JP2022155604A - 積層フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】酸素に対しては優れたバリア性能を有し、かつ、溶剤ガスについては優れた透過性能を有するという相反する性能を有する積層フィルムを提供する。【解決手段】離型層、基材層、ガスバリア層を含む積層フィルムであって、以下の(1)および(2)を満たすことを特徴とする積層フィルム。(1)JIS K 7126に従い、20℃、65%RH環境下で測定した酸素透過度が10cc/(m2・atm・day)以下である。(2)60℃、24時間静置後の溶剤ガス透過性評価試験において、試験前後のメチルエチルケトンガスの質量変化量が10mg/10cm2以上である。【選択図】なし

Description

本発明は、積層フィルムおよびその製造方法に関する。
ポリオレフィン樹脂は、電気特性、力学特性、化学特性、リサイクル性等に優れていることから、自動車、電機分野、包装、日用雑貨などを中心に大量に使用されている。
また、ポリオレフィン樹脂は、酸変性されたものが、水性分散体として応用されている。例えば、特許文献1には、酸変性ポリオレフィン樹脂を含む水性分散体を用いて形成された樹脂層を離型層として、様々な被着体に対して良好な離型性を有する離型フィルムが開示されている。
一方、酸素による劣化が原因して歩留まりや品質が低下しやすい被着体に使用する離型フィルムにおいては、離型性を有するとともに、十分な酸素バリア性能を有することが要望されている。
ガスバリア性能を有するフィルムとして、金属箔や無機蒸着膜などからなる無機のガスバリア層を積層したフィルムや、特許文献2に開示された、有機のガスバリア層を積層したフィルムが知られている。
また、特許文献3には、2枚のガスバリアフィルムの金属酸化物層どうしを、接着層を介して積層することによって、ガスバリア性を向上させたフィルムが開示されている。
国際公開第2009/025063号 国際公開第2002/048265号 特開2013-075413号公報
公知の無機ガスバリア層のガスバリアフィルムや、特許文献2に開示されたような有機ガスバリア層のガスバリアフィルムに離型層を積層した積層フィルムは、十分な酸素バリア性能を有している。しかしながら、被着体が離型フィルムと貼り合わせた状態で熱硬化する樹脂である場合には、残留溶剤によって、被着体の樹脂は、硬化不良となるなどの問題があった。
また、特許文献3に開示されたフィルムの金属酸化物層は、接着層から発生する揮発溶剤などのアウトガスの透過も阻止するので、発生したアウトガスの気泡によって、接着層表面は、平滑性が損なわれることがあった。そこで、特許文献3においては、接着層にゼオライトを含有させて、発生した揮発溶剤などを吸着することが必要であった。
本発明の課題は、この問題に鑑み、酸素に対しては優れたバリア性能を有し、かつ、溶剤ガスについては優れた透過性能を有するという相反する性能を有する積層フィルムを提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、離型層、基材層、ガスバリア層を含み、特定の酸素透過度と溶剤ガス透過性とを有する積層フィルムが上記課題を解決することを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明の要旨は下記のとおりである。
[1]離型層、基材層、ガスバリア層を含む積層フィルムであって、以下の(1)および(2)を満たすことを特徴とする積層フィルム。
(1)JIS K 7126に従い、20℃、65%RH環境下で測定した酸素透過度が10cc/(m・atm・day)以下である。
(2)60℃、24時間静置後の溶剤ガス透過性評価試験において、試験前後のメチルエチルケトンガスの質量変化量が10mg/10cm以上である。
[2]ガスバリア層が有機化合物を含有することを特徴とする[1]に記載の積層フィルム。
[3]ガスバリア層の厚みが50~1500nmであることを特徴とする[1]または[2]に記載の積層フィルム。
[4]少なくとも離型層/基材層/ガスバリア層の順に積層されていることを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載の積層フィルム。
[5]ガスバリア層がポリビニルアルコールを含有することを特徴とする[1]~[4]のいずれかに記載の積層フィルム。
[6]離型層が酸変性ポリオレフィン樹脂を含有することを特徴とする[1]~[5]のいずれかに記載の積層フィルム。
[7]エポキシプリプレグを離型層に貼り付けて測定したときの剥離力が0.3N/cm以下であることを特徴とする[1]~[6]のいずれかに記載の積層フィルム。
[8]上記[1]~[7]のいずれかに記載の積層フィルムを製造するための方法であって、
基材層にガスバリア層形成用液状物を塗布する工程と、
ガスバリア層形成用液状物を塗布した基材層を乾燥、延伸する工程と
を含むことを特徴とする積層フィルムの製造方法。
本発明の積層フィルムは、被着体を酸素から保護しうる十分な酸素バリア性能を有し、また、被着体から発生する溶剤系のアウトガスを透過する性能をも有しているため、被着体の酸化劣化を抑制することが可能であるとともに、アウトガスの透過を阻害することによって生じる工程不良を防ぐことも可能である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の積層フィルムは、離型層、基材層、ガスバリア層を含み、
(1)JIS K 7126に従い、20℃、65%RH環境下で測定した酸素透過度が10cc/(m・atm・day)以下であり、
(2)60℃、24時間静置後の溶剤ガス透過性評価試験において、試験前後のメチルエチルケトンガスの質量変化量が10mg/10cm以上である。
<基材層>
本発明の積層フィルムを構成する基材層としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリ乳酸(PLA)などのポリエステルフィルム、ポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミド6、ポリ-p-キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド4T、ポリアミド6T、ポリアミド9Tなどのポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、これらの複層体(例えば、ポリアミド6/MXD6ナイロン/ポリアミド6、ポリアミド6/エチレン-ビニルアルコール共重合体/ポリアミド6)や混合体などを用いることができる。また、酸素バリア性能向上の観点から、ポリビニルアルコールやエチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリルなどのガスバリア性を有する樹脂を、基材層に用いてもよい。機械的強度や寸法安定性の観点から、これらの中でもポリエステルフィルム、ポリアミドフィルムが好ましい。
基材層を構成する樹脂の固有粘度は、0.55~0.80であることが好ましく、0.60~0.75であることがより好ましい。固有粘度が上記範囲未満である樹脂は、製膜時に切断が起こり易く、安定的にフィルムを生産するのが困難であり、得られたフィルムの強度も低い。一方、固有粘度が上記範囲を超える樹脂は、フィルムの生産工程において溶融押出時に剪断発熱が大きくなり、押出機にかかる負荷が大きくなり、生産速度を犠牲にせざるを得なかったり、フィルムの厚み制御も難しくなる等、フィルムの生産性が低下する。また、得られたフィルムは、熱分解やゲル化物が増加して、表面欠点や異物、表面粗大突起が増加する。また、あまりに固有粘度の高いものは、重合時間や重合プロセスが長く、コストを押し上げる要因ともなる。
基材層を構成する樹脂の重合方法は特に限定されず、例えばポリエステルの場合であれば、エステル交換法、直接重合法等が挙げられる。エステル交換触媒としては、Mg、Mn、Zn、Ca、Li、Tiなどの酸化物、酢酸塩等の化合物が挙げられる。また、重縮合触媒としては、Sb、Ti、Geなどの酸化物、酢酸塩等の化合物が挙げられる。
重合後のポリエステルは、モノマーやオリゴマー、副生成物のアセトアルデヒド等を含有しているため、減圧もしくは不活性ガス流通下、200℃以上の温度で固相重合してもよい。
基材層は、必要に応じ、添加剤、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、ピニング剤等を含有することができる。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物等が挙げられ、熱安定剤としては、リン系化合物等が挙げられ、紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物等が挙げられる。
次に基材層の製造方法の一例を、ポリエステルフィルムを具体例として説明する。
まず、十分に乾燥されたポリエステルを、押出機に供給し、十分に可塑化され、流動性を示す温度以上で溶融し、必要に応じて選ばれたフィルターを通過させ、その後Tダイを通じてシート状に押出す。このシートを、ポリエステルのガラス転移温度(Tg)以下に温度調節した冷却ドラム上に密着させて、未延伸フィルムを得る。
得られた未延伸フィルムを一軸延伸法により一軸配向させるか、もしくは二軸延伸法により二軸配向させる。二軸延伸法としては、特に限定はされないが、逐次二軸延伸法や同時二軸延伸法を用いることができる。
一軸延伸法では、未延伸フィルムを、樹脂のTg~Tgより50℃高い温度の範囲で、長手もしくは巾方向に、2~6倍程度の延伸倍率となるよう延伸する。
同時二軸延伸法では、未延伸フィルムを、樹脂のTg~Tgより50℃高い温度の範囲で、長手および巾方向にそれぞれ2~4倍程度の延伸倍率となるよう二軸延伸する。同時二軸延伸機に導く前に、未延伸フィルムに1.2倍程度までの予備縦延伸を施しておいてもよい。
また、逐次二軸延伸法では、未延伸フィルムを、加熱ロールや赤外線等で加熱し、長手方向に延伸して縦延伸フィルムを得る。縦延伸は、2個以上のロールの周速差を利用し、樹脂のTg~Tgより40℃高い温度の範囲で、延伸倍率を2.5~4.0倍とするのが好ましい。
縦延伸フィルムを、続いて連続的に、巾方向に横延伸、熱固定、熱弛緩の処理を順次施して、二軸配向フィルムとする。横延伸の温度は、樹脂のTg~Tgより40℃高い温度で開始し、最高温度は樹脂の融点(Tm)より(100~40)℃低い温度であることが好ましい。横延伸の倍率は、最終的なフィルムの要求物性に依存し調整されるが、3.5倍以上、さらには3.8倍以上とするのが好ましく、4.0倍以上とするのがより好ましい。長手方向と巾方向に延伸後、さらに、長手方向および/または巾方向に再延伸することにより、フィルムの弾性率を高めたり寸法安定性を高めたりすることもできる。
延伸に続き、樹脂のTmより(50~10)℃低い温度で数秒間の熱固定処理と、熱固定処理と同時にフィルム巾方向に1~10%の弛緩することが好ましい。熱固定処理後、フィルムをTg以下に冷却して二軸延伸フィルムを得る。
上記製造方法によって単層のフィルムが得られるが、積層フィルムを構成する基材層は、2種以上の層を積層してなる多層フィルムであってもよい。
多層フィルムは、上記製造方法において、それぞれの層を構成する樹脂を別々に溶融して、複層ダイスを用いて押出し、固化前に積層融着させた後、二軸延伸、熱固定する方法や、2種以上の樹脂を別々に溶融、押出してそれぞれフィルム化し、未延伸状態で、または延伸後に、それらを積層融着させる方法などによって製造することができる。プロセスの簡便性から、複層ダイスを用い、固化前に積層融着させることが好ましい。
本発明の積層フィルムを構成する基材層は、単層構成であっても、上記のように多層構成(例えば、二種二層、二種三層、三種三層、四層またはそれ以上の多層等)であってもよいが、片面ごとに表面粗度を制御でき、巻取り性などのハンドリング性を向上させることができる観点から、複層構成であることが好ましい。複層構成は、二種二層、二種三層がより好ましく、二種二層がさらに好ましい。二種二層の構成とは、二種類の層形成用材料を用いて製造された二層構成のことであり、これらの二層は組成(例えば、粒子含有量)が異なっている。二種三層の構成とは、二種類の層形成用材料を用いて製造された三層構成のことであり、2つの最外層と中間層とは組成(例えば、粒子含有量)が異なっている。三種三層の構成とは、三種類の層形成用材料を用いて製造された三層構成のことであり、これらの三層は互いに組成(例えば、粒子含有量)が異なっている。
基材層は、易滑性の付与および各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を含有することも可能である。
粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されず、具体例としては、例えば、シリカ、活性炭、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等が挙げられる。さらに、基材層を構成する樹脂の製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
特に、無機粒子としてゼオライトや活性炭などの吸着性粒子を基材に含有することが好ましい。ゼオライトや活性炭などの吸着性粒子を含有することで、積層フィルムに溶剤ガス吸着性能を付与することができる。前記吸着性粒子は、溶剤ガスを選択的に吸着する目的で、疎水性であることが好ましい。また、ゼオライトや活性炭などの粒子は、易滑性付与効果も併せ持つためシリカ等の易滑性付与粒子の代替として用いることもできるため、積層フィルムのいずれの層に含有していてもよい。
粒子の形状は、特に限定されず、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれでもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。基材層は、必要に応じて2種類以上の粒子を併用してもよい。
粒子の平均粒径は、通常5μm以下であり、0.1~3μmであることが好ましい。平均粒径が5μmを超える粒子を含有するフィルムは、表面粗度が粗くなりすぎて、例えば、転写用に使用する場合、転写する成型面の表面形状に影響を与える場合がある。
粒子の含有量は、通常5質量%以下であり、0.0003~3質量%であることが好ましい。粒子の含有量が5質量%を超えるフィルムは、透明性が不十分になることがある。
粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、基材層を構成する樹脂を製造する任意の段階において添加することができる。ポリエステルを製造する工程の場合、エステル化もしくはエステル交換反応終了後、添加するのが好ましい。
基材層の厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されないが、機械的強度、ハンドリング性および生産性などの点から、通常5~300μmであり、10~150μmであることが好ましい。
<離型層>
本発明の積層フィルムは、離型層を含む。
本発明において、離型層を構成する成分としては、シリコーン系化合物、含フッ素共重合体、ポリオレフィン系樹脂、酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シアナート樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、長鎖アルキル基含有化合物、アクリル樹脂、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類、およびそれらの混合物が挙げられる。離型層を構成する成分は、離型性の観点より、ポリオレフィン系樹脂、酸変性ポリオレフィン樹脂、シリコーン系化合物、フッ素系化合物、長鎖アルキル基含有化合物、アクリル樹脂やそれらの混合物が好ましく、さらに、酸変性ポリオレフィン樹脂と架橋剤とを含有するか、または、長鎖アルキル基含有化合物とポリビニルアルコールと架橋剤とを含有することが好ましい。
(酸変性ポリオレフィン樹脂)
酸変性ポリオレフィン樹脂は、オレフィン成分を主成分とし、酸変性成分により変性された樹脂である。
酸変性ポリオレフィン樹脂を構成するオレフィン成分は、エチレン、プロピレン、ブテンから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
アクリル粘着剤との離型性の観点では、オレフィン成分は、エチレンを含むことがより好ましい。アクリル粘着剤との離型性をさらに向上させる観点で、オレフィン成分におけるエチレンの含有量は50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
また、エポキシプリプレグとの離型性の観点では、オレフィン成分は、プロピレンを含むことがより好ましい。エポキシプリプレグとの離型性をさらに向上させる観点で、オレフィン成分におけるプロピレンの含有量は、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、99質量%以上であることが特に好ましい。
酸変性ポリオレフィン樹脂を構成する酸変性成分としては、不飽和カルボン酸成分が挙げられ、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等が挙げられる。中でも、後述する樹脂の水性分散化において、樹脂を安定的に分散するために、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸が特に好ましい。これらの酸変性成分は酸変性ポリオレフィン樹脂中に2種類以上含まれていてもよい。
酸変性ポリオレフィン樹脂における酸変性成分の割合は、1~10質量%であることが好ましく、2~9質量%であることがより好ましい。酸変性成分が1質量%未満の場合は、離型層に含まれる酸変性ポリオレフィン樹脂中の極性基の割合が少なくなるため、離型層は、基材層との十分な密着性が得られない傾向にあり、離型層から離型した被着体を汚染することがある。さらに後述する樹脂の水性分散化において、樹脂を安定的に分散するのが困難になる傾向がある。一方、酸変性成分の割合が10質量%を超える場合は、極性基の割合が多くなるため、離型層と基材層との密着性が十分にはなるが、離型層と被着体との密着性も同時に高くなるため、被着体との離型性が低下する傾向がある。
また、基材層との密着性をさらに向上させる理由から、酸変性ポリオレフィン樹脂は、側鎖に酸素原子を含むエチレン性不飽和成分を含有してもよい。
側鎖に酸素原子を含むエチレン性不飽和成分としては、(メタ)アクリル酸と炭素数1~30のアルコールとのエステル化物が挙げられ、中でも入手のし易さの点から、(メタ)アクリル酸と炭素数1~20のアルコールとのエステル化物が好ましい。そのような化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらの混合物を用いてもよい。この中で、ポリエステルフィルムとの接着性の点から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチルがより好ましく、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルがさらに好ましく、アクリル酸エチルが特に好ましい。「(メタ)アクリル酸~」とは、「アクリル酸~またはメタクリル酸~」を意味する。
側鎖に酸素原子を含むエチレン性不飽和成分は、酸変性成分と同様、分子内に極性基を有している。そのため側鎖に酸素原子を含むエチレン性不飽和成分を酸変性ポリオレフィン樹脂中に含めることによって、離型層は、基材層との密着性が高くなる。しかし、側鎖に酸素原子を含むエチレン性不飽和成分量が多すぎると、オレフィン由来の樹脂の性質が失われ、離型層は、被着体との離型性が低下する可能性がある。酸変性ポリオレフィン樹脂中における、側鎖に酸素原子を含むエチレン性不飽和成分の割合は、1~40質量%であることが好ましく、2~35質量%であることがより好ましく、3~30質量%であることがさらに好ましく、6~18質量%であること特に好ましい。
なお、側鎖に酸素原子を含むエチレン性不飽和成分を含有する酸変性ポリオレフィン樹脂を用いても、基材層との密着性以外に離型層が有する離型性を損ねることがない。
酸変性ポリオレフィン樹脂には、その他のモノマーが、少量、共重合されていてもよい。その他のモノマーとして、例えば、ジエン類、(メタ)アクリロニトリル、ハロゲン化ビニル類、ハロゲン化ビニリデン類、一酸化炭素、二酸化硫黄等が挙げられる。
酸変性ポリオレフィン樹脂を構成する各成分は、酸変性ポリオレフィン樹脂中に共重合されていればよく、その形態は限定されない。共重合の状態としては、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)などが挙げられる。
酸変性ポリオレフィン樹脂の融点は80~200℃であることが好ましく、90~150℃であることがより好ましい。融点が200℃を超える場合は、基材層表面への離型層形成時に、高温処理が必要となる場合がある。一方、融点が80℃未満では、離型層は離型性が低下する。
本発明に用いることができる酸変性ポリオレフィン樹脂としては、アルケマ社製のボンダインシリーズ、三井・デュポンポリケミカル社製のニュクレルシリーズや、日本ポリエチレン社製のレクスパールシリーズ、三洋化成社製のユーメックスシリーズ、エボニック社製のベストプラストシリーズ、ダウ・ケミカル社製のプリマコールシリーズ、三井化学社製のアドマ―シリーズ、東洋紡社製のトーヨータックシリーズなどの商品が挙げられる。
(長鎖アルキル基含有化合物)
長鎖アルキル基含有化合物とは、炭素数が通常6以上、好ましくは8以上、さらに好ましくは12以上の直鎖または分岐のアルキル基を有する化合物のことである。アルキル基としては、例えば、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ラウリル基、オクタデシル基、ベヘニル基等が挙げられる。なお、アルキル基の炭素数の上限は通常30である。長鎖アルキル基含有化合物の種類としては、例えば、各種の長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物、長鎖アルキル基含有アミン化合物、長鎖アルキル基含有エーテル化合物、長鎖アルキル基含有四級アンモニウム塩等が挙げられる。耐熱性、汚染性を考慮すると高分子化合物であることが好ましい。また、効果的に離型性を得られるという観点から、長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物がより好ましい。
長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物は、反応性基を有する高分子化合物と、この反応性基と反応可能な長鎖アルキル基を有する化合物とを反応させて得ることができる。上記反応性基としては、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、酸無水物等が挙げられる。これらの反応性基を有する高分子化合物としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリエチレンアミン、反応性基含有ポリエステル樹脂、反応性基含有ポリ(メタ)アクリル樹脂等が挙げられる。これらの中でも離型性や取り扱い易さを考慮するとポリビニルアルコールが好ましい。
上記の反応性基と反応可能な長鎖アルキル基を有する化合物としては、例えば、ヘキシルイソシアネート、オクチルイソシアネート、デシルイソシアネート、ラウリルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、ベヘニルイソシアネート等の長鎖アルキル基含有イソシアネート、ヘキシルクロライド、オクチルクロライド、デシルクロライド、ラウリルクロライド、オクタデシルクロライド、ベヘニルクロライド等の長鎖アルキル基含有酸クロライド、長鎖アルキル基含有アミン、長鎖アルキル基含有アルコール等が挙げられる。これらの中でも離型性や取り扱い易さを考慮すると長鎖アルキル基含有イソシアネートが好ましく、オクタデシルイソシアネートが特に好ましい。
また、長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物は、長鎖アルキル(メタ)アクリレートの重合や、長鎖アルキル(メタ)アクリレートと他のビニル基含有モノマーとの共重合によって得ることもできる。長鎖アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(ポリビニルアルコール)
本発明において、離型層は、離型性向上の観点でポリビニルアルコールを含有していることが好ましい。ポリビニルアルコールは、特に限定されないが、ビニルエステルの重合体を完全または部分ケン化したものなどが挙げられる。ポリビニルアルコールは、離型層中に含有することによって、離型層と基材層との密着性を向上させ、また離型層と被着体との離型性を向上させる効果を奏する。本発明におけるポリビニルアルコールは、後述のように液状物として使用する場合のために、水溶性を有していることが好ましい。
ポリビニルアルコールは、離型層の表面平滑性、高温域での離型性の観点で、ケン化度が99%以下であることが好ましく、98%以下であることがより好ましく、95%以下であることがさらに好ましい。
ポリビニルアルコールの含有量は、離型層の表面粗さの平滑性や離型層と基材層との密着性向上や離型層と被着体との離型性を向上させる観点から、上記樹脂100質量部に対して10~1000質量部であることが好ましく、100~1000質量部であることがより好ましく、210~800質量部であることがさらに好ましく、300~600質量部であることが特に好ましい。
本発明においては、ポリビニルアルコールとして市販のものを使用することができ、例えば、日本酢ビ・ポバール社製の「J-ポバール」の「JP-15」や「JT-05」、「JL-05E」、「JM-33」、「JM-17」、「JF-05」、「JF-10」、クラレ社製の「クラレポバール」の「PVA-CST」、「PVA-624」、「PVA-203」、「PVA-220」、「PVA-405」などを使用することができる。
(架橋剤)
本発明において、離型層は、上記樹脂やポリビニルアルコールとともに架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤を含むことにより、離型層は、構成成分が架橋して離型性が向上し、離型層の凝集力が向上し、被着体に移行しにくくなり、耐水性が向上することができる。
架橋剤の含有量は、上記樹脂100質量部に対して1~20質量部であることが好ましく、2~15質量部であることがより好ましく、2~10質量部であることがさらに好ましい。架橋剤の含有量が1質量部未満であると、離型層は、凝集力が弱くなり、基材層との密着性に劣り、被着体に移行しやすくなる傾向にある。一方、架橋剤の含有量が20質量部を超えると、離型層は、被着体との間で反応し、離型性に乏しくなったり、離型層を形成するための液状物は、増粘し、安定性が低下することがある。
架橋剤としては、カルボキシル基と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物等を用いることができ、多官能エポキシ化合物;多官能イソシアネート化合物;多官能アジリジン化合物;カルボジイミド基含有化合物;オキサゾリン基含有化合物;フェノール樹脂;および尿素化合物、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等のアミノ樹脂等が挙げられる。これらのうちの1種類を使用しても2種類以上を併用してもよい。このうち、多官能イソシアネート化合物、メラミン化合物、尿素化合物、多官能エポキシ化合物、カルボジイミド基含有化合物、オキサゾリン基含有化合物等が好ましく、カルボジイミド基含有化合物、オキサゾリン基含有化合物がより好ましく、オキサゾリン基含有化合物がさらに好ましい。オキサゾリン基含有化合物を用いることにより、被着体との離型性、基材層との密着性に優れた離型層を得ることが可能となる。また、これらの架橋剤は組み合わせて使用してもよい。
多官能エポキシ化合物としては、具体的には、ポリエポキシ化合物、ジエポキシ化合物等を用いることができる。ポリエポキシ化合物としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアネート、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルが使用可能である。ジエポキシ化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテルが使用可能である。
多官能イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4′-ジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート、1,6-ジイソシアネートヘキサン、トリレンジイソシアネートとヘキサントリオールの付加物、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、ポリオール変性ジフェニルメタン-4,4′-ジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタン-4,4′-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、3,3′-ビトリレン-4,4′-ジイソシアネート、3,3′-ジメチルジフェニルメタン-4,4′-ジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート等が使用可能である。これらのイソシアネート基を、重亜硫酸塩類およびスルホン酸基を含有したフェノール類、アルコール類、ラクタム類、オキシム類および活性メチレン化合物類等でブロックしたブロックイソシアネート化合物を用いてもよい。
多官能イソシアネート化合物の市販品としては、例えば、BASF社製「バソナートHW-100」などが挙げられる。
多官能アジリジン化合物としては、例えば、N,N′-ヘキサメチレン-1,6-ビス-(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート等が使用可能である。
カルボジイミド基含有化合物は、分子中に1つ以上のカルボジイミド基を有しているものであれば特に限定されない。カルボジイミド化合物は、1つのカルボジイミド部分において、酸変性ポリオレフィン樹脂の酸変性部分における2つのカルボキシル基とエステルを形成し、架橋を達成する。例えば、p-フェニレン-ビス(2,6-キシリルカルボジイミド)、テトラメチレン-ビス(t-ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサン-1,4-ビス(メチレン-t-ブチルカルボジイミド)等のカルボジイミド基を有する化合物や、カルボジイミド基を有する重合体であるポリカルボジイミド等が使用可能である。これらの1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、取り扱いやすさから、ポリカルボジイミドが好ましい。
ポリカルボジイミドの市販品としては、日清紡社製のカルボジライトシリーズが挙げられ、具体的には、水溶性タイプの「SV-02」、「V-02」、「V-02-L2」、「V-04」;エマルションタイプの「E-01」、「E-02」;有機溶液タイプの「V-01」、「V-03」、「V-07」、「V-09」;無溶剤タイプの「V-05」が挙げられる。
オキサゾリン基含有化合物は、分子中にオキサゾリン基を2つ以上有しているものであれば、特に限定されない。オキサゾリン化合物は、2つのオキサゾリン部分のそれぞれにおいて、酸変性ポリオレフィン樹脂の酸変性部分における1つのカルボキシル基とアミドエステルを形成し、架橋を達成する。このような重合体は、付加重合性オキサゾリン基含有モノマー単独もしくは他のモノマーとの重合によって作成できる。付加重合性オキサゾリン基含有モノマーは、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリン等を挙げることができる。付加重合性オキサゾリン基含有モノマーは、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらの中でも2-イソプロペニル-2-オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。他のモノマーは、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば制限なく、例えばアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基)等の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸およびその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等の不飽和カルボン酸類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N-アルキルアクリルアミド、N-アルキルメタクリルアミド、N、N-ジアルキルアクリルアミド、N、N-ジアルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα-オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等の含ハロゲンα、β-不飽和脂肪族モノマー類;スチレン、α-メチルスチレン等のα、β-不飽和芳香族モノマー等を挙げることができる。他のモノマーは、これらの1種または2種以上のモノマーを使用することができる。これらの中でも、取り扱いやすさからオキサゾリン基含有ポリマーが好ましい。
オキサゾリン基含有ポリマーの市販品としては、日本触媒社製のエポクロスシリーズが挙げられ、具体的には、水溶性タイプの「WS-500」、「WS-700」;エマルションタイプの「K-1010E」、「K-1020E」、「K-1030E」、「K-2010E」、「K-2020E」、「K-2030E」などが挙げられる。
フェノール樹脂としては、例えば、フェノールやビスフェノールA、p-t-ブチルフェノール、オクチルフェノール、p-クミルフェノール等のアルキルフェノール、p-フェニルフェノール、クレゾール等を原料として調製したレゾール型フェノール樹脂および/またはノボラック型フェノール樹脂が使用可能である。
尿素樹脂としては、例えば、ジメチロール尿素、ジメチロールエチレン尿素、ジメチロールプロピレン尿素、テトラメチロールアセチレン尿素、4-メトキシ5-ジメチルプロピレン尿素ジメチロールが使用可能である。
メラミン樹脂は、例えば、官能基としてイミノ基、メチロール基、および/またはアルコキシメチル基(例えばメトキシメチル基、ブトキシメチル基)を1分子中に有する化合物である。メラミン樹脂としては、イミノ基型メチル化メラミン樹脂、メチロール基型メラミン樹脂、メチロール基型メチル化メラミン樹脂、完全アルキル型メチル化メラミン樹脂等が使用可能である。その中でもメチロール化メラミン樹脂が最も好ましい。さらに、メラミン系樹脂の熱硬化を促進するため、例えばp-トルエンスルホン酸等の酸性触媒を用いることが好ましい。
ベンゾグアナミン樹脂としては、例えば、トリメチロールベンゾグアナミン、ヘキサメチロールベンゾグアナミン、トリスメトキシメチルベンゾグアナミン、ヘキサキスメトキシメチルベンゾグアナミン等が使用可能である。
<ガスバリア層>
本発明の積層フィルムは、ガスバリア層を含有する。
ガスバリア層として、有機系ガスバリア層、無機蒸着層、無機層状化合物含有層などのガスバリア層が公知であるが、本発明の積層フィルムにおいては、溶剤ガス透過性の観点で、有機系ガスバリア層を用いることが好ましい。
(有機系ガスバリア層)
有機系ガスバリア層を構成する有機化合物は、特に限定されず、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリビニルアルコール、ビニルアルコールとエチレンの共重合体(EVOH)、カルボン酸化合物などが挙げられる。有機系ガスバリア層は、構成する有機化合物が架橋構造を形成すると、高温環境下で使用しても、ガスバリア性能を維持することができる。架橋構造を形成することが可能な有機化合物としては、例えば、カルボン酸化合物やその無水物が挙げられる。
[ポリビニルアルコール]
ポリビニルアルコール(PVA)は、特に限定されないが、ビニルエステルの重合体を完全または部分ケン化したものなどが挙げられる。ポリビニルアルコールは、ガスバリア層形成用液状物中に含有することによって、ガスバリア層形成用液状物としての安定性を向上させ、また、ガスバリア層形成用液状物から得られる塗膜および前記塗膜が積層された積層フィルム中においても、酸素バリア性を向上させる効果を奏する。本発明におけるポリビニルアルコールは、後述のように液状物として使用するために、水溶性を有していることが好ましい。
ポリビニルアルコールは、ガスバリア層形成用液状物からなる塗膜および積層フィルムの酸素バリア性向上の観点で、ケン化度が93.0%以上であることが好ましく、98.0%以上であることがより好ましく、99.0%以上であることが最も好ましい。
ポリビニルアルコールは、ガスバリア層形成用液状物の液安定性向上の観点で、重合度が300~2000であることが好ましく、500~1500であることがさらに好ましく、800~1200であることが最も好ましい。
また、酸素バリア性向上の観点から、ポリビニルアルコールと、後記するカルボン酸化合物との質量比(ポリビニルアルコール/カルボン酸化合物)が、2/1~1/6が好ましく、1/1~1/5がより好ましく、1/2~1/3が最も好ましい。
本発明においては、ポリビニルアルコールとして市販のものを使用することができ、例えば、日本酢ビ・ポバール社製の「VC-10」や「JP-15」、「JT-05」、「JL-05E」、「JM-33」、「JM-17」、「JF-05」、「JF-10」、クラレ社製の「クラレポバール」の「PVA-CST」、「PVA-624」、「PVA-203」、「PVA-220」、「PVA-405」などを使用することができる。
[カルボン酸化合物]
本発明におけるカルボン酸化合物は、分子内にカルボキシル基を有する分子量1000以下の有機化合物であり、脂肪族でも芳香族でもよく、特に限定されず、カルボン酸化合物の無水物でもよい。後述する、カルボン酸化合物を含有する水性分散体から形成される得られる塗膜は、優れた酸素バリア性を有することができる。
カルボン酸化合物としては、具体的に、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、コハク酸、1,2,3-プロパントリカルボン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、クエン酸、1,2,3-ベンゼントリカルボン酸、3-ブテン-1,2,3-トリカルボン酸、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸、テトラヒドロフラン-2,3,4,5-テトラカルボン酸、ベンゼンペンタカルボン酸、ベンゼンヘキサカルボン酸、1,2,3,4,5,6-シクロヘキサンヘキサカルボン酸、あるいはこれら化合物の無水物などが挙げられる。
カルボン酸化合物は、分子内にカルボキシル基を複数個有していることが好ましく、2~4個有することが好ましく、3~4個有することがさらに好ましく、4個有することがより好ましい。分子内に4個のカルボキシル基を有する化合物としては、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸が最も好ましい。カルボン酸化合物の有するカルボキシル基の数が2個よりも少ないと、水性分散体から得られる塗膜において十分な酸素バリア性が得られないことがある。カルボン酸化合物の有するカルボキシル基数が4個よりも多いと、酸性度の増大による水性分散体中の離型成分の変性や、水性分散体の安定性の低下などが起こることがある。
1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸は、部分的にエステル化もしくはアミド化されていてもよい。なお、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸中のカルボキシル基は、乾燥状態では隣接したカルボキシル基どうしが脱水環化した酸無水物構造となりやすく、湿潤時や水溶液中では開環してカルボン酸構造となるが、本発明ではこれら閉環、開環を区別せず、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸として記述する。
ガスバリア層を積層するにあたり、ガスバリア層と基材層との密着性向上させるために、基材層の表面を処理したり、基材層に易接着層を設けてもよい。
<積層フィルムの構成>
本願発明の、離型層、基材層、ガスバリア層を含む積層フィルムの層構成としては、例えば、「離型層/基材層/ガスバリア層」からなる構成や、「離型層/ガスバリア層/基材層」からなる構成を挙げることができ、積層フィルムの生産性の観点から、少なくとも離型層/基材層/ガスバリア層の順に積層されている構成が好ましい。
<積層フィルムの特性>
(酸素バリア性)
本発明の積層フィルムは、酸素バリア性に優れるものであり、JIS K 7126に従い、20℃、65%RH環境下でガスバリア層側から測定した酸素透過度が10cc/(m・atm・day)以下であることが必要であり、5cc/(m・atm・day)以下であることが好ましく、1.5cc/(m・atm・day)以下であることがより好ましい。酸素透過度が10cc/(m・atm・day)を超えると、被着体の酸化劣化を抑制するための十分な酸素バリア性能を得ることができない。
(溶剤ガス透過性)
本発明の積層フィルムは、溶剤ガス透過性に優れる。本発明における溶剤ガス透過性とは、積層フィルムに貼りつけた被着体から発生する揮発溶剤のガスを透過しうる性能を指す。
本発明の積層フィルムは、後述する、60℃、24時間静置後の溶剤ガス透過性評価試験において、試験前後のメチルエチルケトンガスの質量変化量が10mg/10cm以上であることが必要であり、40mg/10cm以上であることが好ましく、100mg/10cm以上であることがより好ましい。
本発明の積層フィルムは、溶剤ガス透過性を有することで、被着体から発生する揮発溶剤ガスが積層フィルムと被着体の間に留まらず透過されるため、残留溶剤による被着体表面の荒れや熱硬化不良を抑制することが可能である。
良好な溶剤ガス透過性能を得るためには、特に限定されないが、ガスバリア層は、前述のように、有機系ガスバリア層であることが好ましい。また、ガスバリア層の厚みは、溶剤ガス透過性能向上の観点と酸素バリア性の観点から、50~1500nmであることが好ましく、100~500nmであることが特に好ましく、200~300nmであることが最も好ましい。
本発明の積層フィルムは、溶剤ガス透過性能に加えて、溶剤ガス吸着性能が付与されていてもよく、この場合、より一層良好な溶剤ガス除去性能が発現する。
(離型性)
本発明の積層フィルムは、離型性に優れるものであり、後述する、エポキシプリプレグに対する剥離力は、0.3N/cm以下であることが好ましく、0.1N/cm以下であることがより好ましく、0.05N/cm以下であることがさらに好ましい。
<積層フィルムの製造方法>
本発明の積層フィルムは、基材層に、離型層形成用液状物とガスバリア層形成用液状物を塗布・乾燥することにより、製造することができる。また、基材層として、未延伸フィルムまたは一軸延伸フィルムを使用し、これに上記液状物を塗布、乾燥、延伸し、基材層を二軸延伸フィルムとしてもよく、また、二軸延伸フィルムを使用し、これに上記液状物を塗布・乾燥してもよい。
本発明の積層フィルムを製造方法は、基材層にガスバリア層形成用液状物を塗布する工程と、ガスバリア層形成用液状物を塗布した基材層を乾燥、延伸する工程とを含むことが好ましい。
特に限定されないが、二軸延伸フィルムに上記液状物を塗布・乾燥する場合は、乾燥効率と基材フィルムへの加熱負荷との兼ね合いから、乾燥温度150℃~260℃が好ましく、180℃~240℃が特に好ましい。一方、基材層にガスバリア層形成用液状物を塗布する工程と、ガスバリア層形成用液状物を塗布した基材層を乾燥、延伸する工程とを含む場合は、延伸温度90℃~150℃、熱処理温度180℃~260℃が好ましく、延伸温度100℃~130℃、熱処理温度200℃~240℃が特に好ましい。
例えば、基材層に離型層およびガスバリア層を積層する方法として、以下の方法が挙げられる。
(1)縦延伸した基材層の一方の面に離型層形成用液状物を、もう一方の面にガスバリア層形成用液状物を塗布したのち、基材層を乾燥・横延伸する方法
(2)縦延伸した基材層の一方の面にガスバリア層形成用液状物を塗布したのち、基材層を乾燥・横延伸し、その後、ガスバリア層の反対面に、離型層形成用液状物を塗布・乾燥する方法
(3)縦延伸した基材層の一方の面に離型層形成用液状物を塗布したのち、基材層を乾燥・横延伸し、その後、離型層の反対面に、ガスバリア層形成用液状物を塗布・乾燥する方法
(4)二軸延伸した基材層の一方の面に離型層形成用液状物を、もう一方の面にガスバリア層形成用液状物を塗布・乾燥する方法
(5)縦延伸した基材層にガスバリア層形成用液状物を塗布し、ガスバリア層の上にさらに離型層形成用液状物を塗布したのち、基材層を乾燥・横延伸する方法
(6)縦延伸した基材層にガスバリア層形成用液状物を塗布したのち、基材層を乾燥・横延伸し、その後、ガスバリア層の上にさらに離型層形成用液状物を塗布・乾燥する方法
(7)二軸延伸した基材層の一方の面にガスバリア層形成用液状物を塗布・乾燥したのち、ガスバリア層の上にさらに離型層形成用液状物を塗布・乾燥する方法
上記(1)~(4)の方法によって、「離型層/基材層/ガスバリア層」からなる構成の積層フィルムを得ることができ、(5)~(7)の方法によって、「離型層/ガスバリア層/基材層」からなる構成の積層フィルムを得ることができる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。用いた原料や水性分散体、塗膜および積層フィルムの特性は下記の方法で測定した。
(1)ポリビニルアルコールのケン化率
ポリビニルアルコールのケン化率は、JIS K-6726に準拠して測定を行った。
(2)エポキシプリプレグに対する離型性
60mm×100mmの大きさのエポキシプリプレグ(住友ベークライト社製EI-6765)の両面を、得られた積層フィルムの離型層側で挟み、1.07kPa(8Torr)の真空プレス機中で、30℃から150℃まで15℃/分で昇温し、150℃で22分間保持した後、さらに5℃/分で190℃まで昇温し、5kg/cmの圧力を10分間かけた後、15kg/cmの圧力をかけながら、190℃で70分間保持した。その後、室温まで冷却を行うことで、試料を得た。
得られた試料の、硬化後のエポキシプリプレグと積層フィルムとの剥離力を、23℃の恒温室で引張試験機(島津製作所社製オートグラフAGS-100B)にて測定して、離型性を評価した。剥離角度は180度、剥離速度は300mm/分とした。
(3)酸素バリア性
得られた積層フィルムの酸素透過度は、モコン社製酸素バリア測定器(OX-TRAN 2/20MH)を用いて、JIS K7126-2法に基づいて、温度20℃、相対湿度65%の雰囲気下において測定した。積層フィルムの離型層面を被着体に貼り合わせた状態を想定し、積層フィルムの層構成が「離型層/基材層/ガスバリア層」の場合は、ガスバリア層面を酸素源側にセットした状態で測定し、積層フィルムの層構成が「離型層/ガスバリア層/基材層」の場合は、基材層面を酸素源側にセットした状態で測定した。なお、酸素透過度が低い値ほど酸素バリア性に優れており、下記基準で酸素バリア性を評価した。
◎:1.5cc/(m・atm・day)以下
○:1.5cc/(m・atm・day)を超え、5cc/(m・atm・day)以下
△:5cc/(m・atm・day)を超え、10cc/(m・atm・day)以下
×:10cc/(m・atm・day)を超える
(4)溶剤ガス透過性
積層フィルムの溶剤ガス透過性評価に用いたメチルエチルケトン(MEK)は、ナカライテスク社製特級試薬を使用した。ヘルール接続式ステンレス製カップ(内径35.7mmΦ)にメチルエチルケトンを10g入れ、その上に直径40mmΦの円形にカットした積層フィルムを離型層面が下になるように乗せ、積層フィルムの上から内径35.7mmΦのテフロン(登録商標)製ヘルールガスケットを乗せ、上から内径35.7mmのステンレス製ヘルールを乗せ、ステンレス製クランプで一式を固定した。カップ一式の質量を測定し、60℃に設定した恒温乾燥器に前記カップ一式を入れ、24時間静置後の質量変化を測定し、静置前後の質量変化量を溶剤ガスの透過量として、溶剤ガス透過性を以下の基準で評価した。
◎:100mg/10cm以上
○:40mg/10cm以上、100mg/10cm未満
△:10mg/10cm以上、40mg/10cm未満
×:10mg/10cm未満
(5)ガスバリア層の厚み
積層フィルムのガスバリア層の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)により、積層フィルムの断面観察を行い測定し、下記の基準で評価した。
◎:200nm以上、300nm未満
○:100nm以上、200nm未満、または、300nm以上、500nm未満
△:50nm以上、100nm未満、または、500nm以上、1500nm未満
×:50nm未満、または、1500nm以上
水性分散体を調製するための材料として、以下のものを使用した。
<ポリビニルアルコール(PVA)>
・VC-10:日本酢ビ・ポバール社製VC-10、ケン化率99.3%、重合度1,000、固形分濃度8質量%
・JT-05:日本酢ビ・ポバール社製JT-05、ケン化率94.5%、重合度500、固形分濃度8質量%
<架橋剤>
・WS-700:日本触媒社製エポクロスWS-700、オキサゾリン基含有化合物の水性溶液、固形分濃度25質量%
<カルボン酸化合物>
・1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸:新日本理化社製リカシッドBT-W
<塩基>
・水酸化ナトリウム(NaOH):ナカライテスク社製水酸化ナトリウム特級試薬
水性分散体を調製するための材料を、以下の方法により製造した。
<酸変性ポリオレフィン樹脂A-1の製造>
プロピレン-ブテン-エチレン三元共重合体(プロピレン/ブテン/エチレン=68.0/16.0/16.0(質量比))280gを、4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下で加熱溶融させた後、系内温度を170℃に保って攪拌下、不飽和カルボン酸として無水マレイン酸32.0gとラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド6.0gをそれぞれ1時間かけて加え、その後1時間反応させた。反応終了後、得られた反応生成物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させた。この樹脂をさらにアセトンで数回洗浄し、未反応の無水マレイン酸を除去した後、減圧乾燥機中で減圧乾燥して、酸変性ポリオレフィン樹脂A-1(酸変性量7.0%、融点135℃)を得た。
<酸変性ポリオレフィン樹脂A-2、A-3の製造>
上記酸変性ポリオレフィン樹脂A-1の製造において、プロピレン-ブテン-エチレン三元共重合体を、プロピレン-エチレン共重合体(プロピレン/エチレン=99/1(質量比))に変更する以外は、同様にして、酸変性ポリオレフィン樹脂A-2(酸変性量2.3%、融点145℃)を得た。
また、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(エチレン/アクリル酸エチル=93/7(質量比))に変更する以外は、同様にして、酸変性ポリオレフィン樹脂A-3(酸変性量2.0%、融点105℃)を得た。
<酸変性ポリオレフィン樹脂A-1の水性分散体の製造>
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、上記方法で製造した60.0gの酸変性ポリオレフィン樹脂A-1と、45.0gのエチレングリコール-n-ブチルエーテル(沸点171℃)と、6.9gのN,N-ジメチルエタノールアミン(沸点134℃、樹脂中の無水マレイン酸単位のカルボキシル基に対して1.0倍当量)と、188.1gの蒸留水とを、上記のガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌した。そうしたところ、容器底部には樹脂の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を140℃に保ってさらに60分間撹拌した。その後、空冷にて、回転速度300rpmのまま撹拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した。さらに、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)することで、均一な酸変性ポリオレフィン樹脂A-1の水性分散体(固形分濃度25質量%)を得た。なお、フィルター上には残存樹脂はほとんどなかった。
<酸変性ポリオレフィン樹脂A-2、A-3の水性分散体の製造>
用いる酸変性ポリオレフィン樹脂をA-2、A-3に変更する以外は、前述した方法と同様の方法で、酸変性ポリオレフィン樹脂A-2およびA-3の水性分散体(固形分濃度25質量%)を得た。
<離型層形成用液状物P-1の製造>
酸変性ポリオレフィン樹脂A-1の水性分散体と、ポリビニルアルコール水溶液「VC-10」と、架橋剤としてのオキサゾリン基含有化合物の水性溶液「WS-700」とを、それぞれ固形分が、100質量部と、300質量部と、7質量部とになるように混合し、最終固形分濃度が6.5質量%になるように水で調整して、離型層形成用液状物P-1を得た。
<離型層形成用液状物P-2の製造>
酸変性ポリオレフィン樹脂A-2の水性分散体と、ポリビニルアルコール水溶液「JT-05」と、架橋剤としてのオキサゾリン基含有化合物の水性溶液「WS-700」とを、それぞれ固形分が、100質量部と、500質量部と、7質量部とになるように混合し、最終固形分濃度が6.5質量%になるように水で調整して、離型層形成用液状物P-2を得た。
<離型層形成用液状物P-3の製造>
酸変性ポリオレフィン樹脂A-3の水性分散体と、架橋剤としてのオキサゾリン基含有化合物の水性溶液「WS-700」とを、それぞれ固形分が、100質量部と、5質量部とになるように混合し、最終固形分濃度が6.5質量%になるように水で調整して、離型層形成用液状物P-3を得た。
<ガスバリア層形成用液状物B-1の製造>
ポリビニルアルコール「VC-10」8質量%水溶液4.3kgに、水2.5kgを加えて攪拌した後、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸「リカシッドBT-W」1.0kgを加え、混合液を攪拌しながら、塩基として予め調製した水酸化ナトリウム10質量%水溶液を、BT-Wが有するカルボキシル基を10モル%中和するよう加えてさらに1時間攪拌することでガスバリア層形成用液状物B-1を得た。
<ガスバリア層形成用液状物B-2の製造>
PVA(クラレ社製、ポバール105(ポリビニルケン化度98~99%、平均重合度約500))を熱水に溶解後、室温に冷却することにより、固形分15%のPVA水溶液を得た。また、エチレン-マレイン酸系共重合体(EMA、重量平均分子量60000)と水酸化ナトリウムを用い、熱水に溶解後、室温に冷却することにより、カルボキシル基の10モル%を水酸化ナトリウムにより中和した、固形分15%のEMA水溶液を調製した。PVAとEMAの固形分質量比が30/70になるように、PVA水溶液とEMA水溶液とを混合し、固形分10%のガスバリア層形成用液状物B-2を得た。
実施例1
ポリエチレンテレフタレートA(重合触媒:三酸化アンチモン、固有粘度:0.62、ガラス転移温度:78℃、融点:255℃)に、シリカ粒子(粒子径2.3μm)を0.07質量%添加したポリエチレンテレフタレートBを、押出機I(スクリュー径:50mm)に、またポリエチレンテレフタレートAを、押出機II(スクリュー径:65mm)にそれぞれ投入して280℃で溶融後、それぞれの溶融体をTダイの出口に至る前で層状に合流積層させた。層の厚み比(I/II)が4/6となり、総厚みが600μmとなるよう調整してTダイ出口より押出し、急冷固化して未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムをロール式縦延伸機で85℃の条件下、3.5倍に延伸した。
この縦延伸したフィルムの片面(ポリエチレンテレフタレート(B)からなる層の面)に、リバースグラビアコーターを用いて、ガスバリア層形成用液状物B-1を5g/m(WET換算)の塗布量になるように塗布し、その反対面(ポリエチレンテレフタレート(A)からなる層の面)にリバースグラビアコーターを用いて、離型層形成用液状物P-1を5g/m(WET換算)の塗布量になるように塗布し、ガスバリア層形成用液状物と離型層形成用液状物が塗布された縦延伸フィルムを、横延伸テンターにおいて120℃で4.5倍延伸後、230℃で10秒間熱処理したのち、冷却し巻き取ることで、ガスバリア層厚みが250nmである積層フィルムを得た。
実施例2、3
離型層形成用液状物をP-2、P-3に変更する以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
実施例4~7
ガスバリア層厚みをそれぞれ80、150、500、1000nmに変更する以外は実施例2と同様に積層フィルムを得た。
実施例8
実施例1と同様の方法で縦延伸フィルムを得た。
この縦延伸したフィルムの片面(ポリエチレンテレフタレート(B)からなる層の面)に、リバースグラビアコーターを用いて、ガスバリア層形成用液状物B-1を5g/m(WET換算)の塗布量になるように塗布し、ガスバリア層形成用液状物が塗布された縦延伸フィルムを、横延伸テンターにおいて120℃で4.5倍延伸後、230℃で10秒間熱処理したのち、冷却し巻き取った。
得られた積層フィルムの片面(ポリエチレンテレフタレート(A)からなる層の面)に、離型層形成用液状物P-2を、マイヤーバーを用いて塗布し、230℃で20秒間乾燥させることで積層フィルムを得た。
実施例9
実施例1と同様の方法で縦延伸フィルムを得た。
この縦延伸したフィルムの片面(ポリエチレンテレフタレート(A)からなる層の面)に、リバースグラビアコーターを用いて、離型層形成用液状物P-2を5g/m(WET換算)の塗布量になるように塗布し、離型層形成用液状物が塗布された縦延伸フィルムを、横延伸テンターにおいて120℃で4.5倍延伸後、230℃で10秒間熱処理したのち、冷却し巻き取った。
得られた積層フィルムの片面(ポリエチレンテレフタレート(B)からなる層の面)に、ガスバリア層形成用液状物B-1を、マイヤーバーを用いて塗布し、230℃で20秒間乾燥させることで積層フィルムを得た。
実施例10
ポリエチレンテレフタレート(A)として、ポリエチレンテレフタレート(B)に粒子径2.3μmのシリカ粒子0.07質量%と、酸化マグネシウム0.5質量%を含有させたポリエチレンテレフタレート樹脂を用いた以外は、実施例9と同様の方法で基材フィルムの片面に離型層が積層された積層フィルムを得た。
その後、積層フィルムの片面(ポリエチレンテレフタレート(B)からなる層の面)に、ガスバリア層形成用液状物B-2を、マイヤーバーを用いて塗布し、230℃で20秒間加熱乾燥させてガスバリア層厚みが250nmの積層フィルムを得た。
実施例11
実施例1と同様の方法で得た縦延伸フィルムを、その後横延伸テンターにおいて120℃で4.5倍延伸後、230℃で10秒間熱処理したのち、冷却し巻き取った。
得られた二軸延伸フィルムの片面(ポリエチレンテレフタレート(A)からなる層の面)に離型層形成用液状物P-2を、もう一方の面(ポリエチレンテレフタレート(B)からなる層の面)にガスバリア層形成用液状物B-1を、それぞれマイヤーバーを用いて塗布し、230℃で20秒間乾燥させることで積層フィルムを得た。
実施例12
実施例1と同様の方法で縦延伸フィルムを得た。
この縦延伸したフィルムの片面(ポリエチレンテレフタレート(A)からなる層の面)に、ダイコーターを用いて、ガスバリア層形成用液状物B-1と、離型層形成用液状物P-2とを、離型層が最表層となるよう塗布したのち、ガスバリア層形成用液状物と離型層形成用液状物が塗布された縦延伸フィルムを、横延伸テンターにおいて120℃で4.5倍延伸後、230℃で10秒間熱処理したのち、冷却し巻き取ることでガスバリア層厚みが500nmである積層フィルムを得た。
実施例13
ガスバリア層厚みを250nmに変更する以外は実施例12と同様に積層フィルムを得た。
実施例14
実施例1と同様の方法で縦延伸フィルムを得た。
この縦延伸したフィルムの片面(ポリエチレンテレフタレート(A)からなる層の面)に、リバースグラビアコーターを用いて、ガスバリア層形成用液状物B-1を5g/m(WET換算)の塗布量になるように塗布し、ガスバリア層形成用液状物が塗布された縦延伸フィルムを、横延伸テンターにおいて120℃で4.5倍延伸後、230℃で10秒間熱処理したのち、冷却し巻き取った。
得られた積層フィルムのガスバリア層が積層された面に、離型層形成用液状物P-2を、マイヤーバーを用いて塗布し、230℃で20秒間乾燥させることで積層フィルムを得た。
実施例15
実施例11と同様の方法で得られた二軸延伸フィルムの片面(ポリエチレンテレフタレート(A)からなる層の面)に、ガスバリア層形成用液状物B-1を、マイヤーバーを用いて塗布し、230℃で20秒間乾燥させることで積層フィルムを得た。その後、得られた積層フィルムのガスバリア層面に、離型層形成用液状物P-2を、マイヤーバーを用いて塗布し、230℃で20秒間乾燥させることで積層フィルムを得た。
比較例1
実施例1と同様の方法で縦延伸フィルムを得た。
得られた縦延伸フィルムの片面(ポリエチレンテレフタレート(A)からなる層の面)にリバースグラビアコーターを用いて、離型層形成用液状物P-1を5g/m(WET換算)の塗布量になるように塗布し、離型層形成用液状物が塗布された縦延伸フィルムを、横延伸テンターにおいて120℃で4.5倍延伸後、230℃で10秒間熱処理したのち、冷却し巻き取ることで積層フィルムを得た。
比較例2
離型層形成用液状物としてP-2を用いる以外は比較例1と同様にして積層フィルムを得た。
比較例3
実施例1と同様の方法で縦延伸フィルムを得た。
この縦延伸したフィルムの片面(ポリエチレンテレフタレート(A)からなる層の面)に、リバースグラビアコーターを用いて、離型層形成用液状物P-2を5g/m(WET換算)の塗布量になるように塗布し、離型層形成用液状物が塗布された縦延伸フィルムを、横延伸テンターにおいて120℃で4.5倍延伸後、230℃で10秒間熱処理したのち、冷却し巻き取った。
得られた積層フィルムの片面(ポリエチレンテレフタレート(B)からなる層の面)に、アルミニウムを真空蒸着機にて酸素ガスを導入しながら真空蒸着法で、金属酸化物薄膜層として厚さ6nmの酸化アルミニウム薄膜層を積層した。
次に、酸化アルミニウム薄膜層上に、水系のウレタン系樹脂(三井化学社製 タケラックWPB341)100質量部と、イソシアネート系シランカップリング剤(信越化学社製 KBE9007)10質量部を混合して得た混合樹脂をグラビアコート法で塗布して、厚さ200nmのトップコート層を積層し、離型層/基材層/ガスバリア層/トップコート層からなる構成の積層フィルムを得た。
比較例4
ガスバリア層厚みを2000nmとした以外は実施例2と同様にして積層フィルムを得た。
比較例5
ガスバリア層厚みを10nmとした以外は実施例2と同様にして積層フィルムを得た。
実施例1~15および比較例1~5で得られた積層フィルムの構成や、物性の測定結果を表1に示す。
Figure 2022155604000001
実施例1~15の積層フィルムは、いずれも良好な離型性能、酸素バリア性能、および溶剤ガス透過性能を有していた。
なかでも、実施例1~3、8、14の積層フィルムは、加熱乾燥により酸素バリア性能が発現する有機系ガスバリア層が、加熱効率の良い方法で加熱乾燥され、かつガスバリア層厚みが最も好ましい範囲であったため、優れた酸素バリア性能を有しており、優れた溶剤ガス透過性能を有していた。
比較例1、2の積層フィルムは、ガスバリア層が積層されていないため、酸素バリア性能が発現しなかった。
比較例3の積層フィルムは、ガスバリア層が金属蒸着層であったため、溶剤ガス透過性能が劣っていた。
比較例4の積層フィルムは、ガスバリア層厚みが厚かったため、溶剤ガス透過性能に劣っていた。
比較例5の積層フィルムは、ガスバリア層厚みが薄かったため、酸素バリア性能に劣っていた。

Claims (8)

  1. 離型層、基材層、ガスバリア層を含む積層フィルムであって、以下の(1)および(2)を満たすことを特徴とする積層フィルム。
    (1)JIS K 7126に従い、20℃、65%RH環境下で測定した酸素透過度が10cc/(m・atm・day)以下である。
    (2)60℃、24時間静置後の溶剤ガス透過性評価試験において、試験前後のメチルエチルケトンガスの質量変化量が10mg/10cm以上である。
  2. ガスバリア層が有機化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。
  3. ガスバリア層の厚みが50~1500nmであることを特徴とする請求項1または2に記載の積層フィルム。
  4. 少なくとも離型層/基材層/ガスバリア層の順に積層されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の積層フィルム。
  5. ガスバリア層がポリビニルアルコールを含有することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の積層フィルム。
  6. 離型層が酸変性ポリオレフィン樹脂を含有することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の積層フィルム。
  7. エポキシプリプレグを離型層に貼り付けて測定したときの剥離力が0.3N/cm以下であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の積層フィルム。
  8. 請求項1~7のいずれかに記載の積層フィルムを製造するための方法であって、
    基材層にガスバリア層形成用液状物を塗布する工程と、
    ガスバリア層形成用液状物を塗布した基材層を乾燥、延伸する工程と
    を含むことを特徴とする積層フィルムの製造方法。

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