JP2022131575A - 粘性ダンパ - Google Patents

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Demin Feng
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Abstract

【課題】簡易な構成により、通常の設計で想定する地震動に対する免震性能を低下させることなく、設計での想定を超える地震動に応じた減衰力を発揮させる。【解決手段】作動油Vが封入されたシリンダ12と、シリンダ12の軸心上に配置されたピストンロッド14と、ピストンロッド14に連結されたピストン16とを備える粘性ダンパ10Aにおいて、シリンダ12の内周面1202に内径が異なる複数の内径部が設けられている。複数の内径部は、大径内径部30と、大径内径部30より小さい内径の小径内径部32とを有し、シリンダ12の軸心方向の中央部に大径内径部30が配置され、大径内径部30の両側に小径内径部32が設けられている。シリンダ12の軸心方向において隣り合う大径内径部30および小径内径部32は、それら内径部の内周面を接続する傾斜面34で接続されている。【選択図】図2

Description

本発明は、粘性ダンパに関する。
従来、基礎(下部構造体)上に、複数のゴム板と鋼板とが重ね合わされた積層ゴムを設けると共に鉛プラグ等のエネルギ吸収手段を設け、それらの上で建物(上部構造体)を免震支持する免震建物が知られている。
このような免震建物において、通常の設計で想定する地震動を超える地震動(設計での想定を超える地震動)が生じた場合の建物(上部構造体)の過大な変位を制御する方法として、下部構造体と上部構造体との間に水平方向に延在する粘性ダンパをさらに設置する方法が考えられる。
しかしながら、非常に発生頻度、確率の低いと考えられる設計での想定を超える地震動に対応するためこのような方法にすると、より発生頻度、確率の高い地震に対しても粘性ダンパが減衰力を発揮してしまい、免震性能を低下させ、上部構造体へ不要な地震力を生じさせるという問題がある。
そこで、免震層に生じる変位の大きさや速度の大きさに応じて減衰力を切り替える機構を有する粘性ダンパを設置する方法が考えられる(例えば特許文献1参照)。
特許文献1の油圧緩衝器(粘性ダンパ)では、油が通過する通路と可変絞り機構を設け、ピストンの変位に応じて減衰力が変化するものである。
特開平1-269741号公報
しかしながら、特許文献1のような免震層に生じる変位の大きさや速度の大きさに応じて減衰力を切り替える機構を有する粘性ダンパは、その構成が複雑であるため、簡易な構成により設計での想定を超える地震動に応じた減衰力を発揮させる粘性ダンパを用いることが望ましい。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、簡易な構成により、通常の設計で想定する地震動に対する免震性能を低下させることなく、設計での想定を超える地震動に応じた減衰力を発揮させる粘性ダンパを提供することを目的とする。
上述した目的を達成するため本発明の一実施形態は、粘性流体が封入されたシリンダと、前記シリンダの軸心上に配置されたピストンロッドと、前記ピストンロッドに連結されたピストンとを備える粘性ダンパであって、前記シリンダの内周面に内径が異なる複数の内径部が設けられていることを特徴とする。
また、本発明の一実施形態は、前記複数の内径部は、大径内径部と、前記大径内径部より小さい内径の小径内径部とを有し、前記シリンダの軸心方向の中央部に前記大径内径部が配置され、前記大径内径部の両側に前記小径内径部が設けられていることを特徴とする。
また、本発明の一実施形態は、前記大径内径部の両側に配置された前記小径内径部は、内径の異なる複数の小径内径部を含んで構成され、前記複数の小径内径部は、前記大径内径部から離れて配置される毎に内径が小さくなっていることを特徴とする。
また、本発明の一実施形態は、前記シリンダの軸心方向において隣り合う前記内径部は、それら内径部の間において内径が連続的に変化する接続面で接続されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施形態は、前記接続面は、前記シリンダの軸心方向において隣り合う前記内径部の内周面を接続する傾斜面であることを特徴とする。
また、本発明の一実施形態は、前記シリンダの内周面は、前記シリンダの軸心方向の中央部に対して対称に形成されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施形態は、前記ピストンロッドは、前記シリンダの軸心方向の一方の端部から他方の端部まで貫通して設けられ、前記ピストンは、前記ピストンロッドの長手方向の中央に設けられていることを特徴とする。
また、本発明の一実施形態は、前記粘性ダンパは、下部構造体上で免震支持された上部構造体を有する免震建物に設置され、前記ピストンロッドは前記シリンダの軸心方向の一方の端部から突出しており、前記シリンダから突出したピストンロッドの端部と、前記シリンダの軸心方向の他方の端部にそれぞれ取り付け部材が取り付けられ、それら取り付け部材のうちの一方の前記取り付け部材は、鉛直方向に延在する軸の周りに揺動可能な状態で前記上部構造体に連結され、それら取り付け部材のうちの他方の前記取り付け部材は、鉛直方向に延在する軸の周りに揺動可能な状態で前記下部構造体に連結されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施形態は、前記粘性ダンパは、下部構造体上で免震支持された上部構造体を有する免震建物に設置され、前記シリンダの軸心方向の一方の端部から突出した前記ピストンロッドの端部に取り付け部材が取り付けられ、前記シリンダの軸心方向の他方の端部に、貫通孔が形成された接続部材が取り付けられ、前記取り付け部材は、鉛直方向に延在する軸の周りに揺動可能な状態で前記上部構造体に連結され、前記シリンダの軸心方向の他方の端部から前記貫通孔を貫通して突出した前記ピストンロッドの端部は、前記下部構造体に設けられた孔部に挿入され、前記接続部材は、前記孔部の周囲の前記下部構造体の箇所に連結されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施形態は、前記粘性ダンパは、下部構造体上で免震支持された上部構造体を有する免震建物に設置され、前記シリンダの軸心方向の一方の端部から突出した前記ピストンロッドの端部に取り付け部材が取り付けられ、前記シリンダの軸心方向の他方の端部に、貫通孔が形成された接続部材が取り付けられ、前記取り付け部材は、鉛直方向に延在する軸の周りに揺動可能な状態で前記下部構造体に連結され、前記シリンダの軸心方向の他方の端部から前記貫通孔を貫通して突出した前記ピストンロッドの端部は、前記上部構造体に設けられた孔部に挿入され、前記接続部材は、前記孔部の周囲の前記上部構造体の箇所に連結されていることを特徴とする。
本発明の一実施形態によれば、粘性ダンパにおいてシリンダの内周面に内径が異なる複数の内径部を設けたことで、地震動に応じて発揮させる減衰力を切り替えることができ、簡易な構成により、通常の設計で想定する地震動に対する免震性能を低下させることなく、設計での想定を超える地震動に応じた減衰力を発揮させる上で有利となる。
また、シリンダの内周面の複数の内径部を大径内径部と、大径内径部より小さい内径の小径内径部とで構成し、シリンダの軸心方向の中央部に大径内径部が配置され、大径内径部の両側に小径内径部が設けられるようにすると、簡易な構成により、通常の設計で想定する地震動が生じた場合はピストンを大径内径部で移動させることにより免震性能を低下させることなく、設計での想定を超える地震動が生じた場合はピストンを小径内径部内で移動させることにより設計での想定を超える地震動に応じた減衰力を発揮させることができる。
また、大径内径部の両側に配置された小径内径部を内径の異なる複数の小径内径部を含んで構成し、複数の小径内径部を大径内径部から離れて配置される毎に内径を小さくすると、設計での想定を超える地震動が生じた場合に、ピストンを複数の小径内径部に順に移動させることによって、設計での想定を超える地震動の大きさに応じた減衰力を段階的に大きくさせながら発揮させることができる。
また、シリンダの軸心方向において隣り合う内径部を内径が連続的に変化する接続面で接続すると、設計での想定を超える地震動が生じた場合に、ピストンが大径内径部から小径内径部に移動する際に連続的に減衰力を変化させるように接続面を通過するため、減衰力が切り替わる際に徐々に減衰力が変化し、減衰力が切り替わることによる衝撃力を生じさせない、または衝撃力を緩和させる上で有利となる。
また、シリンダの軸心方向において隣り合う内径部の内周面を傾斜面で接続すると、設計での想定を超える地震動が生じた場合に、ピストンが大径内径部から小径内径部に移動する際に滑らかに減衰力を変化させるように傾斜面を通過するため、減衰力が切り替わる際に徐々に減衰力が大きくなり、減衰力が切り替わることによる衝撃力を生じさせない、または衝撃力を緩和させる上で有利となる。
また、シリンダの内周面をシリンダの軸心方向の中央部に対して対称に形成すると、上部構造体がシリンダの軸心方向のいずれの方向に移動した場合でも、同程度の減衰力を発揮させる上で有利となる。
また、ピストンロッドをシリンダの軸心方向の一方の端部から他方の端部まで貫通して設け、ピストンをピストンロッドの長手方向の中央に設けるようにすると、ピストンロッドがシリンダの両端部に支持されているため、座屈する懸念を緩和することができるとともに、ピストンロッドがシリンダの一方の端部のみ突出している場合と比べてピストンロッドの径を小さくすることができ、その結果として粘性ダンパの軽量化を図る上で有利となる。
さらに、ピストンロッドをシリンダの軸心方向の一方の端部から他方の端部まで貫通して設けることで、ピストンがシリンダの軸心方向の中央部に位置する場合のシリンダの内部機構を中央部に対して対称とすることができ、ピストンがシリンダの軸心方向のいずれに移動する場合でも同じ減衰機構となり、ピストンの変位に対して安定した減衰力を発揮する上で有利となる。
また、シリンダから突出したピストンロッドの端部と、シリンダの軸心方向の他方の端部にそれぞれ取り付け部材を取り付け、一方の取り付け部材が鉛直方向に延在する軸の周りに揺動可能な状態で上部構造体に連結され、他方の取り付け部材が鉛直方向に延在する軸の周りに揺動可能な状態で下部構造体に連結されるようにすると、地震動により上部構造体が下部構造体に対して水平方向に移動した場合でも、粘性ダンパを水平方向に揺動させることができ、粘性ダンパの破損を回避する上で有利となる。
また、シリンダの軸心方向の一方の端部から突出したピストンロッドの端部に取り付け部材を取り付け、シリンダの軸心方向の他方の端部に貫通孔が形成された接続部材を取り付け、取り付け部材が鉛直方向に延在する軸の周りに揺動可能な状態で上部構造体に連結され、シリンダの軸心方向の他方の端部から貫通孔を貫通して突出したピストンロッドの端部が下部構造体に設けられた孔部に挿入され、接続部材が孔部の周囲の下部構造体の箇所に連結されるようにすると、シリンダの軸心方向の他方の端部が下部構造体の孔部に挿入されるため、粘性ダンパの設置空間を縮小する上で有利となる。
また、シリンダの軸心方向の一方の端部から突出したピストンロッドの端部に取り付け部材を取り付け、シリンダの軸心方向の他方の端部に貫通孔が形成された接続部材を取り付け、取り付け部材が鉛直方向に延在する軸の周りに揺動可能な状態で下部構造体に連結され、シリンダの軸心方向の他方の端部から貫通孔を貫通して突出したピストンロッドの端部が上部構造体に設けられた孔部に挿入され、接続部材が孔部の周囲の上部構造体の箇所に連結されるようにすると、シリンダの軸心方向の他方の端部が上部構造体の孔部に挿入さえるため、粘性ダンパの設置空間を縮小する上で有利となる。
第1の実施の形態にかかる粘性ダンパが設けられた免震建物を示す模式図である。 第1の実施の形態にかかる粘性ダンパの構成図である。 第1の実施の形態にかかる粘性ダンパが最も縮んだ状態を示す説明図である。 第1の実施の形態にかかる粘性ダンパが最も伸びた状態を示す説明図である。 第1の実施の形態にかかる粘性ダンパにカバーを設けた説明図である。 第1の実施の形態の変形例にかかる粘性ダンパの構成図である。 第2の実施の形態にかかる粘性ダンパの構成図である。 第2の実施の形態にかかる粘性ダンパが最も縮んだ状態を示す説明図である。 第2の実施の形態にかかる粘性ダンパが最も伸びた状態を示す説明図である。 第2の実施の形態の変形例にかかる粘性ダンパの構成図である。 第3の実施の形態にかかる粘性ダンパの構成図である。
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、免震建物は、下部構造体2(基礎)上で免震支持された上部構造体4(建物)を有し、下部構造体2と上部構造体4との間に積層ゴム6と粘性ダンパ10Aが設置されている。
積層ゴム6は、上部構造体4を支持しつつ、地震発生時には上部構造体4を水平方向に移動させることで、地震による地盤の揺れを上部構造体4に伝えにくくするアイソレータである。
図1の例では、アイソレータとして複数のゴム板と鋼板を交互に積み重ねた積層ゴムが用いられているが、この他にも、転がり支承や滑り支承等を利用したアイソレータであってもよい。
粘性ダンパ10Aは、地震発生時に積層ゴム6によって水平方向に変位する上部構造体4の揺れに対して、水平方向の減衰力を発揮させるものである。
本実施の形態では、粘性ダンパ10Aを下部構造体2としての基礎と上部構造体4としての建物のとの鉛直方向の間に設置した例を示すが、建物の低層部と上層部との間など建物の各階層の間に設置してもよいし、建物と建物の外周部に設けられた基礎との間で水平方向に設置してもよい。
図2~4に示すように、粘性ダンパ10Aは、シリンダ12と、ピストンロッド14と、ピストン16と、取り付け部材18、20とを備え、それら部材は金属製である。
シリンダ12は、円筒状の周壁1202と、周壁1202の軸心方向の両端部にそれぞれ設けられた円板状の第1端壁1204および第2端壁1206とで構成された容器であって、密閉された内部には粘性流体である作動油Vが封入されている。
作動油Vは、例えば、耐熱性、耐寒性、化学的安定性に優れ、非腐食性で他材料へ悪影響を与えることがなく無害な高粘度の粘性オイル(シリコンオイル)である。
シリンダ12の内部は、ピストン16によって2つの領域に区画されており、ピストン16を挟んで第1端壁1204側の領域が第1シリンダ室12A、第2端壁1206側の領域が第2シリンダ室12Bとなっている。
シリンダ12の周壁1202の内周面1202Aの内径については、後述する。
ピストンロッド14は、ピストン16に連結され、シリンダ12の軸心上に配置された棒状部材であって、シリンダ12の軸心方向の一方の端部12Cにある第1端壁1204から突出している。
ピストンロッド14は、第1端壁1204の中心に形成された開口部1204Aにシール部材(不図示)を介して液密に貫通されている。
シリンダ12から突出したピストンロッド14の一方の端部14Aには、一方の取り付け部材18が取り付けられている。
ピストン16は、円板状の部材であって、ピストンロッド14を介して円板の中心をシリンダ12の軸心に合わせて配置されている。
ピストン16の外周面16Aとシリンダ12の周壁1202の内周面1202Aとの間には、作動油Vが通過可能な隙間Sが設けられている。
取り付け部材18、20は、粘性ダンパ10Aの両端部にそれぞれ設けられている。
本実施の形態では、一方の取り付け部材18は、上述のようにシリンダ12から突出したピストンロッド14の一方の端部14Aに取り付けられ、他方の取り付け部材20は、シリンダ12の軸心方向の他方の端部12Dにある第2端壁1206に取り付けられている。
そして、図1に示すように、一方の取り付け部材18は、鉛直方向に延在する軸4Bの周りに揺動可能な状態で上部構造体4に連結され、他方の取り付け部材20は、鉛直方向に延在する軸2Bの周りに揺動可能な状態で下部構造体2に連結されている。
具体的には、例えば、一方の取り付け部材18に設けられた取り付け孔1802に挿通された軸4Bが、上部構造体4の下部に取り付けられた保持部材4Aに接続されることで、一方の取り付け部材18が取り付け孔1802の中心を通過する軸周りに揺動可能な状態で上部構造体4に連結されている。
同様に、他方の取り付け部材20に設けられた取り付け孔2002に挿通された軸2Bが、下部構造体2の上部に取り付けられた保持部材2Aに接続されることで、他方の取り付け部材20が取り付け孔2002の中心を通過する軸周りに揺動可能な状態で下部構造体2に連結されている。
なお、本実施の形態では、一方の取り付け部材18が上部構造体4に連結され、他方の取り付け部材20が下部構造体2に連結されていたが、反対にして配置されていてもよい。すなわち、一方の取り付け部材18が下部構造体2に連結され、他方の取り付け部材20が上部構造体4に連結されるよう配置してもよい。
次に、シリンダ12の周壁1202の内周面1202Aについて説明する。
粘性ダンパ10Aは、シリンダ12の内周面1202Aに内径が異なる複数の内径部(大径内径部30、小径内径部32)が設けられている。
本実施の形態では、複数の内径部として、大径内径部30と、大径内径部30より小さい内径の2つの小径内径部32が設けられており、大径内径部30の両側にそれぞれ小径内径部32が設けられている。
すなわち、シリンダ12の軸心方向の中央部に大径内径部30が配置されており、大径内径部30の両側にシリンダ12の両端部まで延在する小径内径部32がそれぞれ設けられている。
シリンダ12の軸心方向において隣り合う内径部、すなわち大径内径部30と小径内径部32は、それら大径内径部30と小径内径部32の間において内径が連続的に変化する接続面34Aで接続されている。
本実施の形態では、接続面34Aは、大径内径部30と小径内径部32の内周面を接続する傾斜面34で構成されている。
傾斜面34は、シリンダ12の軸心方向の中央部から両端部に向かうにつれてシリンダ12の断面積が小さくなるよう傾斜しており、大径内径部30との境、および小径内径部32との境は、段差が生じないように接続されている。
なお、本実施の形態では、接続面34Aを断面が直線となる傾斜面34で構成した例を示すが、内径が連続的に変化する面であればどのように接続されていてもよい。すなわち、断面が複数の半円を組み合わせた形状となる接続面34Aや、断面が波型の形状となる接続面34Aで構成してもよい。
このようなシリンダ12の内周面1202Aは、シリンダ12の軸心方向の中央部に対して対称に形成されている。
すなわち、大径内径部30は、シリンダ12の軸心方向の中央部から両端部に向けて同じ長さで配置されている。
傾斜面34は、大径内径部30の両端からシリンダ12の両端部に向けて、シリンダ12の軸心方向に対して対称な角度かつ同じ長さでそれぞれ配置されている。
そして、小径内径部32は、傾斜面34の両端からシリンダ12の両端部まで同じ長さでそれぞれ配置されている。
また、ピストン16が大径内径部30の内部を移動する際には、図2に示すように、ピストン16の外周面16Aとシリンダ12の大径内径部30の内周面との間に隙間S1が形成される。
ピストン16が小径内径部32の内部を移動する際には、図3、4に示すように、ピストン16の外周面16Aとシリンダ12の小径内径部32の内周面との間に隙間S1より狭い隙間S2が形成される。
したがって、隙間S1より隙間S2の方が狭いため、ピストン16が大径内径部30の内部を移動している際に作動油Vが隙間S1を通過することにより発生する減衰力F1より、小径内径部32の内部を移動している際に作動油Vが隙間S2を通過することにより発生する減衰力F2の方が大きくなる。
ここで、地震動が生じた場合、積層ゴム6によって水平方向に往復移動させ上部構造体4と下部構造体2との間で変位が生じる。これに伴い、粘性ダンパ10Aのピストンロッド14がシリンダ12の軸心方向に移動して、ピストン16がシリンダ12の内部を軸心方向に往復移動する。
これを踏まえ、大径内径部30および傾斜面34を合わせた軸心方向の長さL1は、通常の設計で想定する地震動が生じた場合に、ピストン16がシリンダ12の軸心方向に移動可能な長さとなっている。
図2に示す大径内径部30および傾斜面34を合わせた長さL1は、例えば、450mm程度である。
また、小径内径部32の軸心方向の長さL2は、設計での想定を超える地震動が生じた場合に、ピストン16がシリンダ12の軸心方向に移動可能な長さとなっている。
図2に示す小径内径部32の長さL2は、例えば、250mm程度である。
次に、粘性ダンパ10Aの動作について説明する。
まず、発生頻度、確率が比較的高いと考えられる通常の設計で想定する地震動が生じた場合、上部構造体4がX1方向(図1参照)に移動すると、粘性ダンパ10Aは、ピストンロッド14がシリンダ12に挿入されるX1方向へ押圧され、図2に示すようにピストン16が大径内径部30内をX1方向に移動する。
そうすると、シリンダ12内の作動油Vが第2シリンダ室12Bから隙間S1を通過して第1シリンダ室12Aに流れることにより減衰力F1を発揮させる。
一方、上部構造体4がX2方向(図1参照)に移動すると、粘性ダンパ10Aは、ピストンロッド14がシリンダ12から抜き出されるX2方向に引っ張られ、図2に示すようにピストン16が大径内径部30内をX2方向に移動する。
そうすると、シリンダ12内の作動油Vが第1シリンダ室12Aから隙間S1を通過して第2シリンダ室12Bに流れることにより減衰力F1を発揮させる。
このように、通常の設計で想定する地震動が生じた場合には、積層ゴム6による免震性能を低下させることがない減衰力F1を発揮させることができる。
そして、発生頻度、確率が比較的低いと考えられる設計での想定を超える地震動が生じた場合、上部構造体4がX1方向(図1参照)に移動すると、粘性ダンパ10Aは、ピストンロッド14がシリンダ12に挿入されるX1方向へ押圧され、図3に示すように、ピストン16が大径内径部30内をX1方向に移動した後さらに小径内径部32内をX1方向に移動する。
そうすると、シリンダ12内の作動油Vが第2シリンダ室12Bから隙間S1を通過して第1シリンダ室12Aに流れることにより減衰力F1を発揮させ、さらに作動油Vが第2シリンダ室12Bから隙間S2を通過して第1シリンダ室12Aに流れることにより減衰力F1を切り替えて、減衰力F1より大きな減衰力F2を発揮させる。
一方、上部構造体4がX2方向に移動すると、粘性ダンパ10Aは、ピストンロッド14がシリンダ12から抜き出されるX2方向に引っ張られ、図4に示すように、ピストン16が大径内径部30内をX2方向に移動した後さらに小径内径部32内をX2方向に移動する。
そうすると、シリンダ12内の作動油Vが第1シリンダ室12Aから隙間S1を通過して第2シリンダ室12Bに流れることにより減衰力F1を発揮させ、さらに作動油Vが第1シリンダ室12Aから隙間S2を通過して第2シリンダ室12Bに流れることにより減衰力F1を切り替えて、減衰力F1より大きな減衰力F2を発揮させる。
このように、設計での想定を超える地震動が生じた場合には、その地震動に応じた減衰力F2を発揮させることができる。
ピストン16が大径内径部30内から小径内径部32内に移動する際、滑らかに減衰力を変化させるように傾斜面34を通過するため、減衰力F1から減衰力F2に切り替わる際に徐々に減衰力が大きくなり、減衰力が切り替わることによる衝撃力を生じさせない、または衝撃力を緩和させることができる。
このように、本実施の形態によれば、作動油Vが封入されたシリンダ12と、シリンダ12の軸心上に配置されたピストンロッド14と、ピストンロッド14に連結されたピストン16とを備える粘性ダンパ10Aにおいて、シリンダ12の内周面1202Aに内径が異なる複数の内径部(大径内径部30、小径内径部32)が設けられている。
したがって、ピストン16がシリンダ12内を移動する位置により、地震動に応じて発揮させる減衰力を切り替えることができ、簡易な構成により、通常の設計で想定する地震動に対する免震性能を低下させることなく、設計での想定を超える地震動に応じた減衰力を発揮させる上で有利となる。
また、シリンダ12の内周面1202Aの複数の内径部は、大径内径部30と、大径内径部30より小さい内径の小径内径部32とを有し、シリンダ12の軸心方向の中央部に大径内径部30が配置され、大径内径部30の両側に小径内径部32が設けられている。
したがって、簡易な構成により、通常の設計で想定する地震動が生じた場合はピストン16を大径内径部30内で移動させることにより免震性能を低下させることなく、設計での想定を超える地震動が生じた場合はピストン16を小径内径部32内で移動させることにより設計での想定を超える地震動に応じた減衰力を発揮させることができる。
シリンダ12の軸心方向において隣り合う大径内径部30と小径内径部32は、内径が連続的に変化する接続面34Aで接続されている。
したがって、設計での想定を超える地震動が生じた場合に、ピストン16が大径内径部30から小径内径部32に移動する際に連続的に減衰力を変化させるように接続面34Aを通過するため、減衰力が切り替わる際に徐々に減衰力が変化し、減衰力が切り替わることによる衝撃力を生じさせない、または衝撃力を緩和させる上で有利となる。
また、シリンダ12の軸心方向において隣り合う大径内径部30と小径内径部32は、それら内径部の内周面を接続する傾斜面34で接続されている。
したがって、設計での想定を超える地震動が生じた場合に、ピストン16が大径内径部30内から小径内径部32に移動する際に滑らかに減衰力を変化させるように傾斜面34を通過するため、減衰力F1から減衰力F2に切り替わる際に徐々に減衰力が大きくなり、減衰力が切り替わることによる衝撃力を生じさせない、または衝撃力を緩和させる上で有利となる。
また、シリンダ12の内周面1202Aは、シリンダ12の軸心方向の中央部に対して対称に形成されている。
したがって、上部構造体4がX1方向に移動した場合でも、X2方向に移動した場合でも、同程度の減衰力を発揮させる上で有利となる。
また、ピストンロッド14はシリンダ12の軸心方向の一方の端部12Cから突出しており、シリンダ12から突出したピストンロッド14の端部12Aと、シリンダ12の軸心方向の他方の端部12Dにそれぞれ取り付け部材18、20が取り付けられており、一方の取り付け部材18は、鉛直方向に延在する軸4Bの周りに揺動可能な状態で上部構造体4に連結され、他方の取り付け部材20は、鉛直方向に延在する軸2Bの周りに揺動可能な状態で下部構造体2に連結されている。
したがって、地震動により上部構造体4が下部構造体2に対して水平でシリンダ12の軸心方向と交差する方向に移動した場合でも、粘性ダンパ10Aが揺動できるため、粘性ダンパ10Aの破損を回避しつつ粘性ダンパ10Aを機能させることができる。
また、図5に示す粘性ダンパ10Bように、シリンダ12の第1端壁1204から突出したピストンロッド14を覆うカバー22を設けた構成としてもよい。
すなわち、カバー22は、一方の取り付け部材18の端部から延在する円筒状の部材であって、ピストンロッド14がシリンダ12から最も引き出された場合(図4に示す粘性ダンパ10Aが最も伸びた場合)でも、シリンダ12の第1端壁1204から突出するピストンロッド14を覆うことが可能な長さで形成されている。
このようなカバー22を設けることで、ピストンロッド14に埃などが付着することを防止できるとともに、ピストンロッド14がシリンダ12の軸心上で往復移動できるようにピストンロッド14を案内することができる。
(第1の実施の形態の変形例)
第1の実施の形態では、シリンダの軸心方向の中央部に大径内径部が配置され、大径内径部の両側にそれぞれ1つの小径内径部が設けられていた。これに対して、本変形例では、中央部に大径内径部が設けられ、大径内径部の両側に配置された小径内径部が内径の異なる2つの小径内径部を含んで構成されている点が異なっている。
なお、以下の実施の形態および変形例の説明では、第1の実施の形態と同様な個所、部材に同一の符号を付してその説明を省略し、第1の実施の形態と異なった個所について重点的に説明する。
図6を参照して、本変形例にかかる粘性ダンパ10Cのシリンダ12の周壁1202の内周面1202Aについて説明する。
本変形例では、大径内径部40と、大径内径部40より小さい内径の第1小径内径部42と、第1小径内径部42よりさらに小さい内径の第2小径内径部44とが設けられており、大径内径部40の両側にそれぞれ第1小径内径部42、第2小径内径部44が順に設けられている。
すなわち、シリンダ12の軸心方向において、中央部に大径内径部40が設けられており、その両側にシリンダ12の両端部に向けて延在する第1小径内径部42がそれぞれ設けられ、さらにその両側にシリンダ12の両端部まで延在する第2小径内径部44がそれぞれ設けられている。
したがって、第1小径内径部42、第2小径内径部44は、大径内径部40から離れて配置される毎に内径が小さくなっている。
シリンダ12の軸心方向において隣り合う内径部、すなわち大径内径部40と第1小径内径部42、および第1小径内径部42と第2小径内径部44は、それら内径部の内周面を接続する接続面46A、48Aである傾斜面46、48でそれぞれ接続されている。
傾斜面46、48は、シリンダ12の軸心方向の中央部から両端部に向かうにつれて断面積が小さくなるよう傾斜しており、大径内径部40との境、第1小径内径部42との境、および第2小径内径部44との境には、段差が生じないように接続されている。
このようなシリンダ12の内周面1202Aは、第1の実施の形態と同様、シリンダ12の軸心方向の中央部に対して対称に形成されている。
また、ピストン16が大径内径部40の内部を移動する際には、図6に示すように、ピストン16の外周面16Aとシリンダ12の大径内径部40の内周面との間に隙間S1が形成される。
ピストン16が第1小径内径部42の内部を移動する際には、ピストン16の外周面16Aとシリンダ12の第1小径内径部42の内周面との間に隙間S1より狭い隙間S2が形成される。
ピストン16が第2小径内径部44の内部を移動する際には、ピストン16の外周面16Aとシリンダ12の第2小径内径部44の内周面との間に隙間S2より狭い隙間S3が形成される。
したがって、隙間S1より隙間S2の方が狭いため、ピストン16が大径内径部40の内部を移動している際に作動油Vが隙間S1を通過することにより発生する減衰力F1より、第1小径内径部42の内部を移動している際に作動油Vが隙間S2を通過することにより発生する減衰力F2の方が大きくなる。
また、隙間S2より隙間S3の方がさらに狭いため、ピストン16が第1小径内径部42の内部を移動している際に作動油Vが隙間S2を通過することにより発生する減衰力F2より、第2小径内径部44の内部を移動している際に作動油Vが隙間S3を通過することにより発生する減衰力F3の方がさらに大きくなる。
つまり、ピストン16がシリンダ12内を端部に向けて移動するほど、減衰力が大きくなっていく。
大径内径部40および傾斜面46を合わせた軸心方向の長さL1は、第1の実施の形態と同様に、通常の設計で想定する地震動が生じた場合に、ピストン16がシリンダ12の軸心方向に移動可能な長さとなっている。
また、第1小径内径部42、第2小径内径部44および傾斜面48を合わせた軸心方向の長さ、および第2小径内径部44の長さは、地震動の大きさを考慮して任意に設計可能である。
次に、粘性ダンパ10Cの動作について説明する。
通常の設計で想定する地震動が生じた場合については、第1の実施の形態と同様である。
発生頻度、確率が比較的低いと考えられる設計での想定を超える地震動が生じた場合、上部構造体4がX1方向(図1参照)に移動すると、粘性ダンパ10Cは、ピストンロッド14がシリンダ12に挿入されるX1方向へ押圧され、ピストン16が大径内径部40内をX1方向に移動した後さらに第1小径内径部42内、第2小径内径部44内を順にX1方向に移動する。
そうすると、シリンダ12内の作動油Vが第2シリンダ室12Bから隙間S1を通過して第1シリンダ室12Aに流れることにより減衰力F1を発揮させ、さらに作動油Vが第2シリンダ室12Bから隙間S2を通過して第1シリンダ室12Aに流れることにより減衰力F1を切り替えて、減衰力F1より大きな減衰力F2を発揮させる。
そして、さらに作動油Vが第2シリンダ室12Bから隙間S3を通過して第1シリンダ室12Aに流れることにより減衰力F2を切り替えて、減衰力F2より大きな減衰力F3を発揮させる。
一方、上部構造体4がX2方向(図1参照)に移動すると、粘性ダンパ10Cは、ピストンロッド14がシリンダ12に挿入されるX2方向へ押圧され、ピストン16が大径内径部40内をX2方向に移動した後さらに第1小径内径部42内、第2小径内径部44内を順にX2方向に移動する。
そうすると、シリンダ12内の作動油Vが第1シリンダ室12Aから隙間S1を通過して第2シリンダ室12Bに流れることにより減衰力F1を発揮させ、さらに作動油Vが第1シリンダ室12Aから隙間S2を通過して第2シリンダ室12Bに流れることにより減衰力F1を切り替えて、減衰力F1より大きな減衰力F2を発揮させる。
そして、さらに作動油Vが第1シリンダ室12Aから隙間S3を通過して第2シリンダ室12Bに流れることにより減衰力F2を切り替えて、減衰力F2より大きな減衰力F3を発揮させる。
このように、設計での想定を超える地震動が生じた場合には、その地震動に応じた減衰力F2、F3を発揮させることができる。
ピストン16が大径内径部40内から第1小径内径部42内に移動する際、第1小径内径部42内から第2小径内径部44内に移動する際、滑らかに減衰力を変化させるように傾斜面46、48をそれぞれ通過するため、減衰力F1から減衰力F2、F3に切り替わる際に徐々に減衰力が大きくなり、減衰力が切り替わることによる衝撃力を生じさせない、または衝撃力を緩和させることができる。
このように、本変形例によれば、第1の実施の形態と同様の効果に加え、設計での想定を超える地震動が生じた場合に、ピストン16を第1小径内径部42内、第2小径内径部44内に順に移動させることによって、設計での想定を超える地震動の大きさに応じた減衰力を段階的に大きくさせながら発揮させることができる。
本変形例では、シリンダ12の周壁1202の内周面1202Aの中央部に大径内径部40が設けられ、その両側にそれぞれ2つの第1小径内径部42、第2小径内径部44が設けられた構成となっていたが、小径内径部は3つ以上設けられていてもよい。その場合、3つ以上の小径内径部は、大径内径部から離れて配置される毎に内径が小さくなるとともに、シリンダ12の軸心方向の中央部に対して対称に形成される。これにより、設計での想定を超える地震動の大きさに応じた減衰力をさらに段階的に大きくさせながら発揮させることができる。
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、ピストンロッドがシリンダの第1端壁から突出していたのに対して、本実施の形態では、ピストンロッドがシリンダの第1端壁および第2端壁から突出している点が異なっている。
図7~9に示すように、本実施の形態の粘性ダンパ10Dは、シリンダ12と、ピストンロッド24と、ピストン16と、取り付け部材18、26と、を備え、それら部材は金属製である。
ピストンロッド24は、シリンダ12の軸心上に配置され、シリンダ12の軸心方向の一方の端部12Cから他方の端部12Dまで貫通して設けられた棒状部材であって、シリンダ12の軸心方向の両端部にある第1端壁1204および第2端壁1206から突出している。
ピストンロッド24は、第1端壁1204および第2端壁1206それぞれの中心に形成された開口部1204A、1206Aにシール部材(不図示)を介して液密に貫通されている。
シリンダ12の第1端壁1204から突出したピストンロッド24の一方の端部24Aには、一方の取り付け部材18が取り付けられている。
他方の取り付け部材26は、シリンダ12の軸心方向の他方の端部12Dにある第2端壁1206に取り付けられており、第2端壁1206から軸心方向に突設された円筒部2602と、円筒部2602の端部に設けられた取り付け部2604とで構成されている。
円筒部2602は、ピストン16が第2端壁1206まで移動した際にシリンダ12の第2端壁1206から突出したピストンロッド24が収容可能な長さを有して形成されている(図8参照)。
他方の取り付け部材26は、取り付け部2604によって、第1の実施の形態の他方の取り付け部材20と同様に、鉛直方向に延在する軸2Bの周りに揺動可能な状態で下部構造体2に連結されている。
なお、本実施の形態では、一方の取り付け部材18が上部構造体4に連結され、他方の取り付け部材26が下部構造体2に連結されていたが、反対にして配置されていてもよい。すなわち、一方の取り付け部材18が下部構造体2に連結され、他方の取り付け部材26が上部構造体4に連結されるよう配置してもよい。
本実施の形態の粘性ダンパ10Dにおけるシリンダ12の周壁1202の内周面1202Aについては、第1の実施の形態と同様である。
また、粘性ダンパ10Dの動作についても第1の実施の形態と同様であるため、図7~図9を参照しながら概略を説明する。
まず、通常の設計で想定する地震動が生じた場合、上部構造体4がX1方向またはX2方向(図1参照)に移動すると、粘性ダンパ10Dは、ピストンロッド24がX1方向またはX2方向へ移動され、図7に示すようにピストン16が大径内径部30内をX1方向またはX2方向に移動する。そうすると、シリンダ12内の作動油Vが隙間S1を通過することにより減衰力F1を発揮させる。
このように、通常の設計で想定する地震動が生じた場合には、積層ゴム6による免震性能を低下させることがない減衰力F1を発揮させることができる。
また、設計での想定を超える地震動が生じた場合、上部構造体4がX1方向またはX2方向(図1参照)に移動すると、粘性ダンパ10Dは、ピストンロッド24がX1方向またはX2方向に移動され、ピストン16が大径内径部30内をX1方向またはX2方向に移動した後、図8、図9に示すように、さらに小径内径部32内をX1方向またはX2方向に移動する。そうすると、シリンダ12内の作動油Vが隙間S1を通過することにより減衰力F1を発揮させ、さらに作動油Vが隙間S2を通過することにより減衰力F1を切り替えて、減衰力F1より大きな減衰力F2を発揮させる。
このように、設計での想定を超える地震動が生じた場合には、その地震動に応じた減衰力F2を発揮させることができる。
このように、本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果に加え、以下の効果を奏する。
本実施の形態のピストンロッド24は、シリンダ12の軸心方向の一方の端部12Cから他方の端部12Dまで貫通して設けられることで、シリンダ12の第1端壁1204および第2端壁1206に支持されているため、座屈する懸念を緩和することができる。
また、ピストンロッド24が第1端壁1204および第2端壁1206で支持されているため、ピストンロッド24がシリンダ12の第1端壁1204からのみ突出している場合と比べてピストンロッド14の径を小さくすることができ、その結果として粘性ダンパ10Dの軽量化を図る上で有利となる。
また、ピストンロッド24をシリンダ12の軸心方向の一方の端部12Cから他方の端部12Dまで貫通して設けることで、ピストン16がシリンダ12の軸心方向の中央部に位置する場合のシリンダ12の内部機構を中央部に対して対称とすることができる。
したがって、ピストン16がX1方向に移動する場合と、X2方向に移動する場合とで、同じ減衰機構となり、ピストン16の変位に対して安定した減衰力を発揮する上で有利となる。
第2の実施の形態の粘性ダンパ10Dにおいても、第1の実施の形態の粘性ダンパ10Bように、カバー22を設けた構成としてもよい(図5参照)。
(第2の実施の形態の変形例)
第2の実施の形態では、シリンダの軸心方向の中央部に大径内径部が配置され、大径内径部の両側にそれぞれ1つの小径内径部が設けられていた。これに対して、本変形例では、中央部に大径内径部が設けられ、大径内径部の両側に配置された小径内径部が内径の異なる2つの小径内径部を含んで構成されている点が異なっている。
本変形例の粘性ダンパ10Eは、図10に示すように、第2の実施の形態の粘性ダンパ10Dに第1の実施の形態の変形例のシリンダ10Cの内周面を適用したものである。
このように、本変形例によれば、第1の実施の形態の変形例および第2の実施の形態と同様の効果を奏する。
(第3の実施の形態)
第2の実施の形態では、シリンダの軸心方向の他方の端部に取り付けられた他方の取り付け部材により下部構造体に連結されていたのに対して、本実施の形態では、シリンダの軸心方向の他方の端部に取り付けられた接続部材を介して下部構造体に連結されている点が異なっている。
図11に示すように、本実施の形態の粘性ダンパ10Fは、シリンダ12と、ピストンロッド24と、ピストン16と、取り付け部材18と、接続部材28と、を備えている。
本実施の形態では、地盤を掘削して形成した凹部にコンクリート製の免震ピットを設け、免震ピットに免震装置が配置されている。
免震ピットは、例えば直方体状であって、水平方向のピット床と、建物の外周部においてピット床から鉛直方向に延びるピット壁面2Pとに囲まれており、積層ゴム6は、上部構造体4とピット床との間に配置されている。
本実施の形態では、下部構造体2を構成するピット壁面2Pにピストンロッド24を収容する孔部2Hが設けられている。
そして、シリンダ12の第2端壁1206から突出したピストンロッド24の他方の端部24Bは、孔部2Hに挿入される。
接続部材28は、シリンダ12の軸心方向の他方の端部12Dにある第2端壁1206に取り付けられており、金属製の円板部材2802と、円板部材2802より直径の大きい金属製の円板部材2804と、円板部材2802と円板部材2804とに挟持され円板部材2802より直径の小さい円板状のゴム板2806とにより構成されている。
円板部材2802がシリンダ12の第2端壁1206に取り付けられ、円板部材2804が下部構造体2のピット壁面2Pに取り付けられている。
接続部材28の中央部には、シリンダ12の軸心方向に沿って貫通孔28Aが形成されており、シリンダ12の第2端壁1206から突出したピストンロッド24の他方の端部24Bが貫通している。
接続部材28は、下部構造体2のピット壁面2Pに設けられた孔部2Hの軸心と貫通孔28Aの軸心とが重なるように、孔部2Hの周囲のピット壁面2Pの箇所に取り付けられている。
接続部材28がゴム板2806を有していることで、シリンダ12がピット壁面2Pに対して僅かながら揺動可能な状態で下部構造体2に連結されているため、粘性ダンパ10Fを水平方向に揺動させることができ、粘性ダンパ10Fの破損を回避する上で有利となる。
シリンダ12の周壁1202の内周面1202A、粘性ダンパ10Fの動作については、第2の実施の形態と同様である。
このように、本実施の形態によれば、第2の実施の形態と同様の効果に加え、以下の効果を奏する。
本実施の形態のピストンロッド24は、他方の端部24Bが下部構造体2を構成するピット壁面2Pの孔部2Hに挿入されるため、粘性ダンパ10Fの設置空間を縮小する上で有利となる。
なお、本実施の形態では、下部構造体2を構成するピット壁面2Pにピストンロッド24が挿入可能な径を有する孔部2Hが設けられ、粘性ダンパ10Fがピット壁面2Pに取り付けられていたが、下部構造体2を構成する別の部材に取り付けられていてもよい。例えば、下部構造体2を構成するフーチング(コンクリート基礎)に、ピストンロッド24が挿入可能な径を有する孔部が設けられ、粘性ダンパ10Fがフーチングに取り付けられていてもよい。
また、本実施の形態では、一方の取り付け部材18が上部構造体4に連結され、接続部材28が下部構造体2に連結されていたが、反対にして配置されていてもよい。すなわち、一方の取り付け部材18が下部構造体2に連結され、接続部材28が上部構造体4に連結されるよう配置してもよい。
また、第3の実施の形態の粘性ダンパ10Fにおいても、第1の実施の形態の粘性ダンパ10Bように、カバー22を設けた構成としてもよい(図5参照)。
2 下部構造体
2A 保持部材
2H 孔部
2P ピット壁面
4 上部構造体
4A 保持部材
6 積層ゴム
10A、10B、10C、10D、10E、10F 粘性ダンパ
12 シリンダ
1202 周壁
1202A 内周面
1204 第1端壁
1206 第2端壁
14、24 ピストンロッド
16 ピストン
16A 外周面
18 取り付け部材(一方の取り付け部材)
20、26 取り付け部材(他方の取り付け部材)
22 カバー
2602 円筒部
2604 取り付け部
28 接続部材
2802、2804 円板部材
2806 ゴム板
30、40 大径内径部
32 小径内径部
34、46、48 傾斜面
34A、46A、48A 接続面
42 第1小径内径部
44 第2小径内径部

Claims (10)

  1. 粘性流体が封入されたシリンダと、前記シリンダの軸心上に配置されたピストンロッドと、前記ピストンロッドに連結されたピストンとを備える粘性ダンパであって、
    前記シリンダの内周面に内径が異なる複数の内径部が設けられている、
    ことを特徴とする粘性ダンパ。
  2. 前記複数の内径部は、大径内径部と、前記大径内径部より小さい内径の小径内径部とを有し、
    前記シリンダの軸心方向の中央部に前記大径内径部が配置され、前記大径内径部の両側に前記小径内径部が設けられている、
    ことを特徴とする請求項1記載の粘性ダンパ。
  3. 前記大径内径部の両側に配置された前記小径内径部は、内径の異なる複数の小径内径部を含んで構成され、
    前記複数の小径内径部は、前記大径内径部から離れて配置される毎に内径が小さくなっている、
    ことを特徴とする請求項2記載の粘性ダンパ。
  4. 前記シリンダの軸心方向において隣り合う前記内径部は、それら内径部の間において内径が連続的に変化する接続面で接続されている、
    ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載の粘性ダンパ。
  5. 前記接続面は、前記シリンダの軸心方向において隣り合う前記内径部の内周面を接続する傾斜面である、
    ことを特徴とする請求項4記載の粘性ダンパ。
  6. 前記シリンダの内周面は、前記シリンダの軸心方向の中央部に対して対称に形成されている、
    ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項記載の粘性ダンパ。
  7. 前記ピストンロッドは、前記シリンダの軸心方向の一方の端部から他方の端部まで貫通して設けられ、
    前記ピストンは、前記ピストンロッドの長手方向の中央に設けられている、
    ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項記載の粘性ダンパ。
  8. 前記粘性ダンパは、下部構造体上で免震支持された上部構造体を有する免震建物に設置され、
    前記ピストンロッドは前記シリンダの軸心方向の一方の端部から突出しており、
    前記シリンダから突出したピストンロッドの端部と、前記シリンダの軸心方向の他方の端部にそれぞれ取り付け部材が取り付けられ、
    それら取り付け部材のうちの一方の前記取り付け部材は、鉛直方向に延在する軸の周りに揺動可能な状態で前記上部構造体に連結され、
    それら取り付け部材のうちの他方の前記取り付け部材は、鉛直方向に延在する軸の周りに揺動可能な状態で前記下部構造体に連結されている、
    ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項記載の粘性ダンパ。
  9. 前記粘性ダンパは、下部構造体上で免震支持された上部構造体を有する免震建物に設置され、
    前記シリンダの軸心方向の一方の端部から突出した前記ピストンロッドの端部に取り付け部材が取り付けられ、
    前記シリンダの軸心方向の他方の端部に、貫通孔が形成された接続部材が取り付けられ、
    前記取り付け部材は、鉛直方向に延在する軸の周りに揺動可能な状態で前記上部構造体に連結され、
    前記シリンダの軸心方向の他方の端部から前記貫通孔を貫通して突出した前記ピストンロッドの端部は、前記下部構造体に設けられた孔部に挿入され、
    前記接続部材は、前記孔部の周囲の前記下部構造体の箇所に連結されている、
    ことを特徴とする請求項7記載の粘性ダンパ。
  10. 前記粘性ダンパは、下部構造体上で免震支持された上部構造体を有する免震建物に設置され、
    前記シリンダの軸心方向の一方の端部から突出した前記ピストンロッドの端部に取り付け部材が取り付けられ、
    前記シリンダの軸心方向の他方の端部に、貫通孔が形成された接続部材が取り付けられ、
    前記取り付け部材は、鉛直方向に延在する軸の周りに揺動可能な状態で前記下部構造体に連結され、
    前記シリンダの軸心方向の他方の端部から前記貫通孔を貫通して突出した前記ピストンロッドの端部は、前記上部構造体に設けられた孔部に挿入され、
    前記接続部材は、前記孔部の周囲の前記上部構造体の箇所に連結されている、
    ことを特徴とする請求項7記載の粘性ダンパ。
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