JP2022152168A - ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂組成物、光学部品、及びポリカーボネート樹脂の製造方法 - Google Patents

ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂組成物、光学部品、及びポリカーボネート樹脂の製造方法 Download PDF

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達朗 戸田
Tatsuro Toda
翔太 井手
Shota Ide
卓人 中田
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久成 米田
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Abstract

【課題】離型性に優れるポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂組成物、及びそれらを含む光学部品を提供する。【解決手段】所定の構造単位を有するポリカーボネート樹脂であって、前記ポリカーボネート樹脂の分取GPCによって分取されるフラクションであって、MALDI-TOF-MSにより測定される数平均分子量Mnが2500以上3500未満のフラクション、及び数平均分子量Mnが3500以上4500未満のフラクションにおける大環状構造体の割合が、それぞれ50モル%以上である、ポリカーボネート樹脂。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂組成物、光学部品、及びポリカーボネート樹脂の製造方法に関する。
近年、スマートフォンをはじめとする光学・情報通信機器の普及が急速に進んでいる。例えば、スマートフォンのカメラ機能の高性能化は著しく、カメラ用レンズについても、その軽量化や低コスト化とともに、優れた耐熱性、及び低複屈折性等の優れた光学特性を兼ね備えるものが要求されている。
上述のような要求を満たすことを目的として、光学レンズ用の特殊ポリカーボネート樹脂の開発が盛んに行われている。
例えば、特許文献1~5においては、ビナフチル骨格やフルオレン骨格といった嵩高い芳香環構造を有する低複屈折性特殊ポリカーボネート樹脂が開示されている。
具体的には、特許文献1~5には、既存のビスフェノールAからなるポリカーボネートの高い複屈折を低減するため、正の複屈折をもつビスフェノールA骨格と負の複屈折をもつ上記芳香環構造の含有割合を制御することにより低複屈折性を実現したポリカーボネート樹脂が開示されている。
他方、光学レンズ用途ではないものの、芳香族ポリカーボネートに代わる樹脂として、脂肪族、特に脂環式構造を有するポリカーボネート樹脂の開発も行われている。
脂環式ポリカーボネートは、ビスフェノールAなどの芳香環を有するポリカーボネート樹脂と比べて耐光性に優れる傾向にある。例えば、特許文献6においては、透明性、耐熱性、色調に優れる多環脂環式ポリカーボネート樹脂が開示されている。
また、石油原料のみならず、植物などのバイオマス由来の原料を用いたポリカーボネート樹脂の開発も行われている。例えば、特許文献7においては、でんぷんから誘導可能なイソソルバイドを原料に用いたポリカーボネート樹脂が開示されている。
上記特許文献6、7に開示されている脂環式ポリカーボネート樹脂のうち、シクロヘキサンカーボネート構造を有するポリ(シクロヘキセンカーボネート)は、ベンゼン環に対応する飽和の炭素六員環を有する最も単純なポリカーボネートである。
前記ポリ(シクロヘキセンカーボネート)は、例えば、特許文献8及び9に示されているように、シクロヘキセンオキシドと二酸化炭素との反応によって合成できることが広く知られている。また、特許文献10及び非特許文献1に記載されているように、1,2-シクロヘキセンカーボネートの開環重合によりポリ(シクロヘキセンカーボネート)が得られることが知られている。
特許第6327151号公報 特許第6512219号公報 特開2019-143152号公報 特開2019-131824号公報 特開2018-059107号公報 特許第4774610号公報 特許第6507495号公報 特許第5403537号公報 特開2019-151770号公報 特開2019-108547号公報
Macromolecules 2014, 47, 4230-4235.
しかしながら、ポリ(シクロヘキセンカーボネート)が開示されている従来の文献においては、重合条件と分子量の相関の評価をするに留まっており、ポリ(シクロヘキセンカーボネート)の特性についてはほとんど言及されていない。特に、その光学特性については全く言及されていない。
本発明者らが、上記従来の文献に記載のものを始めとする従来のポリカーボネート樹脂を詳細に検討したところ、これらのポリカーボネート樹脂は、耐熱性、及び低複屈折性等の光学特性の少なくともいずれかが不十分である、という問題点を有していることがわかった。
例えば、特許文献1~5に記載されている芳香環構造を有するポリカーボネート樹脂は、低複屈折性等の光学特性が不十分である、という問題点を有している。
また、特許文献10及び非特許文献1に記載に記載されているシクロヘキサンカーボネート構造を有するポリカーボネート樹脂は、分子量が低いために、フィルム状の光学測定用試料に成形することが困難であり、光学特性が未知である、という問題点を有している。
樹脂の光学特性を評価するためには、熱プレス等の操作によって十分な強度のフィルム状に成形し、かつ、成形加工後に自立フィルムの形で基材から容易に剥離できること、すなわち離型性に優れていること必要がある。
本発明者らは、十分な強度のフィルム状の成形体を得る、という課題については、ポリマーの分子量を高めることにより解決可能であることを見出している(特願2020-015754号)。このフィルムは離型性も良好であるが、かかる離型性を向上させる要因は明らかにされていない。
樹脂フィルムの離型性は、従来から、樹脂の熱安定性に依存すると考えられている。
一般的にポリマーは分子末端や主鎖中の異種結合が分解の起点となることが知られており、このような分解を抑制して熱安定性を高める観点で樹脂中に環状成分を含むポリカーボネート樹脂が検討されている。
例えば、特許文献9では、ポリ(シクロヘキセンカーボネート)環状体が記載されている。しかしながら、離型性に関して何ら言及されておらず、特許文献9に記載のポリカーボネート樹脂は、離型性の信頼性が十分ではない、という問題点を有している。
そこで本発明においては、上記の従来技術の問題点に鑑み、離型性に優れるポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂組成物、及びそれらを含む光学部品を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を進めた結果、特定の構造単位を有し、かつ、所定の数平均分子量Mnの範囲における大環状構造体の割合が、所定の数値以上であるものに特定したポリカーボネート樹脂が、離型性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
〔1〕
下記式(1)で表される構造単位を有するポリカーボネート樹脂であって、
前記ポリカーボネート樹脂の分取GPCによって分取されるフラクションであって、MALDI-TOF-MSにより測定される数平均分子量Mnが2500以上3500未満のフラクション、及び数平均分子量Mnが3500以上4500未満のフラクションにおける大環状構造体の割合が、それぞれ50モル%以上である、
ポリカーボネート樹脂。
Figure 2022152168000001
(式(1)中、R1、R2、R3及びR4は、各々独立して、水素原子、水酸基、リン酸基、アミノ基、ビニル基、アリル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~11のエステル基、炭素数1~11のアシル基、又は、非置換の直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基であり、アルキレン基又はカーボネート基を介して互いに結合して環状構造を形成していてもよく、前記アルキレン基は、水酸基、リン酸基、アミノ基、アルコキシ基、又はエステル基によって置換されていてもよく、主鎖にカルボニル基が挿入されていてもよい。)
〔2〕
前記大環状構造体が、下記式(2)で表される、前記〔1〕に記載のポリカーボネート樹脂。
Figure 2022152168000002
(式(2)中、R1、R2、R3及びR4は、各々独立して、水素原子、水酸基、リン酸基、アミノ基、ビニル基、アリル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~11のエステル基、炭素数1~11のアシル基、又は、非置換の直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基であり、アルキレン基又はカーボネート基を介して互いに結合して環状構造を形成していてもよく、前記アルキレン基は、水酸基、リン酸基、アミノ基、アルコキシ基、又はエステル基によって置換されていてもよく、主鎖にカルボニル基が挿入されていてもよく、nは0以上の整数である。)
〔3〕
サイズ排除クロマトグラフィーによって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が、500,000以下である、前記〔1〕又は〔2〕に記載のポリカーボネート樹脂。
〔4〕
前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載のポリカーボネート樹脂と、酸化防止剤と、
を含有する、ポリカーボネート樹脂組成物。
〔5〕
前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載のポリカーボネート樹脂、又は前記〔4〕に記載のポリカーボネート樹脂組成物を含有する、光学部品。
〔6〕
前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載のポリカーボネート樹脂、又は前記〔4〕に記載のポリカーボネート樹脂組成物の、光学部品への使用。
〔7〕
前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法であって、
下記式(3)で表される環状カーボネートを開環重合することにより、前記ポリカーボネート樹脂を得る重合工程を有する、ポリカーボネート樹脂の製造方法。
Figure 2022152168000003
(式(3)中、R1、R2、R3及びR4は、各々独立して、水素原子、水酸基、リン酸基、アミノ基、ビニル基、アリル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~11のエステル基、炭素数1~11のアシル基、又は、非置換の直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基であり、アルキレン基又はカーボネート基を介して互いに結合して環状構造を形成していてもよく、前記アルキレン基は、水酸基、リン酸基、アミノ基、アルコキシ基、又はエステル基によって置換されていてもよく、主鎖にカルボニル基が挿入されていてもよい。)
〔8〕
有機リチウム、有機マグネシウム、金属アルコキシド、及び金属アミド、からなる群より選択される少なくとも1つを、重合開始剤として用いる、前記〔7〕に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
本発明によれば、離型性に優れるポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂組成物、及びそれらを含む光学部品を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」ともいう。)について詳細に説明する。
なお、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
〔ポリカーボネート樹脂〕
本実施形態のポリカーボネート樹脂は、下記式(1)で表される構造単位を有し、前記ポリカーボネート樹脂の分取ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(「分取GPC」ともいう)によって分取されるフラクションであって、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計(「MALDI-TOF-MS」ともいう)により測定される数平均分子量Mnが2500以上3500未満のフラクション、及び数平均分子量Mnが3500以上4500未満のフラクションにおける大環状構造体の割合が、それぞれ50モル%以上である。
Figure 2022152168000004
(式(1)中、R1、R2、R3及びR4は、各々独立して、水素原子、水酸基、リン酸基、アミノ基、ビニル基、アリル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~11のエステル基、炭素数1~11のアシル基、又は、非置換の直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基であり、アルキレン基又はカーボネート基を介して互いに結合して環状構造を形成していてもよく、前記アルキレン基は、水酸基、リン酸基、アミノ基、アルコキシ基、又はエステル基によって置換されていてもよく、主鎖にカルボニル基が挿入されていてもよい。)
なお、本明細書中において、「カーボネート基」とは、-OC(=O)O-で表される、2価の置換基を意味する。
(大環状構造体)
本明細書中、「大環状構造体」とは、10員環以上の環状構造を有する化合物を言う。
大環状構造体は、例えば、式(1)で表される構造単位を2以上有し、末端が互いに結合する大環状の構造を有する化合物である。
一般にポリカーボネート樹脂の末端には水酸基のような置換基が存在し、真空圧縮成形の基材として用いるポリイミド中のイミド結合と相互作用すると考えられる。このような相互作用は、分子量あたりの末端基数の多い低分子量成分ほど大きくなり、樹脂の離型性に影響を及ぼすと考えられる。
したがって、ポリカーボネート樹脂の低分子量成分に末端基を有していない大環状構造体の割合を高めることにより、樹脂の離型性が向上すると考えられる。
上記の観点から、本実施形態のポリカーボネート樹脂においては、分取GPCによって分取されるフラクションであって、MALDI-TOF-MSにより測定される数平均分子量Mnが2500以上3500未満のフラクション(以下、「分子量3000のフラクション」と記載する場合がある)、及び数平均分子量Mnが3500以上4500未満のフラクション(以下、「分子量4000のフラクション」と記載する場合がある)における大環状構造体の割合が、それぞれ50モル%以上であるものとする。
分子量3000のフラクションにおける大環状構造体の割合は、好ましくは60モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上であり、さらに好ましくは80モル%以上であり、さらにより好ましくは80モル%以上である。分子量3000のフラクションにおける大環状構造体の割合は、その上限は特に限定されないが、100%以下であってもよく、95%以下であってもよい。
分子量4000のフラクションにおける大環状構造体の割合は、好ましくは60モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上である。分子量4000のフラクションにおける大環状構造体の割合は、その上限は特に限定されないが、100%以下であってもよく、95%以下であってもよい。
上述の大環状構造体の割合は、以下の方法により測定される。
(i) ポリカーボネート樹脂を、30mg/mLのクロロホルム溶液とし、分取GPC装置を用いて、クロロホルムを移動相として、3.33mL/分の速度で、保持時間2分単位で、複数のフラクションに分画する。
(ii) 分画したフラクションを、MALDI-TOF-MSで分析し、MALDI-TOF-MSの結果をソフトウエア「Poyltool」により解析し、数平均分子量Mnを算出し、Mnが2500以上3500未満のフラクションを分子量3000のフラクション、Mnが3500以上4500未満のフラクションを分子量4000のフラクションとする。
(iii) 分子量3000のフラクション及び分子量4000のフラクションについて、溶媒を除去した試料を準備して1H-NMRを測定し、下記の式(A)から大環状構造体の割合を算出する。
大環状構造体の割合(%)=(Ta-Tc)/Ta×100 ・・・(A)
Ta=(1H-NMRスペクトルにおける主鎖のプロトンの積分強度比/2)/n
n=Mn/ポリカーボネート樹脂の繰り返し単位の分子量
(式中、Mnは、MALDI-TOF-MSの結果から算出した数平均分子量である。)
Tc=1H-NMRスペクトルにおける末端のプロトンの積分強度比/x
(式中、xは、末端基由来ピークのプロトン数である。)
上述の測定方法において、分取GPC装置としては、例えば、日本分析工業社製、製品名「LC-908」が用いられる。MALDI-TOF-MSとしては、例えば、Bruker社製、製品名「UltrafleXtreme」が用いられる。1H-NMRの測定装置としては、例えば、日本電子株式会社製NMR装置、製品名「ECZ400S」が用いられる。より詳細には、後述する実施例に記載する方法により測定及び算出することができる。
前記大環状構造体の割合は、後述する重合開始剤や重合方法を適切に選択することにより、上記数値範囲に制御することができる。
分子量3000のフラクションの割合は、ポリカーボネート樹脂全体に対して、好ましくは0.01質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以上10質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以上5質量%以下である。
分子量4000のフラクションの割合は、ポリカーボネート樹脂全体に対して、好ましくは0.01質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上15質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以上5質量%以下である。
分子量3000のフラクションの割合及び分子量4000のフラクションの割合は、以下の方法により測定される。
上述の大環状構造体の割合の測定方法における(i)及び(ii)で分取される分子量3000のフラクション及び分子量4000のフラクションの溶媒を除去し、質量を測定する。分取GPC装置内に導入したポリカーボネート樹脂全体の質量から各フラクションの割合を算出する。
前記大環状構造体は、好ましくは、下記式(2)で表される。
Figure 2022152168000005
式(2)中、R1、R2、R3及びR4は、各々独立して、水素原子、水酸基、リン酸基、アミノ基、ビニル基、アリル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~11のエステル基、炭素数1~11のアシル基、又は、非置換の直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基であり、アルキレン基又はカーボネート基を介して互いに結合して環状構造を形成していてもよく、前記アルキレン基は、水酸基、リン酸基、アミノ基、アルコキシ基、又はエステル基によって置換されていてもよく、主鎖にカルボニル基が挿入されていてもよく、nは0以上の整数である。
例えば、特許文献9では、ポリ(シクロヘキセンカーボネート)環状体が記載されているが、カーボネート結合とは異なるエーテル結合をもつ化学種が観測されており、熱分解の起点となりうる異種結合を含まないポリカーボネート環状体の合成には課題が残されている。
本実施形態のポリカーボネート樹脂は、前記式(2)に示す構造を有する大環状構造体を含むことにより、耐熱性をより向上させることができ、これにより優れた離型性が得られる。
上述の効果に加え、本実施形態のポリカーボネート樹脂、及びポリカーボネート樹脂組成物は、上記の構成を備えることにより、成形性、耐熱性、及び低複屈折性等の光学特性にも優れる。この要因は、以下のように考えられるが、要因はこれらに限定されない。
従来公知の芳香環構造を有するポリカーボネート樹脂は、その構造に起因して、複屈折を低減することが困難である、という問題点を有している。
これに対し、本実施形態のポリカーボネート樹脂は、前記式(1)の構造単位を有するものであるため、低複屈折性等の優れた光学特性を有する。また、脂環式構造を有することにより、光弾性係数が低減し、複屈折の発現が抑制され、優れた光学特性が発現する。さらに、式(1)の構造単位は脂環式構造を有するため、耐熱性に優れる。
本実施形態において、式(1)及び(2)中、R1~R4は、各々独立して、水素原子、水酸基、リン酸基、アミノ基、ビニル基、アリル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~11のエステル基、炭素数1~11のアシル基、又は、非置換の直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基である。
本実施形態のポリカーボネート樹脂の効果をより有効かつ確実に奏する観点から、前記式(1)及び(2)中、R1~R4は、好ましくは、各々独立して、水素原子、水酸基、ビニル基、アリル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~11のエステル基、炭素数1~11のアシル基、及び、非置換の直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基からなる群より選択される1種以上の置換基である。
同様の観点から、前記式(1)及び(2)中、R1~R4は、より好ましくは、各々独立して、水素原子、水酸基、ビニル基、アリル基、炭素数1~10のアルコキシ基、及び、非置換の直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基からなる群より選択される1種以上の置換基である。
同様の観点から、前記式(1)及び(2)中、R1~R4は、さらに好ましくは、各々独立して、水素原子、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、及び、非置換の直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基からなる群より選択される1種以上の置換基である。
同様の観点から、前記式(1)及び(2)中、R1~R4は、さらにより好ましくは、各々独立して、水素原子、水酸基、及び炭素数1~10のアルコキシ基からなる群より選択される1種以上の置換基である。
本実施形態において、前記式(1)及び(2)中、R1~R4は、アルキレン基又はカーボネート基(-OC(=O)O-基)を介して互いに結合して環状構造を形成していてもよく、アルキレン基は、水酸基、リン酸基、アミノ基、アルコキシ基、又はエステル基によって置換されていてもよく、主鎖にカルボニル基が挿入されていてもよい。
本実施形態のポリカーボネート樹脂の効果をより確実かつ有効に奏する観点から、R1~R4が、アルキレン基を介して互いに結合し、環状構造を形成している場合、アルキレン基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、さらに好ましくは1~6である。
さらに、同様の観点から、上記アルキレン基の有する置換基は、好ましくは、水酸基、アルコキシ基、又はエステル基であり、より好ましくは、水酸基、又はアルコキシ基である。
同様の観点から、R1~R4が環状構造を形成している場合、好ましくは、非置換のアルキレン基、又はカーボネート基(-OC(=O)O-基)を介して環状構造を形成している。前記非置換のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、及びn-ヘキシレン基が挙げられる。
本実施形態のポリカーボネート樹脂において、前記式(1)及び(2)におけるリン酸基及びアミノ基は、非置換であってもよく、置換されていてもよい。すなわち、1置換のリン酸基及びアミノ基であってもよく、2置換のリン酸基及びアミノ基であってもよい。
本実施形態のポリカーボネート樹脂において、優れた特性をより有効かつ確実に奏する観点から、リン酸基及びアミノ基が置換されている場合、置換基は、非置換の直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基であることが好ましい。同様の観点から、リン酸基及びアミノ基は、非置換であることが好ましい。
前記式(1)及び(2)における炭素数1~10のアルコキシ基としては、特に限定されないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノナニルオキシ基、デシルオキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、ビニルオキシ基、及びアリルオキシ基が挙げられる。
前記式(1)及び(2)における炭素数1~11のエステル基としては、特に限定されないが、例えば、メチルエステル基、エチルエステル基、プロピルエステル基、ブチルエステル基、ペンチルエステル基、シクロペンチルエステル基、ヘキシルエステル基、シクロヘキシルエステル基、ヘプチルエステル基、オクチルエステル基、ノナニルエステル基、デシルエステル基、フェニルエステル基、ベンジルエステル基、ビニルエステル基、及びアリルエステル基が挙げられる。
前記式(1)及び(2)における炭素数1~11のアシル基としては、特に限定されないが、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、及びベンゾイル基が挙げられる。
前記式(1)及び(2)における非置換の直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノナニル基、及びn-デシル基が挙げられる。
(ポリカーボネート樹脂の平均分子量)
本実施形態のポリカーボネート樹脂は、サイズ排除クロマトグラフィーによって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、1,000,000以下であることが好ましい。本実施形態のポリカーボネート樹脂は、Mwが上記の範囲内にあることで、成形加工が容易となる。また、そのようなポリカーボネート樹脂は、耐熱性、光学特性、及び離型性により優れるものとなる。同様の観点から、Mwは、より好ましくは800,000以下であり、さらに好ましくは500,0000以下である。Mwは、好ましくは10,000以上であり、より好ましくは20,000以上である。
本実施形態のポリカーボネート樹脂における、サイズ排除クロマトグラフィーによって測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、1,000,000以下であることが好ましい。本実施形態のポリカーボネート樹脂は、Mnが上記の範囲内にあることで、成形加工、耐熱性、光学特性、及び離型性により優れるものとなる。同様の観点から、Mnは、より好ましくは800,000以下であり、さらに好ましくは500,0000以下である。Mnは、好ましくは5,000以上であり、より好ましくは10,000以上である。
サイズ排除クロマトグラフィーによるポリカーボネート樹脂の重量平均分子量、数平均分子量は、具体的には実施例に記載の方法によって測定することができる。
本実施形態のポリカーボネート樹脂において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を上記の範囲内に制御するためには、重合性モノマーと重合開始剤及び添加剤の割合を適宜調整すればよく、また、後述する製造方法によってポリカーボネート樹脂を製造すればよい。重合性モノマーに対する重合開始剤の割合を減らすことにより、Mw及びMnを大きくすることができる傾向にある。また、重合時間を長くすることにより、Mw及びMnを大きくすることができる傾向にある。さらに、撹拌翼を用いて撹拌を行うことにより、Mw及びMnを大きくすることができる傾向にある。
本実施形態のポリカーボネート樹脂は、エーテル結合を含む化学種を含有しないことが好ましい。このような異種結合はポリマー主鎖の熱的開裂の開始点になりやすいため、異種結合を含まないポリマーはフィルム成形時の熱分解による離型性の低下をより顕著に抑制することができると考えられる。
MALDI-TOF-MSを用いて分析し、得られたMALDI-TOF-MSスペクトルにおいてカーボネートから脱炭酸したエーテル結合を含む化学種の有無を確認する。当該スペクトル中に、エーテル結合種が検出限界以下である場合、エーテル結合を含む化学種を含有しないこととする。測定方法の詳細は実施例に記載の方法による。
本実施形態のポリカーボネート樹脂の合成方法としては、特に限定されないが、例えば、エポキシドと二酸化炭素を共重合する方法、環状カーボネートを開環重合する方法、及びジオールと、二酸化炭素又は炭酸エステルとを縮合重合する方法が挙げられる。
本発明の効果をより有効かつ確実に奏する観点から、本実施形態のポリカーボネート樹脂の合成方法としては、後述するポリカーボネート樹脂の製造方法を用いることが好ましい。
〔ポリカーボネート樹脂組成物〕
本実施形態のポリカーボネート樹脂組成物は、上述した本実施形態のポリカーボネート樹脂と、酸化防止剤とを含有する。
本実施形態のポリカーボネート樹脂組成物は、酸化防止剤を含有することにより、成形加工時の熱や剪断による劣化を一層防止することができるため、本実施形態のポリカーボネート樹脂組成物は、耐熱性を一層向上させることができる。
また、本実施形態のポリカーボネート樹脂組成物は、酸化防止剤を含有することにより、使用時にポリカーボート樹脂が酸化されることを一層防止することができるため、ポリカーボネート樹脂組成物の耐光性を一層向上させることができる。
本実施形態のポリカーボネート樹脂組成物における、酸化防止剤は特に限定されないが、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤が挙げられる。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、イルガノックス1010(Irganox 1010:ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート])、イルガノックス1076(Irganox 1076:オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、イルガノックス1330(Irganox 1330:3,3’,3’’,5,5’,5’’-ヘキサ-t-ブチル-a,a’,a’’-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール)、イルガノックス3114(Irganox3114:1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン)、イルガノックス3125(Irganox 3125)、アデカスタブAO-60(ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート])、アデカスタブAO-80(3、9-ビス{2-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルキシオキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)、シアノックス1790(Cyanox 1790)、スミライザーGA-80(Sumilizer GA-80)、スミライザーGS(Sumilizer GS:アクリル酸2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニル)、及び、スミライザーGM(Sumilizer GM:アクリル酸2-tert-ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルベンジル)フェニル)が挙げられる。
これらは一種類単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
リン系酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、イルガフォス168(Irgafos168:トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト)、イルガフォス12(Irgafos12:トリス[2-[[2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-6-イル]オキシ]エチル]アミン)、アデカスタブHP-10(ADKSTAB HP-10:2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト)、アデカスタブPEP36(ADKSTAB PEP36:ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト)、アデカスタブPEP36A(ADKSTAB PEP36A:ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト)、スミライザーGP(SumilizerGP:(6-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン)、及び、GSY P101(テトラキス(2,4-ジ-t-ブチル-5メチルフェニル)4,4’-ビフェニレンジホスホナイト)が挙げられる。
これらは一種類単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態のポリカーボネート樹脂組成物におけるポリカーボネート樹脂の含有量は、本発明の効果をより有効かつ確実に奏する観点から、ポリカーボネート樹脂組成物全体に対して、好ましくは、50質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは、60質量%以上100質量%未満であり、さらに好ましくは、65質量%以上100質量%未満である。
本実施形態のポリカーボネート樹脂組成物における酸化防止剤の含有量は、成形加工時の熱や剪断による劣化を一層防止する観点から、ポリカーボネート樹脂組成物全体に対して、好ましくは、0.001質量%以上1質量%以下であり、より好ましくは、0.003質量%以上1質量%以下であり、さらに好ましくは、0.005質量%以上1質量%以下である。
本実施形態のポリカーボネート樹脂組成物は、本発明の課題の解決を阻害しない範囲で他の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、特に限定されないが、例えば、1,2-シクロヘキセンカーボネート、1,2-シクロヘキサンジオール、トルエン、о-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、及び酢酸が挙げられる。
〔ポリカーボネート樹脂の製造方法〕
本実施形態のポリカーボネート樹脂の製造方法は、下記式(3)で表される環状カーボネート(A1)を開環重合することにより、ポリカーボネート樹脂を得る重合工程を有する。当該工程を有することで、分子量3000のフラクション及び分子量4000のフラクションを大環状構造体の割合を高めることができる傾向にある。また当該工程を有することで、ポリカーボネート樹脂中のエーテル結合の形成を抑制することができる。
Figure 2022152168000006
式(3)中、R1~R4は、各々独立して、水素原子、水酸基、リン酸基、アミノ基、ビニル基、アリル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~11のエステル基、炭素数1~11のアシル基、又は、非置換の直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基であり、アルキレン基又はカーボネート基(-OC(=O)O-基)を介して互いに結合して環状構造を形成していてもよく、前記アルキレン基は、水酸基、リン酸基、アミノ基、アルコキシ基、又はエステル基によって置換されていてもよく、主鎖にカルボニル基が挿入されていてもよい。
本実施形態において、前記式(3)中の好ましいR1~R4は、前記式(1)中のものと同様である。また、前記式(3)中における、リン酸基、アミノ基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~11のエステル基、炭素数1~11のアシル基、及び非置換の直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基の例示も、前記式(1)中のものと同様である。
本実施形態のポリカーボネート樹脂の製造方法において、開環重合に用いる環状カーボネート(A1)としては、1種類の環状カーボネートを単独で用いてもよいし、R1~R4が異なる任意の2種類以上の環状カーボネートを組み合わせて用いてもよい。
本実施形態のポリカーボネート樹脂の製造方法において、環状カーボネート(A1)は、下記式(4)~(7)で表される環状カーボネート(B1)~(B4)を包含する。
Figure 2022152168000007
Figure 2022152168000008
Figure 2022152168000009
Figure 2022152168000010
前記式(4)~(7)中、R1~R4は、各々独立して、水素原子、水酸基、リン酸基、アミノ基、ビニル基、アリル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~11のエステル基、炭素数1~11のアシル基、又は、非置換の直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基であり、アルキレン基又はカーボネート基(-OC(=O)O-基)を介して互いに結合して環状構造を形成していてもよく、アルキレン基は、水酸基、リン酸基、アミノ基、アルコキシ基、又はエステル基によって置換されていてもよく、主鎖にカルボニル基が挿入されていてもよい。
本実施形態において、前記式(4)~(7)中の好ましいR1~R4は、前記式(1)中のものと同様である。また、前記式(4)~(7)中における、リン酸基、アミノ基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~11のエステル基、炭素数1~11のアシル基、及び非置換の直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基の例示も、前記式(1)中のものと同様である。
環状カーボネート(A1)の合成方法としては、特に限定されないが、例えば、下記式(8)で表される対応するジオール(C1)と、ハロゲン化ギ酸エステル又は炭酸エステルとを反応させることによって得ることができる。
ハロゲン化ギ酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、クロロギ酸メチル、クロロギ酸エチル、ブロモギ酸メチル、ブロモギ酸エチル、ヨードギ酸メチル、及びヨードギ酸エチルが挙げられる。
炭酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸ジブチル、炭酸ジペンチル、炭酸ジヘキシル、炭酸ジヘプチル、炭酸ジオクチル、炭酸ジノナニル、炭酸ジデシル、炭酸ジフェニル及び炭酸ジベンジルが挙げられる。
置換する炭化水素基は直鎖状、分岐上、環状いずれであってもよい。
Figure 2022152168000011
前記式(8)中、R1~R4は、各々独立して、水素原子、水酸基、リン酸基、アミノ基、ビニル基、アリル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~11のエステル基、炭素数1~11のアシル基、又は、非置換の直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基であり、アルキレン基又はカーボネート基(-OC(=O)O-基)を介して互いに結合して環状構造を形成していてもよく、アルキレン基は、水酸基、リン酸基、アミノ基、アルコキシ基、又はエステル基によって置換されていてもよく、主鎖にカルボニル基が挿入されていてもよい。
前記式(8)中の好ましいR1~R4は、前記式(1)中のものと同様である。また、前記式(8)中における、リン酸基、アミノ基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~11のエステル基、炭素数1~11のアシル基、及び非置換の直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基の例示も、前記式(1)中のものと同様である。
(重合開始剤)
環状カーボネート(A1)を開環重合する工程においては、重合開始剤を用いてもよい。
重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、酸触媒、塩基触媒、及び酵素触媒が挙げられる。
塩基触媒としては、特に限定されないが、例えば、アルキル金属、金属アルコキシド、金属アミド、金属有機酸塩、環状モノアミン及び環状ジアミン(特に、アミジン骨格を有する環状ジアミン化合物)のような環状アミン、グアニジン骨格を有するトリアミン化合物、並びに窒素原子を含有する複素環式化合物が挙げられる。
アルキル金属としては、特に限定されないが、例えば、メチルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、及びフェニルリチウムのような有機リチウム、メチルマグネシウムハライド、エチルマグネシウムハライド、プロピルマグネシウムハライド、フェニルマグネシウムハライド等の有機マグネシウム、トリメチルアルミニウム、及びトリエチルアルミニウム等の有機アルミニウムが挙げられる。その中でも、好ましくはメチルリチウム、n-ブチルリチウム、又はsec-ブチルリチウムが用いられる。
金属アルコキシド中の金属イオンとしては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属イオンが挙げられ、好ましくはアルカリ金属である。アルコキシドイオンとしては、特に限定されないが、例えば、メトキシド、エトキシド、プロポキシド、ブトキシド、フェノキシド、及びベンジルオキシドが挙げられる。なお、フェノキシド、ベンジルオキシドについては、芳香環上に置換基を有していてもよい。
金属アミドとしては、特に限定されないが、例えば、リチウムアミド、ナトリウムアミド、カリウムアミド、リチウムヘキサメチルジシラジド(LiHMDS)、ナトリウムヘキサメチルジシラジド(NaHMDS)、カリウムヘキサメチルジシラジド(KHMDS)が挙げられる。金属有機酸塩中の有機酸イオンとしては、特に限定されないが、例えば、炭素数1~10のカルボン酸イオンが挙げられる。金属有機酸塩中の金属としては、特に限定されないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、及びスズが挙げられる。また、塩基触媒としては、特に限定されないが、例えば、有機塩基が挙げられる。有機塩基としては、特に限定されないが、例えば、1,4-ジアザビシクロ-[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)、ジフェニルグアニジン(DPG)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)、イミダゾール、ピリミジン、及びプリンが挙げられる。本発明の効果をより有効かつ確実に奏する観点から、本実施形態の重合開始剤は、好ましくはアルキル金属又は金属アルコキシドであり、より好ましくはtert-ブトキシドを含むアルカリ金属のアルコキシド又はn-ブチルリチウムである。
重合開始剤として用いるアルカリ金属のアルコキシド又はn-ブチルリチウムとしては、単量体、二量体、三量体、四量体等、いずれの会合状態のものを用いてもよい。
また、環状カーボネート(A1)を開環重合するための重合開始剤として、ポリカプロラクトンジオール、及びポリテトラメチレングリコールのような、末端にアルコール残基を有するポリマーを用いてもよい。これにより、ジブロック、又はトリブロック共重合体を合成することが可能である。
本実施形態のポリカーボネート樹脂の製造方法の重合工程における、重合開始剤の使用量は、ポリカーボネート樹脂の目標とする分子量に応じて適宜調整すればよい。
ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量(Mw)を、成形加工性、耐熱性、光学特性、及び離型性を良好なものとする観点から500,000以下の範囲に制御する場合には、、重合開始剤の使用量は、開環重合性モノマーである環状カーボネート(A1)に対する物質量換算で、好ましくは、0.00001mоl%以上5mоl%以下であり、より好ましくは、0.0001mоl%以上1mоl%以下であり、さらに好ましくは、0.0001mоl%以上0.5mоl%以下である。
また、上記の重合開始剤は一種類を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(重合停止剤)
本実施形態のポリカーボネート樹脂の平均分子量を制御する観点から、上記重合開始剤に加えて、重合停止剤を用いてもよい。
重合停止剤としては、特に限定されないが、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、リン酸、メタリン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、クエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、シュウ酸、酒石酸、メルドラム酸、及び安息香酸のような無機酸及び有機酸が挙げられる。
(添加剤)
得られるポリマーの分子量を制御する観点、及び末端構造を制御することで種々の特性を発現させる観点から、本実施形態のポリカーボネート樹脂の製造工程においては、上記重合開始剤に加えて、添加剤を用いてもよい。
添加剤としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、シクロペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、ノナノール、デカノール、ドデカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、5-ノルボルネン-2-メタノール、1-アダマンタノール、2-アダマンタノール、トリメチルシリルメタノール、フェノール、ベンジルアルコール、及びp-メチルベンジルアルコールのようなモノアルコール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ヘキサンジオール、ノナンジオール、テトラメチレングリコール、及びポリエチレングリコールのようなジアルコール、グリセロール、ソルビトール、キシリトール、リビトール、エリスリトール、及びトリエタノールアミンのような多価アルコール、並びに、乳酸メチル、及び乳酸エチルが挙げられる。
また、上記の添加剤は一種類を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(撹拌)
本実施形態のポリカーボネート樹脂の製造方法は、その重合工程において、反応物及び/又は生成物を撹拌することが好ましい。重合工程において撹拌がなされることにより、系内の均一性が向上し、かつ、成長鎖とモノマーとの接触頻度が向上するため、一層高分子量のポリカーボネート樹脂を製造することができる傾向にある。撹拌方法としては、特に限定されないが、例えば、メカニカルスターラーと撹拌翼とを用いた撹拌、及びマグネチックスターラーと回転子とを用いた撹拌が挙げられる。一層高分子量のポリカーボネート樹脂を製造することができる観点から、重合工程における撹拌は、撹拌翼を用いて行われることがより好ましい。
(反応温度)
本実施形態のポリカーボネート樹脂の製造方法において、重合工程における反応温度は、本実施形態のポリカーボネート樹脂を製造することができる範囲内であれば特に限定されないが、好ましくは-100℃以上150℃以下であり、より好ましくは-100℃以上100℃以下であり、さらに好ましくは-100℃以上80℃以下である。重合工程における反応温度が上記範囲内にあることで、得られるポリカーボネート樹脂の重量平均分子量を500,000以下の範囲に制御することが一層容易になる。
(溶媒)
本実施形態のポリカーボネート樹脂の製造方法では、溶媒を用いてもよく、用いなくてもよい。溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、及びプロピレングリコールノモノメチルエーテルアセテートのようなエーテル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、及びトリクロロエタンのようなハロゲン系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、シクロヘキサン、及びメチルシクロヘキサンのような飽和炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、及びクレゾールのような芳香族炭化水素系溶媒、並びに、アセトン、2-ブタノン、2-ペンタノン、3-ペンタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、及びメチルイソブチルケトンのようなケトン系溶媒が挙げられる。
〔光学部品〕
本実施形態の光学部品は、上述した本実施形態のポリカーボネート樹脂、又は上述した本実施形態のポリカーボネート樹脂組成物の成形体であって、これらを含有する。
〔光学部品材料としての使用〕
本実施形態のポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂組成物は、各種の光学部品材料として使用できる。
本実施形態のポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂組成物、及びそれらを含む光学部品は、優れた耐熱性及び耐光性を有し、かつ、低複屈折性等の優れた光学特性を有するため、光学レンズ材料、光学デバイス、光学部品用材料、及びディスプレイ材料のような各種の光学用材料として好適に用いることができる。
本実施形態のポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂組成物、及びそれらを含む光学部品は、低複屈折性等の優れた光学特性を有するため、特に、スマートフォン用カメラレンズのような低複屈折が要求される光学部材に好適に用いることができる。また、優れた耐熱性及び耐光性を有するため、光学部材の寿命を延長することができる。
以下、具体的な実施例及び比較例を用いて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例等によって何ら限定されるものではない。
ポリカーボネート樹脂に関する各種測定は以下のように行った。
1H-NMR測定)
NMR装置(日本電子株式会社製、製品名「ECZ400S」)、及びTFHプローブを用いて、以下のようにNMR測定をすることで、ポリカーボネート樹脂の1H-NMRスペクトルを得た。
なお、重溶媒の基準ピークは、クロロホルム-dを用いた場合は7.26ppmであるとし、積算回数は32回として測定を行った。
(サイズ排除クロマトグラフィーによるポリスチレン換算の数平均分子量Mn及び重量平均分子量Mwの測定)
ポリカーボネート樹脂0.02gに対して、テトラヒドロフランを2.0gの割合で加えた溶液を測定試料とし、高速GPC装置(東ソー株式会社製、製品名「HLC-8420GPC」)を用いて、ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量(Mw)、及び数平均分子量(Mn)を測定した。
カラムとして、東ソー株式会社製のTSKガードカラムSuperH-H、TSKgel SuperHM-H、TSKgel SuperHM-H、TSKgel SuperH2000、及びTSKgel SuperH1000(いずれも東ソー株式会社製製品名)を直列に連結して用いた。カラム温度は40℃とし、テトラヒドロフランを移動相として、0.60mL/分の速度で分析した。検出器としては、RIディテクターを用いた。Polymer Standards Service製のポリスチレン標準試料(分子量:2520000、1240000、552000、277000、130000、66000、34800、19700、8680、3470、1306、370)を標準試料として、検量線を作成した。
このようにして作成した検量線を基に、ポリカーボネート樹脂の数平均分子量Mn及び重量平均分子量Mwを求めた。
(大環状構造体の割合の算出方法)
<(1)分画と構造解析>
ポリカーボネート樹脂を、30mg/mLのクロロホルム溶液とし、分取GPC装置(日本分析工業社製、製品名「LC-908」)を用いて、保持時間2分単位で、複数のフラクションに分画した。
カラムとして、JALGEL3H(日本分析工業社製)を使用し、クロロホルムを移動相として、3.33mL/分の速度で分析した。
<(2)大環状構造体の割合の算出方法>
分画したフラクションを、1mg/mL~10mg/mLの範囲で調整し、trans-2-[3-(4-tert-Butylphenyl)-2-methyl-2-propenylidene]malononitrile(DCTB)を10mg/mL、トリフルオロ酢酸ナトリウムを1mg/mLにテトラヒドロフランを用いて溶液を調製した。
「分画したフラクション」、「trans-2-[3-(4-tert-Butylphenyl)-2-methyl-2-propenylidene]malononitrile(DCTB)」、「トリフルオロ酢酸ナトリウム」の各溶液を、容量比率で1:1:1で混合し、測定用プレートに滴下し、風乾し、試料を得た。
この試料をMALDI-TOF-MS(Bruker社製、製品名「UltrafleXtreme」)を用いて分析した。
MALDI-TOF-MSの結果をソフトウエア「Poyltool」により解析し、数平均分子量Mn及び重量平均分子量Mwを算出した。
Mnが2500以上3500未満のフラクションを分子量3000のフラクション、Mnが3500以上4500未満のフラクションを分子量4000のフラクションとした。
続いて、分子量3000のフラクション及び分子量4000のフラクションについて、溶媒を除去した試料を準備して、上述の方法により1H-NMRを測定した。
これらの結果から、大環状構造体の割合を下記の式から算出した。
大環状構造体の割合(%)=(Ta-Tc)/Ta×100
Ta=(1H-NMRスペクトルにおける主鎖のプロトンの積分強度比/2)/n
n=Mn/ポリカーボネート樹脂の繰り返し単位の分子量
(式中、Mnは、MALDI-TOF-MSの結果から算出した数平均分子量である。)
Tc=1H-NMRスペクトルにおける末端のプロトンの積分強度比/x
(式中、xは、末端基由来ピークのプロトン数である。)
(分子量3000のフラクションの割合及び分子量4000のフラクションの割合)
上述の「大環状構造体の割合の算出方法」において分取した分子量3000のフラクション及び分子量4000のフラクションの溶媒を除去した質量を計測し、分取GPC装置導入したポリカーボネート樹脂の質量から各フラクションの割合を算出した。
(ポリカーボネート樹脂中のエーテル結合の有無)
上述の分子量3000、及び分子量4000のフラクションについて、MALDI-TOF-MSで分析し、得られたMALDI-TOF-MSスペクトルにおいて、最大強度から70%以上の強度で検出されるピークから質量が44小さいピークが観測されているか否か(検出限界以下であるか否か)で判断し、カーボネートから脱炭酸したエーテル結合を含む化学種の有無を確認した。
(成形性と離型性の評価)
まず、真空圧縮成形機を用いて、ポリカーボネート樹脂の未延伸試料を作製した。
ポリカーボネート樹脂を25~150μm厚のポリイミド製枠内に入れ、2枚のポリイミドフィルムと2枚のアルミ板及び2枚の鉄板で挟むことで、積層体を得た。このとき、積層体の積層順が、鉄板、アルミ板、ポリイミドフィルム、ポリイミド製枠、ポリイミドフィルム、アルミ板、鉄板のようになるように積層した。
上記の積層体を真空圧縮成形機(神藤金属工業所製、SFV-30型)にセットし、210℃において、減圧下(10kPa)で5分間予熱した後、減圧条件を保持したまま、210℃において、プレス圧10MPaの条件で10分間圧縮した。減圧及びプレス圧を解除した後、上記圧縮した積層体を冷却用圧縮成形機(株式会社神藤金属工業所製、AYS-10型)に移して冷却固化させることにより、厚さ20~250μmのプレスフィルムを得た。
成形性については、フィルム状に成形できた場合は〇、フィルム状に成形できなかった場合は×とした。
離型性については、作製したフィルムがポリイミドフィルムから容易に剥離した場合は〇、ポリイミドフィルムに密着する等剥離に難があった場合は×とした。
〔実施例1〕
50mLセパラブルフラスコへ、合成したtrans-シクロヘキセンカーボネート(9.98g、70.2mmol)を加え、フラスコ内を窒素で置換した。
前記フラスコを25℃の恒温槽に浸し、フラスコ内へm-キシレン(40.2g)を加え、メカニカルスターラーと撹拌翼とを用いて撹拌し、モノマーを完全に溶解させた。別途、乾燥させた30mLシュレンク管へ、カリウムtert-ブトキシド溶液(1.0M、115μL、0.115mmol)とベンジルアルコール(0.127g、1.17mmol)を量り取り、m-キシレン0.9mLで希釈して重合開始剤溶液を調製した。モノマー溶液を撹拌しながら、調製した重合開始剤溶液0.34mLを加え、25℃で2時間30分撹拌した。酢酸0.0118gを加えて反応を停止させた(重合液)。続いて、メタノール不溶分の評価のため、次のようにして再沈殿操作を行った。
前記重合液を6.97gサンプリングし、m-キシレン8.03gを加えて希釈した。希釈液をメタノール157g中へ加えてポリマーを析出させた。析出させたポリマーを減圧濾過によって回収し、得られたポリマーを100℃で2時間真空乾燥させ、ホモポリマー(1.19g)を得た。
得られたホモポリマーについて分取GPCを用いて分画を行った後、上述した分子量3000のフラクションと、分子量4000のフラクションについて、大環状構造体の割合の算出を行った。
上記の方法により、分子量3000のフラクション、及び分子量4000のフラクションでの大環状構造体の割合が、92モル%、及び75モル%と算出された。
〔実施例2〕
50mLセパラブルフラスコへ、合成したtrans-シクロヘキセンカーボネート(9.98g、70.2mmol)を加え、フラスコ内を窒素で置換した。
前記フラスコを25℃の恒温槽に浸し、フラスコ内へm-キシレン(40.2g)を加え、メカニカルスターラーと撹拌翼とを用いて撹拌し、モノマーを完全に溶解させた。
別途、乾燥させた30mLシュレンク管へ、カリウムtert-ブトキシド溶液(1.0M、115μL、0.115mmol)とベンジルアルコール(0.127g、1.17mmol)を量り取り、m-キシレン0.9mLで希釈して重合開始剤溶液を調製した。
モノマー溶液を撹拌しながら、調製した重合開始剤溶液0.34mLを加え、25℃で2時間30分撹拌した。
酢酸0.0118gを加えて反応を停止させた(重合液)。
続いて、50mL3つ口フラスコへ、無水安息香酸(0.205g、0.904mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(0.0126g、0.103mmol)を量り取り、フラスコ内を窒素で置換した後、フラスコ内へ前記重合液を10.0g加えた。
フラスコをオイルバスに浸し、マグネチックスターラーを用いて、100℃で4時間撹拌した。放冷後、エバポレーターを用いて溶媒を留去したのち、残渣へm-キシレン(18.0g)を加えて溶解させた。
この溶解液をメタノール200mL中へ加え、析出したポリマーを減圧濾過によって回収し、メタノール50mLで4回洗浄した。得られたポリマーを100℃で2時間真空乾燥させ、両末端変性ポリマー(1.28g)を得た。
その後は前記実施例1と同様にして、分子量3000のフラクションと分子量4000のフラクションについての大環状構造体の割合を算出し、それぞれ86モル%及び73モル%と算出された。
〔実施例3〕
50mLセパラブルフラスコへ、合成したtrans-シクロヘキセンカーボネート(10.1g、71.2mmol)を加え、フラスコ内を窒素で置換した。
前記フラスコを25℃の恒温槽に浸し、フラスコ内へm-キシレン(40.2g)を加え、メカニカルスターラーと撹拌翼とを用いて撹拌し、モノマーを完全に溶解させた。
別途、乾燥させた30mLシュレンク管へ、カリウムtert-ブトキシド溶液(1.0M、0.28mL、0.28mmol)とベンジルアルコール(0.063g、0.58mmol)を量り取り、m-キシレン2.6mLで希釈して重合開始剤溶液を調製した。モノマー溶液を撹拌しながら、調製した重合開始剤溶液0.27mLを一度に加え、25℃で30分撹拌した。
酢酸0.012gを加えて反応を停止させた(重合液)。
続いて、メタノール不溶分の評価のため、次のようにして再沈殿操作を行った。
前記重合液を0.52gサンプリングし、m-キシレン2.13gを加えて希釈した。希釈液をメタノール26.57g中へ加えてポリマーを析出させた。析出させたポリマーを減圧濾過によって回収し、得られたポリマーを130℃で2時間真空乾燥させ、ホモポリマー(0.09g)を得た。
その後は、前記実施例1と同様にして、分子量3000のフラクションと分子量4000のフラクションについての大環状構造体の割合を算出し、それぞれ90モル%及び74モル%と算出された。
〔比較例1〕
比較例1として、シクロヘキセンオキシドと二酸化炭素の共重合により合成されたポリ(シクロヘキセンカーボネート)樹脂(Empower Materials社製、製品名「QPAC130」)を用いた。
実施例1と同条件で真空圧縮成形を行うと、膜厚の薄い端部で基材のカプトンへ密着する様子が確認され、力を加えて剥離させるとフィルムが白化したため、離型性を×として評価した。
比較例1についても分取GPCで分画し、MALDI-TOF-MSを用いて構造解析を行った。分子量3000のフラクションと分子量4000のフラクションについて大環状構造体の割合を算出したところ、0モル%及び0モル%と算出された。
ポリマーの両末端が水酸基となったポリカーボネート構造等が帰属可能な化学種として観測され、実施例1で観測された大環状構造体は観測されなかった。
このような末端基との相互作用の影響が大きな低分子量成分における大環状構造体の有無がポリマーの離型性の違いとして発現したと考えられる。
実施例1~3のポリカーボネート樹脂のMALDI-TOF-MSスペクトルでは、カーボネート結合以外の結合を含む化学種は帰属可能なピークとして観測されなかった。一方、比較例1のポリマーでは、カーボネート結合以外に、カーボネートから脱炭酸したエーテル結合をもつ構造に対応する質量電荷比のピークが観測され、ポリカーボネート樹脂中にエーテル結合を有していた。
実施例及び比較例で得られたポリカーボネート樹脂の物性を表1に示す。
Figure 2022152168000012
本発明のポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂組成物、及びそれらを含む光学部品は、光学レンズ材料、光学デバイス、光学部品用材料、及びディスプレイ材料のような各種の光学用材料等の分野において産業上の利用可能性を有する。

Claims (8)

  1. 下記式(1)で表される構造単位を有するポリカーボネート樹脂であって、
    前記ポリカーボネート樹脂の分取GPCによって分取されるフラクションであって、MALDI-TOF-MSにより測定される数平均分子量Mnが2500以上3500未満のフラクション、及び数平均分子量Mnが3500以上4500未満のフラクションにおける大環状構造体の割合が、それぞれ50モル%以上である、
    ポリカーボネート樹脂。
    Figure 2022152168000013
    (式(1)中、R1、R2、R3及びR4は、各々独立して、水素原子、水酸基、リン酸基、アミノ基、ビニル基、アリル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~11のエステル基、炭素数1~11のアシル基、又は、非置換の直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基であり、アルキレン基又はカーボネート基を介して互いに結合して環状構造を形成していてもよく、前記アルキレン基は、水酸基、リン酸基、アミノ基、アルコキシ基、又はエステル基によって置換されていてもよく、主鎖にカルボニル基が挿入されていてもよい。)
  2. 前記大環状構造体が、下記式(2)で表される、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂。
    Figure 2022152168000014
    (式(2)中、R1、R2、R3及びR4は、各々独立して、水素原子、水酸基、リン酸基、アミノ基、ビニル基、アリル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~11のエステル基、炭素数1~11のアシル基、又は、非置換の直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基であり、アルキレン基又はカーボネート基を介して互いに結合して環状構造を形成していてもよく、前記アルキレン基は、水酸基、リン酸基、アミノ基、アルコキシ基、又はエステル基によって置換されていてもよく、主鎖にカルボニル基が挿入されていてもよく、nは0以上の整数である。)
  3. サイズ排除クロマトグラフィーによって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が、500,000以下である、
    請求項1又は2に記載のポリカーボネート樹脂。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂と、
    酸化防止剤と、
    を含有する、
    ポリカーボネート樹脂組成物。
  5. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂、又は請求項4に記載のポリカーボネート樹脂組成物を含有する、光学部品。
  6. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂、又は請求項4に記載のポリカーボネート樹脂組成物の、光学部品への使用。
  7. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法であって、
    下記式(3)で表される環状カーボネートを開環重合することにより、前記ポリカーボネート樹脂を得る重合工程を有する、ポリカーボネート樹脂の製造方法。
    Figure 2022152168000015
    (式(3)中、R1、R2、R3及びR4は、各々独立して、水素原子、水酸基、リン酸基、アミノ基、ビニル基、アリル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~11のエステル基、炭素数1~11のアシル基、又は、非置換の直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基であり、アルキレン基又はカーボネート基を介して互いに結合して環状構造を形成していてもよく、前記アルキレン基は、水酸基、リン酸基、アミノ基、アルコキシ基、又はエステル基によって置換されていてもよく、主鎖にカルボニル基が挿入されていてもよい。)
  8. 有機リチウム、有機マグネシウム、金属アルコキシド、及び金属アミド、からなる群より選択される少なくとも1つを、重合開始剤として用いる、
    請求項7に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
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