JP2022176503A - アンスラピリドン化合物を含有する着色液 - Google Patents

アンスラピリドン化合物を含有する着色液 Download PDF

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Yuka Nagatsuka
拓 飯野
Takumi Iino
孝 米田
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Abstract

【課題】色相、発色性、湿潤堅牢性及び耐光性のバランスに優れ、保存安定性の高い着色液、インクジェット捺染用インク及びそれを用いる繊維の捺染方法を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される化合物を、0.01~25質量%含有する着色液。
Figure 2022176503000021

[式(1)中、Rは水素原子、C1~C4アルキル基を表し、R、Rは水素原子、ハロゲン原子、C1~C8アルキル基、C1~C8アルコキシ基等を表し、RはC1~C8アルキル基、アリール基を表し、R、Rは水素原子、ハロゲン原子、C1~C12アルキル基、C1~C12アルコキシ基等を表す。]
【選択図】なし

Description

本発明はアンスラピリドン化合物を含有する着色液に関する。
これまで、多種多様な色素(染料や顔料)の開発が行われ、その一部についてはカラーインデックス番号が付与されるなど、市販化されている。工業的にも広く利用されており、特に、書籍の印刷、衣服、食用色素、家具、建材などといった、現代の生活に欠かせない各種製品に使われている。近年では、インクジェット印刷用のインクや機能性色素など幅広い分野での活用が進められている。
インクジェットによる記録方法は、インク液滴をインクヘッドから記録媒体(例えば紙や布帛)に向かって飛翔させ、その液滴を記録媒体に付着させる記録方式である。インクジェットプリンタを用いた繊維のインクジェット捺染は、スクリーン捺染、ローラー捺染、ロータリー捺染等の捺染方法に比べ、製版工程が不要であり工程が短縮できること;デジタル化されたデザインを、コンピューターを介してそのままプリントできること;多品種の製品を少量ずつであっても生産することが可能であること;色素が含まれた色糊の廃液等が大幅に削減できること;等の多くのメリットがある。近年、コンピューターの画像処理やプリントヘッド製造の技術的進歩によりインクジェットプリンタのプリント速度が大幅に向上されてきたこと、プリントデザインのデジタル化、プリント加工の多様化・小ロット化が市場で要求されてきたこと等を背景に、インクジェット捺染の普及が進んでいる。
インクジェット捺染用インクとしては、シルク、ナイロン等のポリアミド系繊維用の酸性染料インク;ポリエステル系繊維用の分散染料インク;綿、レーヨン等のセルロース系繊維用の反応性染料(反応染料)インク;等が販売されている。
インクジェット印刷等の精密な電子機器装置に、色素を水や溶媒に溶解または分散させた着色液を使用する場合、色素に求められる性能は多い。例えば、染色物や印刷物の湿潤堅牢性、耐光性等の性能が要求される一方、着色液の保存安定性の確保のために色素の溶解性なども必要な性能になる。つまり、インクジェット捺染に用いる色素の性能としては高画質、高堅牢性の印捺物の提供が可能で、且つ保存安定性の高い着色液を作成できることも要望される。この要望に対し、これまでも種々の色素が提案されてきた。
繊維の染色においては、通常、ブラック、イエロー、マゼンタ(レッド)、及びシアン(ブルー)の4色を基本としたインクセットが用いられる。しかしながら、なかでも特に、酸性染料の分野における従来のマゼンタ(レッド)色素は、耐光性と、汗への耐性等を示す湿潤堅牢性の両立が難しい等の問題が知られている。
特許文献1、2には、各種赤色染料が開示されている。しかし、これら各種赤色染料を含む着色液を繊維の染色に用いた場合、湿潤堅牢性が実用的な性能よりも低く、市場の要求を満たしていない。
また、特許文献3では、C.I.アシッドレッド260を使用した着色液が提案されている。しかし、C.I.アシッドレッド260は、彩度(C)が低く、暗赤色を呈し、基本色の一つとしては使用しにくいといった課題があった。
このように、着色液の保存安定性に優れ、印刷物の湿潤堅牢性、耐光性、発色性、色相をも兼ね備えた赤色酸性染料の着色液はこれまで見出されていなかった。
特許第3957423号公報 特許第3957450号公報 WO2021/039685
本発明は色相、発色性、湿潤堅牢性及び耐光性のバランスに優れ、かつ、保存安定性の高い着色液、インクジェット捺染用インク及びそれを用いる繊維の捺染方法の提供を課題とする。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、下記式(1)で表される化合物を含有する着色液により、前記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
より具体的には、式(1)で表される化合物を0.01~25質量%含有した着色液は、色相が良く、保存安定性が高いため、着色液をインクジェットプリンタのインクとして使用した場合に、ヘッドフィルターやノズルの詰まり等が生じるのを効果的に防止でき、吐出安定性の高いインクが提供できた。また、印刷物としても、従来品より印捺物の発色性が高くなり、汗への耐性・洗濯堅牢度等の湿潤堅牢性及び耐光性などの各堅牢性が良好であった。
即ち本発明は、以下の1)~13)に関する。
1)
下記式(1)で表される化合物を、0.01~25質量%含有する着色液。
Figure 2022176503000001
[式(1)中、Rは水素原子、C1~C4アルキル基を表し、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のC1~C8アルキル基、置換もしくは無置換のC1~C8アルコキシ基、置換もしくは無置換のC1~C8アルキルチオ基、C1~C8アルキルスルホ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アミド基、カルバモイル基、スルファモイル基を表し、Rは置換もしくは無置換のC1~C8アルキル基、アリール基を表し、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のC1~C12アルキル基、置換もしくは無置換のC1~C12アルコキシ基、置換もしくは無置換のC1~C12アルキルチオ基、C1~C12アルキルスルホニル基、アミド基、カルバモイル基、スルファモイル基を表す。]
2)
有機溶剤をさらに含み、かつ、該有機溶剤のLog P(水/オクタノール分配係数)値が正の数である1)に記載の着色液。
3)
上記有機溶剤のLog P値が、0より大きく、2.6より小さい値である、2)に記載の着色液。
4)
上記有機溶剤が、グリコールエーテル化合物、アルカンジオール化合物、ε-カプロラクタムからなる群から選択されるいずれかを含む、2)又は3)に記載の着色液。
5)
上記グリコールエーテル化合物が、プロピルグリコール、ブチルグリコール、ブチルジグリコール、ブチルトリグリコールからなる群から選択されるいずれかを含む、4)に記載の着色液。
6)
上記アルカンジオール化合物が、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール-1-イソブチレートからなる群から選択されるいずれかを含む、4)に記載の着色液。
7)
1)~6)のいずれか一項に記載の着色液を含むインクジェット記録用インク。
8)
1)~6)のいずれか一項に記載の着色液を含む着色液セット。
9)
7)に記載のインクジェット記録用インクを含むインクセット。
10)
1)~6)のいずれか一項に記載の着色液、請求項7に記載のインクジェット記録用インク、8)に記載の着色液セット、9)に記載のインクセットの少なくともいずれかを用い、着色液滴あるいはインクジェット記録用インク滴を記録信号に応じて吐出させて被記録材に記録を行うインクジェット記録方法。
11)
上記被記録材が繊維である10)に記載のインクジェット記録方法。
12)
上記繊維が、ポリアミド繊維、及びポリアミド繊維を含む混紡繊維から選択される繊維である11)に記載のインクジェット記録方法。
13)
10)~12)のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法により印捺された繊維。
色相及び保存安定性に優れる着色液、発色性、耐光性及び湿潤堅牢性のバランスに優れる染色物、前記着色液を用いる繊維の捺染方法の提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において特に断りの無い限り、以下「%」及び「部」数についてはいずれも質量基準で記載する。
上記着色液は、上記式(1)で表わされる化合物を、0.01~25質量%含有する。
上記式(1)中、Rは水素原子、C1~C4アルキル基を表し、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のC1~C8アルキル基、置換もしくは無置換のC1~C8アルコキシ基、置換もしくは無置換のC1~C8アルキルチオ基、C1~C8アルキルスルホ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アミド基、カルバモイル基、スルファモイル基を表し、Rは置換もしくは無置換のC1~C8アルキル基、アリール基を表し、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のC1~C12アルキル基、置換もしくは無置換のC1~C12アルコキシ基、置換もしくは無置換のC1~C12アルキルチオ基、C1~C12アルキルスルホニル基、アミド基、カルバモイル基、スルファモイル基を表す。]
上記「C1~C4アルキル基」としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基等の直鎖アルキル基、イソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等の分鎖アルキル基、シクロブタン基等の環状アルキル基等が挙げられる。
上記「ハロゲン原子」としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
上記「置換もしくは無置換のC1~C8アルキル基」における、C1~C8アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基等の直鎖アルキル基、イソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、エチルヘキシル基等の分鎖アルキル基、シクロブタン基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等が挙げられ、これらC1~C8アルキル基はさらに置換基を有していても良い。
上記C1~C8アルキル基がさらに有していても良い置換基としては、特に限定はないが、例えば、水酸基、カルボキシル基、リン酸基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、芳香族炭化水素基、複素環基等が挙げられる。
上記アミノ基としては、アミノ基、置換アミノ基等が挙げられ、置換アミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、メチルエチルアミノ基、エチルフェニルアミノ基等が挙げられる。
上記芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フルオレセニル基等が挙げられる。
上記複素環基としては、例えば、イミダゾール基、ピリジル基、チオフェノ基等が挙げられる。
上記「置換もしくは無置換のC1~C8アルコキシ基」における、C1~C8アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基等の直鎖アルコキシ基、イソプロポキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等の分鎖アルコキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の環状アルコキシ基等が挙げられ、これらC1~C8アルコキシ基はさらに置換基を有していても良い。C1~C8アルコキシ基がさらに有していても良い置換基としては、特に限定はないが、上記C1~C8アルキル基がさらに有していても良い置換基として列記した置換基が挙げられる。
上記「置換もしくは無置換のC1~C8アルキルチオ基」における、C1~C8アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n-ブチルチオ基等の直鎖アルキルチオ基、イソプロピルチオ基、sec-ブチルチオ基、tert-ブチルチオ基等の分鎖アルキルチオ基、シクロヘキシルチオ基等の環状アルキルチオ基等が挙げられ、これらC1~C8アルキルチオ基はさらに置換基を有していても良い。C1~C8アルキルチオ基がさらに有していても良い置換基としては、特に限定はないが、上記C1~C8アルキル基がさらに有していても良い置換基として列記した置換基が挙げられる。
上記「C1~C8アルキルスルホ基」としては、例えば、メチルスルホ基、エチルスルホ基、3-スルホプロピル基、4-スルホブチル基、スルホヘキシル基、スルホオクチル基等が挙げられ、3-スルホプロピル基、4-スルホブチル基が好ましい。
上記「アリール基」としては、例えば、上記芳香族炭化水素基として挙げた基と同じで良い。
上記「アリールオキシ基」としては、例えば、フェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられる。
上記「アリールチオ基」としては、例えば、ベンゼンチオール、ナフトチオール等が挙げられる。
上記「置換もしくは無置換のC1~C12アルキル基」における、C1~C12アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ノナン基、n-デカン基等の直鎖アルキル基、イソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、エチルヘキシル基等の分鎖アルキル基、シクロブタン基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等が挙げられ、これらC1~C12アルキル基はさらに置換基を有していても良い。C1~C12アルキル基がさらに有していても良い置換基としては、特に限定はないが、上記C1~C8アルキル基がさらに有していても良い置換基として列記した置換基が挙げられる。
上記「置換もしくは無置換のC1~C12アルコキシ基」における、C1~C12アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、n-ノナノキシ等の直鎖アルコキシ基、イソプロポキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等の分鎖アルコキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の環状アルコキシ基等が挙げられ、これらC1~C12アルコキシ基はさらに置換基を有していても良い。C1~C12アルコキシ基がさらに有していても良い置換基としては、特に限定はないが、上記C1~C8アルキル基がさらに有していても良い置換基として列記した置換基が挙げられる。
上記「置換もしくは無置換のC1~C12アルキルチオ基」における、C1~C12アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n-ブチルチオ基、n-ノニルチオ等の直鎖アルキルチオ基、イソプロピルチオ基、sec-ブチルチオ基、tert-ブチルチオ基等の分鎖アルキルチオ基、シクロヘキシルチオ基等の環状アルキルチオ基等が挙げられ、これらC1~C12アルキルチオ基はさらに置換基を有していても良い。C1~C12アルキルチオ基がさらに有していても良い置換基としては、特に限定はないが、上記C1~C8アルキル基がさらに有していても良い置換基として列記した置換基が挙げられる。
上記「C1~C12アルキルスルホニル基」としては、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、ヘキシルスルホニル基、オクチルスルホニル基、ノニルスルホニル基、デカニルスルホニル基等が挙げられる。
上記式(1)中、Rは水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。
上記式(1)中、R、Rは水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のC1~C8アルキル基、置換もしくは無置換のC1~C8アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基が好ましく、水素原子、置換もしくは無置換のC1~C8アルコキシ基、アリールオキシ基がさらに好ましい。RとRの組み合わせとして特に好ましい組み合わせは、Rが水素原子、または、置換もしくは無置換のアリールオキシ基であり、Rが水素原子、である組み合わせである。前記アリールオキシ基としてはフェノキシ基が特に好ましい。
上記式(1)中、Rは置換もしくは無置換のアリール基が好ましい。前記アリール基としてはフェニル基が特に好ましい。
上記式(1)中、R、Rは水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のC1~C12アルキル基、置換もしくは無置換のC1~C12アルキルスルホニル基が好ましい。R、Rの好ましい組み合わせとしては、R、Rのうち一方が水素原子であり、もう一方が水素原子または置換もしくは無置換のC1~C12アルキルスルホ基である組み合わせである。特に好ましい組み合わせとしては、R、Rがそれぞれ水素原子である組み合わせである。
前記式(1)における各種の置換基、およびそれらの組合せ、さらにはそれらの置換位置等について記載した好ましいもの同士を組合せた化合物はより好ましく、より好ましいもの同士を組合せたものは更に好ましい。さらに好ましいもの同士や、好ましいものと、より好ましいものとの組合せ等についても同様である。
本発明の前記式(1)で表される化合物又はその塩は、例えば、下記式(2)で表される化合物を、発煙硫酸を含む硫酸中でスルホン化することにより得られる。硫酸中の硫酸の濃度は80~100重量%、好ましくは90~98重量%である。反応温度は通常0~80℃、好ましくは10~40℃である。また反応時間は反応温度により変わるが通常5分~40時間、好ましい態様においては30分~20時間である。このスルホン化反応の進行状況は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって確認が可能である。
Figure 2022176503000002
式(2)中、Rは水素原子、C1~C4アルキル基を表し、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のC1~C8アルキル基、C1~C8アルコキシ基、C1~C8アルキルチオ基、C1~C8アルキルスルホ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アミド基、カルバモイル基、スルファモイル基を表し、Rは置換もしくは無置換のC1~C8アルキル基、アリール基を表し、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のC1~C12アルキル基、C1~C12アルコキシ基、C1~C12アルキルチオ基、C1~C12アルキルスルホニル基、アミド基、カルバモイル基、スルファモイル基を表す。
上記式(2)中、R~Rは前述の式(1)中のR~Rの記載を適応することができる。
上記式(1)で表される化合物としては、下記式(5)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2022176503000003
式(1)で表される化合物としては、下記式(A)~(C)であることがさらに好ましい。
Figure 2022176503000004
前記式(1)で表される化合物は、遊離酸、塩、のいずれであっても良く、遊離酸と塩の混合物でも良いし、式(1)で表される化合物が互変異性体を有するときは、その互変異性体の遊離酸及び塩をも含む混合物であっても良い。
また、式(1)で表される化合物が有するスルホ基と、式(1)で表される化合物における置換基R~Rが、水酸基、カルボキシル基、リン酸基、スルホ基等の酸性基を有する場合は該酸性基と、の両方が存在する場合は、互いに、遊離酸、及び/又は、塩を形成しても良く、遊離酸同士の組み合わせ、塩同士の組み合わせ、遊離酸と塩の組み合わせのいずれであっても良く、例えば、ナトリウム塩とアンモニウム塩の組み合わせ、遊離酸とナトリウム塩の組み合わせ、等任意の組み合わせであっても良い。特に、塩の種類によっては溶解性等の物性値が異なるときも有り、必要に応じて適宜塩の種類を選択したり、複数の塩等を含むときにはその比率を変化させること等も好ましく行われる。
塩を形成する場合は、例えば、無機又は有機陽イオンと形成する塩が挙げられる。
無機陽イオン塩の具体例としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、及びアンモニウム塩が挙げられる。これらの中で、好ましい無機陽イオン塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウムの塩及びアンモニウム(NH4+)塩が挙げられる。
有機陽イオンの塩としては例えば下記式(12)で表わされる4級アンモニウムイオンの塩が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
さらに、上記酸性基が複数存在する場合も、酸性基間あるいは上記式(1)におけるスルホ基と同じあるいは異なっていても良い。
造塩や塩交換等の方法は、いずれも公知の方法を用いることができる。
Figure 2022176503000005
前記式(12)においてZ、Z、Z、Zは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基及びヒドロキシアルコキシアルキル基よりなる群から選択される基を表し、Z~Zの全てが水素原子となることは無い。
式(12)におけるZ、Z、Z、Zのアルキル基の具体例としてはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル等の、直鎖又は分岐鎖のC1-C4アルキル基が挙げられる。
ヒドロキシアルキル基の具体例としてはヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、3-ヒドロキシプロピル、2-ヒドロキシプロピル、4-ヒドロキシブチル、3-ヒドロキシブチル、2-ヒドロキシブチル等の、ヒドロキシC1-C4アルキル基が挙げられる。
ヒドロキシアルコキシアルキル基の例としては、ヒドロキシエトキシメチル、2-ヒドロキシエトキシエチル、3-ヒドロキシエトキシプロピル、2-ヒドロキシエトキシプロピル、4-ヒドロキシエトキシブチル、3-ヒドロキシエトキシブチル、2-ヒドロキシエトキシブチル等の、ヒドロキシC1-C4アルコキシC1-C4アルキル基が挙げられる。これらの中ではヒドロキシC1-C4アルコキシC1-C4アルキル基(好ましくはヒドロキシエトキシC1-C4アルキル基)が好ましい。
前記のうち、特に好ましいものとしては、水素原子;メチル;ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、3-ヒドロキシプロピル、2-ヒドロキシプロピル、4-ヒドロキシブチル、3-ヒドロキシブチル、2-ヒドロキシブチル等のヒドロキシC1-C4アルキル基;ヒドロキシエトキシメチル、2-ヒドロキシエトキシエチル、3-ヒドロキシエトキシプロピル、2-ヒドロキシエトキシプロピル、4-ヒドロキシエトキシブチル、3-ヒドロキシエトキシブチル、2-ヒドロキシエトキシブチル等のヒドロキシエトキシC1-C4アルキル基;が挙げられる。
前記式(12)として好ましい化合物のZ、Z、Z及びZの組み合わせの具体例を下記表1に示す。
Figure 2022176503000006
上記着色液中における上記式(1)で表される化合物の含有量は、0.05~25質量%であることが好ましく、0.1~25質量%であることがより好ましく、0.5~20質量%であることがさらに好ましく、1~15質量%であることが特に好ましい。
上記着色液中における上記式(1)で表される化合物の含有量を0.01~25質量%とすることにより、保存安定性に優れ、印刷物の発色性を向上させることができる。
前記着色液中、下記式(Z)で表されるアンスラピリドン骨格をもつ化合物であり且つ分子中に2つ以上のスルホ基が存在する化合物よりも、前記式(1)で表される化合物の含有量が多い方が好ましい。前記着色液中に含まれる下記式(Z)で表されるアンスラピリドン骨格を有する化合物の総量中、前記式(1)で表される化合物の含有量が50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが殊更好ましい。前記着色液中に含まれる下記式(Z)で表されるアンスラピリドン骨格を有する化合物の総量中、前記式(1)で表される化合物の含有量が50質量%以上であることで、色相、保存安定性が確保され、インクジェット記録用インクとしての利用が可能であり、発色性、耐光性、湿潤堅牢性のバランスに優れる染色物を得ることができる。前記着色液中、下記式(Z)で表されるアンスラピリドン骨格をもつ化合物であり且つ分子中に2つ以上のスルホ基が存在する化合物は、実質的に含まれないことが好ましい。本明細書において、「実質的に含まれない」とは、HPLCでの分析等において検出限界以下であることを意味する。
Figure 2022176503000007
上記着色液は、有機溶剤をさらに含み、かつ、該有機溶剤のLog P(水/オクタノール分配係数)値が正の数であることが好ましい。
上記有機溶剤のLog P値は、理論値でも実測値でも良いが、実測値が正の値であることが好ましい。Log P値が正の数である上記有機溶剤としては、例えば、グリコールエーテル化合物;エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノペンチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノドデシルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、またはアルカンジオール化合物;テキサノール、1,1-へキサンジオール、1,2-へキサンジオール、1,6-へキサンジオール、1,1-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-へキサンジオール、1-(3-メトキシプロポキシ)-1-プロパノール、またはフェノキシイソプロパノール、またはペンタノール、または1-プロパノール、またはイソプロピルアルコール、または1-ブタノール、またはε-カプロラクタム、またはテトラヒドロフラン、等が挙げられるが、理論値または実測のLog P値が正の値であればこの限りではない。
これら有機溶剤の中でも、グリコールエーテル化合物、アルカンジオール化合物、ε-カプロラクタムからなる群から選択されるいずれかを含むことが好ましく、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノペンチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、テキサノールがより好ましい。上記グリコールエーテル化合物が、プロピルグリコール、ブチルグリコール、ブチルジグリコール、ブチルトリグリコールからなる群から選択されるいずれかを含むことが好ましい。上記アルカンジオール化合物が、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール-1-イソブチレートからなる群から選択されるいずれかを含むことが好ましい。
上記Log P値が正の値の有機溶剤は、少なくとも1種類以上含有することが好ましく、複数の有機溶剤を組み合わせて用いてもよい。複数の有機溶剤を使用する場合は、そのうちの一種がトリエチレングリコールモノブチルエーテルまたは1,2-ヘキサンジオールであることが好ましい。
前記着色液中、上記有機溶剤の含有量は特に限定はないが、例えば1~30%、好ましくは2~25%。より好ましくは3~20%である。
上記着色液中、上記有機溶剤の、Log P値は、0より大きく、2.6より小さい値が好ましく、0.001より大きく、2.0より小さい値がより好ましい。
上記有機溶剤の、Log P値が大きい値であるほど疎水性が高い有機溶剤であることを示しており、着色液中の他の成分との混和性に影響を及ぼす。上記着色液においては、有機溶剤が式(1)で表される化合物や水等の各成分の混和性を保つ働きをしていると考えられる。
前記着色液は、その他の成分として、例えば、水、水溶性有機溶剤、界面活性剤、pH調整剤、防腐防黴剤等のインク調製剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。前記インク調製剤を含有した着色液はインクジェット記録用インクとして使用できる。上記調製剤は、各インクに対してそれぞれ独立に選択しても良いし、異なっていても良い。色素以外の上記調製剤については各インク共に同じものを選択するのが好ましい。しかし、各インク中における上記調製剤の含有量は、含有する色素の物性等に応じて個別に調整するのが好ましい。上記調製剤は、単独もしくは混合して用いられる。
着色液を前記インクジェット記録用インクとして用いる場合、インクの総質量中における各成分の含有量を、以下にまとめて記載する。
色素の総含有量は、特に前記していないときは通常0.5~15%、好ましくは1~10%、より好ましくは1~7.5%である。
Log P値が正の値の有機溶剤を含む、水溶性有機溶剤の含有量は通常1~50%、好ましくは5~40%である。
インク調製剤の含有量は合計で、通常0~10%、好ましくは0.05~5%である。
なお、これらの成分以外の残部は水である。
前記インクジェット記録用インクには、Log P値が正の値の有機溶剤以外に、さらに水溶性有機溶剤を用いることができ、具体的には、多価アルコール類、ピロリドン類等が挙げられる。
多価アルコール類としては、グリセリン、1,3-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール等のヒドロキシ基を2つ~3つ有するC2-C6アルコール(Log P値が正の値の有機溶剤を除く);ジグリセリン、ポリグリセリン等のポリグリセリルエーテル;ポリオキシエチレンポリグリセリルエーテル、ポリオキシプロピレンポリグリセリルエーテル等のポリオキシC2-C3アルキレンポリグリセリルエーテル;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の、モノ、ジ又はトリC2-C3アルキレングリコール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の、繰り返し単位が4以上で、分子量が約20,000以下程度のポリC2-C3アルキレングリコール(好ましくは液状のもの);等が挙げられる。
ピロリドン類としては、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン等のピロリドン類;等が挙げられる。
これらの中ではグリセリン、ジエチレングリコール、及び2-ピロリドンが好ましい。水溶性有機溶剤は、一種類のみを使用しても、複数の種類を併用しても良い。
界面活性剤としては、アニオン、カチオン、両性、及びノニオンの各界面活性剤が挙げられる。これらの中ではカチオン界面活性剤が好ましい。
アニオン界面活性剤としてはアルキルスルホカルボン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N-アシルアミノ酸又はその塩、N-アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。
カチオン界面活性剤としては2-ビニルピリジン誘導体、ポリ4-ビニルピリジン誘導体等が挙げられる。
両性界面活性剤としてはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、イミダゾリン誘導体等が挙げられる。
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のエーテル系;ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系;2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール等のアセチレンアルコール系;他の具体例として、例えば、日信化学社製の商品名サーフィノール104、105PG50、82、420、440、465、485、オルフィンSTG;等が挙げられる。
これらの中ではサーフィノールが好ましく、サーフィノール104PG50、サーフィノール440がより好ましい。
上記の防腐防黴剤としては、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ソジウムピリジンチオン-1-オキサイド、ジンクピリジンチオン-1-オキサイド、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、1-ベンズイソチアゾリン-3-オンのアミン塩、ランクセス社製Biox P520LP、Preventol BIT 20N、ダウ・ケミカル社製ROCIMA 640、TROY社製Mergal K-20、ロンザ社製プロキセルGXL等、好ましくはプロキセルGXL、プロキセルXL2;等が挙げられる。
上記着色液の25℃における粘度は、E型粘度計にて測定したときに30mPa・s以下;表面張力は、プレート法にて測定したときに20~70mN/m;の各範囲内であるのが好ましい。着色液を、後述するインクジェット記録用インクとして用いる場合、使用するインクジェットプリンタの吐出量;応答速度;着色液滴の飛行特性;及び、インクジェットヘッドの特性;等を考慮し、適切な値に調整することがよい。上記着色液をインクジェット記録用インクとして用いる場合は、表面張力は、プレート法にて測定したときに20~50mN/m;の各範囲内であるのが好ましい。
上記着色液のpHは6.0~11.0の範囲であることが好ましい。この範囲に制御できるpH調整剤であれば任意の物質を使用することができる。使用できるpH調整剤としては、例えば、ジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミントリエタノールアミン等のアルカノールアミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化アンモニウム(アンモニア水);又は、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン;等が挙げられる。これらの中では水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン等が好ましい。インクの総質量中におけるpH調整剤の含有量は通常0.01~2%、好ましくは0.05~1%である。
上記着色液は、上記の成分を混合し、溶液とすることにより得られる。上記着色液を製造するにあたり、含有する各成分を混合させる順序には特に制限はない。着色液に含まれる水は、イオン交換水又は蒸留水等の、金属イオン等の不純物が少ない水が好ましい。さらに、必要に応じメンブランフィルター等を用いて精密濾過を行って夾雑物を除いてもよく、インクジェット記録用インクとして使用する場合は、精密濾過を行うことが好ましい。精密濾過を行うフィルターの孔径は通常通常0.1μm~1μm、好ましくは0.1μm~0.8μmである。
前記着色液をインクジェット記録用インクとして用いる場合、インクの保存安定性及びインクジェットプリンタからの吐出精度等を良好にするため、できるだけ不純物の少ない色素等を使用するのが好ましい。又、特に精製操作を行わない水等は、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等の金属イオンを含むため、このような未精製の水等をインクに使用すると、微量ながら該イオン等がインクに混入する。
前記の無機塩及び金属イオンを含めて、本明細書においては便宜上、「無機不純物」と以下記載する。
これらの無機不純物は、インク中の色素の溶解度及びインク自体の貯蔵安定性を著しく悪化し、また、インクジェットプリンタヘッドの腐食・磨耗の原因ともなる。このため無機不純物は、インク中から除去することが好ましい。これらの無機不純物を除去する方法としては、例えば限外濾過法、逆浸透法、イオン交換法等の公知の方法が挙げられる。
インクの総質量中に含有しても良い無機不純物の含有量の上限は、通常1%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下である。下限は0%、すなわち検出機器の検出限界以下で良い。
上記のようにして調製されたインクジェット記録用インクは、貯蔵中に沈澱、分離することがない。また、噴射器(インクヘッド)を閉塞することもない。加えて、連続式インクジェットプリンタによる比較的長い時間かつ一定の再循環下での記録;又はオンデマンド式インクジェットプリンタによる断続的な記録;等においても、物理的性質の変化を起こさない。
上記着色液は、染色(捺染、浸染を含む)、複写、マーキング、筆記、製図、スタンピング等の各種の記録用途に使用できるが、特にインクジェット記録に適する。本発明の着色液とは、式(1)で表される化合物を水や溶媒に溶解または分散させた溶液全般を指し、捺染や浸染で使用される染色液、インクジェット記録用インク等も含む。
上記着色液は、単色の画像形成のみならず、フルカラーの画像形成に用いることができる。フルカラー画像を形成するために、例えば、上記着色液をマゼンタ着色液として用い、シアン着色液、イエロー着色液との3原色の着色液セット、さらにはこれにブラック着色液を加えた4色の着色液セットとして使用することが可能である。また、より高精細な画像を形成するために、例えば、上記着色液をレッド着色液として使用し、マゼンタ着色液、ライトマゼンタ着色液、ブルー着色液、グリーン着色液、オレンジ着色液、ダークイエロー着色液、グレー着色液等と併用した着色液セットとしても使用できる。特に、上記着色液をマゼンタ着色液として用い、シアン着色液との着色液セットとすることが好ましい。上記着色液を、マゼンタ着色液又はレッド着色液又はルビン着色液として用い、用いた着色液以外の着色液とのセットとして用いても良い。例えば、上記着色液をマゼンタ着色液とし、レッド着色液とセットにしたり、上記着色液をレッド着色液とし、マゼンタ着色液とセットにしたり、上記着色液をルビン着色液とし、マゼンタ着色液あるいはレッド着色液とセットにしたりすることも可能である。上記着色液とセットにする着色液が含む色素は、公知のイエロー色素、公知のマゼンタ色素、公知のシアン色素、公知のブラック色素等が挙げられる。
上記公知のイエロー色素としては、例えば、アリール及び/又はヘテロアリールを有するアゾ系色素;ベンジリデン色素やモノメチンオキソノール色素等のメチン系色素;ナフトキノン色素、アントラキノン色素等のキノン系色素;キノフタロン系色素;ニトロ・ニトロソ系色素;アクリジン系色素;アクリジノン系色素;等が挙げられる。
上記公知のマゼンタ色素としては、例えば、アリール及び/又はヘテロアリールを有するアゾ系色素;アゾメチン系色素;アリーリデン色素、スチリル色素、メロシアニン色素、シアニン色素、オキソノール色素等のようなメチン系色素;ジフェニルメタン色素、トリフェニルメタン色素、キサンテン色素等のようなカルボニウム系色素;ナフトキノン、アントラキノン、アントラピリドン等のようなキノン系色素;ジオキサジン色素等のような縮合多環系色素;等が挙げられる。
上記公知のシアン色素としては、例えばフタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、アリール及び/又はヘテロアリールを有するアゾ系色素;アゾメチン系色素;アリーリデン色素、スチリル色素、メロシアニン色素、シアニン色素、オキソノール色素等のようなメチン系色素;ジフェニルメタン色素、トリフェニルメタン色素、キサンテン色素等のようなカルボニウム系色素;ナフトキノン、アントラキノン、アントラピリドン等のようなキノン系色素;ジオキサジン色素等のような縮合多環系色素;等が挙げられる。
上記公知のブラック色素としては、含金属アゾ化合物、ジスアゾ、トリスアゾ又はテトラアゾ等のアゾ系色素;硫化染料;カーボンブラックの分散体;等が挙げられる。
上記着色液は、上記の色素を混合し、調色して使用しても良い。着色液セットに使用する着色液も、上記色素を混合し、調色して使用しても良い。
上記着色液をインクジェット記録用インクとして用いる場合も、上記着色液セットと同様に、単色の画像形成のみならず、フルカラーの画像形成に用いることができる。特にレッド~マゼンタ色調のインクジェット記録用インクとして好ましく利用される。
本発明の着色液を使用した、インクジェット記録用インクセット、インクジェット記録方法、インクジェットプリンタ用カートリッジ、インクジェット記録物も本願発明に含まれる。
上記インクジェット記録用インクカートリッジは、上記インクジェット記録用インクを充填した容器である。また、上記インクジェット記録物は、上記インクジェット記録用インクを用いて、記録メディアに着色画像を形成したものである。
上記記録メディアとしては、特に限定はなく、布帛(疎水性繊維布帛等)、樹脂(プラスチック)フィルム、紙等のシート状の物が好適に用いられるが、シート状以外の球状、直方体形状等の立体的な形状を有する物を用いてもよい。
上記記録メディアが布帛であることが特に好ましい。布帛の種類としては、本発明の効果を十分に発揮できる観点から、セルロース系繊維、ポリアミド系繊維等が好ましく用いられる。セルロース系繊維としては、綿、麻、レーヨン、ポリノジック等が挙げられる。ポリアミド系繊維としては、シルク、毛、ナイロン等が挙げられる。上記セルロース系繊維またはポリアミド系繊維を含む布帛は、セルロース系繊維またはポリアミド系繊維100%のものが好適であるが、他の素材を含んでいてもよい。なお、ナイロンとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12等のナイロンが挙げられ、いずれのナイロンを用いてもよい。上記ポリアミド繊維は、織物、編物、不織布等いずれの形態であってもよい。
ポリアミド繊維を含む布帛は、ポリアミド繊維100%のものが好適であるが、ポリアミド繊維以外の素材を含んでいてもよい。布帛がポリアミド繊維以外の混紡率は、30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。ポリアミド繊維以外の素材としては、例えば、レーヨン、綿、アセテート、ポリウレタン、アクリル繊維等との混紡織布又は混紡不織布等であっても、本発明における捺染用布帛として使用することができる。
布帛を構成するポリアミド繊維及びポリアミド繊維から構成される糸の物理特性には好適な範囲があり、例えば、ナイロンの場合、ナイロン繊維の平均太さが、好ましくは1d~10d(デニール)、更に好ましくは2d~6dに制御され、該ナイロン繊維から構成されるナイロン糸の平均太さが、好ましくは20d~100d、より好ましくは25d~80d、更に好ましくは30d~70dに制御され、公知の方法により布帛としたものが用いられる。また、絹の場合は、繊維自体の特性として、絹繊維の平均太さが、好ましくは2.5d~3.5d、更に好ましくは2.7d~3.3dに制御され、該絹繊維から構成される絹糸の平均太さが、好ましくは14d~147d、更に好ましくは14d~105dに制御され、公知の方法により布帛としたものが好ましくは用いられる。
式(1)で表される化合物を含む着色液を用いて着色された記録メディアは、特に繊維である場合において、湿潤堅牢性が向上する効果がある。式(3)および式(4)の化合物と比較して、式(1)で表される化合物は水への溶解性が変化しているためと考えられる。
前記着色液は、繊維を染めるための染色用着色液としても用いることができる。繊維の染色法は浸染法と捺染法に大別される。浸染とは、染料を溶媒に溶解又は分散した染料液に被染布又は被染糸を浸漬し、繊維表面に均一に吸着させ、染料を繊維内部に拡散し、結合によって染着を行う工程である。捺染とは、染料又は顔料を被染布上に塗布して模様の形を与え、染顔料を染着又は固着させることによって模様のある染色物をつくる染色法であり、単色又は多食を用いて被染布の上に模様効果を発現する。工業的には版を用いるスクリーン捺染、ローラー捺染、転写紙を用いる転写捺染、無製版のインクジェット捺染が行われている。
浸染は、染料液に布帛又は糸を浸漬して染料を染着させる工程と、繊維に染着しない未固着の染料を洗い流す洗浄工程と、乾燥工程からなる。前記着色液を浸染で用いる場合には、上記着色液は、布帛又は糸を浸漬できる染色液として用いる。この場合、染色液としては、染料以外に、溶媒、均染助剤、pH調整剤、無機中性塩、分散剤などを含有することができる。溶媒としては一般的に、水が用いられる。均染助剤などの添加剤としては、公知のものを使用できる。染料を高濃度で均一に染めるには、添加剤を使用する以外には、染料濃度、染浴pH、塩濃度、染色温度、染色時間、圧力、液流を制御することで調整できる。
前記のインクジェット捺染方法は、インクとして少なくとも前記着色液を用い、少なくとも以下の工程を順次行うことを含む繊維のインクジェット捺染方法である。
[捺染工程]
上記式(1)で表される化合物と、水と、界面活性剤と、有機溶剤とを含有するインクジェット捺染用インクを用いる布帛の捺染方法は、インクジェット捺染用インクを布帛に付与する捺染工程を含む。布帛は、ポリアミド繊維を含む布帛が好ましい。
インクジェット捺染用インクの布帛への付与方法はインクジェット法によることが好ましいが、スクリーン法等の他のインク付与方法を用いてもよい。また、インクジェット捺染用インクを布帛に付与するにあたっては、染料の布帛への固定化がより高まるように前処理を施してもよい。
[前処理工程]
前記捺染方法は、前処理を布帛に付与する前処理工程を有していてもよい。前処理工程は、既述の捺染工程における染料の布帛への固定化が高まるように、捺染の前にあらかじめ布帛に対して、ヒドロトロピー剤、水溶性金属塩、pH調整剤、pH緩衝剤、高分子成分等を含有する前処理剤を付与する工程である。前処理工程においては、絞り率5%~150%、好ましくは10%~130%の範囲で前処理剤をパディングすることが好ましい。前処理剤は、更に界面活性剤等を付与してもよい。
(前処理剤)
-ヒドロトロピー剤-
ヒドロトロピー剤は、一般に、インクジェット捺染用インクが付与された布帛が蒸気下で加熱される際に、画像の発色濃度を高める役割を果たす。ヒドロトロピー剤としては、例えば、尿素、アルキル尿素、エチレン尿素、プロピレン尿素、チオ尿素、グアニジン酸塩、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム等があげられる。
-水溶性金属塩-
水溶性金属塩としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属のハロゲン化物のように、典型的なイオン結晶を形成するものであって、pH4~10である化合物が挙げられる。かかる化合物の代表的な例としては、アルカリ金属塩では、NaCl、NaSO、KCl、CHCOONa等が挙げられ、アルカリ土類金属塩としては、CaCl、MgCl等が挙げられる。中でも、Na、K、Caの塩類が好ましい。
-pH調整剤-
前処理工程において、pH調整剤は、一般に、着色剤の布帛への固定化反応を高める役割を果たす。ここで、pH調整剤とは、布帛に付与されるインクジェット捺染用インクのpHを調製する化合物ないし組成物をいい、インクジェット捺染用インクのpHを変化させる成分をいう。pH調整剤としては、アルカリ、酸、又は、アルカリと酸との組み合わせが挙げられる。
-pH緩衝剤-
pH緩衝剤は、pH調整剤と同様に、一般的に、着色剤の布帛への固定化反応を高める役割を果たす。pH緩衝剤としては、例えば、硫酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム等に代表される酸アンモニウム塩が挙げられる。
-高分子成分-
高分子成分は、一般的に、着色剤を布帛に付与させる糊剤としての役割を果たす。高分子成分としては、天然高分子化合物であってもよいし、合成高分子化合物であってもよいが、本発明の捺染方法に用いるインクジェット捺染用インクが水を含むことから、水溶性高分子化合物であることが好ましい。水溶性高分子としては、例えば、トウモロコシ、小麦等の澱粉物質、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系高分子化合物、アルギン酸ナトリウム、アラビヤゴム、ローカストビーンガム、トラントガム、グアーガム、タマリンド種子等の多糖類系高分子化合物、ゼラチン、カゼイン等のタンパク質系物質、タンニン系物質、リグニン系物質等の公知の天然高分子化合物が挙げられる。また、合成水溶性高分子化合物としては、例えば、公知のポリビニルアルコール系化合物、ポリエチレンオキサイド系化合物、アクリル酸系水溶性高分子化合物、無水マレイン酸系水性高分子化合物が挙げられる。これの中でも多糖類系高分子化合物やセルロース系高分子化合物が好ましい。
-界面活性剤-
前処理剤に使用できる界面活性剤としては、陰イオン性、非イオン性、両性界面活性剤等が挙げられる。特に、HLB12.5以上の非イオン系界面活性剤が好ましく、HLB14以上の非イオン系界面活性剤がより好ましい。両性界面活性剤としては、ベタイン型等を使用することができる。
-他の成分-
前処理剤は、更に、使用する染料の特性等に応じて酸及びアルカリなどの発色剤、染料溶解剤、湿潤剤、保湿剤、濃染剤、還元防止剤、金属イオン封止、紫外線吸収剤、分散剤、均染剤、抜染剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、マイグレーション防止剤、染料固着剤、消泡剤、といった添加剤を含有していてもよい。
前処理剤は、既述のヒドロトロピー剤、界面活性剤等の各種成分を混合した混合物として布帛に付与してもよいし、それぞれの前処理剤を布帛に順次付与するものであってもよい。前処理剤が、既述の範囲となるように、目的に応じて適宜調製すればよい。前処理において、上記各前処理剤を布帛に含有させる方法は、特に制限されないが、通常行われる浸漬法、パッド法、コーティング法、スプレー法、インクジェット法等を挙げることができる。
前記捺染方法において、布帛にインクジェット捺染用インクを付与して画像を形成した後、画像が形成された布帛を巻き取り、布帛を加熱して発色させ、布帛を洗浄し、乾燥させることが望ましい。
本発明に係るインクを、インクジェット記録ヘッドより付与した布帛は、好ましくは後処理工程に付さ、染料の繊維への定着を促進させ、その後、定着しなかった染料、その他の成分、及び前処理剤を十分除去することが望ましい。
<後処理工程>
捺染工程を経た布帛は、好ましくは後処理に付され、染料の繊維への固定化を促進させ、その後、定着しなかった染料、その他の成分、及び前処理剤を十分に除去する後処理工程を経ることが好ましい。後処理工程はいくつかの工程に分かれる。後処理工程は、例えば、予備乾燥工程、スチーム工程、洗浄工程、及び乾燥工程を、この順に行うことによって構成することができる。
-予備乾燥工程-
まず、捺染工程の後、染料を含有するインクジェット捺染用インクが付与された布帛を、常温~150℃に0.5分~30分放置し、付与されたインクジェット捺染用インクを予備乾燥することが好ましい。この予備乾燥により印捺濃度を向上させ、かつ滲みを有効に防止できる。なお、この予備乾燥とはインクジェット捺染用インクが布帛中に浸透することも含む。
本発明の捺染方法によれば、予備乾燥を連続工程で加熱乾燥することも可能である。布帛をロール状にしてインクジェット印捺機に供給して印捺し、その後、画像形成した布帛を巻き取る以前に、乾燥機を用いて乾燥する。乾燥機は印捺機の直結したものでも、分離したものであってもよい。乾燥機における画像形成された布帛の乾燥は常温~150℃で0.5分~30分行われることが好ましい。また、好ましい乾燥方法としては、空気対流方式、加熱ロール直付け方式、照射方式等が挙げられる。
-スチーム工程-
スチーム工程は、インクジェット捺染用インクが付与された布帛を、飽和蒸気中に曝すことで、染料の布帛への固定化を促進する工程である。本発明の捺染方法によれば、後処理のうちスチーム工程は、布帛の種類によってその条件、特に、その時間を変化させることが好ましい。例えば、布帛が羊毛である場合、スチーム工程の時間は、着色液の種類や布帛の種類によって異なるが、温度は90~140℃が好ましく、100~108℃がより好ましい。布帛がナイロンである場合、時間は1~60分が好ましく、10~40分がより好ましい。また、布帛が絹である場合、時間は1分~60分が好ましく、より好ましくは3分~40分程度である。
-洗浄工程-
このようにして、布帛にインクジェット法で付与されたインクジェット捺染用インクのうち、大部分は布帛に固着するが、この中の一部の染料は繊維に染着しないものがある。この未固着の染料は洗い流しておくことが好ましい。未固着の染料の除去は、従来公知の洗浄方法が採用できる。例えば常温から100℃の範囲の水もしくは温水を使用したり、アニオン、ノニオン系のソーピング剤を使用したりすることが好ましい。未固着の染料が完全に除去されていないと、種々の湿潤堅牢性、例えば洗濯堅牢性、汗堅牢性等において良好な結果が得られない場合がある。
-フィックス処理工程-
染料を繊維の内部に留めるため、洗浄工程の後に酸性またはアルカリ性のフィックス処理工程を行っても良い。
-乾燥工程(洗浄後の乾燥)-
印字した布帛を洗浄した後は乾燥が必要である。洗浄した布帛を絞ったり脱水した後、干したり、或いは乾燥機、ヒートロール、アイロン等を使用して乾燥させる。
以上、説明した染色方法のうち、上記(1)で表される化合物と、Log P値が正の値の有機溶剤とを含有する着色液をインクジェット記録用インクとして用い、ポリアミド繊維を含む布帛に付与す方法であることが好ましい。
上記式(1)で表される化合物を含む着色液を前記インクジェット捺染用インクとして用いて、ポリアミド繊維を含む布帛に捺染すると、従来のマゼンタ系インクジェット記録用インクと比較して、発色性と各堅牢性に優れた発色部を形成することができる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその主旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。また、液の温度は内温を測定し、反応や塩析等の操作は特に断りのない限り、いずれも攪拌下で行った。また、実施例におけるインクジェット捺染用インク、インク溶液、インクは、いずれも、上記着色液に含まれる。
[合成例1]
Figure 2022176503000008
1-アミノ-4-アニリノ-2-ブロモアントラキノン(有本化学工業株式会社製)126.5部、フェノール57.4部、水酸化ナトリウム14.5部をN,N-ジメチルホルムアミド365部中で攪拌し、135℃に昇温した。3時間攪拌ののち、反応液を90℃まで冷却しメタノール235部中に滴下した。析出した固体を濾過し、メタノール250部と水1000部で洗浄した。得られたウェットケーキを80℃オーブンで乾燥させることで式(11)の化合物117.9部部得た。収率90%。
Figure 2022176503000009
式(11)の化合物61部、ベンゾイル酢酸エチル(東京化成工業株式会社製)57.6部、炭酸ナトリウム1.6部をキシレン166部中で攪拌し、還流温度まで昇温した。3時間攪拌ののち、反応液を60℃まで冷却し222部のメタノール中に滴下した。析出した固体を濾過し、メタノール250部と水1000部で洗浄した。得られたウェットケーキを80℃オーブンで乾燥させることで式(A-1)の化合物[前記式(2)において、Rが水素基で表わされる化合物]72.2部得た。収率90%。
96.5%硫酸54.4部を反応器に加え、氷冷により液の温度を20℃以下に保ちながら前記式(A-1)で表わされる化合物13.9部を徐々に加えた後、15~20℃の温度で4時間反応させた。氷水400部中にこの反応液を注ぎ、塩化ナトリウム25部を加えて1時間攪拌した後、析出固体を濾過分離し、氷水20部で洗浄してウェットケーキを得た。得られたウェットケーキを水200部に加えて、25%苛性ソーダでpH=7.0に調整し、30分攪拌した。析出固体を濾過分離した。得られた固体を分取高速液体クロマトグラフィーにより式(A)で表される化合物のみを分取した。分取した液を濃縮し、乾燥した。得られた乾燥粉末を10重量倍のメタノールを加え50℃、1時間撹拌した後、0.2μmのPTFEフィルターで液濾過し、得られた液体を濃縮し、乾燥することで、式(A)で表される化合物4.5部を得た。
得られた化合物の水中における最大吸収波長(λmax)は、532nmであった。
[合成例2]
Figure 2022176503000010
96.5%硫酸54.4部を反応器に加え、氷冷により液の温度を20℃以下に保ちながら前記式(B-1)で表わされる化合物13.9部を徐々に加えた後、15~20℃の温度で4時間反応させた。氷水400部中にこの反応液を注ぎ、塩化ナトリウム25部を加えて1時間攪拌した後、析出固体を濾過分離し、氷水20部で洗浄してウェットケーキを得た。得られたウェットケーキを水200部に加えて、25%苛性ソーダでpH=7.0に調整し、30分攪拌した。析出固体を濾過分離した。得られた固体を分取高速液体クロマトグラフィーにより式(B)で表される化合物のみを分取した。分取した液を濃縮し、乾燥した。得られた乾燥粉末を10重量倍のメタノールを加え50℃、1時間撹拌した後、0.2μmのPTFEフィルターで液濾過し、得られた液体を濃縮し、乾燥することで、式(B)で表される化合物4.7部を得た。
得られた化合物の水中における最大吸収波長(λmax)は、533nmであった。
[合成例3]
Figure 2022176503000011
96.5%硫酸54.4部を反応器に加え、氷冷により液の温度を20℃以下に保ちながら前記式(C-1)で表わされる化合物15.2部を徐々に加えた後、15~20℃の温度で4時間反応させた。氷水400部中にこの反応液を注ぎ、塩化ナトリウム25部を加えて1時間攪拌した後、析出固体を濾過分離し、氷水20部で洗浄してウェットケーキを得た。得られたウェットケーキを水200部に加えて、25%苛性ソーダでpH=7.0に調整し、30分攪拌した。析出固体を濾過分離した。得られた固体を分取高速液体クロマトグラフィーにより式(C)で表される化合物のみを分取した。分取した液を濃縮し、乾燥した。得られた乾燥粉末を10重量倍のメタノールを加え50℃、1時間撹拌した後、0.2μmのPTFEフィルターで液濾過し、得られた液体を濃縮し、乾燥することで、式(C)で表される化合物5.1部を得た。
得られた化合物の水中における最大吸収波長(λmax)は、533nmであった。
[インクジェット捺染用インクの調製]
下記表2に示す組成になるよう各成分を混合し、50~60℃で、おおよそ1時間攪拌することにより各着色液を得た。得られた各着色液を、表3に示す組成になるように混合し、おおよそ1時間攪拌することにより得られたインク溶液を0.45μmのメンブランフィルター(商品名:セルロースアセテート系濾紙、アドバンテック社製)で濾過することにより、試験用のインクジェット捺染用インク(以降、インク溶液、インクとも表記する。)を調製した。また、インク溶液の調製に用いた「水」はミリポア水であり、総量100部となるように水を加えて調整した。式(A)、式(B)、式(C)で表される化合物を混合したものをそれぞれ実施例1~18とし、下記式(3)、下記式(4)で表される化合物、C.I.アシッドレッド260を混合したものをそれぞれ比較例1~8とした。
Figure 2022176503000012
[保存安定性評価試験]
上記のようにして得た着色液の保存安定性について評価を行った。評価は、室温において着色液を1ヶ月放置し、析出物や沈殿の有無を目視で以下の基準で判断した。
上記表1中に記載の各評価の基準は以下のとおりである。
A:析出物や沈殿が全くなく、完全に溶解している
B:わずかに析出物や沈殿がある
C:析出物や沈殿が多い、または、液の流動性がない
[色相評価]
実施例および比較例の着色液について、水に溶解あるいは分散させ、紫外可視分光吸収における吸光度が1となるよう濃度調整した溶液のC*を測定した結果を表1に示す。C*は彩度を表しており、C*の値が大きいとあざやかさが増し、C*の値が小さいとくすんだ色であることを示す。判定基準は以下の通りである。
A:70以上
B:55以上70未満
C:40以上55未満
D:40未満
Figure 2022176503000013
Figure 2022176503000014
Figure 2022176503000015
Figure 2022176503000016
[試験染布の調製]
-前処理剤の調製-
・グアーガム〔日晶株式会社製、MEYPRO GUM NP〕
・尿素〔富士フイルム和光純薬製〕
・硫酸アンモニウム〔富士フイルム和光純薬製〕
・水
上記組成の成分を混合して、前処理剤を調製した。得られた前処理剤を用い、絞り率を9
0%として、パッド法によりナイロン布(66ナイロンジャージ、色染社製)及びシルク布(精華パレス、色染社製)に前処理工程を行った後、60℃にて乾燥し前処理済布帛を得た。
実施例1のインクが充填された容器を産業用インクジェットヘッド評価装置(拡張型塗布装置EV2500;リコー(株))に充填し、25℃の環境下、前処理後の綿布にベタ画像を印捺した。この印捺物を60~80℃で予備乾燥後、スチーム工程にて飽和蒸気中、100~103℃で30分間スチーミング処理を行い、染料を繊維に固着させた。その後、布帛を冷水で5分間洗浄した後、乾燥することにより試験染布を得た。
実施例1のインクの代わりに、実施例2~18及び比較例1~6のインクを用いる以外は実施例1と同様にして、試験染布を得た。なお、表面濃度が同じになるように染色した。
[発色性の評価]
得られた染色物の表面濃度を機器測色機(マクベス社カラーアイCIE-3100)にて測定しΣK/Sを算出し表4に示した。
-ナイロン染色布の判定基準-
A: 200以上
B: 180以上200未満
C: 160以上180未満
D: 160未満
-シルク染色布の判定基準-
A: 115以上
B: 105以上115未満
C: 95以上105未満
D: 95未満
[アルカリ汗堅牢性の評価]
JIS L0848に準じて評価を行った。評価は1~5等級で判定され、等級数が大きい方が汗堅牢性に優れる。
結果を下記表4に示す。
Figure 2022176503000017
Figure 2022176503000018
Figure 2022176503000019
表4の結果より、実施例によって作製したナイロン及びシルク染色布の発色性、汗堅牢性は、比較例1~6に対して優れるものであった。また、耐光性、洗濯堅牢度についても、実施例のインクは実用可能な良好な結果を示した。
本発明の着色液は色相、保存安定性が確保され、インクジェット記録用インクとしての利用が可能であり、発色性、耐光性、湿潤堅牢性のバランスに優れる染色物及びその捺染方法が提供できることから、極めて有用である。

Claims (13)

  1. 下記式(1)で表される化合物を、0.01~25質量%含有する着色液。
    Figure 2022176503000020
    [式(1)中、Rは水素原子、C1~C4アルキル基を表し、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のC1~C8アルキル基、置換もしくは無置換のC1~C8アルコキシ基、置換もしくは無置換のC1~C8アルキルチオ基、C1~C8アルキルスルホ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アミド基、カルバモイル基、スルファモイル基を表し、Rは置換もしくは無置換のC1~C8アルキル基、アリール基を表し、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のC1~C12アルキル基、置換もしくは無置換のC1~C12アルコキシ基、置換もしくは無置換のC1~C12アルキルチオ基、C1~C12アルキルスルホニル基、アミド基、カルバモイル基、スルファモイル基を表す。]
  2. 有機溶剤をさらに含み、かつ、該有機溶剤のLog P(水/オクタノール分配係数)値が正の数である請求項1に記載の着色液。
  3. 上記有機溶剤のLog P値が、0より大きく、2.6より小さい値である、請求項2に記載の着色液。
  4. 上記有機溶剤が、グリコールエーテル化合物、アルカンジオール化合物、ε-カプロラクタムからなる群から選択されるいずれかを含む、請求項2又は3に記載の着色液。
  5. 上記グリコールエーテル化合物が、プロピルグリコール、ブチルグリコール、ブチルジグリコール、ブチルトリグリコールからなる群から選択されるいずれかを含む、請求項4に記載の着色液。
  6. 上記アルカンジオール化合物が、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール-1-イソブチレートからなる群から選択されるいずれかを含む、請求項4に記載の着色液。
  7. 請求項1~6のいずれか一項に記載の着色液を含むインクジェット記録用インク。
  8. 請求項1~6のいずれか一項に記載の着色液を含む着色液セット。
  9. 請求項7に記載のインクジェット記録用インクを含むインクセット。
  10. 請求項1~6のいずれか一項に記載の着色液、請求項7に記載のインクジェット記録用インク、請求項8に記載の着色液セット、請求項9に記載のインクセットの少なくともいずれかを用い、着色液滴あるいはインクジェット記録用インク滴を記録信号に応じて吐出させて被記録材に記録を行うインクジェット記録方法。
  11. 上記被記録材が繊維である請求項10に記載のインクジェット記録方法。
  12. 上記繊維が、ポリアミド繊維、及びポリアミド繊維を含む混紡繊維から選択される繊維である請求項11に記載のインクジェット記録方法。
  13. 請求項10~12のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法により印捺された繊維。


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