性受容体δ(PPARδ)を検討対象とする検討用細胞に対し、ギンマメの抽出物I群を作用させた場合の評価値を示す図である。 ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体γ(PPARγ)、プレグナンX受容体(PXR)およびレチノイド受容体α(RARα)を検討対象とする検討用細胞に対し、ギンマメの抽出物I群を作用させた場合の評価値を示す図である。 レチノイドX受容体α(RXRα)およびビタミンD受容体(VDR)を検討対象とする検討用細胞に対し、ギンマメの抽出物I群を作用させた場合の評価値を示す図である。 エストロゲン受容体α(ERα)を検討対象とする検討用細胞に対し、ギンマメの抽出物II群、ギンマメの抽出物III群、ダイズの抽出物I群およびアズキの抽出物I群をそれぞれ作用させた場合の評価値を示す図である。図中、※印は細胞毒性が認められたことを示す。 エストロゲン受容体β(ERβ)を検討対象とする検討用細胞に対し、ギンマメの抽出物II群、ギンマメの抽出物III群、ダイズの抽出物I群およびアズキの抽出物I群をそれぞれ作用させた場合の評価値を示す図である。図中、※印は細胞毒性が認められたことを示す。 ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体α(PPARα)を検討対象とする検討用細胞に対し、ギンマメの抽出物II群、ギンマメの抽出物III群、ダイズの抽出物I群およびアズキの抽出物I群をそれぞれ作用させた場合の評価値を示す図である。 ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体γ(PPARγ)を検討対象とする検討用細胞に、ギンマメの抽出物II群、ギンマメの抽出物III群、ダイズの抽出物I群およびアズキの抽出物I群をそれぞれ作用させた場合の評価値を示す図である。
以下、本発明に係る核内受容体活性促進剤について詳細に説明する。本発明に係る核内受容体活性促進剤は、ギンマメの処理物を有効成分とする。
本発明において、「ギンマメ」とは、マメ科ヤブマメ属(Amphicarpaea属)に属する植物であるAmphicarpaea edgeworthiiをいい、「ヤブマメ」あるいは「藪豆」とも呼ばれ、北海道のアイヌ文化においては「アハ」、「エハ」とも呼ばれている。また、本発明における「ギンマメ」には、変種とされているウスバヤブマメ(Amphicarpaea edgeworthii var.japonica)が含まれる。なお、ギンマメは、例えば、山裾、林縁、草地、川端などに自生している、自然環境下にあるものでもよく、人工的に栽培したものでもよい。
本発明において、「ギンマメの処理物」とは、ギンマメの根や茎、葉柄、つる、葉、花、果実などの、ギンマメ植物体のいずれかの部分に由来するすべてのものが包含され、果実の部分に由来するものが好ましい。ギンマメの果実は、通常、花が形成された後の10〜11月頃に結実し、緑色から黒紫色、黒色あるいは茶色に熟す。本発明におけるギンマメの果実は、その熟度は問わず、結実したばかりの緑色のものでもよく、熟した黒紫色、黒色あるいは茶色のものでもよい。また、ギンマメはマメ科であることから、その果実は豆果ともいう。ギンマメの果実には、地上に形成される地上果のほか、地中に形成される地中果があり、果実としては地中果が好ましい。地上果が、通常3つの種子(いわゆる豆)が莢(果皮)に包まれた構造を有しているのに対し、地中果は、1つの種子(いわゆる豆)が果皮に包まれた構造を有している。果実の部分に由来するものには、果皮や種子、種皮に由来するものが含まれ、種子は種皮をつけたままのものでもよく、種皮を剥いたものでもよい。
本発明における「処理」は特に限定されず、また、本発明における「処理物」の態様としては、例えば、抽出物、粉末、乾燥物、半乾燥物、乾燥粉末、ペースト、ピューレ、ジャム、加熱物、焼成物、揚げ物、絞り汁、破砕物、冷凍物、冷蔵物、パルプなどを挙げることができるが、抽出物であることが好ましい。抽出物としては、例えば、抽出液、抽出液を希釈または濃縮したもの、抽出液を精製したもの、抽出液を乾燥させたものなどを挙げることができる。
本発明に係る「ギンマメの処理物」は、その態様に応じて、適宜定法に従い調製することができる。例えば、ギンマメの処理物がギンマメの抽出物である場合は、抽出溶媒にギンマメを加えて、一定の時間、静置、攪拌、振盪、転倒混和、加熱、加圧、煮沸などすることにより調製することができる。調製された抽出物は、必要に応じて精製、濾過、濃縮、乾燥、減圧乾燥などしてもよい。また、抽出溶媒に加えるギンマメに、あらかじめ、粉砕、破砕、冷凍、冷蔵、乾燥、脱脂などの処理を施してもよい。抽出時間や抽出温度は、必要な抽出物の形態、濃度、抽出溶媒の種類、ギンマメの前処理の有無などに応じて適宜設定することができる。なお、抽出溶媒は、水、親水性有機溶媒、疎水性有機溶媒またはこれらの2種以上からなる混合物のいずれであってもよい。水は、精製、殺菌、滅菌、ろ過、浸透圧調整、緩衝化、加熱などの処理が施されていてもよく、例えば、純水、水道水、冷水、熱水のほか、生理的食塩水、リン酸緩衝液なども用いることができる。また、親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、ブチルアルコール、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールなどのアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、1,4−ジオキサン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸などを挙げることができ、疎水性有機溶媒としては、ヘキサン、シクロヘキサン、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン、n−ヘキサン、イソオクタンなどを挙げることができる。
また、ギンマメの処理物がギンマメの乾燥粉末である場合は、ギンマメを乾燥させた後に粉砕、もしくは粉砕した後に乾燥すること、または乾燥と粉砕とを同時に行うことにより調製することができる。乾燥方法としては、例えば、天日乾燥や陰干しによる通風乾燥、乾燥機による加熱乾燥、通風乾燥、凍結乾燥、マイクロ波減圧乾燥、遠赤外線減圧乾燥などを挙げることができる。通風乾燥を行う際の乾燥温度や乾燥時間、凍結乾燥を行う際の予備凍結温度や乾燥時棚加熱温度、乾燥時間、マイクロ波減圧乾燥を行う際の圧力や出力、乾燥時間、乾燥時品温、遠赤外線減圧乾燥を行う際の圧力やヒーター温度、乾燥時間、乾燥時品温などの諸条件は、ギンマメの部位や量、前処理の有無、必要とする乾燥粉末の品質などに応じて適宜設定することができる。また、粉砕方法としては、例えば、粉砕機やミキサー、乳鉢および乳棒などを用いて粉砕する方法を挙げることができる。
核内受容体は、N末端ドメイン(A/B領域)、DNA結合ドメイン(C領域)、ヒンジドメイン(D領域)、リガンド結合ドメイン(E領域)およびC末端ドメイン(F領域)の6つのドメインからなる構造を有するタンパク質である。核内受容体はこの構造を有するスーパーファミリーを形成しており、ヒトでは48種類存在する。核内受容体は、進化の上では、後生動物の出現初期に現れたと考えられ、菌類や植物、単細胞真核生物には存在しないが、軟体動物や節足動物、線形動物、脊椎動物などの動物には広く存在する。本発明における核内受容体は、これらのうちいずれの動物の核内受容体でもよいが、後述する実施例においては、ヒトの核内受容体を好適に用いている。ここで、ヒトの核内受容体は、進化上良く保存されているDNA結合ドメイン(C領域)およびリガンド結合ドメイン(E領域)の配列に基づいて、表1および表2に示すように分類される(Nuclear Receptor Nomenclature Committee、Cell、第97巻、第161〜163頁、1999年)。本発明における核内受容体は、表1および表2に示すもののうち、下記(a)、(b)または(c)のいずれかの核内受容体であることが好ましい;
(a)甲状腺ホルモン受容体型サブファミリー、レチノイドX受容体型サブファミリーおよびエストロゲン受容体型サブファミリーからなる群から選択される核内受容体サブファミリーに属する核内受容体。
(b)レチノイド受容体グループ、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体グループ、肝臓X受容体型グループ、ビタミンD受容体型グループ、レチノイドX受容体グループおよびエストロゲン受容体グループからなる群から選択される核内受容体グループに属する核内受容体。
(c)レチノイド受容体α(RARα)、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体α(PPARα)、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体γ(PPARγ)、肝臓X受容体α(RXRα)、ビタミンD受容体(VDR)、プレグナンX受容体(PXR)、レチノイドX受容体α(RXRα)、エストロゲン受容体α(ERα)およびエストロゲン受容体β(ERβ)からなる群から選択される核内受容体。
Figure 0006050596
Figure 0006050596
核内受容体は、リガンド依存性の転写因子であり、リガンドと結合すると細胞質から核内に移行し、核内受容体によって転写調節される遺伝子(以下、「標的遺伝子」という。)の転写調節領域のDNAに結合して、当該標的遺伝子の転写を抑制あるいは促進することにより転写調節する。本発明において、「核内受容体の活性を促進する」とは、「核内受容体が標的遺伝子の転写調節領域のDNAに結合することを促進すること」、あるいは「核内受容体が標的遺伝子の転写調節領域のDNAに結合して当該標的遺伝子の転写調節をすることを促進すること」をいう。本発明に係る核内受容体活性促進剤が核内受容体の活性を促進する態様としては、例えば、本発明に係る核内受容体活性促進剤が、核内受容体のリガンド結合ドメインに直接結合することにより核内受容体のリガンドとして機能して核内受容体の活性を促進する態様や、核内受容体活性促進剤とは別に存在するリガンドと核内受容体との結合を促進することにより核内受容体の活性を促進する態様を挙げることができる。なお、本明細書において、「促進」は「増強」、「増進」、「向上」、「強化」などと交換可能に用いられる。
本発明に係る核内受容体活性促進剤が核内受容体の活性を促進するか否かは、定法に従い確認することができ、そのような方法としては、例えば、ルシフェラーゼレポーターアッセイ(Cell、第83巻、第803〜812頁、1995年)や、核内受容体結合領域を含むタンパクを用いたコンペティションバインディングアッセイ(Cell、第83巻、第813〜819頁、1995年)を挙げることができる。ルシフェラーゼレポーターアッセイでは、GAL4遺伝子のDNA結合ドメイン(Gal4−DBD)と核内受容体のリガンド結合ドメインとのキメラタンパク質を発現するプラスミド、およびホタルルシフェラーゼ遺伝子の上流にGal4−DBD応答配列を連結したレポータープラスミドを導入した培養細胞に、本発明に係る核内受容体活性促進剤を作用させて、ホタルルシフェラーゼの発光強度を測定する。その結果、発光強度が増大すれば、本発明に係る核内受容体活性促進剤が核内受容体の活性を促進したと判断することができ、発光強度が増大しなければ、核内受容体の活性を促進しなかったと判断することができる。
本発明に係る核内受容体活性促進剤は、有効成分であるギンマメの処理物に、慣用される添加剤、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、アルコール、水、水溶性高分子、甘味料、矯味剤、酸味料などを剤型に応じて配合し、定法に従って製剤化することができる。本発明に係る核内受容体活性促進剤の剤型は、経口剤としては、例えば、顆粒剤、散剤、錠剤、シロップ剤、ドライシロップ剤、カプセル剤、溶剤、乳剤あるいは懸濁剤などを、非経口剤としては、例えば、吸入剤、坐剤などの経腸製剤、経鼻投与剤、軟膏剤、液剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、コーティング剤、懸濁剤、塗布剤、噴霧剤、貼付剤、点滴剤、注射剤、ローション剤またはパップ剤などを挙げることができる。本発明に係る核内受容体活性促進剤の投与量は、投与方法、病状、投与対象者の年齢などによって変化し得るが、例えば、大人では、固形分換算で1日当たり約0.1〜2000mg程度、約1〜1000mg程度、約2〜200mg程度などとすることができる。
また、本発明に係る核内受容体活性促進剤は、飲食品用組成物や飲食品、家畜、競走馬などの飼料、ペットフードなどとして、あるいはそれらに配合して用いることができる。飲食品としては、具体的には、例えば、緑茶、ウーロン茶や紅茶などの茶飲料、清涼飲料、ゼリー飲料、スポーツ飲料、乳飲料、炭酸飲料、果汁飲料、乳酸菌飲料、発酵乳飲料、粉末飲料、ココア飲料、精製水などの飲料やバター、ジャム、カスタードクリーム、マーガリンなどのスプレッド類、ビスケットやクッキー類、チョコレート、キャンディ、ケーキ、アイスクリーム、チューインガム、タブレットなどの菓子、ドレッシング、ソース、味噌、醤油、マヨネーズ、たれ類などの調味料、パン類、米飯類、麺類、パスタ、ヨーグルト、チーズなどの乳製品、スープ、味噌汁、ふりかけ、豆腐、牛乳、冷凍食品、総菜、健康食品や機能性食品、特定保健用食品、栄養補助食品などの保健機能食品、サプリメント、錠剤、チュアブル錠、粉剤、カプセル剤、顆粒剤、ドリンク剤、流動食、インスタント食品、レトルト食品などを挙げることができる。飲食品や飼料、ペットフードは、定法に従って製造することができ、食品や飼料の製造に用いられる他の食品素材、各種栄養素、各種ビタミン、ミネラル、アミノ酸、各種油脂、種々の添加剤(例えば、呈味成分、甘味料、有機酸などの酸味料、界面活性剤、pH調整剤、安定剤、酸化防止剤、色素、フレーバー)などを適宜配合して、製造することができる。本発明に係る核内受容体活性促進剤を飲食品に配合する場合の配合量は、飲食品の用途や形態に応じて適宜設定することができ、例えば、飲食品に対して、固形分換算で約0.01〜100重量%、約0.1〜98重量%、約1〜90重量%などとすることができる。
一方、本発明に係るギンマメの処理物により核内受容体の活性を促進させる方法は、ギンマメの処理物を含む飲食物を経口的に摂取させる工程を有しており、安全かつ医療行為によらずに核内受容体の活性を促進させることができる。
以下、本発明に係る核内受容体活性促進剤および核内受容体活性促進方法について、実施例に基づいて説明する。なお、本発明の技術的範囲は、これらの実施例によって示される特徴に限定されない。
<実施例1>ギンマメの処理物の調製
(1)採取および乾燥粉末の調製
北海道の手稲山に自生するギンマメであるAmphicarpaea edgeworthiiの地中果を採取した。採取した地中果を、果皮をつけたままの状態で所定の乾燥方法により乾燥させた後、破砕して粉末にすることにより乾燥粉末を得た。50gの種子から23.4gの乾燥粉末が得られた。
(2)ギンマメの抽出物の調製
[2−1]100%エタノール抽出物および50%エタノール抽出物
100%(v/v)エタノール10.3mLおよび50%(v/v)エタノール10.8mLに、本実施例1(1)の乾燥粉末をそれぞれ1.03gおよび1.08g加えた後(終濃度はいずれも100mg/mL)、室温で3時間振盪した。続いて、孔径0.2μmのメンブレンフィルターで濾過して濾液を回収した後、常温で減圧乾燥して乾固物を得た。100%(v/v)エタノールに本実施例1(1)の乾燥粉末を1.03g加えたものからは90mg、50%(v/v)エタノールに本実施例1(1)の乾燥粉末を1.08g加えたものからは127.6mgの乾固物が得られた。得られた乾固物を100mg/mLとなるよう、それぞれジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、100%(v/v)エタノールで抽出したものを100%エタノール抽出物、50%(v/v)エタノールで抽出したものを50%エタノール抽出物とした。
[2−2]熱水抽出物
本実施例1(1)の乾燥粉末1.139gを11.39mLの滅菌した熱水に加えた後(終濃度は100mg/mL)、10分間煮沸した。その後、孔径0.2μmのメンブレンフィルターで濾過して濾液を回収し、これを熱水抽出物とした。
[2−3]水抽出物
本実施例1(1)の乾燥粉末1.016gを10.16mLの滅菌水に加えた後(終濃度は100mg/mL)、4℃で24時間転倒混和した。その後、孔径0.2μmのメンブレンフィルターで濾過して濾液を回収し、これを水抽出物とした。
<比較例1>他の植物の抽出物の調製
マメ科以外の植物として、北海道各地に自生するツルニンジン(Codonopsis lanceolate:キキョウ科)の根、ホソバトウキ(Angelica stenoloba:セリ科)の根、トウキ(Angelica acutiloba:セリ科)の根、ムラサキ(Lithospermum erythrorhizon:ムラサキ科)の根、トチバニンジン(Panax japonicus:ウコギ科)の根茎、およびホタルサイコ(Bupleurum longiradiatum var.elatis:セリ科)の根を採取した。これらについて、実施例1(1)〜(2)[2−2]に記載の方法により100%エタノール抽出物、50%エタノール抽出物および熱水抽出物を調製した。
また、マメ科植物として、栽培されたダイズ(Glycine max、品種:トヨムスメ)およびアズキ(Vigna angularis、品種:しゅまり)の種子を用意した。これらについて、実施例1(1)〜(2)[2−3]に記載の方法により、100%エタノール抽出物、50%エタノール抽出物、熱水抽出物および水抽出物を調製した。
以下、実施例1(2)[2−1]〜[2−3]のギンマメの100%エタノール抽出物、50%エタノール抽出物、熱水抽出物および水抽出物を「ギンマメの抽出物I群」といい、本比較例1のツルニンジン、ホソバトウキ、トウキ、ムラサキ、トチバニンジンまたはホタルサイコの100%エタノール抽出物、50%エタノール抽出物および熱水抽出物を、それぞれ、「ツルニンジンの抽出物I群」、「ホソバトウキの抽出物I群」、「トウキの抽出物I群」、「ムラサキの抽出物I群」、「トチバニンジンの抽出物I群」、「ホタルサイコの抽出物I群」といい、本比較例1のダイズまたはアズキの100%エタノール抽出物、50%エタノール抽出物、熱水抽出物および水抽出物を、それぞれ、「ダイズの抽出物I群」、「アズキの抽出物I群」という。
<実施例2>核内受容体活性促進能の検討;マメ科以外の植物との比較
ヒトの核内受容体であるエストロゲン受容体α(ERα)、エストロゲン受容体β(ERβ)、肝臓X受容体α(LXRα)、肝臓X受容体β(LXRβ)、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体α(PPARα)、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体δ(PPARδ)、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体γ(PPARγ)、プレグナンX受容体(PXR)、レチノイド受容体α(RARα)、レチノイドX受容体α(RXRα)およびビタミンD受容体(VDR)を検討対象として、ギンマメおよびマメ科以外の植物の抽出物の核内受容体活性促進能を、ルシフェラーゼレポーターアッセイにより測定して比較検討した。
(1)検討用細胞の準備
具体的には、まず、アフリカミドリザル腎由来細胞株であるCV−1細胞、ヒト肝ガン細胞株であるHepG2細胞を、それぞれ2×10個/ウェルとなるよう、6ウェルプレートに播種し、10%(v/v)のウシ胎児血清(FBS)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM培地)中で1日間培養した。
次に、GAL4遺伝子のDNA結合ドメイン(Gal4−DBD)とヒトの核内受容体(ERα、ERβ、LXRα、LXRβ、PPARα、PPARδ、PPARγ、PXR、RARα、RXRαおよびVDR)のリガンド結合ドメインとのキメラタンパク質を発現する、11種のキメラタンパク質発現プラスミド(pGal4−DBD/ERα−LBD、pGal4−DBD/ERβ−LBD、pGal4−DBD/LXRα−LBD、pGal4−DBD/LXRβ−LBD、pGal4−DBD/PPARα−LBD、pGal4−DBD/PPARδ−LBD、pGal4−DBD/PPARγ−LBD、pGal4−DBD/PXR−LBD、pGal4−DBD/RARα−LBD、pGal4−DBD/RXRα−LBDおよびpGal4−DBD/VDR−LBD)、ホタルルシフェラーゼ遺伝子の上流にGal4−DBD応答配列を連結したレポータープラスミド(pGal4−Luc)、ならびにウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子の上流に遺伝子構成的発現プロモーターであるCMVプロモーターまたはSV40プロモーターを連結した2種類の内部標準プラスミド(pRL−CMVおよびpRL−SV40)を用意し、これらキメラタンパク質発現プラスミド、レポータープラスミドおよび内部標準プラスミドを重量比1:0.9:0.1の割合で混合して混合プラスミド液を調製した。
調製した混合プラスミド液を、総DNA量で20μg/mLとなるようOpti−MEM培地に加え、さらに遺伝子導入試薬FuGENEを1/20量加えて15分間静置し、これを遺伝子導入用培地とした。CV−1細胞およびHepG2細胞を播種した各ウェルに、調製した遺伝子導入用培地を100μLずつ添加し、6時間培養することによってCV−1細胞およびHepG2細胞にキメラタンパク質発現プラスミド、レポータープラスミドおよび内部標準プラスミドを導入し、これを検討用細胞とした。検討用細胞における細胞の種類および導入したプラスミドの組合せを表3に示す。
Figure 0006050596
(2)検討用の培地における培養およびルシフェラーゼ発光強度の測定
試験物質として、実施例1(2)[2−1]〜[2−3]または比較例1で調製した、ギンマメの抽出物I群、ツルニンジンの抽出物I群、ホソバトウキの抽出物I群、トウキの抽出物I群、ムラサキの抽出物I群、トチバニンジンの抽出物I群およびホタルサイコの抽出物I群を用意した。また、陽性コントロール物質として、検討対象の核内受容体の活性を促進することが知られている物質を用意した。また、試験物質が熱水抽出物および水抽出物である場合における陰性コントロール物質として超純水を、試験物質が100%エタノール抽出物および50%エタノール抽出物である場合における陰性コントロール物質としてDMSOを、それぞれ用意した。
フェノールレッドを含まない、活性炭処理したFBSを10%(v/v)含むDMEM培地(活性炭処理FBS含有DMEM培地)に、試験物質、陽性コントロール物質および陰性コントロール物質をそれぞれ添加して、検討用の培地を調製した。検討用の培地における、試験物質の濃度を表4に、陽性コントロール物質の種類および濃度を表5に、それぞれ示す。また、検討用の培地における陰性コントロール物質の濃度は、超純水が終濃度10%(v/v)、DMSOが終濃度0.5%(v/v)とした。
Figure 0006050596
Figure 0006050596
次に、本実施例2(1)の検討用細胞にトリプシンを作用させて細胞を分散し、96ウェルプレートに、CV−1細胞は1.6×10個/ウェル、HepG2細胞は2.0×10個/ウェルとなるよう播種した後、ウェル内の培地を検討用の培地に交換して48時間培養することにより、検討用細胞に試験物質、陽性コントロール物質および陰性コントロール物質を作用させた。続いて、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で細胞を洗浄し、デュアルルシフェラーゼアッセイシステム(Promega社)およびプレートリーダー(Luminescencer、AB−2350EX;ATTO社)を用いてホタルルシフェラーゼおよびウミシイタケルシフェラーゼの発光強度を測定した。
以上の本実施例2(2)の操作を、1サンプルにつき3つのウェルを用いて行い、サンプルごとに3つのウェルの発光強度の平均値を算出し、これを発光強度の測定結果とした。
(3)評価値の算出
本実施例2(2)の発光強度の測定結果について、ホタルルシフェラーゼの発光強度をウミシイタケルシフェラーゼの発光強度で除した値を実質的発光値とした(すなわち、次式「実質的発光値=ホタルルシフェラーゼの発光強度/ウミシイタケルシフェラーゼの発光強度」により算出される)。続いて、試験物質または陽性コントロール物質を添加した場合の実質的発光値を、陰性コントロール物質を添加した場合の実質的発光値で除して、これを評価値とした(すなわち、次式「評価値=試験物質または陽性コントロール物質を添加した場合の実質的発光値/陰性コントロール物質を添加した場合の実質的発光値」により算出される)。よって、評価値は、陰性コントロール物質を添加した場合の実質的発光値1.0に対する、試験物質または陽性コントロール物質を添加した場合の実質的発光値の相対比を示している。したがって、評価値が2.0以上であって、かつ細胞毒性が無い場合は、試験物質または陽性コントロール物質は核内受容体の活性を有意に促進したといえる。なお、陰性コントロール物質を添加した場合と比較して、試験物質または陽性コントロール物質を添加した場合にウミシイタケルシフェラーゼの発光強度が顕著に低下した場合は細胞毒性が有るものとし、同等以上である場合は細胞毒性が無いものとした。
(4)結果
試験物質における本実施例2(3)の評価値の最大値と、その最大値が得られた場合の試験物質の種類および濃度を表6にまとめて示す。なお、表6において、評価値の最大値が2以下であった場合は×で示し、100%エタノール抽出物は「100EtOH」、50%エタノール抽出物は「50EtOH」、熱水抽出物は「熱水」、水抽出物は「水」とそれぞれ略記する。また、ギンマメの抽出物I群を検討用細胞に作用させた場合の評価値を図1〜4に示す。
Figure 0006050596
表6に示すように、ギンマメの抽出物I群では、ERα、ERβ、LXRα、PPARα、PPARγ、PXR、RARα、RXRαおよびVDRに対して評価値が2.0以上であった。これに対して、ツルニンジンの抽出物I群およびムラサキの抽出物I群では、PXRに対してのみ、ホソバトウキの抽出物I群ではERα、LXRα、PPARγおよびPXRに対してのみ、トウキの抽出物I群ではERα、PPARγおよびPXRに対してのみ、トチバニンジンの抽出物I群ではLXRα、PPARγおよびPXRに対してのみ、それぞれ評価値が2.0以上であった。また、ホタルサイコの抽出物I群では、いずれの核内受容体に対しても評価値が2.0以下であった。さらに、ERα、ERβ、LXRα、PPARα、PPARγ、PXR、RARα、RXRαおよびVDRに対する評価値は、ギンマメの抽出物I群が、試験物質の中でもっとも高かった。
一方、図1〜4に示すように、ギンマメの抽出物I群の100%エタノール抽出物はERα、ERβ、LXRα、PPARα、PXR、RARαおよびRXRαに、50%エタノール抽出物はERα、ERβ、LXRα、PPARα、PPARγ、PXRおよびRARαに、熱水抽出物はERα、ERβ、PPARα、PPARγ、PXRおよびVDRに、水抽出物はERα、ERβ、LXRα、PPARα、PPARγ、PXR、およびVDRに対してそれぞれ評価値が2.0以上であった。
以上より、ギンマメの抽出物は、ツルニンジン、ホソバトウキ、トウキ、ムラサキ、トチバニンジンおよびホタルサイコの抽出物と比較して、広範囲の種類の核内受容体の活性を促進し、その活性促進能も高いこと、および、抽出方法にかかわらず核内受容体の活性を促進することが明らかになった。これらの結果から、ギンマメの処理物は、広範囲の種類の核内受容体の活性を強力に促進することが示された。
<実施例3>核内受容体活性促進能の検討;マメ科の植物との比較
ERα、ERβ、PPARαおよびPPARγを検討対象として、ギンマメおよびマメ科の植物の抽出物の核内受容体活性促進能を、ルシフェラーゼレポーターアッセイにより測定して比較検討した。
(1)ギンマメの処理物の準備
実施例1(2)[2−1]のギンマメの100%エタノール抽出物およびギンマメの50%エタノール抽出物、ならびに実施例1(2)[2−3]のギンマメの水抽出物を、−20℃で2、3日間あるいは約一年間保存した。以下、これらを「ギンマメの抽出物II群」という。また、実施例1(2)[2−1]および[2−3]に記載の方法において、「実施例1(1)の乾燥粉末」を「実施例1(1)の乾燥粉末を2、3日間あるいは約一年間冷凍保存したもの」に代えた他は実施例1(2)[2−1]および[2−3]に記載の方法に基づいて、それぞれギンマメの100%エタノール抽出物、ギンマメの50%エタノール抽出物およびギンマメの水抽出物を得た。以下、これらを「ギンマメの抽出物III群」という。
(2)検討用細胞の準備
実施例2(1)に記載の方法により検討用細胞を準備した。ただし、キメラタンパク質発現プラスミドとして、4種のキメラタンパク質発現プラスミド(pGal4−DBD/ERα−LBD、pGal4−DBD/ERβ−LBD、pGal4−DBD/PPARα−LBDおよびpGal4−DBD/PPARγ−LBD)を用いた。
(3)検討用の培地における培養、ルシフェラーゼ発光強度の測定および評価値の算出
実施例2(2)および(3)に記載の方法により、検討用の培地において検討用細胞を培養してルシフェラーゼ発光強度を測定し、評価値を算出した。ただし、試験物質として、本実施例3(1)のギンマメの抽出物II群およびギンマメの抽出物III群、ならびにダイズの抽出物I群およびアズキの抽出物I群を用いた。また、検討用の培地における試験物質の濃度は、100%エタノール抽出物および50%エタノール抽出物について0.1%(w/v)、0.25%(w/v)および0.5%(w/v)、熱水抽出物および水抽出物について0.5%(w/v)、2%(w/v)および10%(w/v)とした。検討用の培地における試験物質の濃度と乾燥粉末相当量との関係を表7に示す。
Figure 0006050596
(4)結果
また、ERα、ERβ、PPARαおよびPPARγに対する評価値を図5〜8にそれぞれ示す。図5に示すように、ERαに対する評価値は、ギンマメの抽出物II群およびIII群では、100%エタノール抽出物、50%エタノール抽出物および水抽出物について、いずれも2.0以上の顕著に高い値であった。これに対し、ダイズの抽出物I群では、100%エタノール抽出物について2.0以下であり、50%エタノール抽出物、熱水抽出物および水抽出物について、いずれも2.0以上の高い値であった。また、アズキの抽出物I群では、100%エタノール抽出物、50%エタノール抽出物、熱水抽出物および水抽出物について、いずれも2.0以下であった。
以上より、ギンマメの抽出物II群およびIII群の評価値の大きさはダイズの抽出物I群と比較して同等以上であり、アズキの抽出物I群と比較して顕著に高いことが明らかとなった。すなわち、ギンマメの抽出物は、抽出方法にかかわらずERαの活性を促進すること、およびその活性促進能はダイズの抽出物と比較して同等以上であり、アズキの抽出物と比較して顕著に高いことが明らかになった。
次に、図6に示すように、ERβに対する評価値は、ギンマメの抽出物II群およびIII群では、100%エタノール抽出物、50%エタノール抽出物および水抽出物について、いずれも2.0以上の顕著に高い値であった。また、ダイズの抽出物I群では、100%エタノール抽出物、50%エタノール抽出物、熱水抽出物および水抽出物について、いずれも2.0以上の高い値であった。これに対し、アズキの抽出物I群では、濃度が0.1%(w/v)の100%エタノール抽出物および50%エタノール抽出物、ならびに濃度が0.5%(w/v)の熱水抽出物および水抽出物について、いずれも2.0以下であり、濃度が0.25%(w/v)および0.5%(w/v)の100%エタノール抽出物および50%エタノール抽出物、ならびに濃度が2%(w/v)および10%(w/v)の熱水抽出物および水抽出物について、いずれも2.0以上であった。
以上より、ギンマメの抽出物II群およびIII群の評価値の大きさは、ダイズの抽出物I群と比較して同等以上であり、アズキの抽出物I群と比較して顕著に高いことが明らかとなった。すなわち、ギンマメの抽出物は、抽出方法にかかわらずERβの活性を促進すること、およびその活性促進能はダイズの抽出物と比較して同等以上であり、アズキの抽出物と比較して顕著に高いことが明らかになった。
次に、図7に示すように、PPARαに対する評価値は、ギンマメの抽出物II群およびIII群では、100%エタノール抽出物、50%エタノール抽出物および水抽出物について、いずれも2.0以上の高い値であった。これに対し、ダイズの抽出物I群では、100%エタノール抽出物、50%エタノール抽出物、熱水抽出物および水抽出物について、いずれも2.0以下であった。また、アズキの抽出物I群では、濃度が0.1%(w/v)の100%エタノール抽出物および50%エタノール抽出物、ならびに50%エタノール抽出物、熱水抽出物および水抽出物について、いずれも2.0以下であり、濃度が0.25%(w/v)および0.5%(w/v)の100%エタノール抽出物について、いずれも2.0以上であった。
以上より、ギンマメの抽出物II群およびIII群の評価値の大きさは、ダイズおよびアズキの抽出物I群と比較して高いことが明らかとなった。すなわち、ギンマメの抽出物は、抽出方法にかかわらずPPARαの活性を促進すること、およびその活性促進能はダイズおよびアズキの抽出物と比較して高いことが明らかになった。
次に、図8に示すように、PPARγに対する評価値は、ギンマメの抽出物II群およびIII群では、100%エタノール抽出物、50%エタノール抽出物および水抽出物について、いずれも2.0以上の高い値であった。これに対し、ダイズの抽出物I群では、100%エタノール抽出物、50%エタノール抽出物、濃度が0.5%(w/v)の熱水抽出物、ならびに濃度が0.5%(w/v)および2%(w/v)の水抽出物について、いずれも2.0以下であり、濃度が2%(w/v)および10%(w/v)の熱水抽出物ならびに濃度が10%(w/v)の水抽出物について、いずれも2.0以上であった。また、アズキの抽出物I群では、100%エタノール抽出物、50%エタノール抽出物、熱水抽出物および水抽出物について、いずれも2.0以下であった。
以上より、ギンマメの抽出物II群およびIII群の評価値の大きさは、ダイズの抽出物I群と比較して高く、アズキの抽出物I群と比較して顕著に高いことが明らかとなった。すなわち、ギンマメの抽出物は、抽出方法にかかわらずPPARγの活性を促進すること、およびその活性促進能はダイズおよびアズキの抽出物と比較して高いことが明らかになった。
以上の結果から、ギンマメの処理物はERα、ERβ、PPARαおよびPPARγの活性を強力に促進すること、およびその活性促進能はダイズおよびアズキの抽出物と比較して高いことが示された。

Claims (5)

  1. レチノイド受容体α(RARα)、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体α(PPARα)、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体γ(PPARγ)、肝臓X受容体α(LXRα)、ビタミンD受容体(VDR)、プレグナンX受容体(PXR)、レチノイドX受容体α(RXRα)、エストロゲン受容体α(ERα)およびエストロゲン受容体β(ERβ)からなる群から選択される核内受容体の活性を促進する核内受容体活性促進剤であって、ギンマメ(Amphicarpaea edgeworthii)の抽出物を有効成分とする前記核内受容体活性促進剤。
  2. ギンマメ(Amphicarpaea edgeworthii)の抽出物が果実に由来するものである、請求項1に記載の核内受容体活性促進剤。
  3. 果実が地中果である、請求項2に記載の核内受容体活性促進剤。
  4. レチノイド受容体α(RARα)、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体α(PPARα)、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体γ(PPARγ)、肝臓X受容体α(LXRα)、ビタミンD受容体(VDR)、プレグナンX受容体(PXR)、レチノイドX受容体α(RXRα)、エストロゲン受容体α(ERα)およびエストロゲン受容体β(ERβ)からなる群から選択される核内受容体の活性を促進する核内受容体活性促進用飲食物であって、ギンマメの抽出物を有効成分とする前記核内受容体活性促進用飲食物。
  5. ギンマメ(Amphicarpaea edgeworthii)の抽出物を含む飲食物を経口的に摂取させる工程を有する、レチノイド受容体α(RARα)、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体α(PPARα)、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体γ(PPARγ)、肝臓X受容体α(LXRα)、ビタミンD受容体(VDR)、プレグナンX受容体(PXR)、レチノイドX受容体α(RXRα)、エストロゲン受容体α(ERα)およびエストロゲン受容体β(ERβ)からなる群から選択される核内受容体の活性を促進させる方法(医療行為を除く。)。
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