<第1の実施形態>
第1の実施形態について図1から図6を参照して説明する。
(基本構成)
図1に示すように、第1の実施形態に係る錠剤印刷装置1は、供給装置10と、第1の印刷装置20と、第2の印刷装置30と、回収装置40と、制御装置50とを備えている。なお、第1の印刷装置20及び第2の印刷装置30は基本的に同じ構造である。
供給装置10は、ホッパ11、整列フィーダ12及び受け渡しフィーダ13を有している。この供給装置10は、印刷対象となる錠剤Tを第1の印刷装置20に供給することが可能に構成されており、第1の印刷装置20の一端側に位置付けられている。ホッパ11は、多数の錠剤Tを収容し、整列フィーダ12に錠剤Tを順次供給する。整列フィーダ12は、供給された錠剤Tを二列に整列し、受け渡しフィーダ13に向けて搬送する。受け渡しフィーダ13は、整列フィーダ12上の錠剤Tを順次吸引して第1の印刷装置20まで二列で搬送し、第1の印刷装置20に二列のまま供給する。この供給装置10は制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。なお、整列フィーダ12及び受け渡しフィーダ13としては、例えば、ベルト搬送機構を用いることが可能である。
第1の印刷装置20は、搬送装置(錠剤搬送装置)21と、検出装置22と、第1の撮像装置(印刷用の撮像装置)23と、印刷ヘッド装置24と、第2の撮像装置(検査用の撮像装置)25と、乾燥装置26とを備えている。
搬送装置21は、搬送ベルト21a、駆動プーリであるプーリ体21b(第1の回転体)、複数(図1の例では、三つ)の従動プーリ21c(第2の回転体)、モータ(駆動部)21d、位置検出器21e及びチャンバ21fを有している。搬送ベルト21aは、無端状に形成されており、プーリ体21b及び各従動プーリ21cに架け渡されている。プーリ体21b及び各従動プーリ21cは、装置本体に回転可能に設けられており、プーリ体21bはモータ21dに連結されている。モータ21dは制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。位置検出器21eは、エンコーダなどの機器であり、モータ21dに取り付けられている。この位置検出器21eは電気的に制御装置50に接続されており、検出信号を制御装置50に送信する。制御装置50は、その検出信号に基づいて搬送ベルト21aの位置や速度、移動量などの情報を得ることができる。この搬送装置21は、モータ21dによるプーリ体21bの回転によって各従動プーリ21cと共に搬送ベルト21aを回転させ、その搬送ベルト21a上の錠剤Tを図1及び図2中の矢印A1の方向(搬送方向A1)に搬送する。
ここで、図2に示すように、搬送ベルト21aの表面には、円形状の吸引孔21gが複数形成されている。これらの吸引孔21gは、それぞれ錠剤Tを吸着する貫通孔であり、二本の搬送経路を形成するように搬送方向A1に沿って平行に二列に並べられている。各吸引孔21gは、チャンバ21fに接続されており、そのチャンバ21fにより吸引力を得ることが可能になっている。このチャンバ21fは、搬送ベルト21aの各吸引孔21gに置かれた錠剤Tに吸引力を与える(作用させる)ためのチャンバである(詳しくは、後述する)。
検出装置22は、複数の検出部22a(図2の例では、二つ)を有している。検出部22aは、供給装置10によって搬送ベルト21aにおける錠剤Tが供給される位置よりも、搬送方向A1の下流側であって搬送方向A1に水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に錠剤Tの搬送経路ごとに一つずつ並べられ、搬送ベルト21aの上方に設けられている。検出部22aは、レーザ光の投受光によって搬送ベルト21a上の錠剤Tの位置(搬送方向A1の位置)を検出し、下流に位置する各装置のトリガーセンサとして機能する。検出部22aとしては、反射型レーザセンサなど各種のレーザセンサを用いることが可能である。各検出部22aは制御装置50に電気的に接続されており、制御装置50に検出信号を送信する。
第1の撮像装置23は、複数の撮像部23a(図2の例では、二つ)を有している。撮像部23aは、検出装置22が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側であって搬送方向A1に水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に錠剤Tの搬送経路ごとに一つずつ並べられ、搬送ベルト21aの上方に設けられている。この撮像部23aは、前述の錠剤Tの位置情報に基づき、錠剤Tが撮像部23aの直下に到達したタイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む画像(印刷用の画像)を取得し、取得した画像を制御装置50に送信する。撮像部23aとしては、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの撮像素子を有する各種のカメラを用いることが可能である。各撮像部23aは制御装置50に電気的に接続されており、それらの駆動が制御装置50により制御される。なお、必要に応じて撮像用の照明も設けられている。
印刷ヘッド装置24は、インクジェット方式の複数の印刷ヘッド24a(図2の例では、二つ)を有している。印刷ヘッド24aは、第1の撮像装置23が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側であって搬送方向A1に水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に錠剤Tの搬送経路ごとに一つずつ並べられ、搬送ベルト21aの上方に設けられている。印刷ヘッド24aは、複数のノズル24b(図2参照:ただし、図示では四つだけ表示)を具備し、それらのノズル24bから個別にインクを吐出する。この印刷ヘッド24aは、ノズル24bが並ぶ整列方向が水平面内で搬送方向A1と交差するように(例えば直交するように)設けられている。印刷ヘッド24aとしては、圧電素子、発熱素子又は磁歪素子などの駆動素子を有する各種のインクジェット方式の印刷ヘッドを用いることが可能である。各印刷ヘッド24aは制御装置50に電気的に接続されており、それらの駆動が制御装置50により制御される。
第2の撮像装置25は、複数の撮像部25a(図2の例では、二つ)を有している。撮像部25aは、印刷ヘッド装置24が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側であって搬送方向A1に水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に錠剤Tの搬送経路ごとに一つずつ並べられ、搬送ベルト21aの上方に設けられている。この撮像部25aは、前述の錠剤Tの位置情報に基づき、錠剤Tが撮像部25aの直下に到達したタイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む画像(検査用の画像)を取得し、取得した画像を制御装置50に送信する。撮像部25aとしては、前述の撮像部23aと同様、CCDやCMOSなどの撮像素子を有する各種のカメラを用いることが可能である。各撮像部25aは制御装置50に電気的に接続されており、それらの駆動が制御装置50により制御される。なお、必要に応じて撮像用の照明も設けられている。
乾燥装置26は、第2の撮像装置25が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側に位置付けられ、例えば、搬送装置21の下方に設けられている。この乾燥装置26は、二列の搬送経路に共通の乾燥装置であり、搬送ベルト21a上の各錠剤Tに塗布されたインクを乾燥させる。乾燥装置26としては、放射熱により乾燥対象を乾燥させるヒータ、あるいは、温風や熱風により乾燥対象を乾燥させる送風機など各種の乾燥部を用いることが可能である。乾燥装置26は制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。
なお、乾燥装置26の上方を通過した錠剤Tは、搬送ベルト21aの移動に伴って搬送され、搬送ベルト21aにおける各従動プーリ21c側の端部付近の位置に到達する。この位置で吸引作用が錠剤Tに働かなくなり、錠剤Tは搬送ベルト21aに保持された状態から解放され、第1の印刷装置20から第2の印刷装置30に受け渡される。
第2の印刷装置30は、搬送装置31と、検出装置32と、第1の撮像装置(印刷用の撮像装置)33と、印刷ヘッド装置34と、第2の撮像装置(検査用の撮像装置)35と、乾燥装置36とを備えている。搬送装置31は、搬送ベルト31a、駆動プーリであるプーリ体31b、複数(図1の例では、三つ)の従動プーリ31c、モータ(駆動部)31d、位置検出器31e及びチャンバ31fを有している。なお、第2の印刷装置30を構成する各要素は、前述の第1の印刷装置20の対応する構成要素と基本的に同じ構造であるため、その説明を省略する。第2の印刷装置30の搬送方向は図1中の矢印A2の方向(搬送方向A2)である。
回収装置40は、不良品回収装置41と、良品回収装置42とを備えている。この回収装置40は、第2の印刷装置30の乾燥装置36が設けられた位置よりも搬送方向A2の下流側に位置付けられて設けられており、不良品回収装置41により不良品の錠剤Tを回収し、良品回収装置42により良品の錠剤Tを回収する。
不良品回収装置41は、噴射ノズル41aと、収容部41bとを有している。噴射ノズル41aは、第2の印刷装置30の搬送装置31内に設けられており、搬送ベルト31aにより搬送される錠剤T(不良品の錠剤T)に向けて気体(例えば、エア)を噴射し、搬送ベルト31aから錠剤Tを落下させる。このとき、噴射ノズル41aから噴射された気体は、搬送ベルト31aの吸引孔(図2に示す吸引孔21gと同様である)を通過して錠剤Tに当たる。噴射ノズル41aは制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。収容部41bは、搬送ベルト31aから落下した錠剤Tを受け取って収容する。
良品回収装置42は、気体吹出部42aと、収容部42bとを有している。この良品回収装置42は、不良品回収装置41が設けられた位置よりも搬送方向A2の下流側に位置付けられて設けられている。気体吹出部42aは、第2の印刷装置30の搬送装置31内であってその搬送装置31の端部、すなわち搬送ベルト31aにおける各従動プーリ31c側の端部に設けられている。気体吹出部42aは、例えば印刷処理中には常に、搬送ベルト31aに向けて気体(例えば、エア)を吹き出し、搬送ベルト21aから錠剤Tを落下させる。このとき、気体吹出部42aから吹き出された気体は、搬送ベルト31aの吸引孔(図2に示す吸引孔21gと同様である)を通過して錠剤Tに当たる。この気体吹出部42aとしては、例えば、搬送方向A2に水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に延びるスリット状の開口を有するエアブローを用いることが可能である。気体吹出部42aは制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。収容部42bは、搬送ベルト31aから落下した錠剤Tを受け取って収容する。
なお、不良品回収装置41を通過した錠剤Tは、搬送ベルト31aの移動に伴って搬送され、搬送ベルト31aにおける各従動プーリ31c側の端部付近の位置に到達する。この位置で吸引作用が錠剤Tに働かなくなるが、気体吹出部42aを設けることで、搬送ベルト31aから錠剤Tを確実に収容部42bに回収することができる。
制御装置50は、画像処理部51、印刷処理部52、検査処理部53及び記憶部54を備えている。画像処理部51は画像を処理する。印刷処理部52は印刷に係る処理を行う。検査処理部53は検査に係る処理を行う。記憶部54は処理情報や各種プログラムなどの各種情報を記憶する。このような制御装置50は、第1の印刷装置20や第2の印刷装置30の個々の検出装置22、32から送信される錠剤Tの位置情報、第1の印刷装置20や第2の印刷装置30の個々の撮像装置23、25、33、35から送信される画像などを受信する。
(吸引チャンバ)
次に、第1の印刷装置20のチャンバ21f及びプーリ体21bについて図3から図6を参照して説明する。これらのチャンバ21f及びプーリ体21bが吸引チャンバを構成している。なお、第2の印刷装置30のチャンバ31f及びプーリ体31bの構成も基本的に同じであるため、その説明を省略する。
図3に示すように、チャンバ21fは、チャンバ本体61を備えている。なお、図3では、搬送ベルト21aは省略されている。チャンバ本体61は、例えば直方体状の筐体に形成されている。このチャンバ本体61におけるプーリ体21b側の端部は開口しており、プーリ体21bの外周形状に合わせて形成されている。このチャンバ本体61は、吸引管62を介してポンプなどの吸気装置(図示せず)に接続されていて、この吸気装置の作動により、チャンバ本体61の内部は減圧される。吸引管62は、チャンバ本体61の側面(搬送方向A1と平行な面)の略中央に接続されている。吸気装置は制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。
図3及び図4に示すように、チャンバ本体61は、ガイド部61aを有している。このガイド部61aは、チャンバ本体61の上面及び下面に形成されている。ガイド部61aには、複数(図3及び図4では、二列)の吸引溝61b及び複数の溝61c(図3及び図4では、三列)が錠剤Tの搬送方向A1に沿って延びるように形成されている。吸引溝61bは、搬送ベルト21aがプーリ体21b及び各従動プーリ21cに架け渡されたときに、搬送ベルト21aの各吸引孔21gの直下に位置するように錠剤Tの搬送経路ごとに形成されている。この吸引溝61bの底面には、チャンバ本体61の内部に通じる複数の貫通孔61dが錠剤Tの搬送方向A1に並べられて形成されている。したがって、チャンバ本体61の内部が吸引されたとき、その吸引力は、搬送ベルト21aの上面の領域と下面の領域のそれぞれに形成された吸引孔21g上の錠剤Tに付与されることになる。なお複数の溝61cは、チャンバ本体61と搬送ベルト21aとの接触面積を小さくするために設けられる。
図3及び図5に示すように、プーリ体21bは、一対の搬送プーリ71、72と、一対のガイドプーリ73、74とを有している。
一対の搬送プーリ71、72は、搬送ベルト21aの幅方向(搬送方向A1に水平面内で直交する方向)の両端に互いに離れるように位置付けられ、モータ21dの回転軸21hに固定されて設けられている。これらの搬送プーリ71、72は、モータ21dの回転軸21hの回転に応じて、搬送ベルト21aを回して移動させる。なお、搬送ベルト21aの一例として歯車付きベルトを用いた場合には、各搬送プーリ71、72として歯車付きプーリ(タイミングプーリ)を用いる。
ここで、図3に示すように、搬送プーリ71とチャンバ本体61との離間距離(搬送方向A1の隙間a1)は、例えば、0.5mm~1.0mmの範囲内である。これは、錠剤Tの厚みよりも小さく設定されている。これにより、何らかの要因により錠剤Tがチャンバ本体61やプーリ体21bの内部に入り込むことが抑えられる。搬送プーリ71が歯車付きプーリである場合、その歯の高さや幅などは、錠剤Tがチャンバ本体61やプーリ体21bの内部に入り込むことを防止するように決定されている。なお、搬送プーリ72とチャンバ本体61との離間距離(搬送方向A1の隙間a1)も、搬送プーリ71と同様に設定されている。
一対のガイドプーリ73、74は、各搬送プーリ71、72の間であってそれらの隣に位置付けられ、モータ21dの回転軸21hに固定されて設けられている。したがって、これらのガイドプーリ73、74も、モータ21dの回転軸21hの回転に応じて、搬送ベルト21aに接触しつつ、一対の搬送プーリ71、72と共に回転する。特に、一対のガイドプーリ73、74は、モータ21dの回転軸21hの延伸方向に離れて対向配置されることで、プーリ体21bの内部には空間(内部空間)が形成されるとともに、プーリ体21bの回転方向に延びるスリット状の貫通孔70aを形成するように設けられている。これにより、プーリ体21bは、一対のガイドプーリ73、74の間の隙間であるスリット状の貫通孔70aを有することになる。スリット状の貫通孔70aの幅は、数センチから数十センチ程度である。この貫通孔70aを介してチャンバ本体61の内部空間とプーリ体21bの内部空間は連通している。なお、チャンバ本体61及び吸引管62がプーリ体21bに対するダクト(空気の通路)として機能する。
ガイドプーリ73には、吸引溝73a及び溝73bがガイドプーリ73の回転方向に延びるようにガイドプーリ73の外周の全周にわたって形成されている。吸引溝73aは、プーリ体21bに架けられた搬送ベルト21aの各吸引孔21gの列に対向する位置に形成されている。この吸引溝73aの底面には、複数の貫通孔73cがガイドプーリ73の回転方向に並べられ、ガイドプーリ73の外周の全周にわたって形成されている。これらの貫通孔73cの直径は、例えば数ミリ程度である。また、ガイドプーリ74には、ガイドプーリ73と同様、吸引溝74a及び溝74bがガイドプーリ74の回転方向に延びるようにガイドプーリ74の外周全周にわたって形成されている。この吸引溝74aの底面にも、複数の貫通孔74cがガイドプーリ74の回転方向に並べられ、ガイドプーリ74の外周の全周にわたって形成されている。
図6に示すように(矢印参照)、チャンバ本体61内の空気が吸引管62を介して吸引されると、チャンバ本体61の各吸引溝61b及び各貫通孔61d(図4参照)を介して、搬送ベルト21aにおけるチャンバ本体61の上面及び下面に位置する各吸引孔21gから空気が吸引される。これにより、搬送ベルト21aにおけるチャンバ本体61の上面及び下面に位置する各吸引孔21g上の錠剤Tに吸引力が付与されることになる。また、チャンバ本体61の内部空間とプーリ体21bの内部空間はスリット状の貫通孔70aにより連通している。このため、前述のようにチャンバ本体61内の空気が吸引管62を介して吸引されると、チャンバ本体61によりプーリ体21bの内部空間から空気がスリット状の貫通孔70aを介して吸引され、吸引溝73aを介して搬送ベルト21aが吸引されるとともに、搬送ベルト21aにおけるプーリ体21bの外周に位置する各吸引孔21gから空気が吸引される。これにより、搬送ベルト21aにおけるプーリ体21bの外周に位置する各吸引孔21g上の錠剤Tに吸引力が与えられる(作用する)ことになる。
ここで、前述の吸引力としては、錠剤Tの自重や搬送中に発生する遠心力に抗する以上の吸引力が必要となる。詳しくは、搬送ベルト21aの上面の領域では、少なくとも、搬送に伴って錠剤Tがずれたり、揺れたりしない吸引力(比較的弱い吸引力)が必要である。搬送ベルト21aの下面の領域では、錠剤Tが落下しない吸引力が必要であり、さらに、搬送ベルト21aにおけるプーリ体21bの円周方向に回転する領域では、遠心力に抗する吸引力が必要となる。このため、搬送ベルト21aにおけるプーリ体21bの外周に位置する各吸引孔21g上の錠剤Tに作用させる吸引力は強くなる。この部分の搬送ベルト21aの表面が吸引力によって撓む可能性があり、これにより搬送ベルト21aの表面が平坦でなくなると、錠剤Tの安定搬送が難しくなる。これを防止するため、搬送ベルト21aを支持する一対のガイドプーリ73、74が設けられている。なお、搬送ベルト21aの剛性が強く、搬送ベルト21aの表面の平坦が維持することが可能であれば、一対のガイドプーリ73、74を取り外すことも可能である(第3の実施形態参照)。
(印刷工程)
次に、前述の錠剤印刷装置1が行う印刷処理及び検査処理について説明する。
まず、印刷に要する印刷データなどの各種情報が制御装置50の記憶部54に記憶される。そして、供給装置10のホッパ11に印刷対象の錠剤Tが多数投入されると、錠剤Tはホッパ11から整列フィーダ12に順次供給され始め、整列フィーダ12により二列に並べられて移動する。この二列で移動する錠剤Tは受け渡しフィーダ13により搬送ベルト21aに順次供給される。搬送ベルト21aは、モータ21dによるプーリ体21b及び各従動プーリ21cの回転によって搬送方向A1に回転している。このため、搬送ベルト21a上に供給された錠剤Tは搬送ベルト21a上で二列に並んで所定の移動速度で搬送されていく。なお、搬送ベルト31aもモータ31dによるプーリ体31b及び各従動プーリ31cの回転によって搬送方向A2に回転している。
その後、搬送ベルト21a上の錠剤Tは検出装置22によって検出される。これにより、錠剤Tの位置情報(搬送方向A1の位置)が取得され、制御装置50に入力される。この錠剤Tの位置情報は、記憶部54に保存されて後処理で用いられる。次に、搬送ベルト21a上の錠剤Tが前述の錠剤Tの位置情報に基づくタイミングで第1の撮像装置23によって撮像され、撮像された画像が制御装置50に送信される。第1の撮像装置23から送信された個々の画像に基づき、錠剤Tの位置ずれ情報(例えば、X方向、Y方向及びθ方向での錠剤Tの位置ずれ)が画像処理部51により生成され、記憶部54に保存される。この錠剤Tの位置ずれ情報に基づき、錠剤Tに対する印刷条件(インクの吐出位置や吐出速度など)が印刷処理部52により設定され、記憶部54に保存される。
次いで、搬送ベルト21a上の個々の錠剤Tは、前述の錠剤Tの位置情報に基づくタイミング、すなわち錠剤Tが印刷ヘッド装置24の下方に到達したタイミングで、前述の印刷条件に基づいて印刷ヘッド装置24により印刷が実行される。印刷ヘッド装置24の各印刷ヘッド24aにおいて、各ノズル24bからインクが適宜吐出され、その錠剤Tの上面に文字(例えばアルファベット、片仮名、番号)やマーク(例えば記号、図形)などの識別情報が印刷される。
識別情報が印刷された錠剤Tは、前述の錠剤Tの位置情報に基づくタイミングで第2の撮像装置25によって撮像され、撮像された画像が制御装置50に送信される。第2の撮像装置25から送信された個々の画像に基づき、錠剤Tごとの印刷パターンの印刷位置を示す印刷位置情報が画像処理部51により生成され、記憶部54に保存される。その印刷位置情報に基づき、錠剤Tに対する印刷良否が検査処理部53により判断され、錠剤Tごとの印刷良否の結果を示す印刷良否結果情報が記憶部54に保存される。例えば、印刷パターンが錠剤Tの所定位置に印刷されているか否かが判断される。
検査後の錠剤Tは、搬送ベルト21aの移動に伴って搬送され、乾燥装置26の上方を通過する。このとき、錠剤Tに塗布されたインクは、錠剤Tが乾燥装置26の上方を通過する間に乾燥装置26によって乾燥し、インクが乾燥した錠剤Tは搬送ベルト21aの移動に伴って搬送されていき、搬送ベルト21aにおける各従動プーリ21c側の端部付近に位置する。この位置で吸引作用が錠剤Tに働かなくなり、錠剤Tは搬送ベルト21aに保持された状態から解放され、第1の印刷装置30から第2の印刷装置30に渡される。
その後、第2の印刷装置30でも、前述と同じように印刷処理及び検査処理が行われる。検査後の錠剤Tは、搬送ベルト31aの移動に伴って搬送されていき、乾燥装置36の上方を通過する。そして、インクが乾燥した錠剤Tは、不良品回収装置41に到達する。不良品の錠剤Tは、噴射ノズル41aから噴射された気体により搬送ベルト31aから落とされ、収容部41bによって回収される。一方、良品の錠剤Tは、不良品回収装置41を通過し、良品回収装置42に到達する。この位置で良品の錠剤Tは、吸引作用が錠剤Tに働かなくなるとともに、気体吹出部42aから吹き出された気体によって搬送ベルト31aから離れて落下し、収容部42bによって回収される。
このような印刷工程では、チャンバ本体61内の空気が吸引管62を介して吸引されており、このチャンバ本体61によりプーリ体21b内の空気は、プーリ体21bの回転方向に延びるスリット状の貫通孔70aから吸引される。これにより、搬送ベルト21aにおけるプーリ体21bの外周に位置する各吸引孔21g上の錠剤Tに吸引力が作用することから、プーリ体21bは、搬送ベルト21aにおけるプーリ体21bの外周に位置する各吸引孔21gから空気を吸引するためのチャンバとして機能する。また、プーリ体21bの各ガイドプーリ73、74は、搬送ベルト21aと共に回転する。これにより、チャンバを構成するガイドプーリ73、74と、搬送ベルト21aとの間の相対移動がなくなることから、プーリ体21bの部分においては、搬送ベルト21aの回転を妨げる摩擦力が生じなくなる。
本実施形態では、プーリ体21bの各ガイドプーリ73、74が、搬送ベルト21aと共に回転するように構成したことで、少なくともプーリ体21bに架かる搬送ベルト部分において、搬送ベルト21aの回転を妨げる摩擦力の発生を防止できる。これにより、モータ等の駆動部21dへの負荷変動が減るから、搬送ベルト21aの振動を抑制することが可能となり、搬送ベルト21aは安定して錠剤Tを搬送することができる。その結果、搬送ベルト21aの振動による印刷品質の低下(印刷ずれ、かすれなど)や錠剤Tの落下などを防止することができる。
以上説明したように、第1の実施形態によれば、チャンバ本体61の内部空間とプーリ体21bの内部空間がスリット状の貫通孔70aを介して連通しており、チャンバ本体61内の空気が吸引管62を介して吸引されると、チャンバ本体61によりプーリ体21bの内部空間から空気がスリット状の貫通孔70aを介して吸引される。これにより、搬送ベルト21aにおけるプーリ体21bの外周に位置する各吸引孔21g上の錠剤Tに吸引力が作用することになる。このため、プーリ体21bは、搬送ベルト21aにおけるプーリ体21bの外周に位置する各吸引孔21gから空気を吸引するためのチャンバとして機能する。さらに、このプーリ体21bの一対のガイドプーリ73、74は、搬送ベルト21aと共に回転するため、搬送ベルト21aの移動に抗する力が抑えられ、搬送ベルト21aはスムーズに移動する。これにより、搬送ベルト21aの振動を抑制することが可能となるので、搬送ベルト21aは安定して錠剤Tを搬送することができる。また、回転するプーリ体21bの内部空間と、固定配置されるチャンバ本体61の内部空間とは、スリット状の貫通孔70aを介して連通し、両者間での摺動部分がないから、錠剤印刷装置において大敵であるゴミの発生も防止できる。また、プーリ体21b内の空気を、チャンバ本体61に接続される吸引管62を介して吸引することができるので、装置構成が煩雑になるのを防止することができる。
さらに、従来の吸引チャンバと比較して、プーリ体21bとチャンバ本体61とを錠剤印刷装置1から別々に取り外すことが可能になったため、吸引チャンバの洗浄を行う際、プーリ体21bとチャンバ本体61を別々に洗浄することができる。これによって、一度に洗浄する部材を軽くすることができ、オペレータが各部材を容易に運搬することができ、洗浄作業が容易になる。
また、図4に示したように、チャンバ本体61の上下面にガイド部61aを設け、このガイド部61aに、複数の溝61cを形成した。チャンバ本体61の上下面に対して、搬送ベルト21aは相対的に移動するが、溝61cを形成することで、チャンバ本体61と搬送ベルト21aとの接触面積は小さくなり、これにより、搬送ベルト21aの移動に伴う駆動部21dの負荷変動をさらに減らすことができる。
なお、錠剤印刷装置1では、多数の錠剤T、例えば、粉末や顆粒の粉を圧縮成型した錠剤が搬送ベルト21aによって順次搬送されるため、錠剤Tの粉が徐々に搬送ベルト21aに堆積していく。この錠剤Tの粉は、貫通孔21gからプーリ体21bの各吸引溝73a、74aや各貫通孔73c、74cなどに入り込み付着することがある。これは、錠剤Tを吸引する吸引力が低下する原因になる。ところが、プーリ体21bの外周面はチャンバ本体61側で搬送ベルト21aによって覆われず、チャンバ本体61の開口に対して露出するため、プーリ体21bの各吸引溝73a、74aや各貫通孔73c、74cに付着した錠剤Tの粉はチャンバ本体61の開口から吸い込まれる(図6中の矢印a2参照)。これにより、プーリ体21bの各吸引溝73a、74aや各貫通孔73c、74cに付着した錠剤Tの粉を除去することが可能となり、錠剤Tの粉に起因して錠剤Tを吸引する吸引力が低下することが抑えられるので、錠剤Tの安定搬送を実現することができる。また、プーリ体21bを清掃するメンテナンスの回数を減らしたり、あるいは、そのメンテナンスを不要としたりすることができる。なお、吸引管62の途中にフィルタ(図示せず)を設け、そのフィルタにより錠剤Tの粉を捕獲するようにしても良い。
<第2の実施形態>
第2の実施形態について図7及び図8を参照して説明する。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態との相違点(プーリ体の構成)について説明し、その他の説明を省略する。
図7及び図8に示すように、第2の実施形態に係るプーリ体80は、内部空間を有するプーリ体である。このプーリ体80は、一対の搬送プーリ81、82と、一つのガイドプーリ83とを有する。一対の搬送プーリ81、82は、第1の実施形態に係る一対の搬送プーリ71、72と同じ構造であるため、その説明を省略する。なお、図7では、搬送ベルト21aは省略されている。
ガイドプーリ83は円筒状に形成されている。ガイドプーリ83の両端には、それぞれ吸引溝83a及び溝83bがガイドプーリ83の回転方向に延びるようにガイドプーリ83の外周の全周にわたって形成されている。吸引溝83aは、プーリ体80に架けられた搬送ベルト21aの各吸引孔21gの列に対向する位置に形成されている。この吸引溝83aの底面には、それぞれ複数の貫通孔83cがガイドプーリ83の回転方向に並べられ、ガイドプーリ83の外周の全周にわたって形成されている。これらの貫通孔83cの直径は、例えば数ミリ程度である。ガイドプーリ83の中央には、複数の貫通孔80aがガイドプーリ83の回転方向に並べられ、ガイドプーリ83の外周の全周にわたって形成されている。これにより、ガイドプーリ83は、回転方向に並ぶ複数の貫通孔80aを有することになる。各貫通孔80aの直径は、例えば数センチ程度であり、貫通孔83cに比べて大きい。これらの貫通孔80aを介してプーリ体80の内部空間とチャンバ本体61の内部空間とは連通している。
このようなプーリ体80によれば、プーリ体80の内部空間とチャンバ本体61の内部空間が各貫通孔80aによって連通しており、チャンバ本体61内の空気が吸引管62を介して吸引されると、チャンバ本体61によりプーリ体80の内部空間から空気が各貫通孔80aを介して吸引される。これにより、搬送ベルト21aにおけるプーリ体80の外周に位置する各吸引孔21g上の錠剤Tに吸引力が作用することから、プーリ体80は、搬送ベルト21aにおけるプーリ体80の外周に位置する各吸引孔21gから空気を吸引するためのチャンバとして機能する。
また、プーリ体80のガイドプーリ83は、搬送ベルト21aと共に回転する。これにより、搬送ベルト21aの移動に抗する力が抑えられるので、搬送ベルト21aはスムーズに移動し、また、モータ負荷も軽減する。したがって、搬送ベルト21aの振動を抑制することが可能となり、搬送ベルト21aは安定して錠剤Tを搬送することができる。その結果、搬送ベルト21aの振動による印刷品質の低下や錠剤Tの落下などを防止することができる。
以上説明したように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、一対のガイドプーリ73、74を一体としてガイドプーリ83の一部品とすることが可能であり、プーリ体80の組み立て作業を容易にすることができる。
<第3の実施形態>
第3の実施形態について図9を参照して説明する。なお、第3の実施形態では、第1の実施形態との相違点(プーリ体の構成)について説明し、その他の説明を省略する。
図9に示すように、第3の実施形態に係るプーリ体90は、内部空間を有するプーリ体である。このプーリ体90は、第1の実施形態に係る一対のガイドプーリ73、74を有しておらず、一対の搬送プーリ91、92を有している。これらの搬送プーリ91、92は、第1の実施形態に係る一対の搬送プーリ71、72と基本的に同じ構造であるため、それらの異なる部分について説明する。
一対の搬送プーリ91、92は、モータ21dの回転軸21hの延伸方向に離れて対向するように設けられている。これにより、プーリ体90は、一対の搬送プーリ91、92の間の隙間である内部空間90aを有することになる。内部空間90aの幅は、搬送ベルト21aの幅方向端部を搬送プーリ91、92が保持することによって形成される幅であり、数センチから数十センチ程度である。プーリ体90の内部空間90aとチャンバ本体61の内部空間とは、チャンバ本体61のプーリ体90側の端部の開口を介して連通している。
このようなプーリ体90によれば、プーリ体90の内部空間とチャンバ本体61の内部空間が、チャンバ本体61の開口と、プーリ体90の内部空間90aによって連通しており、チャンバ本体61内の空気が吸引管62を介して吸引されると、チャンバ本体61によりプーリ体90の内部空間90aから空気が吸引される。これにより、搬送ベルト21aにおけるプーリ体90の外周に位置する吸引孔21g上の錠剤Tに吸引力が作用することから、プーリ体90は、搬送ベルト21aにおけるプーリ体90の外周に位置する各吸引孔21gから空気を吸引するためのチャンバとして機能する。このプーリ体90は、搬送ベルト21aがプーリ体90に架けられるによってチャンバが完成する構成となっている。
また、プーリ体90にはガイドが存在せず、一対の搬送プーリ91、92は搬送ベルト21aと共に回転する。これにより、搬送ベルト21aの移動に抗する力が抑えられるので、搬送ベルト21aはスムーズに移動し、また、モータ負荷も軽減する。したがって、搬送ベルト21aの振動を抑制することが可能となり、搬送ベルト21aは安定して錠剤Tを搬送することができる。その結果、搬送ベルト21aの振動による印刷品質の低下や錠剤Tの落下などを防止することができる。
以上説明したように、第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、搬送ベルト21aの振動を抑制することが可能となるので、搬送ベルト21aは安定して錠剤Tを搬送することができる。また、一対のガイドプーリ73、74を不要とすることが可能であり、プーリ体90の構成を簡略化することができる。
<第4の実施形態>
第4の実施形態について図10を参照して説明する。なお、第4の実施形態では、第1の実施形態との相違点(吸引力調整手段)について説明し、その他の説明を省略する。
第4の実施形態では、搬送ベルト21aにおける印刷処理を行う第1の領域で錠剤Tに対して与えられる吸引力を、その第1の領域以外の第2の領域で錠剤Tに対して与えられる吸引力よりも低下させるため、吸引チャンバ(チャンバ21f及びプーリ体21b)内を複数の区画に分け、区画ごとに吸引力を調整する。この吸引力調整手段が吸引力調整装置として機能する。なお、第1の領域とは、搬送ベルト21aにおける印刷ヘッド装置24の下方の領域を少なくとも含む所定領域であり、第2の領域とは、搬送ベルト21aにおける錠剤Tが吸引搬送される領域において、第1の領域以外の領域である。
図10に示すように、チャンバ本体61の内部には、二カ所に隔壁63、64が形成され、それらの隔壁63、64の下端部が床材65により接続され、一つの部屋が設けられている。これにより、チャンバ本体61の内部は、二つの区画B1、B2に分けられている。なお、隔壁63は、図10に示す符号b1の位置に形成されており、隔壁64は、図10に示す符号b2の位置に形成されている。すなわち、チャンバ本体61内は、隔壁63、64及び床材65によって区画されて符号b1の位置と符号b2の位置との間に形成される第1の区画B1と、その他の区画である第2の区画B2とに分けられている。第1の区画B1には吸引管62aが接続されており、第2の区画B2には吸引管62bが接続されている。
二つの区画B1、B2は隔壁63、64及び床材65によって分けられており、吸引管62a、62bもそれぞれ個別に設けられていることから、相互に空気が行き来することはない。これにより、区画B1、B2ごとに、吸引力(吸引する圧力や吸引空気量、吸引空気速度)を変えて設定し、空気を吸引することが可能となる。例えば、第1の区画B1において錠剤Tに対して与えられる吸引力は、第2の区画B2において錠剤Tに対して与えられる吸引力よりも弱く設定される。
ここで、チャンバ21fにおける搬送ベルト21a上の錠剤Tは、チャンバ21fが吸引孔21gを介して空気を吸引することによって、搬送ベルト21a上に吸引保持される。すなわち、チャンバ21fの吸引力によって搬送ベルト21aの吸引孔21gに錠剤Tが吸引保持される。このとき、吸引保持される錠剤Tによって吸引孔21gが塞がれる場
合と塞がれない場合とがある。これは、吸引保持される錠剤Tの有無だけではなく、錠剤Tの大きさ、形状、あるいは、姿勢等によって、錠剤Tが吸引孔21gを完全に塞がない場合がある。錠剤Tが吸引孔21gを完全に塞ぐことができないと、吸引孔21gと錠剤Tとの接触位置近傍において、吸引孔21gからチャンバ21fに向けて空気が吸引される空間が作り出されることになる。このような場合、吸引孔21gを介して錠剤Tを吸引保持するのに合わせて、錠剤Tの近傍に存在する空気が錠剤Tの上方や側面、吸引孔21gを通って吸引される。特に、チャンバ21gによる吸引力が強い場合には、吸引される空気の量が多くなったり、吸引される空気の流速が速くなったりすることから、錠剤T近傍で生じる気流が強くなったり、気流の到達範囲が大きくなったり、気流に乱れが発生したりする可能性がある。
錠剤Tに印刷を行う印刷ヘッド装置24は、インクジェット方式の印刷ヘッド24a(図2参照)を備えている。インクジェット方式の場合、印刷ヘッド24aから印刷対象となる錠剤Tに向けてインクが吐出され、錠剤Tの表面に着弾することによって印刷が行われる。印刷ヘッド24aからインクが吐出されて、錠剤Tの表面に着弾するまでの間は、印刷ヘッド24aと錠剤Tとの間をインクが飛翔している状態にある。このとき、印刷ヘッド24aと錠剤Tとの間の空間において気流が発生すると、印刷ヘッド24aから吐出されたインクの飛翔中の形状が気流によって崩れたり、飛翔方向が気流に影響されて着弾位置がずれたりして、印刷不良が生じ、印刷品質の低下を招くことがある。その気流が印刷品質に影響しない程度の場合は良いが、その気流が強い場合や気流の到達範囲が大きい場合、気流が乱れている場合などでは、印刷品質の低下は大きい。また、気流の影響が印刷ヘッド24aのインクを吐出するノズル近傍にまで達すると、ノズル付近のインクが乾燥することで、吐出不良が発生し、同じく印刷品質の低下を招く。あるいは、錠剤Tに着弾しなかったインクがミスト状に舞い散ることも考えられる。インクがミスト状に舞い散ってしまうと、例えば、チャンバ21fによって空気が吸引される際に併せて吸引され、搬送されている錠剤Tの側面への付着等が生じる。
そこで、第4の実施形態では、印刷が行われる際に錠剤Tに対して与えられる吸引力を弱めることで、吸引される空気の量や流速を減らして、気流やミストによる印刷不良が発生することを可能な限り低くすることとしている。すなわち、少なくとも錠剤Tが印刷処理を行うために印刷ヘッド装置24の下を通過する際には、この錠剤Tに対して与えられる吸引力を、搬送ベルト21a上のその他の位置にある錠剤Tに対して与えられる吸引力よりも低下させる。なお、この低下させる吸引力は、気流やミストによる印刷不良や搬送ずれ等が考慮され、予め実験などで求められている。
ここで、通常の吸引チャンバ(プーリが吸引チャンバの一部を構成しない)に前述の吸引力調整手段を適用すると、第1の領域の吸引力が第2の領域の吸引力よりも低下し、搬送ベルト21a上の錠剤Tが印刷ヘッド装置24の下の印刷エリアにおいて十分に吸着保持されなくなる可能性がある。これによって、搬送装置からの振動によって錠剤Tが揺動しやすくなる。錠剤Tが十分に保持されずに揺動すると、錠剤Tに対する印刷がぶれて二重になり、印刷不良が発生してしまう可能性がある。
そこで、第4の実施形態によれば、第1の実施形態に係る吸引チャンバ(プーリが吸引チャンバの一部を構成する)に前述の吸引力調整手段を適用することによって、前述のように気流に起因する印刷品質の低下を抑えつつ、第1の実施形態のように搬送ベルト21aの振動を抑制することが可能となるので、搬送ベルト21aは安定して錠剤Tを搬送することができる。これにより、印刷ヘッド装置24の下の印刷エリアにおいても錠剤Tを十分に吸着保持し、錠剤Tの揺動を抑えることが可能となるので、錠剤Tの揺動に起因する印刷品質の低下を抑えることができる。
なお、錠剤Tが印刷ヘッド装置24の下を通過する際にのみ吸引力を低下させるだけではなく、例えば、印刷ヘッド装置24の上流の所定位置(符号b1の位置)から、錠剤Tが印刷ヘッド装置24の下を通過し、印刷ヘッド装置24の下流の所定位置(符号b2の位置)まで吸引力を低下させても良い。つまり、印刷ヘッド装置24の上流側では、錠剤Tが搬送ベルト21aへと供給された後、搬送ベルト21a上の錠剤Tの位置や姿勢を検出する第1の撮像装置23の下を通過する前から吸引力を低下させるようにしても良い。また、印刷ヘッド装置24の下流側では、錠剤Tが印刷ヘッド装置24により印刷された後、搬送ベルト21a上の錠剤Tの位置や姿勢を検出する第2の撮像装置25の下を通過した後まで吸引力を低下させても良い。
これは、第1の撮像装置23によって、これから印刷処理に入る錠剤Tの位置や姿勢を検出することから、あるいは、第2の撮像装置25によって、印刷処理された錠剤Tの印刷パターンの印刷位置(印刷状態)を検出することから、印刷処理中と同じ状態、すなわち、吸引力が低下した状態で吸引されている錠剤Tの位置や姿勢又は錠剤Tの印刷状態を検出する必要があるためである。例えば、錠剤Tの搬送途中で吸引力の変化が起き、この変化が大きいと、錠剤Tがずれたり、揺れたりして、その位置や姿勢が変わってしまうことがある。このような大きな吸引力の変化によって、第1の撮像装置23により錠剤Tの位置や姿勢を検出した後で印刷処理が終わるまでの間に錠剤Tの位置や姿勢が変化してしまうと、適正な印刷がされない場合がある。あるいは、印刷処理が終わり第2の撮像装置25により錠剤Tの印刷状態を検出するまでの間に錠剤Tの位置や姿勢が変化してしまうと、適正な検査がされない場合がある。したがって、第1の撮像装置23で錠剤Tの位置や姿勢等を検出してから印刷処理が終わるまでの間、あるいは、印刷処理が終わり第2の撮像装置25により錠剤Tの印刷状態を検出するまでの間では、吸引力の大きな変化が無いようにし、検出した錠剤Tの位置や姿勢状態が変化しないようにすると良い。さらには、第1の撮像装置23から第2の撮像装置25までの間において、吸引力の大きな変化が無いようにしても良い。このようにすることで、錠剤Tに与えられる吸引力が印刷処理中と同じに低下した状態で、錠剤Tの位置や姿勢又は錠剤Tの印刷状態を検出することができる。
ここで、搬送ベルト21aによって錠剤Tが搬送される領域のうち、低下させた吸引力で錠剤Tが搬送ベルト21aに吸引保持される領域が第1の領域である。したがって、上述した例に基づけば、錠剤Tが搬送ベルト21aへと供給された後、第1の撮像装置23の下を通過する前の所定位置(符号b1の位置)から、錠剤Tが印刷ヘッド装置24の下を通過して第2の撮像装置25の下を通過した後の所定位置(符号b2の位置)までの領域が第1の領域に該当する。つまり、第1の領域は、搬送ベルト21aにおける第1の撮像装置23による錠剤Tの撮像位置から第2の撮像装置25による錠剤Tの撮像位置までの領域を含む。なお、搬送ベルト21aの全周に亘って吸引孔21gに吸引力が付与されているが、第1の領域以外の第2の領域については、印刷の際に飛翔するインクへの影響を考慮する必要がないことから、特に吸引力を低下させなくてもよく、搬送中に発生する遠心力や自重に抗する以上の吸引力とすればよい。
(変形例)
以上の説明においては、吸引チャンバ(チャンバ21f及びプーリ体21b)内を二つの区画B1、B2に分けて二種の吸引力を付与することを前提に説明を行った。ただし、錠剤Tに対して与えられる吸引力は、二種類に限られず、錠剤印刷装置1において行われる各処理ごとに制御されるようにしても良い。したがって、この場合には二種類以上の吸引力が適宜錠剤Tに対して与えられることになる。
例えば、吸引チャンバ内を三つの区画(チャンバ21f内の上側の区画及び下側の区画、プーリ体21b内の区画)に分け、チャンバ21f内の上側の区画には錠剤Tが搬送に伴ってずれたり揺れたりせず、かつ印刷処理に影響を与えない吸引力、下側の区画には錠剤Tが落下しない吸引力、プーリ体21b内の区画、すなわちプーリ体21bで円周方向に錠剤Tが移動する区画には錠剤Tが落下せずさらに遠心力に抗する吸引力をそれぞれ与えるように構成する。これにより、錠剤Tをより適切に搬送ベルト21aに吸引保持することができる。このようなチャンバ21f内の下側の区画やプーリ体21b内の区画では、チャンバ21f内の上側の区画での吸引力よりも格段に大きな吸引力が必要となるが、各処理(錠剤Tの搬送される位置)において最適な吸引力を適切に錠剤Tに与えることができる。なお、換言すれば、搬送ベルト21aにおいて、上記のようにチャンバ21f内の上側の区画に対応する吸引力を弱めた領域が第1の領域であり、その他の下側の区画やプーリ体21b内の区画に対応する領域が第2の領域となる。チャンバ21f内の下側の区画やプーリ体21b内の区画では、それぞれ吸引力を変えることもできるが、チャンバ21f内の上側の区画の吸引力よりも強くする。
上述のように、搬送ベルト21a上の錠剤Tの周囲に吸引による気流が発生するような状態において錠剤Tが搬送ベルト21a上のいかなる場所でも確実に吸引保持される吸引力に対して、印刷処理のときには印刷不良が生じない程度に気流が弱い吸引力となるように吸引力を低下させる。印刷処理は、搬送ベルト21aにおいてプーリ体21bと各従動プーリ21cとの間の上側の領域で行われるので、錠剤Tは搬送ベルト21aに支えられており、上側の領域での吸引力をその他の領域に比べ低下させても搬送には影響しない。
また、供給装置10から搬送装置21、あるいは、搬送装置21から搬送装置31への錠剤の受け渡しにおいて、受け渡された後の錠剤Tは揺動する。このような揺動、すなわち錠剤Tの揺れがあると正確な位置の検出や印刷ができなくなってしまう。そこで、受け渡される側の受け渡される位置近傍の吸引力は大きい方が良い。吸引力が大きい方が錠剤Tの揺動を早く収束させることができる。つまり、搬送装置21のチャンバ21f、あるいは、搬送装置31のチャンバ31fの上側の区画内において、受け渡し処理が行われる部分にさらに区画を設け、その区画の吸引力を錠剤Tの揺れを早く収束させる吸引力とするようにしても良い。
以上のように、必要な部分に必要なだけ区画を設けることができる。すなわち、吸引チャンバを第1の領域や第2の領域に区画化すること、さらに、その領域内を区画化することも可能である。そして、それぞれの区画毎に適宜吸引力を設定することができる。また、それぞれ相異する吸引力の区画のつなぎ目では、吸引力の変化が起きる。このような変化が大きいと、錠剤Tがずれたり、揺れたり、あるいはベルトから脱落したりすることがある。したがって、必要な吸引力とする区画の前後に吸引力の変化を緩やかにするための区画を設けることもできる。こうすることで区画に渡って吸引力の変化のしかたを緩やかにすることが可能となり、錠剤Tのずれ、揺れ、ベルトからの脱落などを抑えることができる。
<第5の実施形態>
次に、第5の実施形態について図11から図13を参照して説明する。なお、第5の実施形態では、第4の実施形態との相違点(吸引力低下部材)について説明し、その他の説明を省略する。
前述の第4の実施形態では、搬送ベルト21aにおける印刷処理を行う第1の領域で錠剤Tに対して与えられる吸引力を、その他の第2の領域で錠剤Tに対して与えられる吸引力よりも低下させるため、吸引チャンバ(チャンバ21f及びプーリ体21b)内を複数の区画に分け、区画ごとに吸引力を変化させる。一方、第5の実施形態においては、吸引チャンバ内を複数の区画に分けることなく、第1の領域における錠剤Tに対する吸引力を第2の領域よりも低下させるため、吸引力低下部材66(図11及び図12参照)を用いる。この吸引力低下部材66が吸引力調整装置として機能する。
なお、吸引チャンバが発生させる吸引力とは、吸引チャンバ内の空気を排出することで、例えば、チャンバ本体61に設けられた吸引溝61b(図12参照)に発生する吸引力であって、空気の排出の速度や量で決定される。吸引溝61bに生じる吸引力が搬送ベルト21aの吸引孔21gを介して錠剤Tに作用して、搬送ベルト21a上に錠剤Tを引き寄せる。この引き寄せる力が錠剤Tに対する吸引力となる。したがって、第5の実施形態では、チャンバ本体61内の空気の排出速度や量は変えずに、吸引力低下部材66により、搬送ベルト21a上の錠剤Tに作用する吸引力を低下させる。
図11に示すように、搬送ベルト21aの第1の領域(符号b1の位置から符号b2の位置までの範囲)には、吸引力低下部材66が設けられている。この吸引力低下部材66は、錠剤Tの搬送経路、すなわち吸引溝61bごとにそれぞれ設けられている。
図12に示すように、吸引力低下部材66は、吸引溝61bの底面に着脱可能に取り付けられている。この吸引力低下部材66は、搬送方向A1に並ぶ各貫通孔61dの開口面積を搬送方向A1に沿って徐々に小さくするように例えば三角形状に形成されている。これにより、第1の領域での錠剤Tに対する吸引力は、搬送方向A1に沿って徐々に減少することになる。
なお、吸引力低下部材66は着脱可能であるため、利用者は必要に応じて搬送方向A1に吸引力低下部材66をずらしたり、あるいは、交換したりして、所望の領域において所望のパターンで吸引力を低下させることが可能である。つまり、吸引力の調整あるいは吸引力を低下させる位置の調整を容易に行うことができ、また、吸引力低下部材66を取り外して洗浄するメンテナンスを容易に行うことができる。
前述のように、搬送ベルト21aの第1の領域に吸引力低下部材66を設けることによって、第1の領域において吸引孔21gの吸引力が弱められ、吸引孔21gから吸引される空気の量や流速が減るため、気流やミストによる印刷不良が発生することを抑えることができる。すなわち、少なくとも印刷ヘッド装置24の下方(搬送ベルト21aにおいて印刷ヘッド装置24の上流側端部の下から下流側端部の下までの領域)を通過する錠剤Tを吸引する吸引力を、搬送ベルト21a上のその他の位置にある錠剤Tを吸引する吸引力よりも低下させることができる。
また、搬送ベルト21aの第1の領域で吸引力を徐々に低下させることによって、急激な吸引力の低下による錠剤Tの位置ずれなどを抑制することができる。例えば、吸引力が急激に変化すると、錠剤Tがずれたり、又は、揺れたり、あるいは、搬送ベルト21上から脱落したりすることがあるが、吸引力の変化を穏やかにすることで、そのような不具合の発生を抑えることができる。
ここで、通常の吸引チャンバ(プーリが吸引チャンバの一部を構成しない)に前述の吸引力低下部材66を適用すると、前述の第4の実施形態で懸念事項として述べた内容と同様、吸引力を低下させた状態で搬送ベルト21aが揺動するため、錠剤Tが十分に保持されずに揺動すると、錠剤Tに対する印刷がぶれて二重になり、印刷不良が発生してしまう可能性がある。
そこで、第5の実施形態によれば、第1の実施形態に係る吸引チャンバ(プーリが吸引チャンバの一部を構成する)に前述の吸引力低下部材66を適用することによって、前述のように気流に起因する印刷品質の低下を抑えつつ、第1の実施形態のように搬送ベルト21aの振動を抑制することが可能となるので、搬送ベルト21aは安定して錠剤Tを搬送することができる。これにより、印刷ヘッド装置24の下の印刷エリアにおいても錠剤Tを十分に吸着保持し、錠剤Tの揺動を抑えることが可能となるので、錠剤Tの揺動に起因する印刷品質の低下を抑えることができる。
図13は、通常のチャンバに吸引力低下部材66を適用した場合と、本実施形態(第5の実施形態)との、モータ負荷率、チャンバ圧力、搬送ベルトの振動、印刷品質を比較したものである。
例えば、図13に示すように、通常の吸引チャンバでは、モータ負荷率が98%であり、チャンバ圧力が-1.9kPaであり、搬送ベルト21aの振動は大きく、ブレ(印刷不良)がある。一方、第5の実施形態に係る吸引チャンバでは、モータ負荷率が37%であり、チャンバ圧力が-1.9kPaであり、搬送ベルト21aの振動は小さく、ブレ(印刷不良)がない。したがって、第5の実施形態に係る吸引チャンバにおいて、チャンバ圧力は通常の吸引チャンバと同じであっても、通常の吸引チャンバに比べ、モータ負荷率は小さくなり、搬送ベルト21aの振動も小さくなり、ブレが無くなっている。このように、どちらの吸引チャンバでも、吸引チャンバ内の圧力は同じに保たれているが、第5の実施形態に係る吸引チャンバによれば、モータ負荷率が大幅に低減され、振動が小さくなり、ブレが抑えられることは明らかである。
なお、吸引力低下部材66は、吸引溝61b内であって搬送ベルト21aと接触することを避けることができる位置であれば、いずれの位置に設けられていても良い。また、吸引溝61b自体で無くても、搬送ベルト21aを介して錠剤Tに作用する吸引力を低下させるよう、通過する空気の量を制限できるのであれば、どこに吸引力低下部材66を設けても良いし、別な部材を設けるようにしても良い。
(変形例)
以上の説明においては、一種類の吸引力低下部材66の説明を行った。この吸引力低下部材66としては、吸引力低下部材66と同じような効果を発生させることのできる他の部材、例えば鍔状部材や板状部材を用いることも可能である。錠剤Tに対してどのような吸引力を与えるかについては、鍔状部材や板状部材の形状や個数など、また、板状部材に形成される開口部の大きさや形状、個数などによって自由に設定することが可能である。
吸引力低下部材66としては、一列に並ぶ複数の貫通孔61dの開口面積を徐々に変化させる形状であれば良く、パンチングボードや網状部材、多孔質部材などを用いることが可能である。この場合には、貫通孔61dの開口面積が搬送方向A1に沿って徐々に減少するように孔の密度を低くする。また、前述のパンチングボードや網状部材を重ねて相対的にずらすことで、パンチングボードに形成された孔の開口のサイズや開口率、また、網の網目のサイズや開口率を変更して、第1の領域を通過する錠剤Tに対して与える吸引力を調整することができる。
なお、前述の吸引力低下部材66を設けず、例えば、貫通孔61dのサイズを小さくして吸引力を低下させるようにしても良く、各種の吸引力調整手段(吸引力調整装置)を用いることが可能である。
<第6の実施形態>
次に、第6の実施形態について図14を参照して説明する。なお、第6の実施形態では、第5の実施形態との相違点(吸引チャンバ)について説明し、その他の説明を省略する。
図14に示すように、第6の実施形態に係るチャンバ21f及びプーリ体21bは、第1の実施形態と同様、吸引チャンバを構成しているが、チャンバ21fの内部空間とプーリ体21bの内部空間は接続されていない。つまり、チャンバ21fにおけるプーリ体21b側の開口は閉じられており、プーリ体21bにおけるスリット状の貫通孔70aの開口も閉じられており、チャンバ21fの内部空間とプーリ体21bの内部空間は連通していない。
プーリ体21bは回転軸21hに連結されており、この回転軸21はプーリ体21bの内部空間を通っている。回転軸21hは中空に形成されており、この回転軸21hの外周には、円周方向に並ぶ複数の貫通孔(図示せず)が形成されている。これらの貫通孔によって、回転軸21hの内部空間とプーリ体21bの内部空間は連通している。回転軸21hは、ロータリージョイントなどの連結部材を介して吸引管(いずれも図示せず)に接続されており、この吸引管はポンプなどの吸気装置(図示せず)に接続されている。
このような構成において、チャンバ本体61内の空気は吸引管62を介して吸引される。これにより、搬送ベルト21aにおけるチャンバ本体61の外周に位置する各吸引孔21g上の錠剤Tに吸引力が作用する。一方、プーリ体21b内の空気は、回転軸21h及び吸引管を介して吸引され、回転軸21hの内部及び吸引管の内部を流れていく。これにより、搬送ベルト21aにおけるプーリ体21bの外周に位置する各吸引孔21g上の錠剤Tに吸引力が作用する。このプーリ体21bは、搬送ベルト21aと共に回転する。
このような構成においても、前述の第4および第5の実施形態と同様、気流に起因する印刷品質の低下を抑えつつ、搬送ベルト21aの振動を抑制することが可能となるので、搬送ベルト21aは安定して錠剤Tを搬送することができる。これにより、印刷ヘッド装置24の下の印刷エリアにおいても錠剤Tを十分に吸着保持し、錠剤Tの揺動を抑えることが可能となるので、錠剤Tの揺動に起因する印刷品質の低下を抑えることができる。
<第7の実施形態>
次に、第7の実施形態について図15から図21を参照して説明する。なお、第7の実施形態では、第1の実施形態との相違点(カバー、気体吹き付け部及び気体吸引部)について説明し、その他の説明を省略する。
図15及び図16に示すように、第7の実施形態では、カバー100、二つの気体吹き付け部200及び二つの気体吸引部300が設けられている。各気体吹き付け部200及び各気体吸引部300が付着物除去機構として機能する。この付着物除去機構は、搬送ベルト21a上の錠剤Tまたはカバー100の下面に付着した付着物(例えば、粉やゴミ)に対して気体(例えば、空気や不活性ガス)を吹き付け、錠剤Tまたはカバー100の下面から付着物を吹き飛ばし、吹き飛ばした付着物を空気と共に吸引することによって、錠剤Tまたはカバー100の下面から付着物を除去する。また、錠剤Tが搬送ベルト21aによって搬送されることによって錠剤Tの粉が装置内に舞うことがあるが、このように装置内を舞っている粉、特にカバー100近傍を舞う粉についても、気体吹き付け部200及び気体吸引部300によって除去する。
カバー100は、図15に示すように、気体吹き付け部200、検出装置22、第1の撮像装置23、印刷ヘッド装置24及び第2の撮像装置25を収容する筐体である。このカバー100は、その下面が搬送ベルト21aの上面から所定距離(例えば、4~5mm)だけ離されて搬送ベルト21aの上方に設けられている。
カバー100の下面には、カバー100内の各気体吹き付け部200が搬送ベルト21aの上面に対して気体を吹き付けることが可能になるよう、複数の貫通孔100aが形成されている。これらの貫通孔100aは、例えば、気体吹き付け部200ごとに錠剤Tの搬送方向A1に一列に並ぶように形成されている。気体吹き付け部200から吹き出された気体は、カバー100の下面を貫通する各貫通孔100aを通過し、搬送ベルト21a上に吹き付けられることになる。例えば、貫通孔100aの直径は数mm(一例として2mm程度)である。
また、カバー100の下面には、カバー100内の検出装置22(二つの検出部22a)が搬送ベルト21a上の錠剤Tを検出することが可能になるよう、貫通孔100bが錠剤Tの搬送方向A1に水平面内で直交する方向に二つ並べられて形成されており、カバー100内の第1の撮像装置23(二つの撮像部23a)が搬送ベルト21a上の錠剤Tを撮像することが可能になるよう、貫通孔100cが前述の貫通孔100bが並ぶ方向と同じ方向に二つ並べられて形成されている。さらに、カバー100の下面には、カバー100内の印刷ヘッド装置24が搬送ベルト21a上の錠剤Tに印刷を行うことが可能になるよう、貫通孔100dが一つ形成されており、カバー100内の第2の撮像装置25(二つの撮像部25a)が搬送ベルト21a上の錠剤Tを撮像することが可能になるよう、貫通孔100eが前述の貫通孔100bが並ぶ方向と同じ方向に二つ並べられて形成されている。
各貫通孔100aは、カバー100の内部の底面に設けられた各気体吹き付け部200によって覆われており、各貫通孔100b、100c、100eは、カバー100の内部の底面に設けられたガラスなどの透光部材101、102によって塞がれている。また、貫通孔100dは、印刷ヘッド装置24がシリコンなどの密閉部材103を介して貫通孔100dに挿入されて塞がれている。このようにして、カバー100は密閉状態に形成されており、そのカバー100の内部は陽圧(正圧)に維持されている。
各気体吹き付け部200は、カバー100の下面の各貫通孔100aにつながっており、それらの貫通孔100aから気体を吹き出し、搬送ベルト21a上に気体を吹き付ける。これにより、搬送ベルト21a上の錠剤Tが気体吹き付け部200の下方を通過する際、気体が搬送ベルト21a上の錠剤Tに吹き付けられ、その錠剤Tに付着した付着物は錠剤Tから吹き飛ばされる。なお、各気体吹き付け部200は、気体供給部に流量調整弁(いずれも図示せず)を介して接続されており、その気体供給部から各気体吹き付け部200に気体が供給される。
ここで、カバー100の下面には、誘導板104が気体吹き付け部200の下方における錠剤Tの搬送方向A1の下流側に位置付けられ、気体吹き付け部200ごとに設けられている。これらの誘導板104は、長方形状に形成されており、その長手方向が、錠剤Tの搬送方向A1に水平面内で直交する方向に平行にされ、印刷ヘッド装置24側に倒されて傾斜している。各誘導板104は、気体吹き付け部200から各貫通孔100aを介して吹き出された気体の一部を錠剤Tの搬送方向A1の下流側に向けて流し、カバー100の下面に沿って錠剤Tの搬送方向A1に流れる気流を生じさせる。これにより、カバー100の下面に付着した付着物に気体が吹き付けられ、カバー100の下面から付着物が吹き飛ばされる。なお、誘導板104は、二列に並ぶ気体吹き付け部200に対して一枚ずつ設けられているが、これに限るものではなく、共用部材として一枚だけ設けられていても良い。
さらに、カバー100の下面には、遮断板105が第1の撮像装置23と印刷ヘッド装置24との間に(少なくとも錠剤Tの搬送方向A1における印刷ヘッド装置24より上流側)に位置付けられ、気体吹き付け部200ごとに対応して設けられている。これらの遮断板105は、長方形状に形成されており、その長手方向が、錠剤Tの搬送方向A1に水平面内で直交する方向に平行にされ、カバー100の下面に対して垂直に設けられている。なお、遮断板105は、その長手方向長さが印刷ヘッド装置24のノズル24bが形成されている領域を覆うことが可能な長さであり、かつ、その下方を搬送される錠剤Tに接触しないような高さ位置に設けられている。このような各遮断板105は、誘導板104により誘導されてカバー100の下面に沿って流れてきた気体を遮る。これにより、カバー100の下面に沿って流れる気流が印刷ヘッド装置24の印刷に悪影響を及ぼすことが抑えられる。
なお、遮断板105は、二列に並ぶ気体吹き付け部200に対して一枚ずつ設けられているが、これに限るものではなく、共用部材として一枚だけ設けられていても良い。また、遮断板105は印刷ヘッド装置24に設けられていても良い。印刷ヘッド装置24自体に取り付けられていることで、印刷対象の錠剤Tの品種を変更して錠剤Tの厚みが変わる際、印刷ヘッド装置24の高さ位置を調整すると同時に遮断板105の高さ位置も自動的に調整することができる。したがって、錠剤Tの厚みに合わせて遮断板105の高さ位置のみを調整する必要がなく、効率的である。
各気体吸引部300は、搬送ベルト21aの側面に隣接して搬送ベルト21aを挟むように位置付けられ、チャンバ本体61に取り付けられている。これらの気体吸引部300は、吸気口301、排気口302及び内部流路303(図16参照)をそれぞれ有している。
吸気口301及び排気口302は、錠剤Tの搬送方向A1に延びる長方形状(スリット状)に形成されている。吸気口301は、搬送ベルト21aの上面とカバー100の下面との間の空間から空気を吸い込むための開口であり、気体吸引部300における搬送ベルト21a側に位置付けられ、搬送ベルト21aの上面より高い位置に設けられている。この吸気口301の開口は、遮断板105より搬送方向A1において上流側に終端が位置するように設けられている。これによって気体吹き付け部200からの気体が印刷ヘッド装置24にまで流れないようになっており、印刷ヘッド装置24のノズル24bが乾燥して吐出不良が起こることを防いだり、ノズル24bから吐出された液体が気流の影響を受けて吐出方向が狂ったりすることを防いでいる。排気口302は、気体吸引部300における搬送ベルト21a側に位置付けられ、搬送ベルト21aより低い位置に設けられており、チャンバ本体61の内部に接続されている。内部流路303は、気体吸引部300の内部に形成されており、吸気口301及び排気口302をつなぐ流路である。
ここで、錠剤Tの搬送のため、チャンバ本体61の内部が吸引されると、各気体吸引部300において、排気口302から空気が吸引される。そして、排気口302につながる内部流路303を介して吸気口301から、搬送ベルト21aの上面とカバー100の下面との間の空間の空気が吸引される。これにより、気体吹き付け部200により吹き付けられた気体によって吹き飛ばされた付着物は、吸気口301から空気と共に吸引されることになる。
なお、吸気口301の高さ方向の長さを変化させることで、気体吸引部300の吸引力を調整することが可能である。ただし、吸気口301の高さ方向の長さは、錠剤Tの高さよりも短いことが望ましい。通常、吸気口301から空気を吸引する吸引力は、錠剤Tが吸気口301から吸い込まれるような吸引力に設定されていないが、吸引力の調整が不十分である場合や錠剤Tの種類(錠剤Tのサイズが異なる)が変更された場合など、錠剤Tが吸気口301から吸い込まれる懸念がある。このため、吸気口301の高さ方向の長さを錠剤Tの高さよりも短くすることで、錠剤Tが吸気口301から吸い込まれることを抑制することができる。なお、吸気口301の延伸方向の長さは、搬送ベルト21a上の錠剤Tに付着した付着物を取り除くために必要とされる吸引範囲に基づき、適宜設定されている。
また、気体吹き付け部200からの気体や、吸気口301から空気が吸引される吸引力によって、錠剤Tの位置(X方向、Y方向及びθ方向における錠剤Tの位置、錠剤Tの傾きなどの姿勢を含む)が搬送ベルト21a上で変わってしまったり、搬送ベルト21aから落下したりすることなどがないよう、気体吹き付け部200からの気体の量や吸気口301からの空気の吸引力の設定が行われる。
また、気体吹き付け部200からの気体の吹き付けおよび気体吸引部300からの空気の吸引は、錠剤印刷装置1の運転中、常に行われる。たとえ錠剤Tが一定時間、気体吹き付け部200や検出装置22、第1の撮像装置23、印刷ヘッド装置24に到来しなくても、気体吹き付け部200からの気体の吹き付けおよび気体吸引部300からの空気の吸引を行うことで、搬送ベルト21a上に付着している粉を除去したり、搬送ベルト21aに粉が付着したりすることを防止することができる。搬送ベルト21a上に錠剤Tの粉が付着していると、第1の撮像装置23にてその粉が撮像されてしまい、錠剤Tが存在しないにも拘わらず誤検知が起きて搬送ベルト21aに印刷が行われてしまうことがあるが、常に気体吹き付け部200からの気体の吹き付けおよび気体吸引部300からの空気の吸引を行うことで、このような誤検知を防ぐことができる。
さらに、搬送ベルト21a上に粉が付着した状態で新たに錠剤Tが供給されると、錠剤Tが搬送ベルト21a上で滑ってしまい、搬送ベルト21aから落下したり、搬送ベルト21a上で姿勢が変わったりしてしまう。錠剤印刷装置1の運転中常に付着物除去機構によって気体の吹き付けおよび吸引が行われることで、錠剤Tの搬送を再開した際の、錠剤Tの搬送ベルト21a上での滑りも防止することができる。
前述のような構成において、錠剤Tの印刷時、各気体吹き付け部200によって気体が各貫通孔100aから搬送ベルト21a上に吹き出されている。さらに、チャンバ本体61内の空気は吸引されており、それに応じて、搬送ベルト21aの上面とカバー100の下面との間の空間の空気が各気体吸引部300の個々の吸気口301から吸引されている。この状態で、搬送ベルト21aにより搬送されている錠剤Tは、気体吹き付け部200の下方を通過するとき、気体吹き付け部200によって気体が吹き付けられる。このとき、錠剤Tに付着物が付着している場合、その付着物は錠剤Tから吹き飛ばされ、その吹き飛ばされた付着物が空気と共に気体吸引部300によって吸引される。このようにして、錠剤Tに付着した付着物が取り除かれるので、付着物が付着した状態の錠剤Tに対して印刷を行うことを抑制することが可能となり、印刷品質の低下を抑えることができる。
また、気体が気体吹き付け部200によって搬送ベルト21a上に吹き付けられているが、その一部は誘導板104によりカバー100の下面に沿って錠剤Tの搬送方向A1に流れるように誘導されている。これにより、カバー100の下面に付着した付着物に対して気体が吹き付けられ、カバー100の下面から付着物が吹き飛ばされる。吹き飛ばされた付着物は、空気と共に気体吸引部300によって吸引される。このようにして、カバー100の下面、すなわちガラス101に付着した付着物が取り除かれるので、検出異常や認識異常を抑制することが可能となり、印刷品質の低下を抑えることができる。さらに、カバー100近傍を舞う錠剤Tの粉も吸引して除去することができるため、錠剤Tやカバー100の下面、搬送ベルト21aなどに、錠剤Tの粉が付着することを抑制することができる。なお、誘導板104の長手方向長さ、搬送方向A1に沿う長さ、および傾斜角度は、ガラス101に付着した付着物を吹き飛ばすことが可能な長さおよび角度に設定されており、かつ、その下方を搬送される錠剤Tに触れることのないように設けられている。また、誘導板104は、ガラス101に付着した付着物を吹き飛ばすことが可能であれば、平板に限らず、湾曲形状を有する板であっても良い。
また、前述のように気体の一部は、誘導板104によりカバー100の下面に沿って流れるが、そのカバー100の下面に沿って錠剤Tの搬送方向A1に流れてきた気体は遮断板105により遮られ、遮られた気体は気体吸引部300の吸気口301から吸引される。このとき、カバー100の下面から吹き飛ばされた付着物も気体と共に吸気口301から吸引される。これにより、カバー100の下面に沿って流れる気流やカバー100の下面から吹き飛ばされた付着物が印刷ヘッド装置24の印刷に悪影響を及ぼすことが抑えられるので、印刷品質の低下を抑えることができる。
なお、前述の搬送ベルト21aは、錠剤Tの搬送時、チャンバ本体61の上下面と擦れているため、振動してしまうことがある。このとき、搬送ベルト21aが揺れて搬送ベルト21aに付着した付着物(例えば、粉やゴミ)が舞い上がろうとしても、その舞い上がりは気体吹き付け部200から吹き付けられる気体によって抑えられ、さらに、付着物が舞い上がったとしても、舞い上がった付着物は気体吸引部300によって吸引される。これにより、搬送ベルト21aに付着した付着物が搬送ベルト21a上の錠剤Tに付着することが抑えられるので、印刷品質の低下を抑えることができる。
また、第7の実施形態を他の実施形態、例えば、前述の第4および第5の実施形態に適用することも可能である。これらの場合には、吸引チャンバ21fの一部(第1の領域)の吸引力低下により、その吸引力低下部分において搬送ベルト21aが振動してしまうことがある。このとき、搬送ベルト21aが揺れて搬送ベルト21aに付着した付着物が舞い上がろうとしても、その舞い上がりは気体吹き付け部200から吹き付けられる気体によって抑えられ、さらに、付着物が舞い上がったとしても、舞い上がった付着部は気体吸引部300によって吸引される。これにより、搬送ベルト21aに付着した付着物が搬送ベルト21a上の錠剤Tに付着することが抑えられるので、印刷品質の低下を抑えることができる。
(気体吸引部の変形例1及び変形例2)
以上の説明においては、気体吸引部300の吸気口301を錠剤Tの搬送方向A1に延びる長方形状に形成することを例示したが、これに限るものではなく、例えば、図17に示すように、錠剤Tの搬送方向A1に沿って徐々に狭くなる三角形状に形成したり(変形例1)、あるいは、図18に示すように、延伸長さが異なる複数の長方形状の吸気口301を、個々の左端を揃えて高さ方向に並べたりするようにしても良い(変形例2)。これらの場合には、気体吸引部300において吸引力は錠剤Tの搬送方向A1に沿って、すなわち印刷ヘッド装置24側(図17及び図18中の右側)に向かうにつれて徐々に弱くなるため、気体吸引部300の吸引により生じる気流が印刷ヘッド装置24の印刷に悪影響を及ぼすことが抑えられるので、印刷品質の低下をより確実に抑えることができる。なお、気体吸引部300の搬送方向A1下流側の吸気口301付近においては、気体吹き付け部200からの気体が直接的には供給されず、誘導板104を介して供給されるだけであるから、吸気口301から吸い込む空気の量が減っても問題はない。
ここで、図17では、三角形状の吸気口301は上側が傾斜しているが、逆に下側が傾斜しても良く、あるいは、両方が傾斜していても良い。また、図18では、各吸気口301は、上から延伸長さが短い順に並んでいるが、逆に下から延伸長さが短い順に並んでいても良く、あるいは、延伸長さに関係なく並んでいても良い。また、円形状や楕円形状の吸気口301を錠剤Tの搬送方向A1に沿って一列や複数列に並べて用いることも可能である。
(気体吸引部の変形例3)
以上の説明においては、気体吸引部300の吸気口301の高さ方向の長さを変化させることで、気体吸引部300の吸引力を調整することが可能であることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、図19に示すように、気体吸引部300の内部流路303内に吸引力調整部材304を設けるようにしても良い。この吸引力調整部材304は、図20に示すように、錠剤Tの搬送方向A1に延びる長方形状(スリット状)の貫通孔304aを有しており、内部流路303を塞ぐようにその内部に設けられ、その内部流路303を通過する気体の流量を変えて吸引力を調整する。貫通孔304aのスリット幅(貫通孔304aにおける錠剤Tの搬送方向A1に水平面内で直交する方向の幅)が異なる数種の吸引力調整部材304を用意し、それらの吸引力調整部材304から、必要とする吸引力に応じて一つの吸引力調整部材304を選択して用いることで、気体供給部300の吸引力を容易に調整することができる。
なお、図19では、吸引力調整部材304の貫通孔304aを錠剤Tの搬送方向A1に延びる長方形状に形成しているが、これに限るものではなく、円形状や楕円形状、三角形状など各種の形状に形成しても良い。また、貫通孔304aの数も限定されるものではなく、複数でも良い。例えば、円形状や楕円形状などの複数の貫通孔304aを錠剤Tの搬送方向A1に一列に並ぶように形成しても良く、複数列(例えば、二列や三列)に並ぶように形成しても良く、また、不規則(ランダム)に形成しても良い。
また、貫通孔304aを形成する吸引力調整部材304が着脱可能であり、印刷対象である錠剤Tの品種を変更する際に交換できるようにしても良い。このようにすることで、印刷対象が変更になっても容易に吸引力を調整することができる。なお、この吸引力調整部材304は、気体吸引部300内であればどこに取り付けられていても良く、吸気口301に取り付けられていても良いし、排気口302に取り付けられていても良い。
(カバーの変形例)
また、以上の説明においては、カバー100の各貫通孔100aが錠剤Tの搬送方向A1に沿って一列に並ぶように形成されていることを例示したが、これに限るものではなく、二列以上に並んでいても良く、あるいは、列状でなくランダムに形成されていても良い。また、図21(カバー100の下面を示す平面図)に示すように、貫通孔100aがスリット状に形成されていても良い。
また、以上の説明においては、検査装置22、第1の撮像装置23、印刷ヘッド装置24及び第2の撮像装置25をカバー100内に収容することを例示したが、これに限るものではない。カバー100を備えていることで、検査装置22、第1の撮像装置23、印刷ヘッド装置24及び撮像装置25自体に粉が付着することがなく、カバー100だけを取り外して洗浄することができるため、錠剤Tの品種を切り替える際には効率的である。しかし、付着物除去機構が十分に機能するのであれば、カバー100が備えられていなくても良い。このときには、誘導板104は気体吹き付け部200自体に取り付けられる。このようにカバー100をなくすことによって、検査装置22、第1の撮像装置23、印刷ヘッド装置24及び第2の撮像装置25の高さ位置をそれぞれ自由に変更することが可能となる。
<他の実施形態>
前述の各実施形態においては、プーリ体21b、80、90側が駆動源を有することを例示したが、これに限るものではなく、プーリ体21b、80、90側が従動であっても良い。
また、前述の各実施形態においては、第1の回転体および第2の回転体はタイミングプーリであることを例示したが、これに限るものではなく、スプロケット等を採用しても良い。
また、前述の各実施形態においては、錠剤Tを二列で搬送することを例示したが、これに限るものではなく、その列数は一列や三列又は四列以上であっても良く、特に限定されるものではない。
また、前述の各実施形態においては、搬送ベルト21aを一本だけ設けることを例示したが、これに限るものではなく、二本以上設けるようにしても良く、その数は特に限定されるものではない。例えば、複数本の搬送ベルト21aを並列に並べることが可能である。
また、前述の各実施形態においては、搬送ベルト21aの吸引孔21gとして円形の吸引孔を用いることを例示したが、これに限るものではなく、長方形や楕円形、スリット状などの吸引孔を用いることが可能であり、搬送ベルト21aの吸引孔21gの形状は特に限定されるものではない。
また、前述の各実施形態においては、錠剤Tの搬送経路ごとに印刷ヘッド24aを設けることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、一つの印刷ヘッド24aによって二列以上の錠剤Tに印刷を行うようにしても良い。
また、前述の各実施形態においては、インクジェット方式の印刷ヘッド24aとして、ノズル24bが一列に並ぶ印刷ヘッドを例示したが、これに限るものではなく、例えば、ノズル24bが複数列に並ぶ印刷ヘッドを用いるようにしても良い。また、錠剤Tの搬送方向A1に沿って印刷ヘッド24aを複数並べて用いるようにしても良い。また、印刷方式は、インクジェット方式に限るものではなく、レーザマーキング方式や、転写式のドラム方式でも良い。
また、前述の各実施形態においては、第1の印刷装置20及び第2の印刷装置30を上下に重ねて配置して、錠剤Tの両面又は片面を印刷することを例示したが、これに限るものではなく、例えば、第1の印刷装置だけを設け、錠剤Tの片面だけを印刷するようにしても良い。
また、前述の各実施形態においては、気体吹出部42aが良品回収部42に備えられていることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、搬送装置21における、第2の搬送装置31側の端部や、受け渡しフィーダ13から搬送装置21に錠剤Tを受け渡す箇所に備えられるようにしても良い。つまり、搬送ベルト21aから錠剤Tを離脱させたい箇所において、気体吹出部42aを用いれば良い。
また、前述の各実施形態においては、気体吹出部42aが気体を処理中常に吹き出すことを例示したが、これに限るものではなく、間欠的に吹き出すようにしても良い。
ここで、前述の錠剤としては、医薬用、飲食用、洗浄用、工業用あるいは芳香用として使用される錠剤を含めることができる。また、錠剤としては、裸錠(素錠)や糖衣錠、フィルムコーティング錠、腸溶錠、ゼラチン被包錠、多層錠、有核錠などがあり、硬カプセルや軟カプセルなど各種のカプセル錠も錠剤に含めることができる。さらに、錠剤の形状としては、円盤形やレンズ形、三角形、楕円形など各種の形状がある。また、印刷対象の錠剤が医薬用や飲食用である場合には、使用するインクとして可食性インクが好適である。この可食性インクとしては、合成色素インク、天然色素インク、染料インク、顔料インクのいずれを使用しても良い。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。