JP7268984B2 - 酸化グラフェン修飾窒化アルミニウム粒子 - Google Patents

酸化グラフェン修飾窒化アルミニウム粒子 Download PDF

Info

Publication number
JP7268984B2
JP7268984B2 JP2018183110A JP2018183110A JP7268984B2 JP 7268984 B2 JP7268984 B2 JP 7268984B2 JP 2018183110 A JP2018183110 A JP 2018183110A JP 2018183110 A JP2018183110 A JP 2018183110A JP 7268984 B2 JP7268984 B2 JP 7268984B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
graphene oxide
aluminum nitride
modified aluminum
bond
oxide layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2018183110A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2020050556A (ja
Inventor
弘朗 在間
淳子 大仲
玄 伊藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kansai Research Institute KRI Inc
Original Assignee
Kansai Research Institute KRI Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kansai Research Institute KRI Inc filed Critical Kansai Research Institute KRI Inc
Priority to JP2018183110A priority Critical patent/JP7268984B2/ja
Publication of JP2020050556A publication Critical patent/JP2020050556A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7268984B2 publication Critical patent/JP7268984B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Pigments, Carbon Blacks, Or Wood Stains (AREA)
  • Carbon And Carbon Compounds (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Description

本発明は、窒化アルミニウムと樹脂からなる高熱伝導材料に関し、具体的には、表面改質された窒化アルミニウムに関する。
電子・通信機器の小型化やLED照明機器の高性能化に伴って、発生する熱を効率よく放熱する重要性が高まり、成形加工しやすい高熱伝導性ポリマー複合材料の開発が進められている。元々熱伝導性の低いポリマーを熱伝導性材料とする方法として、一般に高熱伝導性無機粒子をポリマーに充填することが行われている。無機粒子としてアルミナがよく用いられているが、近年はアルミナよりも高熱伝導性で電気伝導性のない窒化アルミニウムが注目されている。
しかし,窒化アルミニウムは水分との接触で、熱伝導性の無い水酸化アルミニウムと腐食性のアンモニアを生成しやすい問題がある。こうした耐水性の問題を改善するために窒化アルミニウム表面を無機/有機リン酸処理(特許文献1)、リン酸処理後に有機珪素系カップリング剤または有機燐酸系カップリング剤などで処理(特許文献2)、グラフェン被覆(特許文献3)などが提案されている。
無機/有機リン酸処理およびカップリング剤処理は、粒子の凝集・固着が起こりやすく、個々の粒子表面を欠陥なく処理できない問題がある。また、これらの処理によってリンの残留や熱伝導性の低い被覆層ができるために窒化アルミニウムの熱伝導性が低下する問題がある。グラフェン被覆は、CVDによって窒化アルミニウム粒子表面にグラフェン層を形成させるため、欠陥のない疎水性表面を形成できる利点がある。また、グラフェン層の高い熱伝導性も期待できる。しかし、グラフェン層によって電気伝導性がでるため、絶縁性を要求される電子部品等には利用できない問題がある。
特開2017-88459号公報 特開平7-33415号公報 特開2017-31005号公報
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、電気伝導性が低く、かつ耐水性の良い表面被覆された窒化アルミニウム及びその樹脂組成物を提供することにある。
本発明の酸化グラフェン修飾窒化アルミニウムは、耐水性の向上した窒化アルミニウム粒子であって、窒化アルミニウム粒子表面に酸化グラフェン層を有する。
好ましい実施態様においては、本発明の酸化グラフェン修飾窒化アルミニウムは、窒化アルミニウム粒子表面に酸化グラフェン層を有する、酸化グラフェン修飾窒化アルミニウムであって、前記酸化グラフェン層が、X線光電子分光分析によって得られるC1sスペクトルにおいてC-C結合C-O結合、C=O結合およびO=C-Oに帰属されるピークの面積を波形分離によって求めたとき、以下の式(1)の関係を満足し、前記酸化グラフェン修飾窒化アルミニウムは、温度85℃、相対湿度85%Rhに保った恒温恒湿器中に2週間静置した耐水性試験で水酸化アルミニウムの生成が、0.1wt%以下である
0.2 ≦ A/B ≦ 0.323 (1)
式(1)中、Aは酸化グラフェン層のC-O結合に帰属されるピークの面積Bは酸化グラフェンのC-C結合に帰属されるピークの面積を示す。
また、好ましい実施態様においては、前記酸化グラフェン層が、1~5層である。
本発明の酸化グラフェン修飾窒化アルミニウム粒子の製造方法は、酸化グラフェン分散液に窒化アルミニウム粉末を混合する工程、液中から固体を回収して乾燥する工程、および乾燥した固体を500~600℃で熱処理する工程からなる。
本発明の樹脂組成物は、前記酸化グラフェン修飾窒化アルミニウムを含む樹脂組成物からなる。
本発明によれば、粒子表面に酸化グラフェン層を有する窒化アルミニウムを提供する。それにより、窒化アルミニウムの耐水性が向上するため、窒化アルミニウムを配合した熱伝導材料の熱伝導性、環境安定性および耐久性が向上する。また、酸化グラフェン層は電気伝導性が低いため、電気伝導性の低い熱伝導材が期待される。さらに、本発明によれば、電気伝導性が低く、かつ耐水性の向上した窒化アルミニウムを提供できる。
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
本発明の酸化グラフェン修飾窒化アルミニウムは、窒化アルミニウム粒子表面に酸化グラフェン層を有しており、この酸化グラフェン層は窒化アルミニウム表面を水から保護する機能を有する。また、一般に、酸化によって生成した構造的欠陥により、酸化グラフェンシートの電気伝導性はグラフェンに比べて非常に低く、酸化グラフェンシート間の電気伝導性も悪いので、酸化グラフェン層が窒化アルミニウムの電気絶縁性を損なうことがない。さらに、窒化アルミニウムが樹脂に配合された場合、樹脂と窒化アルミニウム粒子界面の親和性を改善する機能を有する。さらに、酸化グラフェンが有する酸素含有官能基や不飽和二重結合を利用して、樹脂と化学結合させる方法、これらの基と樹脂分子中の官能基との物理的相互作用を利用する方法、これらの基に樹脂と親和性の良い有機化合物またはオリゴマーを化学結合させる方法などにより、樹脂と窒化アルミニウム粒子界面の親和性をより高めることができる。なお、化学結合させる場合、当業者であれば容易に実施し得る化学反応ならびに有機化合物およびオリゴマーは全て利用できる。
本発明に用いる窒化アルミニウムは、市販のものを利用できる。
窒化アルミニウムのサイズは、一般的に熱伝導分野の使用に適する大きさであれば特に限定されないが、好ましくは平均粒径0.1~100μm、より好ましくは0.5~60μmである。0.1μmより小さいとナノ粒子効果が強くなって配合した樹脂組成物の流動性が著しく低下する。100μmより大きいと、例えば熱伝導層を形成した場合、熱伝導層の厚みを薄くできなくなる。
グラファイトをハマーズ法などにより酸化・剥離して得られる酸化グラフェンは、酸化条件によって、単層の酸化グラフェン、単層の酸化グラフェンが複数積層した複層酸化グラフェンおよび内部に酸化されていない層が存在する複層酸化グラフェンの混合物となる。本明細書では、内部に酸化されていない層が存在する複層酸化グラフェンは、酸化グラフェンの定義から除く。また、熱処理等の物理的または化学的処理をされていても、酸素含有官能基(C-O-C基、C-OH基およびCOOH基)が残っているものは酸化グラフェンとする。
こうした混合物をそのまま使うと酸化グラフェン層は単層から複層の酸化グラフェンが混ざった層になる。なお、酸化グラフェン同士の電気的反発により、窒化アルミニウム粒子上の酸化グラフェンにさらに別の酸化グラフェンは積層しないため、酸化グラフェン層の酸化グラフェン層数の分布は、最初の酸化グラフェンの層数の分布が反映される。
酸化グラフェン層の前記機能は、1~10層、好ましくは1~8層、より好ましくは1~5層の酸化グラフェンにより発揮される。10層より多くなると、窒化アルミニウムに直接に接していない酸化グラフェンの剥離によって窒化アルミニウム表面から遊離した酸化グラフェンが熱伝導性材料中に分散し、それらが互いに接触すると導電性パスを作りやすくなるため好ましくない。ここで、酸化グラフェンの層数は、例えば、原子間力顕微鏡、透過型電子顕微鏡、ラマンスペクトルなどで評価することができる。
本発明に用いる酸化グラフェンは、グラファイトをHummers法として知られる公知の方法を用いて酸化し、1~10層に剥離処理して得た0.01~5w%水性分散液が利用できる。媒体としては、水を主体として酸化グラフェンが凝集しない範囲で、親水性溶媒、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類、エチレングリコールなどのグリコール類、テトラヒドロフランなどを加えることができる。得られる酸化グラフェンは多数の角を持つ薄いシート状であり、その大きさは原料のグラファイト結晶の大きさに依存する。しかし、実際にはシートの大きさは広い分布を持っているため、利用においては大きさに特に制限はないが、目安としては存在する最大シートの最も長いところの長さが窒化アルミニウム粒子の平均粒子径の1/1000~20/1、好ましくは1/500~10/1、より好ましくは1/10~5/1である。1/1000~20/1の範囲外であると酸化グラフェン層となりにくい。
酸化グラフェン修飾窒化アルミニウムは、酸化グラフェン分散液に窒化アルミニウム粉末を加えて、撹拌、振盪または必要に応じてホモジナイザー等の強力な分散装置を用いて分散し、次いで分散液から濾別または遠心沈降によって回収した後、室温乾燥または加熱乾燥後、60~600℃で熱処理することにより粉体として得ることができる。窒化アルミニウムを酸化グラフェン分散液に分散する時、窒化アルミニウムは水に弱いので酸化グラフェン分散液としては、非水系分散液を用いることが好ましい。媒体としては、酸化グラフェンが分散しやすい公知の有機溶媒(N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミドなど)を用いることができる。水分散液から非水系媒体への置換は、通常の溶媒置換法で行うことができる。または、アセトン等の酸化グラフェンが分散しにくい溶媒を水分散液に添加して酸化グラフェンを凝集させて回収し、酸化グラフェンが分散しやすい公知の有機溶媒に再分散することで実施できる。
酸化グラフェン分散液に窒化アルミニウム粉末を分散していくと、沈殿が生じて上澄み(酸化グラフェン分散液層)の色が薄くなっていく。最終的に上澄みは無色透明となり、上澄みから酸化グラフェンは検出されなくなる。すなわち、酸化グラフェン非水系分散液に窒化アルミニウム粉末を分散するだけで、窒化アルミニウム粒子への酸化グラフェンの吸着が起こって、粒子表面に酸化グラフェン層の形成が進んでいると考えられる。
こうした吸着による酸化グラフェン修飾窒化アルミニウムを作製する方法としては、1)窒化アルミニウムに対して十分な量の酸化グラフェンを含む非水系分散液中に窒化アルミニウムを分散した後、粒子を濾過や遠心分離によって回収後、酸化グラフェンが分散しやすい有機溶媒(N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミドなど)に再分散する工程を繰り返して吸着していない酸化グラフェンを除き、粒子を回収・乾燥する方法、2)窒化アルミニウムを酸化グラフェンが分散しやすい有機溶媒(N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミドなど)に分散し、これに酸化グラフェン非水系分散液を上澄みがやや着色するまで段階的に加えた後、粒子を回収・乾燥する方法、3)一定量の酸化グラフェンを含む非水系分散液中に窒化アルミニウムを上澄みが着色しなくなるまで段階的に分散した後、粒子を回収・乾燥する方法、などを挙げることができる。上澄み中の酸化グラフェンの有無は、厳密には上澄みの可視紫外吸収スペクトルを測定することで判断できる。工程の簡便さから、上記3)の方法が好ましい。また、用いる酸化グラフェンの非水系分散液の濃度としては、特に限定されないが、0.005~1.5重量%、好ましくは0.01~1重量%、より好ましくは0.02~0.5重量%である。0.005重量%より少ないと吸着の有無の判断が難しくなる。1.5重量%より多いと液粘度が高くなって均一混合が難しくなる。
酸化グラフェン層による窒化アルミニウム表面の水からの保護機能を十分に発揮するためには、窒化アルミニウム表面が酸化グラフェンによってまんべんなく覆われていることが好ましい。窒化アルミニウム表面が酸化グラフェンによって覆われる状況は、顕微ラマン分光法を用いて窒化アルミニウム表面上の酸化グラフェンに由来するDまたはGバンドの分布を観測することによって知ることができる。酸化グラフェン修飾窒化アルミニウム粒子表面に対してGバンドのポイントマッピング測定を行った時、Gバンドが観測されるポイント数の全測定ポイント数に対する割合を被覆割合とすると、被覆割合は0.5以上、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上である。なお、粒子が小さい場合、一度に測定できるポイント数が少ないため、複数の粒子を測定することが好ましい。この場合、複数の粒子の測定ポイント数の合計を全測定ポイント数とする。
酸化グラフェンは酸素含有官能基によって親水性があるので、そのままでは窒化アルミニウム表面を水から保護する機能は弱いと考えられる。本発明の酸化グラフェン修飾窒化アルミニウムにおいては、窒化アルミニウム表面の酸化グラフェン層が、X線光電子分光分析によって得られるC1sスペクトルにおいてC-C結合C-O結合、C=O結合およびO=C-Oに帰属されるピークの面積を波形分離によって求めたとき、以下の式(1)の関係を満足する。
0.2 ≦ A/B ≦ 0.7 (1)
式(1)中、Aは酸化グラフェン層のC-O結合に帰属されるピークの面積/(C-C結合、C-O結合、C=O結合およびO=C-Oに帰属されるピークの面積の和)、Bは酸化グラフェンのC-C結合に帰属されるピークの面積/(C-C結合、C-O結合、C=O結合およびO=C-Oに帰属されるピークの面積の和)を示す。A/B比は、好ましくは0.21 ≦ A/B ≦0.65、より好ましくは0.22 ≦ A/B ≦0.6である。下限は0.2より小さいと還元型酸化グラフェンの割合が増して導電性がでるので好ましくない。A/B比は、酸化グラフェン中で最も多い酸素含有基の割合を間接的に示しており、小さい方が酸素含有基が少ない、言い換えると疎水性が増していることを示す。なお、A/B比は、酸化グラフェン層形成に用いる酸化グラフェンの酸化度によって相対的に変わるので、本明細書では、通常よく用いられる酸素含有率30~40atomic%の酸化グラフェンを基準とする。
A/B比を上記範囲にする方法としては、酸化グラフェンの酸素含有官能基は加熱によって分解しやすいため、酸化グラフェン層を形成した窒化アルミニウムを60~600℃、好ましくは80~500℃、より好ましくは90~400℃で熱処理することが好ましい。60℃未満でもC-O結合に帰属されるピーク面積の割合は減るが、処理に時間がかかる。600℃以上では厳密に不活性雰囲気下で処理を行わないと逆に酸化が進む。また、酸化グラフェン層の導電性が高くなる。熱処理は、60~200℃の範囲では大気中でも可能であるが、200℃以上では不活性雰囲気下で行うことが好ましい。トータルで投入される熱量に比例して酸素含有官能基の分解は進むので、処理時間は、温度と処理量によって適宜設定すればよい。
本発明の樹脂組成物は、酸化グラフェン修飾窒化アルミニウムを樹脂と混合することによって得ることができる高熱伝導性樹脂組成物である。樹脂組成物中の酸化グラフェン修飾窒化アルミニウムの混合量は、1~90体積%、好ましくは10~90体積%、より好ましくは20~90体積%である。1体積%より少ないと熱伝導性が得られない。窒化アルミニウムの配合量は多い方が熱伝導性が高くなることが知られおり、上限は特に限定されないが、樹脂組成物の機械的強度を考慮すると上限は90体積%程度が好ましい。
酸化グラフェン修飾窒化アルミニウムを樹脂と混合する方法は、樹脂が固体の場合は、これらと酸化グラフェン修飾窒化アルミニウムを紛体で混合した後、ニーダーや二軸押出機などを用いて溶融混合する乾式プロセス、あるいは、樹脂を適切な溶剤に溶解して酸化グラフェン修飾窒化アルミニウムと混合・撹拌またはホモジナイザーやビーズミルを用いた分散処理をする湿式プロセスで行うことができる。これらの方法は、用いる樹脂の性状によって適宜選択することができる。樹脂が液状の場合は、これらと酸化グラフェン修飾窒化アルミニウムとを攪拌機、3本ロールやニーダーなどを用いて混合、あるいは、樹脂を適切な溶剤または希釈剤で希釈して酸化グラフェン修飾窒化アルミニウムと混合・撹拌またはホモジナイザーやビーズミルを用いた分散処理をすることで混合処理できる。これらの方法は、用いる樹脂の性状によって適宜選択することができる。
酸化グラフェン修飾窒化アルミニウムと混合する樹脂としては、ポリオレフィン、ポリシクロオレフィン、ポリスチレン、ABS,ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂などを挙げることができる。
前記樹脂組成物は、必要に応じてさらに硬化剤、架橋剤、重合開始剤、物性を調整するための高分子化合物または低分子化合物、シリカやクレイのような無機フィラーを含むことができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例には限定されない。
(酸化グラフェン分散液の作製)
硝酸ナトリウム0.3gおよび過マンガン酸カリウム1.8gを濃硫酸14mlに溶解させ、これに日本黒鉛製グラファイトACB150 0.2gを加えて室温で攪拌した。7日間攪拌後、反応液を冷却して5%硫酸水50mlをゆっくりと加え、さらに30%過酸化水素水10mlを加えて1時間室温で攪拌した。次いで、過酸化水素濃度0.5%および硫酸濃度3%となるように調整した混合液100mlで希釈して、酸化したグラファイトを遠心沈降させた。沈殿物を再び0.5%の過酸化水素と3%の硫酸を含む混合液100mlに分散させ、次いで遠心沈降させることにより、酸化グラファイトを得た。
上記酸化グラファイトを0.5%の過酸化水素と3%の硫酸を含む混合液100mlに分散させ、これを透析膜に入れてイオン交換水に漬け、イオン交換水を交換しながら7日間透析を行った。次いで、透析液を超音波洗浄機に入れて8時間超音波照射処理した後、遠心分離することにより上澄みを取りだし、0.24w%の酸化グラフェン水分散液を得た。分散液を50倍に希釈してシリコン基板に塗布し、原子間力顕微鏡(AFM)で観察したところ、厚さ1~5nm、最も長いところで10~100μmの分布を持つシート状物体を観察することができた。
次いで、上記水分散液100mlにアセトン100mlを加えて酸化グラフェンを凝集させて遠心沈降させた。沈降物をN-メチルピロリドン150mlに再分散させた後、トルエン50mlを加えてエバポレーターで濃縮し、0.18w%の酸化グラフェン分散液を得た。この酸化グラフェンのX線光電子分光から酸素含有量を求めたところ、33atomic%であった。
(実施例1)
(酸化グラフェン修飾窒化アルミニウムの作製)
ガラス瓶中の0.18w%酸化グラフェン分散液50mlに窒化アルミニウム粉末(シグマアルドリッチ社製 平均粒子径10μm)5gを加えて蓋をし、ペイントコンディショナー(レッドデビル社)で10分間振盪した。振盪後、静置して上澄みをみると酸化グラフェンの色である茶色が残っていた。さらに、窒化アルミニウム(以下、「AlN」と略記する場合がある。)粉末3gを加えて10分間振盪すると、上澄みはやや茶色を帯びていた。さらに、窒化アルミニウム粉末2gを加えて10分間振盪すると、上澄みは無色となった。
沈殿を濾別して蒸留水100ml、アセトン100mlで洗浄後、60℃で8時間乾燥して薄茶色の粉末を得た(GO-AlN1とする)。この粉末の一部をアルゴン雰囲気下500℃で30分熱処理した(GO-AlN2とする)。
(顕微ラマン分光)
GO-AlN1の任意の20個の粒子について、顕微ラマンスペクトルを測定(各粒子につき測定ポイント4点)したところ、全ての測定点で酸化グラフェンのGバンドを観測することができたことから被覆割合は1であり、酸化グラフェンは窒化アルミニウム粒子の表面をまんべんなく覆っているものと考えられる。
(X線光電子分光)
酸化グラフェン、GO-AlN1およびGO-AlN2のX線光電子分光を行い、C1sスペクトルの波形分離解析を行った。なお、波形分離解析にあたって、酸化グラフェンのパラメーターをGO-AlN1およびGO-AlN2の波形分離にも用いた。波形分離結果を表1に示す。表中、B.Eは結合エネルギーを示す。各ピーク面積の総和を100として各ピークの面積を表す。
Figure 0007268984000001
表1からGO-AlN1とGO-AlN2のA/B比を計算すると、それぞれ0.512、0.323となる。用いた酸化グラフェンでは、0.735である。
(耐水性試験)
GO-AlN1、GO-AlN2、無処理AlN、およびアルゴン気流化500℃で1時間処理したAlN(熱処理AlNとする)の各1gをシャーレに薄く広げて、85℃85%Rhに保った恒温恒湿器中に2週間静置した。試験後、熱分析(アルゴン気流下、30℃→500℃、10℃/分)により、水との接触で生成した水酸化アルミニウム量を定量した。結果を表2に示す。
Figure 0007268984000002
熱分析では、無処理AlN、熱処理AlNおよびGO-AlN1で水酸化アルミニウムの脱水による減量が250~300℃の間でみられた。ただし、GO-AlN1の減量は、無処理AlNおよび熱処理AlNよりは小さかった。これは酸化グラフェン層による効果と考えられる。GO-AlN2では、減量が0.1w%となり、測定誤差を考慮するとほぼ水酸化アルミニウムは生成していないと考えられる。
以上から、酸化グラフェン層による窒化アルミニウム表面の水からの保護機能は明らかであり、その効果はA/B比が小さいほど大きくなっていた。A/B比を決定する酸素含有官能基は、トータルで投入される熱量に比例して分解が進むので、GO-AN1のケースでも60℃保持時間を長くすることでA/B比はより小さくなると考えられる。
(実施例2)
(酸化グラフェン修飾窒化アルミニウムを含む樹脂組成物の作製1)
無溶剤型シリコーン樹脂(信越化学工業製 KNS-320A)1.00重量部に実施例1で作製したGO-AlN2 3.26重量部と硬化剤(信越化学工業製CAT-PL-50T)0.03重量部を乳鉢でよく混ぜ合わせた。混合物をポリテトラフッ化エチレン製四角容器に入れて真空脱泡(室温30分)した後、ポリテトラフッ化エチレン製板で混合物を押し広げながら蓋をして、80℃30分加熱して硬化させた。
得られた硬化物を型枠から取り出してベテル製サーモウェーブアナライザ TA(周期加熱方式)を用いて厚み方向の熱拡散率を測定し、硬化物の比熱と比重から厚み方向の熱伝導率を算出したところ、熱伝導率は1.41W/(m・K)であった。
さらに、耐電圧試験機(菊水電子工業製TOS5101)を用いて、硬化物の耐電圧を評価した。測定は、10mm×10mmの金属電極で試料を挟み、昇圧速度1kV/10秒でショートした時の電圧を記録することで行った。耐電圧は、18kV/mmであった。
(比較例1)
無処理の窒化アルミニウム(シグマアルドリッチ製 粒子径10μm)にする以外は実施例2と同様にして硬化物を作製し、厚み方向の熱伝導率を算出したところ、熱伝導率は1.39W/(m・K)であった。実施例2の結果と比較すると酸化グラフェン層による窒化アルミニウムの熱伝導性の阻害はないと考えられる。
また、実施例2と同様にして耐電圧を測定したところ、19kV/mmであった。実施例2の硬化試料と同等の値であることから、酸化グラフェン層による窒化アルミニウムの電気絶縁性の低下はないと考えられる。
本発明の酸化グラフェン修飾窒化アルミニウムは、窒化アルミニウム粒子表面に酸化グラフェン層を有しており、この酸化グラフェン層は窒化アルミニウムの電気絶縁性を損なうことなく表面を水から保護する機能を有する。また、窒化アルミニウムが樹脂に配合された場合、樹脂と窒化アルミニウム粒子界面の親和性を改善する機能を有する。それにより機械的強度と熱伝導性の優れた熱伝導性樹脂組成物を提供できる。また、本発明によれば、低コストで酸化グラフェン修飾窒化アルミニウムを提供できる。

Claims (4)

  1. 窒化アルミニウム粒子表面に酸化グラフェン層を有する、酸化グラフェン修飾窒化アルミニウムであって、前記酸化グラフェン層が、X線光電子分光分析によって得られるC1sスペクトルにおいてC-C結合C-O結合、C=O結合およびO=C-Oに帰属されるピークの面積を波形分離によって求めたとき、以下の式(1)の関係を満足し、前記酸化グラフェン修飾窒化アルミニウムは、温度85℃、相対湿度85%Rhに保った恒温恒湿器中に2週間静置した耐水性試験で水酸化アルミニウムの生成が、0.1wt%以下である酸化グラフェン修飾窒化アルミニウム。
    0.2 ≦ A/B ≦ 0.323 (1)
    式(1)中、Aは酸化グラフェン層のC-O結合に帰属されるピークの面積Bは酸化グラフェンのC-C結合に帰属されるピークの面積を示す。
  2. 前記酸化グラフェン層が、1~5層である請求項1に記載の酸化グラフェン修飾窒化アルミニウム。
  3. 酸化グラフェン修飾窒化アルミニウム粒子の製造方法であって、
    酸化グラフェン非水系分散液に窒化アルミニウム粉末を混合する工程、
    液中から固体を回収して乾燥する工程、
    乾燥した固体を500~600℃で熱処理する工程
    からなる、酸化グラフェン修飾窒化アルミニウム粒子の製造方法。
  4. 請求項1又は請求項2に記載の酸化グラフェン修飾窒化アルミニウムを含む樹脂組成物。
JP2018183110A 2018-09-28 2018-09-28 酸化グラフェン修飾窒化アルミニウム粒子 Active JP7268984B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018183110A JP7268984B2 (ja) 2018-09-28 2018-09-28 酸化グラフェン修飾窒化アルミニウム粒子

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018183110A JP7268984B2 (ja) 2018-09-28 2018-09-28 酸化グラフェン修飾窒化アルミニウム粒子

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2020050556A JP2020050556A (ja) 2020-04-02
JP7268984B2 true JP7268984B2 (ja) 2023-05-08

Family

ID=69995761

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018183110A Active JP7268984B2 (ja) 2018-09-28 2018-09-28 酸化グラフェン修飾窒化アルミニウム粒子

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7268984B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN115414920B (zh) * 2022-09-05 2023-08-08 江苏万贤环境工程有限公司 一种废气处理的吸附树脂及其制备方法

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004250281A (ja) 2003-02-19 2004-09-09 National Institute Of Advanced Industrial & Technology 炭素質被膜で被覆した耐水性窒化アルミニウム粉末の製造方法
CN102343239A (zh) 2011-05-20 2012-02-08 四川大学 氧化石墨烯或石墨烯/无机粒子核/壳材料及其制备方法
JP2016195103A (ja) 2015-03-31 2016-11-17 東レ株式会社 複合導電性粒子およびその製造方法ならびに導電性樹脂
JP2017031055A (ja) 2012-04-10 2017-02-09 株式会社半導体エネルギー研究所 複合体
JP2017031005A (ja) 2015-07-31 2017-02-09 川研ファインケミカル株式会社 グラフェン被覆窒化アルミニウムフィラー、その製造方法、電子材料、樹脂複合体、及び疎水化処理方法

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004250281A (ja) 2003-02-19 2004-09-09 National Institute Of Advanced Industrial & Technology 炭素質被膜で被覆した耐水性窒化アルミニウム粉末の製造方法
CN102343239A (zh) 2011-05-20 2012-02-08 四川大学 氧化石墨烯或石墨烯/无机粒子核/壳材料及其制备方法
JP2017031055A (ja) 2012-04-10 2017-02-09 株式会社半導体エネルギー研究所 複合体
JP2016195103A (ja) 2015-03-31 2016-11-17 東レ株式会社 複合導電性粒子およびその製造方法ならびに導電性樹脂
JP2017031005A (ja) 2015-07-31 2017-02-09 川研ファインケミカル株式会社 グラフェン被覆窒化アルミニウムフィラー、その製造方法、電子材料、樹脂複合体、及び疎水化処理方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2020050556A (ja) 2020-04-02

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Huang et al. Boron nitride@ graphene oxide hybrids for epoxy composites with enhanced thermal conductivity
KR101356828B1 (ko) 향상된 질화붕소 조성물 및 이를 사용하여 제조되는 조성물
Xie et al. Polyimide/BaTiO3 composites with controllable dielectric properties
JP6803874B2 (ja) カーボン修飾窒化ホウ素、その製造方法および高熱伝導性樹脂組成物
Tanaka et al. Tailoring of nanocomposite dielectrics: from fundamentals to devices and applications
JP7017556B2 (ja) 粗大粒子を含まない窒化アルミニウム粉末
JP5152716B2 (ja) 化学的に修飾されたカーボンナノチューブ及びその製造方法
JP7402610B2 (ja) 熱伝導性樹脂組成物、熱伝導シートおよび電子部品
You et al. Double-layer core/shell-structured nanoparticles in polyarylene ether nitrile-based nanocomposites as flexible dielectric materials
US20170225951A1 (en) Process for Exfoliation and Dispersion of Boron Nitride
Niu et al. Fluorocarboxylic acid-modified barium titanate/poly (vinylidene fluoride) composite with significantly enhanced breakdown strength and high energy density
Ariraman et al. Studies on dielectric properties of GO reinforced bisphenol-Z polybenzoxazine hybrids
Lu et al. Hybrid formation of graphene oxide–POSS and their effect on the dielectric properties of poly (aryl ether ketone) composites
Hong et al. Preparation and application of polystyrene‐grafted ZnO nanoparticles
Prabunathan et al. Achieving low dielectric, surface free energy and UV shielding green nanocomposites via reinforcing bio-silica aerogel with polybenzoxazine
Kim et al. Impact of size control of graphene oxide nanosheets for enhancing electrical and mechanical properties of carbon nanotube–polymer composites
JP2014133783A (ja) 樹脂組成物、絶縁膜、積層体、および積層体の製造方法
WO2018230638A1 (ja) カーボン修飾窒化ホウ素、その製造方法および高熱伝導性樹脂組成物
JP2005068347A (ja) ポリイミド組成物およびその製造方法と用途
JP7268984B2 (ja) 酸化グラフェン修飾窒化アルミニウム粒子
Suzuki et al. Heat-resistant insulation film containing clay and wood components
JP6423526B2 (ja) ブロック共重合体、およびこれを用いたグラフェンの製造方法
US20140048748A1 (en) Graphene nanoribbon composites and methods of making the same
KR102140262B1 (ko) 질화붕소 나노플레이트의 제조 방법 및 질화붕소 나노플레이트-고분자 복합체의 제조방법
Shabani et al. Physicochemical and mechanical properties of Epoxy/Polyurethane/Nickel manganite nanocomposite: a response surface methodology/central composite designs study

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20210928

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20220812

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20220906

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20221102

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20221209

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20230418

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20230421

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7268984

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150