JP2022163872A - 成形構造体および成形構造体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本明細書に開示される技術は、成形構造体および成形構造体の製造方法に関する。
従来、成形構造体として、板状体にその板面から突出する突出部を設けるために、板状体に突出部となる樹脂部材を取り付けたものが知られている(下記特許文献1)。特許文献1には、車両のアッパーボード(板状体)の裏面に、クリップを固定するためのブラケット(樹脂部材、突出部)を取り付けた構成のものが記載されている。
上記構成のものでは、板状体と樹脂部材とをリベット止めや溶着などにより一体化させる作業が必要となり、作業工数が増えるという問題点がある。また、材料費や取付加工費がかかるため、製造コストが高くなる。
そこで、板状体をプレス成形することにより、板状体に突出部(例えばクリップ座)を一体に形成することが考えられる。
しかし、板状体をプレス成形した場合には、形成された突出部の裏面に突出部に沿った形状の凹状の穴部が形成されることになる。つまり、突出部の反対側の面が意匠面とされる場合であって、意匠面に表皮材を貼付した場合に、表皮材のうち穴部が形成された部分が周囲から窪んで、意匠性が損なわれるという問題がある。
本明細書で開示される技術は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、成形構造体の製造に係る作業工数および製造コストを減らすとともに、意匠性に優れる成形構造体およびその製造方法を提供することを目的とする。
本明細書に開示される技術は、繊維および熱可塑性樹脂を含み、板状の本体部と、前記本体部の板面から突出する突出部と、を備える成形構造体であって、前記本体部は、穴部を備え、前記突出部は、前記本体部と一体で連続する板材からなり、前記穴部の周りにおいて前記本体部から立ち上がる少なくとも2つの脚部を備え、前記穴部は、前記少なくとも2つの脚部の間において、前記本体部と連続する板材からなる塞ぎ部によって少なくとも一部が塞がれている。
上記構成によれば、突出部が本体部と同材料にて一体に形成されるから、従来のように、別体とされた部材を本体部に取り付ける作業が不要となり、成形構造体の製造に係る作業工数および製造コストを減らすことができる。また、突出部を本体部と同材料にて一体に形成する場合、プレス成形により製造する方法が考えられるが、プレス成形を行った場合、本体部のうち突出部の内側(少なくとも2つの脚部の間)に穴部が形成される。しかし、上述したように、穴部の少なくとも一部は、塞ぎ部により塞がれた状態とされている。したがって、本体部のうち突出部が設けられた面の反対面に表皮材を貼付する場合、従来、穴部により表皮材に窪みができ易かった部分に窪みができ難くなり、成形構造体の意匠性が向上する。
前記本体部と前記塞ぎ部との境界は、その周辺領域より板厚が薄く形成された薄肉部とされていてもよい。
また、当該成形構造体は乗物の室内意匠面を構成する乗物用部材であって、前記突出部は前記本体部の室内の反対側に配されるとともに、前記本体部は室内側に表皮材を備えており、前記塞ぎ部は前記表皮材に固定されていてもよい。
このような構成により、塞ぎ部が穴部を塞いだ状態が安定的に保持可能である。つまり、表皮材側の意匠性が安定的に保たれる。
また、本明細書に開示される他の技術は、繊維および熱可塑性樹脂を含むマットをプレス型によって熱プレスしてプレボードを成形するプレボード成形工程と、上型の型面と下型の型面とにより前記プレボードをプレスして、板状の本体部と、前記本体部の板面から立ち上がって角筒状に連なる複数の立壁と、当該複数の立壁の突出側の端部を繋ぐ底壁とを有する中空状の中間突出部と、を備え、前記本体部のうち前記複数の立壁の内側が当該本体部を貫通する穴部とされた中間成形構造体を成形するプレス成形工程と、角筒状に連なった前記複数の立壁のうち、少なくとも2つの立壁以外の前記立壁に、当該立壁と前記本体部との境界部から連なる切り込みを入れて、前記境界部を回動軸として回動可能な切り出し片を切り出すカット工程と、前記切り出し片を前記穴部の内側に向けて前記本体部に沿う方向に倒すことで、当該切り出し片により前記穴部の少なくとも一部を塞ぐ塞ぎ工程と、を順に実行する成形構造体の製造方法である。
上記製造方法によれば、本体部から突出した部分が本体部と同材料にて一体に形成されるから、従来のように、別体とされた部材を本体部に取り付ける作業が不要となり、成形構造体の製造に係る作業工数を減らすことができる。また、上記製造方法によれば、本体部のうち中間突出部(角筒状に連なった複数の立壁)の内側に穴部が形成されるが、穴部は切り出し片により塞がれる構成とされている。したがって、本体部のうち突出部が設けられた面の反対面に表皮材を貼付する場合、従来、窪みができ易かった穴部が形成された部分で表皮材に窪みができ難くなり、意匠性が向上する。。
前記プレス成形工程において、前記境界部のうち前記切り出し片の前記回動軸となる位置に、その周囲領域より板厚が薄い薄肉部を形成してもよい。
上記製造方法によれば、境界部を回動軸として、切り出し片を穴部側に倒す作業が容易になる。
また、前記本体部のうち前記立壁が立ち上がる面の反対面に、当該反対面を被覆する表皮材が設けられ、前記切り出し片を前記表皮材に貼り付ける貼付工程を含んでもよい。
上記製造方法により、切り出し片が穴部を安定的に塞いだ状態を保つことができる。
本明細書に開示される技術によれば、成形構造体の製造に係る作業工数および製造コストを減らすことが可能であり、意匠性に優れる成形構造体およびその製造方法を提供することができる。
一実施形態を図1から図10によって説明する。本実施形態では、成形構造体として、乗物用部材である車両用のシートバックボード10を例示する。シートバックボード10は、車両のシートを構成するものであって、図1に示すように、ボード本体11(本体部の一例)と、クリップ座20(突出部の一例)と、表皮材16とを備える。シートバックボード10は、クリップ座20に取り付けられたクリップ(図示せず)を介して、車両のシートが備えるシートフレーム(図示せず)に取り付けられる。
なお、以下の説明では、図1の上側をシートの内側とし、下側を車室内側(意匠面側)とする。また、便宜上、クリップ挿通孔22および挿通溝23の図示は省略する場合がある(図8等)。
ボード本体11は板状をなし、繊維と熱可塑性樹脂とを含んで構成されている。詳細には、ボード本体11は、交絡した繊維間に、熱可塑性樹脂が比較的低密度の状態で広がった構成とされている。従って、ボード本体11は、所定の剛性を保ちつつ、軽量な部材となっている。
上述した繊維としては、木材等を解織して得た木質繊維、ケナフ等の靭皮植物繊維、ガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維、合成樹脂繊維等を採用することができる。また熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン、ポリエチレン等)、ポリエステル系樹脂(ポリ乳酸、ポリカプロラクトン等の脂肪族ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル樹脂)等を例示することができる。
クリップ座20は、ボード本体11と同材料にて、ボード本体11と連続して一体に形成されている。図1に示すように、クリップ座20は、ボード本体11の板面と平行に配され、クリップを取り付けるための板状の取付座21と、取付座21からボード本体11に向けて延びる2つの脚部25と、を備えて構成されている。
取付座21は矩形の板状をなし、その中央に、クリップの軸部を挿通させるクリップ挿通孔22が形成されている。取付座21には、その一縁部からクリップ挿通孔22まで連なる挿通溝23が形成されており、クリップの軸部は、挿通溝23を通してクリップ挿通孔22に挿通可能とされている。
2つの脚部25は、取付座21のうち挿通溝23が開口する一縁部と隣り合って配置され、互いに対向する2つの縁部から、ボード本体11に向けて延びる板状とされている。つまりクリップ座20は、ボード本体11から門型に立ち上がった形状とされている。2つの脚部25は、ボード本体11に対し、取付座21側からボード本体11側に向けて互いに離れる傾斜状に配されている。また各脚部25は、取付座21に連なる端部(辺)の寸法が短く、ボード本体11に連なる端部(辺)の寸法が長い台形の板状とされている。
ボード本体11のうち、2つの脚部25の間には、ボード本体11の板面を貫通する穴部12が形成されている。この穴部12は、後述するように、ボード本体11の基となるプレボード10Pの一部を押し出すことで形成されたものである。なお、脚部25は、プレボード10Pの一部を押し出すことにより穴部12の周りに立ち上がるように形成された部分の一部である。
穴部12は、2つの脚部25のボード本体11からの立ち上がり部分(基部)により構成される2つの第1縁部12Aと、2つの第1縁部12Aの両端部同士を連結する2つの第2縁部12Bとによって囲まれた矩形をなしている。
そして、穴部12の2つの第2縁部12Bからは、それぞれ、ボード本体11と一体に連なる塞ぎ部15が穴部12の内側に向けて延びており、穴部12の一部を塞いでいる。塞ぎ部15は、後述するように、プレボード10Pを押し出すことにより穴部12の周りに立ち上がるように形成された部分の一部を切り出し、倒した状態としたものである。
塞ぎ部15は、第2縁部12B側を長尺側の底辺とし、第2縁部12Bと対向する先端側を短尺側の底辺とする台形の板状をなしている。2つの塞ぎ部15は、それらの板面がボード本体11の板面に沿う方向に配されており、それらの先端(短尺側の底辺)同士がわずかに離れて配される寸法に設定されている(図8参照)。
これら2つの塞ぎ部15は、それらの室内側の面(図1の下面)が、ボード本体11の室内側の面(室内面11A)に貼付される表皮材16に接着剤等で貼付されることにより、穴部12の一部を塞いだ状態で固定されている。
また、ボード本体11と塞ぎ部15との境界部Bは、それらの周辺領域より板厚が薄く形成された薄肉部26とされている(図9参照)。換言すると、薄肉部26は、第2縁部12Bと重畳する位置に設けられている。
次にシートバックボード10の製造方法の一例について説明する。本実施形態のシートバックボード10の製造方法は、プレボード10Pを成形するプレボード成形工程と、プレボード10Pを上型41および下型51によって所定の形状にプレスするプレス成形工程と、所定の形状にプレス成形されたシートバックボード中間体10Mの(中間成形構造体の一例)所定位置をカットするカット工程と、カット工程により切り出された切り出し片15Mを倒して穴部12を塞ぐ塞ぎ工程と、穴部12を塞いだ部分(切り出し片15M、塞ぎ部15)を表皮材16に貼付する貼付工程と、が順に実行されるものである。
まず、図3を参照して、プレス成形工程を実行するための成形型40について説明する。成形型40は、プレボード10Pを上下方向からプレスし、シートバックボード10の基となる後述するシートバックボード中間体10Mを形成するための一対の型41,51を有している。一対の型41,51は、上方に配され、プレボード10Pを室内面11Aとなる面側(図3の上面側)からプレスする上型41と、上型41に対向するように下方に配され、プレボード10Pをシートの内面11Bとなる面側(図3の下面側)からプレスする下型51と、によって構成されている。
上型41は、水平方向に延びる上側基部42と、上側基部42から下方に向けて突出する型側突出部43とを備えて構成されている。型側突出部43は、上側基部42から先端側(図3の下方)向けて先細りとなる四角柱状とされている。つまり型側突出部43の側面は、上側基部42から先端側にかけて当該型側突出部43の中央側に向けて傾く上側傾斜部43Aとされている。また、型側突出部43の上側基部42からの4つの立ち上がり部分(基部)のうち、対向する2つの立ち上がり部分には、外側に向けて断面扇形に突出するリブ44が設けられている。この上型41は、図示しない駆動装置(例えば、電動モータ、エアシリンダ、油圧シリンダ等)によって、上下方向へ移動が可能な可動型とされる。
一方、下型51は、その型面(上面)51Aが全体的には上型41の型面41Aに沿う形状とされている。具体的には、下型51は、水平方向に延びる下側基部52と、上型41の型側突出部43に対向する位置において、下側基部52から下方に向けて窪む窪み部53とを有して構成されている。窪み部53の内側面は、当該窪み部53の底部から下側基部52に向けて(上方に向けて)広がる下側傾斜部53Aとされている。下型51の型面(上面)51Aは、上型41の型面(下面)41Aとの間に所定の間隔が設けられるように設定されている(図4参照)。上型41の型面41Aと下型51の型面51Aとの間に形成される空間を、以下、ボード本体成形空間S1とする。
次にシートバックボード10の製造方法の一例について説明する。
<プレボード成形工程>
プレボード成形工程では、図2に示すように、繊維と熱可塑性樹脂とからなる繊維マット10Fを、一対の平坦なプレス型30,31によって加熱プレスする。これにより、繊維マット10Fが圧縮されると共に、繊維マット10Fに含まれる熱可塑性樹脂が溶融することで互いの接触面において混ざり合う。その後、繊維マット10Fに含まれる熱可塑性樹脂が冷却固化することで、プレボード10Pが成形される。
プレボード成形工程では、図2に示すように、繊維と熱可塑性樹脂とからなる繊維マット10Fを、一対の平坦なプレス型30,31によって加熱プレスする。これにより、繊維マット10Fが圧縮されると共に、繊維マット10Fに含まれる熱可塑性樹脂が溶融することで互いの接触面において混ざり合う。その後、繊維マット10Fに含まれる熱可塑性樹脂が冷却固化することで、プレボード10Pが成形される。
<プレス成形工程>
プレス成形工程では、プレボード10Pを、上型41および下型51の間の所定位置に配置する(図3参照)。続いて、加熱装置(図示せず)によって加熱された状態の上型41および下型51を、図4に示すように型閉じすることで、プレボード10Pを上型41および下型51の各型面41A,51Aによってプレス成形する。これにより、プレボード10Pがボード本体成形空間S1の形状に倣う形状となる。
プレス成形工程では、プレボード10Pを、上型41および下型51の間の所定位置に配置する(図3参照)。続いて、加熱装置(図示せず)によって加熱された状態の上型41および下型51を、図4に示すように型閉じすることで、プレボード10Pを上型41および下型51の各型面41A,51Aによってプレス成形する。これにより、プレボード10Pがボード本体成形空間S1の形状に倣う形状となる。
この時、プレボード10Pは上型41の型側突出部43および下型51の窪み部53に沿って屈曲され、板状体11Mに箱型の箱型突出部20M(中間突出部の一例)が一体に突出形成されたシートバックボード中間体(中間成形構造体の一例)10Mが形成される(図5参照)。
箱型突出部20Mは中空状とされており、板状体11Mの板面から立ち上がって四角筒状に連なる4つの立壁25Mと、各立壁25Mの突出端(図5の下端)を繋ぐ矩形の底壁21Mとから構成されている。各立壁25Mは、底壁21M側に向かって先細りとなる台形状とされている。また、上型41のリブ44に対応する部分には、周辺領域より板厚が薄く形成された薄肉部26が形成されている。板状体11Mのうち4つの立壁25Mの内側は、板状体11Mの板面を貫通する穴部12とされている。
このようなシートバックボード中間体10Mは、含有されている熱可塑性樹脂が冷却固化した後、図5に示すように、上型41及び下型51を開いて脱型される。
<カット工程>
次に、箱型突出部20Mの4つの立壁25Mのうち、互いに対向する2つの立壁25Mに切り込み27を入れる。図6は、図5に示すシートバックボード中間体10Mの上下を反転させた図であり、図7はシートバックボード中間体10Mをシートの内側となる面(図6の上方)から視た平面図である。図6および図7に示すように、切り込み27は、台形の板状とされた4つの立壁25Mのうち、板状体11Mとの境界部Bに薄肉部26が形成された2つの立壁25Mに設けられる。なお、図6および図7において、切り込み27は破線で表すこととする。
次に、箱型突出部20Mの4つの立壁25Mのうち、互いに対向する2つの立壁25Mに切り込み27を入れる。図6は、図5に示すシートバックボード中間体10Mの上下を反転させた図であり、図7はシートバックボード中間体10Mをシートの内側となる面(図6の上方)から視た平面図である。図6および図7に示すように、切り込み27は、台形の板状とされた4つの立壁25Mのうち、板状体11Mとの境界部Bに薄肉部26が形成された2つの立壁25Mに設けられる。なお、図6および図7において、切り込み27は破線で表すこととする。
切り込み27は、2つの各立壁25Mにおいて、境界部Bから、当該境界部B以外の3つの辺に沿って連なる、略U字形状とする。なお、切り込み27は、境界部B以外の3つの辺から立壁25Mの板厚分だけ離れた位置に設けてもよく、3つの辺から立壁25Mの板厚よりもやや長い寸法分離れた位置(内側)に設けてもよい。切り込み27により、境界部B(第2縁部12B)を回動中心として回動可能な2つの切り出し片15Mが形成される。これらの切り出し片15Mは、上述したシートバックボード10の塞ぎ部15とされる部分である。なお、切り込み27が設けられなかった2つの立壁25Mは、上述したクリップ座20の脚部25とされる。
また、箱型突出部20Mの底壁21Mに切り込み27を入れることにより、上述したクリップ挿通孔22と挿通溝23とを形成して、上述したクリップ座20の取付座21を形成する。挿通溝23は、切り出し片15Mを形成する切り込み27と連結するように設ける。
<塞ぎ工程>
次に、カット工程により切り出された2つの切り出し片15Mを、境界部Bを回動軸として穴部12の内側に向けて板状体11Mの板面に沿うように倒し、切り出し片15Mによって穴部12を塞ぐことで、シートバックボード10を形成する。つまり、切り出し片15Mは、上述した塞ぎ部15とされる(図8から図10参照)。この時、図8の車室内側の面11Aから視た一部拡大平面図に示すように、切り出し片15Mの回動軸となる境界部Bには薄肉部26が形成されているから、切り出し片15Mを回動し易く、作業を容易に行うことができる。切り込み27が設けられなかった2つの立壁25Mは、取付座21をボード本体11側から支持しており、上述したクリップ座20の脚部25とされる。なお、底壁21Mに設けられた切り込み27の内側を打ち抜くことで、クリップ挿通孔22および挿通溝23を形成する。
次に、カット工程により切り出された2つの切り出し片15Mを、境界部Bを回動軸として穴部12の内側に向けて板状体11Mの板面に沿うように倒し、切り出し片15Mによって穴部12を塞ぐことで、シートバックボード10を形成する。つまり、切り出し片15Mは、上述した塞ぎ部15とされる(図8から図10参照)。この時、図8の車室内側の面11Aから視た一部拡大平面図に示すように、切り出し片15Mの回動軸となる境界部Bには薄肉部26が形成されているから、切り出し片15Mを回動し易く、作業を容易に行うことができる。切り込み27が設けられなかった2つの立壁25Mは、取付座21をボード本体11側から支持しており、上述したクリップ座20の脚部25とされる。なお、底壁21Mに設けられた切り込み27の内側を打ち抜くことで、クリップ挿通孔22および挿通溝23を形成する。
<貼付工程>
最後に、塞ぎ部15の意匠面側の面(図9および図10の下面)を、ボード本体11の室内面11A(室内意匠面)側に貼付される表皮材16に対して接着剤等で貼付することで、塞ぎ部15を、穴部12を塞いだ状態に固定する(図1参照)。このようにして、シートバックボード10が完成する。
最後に、塞ぎ部15の意匠面側の面(図9および図10の下面)を、ボード本体11の室内面11A(室内意匠面)側に貼付される表皮材16に対して接着剤等で貼付することで、塞ぎ部15を、穴部12を塞いだ状態に固定する(図1参照)。このようにして、シートバックボード10が完成する。
このように製造されたシートバックボード10のボード本体11は、取付座21と対向するように形成された穴部12が2つの塞ぎ部15により概ね塞がれた状態とされているから、表皮材16のうち穴部12が形成された箇所に窪みができ難く、見栄えの良い表皮材付きシートバックボード10とすることができる。
次に本実施形態の作用効果について説明する。本実施形態のシートバックボード10は、繊維および熱可塑性樹脂を含み、板状のボード本体11と、ボード本体11の板面から突出するクリップ座20と、を備え、ボード本体11、穴部12を備え、クリップ座20は、ボード本体11と一体で連続する板材からなり、穴部12の周りにおいてボード本体11から立ち上がる2つの脚部25を備え、穴部12は、2つの脚部25の間において、ボード本体11と連続する板材からなる塞ぎ部15によって一部が塞がれている。
上記構成によれば、クリップ座20がボード本体11と同材料にて一体に形成されるから、従来のように、別体とされた部材をボード本体に取り付ける作業が不要となり、シートバックボードの製造に係る作業工数および製造コストを減らすことができる。また、クリップ座20をボード本体11と同材料にて一体に形成する場合、プレス成形により製造する方法が考えられるが、プレス成形を行った場合、ボード本体11のうちクリップ座20の内側(2つの脚部25の間)に穴部12が形成される。しかし、上述したように、穴部12の一部は、塞ぎ部15により塞がれた状態とされている。したがって、ボード本体11のうちクリップ座20が設けられた面(シート内面11B)の反対面(室内面11A)に表皮材16を貼付する場合、従来、穴部12により表皮材16に窪みができ易かった部分に窪みができ難くなり、シートバックボード10の意匠性が向上する。
ボード本体11と塞ぎ部15との境界は、その周辺領域より板厚が薄く形成された薄肉部26とされている。
また、クリップ座20はボード本体11のシート内面11B側に配されるとともに、ボード本体11は室内側に表皮材16を備えており、塞ぎ部15は表皮材16に固定されている。
このような構成により、塞ぎ部15が穴部12を塞いだ状態が安定的に保持可能である。つまり、表皮材16側の意匠性が安定的に保たれる。
また、本実施形態のシートバックボード10の製造方法は、繊維および熱可塑性樹脂を含む繊維マット10Fをプレス型30,31によって熱プレスしてプレボード10Pを成形するプレボード成形工程と、上型41の型面41Aと下型51の型面51Aとによりプレボード10Pをプレスして、板状の板状体11Mと、板状体11Mの板面から立ち上がって角筒状に連なる複数の立壁25Mと、当該複数の立壁25Mの突出側の端部を繋ぐ底壁21Mとを有する中空状の箱型突出部20Mと、を備え、板状体11Mのうち複数の立壁25Mの内側が板状体11Mを貫通する穴部12とされたシートバックボード中間体10Mを成形するプレス成形工程と、角筒状に連なった複数の立壁25Mのうち、2つの立壁25M以外の立壁25Mに、当該立壁25Mと板状体11Mとの境界部Bから連なる切り込み27を入れて、境界部Bを回動軸として回動可能な切り出し片15Mを切り出すカット工程と、切り出し片15Mを穴部12の内側に向けてボード本体11に沿う方向に倒すことで、当該切り出し片15Mにより穴部12の一部を塞ぐ塞ぎ工程と、を順に実行する。
このような製造方法によれば、ボード本体11から突出したクリップ座20がボード本体11と同材料にて一体に形成されるから、従来のように、別体とされた部材をボード本体11に取り付ける作業が不要となり、シートバックボード10の製造に係る作業工数を減らすことができる。また、上記製造方法によれば、ボード本体11のうち箱型突出部20M(角筒状に連なった複数の立壁25M)の内側に穴部12が形成されるが、穴部12は切り出し片15Mにより塞がれる構成とされている。したがって、ボード本体11のうちクリップ座20が設けられた面(シート内面11B)の反対面(室内面11A)に表皮材16を貼付する場合、従来、窪みができ易かった穴部12が形成された部分で表皮材16に窪みができ難くなり、意匠性が向上する。。
また、プレス成形工程において、境界部Bのうち切り出し片15Mの回動軸となる位置に、その周囲領域より板厚が薄い薄肉部26を形成する。このような製造方法によれば、境界部Bを回動軸として、切り出し片15Mを穴部12側に倒す作業が容易になる。
また、ボード本体11のうち立壁25Mが立ち上がるシート内面11Bの反対面である室内面11Aに、当該室内面11Aを被覆する表皮材16が設けられ、切り出し片15Mを表皮材16に貼り付ける貼付工程を含む。
このような製造方法により、切り出し片15Mが穴部12を安定的に塞いだ状態を保つことができる。
<他の実施形態>
本明細書に開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
本明細書に開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、立壁25Mに設ける切り込み27は、図7および図8に示すように、境界部B以外の3つの辺から立壁25Mの板厚分だけ離れた位置に設ける構成を示したが、切り込みは、3つの辺から立壁25Mの板厚よりもやや長い寸法分離れた位置(内側)に設けてもよい。そのような場合には、図11に示すように、塞ぎ部115が穴部12の第2縁部12Bにおける中央部分にだけ設けられるとともに、脚部25および取付座21の側縁部に沿うリブ状の補強部28を形成することができる。
(2)上記実施形態では、2つの塞ぎ部15の先端(短尺側の底辺)同士がわずかに離れて配される構成を示したが(図8参照)、図12に示すように、2つの繋ぎ部215の先端同士が突き合わされる構成としたり、図13に示すように、二つの繋ぎ部315の先端同士が重なり合う構成としてもよい。先端同士が重なり合う構成とした場合には、重なり合った部分を接着することにより、穴部12を塞いだ状態を安定的に保持することができる。
(3)薄肉部26は省略してもよい(図11および図12参照)。
(4)上記実施形態では、成形構造体として、シートバックボード10を例示したが、本技術は、例えば車両用ドアトリム等、他の部分にも適用することが可能である。
10:シートバックボード(成形構造体、乗物用部材)、10F:繊維マット(マット)、10M:シートバックボード中間体(中間成形構造体)、10P:プレボード、11:ボード本体(本体部)、11A:室内面(室内意匠面、反対面)、12:穴部、12: 第1縁部、12B:第2縁部、15、115,215,315:塞ぎ部、15M:切り出し片、16:表皮材、20:クリップ座(突出部)、20M:箱型突出部(中間突出部)、21:取付座、21M:底壁、25:脚部、25M:立壁、26:薄肉部、27:切り込み、41:上型、41A:上型の型面、51:下型、51A:下型の型面、B:境界部
Claims (6)
- 繊維および熱可塑性樹脂を含み、板状の本体部と、前記本体部の板面から突出する突出部と、を備える成形構造体であって、
前記本体部は、穴部を備え、
前記突出部は、前記本体部と一体で連続する板材からなり、前記穴部の周りにおいて前記本体部から立ち上がる少なくとも2つの脚部を備え、
前記穴部は、前記少なくとも2つの脚部の間において、前記本体部と連続する板材からなる塞ぎ部によって少なくとも一部が塞がれている成形構造体。 - 前記本体部と前記塞ぎ部との境界は、その周辺領域より板厚が薄く形成された薄肉部とされている請求項1に記載の成形構造体。
- 当該成形構造体は乗物の室内意匠面を構成する乗物用部材であって、前記突出部は前記本体部の室内の反対側に配されるとともに、前記本体部は室内側に表皮材を備えており、前記塞ぎ部は前記表皮材に固定されている請求項1または請求項2に記載の成形構造体。
- 繊維および熱可塑性樹脂を含むマットをプレス型によって熱プレスしてプレボードを成形するプレボード成形工程と、
上型の型面と下型の型面とにより前記プレボードをプレスして、
板状の本体部と、
前記本体部の板面から立ち上がって角筒状に連なる複数の立壁と、当該複数の立壁の突出側の端部を繋ぐ底壁とを有する中空状の中間突出部と、を備え、
前記本体部のうち前記複数の立壁の内側が当該本体部を貫通する穴部とされた中間成形構造体を成形するプレス成形工程と、
角筒状に連なった前記複数の立壁のうち、少なくとも2つの立壁以外の前記立壁に、当該立壁と前記本体部との境界部から連なる切り込みを入れて、前記境界部を回動軸として回動可能な切り出し片を切り出すカット工程と、
前記切り出し片を前記穴部の内側に向けて前記本体部に沿う方向に倒すことで、当該切り出し片により前記穴部の少なくとも一部を塞ぐ塞ぎ工程と、を順に実行する成形構造体の製造方法。 - 前記プレス成形工程において、前記境界部のうち前記切り出し片の前記回動軸となる位置に、その周囲領域より板厚が薄い薄肉部を形成する請求項4に記載の成形構造体の製造方法。
- 前記本体部のうち前記立壁が立ち上がる面の反対面に、当該反対面を被覆する表皮材が設けられ、
前記切り出し片を前記表皮材に貼り付ける貼付工程を含む請求項4または請求項5に記載の成形構造体の製造方法。
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