以下、図面を参照しながら本開示を実施するための形態(実施形態と称する)を説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限られず、例えば異なる実施形態同士を組み合わせたり、本開示の効果を著しく損なわない範囲で任意に変形したりできる。また、同じ部材については同じ符号を付すものとし、重複する説明は省略する。更に、同じ機能を有するものは同じ名称を付すものとする。図示の内容は、あくまで模式的なものであり、図示の都合上、本開示の効果を著しく損なわない範囲で実際の構成から変更することがある。
図1は、第1実施形態の超音波検査装置Zの構成を示す図である。図1では、走査計測装置1は、断面模式図で示している。図1には、紙面左右方向としてのx軸、紙面直交方向としてのy軸、紙面上下方向としてのz軸を含む直交3軸の座標系が示される。
超音波検査装置Zは、流体Fを介して被検査体Eに超音波ビームU(図3)を入射することで被検査体Eの検査を行うものである。流体Fは例えば水等の液体W(図29)、空気等の気体Gであり、被検査体Eは流体F中に存在する。第1実施形態では、流体Fとして空気(気体Gの一例)が使用される。従って、走査計測装置1の筐体101の内部は空気で満たされた空洞となっている。図1に示すように、超音波検査装置Zは、走査計測装置1と、制御装置2と、表示装置3とを備える。表示装置3は制御装置2に接続される。
走査計測装置1は、被検査体Eへの超音波ビームUの走査及び計測を行うものであり、筐体101に固定された試料台102を備え、試料台102には被検査体Eが載置される。被検査体Eは、任意の材料で構成されている。被検査体Eは例えば固体材料であり、より具体には例えば金属、ガラス、樹脂材料、あるいはCFRP(炭素繊維強化プラスチック、Carbon-Fiber Reinforced Plastics)等の複合材料等である。また、図1の例において、被検査体Eは内部に欠陥部Dを有している。欠陥部Dは、空洞等である。欠陥部Dの例は、空洞、本来あるべき材料と異なる異物材等である。被検査体Eにおいて、欠陥部D以外の部分を健全部Nと称する。
欠陥部Dと健全部Nとは、構成する材料が異なるため、両者の間では音響インピーダンスが異なり、超音波ビームUの伝搬特性が変化する。超音波検査装置Zは、この変化を観測して、欠陥部Dを検出する。
走査計測装置1は、超音波ビームUを放出する送信プローブ110と、偏心配置受信プローブ120とを有する。偏心配置受信プローブ120の具体的な構造は、図10A等を参照して後記する。送信プローブ110は、送信プローブ走査部103を介して筐体101に設置され、超音波ビームUを放出する。偏心配置受信プローブ120は、被検査体Eに関して送信プローブ110の反対側に設置されて超音波ビームUを受信する受信プローブ121である。偏心配置受信プローブ120は、送信プローブ110の送信音軸AX1とは異なる位置に受信音軸AX2を有する。送信音軸AX1と受信音軸AX2との距離が偏心距離Lである。偏心配置受信プローブ120は、受信プローブ走査部104を介して筐体101に設置される。
なお、本明細書においては、超音波ビームUを受信する受信プローブ121のうち、偏心距離Lがゼロよりも大きい位置に配置されたものを偏心配置受信プローブ120と定義し、偏心距離Lがゼロの位置に配置されたものを同軸配置受信プローブ140(図2A等)と定義する。言い換えると、受信プローブ121は、偏心配置受信プローブ120と同軸配置受信プローブ140とを包括する用語であり、偏心距離Lによらず、超音波を受信するプローブを表す名称である。
ここで、「送信プローブ110の反対側」とは、被検査体Eにより区切られる2つの空間のうち、送信プローブ110が位置する空間と反対側(z軸方向において反対側)の空間という意味であり、x、y座標が同一の反対側(つまり、xy平面に関して面対称の位置)という意味ではない。図1に示す通り、送信音軸AX1と、受信音軸AX2とが、偏心距離Lだけずれるよう、送信プローブ110及び偏心配置受信プローブ120が設置される。なお、送信音軸AX1、受信音軸AX2、偏心距離Lの具体的内容については後記する。
受信プローブ走査部104が移動することにより、偏心配置受信プローブ120は試料台102をx軸及びy軸方向に走査する。送信プローブ110と偏心配置受信プローブ120とは、被検査体Eをはさんでx軸方向、又は、y軸方向に対して偏心距離Lを保ちながら走査する(太両矢印)。
なお、走査計測装置1では、いずれも詳細は後記するが、偏心距離Lは以下のように設定されている。即ち、偏心距離Lが、超音波ビームUの、被検査体Eの欠陥部Dでの散乱により生じる散乱波U1(図6B)を受信可能な距離に設定されている。又は、被検査体Eの欠陥部Dへの入射時の偏心配置受信プローブ120での受信信号強度が被検査体Eの健全部Nへの入射時の受信信号強度よりも大きくなるように、偏心距離Lが設定されている。又は、偏心距離Lが、被検査体Eの健全部Nへの照射時にノイズ以外の受信信号が検出されない距離に設定されている。
走査計測装置1は、送信音軸AX1と受信音軸AX2との偏心距離Lがゼロよりも大きくなるように、送信プローブ110又は偏心配置受信プローブ120の少なくとも一方の位置を調整する偏心距離調整部105を備える。偏心距離調整部105は、筐体101に設置されている受信プローブ走査部104に備えられる。そして、偏心距離調整部105には偏心配置受信プローブ120が備えられる。偏心距離調整部105により、受信プローブ走査部104の位置から独立して偏心配置受信プローブ120を移動でき、受信音軸AX2と送信音軸AX1とのずれが偏心距離Lになるように設定できる。なお、偏心距離調整部105は送信プローブ走査部103側に設けてもよい。即ち、受信音軸AX2と送信音軸AX1とのずれが偏心距離Lになるように設定できれば良いのであるから、偏心距離調整部105を受信プローブ121側に設けても、送信プローブ110側に設けてもよい。
走査計測装置1には、制御装置2が接続されている。制御装置2は、走査計測装置1の駆動を制御するものであり、送信プローブ走査部103及び受信プローブ走査部104に指示することで、送信プローブ110及び偏心配置受信プローブ120の移動(走査)を制御する。送信プローブ走査部103及び受信プローブ走査部104がx軸及びy軸方向に同期して移動することにより、送信プローブ110及び偏心配置受信プローブ120は被検査体Eをx軸及びy軸方向に走査する。更に、制御装置2は、送信プローブ110から超音波ビームU(図3)を放出し、偏心配置受信プローブ120から取得した信号に基づいて波形解析を行う。
なお、第1実施形態では、被検査体Eが試料台102を介して筐体101に固定された状態、つまり、被検査体Eは筐体101に対し固定された状態で、送信プローブ110と偏心配置受信プローブ120とを走査する例が示される。これとは逆に、送信プローブ110と偏心配置受信プローブ120とが筐体101に対して固定され、被検査体Eが移動することで、走査が行われる構成としてもよい。
送信プローブ110と被検査体Eとの間、及び偏心配置受信プローブ120と被検査体Eとの間には、図示の例では気体G(流体Fの一例。液体W(図29)でもよい)が介在する。このため、送信プローブ110及び偏心配置受信プローブ120を被検査体Eに非接触で検査できるため、xy面内方向の相対位置をスムーズかつ高速に変えることが可能である。即ち、送信プローブ110及び偏心配置受信プローブ120と被検査体Eとの間に流体Fを介在させることにより、スムーズな走査が可能になる。
送信プローブ110は、収束型の送信プローブ110である。一方で、偏心配置受信プローブ120は、非収束型のプローブである。非収束型の偏心配置受信プローブ120を用いることで、幅広い範囲について欠陥部Dの情報を収集することができる。偏心配置受信プローブ120の収束性については、後で詳しく述べる。
第1実施形態では、送信プローブ110に対して、図1のx軸方向に偏心距離Lだけ偏心配置受信プローブ120がずらされて配置されているが、図1のy軸方向にずらされた状態で偏心配置受信プローブ120が配置されてもよい。又は、x軸方向にL1、y軸方向にL2(即ち、送信プローブ110のxy平面での位置を原点とすると、(L1,L2)の位置)に偏心配置受信プローブ120が配置されてもよい。
図2Aは、送信音軸AX1、受信音軸AX2及び偏心距離Lを説明する図であり、送信音軸AX1及び受信音軸AX2が鉛直方向に延びる場合である。図2Bは、送信音軸AX1、受信音軸AX2及び偏心距離Lを説明する図であり、送信音軸AX1及び受信音軸AX2が傾斜して延びる場合である。
音軸とは、超音波ビームUの中心軸と定義される。ここで、送信音軸AX1は、送信プローブ110が放出する超音波ビームUの伝搬経路の音軸と定義される。言い換えると、送信音軸AX1は、送信プローブ110が放出する超音波ビームUの伝搬経路の中心軸である。送信音軸AX1は、図2Bに示すように、被検査体Eの界面による屈折を含めることとする。つまり、図2Bに示すように、送信プローブ110から放出された超音波ビームUが、被検査体Eの界面で屈折する場合は、その超音波ビームUの伝搬経路の中心(音軸)が送信音軸AX1となる。
また、受信音軸AX2は、偏心配置受信プローブ120が超音波ビームUを放出すると想定した場合の仮想超音波ビームの伝搬経路の音軸と定義される。言い換えると、受信音軸AX2は、偏心配置受信プローブ120が超音波ビームUを放出すると想定した場合の仮想超音波ビームの中心軸である。ただし、詳細は後記するが、偏心配置受信プローブ120の探触子面は、マクロ的な形状として平面状を有するが、ミクロ的な形状として例えば微小な突起(単位入射部1331)を表面に多数有する。従って、受信音軸AX2は、当該微小な突起(単位入射部1331)を備えないことにより当該突起を備えず表面(探触子面)を平滑にした場合の、表面から延びる法線である。
具体例として、説明の簡略化のため、探触子面が平面状である非収束型の受信プローブ121の場合を挙げ、偏心距離Lについて説明する。平面状の場合、受信音軸AX2の方向は探触子面の法線方向であり、探触子面の中心点を通る軸が受信音軸AX2になる。探触子面が長方形の場合は、その中心点は長方形の対角線の交点と定義する。
受信音軸AX2の方向が探触子面の法線方向である理由は、その受信プローブ121から放射する仮想的な超音波ビームUが探触子面の法線方向に出射するからである。超音波ビームUを受信する場合も、探触子面の法線方向で入射する超音波ビームUを感度よく受信できる。
偏心距離Lとは、送信音軸AX1と、受信音軸AX2とのずれの距離で定義される。従って、図2Bに示すように、送信プローブ110から放出された超音波ビームUが屈折する場合、偏心距離Lは、屈折している送信音軸AX1と、受信音軸AX2とのずれの距離で定義される。第1実施形態の超音波検査装置Zは、このように定義される偏心距離Lが、ゼロよりも大きな距離となるよう、偏心距離調整部105(図1)によって送信プローブ110及び偏心配置受信プローブ120が調整される。これにより、送信プローブ110から放出され、欠陥部D(図1)の周囲を透過した超音波ビームU(図3)を減らし、受信プローブ121での欠陥部Dに由来する信号変化を検出し易くできる。
ただし、第1実施形態では、好ましい例として、上記のように、偏心配置受信プローブ120は、欠陥部Dでの超音波ビームUの散乱により生じた散乱波U1(図6B)を受信する。欠陥部Dの存在により散乱波U1が生成するため、散乱波U1の検出により、欠陥部Dの検出精度を更に向上できる。以下の例では、説明の簡略化のために、散乱波U1を受信可能な位置に設置された偏心配置受信プローブ120を例に挙げて、第1実施形態を説明する。
図2Aは、送信プローブ110を被検査体Eの表面における法線方向に配置した場合を示している。図2A及び図2Bにおいて、送信音軸AX1を実線の矢印で示している。また、受信音軸AX2を一点鎖線の矢印で示している。なお、図2A及び図2Bにおいて、破線で示す受信プローブ121の位置が偏心距離Lがゼロの位置であり、送信音軸AX1と受信音軸AX2とが一致する受信プローブ121は同軸配置受信プローブ140である。また、実線で示す受信プローブ121はゼロよりも大きな偏心距離Lの位置に配置されている偏心配置受信プローブ120である。送信音軸AX1が水平面(図1のxy平面)に対して垂直になるように送信プローブ110が設置される場合、超音波ビームUの伝搬経路は屈折しない。つまり、送信音軸AX1は屈折しない。
図2Bは、送信プローブ110を被検査体Eの表面における法線方向から角度αだけ傾けて配置した場合を示す図である。図2Bでも図2Aと同様、送信音軸AX1を実線の矢印で示し、受信音軸AX2を一点鎖線の矢印で示している。図2Bに示す例の場合、前記したように、被検査体Eと流体Fとの界面で、超音波ビームUの伝搬経路が屈折角βで屈折する。そのため、送信音軸AX1は、図2Bの実線矢印で示すように折れ曲がる(屈折する)。この場合、破線で示した同軸配置受信プローブ140の位置は、送信音軸AX1上に位置するため偏心距離Lがゼロの位置である。そして、前記したように、超音波ビームUが屈折する場合であっても、偏心配置受信プローブ120は、送信音軸AX1と受信音軸AX2との距離がLになるように、配置される。なお、図1に示す例では、送信プローブ110を被検査体Eの表面における法線方向に設置しているので、偏心距離Lは、図2Aに示すようなものとなる。
偏心距離Lは、被検査体Eの健全部Nでの受信信号よりも、欠陥部Dでの信号強度の方が大きくなるような位置に設定する。この点については後記する。
図3は、送信プローブ110の構造を示す断面模式図である。図3では、簡略化のために、放出される超音波ビームUの外郭のみを図示しているが、実際には、探触子面114の全域にわたり、探触子面114の法線ベクトル方向に多数の超音波ビームUが放出される。
送信プローブ110は、超音波ビームUを収束するように構成される。これにより、被検査体E中の微小な欠陥部Dを高精度に検出できる。微小な欠陥部Dを検出できる理由は後記する。送信プローブ110は、送信プローブ筐体115を備え、送信プローブ筐体115の内部に、バッキング112と、圧電変換素子111(例えば振動子)と、整合層113とを備える。圧電変換素子111には電極(図示せず)が取り付けられており、電極はリード線118により、コネクタ116に接続されている。さらに、コネクタ116はリード線117により電源装置(図示しない)及び制御装置2に接続される。
本明細書において、送信プローブ110の探触子面114とは、整合層113を備える場合は整合層113の表面と定義し、整合層113を備えない場合は圧電変換素子111の表面と定義する。即ち、探触子面114は、超音波ビームUを放出する面である。
図4Aは、偏心配置受信プローブ120からの受信波形であり、被検査体Eの健全部Nでの受信波形を示す図である。図4Bは、偏心配置受信プローブ120からの受信波形であり、被検査体Eの欠陥部Dでの受信波形を示す図である。図4Bは、被検査体E内に設けられた幅2mm幅の空洞(欠陥部D)のxy座標位置に送信プローブ110を配置したときの受信信号を示す。なお、図4A及び図4Bにおいて、時間はバースト波が送信プローブ110に印加されてからの経過時間を示し、被検査体Eとして厚さ2mmのステンレス板を用いた。送信プローブ110には周波数800KHzのバースト波を印加した。より具体的には、10波の正弦波で構成されるバースト波を一定周期で被検査体Eに印加した。
図4Aでは、有意な信号は観測されていないが、図4Bでは、バースト波が送信プローブ110に印加されてから90マイクロ秒後に有意な信号が観測されている。この有意な信号が観測されるまでの90マイクロ秒の遅れは、超音波ビームUの放出から偏心配置受信プローブ120への散乱波U1の到達までに時間がかかるためである。具体的には、空中の音速が340(m/s)であるのに対し、被検査体Eを構成するステンレス中では6000(m/s)程度であるため、90マイクロ秒の遅れが発生する。
図5は、信号強度データのプロットの例を示す図である。この例では、幅2mmの欠陥部Dに対し、送信プローブ110と偏心配置受信プローブ120とをx軸方向に走査し、x軸位置での受信信号(図4Bに示す受信信号)から抽出した信号強度データ(走査位置毎の信号振幅)をプロットしている。第1実施形態では、信号強度データの抽出は、図4Bに示す受信信号のPeak To Peak値、即ち、適切な時間領域での最大値と最小値との差の抽出により行った。信号強度データの抽出方法の他の例として、図4Bに示す受信信号が、短時間フーリエ変換などの信号処理により周波数成分に変換され、適切な周波数成分の強度が抽出されてもよい。さらには、信号強度データとして、適切な参照波を基準として、相関関数が計算されてもよい。このようにして信号強度データが、送信プローブ110の各走査位置に対応して取得される。
図5に示した信号強度データのプロットにおいて、2mm幅の空洞(欠陥部D)は、図5の符号D1に対応する。被検査体Eの健全部N(符号D1以外の部分)ではノイズレベルの信号であるのに対し、内部に欠陥部Dがある位置(符号D1)では、受信信号が有意に大きくなっていることがわかる。
そこで、偏心距離調整部105は、欠陥部Dへの入射時の偏心配置受信プローブ120での受信信号強度が健全部Nへの入射時の受信信号強度よりも大きくなるように、偏心距離Lを調整することが好ましい。このようにすることで、受信信号強度に基づいて、欠陥部Dを検出できる。このような偏心距離Lは、例えば、散乱波U1(図6B)を受信可能な位置に配置した偏心配置受信プローブ120の受信音軸AX2と送信プローブ110の送信音軸AX1との距離である。偏心距離調整部105は、例えば、いずれも図示しないが、アクチュエータ、モータ等により構成される。
また、偏心距離調整部105は、偏心距離Lを、健全部Nへの照射時にノイズ以外の受信信号が検出されない距離に調整することが好ましい。即ち、偏心距離調整部105は、被検査体Eの健全部Nでは有意の受信信号が出ないように偏心距離Lを設定することが好ましい。このようにすることで、SN比(Signal to Noise比、信号雑音比)を増大させ、ノイズ以外の受信信号が検出された場所を欠陥部Dと判断でき、欠陥部Dを検出できる。
偏心距離Lは、例えば、被検査体Eと同じ材料で構成され、かつ、内部に欠陥部Dを有する標準試料を使用して決定できる。そして、標準試料の欠陥部Dへの超音波ビームUの照射し、超音波ビームU又は散乱波U1を受信可能な位置に基づき、偏心距離Lを決定できる。
送信プローブ110をx軸方向のみの1次元で走査した場合は、表示装置3には図5に示す信号強度データのグラフが表示される。送信プローブ110の走査方向がx軸方向及びy軸方向の2次元の場合については、信号強度データをプロットすることで、欠陥部Dの位置が2次元画像として示され、それが表示装置3に表示される。
図6Aは、第1実施形態における超音波ビームUの伝搬経路であって、健全部Nに超音波ビームUが入射した場合を示す図である。図6Bは、第1実施形態における超音波ビームUの伝搬経路であって、欠陥部Dに超音波ビームUが入射した場合を示す図である。
図6A及び図6Bに示されるように、送信プローブ110から放出された超音波ビームUは被検査体Eに入射する。図6Aに示すように、健全部Nに超音波ビームUが入射した場合、超音波ビームUは送信音軸AX1に向かって収束するように通過する。そのため、偏心距離Lを保って配置されている偏心配置受信プローブ120では受信信号が観測されない。これに対し、図6Bに示すように、欠陥部Dに超音波ビームUが入射された場合、欠陥部Dで超音波ビームUが散乱され、その散乱波U1が偏心設置された偏心配置受信プローブ120で受信される。そのため、有意な受信信号が観測される。
このように、被検査体Eにおける欠陥部Dにより散乱された散乱波U1が偏心配置受信プローブ120で観測される。そのため、健全部Nでの受信信号よりも欠陥部Dでの受信信号の方が大きくなる。即ち、信号が大きな位置に欠陥部Dがあると判定される。従って、偏心距離調整部105は、偏心距離Lを、照射された超音波ビームUの、被検査体Eの欠陥部Dでの散乱により生じる散乱波U1を受信可能な距離に調整することが好ましい。このようにすることで、欠陥部Dに特有の散乱波U1を検出でき、欠陥部Dの検出精度を向上できる。
偏心距離Lは、送信プローブ110から放出された超音波ビームUを受信せず、散乱波U1のみを選択的に受信できる長さになることが好ましい。これにより、SN比を増大させて、欠陥部Dの検出性能、特に検出感度を向上できる。ここで、「検出感度が高い」とは、従来法よりも小さな欠陥部Dを検出可能ということである。即ち、検出可能な欠陥部Dのサイズの下限が従来法よりも小さいことである。
ここで、比較例として、従来の超音波検査の手法を説明する。
図7Aは、従来の超音波検査方法での超音波ビームUの伝搬経路を示す図であり、健全部Nへの入射時を示す図である。図7Bは、従来の超音波検査方法での超音波ビームUの伝搬経路を示す図であり、欠陥部Dへの入射時を示す図である。従来の超音波検査方法では、例えば特許文献1に記載されているように、送信音軸AX1と受信音軸AX2とが一致するように、送信プローブ110及び受信プローブ121としての同軸配置受信プローブ140が配置される。
図7Aに示すように、被検査体Eの健全部Nに超音波ビームUが入射された場合、超音波ビームUが被検査体Eを通過して同軸配置受信プローブ140に到達する。従って、受信信号が大きくなる。一方、図7Bに示すように、欠陥部Dに超音波ビームUが入射された場合、欠陥部Dにより超音波ビームUの透過が阻止されるために受信信号が減少する。このように受信信号の減少により欠陥部Dを検出する。これは、特許文献1に示されている通りである。
ここで、図7A及び図7Bに示すように、欠陥部Dにおいて超音波ビームUの透過が阻止されることによって受信信号が減少し、欠陥部Dを検出する方法を、ここででは「阻止法」と呼ぶことにする。一方、第1実施形態のように、欠陥部Dでの散乱波U1を検出する検査方法を「散乱法」と呼ぶことにする。
図8は、従来の超音波検査方法での信号強度データのプロットを示す図である。この図は、発明者らが、図7A及び図7Bに示す阻止法による超音波検査方法、即ち、送信音軸AX1と受信音軸AX2を一致させた配置で、上記の図5で用いられた被検査体Eと同じ欠陥部Dを有する被検査体Eを検査した信号強度グラフである。図8において、符号D1の部分が欠陥部Dに相当する部分である。
図8では、欠陥部Dの中心位置(位置が0mm)で信号の減少が認められるが、その減少量は小さい。これは、超音波ビームUの大きさよりも小さな欠陥部Dでは、その周囲を透過する超音波ビームUが多いことに起因すると考えられる。このため、送信音軸AX1と受信音軸AX2とを一致させた阻止法では、欠陥部Dに由来する信号変化を検出し難く、検出感度が低い。
これに対し、送信音軸AX1と受信音軸AX2とをずらすことで、偏心配置受信プローブ120が受信する信号強度のうち、超音波ビームUの大きさよりも小さな欠陥部Dの周囲を透過する超音波ビームUの信号を小さくできる。これにより、欠陥部Dに起因する信号強度の減少量を相対的に大きくし、欠陥部Dの検出性能、特に検出感度を向上できる。中でも、上記の図5に示すように、第1実施形態に好適な散乱法による構成によれば、阻止法による図8の結果と比べると、欠陥部Dの位置を明確に検出できることがわかる。つまり、比較例である図8に示す受信結果と、図5に示す第1実施形態による手法の受信結果とを比較すると、図5に示す第1実施形態による手法の方が、高いSN比が得られる。
このように、第1実施形態の散乱法が高いSN比を得られる理由について、図9A及び図9Bを参照して説明する。
図9Aは、被検査体E内での欠陥部Dと超音波ビームUとの相互作用を示す図であり、直達する超音波ビームU(以下、「直達波U3」という)を受信する様子を示す図である。直達波U3については後記する。図9Bは、被検査体E内での欠陥部Dと超音波ビームUとの相互作用を示す図であり、散乱波U1を受信する様子を示す図である。ここでは、欠陥部Dの大きさが超音波ビームUの幅(以下、ビーム幅BWと称する)よりも小さい場合を考察する。ここでのビーム幅BWとは、欠陥部Dに到達した時の超音波ビームUの幅である。
また、図9A及び図9Bは、欠陥部D近傍の微小領域での超音波ビームUの形状を模式的に示しているので超音波ビームUを平行に描いてあるが、実際には収束させた超音波ビームUである。さらに、図9A及び図9Bでの受信プローブ121の位置は、わかりやすく説明するために概念的な位置を記入したものであり、受信プローブ121の位置と形状は正確にスケールされていない。即ち、欠陥部Dと超音波ビームUとの形状の拡大スケールで考えると、図9A及び図9Bに示す位置よりも、図面上下方向で離れた位置に受信プローブ121は位置する。ここで、受信プローブ121は、図9Aでは同軸配置受信プローブ140であり、図9Bでは偏心配置受信プローブ120を意味する。
超音波ビームUは、収束させて入射させても欠陥部D近傍ではある有限の幅を持つ。これを、欠陥部Dの位置でのビーム幅BWとする。ちなみに、図9A及び図9Bでは、欠陥部Dの位置でのビーム幅BWが欠陥部Dの大きさよりも広い場合を示している。
図9Aは、送信音軸AX1と受信音軸AX2とを一致させた阻止法の場合を示す図である。欠陥部Dがビーム幅BWよりも小さい場合、一部の超音波ビームUは阻止されるので受信信号は減少するが、ゼロにはならない。例えば、欠陥部Dの断面積がビーム幅BWで規定されるビーム断面積の20%の場合、受信信号は概ね20%の減少に止まるので、欠陥部Dの検出が困難である。つまり、図9Aに示すような場合、欠陥部Dが存在する箇所では、受信信号が20%減少するにとどまる(図8参照)。
図9Bは、第1実施形態の好適な手法の場合、即ち散乱法の場合を示す図である。散乱法では、欠陥部Dに超音波ビームUが当たらない場合、超音波ビームUは偏心配置受信プローブ120に入射しないので、受信信号はゼロである。そして、図9Bに示すように、超音波ビームUの一部が欠陥部Dに当たった場合でも、散乱波U1が偏心配置受信プローブ120で観測されるので、阻止法と比べて欠陥部Dの検出が容易である。つまり、欠陥部Dが存在しなければ受信信号はゼロとなり、微小でも欠陥部Dが存在すれば受信信号は非ゼロとなる。そのため、SN比を高くすることが可能になる(図5参照)。
このように、第1実施形態による手法(散乱法)によれば、ビーム幅BWよりも小さな欠陥部Dを、高感度で検出できる。ここで、「高感度で検出できる」とは、従来法より小さな欠陥部Dを検出可能ということである。即ち、検出可能な欠陥部Dのサイズの下限が従来法よりも小さい。
また、図9Aで示すように、阻止法では、健全部Nに対応する受信信号量を基準として、そこからの減少量で欠陥部Dが判定される。従って、健全部Nでの受信信号が一定値とすることが好ましい。しかしながら、流体Fの中でも特に気体G中を伝搬する超音波では、液体W(図29)中を伝搬する超音波と比較して、受信プローブ121に到達する強度が極めて小さい。そのため、受信信号は高い増幅率(ゲイン)で増幅することが好ましい。このため、ゲインを一定に保つには高精度な信号増幅回路が好ましい。一方、第1実施形態による散乱法では、図5に示すように、健全部Nでは信号が、ほぼゼロであり、欠陥部Dで信号が観測されるので、信号増幅回路のゲイン安定性への要求を小さくできる。ただし、上記の図5では、オフセット値だけ信号強度の値が底上げされている。
また、第1実施形態では、ポジ画像が得られる。即ち、散乱法では健全部Nには信号が発生しないか発生しても小さく、欠陥部Dでは信号が新たに発生するか信号が大きくなる。つまり、欠陥部Dのポジ画像が得られる。これに対して、阻止法では、健全部Nで信号が大きく、欠陥部Dで信号が減少する。つまり、欠陥部Dのネガ画像が得られる。
図10Aは、偏心配置受信プローブ120の構造を説明する図であり、側方から視た図である。偏心配置受信プローブ120は、散乱波U1の受信面(探触子面)である表面側から、音響レンズ部130と、整合層131と、圧電変換素子132とを備える。散乱波U1(図6B)は、音響レンズ部130に入射する。なお、音響レンズ部130と整合層131とを同一の部材で構成することで、これらが一体に区別できないように構成してもよい。即ち、圧電変換素子132に、整合層131の機能も有する音響レンズ部130を接触させてもよい。このようにしても、本開示による効果が奏される。
圧電変換素子132は、超音波を電気信号に変換する素子であり、例えば振動子、MEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)型の素子等により構成できる。振動子の例として、セラミクス等の材料で構成された圧電振動子が挙げられ、圧電効果(ピエゾ効果)により超音波が電気信号に変換される。MEMS型の圧電変換素子の例として、静電容量圧電変換素子(CMUT、Capacitive Micro-machined Ultrasonic Transducer)が挙げられる。静電容量圧電変換素子は、微小薄膜を備えた静電容量素子であり、超音波により微小薄膜が振動する際の電気容量の変化量を計測することで、超音波強度を計測できる。
上記のように、偏心配置受信プローブ120が散乱波U1(図6B)を検出することで、微小な欠陥部Dを検出できる。検出時、受信した散乱波U1に起因する受信信号強度が大きいほど、検出精度が高い。受信信号強度は、散乱波U1の入射方向が、圧電変換素子132の法線方向(受信音軸AX2の方向)に近いほど、高くなる。そこで、偏心配置受信プローブ120は表面に入射部133を備え、入射部133により、散乱波U1を圧電変換素子132の法線方向に沿って入射できる。ここでいう法線方向に沿ってとは、法線方向(受信音軸AX2と同方向)でもよいし、本開示による効果を著しく損なわない程度に法線方向(受信音軸AX2)に対して傾斜を有した入射でもよい。具体的には例えば、受信音軸AX2に対する角度(後記する角度φ(図11))として、例えば0°以上3°以下である。
入射部133は、表面に複数の単位入射部1331を備える。単位入射部1331は法線を複数有する表面形状を有する。ここでいう法線は、例えば所定方向に延在し、具体的には単位入射部1331の局所的な表面における法線NL(図11)をいい、例えば図10Aにおいて表面位置によって延在方向が変化する直線である。例えば、図示の例では、単位入射部1331は、断面視で曲線の表面形状を有する。従って、表面から延びる法線の延在方向は、表面の位置によって変化する。所定方向に延在する法線NLを複数有することで、詳細は図11を参照して後記するが、様々な入射角γ(図11)で単位入射部1331に入射した散乱波U1を、圧電変換素子132の法線方向に沿って圧電変換素子132に入射できる。これにより、受信信号強度を強くできる。
単位入射部1331の表面形状は、受信音軸AX2を含む断面視(例えば図10A)で、曲線を含む。曲線を含むことで、法線NLの数を多くでき、受信信号強度を強くできる入射角γの範囲を広くできる。
音響レンズ部130は、表面側に、例えば音響レンズ部130と一体になるように、入射部133を備える。これにより、入射部133に入射した散乱波U1の大きな減衰を抑制して圧電変換素子132に伝達できる。ただし、入射部133は、音響レンズ130とは別部材として構成されてもよい。
音響レンズ部130は、流体F(例えば空気等の気体G)中の音速よりも大きな材料により構成される。これにより、式(1)及び式(2)等に基づき、散乱波U1を、圧電変換素子132の法線方向に沿って圧電変換素子132に入射できる。
圧電変換素子132には、対応する探触子面に、少なくとも2つの単位入射部1331が配置される。ここでいう対応する探触子面は、図示の例では、音響レンズ部130の上表面である。これにより、それぞれの単位入射部1331に入射した散乱波U1について、圧電変換素子132に好適角度で入射できる。このため、偏心配置受信プローブ120の受信面の広い範囲にわたって受信許容角度を拡大でき、受信面積が広く、かつ、受信許容角度が大きい受信プローブ121を実現できる。そして、本開示の超音波検査装置Zでは、偏心配置受信プローブ120の受信面における散乱波U1の入射位置は、欠陥部Dの深さ、形状等により異なる。このため、受信面積が広く、かつ、受信許容角度が大きい受信プローブ121の使用により、受信信号の受信効率を高めることでき、検出性能を向上できる。
なお、受信プローブ121が複数個の圧電変換素子132を備え、それぞれの圧電変換素子が、その対応する探触子面に、少なくとも2つの単位入射部1331が配置された構成でもよい。この場合でも、本開示の効果が得られることは明らかである。
図10Bは、図10Aの上面図である。単位入射部1331は、仮想的な円柱である仮想円柱1342の側面形状の一部を表面に有する。図示の例では、単位入射部1331は、真円柱である仮想円柱1342の側面形状のうち、中心軸を含むように半分(円の直径の1/2)に切断した真円柱(半真円柱)の側面形状を例えば凸状に備える。ただし、半分である必要は無く、半分よりも多い量(例えば当該円の直径の2/3の高さを有する単位入射部1331)、又は、半分よりも少ない量(例えば当該円の直径の1/3の高さを有する単位入射部1331)等でもよい。なお、ここでいう真円は、厳密な真円である必要は無く、通常の測定方法により測定された直径が円周方向で等しい円であればよい。
なお、図10Aにおいて、二点鎖線で示した仮想円柱1342は、仮想的な円柱であり、入射部133の表面から出た部分(図10Aで実線で表示)が実体を持つ。仮想円柱1342のうち、図10Aで入射部133の内部に二点鎖線で示した線は、説明のための仮想的な線であり、実体はない。即ち、図10Aに示した入射部133の形状は、複数個の単位入射部1331である凸形状を備えた形状を表している。
仮想円柱1342,1343の意味については、図20A、図23、図24等についても同様である。
円柱の側面形状の一部を表面に有することで、例えば図10Aにおける紙面に垂直な方向に幅を有した散乱波U1が入射した場合にも散乱波U1を受信できる。
図示の例では、単位入射部1331は、水平面で、送信音軸AX1(図1)と受信音軸AX2(図10A)とを接続する仮想的な線分の方向(散乱波U1の伝達方向。紙面左右方向)に、連続的に複数配置される。また、単位入射部1331は、水平面内で、当該線分に垂直な方向(紙面上下方向)である一方向から他方向に延在する。
図11は、図10Aに示す偏心配置受信プローブ120の表面を拡大して示す図である。図11は、散乱波U1が入射角γで入射部133に入射した場合を示す。ここでいう入射角γの基準となる直線は、圧電変換素子132の法線方向である受信音軸AX2である。図示の例において、受信音軸AX2と法線NLとは表面位置P1において交差する。表面位置P1での法線NLに対する散乱波U1の入射角は角度α1である。受信音軸AX2と法線NLとの為す角度は入射角γと角度α1との和である。表面位置P1に至った散乱波U1は、法線NLに対し角度α3を有して屈折して入射する。また、散乱波U1が入射する単位入射部1331の表面位置P1は、半円柱により構成される単位入射部1331における受信音軸AX2と同方向の直線(一点鎖線)に対する中心角ωで定義する。
角度α1と角度α3とは、スネルの法則により、下記式(1)を満たす。
式(1)において、音速c1は流体F中での音速であり、音速c3は単位入射部1331中での音速である。第1実施形態では、流体Fは空気であり、単位入射部1331を含む音響レンズ部130はシリコーンゴム樹脂であるため、音速c1は340m/sであり、音速c3は1000m/sである。従って、音速c3は音速c1より大きくなり、角度α3は角度α1よりも大きくなる。
ここで、単位入射部1331内での散乱波U1の角度φは、受信音軸AX2を基準とすると、中心角ωから角度α3を減じた角度である。入射角γと角度φとは、下記式(2)を満たす。
図12は、何れも図11に示すように、単位入射部1331(図11)への入射角γと、入射した散乱波U1の、受信音軸AX2に対する角度φがゼロになるときの中心角ωとの関係を示すグラフである。角度φがゼロ、即ち、散乱波U1は圧電変換素子132(図10A)の法線方向に入射するとき、信号強度が最大となる。そこで、図12に示すように、入射角γが0~20°のいずれであっても、角度φがゼロになる中心角ωが存在する。この結果から、ビーム幅を有して入射する散乱波U1のうち、角度φがゼロになる中心角ωの位置で入射した散乱波U1は、受信音軸AX2と同方向に進行し、例えば板状又は箔状の圧電変換素子132に対して垂直に入射する。これにより、信号強度が最大となり、検出感度を向上できる。
このように、偏心配置受信プローブ120の表面に入射部133を備えることで、偏心配置受信プローブ120の受信面の幅広い位置において、幅広い入射角γで入射した散乱波U1を検出できるこれにより、偏心配置受信プローブ120の設置角度のマージンを拡大でき、散乱波U1に起因する超音波信号の検出感度を向上できる。
図11からわかるように、単位入射部1331として仮想円柱1342の一部の形状を用いる場合、局所的な法線NLの方向は、中心角ωと等しい。従って、図12からわかるように、所定方向の法線NLの方向の範囲として、0~10°にすれば、対応する入射角γの範囲が受信角度範囲になり、0~7°が受信角度範囲になる。さらに、所定方向の法線NLの方向の範囲として、0~15°以上の範囲にすれば、受信角度範囲は0~10°に拡がる。また、所定方向の法線NLの方向の範囲として、0~30°以上の範囲にすれば、受信角度範囲は0~20°に拡がる。
このように、式(2)を用いることで、所望の受信角度範囲を満たすような単位入射部の法線方向の範囲を知ることが出来る。そして、それを基にして単位入射部1331の適正な形状を設計することが出来る。
また、図12に示した中心角ωと入射角γとの関係は、単位入射部1331の材料(音速)により変わることに注意が必要である。式(2)を用いることにより、単位入射部1331の音速c3に応じて、中心角ωと入射角γとの関係を知ることが出来る。
図13は、制御装置2の機能ブロック図である。制御装置2は、送信系統210と、受信系統220と、データ処理部201と、スキャンコントローラ204と、駆動部202と、位置計測部203とを備える。
送信系統210は、送信プローブ110への印加電圧を生成する系統である。送信系統210は、波形発生器211及び信号アンプ212を備える。波形発生器211でバースト波信号が発生する。そして、発生したバースト波信号は信号アンプ212で増幅される。信号アンプ212から出力された電圧は送信プローブ110に印加される。
受信系統220は、偏心配置受信プローブ120から出力される受信信号を検出する系統である。偏心配置受信プローブ120から出力された信号は、信号アンプ222に入力されて増幅される。増幅された信号は、波形解析部221に入力される。波形解析部221は、受信信号から信号強度データ(図5)を生成する。生成された信号強度データはデータ処理部201に送られる。
データ処理部201は、被検査体Eの欠陥部Dに関する情報を画像化したり、欠陥部Dの存在の有無を検出したりするといった、取得した情報を所望の形態に処理する。なお、データ処理部201で生成された画像及び情報は表示装置3に表示される。
スキャンコントローラ204は、図1に示す送信プローブ走査部103及び受信プローブ走査部104を駆動制御する。送信プローブ走査部103及び受信プローブ走査部104の駆動制御は、駆動部202を通じて行われる。また、スキャンコントローラ204は、位置計測部203を介して、送信プローブ110及び偏心配置受信プローブ120の位置情報(x軸方向及びy軸方向の各走査位置。xy座標)を計測する。
データ処理部201は、スキャンコントローラ204から受け取る送信プローブ110及び偏心配置受信プローブ120の位置情報を基にして、それぞれの位置での信号強度データをプロットして画像化し、表示装置3に表示する。上記のように、欠陥部Dで取得した信号強度データは、健全部Nの信号強度データよりも大きい。従って、送信プローブ110の走査位置に対して信号強度データをプロットすると、どこに欠陥部Dがあるかを示す画像が取得できる。表示装置3は、この画像を表示する。
図14は、制御装置2のハードウェア構成を示す図である。制御装置2は、RAM(Random Access Memory)等のメモリ251、CPU(Central Processing Unit)252、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置253、NIC(Network Interface Card)等の通信装置254、I/F(Interface)255等を備えて構成されている。
制御装置2は、記憶装置253に格納されている所定の制御プログラムがメモリ251にロードされ、CPU252によって実行される。これにより、図3のデータ処理部201、位置計測部203、スキャンコントローラ204、データ処理部201等が具現化する。
図15は、第1実施形態の超音波検査方法を示すフローチャートである。第1実施形態の超音波検査方法は上記の超音波検査装置Zにより実行でき、適宜、図1及び図10を参照して説明する。第1実施形態の超音波検査方法は、気体G(図1)を介して被検査体E(図1)に超音波ビームUを入射することにより被検査体Eの検査を行うものである。なお、この超音波検査方法を流体Fとして気体Gを用いた実施形態について説明するが、この超音波検査方法は、流体Fとして液体Wを用いた実施形態についても有効であることはいうまでもない。
まず、制御装置2(図10)の指令により、送信プローブ110(図1)から超音波ビームU(図6B)を放出するステップS101が行われる。続いて、偏心配置受信プローブ120(図1)において超音波ビームU(この例では散乱波U1)を受信するステップS102が行われる。
その後、偏心配置受信プローブ120が受信した超音波ビームU(この例では散乱波U1)の信号(例えば波形信号)を基に、信号の振幅等の信号強度情報を抽出するステップS103が行われる。
波形解析部221(図10)の出力信号はデータ処理部201(図10)に入力される。ステップS104においては、スキャンコントローラ204(図10)から送られる、走査位置情報(座標位置)を参照して、走査位置の信号強度が画像化され、欠陥画像が生成される。ステップS104は、データ処理部201により行われる。
データ処理部201(図10)は、走査が完了したか否かを判定する(ステップS111)。走査が完了している場合(Yes)、制御装置2(図10)は処理を終了する。走査が完了していない場合(No)、データ処理部201は駆動部202(図10)に指令を出力することによって、次の走査位置まで送信プローブ110及び偏心配置受信プローブ120を移動させ(ステップS112)、ステップS101へ処理を戻す。
以上の超音波検査装置Z及び超音波検査方法によれば、欠陥部Dの検出性能を向上できる。例えば検出可能な欠陥サイズを小さくすることができる。
図16は、第2実施形態に係る超音波検査装置Zの走査計測装置1の構成を示す図である。第2実施形態では、走査計測装置1は、偏心配置受信プローブ120の傾きを調整する設置角度調整部106を備える。これにより、受信信号の強度を増大でき、信号のSN比を大きくできる。設置角度調整部106は、例えば、いずれも図示しないが、アクチュエータ、モータ等により構成される。
ここで、送信音軸AX1と受信音軸AX2とが為す角度θを受信プローブ設置角度と定義する。図16の場合、送信プローブ110は鉛直方向に設置されているので送信音軸AX1は鉛直方向であるため、受信プローブ設置角度である角度θは、送信音軸AX1(即ち鉛直方向)と偏心配置受信プローブ120を構成する圧電変換素子132(図10A)の表面から延びる法線との為す角度である。そして、設置角度調整部106により、角度θを送信音軸AX1が存在する側に傾け、角度θをゼロよりも大きな値に設定する。即ち、偏心配置受信プローブ120が傾斜配置される。具体的には、偏心配置受信プローブ120は、0°<角度θ<90°を満たすように傾斜配置され、角度θは例えば10°であるがこれに限られない。
また、偏心配置受信プローブ120を傾斜配置する場合の偏心距離Lは以下のように定義される。受信音軸AX2と、偏心配置受信プローブ120の音響レンズ部130(図10A)との交点C2を定義する。また、送信音軸AX1と、送信プローブ110の探触子面との交点C1を定義する。交点C1の位置をxy平面に投影した座標位置(x4,y4)と、交点C2の位置をxy平面に投影した座標位置(x5,y5)との距離を偏心距離Lと定義する。
図17は、第2実施形態による効果が生じる理由を説明する図である。散乱波U1は送信音軸AX1から外れた方向に伝搬する。従って、図17に示すように、散乱波U1は被検査体Eの外側に到達した際、被検査体E表面の法線ベクトルとは非ゼロの角度α2をもって被検査体Eと外部との界面に入射する。そして、被検査体Eの表面から出る散乱波U1の角度は被検査体E表面の法線方向に対して非ゼロの出射角である角度β2を有する。散乱波U1は、偏心配置受信プローブ120の圧電変換素子132(図10A)の法線ベクトルを散乱波U1の進行方向と一致させたときに、最も効率よく受信できる。つまり、偏心配置受信プローブ120を傾斜配置することで受信信号強度を増大できる。
図18は、入射部133(図11)を備えない偏心配置受信プローブ150を備える超音波検査装置を示す図である。第2実施形態において、以下の記述では、複数の単位入射部1331(図11)を備えた入射部133(図11)について、そのような入射部133(図11)を備えない偏心配置受信プローブ150を用いた場合と比較しながら述べる。偏心配置受信プローブ150の受信面は平坦である。偏心配置受信プローブ120(図17)と、偏心配置受信プローブ150とは、入射部133の有無以外は同じ構成を有する。
偏心配置受信プローブ150では、被検査体Eから出射する超音波ビームUの角度β2と、送信音軸AX1と受信音軸AX2との為す角度θとが一致すると、最も受信効果が高くなる。しかしながら、角度β2と角度θとが完全に一致しない場合であっても、受信信号増大の効果が得られるので、図18に示しているように、角度β2と角度θとが完全に一致しなくてもよい。この場合においても、上記の図11等を参照して説明した作用機構により、受信信号を増大できる。
図19は、偏心配置受信プローブ120の角度θと信号強度との関係を測定した図である。この測定では、偏心配置受信プローブ150(図18)が使用されている。この測定条件では、偏心配置受信プローブ150を設置した角度θを8°にすると信号強度が最大になり、そのときの強度は角度θが0°のときの信号強度の約9倍である。従って、信号強度を最大にする観点では、図示の例では角度θは8°であることが好ましい。しかし、図示の例では、角度θが0°(即ち傾けない)を超え17°以下であれば、傾けない場合の信号強度よりも大きな信号強度が得られ、検出精度を向上できる。なお、角度θが0°以下及び17°を超える場合でも、信号が検出されるため、散乱波U1を検出できる。
一方で、角度θが最適な角度である8°から例えば±2°ずれると、信号強度が1/2~1/3にまで大幅に低下する。これは、角度β2(図18)が角度θ(図18)と一致する8°のときに最大信号強度を示すが、角度β2が角度θからずれることで信号強度が低下することを示す。
散乱波U1の方向は、上記のようにある程度の広がりを有するため、角度α2も広がりを有する。このため、被検査体Eから出射する散乱波U1の角度β2も広がりを有する。一方で、偏心配置受信プローブ150の受信面の法線である受信音軸AX2からずれた角度で入射する散乱波U1は、偏心配置受信プローブ120の指向性により、受信感度が低下する。このため、散乱波U1の一部の成分の受信が困難になる。
しかし、本開示の超音波検査装置Zでは、複数の単位入射部1331を備える入射部133を備えるため、上記の図10A、図10B、図11等を参照して説明したように、偏心配置受信プローブ120の受信許容角度が拡大される。このため、散乱波U1の受信漏れを抑制でき、欠陥部Dに起因する信号の検出精度を向上できる。
受信許容角度について更に詳述する。受信プローブ121は、上記のように、圧電変換素子132(図10A)の表面の法線方向(上記のマクロ的な探触子面の法線方向と同義)の超音波ビームUを最も感度良く受信出来る。感度が良いとは、強度が同じ超音波ビームUが入力された際に、より高い信号電圧が得られることである。受信プローブ121に入射する超音波ビームUの入射角は上記のように入射角γである。入射角γは、圧電変換素子132の表面の法線である受信音軸AX2を基準にする。即ち、法線方向に超音波ビームUが入射する場合、入射角γは0°である。
圧電変換素子132の幅が長さa(例えば図10Aに示す断面視での横幅)の受信プローブ121の場合、信号強度が1/2に低下する入射角γ(-6dB)は下記式(3)で示される。式(3)は、入射部133を備えない受信プローブ121、即ち、偏心配置受信プローブ150のような、受信面が平坦な受信プローブ121の場合に成り立つ式である。
λは超音波ビームUの波長、fは超音波ビームUの周波数、cは音速である。式(3)によれば、受信プローブ121では、長さaの値が大きいほど指向性が高くなり、超音波ビームUの波長λの値が小さいほど指向性が高くなることがわかる。
上記のように、超音波ビームUである散乱波U1の経路は、欠陥部Dの深さ位置等により変わる。そこで、圧電変換素子132の長さaは大きいことが好ましく、これにより、幅広の圧電変換素子132(図10A)での散乱波U1の受信漏れを抑制できる。一方で、幅広になる結果、散乱波U1を受信する偏心配置受信プローブ150は指向性が高くなる。
更に、媒質中での音速cを比較すると、水中音速(1400m/s)に比べて空気中の音速(340m/s)は遅いため、空気中で超音波ビームUを受信する場合には、さらに指向性が高くなる。また、流体Fとして気体Gを用いる場合には、偏心配置受信プローブ150の角度θによる受信感度変化はさらに顕著になる。従って、散乱波U1を受信する偏心配置受信プローブ150では、角度θの設定により受信感度が変化する。
特に、偏心配置受信プローブ150の指向性が高い場合、角度θが最適な角度からずれると受信信号強度が低下するので、高精度の設置角度調整部106(図16)を使用することが好ましい。
ここまで、偏心配置受信プローブ150を用いた場合をまじえて述べた。
図17に戻って、偏心配置受信プローブ120は、複数の単位入射部1331を備える入射部133を備える。このため、設置角度調整部106により調整される角度θの精度がさほど高くなく、偏心配置受信プローブ120への入射角γが所望角度からずれることがあっても、例えば図10A、図10B、図11等を参照して説明したように、受信信号強度を向上できる。これにより、欠陥部Dの検出精度を向上できる。
偏心配置受信プローブ120が入射部133を備えることで、受信許容角度が拡大するが、偏心配置受信プローブ120の角度θを角度β2(図17)と概ね一致するように設置すると、入射角γの狭い範囲でも音波を受信できる。このため、偏心配置受信プローブ120の受信許容角度の拡大幅が小さくても、効率的に受信できる。このため、偏心配置受信プローブ120を用いた場合でも、角度θを適切に設定することで、効率的に受信可能になるという効果がある。
特に、複数の単位入射部1331を備えることにより、偏心配置受信プローブ120の受信許容角度が拡がっているため、角度θの調整マージンが拡がり、調整が容易になるという効果もある。
図16に戻って、走査計測装置1では、設置角度調整部106が設けられており、設置角度調整部106によって偏心配置受信プローブ120が設置されている。設置角度調整部106により、偏心配置受信プローブ120の受信プローブ設置角度を調整することが可能である。被検査体Eの材料、厚み等により散乱波U1の経路は多少変化するので、偏心配置受信プローブ120の設置角度の最適値も変化する。従って、設置角度調整部106で受信プローブ設置角度が調整可能とすることにより、被検査体Eの材料、厚み等に応じて偏心配置受信プローブ120の設置角度を適切に調整できる。
また、第2実施形態では、偏心配置受信プローブ120が水平面に対して傾いた状態で配置されているが、送信プローブ110も傾いた状態で配置されてもよい。あるいは、送信プローブ110が水平面に対して傾いた状態で配置され、偏心配置受信プローブ120の探触子面が水平面(xy平面)に対して並行となるよう配置されてもよい。いずれの場合も、上記図2Bに示すように、送信音軸AX1と、受信音軸AX2とは、ずらした状態で配置される。
図20Aは、第3実施形態の偏心配置受信プローブ120の構造を説明する図であり、側方から視た図である。第3実施形態の偏心配置受信プローブ120は、第1実施形態の入射部133(図10A)に代えて入射部134を備えること以外は、第1実施形態と同様である。また、入射部134は、単位入射部1331(図10A)に代えて単位入射部1341を備えること以外は、第1実施形態と同様である。
単位入射部1341は、単位入射部1331と同様に、仮想的な円柱である仮想円柱1342の側面形状の一部を表面に有する。ただし、単位入射部1331は、真円柱である仮想円柱1342の側面形状のうち、中心軸を含むように半分に切断した真円柱(半真円柱)の表面形状を例えば凹状に備える。このような形状であっても、単位入射部1341に、所定方向に延在する法線NL(図20B)を複数生じさせることができる。
図20Bは、図20Aに示す偏心配置受信プローブの表面を拡大して示す図である。上記の図11と同様に考えると、図示の例において、受信音軸AX2と法線NLとは表面位置P2において交差し、これらの為す角度は入射角γと角度α1との和である。表面位置P2に至った散乱波U1は、法線NLに対し角度α3を有して屈折して入射する。そして、図20Bに示す例においても上記式(1)成立する。従って、角度φがゼロになるように散乱波U1が圧電変換素子132(図20A)に入射するときの入射角と中心角ωとの関係として、上記の図12に示したグラフが成立する。
このように、偏心配置受信プローブ120の表面に入射部134を備えることで、偏心配置受信プローブ120の受信面の幅広い位置において、幅広い入射角γで入射した散乱波U1を検出できる。これにより、偏心配置受信プローブ120の設置角度のマージンを拡大でき、散乱波U1に起因する超音波信号の検出感度を向上できる。
図21は、第4実施形態の偏心配置受信プローブ120の構造を説明する図であり、側方から視た図である。第4実施形態の偏心配置受信プローブ120に備えられる入射部135は、単位入射部1331(図10A)に代えて単位入射部1351を備えること以外は、第1実施形態の入射部133(図10A)と同様である。
単位入射部1351は、少なくとも送信プローブ110の配置側に、法線NL(図11)を複数有する表面形状を有する。従って、単位入射部1351は、仮想円柱1342(図10A)の側面形状の一部を表面に有する単位入射部1331(図10A)のうち、送信プローブ110(図1)の配置側とは反対側(図示の例では左側)の少なくとも一部を切り欠いた形状を表面に有する。図示の例では、真半円柱のうちの左側半分が切り欠かれることで、送信プローブ110の配置側とは反対側(図示の例では左側)の全てが切り欠かれる。
このような入射部135によれば、送信プローブ110の配置側である右斜め方向のほか、更には垂直方向から入射した散乱波U1を効率的に検出できる。なお、散乱波U1が右斜め方向から入射するか左斜め方向から入射するかは、予め予想できる。例えば、図17に示すように、受信音軸AX2が送信音軸AX1の左側になるように偏心配置受信プローブ120を配置した場合、散乱波U1は右斜め方向から入射する。換言すると、角度β2は正又はゼロである。これは、角度β2が正のときは右斜め方向からの入射に対応し、角度β2がゼロのときは垂直方向からの入射に対応する。
図22は、第5実施形態の偏心配置受信プローブ120の構造を説明する図であり、側方から視た図である。第5実施形態の偏心配置受信プローブ120に備えられる入射部136は、単位入射部1341(図20A)に代えて単位入射部1361を備えること以外は、第3実施形態の入射部134(図20A)と同様である。
単位入射部1361は、少なくとも送信プローブ110の配置側に、法線NL(図20B)を複数有する表面形状を有する。従って、単位入射部1361は、仮想円柱1342(図20A)の側面形状の一部を表面に有する単位入射部1341のうち、送信プローブ1108(図1)の配置側(図示の例では右側)の少なくとも一部を切り欠いた形状を表面に有する。図示の例では、真半円柱のうちの右側半分が切り欠かれることで、送信プローブ110の配置側(図示の例では右側)の全てが切り欠かれる。
このような入射部136によれば、送信プローブ110の配置側である右斜め方向のほか、更には垂直方向から入射した散乱波U1を効率的に検出できる。
図23は、第6実施形態の偏心配置受信プローブ120の構造を説明する図であり、側方から視た図である。第6実施形態の偏心配置受信プローブ120に備えられる入射部137は、単位入射部1331(図10A)に代えて単位入射部1371を備えること以外は、第1実施形態の入射部133(図10A)と同様である。
単位入射部1371は、仮想的な円柱である仮想円柱1343の側面形状の一部を表面に有する。仮想円柱1343は、真円柱である仮想円柱1342(図10C)とは異なり、楕円柱である。図示の例では、単位入射部1371は、楕円柱である仮想円柱1343の側面形状のうち、中心軸及び長径を含むように半分に切断した楕円円柱(半楕円柱)の表面形状を例えば凸状に備える。ただし、半分である必要は無く、半分よりも多い量(例えば楕円の短径又は長径の2/3の高さを有する単位入射部1371)、又は、半分よりも少ない量(例えば楕円の短径又は長径の1/3の高さを有する単位入射部1371)等でもよい。
楕円柱の側面形状の一部を表面に有することで、例えば図23における紙面に垂直な方向に幅を有した散乱波U1が入射した場合にも散乱波U1を受信できる。
図24は、第7実施形態の偏心配置受信プローブ120の構造を説明する図であり、側方から視た図である。第7実施形態の入射部138は、単位入射部1341(図20A)に代えて単位入射部1381を備えること以外は、第3実施形態の入射部134(図20A)と同様である。
単位入射部1381は、仮想的な円柱である仮想円柱1343の側面形状の一部を表面に有する。仮想円柱1343は、真円柱である仮想円柱1342(図20A)とは異なり、楕円柱である。図示の例では、単位入射部1381は、楕円柱である仮想円柱1343の側面形状のうち、中心軸及び長径を含むように半分に切断した楕円柱(半楕円柱)の表面形状を例えば凹状に備える。
楕円柱の側面形状の一部を表面に有することで、例えば図24における紙面に垂直な方向に幅を有した散乱波U1が入射した場合にも散乱波U1を受信できる。
図25Aは、第8実施形態の偏心配置受信プローブ120の構造を説明する図であり、側方から視た図である。第8実施形態の偏心配置受信プローブ120に備えられる入射部139は、単位入射部1331(図10A)に代えて単位入射部1391を備えること以外は、第1実施形態の入射部133(図10A)と同様である。単位入射部1391の表面形状は、受信音軸AX2を含む断面視で、曲線を含む。
図25Bは、図25Aの上面図である。単位入射部1391は、仮想球1344(図25A)の表面形状の一部を表面に有する。図示の例では、単位入射部1391は、仮想球1344の側面形状のうち、球の中心を含むように半分に切断した真円球(半真円球)の表面形状を例えば凸状に備える。ただし、半分である必要は無く、半分よりも多い量(例えば円の直径の2/3の高さを有する単位入射部1391)、又は、半分よりも少ない量(例えば円の直径の1/3の高さを有する単位入射部1391)等でもよい。なお、ここでいう真球は、厳密な真球である必要は無く、通常の測定方法により測定された直径が全範囲で等しい球をいう。また、単位入射部1391は、凸状に代えて凹状でもよいし、真円球の一部に代えて楕円球(楕円体)の一部でもよい。
単位入射部1391は、散乱波U1の伝達方向(紙面左右方向)に複数配置される。また、単位入射部1391は、散乱波U1の伝達方向に直交する方向のうちの水平方向(紙面上下方向)にも、複数配置される。単位入射部1391は、格子を構成する各交点上に配置される。
入射部139によれば、偏心配置受信プローブ120の許容受信角度を拡大でき、散乱波U1の受信漏れを抑制できる。
図26は、第9実施形態の偏心配置受信プローブ120の構造を説明する上面図である。第9実施形態の偏心配置受信プローブ120に備えられる入射部141は、第8実施形態の単位入射部1391(図25B)を複数備える。ただし、単位入射部1391の配置形態が、第8実施形態とは異なる。
入射部141は、互い違いに配置することで千鳥状に配置した複数の単位入射部1391を備える。これにより、偏心配置受信プローブ120の受信面のうち単位入射部1391が占める割合を増大でき、受信感度を向上できる。
図27は、第10実施形態の超音波検査装置Zの構成を示す図である。第10実施形態では、走査計測装置1は、偏心配置受信プローブ120に加えて、同軸配置受信プローブ140を備える。ここで、同軸配置受信プローブ140は、偏心距離Lがゼロになる位置に配置した受信プローブ121である。即ち、同軸配置受信プローブ140の受信音軸AX2は、送信プローブ110の送信音軸AX1と同一である。第10実施形態では、小さな欠陥部Dから大きな欠陥部Dまで、幅広いサイズの欠陥部Dを検出できる。
上記のように、偏心配置受信プローブ120で散乱波U1を検出する計測方法により、微小な欠陥部Dを検出し易くできる。一方、大きな欠陥部Dは従来法である阻止法でも検出できる。そこで、第10実施形態では、偏心配置受信プローブ120と同軸配置受信プローブ140との併用により、阻止法での欠陥部Dの検出も行われる。具体的には、超音波ビームUの形状及びサイズよりも大きな欠陥部Dは同軸配置受信プローブ140でも検出できる。第10実施形態では,2つの計測方法で得た信号を用いることで、小さな欠陥部Dも大きな欠陥部Dも検出し易くできる。
図28は、第10実施形態の超音波検査装置Zの機能ブロック図である。偏心配置受信プローブ120の出力信号は、受信系統220aに入力され、信号アンプ222で増幅後、波形解析部224で信号の振幅情報(信号強度情報)が抽出される。信号強度情報は、データ処理部201に入力される。
同軸配置受信プローブ140の出力信号は、受信系統220bに入力され、信号アンプ223で増幅後、波形解析部221で信号の振幅情報(信号強度情報)が抽出される。同軸配置受信プローブ140の受信音軸AX2は、送信プローブ110の送信音軸AX1に一致するように設置されているので、欠陥部Dにおいて超音波ビームUの透過量が遮断されるため、同軸配置受信プローブ140の受信信号の振幅は、欠陥部Dにおいて減少する。これは、従来技術である「阻止法」での欠陥検出方法である。同軸配置受信プローブ140が接続された受信系統220bの波形解析部221の出力信号は、データ処理部201に入力される。
データ処理部201は、受信系統220aから入力された信号と受信系統220bから入力された信号とを適切に組み合わせることで、欠陥画像を生成する。生成した欠陥画像は表示装置3に表示される。
受信系統220a,220bのそれぞれから出力された2つの信号の組み合わせ方法の一例を説明する。ある走査位置において、偏心配置受信プローブ120で受信した信号が増加するか、又は、同軸配置受信プローブ140からの信号が減少するか、の少なくとも何れか一方の条件を満たすとき、その走査位置に欠陥があると考えることができる。
図29は、第11実施形態の超音波検査装置Zの構成を示す図である。第11実施形態では、流体Fとして例えば水等の液体Wを使用したこと以外は、第1実施形態と同様である。本開示の超音波検査装置Zでは、流体Fは上記のように気体G(図1)でもよく、第11実施形態のように液体Wでもよい。ただし、以下の理由により、本開示により奏される効果として、流体Fとして空気等の気体Gを用いた場合にさらに好ましい効果を与える。
液体W中と比較して、気体G中では超音波の音速が小さい(音波の伝搬が遅い)。上記のように、音速が遅いほど受信プローブ121の指向性は高まり、受信許容角度は狭くなる。そのため、上記のような偏心配置受信プローブ120を使用することで、受信許容角度を高めることの効果がより大きい。
第11実施形態の超音波検査装置Zは、流体Fである液体Wを介して被検査体Eに超音波ビームUを入射することで被検査体Eの検査を行うものである。被検査体Eは、液体Wの液面L0の下に配置され、液体Wに浸かっている。
第11実施形態で使用される偏心配置受信プローブ120では、音響レンズ部130(図10A)は、流体Fである例えば水中の音速よりも大きな材料により構成され、具体的は例えばポリスチレンにより構成される。ポリスチレン中の音速c2は2350m/sであり、水中の音速c1は1490m/sなので、音響レンズ部130(図10A)は、水中の音速よりも大きな材料で構成される。
図30は、第12実施形態の超音波検査装置Zの構成を示す図である。第10実施形態では、偏心配置受信プローブ120は、複数の単位プローブ120a(単位的な偏心配置受信プローブ)を含む。図示の例では、単位プローブ120aは3つである。単位プローブ120aは、偏心距離L(送信音軸AX1からの距離)が異なる位置にそれぞれ配置される。単位プローブ120aは、名称が異なること以外は偏心配置受信プローブ120と同じ構成及び機能を有し、いずれも図示しないが、所定方向に延在する法線を複数有する表面形状を有する単位入射部を複数備える入射部を表面に備える。
欠陥部Dの深さ、形状、傾き等により、散乱波U1の経路が多少変化する。例えば、散乱するときの散乱角(送信音軸AX1に対する散乱波U1の為す角度)は通常は同程度である。このため、欠陥部Dが深いほど散乱波U1は送信音軸AX1から近い場所に到達し、欠陥部Dが浅いほど散乱波U1は送信音軸AX1から遠い場所に到達する。そこで、複数の単位プローブ120aを用いて、どの位置の単位プローブ120aで受信したかという情報を用いることにより、欠陥部Dに関する情報(欠陥部Dの深さ等)を得ることができる。
図31は、第12実施形態の超音波検査装置Zの機能ブロック図である。複数個の単位プローブ120aは、それぞれに対応する受信系統220c,220d,220eに接続される。それぞれの受信系統220c,220d,220eの構成は、図13に示す受信系統220の構成と同様である。即ち、受信系統220c,220d,220eは、何れも図31では不図示であるが図13に示すように、信号アンプ222と、波形解析部221とを備える。それぞれの単位プローブ120aからの信号は、信号アンプ222で増幅されて、波形解析部221に入力される。波形解析部221は、受信信号(散乱波U1)の振幅を出力する。これら、受信系統220c,220d,220eそれぞれからの出力は、欠陥情報判定部205に入力される。
欠陥情報判定部205は、制御装置2に備えられ、複数の単位プローブ120aのうち、照射された超音波ビームUの、被検査体Eの欠陥部Dでの散乱により生じる散乱波U1を受信した単位プローブ120aの受信信号に基づいて、被検査体Eでの欠陥部Dに関する情報(欠陥部Dの深さ等)を判定する。具体的には、欠陥情報判定部205は、受信系統220c,220d,220eそれぞれにおける波形解析部221(図13)からの振幅情報に基づいて、散乱波U1を観測するために最適な受信系統220を判断する。第10実施形態では、欠陥情報判定部205は、振幅が最大の受信系統220を選択する。そして、その選択された受信系統220の受信信号をデータ処理部201に出力する。
欠陥情報判定部205は、受信系統220c,220d,220eそれぞれにおける波形解析結果を基に、欠陥部Dに関する情報を判定する。受信信号に基づくとは、どの単位プローブ120aで、どの程度の受信信号(散乱波U1)が検知されたかである。このようにすることで、欠陥部Dの位置情報の精度を向上できる。
欠陥情報判定部205の出力は、データ処理部201に入力される。データ処理部201は、プローブを走査するスキャンコントローラ204からの走査位置情報と合わせることにより、走査位置に対応する欠陥情報を画像化し,表示装置3に表示される。
なお、欠陥情報判定部205はデータ処理部201の一部として設けてもよい。
図32は、第13実施形態における偏心配置受信プローブ120の配置を示す図であり、第12実施形態では鉛直方向に配置した単位プローブ120aを傾斜して配置した図である。複数の単位プローブ120aが送信音軸AX1に対して対称に配置されている。従って、偏心距離Lが同じ位置に、少なくとも2つの単位プローブ120aが配置される。図示の例では、送信音軸AX1を含む平面視で送信音軸AX1の両側に、3個ずつ単位プローブ120aが対称に配置される。そして、3つの異なる偏心距離Lのそれぞれの位置に、2個ずつ単位プローブ120aが配置される。なお、単位プローブ120aは、上記の第2実施形態(図16)と同様に、傾斜して配置される。
設置角度調整部(不図示)を備える単位プローブ120a(偏心配置受信プローブ120)を傾斜して配置する効果を述べる。図17を用いて説明すると、散乱波U1の角度β2が、例えば8°を中心として±5°の広がりがある場合を考える。この場合、単位プローブ120aの角度θを8°にすればよい。上記のように、単位プローブ120aでは受信許容角度が広がっているため,角度β=8°を中心に広がった散乱波U1を効率よく受信できる。また、受信許容角度が拡がるため、単位プローブ120aの角度θのマージンが拡がり、角度θの設定を容易に実行できる。
なお、第13実施形態及び上記第12実施形態において、更に、走査計測装置1は、更に同軸配置受信プローブ140(図27)を備えてもよい。同軸配置受信プローブ140を更に備えることで、欠陥部Dが大きなものでも小さなものでも効率的に検出し易くできる。
以上の各実施形態では、欠陥部Dは空洞である例を記載しているが、欠陥部Dとして被検査体Eの材質とは異なる材質が混入している異物であってもよい。この場合も、異なる材料が接する界面で音響インピーダンスの差(Gap)があるため、散乱波U1が発生するので、上記各実施形態の構成が有効である。本実施形態に係る超音波検査装置Zは、超音波欠陥映像装置を前提としているが、非接触インライン内部欠陥検査装置に適用されてもよい。
本開示は前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は本開示を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を有するものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、前記した各構成、機能、ブロック図を構成する各部等は、それらの一部又はすべてを、例えば集積回路で設計すること等によりハードウェアで実現してもよい。また、図14に示すように、前記した各構成、機能等は、CPU252等のプロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、HDDに格納すること以外に、メモリ、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又は、IC(Integrated Circuit)カード、SD(Secure Digital)カード、DVD(Digital Versatile Disc)等の記録媒体に格納することができる。
また、各実施形態において、制御線及び情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしもすべての制御線及び情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんどすべての構成が相互に接続されていると考えてよい。