JP2022183821A - 表面被覆六方晶窒化ホウ素粒子を製造する方法、及び表面被覆六方晶ホウ素粒子 - Google Patents
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Abstract
【課題】h-BNの基底面である(0001)面も含めてh-BN粒子の表面を様々な材料で効果的に改質することができる方法を提供する。【解決手段】一実施態様の表面被覆六方晶窒化ホウ素粒子を製造する方法は、(a)六方晶窒化ホウ素粒子、(b)カップリング剤、及び(c)極性基及び芳香環を有する触媒を溶媒中で混合することにより、前記六方晶窒化ホウ素粒子の表面の少なくとも一部に前記カップリング剤の縮合物を含む層を形成することを含む。【選択図】図1
Description
本開示は、表面被覆六方晶窒化ホウ素粒子を製造する方法、及び表面被覆六方晶ホウ素粒子に関する。本開示はまた、そのような表面被覆六方晶窒化ホウ素粒子を含む放熱性樹脂組成物に関する。
六方晶窒化ホウ素(以下、単に「h-BN」とも表記する。)は、高い熱伝導率及び絶縁性を有することから、自動車用電子部品の熱管理、パワー半導体、第5世代移動通信システム(5G)などの用途に有望である。h-BNは、グラファイトと同様の層状(ラメラ)構造を有しており、化学的に不活性であり安定であることから、化粧品の滑り改良剤、マット付与剤、光沢剤などとしても使用される。h-BNは平板状、凝集体、フレーク状など様々な形態の粒子で提供されている。
用途に応じてh-BN粒子の表面を改質することが知られている。
特許文献1(特開2008-94701号公報)は、「窒化ホウ素粉末を含む窒化ホウ素組成物であって、該窒化ホウ素粉末が、(RR’SiO-)n(式中、R、R’は、同じ又は異なるものでありかつH、アルキル、アリール及び置換アリールの群から選択され、nは、環状化合物に対しては3~16の範囲、線状化合物に対しては2~1百万の範囲の値である)、及びNHn(SiR1R2R3)3-n(式中、R1、R2、R3は、ヒドロカルビル基又はHであり、nは1又は2である)から選択された式を有する少なくとも有機シリコン化合物でその表面を処理される、窒化ホウ素組成物」を記載している。特許文献1では、窒化ホウ素表面の反応部位を増加させるために、任意選択的に焼成、粉砕、又はコーティングが行われる。
特許文献2(特開2007-182369号公報)は、「窒化ホウ素粉末を含む窒化ホウ素組成物であって、前記窒化ホウ素粉末の表面が、シラン、シロキサン、カルボン酸誘導体、及びその混合物の少なくとも1つを含む少なくともオーバーコーティング層で処理されており、前記オーバーコーティング層が、少なくとも反応性のある1つの官能基を有し、前記オーバーコーティングコーティング層が、前記窒化ホウ素の表面の少なくとも2%に付着することを特徴とする窒化ホウ素組成物」を記載している。特許文献2では、窒化ホウ素表面の反応部位を増加させるために、任意選択的に焼成による表面酸化、又はコーティングが行われる。
非特許文献1(Ceramics International 42 (2016) 6312-6318)は、六方晶窒化ホウ素(hBN)の表面をペルフルオロオクチルトリエトキシシラン(FTS)で修飾することを記載している。図4にはhBNナノ粒子の表面にFTS分子が結合する機構が模式的に示されており、FTSのエトキシ基とhBN表面の末端の水酸基(B-OH)とが脱エタノール縮合することにより、hBN表面の端部が修飾されている。
非特許文献2(Ceramics International 40 (2014) 2047-2056)は、エポキシ末端ジメチルシロキサンマトリクスと窒化ホウ素粉末フィラーとの複合材料を記載している。図1に示されるように、窒化ホウ素粉末フィラーは、水酸化ナトリウム水溶液中で処理することにより末端に水酸基(B-OH)が導入され、その水酸基と3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランとが反応することにより、窒化ホウ素粉末フィラーの表面の端部が修飾されている。
非特許文献3(Journal of the Ceramic Society of Japan 123 [5] 423-427 2015)は、ロータリー化学気相堆積(RCVD)を用いて、六方晶窒化ホウ素の平板状粉末をSiO2ナノ層で被覆することを記載している。RCVDプロセスでは、前駆体としてテトラエチルオルトシリケートを110℃に加熱して反応器に導入し、700℃で酸素と反応させてSiO2が形成されている。SiO2ナノ層の被覆について図4に示されるように、反応器の回転移動により六方晶窒化ホウ素粉末が浮遊状態に維持されるため、粉末の全面が反応ガスにさらされて密なSiO2核が六方晶窒化ホウ素の表面に均一に付着するが、前駆体供給速度が高すぎると、密なSiO2核が形成されずに塊及び突起が形成される。
非特許文献4(Materials and Design 182 (2019) 108028)は、六方晶窒化ホウ素を銅クラッド積層物のポリマー絶縁フィラー(ポリフェニレンエーテル樹脂)に導入したことを記載している。六方晶窒化ホウ素は、アンモニア及び脱イオン水を含む媒体に超音波を用いて分散され、テトラエチルオルトシリケートの縮合物で被覆されている。非特許文献4によれば、図2(a)に示されるように、テトラエチルオルトシリケートは、ラメラ構造の端部に水酸基及びアミノ基が生成し、テトラエチルオルトシリケートの加水分解反応により生成したオルトケイ酸が、六方晶窒化ホウ素の端部で優先的に脱水縮合して、シリカ核が形成される。端部がシリカで完全に被覆されてから、シリカ被覆は徐々に六方晶窒化ホウ素の平滑な表面に移動して、最終的に六方晶窒化ホウ素の全体がシリカで被覆される。
非特許文献5(Composites Part A 137 (2020) 106026)は、シランカップリング剤結合ポリ(ビニルアルコール)と官能化窒化ホウ素との間に共有結合が形成された熱伝導性複合材料を記載している。官能化窒化ホウ素は、六方晶窒化ホウ素粉末をイソプロパノールと脱イオン水の混合物に超音波を与えながら分散させ、切断されなかった(non-cutting)窒化ホウ素シートを除去することにより得られており、具体的には窒化ホウ素の末端に水酸基(B-OH)が導入されている。窒化ホウ素の水酸基及びポリ(ビニルアルコール)の水酸基を、テトラエチルオルトシリケート、ビニルトリエトキシシラン、又は3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランとを反応させることにより、図3に示される複合材料が得られている。
非特許文献6(ACS Appl. Mater. Interfaces 2015, 7, 10, 5915-5926)は、有機溶媒を含まない水性条件下で、六方晶窒化ホウ素ナノ粒子をポリドーパミンで非共有結合的に修飾すること、及び修飾六方晶窒化ホウ素ナノ粒子にビスフェノールEシアネートエステルを組み込むことを記載している。
Ceramics International 42 (2016) 6312-6318
Ceramics International 40 (2014) 2047-2056
Journal of the Ceramic Society of Japan 123 [5] 423-427 2015
Materials and Design 182 (2019) 108028
Composites Part A 137 (2020) 106026
ACS Appl. Mater. Interfaces 2015, 7, 10, 5915-5926
h-BN粒子は一般に流動性が低いため、製造時の取り扱いが難しい場合がある。
h-BNは層状構造を有するため、例えば樹脂をマトリクスとした複合材料としたときに、複合材料の粘度を増加させる傾向がある。h-BNは化学的に不活性であるために、樹脂と混合しにくい上に、分散助剤を添加しても複合材料の粘度を低下させることも難しい。
h-BNは異方性熱伝導性材料である。平板状h-BN粒子を含む複合材料をコーティングすると、その際に加わる剪断力により平板状h-BN粒子の配向が揃って、コーティングの厚さ方向における熱伝導率が特に低くなる場合がある。
従来の表面改質方法では、主にh-BNのラメラ構造の端部が改質される。h-BNでは、同じ層中のホウ素原子と窒素原子は強く結合しているが、隣接する層同士は弱いファンデルワールス力によって保持されている。そのため、基底面である(0001)面にはダングリングボンドはほとんど存在しない。このことが、h-BN(及びグラファイト)の表面改質が、特に基底面で困難である理由である。ラメラ構造の端部は、h-BN粒子、特に平板状h-BN粒子の表面全体からみてほんの一部であり、簡便な手法でh-BN粒子の表面の大半を占める(0001)面を効果的に改質することは難しい。例えば、非特許文献3に記載の表面改質は、RCVD装置及び高温減圧(700℃、800Pa)環境を必要とする。
オゾン処理、コロナ処理、プラズマ処理等により、h-BNの基底面にダングリングボンドとして水酸基を生成させ、その水酸基をアンカーとして表面処理を行うこともできる。しかし、これらの種類の処理は、h-BNの構造を破壊して、h-BN粒子の物性、特に熱伝導性を低下させるおそれがあり、特別な設備を必要とする場合もある。表面改質処理に対して活性な表面を露出させるためにh-BN粒子を粉砕すると、所望の粒度分布を有するh-BN粒子を精度よく得ることは難しい。
本開示は、簡便な手法を用いてh-BNの基底面である(0001)面を様々な材料で効果的に改質することができる、表面被覆六方晶窒化ホウ素粒子の製造方法を提供する。また、本開示は、(0001)面が高被覆率で表面改質された表面被覆h-BN粒子を提供する。
本開示の一実施態様によれば、(a)六方晶窒化ホウ素粒子、(b)カップリング剤、及び(c)極性基及び芳香環を有する触媒を溶媒中で混合することにより、前記六方晶窒化ホウ素粒子の表面の少なくとも一部に前記カップリング剤の縮合物を含む層を形成することを含む、表面被覆六方晶窒化ホウ素粒子を製造する方法が提供される。
本開示の別の実施態様によれば、六方晶窒化ホウ素粒子の表面の少なくとも一部に形成された、カップリング剤の縮合物を含む層を有する表面被覆六方晶窒化ホウ素粒子であって、前記六方晶窒化ホウ素粒子の前記表面が(0001)面の少なくとも一部を含む、表面被覆六方晶窒化ホウ素粒子が提供される。
本開示の更に別の実施態様によれば、(a)六方晶窒化ホウ素粒子、(b)カップリング剤、及び(c)極性基及び芳香環を有する触媒を溶媒中で混合することにより、前記六方晶窒化ホウ素粒子の表面の少なくとも一部に形成された前記カップリング剤の縮合物を含む層を有する、表面被覆六方晶窒化ホウ素粒子が提供される。
本開示の更に別の実施態様によれば、表面被覆六方晶窒化ホウ素粒子を含む放熱性樹脂組成物であって、前記表面被覆六方晶窒化ホウ素粒子は、六方晶窒化ホウ素粒子の表面の少なくとも一部に形成された、カップリング剤の縮合物を含む層を有し、前記六方晶窒化ホウ素粒子の前記表面が(0001)面の少なくとも一部を含む、放熱性樹脂組成物が提供される。
本開示の表面被覆六方晶窒化ホウ素粒子の製造方法によれば、h-BN粒子、カップリング剤及び触媒を溶媒中で混合するという簡便な手法で、h-BNの基底面である(0001)面を様々な材料で効果的に改質することができる。本開示の方法は、特別な製造設備を必要としないため、製造設備の投資及び運転に係るコストを低減することができる。また、本開示の方法は、様々なカップリング剤の使用を可能にするため、目的に応じて更なる疎水化、親水化、耐酸化性の向上など、h-BN粒子の特性を向上させる、あるいはh-BN粒子に新たな特性を付与することができる。
本開示の表面被覆六方晶窒化ホウ素粒子は、(0001)面も含めて表面が改質されているため、流動性及び他の材料との混和性に優れており、放熱性樹脂組成物などの複合材料の原料として、様々な用途に利用することができる。
上述の記載は、本開示の全ての実施態様及び本開示に関する全ての利点を開示したものとみなしてはならない。
以下、本発明の代表的な実施態様を例示する目的で、必要に応じて図面を参照しながらより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施態様に限定されない。
本開示において「シート」には、「フィルム」と呼ばれる物品も包含される。
本開示において「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味する。
一実施態様の表面被覆六方晶窒化ホウ素粒子を製造する方法は、(a)六方晶窒化ホウ素粒子、(b)カップリング剤、及び(c)極性基及び芳香環を有する触媒を溶媒中で混合することにより、六方晶窒化ホウ素粒子の表面の少なくとも一部にカップリング剤の縮合物を含む層を形成することを含む。
この実施態様では、カップリング剤の縮合物を形成するための触媒として、極性基及び芳香環を有するものを使用する。いかなる理論に拘束される訳ではないが、触媒の芳香環がh-BN粒子の(0001)面とπ-πスタッキング相互作用した状態で、その触媒の極性基がカップリング剤の縮合反応、及び場合により縮合反応に先立つ加水分解反応を促進する。そのため、カップリング剤の縮合物は、触媒の分子レベルの距離でh-BN粒子の(0001)面に近接して形成される。これにより、h-BN粒子の(0001)面を含む表面を、カップリング剤の縮合物で効果的に被覆することができる。触媒の極性基として、カップリング剤の縮合反応、及び場合により加水分解反応に適したものを選択することにより、多様なカップリング剤を用いてh-BN粒子の表面を被覆することができる。
六方晶窒化ホウ素(h-BN)粒子の形態は様々であってよく、特に制限はない。h-BN粒子の形態として、例えば、針状、平板状などの一次粒子、及びこれらの一次粒子の凝集体が挙げられる。h-BN粒子は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
一次粒子の大きさは、目的とする用途に所望される特性、例えば熱伝導性が得られるように適宜選択すればよく、特に制限はない。一次粒子の平均長径は、約1.5μm以上、約2.0μm以上、又は約2.5μm以上、約25μm以下、約20μm以下、又は約15μm以下とすることができる。本開示において、一次粒子の平均長径は、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)等の顕微鏡を用いて得られる画像における、50個の一次粒子の長径の平均値として規定される。
凝集体の大きさは、目的とする用途に所望される特性、例えば熱伝導性が得られるように適宜選択すればよく、特に制限はない。凝集体の平均粒子径は、約20μm以上、40μm以上、又は約60μm以上、約300μm以下、約250μm以下、又は約200μm以下とすることができる。本開示において、凝集体の平均粒子径は、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)等の顕微鏡を用いて得られる画像における、50個の凝集体の面積円相当粒子径の平均値として規定される。面積円相当粒子径とは、画像上の凝集体の投影面積と同じ面積を有する円形状の粒子に換算した場合の粒子径である。
一実施態様では、h-BN粒子は平板状の一次粒子である。平板状のh-BN一次粒子は、複合材料に熱伝導性、滑り性、光沢感などを付与することができる。
別の実施態様では、h-BN粒子は一次粒子の凝集体である。h-BN一次粒子の凝集体は、加工性に優れるとともに、一次粒子がランダム配向しているために複合材料に高熱伝導性を付与することができる。
カップリング剤とは、一般に、化学的性質の異なる2つの材料、例えば無機材料と有機材料との界面に介在して、これらの材料の結合、混和などに寄与する試薬である。カップリング剤としては、半金属又は金属を含む縮合物を形成してh-BN粒子の表面上に層を形成できるものであれば特に制限はない。カップリング剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
一実施態様では、カップリング剤は、アルミニウム、ケイ素、チタン、及びジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含む。
アルミニウムカップリング剤としては、例えば、アルミニウムエチレート、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムジイソプロピレートモノsec-ブチレート、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムオクタデセニルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート、環状アルミニウムオキサイドステアレート、及び環状アルミニウムオキサイドオクチレートが挙げられる。アルミニウムカップリング剤は、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)であることが好ましい。
ケイ素カップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン、テトラエトキシシラン(テトラエチルオルトシリケート)、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等のアルコキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル変性シラン;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ変性シラン;p-スチリルトリメトキシシラン等のスチレン変性シラン;3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリル変性シラン;N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ変性シラン;トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等のイソシアヌレート変性シラン;3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン等のウレイド変性シラン;3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト変性シラン;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート変性シラン;及び3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物等の酸無水物変性シランが挙げられる。ケイ素カップリング剤は、テトラエチルオルトシリケート、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、又はイソオクチルトリメトキシシランであることが好ましい。
チタンカップリング剤としては、例えば、チタンテトラエトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラn-ブトキシド、チタンn-ブトキシドダイマー、チタンテトラ(2-エチルヘキソキシド)、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、チタンラクテート及びそのアンモニウム塩、並びにチタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)が挙げられる。チタンカップリング剤は、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、又はチタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)であることが好ましい。
ジルコニウムカップリング剤としては、例えば、ジルコニウムテトラn-プロポキシド、ジルコニウムテトラn-ブトキシド、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリn-ブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムジn-ブトキシビスエチルアセトアセテート及びジルコニウムテトラアセチルアセトネートが挙げられる。ジルコニウムカップリング剤は、ジルコニウムトリn-ブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムジn-ブトキシビスエチルアセトアセテート又はジルコニウムテトラn-ブトキシドであることが好ましい。
カップリング剤の使用量は、h-BN粒子100質量部に対して、一般に約5質量部以上、約10質量部以上、又は約20質量部以上、約70質量部以下、約60質量部以下、又は約40質量部以下である。
極性基及び芳香環を有する触媒は、極性基がカップリング剤の縮合反応、及び場合により加水分解反応を促進するものであれば、特に制限はない。触媒は、1分子中に、2つ以上の極性基を有してもよく、2つ以上の芳香環を有してもよい。触媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
触媒の極性基としては、例えば、アミノ基、ヒドロキシル基、スルホン基、及びリン酸基などが挙げられる。触媒の極性基はアミノ基であることが好ましい。いかなる理論に拘束される訳ではないが、極性基としてアミノ基を有する触媒は、芳香環だけでなく、アミノ基もh-BN粒子の表面と相互作用することができる。アミノ基とh-BN粒子の表面との相互作用により、触媒がh-BN粒子の表面に接近した後、触媒の芳香環がh-BN粒子の(0001)面とπ-πスタッキング相互作用し、自由になったアミノ基はカップリング剤の縮合反応、及び場合により加水分解反応を促進する。このような機構により、極性基としてアミノ基を有する触媒は、より少量で効果的にカップリング剤の縮合物を含む層をh-BN粒子の表面に形成することができると考えられる。
触媒の芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環等の芳香族炭化水素環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、ピリジン環等の複素芳香族環が挙げられる。芳香環構造を構成する原子の数は、5以上、又は6以上、22以下、16以下、又は10以下とすることができる。触媒の芳香環はベンゼン環であることが好ましい。芳香環としてベンゼン環を有する触媒は、比較的分子量が小さいため、溶媒に対する溶解性が高く、少量でpHを高めてカップリング剤の縮合反応、及び場合により加水分解反応を促進させることができる。
芳香環は置換基を有してもよく、無置換であってもよい。芳香環の置換基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などのアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;及びフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子が挙げられる。
触媒としては、具体的には、1,3-ビス(アミノメチル)ベンゼン(m-キシリレンジアミン)、ベンジルアミン、3-アミノベンジルアミン、及び1,4-ビス(アミノメチル)ベンゼンが挙げられる。触媒は、1,3-ビス(アミノメチル)ベンゼン、3-アミノベンジルアミン、又は1,4-ビス(アミノメチル)ベンゼンであることが好ましく、1,3-ビス(アミノメチル)ベンゼンであることがより好ましい。
触媒の使用量は、カップリング剤の縮合反応、及び場合により加水分解反応を促進できる範囲であれば特に限定されず、使用する触媒の種類、溶媒の種類及び使用量などに応じて適宜決定することができる。例えば、極性基としてアミノ基を有する触媒を用いる場合、溶媒中にh-BN粒子、カップリング剤、及び触媒を含む混合物のpHが、約9以上、約10以下となるように触媒の使用量を決定することが有利である。
表面被覆h-BN粒子は、h-BN粒子、カップリング剤、及び触媒を溶媒中で混合することにより製造される。この混合工程において、カップリング剤の縮合物を含む層がh-BN粒子の表面の少なくとも一部に形成される。
溶媒は、カップリング剤の縮合反応、及びそれにより生じた縮合物に悪影響を及ぼさない限り、特に制限されない。溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
溶媒としては、例えば、蒸留水、脱イオン水等の水;メタノール、エタノール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;及びトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が挙げられる。カップリング剤の縮合反応に先立って加水分解反応を要するカップリング剤の場合は、水、又は水とアルコールの混合溶媒を用いることが好ましい。
溶媒の使用量は、溶媒中にh-BN粒子、カップリング剤、及び触媒を含む混合物の流動性に応じて適宜決定することができる。混合物の流動性が撹拌に支障のない範囲であることが望ましい。
混合は、一般的な混合装置を用いて行うことができる。混合装置としては、例えば、ミックスローター、撹拌機、及びマグネチックスターラーが挙げられる。
h-BN粒子、カップリング剤、及び触媒を混合装置に投入する順序に特に制限はない。例えば、h-BN粒子を溶媒中に分散させた後、カップリング剤及び触媒を同時に投入してもよく、h-BN粒子及び触媒を溶媒中に分散又は溶解させた後、カップリング剤を投入してもよい。
混合温度は、例えば、約20℃以上、約25℃以上、約40℃以上、又は約60℃以上、約80℃以下とすることができる。
混合後、必要に応じて、表面被覆h-BN粒子を脱イオン水、アルコールなどを用いて洗浄してもよく、加熱して乾燥してもよい。
一実施態様の表面被覆h-BN粒子は、h-BN粒子の表面の少なくとも一部に形成された、カップリング剤の縮合物を含む層を有する。この実施態様において、h-BN粒子の表面は(0001)面の少なくとも一部を含むことができる。
一実施態様の表面被覆h-BN粒子は、上記の製造方法により得ることができる。
表面被覆h-BN粒子の形態は、基本的に使用したh-BN粒子の形態と同じである。表面被覆h-BN粒子の形態として、例えば、針状、平板状、鱗片状などの一次粒子、及びこれらの一次粒子の凝集体が挙げられる。一実施態様では、表面被覆h-BN粒子は平板状の一次粒子である。別の実施態様では、表面被覆h-BN粒子は一次粒子の凝集体である。
表面被覆h-BN一次粒子の平均長径は、約1.5μm以上、約2.0μm以上、又は約2.5μm以上、約25μm以下、約20μm以下、又は約15μm以下とすることができる。
表面被覆h-BN凝集体の平均粒子径は、約20μm以上、40μm以上、又は約60μm以上、約300μm以下、約250μm以下、又は約200μm以下とすることができる。
一実施態様では、平板状の一次粒子である表面被覆h-BN粒子の安息角は約30度以下、約25度以下、又は約20度以下である。この実施態様の表面被覆h-BN粒子は、未処理のh-BN粒子と比較して大幅に高い流動性を有しており、取り扱い性に優れている。安息角は、実施例に記載の注入法によって決定される。
一実施態様の放熱性樹脂組成物は、上記の表面被覆h-BN粒子を含む。表面被覆h-BN粒子は、放熱性樹脂組成物の他の成分と良好な混和性を有しているため、高い放熱特性を放熱性樹脂組成物に付与することができる。
放熱性樹脂組成物中の表面被覆h-BN粒子の配合量は、目的とする用途に所望される熱伝導性、流動性、機械的強度等を考慮して適宜決定することができる。例えば、表面被覆h-BN粒子の配合量は、放熱性樹脂組成物の固形分を基準として、約40体積%以上、約50体積%以上、又は約55体積%以上、約95体積%以下、約90体積%以下、又は約80体積%以下とすることができる。本開示において、放熱性樹脂組成物の体積%は、各材料の配合量(質量)及び真密度を用いて計算された値である。
放熱性樹脂組成物に含まれる樹脂は、目的とする用途に所望される熱伝導性、流動性、機械的強度等を考慮して適宜選択することができる。樹脂として、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマーなどを、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、及びポリフェニレンスルフィドが挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、及びポリイミド樹脂が挙げられる。
成形性、他部材との接着性、絶縁性等の観点から、エポキシ樹脂を有利に使用することができる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環脂肪族エポキシ樹脂、及びグリシジル-アミノフェノール系エポキシ樹脂などが挙げられる。
エラストマーとしては、例えば、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、水添NBR、アクリルゴム、ウレタンゴム、フッ素系ゴム、及び天然ゴムが挙げられる。
放熱性樹脂組成物中の樹脂の配合量は、目的とする用途に所望される熱伝導性、流動性、機械的強度等を考慮して適宜決定することができる。例えば、樹脂の配合量は、放熱性樹脂組成物の固形分を基準として、約5体積%以上、約10体積%以上、又は約20体積%以上、約60体積%以下、約50体積%以下、又は約45体積%以下とすることができる。
放熱性樹脂組成物は、分散助剤、難燃剤、顔料、染料、表面被覆h-BN粒子以外の充填材、補強材、レベリング剤、カップリング剤、消泡剤、熱安定剤、光安定剤、架橋剤、熱硬化剤、光硬化剤、硬化促進剤、粘着性付与剤、可塑剤、反応性希釈剤、溶剤などの添加剤を更に含んでもよい。これらの添加剤の配合量は、目的とする用途に所望される特性を損なわない範囲において適宜決定することができる。
一実施態様では、放熱性樹脂組成物は分散助剤を含む。この実施態様では、表面被覆h-BN粒子に分散助剤が効果的に吸着して、表面被覆h-BN粒子を放熱性樹脂組成物中により均一に分散させることができる。分散助剤としては、例えば、DISPERBYK-145(BYK Japan KK、日本国兵庫県尼崎市)、DISPERBYK-108、及びDISPERBYK-2008が挙げられる。分散助剤の配合量は、h-BN粒子100質量部に対して、約0.1質量部以上、約0.5質量部以上、又は約1質量部以上、約20質量部以下、約10質量部以下、又は約5質量部以下とすることができる。
放熱性樹脂組成物は、シート、フィルム、グリース、シーラント、成形物などの様々な形態で使用することができる。放熱性樹脂組成物は、熱伝導性に加えて、絶縁性を有してもよい。
一実施態様では、放熱性樹脂組成物は熱伝導性シートの形態である。熱伝導性シートは、放熱性樹脂組成物をライナー上にバーコーター、ナイフコーター等を用いて塗布し、必要に応じて乾燥又は硬化することにより得ることができる。放熱性樹脂組成物を押出成形することにより熱伝導性シートを得ることもできる。
熱伝導性シートの厚さは、目的とする用途に応じて適宜調整すればよく、特に制限はない。熱伝導性シートの厚さは、例えば、約80μm以上、約100μm以上、又は約150μm以上、約400μm以下、約350μm以下、又は約300μm以下とすることができる。
一実施態様では、熱伝導性シートの熱伝導率は、例えば、約4.5W/m・K以上、約5.0W/m・K以上、又は約5.5W/m・K以上である。熱伝導率の上限値については特に制限されないが、例えば、約20W/m・K以下、約18W/m・K以下、又は約15W/m・K以下とすることができる。熱伝導率は、レーザーフラッシュ法によって決定される。このような熱伝導率を有する熱伝導性シートは、例えば、電気自動車(EV)のパワーモジュールなどに好適に使用することができる。
熱伝導性シートは接着性を有していてもよい。例えば、バインダー樹脂を適宜選択し、必要に応じて粘着付与剤、架橋剤などを使用することにより、接着性を有する熱伝導性シートを得ることができる。バインダー樹脂としてエポキシ樹脂を使用する場合は、加熱接着型の熱伝導性接着シートとして使用することもできる。
熱伝導性シートは、例えば、電気自動車(EV)等の車両、家電製品、コンピューター機器等で使用される、例えば、ICチップ等の発熱性部品と、ヒートシンク又はヒートパイプ等の放熱部品との間の間隙を充填するように配置して、発熱性部品から発生した熱を放熱部品に効率よく熱伝達し得る放熱用物品、特に、パワーモジュールに使用される放熱用物品に好適に用いることができる。
以下の実施例において、本開示の具体的な実施態様を例示するが、本発明はこれらに限定されない。部及びパーセントは全て、特に明記しない限り質量による。数値は本質的に測定原理及び測定装置に起因する誤差を含む。数値は通常の丸め処理が行われた有効数字で示される。
実施例及び比較例で使用した材料、試薬等を表1に示す。
1.粘度
未処理h-BN粒子又は表面被覆h-BN粒子を含む樹脂組成物の粘度を測定した。粘度測定を開始する前に、剪断履歴によって測定値が影響されないように、測定条件と同じ条件で30秒間予備剪断を行った。測定条件は以下のとおりであった。
測定装置:RS1型レオメーター(HAAKE(商標)レオメーター、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社、日本国東京都港区)
温度:23℃
コーン直径:35mm
コーン角度:1度
回転速度:1度/分
未処理h-BN粒子又は表面被覆h-BN粒子を含む樹脂組成物の粘度を測定した。粘度測定を開始する前に、剪断履歴によって測定値が影響されないように、測定条件と同じ条件で30秒間予備剪断を行った。測定条件は以下のとおりであった。
測定装置:RS1型レオメーター(HAAKE(商標)レオメーター、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社、日本国東京都港区)
温度:23℃
コーン直径:35mm
コーン角度:1度
回転速度:1度/分
2.SEM観察
未処理h-BN粒子又は表面被覆h-BN粒子の表面モルフォロジーを確認するためにSEM観察を行った。測定条件は以下のとおりであった。
測定装置:走査電子顕微鏡Regulus 8230(株式会社日立製作所、日本国東京都千代田区)
試料表面処理:オスミウムプラズマコーティング
加速電圧:5kV
倍率:1000倍~10万倍
未処理h-BN粒子又は表面被覆h-BN粒子の表面モルフォロジーを確認するためにSEM観察を行った。測定条件は以下のとおりであった。
測定装置:走査電子顕微鏡Regulus 8230(株式会社日立製作所、日本国東京都千代田区)
試料表面処理:オスミウムプラズマコーティング
加速電圧:5kV
倍率:1000倍~10万倍
3.安息角
未処理h-BN粒子及び表面被覆h-BN粒子の安息角をMT-1000型マルチテスター(株式会社セイシン企業、日本国東京都渋谷区)を用いて注入法により測定した。h-BN粒子を篩を通してステージ上に落とし、粒子がステージからこぼれたときの角度を安息角とした。ステージを120度ずつ回転させて安息角を測定し、3箇所の安息角の平均値を求めた。
未処理h-BN粒子及び表面被覆h-BN粒子の安息角をMT-1000型マルチテスター(株式会社セイシン企業、日本国東京都渋谷区)を用いて注入法により測定した。h-BN粒子を篩を通してステージ上に落とし、粒子がステージからこぼれたときの角度を安息角とした。ステージを120度ずつ回転させて安息角を測定し、3箇所の安息角の平均値を求めた。
4.嵩密度
未処理h-BN粒子及び表面被覆h-BN粒子の嵩密度を以下の手順で測定した。試料20gを、SUS製スパチュラで100mLガラスメスシリンダーに入れた。嵩密度(D)を下式
D(g/cm3)=W(g)/V(cm3)…(1)
により、試料の質量W(g)とメスシリンダーで読み取った体積V(cm3)から計算した。
未処理h-BN粒子及び表面被覆h-BN粒子の嵩密度を以下の手順で測定した。試料20gを、SUS製スパチュラで100mLガラスメスシリンダーに入れた。嵩密度(D)を下式
D(g/cm3)=W(g)/V(cm3)…(1)
により、試料の質量W(g)とメスシリンダーで読み取った体積V(cm3)から計算した。
5.熱伝導率
HyperFlash(商標)LFA 467(ネッチ・ジャパン株式会社、日本国神奈川県横浜市)を用いたレーザーフラッシュ分析(LFA)により、表面被覆h-BN粒子を含む樹脂組成物のシートの熱伝導率を測定した。
HyperFlash(商標)LFA 467(ネッチ・ジャパン株式会社、日本国神奈川県横浜市)を用いたレーザーフラッシュ分析(LFA)により、表面被覆h-BN粒子を含む樹脂組成物のシートの熱伝導率を測定した。
シートは以下の手順で作製した。未処理h-BN粒子又は表面被覆h-BN粒子を、自転公転ミキサーARE-310(株式会社シンキー、日本国東京都千代田区)を用いて23℃でアミン硬化型ビスフェノールF型エポキシ樹脂(jER 807及びjER T)と2分間混合して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物はペースト状、粘土状又は湿潤粉末の状態であった。これらの樹脂組成物を2枚の8mm厚のアクリル板で1mmの間隔で挟んでプレスし、2枚の板を角部で4本のネジで締め付けた。シート試料を、室温で1時間、120℃で3時間、及び150℃で1時間、段階的に硬化させた。硬化したシートを10mm×10mmの正方形に切断して3つの測定試料を作製した。測定試料の体積は、厚さ及び面積を乗じることによって計算した。厚さは接触厚さ計で測定し、体積の誤差を小さくするために、面積は写真画像から計算した。写真画像を切り取り、スケール(画素からmmスケールに変換)で較正した。その後、写真画像をモノクロ画像に変換し、2値化して領域を算出した。密度は質量及び体積から計算し、体積は厚さ及び面積から計算した。LFA測定の前に、測定試料上にグラファイト薄層を噴霧して形成した。
LFA測定では、23℃にて底面へ光のパルス(キセノンフラッシュランプ、230V、20~30μsの継続時間)を照射した後に、InSb IR検出器によって測定試料の上面の温度を測定した。次いで、コワン法を用いてサーモグラムのフィットから熱拡散率を算出した。熱伝導率は、密度、比熱、及び半減時間と試料厚さから計算した熱拡散率(α)を乗じることにより得た。比熱(Cp)は、参照材料の信号高さと比較した信号高さを用いて決定した。熱伝導率は、1つの樹脂組成物から得られた3枚の測定試料にそれぞれ3ショット行うことにより得られた、合計9ショットの測定値の平均とした。エラーバーは±σに相当する。
6.絶縁破壊電圧
得られた樹脂組成物を330μmのギャップを有するギャップコーターを用いてPETフィルム上に塗布した。塗膜を110℃の熱風乾燥機で2分間乾燥して、未硬化のシートを得た。2枚のシートを約70℃の熱ラミネータで予め貼り付けた後、シートを硬化させるために、180℃で20分間、圧力約5MPaでシートをプレスして測定試料を作製した。絶縁破壊電圧は、日化テクノサービス株式会社のHAT-300-100Rを用いて測定した。絶縁破壊電圧の値は、測定試料の異なる点において、大気雰囲気下、0.5kV/sの速度で3回測定を実施して得られた平均値とした。
得られた樹脂組成物を330μmのギャップを有するギャップコーターを用いてPETフィルム上に塗布した。塗膜を110℃の熱風乾燥機で2分間乾燥して、未硬化のシートを得た。2枚のシートを約70℃の熱ラミネータで予め貼り付けた後、シートを硬化させるために、180℃で20分間、圧力約5MPaでシートをプレスして測定試料を作製した。絶縁破壊電圧は、日化テクノサービス株式会社のHAT-300-100Rを用いて測定した。絶縁破壊電圧の値は、測定試料の異なる点において、大気雰囲気下、0.5kV/sの速度で3回測定を実施して得られた平均値とした。
7.剥離力
絶縁破壊電圧試験と同様の手順で得た未硬化のシートを2枚の銅ストリップ(長さ100mm、幅10mm、厚さ38μm)で挟み、180℃で20分間、圧力約5MPaでシートをプレスして測定試料を作製した。作製した測定試料の2枚の銅ストリップをそれぞれ試験片保持具で固定し、引張試験機(テンシロン(登録商標)万能材料試験機、型番:RTC-1325A、株式会社エー・アンド・デイ、日本国東京都豊島区)を用いて室温、剥離速度20mm/分でT型剥離試験を行ったときの剥離力を測定した。
絶縁破壊電圧試験と同様の手順で得た未硬化のシートを2枚の銅ストリップ(長さ100mm、幅10mm、厚さ38μm)で挟み、180℃で20分間、圧力約5MPaでシートをプレスして測定試料を作製した。作製した測定試料の2枚の銅ストリップをそれぞれ試験片保持具で固定し、引張試験機(テンシロン(登録商標)万能材料試験機、型番:RTC-1325A、株式会社エー・アンド・デイ、日本国東京都豊島区)を用いて室温、剥離速度20mm/分でT型剥離試験を行ったときの剥離力を測定した。
8.吸油量
表面被覆h-BN粒子の吸油量を以下の手順で測定した。試料1gをガラス板上に置き、ビュレットからアマニ油(和光一級)を4、5滴ずつ徐々に加えた。その都度、パレットナイフでアマニ油を試料に練り込んだ。これらの操作を繰り返して、アマニ油及び試料の塊が形成されるまでアマニ油を滴下した。塊が形成された後、アマニ油を1滴ずつ滴下して完全に混練した。これらの操作を繰り返して、アマニ油及び試料を含むペーストが、割れたりぼろぼろになったりせずにパレットナイフで広げることができ、かつ、ガラス板に軽く付着する程度に滑らかになったところを終点とした。吸油量は試料100g当たりのmLの単位で記録した。
表面被覆h-BN粒子の吸油量を以下の手順で測定した。試料1gをガラス板上に置き、ビュレットからアマニ油(和光一級)を4、5滴ずつ徐々に加えた。その都度、パレットナイフでアマニ油を試料に練り込んだ。これらの操作を繰り返して、アマニ油及び試料の塊が形成されるまでアマニ油を滴下した。塊が形成された後、アマニ油を1滴ずつ滴下して完全に混練した。これらの操作を繰り返して、アマニ油及び試料を含むペーストが、割れたりぼろぼろになったりせずにパレットナイフで広げることができ、かつ、ガラス板に軽く付着する程度に滑らかになったところを終点とした。吸油量は試料100g当たりのmLの単位で記録した。
表面被覆h-BN粒子の調製
以下説明する例及び比較例の表面被覆h-BN粒子を以下の手順で調製した。触媒をIPA及びDI水の混合溶媒に溶解させた後、h-BN粒子を加えて分散液Aを得た。カップリング剤の反応を抑制するために、カップリング剤をIPAで希釈して溶液Bを得た。分散液Aを調製した後、少なくとも10分間混合した。溶液Bを分散液Aに添加し、得られた溶液を回転ミキサーを用いて室温で一晩、約150rpmで混合した。溶液を桐山No.4濾過紙(孔径1μm)を用いて濾過し、濾過された固形物をIPAで数回洗浄した。濾過後、表面被覆h-BN粒子を、熱風乾燥器中で80℃で3時間、続いてロータリーポンプを備えた真空乾燥機中で80℃で3時間で乾燥して残留溶媒を除去した。乾燥後得られた粒子はゆるく凝集していた。凝集物を粉砕することにより、表面被覆h-BN粒子を得た。
以下説明する例及び比較例の表面被覆h-BN粒子を以下の手順で調製した。触媒をIPA及びDI水の混合溶媒に溶解させた後、h-BN粒子を加えて分散液Aを得た。カップリング剤の反応を抑制するために、カップリング剤をIPAで希釈して溶液Bを得た。分散液Aを調製した後、少なくとも10分間混合した。溶液Bを分散液Aに添加し、得られた溶液を回転ミキサーを用いて室温で一晩、約150rpmで混合した。溶液を桐山No.4濾過紙(孔径1μm)を用いて濾過し、濾過された固形物をIPAで数回洗浄した。濾過後、表面被覆h-BN粒子を、熱風乾燥器中で80℃で3時間、続いてロータリーポンプを備えた真空乾燥機中で80℃で3時間で乾燥して残留溶媒を除去した。乾燥後得られた粒子はゆるく凝集していた。凝集物を粉砕することにより、表面被覆h-BN粒子を得た。
樹脂組成物の調製
以下説明する例及び比較例の樹脂組成物を以下の手順で調製した。未処理h-BN粒子又は表面被覆h-BN粒子を、自転公転ミキサーARE-310(株式会社シンキー、日本国東京都千代田区)を用いて回転数2000rpm、23℃で、バインダー樹脂と、必要に応じて添加剤、溶媒、及び/又は球状窒化アルミニウム(AlN)粒子と2分間混合して樹脂組成物を得た。
以下説明する例及び比較例の樹脂組成物を以下の手順で調製した。未処理h-BN粒子又は表面被覆h-BN粒子を、自転公転ミキサーARE-310(株式会社シンキー、日本国東京都千代田区)を用いて回転数2000rpm、23℃で、バインダー樹脂と、必要に応じて添加剤、溶媒、及び/又は球状窒化アルミニウム(AlN)粒子と2分間混合して樹脂組成物を得た。
例1~例8
表2に示す組成で表面被覆h-BN粒子を調製した。(a)未処理h-BN粒子(CFA150、凝集体)、並びに(b)例4及び(c)例5の表面被覆h-BN粒子のSEM写真(上段:倍率1万倍、下段:倍率10万倍)を図1に示す。
表2に示す組成で表面被覆h-BN粒子を調製した。(a)未処理h-BN粒子(CFA150、凝集体)、並びに(b)例4及び(c)例5の表面被覆h-BN粒子のSEM写真(上段:倍率1万倍、下段:倍率10万倍)を図1に示す。
例9~例10、比較例1~比較例2
表3に示す組成でエポキシ系樹脂組成物を調製した。樹脂組成物の粘度の測定結果を表3に示す。
表3に示す組成でエポキシ系樹脂組成物を調製した。樹脂組成物の粘度の測定結果を表3に示す。
例11~例12、比較例3
表4に示す組成でシリコーン系樹脂組成物を調製した。樹脂組成物の粘度の測定結果を表4に示す。
表4に示す組成でシリコーン系樹脂組成物を調製した。樹脂組成物の粘度の測定結果を表4に示す。
例13~例15、比較例4
表5に示す組成で樹脂組成物を調製した。
表5に示す組成で樹脂組成物を調製した。
例13~例15、及び比較例4の樹脂組成物のシートの評価結果を表6に示す。
例16~例21
表7に示す組成で表面被覆h-BN粒子を調製した。(a)未処理h-BN粒子(P015、一次粒子)、並びに(b)例16、(c)例17、(d)例18、(e)例19、(f)例20、及び(g)例21の表面被覆h-BN粒子のSEM写真(上部枠内:倍率3000倍、背景:倍率1.5万倍、3万倍、又は10万倍)を図2に示す。
表7に示す組成で表面被覆h-BN粒子を調製した。(a)未処理h-BN粒子(P015、一次粒子)、並びに(b)例16、(c)例17、(d)例18、(e)例19、(f)例20、及び(g)例21の表面被覆h-BN粒子のSEM写真(上部枠内:倍率3000倍、背景:倍率1.5万倍、3万倍、又は10万倍)を図2に示す。
例18~例21の表面被覆h-BN粒子、及び比較例1において使用した未処理h-BN粒子(P015、一次粒子)の評価結果を表8に示す。
比較例5~比較例8
表9に示す組成で表面被覆h-BN粒子を調製した。(a)比較例7、(b)比較例8、及び(c)例5の表面被覆h-BN粒子のSEM写真(上段:倍率300倍又は1000倍、下段:倍率3万倍)を図3に示す。
表9に示す組成で表面被覆h-BN粒子を調製した。(a)比較例7、(b)比較例8、及び(c)例5の表面被覆h-BN粒子のSEM写真(上段:倍率300倍又は1000倍、下段:倍率3万倍)を図3に示す。
例22~例24、比較例9~比較例12
表10に示す組成で樹脂組成物を調製した。
表10に示す組成で樹脂組成物を調製した。
例2、比較例5及び比較例6の表面被覆h-BN粒子の吸油量を表12に示す。吸油量が小さいことは、表面被覆h-BN粒子の被覆がより滑らかであり、樹脂などの他の材料と混合したときに、表面被覆h-BN粒子の表面に当該他の材料がよりなじみやすいことを示唆する。表面被覆h-BN粒子のこのような表面特性は、他の材料と表面被覆h-BN粒子を混合して複合材料を形成したときに、複合材料の熱伝導性をより高めることに寄与すると考えられる。
本発明の基本的な原理から逸脱することなく、上記の実施態様及び実施例が様々に変更可能であることは当業者に明らかである。また、本発明の様々な改良及び変更が本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに実施できることは当業者には明らかである。
Claims (15)
- (a)六方晶窒化ホウ素粒子、(b)カップリング剤、及び(c)極性基及び芳香環を有する触媒を溶媒中で混合することにより、前記六方晶窒化ホウ素粒子の表面の少なくとも一部に前記カップリング剤の縮合物を含む層を形成することを含む、表面被覆六方晶窒化ホウ素粒子を製造する方法。
- 前記六方晶窒化ホウ素粒子の前記表面が(0001)面の少なくとも一部を含む、請求項1に記載の方法。
- 前記六方晶窒化ホウ素粒子が平板状の一次粒子である、請求項1又は2のいずれかに記載の方法。
- 前記六方晶窒化ホウ素粒子が一次粒子の凝集体である、請求項1又は2のいずれかに記載の方法。
- 前記カップリング剤が、アルミニウム、ケイ素、チタン、及びジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
- 前記触媒の前記極性基がアミノ基である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
- 前記触媒の前記芳香環がベンゼン環である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
- 前記六方晶窒化ホウ素粒子100質量部に対して、前記カップリング剤が10質量部~70質量部用いられる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
- 六方晶窒化ホウ素粒子の表面の少なくとも一部に形成された、カップリング剤の縮合物を含む層を有する表面被覆六方晶窒化ホウ素粒子であって、前記六方晶窒化ホウ素粒子の前記表面が(0001)面の少なくとも一部を含む、表面被覆六方晶窒化ホウ素粒子。
- 平板状の一次粒子である、請求項9に記載の表面被覆六方晶窒化ホウ素粒子。
- 安息角が30度以下である、請求項10に記載の表面被覆六方晶窒化ホウ素粒子。
- 一次粒子の凝集体である、請求項9に記載の表面被覆六方晶窒化ホウ素粒子。
- 前記カップリング剤が、アルミニウム、ケイ素、チタン、及びジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含む、請求項9~12のいずれか一項に記載の表面被覆六方晶窒化ホウ素粒子。
- (a)六方晶窒化ホウ素粒子、(b)カップリング剤、及び(c)極性基及び芳香環を有する触媒を溶媒中で混合することにより、前記六方晶窒化ホウ素粒子の表面の少なくとも一部に形成された前記カップリング剤の縮合物を含む層を有する、表面被覆六方晶窒化ホウ素粒子。
- 表面被覆六方晶窒化ホウ素粒子を含む放熱性樹脂組成物であって、前記表面被覆六方晶窒化ホウ素粒子は、六方晶窒化ホウ素粒子の表面の少なくとも一部に形成された、カップリング剤の縮合物を含む層を有し、前記六方晶窒化ホウ素粒子の前記表面が(0001)面の少なくとも一部を含む、放熱性樹脂組成物。
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