<第1の実施形態>
第1の実施形態について図1から図5を参照して説明する。なお、本明細書において「上」、「下」とは、鉛直方向における上、下を指す。また、本明細書において、搬送ベルト13aの「下面」は図1中の符号aとbの間、搬送ベルト21aの「上面」は符号cとdの間、「湾曲面」は符号dとeの間、「下面」は符号eとfの間の錠剤Tの搬送面を指す。搬送ベルト31aの「上面」は、図1中の符号gとhの間、「湾曲面」は符号hとiの間、「下面」は符号iとjの間の錠剤Tの搬送面を指す。
(基本構成)
図1に示すように、第1の実施形態に係る錠剤印刷装置1は、供給装置10と、第1の印刷装置20と、第2の印刷装置30と、回収装置40と、制御装置50とを備えている。なお、第1の印刷装置20及び第2の印刷装置30は基本的に同じ構造である。
供給装置10は、ホッパ11、整列搬送装置(整列フィーダ)12及び中継搬送装置(受け渡しフィーダ)13を有している。この供給装置10は、印刷対象となる錠剤Tを第1の印刷装置20に供給することが可能に構成されており、第1の印刷装置20の一端側、すなわち錠剤Tの搬送方向A1(以下、単に搬送方向A1という)における上流側に位置付けられている。ホッパ11は、多数の錠剤Tを収容し、整列搬送装置12に錠剤Tを順次供給する。整列搬送装置12は、供給された錠剤Tを二列に整列し、中継搬送装置13に向けて搬送する。中継搬送装置13は、整列搬送装置12上に二列に並ぶ各錠剤Tを順次錠剤Tの上側から吸引して保持し、保持した各錠剤Tを第1の印刷装置20まで二列で搬送して第1の印刷装置20に渡す。錠剤Tは中継搬送装置13によって上から吸引保持されているとき、重力に逆らう状態で保持されている。このため、中継搬送装置13の吸引力は、錠剤Tの搬送中に錠剤Tを落下させない吸引力に設定されており、錠剤Tの下側から錠剤Tを支持して吸引保持するタイプの搬送装置に比べ強く設定されている。このような供給装置10は制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。なお、整列搬送装置12及び中継搬送装置13としては、例えば、ベルト搬送機構を用いることが可能である。
中継搬送装置13は、搬送ベルト13a、駆動プーリ(プーリ体)13b、従動プーリ(プーリ体)13c、モータ(駆動部)13d及び吸引チャンバ(吸引部)13eを有している。搬送ベルト13aは、気体が通過する性質、すなわち気体通過性を有する無端状のベルトであり、駆動プーリ13b及び従動プーリ13cに架け渡されている。駆動プーリ13b及び従動プーリ13cは装置本体に回転可能に設けられており、駆動プーリ13bはモータ13dに連結されている。モータ13dは制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。この中継搬送装置13は、モータ13dによる駆動プーリ13bの回転によって従動プーリ13cと共に搬送ベルト13aを回転させ、吸引チャンバ13eの吸引作用によって整列搬送装置12からの錠剤Tを搬送ベルト13aの下側で吸引保持し、その吸引保持した錠剤Tを図1中の矢印A1の方向(搬送方向A1)に搬送し、吸引チャンバ13eの吸引作用が働かなくなる位置で第1の印刷装置20に引き渡す。
搬送ベルト13aの表面には、図2に示すように、矩形状の吸引孔13fが複数形成されている。これらの吸引孔13fは、それぞれ錠剤Tを吸着する貫通孔であり、二本の搬送路(搬送経路)を形成するように搬送方向A1に沿って平行に二列にそれぞれラダー状に並べられている。各吸引孔13fは、吸引チャンバ13eに形成された吸引路(吸引経路)を介して吸引チャンバ13e内に接続されており、その吸引チャンバ13eにより吸引力を得ることが可能になっている。吸引チャンバ13eには、ポンプなどの吸気装置が吸気管(いずれも図示せず)を介して接続されており、吸気装置の作動によって吸引チャンバ13eの内部は減圧される。なお、吸気管は、吸引チャンバ13eの側面(搬送方向A1と平行な面)の略中央に接続されている。吸気装置は制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。
前述の中継搬送装置13の下面には、図1及び図2に示すように、気体通過性を有する整流板14が設けられている。この整流板14は、中継搬送装置13により錠剤Tが搬送される搬送路、すなわち中継搬送装置13の下側の搬送面(搬送ベルト13aの下面)から所定距離だけ離間し、その搬送面に対向するように水平に配置されている。所定距離は、錠剤Tの厚さ(例えば、2~4mm)より長く、中継搬送装置13の吸引チャンバ13eによる吸引により生じる気流を整えることが可能な範囲(例えば、5~12mm)内の距離である。整流板14は、吸引チャンバ13eによる吸引によって生じる気流が通過する位置に設けられており、搬送ベルト13aの下面の下方やその周囲に生じる気流を整える。この整流板14は、中継搬送装置13において錠剤Tが上から吸引されて搬送される搬送路に対向するように設けられており、搬送ベルト13aの下面から落下した錠剤Tを受ける受け皿としても機能する。すなわち、整流板14は、落下した錠剤Tを受ける受け面M1を有する。なお、整流板14の幅方向(搬送方向A1に水平に直交する方向)の長さは、搬送ベルト13aの幅方向(搬送方向A1に水平に直交する方向)の長さ以上である。また、整流板14の搬送方向A1の長さは、中継搬送装置13の搬送方向A1の長さより短いが、これに限るものではない。
気体通過性を有する整流板14としては、網状の板材が用いられているが、これに限るものではなく、例えば、複数の丸孔を有するパンチングボード、複数のスリット孔を有するボードなど、複数の貫通孔を有する各種の板材を用いることが可能である。また、整流板14の材料としては、SUS(ステンレス鋼)などの金属を用いることが可能であるが、これに限るものではなく、食品衛生法適合品であれば良く、SUS以外の材料、例えば、アルミや樹脂を用いることも可能である。
ここで、搬送ベルト13aの下面の吸引孔13fが錠剤Tによって完全に塞がれない場合には、吸引チャンバ13eによる吸引によって、搬送ベルト13aの下面の吸引孔13fから空気が吸引されるため、搬送ベルト13aの下面の下方やその周囲に、吸引孔13fに向かって流れる気流が発生するが、その気流は整流板14における貫通孔を通過することにより整えられ、また、整流板14における貫通孔以外の部分に一部の気流が遮蔽されることにより弱められる。これにより、乱気流の発生が抑制されるので、搬送ベルト13aの下面に保持されている錠剤Tの姿勢が所望姿勢(例えば、水平姿勢)から変わることを抑えることができる。
図1に戻り、第1の印刷装置20は、搬送装置(錠剤搬送装置)21と、検出装置22と、第1の撮像装置(印刷用の撮像装置)23と、印刷ヘッド装置24と、第2の撮像装置(検査用の撮像装置)25と、乾燥装置26とを備えている。
搬送装置21は、搬送ベルト21a、駆動プーリ(プーリ体)21b、複数(図1の例では、三つ)の従動プーリ(プーリ体)21c、モータ(駆動部)21d、位置検出器21e及び吸引チャンバ(吸引部)21fを有している。搬送ベルト21aは、気体通過性を有する無端状のベルトであり、駆動プーリ21b及び各従動プーリ21cに架け渡されている。駆動プーリ21b及び各従動プーリ21cは装置本体に回転可能に設けられており、駆動プーリ21bはモータ21dに連結されている。モータ21dは制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。位置検出器21eは、エンコーダなどの機器であり、モータ21dに取り付けられている。この位置検出器21eは電気的に制御装置50に接続されており、検出信号を制御装置50に送信する。制御装置50は、その検出信号に基づいて搬送ベルト21aの位置や速度、移動量などの情報を得ることができる。この搬送装置21は、モータ21dによる駆動プーリ21bの回転によって各従動プーリ21cと共に搬送ベルト21aを回転させ、その搬送ベルト21a上の錠剤Tを図1中の矢印A1の方向(搬送方向A1)に搬送する。
搬送ベルト21aの表面には、図3及び図4に示すように、円形状の吸引孔21gが複数形成されている。これらの吸引孔21gは、それぞれ錠剤Tを吸着する貫通孔であり、二本の搬送路を形成するように搬送方向A1に沿って平行に二列に並べられている。各吸引孔21gは、吸引チャンバ21fに形成された吸引路を介して吸引チャンバ21f内に接続されており、その吸引チャンバ21fにより吸引力を得ることが可能になっている。吸引チャンバ21fには、ポンプなどの吸気装置が吸気管(いずれも図示せず)を介して接続されており、吸気装置の作動によって吸引チャンバ21fの内部は減圧される。なお、吸気管は、吸引チャンバ21fの側面(搬送方向A1と平行な面)の略中央に接続されている。また、吸気装置は制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。
検出装置22は、図4に示すように、複数の検出部22a(図4の例では、二つ)を有している。検出部22aは、供給装置10によって搬送ベルト21aにおける錠剤Tが供給される位置よりも、搬送方向A1の下流側であって搬送方向A1に水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に錠剤Tの搬送路ごとに一つずつ並べられ、搬送ベルト21aの上面の上方に設けられている。検出部22aは、レーザ光の投受光によって搬送ベルト21a上の錠剤Tの位置(搬送方向A1の位置)を検出し、下流に位置する各装置のトリガーセンサとして機能する。検出部22aとしては、反射型レーザセンサなど各種のレーザセンサを用いることが可能である。各検出部22aは制御装置50に電気的に接続されており、制御装置50に検出信号を送信する。
第1の撮像装置23は、複数の撮像部23a(図4の例では、二つ)を有している。撮像部23aは、検出装置22が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側であって搬送方向A1に水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に錠剤Tの搬送路ごとに一つずつ並べられ、搬送ベルト21aの上面の上方に設けられている。この撮像部23aは、前述の錠剤Tの位置情報に基づき、錠剤Tが撮像部23aの直下に到達したタイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む画像(印刷用の画像)を取得し、取得した画像を制御装置50に送信する。撮像部23aとしては、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの撮像素子を有する各種のカメラを用いることが可能である。各撮像部23aは制御装置50に電気的に接続されており、それらの駆動が制御装置50により制御される。なお、必要に応じて撮像用の照明も設けられている。
印刷ヘッド装置24は、インクジェット方式の複数の印刷ヘッド24a(図4の例では、二つ)を有している。印刷ヘッド24aは、第1の撮像装置23が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側であって搬送方向A1に水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に錠剤Tの搬送路ごとに一つずつ並べられ、搬送ベルト21aの上面の上方に設けられている。印刷ヘッド24aは、複数のノズル24b(図4参照:ただし、図示では四つだけ表示)を具備し、それらのノズル24bから個別にインクを吐出する。この印刷ヘッド24aは、ノズル24bが並ぶ整列方向が水平面内で搬送方向A1と交差するように(例えば直交するように)設けられている。印刷ヘッド24aとしては、圧電素子、発熱素子または磁歪素子などの駆動素子を有する各種のインクジェット方式の印刷ヘッドを用いることが可能である。各印刷ヘッド24aは制御装置50に電気的に接続されており、それらの駆動が制御装置50により制御される。
第2の撮像装置25は、複数の撮像部25a(図4の例では、二つ)を有している。撮像部25aは、印刷ヘッド装置24が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側であって搬送方向A1に水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に錠剤Tの搬送路ごとに一つずつ並べられ、搬送ベルト21aの上面の上方に設けられている。この撮像部25aは、前述の錠剤Tの位置情報に基づき、錠剤Tが撮像部25aの直下に到達したタイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む画像(検査用の画像)を取得し、取得した画像を制御装置50に送信する。撮像部25aとしては、前述の撮像部23aと同様、CCDやCMOSなどの撮像素子を有する各種のカメラを用いることが可能である。各撮像部25aは制御装置50に電気的に接続されており、それらの駆動が制御装置50により制御される。なお、必要に応じて撮像用の照明も設けられている。
前述の各装置22~25は、図3から図5に示すように、カバー60により覆われている。このカバー60は、検出装置22(二つの検出部22a)、第1の撮像装置23(二つの撮像部23a)、印刷ヘッド装置24(二つの印刷ヘッド24a)及び第2の撮像装置25(二つの撮像部25a)を収納する筐体である。このカバー60は、その下面が搬送ベルト21aにより搬送される錠剤Tに当接しないよう、錠剤Tの厚さ(例えば、2~4mm)に合わせて、搬送ベルト21aの上面から所定距離(例えば、5~12mm)だけ離されて搬送ベルト21aの上面の上方に設けられている。
カバー60の下面には、図5に示すように、カバー60内の各検出部22aが搬送ベルト21a上の錠剤Tをそれぞれ検出することが可能になるよう、二つの貫通孔60aが搬送方向A1に水平面内で直交する方向に並べられて形成されており、カバー60内の各撮像部23aが搬送ベルト21a上の錠剤Tをそれぞれ撮像することが可能になるよう、二つの貫通孔60bが前述の貫通孔60aが並ぶ方向と同じ方向に並べられて形成されている。さらに、カバー60の下面には、カバー60内の各印刷ヘッド24aが搬送ベルト21a上の錠剤Tにそれぞれ印刷を行うことが可能になるよう、二つの貫通孔60cが前述の貫通孔60aが並ぶ方向と同じ方向に並べられて形成されており、カバー60内の各撮像部25aが搬送ベルト21a上の錠剤Tをそれぞれ撮像することが可能になるよう、二つの貫通孔60dが前述の貫通孔60aが並ぶ方向と同じ方向に並べられて形成されている。
各貫通孔60a、60b、60dは、カバー60の内部の底面に設けられたガラスなどの透光部材61、62によって塞がれている。また、各貫通孔60cは、シリコンなどの密閉部材63を介して貫通孔60cに印刷ヘッド24aが挿入されて塞がれている。このようにして、カバー60は密閉状態に形成されており、そのカバー60の内部は陽圧(正圧)に維持されている。
このカバー60の側面には、図3から図5に示すように、気体通過性を有する二つの整流板27、28が設けられている。一方の整流板27は、カバー60における搬送方向A1の上流側の側面の下端部に取り付けられ、他方の整流板28は、カバー60における搬送方向A1の下流側の側面の下端部に取り付けられている。これらの整流板27、28は、搬送装置21により錠剤Tが搬送される搬送路、すなわち搬送装置21の上側の搬送面(搬送ベルト21aの上面)から所定距離だけそれぞれ離間し、その搬送面に対向するように水平に配置されている。所定距離は、錠剤Tの厚さ(例えば、2~4mm)より長く、搬送装置21の吸引チャンバ21fによる吸引により生じる気流を整えることが可能な範囲(例えば、5~12mm)内の距離である。各整流板27、28は、吸引チャンバ21fによる吸引によって生じる気流が通過する位置に設けられており、搬送ベルト21aの上面の上方やその周囲に生じる気流をそれぞれ整える。なお、各整流板27、28のそれぞれの幅方向の長さは、搬送ベルト21aの幅方向の長さ以上である。また、各整流板27、28のそれぞれの搬送方向A1の長さは、搬送装置21の搬送方向A1の長さより短い。
気体通過性を有する各整流板27、28としては、網状の板材が用いられているが、これに限るものではなく、例えば、複数の丸孔を有するパンチングボード、複数のスリット孔を有するボードなど、複数の貫通孔を有する各種の板材を用いることが可能である。また、整流板27、28の材料としては、SUSなどの金属を用いることが可能であるが、これに限るものではなく、食品衛生法適合品であれば良く、SUS以外の材料、例えば、アルミや樹脂を用いることも可能である。
ここで、搬送ベルト21aの上面の吸引孔21gが錠剤Tによって完全に塞がれない場合には、吸引チャンバ21fによる吸引によって、搬送ベルト21aの上面の吸引孔21gから空気が吸引されるため、搬送ベルト21aの上面の上方やその周囲に、吸引孔21gに向かって流れる気流が発生するが、その気流は各整流板27、28における貫通孔を通過することにより整えられ、また、各整流板27、28における貫通孔以外の部分に一部の気流が遮蔽されることにより弱められる。これにより、乱気流の発生が抑制されるので、搬送ベルト21aの上面に保持されている錠剤Tの姿勢が所望姿勢(例えば、水平姿勢)から変わることを抑えることができる。なお、搬送ベルト21aの上面とカバー60の下面との離間距離は、例えば、5~12mmと短いため、この空間に流れ込む気流が強くなる傾向(流速が速くなる傾向)があるが、この気流が各整流板27、28により整えられ、また、弱められる。これにより、乱気流の発生が抑制されるので、搬送ベルト21aの上面に保持されている錠剤Tの姿勢が所望姿勢から変わることを確実に抑えることができる。所望姿勢とは、ノズル24bから吐出されたインクが錠剤T上の所望位置に着弾することができる姿勢(錠剤Tの印刷不良を起こさない姿勢)である(他も同様)。
図1に戻り、乾燥装置26は、第2の撮像装置25が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側に位置付けられ、例えば、搬送装置21の下方に設けられている。この乾燥装置26は、二列の搬送路に共通の乾燥装置であり、搬送ベルト21a上の各錠剤Tに塗布されたインクを乾燥させる。乾燥装置26としては、エアーにより乾燥対象を乾燥させる送風機、放射熱により乾燥対象を乾燥させるヒータ、あるいは、エアー及びヒータを併用して温風や熱風により乾燥対象を乾燥させる送風機など各種の乾燥部を用いることが可能である。乾燥装置26は制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。
なお、乾燥装置26の上方を通過した錠剤Tは、搬送ベルト21aの移動に伴って搬送され、搬送ベルト21aにおける各従動プーリ21c側の端部付近の位置に到達する。この位置で吸引作用が錠剤Tに働かなくなり、錠剤Tは搬送ベルト21aに保持された状態から解放され、第1の印刷装置20から第2の印刷装置30に受け渡される。
前述の搬送装置21の下方には、図1及び図3に示すように、気体通過性を有する整流板29が設けられている。この整流板29は、搬送装置21により錠剤Tが搬送される搬送路、すなわち搬送装置21の下側の搬送面(搬送ベルト21aの下面)から所定距離だけ離間し、その搬送面に対向するように水平に配置されている。所定距離は、錠剤Tの厚さ(例えば、2~4mm)より長く、搬送装置21の吸引チャンバ21fによる吸引により生じる気流を整えることが可能な範囲(例えば、5~12mm)内の距離である。整流板29は、吸引チャンバ21fによる吸引によって生じる気流が通過する位置に設けられており、搬送ベルト21aの下面の下方やその周囲に生じる気流を整える。この整流板29は、搬送装置21において錠剤Tが上から吸引されて搬送される搬送路に対向するように設けられている。錠剤Tが搬送装置21によって上から吸引保持されているとき、重力に逆らう状態で保持されているため、整流板29は、搬送ベルト21aの下面から落下した錠剤Tを受ける受け皿としても機能する。すなわち、整流板29は、落下した錠剤Tを受ける受け面M1を有する。なお、整流板29の幅方向の長さは、搬送ベルト21aの幅方向の長さ以上である。また、整流板29の搬送方向A1の長さは、搬送装置21の搬送方向A1の長さより短いが、これに限るものではない。
また、図1及び図3では整流板29は水平に配置されているが、傾斜していてもよい。この場合、整流板29は、錠剤Tの上から錠剤Tが吸引されて搬送される搬送路に対向するように設けられて、傾斜する整流板29に沿って滑落するように錠剤Tが移動し、整流板29の端部付近に設けられている受け皿に受け止められるようにしてもよい。
気体通過性を有する整流板29としては、網状の板材が用いられているが、これに限るものではなく、例えば、複数の丸孔を有するパンチングボード、複数のスリット孔を有するボードなど、複数の貫通孔を有する各種の板材を用いることが可能である。また、整流板29の材料としては、SUS(ステンレス鋼)などの金属を用いることが可能であるが、これに限るものではなく、食品衛生法適合品であれば良く、SUS以外の材料、例えば、アルミや樹脂を用いることも可能である。
ここで、搬送ベルト21aの下面の吸引孔21gが錠剤Tによって完全に塞がれない場合には、吸引チャンバ21fによる吸引によって、搬送ベルト21aの下面の吸引孔21gから空気が吸引されるため、搬送ベルト21aの下面の下方やその周囲に、吸引孔21gに向かって流れる気流が発生するが、その気流は整流板29における貫通孔を通過することにより整えられ、また、整流板29における貫通孔以外の部分に一部の気流が遮蔽されることにより弱められる。これにより、乱気流の発生が抑制されるので、搬送ベルト21aの下面に保持されている錠剤Tの姿勢が所望姿勢(例えば、水平姿勢)から変わることを抑えることが可能となる。これにより、錠剤Tの位置がずれて錠剤Tが吸引されなくなり落下することを抑制することができる。また、次の第2の印刷装置30への錠剤Tの受け渡し位置がずれて、錠剤Tを検出することができなくなり印刷不良が発生することを抑制できる。また、印刷対象とされる錠剤Tにおいて、搬送時に吸引される面が曲面である場合、吸引される面が平面である場合と比較すると吸引保持される面積が狭くなり、転がりやすくなる。このような曲面を有する錠剤Tを搬送する場合も、乱気流の発生が抑制されると、その風圧によって搬送ベルト21a上で揺れ動くことを抑制できる。これにより錠剤Tの位置、姿勢を安定して搬送することが可能となり、第1の印刷装置20による錠剤Tに対する印刷位置がずれて印刷不良となることを抑制できる。以上により生産性が低下することを抑制することができる。
図1に戻り、第2の印刷装置30は、搬送装置31と、検出装置32と、第1の撮像装置(印刷用の撮像装置)33と、印刷ヘッド装置34と、第2の撮像装置(検査用の撮像装置)35と、乾燥装置36とを備えている。搬送装置31は、搬送ベルト31a、駆動プーリ(プーリ体)31b、複数(図1の例では、三つ)の従動プーリ(プーリ体)31c、モータ(駆動部)31d、位置検出器31e及び吸引チャンバ(吸引部)31fを有している。各装置32~35は、カバー60に収容されており、カバー60には二枚の整流板37、38が設けられている。なお、第2の印刷装置30を構成する各要素は、前述の第1の印刷装置20の対応する構成要素と基本的に同じ構造であるため、その説明を省略する。第2の印刷装置30の搬送方向は図1中の矢印A2の方向(搬送方向A2)である。
回収装置40は、不良品回収装置41と、良品回収装置42とを備えている。この回収装置40は、第2の印刷装置30の乾燥装置36が設けられた位置よりも搬送方向A2の下流側に位置付けられて設けられており、不良品回収装置41により不良品の錠剤Tを回収し、良品回収装置42により良品の錠剤Tを回収する。
不良品回収装置41は、噴射ノズル41aと、収容部41bとを有している。噴射ノズル41aは、第2の印刷装置30の吸引チャンバ31f内に設けられており、搬送ベルト31aにより搬送される錠剤T(不良品の錠剤T)に向けて気体(例えば、エア)を噴射し、搬送ベルト31aから錠剤Tを落下させる。このとき、噴射ノズル41aから噴射された気体は、搬送ベルト31aの吸引孔(図3及び図4に示す吸引孔21gと同様である)を通過して錠剤Tに当たる。噴射ノズル41aは制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。収容部41bは、搬送ベルト31aから落下した錠剤Tを受け取って収容する。
良品回収装置42は、気体吹出部42aと、排出搬送装置(排出フィーダ)42bと、乾燥装置42c、収容部42dとを有している。この良品回収装置42は、不良品回収装置41が設けられた位置よりも搬送方向A2の下流側に位置付けられて設けられている。
気体吹出部42aは、第2の印刷装置30の搬送装置31内であってその搬送装置31の端部、すなわち搬送ベルト31aにおける各従動プーリ31c側の端部に設けられている。気体吹出部42aは、例えば印刷処理中、常に搬送ベルト31aに向けて気体(例えば、エア)を吹き出し、搬送ベルト31aから錠剤Tを落下させる。このとき、気体吹出部42aから吹き出された気体は、搬送ベルト31aの吸引孔(図3及び図4に示す吸引孔21gと同様である)を通過して錠剤Tに当たる。この気体吹出部42aとしては、例えば、搬送方向A2に水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に延びるスリット状の開口を有するエアブローを用いることが可能である。気体吹出部42aは制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。
ここで、不良品回収装置41を通過した錠剤Tは、搬送ベルト31aの移動に伴って搬送され、搬送ベルト31aにおける各従動プーリ31c側の端部付近の位置に到達する。この位置で吸引作用が錠剤Tに働かなくなるが、気体吹出部42aを設けることで、搬送ベルト31aから錠剤Tを確実に落下させて排出搬送装置42bに供給することができる。
排出搬送装置42bは、搬送ベルト31aの下面から落下した錠剤Tを受け取り、受け取った錠剤Tを収容部42dまで搬送する。なお、排出搬送装置42bとしては、例えば、ベルト搬送機構を用いることが可能である。排出搬送装置42bは制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。
乾燥装置42cは、排出搬送装置42bの上方に設けられている。この乾燥装置42cは、各乾燥装置26、36に加え、各錠剤Tに塗布されたインクを乾燥させるものである。乾燥装置42cとしては、エアーにより乾燥対象を乾燥させる送風機、放射熱により乾燥対象を乾燥させるヒータ、あるいは、エアー及びヒータを併用して温風や熱風により乾燥対象を乾燥させる送風機など各種の乾燥部を用いることが可能である。乾燥装置42cは制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。
ここで、エアーによる乾燥を行う乾燥装置42cの一例を説明する。このエアータイプの乾燥装置42cの筐体は、排出搬送装置42bに覆いかぶさるように下面が開口した断面Uの字形状に形成されている。乾燥装置42cの筐体の中には、エアーを吹き出すエアーノズルが配置され、エアーノズルからエアーが排出搬送装置42bの上面の搬送面に向けて吹き出されている。このエアーは、排出搬送装置42bの搬送面に沿って排出搬送装置42bの上流端や下流端に向かって流れる。なお、エアーノズルの形態はどのような形態でも良く、例えば、パイプの長手方向に複数の開口を設け、それらの開口からエアーを吹き出すパイプを一個以上配置することが可能である。各開口はパイプの長手方向に並ぶように配置されている。パイプは、長手方向が搬送方向A1に沿うように設けられても良いし、交差するように(例えば、直角に交差するように)設けられても良い。
収容部42dは、排出搬送装置42bの下流端、すなわち排出搬送装置42bにおける第2の搬送装置31側と反対側の端に位置付けられ、錠剤印刷装置1の筐体の外に設けられている。この収容部42dは、乾燥装置42cによりインクが乾燥した錠剤Tを排出搬送装置42bから受け取って収容する。
制御装置50は、画像処理部51、印刷処理部52、検査処理部53及び記憶部54を備えている。画像処理部51は画像を処理する。印刷処理部52は印刷に係る処理を行う。検査処理部53は検査に係る処理を行う。記憶部54は処理情報や各種プログラムなどの各種情報を記憶する。このような制御装置50は、供給装置10や第1の印刷装置20、第2の印刷装置30を制御し、また、第1の印刷装置20や第2の印刷装置30の個々の検出装置22、32から送信される錠剤Tの位置情報、第1の印刷装置20や第2の印刷装置30の個々の撮像装置23、25、33、35から送信される画像などを受信する。
(印刷工程)
次に、前述の錠剤印刷装置1が行う印刷処理及び検査処理について説明する。
まず、印刷に要する印刷データなどの各種情報が制御装置50の記憶部54に記憶される。そして、供給装置10のホッパ11に印刷対象の錠剤Tが多数投入されると、錠剤Tはホッパ11から整列搬送装置12に順次供給され始め、整列搬送装置12により二列に並べられて移動する。この二列で移動する錠剤Tは中継搬送装置13により第1の印刷装置20の搬送ベルト21aに順次供給される。このとき、中継搬送装置13での錠剤Tの姿勢は搬送ベルト21aに引き継がれる。搬送ベルト21aは、モータ21dによる駆動プーリ21b及び各従動プーリ21cの回転によって搬送方向A1に回転している。このため、搬送ベルト21a上に供給された錠剤Tは搬送ベルト21a上で二列に並んで所定の移動速度で搬送されていく。なお、搬送ベルト31aもモータ31dによる駆動プーリ31b及び各従動プーリ31cの回転によって搬送方向A2に回転している。
その後、搬送ベルト21a上の錠剤Tは検出装置22によって検出される。これにより、錠剤Tの位置情報(搬送方向A1の位置)が取得され、制御装置50に入力される。この錠剤Tの位置情報は、記憶部54に保存されて後処理で用いられる。次に、搬送ベルト21a上の錠剤Tが前述の錠剤Tの位置情報に基づくタイミングで第1の撮像装置23によって撮像され、撮像された画像が制御装置50に送信される。第1の撮像装置23から送信された個々の画像に基づき、錠剤Tの位置ずれ情報(例えば、図4におけるX方向、Y方向及びθ方向での錠剤Tの位置ずれ)が画像処理部51により生成され、記憶部54に保存される。この錠剤Tの位置ずれ情報に基づき、錠剤Tに対する印刷条件(インクの吐出位置や吐出速度など)が印刷処理部52により設定され、記憶部54に保存される。
次いで、搬送ベルト21a上の個々の錠剤Tは、前述の錠剤Tの位置情報に基づくタイミング、すなわち錠剤Tが印刷ヘッド装置24の下方に到達したタイミングで、前述の印刷条件に基づいて印刷ヘッド装置24により印刷が実行される。印刷ヘッド装置24の各印刷ヘッド24aにおいて、各ノズル24bからインクが適宜吐出され、その錠剤Tの上面に文字(例えばアルファベット、片仮名、番号)やマーク(例えば記号、図形)などの識別情報が印刷される。
識別情報が印刷された錠剤Tは、前述の錠剤Tの位置情報に基づくタイミングで第2の撮像装置25によって撮像され、撮像された画像が制御装置50に送信される。第2の撮像装置25から送信された個々の画像に基づき、錠剤Tごとの印刷パターンの印刷位置を示す印刷位置情報が画像処理部51により生成され、記憶部54に保存される。その印刷位置情報に基づき、錠剤Tに対する印刷良否が検査処理部53により判断され、錠剤Tごとの印刷良否の結果を示す印刷良否結果情報が記憶部54に保存される。例えば、印刷パターンが錠剤Tの所定位置に印刷されているか否かが判断される。
検査後の錠剤Tは、搬送ベルト21aの移動に伴って搬送され、乾燥装置26の上方を通過する。このとき、錠剤Tに塗布されたインクは、錠剤Tが乾燥装置26の上方を通過する間に乾燥装置26によって乾燥し、インクが乾燥した錠剤Tは搬送ベルト21aの移動に伴って搬送されていき、搬送ベルト21aにおける各従動プーリ21c側の端部付近に位置する。この位置で吸引作用が錠剤Tに働かなくなり、錠剤Tは搬送ベルト21aの下面に保持された状態から解放され、第1の印刷装置30から第2の印刷装置30に渡される。
第2の印刷装置30でも、前述と同じように印刷処理及び検査処理が行われる。検査後の錠剤Tは、搬送ベルト31aの移動に伴って搬送され、乾燥装置36の上方を通過する。そして、インクが乾燥した錠剤Tは不良品回収装置41に到達する。この位置で不良品の錠剤Tは、噴射ノズル41aによる気体の噴射により搬送ベルト31aの下面から落下し、収容部41bによって回収される。一方、良品の錠剤Tは不良品回収装置41を通過し、良品回収装置42に到達する。この位置で良品の錠剤Tは、吸引作用が錠剤Tに働かなくなるとともに、気体吹出部42aによる気体の吹出しによって搬送ベルト31aの下面から落下し、排出搬送装置42bに引き渡される。そして、良品の錠剤Tは排出搬送装置42bによって搬送され、その搬送途中に錠剤T上のインクが乾燥装置42cにより完全に乾燥する。インクが乾燥した錠剤Tは、排出搬送装置42bにより収容部42dの上方まで搬送され、排出搬送装置42bの下流端から落下し、収容部42dによって回収される。
このような印刷工程では、中継搬送装置13において、錠剤Tは搬送ベルト13aの下面の吸引孔13fからの吸引によって搬送ベルト13aの下面に保持されるが、錠剤Tの大きさや形状などにより搬送ベルト13aの下面の吸引孔13fの一部分が塞がれない状態や錠剤Tのランダムな供給により搬送ベルト13aの下面の吸引孔13fが錠剤Tによって完全に塞がれないことがある。この場合、搬送ベルト13aの下面の吸引孔13fから空気が吸引されるため、搬送ベルト13aの下面の下方やその周囲に、吸引孔13fに向かって流れる気流が発生する。このように気流が発生するが、搬送ベルト13aの下面の下方やその周辺に生じる気流は整流板14における貫通孔を通過することによって整えられ、また、整流板14における貫通孔以外の部分に一部の気流が遮蔽されることにより弱められる。これにより、乱気流の発生が抑えられるので、搬送ベルト13aの下面に保持されている錠剤Tの姿勢を所望姿勢に維持することが可能となる。このため、錠剤Tの位置がずれて錠剤Tが吸引されなくなり落下することを抑制することができる。また、次の搬送装置21への錠剤Tの受け渡し位置がずれて、錠剤Tを検出することができなくなり印刷不良が発生し、生産性が低下することを抑制することができる。なお、中継搬送装置13における錠剤Tの姿勢が所望姿勢から変わってしまうと、その錠剤Tの姿勢は第1の印刷装置20に引き継がれるため、第1の印刷装置20における錠剤Tの姿勢も所望姿勢と変わってしまう。ところが、中継搬送装置13において錠剤Tの姿勢が前述のように所望姿勢に維持されるので、その所望姿勢の錠剤Tが第1の印刷装置20に供給されることになる。
また、第1の印刷装置20の搬送装置21において、中継搬送装置13から姿勢が維持された状態で渡された錠剤Tは、搬送ベルト21aの上面の吸引孔21g上に供給される。中継搬送装置13から供給された錠剤Tは、搬送ベルト21aの上面の吸引孔21gからの吸引によって搬送ベルト21aの上面に保持されるが、錠剤Tの大きさや形状などにより搬送ベルト21aの上面の吸引孔21gの一部分が塞がれない状態や錠剤Tのランダムな供給により搬送ベルト21aの上面の吸引孔21gが錠剤Tによって完全に塞がれないことがある。この場合、搬送ベルト21aの上面の吸引孔21gから空気が吸引されるため、搬送ベルト21aの上面の上方やその周囲に、吸引孔21gに向かって流れる気流が発生する。このように気流が発生するが、搬送ベルト21aの上面の上方やその周辺に生じる気流は各整流板27、28における貫通孔を通過することによって整えられ、また、各整流板27、28における貫通孔以外の部分に一部の気流が遮蔽されることにより弱められるため、乱気流の発生が抑えられる。搬送ベルト21aの上面とカバー60の下面(搬送ベルト21aに対向する面)との離間距離は、例えば、5~12mmと短いため、この空間に流れ込む気流が強くなる傾向がある。しかしながら、この気流は各整流板27、28により整えられ、また、弱められるため、乱気流の発生が抑えられる。これにより、搬送ベルト21aの上面に保持されている錠剤Tの姿勢を所望姿勢に維持することが可能となり、第1の印刷装置20の印刷ヘッド装置24から吐出されたインクが錠剤T上の所望位置に着弾することになるので、印刷品質の低下を抑えることができる。
また、第1の印刷装置20の搬送装置21において、印刷済の錠剤Tは、搬送ベルト21aの吸引孔21gからの吸引によって搬送ベルト21aに保持されつつ、搬送ベルト21aの下面に移動する。ところが、前述と同様、錠剤Tの大きさや形状などにより搬送ベルト21aの下面の吸引孔21gの一部分が塞がれない状態や錠剤Tのランダムな供給により搬送ベルト21aの下面の吸引孔21gが錠剤Tによって完全に塞がれないことがある。この場合、搬送ベルト21aの下面の吸引孔21gから空気が吸引されるため、搬送ベルト21aの下面の下方やその周囲に、吸引孔21gに向かって流れる気流が発生する。このように気流が発生するが、搬送ベルト21aの下面の下方やその周辺に生じる気流は整流板29における貫通孔を通過することによって整えられ、また、整流板29における貫通孔以外の部分に一部の気流が遮蔽されることにより弱められる。これにより、乱気流の発生は抑えられるので、搬送ベルト21aの下面に保持されている錠剤Tの姿勢を所望姿勢に維持することが可能となる。このため、錠剤Tの位置がずれて錠剤Tが吸引されなくなり落下することを抑制することができる。また、次の搬送装置31への錠剤Tの受け渡し位置がずれて、錠剤Tを検出することができなくなり印刷不良が発生し、生産性が低下することを抑制することができる。なお、第1の印刷装置20における錠剤Tの姿勢が所望姿勢と変わってしまうと、その錠剤Tの姿勢は第2の印刷装置30に引き継がれるため、第2の印刷装置20における錠剤Tの姿勢も所望姿勢と変わってしまう。ところが、第1の印刷装置20において錠剤Tの姿勢が前述のように所望姿勢に維持されるので、その所望姿勢の錠剤Tが第2の印刷装置30に供給されることになる。
また、第2の印刷装置30の搬送装置31においても、前述と同様、搬送ベルト31aの上面の吸引孔31gから空気が吸引されるため、搬送ベルト31aの上面の上方やその周囲に、吸引孔21gに向かって流れる気流が発生する。このように気流が発生するが、搬送ベルト31aの上面の上方やその周辺に生じる気流は各整流板37、38における貫通孔を通過することによって整えられ、また、各整流板37、38における貫通孔以外の部分に一部の気流が遮蔽されることにより弱められるため、乱気流の発生が抑えられる。搬送ベルト31aの上面とカバー60の下面との離間距離は、例えば、5~12mmと短いため、この空間に流れ込む気流が強くなる傾向がある。しかしながら、この気流は各整流板37、38により整えられ、また、弱められるため、乱気流の発生が抑えられる。これにより、搬送ベルト31aの上面に保持されている錠剤Tの姿勢を所望姿勢に維持することが可能となり、第2の印刷装置30の印刷ヘッド装置34から吐出されたインクが錠剤T上の所望位置に着弾することになるので、印刷品質の低下を抑えることができる。
ここで、例えば、中継搬送装置13の下側の搬送面からの錠剤落下数に関して、整流板14を設けなかった場合、搬送ベルト13aに錠剤Tを1000錠流したとき、錠剤Tが20~40錠落下した。また、このとき印刷不良(搬送ベルト21a上での印刷姿勢不良)は80%程度であった。なお、貫通孔を有さない整流板を設けても同様の結果となった。そこで、整流板14として、中継搬送装置13の下側の搬送面に対向するように、整列搬送装置12と第1の印刷装置20の搬送装置21との間の空間に、複数の貫通孔を有する網状の板材(□1mmの網目)を配置したところ、搬送ベルト13aに錠剤Tを1000錠流したとき、落下数はゼロ錠となり、印刷不良(搬送ベルト21a上での印刷姿勢不良)は、20~30%に減った。
以上説明したように、第1の実施形態によれば、気体通過性を有する整流板(例えば、整流板14や各整流板27、28、整流板29、各整流板37、38)が、搬送装置(例えば、中継搬送装置13や搬送装置21、搬送装置31)により錠剤Tが搬送される搬送路から離間して搬送路に対向するように設けられている。搬送装置による吸引によって搬送装置の搬送面の周囲に、吸引孔(例えば、各吸引孔13f、21g)に向かって流れる気流が発生するが、その気流は前述の整流板における貫通孔を通過することによって整えられ、また、前述の整流板における貫通孔以外の部分に一部の気流が遮蔽されることにより弱められるため、乱気流の発生が抑えられる。これにより、搬送装置により搬送される錠剤Tの姿勢を所望姿勢に維持することが可能となり、印刷ヘッド装置(例えば、印刷ヘッド装置24や印刷ヘッド装置34)から吐出されたインクが錠剤T上の所望位置に着弾することになるので、印刷品質の低下を抑えることができる。また、搬送装置により搬送される錠剤Tの姿勢が所望姿勢で安定するので、錠剤Tの位置がずれて錠剤Tが吸引されずに落下したり、また、次の搬送装置21、31への受け渡し位置がずれて錠剤Tを検出できずに印刷不良が発生することを抑制できる。また、印刷対象とされる錠剤Tにおいて、搬送時に吸引される面が曲面である場合、吸引される面が平面である場合と比較すると吸引保持される面積が狭くなり、転がりやすくなる。このような曲面を有する錠剤Tを搬送する場合も、乱気流の発生が抑制されると、その風圧によって搬送ベルト21a上で揺れ動くことを抑制できる。これにより錠剤Tの位置、姿勢を安定して搬送することが可能となり、錠剤Tに対する印刷位置がずれて印刷不良となることを抑制できる。以上により生産性が低下することを抑制することができる。
また、錠剤印刷装置1の運転を停止して、装置全体の清掃を行うときに、カバー60を取り外すことによって、カバー60に取り付けられた各整流板27、28も共に取り外すことができる。これにより、カバー60及び各整流板27、28を一度に清掃することが可能になるので、清掃作業を効率的に行うことができる。また、検出装置22、第1の撮像装置23、第2の撮像装置25は、カバー60によって覆われており、錠剤Tの粉が付着することがなく、清掃を行う必要がないので、清掃作業を簡略化することができる。
<第2の実施形態>
第2の実施形態について図6及び図7を参照して説明する。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態との相違点(整流板の追加)について説明し、その他の説明を省略する。
第2の実施形態では、図6に示すように、中継搬送装置13において、一枚の整流板14に加えて、二枚の整流板14a、14bが設けられている。
二枚の整流板14a、14bは、一枚の整流板14の幅方向(搬送方向A1に水平に直交する方向)から、整流板14の上面と搬送ベルト13aの下面との間の空間を挟むように設けられている。二枚の整流板14a、14bは、所定距離だけ離間し、鉛直に配置されている。この所定距離は、搬送ベルト13aの幅方向の長さとほぼ同じであるが、これに限るものではない。なお、二枚の整流板14a、14bとしては、整流板14と同様の板材や材料を用いることが可能であるが、これに限るものではなく、例えば、整流板14と板材の種類や材料の種類を変えることも可能である。
ここで、搬送ベルト13aの下面の吸引孔13fが錠剤Tによって完全に塞がれない場合、吸引チャンバ13eによる吸引によって、搬送ベルト13aの下面の吸引孔13fから空気が吸引されるため、搬送ベルト13aの下面の下方やその周囲に、吸引孔13fに向かって流れる気流が発生するが、その気流は各整流板14、14a、14bにおける貫通孔を通過することにより整えられ、また、各整流板14、14a、14bにおける貫通孔以外の部分に一部の気流が遮蔽されることにより弱められる。これにより、搬送ベルト13aの下面に保持されている錠剤Tの姿勢が所望姿勢(例えば、水平姿勢)から変わることが確実に抑えられる。
また、図7に示すように、第1の印刷装置20の搬送装置21の上方において、二枚の整流板27、28に加えて、二枚の整流板27a、27bが設けられている。なお、第1の印刷装置20の搬送装置21の下方、すなわち整流板29に対しても同様に整流板を追加することも可能である。
二枚の整流板27a、27bは、各整流板27、28のそれぞれの幅方向(搬送方向A1に水平に直交する方向)から、整流板27の下面と搬送ベルト21aの上面との間の空間、カバー60の下面と搬送ベルト21aの上面との間の空間、整流板28の下面と搬送ベルト21aの上面との間の空間を挟むように設けられている。二枚の整流板27a、27bは、所定距離だけ離間し、鉛直に配置されている。所定距離は、搬送ベルト21aの幅方向の長さとほぼ同じであるが、これに限るものではない。なお、二枚の整流板27a、27bとしては、二枚の整流板27、28と同様の板材や材料を用いることが可能であるが、これに限るものではなく、例えば、二枚の整流板27、28と板材の種類や材料の種類を変えることも可能である。
ここで、搬送ベルト21aの上面の吸引孔21gが錠剤Tによって完全に塞がれない場合、吸引チャンバ21fによる吸引によって、搬送ベルト21aの上面の吸引孔21gから空気が吸引されるため、搬送ベルト21aの上面の上方やその周囲に、吸引孔21gに向かって流れる気流が発生するが、その気流は各整流板27、28、27a、27bにおける貫通孔を通過することにより整えられ、また、各整流板27、28、27a、27bにおける貫通孔以外の部分に一部の気流が遮蔽されることにより弱められる。これにより、搬送ベルト21aの上面に保持されている錠剤Tの姿勢が所望姿勢(例えば、水平姿勢)から変わることが確実に抑えられる。
以上説明したように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、整流板14や二枚の整流板27、28、整流板29に加え、各整流板14a、14b、27a、27bが設けられている。搬送装置(例えば、中継搬送装置13や搬送装置21)による吸引によって搬送装置の搬送面の周囲に、吸引孔(例えば、各吸引孔13f、21g)に向かって流れる気流が発生するが、その気流は前述の各整流板(例えば、各整流板14、14a、14b、27、27a、27b、28、29)における貫通孔を通過することによって整えられ、また、前述の各整流板における貫通孔以外の部分に一部の気流が遮蔽されることにより弱められるため、乱気流の発生が抑えられる。これにより、搬送装置により搬送される錠剤Tの姿勢を所望姿勢に確実に維持することが可能となり、印刷ヘッド装置(例えば、印刷ヘッド装置24)から吐出されたインクが錠剤T上の所望位置に着弾することになるので、印刷品質の低下を確実に抑えることができる。また、搬送装置により搬送される錠剤Tの姿勢が所望姿勢で安定するので、錠剤Tの位置がずれて錠剤Tが吸引されずに落下したり、また、次の搬送装置21、31への受け渡し位置がずれて錠剤Tを検出できずに印刷不良が発生することを抑制できる。また、印刷対象とされる錠剤Tにおいて、搬送時に吸引される面が曲面である場合、吸引される面が平面である場合と比較すると吸引保持される面積が狭くなり、転がりやすくなる。このような曲面を有する錠剤Tを搬送する場合も、乱気流の発生が抑制されると、その風圧によって搬送ベルト21a上で揺れ動くことを抑制できる。これにより錠剤Tの位置、姿勢を安定して搬送することが可能となり、錠剤Tに対する印刷位置がずれて印刷不良となることを抑制できる。以上により生産性が低下することを抑制することができる。
<他の実施形態>
前述の説明においては、各整流板14、14a、14bや各整流板27、27a、27b、28、整流板29、各整流板37、38は平板であることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、湾曲形状の板であっても良い。
また、前述の説明においては、カバー60に対して二枚の整流板27、28を設けることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、二枚の整流板27、28のどちらか一方を無くして枚数を一枚としたり、あるいは、枚数を三枚以上としたりすることも可能である。なお、錠剤Tの搬送時には、搬送ベルト21aの表面が搬送方向A1に沿って移動していくため、各整流板27、28が無い場合、搬送ベルト21aの上面の上方の上流側において下流側よりも強い乱気流が発生することがある。このため、二枚の整流板27、28のどちらか一方を無くす場合には、上流側の整流板27を残し、下流側の整流板28を無くすことが望ましい。また、搬送方向A1においてカバー60の下流側では既に印刷ヘッド装置の下を通過しているので印刷が終わっており、下流側の錠剤Tの姿勢が問題にならない場合がある。この場合も、上流側の整流板27を残し、下流板の整流板28を無くすことができる。
また、前述の説明においては、直方体形状のカバー60の側面、すなわち直方体形状のカバー60における搬送方向A1の上流側と下流側の二つの側面に対して二枚の整流板27、28を一枚ずつ設けることを例示したが、これに限るものではない。例えば、直方体形状のカバー60における搬送方向A1に平行な二つの側面、すなわち直方体形状のカバー60において搬送方向A1に水平に直交する方向で向かい合う二つの側面に対して二枚の整流板27、28を一枚ずつ設けるようにしても良く、カバー60の側面に対する整流板27、28の取り付け位置を変更することが可能である。
また、前述の説明においては、二枚の整流板14a、14bや二枚の整流板27a、27bを鉛直に配置していることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、所定角度で傾斜させて、あるいは、水平に配置することも可能である。なお、二枚の整流板14a、14bや二枚の整流板27a、27bを傾斜させて、あるいは、水平に配置しても、搬送ベルト21aの上面の上方や下面の下方、その周囲に発生した気流を整え、また、弱めることが可能である。
また、前述の説明においては、カバー60を密閉状態に形成していることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、カバー60に隙間を形成したり、カバー60の上部を開放したりすることも可能である。この場合、気体通過性を有する整流板により、カバー60の各透光部材61、62を構成することが望ましい。これにより、カバー60内から搬送ベルト21aの搬送面に向かって下方に流れる気流が生じるため、カバー60の周囲からカバー60下面に回り込む気流を下方に流れる気流に変えて整えることが可能となる。
また、前述の説明においては、検出装置22、第1の撮像装置23、印刷ヘッド装置24及び第2の撮像装置25をカバー60内に収容することを例示したが、これに限るものではなく、例えば、錠剤Tの粉の付着が問題とならない場合には、カバー60を備えないようにしても良い。カバー60を設けない場合には、検出装置22、第1の撮像装置23、印刷ヘッド装置24及び第2の撮像装置25の下方に、気体通過性を有する整流板を設けるようにしても良い。この整流板は、検出装置22、第1の撮像装置23、印刷ヘッド装置24及び第2の撮像装置25のそれぞれの動作が可能に形成されている。
また、前述の説明においては、搬送装置21の下側に整流板29を設けることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、搬送装置31の下側に整流板を設けるようにしても良い。この場合には、不良品回収装置41で錠剤Tを排出する際に錠剤Tの位置がずれて錠剤Tを排出できないことを抑制することができる。また、整流板の設置に関して、整流板を乾燥装置36の上面(搬送ベルト31aと対向する面)にかぶるように設けることも可能である。この場合、整流板は、乾燥装置36から搬送ベルト31aの下面に放射されるエアーや熱を妨げないように形成される。整流板の素材としては、耐熱素材が用いられる。なお、整流板29も同様に乾燥装置26の上面(搬送ベルト21aと対向する面)にかぶるように設けることが可能である。
また、前述の説明においては、各整流板14、14a、14bや各整流板27、27a、27b、28、整流板29、各整流板37、38の通気量を可変しないことを例示したが、これに限るものではなく、整流板の通気量を可変するようにしても良い。例えば、整流板を二重に設け、二重の整流板のどちらか一方又は両方をスライド移動又は回動させることで、整流板の貫通孔の重なりを調整して貫通孔の大きさを可変とし、通気量を調整することが可能である。
また、整流板(例えば、各整流板14、14a、14b、27、27a、27b、28、29、37、38)の各々の貫通孔の大きさは、気体通過性が得られる程度に大きく、落下した錠剤Tがすり抜けられない程度に小さければよい。例えば、錠剤Tの径よりも小さければよい。
また、整流板(例えば、各整流板14、14a、14b、27、27a、27b、28、29、37、38)の設置場所ごとに通気量を変えることも可能である。例えば、後述するように搬送ベルト21aにおいて錠剤Tに対する吸引力の強い場所と、吸引力の弱い場所とがある場合、その場所に応じて貫通孔の大きさが異なる整流板を設置して通気量を変えるようにしても良いし、前述したように二重に設けた整流板の一方又は両方を移動させることで通気量を変えるようにしても良い。
また、整流板(例えば、各整流板14、14a、14b、27、27a、27b、28、29、37、38)に設けられた貫通孔が丸孔やスリット状である場合、その孔軸は、整流板の面に対し垂直であっても傾斜してもよい。孔軸を傾斜させる場合には、搬送ベルト21a、31aの表面に対して向かう気流の流れに応じて傾斜角度を設定するようにしてもよい。
また、前述の説明においては、吸引チャンバ21fの吸引力が一定であることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、吸引チャンバ21fの内部を複数の区画(二以上の区画)に分け、区画ごとに異なる吸引力を付与し、搬送ベルト21aの所定領域ごとに吸引力を変えることが可能である。一例として、吸引チャンバ21fの内部を二つの区画に分け、第1の区画(搬送ベルト21aの上面の各吸引孔21gにつながる区画)の吸引力を弱、第2の区画(搬送ベルト21aの上面と下面を接続する面(湾曲面)及び下面の各吸引孔21gにつながる区画)の吸引力を強と設定するようにしても良い。この場合、搬送ベルト21aの下面の吸引孔21gの吸引力は、搬送ベルト21aの上面の吸引孔21gに比べて強くなるため、搬送ベルト21aの下面の下方やその周囲において乱気流が発生することが懸念される。
ところが、整流板29の存在により搬送ベルト21aの下面の下方やその周囲における乱気流の発生は抑えられるので、搬送ベルト21aの下面に保持されている錠剤Tの姿勢を所望姿勢に維持することが可能となる。これにより、印刷ヘッド装置24から吐出されたインクが錠剤T上の所望位置に着弾することになるので、印刷品質の低下を確実に抑えることができる。また、搬送ベルト21aにより搬送される錠剤Tの姿勢が所望姿勢で安定するので、錠剤Tの位置がずれて錠剤Tが吸引されずに落下したり、また、次の搬送装置31への受け渡し位置がずれて錠剤Tを検出できずに印刷不良が発生したりして、生産性が低下することを抑制することができる。なお、前述と同様、駆動プーリ21bの部分でも乱気流が発生することが懸念される。これは、駆動プーリ21bの部分において、遠心力や重力により発生する錠剤Tの位置ずれを防止するため、吸引力が強められているためである。そこで、吸引して搬送する搬送ベルト21aの搬送面全てに対向させて整流板を設けるようにしても良い。なお、搬送ベルト31aや駆動プーリ31bにも同様の構成を適用することが可能である。
例えば、図8に示すように、整流板29の形状は、駆動プーリ21bの部分において、駆動プーリ21bの外周面に沿う相似形とすることができる。上記のように、駆動プーリ21bの部分において吸引力が強められていて、吸引孔21gに向かってより強い気流が発生しても、その気流は整流板29における貫通孔を通過することによって整えられ、また、整流板29における貫通孔以外の部分に一部の気流が遮蔽されることにより弱められるため、乱気流の発生が抑えられる。この時、強めた吸引力が低下する場合があるが、整流板29の孔の開口率を、錠剤Tを吸引保持可能な吸引力を維持できる風量(吸引チャンバ21fに吸引される空気の量)が得られるように適宜設定すればよい。
特に、装置稼働時、メンテナンスによる再開時など、吸引保持される錠剤Tが少ない時、つまり錠剤Tで塞がれない吸引孔21gが多い時は、駆動プーリ21bの外周付近に整流板29を設けない場合と比較して、複数の貫通孔を有する整流板29を設けた場合の方が、落下錠剤数が減った。このように、複数の貫通孔を有する整流板29を設けた場合、錠剤Tで塞がれない吸引孔21gの数が増大しても、吸引力の低下を抑制しつつ、乱流の発生を抑制することができ、安定的に吸引保持を行うことができる。
本実施形態に係る整流板29における搬送ベルト21a側の面と駆動プーリ21bの外周の搬送面との距離は、錠剤Tにぶつからず、錠剤Tに作用する吸引力の変化が起こらない程度の距離であればよい。例えば、一定の同じ距離とすることができる。
また、例えば、図9及び図10に示すように、駆動プーリ21bの部分に整流板29aを設けることもできる。この場合には、整流板29aが、駆動プーリ21b付近の搬送路から落下する錠剤Tを受ける受け面M1を有していてもよい。受け面M1は、図9に示すように平面であっても、図10に示すように曲面であってもよい。この受け面M1は、前述した各整流板(例えば、各整流板14、14a、14b、27、27a、27b、28、29、37、38)と同様に気体通過性を有している。これによって、駆動プーリ21b付近の整流を行い、錠剤Tを揺れにくくすることで錠剤Tの姿勢を所望姿勢で安定させることができる。かつ、錠剤Tの位置がずれて錠剤Tが吸引されずに落下したり、吸引力が十分でなく落下したとしても、落下した錠剤Tを受け止めることができる。なお、受け面M1の周囲は、側面によって囲まれていてもよい。この側面によって、受け面M1に落下した錠剤Tが、さらに受け面M1から転がり落ちないようにすることができる。
本発明者が検証したところ、駆動プーリ21bの部分において、図9及び図10に示すような整流板29aの貫通孔を塞いだ場合、塞がない場合に対し錠剤落下数が増大した。すなわち、複数の貫通孔を有する整流板29を設けることで、落下した錠剤Tを受け止めることができ、錠剤落下数が増大することを抑制できる。落下した錠剤Tを受け止めた後は、印刷処理対象の錠剤Tとは分離して回収を行うことができるため、印刷処理対象の錠剤Tとの混合を防ぐことができる。
また、前述の説明においては、錠剤Tを二列で搬送することを例示したが、これに限るものではなく、その列数は一列、又は、三列や四列以上であっても良く、搬送路の数や搬送ベルト13a、21a、31aの数は特に限定されるものではない。また、搬送ベルト13a、21a、31aの吸引孔13f、21gの形状も特に限定されるものではない。
また、前述の説明においては、錠剤Tの搬送路ごとに印刷ヘッド24aを設けることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、一つの印刷ヘッド24aによって二列以上の錠剤Tに印刷を行うようにしても良い。
また、前述の説明においては、インクジェット方式の印刷ヘッド24aとして、ノズル24bが一列に並ぶ印刷ヘッドを例示したが、これに限るものではなく、例えば、ノズル24bが複数列に並ぶ印刷ヘッドを用いるようにしても良い。また、搬送方向A1に沿って印刷ヘッド24aを複数並べて用いるようにしても良い。
また、前述の説明においては、第1の印刷装置20及び第2の印刷装置30を上下に重ねて配置して、錠剤Tの両面または片面を印刷することを例示したが、これに限るものではなく、例えば、第1の印刷装置だけを設け、錠剤Tの片面だけを印刷するようにしても良い。
また、前述の説明においては、三つの乾燥装置26、36、42cを設けることを例示したが、これに限るものではなく、その数は限定されるものではない。つまり、乾燥装置を設ける場合、三つでなく少なくとも一つあれば良く、例えば、一つの乾燥装置26がなく二つの乾燥装置36、42cがあれば良く、また、二つの乾燥装置26、36がなく一つの乾燥装置42cがあれば良く、乾燥装置42cが無く乾燥装置26、36があれば良い。また、インク、錠剤Tの種類によっては乾燥装置を必要としないこともあるため、三つの乾燥装置26、36、42c全てが無くても良い。
また、落下する錠剤Tを受ける受け面M1を有する複数の受け部材70を、搬送装置21において錠剤Tが下から吸引されて搬送される搬送路に対して水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に搬送ベルト21aを挟むように設けてもよい(図4参照)。搬送装置21において、錠剤Tを下から吸引して搬送する搬送ベルト21aからも錠剤Tが落下する場合がある。例えば、印刷ヘッド装置24よりも搬送方向A1の上流において、錠剤Tを整列させるために、錠剤Tを水平方向に移動させるガイド部材を設けた場合、錠剤Tが搬送路からずれて搬送ベルト21aの上面から落下する場合がある。受け部材70はこのような落下する錠剤Tを受ける機能を有する。したがって、錠剤Tが搬送ベルト21aの上面から落下する可能性がある場所に設ければよく、その大きさは限定されない。受け面M1は整流板14と同様に気体通過性を有するものとすることができる。なお、搬送装置31において錠剤Tが下から吸引されて搬送される搬送路に対しても同様に受け部材70を設けることができる。また、受け部材70を搬送ベルト21aの上面全域にわたって設けることも可能であり、その受け部材70の大きさは限定されるものではない。
ここで、前述の錠剤としては、医薬用、飲食用、洗浄用、工業用あるいは芳香用として使用される錠剤を含めることができる。また、錠剤としては、裸錠(素錠)や糖衣錠、フィルムコーティング錠、腸溶錠、ゼラチン被包錠、多層錠、有核錠などがあり、硬カプセルや軟カプセルなど各種のカプセル錠も錠剤に含めることができる。さらに、錠剤の形状としては、円盤形やレンズ形、三角形、楕円形など各種の形状がある。また、印刷対象の錠剤が医薬用や飲食用である場合には、使用するインクとして可食性インクが好適である。この可食性インクとしては、合成色素インク、天然色素インク、染料インク、顔料インクのいずれを使用しても良い。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。