JP2022155021A - ポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法 - Google Patents

ポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法 Download PDF

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Katsunari Nakajima
俊二 栗原
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Abstract

【課題】環境負荷が小さく、表面性に優れたポリスチレン系樹脂押出発泡体を提供し得るポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法を提供すること。【解決手段】ポリスチレン系樹脂と、二酸化炭素および水を特定のモル比で含む発泡剤とを含む組成物を溶融混練する溶融混練工程、および、前記組成物を低圧域に押出し、発泡成形する発泡成形工程、を含み、圧力開放速度および発泡剤の使用量が特定の値である、ポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法とする。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法に関する。
従来、ポリスチレン系樹脂押出発泡体は、ポリスチレン系樹脂および発泡剤を押出機において溶融混練し、得られた組成物を任意で冷却し、ダイのスリットなどを通じて低圧域に押出することにより、連続的に製造される。
ポリスチレン系樹脂押出発泡体は、良好な断熱性などを有することから、住宅および建築物などの断熱材として用いられている。近年、環境保全の観点から、発泡剤として二酸化炭素などの環境負荷が小さい発泡剤を用いて製造されたポリスチレン系樹脂押出発泡体の開発に注目が集まっている。
例えば、特許文献1および特許文献2には、ポリスチレン系樹脂および発泡剤を含む組成物を低圧域に押出す際の圧力開放速度を制御する方法が開示されている。特許文献1および特許文献2の開示によると、圧力開放速度を制御することによって、表面が平滑なポリスチレン系樹脂押出発泡体が得られる。
特開2013-124281号公報 特開平11-217456号公報
しかしながら、上述のような従来技術は、ポリスチレン系樹脂押出発泡体の表面性をさらに向上させる観点からは十分なものでなく、さらなる改善の余地があった。
本発明の一実施形態は、前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、環境負荷が小さく、表面性に優れたポリスチレン系樹脂押出発泡体を提供し得るポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法を提供することである。
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意研究した結果、二酸化炭素および水を含む発泡剤を使用し、ポリスチレン系樹脂および発泡剤を含む組成物を低圧域に押出す際の圧力開放速度、発泡剤の使用量、並びに、発泡剤に含まれる二酸化炭素および水のモル比を適正な範囲に制御することにより、環境負荷が小さい発泡剤を使用した場合においても、表面性に優れたポリスチレン系樹脂押出発泡体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の一実施形態は、以下の構成を含むものである。
〔1〕ポリスチレン系樹脂と、二酸化炭素および水を含む発泡剤とを溶融混練する溶融混練工程、および、
前記溶融混練工程で得られた組成物を、ダイスリットを通じて低圧域に押出し、発泡成形する発泡成形工程、を含み、
前記ダイスリットにおける圧力開放速度は30MPa/s~160MPa/sであり、
前記発泡剤の使用量は、前記ポリスチレン系樹脂の重量100gに対して、0.150モル~0.190モルであり、
前記発泡剤の総モル数を100モル%とした場合に、前記二酸化炭素が3モル%~50モル%であり、前記水が10モル%以上である、
ポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
〔2〕前記発泡剤は、ジメチルエーテルおよび炭素数3~5の飽和炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含有する、〔1〕に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
〔3〕前記ポリスチレン系樹脂押出発泡体の厚さは10mm~150mmである、〔1〕または〔2〕に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
〔4〕前記ポリスチレン系樹脂押出発泡体の平均気泡径は、0.05mm~1.00mmである、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
本発明の一実施形態によれば、環境負荷が小さく、表面性に優れたポリスチレン系樹脂押出発泡体を提供し得るポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法を提供することができる。
本発明の一実施形態で使用するダイの出口付近を側面から見た断面を示す模式図である。 本発明の一実施形態で使用するダイの出口を正面から見た模式図である。 (a)は、本発明の一実施形態に係るポリスチレン系樹脂押出発泡体において、平均気泡径の測定方法の一例を説明するための模式図である。
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
〔1.本発明の技術的思想〕
ポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造には、良好な断熱性を得るために、発泡剤としてフロン類が使用されていたが、オゾン層および地球温暖化などの問題から、炭化水素系の発泡剤が広く使用されるようになった。更に近年では二酸化炭素などの環境負荷がより小さい発泡剤で代替する試みがある。
しかしながら、発泡剤として、二酸化炭素を含む発泡剤を使用する以外は従来の方法でポリスチレン系樹脂押出発泡体を製造したところ、得られたポリスチレン系樹脂押出発泡体は表面性に劣るものであった。なお、本願明細書において、「表面性がよい」とは、(a)発泡体の表面が、平滑であり、クラック、割れ、および窪みがなく、美麗な外観を有すること、並びに、(b)断面(側面)にボイドがないこと、を意図する。また、「ボイド」とは、発泡体内部に生じる空洞を意図する。本明細書では、表面性の評価に、断面(側面)のボイドの有無も含めることとする。
二酸化炭素を含む発泡剤を使用することにより表面性が低下する理由は定かではないが、以下のように考えられる。二酸化炭素は、フロン類および炭化水素系発泡剤に比べて、ポリスチレン系樹脂への溶解量が少なく、また、蒸気圧が高い。そのため、ポリスチレン系樹脂および発泡剤を溶融混練して得られる組成物を、ダイのスリットまたは穴を通じて低圧域に押出する際に、ダイの内部で組成物から二酸化炭素が遊離し、発泡を開始してしまう。これにより、気泡の破裂などが生じ、平滑な表面を有する発泡成形体を得られ難いと推測される。なお、本発明の一実施形態はかかる推測に限定されない。
そこで、二酸化炭素を含む発泡剤を使用する場合であっても、表面性に優れるポリスチレン系樹脂押出発泡体を得るために、特許文献1および特許文献2に記載される圧力開放速度を制御すること試みた。しかしながら、本発明者は、圧力開放速度を制御しても、得られるポリスチレン系樹脂押出発泡体の表面に微細なクラックなどの欠陥が生じる場合ある、という問題を見出した。すなわち、圧力開放速度を制御するだけでは、優れた表面性を備えるポリスチレン系樹脂押出発泡体を安定して得ることが困難な場合があることが分かった。
そこで、二酸化炭素を含む発泡剤を使用する場合であっても、優れた表面性を備えるポリスチレン系樹脂押出発泡体を安定して得るために、本発明者はさらに様々な製造条件を検討した。
その結果、圧力開放速度に加えて、発泡剤の使用量および発泡剤の組成を制御することにより、優れた表面性を備えるポリスチレン系樹脂押出発泡体を安定して得られることが分かり、本発明を完成させるに至った。
さらに驚くべきことに、本発明の一実施形態にかかるポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法によれば、二酸化炭素を含む発泡剤を使用する場合、従来技術では製造が困難であった厚さを有するポリスチレン系樹脂押出発泡体を製造し得ることを見出した。すなわち、本製造方法によれば、優れた表面性を備え、かつ、所望の厚さを有するポリスチレン系樹脂押出発泡体を安定して得ることができる。
〔2.ポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法〕
本発明の一実施形態に係るポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法は、ポリスチレン系樹脂と、二酸化炭素および水を含む発泡剤とを溶融混練する溶融混練工程、および、前記溶融混練工程で得られた組成物を、ダイスリットを通じて低圧域に押出し、発泡成形する発泡成形工程、を含み、前記ダイスリットにおける圧力開放速度は30MPa/s~160MPa/sであり、前記発泡剤の使用量は、前記ポリスチレン系樹脂の重量100gに対して、0.150モル~0.190モルであり、前記発泡剤の総モル数を100モル%とした場合に、前記二酸化炭素が3モル%~50モル%であり、前記水が10モル%以上である。
本明細書において、「ポリスチレン系樹脂押出発泡体」を「発泡体」と称する場合があり、「本発明の一実施形態に係るポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法」を、「本製造方法」と称する場合がある。また、「溶融混練工程で得られた組成物」は、「ポリスチレン系樹脂および発泡剤を含む組成物」または「ポリスチレン系樹脂および発泡剤を溶融混練して得られる組成物」ともいえる。本明細書において、「溶融混練工程で得られた組成物」を「組成物」または「発泡性溶融樹脂」と称する場合がある。
本製造方法は、前述した構成を有するため、環境負荷が小さく、表面性に優れたポリスチレン系樹脂押出発泡体を得ることができるという利点を有する。さらに、本製造方法によれば、二酸化炭素を含む発泡剤を使用する場合、従来技術では製造が困難であった厚さを有するポリスチレン系樹脂押出発泡体を製造することができるという利点を有する。より具体的には、本製造方法によれば、二酸化炭素を含む発泡剤を使用する場合であっても、優れた表面性を備え、かつ、所望の厚さを有するポリスチレン系樹脂押出発泡体を得ることができるという利点を有する。
まず、本製造方法で使用する原料(成分)、および製造装置について説明し、その後各工程について説明する。
(2-1.ポリスチレン系樹脂)
本製造方法において使用されるポリスチレン系樹脂としては、スチレン系単量体の単独重合体(ポリスチレン);2種以上のスチレン系単量体の共重合体;スチレン系単量体と他の単量体との共重合体等が挙げられる。共重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、およびグラフト共重合体が挙げられる。
スチレン系単量体としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン等が挙げられる。他の単量体としては、ジビニルベンゼン等の多官能性ビニル化合物;アクリル酸、メタクリル酸;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル化合物;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;ブタジエン等のジエン系化合物;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸無水物;N-メチルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-(2)-クロロフェニルマレイミド、N-(4)-ブロモフェニルマレイミド、N-(1)-ナフチルマレイミド等のN-アルキル置換マレイミド化合物等が挙げられる。これらを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、ポリスチレン系樹脂は、上記スチレン系単量体を含む単独重合体又は共重合体と、上記他の単量体の単独重合体又は共重合体とのブレンド物であってもよい。例えば、ポリスチレン系樹脂には、ゴム強化ポリスチレン(例えば、ジエン系ゴム強化ポリスチレン、アクリル系ゴム強化ポリスチレンなど)、およびポリフェニレンエーテル系樹脂等をブレンドしてもよい。
ポリスチレン系樹脂としては、比較的安価であり、押出発泡成形に適しているなどの観点から、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-ジエン系化合物共重合体(耐衝撃性ポリスチレン、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体)などが好ましい。コスト面などから、特に好ましくは、ポリスチレンである。
さらに、ポリスチレン系樹脂は、メルトフローレート、成形加工時の溶融粘度、溶融張力などを調整する目的で、分岐構造を有するポリスチレン系樹脂であってもよい。以下、メルトフローレートをMFRと称する。また、共重合成分、分子量、分子量分布、分岐構造および/又はMFRなどの異なるポリスチレン系樹脂を2種以上混合して使用してもよい。
ポリスチレン系樹脂のMFRは、40g/10分以下であることが好ましい。当該構成であれば、押出機中でポリスチレン系樹脂中に発泡剤を均一に分散させやすいため、安定して押出および発泡成形を行うことができ、その結果、生産安定性が向上するという利点を有する。ポリスチレン系樹脂のMFRは、2~30g/10分であることがより好ましく、6~30g/10分であることがさらに好ましい。当該構成であれば、本発明の効果が発揮され易いという利点を有する。
なお、本明細書において、ポリスチレン系樹脂のMFRは、JIS K7210に基づいて測定される値である。
本製造方法において使用されるポリスチレン系樹脂は、市販されているポリスチレン系樹脂(いわゆる、バージン樹脂)であってもよく、再生ポリスチレン系樹脂(例えば、発泡体の製造等に使用された後に再生押出機等を用いてリサイクルされた再生ポリスチレン系樹脂、および、市場で回収された食品トレーや魚箱からリサイクルされた再生ポリスチレン系樹脂など)であってもよく、それらの混合物であってもよい。再生ポリスチレン系樹脂のMFRは高くなりやすく、例えば、20g/10分を超える場合がある。本製造方法によれば、MFRが20g/10分を超える再生ポリスチレン系樹脂を使用する場合であっても、表面性に優れたポリスチレン系樹脂押出発泡体を得ることができる。
(2-2.発泡剤)
本製造方法において使用される発泡剤は、二酸化炭素および水を含む。これにより、本製造方法は、生産コストが小さく、かつ環境負荷が小さいという利点を有する。
本発明の一実施形態として、発泡剤は、二酸化炭素および水に加えて、発泡剤として機能し得る他の発泡剤をさらに含んでいてもよい。環境保全の観点から、発泡剤として機能し得る他の発泡剤としては、ジメチルエーテル、炭素数3~5の飽和炭化水素、炭素数1~4のアルコール、無機ガス、および地球温暖化係数の小さい有機フッ素化合物が好ましい。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの発泡剤のうち、(a)水を除いて樹脂への可塑化作用を有するために押出機の負荷が軽減されること、(b)得られるポリスチレン系樹脂発泡体の表面性を向上すること、および(c)環境負荷が小さいこと、の点から、ジメチルエーテルおよび炭素数3~5の飽和炭化水素が特に好ましい。発泡剤が、二酸化炭素および水に加えて、ジメチルエーテルおよび炭素数3~5の飽和炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の発泡剤をさらに含有することにより、環境負荷が小さいままで、(a)押出機の負荷を軽減し、(b)得られるポリスチレン系樹脂発泡体の表面性が向上しやすい、という利点を有する。
炭素数3~5の飽和炭化水素としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、およびネオペンタンなどが挙げられる。発泡性の観点から、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、およびこれらの混合物が好ましい。また、発泡体の断熱性能の観点から、ノルマルブタン、イソブタン、およびこれらの混合物が好ましい。
炭素数1~4のアルコールとしては、例えば、エタノール、メタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t-ブチルアルコールが挙げられる。取扱いに関する安全性の面から、特にエタノールが好ましい。
無機ガスとしては、窒素が挙げられる。
地球温暖化係数の小さい有機フッ素化合物としては、ハイドロフルオロオレフィンおよびハイドロクロロフルオロオレフィンが挙げられる。
本製造方法において、発泡剤の使用量は、ポリスチレン系樹脂の重量100gに対して、0.150モル~0.190モルである。当該構成により、組成物の発泡力が確保され、所望の厚さを有するポリスチレン系樹脂発泡体を安定的に得られやすいという利点を有する。発泡剤の使用量が、ポリスチレン系樹脂の重量100gに対して、0.150モル未満である場合は、組成物の発泡が十分に行われず、所望の厚さのポリスチレン系樹脂発泡体を得ることが困難になり得る。発泡剤の使用量が、ポリスチレン系樹脂の重量100gに対して、0.190モル超である場合は、組成物の粘度低下によって発泡力が不足するという問題が生じ得る。
発泡剤の使用量は、ポリスチレン系樹脂の重量100gに対して、0.160モル~0.190モルであることが好ましく、0.165モル~0.190モルであることがより好ましく、0.170モル~0.190モルであることがさらに好ましい。「発泡剤の使用量」は、「二酸化炭素、水および発泡剤として機能し得る他の発泡剤の使用量の合計」を意図する。
発泡剤のうち、二酸化炭素の使用量は、ポリスチレン系樹脂の重量100gに対して、0.0070モル~0.0910モルであることが好ましく、0.0090モル~0.0800モルであることがより好ましく、0.0110モル~0.0690モルであることがさらに好ましい。当該構成により、所望の圧力開放速度が得られやすいという利点を有する。
発泡剤のうち、水の使用量は、ポリスチレン系樹脂の重量100gに対して、0.0170モル~0.1390モルであることが好ましく、0.0280モル~0.1110モルであることがより好ましく、0.0390モル~0.0830モルであることがさらに好ましく、0.0420モル~0.0830モルであることが特に好ましい。当該構成により、発泡体の気泡が粗大化する傾向を有し、所望の気泡径が得られやすいという利点を有する。
発泡剤が、ジメチルエーテルをさらに含有する場合、ジメチルエーテルの使用量は、ポリスチレン系樹脂の重量100gに対して、0.1090モル以下であることが好ましく、0.0980モル以下であることがより好ましく、0.0930モル以下であることがさらに好ましい。ジメチルエーテルの使用量の下限値は特に限定されないが、組成物の可塑性の観点からは、例えば、0.0430モル以上であることが好ましく、0.0540モル以上であることがより好ましく、0.0610モル以上であることがさらに好ましい。当該構成により、気泡が破裂し難いという利点を有する。
発泡剤が、炭素数3~5の飽和炭化水素をさらに含有する場合、炭素数3~5の飽和炭化水素の使用量は、ポリスチレン系樹脂の重量100gに対して、0.0520モル以下であることが好ましく、0.0430モル以下であることがより好ましく、0.0400モル以下であることがさらに好ましい。炭素数3~5の飽和炭化水素の使用量の下限値は特に限定されないが、得られる発泡体の断熱性の観点からは、例えば、0.0050モル以上であることが好ましく、0.0090モル以上であることがより好ましい。当該構成により、良好な断熱性を有する発泡体が得られるという利点を有する。
発泡剤の総モル数を100モル%とした場合に、二酸化炭素の比率は、3モル%~50モル%であり、水の比率は10モル%以上である。当該構成により、圧力開放速度を適正な範囲に制御した場合に、ダイの内部で組成物から二酸化炭素が遊離することを抑制し、得られるポリスチレン系樹脂発泡体の表面性を向上させ得るという利点を有する。二酸化炭素の上記比率が3モル%未満である場合は、押出機への二酸化炭素の定量圧入ができないという問題が生じ得る。二酸化炭素の上記比率が50モル%超である場合は、得られるポリスチレン系樹脂押出発泡体の表面性が低下し、美麗な外観が得られないという問題が生じ得る。また、水の上記比率が10モル%未満である場合は、所望の厚さを有するポリスチレン系樹脂押出発泡体が得られないという問題が生じ得る。
発泡剤の総モル数を100モル%とした場合に、二酸化炭素の比率は、3モル%~45モル%であることが好ましく、5モル%~45モル%であることがより好ましく、5モル%~40モル%であることがさらに好ましい。また、水の比率は、15モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましく、25モル%以上であることがさらに好ましい。水の比率の上限値は特に限定されないが、得られるポリスチレン系樹脂押出発泡体の表面性をより向上させやすいという観点からは、50モル%以下であることが好ましく、45モル%以下であることがより好ましく、40モル%以下であることがさらに好ましい。
(2-3.組成物に含まれるその他の成分)
(二酸化炭素吸着性物質、二酸化炭素溶解性物質)
本製造方法において発泡剤として使用する二酸化炭素は、ポリスチレン系樹脂への溶解性が低い。そのため、ポリスチレン系樹脂および発泡剤を含む組成物は、本発明の一実施形態に係る効果を損なわない範囲で、二酸化炭素に対して吸着性を有する物質(以下「二酸化炭素吸着性物質」とも称する)、および/または、二酸化炭素の溶解量の大きい物質(以下「二酸化炭素溶解性物質」とも称する)をさらに含んでいてもよい。組成物が二酸化炭素吸着性物質および/または二酸化炭素溶解性物質を含むことにより、安定して押出発泡成形を行うことができる。
二酸化炭素吸着性物質または二酸化炭素溶解性物質としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリメチルメタアクリレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸系共重合体、活性炭、炭酸カルシウム、ポリエチレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本製造方法において、二酸化炭素吸着性物質および二酸化炭素溶解性物質の使用量は、二酸化炭素の使用量などによって適宜調整されるものであるが、例えば、ポリスチレン系樹脂100重量部に対して、0.05~5.00重量部であることが好ましく、0.10~3.00重量部であることがより好ましい。
(吸水性物質)
本製造方法において発泡剤として使用する水は、ポリスチレン系樹脂への溶解性が低い。そのため、ポリスチレン系樹脂および発泡剤を含む組成物は、本発明の一実施形態に係る効果を損なわない範囲で、吸水性物質をさらに含んでいてもよい。組成物が吸水性物質を含むことにより、安定して押出発泡成形を行うことができる。
吸水性物質としては、例えば、吸水性鉱物(スメクタイト、ゼオライトなど)、および親水性有機物質などが挙げられる。スメクタイトとしては、例えば、天然ベントナイト、精製ベントナイト、有機化ベントナイト、ヘクトライト等が挙げられ、ゼオライトとしては、例えば、天然ゼオライト、人工ゼオライト、合成ゼオライト等が挙げられる。親水性有機物質としては、ポリアクリル酸塩系重合体、澱粉-アクリル酸グラフト共重合体、ポリビニルアルコール系重合体、ビニルアルコール-アクリル酸塩系共重合体、エチレン-ビニルアルコール系共重合体、ポリアクリロニトリル-メタクリル酸メチル-ブタジエン系共重合体、ポリエチレンオキサイド系共重合体およびこれらの誘導体、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、多価アルコール類、メラミン、および、表面に水酸基を有する粒子径1000nm以下の微粉末(例えば、表面にシラノール基を有する無水シリカ(酸化ケイ素))等があげられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本製造方法において、吸水性物質の使用量は、水の使用量などによって適宜調整されるものであるが、例えば、ポリスチレン系樹脂100重量部に対して、0.01~5.00重量部であることが好ましく、0.10~2.00重量部であることがより好ましい。
(難燃剤)
ポリスチレン系樹脂および発泡剤を含む組成物は、本発明の一実施形態に係る効果を損なわない範囲で、難燃剤をさらに含んでいてもよい。組成物が難燃剤を含むことにより、本製造方法により得られるポリスチレン系樹脂押出発泡体に、JIS A 9511の測定方法Aに規定される難燃性を付与することができる。
難燃剤としては、臭素系難燃剤が好ましく用いられる。臭素系難燃剤の具体的な例としては、テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピル)エーテル、テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモプロピル)エーテル等の臭素化ビスフェノール系化合物;臭素化スチレン-ブタジエンブロック共重合体、臭素化スチレン-ブタジエンランダム共重合体、臭素化スチレン-ブタジエングラフト共重合体等の脂肪族臭素含有ポリマー;テトラブロモシクロオクタン;ヘキサブロモシクロドデカン;トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレート、等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
これらのうち、(a)テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピル)エーテルとテトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモプロピル)エーテルとの混合臭素系難燃剤、(b)臭素化スチレン-ブタジエンブロック共重合体、または(c)ヘキサブロモシクロドデカンが、押出運転が良好であり、発泡体の耐熱性に悪影響を及ぼさない等の理由から、望ましく用いられる。これらの物質は1種を単体で用いても、2種以上を混合物として用いてもよい。
本製造方法において、難燃剤の使用量は、経済性および他の要求諸物性への影響の観点からは、ポリスチレン系樹脂100重量部に対して、0.50~10.00重量部であることが好ましく、0.50~5.00重量部であることがより好ましい。
(その他添加剤)
ポリスチレン系樹脂および発泡剤を含む組成物は、本発明の一実施形態に係る効果を損なわない範囲で、気泡径調整剤(タルクなど)、滑剤(ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウムなど)、ラジカル発生剤(2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン、ポリ-1,4-ジイソプロピルベンゼンなど)、難燃助剤(リン酸エステルおよびホスフィンオキシドなど)、安定剤(エポキシ化合物、多価アルコールエステル化合物、フェノール系安定剤、ホスファイト系安定剤など)、加工助剤(脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、流動パラフィン、オレフィン系ワックスなど)、界面活性剤、難燃調整剤(酸化鉄、鉄錯体、ジフェニルアルカン、ジケトンなど)、帯電防止剤、着色剤(顔料、染料など)、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、可塑剤、充填剤、などの添加剤をさらに含んでいてもよい。
また、ポリスチレン系樹脂および発泡剤を含む組成物は、本発明の一実施形態に係る効果を損なわない範囲で、熱線輻射抑制剤を含んでいてもよい。組成物が熱線輻射抑制剤を含むことにより、ポリスチレン系樹脂押出発泡体中の熱線の透過を抑制し、その結果、断熱性を高めることができる。熱線輻射抑制剤としては、黒色系粒子(グラファイト、カーボンブラックなど)、および、白色系粒子(酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化アンチモンなど)などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
(2-4.製造装置)
以下、本製造方法で使用する製造装置について説明する。本実施形態で使用する製造装置は、ポリスチレン系樹脂と発泡剤とを溶融混練し、溶融混練された組成物をダイスリットを通じて低圧域に押出し、発泡成形することによりポリスチレン系樹脂押出発泡体を製造するための装置である。このような製造装置としては、溶融混練部と、ダイを有する発泡成形部とを備えるものであればよい。溶融混練部と、ダイを有する発泡成形部とは連結しており、組成物の押出方向の上流側から下流側に向かってこの順に配置されている。溶融混練部と発泡成形部との間に、組成物の温度を低下させる冷却部が配設されていてもよい。
製造装置では、(a)原料供給装置を介してポリスチレン系樹脂などの発泡剤以外の原料が、(b)発泡剤供給装置を介して発泡剤が、溶融混練部内に供給される。溶融混練部内で、ポリスチレン系樹脂などの発泡剤以外の原料と、発泡剤とが溶融混練される。そして、溶融混練された組成物は、必要に応じて冷却部を通過して、発泡成形部に到達する。そして、発泡成形部のダイのダイスリットから押出された組成物は、発泡しつつ成形されることにより、ポリスチレン系樹脂押出発泡体が製造される。ここで、溶融混練部から発泡成形部へ向かう組成物の流れに対して、溶融混練部側を上流側とし、発泡成形部側を下流側とする。
溶融混練部は、従来公知の押出機から適宜選択して使用することができ、例えばスクリュを用いた押出機が挙げられる。樹脂の分子劣化をできる限り抑えるため、スクリュの形状としては、低剪断タイプのスクリュが好ましい。スクリュを用いた押出機としては、例えば、単軸押出機や二軸押出機を採用することが可能である。二軸押出機を採用する場合のスクリュ回転方向は、同方向であっても異方向であっても構わない。
溶融混練部は、ポリスチレン系樹脂と、水以外の発泡剤とを溶融混練する第1押出機、および、第1押出機で得られた溶融混練物と水とを溶融混練する第2押出機を備えていてもよい。この場合、第1押出機には、原料供給装置および水以外の発泡剤の供給装置が接続されていてよい。また、第2押出機には、水の供給装置が接続されていてよい。
ダイを有する発泡成形部は、組成物の流れにおいて、最も下流側に配置されている。図1は、本発明の一実施形態で使用するダイの出口付近を側面から見た断面を示す模式図である。図2は、本発明の一実施形態で使用するダイの出口を正面から見た模式図である。なお、図1および図2に示されるダイにおいて、押出方向は水平方向に設けられているが、押出方向は水平方向に限定されるものではない。以下、図1および図2に示されるダイを例に挙げて、ダイの出口付近の構成を説明する。
図1および図2に示すとおり、ダイは、溶融混練部側(上流側)から吐出量Qで供給される組成物(発泡性溶融樹脂)を、間隙(目開き)H、幅W、ランド長Lのダイスリットを介して、低圧域へ開放し、発泡させる構造となっている。より具体的には、ダイは、その末端にフェース面を備えている。フェース面は、ダイにおいて外部と接する面であり、本発明の一実施形態において低圧域と接している面である。ダイのフェース面には、組成物の出口となるダイスリットが形成されている。ダイスリットは、ダイの内部において樹脂通路に連通している。ダイにおいて、ダイスリットの間隙(目開き)Hは、樹脂通路の高さ(鉛直方向の長さ)よりも小さい。ダイスリットと樹脂通路との間には、ダイスリットの間隙(目開き)Hと同じ間隙を有し、樹脂通路の高さよりも小さい間隙を有する小流路を備えるランド部が形成されている。換言すれば、ダイスリットは、小流路を有するともいえる。また、ランド部は、ダイにおいて当該小流路を備える領域を指す。
図1に示すとおり、ダイスリットの間隙Hは、鉛直方向の目開きを指す。間隙Hは、0.5mm~10mmであることが好ましく、1.0~7.0mmであることがさらに好ましい。間隙Hが当該範囲であれば、ダイスリットにおける組成物の圧力Pを好適な範囲に制御しやすいという利点を有する。
図2に示すとおり、ダイスリットの幅Wは、押出方向および鉛直方向の両方に垂直な方向のスリット幅を指す。幅Wは、200m~700mmであることが好ましく、300mm~600mmであることがさらに好ましい。幅Wが当該範囲であれば、ダイスリットにおける組成物の圧力Pを好適な範囲に制御しやすいという利点を有する。
図1に示すとおり、ランド長Lは、押出方向のランド部(小流路)の長さを指す。ランド長Lは、5~50mmであることが好ましく、8~40mmであることがさらに好ましい。ランド長Lが当該範囲であれば、ダイスリットにおける組成物の圧力Pを好適な範囲に制御しやすいという利点を有する。
発泡成形部は、ダイスリットを通じて押出された組成物を、圧力開放直後に発泡成形するために、ダイに接続された成形金型を備えていてもよい。本製造方法において用いられる成形金型としては、上下2枚の板状物から構成される成形板が例示される。当該上下2枚の板状物は、平行に設置されていてもよく、入口(上流側)から出口(下流側)に向かって緩やかに拡大するよう設置されていてもよい。また、必要に応じて、発泡体の側面を拘束するために、上下2枚の板状物の両端部に、当該板状物に対して垂直方向に設置された、左右2枚の第2の板状物をさらに設置してもよい。これらの板状物の壁面のうち、押出発泡された組成物が接する壁面(「樹脂流動壁面」とも称する)には、フッ素樹脂層を付設することが好ましい。フッ素樹脂層の厚さは、特に限定されないが、例えば、20μm~100μmであってよい。
(2-5.溶融混練工程)
本製造方法は、ポリスチレン系樹脂と、二酸化炭素および水を含む発泡剤とを溶融混練する溶融混練工程を含む。溶融混練工程は、製造装置の溶融混練部にて、ポリスチレン系樹脂を溶融させて、ポリスチレン系樹脂に発泡剤を溶解させる工程ともいえる。また、溶融混練工程は、ポリスチレン系樹脂および発泡剤を含む組成物の溶融混練物を調製する工程ともいえる。
溶融混練工程では、最終的に、ポリスチレン系樹脂に発泡剤が溶解されていればよい。溶融混練工程において、ポリスチレン系樹脂および発泡剤を溶融混練部に供給する順序並びに方法としては、特に限定されず、例えば以下の方法が挙げられる:(1)ポリスチレン系樹脂を溶融混練部に供給し、当該ポリスチレン系樹脂を溶融混練する;(2)その後、溶融混練されたポリスチレン系樹脂に対して、溶融混練部の途中にある発泡剤供給装置から発泡剤を供給し、すなわち、溶融混練部内にて組成物を調製(完成)し、当該組成物をさらに溶融混練する方法。
上述した方法において、必要に応じて使用するその他の成分を上記組成物に添加する場合、これらの成分を溶融混練部に供給する方法および順序は特に限定されない。必要に応じて使用するその他の成分は、ポリスチレン系樹脂および/または発泡剤と同時に添加してもよく、別々に、かつ順不同に、添加してもよい。また、ポリスチレン系樹脂にその他の成分を予め混合したマスターペレットを作成し、当該マスターペレットを溶融混練部に供給してもよい。
溶融混練工程において、ポリスチレン系樹脂などの原料を溶融させるための溶融混練部内のバレル温度は、ポリスチレン系樹脂が溶融する温度以上であればよいが、難燃剤などへの悪影響が生じず、また樹脂の分子劣化ができる限り抑制されるように、バレル温度を設定することが好ましい。例えば、ポリスチレン系樹脂は、150℃~250℃のバレル温度で溶融混練されることが好ましい。
溶融混練工程において、溶融混練時間は、組成物が均一に混合されるように、組成物の吐出量および溶融混練部の構成などに応じて適宜に設定される。
溶融混練工程において、発泡剤を添加または注入する際の圧力は、特に制限するものではなく、溶融樹脂の圧力よりも高い圧力であればよい。
溶融混練工程は、例えば上述した方法で組成物を溶融混練した後、溶融混練された組成物が固化しない温度の範囲内において、溶融混練された組成物の温度を下げる冷却工程をさらに有していてもよい。冷却工程は、溶融混練部内で溶融混練された組成物を、冷却部に送り、冷却部内で組成物を所望の温度まで冷却することにより行われる。
冷却部にて冷却工程を行う場合、冷却部の出口部における組成物の温度は、例えば、105℃~140℃の範囲であることが好ましく、110℃~130℃の範囲であることがより好ましい。冷却部の出口部における組成物の温度が上記の範囲であれば、ダイ内の組成物の温度を、好ましい範囲に調整しやすいという利点を有する。冷却部の出口部における組成物の温度は、冷却部材の温度および伝熱面積、並びに、冷却部材内における組成物の滞留時間などを調整することにより、所望の範囲に制御することができる。
(2-6.発泡成形工程)
本製造方法は、溶融混練工程で得られた組成物を、ダイスリットを通じて低圧域に押出し、発泡成形する発泡成形工程を含む。
発泡成形工程において、ダイスリットにおける圧力開放速度は30MPa/s~160MPa/sである。当該構成により、二酸化炭素および水のモル比を適正な範囲に制御した発泡剤を適正な量で用いた場合に、ダイの内部で、組成物から二酸化炭素が遊離することを抑制し、得られるポリスチレン系樹脂発泡体の表面性を向上させ得るという利点を有する。ダイスリットにおける圧力開放速度が30MPa/s未満である場合は、得られるポリスチレン系樹脂押出発泡体の表面に、クラック、割れ、窪み、およびボイドなどが生じやすくなり、優れた表面性を備えるポリスチレン系樹脂押出発泡体を安定して得ることが困難な場合がある。ダイスリットにおける圧力開放速度が160MPa/s超である場合は、ポリスチレン系樹脂押出発泡体の厚さを出しにくくなり、所望の厚さに満たないポリスチレン系樹脂押出発泡体となる可能性がある。
ダイスリットにおける圧力開放速度は、50MPa/s~150MPa/sであることが好ましく、60MPa/s~140MPa/sであることがより好ましく、70MPa/s~140MPa/sであることがより好ましく、80MPa/s~140MPa/sであることがより好ましく、90MPa/s~140MPa/sであることがさらに好ましく、95MPa/s~140MPa/sであることが特に好ましい。
ダイスリットにおける圧力開放速度とは、ダイスリットを通じて組成物を低圧域(例えば、大気圧下)に押出し、発泡させる際の、圧力開放速度を指す。本明細書において、圧力開放速度は、下記式により算出される値である。
s=P・Q/(W・H・L)
s〔MPa/s〕:圧力開放速度
P〔MPa〕:ダイスリットにおける組成物の圧力(ゲージ圧)
Q〔m/s〕:吐出量
W〔mm〕:ダイスリットの幅
H〔mm〕:ダイスリットの間隙
L〔mm〕:ランド長
ダイスリットにおける組成物の圧力Pは、3.0MPa~15.0MPaであることが好ましく、4.0~10.0MPaであることがより好ましく、5.0MPa~8.0MPaであることがさらに好ましい。ダイスリットにおける組成物の圧力Pが3.0MPa以上であれば、組成物への二酸化炭素の溶解が不十分とならず、ダイスリットから二酸化炭素がガスとして噴出する問題、および、発泡体にボイドが発生する問題が生じにくいという利点を有する。また、ダイスリットにおける組成物の圧力Pが15.0MPa以下であれば、組成物の吐出量の低下による生産性の低下が生じにくいという利点を有する。
ダイスリットにおける組成物の圧力Pは、ダイスリットから上流に、250mm以内のダイ内に設置された圧力センサによって測定された値である。ダイスリットにおける組成物の圧力Pを好ましい範囲に調整する方法としては、ダイスリットの間隙Hを調整する方法、および、溶融混練部または冷却部の出口部における組成物の温度を調整する方法、などが挙げられる。
吐出量Qは、130×10-6/s以上であることが好ましく、150×10-6/s以上であることがより好ましく、160×10-6/s以上であることがさらに好ましく、185×10-6/s以上であることが特に好ましい。吐出量Qが130×10-6/s以上であれば、生産性の低下が生じにくいという利点を有する。吐出量Qの上限は、特に限定されない。
〔3.ポリスチレン系樹脂押出発泡体〕
本明細書において、「本製造方法によって得られるポリスチレン系樹脂押出発泡体」を「本発泡体」と称する場合もある。
本発泡体は、優れた表面性を備える。より具体的には、本発泡体の表面は、平滑であり、クラック、割れ、窪み、およびボイドがなく、美麗な外観を有する。また、本発泡体を厚さ方向にてカットした断面を観察すると、本発泡体の表層部付近に、ボイドの発生が抑制されていることが確認される。これは、ダイの内部で組成物から二酸化炭素が遊離するという問題が、本製造方法より解消された結果、ダイスリットにおける組成物の流動の乱れ、組成物の可塑性の低下、および、ダイスリットにおける発泡力の減少が抑制され、発泡体の表面形成が良好に行われたためと推測される。なお、本発明の一実施形態はかかる推測に限定されない。
なお、本明細書において、「ポリスチレン系樹脂押出発泡体の押出方向」とは、ポリスチレン系樹脂押出発泡体を製造するときに、ダイスリットから組成物を押出す方向を意図する。本明細書において、ポリスチレン系樹脂押出発泡体の「幅」および「厚さ」とは、「ポリスチレン系樹脂押出発泡体の押出方向」と垂直方向の当該発泡体の長さのうち、長い方を「幅」と称し、短い方を「厚さ」と称する。
(発泡体の厚さ)
本発泡体の厚さは、特に制限されず、用途に応じて適宜選択される。例えば、建材などの用途に使用される断熱材の場合、好ましい断熱性、曲げ強度および圧縮強度を付与せしめるためには、10mm~150mmであることが好ましく、30mm~150mmであることがより好ましく、40mm~150mmであることがさらに好ましく、50mm~150mmであることがさらに好ましく、60mm~150mmであることが特に好ましい。本製造方法によれば、上記の範囲の好ましい厚さを有し、かつ表面性に優れるポリスチレン系樹脂押出発泡体を製造することができる。
本明細書において、発泡体の厚さは、以下の方法によって算出される:(1)発泡体の幅方向中央部、幅方向の一端から逆端方向に向かって任意の場所、および、幅方向の逆端から一端方向に向かって任意の場所の計3箇所について、発泡体の押出方向に垂直な方向の厚さ(長さ)を、ノギス((株)ミツトヨ製、M型標準ノギス)を用いて測定する;(2)3箇所の測定値から平均値を算出し、得られた値を発泡体の厚さとする。
(発泡体の密度)
本発泡体の密度は、特に制限されず、用途に応じて適宜選択される。例えば、軽量でかつ優れた断熱性および曲げ強度、圧縮強度を付与せしめるためには、20~60kg/mであることが好ましく、20~40kg/mであることがより好ましく、20~30kg/mであることがさらに好ましい。本発泡体の密度は、成形直後の発泡体を、内部が高温雰囲気に保たれた炉内を通過させて2次発泡させることにより、気泡形状を調整したり、軽量化させたりすることにより、調整することができる。
本明細書において、発泡体の密度は、以下の方法によって算出される:(1)発泡体の幅方向中央部A、幅方向の一端から逆端方向に向かって任意の場所B、および、AとBの中間位置の3点からカットボードを切り出す。切り出した各カットボードの大きさは、任意の厚さ×幅100mm×長さ100mmである;(2)切り出したカットボードを、23℃×50%RHの雰囲気で16時間以上養生後、各カットボード各辺の寸法および重量を測定する;(3)測定値から、次の式に基づいて各カットボードの密度を算出し、3つのカットボードの密度の平均値を発泡体の密度とする。
カットボードの密度(kg/m)=発泡体重量(kg)/発泡体体積(m
(平均気泡径)
本発泡体の平均気泡径は、優れた断熱性、および適正な強度を付与せしめるためには、0.05mm~1.00mmであることが好ましく、0.20mm~1.00mmであることがより好ましく、0.30mm~1.00mmであることがさらに好ましく、0.40mm~1.00mmであることが特に好ましい。平均気泡径が0.05mm以上であれば、成形金型にて板状に成形する際に、発泡体の厚さが出やすくなり、成形された発泡体の気泡が厚さ方向に長く、押出方向に短い形状となることを避けることができるという利点を有する。また、気泡を構成する膜の薄膜化を防ぐことにより、熱線の透過の増大および輻射による伝熱量の増加を防ぐ結果、良好な断熱性が得られやすいという利点を有する。平均気泡径が1.00mm以下であれば、単位厚さ当たりの熱線の遮蔽回数の減少、熱線の透過の増大、および輻射による伝熱量の増加を防ぐ結果、良好な断熱性が得られやすいという利点を有する。本製造方法によれば、均一な気泡構造が得られ易い傾向にある。
尚、本発明の一実施形態に係るポリスチレン系樹脂押出発泡体の平均気泡径は、マイクロスコープを用いて、次に記載の通り評価することができる。
図3は、本発明の一実施形態に係るポリスチレン系樹脂押出発泡体において、平均気泡径の測定方法の一例を説明するための模式図である。図3の(a)の下図は、図3の(a)の上図(ポリスチレン系樹脂押出発泡体)をA-A’断面で切断した断面図である。図3の(b)は、図3の(a)における、幅方向(X軸)、押出方向(Y軸)および厚さ方向(Z軸)の関係を表す。それぞれの軸は、互いに直交している。
得られたポリスチレン系樹脂押出発泡体の幅方向中央部、及び幅方向の一端から逆端方向に次式(1)で求める距離Dだけ離れた場所(幅方向両端について同じ場所)の計3箇所の厚さ方向中央部(図3の(a)の黒丸印の地点)を観察する。
距離D=(発泡体幅-製品幅)÷2 ・・・(1)。
具体的には、上述の3箇所の厚さ方向中央部について図3の(b)におけるZX平面及びYZ平面を前記マイクロスコープにて観察し、100倍の拡大写真を撮影する。前記拡大写真の厚さ方向に任意に2mmの直線を3本引き(各観察箇所、各観察方向につき3本。)、その直線に接する気泡の個数aを計測する。計測した気泡の個数aから、次式(2)により観察箇所毎の厚さ方向の平均気泡径Aを求める。3箇所(各箇所2方向ずつ)の平均値をポリスチレン系樹脂押出発泡体の厚さ方向の平均気泡径A(平均値)とする。
観察箇所毎の厚さ方向の平均気泡径A(mm)=2×3/気泡の個数a
・・・(2)。
また、上述の計3箇所の厚さ方向中央部について、図3の(b)におけるYZ平面を前記マイクロスコープにて観察し、100倍の拡大写真を撮影する。前記拡大写真の押出方向に任意に2mmの直線を3本引き(各観察箇所につき3本。)、その直線に接する気泡の個数bを計測する。計測した気泡の個数bから、次式(3)により観察箇所毎の押出方向の平均気泡径Bを求める。3箇所の平均値をポリスチレン系樹脂押出発泡体の押出方向の平均気泡径B(平均値)とする。
観察箇所毎の押出方向の平均気泡径B(mm)=2×3/気泡の個数b
・・・(4)。
更に、上述の計3箇所の厚さ方向中央部について、図3の(b)における図3の(b)におけるZX平面を前記マイクロスコープにて観察し、100倍の拡大写真を撮影する。前記拡大写真の幅方向に任意に2mmの直線を3本引き(各観察箇所につき3本。)、その直線に接する気泡の個数cを計測する。計測した気泡の個数cから、次式(4)により観察箇所毎の幅方向の平均気泡径Cを求める。3箇所の平均値をポリスチレン系樹脂押出発泡体の幅方向の平均気泡径C(平均値)とする。
観察箇所毎の幅方向の平均気泡径C(mm)=2×3/気泡の個数c
・・・(4)。
以下に実施例によって本発明の一実施形態をより詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら制限されるものではない。
(原料)
以下の実施例および比較例において使用した原料は、次の通りである:
(A)ポリスチレン系樹脂
(汎用ポリスチレン系樹脂(GPPS))
(A-1)PSジャパン(株)製、G9401、MFR2.2g/10分
(A-2)PSジャパン(株)製、680、MFR7.0g/10分
(再生ポリスチレン系樹脂(再生PS))
(A-3)(株)大誠樹脂製、GPPS-YN、MFR4.3g/10分
(A-4)(株)ナベカ製、GSP-NB、MFR8.6 g/10分
(B)発泡剤
(B-1)ジメチルエーテル、三井化学(株)製
(B-2)無臭ブタン、岩谷産業(株)製
(B-3)二酸化炭素、昭和電工ガスプロダクツ(株)製
(B-4)水、大阪府摂津市水道水
(C)難燃剤
(C-1)臭素化スチレン-ブタジエンブロック共重合体、ランクセス製、EMERALD INNOVATION #3000
(D)安定剤
(D-1)ビスフェノール-A-グリシジルエーテル、(株)ADEKA製、EP-13
(D-2)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、DIC(株)製、EPICLON N-680
(D-3)ジペンタエリスリトール-アジピン酸反応混合物、味の素ファインテクノ(株)製、プレンライザーST210
(D-4)フェノール系抗酸化剤、Songwon製、SONGNOX1010
(D-5)ホスファイト系抗酸化剤、Songwon製、SONGNOX6260
(E)その他添加剤
(E-1)ステアリン酸カルシウム、堺化学工業(株)製、SC-P
(E-2)ベントナイト、BYK Additives(株)製、ベントライトL
(E-3)天然ゼオライト、日東粉化工業(株)製、SP#2300
(E-4)ポリ-1,4-ジイソプロピルベンゼン、United Initiators製、CUROX CC-P3。
(製造装置)
以下の実施例および比較例では、ポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造に使用する製造装置として、第一押出機(単軸押出機、口径150mm)、第二押出機(単軸押出機、口径200mm)、冷却機、およびスリットダイがこの順に直列に連結されており、さらに、スリットダイに接続された上下2枚の成形板、および、成形板の下流に位置する成形ロールを備える装置を使用した。スリットダイとしては、ダイスリットの間隙Hが1.5mmに固定されたスリットダイを使用した。
(測定および評価方法)
[ダイスリットにおける組成物の圧力P]
ダイスリットにおける組成物の圧力Pは、ダイスリットから上流に、250mm以内のダイ内に設置された圧力センサによって測定した。
[ダイスリットの圧力開放速度s]
ダイスリットにおける圧力開放速度sは、下記式により算出した。
s=P・Q/(W・H・L)
s〔MPa/s〕:圧力開放速度
P〔MPa〕:ダイスリットにおける組成物の圧力(ゲージ圧)
Q〔m/s〕:吐出量
W〔mm〕:ダイスリットの幅
H〔mm〕:ダイスリットの間隙
L〔mm〕:ランド長
[発泡体の表面性]
実施例および比較例で得られたスキン層(金型と接触していた表層)を有する発泡体(以下「スキン付き発泡体」とも称する)、および、スキン付き発泡体のスキン層を削り落した後の発泡体(以下「カットボード」とも称する)の表面(上面、下面、および四方の側面の合計6面)の外観を目視し、以下の基準により発泡体の表面性を評価した。評価については特許文献1(特開2013-124281号)に記載される評価項目を細分化して評価を行った。
◎:スキン付き発泡体の表面にクラック、割れ、窪み、およびボイドが無く、後述の[発泡体の厚さ]の項に記載される3箇所の厚さの最大値と最小値との差が1mm未満である状態。
〇:スキン付き発泡体の表面にクラック、割れ、窪み、およびボイドが無いが、後述の[発泡体の厚さ]の項に記載される3箇所の厚さの最大値と最小値との差が1mm以上である状態。
△:スキン付き発泡体の表面に割れ、窪み、およびボイドは無いが、微細なクラックがあり、スキン付き発泡体の表面(上面および下面)を片側5mmで削り落した後のカットボードの表面にクラック、割れ、窪み、およびボイドが無い状態。
▽:スキン付き発泡体の表面(上面および下面)を片側5mmで削り落した後の発泡体の表面に、クラック、割れ、窪み、およびボイドの少なくともいずれかがあり、片側10mmで削り落した後のカットボードの表面に、クラック、割れ、窪み、およびボイドが無い状態。
×:スキン付き発泡体の表面(上面および下面)を片側10mmで削り落した後のカットボードの表面に、クラック、割れ、窪み、およびボイドの少なくともいずれかがある状態。
[発泡体の厚さ]
発泡体の厚さは、以下の方法によって算出した:((1)発泡体の幅方向中央部、および、幅方向中央部から両端に向かって各455mmの場所の計3箇所について、発泡体の押出方向に垂直な方向の厚さ(長さ)を、ノギス((株)ミツトヨ製、M型標準ノギス)を用いて測定した;(2)3箇所の測定値から平均値を算出し、得られた値を発泡体の厚さとした。
[発泡体の平均気泡径]
得られたスチレン系樹脂押出発泡体について、前述の通り測定した。マイクロスコープとしては、(株)KEYENCE製、DIGITAL MICROSCOPE VHX-900を使用した。
(実施例1)
以下の材料(発泡剤以外の材料):A-1(ポリスチレン系樹脂のGPPS)70.00重量部、A-3(ポリスチレン系樹脂の再生PS)30.00重量部、C-1(難燃剤)2.00重量部、D-1(ビスフェノール-A-グリシジルエーテル)0.15重量部、D-2(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)0.10重量部、D-3(ジペンタエリスリトール-アジピン酸反応混合物)0.20重量部、D-4(フェノール系抗酸化剤)0.20重量部、D-5(ホスファイト系抗酸化剤)0.01重量部、E-1(ステアリン酸カルシウム)0.20重量部、E-2(ベントナイト)0.40重量部、E-3(天然ゼオライト)0.10重量部、および、E-4(ポリ-1,4-ジイソプロピルベンゼン)0.20重量部、をドライブレンドし、樹脂混合物を調製した。得られた樹脂混合物を、以下「GP」とも称する。
得られたGPを、約700kg/hrにて原料供給装置から第一押出機に投入し、GPの温度約240℃にて溶融混練を開始した。GPの溶融混練の途中にて、発泡剤として、ポリスチレン系樹脂100gに対してB-1(ジメチルエーテル)0.0652モルおよびB-3(二酸化炭素)0.0682モルを第一押出機内に圧入した。その後、第一押出機に連結された第二押出機で混練しながら、B-4(水)0.0472モルを第二押出機内に圧入し、組成物を調製した(溶融混練工程)。発泡剤の総量は、ポリスチレン系樹脂の重量100gに対して、0.181モルであった。また、発泡剤(B-1、B-3、B-4)の総モル数を100モル%とした場合に、各発泡剤のモル比は表1に示されるとおりであった。
溶融混練した組成物を、第二押出機に連結された冷却機を通過させて、組成物の温度を発泡に適した温度(122℃)に冷却した。冷却部を通過した組成物を、スリットダイに進入させて、ダイスリットから吐出量Q 193×10-6/sにて大気中に押出した。ダイスリットにおける組成物の圧力Pは7.0MPaであり、圧力開放速度sは106MPa/sであった。押出された組成物を、スリットダイに接続した上下2枚の成形板およびその下流側に設置した上下2個の成形ロールの間で、板状に発泡成形して、幅1070mmの板状のポリスチレン系樹脂押出発泡体を得た(発泡成形工程)。
得られたポリスチレン系樹脂押出発泡体について、表面性を評価し、平均気泡径および平均厚さを算出した。ポリスチレン系樹脂および発泡剤の組成、各製造条件、評価結果および算出結果を表1に示す。
(実施例2)
原料供給装置におけるGPの投入量を約800kg/hrに変更し、ポリスチレン系樹脂および発泡剤の組成、並びにダイスリットからの吐出量Qを表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同じ製法で、巾1070mmの板状のポリスチレン系樹脂押出発泡体を得た。なお、水以外の発泡剤(B-1、B-2、B-3)は、第一押出機内に圧入し、水(B-4)は第二押出機内に圧入した。ダイスリットにおける組成物の圧力Pは6.2MPaであり、圧力開放速度sは103MPa/sであった。得られたポリスチレン系樹脂押出発泡体について、表面性を評価し、平均気泡径および平均厚さを算出した。評価結果および算出結果を表1に示す。
(実施例3)
原料供給装置におけるGPの投入量を約600kg/hrに変更し、ポリスチレン系樹脂および発泡剤の組成、並びにダイスリットからの吐出量Qを表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同じ製法で、巾1070mmの板状のポリスチレン系樹脂押出発泡体を得た。なお、水以外の発泡剤(B-1、B-2、B-3)は第一押出機内に圧入し、水(B-4)は第二押出機内に圧入した。ダイスリットにおける組成物の圧力Pは5.8MPaであり、圧力開放速度sは73MPa/sであった。得られたポリスチレン系樹脂押出発泡体について、表面性を評価し、平均気泡径および平均厚さを算出した。評価結果および算出結果を表1に示す。
(実施例4)
原料供給装置におけるGPの投入量を約950kg/hrに変更し、ポリスチレン系樹脂および発泡剤の組成、並びにダイスリットからの吐出量Qを表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同じ製法で、巾1070mmの板状のポリスチレン系樹脂押出発泡体を得た。なお、水以外の発泡剤(B-1、B-2、B-3)は第一押出機内に圧入し、水(B-4)は第二押出機内に圧入した。ダイスリットにおける組成物の圧力Pは6.5MPaであり、圧力開放速度sは129MPa/sであった。得られたポリスチレン系樹脂押出発泡体について、表面性を評価し、平均気泡径および平均厚さを算出した。評価結果および算出結果を表1に示す。
(実施例5)
原料供給装置におけるGPの投入量を約880kg/hrに変更し、ポリスチレン系樹脂および発泡剤の組成、並びにダイスリットからの吐出量Qを表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同じ製法で、巾1070mmの板状のポリスチレン系樹脂押出発泡体を得た。なお、水以外の発泡剤(B-1、B-2、B-3)は第一押出機内に圧入し、水(B-4)は第二押出機内に圧入した。ダイスリットにおける組成物の圧力Pは6.5MPaであり、圧力開放速度sは119MPa/sであった。得られたポリスチレン系樹脂押出発泡体について、表面性を評価し、平均気泡径および平均厚さを算出した。評価結果および算出結果を表1に示す。
(実施例6)
原料供給装置におけるGPの投入量を約820kg/hrに変更し、ポリスチレン系樹脂および発泡剤の組成、並びにダイスリットからの吐出量Qを表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同じ製法で、巾1070mmの板状のポリスチレン系樹脂押出発泡体を得た。なお、水以外の発泡剤(B-1、B-2、B-3)は第一押出機内に圧入し、水(B-4)は第二押出機内に圧入した。ダイスリットにおける組成物の圧力Pは5.6MPaであり、圧力開放速度sは96MPa/sであった。得られたポリスチレン系樹脂押出発泡体について、表面性を評価し、平均気泡径および平均厚さを算出した。評価結果および算出結果を表1に示す。
(実施例7)
原料供給装置におけるGPの投入量を約1000kg/hrに変更し、ポリスチレン系樹脂および発泡剤の組成、並びにダイスリットからの吐出量Qを表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同じ製法で、巾1070mmの板状のポリスチレン系樹脂押出発泡体を得た。なお、水以外の発泡剤(B-1、B-2、B-3)は第一押出機内に圧入し、水(B-4)は第二押出機内に圧入した。ダイスリットにおける組成物の圧力Pは5.4MPaであり、圧力開放速度sは112MPa/sであった。得られたポリスチレン系樹脂押出発泡体について、表面性を評価し、平均気泡径および平均厚さを算出した。評価結果および算出結果を表1に示す。
(比較例1)
原料供給装置におけるGPの投入量を約350kg/hrに変更し、ポリスチレン系樹脂および発泡剤の組成、並びにダイスリットからの吐出量Qを表2に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同じ製法で、巾1070mmの板状のポリスチレン系樹脂押出発泡体を得た。なお、水以外の発泡剤(B-1、B-2、B-3)は第一押出機内に圧入し、水(B-4)は第二押出機内に圧入した。ダイスリットにおける組成物の圧力Pは4.0MPaであり、圧力開放速度sは29MPa/sであった。得られたポリスチレン系樹脂押出発泡体について、表面性を評価し、平均気泡径および平均厚さを算出した。評価結果および算出結果を表2に示す。
(比較例2)
原料供給装置におけるGPの投入量を約750kg/hrに変更し、ポリスチレン系樹脂および発泡剤の組成、並びにダイスリットからの吐出量Qを表2に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同じ製法で、巾1070mmの板状のポリスチレン系樹脂押出発泡体を得た。なお、水以外の発泡剤(B-1、B-2、B-3)は第一押出機内に圧入し、水(B-4)は第二押出機内に圧入した。ダイスリットにおける組成物の圧力Pは7.2MPaであり、圧力開放速度sは112MPa/sであった。得られたポリスチレン系樹脂押出発泡体について、表面性を評価し、平均気泡径および平均厚さを算出した。評価結果および算出結果を表2に示す。
(比較例3)
原料供給装置におけるGPの投入量を約980kg/hrに変更し、ポリスチレン系樹脂および発泡剤の組成、並びにダイスリットからの吐出量Qを表2に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同じ製法で、巾1070mmの板状のポリスチレン系樹脂押出発泡体を得た。なお、水以外の発泡剤(B-1、B-2、B-3)は第一押出機内に圧入し、水(B-4)は第二押出機内に圧入した。ダイスリットにおける組成物の圧力Pは8.0MPaであり、圧力開放速度sは162MPa/sであった。得られたポリスチレン系樹脂押出発泡体について、表面性を評価し、平均気泡径および平均厚さを算出した。評価結果および算出結果を表2に示す。
(比較例4)
原料供給装置におけるGPの投入量を約900kg/hrに変更し、ポリスチレン系樹脂および発泡剤の組成、並びにダイスリットからの吐出量Qを表2に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同じ製法で、巾1070mmの板状のポリスチレン系樹脂押出発泡体を得た。なお、水以外の発泡剤(B-1、B-2、B-3)は第一押出機内に圧入し、水(B-4)は第二押出機内に圧入した。ダイスリットにおける組成物の圧力Pは8.3MPaであり、圧力開放速度sは155MPa/sであった。得られたポリスチレン系樹脂押出発泡体について、表面性を評価し、平均気泡径および平均厚さを算出した。評価結果および算出結果を表2に示す。
(比較例5)
原料供給装置におけるGPの投入量を約840kg/hrに変更し、ポリスチレン系樹脂および発泡剤の組成、並びにダイスリットからの吐出量Qを表2に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同じ製法で、巾1070mmの板状のポリスチレン系樹脂押出発泡体を得た。なお、水以外の発泡剤(B-1、B-2、B-3)は第一押出機内に圧入し、水(B-4)は第二押出機内に圧入した。ダイスリットにおける組成物の圧力Pは7.0MPaであり、圧力開放速度sは122MPa/sであった。得られたポリスチレン系樹脂押出発泡体について、表面性を評価し、平均気泡径および平均厚さを算出した。評価結果および算出結果を表2に示す。
(比較例6)
原料供給装置におけるGPの投入量を約640kg/hrに変更し、ポリスチレン系樹脂および発泡剤の組成、並びにダイスリットからの吐出量Qを表2に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同じ製法でポリスチレン系樹脂押出発泡体を得ようとしたところ、発泡成形することができず、発泡体を得ることができなかった。なお、水以外の発泡剤(B-1、B-2、B-3)は第一押出機内に圧入し、水(B-4)は第二押出機内に圧入した。ダイスリットにおける組成物の圧力Pは8.8MPaであり、圧力開放速度sは117MPa/sであった。
(比較例7)
原料供給装置におけるGPの投入量を約880kg/hrに変更し、ポリスチレン系樹脂および発泡剤の組成、並びにダイスリットからの吐出量Qを表2に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同じ製法で、巾1070mmの板状のポリスチレン系樹脂押出発泡体を得た。なお、水以外の発泡剤(B-1、B-2、B-3)は第一押出機内に圧入し、水(B-4)は第二押出機内に圧入した。ダイスリットにおける組成物の圧力Pは9.1MPaであり、圧力開放速度sは167MPa/sであった。得られたポリスチレン系樹脂押出発泡体について、表面性を評価し、平均気泡径および平均厚さを算出した。評価結果および算出結果を表2に示す。
Figure 2022155021000001
Figure 2022155021000002
表1より、実施例1~7で得られたポリスチレン系樹脂押出発泡体はいずれも、表面性に優れ、平滑で美麗な表面を有しており、平均厚さが60mmを超えるものであった。また、実施例1、2、4~7で得られたポリスチレン系樹脂押出発泡体は、板状のポリスチレン系樹脂押出発泡体の全体にわたって、厚さの最大値と最小値との差が1mm未満であり、均一な厚さを有していた。したがって、本製造方法によれば、二酸化炭素を使用した場合においても、表面性に優れ、かつ厚さのあるポリスチレン系樹脂押出発泡体を提供できることが分かった。これに対し、圧力開放速度sが30MPa/s未満である比較例1、発泡剤の使用量がポリスチレン系樹脂の重量100gに対して0.150モル未満である比較例2、圧力開放速度sが160MPa/s超である比較例3および比較例7、発泡剤に含まれる水のモル比が10モル%未満である比較例4、並びに、発泡剤の使用量がポリスチレン系樹脂の重量100gに対して0.190モル超である比較例5で得られたポリスチレン系樹脂押出発泡体は、実施例1~7で得られたポリスチレン系樹脂押出発泡体に比べて、表面性に劣り、また、厚さが薄いものであった。また、発泡剤に含まれる二酸化炭素のモル比が50モル%超である比較例6では、ポリスチレン系樹脂押出発泡体を製造することができなかった。
本発明の一実施形態によれば、環境負荷が小さい発泡剤を使用した場合においても、表面性に優れ、かつ厚さのあるポリスチレン系樹脂押出発泡体を提供することができる。そのため、本発明の一実施形態は、例えば、断熱材、吸音材、真空断熱材の芯材、緩衝材、充填材などの分野において好適に利用することができる。
W ダイスリットの幅
H ダイスリットの間隙
L ダイスリットのランド長

Claims (4)

  1. ポリスチレン系樹脂と、二酸化炭素および水を含む発泡剤とを溶融混練する溶融混練工程、および、
    前記溶融混練工程で得られた組成物を、ダイスリットを通じて低圧域に押出し、発泡成形する発泡成形工程、を含み、
    前記ダイスリットにおける圧力開放速度は30MPa/s~160MPa/sであり、
    前記発泡剤の使用量は、前記ポリスチレン系樹脂の重量100gに対して、0.150モル~0.190モルであり、
    前記発泡剤の総モル数を100モル%とした場合に、前記二酸化炭素が3モル%~50モル%であり、前記水が10モル%以上である、
    ポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
  2. 前記発泡剤は、ジメチルエーテルおよび炭素数3~5の飽和炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含有する、請求項1に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
  3. 前記ポリスチレン系樹脂押出発泡体の厚さは10mm~150mmである、請求項1または請求項2に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
  4. 前記ポリスチレン系樹脂押出発泡体の平均気泡径は、0.05mm~1.00mmである、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
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