JP2022184275A - 建設用3dプリンタの構造物の構築方法、および構造物、ならびに補強材入り硬化材料供給部、および連続補強材 - Google Patents
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Abstract
【課題】建設用3Dプリンタによって構造物を構築するとき、必要な補強がなされ、構造物が過剰に大きくならず材料コストを抑制できる、構造物の構築方法を提供する。【解決手段】建設用3Dプリンタ(1)において、ノズル(14)からモルタルを押し出して積層し構造物(30)を構築するとき、鉄筋の代わりに可撓性を備えた連続補強材を入れる。具体的には、モルタル(12)と共に連続補強材(9)を連続的に供給するようにする。これによってノズル(14)から押し出されるモルタル(12)中に連続補強材(9)が埋め込まれた状態なる。【選択図】図2
Description
本発明は、建設用3Dプリンタによってセメント系材料等の硬化材料を押し出して構造物を構築する構造物の構築方法、およびその構築方法により構築された構造物、ならびに建設用3Dプリンタに設けられる補強材入り硬化材料供給部、および連続補強材に関するものである。
3Dプリンタは、CADデータ等に基づいて立体的な成形品を自動的に製造することができるが、特許文献1等によって提案されているように、近年は建設分野においても適用が進んできている。建設分野で使用される建設用3Dプリンタは、材料として例えば速硬コンクリート、モルタル等のセメント系材料や、ケイ酸アルミニウムを主成分とした粉体とアルカリ溶液とからなる水硬化性硬化体が使用される。つまり色々な硬化材料が使用される。このような硬化材料を3次元的に自動制御により駆動されるノズル部から押し出して所望の形状の3D構造の構造物を構築する。
ところで、RCコンクリートにより構造物を形成する従来の工法では、型枠を作ってこの型枠の中に鉄筋を入れ、コンクリートを打設する。コンクリートが固化したら型枠を外す。図9には従来の工法によって構築された構造物100の断面が示されている。構造物100を形成しているコンクリート101内部には複数本の鉄筋104、105が設けられている。すなわち垂直に立てられている主鉄筋104、104、…と、これら主鉄筋104、104、…に対して水平方向に設けられている帯筋105、105、…とから構成されている。このようにコンクリート101内部には複数本の鉄筋104、105、…が入れられて全体として強度が確保されているので、設計断面の計算において構造物100の厚さ107を採用することができる。
一方、建設用3Dプリンタにより構造物を構築する場合には、押し出すコンクリートに鉄筋を入れることができない。そこで次のように構造物を形成している。まず、図10の(A)に示されているように、建設用3Dプリンタによって枠体110を構築する。この枠体110の内部に、図10の(B)に示されているように、主鉄筋111、111、…と、帯筋112、112、…とを入れる。最後に枠体110の内部にコンクリート114を打設して、構造物115を構築する。つまり3Dプリンタによって構築する枠体110は埋設枠になっている。
ところで、このような構造物115において、鉄筋111、112、…によって補強されているのは内側のコンクリート114の部分だけである。一方枠体110には鉄筋はない。つまり枠体110は、十分な強度が得られず、設計断面として考慮することができない。実質的に設計断面として採用できるのは、図10の(C)において符号118で示されている幅になってしまう。そうすると、建設用3Dプリンタで構築される枠体110の厚さだけ構造物115が厚くなってしまい、重量が大きくなると共に材料コストが高くなるという問題がある。さらには、鉄筋を入れられず強度が得られないことから、曲線を有するような形状において自由度の高い構造物を構築できないという問題もある。
本発明は、建設用3Dプリンタによって構造物を構築するとき、必要な補強がなされ、形成される構造物の全体について設計断面として扱うことができ、従って構造物が過剰に大きくならず材料コストを抑制できる、構造物の構築方法を提供することを目的としている。そして、必要な補強がされることによって形状において自由度の高い構造物も構築できる構造物の構築方法を提供することも目的としている。さらには、そのような構造物を構築できるようにするための、補強材入り硬化材料供給部、および連続補強材を提供することも目的としている。
本発明は、建設用3Dプリンタにおいて、ノズルから硬化材料を押し出して積層し構造物を構築するとき、硬化材料に補強材を入れるようにする。具体的には、硬化材料と共に可撓性を備えた連続補強材を供給する。これにより、ノズルから硬化材料中に連続補強材が埋め込まれた状態で硬化材料を押し出す。
本発明によると、ノズルから硬化材料を押し出して積層し構造物を構築するとき、硬化材料と共に可撓性を備えた連続補強材を供給し、ノズルから硬化材料中に連続補強材が埋め込まれた状態にして硬化材料を押し出すので、構築される構造物には連続補強材が含まれることになる。つまり、連続補強材は完全に硬化材料中に埋没した状態になるので、硬化材料と一体的に硬化する。そうすると、実質的に鉄筋を入れたのと同等の強度が得られることになる。これによって建設用3Dプリンタによって構築される構造物について、全体を設計断面として考慮することが可能になる。
以下、本実施の形態を説明する。
本実施の形態に係る建設用3Dプリンタ1は、図1に示されているように、本体部2と、この本体部2に設けられている多段式のロボットアーム部4と、このロボットアーム部4の先端に設けられている本実施の形態に係る補強材入り硬化材料供給部6とから構成されている。本実施の形態において本体部2は地面に固定されているが、レール上を走行するようになっていてもよいし、無限軌道により自在に走行できる構造になっていてもよい。またロボットアーム部4は、本実施の形態においては2段のブームから構成されているが、1段から、あるいは3段以上から構成するようにしてもよい。本実施の形態に係る建設用3Dプリンタは、図に示されていないコンピュータにより制御されるようになっており、補強材入り硬化材料供給部6を所望の3次元位置に駆動するようになっている。
本実施の形態に係る建設用3Dプリンタ1は、図1に示されているように、本体部2と、この本体部2に設けられている多段式のロボットアーム部4と、このロボットアーム部4の先端に設けられている本実施の形態に係る補強材入り硬化材料供給部6とから構成されている。本実施の形態において本体部2は地面に固定されているが、レール上を走行するようになっていてもよいし、無限軌道により自在に走行できる構造になっていてもよい。またロボットアーム部4は、本実施の形態においては2段のブームから構成されているが、1段から、あるいは3段以上から構成するようにしてもよい。本実施の形態に係る建設用3Dプリンタは、図に示されていないコンピュータにより制御されるようになっており、補強材入り硬化材料供給部6を所望の3次元位置に駆動するようになっている。
補強材入り硬化材料供給部6は、硬化材料を押し出すとき、可撓性を備えた連続補強材を埋め込んだ状態で補強材入り硬化材料を押し出す装置である。本発明において硬化材料として、モルタル、速硬コンクリート等のセメント系水硬化性硬化体を採用してもよいし、他の種類の水硬化性硬化体を採用してもよい。他の種類の水硬化性硬化体の例として、いわゆるジオポリマーが周知である。ジオポリマーは、ケイ酸アルミニウムを主成分とした粉体とアルカリ溶液を用いた水硬化性硬化体になっている。しかしながら、本実施の形態においては硬化材料としてセメント系水硬化性硬化体であるモルタルが採用されている。
硬化材料に連続的に埋め込んで硬化材料と共に押し出す連続補強材は、炭素繊維やガラス繊維等の強化繊維を使用することもできるし、金属製ワイヤー、樹脂繊維等を使用することもできる。また、連続繊維を構成する繊維の形態としては、長繊維であっても、短繊維であっても構わない。つまり本発明において可撓性を備えていると共に強度を備えていればどのようなものでも連続補強材として使用できる。しかしながら本実施の形態においては連続補強材として炭素繊維が好ましく使用される。そして本実施の形態において繊維、好ましくは炭素繊維は多数の繊維からなる撚糸が好ましく採用されている。
本実施の形態に係る補強材入り硬化材料供給部6を図1、図2によって説明する。本実施の形態に係る補強材入り硬化材料供給部6は、硬化材料としてのモルタルを供給する硬化材料供給部7と、連続補強材としての炭素繊維の撚糸9を供給する補強材供給部10と、モルタル12中に炭素繊維の撚糸9を埋め込んだ状態で押し出すノズル14とから概略構成されている。
硬化材料供給部7は、図示されない外部のモルタル供給装置から、図1に示されている硬化材料供給管15を介してモルタルが供給されるようになっている。硬化材料供給部7は本実施の形態においては所定の容量の容器から構成されているが、内部に邪魔板やポンプを設ける等して、モルタルの流量を調整する機能を持たせてもよい。さらには弁構造を設けて、モルタルの送り出しを停止できるようにしてもよい。
補強材供給部10は、硬化材料供給部7に固定されたブラケット17と、このブラケット17に固定されているロービング18とからなる。ロービング18は炭素繊維の撚糸9が円筒状にかつ多重に巻かれたものであり、炭素繊維の撚糸9をスムーズに供給するようになっている。ロービング18から供給される炭素繊維の撚糸9はノズル14に送られる。
ノズル14は、硬化材料供給部7から接続されている本管20と、この本管20に接続されている補強材供給管21とから構成されている。本管20は硬化材料供給部7より小径になっており、一定の流速でモルタルが流れるようになっている。補強材供給管21は、連続補強材である炭素繊維の撚糸9が入れられる管であり、その内径は炭素繊維の撚糸9の径よりわずかに大きい。つまり炭素繊維の撚糸9がスムーズに送られる管になっている。このような補強材供給管21は、本管20の側面から本管20の内部に挿入されており、その先端は本管20の先端よりも若干上方に位置している。
ノズル14はこのように構成されているので、ノズル14からモルタル12を押し出すとき、本管20内を押し出されるモルタル12の摩擦力によって炭素繊維の撚糸9は自動的に引き出される。従って、本実施の形態に係る補強材入り硬化材料供給部6によって押し出されるモルタル12には、図1、図2に示されているように、内部に炭素繊維の撚糸9が埋め込まれた状態になる。
本実施の形態に係る補強材入り硬化材料供給部6を備えた建設用3Dプリンタ1で構造物を構築する方法を説明する。最初に、建設用3Dプリンタ1によって図3、および図4の(A)に示されている構造部材埋設枠24を構築する。すなわち、必要な強度を備えていて設計断面として扱うことができる埋設枠である。構造部材埋設枠24は、補強材入り硬化材料供給部6により炭素繊維の撚糸9が埋め込まれたモルタル12を押し出しながら、建設用3Dプリンタ1のロボットアーム部4を駆動して所定形状に構築する。押し出したモルタル12により複数層、例えば5層に積層した様子が図3に示されている。さらに必要な高さになるよう積層して構造部材埋設枠24を構築する。
構造部材埋設枠24が固化したら、図4の(B)に示されているように、構造部材埋設枠24の内側に主鉄筋26、26、…を入れる。構造部材埋設枠24のモルタル12に埋め込まれている炭素繊維の撚糸9は、実質的に帯筋と同等の作用を奏する。従って、鉄筋は主鉄筋26、26、…を入れるだけでよい。しかしながら、必要に応じて主鉄筋26、26、…だけでなく帯筋に相当する鉄筋を設けてもよい。
最後に、図4の(C)に示されているように、構造部材埋設枠24の内側にコンクリート28を打設する。コンクリート28が固化する。構造物30が得られる。構造物30において構造部材埋設枠24には炭素繊維の撚糸9が埋め込まれている。従って、構造部材埋設枠24の引張強度は高い。従って、構造物30の設計断面の計算において厚さ31を採用することができる。
図4によって説明した構造物の構築方法では、硬化材料に埋め込まれた連続補強材、つまりモルタル12に埋め込まれた炭素繊維の撚糸9は帯筋と同等の作用を奏することを説明した。しかしながら、連続補強材は主鉄筋と同等の作用を奏するようにすることもできる。例えば、本実施の形態にかかる建設用3Dプリンタ1によって、図5の(A)に示されているように、仮の構造物35を構築する。この仮の構造物35において、炭素繊維の撚糸9は水平方向になっている。この仮の構造物35が固化したら床面からはがして、図5の(B)に示されているように90度回転する。すなわち倒す。この状態で床面に固着する。そうすると、符号36で示されている部分において、モルタル12中の炭素繊維の撚糸9は垂直方向になる。すなわち主鉄筋と同等の作用を奏することになる。
本実施の形態に係る補強材入り硬化材料供給部6を備えた建設用3Dプリンタ1は、構築できる構造物の形状について自由度が高い。例えば、図6の(A)に示されているような、ピラミッド型の構造物38を構築することができる。従来、このようなピラミッド型の構造物38を構築する場合には、図6の(B)に示されているような、主鉄筋40、40、…と帯筋41、41、…とからなる鉄筋の構造体43を形成する必要があった。そしてこの鉄筋の構造体43を囲むように枠体を設け、コンクリートを打設し、固化した後に枠体を取り外す必要があった。
本実施の形態に係る補強材入り硬化材料供給部6を備えた建設用3Dプリンタ1によって、図6の(A)に示されているピラミッド型の構造物38を構築する場合、次のようにする。まず図7の(A)に示されているように構造部材埋設枠45を構築する。この構造部材埋設枠45は、炭素繊維の撚糸が埋め込まれた状態のモルタルが積層され、構築されたものである。次いで、このような構造部材埋設枠45に、鉄筋を入れる。構造部材埋設枠45に入れる鉄筋として、例えば図6の(B)に示されている鉄筋の構造体43を入れることはできない。構造部材埋設枠45の開口部は小さいからである。そこで、図7の(B)に示されているように、主鉄筋に相当する鉄筋46、46を構造部材埋設枠45に入れる。つまり帯筋を省略する。構造部材埋設枠45には連続補強材として炭素繊維の撚糸が入れられているので、実質的に帯筋と同等の作用を奏するからである。
鉄筋46、46が入れられた構造部材埋設枠45にコンクリート48を打設する。図7の(C)に示されているように構造部材埋設枠45とコンクリート48とが一体的に固化する。最後に、図7の(D)に示されているように、本実施の形態に係る補強材入り硬化材料供給部6を備えた建設用3Dプリンタ1によって頂部50を構築する。ピラミッド型の構造物38が構築される。
本実施の形態に係る補強材入り硬化材料供給部6を備えた建設用3Dプリンタ1によって、炭素繊維の撚糸が埋め込まれたモルタルを適切に押し出すことができること、およびそのようなモルタルによって構造物を適切に構築できることを確認するため、実験を行った。
実験方法:本実施の形態に係る補強材入り硬化材料供給部6を備えた建設用3Dプリンタ1を駆動して、図4の(1)に示されているような枠体を形成した。枠体が固化した後で、枠体内にコンクリートを打設して構造物を得た。打設したコンクリートが固化した後に、構造物を切断した。
実験結果:図5に切断した構造物の写真を示す。写真に示されているように、枠体を形成している複数層からなるモルタルにおいて、各層の中央に炭素繊維の撚糸が適切に埋め込まれていることが確認できた。そして炭素繊維の撚糸がモルタルと一体的になって固化し、空隙が形成されていないことも確認できた。本実施の形態に係る補強材入り硬化材料供給部6を備えた建設用3Dプリンタ1によって炭素繊維の撚糸が埋め込まれたモルタルを適切に押し出すことができる点、および構造物を適切に形成できる点が確認できた。
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実験結果:図5に切断した構造物の写真を示す。写真に示されているように、枠体を形成している複数層からなるモルタルにおいて、各層の中央に炭素繊維の撚糸が適切に埋め込まれていることが確認できた。そして炭素繊維の撚糸がモルタルと一体的になって固化し、空隙が形成されていないことも確認できた。本実施の形態に係る補強材入り硬化材料供給部6を備えた建設用3Dプリンタ1によって炭素繊維の撚糸が埋め込まれたモルタルを適切に押し出すことができる点、および構造物を適切に形成できる点が確認できた。
1 建設用3Dプリンタ 2 本体部
4 ロボットアーム部 6 補強材入り硬化材料供給部
7 硬化材料供給部 9 炭素繊維の撚糸
10 補強材供給部 12 硬化材料
14 ノズル 15 硬化材料供給管
17 ブラケット 18 ロービング
20 本管 21 補強材供給管
24 構造部材埋設枠 26 主鉄筋
28 コンクリート 30 構造物
31 厚さ
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Claims (9)
- 建設用3Dプリンタにおいて、ノズルから硬化材料を押し出して積層し構造物を構築するとき、前記硬化材料と共に可撓性を備えた連続補強材を供給し、前記ノズルから前記硬化材料中に前記連続補強材が埋め込まれた状態にして前記硬化材料を押し出す、構造物の構築方法。
- 前記連続補強材は、前記ノズルの側方から前記ノズル中に挿入し、前記ノズルから押し出される前記硬化材料中に埋め込まれるようにする、請求項1に記載の構造物の構築方法。
- 前記連続補強材は、前記ノズルから押し出される前記硬化材料を断面で見たとき前記硬化材料の中央に配置されている、請求項1または2に記載の構造物の構築方法。
- 建設用3Dプリンタのノズルから押し出された硬化材料が複数層に積層されて構築された構造物であって、
前記構造物は、前記複数層の硬化材料の各層において層の中に可撓性を備えた連続補強材が埋め込まれている、構造物。 - 前記連続補強材は前記複数層の硬化材料の各層を断面で見たとき前記硬化材料の中央に配置されている、請求項4に記載の構造物。
- 建設用3Dプリンタにおいて構造物を構築するための硬化材料を補強材に入れて押し出す補強材入り硬化材料供給部であって、前記補強材入り硬化材料供給部は、硬化材料を押し出すノズルを備え、前記ノズルには前記ノズルの側面から補強材供給管が挿入されており、可撓性を備えた連続補強材が前記補強材供給管から前記ノズル内に供給されて、前記ノズルから前記連続補強材が埋め込まれた状態で補強材入り硬化材料が押し出されるようになっている、建設用3Dプリンタの補強材入り硬化材料供給部。
- 建設用3Dプリンタにより硬化材料をノズルから押し出して積層し構造物を構築する際に埋め込まれる、可撓性を備えた連続補強材。
- 前記連続補強材は、連続した強化繊維からなる、請求項7に記載の連続補強材。
- 前記強化繊維は炭素繊維からなる、請求項8に記載の連続補強材。
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