JP2016050811A - Tofd探傷法による超音波探傷装置と方法 - Google Patents

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麻美 寺久保
敬弘 荒川
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敬弘 荒川
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Abstract

【課題】試験体の表面にうねり等がある場合でも、強い音圧を試験体に入射でき、これにより得られるSN比に優れた探傷波形により、試験体内部の微細なきずを高い精度で検出することができるTOFD探傷法による超音波探傷装置と方法を提供する。
【解決手段】1対のくさび12を互いに平行な回転軸a−aを中心に揺動可能に支持するホルダー14と、一方のくさび12の対向面12bに固定されそのくさび12の接触面12aに向けて超音波ビームSを発信する送信側探触子16と、他方のくさび12の対向面12bに固定されそのくさび12の接触面12aから超音波ビームSを受信する受信側探触子18と、を備える。1対のくさび12の接触面12aは、試験体表面1に沿って位置するときに、試験体表面1の起伏に密着可能に形成されており、回転軸a−aは、接触面12aの法線上に位置し、かつ接触面12aに平行に位置する。
【選択図】図8

Description

本発明は、うねり等のある試験体の内部を超音波探傷検査するためのTOFD探傷法による超音波探傷装置と方法に関する。
試験体内部を超音波により検査する手段として、TOFD探傷法による超音波探傷が従来から知られている(例えば、特許文献1〜3)。
特開2014−48169号公報 特開2013−234886号公報 特開2004−53462号公報
超音波探傷試験には超音波探触子(以下単に、「探触子」と呼ぶ)が使用され、接触媒質と呼ばれる液体を介して超音波ビームを試験体の内部に送受信する。この際、適切に超音波ビームを試験体の内部に送受信するためには、試験体表面は平滑な平面であることが好ましい。
図1は、ドレッシングされた溶接表面部など、試験体TPの表面が平面ではなく、うねりがある場合の模式図である。うねりとは、試験体表面1における平面以外の曲面を意味する。なお、本発明の対象とする試験体表面1は、うねりに限定されず、凸状又は凹状の曲面、またはこれらと平面が混在してもよい。以下、これらを「うねり等」と総称する。
図1において、(A)は大型の探触子Pを、(B)は小型の探触子Pを示している。
図1(B)に示すように、試験体表面1が平滑な平面でない場合、すなわち試験体表面1にうねり等を有する場合には、小型(ミニチュアサイズ)の探触子Pが用いられることがある。
小型の探触子Pは、超音波ビームSを送信及び受信させるために用いられる振動子(図示せず)を小さくし、かつ小さいケースに収納して小型化したものである。かかる小型の探触子Pは、試験体TPとの隙間が小さくなるため、試験体表面1にうねり等があっても大型の探触子Pよりも良好な超音波ビームSの送受信が可能になる。しかしその反面、振動子が小さいために送受信される超音波ビームSの音圧が小さく、また、振動子が小さいため超音波ビームSの広がり(拡散)が助長され、微細なきず(微細きず)を検出できない問題がある。
そこでSN比を改善して、微細きずの検出性能やサイジング能力を向上させる手段として、TOFD探傷法が知られている。
図2は、TOFD探傷法による超音波探傷試験の模式図である。
TOFD探傷法では、2つの探触子Pを間隔を隔てて配置し超音波ビームSを試験体TPの内部に送受信する。試験体TPの内部にき裂Fがない場合には、表面を伝搬するラテラル波Aと裏面で反射する底面エコーCのみが得られる。一方、き裂Fが存在すると、き裂端部での回折波Bが受信される。この回折波Bの伝搬時間より幾何学的にき裂端部の深さを求めることができる。
上述したように、TOFD探傷法は、2つの探触子Pを対向させて超音波ビームを送受信させるものである。2つの探触子Pを用いることで、試験体TP内で発生するノイズが受信側の探触子Pに伝搬しないのでノイズが低減することや、超音波ビームSの伝搬時間からきずの深さを正確に測定できるなどのメリットがある。
しかし、うねり等のある探傷面(試験体表面)では、2つの探触子Pを試験体TPの表面に安定に接触させることが困難になる。
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、ドレッシングされた溶接部表面など、試験体の表面にうねり等がある場合でも、強い音圧を試験体に入射でき、これにより得られるSN比に優れた探傷波形により、試験体内部の微細なきずを高い精度で検出することができるTOFD探傷法による超音波探傷装置と方法を提供することにある。
本発明によれば、試験体と接触する接触面と、該接触面の反対側に接触面と対向して位置する対向面とを有する1対のくさびと、
1対のくさびを対称面に対して対称に保持し、互いに平行な1対の回転軸を中心にそれぞれ揺動可能に支持するホルダーと、
一方のくさびの対向面に固定され、該くさびの接触面に向けて超音波ビームを発信する送信側探触子と、
他方のくさびの対向面に固定され、該くさびの接触面から超音波ビームを受信する受信側探触子と、を備え、
前記1対のくさびの接触面は、試験体表面に沿って位置するときに、試験体表面の起伏に密着可能に形成されており、
前記回転軸は、前記接触面の法線上に位置し、かつ該接触面に平行に位置する、ことを特徴とするTOFD探傷法による超音波探傷装置が提供される。
前記接触面の形状は、前記回転軸に直交する幅が小さく、軸方向の長さが幅より大きい矩形形状又は楕円形状である。
前記送信側探触子と前記受信側探触子は、各接触面で超音波ビームを集束させることができる集束探触子である。
前記送信側探触子と前記受信側探触子は、各接触面で超音波ビームを集束させることができるフェーズドアレイ探触子である。
前記フェーズドアレイ探触子を制御する制御装置を備え、該制御装置により、
フェーズドアレイ探触子のセクタスキャンにより、試験体に入射する超音波ビームの方向を変化させて、前記超音波ビームの中心軸が交差する交軸点の試験体表面からの交軸点深さを順次変化させ、かつ前記受信側探触子により複数の交軸点深さに対応する複数の回折波を受信し、
これから各交軸点深さにおける探傷波形を評価する。
各交軸点深さにおける探傷波形を表示する表示装置と、
各交軸深さでの探傷波形を作成し、探傷波形から異物の深さを求める画像処理装置と、を備える。
また本発明によれば、上述した超音波探傷装置を用い、
前記1対のくさびの接触面が試験体表面に沿って位置するように、ホルダーを位置決めし、
ホルダーを試験体表面に押し付け、前記1対のくさびの接触面を、試験体表面の起伏に密着させ、
これにより、各接触面を試験体表面の法線に直交する位置に揺動させて、試験体内部を超音波探傷検査する、ことを特徴とするTOFD探傷法による超音波探傷方法が提供される。
前記送信側探触子と前記受信側探触子は、フェーズドアレイ探触子であり、
フェーズドアレイ探触子の用いる素子の組み合わせを順次移動させて、かつ各接触面で超音波ビームを集束させることで、試験体に入射する超音波ビームの方向を変化させて、前記超音波ビームの中心軸が交差する交軸点の試験体表面からの交軸点深さを順次変化させ、かつ前記受信側探触子により複数の交軸点深さに対応する複数の回折波を受信し、
これから各交軸点深さにおける探傷波形を作成する。
上記本発明の装置と方法によれば、1対のくさびの回転軸が、各接触面の法線上に位置し、かつ該接触面に平行に位置する。この回転軸が試験体表面に沿って位置するように、ホルダーを位置決めし、ホルダーを試験体表面に押し付ける。この押し付けにより、1対のくさびの接触面を試験体表面の法線に直交する位置に揺動させ、かつ試験体表面の起伏に密着させることができる。
従って、ドレッシングされた溶接部表面など、試験体表面にうねり等がある場合でも、1対のくさびの接触面を試験体表面に超音波ビームの入射及び出射が可能な状態に密着して接触させることができる。これにより、試験体表面にうねり等がある場合でも、強い音圧を試験体に入射でき、SN比に優れた探傷波形が得られる。
また、1対のくさびを介して送信側探触子と受信側探触子を対向させて超音波ビームを送受信させるので、TOFD探傷法により試験体内部の微細なきずを高い精度で検出することができる。
ドレッシングされた溶接表面部など、試験体の表面が平面ではなく、うねりや凹凸の曲面がある場合の模式図である。 TOFD探傷法による超音波探傷の模式図である。 本発明による超音波探傷装置の構成図である。 図3(B)のA−A矢視図である。 超音波探傷装置の作動説明図である。 本発明の第1実施形態の超音波探傷装置の全体構成図である。 本発明の第1実施形態の超音波探傷装置の実施例を示す図である。 本発明の第2実施形態の超音波探傷装置の全体構成図である。 本発明の第2実施形態の超音波探傷装置の実施例を示す図である。 平板振動子と集束用振動子の超音波ビーム幅の比較図である。
以下、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して説明する。なお各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
図3は、本発明による超音波探傷装置10の構成図であり、(A)は正面図、(B)は側面図である。また、図4は、図3(B)のA−A矢視図である。
図3、図4において、本発明の超音波探傷装置10は、1対のくさび12、ホルダー14、送信側探触子16、及び受信側探触子18を備える。なお、1は、試験体TPの表面(試験体表面)である。
1対のくさび12は、試験体TPと接触する接触面12aと、接触面12aの反対側に接触面12aと対向する対向面12bとを有するくさび状部材である。
1対のくさび12は、試験体表面1に対し鉛直に位置し得る対称面2に対して対称に形成されている。各くさび12の材質は、超音波ビームSの伝搬に適したプラスチック(例えばアクリル)又は金属からなる。
また、この例で対称面2に対して対称位置の両側面に回転軸a−aを中心とする円筒穴12cを有する。
図4に示すように、この例において、各くさび12は、正面視異形5角形であり、5角形のうち、図において左右の両側面は試験体表面1に対し鉛直、接触面12aと対向面12bを除く下方の1面は傾斜面である。また、内側の鉛直面同士の間には隙間が設けられている。
図3(B)に示すように、この例において、各くさび12の側面12dは試験体表面1に対し鉛直であり、互いに平行な平面である。上述した円筒穴12cは、この側面12dの両側に側面12dに対し垂直に形成されている。また各円筒穴12cは、深さが浅く、対向する底の間隔が、接触面12aの軸方向の長さcより大きくなっている。
ホルダー14は、1対のくさび12を対称面2に対して対称に保持し、互いに平行な回転軸a−aを中心にそれぞれ揺動可能に支持する。
この例において、ホルダー14は、互いに平行に位置し試験体表面1に対し鉛直に延びる1対の側板14aと、1対の側板14aの頂部を連結する天板14bからなる。1対の側板14aは、その間に1対のくさび12を挟持する。
また、1対の側板14aは、1対のくさび12の円筒穴12cに整合する位置に貫通穴を有する。この貫通穴に、4つの支持金具13が固定されている。支持金具13の内方端は、くさび12の円筒穴12cに嵌合する円筒形に形成されている。
この構成により、ホルダー14により、1対のくさび12を互いに平行な回転軸a−aを中心に揺動可能に支持することができる。
送信側探触子16は、くさび12の一方(図4で左側)の対向面12bに固定され、そのくさび12の接触面12aに向けて超音波ビームSを発信する。
受信側探触子18は、くさび12の他方(図4で右側)の対向面12bに固定され、そのくさび12の接触面12aから超音波ビームSを受信する。
対向面12bは、この例では矩形形状であり、送信側探触子16と受信側探触子18の取付面(超音波出力面)の全体が密着して固定できる大きさに設定されている。
また、対向面12bは、この例では試験体表面1に対して傾斜しており、送信側探触子16と受信側探触子18が送受信する超音波ビームSの中心が接触面12aの中央に位置するように設定されている。
1対のくさび12の接触面12aは、試験体表面1に沿って位置するときに、試験体表面1の起伏に密着可能に形成されている。
接触面12aは、この例では、試験体表面1に密着し超音波ビームSの伝達効率を高めるように、滑らかな平面に形成されている。なお、本発明は平面に限定されず、試験体表面1の形状に応じて曲面に形成してもよい。
接触面12aは、この例では対向面12bと比較して幅bと長さcが短い矩形形状である。
また接触面12aの形状は、この例において、回転軸a−aに対して軸に直交する幅bが小さく、軸方向の長さcが幅bより大きい矩形形状又は楕円形状である。幅bは、この例では5mmであり、好ましくは3〜8mmである。また長さcは、この例では10mmであり、好ましくは8〜15mmである。
なお、上述した円筒穴12cは、軸方向の長さcより外側に設けられ、探触子16、18と接触面12aとの間には、空洞や異物がないように設定されている。
また、図4において、回転軸a−aは、接触面12aの法線上に位置し、かつ接触面12aに平行に位置する。
図5は、上述した超音波探傷装置10の作動説明図である。この図において、試験体表面1は、凸状の起伏を有する。また、図中の破線はホルダー14の押し付け前、実線は押し付け後である。
図5に示すように、回転軸a−aが試験体表面1に沿って位置するように、ホルダー14を位置決めし、ホルダー14を試験体表面1に押し付ける。この押し付け力により、1対のくさび12の接触面12aを、試験体表面1の起伏に密着させることにより、各接触面12aを試験体表面1の法線に直交する位置(すなわち試験体表面1の接線方向)に揺動させることができる。
なおこの位置は、試験体表面1に複数の凸部がある場合にはその頂部に跨る位置となる。
従って、ドレッシングされた溶接部表面など、試験体表面1にうねり等がある場合でも、1対のくさび12の接触面12aを試験体表面1に超音波ビームSの入射及び出射が可能な状態に密着して接触させることができる。これにより、試験体表面1にうねり等がある場合でも、強い音圧を試験体TPに入射でき、SN比に優れた探傷波形が得られる。
図6は、本発明の第1実施形態の超音波探傷装置10の全体構成図である。
この図において、本発明の超音波探傷装置10は、さらに制御装置20、表示装置22、及び画像処理装置24を備える。
この例において、送信側探触子16と受信側探触子18は、直径15mm、曲率35mmの10MHz振動子による集束探触子である。
制御装置20は、送信側探触子16と受信側探触子18を制御し、送信側探触子16により10MHzの超音波ビームSを発信し、受信側探触子18により超音波ビームSを受信する。
図6に示すように、集束探触子(送信側探触子16と受信側探触子18)の振動子から送信された超音波ビームSは、くさび12の接触面12aにおいて集束する。
表示装置22は、ディスプレイ装置であり、受信側探触子18で受信した超音波ビームSの探傷波形を表示する。
画像処理装置24は、探傷波形から異物(例えばき裂)の回折波を抽出し、伝搬時間より幾何学的に異物の深さを求める。
図7は、本発明の第1実施形態の超音波探傷装置10の実施例を示す図である。
この図は、送信側探触子16と受信側探触子18として、直径15mm、曲率35mmの10MHz振動子による集束探触子を1対のくさび12にそれぞれ搭載して、TOFD探傷する時の音圧分布をシミュレーションしたものである。
この図において、横軸は試験体表面1に沿った長さ、縦軸は試験体表面1からの深さである。また、図中の3本の曲線は、太い実線が0〜−3dB、細い実線が−3〜−6dB、破線が−6〜−12dBの音圧を示している。
図7の試験結果から、第1実施形態の超音波探傷装置10では、送信側探触子16と受信側探触子18として、集束探触子を用いているので、接触面近傍で超音波ビームSが集束し、狭い接触面12a(この例では、5×10mm)でも強い音圧が試験体TPに送受信され、TOFD探傷法による超音波探傷により所定の深さのきずの検出能力があることがわかる。
上述した実施例1において、集束探触子を用いてビームを集束させ、ビーム幅の狭い位置で試験体TPに超音波ビームSを送受信させることで、試験体TPとくさび12の接触面積を小さくでき、かつ独立して回転する回転軸a−aを設けることで、なだらかなうねり等のある曲面でも安定してTOFD探傷ができることが確認された。
しかし、本発明の第1実施形態の場合、2つのくさび12の接触面12aの試験体TPのうねり等による傾きが互いに異なると、探傷する深さ領域が変化することが予測される。このために、探傷位置によっては異なる深さ領域の探傷を行うこととなる。
図8は、本発明の第2実施形態の超音波探傷装置10の全体構成図である。
この例において、送信側探触子16と受信側探触子18は、各接触面12aで超音波ビームSを集束させることができるフェーズドアレイ探触子である。
また、図8の制御装置20は、フェーズドアレイ探触子である送信側探触子16と受信側探触子18を制御する。すなわち、制御装置20は、フェーズドアレイ探触子のセクタスキャンにより、試験体TPに入射する超音波ビームSの方向を変化させて、超音波ビームSの中心軸が交差する交軸点の試験体表面1からの交軸点深さを順次変化させ、かつ受信側探触子18により複数の交軸点深さに対応する複数の回折波を受信する。
さらに、図8の画像処理装置24は、各交軸深さでの探傷波形を作成する。
その他の構成は、第1実施形態と同様である。
図8の第2実施形態の超音波探傷装置10では、フェーズドアレイ探触子である送信側探触子16と受信側探触子18をそれぞれのくさび12に搭載している。
この構成により、送信側探触子16のフェーズドアレイ探触子の素子の一部を用いて送受信を行い、くさび12の試験体TPへの接触面12aの中央近傍で超音波ビームSを集束させて強い音圧を試験体TPに送受信させる。
また、フェーズドアレイ探触子の使用する素子の組み合わせ位置を順次変化させ、くさび12の試験体TPへの接触面12aの常に同一場所より超音波ビームSを試験体TPに送受信させて交軸点深さを変化させる。
これにより、図8に示すように、くさび12の試験体TPへの接触面12aの常に同一場所より超音波ビームSが試験体に送受信され、かつ交軸点深さを変化できる。このため、試験体TPとのくさび12の接触面積を最小限に抑えることができ、うねり等のある探傷面(試験体表面1)での探傷が可能になる。
図9は、本発明の第2実施形態の超音波探傷装置10の実施例を示す図である。
この図において、(A)は、入射角が25.0度、(B)は19.5度、(C)は12.7度の場合である。
各図において、横軸は試験体表面1に沿った長さ、縦軸は試験体表面1からの深さである。また、図中の3本の曲線は、太い実線が0〜−3dB、細い実線が−3〜−6dB、破線が−6〜−12dBの音圧を示している。
図9は、公称屈折角50度で、くさび内伝搬距離37.3mmとしたくさび12に10MHz、32チャンネルのフェーズドアレイ探触子(素子間隔0.6mm)を搭載し、16CHを同時に励起させるとともに、その励起させる位置を順次変化させ、試験体との接触面12aのほぼ中央で深さ1mmの位置に集束させる探傷を行った時の音場をシミュレーションで求めた結果である。
この図から、狭い接触面12aを強い音圧が送受信され、交軸点の深さが順次変化し、所定の深さのきずを確実に評価できることが確認された。
超音波ビーム幅の検討を、Civaシミュレーションソフトにて行った。
TOFD探傷に一般に使用される平板振動子と、集束用振動子とを比較した。
集束探触子では、ビーム幅を集束させるために曲率付きの振動子を用いている。曲率によってビーム幅が最小となる距離が変化する。したがって、試験体TPとの接触面12aにおいてビーム幅を最小にするためには、最適の振動子の大きさと曲率を選択する必要がある。ここでは、各振動子サイズにおいて、曲率を変化させた時のビーム幅が最小となるくさび内距離とその時のビーム幅の関係を示している。ここでのビーム幅は最大音圧の−12dB(1/4)の音圧の得られるビーム幅として測定している。
図10は、平板振動子と集束用振動子の超音波ビーム幅の比較図である。
この図において、(A)は10MHz、(B)は5MHz、(C)は2MHzの場合の結果である。なお、図中の記号は共通であり、図の上部に記載している。
この図から、平板振動子の直径が10、20、30mmの場合、(A)(B)(C)において、ビーム幅は、それぞれその直径より大きくなっていることがわかる。
すなわち、平板振動子では、振動子の直径より大きな寸法の探触子と試験体との界面を確保しないと、十分に高い音圧を試験体に送受信できないことがわかる。ここで界面とは、くさび12の接触面12aと試験体表面1との接触面を意味する。
一方、図10から集束用振動子(曲率付き集束探触子)を用いれば、例えば5mm以下のサイズの探触子と試験体との界面であっても十分に超音波ビームSの送受信が可能で高い音圧のビームを試験体に形成できることがわかる。
すなわち、最もビーム幅が大きくなる波長の長い2MHzであっても、振動子サイズをφ20mmとし、くさび内距離を27mm以下とすることで(この時の曲率は30mm)、5mm以下の界面でも十分に高い音圧の送受信が可能であることがわかる。
従って、通常用いられる周波数(2〜10MHz)において本発明が適用でき、さらに高い周波数においても波長が短いので本発明が適用できることは明らかである。
上述した第1、第2の実施形態の装置を用い、本発明の超音波探傷方法では、1対のくさび12の接触面12aが試験体表面1に沿って位置するように、ホルダー14を位置決めし、ホルダー14を試験体表面1に押し付け、1対のくさび12の接触面12aを、試験体表面1の起伏に密着させ、これにより、各接触面12aを試験体表面1の法線に直交する位置に揺動させて、試験体内部を超音波探傷検査する。
また、上述した第2実施形態の装置を用い、フェーズドアレイ探触子の用いる素子の組み合わせを順次移動させて、かつ各接触面12aで超音波ビームSを集束させることで、試験体TPに入射する超音波ビームSの方向を変化させて、超音波ビームSの中心軸が交差する交軸点の試験体表面1からの交軸点深さを順次変化させ、かつ受信側探触子18により複数の交軸点深さに対応する複数の回折波を受信して、これから各交軸点深さにおける探傷波形を作成する。
上述した本発明の装置と方法によれば、1対のくさび12の回転軸a−aが、各接触面12aの法線上に位置し、かつ接触面12aに平行に位置する。この回転軸a−aが試験体表面1に沿って位置するように、ホルダー14を位置決めし、ホルダー14を試験体表面1に押し付ける。この押し付けにより、1対のくさび12の接触面12aを試験体表面1の法線に直交する位置に揺動させ、かつ試験体表面1の起伏に密着させることができる。
従って、ドレッシングされた溶接部表面など、試験体表面1にうねり等がある場合でも、1対のくさび12の接触面12aを試験体表面1に超音波ビームSの入射及び出射が可能な状態に密着して接触させることができる。これにより、試験体表面1にうねり等がある場合でも、強い音圧を試験体TPに入射でき、SN比に優れた探傷波形が得られる。
また、1対のくさび12を介して送信側探触子16と受信側探触子18を対向させて超音波ビームSを送受信させるので、TOFD探傷法により試験体内部の微細なきずを高い精度で検出することができる。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変更することができることは勿論である。
a−a 回転軸、A ラテラル波、B 回折波、C 底面エコー、
b 接触面の幅、c 接触面の長さ、P 探触子、S 超音波ビーム、
TP 試験体、1 試験体表面、2 対称面、10 超音波探傷装置、
12 くさび、12a 接触面、12b 対向面、12c 円筒穴、
12d 側面、13 支持金具、14 ホルダー、14a 側板、
14b 天板、16 送信側探触子、18 受信側探触子、
20 制御装置、22 表示装置、24 画像処理装置

Claims (8)

  1. 試験体と接触する接触面と、該接触面の反対側に接触面と対向して位置する対向面とを有する1対のくさびと、
    1対のくさびを対称面に対して対称に保持し、互いに平行な1対の回転軸を中心にそれぞれ揺動可能に支持するホルダーと、
    一方のくさびの対向面に固定され、該くさびの接触面に向けて超音波ビームを発信する送信側探触子と、
    他方のくさびの対向面に固定され、該くさびの接触面から超音波ビームを受信する受信側探触子と、を備え、
    前記1対のくさびの接触面は、試験体表面に沿って位置するときに、試験体表面の起伏に密着可能に形成されており、
    前記回転軸は、前記接触面の法線上に位置し、かつ該接触面に平行に位置する、ことを特徴とするTOFD探傷法による超音波探傷装置。
  2. 前記接触面の形状は、前記回転軸に直交する幅が小さく、軸方向の長さが幅より大きい矩形形状又は楕円形状である、ことを特徴とする請求項1に記載のTOFD探傷法による超音波探傷装置。
  3. 前記送信側探触子と前記受信側探触子は、各接触面で超音波ビームを集束させることができる集束探触子である、ことを特徴とする請求項1に記載のTOFD探傷法による超音波探傷装置。
  4. 前記送信側探触子と前記受信側探触子は、各接触面で超音波ビームを集束させることができるフェーズドアレイ探触子である、ことを特徴とする請求項1に記載のTOFD探傷法による超音波探傷装置。
  5. 前記フェーズドアレイ探触子を制御する制御装置を備え、該制御装置により、
    フェーズドアレイ探触子のセクタスキャンにより、試験体に入射する超音波ビームの方向を変化させて、前記超音波ビームの中心軸が交差する交軸点の試験体表面からの交軸点深さを順次変化させ、かつ前記受信側探触子により複数の交軸点深さに対応する複数の回折波を受信し、
    これから各交軸点深さにおける探傷波形を評価する、ことを特徴とする請求項4に記載のTOFD探傷法による超音波探傷装置。
  6. 各交軸点深さにおける探傷波形を表示する表示装置と、
    各交軸深さでの探傷波形を作成し、探傷波形から異物の深さを求める画像処理装置と、を備える、ことを特徴とする請求項4に記載のTOFD探傷法による超音波探傷装置。
  7. 請求項1に記載の超音波探傷装置を用い、
    前記1対のくさびの接触面が試験体表面に沿って位置するように、ホルダーを位置決めし、
    ホルダーを試験体表面に押し付け、前記1対のくさびの接触面を、試験体表面の起伏に密着させ、
    これにより、各接触面を試験体表面の法線に直交する位置に揺動させて、試験体内部を超音波探傷検査する、ことを特徴とするTOFD探傷法による超音波探傷方法。
  8. 前記送信側探触子と前記受信側探触子は、フェーズドアレイ探触子であり、
    フェーズドアレイ探触子の用いる素子の組み合わせを順次移動させて、かつ各接触面で超音波ビームを集束させることで、試験体に入射する超音波ビームの方向を変化させて、前記超音波ビームの中心軸が交差する交軸点の試験体表面からの交軸点深さを順次変化させ、かつ前記受信側探触子により複数の交軸点深さに対応する複数の回折波を受信し、
    これから各交軸点深さにおける探傷波形を作成する、ことを特徴とする請求項7に記載のTOFD探傷法による超音波探傷方法。
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