JP7006444B2 - 超音波探傷方法 - Google Patents
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Description
従来、丸棒鋼のような略円柱状の中実な被探傷材の内部に存在するきずを検出する方法として、超音波探傷方法が知られている。略円柱状の被探傷材の中心部の所定領域に存在するきずを検出するには、超音波探傷方法のうち、例えば、垂直探傷法が用いられる。すなわち、被探傷材の側面に対向するように超音波探触子を配置し、該超音波探触子から被探傷材の中心に向けて超音波を送信し(超音波が入射する被探傷材の側面の接平面に垂直な方向から超音波を送信し)、該超音波探触子が受信するエコーに基づき、きずを検出する。
以下、従来の超音波探傷方法について、図1を参照して、より具体的に説明する。
図1(a)に示すように、略円柱状の被探傷材Pが丸棒鋼である場合、その中心部の所定領域Aに、揉み割れと称する様々な傾きを有する微小な割れきずが発生する場合がある。例えば、被探傷材Pの外径が25mmである場合、所定領域Aは、被探傷材Pの断面外縁と同心円状の直径10mm程度の範囲内の領域である。また、例えば、被探傷材Pの軸方向(図1の紙面に垂直な方向)に直交する方向の断面における長さが0.1mm以上の割れきずが検出対象とされる。
なお、図1に示す例では、被探傷材Pの位置を固定し、超音波探触子1を被探傷材Pの周方向に沿って回転させているが、これに限らず、超音波探触子1の位置を固定し、被探傷材Pを周方向に回転させることも可能である。また、超音波探触子1を被探傷材Pの軸方向に沿って相対移動させることで、被探傷材Pの軸方向に沿った複数の所定領域Aの超音波探傷が可能である。
しかしながら、割れきずの延びる方向が、超音波Uの伝搬方向に直交する方向から外れれば外れるほど、当該割れきずで反射し超音波探触子1で受信されるエコーの強度が低下するため、当該割れきずを検出できないおそれがある。特に、長さ0.1mm程度の微小な割れきずの場合、割れきずの延びる方向が超音波Uの伝搬方向に直交する場合であってもエコーの強度が小さいため、当該微小な割れきずの延びる方向が、超音波Uの伝搬方向に直交する方向から大きく外れれば、検出することができない。
これに対し、図1(b)に示す各割れきずF2(図中、白で塗りつぶした矩形のきず)の延びる方向は、各割れきずF2に超音波Uが伝搬する相対回転位置(超音波探触子1と被探傷材Pとの相対回転位置)において、超音波Uの伝搬方向と直交していない。すなわち、各割れきずF2の延びる方向は、被探傷材Pの中心Cと各割れきずF2(割れきずF2の中心)とを結ぶ直線の方向(超音波Uの伝搬方向に相当)と直交していない。このため、各割れきずF2で反射したエコーRの伝搬方向は、各割れきずF2に入射した超音波Uの伝搬方向から外れ、超音波探触子1で十分に受信することができない。したがい、従来の超音波探傷方法では、割れきずF2を検出することが困難である。
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、アレイ型超音波探触子が具備する複数の振動子から送信される超音波を丸棒鋼の中心に集束させて探傷する方法であるため、丸棒鋼の中心から外れた位置に存在するきずの検出精度が低下するという問題がある。また、様々な傾きを有するきずを精度良く検出する方法について、何ら提案されていない。
また、本発明に係る第1の方法において、「前記探傷領域をカバーするように配列されて」いるとは、各振動子から送信される超音波が探傷領域内を漏れなく伝搬する(探傷領域内の何れの部位にも何れかの振動子から送信される超音波が伝搬する)ように配列されることを意味する。後述の第2の方法についても同様である。
さらに、本発明に係る第1の方法において、「前記複数の各振動子から送信された超音波が前記被探傷材に入射するまでの経路において互いに略平行に伝搬する」とは、各振動子から送信され伝搬する超音波ビームの中心の方向が被探傷材に入射するまでの経路において互いに略平行であることを意味する。
また、本発明に係る第1の方法によれば、配置工程において、複数の振動子は、探傷工程で複数の各振動子から送信された超音波が被探傷材に入射するまでの経路において互いに略平行に伝搬するように配列される。具体的には、例えば、複数の振動子が直線状に配列される。各振動子から送信された超音波が入射する被探傷材の側面は略円弧面であるため、被探傷材に入射するまでの経路において互いに略平行に伝搬した超音波の入射角が異なる結果、屈折角も異なるものとなるため、被探傷材の内部において、各振動子から送信された超音波は拡散して(互いに離間するように)伝搬することになる。
このため、本発明に係る第1の方法によれば、きずの傾き(被探傷材の軸方向に直交する方向の断面において、きずの延びる方向と、被探傷材の中心ときずとを結ぶ直線の方向との成す角度)及び探傷領域内のきずの位置の如何に関わらず、超音波探触子と被探傷材との何れかの相対回転位置において、被探傷材の内部を伝搬する何れかの超音波の伝搬方向がきずの延びる方向と直交する状態となる。したがい、きずの傾きに関わらず、精度良くきずを検出可能である。
なお、上記の好ましい方法においては、連続する複数の振動子群から超音波を送信することになる。この場合、前述の本発明に係る第1の方法における「前記複数の各振動子から送信された超音波が前記被探傷材に入射するまでの経路において互いに略平行に伝搬する」とは、各振動子群から送信され伝搬する超音波ビーム(各振動子群を構成する各振動子から送信され伝搬する超音波ビームが合成された超音波ビーム)の中心の方向が被探傷材に入射するまでの経路において互いに略平行であることを意味する。
また、本発明に係る第2の方法によれば、配置工程において、複数の振動子は、探傷工程で複数の各振動子から送信された超音波が探傷領域において互いに略平行に伝搬するように配列される。具体的には、例えば、複数の振動子が曲線状に配列される(複数の振動子が所定の曲線に沿うように配列される)。各振動子から送信された超音波の被探傷材の側面における入射角及び屈折角は、各振動子の傾き(各振動子の傾きによって各振動子から送信される超音波の方向が決まる)と、超音波が入射する被探傷材の側面の部位の形状とによって幾何学的に算出することができる。このため、被探傷材の側面の各部位に入射して屈折した超音波が互いに略平行となる屈折角及び入射角を部位毎に順次算出することで、各部位に向けて超音波を送信する各振動子の傾きを算出することができ、ひいては複数の振動子の配列形態を決定することが可能である。
本発明に係る第2の方法によれば、きずの傾き(きずの延びる方向と、被探傷材の中心ときずとを結ぶ直線の方向との成す角度)及び探傷領域内のきずの位置の如何に関わらず、超音波探触子と被探傷材との何れかの相対回転位置において、被探傷材の内部を伝搬する何れかの超音波の伝搬方向がきずの延びる方向と直交する状態となる。したがい、きずの傾きに関わらず、精度良くきずを検出可能である。
図2は、本発明の第1実施形態に係る超音波探傷方法を実行するのに用いる超音波探傷装置の概略構成を模式的に示す図である。図2において、被探傷材Pは断面(被探傷材Pの軸方向に直交する方向の断面)を示している。後述の図3~図10についても同様である。
図2に示すように、第1実施形態の超音波探傷装置100は、略円柱状の被探傷材(丸棒鋼など)Pを超音波探傷するための装置であり、超音波探触子10と、制御・信号処理手段2とを備えている。
制御・信号処理手段2は、超音波探触子10が具備する各振動子11からの超音波の送信及びエコーの受信を制御すると共に、各振動子11が被探傷材Pからエコーを受信して得られる探傷信号に信号処理を施すことで、被探傷材Pの中心部の所定の探傷領域(破線で囲んだ領域)Aに存在するきずを検出する。なお、探傷領域Aは、被探傷材Pの断面外縁と同心円状の領域である。
探傷領域Aの大きさは、製造実績に基づいて定めればよい。すなわち、過去の製造実績から本発明の第1実施形態に係る超音波探傷方法で検出対象とする微小な割れきずが発生する領域を探傷領域Aとすればよい。典型的には、略円柱状の被探傷材Pの断面の外径(直径)の30~50%の直径を有する、被探傷材Pの断面外縁と同心円状の領域である。
第1実施形態に係る超音波探傷方法は、配置工程と、探傷工程とを含む。以下、各工程について順に説明する。
配置工程では、被探傷材Pの側面(図2に示す例では上面)に対向するように、超音波探触子10を配置する。具体的には、被探傷材Pの中心Cを通り、被探傷材Pの径方向(図2に示す例では水平方向(左右方向))に延びる直線Lと、複数の振動子11の配列方向とが略平行となるように、超音波探触子10を配置する。
配置工程において、複数の振動子11は、超音波探触子10と被探傷材Pとの対向方向(図2に示す例では上下方向)から見て、被探傷材Pの軸方向(図2の紙面に垂直な方向)に略直交する方向(図2に示す例では水平方向(左右方向))に沿って探傷領域Aをカバーするように配列される。すなわち、超音波探触子10の各振動子11から送信される超音波が探傷領域A内を漏れなく伝搬する(探傷領域A内の何れの部位にも何れかの振動子11から送信される超音波が伝搬する)ように配列される。具体的には、超音波探触子10の中心が被探傷材Pの中心Cと正対するように配置され、複数の振動子11の総長さが探傷領域Aの直径と同等以上となるようにすることで、探傷領域Aをカバーすることが可能である。
第1実施形態の配置工程では、図2に示すように、超音波探触子10から被探傷材Pまでの間(すなわち、接触媒質が充填されている領域)において、超音波U1が互いに略平行に伝搬する。これは、制御・信号処理手段2によって、振動子11(具体的には、後述の各振動子群11aを構成する振動子11)の超音波を送信するタイミングが互いに同じとなるように制御することで実現可能である。
探傷工程では、超音波探触子10を被探傷材Pの周方向に沿って相対回転させながら、複数の各振動子11から被探傷材Pに向けて超音波を送信し、複数の各振動子11が受信するエコーに基づき、被探傷材Pの探傷領域Aに存在するきずを検出する。
具体的には、超音波探触子10が具備する全ての複数の振動子11のうち、同時に超音波を送信してエコーを受信する連続する複数の振動子11からなる振動子群11aを選択し、選択する振動子群11aを順次切り替えることで、探傷領域Aに存在するきずを検出する。
例えば、被探傷材Pが丸棒鋼であり、長さ(丸棒鋼の軸方向(長手方向)に直交する方向の断面における長さ)0.1mm以上の割れきずを検出対象とする場合を考える。この場合、本発明者らの知見によれば、振動子11の幅(振動子11の配列方向の寸法)を0.5mm以下(振動子11の配列ピッチが0.5mm以下)とし、振動子群11aを構成する振動子11の個数を10個以下(振動子群11aの幅が5mm以下)とし、1個の振動子11分の切り替えピッチ(0.5mm以下の切り替えピッチ)で選択する振動子群11aを順次切り替えれば、長さ0.1mm以上の割れきずを精度良く検出可能である。
また、第1実施形態に係る超音波探傷方法によれば、配置工程において、複数の振動子11は、探傷工程で複数の各振動子11から送信された超音波が被探傷材Pに入射するまでの経路において互いに略平行に伝搬するように配列される。具体的には、複数の振動子11が直線状に配列される。各振動子11(各振動子群11a)から送信された超音波が入射する被探傷材Pの側面は略円弧面であるため、被探傷材Pに入射するまでの経路において互いに略平行に伝搬した超音波の入射角が異なる結果、屈折角も異なるものとなるため、被探傷材Pの内部において、各振動子11から送信された超音波は拡散して(互いに離間するように)伝搬することになる。
このため、第1実施形態に係る超音波探傷方法によれば、きずの傾き(きずの延びる方向と、被探傷材Pの中心Cときずとを結ぶ直線の方向との成す角度)及び探傷領域A内のきずの位置の如何に関わらず、超音波探触子10と被探傷材Pとの何れかの相対回転位置において、被探傷材Pの内部を伝搬する何れかの超音波の伝搬方向がきずの延びる方向と直交する状態となる。したがい、きずの傾きに関わらず、精度良くきずを検出可能である。
図3(a)に示すように、被探傷材Pの中心Cにきず(図中、黒で塗りつぶした矩形のきず)Fが存在する場合、図3(a)に示す相対回転位置(超音波探触子10と被探傷材Pとの相対回転位置)で、きずFの延びる方向が超音波U2の伝搬方向と直交するため、きずFで反射したエコーを超音波探触子10で十分に受信することができる。したがい、きずFを検出可能である。
図3(b)に示すように、中間地点にきずFが存在する場合、被探傷材Pが時計回りに若干の角度だけ相対回転することで、きずFが白で塗りつぶした位置から黒で塗りつぶした位置に移動する。移動した位置で、きずFの延びる方向が超音波U2の伝搬方向と直交するため、きずFを検出可能である。
図3(c)に示すように、探傷領域Aの外縁にきずFが存在する場合、被探傷材Pが図3(b)の相対回転角度よりも時計回りに更に若干の角度だけ相対回転することで、きずFが白で塗りつぶした位置から黒で塗りつぶした位置に移動する。移動した位置で、きずFの延びる方向が超音波U2の伝搬方向と直交するため、きずFを検出可能である。
図4(a)に示すように、被探傷材Pの中心CにきずFが存在する場合、被探傷材Pが時計回りに135°だけ相対回転することで、きずFが白で塗りつぶした位置から黒で塗りつぶした位置に移動する。移動した位置で、きずFの延びる方向が超音波U2の伝搬方向と直交するため、きずFを検出可能である。
図4(b)に示すように、中間地点にきずFが存在する場合、被探傷材Pが時計回りに135°よりも小さい角度だけ相対回転することで、きずFが白で塗りつぶした位置から黒で塗りつぶした位置に移動する。移動した位置で、きずFの延びる方向が超音波U2の伝搬方向と直交するため、きずFを検出可能である。
図4(c)に示すように、探傷領域Aの外縁にきずFが存在する場合、被探傷材Pが図4(b)の相対回転角度よりも時計回りに更に小さい角度だけ相対回転することで、きずFが初期の白で塗りつぶした位置から黒で塗りつぶした位置に移動する。移動した位置で、きずFを検出可能である。
図5(a)~図5(c)に示すように、何れの位置にきずFが存在する場合も、被探傷材Pが時計回りに90°だけ相対回転することで、きずFが白で塗りつぶした位置から黒で塗りつぶした位置に移動する。移動した位置で、きずFの延びる方向が超音波U2の伝搬方向と直交するため、きずFを検出可能である。
図6は、本発明の第2実施形態に係る超音波探傷方法を実行するのに用いる超音波探傷装置の概略構成を模式的に示す図である。図6(a)は第2実施形態の超音波探傷装置100Aの概略構成を模式的に示し、図6(b)は超音波探傷装置100Aが備える超音波探触子10Aの変形例を模式的に示す。
図6(a)に示すように、第2実施形態の超音波探傷装置100Aは、第1実施形態の超音波探傷装置100と同様に、略円柱状の被探傷材(丸棒鋼など)Pを超音波探傷するための装置であり、超音波探触子10Aと、制御・信号処理手段2とを備えている。
制御・信号処理手段2は、各超音波探触子1が具備する振動子からの超音波の送信及びエコーの受信を制御すると共に、各超音波探触子1が具備する振動子が被探傷材Pからエコーを受信して得られる探傷信号に信号処理を施すことで、被探傷材Pの中心部の探傷領域Aに存在するきずを検出する。制御・信号処理手段2の他の構成については、第1実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
第2実施形態に係る超音波探傷方法も、第1実施形態と同様に、配置工程と、探傷工程とを含む。以下、各工程について順に説明する。
配置工程では、被探傷材Pの側面(図6(a)に示す例では上面)に対向するように、超音波探触子10Aを配置する。
配置工程において、複数の振動子(複数の超音波探触子1)は、超音波探触子10Aと被探傷材Pとの対向方向(図6(a)に示す例では上下方向)から見て、被探傷材Pの軸方向(図6(a)の紙面に垂直な方向)に略直交する方向(図6(a)に示す例では水平方向(左右方向))に沿って探傷領域Aをカバーするように配列される。すなわち、超音波探触子10Aの各振動子(各超音波探触子1)から送信される超音波が探傷領域A内を漏れなく伝搬する(探傷領域A内の何れの部位にも何れかの超音波探触子から送信される超音波が伝搬する)ように配列される。具体的には、超音波探触子10Aの中心に位置する超音波探触子1が被探傷材Pの中心Cと正対するように配置され、各超音波探触子1の水平方向についての探傷可能範囲を積算した超音波探触子10Aのトータルの探傷可能範囲が探傷領域Aの直径と同等以上となるように超音波探触子1を配列することで、探傷領域Aをカバーすることが可能である。
具体的には、複数の振動子(複数の超音波探触子1)が曲線状に配列される。換言すれば、複数の振動子(複数の超音波探触子1)が所定の曲線に沿うように配列される。各振動子(各超音波探触子1)から送信された超音波の被探傷材Pの側面における入射角及び屈折角は、各振動子(各超音波探触子1)の傾きと、超音波が入射する被探傷材Pの側面の部位の形状とによって幾何学的に算出することができる。このため、被探傷材Pの側面の各部位に入射して屈折した超音波U2が互いに略平行となる屈折角及び入射角を部位毎に順次算出することで、各部位に向けて超音波を送信する各振動子(各超音波探触子1)の傾きを算出することができ、ひいては複数の振動子(複数の超音波探触子1)の配列形態を決定することが可能である。
探傷工程では、超音波探触子10Aを被探傷材Pの周方向に沿って相対回転させながら、複数の各振動子(超音波探触子1)から被探傷材Pに向けて超音波を送信し、複数の各振動子(超音波探触子1)が受信するエコーに基づき、被探傷材Pの探傷領域Aに存在するきずを検出する。
具体的には、超音波探触子10Aを構成する複数の振動子(超音波探触子1)のうち、超音波を送信してエコーを受信する振動子(超音波探触子1)を選択し、選択する振動子(超音波探触子1)を順次切り替えることで、探傷領域Aに存在するきずを検出する。
例えば、被探傷材Pが丸棒鋼であり、長さ(丸棒鋼の軸方向(長手方向)に直交する方向の断面における長さ)0.1mm以上の割れきずを検出対象とする場合を考える。この場合、本発明者らの知見によれば、各超音波探触子1が具備する振動子の直径を5mm以下とし、振動子(各超音波探触子1)の配列ピッチを0.5mm以下とすれば、長さ0.1mm以上の割れきずを精度良く検出可能である。例えば、各超音波探触子1が具備する振動子の直径を5mmとし、各超音波探触子1の配列ピッチを0.5mmとした場合、機械的な干渉が生じるため、被探傷材Pの軸方向について同じ位置に各超音波探触子1を配列することはできない。この場合には、機械的な干渉が生じないように、隣接する超音波探触子1の位置を被探傷材Pの軸方向に互いにずらして配列すればよい。
また、第2実施形態に係る方法によれば、配置工程において、複数の振動子(複数の超音波探触子1)は、探傷工程で複数の各振動子(各超音波探触子1)から送信された超音波が探傷領域Aにおいて互いに略平行に伝搬するように配列される。
このため、第2実施形態に係る超音波探傷方法によれば、きずの傾き及び探傷領域A内のきずの位置の如何に関わらず、超音波探触子10Aと被探傷材Pとの何れかの相対回転位置において、被探傷材Pの内部を伝搬する何れかの超音波の伝搬方向がきずの延びる方向と直交する状態となる。したがい、きずの傾きに関わらず、精度良くきずを検出可能である。
図7(a)~図7(c)に示すように、何れの位置にきずFが存在する場合も、図7(a)~(c)に示す相対回転位置(超音波探触子10Aと被探傷材Pとの相対回転位置)で、きずFの延びる方向が超音波U2の伝搬方向と直交するため、きずFで反射したエコーを超音波探触子10Aで十分に受信することができる。したがい、きずFを検出可能である。
図8(a)~図8(c)に示すように、何れの位置にきずFが存在する場合も、被探傷材Pが時計回りに135°だけ相対回転することで、きずFが白で塗りつぶした位置から黒で塗りつぶした位置に移動する。移動した位置で、きずFの延びる方向が超音波U2の伝搬方向と直交するため、きずFを検出可能である。
図9(a)~図9(c)に示すように、何れの位置にきずFが存在する場合も、被探傷材Pが時計回りに90°だけ相対回転することで、きずFが白で塗りつぶした位置から黒で塗りつぶした位置に移動する。移動した位置で、きずFの延びる方向が超音波U2の伝搬方向と直交するため、きずFを検出可能である。
図10は、試験の概要及び結果を説明する図である。図10(a)は試験の概要を、図10(b)は試験の結果を示す。
図10(a)に示すように、本試験においては、被探傷材P(外径25mmの丸棒鋼)の所定領域A(直径10mm)の外縁に沿った所定の位置に、人工きずD1~D5(直径0.4mmのドリルホール)を設けた。直径0.4mmのドリルホールで反射するエコーの強度は、長さ0.1mmの割れきずで反射するエコーの強度と大きな差はないため、長さ0.1mmの割れきずを模擬する人工きずとして適当である。
なお、本試験では、超音波探触子10と被探傷材Pは相対回転させずに、位置を固定した状態で超音波探傷を行った。
同様に、人工きずD2が模擬する割れきずの傾きは45°、人工きずD3が模擬する割れきずの傾きは90°、人工きずD4が模擬する割れきずの傾きは135°、人工きずD5が模擬する割れきずの傾きは180°である。
11・・・振動子
11a・・・振動子群
2・・・制御・信号処理手段
100、100A・・・超音波探傷装置
A・・・探傷領域
P・・・被探傷材
U、U1、U2・・・超音波
Claims (3)
- 略円柱状の被探傷材の側面に対向するように、複数の振動子を具備する超音波探触子を配置する配置工程と、
前記超音波探触子を前記被探傷材の周方向に沿って相対回転させながら、前記複数の各振動子から前記被探傷材に向けて超音波を送信し、前記複数の各振動子が受信するエコーに基づき、前記被探傷材の中心部の所定の探傷領域に存在するきずを検出する探傷工程と、を含み、
前記配置工程において、前記複数の振動子は、前記超音波探触子と前記被探傷材との対向方向から見て、前記被探傷材の軸方向に略直交する方向に沿って前記探傷領域をカバーするように配列され、なお且つ、前記探傷工程で前記複数の各振動子から送信された超音波が前記被探傷材に入射するまでの経路において互いに略平行に伝搬するように配列される、
ことを特徴とする超音波探傷方法。 - 前記被探傷材は、丸鋼材であり、
前記探傷工程において検出する前記きずは、前記丸鋼材の軸方向に直交する方向の断面における長さが0.1mm以上の割れきずであり、
前記超音波探触子は、前記複数の振動子が直線状に配列されたアレイ型超音波探触子であり、
前記複数の振動子は、前記対向方向から見て、前記丸鋼材の軸方向に略直交する方向に沿って0.5mm以下のピッチで配列され、
前記探傷工程において、前記超音波探触子が具備する全ての前記複数の振動子のうち、同時に超音波を送信してエコーを受信する連続する複数の振動子からなる幅が5mm以下の振動子群を選択し、該選択する振動子群を1個の振動子分の切り替えピッチで順次切り替えることで、前記探傷領域に存在するきずを検出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波探傷方法。 - 略円柱状の被探傷材の側面に対向するように、直径が5mm以下の複数の振動子を具備する超音波探触子を配置する配置工程と、
前記超音波探触子を前記被探傷材の周方向に沿って相対回転させながら、前記複数の各振動子から前記被探傷材に向けて超音波を送信し、前記複数の各振動子が受信するエコーに基づき、前記被探傷材の中心部の所定の探傷領域に存在するきずを検出する探傷工程と、を含み、
前記被探傷材は、丸鋼材であり、
前記探傷工程において検出する前記きずは、前記丸鋼材の軸方向に直交する方向の断面における長さが0.1mm以上の割れきずであり、
前記配置工程において、前記複数の振動子は、前記超音波探触子と前記被探傷材との対向方向から見て、前記被探傷材の軸方向に略直交する方向に沿って前記探傷領域をカバーするように配列され、前記複数の振動子は、前記対向方向から見て、前記丸鋼材の軸方向に略直交する方向に沿って0.5mm以下のピッチで配列され、なお且つ、前記探傷工程で前記複数の各振動子から送信された超音波が前記探傷領域において互いに略平行に伝搬するように配列される、
ことを特徴とする超音波探傷方法。
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