JP2022173815A - グラスライニング製品 - Google Patents

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【課題】フッ素樹脂層が剥離し難いグラスライニング製品を提供すること。【解決手段】母材と、母材表面に積層されたグラスライニング層と、該グラスライニング層の表面に施されたプライマーコーティングと、該プライマーコーティングを介して前記グラスライニング層に積層されたフッ素樹脂層とを備え、前記グラスライニング層が低アルカリグラスライニング層であるグラスライニング製品を提供する。【選択図】 図1

Description

本発明はグラスライニング製品に関する。
従来、貯槽や配管類などの多くは、鉄鋼などの金属材料で構成されている。
貯槽などに蓄えられる収容物が、腐食性のものであったり、金属材料からの溶出物の混入を嫌うものであったりするような場合には、母材となる金属の表面にグラスライニング層を備えたグラスライニング製品が貯槽や配管類を構成する部材として用いられている(下記特許文献1参照)。
母材の腐食を防いだり、母材からの溶出を防ぐ目的からは、一般的な樹脂に比べて耐熱性や耐薬品性に優れるフッ素樹脂で母材の表面にフッ素樹脂層を設けることも行われている。尚、フッ素樹脂の多くは融点が高く、溶剤にも不溶であるためにピンホールなどの欠陥が少ないフッ素樹脂層を形成することが難しい場合があり、フッ素樹脂層と母材との間にグラスライニング層を設けることも行われている(下記特許文献2参照)。
特許文献2に記載されているようにフッ素樹脂層を直接的にグラスライニング層に積層するとフッ素樹脂層が剥離し易いため、フッ素樹脂層を積層する前にグラスライニング層の表面にプライマーをコーティングすることが行われている。
特開2005-060746号公報 特開昭58-101770号公報
プライマーコーティングを介してグラスライニング層にフッ素樹脂層が積層されているグラスライニング製品でもフッ素樹脂層の剥離が十分に抑制されているとはいえないような場合があり、フッ素樹脂層の剥離をこれまで以上に抑制することが要望されている。そこで本発明は、グラスライニング製品におけるフッ素樹脂層の剥離をさらに抑制することを課題としている。
上記課題を解決するための本発明は、
母材と、母材表面に積層されたグラスライニング層と、該グラスライニング層の表面に施されたプライマーコーティングと、該プライマーコーティングを介して前記グラスライニング層に積層されたフッ素樹脂層とを備え、
前記グラスライニング層は、50℃の温度条件下で表面に純水を120時間接触させ、且つ、前記純水が接触する面積(S:cm)に対する前記純水の量(V:mL)の割合が5倍となる条件(V/S=5)で前記表面に前記純水を接触させた際に、単位面積当たりのアルカリ金属イオンの溶出量が12(mg/m)以下となる低アルカリグラスライニング層である、グラスライニング製品、を提供する。
本発明によれば、グラスライニング製品でのフッ素樹脂層の剥離がさらに抑制され得る。
図1は、一実施形態のグラスライニング製品を備えた収容装置を示した概略図である。 図2は、グラスライニング製品である槽本体の内壁の断面構造を示した概略断面図である。
以下に、本発明の一実施の形態について液状物の反応等に利用される収容装置を例に説明する。尚、以下においてはグラスライニング製品の具体的な例として収容装置を構成する部材を例示するが、本実施形態でのグラスライニング製品の具体的な用途は、以下のような例示に限定されるものではない。
図1に示すように本実施形態の収容装置1は、被収容物を収容する収容槽10と、該収容槽10に収容された被収容物を攪拌するための攪拌装置20と、該攪拌装置20での攪拌によって前記収容槽10の内部に形成される前記被収容物の流れを乱して攪拌性能の向上を図るためのバッフル30とを備えている。
前記収容槽10は、被収容物を収容槽10内に導入するための開口部111を上部に備えた槽本体11と、該槽本体11の前記開口部111を開閉するための蓋体12とを備える。前記槽本体11は、被収容物に接する内面11aを構成する内壁112と、該内壁112を外側から覆う外壁113とを備えており、該内壁112と外壁113との間に熱媒を流通可能な空間部11cを備えている。即ち、本実施形態の槽本体11にはジャケット構造が備えられていて、前記空間部11cに温熱や冷熱を伝達するための熱媒を流通させて被収容物の冷却や加熱を行い得るようになっている。
前記槽本体11は、被収容物を外部に排出するための開口部(排出口114)を底部に有している。本実施形態の収容槽10は、この排出口114を開閉する開閉弁13を有し、該開閉弁13は、弁体131と、弁座132とによって構成されている。
本実施形態では前記槽本体11や前記蓋体12などが金属製の母材の表面にグラスライニング層が積層されたグラスライニング製品となっている。
本実施形態の前記攪拌装置20は、前記槽本体11内で前記被収容物を攪拌するための攪拌翼21を有している。前記攪拌翼21は、槽本体11の収容空間において上下方向に延びるように設けられているとともに軸周りに回転される回転軸21aと、該回転軸21aに固定されて回転軸とともに回転する攪拌羽根21bとを備えている。そして、本実施形態においては前記攪拌翼21も金属製の母材の表面にグラスライニング層が積層されたグラスライニング製品となっている。
前記槽本体11での前記内壁112は、図2に示すように、厚さ方向に複数の層が積層された積層構造を有する。前記内壁112は、前記空間部11cの側に母材で構成された基体層BLを有する。前記内壁112は、複数の層の内、槽本体11の外側に前記基体層BLを有する。前記内壁112には、前記基体層BLから前記槽本体11の内面11aに向けて、順に、グラスライニング層GL、プライマーコーティングPL、フッ素樹脂層FLが設けられている。
本実施形態では、前記内壁112を構成する各層のそれぞれは、それ自身が単層であっても、複数の層に分かれていてもよい。本実施形態では、前記グラスライニング層GLと前記フッ素樹脂層FLとに複数の層が積層された積層構造が備えられている。
本実施形態での前記グラスライニング層GLは、前記基体層BLに接する第1層(以下「下引きガラス層GLL」ともいう)と、該下引きガラス層GLLに前記基体層BLとは逆側から接する第2層(以下「上引きガラス層GLU」ともいう)との2層構造を有している。前記グラスライニング層GLは、3層以上の積層構造を有していてもよいが、本実施形態では上引きガラス層GLUがグラスライニング層GLでの最表層に設けられており、上引きガラス層GLUがグラスライニング層GLの表面を構成している。
本実施形態での前記プライマーコーティングPLは、前記上引きガラス層GLUの表面側に施されており、前記下引きガラス層GLLとは逆側から前記上引きガラス層GLUに接するように設けられている。
本実施形態の前記フッ素樹脂層FLは、前記プライマーコーティングPLに接する第1層(以下「第1フッ素樹脂層FL1」ともいう)と該第1フッ素樹脂層FL1に前記プライマーコーティングPLとは逆側から接する第2層(以下「第2フッ素樹脂層FL2」ともいう)との2層構造を有している。前記フッ素樹脂層FLは、3層以上の積層構造を有していてもよいが、本実施形態では第2フッ素樹脂層FL2がフッ素樹脂層FLでの最表層に設けられており、第2フッ素樹脂層FL2がフッ素樹脂層FLの表面(槽本体11の内面11a)を構成している。
本実施形態での前記プライマーコーティングPLは、当該プライマーコーティングPLを設けずに前記グラスライニング層GLと前記フッ素樹脂層FLとを直接積層させた場合よりも高い接着力が前記グラスライニング層GLと前記フッ素樹脂層FLとの間に発生するように設けられる。本実施形態でのプライマーコーティングPLは、クロム酸やリン酸、及び、それらの塩を含む無機系プライマー;有機チタネート化合物、有機シリケート化合物のようなカップリング剤系プライマー;などといった非樹脂系プライマー、並びに、官能基を有するフッ素樹脂やフッ素樹脂と他の樹脂とを含むようなフッ素樹脂系プライマーなどにより構成され得る。プライマーコーティングPLは、非樹脂系プライマーとフッ素樹脂系プライマーとの混合物で構成されてもよい。
前記無機系プライマーとしては、クロム酸、クロム酸塩、リン酸、リン酸クロムなどが挙げられる。前記有機チタネート化合物としては、Ti(IV)又はTi(III)と、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基もしくはカルボキシル基を有する化合物とによって形成されるTi-O-C結合を含む構造を備えたアルコキシチタン、チタンアシレート、チタンキレート、ポリマーチタンなどが挙げられる。アルコキシチタンとしては、例えば、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラキス(2-エチルヘキシルオキシ)チタン、テトラステアリルオキシチタンなどが挙げられる。チタンアシレートとしては、例えば、トリノルマルブトキシチタンモノステアレート、チタンステアレート、ジイソプロポキシチタンジステアレートなどが挙げられる。チタンキレートとしては、例えば、ジイソプロポキシチタンビス(アセチルアセトナト)、ジノルマルブトキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、チタンイソプロポキシオクチレングリコレート、ジヒドロキシビス(ラクタト)チタンアンモニウム塩、ジヒドロキシビス(ラクタト)チタン、プロパンジオキシチタンビス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。ポリマーチタンとしては、例えば、テトラノルマルブトキシチタン重合体、テトライソプロポキシチタン重合体などが挙げられる。。
前記有機シリケート化合物としては、いわゆるシランカップリング剤を用いることができる。前記シランカップリング剤としては、例えば、ビニルシランカップリング剤、エポキシシランカップリング剤、スチリルシランカップリング剤、メタクリロキシシランカップリング剤、アクリロキシシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、ウレイドシランカップリング剤、クロロプロピルシランカップリング剤、メルカプトシランカップリング剤、スルファイドシランカップリング剤、イソシアネートシランカップリング剤などが挙げられる。
前記フッ素樹脂系プライマーには、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)などのフッ素樹脂が含まれ得る。該フッ素樹脂は、主鎖や側鎖の炭素原子に結合しているフッ素原子の一部が、反応性官能基に置換されたものであってもよい。
反応性官能基としては、例えば、-COOR(Rは-H、-CH、-C、-C、-C、又は-C11を表す)、-CHCOOR(Rは-H、-CH、-C、-C、-C、又は-C11を表す)、-COF、-CONH、-CHOH、-OH、-CN、-CHO(CO)NH、-CHOCN、-CHOP(O)(OH)、CHP(O)Cl、-SOH、-SOH、-SOFなどが挙げられる。
前記フッ素樹脂系プライマーには、例えば、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、芳香族ポリエステル(PET,PEN・・・)、ポリアリレンサルファイド(PAS)、エポキシ樹脂などのフッ素樹脂以外の樹脂を含有することができる。
前記フッ素樹脂系プライマーでのフッ素樹脂とその他の樹脂との合計量に占めるフッ素樹脂の割合は、50質量%以上95質量%以下とされ得る。該割合は、90質量%以下であってもよく85質量%以下であってもよい。前記割合は、55質量%以上であってもよく60質量%以上であってもよい。
前記非樹脂系プライマーと前記フッ素樹脂系プライマーとを併用する場合、これらの比率は、1:99~50:50(非樹脂系プライマー:フッ素樹脂系プライマー、質量比)の範囲から選択され得る。非樹脂系プライマーとフッ素樹脂系プライマーとの合計量に占める非樹脂系プライマーの割合は、2質量%以上であっても、3質量%以上であってもよい。該割合は、5質量%以上であっても、10質量%以上であってもよい。
前記プライマーコーティングPLは、例えば、1μm以上250μm以下の厚さとなるように形成され得る。
本実施形態においては、前記グラスライニング層GLに含まれるアルカリ金属イオンによって前記プライマーコーティングPLの機能が低下してフッ素樹脂層FLが剥離し易い状態になってしまうことを防止するために前記グラスライニング層GLとしてアルカリ金属イオンの溶出量が少ない低アルカリグラスライニング層が採用される。
より詳しくは、本実施形態での前記グラスライニング層GLは、50℃の温度条件下で純水を表面(前記上引きガラス層GLUの表面)に120時間接触させ、且つ、前記表面の面積を「S(cm)」、前記純水の量を「V(mL)」として両者の比率が「5」となる条件(V/S=5)で前記グラスライニング層GLの前記表面に前記純水を接触させてアルカリ金属イオンの合計溶出量「X(mg)」を求め、該合計溶出量(X)を前記面積(S)で除して単位面積当たりのアルカリ金属イオンの前記純水へ溶出量「E(mg/m)」(=X/S×10,000)を求めた際に該溶出量(E)が12(mg/m)以下となる低アルカリグラスライニング層である。
アルカリ金属イオンの合計溶出量「X(mg)」については、ルビジウムやセシウムなどは、ガラスの成分として利用されるケースが少なく、仮にこれらを含んでいてもイオン半径が大きくてこれらの溶出は通常考えられず、それらがの溶出が見られたとしても極めて微量で無視できる程度にとどまると見られることから、リチウムイオンの溶出量「XLi(mg)」、ナトリウムイオンの溶出量「XNa(mg)」及びカリウムイオンの溶出量「XK(mg)」をそれぞれ求めてそれらを合計することで算出することができる。尚、アルカリ金属イオンの溶出は、超純水(例えば、比抵抗が18MΩ・cm以上の水)を用いることができる。リチウムイオンの溶出量「XLi(mg)」、ナトリウムイオンの溶出量「XNa(mg)」及びカリウムイオンの溶出量「XK(mg)」のそれぞれは、ICP(誘導結合プラズマ質量分析法)によって求めることができる。
尚、実際の槽本体11を使ってアルカリ金属イオンの溶出量を測定することが困難な場合、代わりとなる試験体を作製して測定を行ってもよい。試験体としては、例えば、13mmφ×80mm長さの鋼製丸棒(低炭素鋼)の全面に槽本体11と同様の厚さでグラスライニング層を形成させたものを用いることができる。試験は、例えば、PTFE製容器に超純水を入れ、該超純水に浸漬させた試験体をPTFE製容器ごと120時間、50℃温度で加熱することで実施できる。このとき、グラスライニング層を形成した後の試験体の太さが、例えば、直径16mmであった場合、試験体の両端面の合計面積は、概ね[0.8cm×0.8cm×π×2]となり、約4cmとなる。また、試験体の側面の面積は、概ね、[1.6cm×π×8cm]となり、約40cmとなる。従って、このような場合は、PTFE製容器へは、約220mL(S≒44cm、V/S=5)の超純水を収容して試験を行うこととなる。また、PTFE製容器の加熱は温水バスなどを用いて実施することができる。
グラスライニング層GLの表面に移行したアルカリ金属イオンは、当該表面におけるpH値を上昇させてガラスを侵食するおそれがある他に、プライマーとガラスとの化学的な結合を破壊したり、プライマーに含まれるポリマーを分解するおそれがある。そのため、50℃の純水を使った120時間での前記溶出量(E)は、11(mg/m)以下であることが好ましく、10(mg/m)以下であることがより好ましく、9(mg/m)以下であることがさらに好ましく、8(mg/m)以下であることがとりわけ好ましい。
アルカリ金属イオンのなかでもナトリウムイオンは溶出し易い点でその影響が大きく表れ得る。したがって、ナトリウムイオンの単位面積当たりの溶出量「ENa(mg/m)」(=XNa/S×10,000)は、6(mg/m)以下であることが好ましく、5(mg/m)以下であることがより好ましく、4(mg/m)以下であることがさらに好ましく、3(mg/m)以下であることがとりわけ好ましい。
グラスライニング層GLを上記のような低アルカリグラスライニング層とするには、当該グラスライニング層GLをアルカリ金属イオンの含有量が少ないガラス組成物で構成すればよい。しかしながら、ナトリウムは、グラスライニング層GLの線膨張係数を調整するのに有用な成分である。即ち、線膨張係数を母材に近付けるという意味では、少なくとも下引きガラス層GLLにはある程度アルカリ金属イオンを含有させることが望ましい。そこで、本実施形態においては、上引きガラス層GLUと下引きガラス層GLLとで用いるガラス組成物を異ならせ、上引きガラス層GLUを構成するガラス組成物(以下「上引き用ガラス組成物」ともいう)を下引きガラス層GLLを構成するガラス組成物(以下「下引き用ガラス組成物」ともいう)に対して相対的にアルカリ金属イオンの含有量を低くするようにしてもよい。
前記下引き用ガラス組成物としては、例えば、58モル%~70モル%のSiO、3モル%~8モル%のAl、13モル%~17モル%のB、12モル%~18モル%のNaO、2モル%~7モル%のKO、1モル%~7モル%のCaFを必須成分として含み、さらに、任意成分として0モル%~3モル%のCaO、0モル%~0.5モル%のCoO、0モル%~0.7モル%のMnO、0モル%~0.8モル%のNiOを含む物が用いられ得る。
前記上引き用ガラス組成物としては、例えば、65モル%~75モル%のSiO、2モル%~8モル%のZrO、10モル%~22モル%のRO(ただし、「R」はLi、K、Csを示す)、及び、2モル%~12モル%のR’O(ただし、R’はMg、Ca、Sr、Baを示す)を含み、Naを実質的に含んでいないものが挙げられる。該上引き用ガラス組成物は、例えば、TiO、Al、La、B及びZnOからなる群から選ばれる1種以上をさらに含有してもよい。より具体的には、上引き用ガラス組成物は、TiOの含有量が0.1モル%~4モル%、Alの含有量が0.1モル%~4モル%、Laの含有量が0.1モル%~4モル%、Bの含有量が0.1モル%~4モル%、ZnOの含有量が0.1モル%~4モル%の範囲内で含まれ、且つ、これらの合計含有量が5モル%以下となるように含まれていてもよい。
グラスライニング層GL全体でのアルカリ金属イオンの含有量を少なくするという意味では、前記下引きガラス層GLLの厚さを上引きガラス層GLUよりも薄くしてもよい。前記下引きガラス層GLLの厚さは、例えば、上引きガラス層GLUの厚さの2/3以下であってもよく、1/2以下であってもよい。前記下引きガラス層GLLの厚さは、例えば、上引きガラス層GLUの厚さの1/10以上とすることができる。
本実施形態でのグラスライニング層GLの全体厚さ(下引きガラス層GLLの厚さと上引きガラス層GLUの厚さとの合計厚さ)は、例えば、0.5mm以上5mm以下とされる。
本実施形態におけるグラスライニング層GLの各層の厚さやフッ素樹脂層のFLの各層の厚さについては、数か所(例えば、10箇所)での求めた厚さを平均して算出することができる。
本実施形態においては、上引き用ガラス組成物としてナトリウムを含有するものを採用し、例えば、前記プライマーコーティングPLを施す前にグラスライニング層GLの表面に酸性溶液を接触させて層中のアルカリ金属イオンを抽出したり、アルカリ金属イオンを取り込み可能な液を表面に接触させて電気泳動によりアルカリ金属イオンを抽出するような処置を施して低アルカリ化を図ってもよい。このような方法であっても、グラスライニング層GLが低アルカリグラスライニング層とされることで前記フッ素樹脂層FLとの良好な接着性が長期持続的に発揮され得る。
第1フッ素樹脂層FL1や第2フッ素樹脂層FL2は、それぞれを構成するフッ素樹脂が共通していてもよく異なっていてもよい。第1フッ素樹脂層FL1と第2フッ素樹脂層FL2とは、単独のフッ素樹脂で構成されても、2種類以上のフッ素樹脂を含む混合樹脂で構成されてもよい。第1フッ素樹脂層FL1や第2フッ素樹脂層FL2は、フッ素樹脂以外の樹脂を少量含んでもよいが、そのような樹脂の含有量は、例えば、各層における全ての樹脂の合計含有量を100質量%とした際に5質量%未満とされる。また、第1フッ素樹脂層FL1や第2フッ素樹脂層FL2は、無機フィラーなどの無機物を含んでもよい。第1フッ素樹脂層FL1や第2フッ素樹脂層FL2での無機物の含有量は、例えば、それぞれ40質量%以下とされる。該無機物の含有量は、30質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよい。該無機物の含有量は、10質量%以下であってもよく、い5質量%以下であってもよい。
第1フッ素樹脂層FL1や第2フッ素樹脂層FL2に含有させるフッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)などが挙げられる。
第1フッ素樹脂層FL1や第2フッ素樹脂層FL2を、例えば、ともにテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)で構成する場合、フッ素樹脂の種類としては同じPFAであってもそれぞれが質量平均分子量の異なるPFAで構成されたり、それぞれがテトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテとのモル比(質量比)の異なるPFAで構成されてもよい。
本実施形態の第1フッ素樹脂層FL1と第2フッ素樹脂層FL2とは、種類の異なるフッ素樹脂で構成されることでそれぞれに個別の機能を持たせる上で有利となる。前記フッ素樹脂層FLは、ピンホールなどの問題を防止する上で、第1フッ素樹脂層FL1と第2フッ素樹脂層FL2との内の少なくとも一方には低融点のフッ素樹脂が含まれていることが好ましい。第1フッ素樹脂層FL1に含まれるフッ素樹脂を第1のフッ素樹脂とし、第2フッ素樹脂層FL2に含まれるフッ素樹脂を第2のフッ素樹脂とした場合、第1のフッ素樹脂と第2のフッ素樹脂との何れかが低融点のフッ素樹脂であることが好ましい。第1フッ素樹脂層FL1に含まれるフッ素樹脂は、実質的に第1のフッ素樹脂のみで構成され得る。第2フッ素樹脂層FL2に含まれるフッ素樹脂も実質的に第2のフッ素樹脂のみで構成され得る。尚、第1のフッ素樹脂と第2のフッ素樹脂とがそれぞれの層に含まれるフッ素樹脂に占める割合は、例えば、95質量%以上であってもよい。該割合は、例えば、90質量%以上とされてもよい。第1フッ素樹脂層FL1と第2フッ素樹脂層FL2とは、フッ素樹脂以外の樹脂を含んでもよいが、フッ素樹脂以外の樹脂がフッ素樹脂との合計量に占める割合は、例えば、20質量%以下とされ得る。該割合は、15質量%以下であってもよく、10質量%以下であってもよい。該割合は、5質量%以下であってもよく、2質量%以下であってもよい。
前記無機フィラーは、第1フッ素樹脂層FL1や第2フッ素樹脂層FL2での強度や耐摩耗性の改善などに利用され得る。また、上記のように低融点のフッ素樹脂を利用する場合は、その溶融粘度を向上する意味で、増粘効果に優れた無機フィラーを用いてもよい。該無機フィラーとしては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、炭酸カルシウムなどが挙げられる。ガラスフレーク、グラファイト、タルク、雲母、ベントナイトなどの板状構造を有する無機物粒子、炭化ケイ素ウィスカーなどの針状構造を有する無機粒子、ヒュームドシリカなどのナノフィラー(レーザー回折散乱法で求められる体積基準での中位径(D50)が1μm未満のフィラー)などの比表面積の大きな無機フィラーについては、高い増粘効果を期待できる。尚、板状構造を有する無機物粒子については、ガスバリア性の効果も期待できる。増粘剤として利用可能なフィラーは、無機フィラーでなくても有機フィラーであってもよい。該有機フィラーとしては、例えば、PTFEやPFAのファインパウダー(D50:100~800μm)などが利用可能である。
前記第1のフッ素樹脂と、前記第2のフッ素樹脂との融点の差が過度に開いているとフッ素樹脂層FLの形成に特別な手法を要することにもなりかねないため、これらの融点の差は120℃以内であることが好ましい。前記第1のフッ素樹脂と、前記第2のフッ素樹脂との融点の差は、100℃以内であってもよく、80℃以内であってもよい。フッ素樹脂の融点は、示差走査熱量計(DSC)で測定でき、例えば、試料量を約5mgとし、リファレンスとしてアルミナを採用し、昇温速度を10℃/minとした測定により求めることができる。
第1フッ素樹脂層FL1と第2フッ素樹脂層FL2との内の少なくとも一方には、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)か、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)かの何れかが含まれていることが好ましい。即ち、前記第1のフッ素樹脂と、前記第2のフッ素樹脂との何れかは、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)か、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)かであることが好ましい。
前記第1のフッ素樹脂と、前記第2のフッ素樹脂とでは、第1のフッ素樹脂の方が第2のフッ素樹脂よりも低融点であることが好ましい。即ち、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)か、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)かの何れかは、第1フッ素樹脂層FL1に含有させることが好ましい。
PCTFEやFEPは、融点が比較的低いことで良好な流動性を示す温度での焼成が容易であり、ピンホールなどの欠陥ができることを防ぎ易い。また、PCTFEは、ガスバリア性にも優れる。その理由は定かではないが、PCTFEでは分子構造中に嵩高い塩素原子を有していながらPTFEと同程度の密度を有することから分子どうしが引き付け合う凝集性に優れているためであると考えられる。そのため、第1のフッ素樹脂としてこのような樹脂を採用することで第1フッ素樹脂層FL1をボイドなどの欠陥のない緻密な層構造とすることができる。そのことで、槽内側から前記プライマーコーティングPLの側に水や水蒸気が透過することを抑制できる。本実施形態においては、グラスライニング層GLからのアルカリ金属イオンの溶出が抑制されていることでプライマーコーティングPLとグラスライニング層GLとの界面にpHの高いアルカリ水が形成されることが抑制されているが、第1フッ素樹脂層FL1に高いガス(水蒸気)バリア性や水バリア性が備えられることで上記のような機能がより顕著に発揮され得る。
フッ素樹脂層FLに高い耐熱性を発揮させる観点から、前記第2のフッ素樹脂は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)か、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)かの何れかであることが好ましい。
第2フッ素樹脂層FL2で用いられるフッ素樹脂よりも低融点なPCTFEやFEPのを第1フッ素樹脂層FL1に含有させる場合、第1フッ素樹脂層FL1における無機フィラー(増粘剤)の含有量を第2フッ素樹脂層FL2よりも多く(例えば、1.2倍~3倍)して、第1フッ素樹脂層FL1と第2フッ素樹脂層FL2との溶融粘度の値が接近するように調整することでフッ素樹脂層FLが焼成法などによって形成し易くなり得る。
前記第1フッ素樹脂層FL1と第2フッ素樹脂層FL2とは、前記グラスライニング層の前記表面から前記フッ素樹脂層の表面までの厚さ(平均厚さ)が0.3mm以上3mm以下となるように形成され得る。前記第1フッ素樹脂層FL1は、第2フッ素樹脂層FL2よりも厚さが薄くてもよい。第1フッ素樹脂層FL1は、例えば、第2フッ素樹脂層FL2の厚さの2/3以下であってもよく、1/2以下であってもよい。前記第1フッ素樹脂層FL1の厚さは、例えば、第2フッ素樹脂層FL2の厚さの1/10以上とすることができる。
前記第1フッ素樹脂層FL1と第2フッ素樹脂層FL2とは、プライマーコーティングPLの施されたグラスライニング層GLに樹脂粉末を粉体塗装により堆積させた後に焼成する方法を採用して形成させることができる。また、前記第1フッ素樹脂層FL1と第2フッ素樹脂層FL2とは、樹脂粉末を液状の分散媒に分散させた分散液を吹き付けた後に焼成する方法によっても形成可能である。粉体塗装では、分散媒などの余分な成分の残留を回避し易い。分散液吹付法では、分散媒が揮発する過程で樹脂粒子同士が接近して凝集し易いため、樹脂粒子間の空隙を減少させることができてボイドの形成回避が図られ得る。前記第1フッ素樹脂層FL1と第2フッ素樹脂層FL2とは、何れか一方を粉体塗装で形成させ、他方を分散液吹付法で形成してもよい。前記第1フッ素樹脂層FL1と第2フッ素樹脂層FL2とは、一度に焼成を行って形成してもよく、第1フッ素樹脂層FL1を焼成した後に第2フッ素樹脂層FL2の粉体塗装と焼成とを行って形成してもよい。前記第1フッ素樹脂層FL1と第2フッ素樹脂層FL2とは、予め2層構造のフッ素樹脂フィルムを作製した上で、このフッ素樹脂フィルムをプライマーコーティングPLの施されたグラスライニング層GLに貼り合せて熱融着させるようにして形成してもよい。
本実施形態においては、フッ素樹脂層FLを設けるグラスライニング製品として、槽本体11を例示しているが、蓋体12、攪拌翼21、バッフル30などにも槽本体11と同様に低アルカリグラスライニング層、プライマーコーティング、及び、フッ素樹脂層を設けてもよい。蓋体12、攪拌翼21、バッフル30などにも槽本体11と同様の構成を備えさせる場合、それぞれの間で各層の形成厚さや層数、形成材料が共通している必要はなく、それらが異なっていてもよい。
上記の例示は、あくまで本発明の一例であり、本発明は、上記のような収容装置の構成部材とは別のグラスライニング製品でもあり得る。即ち、本発明は、上記例示に何等限定されるものではなく、その技術的意義が著しく損なわれることがない範囲において各種変更が可能である。
1:収容装置、10:収容槽、11:槽本体、11a:内面、11c:空間部、12:蓋体、13:開閉弁、20:攪拌装置、21:攪拌翼、21a:回転軸、21b:攪拌羽根、30:バッフル、111:開口部、112:内壁、113:外壁、114:排出口、131:弁体、132:弁座、BL:基体層、FL:フッ素樹脂層、FL1:第1フッ素樹脂層、FL2:第2フッ素樹脂層、GL:グラスライニング層、GLL:下引きガラス層、GLU:上引きガラス層、PL:プライマーコーティング

Claims (5)

  1. 母材と、母材表面に積層されたグラスライニング層と、該グラスライニング層の表面に施されたプライマーコーティングと、該プライマーコーティングを介して前記グラスライニング層に積層されたフッ素樹脂層とを備え、
    前記グラスライニング層は、50℃の温度条件下で表面に純水を120時間接触させ、且つ、前記純水が接触する面積(S:cm)に対する前記純水の量(V:mL)の割合が5倍となる条件(V/S=5)で前記表面に前記純水を接触させた際に、単位面積当たりのアルカリ金属イオンの溶出量が12(mg/m)以下となる低アルカリグラスライニング層である、グラスライニング製品。
  2. 前記フッ素樹脂層には、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)か、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)かの何れかが含まれている請求項1記載のグラスライニング製品。
  3. 前記フッ素樹脂層が積層構造を有し、
    前記フッ素樹脂層には、前記プライマーコーティングに接する第1層と、該第1層に前記プライマーコーティングとは逆側から接する第2層とが含まれている請求項1又は2記載のグラスライニング製品。
  4. 前記第1層には第1のフッ素樹脂が含まれ、
    前記第2層には第2のフッ素樹脂が含まれており、
    前記第1のフッ素樹脂と、前記第2のフッ素樹脂との融点の差が120℃以内である請求項3記載のグラスライニング製品。
  5. 前記グラスライニング層の前記表面から前記フッ素樹脂層の表面までの平均厚さが0.3mm以上3mm以下である請求項1乃至4の何れか1項に記載のグラスライニング製品。
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