JP2022155385A - 積層ポリエステルフィルム - Google Patents

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Yoshiaki Tojo
陽介 大関
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Abstract

【課題】高温時でもオリゴマーの析出を減らし、白化による視認性の低下、後加工での欠陥の発生、工程内や部材の汚染を防止し、常に良好な帯電防止性を有し異物等の付着や巻き込を抑制できる積層ポリエステルフィルムの提供。【解決手段】硬化樹脂層(B)、ポリエステルフィルム、硬化樹脂層(A)が順次積層され、硬化樹脂層(B)が下記化合物(a)、(b)、(c)を含有し、硬化樹脂層(A)が硬化型シリコーン樹脂を含有する。(a)(a1)チオフェンまたはチオフェン誘導体からなる化合物に陰イオン化合物をドーピングした重合体、及び(a2)チオフェンまたはチオフェン誘導体からなる化合物中に陰イオン基を持ち自己ドープされた重合体、からなる1種以上。(b)スチレン構造を有する(メタ)アクリル系重合体。(c)(c1)ポリグリセリン、(c2)ポリグリセリンへのアルキレンオキサイド付加物、からなる1種以上の化合物またはその誘導体。【選択図】なし

Description

本発明は、積層ポリエステルフィルムに関するものである。
従来から、ポリエステルフィルムは、機械的強度、寸法安定性、平坦性、耐熱性、耐薬品性、光学特性等に優れた特性を有し、コストパフォーマンスに優れるため、各種用途に使用されている。
例えばポリエステルフィルムに低熱収縮化のために150℃で1時間処理する(特許文献1)、ITOの結晶化のために150℃で熱処理を行う(特許文献2)などの処理が行われる場合がある。このような高温長時間の処理を行うとポリエステルフィルム中に含有されるオリゴマーが、フィルム表面に析出・結晶化する。これによりフィルム外観の白化による視認性の低下、後加工での欠陥の発生、工程内や部材の汚染などの問題が生じる。
また、ポリエステルフィルムは、プラスチックフィルム共通の問題として、静電気が発生して帯電しやすいという特徴があり、加工現場において、静電気による異物等の付着或いは巻き込みによる不具合を生じる場合がある。
このため種々の帯電防止対策が講じられている。一般的には、表面に帯電防止性を有する機能層を設ける方法がある。ポリエステルフィルムに塗工される帯電防止剤としては、四級アンモニウム基に代表されるカチオン性の基を含むカチオン性化合物、スルホネート基やホスホネート基に代表されるアニオン性の基を含むアニオン性化合物が主に用いられる。しかし、これらはイオン導電性で帯電防止能が周囲の湿気や水分の影響を受けやすく、特に低湿度下では導電性が低下し、所望の帯電防止能が得られなくなる欠点がある。アニオン系の帯電防止剤においてこの傾向がより顕著となることが多い。
また近年、環境問題への関心の高まり、一緒に組み込まれる他部材への影響の懸念などからポリエステルフィルムにハロゲンの不使用を求められることが多い。しかしカチオン系の帯電防止剤の場合、四級アンモニウム基の対アニオンが塩化物イオンの化合物が一般的である。対アニオンをモノアルキル硫酸イオン、アルキルスルホン酸イオン等とした帯電防止剤も有るがイオンの移動度が低くなり帯電防止性能が劣る。
電子導電性化合物は、上記イオン導電性化合物に比べるとより優れた帯電防止性を発現することが可能であり、湿度による影響も受けにくい。電子導電性化合物としては、種々の導電性有機ポリマー化合物、中でもポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリイソチアナフテン、ポリチオフェンなどの導電性高分子化合物が提案されている。ポリチオフェン化合物は、優れた導電性を持ち、フィルムに塗布した際には高い帯電防止性、透明性を発現させることが可能である(特許文献3、4)。しかし、電子導電性化合物の帯電防止剤は空気に曝されることで構造が変化するため、使用環境によっては製造直後に比べ帯電防止性が低下する場合がある(特許文献5)。
また、上記のようにオリゴマーの析出を減らし、かつ帯電防止性を付与する方法として、オリゴマーの析出を抑制する下引き層と帯電防止性を有する下引き層を順次積層する方法が提案されている(特許文献6)。この方法でも両方の性能を付与することができるが、2層の加工が必要なため加工コストの点が課題である。
特開2007-42473号公報 特開2007-200823号公報 特開2003-154594号公報 特開平9-131843号公報 特開2020-29485公報 特開2016-187866号公報
本発明は上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、高温で処理した際のポリエステルフィルムからのオリゴマーの析出を減らすことでフィルム外観の白化による視認性の低下、後加工での欠陥の発生、工程内や部材の汚染などの不具合の発生を防止し、かつ使用環境に関係なく、良好な帯電防止性を有することで異物等の付着或いは巻き込みによる不具合を抑制できる積層ポリエステルフィルムを提供することにある。
本発明者は、上記の課題に関して鋭意検討を重ねた結果、特定の構成からなる積層ポリエステルフィルムを用いることにより、上記課題が解決されることを見いだし、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の[1]~[14]を提供するものである。
[1]硬化樹脂層(B)、ポリエステルフィルム、硬化樹脂層(A)が順次積層された構成を備え、前記硬化樹脂層(B)が下記化合物(a)、(b)及び(c)を含有する樹脂組成物からなる硬化樹脂層であり、前記硬化樹脂層(A)が硬化型シリコーン樹脂を含有する、積層ポリエステルフィルム。
(a)(a1)チオフェンまたはチオフェン誘導体からなる化合物に他の陰イオン化合物によりドーピングされた重合体、及び(a2)チオフェンまたはチオフェン誘導体からなる化合物中に陰イオン基を持ち自己ドープされた重合体、から選ばれる1種以上
(b)スチレン構造を有する(メタ)アクリル系重合体
(c)(c1)ポリグリセリン、及び(c2)ポリグリセリンへのアルキレンオキサイド付加物、から選ばれる1種以上の化合物またはその誘導体。
[2]前記(メタ)アクリル系重合体のアクリル構造が(メタ)アクリル酸構造である、上記[1]に記載の積層ポリエステルフィルム。
[3]150℃、90分間の条件で熱処理した後のフィルムヘーズ変化量(ΔH)が1.0%以下である上記[1]または[2]に記載の積層ポリエステルフィルム。
[4]前記硬化樹脂層(B)の表面抵抗率が1×10(Ω/□)以下である上記[1]~[3]のいずれか一つに記載の積層ポリエステルフィルム。
[5]前記樹脂組成物が、架橋剤として、メラミン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、及びカルボジイミド化合物から選ばれる少なくとも1種を含有する上記[1]~[4]のいずれか一つに記載の積層ポリエステルフィルム。
[6]ポリエステルフィルムと硬化樹脂層(A)との間に、硬化樹脂層(C)を備えた、上記[1]~[5]のいずれか一つに記載の積層ポリエステルフィルム。
[7]硬化樹脂層(B)がインラインコーティング(塗布延伸法)により設けられる、上記[1]~[6]のいずれか一つに記載の積層ポリエステルフィルム。
[8]ポリエステルフィルムが少なくとも3層構成からなる、上記[1]~[7]のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
[9]前記硬化樹脂層(A)上に機能層を備えた、上記[1]~[8]のいずれかに記載の機能層付き積層ポリエステルフィルム。
[10]前記機能層が粘着層である、上記[9]に記載の機能層付き積層ポリエステルフィルム。
[11]前記粘着層がシリコーン系である、上記[10]に記載の機能層付き積層ポリエステルフィルム。
[12]前記粘着層がアクリル系またはウレタン系である、上記[10]に記載の機能層付き積層ポリエステルフィルム。
[13]上記[10]~[12]のいずれか1項に記載の機能層付き積層ポリエステルフィルムの粘着層表面に光学部材が貼合された、フィルム積層体。
[14]上記[10]~[12]のいずれかに記載の機能層付き積層ポリエステルフィルムの粘着層表面に離型フィルムが貼合された、フィルム積層体。
本発明によれば、高温で処理した場合でもポリエステルフィルムからのオリゴマーの析出が抑制され、かつ、使用環境に関係なく、例えば、大気中に暴露された場合でも、静電気による異物の付着或いは巻き込みによる不具合も抑制した積層ポリエステルフィルムが提供でき、その工業的な利用価値は高い。
以下、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。ただし、本発明は次に説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
<ポリエステルフィルム>
本発明の積層フィルムを構成するポリエステルフィルムは単層構成であっても多層構成であってもよく、2層、3層構成以外にも本発明の要旨を越えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよく、特に限定されるものではない。本発明においては、少なくとも3層構成からなるポリエステルフィルムであることが好ましい。また、ポリエステルフィルムとしては二軸延伸ポリエステルフィルムが、薄膜化や寸法安定性の点などから好ましい。
本発明において使用するポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート等が例示される。一方、共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、p-オキシ安息香酸など)等の一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の1種または2種以上が挙げられる。
ポリエステルの重合触媒としては、特に制限はなく、従来公知の化合物を使用することができ、例えば、アンチモン化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物、マンガン化合物、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物等が挙げられる。この中でも、チタン化合物やゲルマニウム化合物は触媒活性が高く、少量で重合を行うことが可能であり、フィルム中に残留する金属量が少ないことから、フィルムの輝度が高くなるため好ましい。さらに、ゲルマニウム化合物は高価であることから、チタン化合物を用いることがより好ましい。
チタン化合物を用いたポリエステルの場合、チタン元素含有量は、好ましくは50ppm以下、より好ましくは1~20ppm、さらに好ましくは2~10ppmの範囲である。チタン化合物の含有量が多すぎる場合は、ポリエステルを溶融押出する工程でポリエステルの劣化が促進され黄色味が強いフィルムとなる場合がある。また、含有量が少なすぎる場合は、重合効率が悪くコストアップや十分な強度を有するフィルムが得られない場合がある。
また、チタン化合物によるポリエステルを用いる場合、溶融押出する工程での劣化抑制の目的で、チタン化合物の活性を下げるためにリン化合物を使用することが好ましい。リン化合物としては、ポリエステルの生産性や熱安定性を考慮すると正リン酸が好ましい。リン元素含有量は、溶融押出するポリエステル量に対して、好ましくは1~300質量ppm、より好ましくは3~200質量ppm、さらに好ましくは5~100質量ppmの範囲である。リン化合物の含有量が上記上限値以下であると、ゲル化や異物の原因となることがなく、また、上記下限値以上であると、チタン化合物の活性を十分に下げることができ、着色を抑制できて、黄色味のあるフィルムとなることがない。
オリゴマー成分の析出量を抑えるために、オリゴマー成分の含有量が少ないポリエステルを原料としてフィルムを製造してもよい。オリゴマー成分の含有量が少ないポリエステルの製造方法としては、種々公知の方法を用いることができ、例えばポリエステル製造後に固相重合する方法等が挙げられる。
また、ポリエステルフィルムを3層以上の構成とし、ポリエステルフィルムの最外層を、オリゴマー成分の含有量が少ないポリエステル原料を用いた層とすることで、オリゴマー成分の析出量を抑えてもよい。また、ポリエスエルは、エステル化もしくはエステル交換反応をした後に、さらに反応温度を高くして減圧下で溶融重縮合して得てもよい。
ポリエステルフィルム中にはフィルムの耐候性の向上、被着体(例えば液晶)などの劣化防止のために、紫外線吸収剤を含有させることも可能である。紫外線吸収剤は、紫外線を吸収する化合物で、ポリエステルフィルムの製造工程で付加される熱に耐えうるものであれば特に限定されない。
紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤があるが、透明性の観点から有機系紫外線吸収剤が好ましい。有機系紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、環状イミノエステル系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系などが挙げられる。耐久性の観点からは環状イミノエステル系、ベンゾトリアゾール系がより好ましい。また、紫外線吸収剤を2種類以上併用して用いることも可能である。
ポリエステルフィルムのポリエステル層中には、易滑性の付与および各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合することも可能である。粒子を配合する場合、配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。これらの中でも特に少量で効果が出やすいという点でシリカ粒子や炭酸カルシウム粒子が好ましい。
また、粒子の平均粒径は、好ましくは5.0μm以下、より好ましくは0.01~3.0μmの範囲である。平均粒径が5.0μm以下であると、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎることがなく、後工程の種々の加工で不具合が生じない。また、上記範囲で使用することで、ヘーズが低く抑えられ、フィルム全体として透明性を確保しやすい。
さらにポリエステル層中の粒子含有量は、好ましくは5質量%未満、より好ましくは0.0003~1質量%の範囲、さらに好ましくは0.0005~0.5質量%の範囲である。粒子が無い場合、あるいは少ない場合は、フィルムの透明性が高くなり、良好なフィルムとなるが、滑り性が不十分となる場合があるため、硬化樹脂層中に粒子を入れることにより、滑り性を向上させる等の工夫が必要な場合がある。また、粒子含有量が上記上限値以下であると、ヘーズが高くなることがなく、十分な透明性が得られることから、例えば、種々の検査時に、異物等の欠陥検査の難易度が上がることもない。
なお、3層以上の構成の場合には、両表面のポリエステル層中の粒子の含有量が上記範囲内であればよい。
使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。
これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
ポリエステル層中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、各層を構成するポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化もしくはエステル交換反応終了後、添加するのが良い。
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
本発明におけるポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常10~300μm、好ましくは15~250μm、より好ましくは20~200μm、さらに好ましくは25~125μmの範囲である。
次にポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。例えば、二軸延伸ポリエステルフィルムを製造する場合、まず先に述べたポリエステル原料を、押出機を用いてダイから溶融押し出しし、溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法や液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70~120℃、好ましくは80~110℃であり、延伸倍率は通常2.5~7倍、好ましくは3~6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に、通常70~170℃で、延伸倍率は通常2.5~7倍、好ましくは3~6倍で延伸する。引き続き180~270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る方法が挙げられる。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
また、本発明においては積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルム製造に関しては同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常70~120℃、好ましくは80~110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で4~50倍、好ましくは7~35倍、さらに好ましくは10~25倍である。そして、引き続き、180~270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
次に本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する硬化樹脂層の形成について説明する。硬化樹脂層に関しては、ポリエステルフィルムの製膜工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティング(塗布延伸法)により設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、オフラインコーティングを採用してもよい。より好ましくはインラインコーティングにより形成されるものである。
インラインコーティングは、ポリエステルフィルム製造の工程内でコーティングを行う方法であり、具体的には、ポリエステルを溶融押出ししてから延伸後熱固定して巻き上げるまでの任意の段階でコーティングを行う方法である。通常は、溶融、急冷して得られる未延伸シート、延伸された一軸延伸フィルムの何れかにコーティングする。
以下に限定するものではないが、例えば逐次二軸延伸においては、特に長手方向(縦方向)に延伸された一軸延伸フィルムにコーティングした後に横方向に延伸する方法が優れている。かかる方法によれば、製膜と硬化樹脂層形成を同時に行うことができるため製造コスト上のメリットがあり、また、コーティング後に延伸を行うために、硬化樹脂層の厚みを延伸倍率により変化させることもでき、オフラインコーティングに比べ、薄膜コーティングをより容易に行うことができる。
また、延伸前にフィルム上に硬化樹脂層を設けることにより、硬化樹脂層を基材フィルムと共に延伸することができ、それにより硬化樹脂層を基材フィルムに強固に密着させることができる。さらに、二軸延伸ポリエステルフィルムの製造において、クリップ等によりフィルム端部を把持しつつ延伸することで、フィルムを縦および横方向に拘束することができ、熱固定工程において、しわ等が入らず平面性を維持したまま高温をかけることができる。
それゆえ、コーティング後に施される熱処理が他の方法では達成されない高温とすることができるために、硬化樹脂層の造膜性が向上し、硬化樹脂層と基材フィルムをより強固に密着させることができ、さらには、強固な硬化樹脂層とすることができる。
本発明における積層ポリエステルフィルム上に設けるシリコーン樹脂を含有する硬化樹脂層(A)に関して、以下に説明する。
本発明で用いる積層ポリエステルフィルムにおける、硬化樹脂層(A)は硬化型シリコーン樹脂を含有する。
硬化型シリコーン樹脂としては、硬化型シリコーン樹脂を主成分とする樹脂でもよいし、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーン等を使用してもよい。また粘着層がシリコーン粘着剤などである場合はフルオロシリコーン樹脂等を含有することが好ましい。
硬化型シリコーン樹脂の種類としては、付加型・縮合型等の熱硬化型や紫外線硬化型等の電子線硬化型等、既存の何れの硬化反応タイプでも用いることができ、また複数種類の硬化型シリコーン樹脂を併用して使用しても良い。さらに離型層を形成する際の硬化型シリコーン樹脂の塗工形態にも特に制限は無く、有機溶剤に溶解している形態、水系エマルジョンの形態、無溶剤の形態の何れであっても良い。
本発明で用いるシリコーン樹脂の種類には制限はないが、軽剥離性特性等優れた離型特性の観点から本発明においてはアルケニル基を含む硬化型シリコーン樹脂の使用が好ましい。アルケニル基を含む硬化型シリコーン樹脂は、ジオルガノポリシロキサンとして、下記一般式(1)で示されるものが例示できる。
(3-a)SiO-(RXSiO)m-(R2SiO)n-SiX(3-a) …(1)
一般式(1)において、Rは炭素数1~10の1価炭化水素基であり、Xはアルケニル基含有の有機基である。aは0~3の整数で1が好ましく、mは0以上であるが、a=0の場合、mは2以上であり、mおよびnは、それぞれ100≦m+n≦20000を満足する数であり、また上記式はブロック共重合体を意味している訳ではない。Rは炭素数1~10の1価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基、トリル基などのアリール基などが挙げられるが、特にメチル基、フェニル基が好ましい。Xはアルケニル基含有の有機基で炭素数2~10のものが好ましく、具体的にはビニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基、アクリロイルプロピル基、アクリロイルメチル基、メタクリロイルプロピル基、シクロヘキセニルエチル基、ビニルオキシプロピル基等が挙げられるが、特にビニル基、ヘキセニル基などが好ましい。具体的に例示すると、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体(ジメチルシロキサン単位96モル%、メチルヘキセニルシロキサン単位4モル%)、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体(ジメチルシロキサン単位97モル%、メチルヘキセニルシロキサン単位3モル%)、分子鎖両末端ジメチルヘキセニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体(ジメチルシロキサン単位95モル%、メチルヘキセニルシロキサン単位5モル%)が挙げられる。
硬化型シリコーン樹脂の数平均分子量は、50000以上であるのが好ましく、中でも80000以上であるのがより好ましく、中でも100000以上、その中でも特に150000以上であるのがさらに好ましい。他方、600000以下であるのが好ましく、中でも550000以下、その中でも特に500000以下であるのがさらに好ましい。
硬化樹脂層(A)は、上記硬化型シリコーン樹脂と、硬化型シリコーン樹脂を硬化させる架橋剤とを含むシリコーン樹脂組成物を硬化してなる層であることが好ましい。架橋剤としては、SiH基を含有するポリオルガノシロキサンが挙げられる。SiH基を含有するポリオルガノシロキサンは、アルケニル基を含む硬化型シリコーン樹脂と反応し、より強固なシリコーン離型層を形成することができる。SiH基を含有するポリオルガノシロキサンとしては、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個、好ましくは3個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンで、直鎖状、分岐状、環状のものなどを使用することができ、下記一般式(2)で表される化合物を挙げることができるが、これらのものには限定されない。
HbR1 (3-b)SiO-(HR1SiO)x-(R1 2SiO)y-SiR1 (3-b)b …(2)
一般式(2)において、Rは炭素数1~6の脂肪族不飽和結合を含有しない1価炭化水素基である。bは0~3の整数、x,yはそれぞれ整数である。具体的に例示すると、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体が挙げられる。
シリコーン樹脂組成物におけるアルケニル基に対するSi-H基のモル比は、0.1~2.0であることが好ましく、0.3~2.0であることがより好ましく、0.3~1.8であることがさらに好ましい。
次に本発明に用いることが可能な市販されている様々なタイプのシリコーン樹脂の具体例を挙げると、信越化学工業(株)製として、KS-774、KS-775、KS-778、KS-779H、KS-847H、KS-856、X-62-2422、X-62-2461、X-62-1387、X-62-5039、X-62-5040、KNS-3051、X-62-1496、KNS320A、KNS316、X-62-1574A/B、X-62-7052、X-62-7028A/B、X-62-7619、X-62-7213、X-41-3035、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製として、YSR-3022、TPR-6700、TPR-6720、TPR-6721、TPR6500、TPR6501、UV9300、UV9425、XS56-A2775、XS56-A2982、UV9430、TPR6600、TPR6604、TPR6605、東レ・ダウコ-ニング(株)製として、SRX357、SRX211、SD7220、SD7292、LTC750A、LTC760A、LTC303E、LTC856、LTC761、SP7259、BY24-468C、SP7248S、BY24-452、DKQ3-202、DKQ3-203、DKQ3-204、DKQ3-205、DKQ3-210、旭化成ワッカーシリコーン(株)製のDEHESIVEシリーズのうち、DEHESIVE 636、919、920、921、924、929等が例示される。
硬化樹脂層(A)は付加型の反応を促進する白金系触媒を用いることが好ましい。したがって、上記シリコーン樹脂組成物は、さらに白金系触媒を含有することが好ましい。本成分としては、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とオレフィンとの錯体、塩化白金酸とアルケニルシロキサンとの錯体等の白金系化合物、白金黒、白金担持シリカ、白金担持活性炭が例示される。硬化樹脂層(A)中の白金系触媒含有量は、0.01~10.0質量%、好ましくは0.01~5.0質量%の範囲が良い。硬化樹脂層(A)中の白金系触媒含有量が0.01質量%以上であると、十分な剥離力が得られ、硬化反応が十分に進み、面状悪化などの不具合を生じることがない。
一方、硬化樹脂層(A)中の白金系触媒含有量が3.0質量%以下であると、コスト的に有利でありことに加え、反応性が高まりゲル異物が発生する等の工程不具合が生じない。
また、付加型の反応は非常に反応性が高いため、場合によっては、不可反応抑制剤としてアセチレンアルコールを添加することがある。その成分は炭素-炭素3重結合と水酸基を有する有機化合物であるが、好ましくは、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オールおよびフェニルブチノールからなる群から選択される化合物である。
積層ポリエステルフィルムを構成する硬化樹脂層(A)には、加水分解・縮合反応促進を目的として、触媒を併用することが可能である。触媒の具体例としては、酢酸、酪酸、マレイン酸、クエン酸などの有機酸類、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸などの無機酸類、トリエチルアミンなどの塩基性化合物類、テトラブチルチタネート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジオレート、ジフェニル錫ジアセテート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジメトキサイド、ジブチルビス(トリエトキシシロキシ)錫、ジブチル錫ベンジルマレート等などの有機金属塩類、KF、NHFなどのフッ素元素含有化合物などを挙げることができる。上記触媒は単独で使用してもよくあるいは2種類以上を併用してもよい。その中でも、特に塗膜耐久性が良好となる点で有機金属塩類が好ましい。
硬化樹脂層(A)の剥離性等を調整するため、各種剥離コントロール剤を併用してもよい。剥離力を重剥離化させる場合は、一般的にオルガノポリシロキサンレジンやシリカ粒子、重剥離力のシリコーン種等を所望の剥離力を得るために硬化樹脂層(A)に適当な含有量調整を行う。市販されている重剥離化剤の具体例を挙げると、信越化学工業(株)製KS-3800、X-92-183、東レダウコーニング(株)製SDY7292、BY24-843、BY24-4980が例示される。剥離力を軽剥離化させる場合は、低分子シロキサンを種々選択し、硬化樹脂層(A)に対して、適当な含有量調整を行い、シロキサン移行成分が離型性能を発揮する様にする。低分子シロキサン化合物の例としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。また、前者低分子環状シロキサンの他の化合物としては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサンオリゴマー;分子鎖両末端ジメチルヒドロキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサンオリゴマー等があり、必要に応じて前記化合物は混合して使用してもよい。これら低分子シロキサン化合物は、移行成分としてシリコーン樹脂中に通常0.1~15.0質量%、好ましくは0.1~10.0質量%、さらに好ましくは0.1~5質量%含有することで所望の軽剥離を達成することができる。0.1質量%以上であると、移行性成分が十分であり、十分な離型性が発揮される。一方、低分子シロキサンの含有量が15.0質量%以下であると、移行性成分が過剰に析出することがなく、工程汚染の問題がない。
また、硬化樹脂層(A)には、ポリエステルフィルムとの塗膜密着性を良好とするために下記一般式(3)で表される有機珪素化合物を併用することが好ましい。
Si(X)(Y)(R …(3)
[上記式中、Xはエポキシ基、メルカプト基、(メタ)アクリロイル基、アルケニル基、ハロアルキル基およびアミノ基から選ばれる少なくとも1種を有する有機基、Rは一価の炭化水素基であり、かつ炭素数1~10のものであり、Yは加水分解性基であり、dは1または2の整数、eは2または3の整数、fは0または1の整数であり、d+e+f=4である]
前記一般式(3)で表される有機珪素化合物は、加水分解・縮合反応によりシロキサン結合を形成しうる加水分解性基Yを2個有するもの(D単位源)あるいは3個有するもの(T単位源)を使用することができる。
一般式(3)において、一価炭化水素基Rは、炭素数が1~10のもので、特にメチル基、エチル基、プロピル基が好ましい。
一般式(3)において、加水分解性基Yとしては、以下のものを例示できる。すなわち、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、イソプロペノキシ基、アセトキシ基、ブタノキシム基およびアミノ基等である。これらの加水分解性基は、単独あるいは複数種を使用してもよい。メトキシ基あるいはエトキシ基を適用すると、コーティング材に良好な保存安定性を付与でき、また適当な加水分解性があるため、特に好ましい。
硬化樹脂層(A)に含有する有機珪素化合物の具体例として、ビニルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、5-ヘキセニルトリメトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン等を例示することができる。
有機珪素化合物の含有量としては、硬化型シリコーン樹脂100質量部に対して0.5~5.0質量部であるのがよく、好ましくは0.5~2.0質量部である。当該範囲が0.5質量部以上であると、所望する密着性を確保することが容易にでき、一方、5.0質量部以下であると、貼り合わせる相手方樹脂層に対する接着性が強すぎることがなく、本来剥離する必要がある場面において、容易に剥離が可能である。
さらに本発明の主旨を損なわない範囲において、硬化樹脂層(A)を形成する塗工液には必要に応じて消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、無機系有機系粒子、有機系潤滑剤、帯電防止剤、導電剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔210料等が含有されてもよい。
なお、本発明において硬化樹脂層(A)の機能は離型層に限定されるものではなく、平坦化層、傷付き防止層、易接着層、インデックスマッチング層、オリゴマー封止層、帯電防止層などの機能を単独、もしくは複数有していても良い。
また、本発明においては、硬化樹脂層(A)のJKR2点法によって測定されて弾性率が50MPa以下であるときに効果が大きく、30MPa以下であるときにより効果が大きく、10MPa以下であるときに特に好適である。これは、硬化樹脂層(A)の弾性率が低いほどロールとして巻き取られた際にブロッキングが発生し易く、その結果、オリゴマーが一層析出し易くなるためである。
硬化樹脂層(A)の厚みは、通常0.005μm以上5.0μm以下、好ましくは0.001μm以上1.0μm以下、より好ましくは0.02μm以上0.5μm以下、さらに好ましくは0.03μm以上0.2μm以下である。0.005μm以上であると、塗工性に優れ、安定的に均一な塗膜を得ることができる。一方、5.0μm以下であると、硬化樹脂層自体の塗膜密着性、硬化性が低下することがない。
積層ポリエステルフィルムを構成する硬化樹脂層(B)は、下記の化合物(a)、(b)、(c)を含有する樹脂組成物から形成されることを必須の要件とする。
(a)(a1)チオフェンまたはチオフェン誘導体からなる化合物に他の陰イオン化合物によりドーピングされた重合体、及び(a2)チオフェンまたはチオフェン誘導体からなる化合物中に陰イオン基を持ち自己ドープされた重合体から選ばれる1種以上
(b)スチレン構造を有する(メタ)アクリル系重合体
(c)(c1)ポリグリセリン、及び(c2)ポリグリセリンへのアルキレンオキサイド付加物から選ばれる1種以上の化合物またはその誘導体
化合物(a)は、(a1)チオフェンまたはチオフェン誘導体からなる化合物に、他の陰イオン化合物によりドーピングされた重合体、または(a2)チオフェンまたはチオフェン誘導体からなる化合物中に陰イオン基を持ち自己ドープされた重合体である。これらの物質は、優れた導電性を示し好適である。化合物(a)としては、たとえば下記式(1)もしくは(2)の化合物を、ポリ陰イオンの存在下で重合して得られるものが例示される。
なお、重合体(a1)と重合体(a2)を併用してもよい。
Figure 2022155385000001
上記式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または炭素数が1~20の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、芳香族炭化水素基などを表す。
Figure 2022155385000002
上記式(2)中、nは1~4の整数を表す。
重合時に使用するポリ陰イオンとしては、例えばポリ(メタ)アクリル酸、ポリマレイン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸などが例示される。かかる重合体の製造方法としては、例えば特開平7-90060号公報に示されるような方法が採用できる。
本発明においては、上記式(2)の化合物においてnが2であり、ポリ陰イオンとしてポリスチレンスルホン酸を用いたものが好適に用いられる。
またこれらのポリ陰イオンが酸性である場合、一部または全てが中和されていてもよい。中和に用いる塩基としてはアンモニア、有機アミン類、アルカリ金属水酸化物が好ましい。
化合物(b)は、スチレン構造を有する(メタ)アクリル系重合体である。
スチレン構造とはスチレンおよびスチレン誘導体のことであり、例えば、スチレンにメチル基やエチル基等のアルキル基やフェニル基等が置換基として導入されていてもよい。加熱処理によるオリゴマーの析出防止効果の観点から、好ましくは炭素数が4以下のアルキル基が置換されたスチレンまたは置換基がないスチレンであり、より好ましくはスチレンである。
(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルを構成単位とする重合体であり、当該化合物(b)はスチレン又はスチレン誘導体と、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体である。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル酸」という表現を用いる場合、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の一方又は両方を意味するものとする。また、同様に「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の一方又は両方、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の一方又は両方を意味するものとする。
また、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基を含有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであってもよい。
これらは1種のみで用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、加熱処理によるオリゴマーの析出防止効果の観点から、好ましくは(メタ)アクリル酸であり、より好ましくはアクリル酸である。すなわち、(メタ)アクリル系重合体のアクリル構造は、(メタ)アクリル酸構造であることが好ましい。
なお、(メタ)アクリル系重合体はラジカル重合可能な二重結合を有するものであってもよい。
また、スチレン構造を有する(メタ)アクリル系重合体には、これらと共重合可能な他の重合性モノマーを組み合わせることも可能である。共重合可能なモノマーとしては、例えば、モノブチルヒドロキシフマレート、モノブチルヒドロキシイタコネートのような水酸基含有二塩基酸エステル化合物、(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミドまたは(メタ)アクリロニトリル等の種々の窒素含有化合物;プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等の各種のビニルエステル類;γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等の種々の珪素含有重合性モノマー類;燐含有ビニル系モノマー類;塩化ビニル、塩化ビリデン等の各種のハロゲン化ビニル類;ブタジエン等の各種共役ジエン類等が挙げられる。
スチレン構造を有する(メタ)アクリル系重合体中の(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、スチレン構造を有する(メタ)アクリル系重合体を構成するモノマー全量基準で、例えば3モル%以上であり、好ましくは5~40モル%、より好ましくは10~30モル%、さらに好ましくは15~25モル%の範囲である。(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合が3モル%以上であると、加熱処理によるオリゴマー析出防止効果が発現する。また、前記上限値以下であると、スチレン構造の比率が上昇し、帯電防止性能の耐久性が担保できる。
スチレン構造を有する(メタ)アクリル系重合体中のスチレン及びスチレン誘導体の割合は、スチレン構造を有する(メタ)アクリル系重合体を構成するモノマー全量基準で、例えば50~97モル%であり、好ましくは60~95モル%、より好ましくは、70~90モル%であり、さらに好ましくは75~85モル%である。スチレン及びスチレン誘導体の割合が前記下限値以上であると、帯電防止性能の耐久性が担保され、前記上限値以下であると加熱処理によるオリゴマー析出防止効果が担保される。
ポリエステルフィルムに含まれるオリゴマー成分の析出が抑制される機構は以下のように推察される。ポリエステルフィルムはガラス転移点以上に加熱することでオリゴマー成分がその表面に析出してくるが、スチレン構造を有する(メタ)アクリル系重合体を用いた樹脂組成物からなる硬化樹脂層をポリエステルフィルム上に形成することで、スチレンに含まれる芳香族環がフィルムと並行に積み重なった構造となってオリゴマー成分の析出を妨げていると推測している。
化合物(c)は、(c1)ポリグリセリン、及び(c2)ポリグリセリンへのアルキレンオキサイド付加物から選ばれる1種以上の化合物またはその誘導体である。ポリグリセリンとは、下記一般式(3)で表される化合物である。
Figure 2022155385000003
上記式中のnは2以上であり、本発明においては、式中のnは通常2~20、好ましくは3~15、より好ましくは3~12の範囲である。
ポリグリセリンへのアルキレンオキサイド付加物とは、一般式(3)で表されるポリグリセリンのヒドロキシル基にアルキレンオキサイドを付加重合した構造を有するものである。
ここで、ポリグリセリン骨格のヒドロキシル基ごとに、付加されるアルキレンオキサイドの構造は異なっていても構わない。また、少なくとも分子中一つのヒドロキシル基に付加されていればよく、全てのヒドロキシル基にアルキレンオキサイドまたはその誘導体が付加されている必要はない。
ポリグリセリンに付加されるアルキレンオキサイドとして好ましいものは、エチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドである。アルキレンオキサイドのアルキレン鎖が長くなりすぎると、疎水性が強くなり、塗布液中での分散性が悪化し、硬化樹脂層の帯電防止性や透明性が悪化する傾向がある。特に好ましいものはエチレンオキサイドである。
また、その付加数は、最終的な化合物としての数平均分子量で200~2000の範囲になるものが好ましく、300~1000の範囲がより好ましく、400~900の範囲ものがさらに好ましい。
上記ポリグリセリン、またはポリグリセリンへのアルキレンオキサイド付加物は、1種を単独で又は2種以上を複数併用してもよい。
本発明に係る樹脂組成物には、硬化樹脂層(B)の耐久性向上、特に帯電防止性能の耐久性を目的として、架橋剤を含有してもよい。
架橋剤としては、種々公知の架橋剤が使用できるが、例えば、メラミン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、シランカップリング化合物等が挙げられる。これらの中でも空気に曝した後の帯電防止性の低下を抑制する点からメラミン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物が好ましく、オリゴマー析出をより効果的に抑制できる点からメラミン化合物がより好ましい。
メラミン化合物とは、化合物中にメラミン骨格を有する化合物のことであり、例えばアルキロール化メラミン誘導体、アルキロール化メラミン誘導体にアルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、及びこれらの混合物を用いることができる。エーテル化に用いるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール及びイソブタノール等が好適に用いられる。また、メラミン化合物としては、単量体、あるいは2量体以上の多量体のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。さらに、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できるし、メラミン化合物の反応性を上げるために触媒を使用することも可能である。
硬化樹脂層(B)の形成には、塗布外観や透明性の向上等のために、バインダーとして従来公知の各種のポリマー、例えばポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等を併用することも可能である。
また、本発明の主旨を損なわない範囲において、硬化樹脂層(B)にはブロッキング性や滑り性改良等を目的として粒子を併用することも可能である。
硬化樹脂層(B)の樹脂組成物中の全不揮発成分に占める割合として、化合物(a)は通常2~30質量%、より好ましくは3~15質量%、さらに好ましくは5~12質量%である。化合物(a)の比率が前記上限値以下であると、硬化樹脂層の強度や透明性が良好である。一方、化合物(a)の比率が下限値以上であると、十分な帯電防止性能が得られ、かつ、空気に曝した後の帯電防止性が低下することがない。
硬化樹脂層(B)の樹脂組成物中の全不揮発成分に占める割合として、化合物(b)は通常5~80質量%、好ましくは10~50質量%、より好ましくは15~40質量%の範囲である。
化合物(b)の比率が前記上限値以下であると、他の成分の比率が高くなるため、十分な帯電防止性が得られ、また塗工外観が不十分になることがない。一方、化合物(b)の比率が前記下限値以上であるとオリゴマーの析出を十分に抑制でき、かつ十分な造膜性が確保でき、均一な塗膜が得られる。
硬化樹脂層(B)の樹脂組成物中の全不揮発成分に占める割合として、化合物(c)は通常10~85質量%、好ましくは40~70質量%、より好ましくは45~65質量%の範囲である。化合物(c)の比率が前記上限値以下であると、他の成分の比率が高くなるため帯電防止性や造膜性が十分となる。一方、化合物(c)の比率が上記下限値以上であると、硬化樹脂層の透明性が良好となる。
硬化樹脂層(B)において架橋剤を併用する場合、樹脂組成物中の全不揮発成分に占める割合として通常30質量%以下、好ましくは1~25質量%、さらに好ましくは3~20質量%の範囲である。この範囲で架橋剤を用いることで、十分な帯電防止性能が得られ、かつ空気に曝した後の帯電防止性の悪化が抑制できるほか、硬化樹脂層(B)の強度が向上する。
硬化樹脂層(B)の厚みは、好ましくは0.002μm以上1.0μm以下、より好ましくは0.005μm以上0.25μm以下、さらに好ましくは0.02μm以上0.10μm以下である。硬化樹脂層の厚みが上記の範囲内であれば、オリゴマー成分の析出を抑制し、かつ良好な帯電防止性を付与できる。
なお、硬化樹脂層中には、樹脂組成物の各種化合物の未反応物、反応後の化合物、あるいはそれらの混合物が存在しているものと推測できる。
積層ポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルムと硬化樹脂層(A)との間には、下引き層として硬化樹脂層(C)を備えることが好ましい。
硬化樹脂層(C)は、ポリエステルフィルムと硬化樹脂層(A)との密着性を向上させる目的で用いられる。硬化樹脂層(C)を構成する樹脂組成物としては、化合物(a)と化合物(c)を含有する組成物が好適に用いられ、これに化合物(b)を加えた、硬化樹脂層(B)を構成する樹脂組成物と同様の構成とすることができる。したがって、下引き層である硬化樹脂層(C)として、硬化樹脂層(B)を用いてもよい。
また、硬化樹脂層(C)は帯電防止性を持つことが好ましく、帯電防止性およびオリゴマーの析出を抑える性能を有する硬化樹脂層であることがさらに好ましい。
硬化樹脂層(C)において、帯電防止性能を有する樹脂として、上記の化合物(a)を用いる以外に、例えば、アルキルスルホン酸イオンを対イオンとする単量体を成分として含む重合体を用いることができる。
前記重合体の具体的な例としては、例えば下記式(4)で示される構成要素を繰返し単位として有する重合体が挙げられる。これらの単独重合体や共重合体、さらに、その他の複数の成分を共重合していても構わない。帯電防止性を向上させる観点から、単独重合体であることが好ましい。
Figure 2022155385000004
重合体の構造としては、例えば上記式中で置換基Rが水素原子または炭素数が1~3のアルキル基、Rが-O-または-NH-、Rが炭素数が1~6のアルキレン基または式1の構造を成立しうるその他の構造、R、R、Rが少なくとも1つが水素原子であり、他の置換基は炭素数1~3のアルキル基、またはアルキル基の炭素数が2~3のヒドロキシアルキル基、Xが炭素数1~4のアルキル基を有するアルキルスルホン酸イオンのものが挙げられる。
硬化樹脂層(C)において、上記重合体を用いる場合、樹脂組成物中の全不揮発成分に占める割合として、好ましくは30~80質量%、より好ましくは40~70質量%である。前記帯電防止剤の比率を上記範囲とすることで十分な帯電防止性能が得られる。
また、硬化樹脂層(C)を構成する樹脂組成物には、バインダーを含有していてもよい。バインダーとしては、従来公知の各種のポリマー、例えばポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等を使用することが可能である。
また、例えば化合物(a)以外の帯電防止剤を用いた場合には、バインダーを併用することができ、架橋剤を併用するとよい。化合物(b)を用いない場合に、化合物(a)及び(c)とともに、バインダーを併用するとよい。
硬化樹脂層(C)には、耐久性向上、特に帯電防止性能の耐久性を目的として架橋剤を含有してもよい。
架橋剤としては、種々公知の架橋剤が使用できるが、例えば、メラミン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、シランカップリング化合物等が挙げられる。これらの中でも空気に曝した後の帯電防止性の低下を抑制する点からメラミン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物が好ましく、オリゴマー析出をより効果的に抑制できる点からメラミン化合物がより好ましい。
硬化樹脂層(C)において架橋剤を併用する場合、樹脂組成物中の全不揮発成分に占める割合として好ましくは20~70質量%、さらに好ましくは30~60質量%の範囲である。この範囲で架橋剤を用いることで、十分な帯電防止性能が得られるほか硬化樹脂層(C)の強度が向上し、オリゴマー析出をより効果的に抑制できる。
また、硬化樹脂層(C)を構成する樹脂組成物中には、界面活性剤などの上記以外の添加剤などを含有していてもよい。
硬化樹脂層(C)の厚みは、好ましくは0.005μm以上0.25μm以下、より好ましくは0.008μm以上0.15μm以下、さらに好ましくは0.01μm以上0.10μm以下である。硬化樹脂層の厚みが上記の範囲内であれば、オリゴマー成分の析出を抑制し、かつ良好な帯電防止性を付与できる。
なお、硬化樹脂層中には、樹脂組成物の各種化合物の未反応物、反応後の化合物、あるいはそれらの混合物が存在しているものと推測できる。
さらオリゴマーの析出を抑制する目的で、硬化樹脂層(C)の上に、アルミニウム、チタン、ジルコニウムから選ばれる1種または2種以上の金属元素を含む有機化合物を含有する硬化樹脂層(D)を設けてもよい。
硬化樹脂層(A)、(B)、(C)および(D)の形成は、塗工液をフィルムにコーティングすることにより設けられ、フィルム製造工程内で行うインラインコーティングにより設けられても、また、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、いわゆるオフラインコーティングを採用してもよい。
ポリエステルフィルムに塗布液を塗布する方法としては、例えば、エアドクターコート、ブレードコート、ロッドコート、バーコート、ナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファロールコート、グラビアコート、キスロールコート、キャストコート、スプレイコート、カーテンコート、カレンダコート、押出コート等従来公知の塗布方法を用いることができる。
ポリエステルフィルム上に硬化樹脂層を形成する際の乾燥および硬化条件に関しては特に限定されるわけではなく、例えば、オフラインコーティングにより硬化樹脂層を設ける場合、通常、80~200℃で3~40秒間、好ましくは100~180℃で3~40秒間を目安として熱処理を行うのがよい。
一方、インラインコーティングにより硬化樹脂層を設ける場合、通常、70~270℃で3~200秒間、より好ましくは100~250℃で10~100秒を目安として熱処理を行うのがよい。
また、オフラインコーティングあるいはインラインコーティングに係わらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムにはあらかじめ、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
<積層ポリエステルフィルムの物性>
(フィルムヘーズ)
積層ポリエステルフィルムに関して、例えば、長時間、高温雰囲気下にさらされた後であっても、高度な透明性が要求される場合がある。初期のフィルムヘーズとしては、好ましくは5.0%以下、より好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは2.0%以下である。初期のフィルムヘーズが5.0%以下であると、視認性が良好であり、例えば、タッチパネル用等、高度な視認性が必要とされる用途に好適である。
(熱処理後のフィルムヘーズ)
積層ポリエステルフィルムは、熱処理(150℃、90分間)前後におけるフィルムヘーズ変化量(ΔH)が1.0%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましく、0.0~0.3%となることがさらに好ましい。ポリエステルフィルムは、熱処理によるフィルム表面へのオリゴマー成分の析出によりフィルムヘーズが大きくなることが知られており、ΔHは熱処理前後におけるフィルム表面へのオリゴマー成分の析出を示す指標である。
フィルムヘーズ変化量(ΔH)が1.0%以下である場合には、オリゴマー成分の析出による汚染を抑制できているとすることができる。
また、ポリエステルフィルムとしては、被着体や工程内の設備の汚染を防止する観点から、硬化樹脂層(A)および硬化樹脂層(B)のそれぞれの表面からオリゴマーの析出を抑制できることが好ましい。
(表面オリゴマー量)
フィルムの各表面からのオリゴマーの析出の観点では、積層ポリエステルフィルムを熱処理(180℃、30分間)により、硬化樹脂層(A)および硬化樹脂層(B)それぞれの表面からジメチルホルムアミドにより抽出されるオリゴマー量は、通常は5.0mg/m以下であり、好ましくは3.0mg/m以下、より好ましくは0.0~1.5mg/mの範囲である。5.0mg/m以下であると、後工程において、例えば、180℃、30分間等、高温雰囲気下で長時間の加熱処理を行っても、オリゴマーの析出量が少なく、フィルムの透明性が維持でき、工程の汚染の懸念がない。
積層ポリエステルフィルムの帯電防止性は、硬化樹脂層(A)および硬化樹脂層(B)の表面を測定した表面抵抗率で評価できる。
(プレス処理後の表面オリゴマー量)
サイズが210mm×297mm(A4サイズ)の試料サンプル(硬化樹脂層(B)/ポリエステルフィルム/硬化樹脂層(A))を10枚重ねて、1MPaの圧力下、12時間プレス処理した後、実施例の(7)オリゴマー析出量Iに記載される方法にて測定した、硬化樹脂層(A)および硬化樹脂層(B)の表面オリゴマー量が3.0mg/m以下であり、好ましくは2.0mg/m以下、より好ましくは1.0mg/m以下の範囲である。
プレス処理後の表面オリゴマー量が、上記範囲を満足することにより、例えば、積層ポリエステルフィルムロールの形態で保管した後、フィルムを用いて二次加工する際でも、フィルムの自重による圧力が加わった後でありながら、巻き芯付近のフィルム表面からも、オリゴマーが多量に析出することなく、加工できるため、異物の混入を極端に嫌う、光学用途などに対応可能となる。
(硬化樹脂層(A)の表面抵抗率)
硬化樹脂層(A)表面の表面抵抗率は、特に限定されないが、例えば1×1012Ω/□以下、好ましくは1×10Ω/□以下、より好ましくは1×10Ω/□以下である。表面抵抗率の下限は特にないが、帯電防止剤のコストを勘案すると1×10Ω/□以上とするのが好ましい。硬化樹脂層(A)層の表面抵抗率が低いほど、帯電防止性が良好であり、例えば硬化樹脂層(A)上に設けられた粘着剤層などの機能層を剥離する工程における剥離帯電を抑え、異物等の付着を防止することが出来る。硬化樹脂層(A)の表面抵抗率は、例えば硬化樹脂層(C)を設けることで上記範囲内とすることできる。
(硬化樹脂層(B)の表面抵抗率)
硬化樹脂層(B)表面の表面抵抗率は、好ましくは1×10Ω/□以下、より好ましくは1×10Ω/□以下である。表面抵抗率の下限は特にないが、帯電防止剤のコストを勘案すると1×10Ω/□以上とするのが好ましい。硬化樹脂層(B)層の表面抵抗率が低いほど、帯電防止性が良好であり、工程内でのフィルムの帯電を抑え異物等の付着を防止することが出来る。
(積層ポリエステルフィルムの硬化樹脂層(A)を設ける側のフィルム表面の平均表面粗さ(Sa))
硬化樹脂層(A)を設ける側のポリエステルフィルム表面の平均表面粗さ(Sa)は、40nm以下が好ましい。さらに好ましくは30nm以下、最も好ましくは20nm以下、その中でも特に15nm以下がよい。
(硬化樹脂層(A)表面の平均表面粗さ(Sa))
硬化樹脂層(A)表面の平均表面粗さ(Sa)は30nm以下が好ましい。さらに好ましくは20nm以下、最も好ましくは15nm以下、その中でも特に10nm以下がよい。
積層ポリエステルフィルムには、硬化樹脂層(A)の上に機能層を形成するのが好ましい。機能層としては、例えば、粘着層、接着層、ハードコート層、インキ層、等、各種の機能を付与するために設けられる層が例示される。
硬化樹脂層(A)上に、アクリル系粘着層、ウレタン系粘着層が形成される場合、硬化樹脂層(A)はそれら粘着層に対して離型層として機能するが、シリコーン系粘着層が形成される場合、硬化樹脂層(A)は易接着層として機能する。
<粘着層>
本発明の積層ポリエステルフィルムは、前記硬化樹脂層(A)の上に粘着層を設けるのが好ましい。粘着層は、アクリル系粘着層、ウレタン系粘着層、シリコーン系粘着層であることが好ましい。
(シリコーン系粘着層)
シリコーン系粘着層を構成するシリコーン粘着剤は、シリコーンを主成分樹脂とする粘着剤であればよい。
当該「主成分樹脂」とは、粘着剤を構成する樹脂の中で最も含有割合(質量)の大きな樹脂の意味である。
シリコーン粘着剤は、例えば付加反応型、過酸化物硬化型又は縮合反応型のシリコーン粘着剤等を挙げることができる。中でも、低温短時間で硬化可能という観点から、付加反応型シリコーン粘着剤が好ましく用いられる。なお、これらの付加反応型シリコーン粘着剤は支持体上に粘着層の形成時に硬化するものである。シリコーン粘着剤として、付加反応型シリコーン粘着剤を用いる場合、前記シリコーン粘着剤は白金触媒等の触媒を含んでいてもよい。
例えば、付加反応型シリコーン粘着剤は、必要に応じて、トルエン等の溶剤で希釈したシリコーン樹脂溶液を、白金触媒等の触媒を添加して均一になるよう撹拌した後、支持体上に塗布し、100~130℃/1~5分で硬化させることができる。また、必要に応じて、付加反応型シリコーン粘着剤に架橋剤、粘着力を制御するための添加剤を加える、あるいは粘着層の形成前に基材フィルムにプライマー処理を施してもよい。
付加反応型シリコーン粘着剤に用いるシリコーン樹脂の市販品としては、例えば、SD4580PSA、SD4584PSA、SD4585PSA、SD4587LPSA、SD4560PSA、SD4570PSA、SD4600FCPSA、SD4593PSA、DC7651ADHESIVE、DC7652ADHESIVE、LTC-755、LTC-310(いずれも東レ・ダウコーニング社製)、KR-3700、KR-3701、KR-3704、X-40-3237-1、X-40-3240、X-40-3291-1、X-40-3229、X-40-3323、X-40-3306、X-40-3270-1(いずれも信越化学工業株式会社製)、AS-PSA001、AS-PSA002、AS-PSA003、AS-PSA004、AS-PSA005、AS-PSA012、AS-PSA014、PSA-7465(いずれも荒川化学工業株式会社製)、TSR1512、TSR1516、TSR1521(いずれもモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)等を挙げることができる。
シリコーン粘着層の厚み(乾燥後)は、好ましくは1~100μm、より好ましくは5~80μm、さらに好ましくは10~60μm、さらに好ましくは20~50μmである。
(アクリル系粘着層)
アクリル系粘着層は、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体を含有し、必要に応じてさらに、光重合開始剤、架橋剤、シランカップリング剤、及びその他の材料を含有する粘着剤組成物から形成することができる。アクリル系粘着層は、従来公知の粘着剤組成物から形成することができ、例えば、特開2019-210446号公報等に記載された粘着剤組成物を用いてもよい。
<ウレタン系粘着剤>
ウレタン系粘着剤のウレタン系ベースポリマーとしては、ポリオールとポリイソシアネート化合物との反応物を用いることができる。
ポリオール成分としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、カプロラクトンポリオール等の高分子タイプのポリオールが例示される。これらのポリオール成分は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリイソシアネート化合物としては、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、および芳香族ポリイソシアネートが例示される。これらのポリイソシアネート化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
粘着層の厚み(乾燥後)は、好ましくは1~100μm、より好ましくは5~80μm、更に好ましくは10~60μm、特に好ましくは20~50μmである。
粘着層付き積層ポリエステルフィルムの総厚みは、取り扱い性の観点から、好ましくは200μm以下、より好ましくは9μm以上150μm以下、更に好ましくは12μm以上125μm以下、更に好ましくは25μm以上100μm以下である。
<積層ポリエステルフィルム及びフィルム積層体の用途>
本発明の積層ポリエステルフィルムは、シリコーン粘着剤に対して優れた密着性を有する観点から、各種部材の基材等として好適に用いることができる。また、シリコーン粘着剤を介して光学部材等の部材表面に貼り合わせることによって、表面保護フィルムとして好適に用いることができる。ただし、かかる使用方法に限定するものではない。
フィルム積層体は、耐久性及び透明性が良好なシリコーン粘着剤を用いることができる。また、シリコーン粘着剤自体が有する耐熱性、耐寒性、耐候性、高透明性を活かして、各種用途に好適に用いることができる。
<フィルム積層体>
フィルム積層体の第一の実施態様として、上述の積層ポリエステルフィルムの硬化樹脂層(A)上にシリコーン粘着層を介して、各種部材が貼り合わされた形態が挙げられる。一例として、光学部材(他の樹脂フィルム又はガラス基板など)を用いた場合について説明する。
(光学部材)
光学部材として、例えば、他の樹脂フィルム又はガラス基板などが例示される。他の樹脂フィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、環状ポリオレフィンフィルムのいずれかから選択される樹脂フィルムであることが好ましい。
フィルム積層体の第二の実施態様として、シリコーン粘着層を介して、「他の離型フィルム」を貼合することもできる。
前記離型フィルムを構成する離型層としては、硬化型シリコーン樹脂、フッ素系化合物及び長鎖アルキル化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む離型層であることが好ましい。
前記離型層の一例としては、フッ素置換基を含まない硬化型シリコーンを主成分として含有するシリコーン組成物から形成される第1層、フッ素置換基を有する成分を含有する第2層を順次備えた構成からなるものを挙げることができる。
また、前記離型層の別の一例としては、フッ素置換基を含有する硬化型シリコーンを主成分として含有するシリコーン組成物から形成される層を挙げることができる。
さらに、前記離型層の別の一例として、フッ素置換基を含まない硬化型シリコーンを主成分として含有するシリコーン組成物から形成される層を挙げることができる。
アクリル系粘着剤またはウレタン系粘着剤の場合も、前記、第2の実施態様に含まれる。
<フィルム積層体の製造方法>
本発明のフィルム積層体の製造方法は特に限定されないが、例えば、本発明のシリコーン粘着用積層ポリエステルフィルムの硬化樹脂層上に、シリコーン粘着層形成用液をアプリケーターで塗布してシリコーン粘着層を形成し、その後、シリコーン粘着層上に光学部材(他の樹脂フィルムなど)又は他の離型フィルムを貼り合わせることで本発明のフィルム積層体を製造することができる。シリコーン粘着層形成用液の塗工方法は特に限定されず、従来公知の手法で行うことができる。また、上述のとおり、他の樹脂フィルムには、シリコーン粘着層と接する面上に機能層(ハードコート性、帯電防止性、防眩性、視野向上性、指紋付着防止性、防汚性など)を設けてもよい。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における評価方法は下記のとおりである。
(1)ポリエステルの極限粘度の測定方法
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(質量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
(2)平均粒径(d50:μm)の測定方法
遠心沈降式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所社製SA-CP3型)を使用して測定した等価球形分布における積算(質量基準)50%の値を平均粒径とした。
(3)硬化樹脂層の膜厚の測定方法
硬化樹脂層の表面をRuOで染色し、エポキシ樹脂中に包埋した。その後、超薄切片法により作成した切片をRuOで染色し、塗布層断面をTEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製 H-7650、加速電圧100kV)を用いて測定した。
(4)フィルムヘーズの測定方法
試料フィルムをJIS-K-7136に準じ、株式会社村上色彩技術研究所製ヘーズメーター「HM-150」により、フィルムヘーズを測定した。
(5)フィルムの熱処理方法
フィルムがむき出しとなる状態でケント紙と重ねて固定し、窒素雰囲気下150℃で90分間放置して熱処理を行う。
(6)加熱処理によるフィルムヘーズ変化量の測定方法
ポリエステルフィルムのヘーズを上記(4)の方法で測定した。次いで上記(5)の方法で加熱した後、上記(4)の方法でヘーズを測定した。熱処理後のヘーズと熱処理前のヘーズの差を計算し、フィルムヘーズ変化量とした。
フィルムヘーズ変化量が低いほど、高温処理によるオリゴマーの析出が少ないことを示し、良好である。
(7)オリゴマー析出量I:硬化樹脂層(B)表面のオリゴマーの測定
ポリエステルフィルムを空気中、180℃で30分間加熱する。その後、熱処理をした当該フィルムを上部が開いている縦横10cm、高さ3cmになるように、測定面(硬化樹脂層(B))を内面として箱形の形状を作成する。次いで、上記の方法で作成した箱の中にDMF(ジメチルスルホアミド)4mlを入れて3分間放置した後、DMFを回収し、液体クロマトグラフィー(株式会社島津製作所製:LC-7A 移動相A:アセトニトリル、移動相B:2%酢酸水溶液、カラム:三菱化学株式会社製「MCI GEL ODS 1HU」、カラム温度:40℃、流速:1ml/分、検出波長:254nm)に供給して、DMF中のオリゴマー量を求め、この値を、DMFを接触させたフィルム面積で割って、フィルム表面のオリゴマー量(mg/m)とした。DMF中のオリゴマーは、標準試料ピーク面積と測定試料ピーク面積のピーク面積比より求めた(絶対検量線法)。なお、標準試料の作成は、予め分取したオリゴマーを正確に秤量し、正確に秤量したDMFに溶解し、作成した。
(8)オリゴマー析出量II:硬化樹脂層(A)表面のオリゴマー量の測定
上記と同様の手順を行い、硬化樹脂層(A)表面に析出するオリゴマーの析出量を測定した。
(9)表面抵抗率I:硬化樹脂層(B)表面の表面抵抗値の測定
三菱ケミカル株式会社製低抵抗率計:ロレスタGP MCP-T600を使用し、温度23℃,相対湿度50%の測定雰囲気でサンプルを30分間調湿後に表面抵抗率の測定を行い、1分後の値を表面抵抗率とした。抵抗値が測定可能な範囲の上限を超えていた場合は測定不可とした。
(10)表面抵抗率II:硬化樹脂層(A)表面の表面抵抗率の測定
実施例1、2、5および、比較例1,2,5については、三菱ケミカル株式会社製低抵抗率計:ロレスタGP MCP-T600を使用し、温度23℃,相対湿度50%の測定雰囲気でサンプルを30分間調湿後に表面抵抗率の測定を行い、1分後の値を表面抵抗率とした。
実施例3,4および、比較例3、4については、株式会社三菱ケミカルアナリテック製高抵抗抵抗率計:ハイレスタUX MCP-HT800および測定電極:UR-100を使用し、23℃,50%RHの測定雰囲気でサンプルを30分間調湿後、印可電圧500Vにて測定を行い、1分後の値を表面抵抗率とした。抵抗値が測定可能な範囲の上限を超えていた場合は測定不可とした。
(11)平均表面粗さ(Sa)
実施例及び比較例の積層ポリエステルフィルムの硬化樹脂層(A)を設ける側のフィルム表面と硬化樹脂層(A)表面において、非接触表面・層断面形状計測システムVertScan(登録商標)R550GML(株式会社菱化システム製)を使用して、以下の測定条件下で、640μm×480μmの領域を測定し、4次の多項式補正による出力を用いて、硬化樹脂層(A)表面の平均表面粗さ(Sa)を算出した。
(測定条件)
CCDカメラ:SONY HR-50 1/3’
対物レンズ:20倍
鏡筒:1X Body
ズームレンズ:No Relay
波長フィルター:530 white
測定モード:Waveの条件下
(12)プレス処理後の表面オリゴマー量
サイズが210mm×197mm(A4サイズ)の試料サンプル(硬化樹脂層(B)/ポリエステルフィルム/硬化樹脂層(A))を10枚重ねて、1MPaの圧力下、12時間プレス処理した後、上記(7)に記載方法にて、硬化樹脂層(A)および硬化樹脂層(B)の表面オリゴマー量を測定した。
(14)硬化型シリコーン樹脂の分子量測定
GPC測定装置を使用して、クロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンを使用した検量線に基づいて数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を求め、表2に示した。具体的には、測定用の試料4mgを、4mLのTHFに溶解して測定溶液とし、測定溶液100μLをGPC測定装置に注入して測定した。溶離液にはテトラヒドロフラン(THF)を使用した。分析には東ソー(株)製「Ecosec8320」を使用し、ガードカラムには東ソー(株)製「TSKgel guardcolumn HXL-L」、カラムには東ソー(株)製「TSKgel GMHXL」を4本連結して使用した。また、オーブンの温度は40℃、THF流量1.0mL/分の条件で分析を行い、検出にはRIを用いた。
(15)硬化型シリコーン樹脂の組成分析
硬化型シリコーン樹脂の組成分析を、400MHz-NMR(Bruker Avance400M)を用いて行いた。
H-NMR測定には、溶媒としてCDClを用い、ジメチルシロキサンのメチル基に由来するピークを化学シフト基準として、温度30℃にて行った。
実施例および比較例において使用したポリエステルは、以下のようにして準備したものである。
<ポリエステル(A)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100質量部、エチレングリコール60質量部、エチルアシッドフォスフェートを生成ポリエステルに対して30ppm、触媒として酢酸マグネシウム・四水和物を生成ポリエステルに対して100ppmを窒素雰囲気下、260℃でエステル化反応をさせた。引き続いて、テトラブチルチタネートを生成ポリエステルに対して50ppm添加し、2時間30分かけて280℃まで昇温すると共に、絶対圧力0.3kPaまで減圧し、さらに80分、溶融重縮合させ、極限粘度0.63のポリエステル(A)を得た。
<ポリエステル(B)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100質量部、エチレングリコール60質量部、触媒として酢酸マグネシウム・四水和物を生成ポリエステルに対して900ppmを窒素雰囲気下、225℃でエステル化反応をさせた。引き続いて、正リン酸を生成ポリエステルに対して3500ppm、二酸化ゲルマニウムを生成ポリエステルに対して70ppm添加し、2時間30分かけて280℃まで昇温すると共に、絶対圧力0.4kPaまで減圧し、さらに85分、溶融重縮合させ、極限粘度0.64のポリエステル(B)を得た。
<ポリエステル(C)の製造方法>
ポリエステル(A)の製造方法において、溶融重合前に平均粒径2μmのシリカ粒子を0.3質量部添加する以外はポリエステル(A)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(C)を得た
実施例1:
ポリエステル(A)、(B)、(C)をそれぞれ91質量%、3質量%、6質量%の割合で混合した混合原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(A)、(B)をそれぞれ97%、3%の割合で混合した混合原料を中間層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層=1:18:1の吐出量)の層構成で共押出し冷却固化させて未延伸シートを得た。
次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.4倍延伸した後、この縦延伸フィルムの片面に、表1に示す塗布液2を塗布し、テンターに導き、横方向に110℃で4.3倍延伸し、235℃で熱処理を行った後、横方向に2%弛緩し、硬化樹脂層の膜厚(乾燥後)が0.05μmの硬化樹脂層(B)を有する厚さ75μmのポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムの硬化樹脂層(B)とは反対の表面に、表1に記す塗布液1をNo.4バーを用いてバーコート方式により塗布し、温度150℃×15sの条件で硬化することで硬化樹脂層(A)を有する積層ポリエステルフィルムを得た。
表2に示すとおり、得られたポリエステルフィルムの加熱処理によるフィルムヘーズ変化量は小さく、オリゴマーの析出量も少ないものであった。
実施例2~5
実施例1において、硬化樹脂層(B)の反対の表面に、表1に示す塗布液2~5を塗布する以外は実施例1と同様にして製造し、硬化樹脂層(B)および硬化樹脂層(C)を有するポリエステルフィルムを得た。続いて、硬化樹脂層(C)上に、実施例1と同様に塗布液1を塗布し硬化させることで硬化樹脂層(A)を有する積層ポリエステルフィルムを得た。
比較例1:
実施例1において、硬化樹脂層を設けないこと以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。続いて、ポリエステルフィルム上に、塗布液1を塗布し硬化させることで硬化樹脂層(A)を有する積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた積層ポリエステルフィルムを評価したところ、表2に示すとおり、加熱処理によるフィルムヘーズが大きく上昇し、オリゴマーの析出も多く、工程の汚染が懸念されるものであった。
比較例2~5
硬化樹脂層(B)を設けないこと以外は、実施例2~5と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。続いて、硬化樹脂層(C)上に、塗布液1を塗布し硬化させることで硬化樹脂層(A)を有する積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた積層ポリエステルフィルムを評価したところ、表2に示すとおり、フィルムヘーズの変化量と熱処理によるオリゴマーの析出が多いものであり、工程の汚染が懸念されるものであった。
硬化樹脂層(A)を構成する化合物例は以下のとおりである。
・(SI)硬化型シリコーン樹脂組成物(シロキサン結合からなる主鎖の側鎖および/又は末端に、ヘキセニル基が導入された硬化型シリコーン樹脂(数平均分子量:400、000)と、シロキサン結合からなる主鎖の側鎖および/又は末端に、Si-H基が導入された架橋剤とを含有する混合物(粘度:10、000mcps))
官能基の比率:メチル基/Si-H基/ヘキセニル基=1000/10.7/1.6(mol%)
・(SII)付加型白金触媒:東レ・ダウコーニング製 SRX212
・溶媒:MEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1)
硬化樹脂層(B)および硬化樹脂層(C)を構成する化合物例は以下のとおりである。
(化合物(a))
・(AI):ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸からなる導電剤(アグファゲバルト社製 Orgacon ICP1010)を濃アンモニア水で中和してpH=9とした導電剤、不揮発成分;1.2質量%、溶媒;水
(化合物(b))
・(BI)下記の組成で重合したアクリル樹脂水分散体
スチレン/アクリル酸=85/15(質量%)、不揮発成分;30質量%
(化合物(c))
・(CI):前記式(3)で平均n=4であるポリグリセリン
・(CII):前記式(3)で平均n=4であるポリグリセリン骨格にポリエチレンオキサイドが平均4分子付加した化合物。
(帯電防止剤)
・(DI):帯電防止剤(4級アンモニウム塩化合物)、ポリ(トリメチルアンモニウムエチルメタクリレート・メタンスルホナート)、数平均分子量30000
・(DII):下記式の構成単位からなる、対イオンがメタンスルホン酸イオンである数平均分子量50000の高分子化合物。
Figure 2022155385000005
(バインダー)
・(EI):ケン化度88mol%、重合度500のポリビニルアルコール
・(EII):下記の組成で重合したウレタン樹脂水分散体
テレフタル酸282質量部、イソフタル酸282質量部、エチレングリコール62質量部、およびネオペンチルグリコール250質量部を成分とするポリエステルポリオールを(C1a)としたとき、(C1a)876質量部、トリレンジイソシアネート244質量部、エチレングリコール81質量部、およびジメチロールプロピオン酸67質量部を構成成分としたポリエステルポリウレタンをアンモニアで中和して水分散させたもの(濃度20%、25℃での粘度50mPa・s)
(架橋剤)
・(FI):ヘキサメトキシメチロールメラミン
(界面活性剤)
・(GI):下記式に示す、側鎖にポリエチレンオキサイドを有する構造のノニオン性界面活性剤
Figure 2022155385000006

Figure 2022155385000007

※表1は、不揮発成分基準の量である。


Figure 2022155385000008

本発明の積層ポリエステルフィルムは、オリゴマーの析出が少なく、帯電防止性にも優れる特性を有することから、異物の巻き込みを嫌う用途に好適であり、例えば、静電容量方式のタッチパネル製造用等、粘着剤層を介して、貼り合わせる各種用途、液晶ディスプレイに用いられる光学部材(偏光板、位相差板、プリズムシート、導電フィルム、樹脂フィルム、ガラス基板など)、有機エレクトロルミネッセンス構成部材製造用等、各種ディスプレイ構成部材製造用のほか、各種粘着剤層保護用途に好適に用いられる。

Claims (14)

  1. 硬化樹脂層(B)、ポリエステルフィルム、硬化樹脂層(A)が順次積層された構成を備え、前記硬化樹脂層(B)が下記化合物(a)、(b)及び(c)を含有する樹脂組成物からなる硬化樹脂層であり、前記硬化樹脂層(A)が硬化型シリコーン樹脂を含有する、積層ポリエステルフィルム。
    (a)(a1)チオフェンまたはチオフェン誘導体からなる化合物に他の陰イオン化合物によりドーピングされた重合体、及び(a2)チオフェンまたはチオフェン誘導体からなる化合物中に陰イオン基を持ち自己ドープされた重合体、から選ばれる1種以上
    (b)スチレン構造を有する(メタ)アクリル系重合体
    (c)(c1)ポリグリセリン、及び(c2)ポリグリセリンへのアルキレンオキサイド付加物、から選ばれる1種以上の化合物またはその誘導体。
  2. 前記(メタ)アクリル系重合体のアクリル構造が(メタ)アクリル酸構造である、請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
  3. 150℃、90分間の条件で熱処理した後のフィルムヘーズ変化量(ΔH)が1.0%以下である請求項1または2に記載の積層ポリエステルフィルム。
  4. 前記硬化樹脂層(B)の表面抵抗率が1×10(Ω/□)以下である請求項1~3のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
  5. 前記樹脂組成物が、架橋剤として、メラミン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、及びカルボジイミド化合物から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1~4のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
  6. 前記ポリエステルフィルムと前記硬化樹脂層(A)との間に、硬化樹脂層(C)を備えた、請求項1~5のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
  7. 前記硬化樹脂層(B)がインラインコーティング(塗布延伸法)により設けられる、請求項1~6のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
  8. 前記ポリエステルフィルムが少なくとも3層構成からなる、請求項1~7のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
  9. 請求項1~8のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルムの、硬化樹脂層(A)上に機能層を備えた機能層付き積層ポリエステルフィルム。
  10. 前記機能層が粘着層である、請求項9に記載の機能層付き積層ポリエステルフィルム。
  11. 前記粘着層がシリコーン系である、請求項10に記載の機能層付き積層ポリエステルフィルム。
  12. 前記粘着層がアクリル系またはウレタン系である、請求項10に記載の機能層付き積層ポリエステルフィルム。
  13. 請求項10~12のいずれか1項に記載の機能層付き積層ポリエステルフィルムの粘着層表面に光学部材が貼合された、フィルム積層体。
  14. 請求項10~12のいずれか1項に記載の機能層付き積層ポリエステルフィルムの粘着層表面に離型フィルムが貼合された、フィルム積層体。

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