JP2021138129A - 積層フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

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将幸 坪田
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大地 坂田
昌弘 吉田
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Abstract

【課題】離型性を有するとともに、被着体に貼り付けた状態で十分な酸素バリア性能を有する離型フィルムを提供する。【解決手段】離型層、基材、ガスバリア層を含む積層フィルムであって、積層フィルムの少なくとも一方の最表層が離型層であり、離型層表面の表面粗さパラメーターSa(算術平均高さ)が0.05μm以下であり、ガスバリア層が有機化合物を含有することを特徴とする積層フィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、積層フィルムおよびその製造方法に関する。
離型フィルムは、医療分野、工業分野に広く使用されている。その具体例としては、プリント配線板、フレキシブルプリント配線板、多層プリント配線板などの製造のための工程材料や、医療用テープ、ハップ剤、粘着材料、液晶ディスプレイ用部品などを保護するための保護材料が挙げられる。
例えば、特許文献1には、様々な被着体に対して良好な離型性を有する酸変性ポリオレフィン樹脂層を離型層とした離型フィルムが開示されている。
国際公開第2009/025063号
近年、酸素による劣化が原因して歩留まりや品質が低下しやすい被着体においては、離型フィルムに十分な酸素バリア性能が付与され、離型フィルムが、被着体の酸化劣化を防ぐ保護フィルムとしても機能することが要望されている。
しかしながら、特許文献1に開示された離型フィルムは、ガスバリア層を設けても、高性能化や高機能化された被着体の品質を保持できるほどの高いガスバリア性能を得ることは困難であった。
本発明の課題は、この問題に鑑み、離型性を有するとともに、被着体に貼り付けた状態で十分な酸素バリア性能を有する離型フィルムを提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、有機化合物を含有するガスバリア層を含み、少なくとも一方の最表層を構成する離型層が特定表面形状である積層フィルムが、上記課題が解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明の要旨は下記のとおりである。
(1)離型層、基材、ガスバリア層を含む積層フィルムであって、積層フィルムの少なくとも一方の最表層が離型層であり、
離型層表面の表面粗さパラメーターSa(算術平均高さ)が0.05μm以下であり、
ガスバリア層が有機化合物を含有することを特徴とする積層フィルム。
(2)離型層が、酸変性ポリオレフィン樹脂と架橋剤とを含有することを特徴とする(1)に記載の積層フィルム。
(3)ガスバリア層を構成する有機化合物が、ポリビニルアルコールを含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の積層フィルム。
(4)上記(2)に記載の積層フィルムを製造するための方法であって、基材の片面に、酸変性ポリオレフィン樹脂と架橋剤と水性媒体とを含有する離型層形成用液状物を塗布する工程を含むことを特徴とする積層フィルムの製造方法。
(5)上記(4)に記載の積層フィルムの製造方法において、離型層形成用液状物が塗布された基材を乾燥、延伸する工程を含むことを特徴とする積層フィルムの製造方法。
(6)上記(3)に記載の積層フィルムを製造するための方法であって、基材の片面に、ポリビニルアルコールを含有するガスバリア層形成用液状物を塗布し、ガスバリア層形成用液状物が塗布された基材を乾燥し、延伸する工程を含むことを特徴とする積層フィルムの製造方法。
本発明の積層フィルムは、ガスバリア層が積層されており、また、積層された離型層の表面が平滑な形状であるため、被着体と貼り合わせて酸素が存在する環境下において熱処理した場合であっても、被着体の保護フィルムとして優れた酸素バリア性を有する。また、本発明の積層フィルムは、ガスバリア層が有機化合物を含有するため、耐屈曲性に優れており、被着体から離型しても、ガスバリア層にクラックが生じにくく、貼り合わせと離型とを繰り返すような工程においても、好適に使用することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の積層フィルムは、離型層、基材、ガスバリア層を含む積層フィルムであり、積層フィルムの少なくとも一方の最表層が離型層であり、離型層表面は特定の平滑性を有し、ガスバリア層は有機化合物を含有する。
<基材>
本発明の積層フィルムを構成する基材としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリ乳酸(PLA)などのポリエステルフィルム、ポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミド6、ポリ−p−キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド4T、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド10T、ポリアミド11T、ポリアミド12T、ポリアミド6Iなどのポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、これらの複層体(例えば、ポリアミド6/MXD6ナイロン/ポリアミド6、ポリアミド6/エチレン−ビニルアルコール共重合体/ポリアミド6、ポリアミド6/6T、ポリアミド6/6I、ポリアミド6/6T/6I)や混合体などが用いられ、機械的強度や寸法安定性を有するポリエステルフィルム、ポリアミドフィルムが好ましい。ここで、Tはテレフタル酸を示し、Iはイソフタル酸を示す。なかでも、基材は、耐屈曲性や、離型層、ガスバリア層との密着性の観点で、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく、また、耐熱性、耐屈曲性、ガスバリア層との密着性の観点で、半芳香族ポリアミドフィルムが好ましく、特にポリアミド9Tフィルム、ポリアミド10Tフィルムが好ましい。
(ポリエステル樹脂)
ポリエステルフィルム基材を構成するポリエステル樹脂の重合方法は特に限定されず、エステル交換法、直接重合法等が挙げられる。エステル交換触媒としては、Mg、Mn、Zn、Ca、Li、Tiなどの酸化物、酢酸塩等の化合物が挙げられる。また、重縮合触媒としては、Sb、Ti、Geなどの酸化物、酢酸塩等の化合物が挙げられる。
重合後のポリエステルは、モノマーやオリゴマー、副生成物のアセトアルデヒド等を含有しているため、減圧もしくは不活性ガス流通下、200℃以上の温度で固相重合してもよい。
ポリエステル樹脂の固有粘度は0.55〜0.80であることが好ましく、0.60〜0.75であることがより好ましい。固有粘度が上記範囲未満であると、フィルムの製膜時に切断が起こり易く、安定的に生産するのが困難であり、得られたフィルムの強度も低い。一方、固有粘度が上記範囲を超える場合には、フィルムの生産工程において樹脂の溶融押出時に剪断発熱が大きくなり、押出機にかかる負荷が大きくなり、生産速度を犠牲にせざるを得なかったり、フィルムの厚み制御も難しくなる等、フィルムの生産性が低下する。また、得られたフィルムは、熱分解やゲル化物が増加して、表面欠点や異物、表面粗大突起が増加する。また、あまりに固有粘度の高いものは、重合時間や重合プロセスが長く、コストを押し上げる要因ともなる。
(半芳香族ポリアミド樹脂)
半芳香族ポリアミドフィルム基材を構成する半芳香族ポリアミド樹脂は、ジカルボン酸成分とジアミン成分から構成され、ジカルボン酸成分またはジアミン成分中に芳香族成分を有するものであり、芳香族ジカルボン酸成分と脂肪族ジアミン成分とから構成されることが好ましい。
芳香族ジカルボン酸成分は、テレフタル酸を主成分とすることが好ましく、60モル%以上含有することがより好ましく、70モル%以上含有することがさらに好ましく、85モル%以上含有することが特に好ましい。テレフタル酸の含有量が60モル%未満の場合には、得られるフィルムの耐熱性、低吸水性が低下する。
テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸(1,2−体、1,3−体、1,4−体、1,5−体、1,6−体、1,7−体、1,8−体、2,3−体、2,6−体、2,7−体)が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸成分には、本発明の効果を損なわない範囲で、他のジカルボン酸が含まれてもよい。他のジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。
脂肪族ジアミン成分は、炭素数4〜15の脂肪族ジアミンを主成分として含むことが好ましく、炭素数6〜12の脂肪族ジアミンを主成分として含むことがより好ましく、炭素数9〜12の脂肪族ジアミンを主成分として含むことがさらに好ましく、炭素数9〜10の脂肪族ジアミンを主成分として含むことが特に好ましい。
脂肪族ジアミン成分は、炭素数4〜15の脂肪族ジアミンを60モル%以上含有することが好ましく、75モル%以上含有することがより好ましく、90モル%以上含有することがさらに好ましい。炭素数4〜15の脂肪族ジアミンの含有量を60モル%以上とすることで、得られるフィルムは、耐熱性と生産性を両立させることができる。炭素数4〜15の脂肪族ジアミンは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、2種以上を併用する場合、含有量はそれらの合計とする。
炭素数が4〜15の脂肪族ジアミンとしては、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,13−トリデカンジアミン、1,14−テトラデカンジアミン、1,15−ペンタデカンジアミン等の直鎖状脂肪族ジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、4−メチル−1,8−オクタンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2−メチル−1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,7−ヘプタンジアミンなどの分岐鎖状脂肪族ジアミンが挙げられる。
脂肪族ジアミン成分には、本発明の効果を損なわない範囲で、他のジアミンが含まれてもよい。他のジアミンとしては、例えば、イソホロンジアミン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルアミンなどの脂環式ジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミンなどの芳香族ジアミンが挙げられる。
半芳香族ポリアミド樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で、ε−カプロラクタム、ζ−エナントラクタム、η−カプリルラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム類が共重合されてもよい。
半芳香族ポリアミド樹脂の具体例としては、ポリアミド4T、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド10T、ポリアミド11T、ポリアミド12T、ポリアミド6I、ポリアミド6/6T、ポリアミド6/6I、ポリアミド6/6T/6Iなどが挙げられる。ここで、Tはテレフタル酸を示し、Iはイソフタル酸を示す。なかでも、ガスバリア層との密着性の観点でポリアミド9T、ポリアミド10Tが好ましい。
半芳香族ポリアミド樹脂は、重合触媒や末端封止剤が含まれてもよい。末端封止剤としては、例えば、酢酸、ラウリン酸、安息香酸、オクチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリンが挙げられる。また、重合触媒としては、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、またはそれらの塩等が挙げられる。
半芳香族ポリアミド樹脂の融点(Tm)は、260℃以上であることが好ましく、270〜350℃であることがより好ましい。半芳香族ポリアミド樹脂のTmがこの範囲であると得られる半芳香族ポリアミドフィルムは、熱分解(熱劣化)が抑制され、かつ得られる積層フィルムは、プリント基板の工程材料として用いた際のリフローはんだ加工工程後でも容易に離型することができる。半芳香族ポリアミド樹脂の融点は、原料および組成を選択することによって上記範囲に調節することができる。
半芳香族ポリアミド樹脂の極限粘度は、0.8〜2.0dL/gであることが好ましく、0.9〜1.8dL/gであることがより好ましい。半芳香族ポリアミド樹脂は、極限粘度が0.8dL/g以上であると、機械的強度に優れたフィルムを作製することができるが、2.0dL/gを超えると、フィルムを生産することが困難となる場合がある。
半芳香族ポリアミド樹脂は、結晶性ポリアミドを製造する方法として知られている任意の方法を用いて製造することができる。例えば、酸クロライドとジアミン成分とを原料とする溶液重合法または界面重合法(A法)、あるいはジカルボン酸成分とジアミン成分とを原料として低重合物を作製し、該低重合物を溶融重合または固相重合により高分子量化する方法(B法)、ジカルボン酸成分とジアミン成分とを原料として塩および低重合物の破砕混合物を生成しこれを固相重合する方法(C法)、ジカルボン酸成分とジアミン成分とを原料として塩を生成しこれを固相重合する方法(D法)などが挙げられる。中でも、C法およびD法が好ましく、D法がより好ましい。C法およびD法は、B法に比べて、塩および低重合物の破砕混合物や塩を低温で生成することができ、また、塩および低重合物の破砕混合物や、塩の生成時に多量の水を必要としない。そのため、ゲル状体の発生を低減でき、フィッシュアイを低減することができる。
半芳香族ポリアミド樹脂として、市販品を好適に使用することができる。このような市販品としては、例えば、クラレ社製の「ジェネスタ(登録商標)」、ユニチカ社製「ゼコット(登録商標)」、三菱エンジニアリングプラスチック社製「レニー(登録商標)」、三井化学社製「アーレン(登録商標)」、BASF社製「ウルトラミッド(登録商標)」、アルケマ社製「リルサンHT(登録商標)」などが挙げられる。
(基材フィルムの製造)
次に基材フィルムの製造方法について説明する。
まず、十分に乾燥された樹脂を押出機に供給し、十分に可塑化され、流動性を示す温度以上で溶融し、必要に応じて選ばれたフィルターを通過させ、その後TダイやIダイなどのフラットダイから溶融ポリマーをシート状に吐出し、ガラス転移温度(Tg)以下に温度調節した冷却ロールやスチールベルトなどの移動冷却体の冷却面に密着させて未延伸フィルムを得る。シート状に吐出した溶融ポリマーを移動冷却体に密着させて冷却固化するための方法として、エアーナイフキャスト法、静電印加法、バキュームチャンバ法等の方法を使用することができる。
得られた未延伸フィルムは、力学特性向上や耐熱性向上の観点で延伸することが好ましく、すなわち、一軸延伸法により一軸配向させるか、もしくは二軸延伸法により二軸配向させる。二軸延伸法としては、特に限定はされないが、フラット式逐次二軸延伸法、フラット式同時二軸延伸法、チューブラ法等を用いることができる。
なかでも、本発明の積層フィルムを構成する基材として用いるポリエステルフィルムは、フラット式逐次二軸延伸法が最適であり、半芳香族ポリアミドフィルムは、フラット式同時二軸延伸法が最適である。
ポリエステルフィルムの一軸延伸法では、未延伸フィルムを、樹脂のTg〜Tgより50℃高い温度の範囲で、長手もしくは巾方向に、2〜6倍程度の延伸倍率となるよう延伸する。
同時二軸延伸法では、未延伸フィルムを、樹脂のTg〜Tgより50℃高い温度の範囲で、長手および巾方向にそれぞれ2〜4倍程度の延伸倍率となるよう二軸延伸する。同時二軸延伸機に導く前に、未延伸フィルムに1.2倍程度までの予備縦延伸を施しておいてもよい。
また、逐次二軸延伸法では、未延伸フィルムを、加熱ロールや赤外線等で加熱し、長手方向に延伸して縦延伸フィルムを得る。縦延伸は2個以上のロールの周速差を利用し、ポリエステルのTg〜Tgより40℃高い温度の範囲で、延伸倍率2.5〜4.0倍とするのが好ましい。縦延伸フィルムを、続いて連続的に、巾方向に横延伸、熱固定、熱弛緩の処理を順次施して、二軸配向フィルムとする。横延伸は樹脂のTg〜Tgより40℃高い温度で開始し、最高温度は樹脂の融点(Tm)より(100〜40)℃低い温度であることが好ましい。横延伸の倍率は最終的なフィルムの要求物性に依存し調整されるが、3.5倍以上、さらには3.8倍以上とするのが好ましく、4.0倍以上とするのがより好ましい。長手方向と巾方向に延伸後、さらに、長手方向および/または巾方向に再延伸することにより、フィルムの弾性率を高めたり寸法安定性を高めたりすることもできる。
延伸に続き、樹脂のTmより(50〜10)℃低い温度で数秒間の熱固定処理と、熱固定処理と同時にフィルム巾方向に1〜10%の弛緩することが好ましい。熱固定処理後、フィルムをTg以下に冷却して二軸延伸フィルムを得る。
半芳香族ポリアミドフィルムの延伸においては、上記のように、フィルム厚み精度が良く、フィルム巾方向の物性が均一であることから、フラット式同時二軸延伸法が最適である。フラット式同時二軸延伸法のための延伸装置としては、スクリュー式テンター、パンタグラフ式テンター、リニアモーター駆動クリップ式テンターなどを用いることができる。
延伸倍率は、最終的に得られる半芳香族ポリアミドフィルムの耐熱性や力学強度が優れるために、縦方向(MD)および横方向(TD)にそれぞれ1.5〜10倍の範囲であることが好ましく、2〜5倍であることがより好ましい。
延伸速度は、MDとTDの延伸歪み速度がいずれも400%/minを超えることが好ましく、800〜12000%/minであることがより好ましく、1200〜6000%/minであることがより好ましい。歪み速度が400%/min以下であると、延伸の途中で結晶が成長して、フィルムが破断し、反対に歪み速度が速すぎると、未延伸シートは、変形に追随できなくなって破断する場合がある。
延伸温度は、半芳香族ポリアミド樹脂のTg以上であることが好ましく、Tgを超えかつ(Tg+50)℃以下であることがより好ましい。延伸温度がTg未満の場合は、フィルムの破断が生じやすく、安定した製造を行うことができず、反対に(Tg+50)℃を超えると、延伸ムラが生じる場合がある。
半芳香族ポリアミドフィルムは、上記のような延伸を行った後、延伸時に使用したクリップでフィルムを把持したまま、必要に応じて熱固定処理を行うことが好ましい。好ましい熱固定処理温度は、250〜(Tm−5)℃であり、280〜(Tm−10)℃であることがより好ましい。熱固定処理温度が250℃未満である場合、延伸前に半芳香族ポリアミドフィルム上に設けられた、酸変性オレフィン樹脂を含有する樹脂層は、硬化反応が不十分となり、離型性が低下する。
さらに、熱固定処理を行った後、フィルムは、クリップに把持されたまま、必要に応じて1〜10%の弛緩処理を行うことが好ましく、3〜7%の弛緩処理を行うことがより好ましい。フィルムは、弛緩処理を行うことで、十分な寸法安定性を得られるようになる。
所望により熱固定処理や弛緩処理を行った後、冷却し、巻き取りロールに巻き取ることで、半芳香族ポリアミド樹脂延伸フィルムロールが得られる。得られた半芳香族ポリアミド樹脂延伸フィルムロールは、所望の巾にスリットすることができる。
(多層フィルム基材)
上記製造方法によって単層のフィルムが得られるが、積層フィルムを構成する基材は、2種以上の層を積層してなる多層フィルムであってもよい。
多層フィルムは、上記製造方法において、それぞれの層を構成する樹脂を別々に溶融して、複層ダイスを用いて押出し、固化前に積層融着させた後、二軸延伸、熱固定する方法や、2種以上の樹脂を別々に溶融、押出してそれぞれフィルム化し、未延伸状態で、または延伸後に、それらを積層融着させる方法などによって製造することができる。プロセスの簡便性から、複層ダイスを用い、固化前に積層融着させることが好ましい。
本発明の積層フィルムを構成する基材は、単層構成であっても多層構成(例えば、二種二層、二種三層、三種三層、四層またはそれ以上の多層等)であってもよいが、片面ごとに表面粗度を制御でき、巻取り性などのハンドリング性を向上させることができる観点から、複層構成であることが好ましい。二種二層、二種三層の構成がより好ましく、二種二層がさらに好ましい。二種二層の構成とは、二種類の層形成用材料を用いて製造された二層構成のことであり、これらの二層は組成(例えば、粒子含有量)が異なっている。二種三層の構成とは、二種類の層形成用材料を用いて製造された三層構成のことであり、2つの最外層と中間層とは組成(例えば、粒子含有量)が異なっている。三種三層の構成とは、三種類の層形成用材料を用いて製造された三層構成のことであり、これらの三層は互いに組成(例えば、粒子含有量)が異なっている。
(粒子)
基材は、易滑性の付与および各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を含有することも可能である。しかし、基材が、離型層が積層される面側に粒子を含有すると、離型層は、表面粗さが粗くなることがあり、被着体と張り合わせた際の酸素バリア性能が低下することから、離型層を積層する面側の基材は、粒子を含有しないことが好ましい。
含有する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等が挙げられる。さらに、基材を構成する樹脂の製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
一方、含有する粒子の形状も、特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
また、粒子の平均粒径は、通常5μm以下、好ましくは0.1〜3μmの範囲である。平均粒径が5μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、例えば、転写用に使用する場合、転写する成型面の表面形状に影響を与える場合がある。
粒子含有量は、通常5質量%以下、好ましくは0.0003〜3質量%の範囲である。粒子含有量が5質量%を超える場合には、フィルムの透明性が不十分になることがある。
粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、各層を構成する樹脂を製造する任意の段階において添加することができる。ポリエステルを製造する工程の場合、好ましくはエステル化もしくはエステル交換反応終了後、添加するのがよい。
(添加剤)
基材は、必要に応じ、添加剤、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、ピニング剤等を含有することができる。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物等が挙げられ、熱安定剤としては、リン系化合物等が挙げられ、紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物等が挙げられる。
基材の厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されないが、機械的強度、ハンドリング性および生産性などの点から、通常5〜300μmであり、10〜150μmが好ましい。
<離型層>
本発明の積層フィルムは、積層フィルムの少なくとも一方の最表層に、離型層が設けられたものである。
離型層を構成する成分としては、シリコーン系化合物、含フッ素共重合体、ポリオレフィン系樹脂、酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シアナート樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、長鎖アルキル基含有化合物、アクリル樹脂、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類、およびそれらの混合物が挙げられる。離型層を構成する成分は、離型性の観点より、ポリオレフィン系樹脂、酸変性ポリオレフィン樹脂、シリコーン系化合物、フッ素系化合物、長鎖アルキル基含有化合物、アクリル樹脂やそれらの混合物が好ましく、さらに、酸変性ポリオレフィン樹脂と架橋剤とを含有するか、または、長鎖アルキル基含有化合物とポリビニルアルコールと架橋剤とを含有することが好ましい。
(酸変性ポリオレフィン樹脂)
酸変性ポリオレフィン樹脂は、オレフィン成分を主成分とし、酸変性成分により変性された樹脂である。
酸変性ポリオレフィン樹脂を構成するオレフィン成分は、エチレン、プロピレン、ブテンから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
アクリル粘着剤との離型性の観点では、エチレンを含むことがより好ましい。アクリル粘着剤との離型性をさらに向上させる観点で、オレフィン成分におけるエチレンの含有量は50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
また、エポキシプリプレグとの離型性の観点では、プロピレンを含むことがより好ましい。エポキシプリプレグとの離型性をさらに向上させる観点で、オレフィン成分におけるプロピレンの含有量は、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、99質量%以上であることが特に好ましい。
酸変性ポリオレフィン樹脂を構成する酸変性成分としては、不飽和カルボン酸成分が挙げられ、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等が挙げられる。中でも、後述する樹脂の水性分散化において、樹脂を安定的に分散するために、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸が特に好ましい。これらの酸変性成分は酸変性ポリオレフィン樹脂中に2種類以上含まれていてもよい。
酸変性ポリオレフィン樹脂における酸変性成分の割合は、1〜10質量%であることが好ましく、2〜9質量%であることがより好ましい。酸変性成分が1質量%未満の場合は、離型層に含まれる酸変性ポリオレフィン樹脂中の極性基の割合が少なくなるため、離型層は、基材との十分な密着性が得られない傾向にあり、離型層から離型した被着体を汚染することがある。さらに後述する樹脂の水性分散化において、樹脂を安定的に分散するのが困難になる傾向がある。一方、酸変性成分の割合が10質量%を超える場合は、極性基の割合が多くなるため、離型層と基材との密着性が十分にはなるが、離型層と被着体との密着性も同時に高くなるため、被着体との離型性が低下する傾向がある。
また、基材との密着性をさらに向上させる理由から、酸変性ポリオレフィン樹脂は、側鎖に酸素原子を含むエチレン性不飽和成分を含有してもよい。
側鎖に酸素原子を含むエチレン性不飽和成分としては、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜30のアルコールとのエステル化物が挙げられ、中でも入手のし易さの点から、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルコールとのエステル化物が好ましい。そのような化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらの混合物を用いてもよい。この中で、ポリエステルフィルムとの接着性の点から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチルがより好ましく、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルがさらに好ましく、アクリル酸エチルが特に好ましい。「(メタ)アクリル酸〜」とは、「アクリル酸〜またはメタクリル酸〜」を意味する。
側鎖に酸素原子を含むエチレン性不飽和成分は、酸変性成分と同様、分子内に極性基を有している。そのため側鎖に酸素原子を含むエチレン性不飽和成分を酸変性ポリオレフィン樹脂中に含めることによって、離型層は、基材との密着性が高くなる。しかし、側鎖に酸素原子を含むエチレン性不飽和成分量が多すぎると、オレフィン由来の樹脂の性質が失われ、離型層は、被着体との離型性が低下する可能性がある。酸変性ポリオレフィン樹脂中における、側鎖に酸素原子を含むエチレン性不飽和成分の割合は、1〜40質量%であることが好ましく、2〜35質量%であることがより好ましく、3〜30質量%であることがさらに好ましく、6〜18質量%であること特に好ましい。
なお、側鎖に酸素原子を含むエチレン性不飽和成分を含有する酸変性ポリオレフィン樹脂を用いても、基材との密着性以外に離型層が有する離型性を損ねることがない。
酸変性ポリオレフィン樹脂には、その他のモノマーが、少量、共重合されていてもよい。その他のモノマーとして、例えば、ジエン類、(メタ)アクリロニトリル、ハロゲン化ビニル類、ハロゲン化ビニリデン類、一酸化炭素、二酸化硫黄等が挙げられる。
酸変性ポリオレフィン樹脂を構成する各成分は、酸変性ポリオレフィン樹脂中に共重合されていればよく、その形態は限定されない。共重合の状態としては、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)などが挙げられる。
酸変性ポリオレフィン樹脂の融点は80〜200℃であることが好ましく、90〜150℃であることがより好ましい。融点が200℃を超える場合は、基材表面への離型層形成時に、高温処理が必要となる場合がある。一方、融点が80℃未満では、離型層は離型性が低下する。
本発明に用いることができる酸変性ポリオレフィン樹脂としては、アルケマ社製のボンダインシリーズ、三井・デュポンポリケミカル社製のニュクレルシリーズや、日本ポリエチレン社製のレクスパールシリーズ、三洋化成社製のユーメックスシリーズ、エボニック社製のベストプラストシリーズ、ダウ・ケミカル社製のプリマコールシリーズ、三井化学社製のアドマ―シリーズ、東洋紡社製のトーヨータックシリーズなどの商品が挙げられる。
(長鎖アルキル基含有化合物)
長鎖アルキル基含有化合物とは、炭素数が通常6以上、好ましくは8以上、さらに好ましくは12以上の直鎖または分岐のアルキル基を有する化合物のことである。アルキル基としては、例えば、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ラウリル基、オクタデシル基、ベヘニル基等が挙げられる。なお、アルキル基の炭素数の上限は通常30である。長鎖アルキル基含有化合物の種類としては、例えば、各種の長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物、長鎖アルキル基含有アミン化合物、長鎖アルキル基含有エーテル化合物、長鎖アルキル基含有四級アンモニウム塩等が挙げられる。耐熱性、汚染性を考慮すると高分子化合物であることが好ましい。また、効果的に離型性を得られるという観点から、長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物がより好ましい。
長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物は、反応性基を有する高分子化合物と、この反応性基と反応可能な長鎖アルキル基を有する化合物とを反応させて得ることができる。上記反応性基としては、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、酸無水物等が挙げられる。これらの反応性基を有する高分子化合物としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリエチレンアミン、反応性基含有ポリエステル樹脂、反応性基含有ポリ(メタ)アクリル樹脂等が挙げられる。これらの中でも離型性や取り扱い易さを考慮するとポリビニルアルコールが好ましい。
上記の反応性基と反応可能な長鎖アルキル基を有する化合物としては、例えば、ヘキシルイソシアネート、オクチルイソシアネート、デシルイソシアネート、ラウリルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、ベヘニルイソシアネート等の長鎖アルキル基含有イソシアネート、ヘキシルクロライド、オクチルクロライド、デシルクロライド、ラウリルクロライド、オクタデシルクロライド、ベヘニルクロライド等の長鎖アルキル基含有酸クロライド、長鎖アルキル基含有アミン、長鎖アルキル基含有アルコール等が挙げられる。これらの中でも離型性や取り扱い易さを考慮すると長鎖アルキル基含有イソシアネートが好ましく、オクタデシルイソシアネートが特に好ましい。
また、長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物は、長鎖アルキル(メタ)アクリレートの重合物や長鎖アルキル(メタ)アクリレートと他のビニル基含有モノマーとの共重合によって得ることもできる。長鎖アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(ポリビニルアルコール)
本発明において、離型層は、離型性向上の観点でポリビニルアルコールを含有していることが好ましい。ポリビニルアルコールは、特に限定されないが、ビニルエステルの重合体を完全または部分ケン化したものなどが挙げられる。ポリビニルアルコールは、離型層中に含有することによって、離型層と基材との密着性を向上させ、また離型層と被着体との離型性を向上させる効果を奏する。本発明におけるポリビニルアルコールは、後述のように液状物として使用する場合のために、水溶性を有していることが好ましい。
ポリビニルアルコールは、離型層の表面平滑性、高温域での離型性の観点で、ケン化度が99%以下であることが好ましく、98%以下であることがより好ましく、95%以下であることがさらに好ましい。
ポリビニルアルコールの含有量は、離型層の表面粗さの平滑性や離型層と基材との密着性向上や離型層と被着体との離型性を向上させる観点から、上記樹脂100質量部に対して10〜1000質量部であることが好ましく、100〜1000質量部であることがより好ましく、210〜800質量部であることがさらに好ましく、300〜600質量部であることが特に好ましい。
本発明においては、ポリビニルアルコールとして市販のものを使用することができ、例えば、日本酢ビ・ポバール社製の「J−ポバール」の「JP−15」や「JT−05」、「JL−05E」、「JM−33」、「JM−17」、「JF−05」、「JF−10」クラレ社製の「クラレポバール」の「PVA−CST」、「PVA−624」、「PVA−203」、「PVA−220」、「PVA−405」などを使用することができる。
(架橋剤)
本発明において、離型層は、上記樹脂やポリビニルアルコールとともに架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤を含むことにより離型層の構成成分が架橋して離型性が向上し、離型層の凝集力を向上させて被着体に移行しにくくさせたり、耐水性を向上させたりすることができる。
架橋剤の含有量は、上記樹脂100質量部に対して1〜20質量部であることが好ましく、2〜15質量部であることがより好ましく、2〜10質量部であることがさらに好ましい。架橋剤の含有量が1質量部未満であると、離型層は、凝集力が弱くなり、基材との密着性に劣り、被着体に移行しやすくなる傾向にある。一方、20質量部を超えると、離型層は、被着体との間で反応し離型性に乏しくなったり、離型層を形成するための液状物が増粘し、安定性が低下することがある。
架橋剤としては、カルボキシル基と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物等を用いることができ、多官能エポキシ化合物;多官能イソシアネート化合物;多官能アジリジン化合物;カルボジイミド基含有化合物;オキサゾリン基含有化合物;フェノール樹脂;および尿素化合物、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等のアミノ樹脂等が挙げられる。これらのうちの1種類を使用しても2種類以上を併用してもよい。このうち、多官能イソシアネート化合物、メラミン化合物、尿素化合物、多官能エポキシ化合物、カルボジイミド基含有化合物、オキサゾリン基含有化合物等が好ましく、カルボジイミド基含有化合物、オキサゾリン基含有化合物がより好ましく、オキサゾリン基含有化合物がさらに好ましい。オキサゾリン基含有化合物を用いることにより、被着体との離型性、基材との密着性に優れた積層フィルムを得ることが可能となる。また、これらの架橋剤は組み合わせて使用してもよい。
多官能エポキシ化合物としては、具体的にはポリエポキシ化合物、ジエポキシ化合物等を用いることができる。ポリエポキシ化合物としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルが使用可能である。ジエポキシ化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテルが使用可能である。
多官能イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、1,6−ジイソシアネートヘキサン、トリレンジイソシアネートとヘキサントリオールの付加物、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、ポリオール変性ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3′−ビトリレン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート等が使用可能である。これらのイソシアネート基を重亜硫酸塩類およびスルホン酸基を含有したフェノール類、アルコール類、ラクタム類、オキシム類および活性メチレン化合物類等でブロックしたブロックイソシアネート化合物を用いてもよい。
多官能イソシアネート化合物の市販品としては、例えば、BASF社製「バソナートHW−100」などが挙げられる。
多官能アジリジン化合物としては、例えば、N,N′−ヘキサメチレン−1,6−ビス−(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート等が使用可能である。
カルボジイミド基含有化合物としては、分子中に1つ以上のカルボジイミド基を有しているものであれば特に限定されるものではない。カルボジイミド化合物は、1つのカルボジイミド部分において、酸変性ポリオレフィン樹脂の酸変性部分における2つのカルボキシル基とエステルを形成し、架橋を達成する。例えば、p−フェニレン−ビス(2,6−キシリルカルボジイミド)、テトラメチレン−ビス(t−ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサン−1,4−ビス(メチレン−t−ブチルカルボジイミド)等のカルボジイミド基を有する化合物や、カルボジイミド基を有する重合体であるポリカルボジイミド等が使用可能である。これらの1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、取り扱いやすさから、ポリカルボジイミドが好ましい。
ポリカルボジイミドの市販品としては、日清紡社製のカルボジライトシリーズが挙げられ、具体的には、水溶性タイプの「SV−02」、「V−02」、「V−02−L2」、「V−04」;エマルションタイプの「E−01」、「E−02」;有機溶液タイプの「V−01」、「V−03」、「V−07」、「V−09」;無溶剤タイプの「V−05」が挙げられる。
オキサゾリン基含有化合物としては、分子中にオキサゾリン基を2つ以上有しているものであれば、特に限定されるものではない。オキサゾリン化合物は、2つのオキサゾリン部分のそれぞれにおいて、酸変性ポリオレフィン樹脂の酸変性部分における1つのカルボキシル基とアミドエステルを形成し、架橋を達成する。このような重合体は、付加重合性オキサゾリン基含有モノマー単独もしくは他のモノマーとの重合によって作成できる。付加重合性オキサゾリン基含有モノマーは、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等を挙げることができる。付加重合性オキサゾリン基含有モノマーは、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらの中でも2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。他のモノマーは、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば制限なく、例えばアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基)等の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸およびその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等の不飽和カルボン酸類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N、N−ジアルキルアクリルアミド、N、N−ジアルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等の含ハロゲンα、β−不飽和脂肪族モノマー類;スチレン、α−メチルスチレン等のα、β−不飽和芳香族モノマー等を挙げることができる。他のモノマーは、これらの1種または2種以上のモノマーを使用することができる。これらの中でも、取り扱いやすさからオキサゾリン基含有ポリマーが好ましい。
オキサゾリン基含有ポリマーの市販品としては、日本触媒社製のエポクロスシリーズが挙げられ、具体的には、水溶性タイプの「WS−500」、「WS−700」;エマルションタイプの「K−1010E」、「K−1020E」、「K−1030E」、「K−2010E」、「K−2020E」、「K−2030E」などが挙げられる。
フェノール樹脂としては、例えば、フェノールやビスフェノールA、p−t−ブチルフェノール、オクチルフェノール、p−クミルフェノール等のアルキルフェノール、p−フェニルフェノール、クレゾール等を原料として調製したレゾール型フェノール樹脂および/またはノボラック型フェノール樹脂が使用可能である。
尿素樹脂としては、例えば、ジメチロール尿素、ジメチロールエチレン尿素、ジメチロールプロピレン尿素、テトラメチロールアセチレン尿素、4−メトキシ5−ジメチルプロピレン尿素ジメチロールが使用可能である。
メラミン樹脂は、例えば、官能基としてイミノ基、メチロール基、および/またはアルコキシメチル基(例えばメトキシメチル基、ブトキシメチル基)を1分子中に有する化合物である。メラミン樹脂としては、イミノ基型メチル化メラミン樹脂、メチロール基型メラミン樹脂、メチロール基型メチル化メラミン樹脂、完全アルキル型メチル化メラミン樹脂等が使用可能である。その中でもメチロール化メラミン樹脂が最も好ましい。さらに、メラミン系樹脂の熱硬化を促進するため、例えばp−トルエンスルホン酸等の酸性触媒を用いることが好ましい。
ベンゾグアナミン樹脂としては、例えば、トリメチロールベンゾグアナミン、ヘキサメチロールベンゾグアナミン、トリスメトキシメチルベンゾグアナミン、ヘキサキスメトキシメチルベンゾグアナミン等が使用可能である。
(離型層の特性)
本発明において、積層フィルムの最表面を構成する離型層の表面は、ガスバリア性向上の観点から、表面粗さパラメーターSa(算術平均高さ)が0.05μm以下であることが必要であり、0.001〜0.050μmであることが好ましく、0.001〜0.030μmであることがより好ましく、0.001〜0.010μmであることがさらに好ましい。離型層の表面粗さが上記範囲であることにより、被着体と貼り合わせて酸素が存在する環境下において熱処理した場合であっても、本発明の積層フィルムは、酸素バリア性能が低下することなく、貼り合わせた被着体を酸素から保護することができる。
本発明の積層フィルムは、粘着材料としてのアクリル系被着体を離型層に貼り付けて測定したときの、離型層と被着体との間の剥離力は、3.0N/cm以下であることが好ましく、2.8N/cm以下であることがより好ましく、2.6N/cm以下であることがさらに好ましい。剥離力が3.0N/cmを超えると、重剥離であり、離型用フィルムとして実用的に使用することが難しくなる。
本発明の積層フィルムは、エポキシプリプレグを離型層に貼り付けて測定したときの、離型層とエポキシプリプレグとの間の剥離力は、1.5N/cm以下であることが好ましく、0.01〜1.0N/cmであることがより好ましく、0.02〜0.8N/cmであることがさらに好ましい。剥離力が1.5N/cmを超える場合、エポキシプリプレグから剥離しにくくなり、ハンドリング性が低下する。前記したエポキシプリプレグとの剥離強度は、エポキシプリプレグを一対の離型シートではさみ、15kg/cmの加圧下において190℃または230℃で70分間保持し、エポキシプリプレグを硬化させた後に測定する。
本発明において離型層の厚みは、0.01〜1μmであることが好ましく、0.03〜0.7μmであることがより好ましく、0.05〜0.5μmであることがさらに好ましい。離型層の厚みが0.01μm未満であると、十分な離型性が得られず、1μmを超えると、被着体に移行しやすくなり、またコストアップとなるため好ましくない。
<ガスバリア層>
本発明の積層フィルムは、ガスバリア層が積層されていることが必要である。
ガスバリア層は、基材との密着性の観点や、積層フィルムを繰り返し使用した際においてもガスバリア層に割れやクラックが生じにくいなどの観点から、有機化合物を含有することが必要である。
ガスバリア層を構成する有機化合物は、特に限定はなく、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリビニルアルコール、ビニルアルコールとエチレンの共重合体(EVOH)、ポリカルボン酸類などが挙げられる。ガスバリア層を構成する有機化合物は、架橋構造が形成されると、高温環境下で使用しても、ガスバリア性能を維持することができる。架橋構造形成可能な有機化合物としては、例えば、ポリカルボン酸またはその無水物を含有するものが挙げられる。
(ポリカルボン酸類)
ポリカルボン酸類は、分子中にカルボキシル基を2個以上有する化合物またはその無水物である。無水物の場合、全てのカルボキシル基が無水物構造を有していてもよいし、その一部のカルボキシル基が無水物構造を有していてもよい。また、ポリカルボン酸類は、単量体または重合体のいずれの形態であってもよい。
ポリカルボン酸類の具体例としては、a)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等の単量体化合物、b)ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸−メタクリル酸共重合体、アクリル酸−マレイン酸共重合体、アクリル酸−無水マレイン酸共重合体等の(メタ)アクリル酸のホモポリマーまたは共重合体、c)ポリマレイン酸、エチレン−マレイン酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体等のオレフィン−マレイン酸系共重合体、d)アルギン酸のように側鎖にカルボキシル基を有する多糖類、e)カルボキシル基を有するポリアミドまたはポリエステル等を例示することができる。これらポリカルボン酸類は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
ポリカルボン酸類が重合体である場合、その重量平均分子量は特に制限されないが、一般的には1,000〜1,000,000であることが好ましく、特に10,000〜150,000であることがより好ましく、その中でも15,000〜110,000であることが最も好ましい。ポリカルボン酸類の重量平均分子量が低すぎると、得られるガスバリア層は脆弱になり、一方、分子量が高すぎるとハンドリング性が損なわれ、場合によっては後述するガスバリア層を形成するための塗工液中で凝集し、得られるガスバリア層のガスバリア性が損なわれるおそれがある。
本発明において、ポリカルボン酸類として、オレフィン−マレイン酸系共重合体を用いることが好ましく、特にエチレン−マレイン酸系共重合体(EMA)を用いることがより好ましい。EMAを用いることによって、より優れたガスバリア性を得ることができる。EMAは、公知または市販のものを使用することができる。また、公知の製造方法によって得られたものを使用することもでき、例えば、無水マレイン酸とエチレンとを用いて溶液ラジカル重合等の方法で重合して得られた共重合体を使用することができる。
EMA中のマレイン酸単位は、5モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましく、30モル%以上であることがさらに好ましく、35モル%以上であることが最も好ましい。なお、オレフィン−マレイン酸系共重合体中のマレイン酸単位は、乾燥状態では隣接カルボキシル基が脱水環化した無水マレイン酸構造となりやすく、湿潤時または水溶液中では開環してマレイン酸構造となる。このため、本発明においては、特記しない限り、マレイン酸単位と無水マレイン単位とを総称してマレイン酸単位という。
また、EMAの重量平均分子量は、通常1,000〜1,000,000程度とすればよいが、好ましくは3,000〜500,000とし、より好ましくは7,000〜300,000とし、最も好ましくは10,000〜200,000とする。
ガスバリア層中におけるポリカルボン酸類の含有量は、特に限定されず、用いるポリカルボン酸類の種類等に応じて適宜設定でき、通常は40〜90質量%程度とし、特に50〜80質量%とすることが望ましい。
(ポリアルコール)
本発明の積層フィルムにおけるガスバリア層は、ポリカルボン酸類とともに、他の成分(特に、ポリカルボン酸類と反応してボリカルボン酸類を架橋する成分)が含まれていてもよい。例えば、本発明の積層フィルムでは、ガスバリア層がポリアルコール等を含有することが好ましい。ガスバリア層は、ポリカルボン酸類とともにポリアルコールを含有することによって、より高いガスバリア性を得ることができる。
ポリアルコールは、分子内に2個以上の水酸基を有する化合物であり、その限りにおいて低分子化合物または高分子化合物(重合体)のいずれであってもよい。例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール等の糖アルコール、グルコース等の単糖類、マルトース等の二糖類、ガラクトオリゴ糖等のオリゴ糖が挙げられる。高分子化合物としては、例えばポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、でんぷん等の多糖類が挙げられる。上記ポリアルコールは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
ポリアルコールがポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体等である場合、ケン化度は、限定的ではなく、通常は95モル%以上であることが好ましく、98モル%以上であることがより好ましい。また、平均重合度は、50〜2,000であることが好ましく、200〜1,000であることがより好ましい。これによって、より優れたガスバリア性を得ることができる。
ポリアルコールの含有量は、限定的ではないが、ポリアルコール中に含まれるOH基とポリカルボン酸類中に含まれるCOOH基(無水物の場合は無水物基を2個のCOOH基と換算する。)とのモル比(OH基/COOH基)が、0.01〜20となるように設定することが好ましく、0.01〜10となるように設定することがより好ましく、0.02〜5となるように設定することがさらに好ましく、0.04〜2となるように設定することが最も好ましい。これによって、より優れたガスバリア性を得ることができる。
(架橋剤)
本発明におけるガスバリア層は、架橋剤を含有してもよい。架橋剤を含有することによって、ガスバリア性を高めることができる。
ガスバリア層における架橋剤の含有量は、ポリカルボン酸100質量部に対して、0.1〜30質量部であることが好ましく、1〜20質量部であることがより好ましい。
架橋剤としては、自己架橋性を有する化合物や、カルボキシル基と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物が挙げられ、ガスバリア層がポリアルコールを含有する場合は、水酸基と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物でもよい。具体的な架橋剤としては、イソシアネート化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、炭酸ジルコニウムアンモニウムなどのジルコニウム塩化合物、金属アルコキシド等が好ましく挙げられる。これらの架橋剤は、組み合わせて使用してもよい。
また、ガスバリア層中のポリカルボン酸類を金属化合物(金属イオン)とイオン架橋反応することによって、より優れたガスバリア性を得ることができる。
金属化合物は、基材中に含有させてもよいし、ガスバリア層の上に積層されるオーバーコート層中に含有させてもよいが、基材中に含有させることにより、優れたバリア性を得ることができる。金属化合物を基材中に含有させる際は、ガスバリア層中のポリカルボン酸類と金属化合物をイオン架橋させる必要があるため、基材上にガスバリア層が積層されていることが好ましい。
金属化合物を構成する金属としては、特に限定されず、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等の1価の金属、マグネシウム、カルシウム、ジルコニウム、亜鉛、銅、コバルト、鉄、ニッケル、アルミニウム等の2価以上の金属が挙げられる。金属の種類は1種に限定されず、2種以上であってもよい。
これらの中でも、ガスバリア層を構成するポリカルボン酸類と反応しやすいという点でイオン化傾向の高い金属が好ましく、ガスバリア性という観点から2価の金属が好ましい。従って、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムおよび亜鉛の少なくとも1種であることが好ましく、特にマグネシウム、カルシウムおよび亜鉛の少なくとも1種であることがより好ましい。
本発明において金属化合物は、上記金属を含有する化合物であればよく、特に限定されない。例えば、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、無機酸塩(炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、硫酸塩等)、有機酸塩(カルボン酸塩(酢酸塩、ギ酸塩、ステアリン酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩)、スルホン酸塩等)が挙げられる。本発明では、優れたガスバリア性を発現させるという点で特に酸化物または炭酸塩であることが好ましい。
上記の金属化合物のうち、好ましい例として、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、塩化カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛、酸化亜鉛、炭酸亜鉛等の少なくとも1種を挙げることができる。
ガスバリア性の観点からは、2価金属化合物が好ましく、特にマグネシウム化合物、カルシウム化合物および亜鉛化合物の少なくとも1種を用いることがより好ましい。従って、例えば酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、酸化亜鉛および酢酸亜鉛の少なくとも1種を好適に用いることができる。また、基材の透明性の観点からは、1価金属化合物および2価金属化合物の少なくとも1種が好ましく、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物の少なくとも1種がより好ましい。従って、例えば炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムおよび水酸化マグネシウムの少なくとも1種を好適に用いることができる。
金属化合物は、必要に応じて表面処理(表面皮膜形成処理)を施すことができる。これにより、分散性、耐候性、熱可塑性樹脂との濡れ性、耐熱性、透明性等を改善することができる。表面処理は、公知の無機処理または有機処理を採用することができる。無機処理としては、例えばアルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化アンチモン、酸化亜鉛等を金属化合物の粒子表面に形成する処理が挙げられる。有機処理としては、例えば、脂肪酸化合物、ペンタエリトリット、トリメチロールプロパン等のポリオール化合物、トリエタノールアミン、トリメチロールアミン等のアミン化合物、シリコーン樹脂、アルキルクロロシラン等のシリコーン系化合物を金属化合物の粒子表面に形成する処理が挙げられる。
基材中の金属化合物の含有量は、通常0.1〜20質量%であり、0.1〜18質量%であることが好ましく、0.2〜15質量%であることがより好ましく、0.3〜10質量%であることがさらに好ましく、ヘイズの観点からは、5質量%以下であることが好ましい。金属化合物の含有量が0.1〜20質量%であると、優れたガスバリア性と機械物性を得ることができる。これに対し、金属化合物の含有量が0.1質量%未満であると、ガスバリア層のポリカルボン酸類と反応して形成されるイオン架橋構造が少なくなり、所望のガスバリア性が得られなくなる。一方、上記含有量が20質量%を超えると、製膜時の延伸において破断する頻度が高くなり、生産性が低下しやすくなり、機械物性も低下しやすくなる。
(添加物)
ガスバリア層には、ガスバリア性、基材との接着性等を大きく損なわない限りにおいて、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、強化材、顔料、劣化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、離型剤、滑剤、防腐剤、消泡剤、濡れ剤、粘度調整剤等が添加されていてもよい。
熱安定剤、酸化防止剤、劣化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン類、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物等が挙げられ、これらを混合して使用してもよい。
強化材としては、例えばクレー、タルク、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、珪酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、ゼオライト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、フッ素雲母、金属繊維、金属ウィスカー、セラミックウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、窒化ホウ素、グラファイト、ガラス繊維、炭素繊維、フラーレン(C60、C70等)、カーボンナノチューブ等が挙げられる。
ガスバリア層の厚みは、積層フィルムのガスバリア性をより確実に得るために0.05μm以上であることが好ましい。厚みの上限値は、特に制限されないが、経済性等の見地より5μm程度であることが好ましい。
<積層フィルム>
本発明の積層フィルムは、離型層、基材、ガスバリア層を含むものであり、少なくとも一方の最表層が離型層である。本発明の効果を損なわない範囲で、離型層と基材層との層間や、離型層とガスバリア層との層間や、基材とガスバリア層との層間、また、離型層が積層されていない積層フィルム表面に、他の層が積層されてもよい。上記層間に積層される層としては、易接着層などの層が挙げられ、上記表面に積層される層としては、帯電防止層などの層が挙げられる。
本発明の積層フィルムは、被着体と貼り合わせて酸素が存在する環境下において熱処理(例えば、180℃で30分間)した場合であっても、酸素バリア性能を維持することができる。ガスバリア層が積層された離型フィルムは、離型層表面の表面粗さパラメーターSa(算術平均高さ)が0.05μmを超えていると、酸素が存在する環境下の熱処理において、被着体の透明性が低下する場合があった。本発明の積層フィルムは、被着体と貼り合わせて酸素が存在する環境下において180℃で30分熱処理した場合であっても酸素バリア性能が維持されるため、被着体のヘーズの増加を抑制することができる。
本発明の積層フィルムは、ガスバリア層が有機化合物を含有することから、ガスバリア層の割れやクラックが生じにくく、離型フィルムとして繰り返し使用しても良好な酸素バリア性を示す。具体的には、耐久試験機で折り畳む屈曲試験を30万回行った後の積層フィルムでの20℃、85%RHの雰囲気における酸素透過度は50cc/(m・atm・day)以下であることが好ましく、さらには20cc/(m・atm・day)以下が好ましく、10cc/(m・atm・day)以下がさらに好ましい。
<積層フィルムの製造方法>
本発明の積層フィルムの一例として、離型層/基材/ガスバリア層からなる構成の積層フィルムを挙げて、以下、その製造方法を説明する。
本発明の積層フィルムの製造方法は、基材の片面に離型層形成用液状物を塗布する工程や、離型層形成用液状物が塗布された基材を乾燥、延伸する工程を含む。また、基材の片面にガスバリア層形成用液状物を塗布し、ガスバリア層形成用液状物が塗布された基材を乾燥し、延伸する工程を含む。
本発明において、離型層形成用液状物やガスバリア層形成用液状物を構成する液状媒体は、水性媒体であることが好ましい。水性媒体とは、水と両親媒性有機溶剤とを含み、水の含有量が2質量%以上である溶媒を意味し、水のみでもよい。
両親媒性有機溶剤とは、20℃における有機溶剤に対する水の溶解性が5質量%以上である有機溶剤をいう(20℃における有機溶剤に対する水の溶解性については、例えば「溶剤ハンドブック」(講談社サイエンティフィク、1990年第10版)等の文献に記載されている)。
両親媒性有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジメチル等のエステル類、エチレングリコール−n−ブチルエーテル等のエチレングリコール誘導体類、そのほか、アンモニアを含む、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン等の有機アミン化合物、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンなどのラクタム類等を挙げることができる。
離型層形成用液状物は、この方法に限定されるものではないが、たとえば酸変性ポリオレフィン樹脂の液状物に、ポリビニルアルコール、架橋剤を添加することにより、調製することができる。
酸変性ポリオレフィン樹脂の液状物としては、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体を用いることができる。酸変性ポリオレフィン樹脂を水性分散化する方法は、特に限定されないが、例えば、国際公開第02/055598号に記載された方法が挙げられる。
水性媒体中の酸変性ポリオレフィン樹脂の分散粒子径は、他の成分との混合時の安定性および混合後の保存安定性の点から、数平均粒子径が1μm以下であることが好ましく、0.8μm以下であることがより好ましい。このような粒径は、国際公開第02/055598号に記載の製法により達成可能である。なお、酸変性ポリオレフィン樹脂の数平均粒子径は動的光散乱法によって測定される。
酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体の固形分濃度は、特に限定されるものではないが、水性分散体の粘性を適度に保つためには、1〜60質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。
離型層形成用液状物の固形分濃度は、積層条件、目的とする厚さや性能等により適宜選択でき、特に限定されるものではない。しかし、液状物の粘性を適度に保ち、かつ、均一な離型層を形成させるためには、2〜30質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましい。
離型層形成用液状物には、その性能が損なわれない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、着色剤などを添加することもできる。
本発明において、離型層形成用液状物やガスバリア層形成用液状物を基材に塗布する方法としては、公知の方法、例えば、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等を挙げることができる。離型層形成用液状物の塗布においては、塗膜に微小な非平面形状の発生を抑制できるため、特に、グラビアロールコーティングが有効である。
液状物の塗布方法としては、予め延伸されたフィルムに塗布するオフライン方式と、液状物が塗布された基材フィルムを乾燥、延伸するインライン方式が知られており、本発明においては、離型層表面の表面粗さパラメーターSaを小さくできバリア性を向上するという観点で上記液状物をインライン方式で塗布する方が好ましい。インライン方式で塗布した場合は、液状物に分散する分散粒子が、基材フィルムに塗布された塗膜が延伸時の熱によって、延伸と同時に造膜でき粒子同士が融合することで、表面粗さパラメーターSaが小さくなる。
本発明の積層フィルムは、両面テープや粘着材料の保護フィルム用途に、また、液晶ディスプレイ用部品、プリント配線板などを製造する際の保護材料や工程材料用途に、また、イオン交換膜やセラミックグリーンシート、放熱シートなどのシート状構造体成形用途などに好適に用いることができる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。原料や積層フィルムの特性は下記の方法で測定した。
(1)ポリビニルアルコールのケン化率
ポリビニルアルコールのケン化率は、JIS K−6726に準拠して測定を行った。
(2)表面粗さパラメーターSa(算術平均高さ)
TAYLOR/Hobson社製タリサーフCCI6000を使用し、積層フィルムの離型層表面について、下記の条件で表面粗さパラメーターSa(算術平均高さ、μm)を10箇所測定し、平均して求めた。
測定長:0.66mm×0.66mm
カットオフ:ロバストガウシアンフィルタ、0.25mm
(3)アクリル系粘着剤に対する離型性
得られた積層フィルムの離型層側に、巾50mm、長さ150mmのアクリル系粘着テープ(日東電工社製No.31B/アクリル系粘着剤)をゴムロールで圧着して試料とした。試料を、金属板/ゴム板/試料/ゴム板/金属板の形で挟み、2kPa荷重、70℃の雰囲気で20時間放置し、その後30分以上冷却して常温に戻して剥離強度測定用試料を得た。
剥離強度測定用試料の、アクリル系粘着テープと積層フィルムとの剥離力を、23℃の恒温室で引張試験機(島津製作所社製オートグラフAGS−100B)にて、剥離角度180度、剥離速度300mm/分の条件で測定した。
(4)エポキシプリプレグに対する離型性
60mm×100mmの大きさのエポキシプリプレグ(住友ベークライト社製EI−6765)の両面を、得られた積層フィルムの離型層側で挟み、1.07kPa(8Torr)の真空プレス機中で、30℃から150℃まで15℃/分で昇温し、150℃で22分間保持した後、さらに5℃/分で190℃まで昇温し、5kg/cmの圧力を10分間かけた後、15kg/cmの圧力をかけながら、190℃で70分間保持した。その後、室温まで冷却を行うことで、試料を得た。
得られた試料の、硬化後のエポキシプリプレグと積層フィルムとの剥離力を、23℃の恒温室で引張試験機(島津製作所社製オートグラフAGS−100B)にて測定した。剥離角度は180度、剥離速度は300mm/分とした。
(5)エポキシプリプレグに対する高温処理後の離型性
上記(4)において、試料を作製する際の「15kg/cmの圧力をかけながら、190℃で70分間保持する」条件を、「15kg/cmの圧力をかけながら、230℃で70分間保持する」条件に変更した以外は同様にして試料を作製し、剥離力を測定した。
(6)酸素透過度
得られた積層フィルムの酸素透過度は、モコン社製酸素バリア測定器(OX−TRAN 2/20MH)を用いて、JIS K7126−2法に基づいて、温度20℃、相対湿度0%の雰囲気下において測定した。
(7)ガスバリア層の耐屈曲性
得られた積層フィルムを、80mm×100mmの長方形にカットして試験片を作製した。
作製した試験片を、温度20℃、湿度65%RHで十分に状態調整を行った後、耐久試験機(ユアサシステム機器社製、DLDMLH−FU型)に、曲げR半径が3.0mmとなるようにして取り付け、同雰囲気下、全面を180°折り畳む屈曲試験を30万回行った。
その後、酸素バリア測定器(モコン社製、OX−TRAN2/20)を用いて、(6)と同じ条件で酸素透過度を測定した。
(8)高温処理後の酸素透過度
得られた積層フィルムを230℃のオーブンに投入し、30分の加熱処理を行った後、モコン社製酸素バリア測定器(OX−TRAN 2/20MH)を用いて、(6)と同じ条件で酸素透過度を測定した。
(9)ガスバリア性能(ヘーズ変化量)
JIS−K7136:2000に基づき、ヘーズメーターNDH4000(日本電色製)を用いて、以下の手順で熱処理前後のヘーズ値を測定し、その差をヘーズ変化量とした。
耐熱性を有する透明粘着シート(日東電工製LUCIACS CS9621T)(200mm×200mm)の両面を、得られた積層フィルム(200mm×200mm)の離型層側で挟み、ゴムロールで圧着して貼り付けた。積層フィルムを貼り付けた状態の透明粘着シートのヘーズ値を測定した。
次に、積層フィルムを貼り付けた状態の透明粘着シートをオーブンに投入し、実施例1〜12、比較例1〜9においては、180℃で30分間の加熱処理を行い、実施例13〜17、比較例10〜11においては、230℃で30分間の加熱処理を行った。
加熱処理後、積層フィルムを貼り付けた状態の透明粘着シートの中央部(50mm×100mm)についてヘーズ値を測定した。加熱処理前後のヘーズ値の差を、ヘーズの変化量として求め、積層フィルムのガスバリア性能を評価した。なお、加熱処理は、酸素が存在する大気中で行った。
熱処理前後のヘーズ変化量としては、2.0%以下であることが好ましく、さらには1.0%以下であることが好ましく、0.5%以下であることが最も好ましい。
離型層形成用液状物を調製するための材料を、以下の方法により製造した。
<酸変性ポリオレフィン樹脂A−1の製造>
プロピレン−ブテン−エチレン三元共重合体(プロピレン/ブテン/エチレン=68.0/16.0/16.0(質量比))280gを、4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下で加熱溶融させた後、系内温度を170℃に保って攪拌下、不飽和カルボン酸として無水マレイン酸32.0gとラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド6.0gをそれぞれ1時間かけて加え、その後1時間反応させた。反応終了後、得られた反応生成物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させた。この樹脂をさらにアセトンで数回洗浄し、未反応の無水マレイン酸を除去した後、減圧乾燥機中で減圧乾燥して、酸変性ポリオレフィン樹脂A−1(酸変性量7.0%、融点135℃)を得た。
<酸変性ポリオレフィン樹脂A−2、A−3の製造>
上記酸変性ポリオレフィン樹脂A−1の製造において、プロピレン−ブテン−エチレン三元共重合体(プロピレン/ブテン/エチレン=68.0/16.0/16.0(質量比))を、プロピレン−エチレン共重合体(プロピレン/エチレン=99/1(質量比))に変更する以外は、同様にして、酸変性ポリオレフィン樹脂A−2(酸変性量2.3%、融点145℃)を得た。
また、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(エチレン/アクリル酸エチル=93/7(質量比))に変更する以外は、同様にして、酸変性ポリオレフィン樹脂A−3(酸変性量2.0%、融点105℃)を得た。
<酸変性ポリオレフィン樹脂A−1の水性分散体の製造>
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、上記方法で製造した60.0gの酸変性ポリオレフィン樹脂A−1と、45.0gのエチレングリコール−n−ブチルエーテル(沸点171℃)と、6.9gのN,N−ジメチルエタノールアミン(沸点134℃、樹脂中の無水マレイン酸単位のカルボキシル基に対して1.0倍当量)と、188.1gの蒸留水とを、上記のガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌した。そうしたところ、容器底部には樹脂の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を140℃に保ってさらに60分間撹拌した。その後、空冷にて、回転速度300rpmのまま撹拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した。さらに、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)することで、均一な酸変性ポリオレフィン樹脂A−1の水性分散体(固形分濃度25質量%)を得た。なお、フィルター上には残存樹脂はほとんどなかった。
<酸変性ポリオレフィン樹脂A−2、A−3の水性分散体の製造>
用いる酸変性ポリオレフィン樹脂をA−2、A−3に変更する以外は、前述した方法と同様の方法で、酸変性ポリオレフィン樹脂A−2、A−3の水性分散体(固形分濃度25質量%)を得た。
<長鎖アルキル基含有化合物A−4の製造>
4つ口フラスコにキシレン200部、オクタデシルイソシアネート600部を加え、攪拌下に加熱した。キシレンが還流し始めた時点から、平均重合度500、ケン化度88モル%のポリビニルアルコール100部を少量ずつ10分間隔で約2時間にわたって加えた。ポリビニルアルコールを加え終わってから、さらに2時間還流を行い、反応を終了した。反応混合物を約80℃まで冷却してから、メタノール中に加えたところ、反応生成物が白色沈殿として析出したので、この沈殿を濾別し、キシレン140部を加え、加熱して完全に溶解させた後、再びメタノールを加えて沈殿させるという操作を数回繰り返した後、沈殿をメタノールで洗浄し、乾燥粉砕して長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物A−4を得た。
離型層形成用液状物を調製するためのポリビニルアルコールとして、下記の水溶液を使用した。
・JT−05:日本酢ビ・ポバール社製JT−05、ケン化率94.5%、重合度500、固形分濃度8質量%
・VC−10:日本酢ビ・ポバール社製VC−10、ケン化率99.3%、重合度1,000、固形分濃度8質量%
架橋剤として、以下のものを使用した。
・WS−700:日本触媒社製エポクロスWS−700、オキサゾリン基含有化合物の水性溶液、固形分濃度25質量%
ガスバリア層形成用液状物を以下の方法により製造した。
<ガスバリア層形成用液状物B−1の製造>
化合物(A)を含む溶液として、重合度1000、ケン化率99.3%のポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール社製VC−10)を用い、ポリビニルアルコールの20質量%水溶液を作成した。また、化合物(B)を含む溶液として、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸(新日本理化社製リカシッドBTW)を用い、化合物(B)の有するカルボキシル基に対して10モル%の水酸化ナトリウムが配合された水溶液を作成した。
そして、化合物(A)と化合物(B)との割合が、質量比で、化合物(A)/化合物(B)=30/70となるようにそれぞれの水溶液を混合・攪拌して、固形分濃度20質量%のガスバリア層形成用液状物B−1を製造した。
<ガスバリア層形成用液状物B−2の製造>
エチレン−マレイン酸系共重合体(重量平均分子量60,000)とポリビニルアルコール(クラレ社製「ポバール105」、ケン化度98〜99%、平均重合度約500)の質量比(固形分)が70/30になるように混合して、固形分10質量%のガスバリア層形成用液状物B−2を製造した。
基材を構成する半芳香族ポリアミド樹脂を、以下の方法により製造した。
<ポリアミド9Tの製造>
テレフタル酸(TA)3289質量部、1,9−ノナンジアミン(NDA)2533質量部、2−メチル−1,8−オクタンジアミン(MODA)633質量部、安息香酸(BA)48.9質量部、次亜リン酸ナトリウム一水和物6.5質量部(前記のポリアミド原料4者の合計に対して0.1質量%)および蒸留水2200質量部を反応釜に入れ、窒素置換した。これらの原料のモル比(TA/BA/NDA/MODA)は99/2/80/20である。
反応釜の内容物を100℃で30分間攪拌した後、2時間かけて内部温度を210℃に昇温した。この時、反応釜の内部は2.12MPa(22kg/cm)まで昇圧した。そのまま1時間反応を続けた後、230℃に昇温し、その後2時間、230℃に温度を保ち、水蒸気を徐々に抜いて圧力を2.12MPa(22kg/cm)に保ちながら反応させた。次に、30分かけて圧力を0.98MPa(10kg/cm)まで下げ、さらに1時間反応させて、プレポリマーを得た。これを100℃の温度で減圧下で12時間乾燥した後、2mm以下の大きさまで粉砕した。
次いで、粉砕したプレポリマーを、温度230℃、圧力13.3Pa(0.1mmHg)の条件下で10時間固相重合してポリマーを得た。これを二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX44C」)に供給し、シリンダー温度320℃の条件下で溶融混練して押し出し、冷却、切断して、ポリアミド9Tのペレットを製造した。
<ポリアミド10T>
テレフタル酸(TA)489質量部、1,10−デカンジアミン(DDA)507質量部、安息香酸(BA)2.8質量部、次亜リン酸ナトリウム一水和物1.0質量部(前記のポリアミド原料3者の合計に対して0.1質量%)および蒸留水1000質量部を反応釜に入れ、窒素置換した。これらの原料のモル比(TA/BA/DDA)は99/2/100である。
反応釜の内容物を80℃で0.5時間、毎分28回転で撹拌した後、230℃に昇温した。その後、230℃で3時間加熱した。その後冷却し、反応生成物を取り出した。
該反応生成物を粉砕した後、乾燥機中において、窒素気流下、220℃で5時間加熱し、固相重合してポリマーを得た。これを二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX44C」)に供給し、シリンダー温度320℃の条件下で溶融混練して押し出し、冷却、切断して、ポリアミド10Tのペレット状を製造した。
実施例1
<離型層形成用液状物の調製>
酸変性ポリオレフィン樹脂A−1水性分散体と、ポリビニルアルコール水溶液「JT−05」と、架橋剤としてのオキサゾリン基含有化合物の水性溶液「WS−700」とを、それぞれ固形分が、100質量部と、500質量部と、7質量部とになるように混合し、最終固形分濃度が6.5質量%になるように水で調整して、離型層形成用液状物を得た。
<積層フィルムの製造>
ポリエチレンテレフタレート(A)として、後述のポリエチレンテレフタレート(B)に粒子径2.3μmのシリカ粒子を0.07質量%含有させたポリエチレンテレフタレート樹脂を用いた。
ポリエチレンテレフタレート(B)として、重合触媒が三酸化アンチモン、固有粘度が0.67、ガラス転移温度が78℃、融点が253℃のポリエチレンテレフタレート樹脂を用いた。
ポリエチレンテレフタレート(B)を押出機I(スクリュー径:50mm)に、またポリエチレンテレフタレート(A)を押出機II(スクリュー径:65mm)にそれぞれ投入して280℃で溶融後、それぞれの溶融体をTダイの出口に至る前で、層の厚み比(I/II)が33/5となり、総厚みが600μmとなるよう2層で合流積層させた。積層された溶融体を、複層ダイスのTダイ出口より押出し、Tダイ法−静電ピニング方式でキャスティングドラムに密着急冷し、厚さ600μmの未延伸フィルムを成形した。
続いてこの未延伸フィルムを90℃に加熱した縦延伸ロールで3.5倍に延伸した。
この縦延伸したフィルムの片面(ポリエチレンテレフタレート(A)からなる層の面)に、リバースグラビアコーターを用いて、ガスバリア層形成用液状物B−1を5g/m(WET換算)の塗布量になるように塗布し、その反対面(ポリエチレンテレフタレート(B)からなる層の面)にリバースグラビアコーターを用いて、離型層形成用液状物を5g/m(WET換算)の塗布量になるように塗布し、ガスバリア層形成用液状物と離型層形成用液状物が塗布された縦延伸フィルムを、横延伸テンターにおいて120℃で4.5倍延伸後、230℃で10秒間熱処理したのち、冷却し巻き取った。得られた積層フィルムの厚さは38μmであり、両側の離型層とガスバリア層の厚さはおよそ0.08μmであった。
実施例2〜6
表1に記載した構成の離型層形成用液状物に変更した以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
実施例7
ポリエチレンテレフタレート(A)として、ポリエチレンテレフタレート(B)に粒子径2.3μmのシリカ粒子0.07質量%と、酸化マグネシウム0.5質量%を含有させたポリエチレンテレフタレート樹脂を用い、また、ガスバリア層形成用水性分散体B−2を用いた以外は、実施例3と同様にして、積層フィルムを得た。
実施例8〜10
表1に記載した構成の離型層形成用液状物に変更した以外は、実施例7と同様にして積層フィルムを得た。
実施例11〜12
実施例1と同様にして、未延伸フィルムを得た。
未延伸フィルムをロール式縦延伸機で90℃の条件下、3.5倍に延伸して延伸フィルムを得た。
この縦延伸したフィルムを、横延伸テンターにおいて120℃で4.5倍延伸後、230℃で10秒間熱処理したのち、冷却し巻き取った。得られた二軸延伸フィルムの厚さは38μmであった。
得られた二軸延伸フィルムの片面(ポリエチレンテレフタレート(B)からなる層の面)に、表1の構成の離型層形成用液状物を、マイヤーバーを用いて塗布し、150℃で90秒間乾燥させた。その後、二軸延伸フィルムの片面(ポリエチレンテレフタレート(A)からなる層の面)にガスバリア層形成用液状物B−1を、マイヤーバーを用いて塗布し、150℃で90秒間乾燥させた。
その後、50℃で2日間エージングを行うことで、厚さ38μmのポリエステルフィルムの両面に、厚さ0.6μmの離型層と厚さ0.6μmのガスバリア層が設けられた積層フィルムを得た。
実施例13
ポリアミド9Tを、押出機I(スクリュー径:50mm)に、ポリアミド9Tに粒子径2.3μmのシリカ粒子を0.07質量%含有させたポリアミド9T(A)を、押出機II(スクリュー径:65mm)にそれぞれ投入して、シリンダー温度を295℃(前段)、320℃(中段)および320℃(後段)に設定して溶融し、320℃で溶融後、それぞれの溶融体をTダイの出口に至る前で、層の厚み比(I/II)が33/5となり、総厚みが600μmとなるよう2層で合流積層させた。積層された溶融体を、320℃に設定した複層ダイスのTダイ出口より押出し、循環オイル温度を50℃に設定した冷却ロール上に、静電印加法により押し付けて密着させて冷却し、厚さ600μmの未延伸フィルムを成形した。
なお、冷却ロールは、表面にセラミック(Al)を0.15mm厚に被覆したものを用いた。また、ロール表面とフィルムとが接触する点よりも上流側にカーボンブラシを2つ並べて冷却ロールに接触させ、カーボンブラシのホルダーを接地することにより、セラミック被覆層の表面を除電した。電極には、直径0.2mmのタングステン線を用い、300W(15kV×20mA)の直流高圧発生装置で6.5kVの電圧を印加した。
次に、フィルムの片面(ポリアミド9T(A)からなる層の面)に、リバースグラビアコーターを用いて、ガスバリア層形成用液状物B−1を10g/m(WET換算)の塗布量になるように塗布し、その反対面(ポリアミド9Tからなる層の面)にリバースグラビアコーターを用いて、表1に記載した構成の離型層形成用液状物を10g/m(WET換算)の塗布量になるように塗布した後、ガスバリア層形成用液状物と離型層形成用液状物が塗布された未延伸フィルムを、両端をクリップで把持しながら、テンター方式同時二軸延伸機(日立製作所社製)に導いて、予熱部温度120℃、延伸部温度130℃、縦延伸歪み速度2400%/min、横延伸歪み速度2760%/min、縦方向延伸倍率3.0倍、横方向延伸倍率3.3倍で同時二軸延伸した。そして、同テンター内で285℃で熱固定を行い、フィルムの幅方向に5%の弛緩処理を施した後、均一に徐冷し、フィルム両端をクリップから解放し、耳部をトリミングして、幅0.5mで長さ500mを巻き取った。得られた積層フィルムの厚さは38μmであり、両側の離型層とガスバリア層の厚さはおよそ0.08μmであった。
実施例14
表1に記載した構成の離型層形成用液状物に変更した以外は、実施例13と同様にして積層フィルムを得た。
実施例15
ポリアミド9T(A)として、粒子径2.3μmのシリカ粒子0.07質量%と、酸化マグネシウム0.5質量%を含有させたポリアミド9T樹脂を用い、また、ガスバリア層形成用水性分散体B−2を用いた以外は、実施例13と同様にして積層フィルムを得た。
実施例16〜17
基材を構成する樹脂をポリアミド9Tに代えて、実施例16ではポリアミド10Tに、実施例17ではポリアミド6T(三井化学社製、アーレン)に変更した以外は実施例13と同様にして積層フィルムを得た。
比較例1〜4、7
実施例1と同様にして、未延伸フィルムを得た。
未延伸フィルムをロール式縦延伸機で90℃の条件下、3.5倍に延伸して延伸フィルムを得た。
比較例1〜4は、この延伸フィルムに、それぞれ表1に記載した構成の離型層形成用液状物のみを塗布し、横延伸テンターにおいて120℃で4.5倍延伸後、230℃で10秒間熱処理したのち、冷却し巻き取った。得られた積層フィルムの厚さは38μmであり、離型層の厚さはおよそ0.08μmであった。
また、比較例7は、バリア層形成用液状物のみを塗布した以外は同様にして、厚さ38μmの、離型層を積層せず、ガスバリア層のみを積層した積層フィルムを得た。ガスバリア層の厚さはおよそ0.08μmであった。
比較例5
実施例2において、ポリエチレンテレフタレート(B)を押出機Iに、ポリエチレンテレフタレート(B)に粒子径2.3μmのシリカ粒子0.07質量%を含有したポリエチレンテレフタレート(A)を押出機IIにそれぞれ投入して280℃で溶融後、それぞれの溶融体を複層ダイスのTダイの出口に至る前で、層の厚み比(II/I/II)が5/28/5となり、総厚みが600μmとなるよう3層で合流積層させた。積層された溶融体を、複層ダイスのTダイ出口より押出し、Tダイ法−静電ピニング方式でキャスティングドラムに密着急冷し、厚さ600μmの未延伸フィルムを成形した。
続いてこの未延伸フィルムを90℃に加熱した縦延伸ロールで3.5倍に延伸した。
し、縦延伸フィルムを得た。
そして、この縦延伸したフィルムの片面に、それぞれ、ガスバリア層形成用水性分散体と離型層形成用液状物を塗布した以外は、実施例2と同様にして、積層フィルムを得た。
比較例6
ポリエチレンテレフタレート(A)として、ポリエチレンテレフタレート(B)に粒子径2.3μmのシリカ粒子0.07質量%と、酸化マグネシウム0.5質量%を含有させたポリエチレンテレフタレート樹脂を用いた以外は、比較例5と同様にして、積層フィルムを得た。
比較例8
比較例3で製造した、離型層のみを積層した積層フィルムを用いて、その離型層の反対面に、アルミニウムを真空蒸着機にて酸素ガスを導入しながら真空蒸着法で、金属酸化物からなるガスバリア層として、厚さ6nmの酸化アルミニウム薄膜層を積層した。
次に、酸化アルミニウム薄膜層上に、水系のウレタン系樹脂(三井化学社製タケラックWPB341)100質量部とイソシアネート系シランカップリング剤(信越化学社製KBE9007)10質量部を混合して得た混合樹脂を、グラビアコート法で塗布して、厚さ0.2μmのトップコート層を積層し、積層フィルムを得た。
比較例9
二軸延伸ポリエステル樹脂フィルム(ユニチカ社製「エンブレットPET−12」、厚さ12μm)の片面に、表1の構成の離型層形成用液状物を、マイヤーバーを用いて塗布し、150℃で90秒間乾燥させた。その後、二軸延伸フィルムの片面にガスバリア層形成用液状物B−1を、マイヤーバーを用いて塗布し、150℃で90秒間乾燥させた。
その後、50℃で2日間エージングを行うことで、厚さ12μmのポリエステルフィルムの両面に、厚さ0.6μmの離型層と厚さ0.6μmのガスバリア層が設けられた離型フィルムを得た。
比較例10〜11
実施例13、16において、ガスバリア層形成用液状物を塗布せずに、離型層形成用液状物のみが塗布された未延伸フィルムを延伸した積層フィルムを用いて、その離型層の反対面に、アルミニウムを真空蒸着機にて酸素ガスを導入しながら真空蒸着法で、金属酸化物からなるガスバリア層として、厚さ6nmの酸化アルミニウム薄膜層を積層した。
次に、酸化アルミニウム薄膜層上に、水系のウレタン系樹脂(三井化学社製タケラックWPB341)100質量部とイソシアネート系シランカップリング剤(信越化学社製KBE9007)10質量部を混合して得た混合樹脂を、グラビアコート法で塗布して、厚さ0.2μmのトップコート層を積層し、積層フィルムを得た。
実施例、比較例で得られた積層フィルムについて各種評価を行った結果を表1に示す。
Figure 2021138129
実施例1〜17の積層フィルムは、ガスバリア層が積層され、離型層の表面粗さパラメーターSaの値が小さいため、酸素バリア性に優れ、積層フィルムを貼り合わせた被着体は、大気中熱処理前後におけるヘーズ値の変化量が小さく、酸化劣化が抑制されていた。なかでも、実施例2、5、6、13、16の積層フィルムは、表面粗さパラメーターSaの値が小さかったため、特に酸素バリア性に優れるものであった。
実施例3、7の積層フィルムは、離型層を構成する酸変性ポリオレフィン樹脂のオレフィン成分におけるエチレン比率が高いため、アクリル系粘着剤に対する離型性に優れるものであった。
また、実施例13〜17の積層フィルムは、基材フィルムがポリアミド9T、ポリアミド10T、ポリアミド6Tであったため、230℃熱処理後の酸素バリア性が優れるものであった。
比較例1〜4の積層フィルムは、ガスバリア層が積層されていないため、酸素透過度が大きく、酸素バリア性に劣るものであった。
比較例5、6、9の積層フィルムは、離型層の表面粗さパラメーターSaの値が大きいため、酸素バリア性に劣り、積層フィルムを貼り合わせた被着体は、大気中熱処理前後におけるヘーズ値の変化量が大きくなり、酸化劣化がみられた。
比較例7の積層フィルムは、離型層を設けなかったため、アクリル系粘着剤や、エポキシプリプレグに対する離型性に劣るものであった。
比較例8の積層フィルムは、金属膜系のガスバリア層を設けたため、耐屈曲性試験後の酸素バリア性が劣るものであった。
比較例10、11の積層フィルムは、ガスバリア層が金属蒸着膜であり有機化合物を含有していないため、耐屈曲試験後や高温処理後の酸素透過度が大きくなり、酸素バリア性が劣るものであった。

Claims (6)

  1. 離型層、基材、ガスバリア層を含む積層フィルムであって、積層フィルムの少なくとも一方の最表層が離型層であり、
    離型層表面の表面粗さパラメーターSa(算術平均高さ)が0.05μm以下であり、
    ガスバリア層が有機化合物を含有することを特徴とする積層フィルム。
  2. 離型層が、酸変性ポリオレフィン樹脂と架橋剤とを含有することを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。
  3. ガスバリア層を構成する有機化合物が、ポリビニルアルコールを含有することを特徴とする請求項1または2に記載の積層フィルム。
  4. 請求項2に記載の積層フィルムを製造するための方法であって、基材の片面に、酸変性ポリオレフィン樹脂と架橋剤と水性媒体とを含有する離型層形成用液状物を塗布する工程を含むことを特徴とする積層フィルムの製造方法。
  5. 請求項4に記載の積層フィルムの製造方法において、離型層形成用液状物が塗布された基材を乾燥、延伸する工程を含むことを特徴とする積層フィルムの製造方法。
  6. 請求項3に記載の積層フィルムを製造するための方法であって、基材の片面に、ポリビニルアルコールを含有するガスバリア層形成用液状物を塗布し、ガスバリア層形成用液状物が塗布された基材を乾燥し、延伸する工程を含むことを特徴とする積層フィルムの製造方法。

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