JP5591100B2 - 表面処理された窒化アルミニウム粉末の製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、これらの方法で耐水性を有する窒化アルミニウム粉末は得られるが、表面処理を行うために使用する溶媒を除去する際に、窒化アルミニウム粉末が強く凝集したり、また、加熱により無機酸化物皮膜を形成する際においても、窒化アルミニウム粉末同士が癒着したりすることにより、得られる表面処理された窒化アルミニウム粉末は凝集体を多く含有してしまい、その分散性において改良の余地があった。
本発明において、後述する還元窒化工程で使用するアルミナ粉末は、α、γ、θ、δ、η、κ、χ等の結晶構造を持つアルミナやベーマイトやダイアスポア、ギブサイト、バイヤライト、トーダイト、アルミナ水和物、水酸化アルミニウム粉末など加熱により脱水転移して最終的に全部又は一部がα−アルミナに転移するアルミナが全て利用可能である。これらは単独或いは種類の異なるものが混合された状態で用いても良いが、特に反応活性が高く、制御が容易なα−アルミナ、γ−アルミナ、ベーマイトが好適に用いられる。
また、本発明において、後述する還元窒化工程で使用するカーボン粉末は、カーボンブラック、黒鉛粉末が使用できる。本発明において、カーボンブラックはファーネス法、チャンネル法などのカーボンブラックおよび、アセチレンブラックが使用できる。これらのカーボンブラックの比表面積は、任意であるが、0.01〜500m2/gのものを用いるのが好ましい。
本発明において、アルミナ粉末と、カーボン粉末とを混合する方法としては、アルミナ粉末、カーボン粉末が均一になるような方法であればいずれの方法でも良いが、通常混合手段はブレンダー、ミキサー、ボールミルによる混合が好適である。
本発明において、アルミナ粉末に対するカーボン粉末の配合量は、特に制限されないが、還元窒化を効果的に行うと共に、還元窒化後に残存するカーボン粉末の量を確保するため、アルミナ粉末100質量部に対して、35質量部〜100質量部、好ましくは、40質量部〜75質量部、さらに好ましくは、45質量部〜65質量部の範囲で使用することが好ましい。
また、本発明の効果を妨げない範囲内で、アルミナ粉末とカーボン粉末以外の粉末、たとえば、酸化イットリウム粉末に代表される希土類金属化合物粉末や、酸化カルシウム粉末に代表されるアルカリ土類金属粉末を添加してもよい。
本発明の表面処理された窒化アルミニウム粉末の製造方法において、還元窒化工程は、アルミナ粉末を窒素雰囲気中、カーボン粉末の存在下で加熱することにより、還元窒化反応を行わせしめ、窒化アルミニウム粉末を製造する工程である。
上記還元窒化反応の条件は、公知の温度および時間で保持することにより実施される。一般的には、1300℃〜1900℃、2時間〜50時間である。また、保持温度への昇温速度は、いかなる速度でもよいが、一般には、5〜20℃/分が好ましい。
〔処理剤付着工程〕
本発明の特徴は、前記還元窒化工程において得られた窒化アルミニウム粉末を、反応に使用したカーボンを残した状態で表面処理することにあり、処理剤付着工程は、上記還元窒化工程より得られる窒化アルミニウム粉末を、残存カーボンを含んだ状態で無機酸化物皮膜形成用の表面処理剤と接触させる工程である。
前記表面処理剤の窒化アルミニウム粉末への付着方法は、何等制限されず、水系溶媒や有機溶媒を使用した湿式法、或いは乾式法で行なうことができる。湿式法としては、ボールミルにて、前記残存カーボンを含む窒化アルミニウム粉末と、表面処理剤を混合後、ろ過、乾燥により溶媒を除去する方法が、また、乾式法としては、前記残存カーボンを含む窒化アルミニウム粉末を、高速攪拌機に投入し、攪拌しながら表面処理剤を液下あるいはスプレーにて添加する方法が好適である。
本発明において、前記表面処理は、窒化アルミニウム粉末表面に十分な耐水性を付与できる程度に行なえばよく、表面処理剤の使用量は、窒化アルミニウム粉末100質量部に対して0.01質量部から100質量部が一般的である。
上記処理剤付着工程において、湿式法により処理を行った場合、該処理剤付着工程より得られる混合物より溶媒を除去する溶媒除去工程を設けることが好ましい。溶媒除去工程は、溶媒が除去できる条件下で適宜実施することができるが、減圧或いは常圧下で、加熱して行うことが好ましい。また、静置乾燥、流動乾燥も自由に採用できる。
本発明において、加熱処理工程は、前記表面処理剤が付着された窒化アルミニウム粉末を、残存カーボンを含んだ状態で加熱して窒化アルミニウム粉末表面への無機酸化物皮膜の形成を行うと共に、前記残存カーボンの熱分解を行う工程である。
尚、本発明において、Si元素、P元素の含有量は、ICP発光分析計を用いて測定した値である。
加熱処理は、無機酸化被膜の形成と、炭素の除去を行うため、雰囲気ガスとしては、空気、酸素など炭素を除去できるガスが好適に使用される。特に、経済性を考慮して、空気が好適である。また、加熱処理温度は一般的に500〜900℃が好適であるが、強固な被膜を形成するために、600℃〜900℃で処理することが望ましい。
加熱処理工程において、カーボン粉末は、表面処理剤による無機酸化皮膜の形成時に窒化アルミニウム粉末の分散剤として作用し、粒子の凝集を効果的に防止しているものと推定される。その結果、かかる加熱処理によって、凝集体の少ない、分散性の良好な耐水性を有する窒化アルミニウム粉末を得ることができる。また、残存カーボンは、無機酸化皮膜の形成後の加熱によって炭酸ガスとして揮散する。
〔後処理〕
本発明において、加熱処理工程後の表面処理された窒化アルミニウム粉末は、必要に応じて粉砕、分級を実施することができる。また、本発明の表面処理された窒化アルミニウム粉末は、さらなる耐水性や、樹脂との相溶性を向上させるため、窒化アルミニウム粒子の表面を公知の方法で処理することができる。具体的には、シリコーンオイル、シリル化剤、シランカップリング剤などの有機珪素化合物、リン酸や又はリン酸塩、脂肪酸による処理、ポリアミド樹脂などの高分子による皮膜処理、アルミナ、シリカなどの無機質皮膜処理などが挙げられる。
本発明の方法により得られた表面処理された窒化アルミニウム粉末は、窒化アルミニウムの性質を生かした種々の用途、特に放熱シート、放熱グリース、放熱接着剤、塗料、熱伝導性樹脂などの放熱材料用フィラーとして広く用いることができる。
平均粒子径(D50)は、試料をホモジナイザーにてピロリン酸ソーダ中に分散させ、レーザー回折粒度分布装置(日機装株式会社製MICROTRAC HRA)にて測定した。
比表面積はBET一点法にて測定を行った。
窒化アルミニウム粉末のSiおよび/またはPの含有量は、窒化アルミニウム粉末をアルカリ溶融後、酸で中和し、ICP発光分析計(島津製作所製ICPS−7510)を使用して定量した。
エポキシ樹脂シートを10cm×6cmの大きさに切断し、熱伝導率計(京都電子工業製QTM−500)を用いて熱伝導率を測定した。
平均粒子径1.2μm、比表面積10.7m2/gのαアルミナ粉末100質量部に、カーボン粉末として、比表面積125m2/gのカーボンブラック50質量部を混合した後、グラファイトのセッターに充填した。ついで、窒素雰囲気下において、保持温度1650℃、保持時間5時間の条件でアルミナ粉末を還元窒化した。
上記工程で得られた、窒化アルミニウム粉末における残存カーボン粉末を定量するために、該粉末を脱炭処理して重量変化を測定したところ、粉末中の残存カーボン粉末の含有量は、16重量%であった。
次いで、前記還元窒化によって得られた、残存カーボン粉末と窒化アルミニウム粉末の混合物に、該窒化アルミニウム粉末100質量部に対する割合で、1000質量部の無水エタノールを混合して分散液を調製し、さらに、該分散液に20質量部のテトラエトキシシラン、1000質量部の水、10質量部の酢酸を添加して混合液を調製した。該混合液をボールミルに投入し、1時間攪拌した後に、ろ過し、溶媒を自然乾燥させ、表面処理剤が付着した窒化アルミニウム粉末の乾燥物を得た。得られた乾燥物を、空気雰囲気下において700℃で12時間、加熱処理を行って、無機酸化膜被膜(酸化ケイ素被膜)が形成された、表面処理された窒化アルミニウム粉末を得た。
上記表面処理された窒化アルミニウム粉末について、前述の方法にて、平均粒子径測定、比表面積測定、SiおよびPの含有量測定を実施した。結果を表1に示す。
また、表面処理された窒化アルミニウム粉末を、温度60℃・湿度80%RHに保った恒温恒湿器中にいれ、24時間保持した後に、110℃で3時間乾燥し、乾燥後の粉末の重量を測定した。恒温恒湿器にいれる前の窒化アルミニウム粉末の重量からの、乾燥後の粉末の重量増加率を算出し、重量増加率を耐水性の目安とした。結果を表1に示す。
実施例2
平均粒子径1.2μm、比表面積10.7m2/gのαアルミナ100質量部に、カーボン粉末として、比表面積125m2/gのカーボンブラック60質量部を混合した後、グラファイトのセッターに充填した。ついで、窒素雰囲気下において、保持温度1650℃、保持時間5時間の条件でアルミナ粉末を還元窒化した。
上記工程で得られた、窒化アルミニウム粉末における残存カーボン粉末を定量するために、該粉末を脱炭処理して重量変化を測定したところ、粉末中の残存カーボン粉末の含有量は、20重量%であった。
次いで、前記還元窒化によって得られた、残存カーボン粉末と窒化アルミニウム粉末の混合物に、該窒化アルミニウム粉末100質量部に対する割合で、1000質量部の0.5%燐酸水溶液を混合して分散液を調製し、混合液を調製した。該混合液をボールミルに投入し、1時間攪拌したのちに、ろ過し、溶媒を自然乾燥させ、表面処理剤が付着した窒化アルミニウム粉末の乾燥物を得た。得られた乾燥物を、空気雰囲気下において700℃で12時間、加熱処理を行って、無機酸化膜被膜(燐酸アルミニウム被膜)が形成された、表面処理された窒化アルミニウム粉末を得た。
上記表面処理された窒化アルミニウム粉末について、前述の方法にて、平均粒子径測定、比表面積測定、SiおよびPの含有量測定を実施した。結果を表1に示す。
また、表面処理された窒化アルミニウム粉末を用いて、実施例1と同様の方法にて、耐水性を見るための重量増加率の測定およびシートの熱伝導率を測定した。結果を表1に併せて示す。
比較例1
平均粒子径1.2μm、比表面積10.7m2/gのαアルミナ100質量部、比表面積125m2/gのカーボンブラック50質量部を混合した後、グラファイトのセッターに充填した。ついで、窒素雰囲気下において、保持温度1650℃、保持時間5時間の条件で窒化後、空気雰囲気下において700℃で12時間、脱炭処理を行い、窒化アルミニウム粉末を得た。
得られた窒化アルミニウム粉末100質量部に対して、1000質量部の無水エタノールを混合して分散液を調製し、さらに該分散液に20質量部のテトラエトキシシラン、1000質量部の水、10質量部の酢酸を添加して混合液を調製した。該混合液をボールミルに投入し、1時間攪拌したのちに、ろ過し、溶媒を自然乾燥させ表面処理剤が付着した窒化アルミニウム粉末の乾燥物を得た。さらに、得られた乾燥物を、空気雰囲気下において700℃で12時間、加熱処理を行って、無機酸化膜被膜(酸化ケイ素被膜)が形成された、表面処理された窒化アルミニウム粉末を得た。
上記表面処理された窒化アルミニウム粉末は、前述の方法にて、平均粒子径測定、比表面積測定、SiおよびPの含有量測定を実施した。結果を表1に示す。
さらに、得られた窒化アルミニウム粉末を、温度60℃・湿度80%RHに保った恒温恒湿器中にいれ、24時間保持した後に、110℃で3時間乾燥し、乾燥後の粉末の重量を測定した。恒温恒湿器にいれる前の窒化アルミニウム粉末の重量からの、乾燥後の粉末の重量増加率を算出し、重量増加率を耐水性の目安とした。結果を表1に示す。
また、表面処理された窒化アルミニウム粉末を用いて、実施例1と同様の方法にて、耐水性を見るための重量増加率の測定およびシートの熱伝導率を測定した。結果を表1に併せて示す。
参考例(表面処理なし)
平均粒子径1.2μm、比表面積10.7m2/gのαアルミナ100質量部、比表面積125m2/gのカーボンブラック50質量部を混合した後、グラファイトのセッターに充填した。ついで、窒素雰囲気下において、保持温度1650℃、保持時間5時間の条件で窒化した。得られた微粉末を、空気雰囲気下において700℃で12時間、熱処理を行って窒化アルミニウム粉末を得た。
得られた窒化アルミニウム粉末は、前述の方法にて、平均粒子径測定、比表面積測定、SiおよびPの含有量測定を実施した。結果を表1に示す。
また、表面処理された窒化アルミニウム粉末を用いて、実施例1と同様の方法にて、耐水性を見るための重量増加率の測定およびシートの熱伝導率を測定した。結果を表1に示す。
Claims (1)
- アルミナ粉末を窒素雰囲気中、カーボン粉末の存在下で加熱して窒化アルミニウム粉末を得る還元窒化工程、上記還元窒化工程より得られる窒化アルミニウム粉末を、残存カーボンを含んだ状態で、ケイ素(Si)又はリン(P)を含有する化合物である表面処理剤と接触させる処理剤付着工程、および、前記表面処理剤が付着された窒化アルミニウム粉末を、残存カーボンを含んだ状態で加熱して窒化アルミニウム粉末表面へのシリカ皮膜又はリン酸アルミニウム皮膜よりなる耐水性皮膜の形成を行うと共に、前記残存カーボンの熱分解を行う加熱処理工程を含むことを特徴とする表面処理された窒化アルミニウム粉末の製造方法。
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