JP2014055880A - 超音波探傷方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】所定の深さに振動子配列方向に沿った複数の位置に同寸法の人工きず41が設けられた対比試験片4を探傷して2次元画像を形成し、人工きず41に対応する画素の濃度を測定する。測定した画素の濃度を用いて補間演算をすることにより、前記所定の深さで振動子配列方向に沿った任意の位置に該人工きず41と同寸法のきずが存在すると仮定した場合のきず画素濃度分布を推定する。きず画素濃度分布を構成する各画素の濃度に乗算することにより該きず画素濃度分布を略均一な分布にする補正係数の分布を取得する。被検査材の探傷信号の2次元画像を形成する。被検査材の2次元画像の各画素の濃度に、各画素に対応する補正係数を乗算して、該各画素の濃度を補正する。
【選択図】図3
Description
開口合成法では、まずアレイ探触子に対向する方向の断面の座標空間がメッシュに分割される。そして、選択した1個の送信用振動子から送信された超音波が注目するメッシュで反射し、該送信用振動子に応じて選択された複数の受信用振動子で受信される。そして、該受信用振動子から出力される探傷信号の強度が測定される。この注目するメッシュについての探傷信号の強度の測定が予め選択した全ての送信用振動子について行われ、測定した探傷信号の強度が合計され、その合計値が該注目するメッシュについての探傷信号の強度とされる。そして、この一連の処理が全てのメッシュに対して行われ、全てのメッシュの探傷信号の強度から探傷信号の2次元画像が形成される(特許文献1等参照)。
また、ゾーンフォーカス法やダイナミックデプスフォーカス法においても、複数の振動子から出力される探傷信号に対して信号処理が施されることにより、探傷信号の2次元画像が形成される(特許文献2等参照)。
上記の超音波探傷方法では、アレイ探触子に対向する方向の被検査材の一断面を探傷するのに必要な探傷時間を短縮することにより、被検査材の搬送方向についての探傷の分解能を高めることが考えられる。探傷時間を短縮するためには、例えば、開口合成法においては、アレイ探触子が有する振動子全てを送信用振動子とするのでなく、一部の振動子のみを送信用振動子とすることにより探傷時間を短縮することが考えられる。
しかしながら、そのような超音波探傷方法によっても、アレイ探触子の振動子配列方向が被検査材の搬送方向に垂直になるようにアレイ探触子を設置して搬送中の被検査材の超音波探傷を行う場合、きずの検出精度が十分に得られないことがある。
上記の検討では、被検査材を搬送せずに静止させた状態とし、被検査材の所定の深さにおけるアレイ探触子の振動子配列方向に沿った複数の位置に同寸法の人工きずを設けて、これらの人工きずが同等の信号強度で検出できるか否かを調査した。具体的には、人工きずが設けられた断面についての探傷信号の2次元画像(開口合成像など)を形成し、各人工きずに対応する画素の濃度(きず画素濃度)を測定した。その結果、同寸法の人工きずであっても、アレイ探触子の振動子配列方向の位置によって、きず画素濃度が異なる、すなわち、きず画素濃度の分布(アレイ探触子の振動子配列方向の分布)が均一にならない場合のあることを見出した。また、一断面を探傷するのに必要な探傷時間を短縮すること等のために超音波を送受信する振動子の制御方法(送受信する振動子の組み合わせ方など)の条件を変えると、きず画素濃度の分布が変化することも見出した。
これらの知見は、搬送中の被検査材に対して得られる探傷信号の2次元画像を解析することでは得られなかった知見であり、本発明者らが、被検査材を搬送せずに静止させた状態とし、同寸法の人工きずをアレイ探触子の振動子配列方向に沿って複数設けて、これらの人工きずに対応する画素の濃度を評価して初めて得られた知見である。
本来、同寸法のきずがアレイ探触子の振動子配列方向のいずれの位置にあっても、そのきずに対応する画素濃度は略同一となるべきであり、画素濃度が略同一となることによって、振動子配列方向のいずれの位置にあっても同等のきずの検出精度が得られることが期待できる。
そこで、同寸法のきずがアレイ探触子の振動子配列方向のいずれの位置にあってもきず画素濃度が同一になるように、きず画素濃度をアレイ探触子の振動子配列方向の位置に応じて補正することに想到した。
超音波探傷をアレイ探触子の複数の振動子によって行なうので、振動子配列方向でのきずの位置によって、超音波探傷の条件が異なる。例えば、開口合成法で、全ての振動子から順に超音波を送信する場合では次のようになる。図1に、きずがアレイ探触子の端部に対向する位置に在る場合と、アレイ探触子の中央に対向する位置に在る場合とでの、振動子から送信される超音波と、きずからのエコーの伝搬状態を示す。
振動子から送信される超音波は、アレイ探触子に垂直な方向に最も大きい強度で伝搬するが、垂直方向の周囲の方向にも伝搬し、その伝搬方向と垂直方向とが成す角度が大きくなる程、伝搬する超音波の強度は小さくなる。
アレイ探触子の端部に対向する位置にきずがある場合には、アレイ探触子の端部の振動子と、端部から中央側に配置された数個(ここでは、便宜上3個とする)の振動子、合計4個の振動子から送信された超音波が主としてきずに到達する(図1(a))。しかし、アレイ探触子の中央に対向する位置にきずがある場合には、アレイ探触子の中央の振動子と、中央から一方の端部側に配置された3個の振動子と、中央から他方の端部側に配置された3個の振動子との合計7個の振動子から送信された超音波が主としてきずに到達する(図1(b))。従って、アレイ探触子の端部に対向する位置にきずがある場合と、アレイ探触子の中央に対向する位置にきずがある場合とで、きずが受ける超音波の強度が異なる。これは、同時に複数の素子を送信する場合も、一素子ずつ切り替えながら送信する場合も同じである。
また、きずからのエコーも次のようになる。アレイ探触子の端部に対向する位置にきずがある場合には、きずからのエコーがアレイ探触子の端部の振動子と、端部から中央側に配置された数個(ここでは、便宜上3個とする)の振動子に主として受信されるが、アレイ探触子の中央に対向する位置にきずがある場合には、きずからのエコーがアレイ探触子の中央の振動子と、中央から一方の端部側に配置された3個の振動子と、中央から他方の端部側に配置された3個の振動子との合計7個の振動子で主として受信される。(図1(c)及び図1(d))。
したがって、振動子配列方向でのきずの位置によって、きずが受ける超音波の強度が異なり、また、きずからのエコーを受信する振動子の数が異なるので、振動子配列方向でのきずの位置によって探傷信号の強度のバラツキが生じることになる。このために、アレイ探触子の振動子配列方向でのきずの位置によっては、きずが有るのにきず画素濃度が低いために、未検出になることがある。
他にも、振動子毎に感度のばらつきがある場合、1断面を探傷するのに要する送信素子と受信素子の選択のパターンが配列方向に不均等な場合も同様である。
このように、アレイ探触子の振動子配列方向でのきずの位置による探傷信号の強度のバラツキが生じるために、アレイ探触子によって搬送中の被検査材の超音波探傷を行う場合、きずの検出精度が十分に得られない場合がある。
そこで、本発明のように被検査材の超音波探傷する断面についての探傷信号の2次元画像の画素濃度をアレイ探触子の振動子配列方向で補正する。この補正により、同寸法のきずがアレイ探触子の振動子配列方向のいずれの位置にあってもそのきずに対応する画素濃度が略同一となるので、きずのある位置によって未検出になるおそれが少なくなり、きずの検出精度が高くなる。
この補正において、人工きず測定ステップでの対比試験片の探傷時と、探傷ステップでの被検査材の探傷時とで、用いるアレイ探触子と、該アレイ探触子の設定条件を同じにする。このアレイ探触子の設定条件には、次のような内容を含む。
(1)超音波探傷方法において、開口合成法や、ゾーンフォーカス法や、ダイナミックデプスフォーカス法等のような探傷信号を2次元画像化する手法の種類
(2)上記(1)の手法で探傷信号を2次元画像化するときの振動子の制御方法
人工きず測定ステップでの対比試験片の探傷時と探傷ステップでの被検査材の探傷時とで、用いるアレイ探触子が同じなので、アレイ探触子が有する振動子毎の感度のバラツキによるきず画素濃度のバラツキも補正できる。
このように、人工きず測定ステップでの対比試験片の探傷時と、探傷ステップでの被検査材の探傷時とで、用いるアレイ探触子と、該アレイ探触子の設定条件を同じにすることにより、補正の精度を高くすることができる。
そこで、斯かる好ましい好ましい方法のように、深さ方向の補正を行うために、対比試験片に同寸法の人工きずをアレイ探触子に対向する面から複数の深さに設け、深さ方向でのきず画素濃度のバラツキを取得する。このとき、複数の人工きずが、振動子からの超音波の進行方向に互いに重なる位置にあると、振動子から送信された超音波が浅い位置の人工きずで遮断され、深い位置の人工きずに到達し難くなり、深い位置の人工きずが検出され難くなる。そこで、アレイ探触子に対向する面からの深さの異なる人工きずを超音波の進行方向で互いに重ならないように対比試験片中の異なる断面に設ける。
このようにして、対比試験片に複数の人工きずを振動子配列方向と深さ方向に設け、振動子配列方向と深さ方向でのきず画素濃度のバラツキを取得し、取得したバラツキに基づいて、搬送中の被検査材の自然きずのきず画素濃度をその自然きずの振動子配列方向と深さ方向の位置に応じて補正することにより、振動子配列方向と深さ方向でのきず画素濃度のバラツキを小さくすることができる。
このことにより、搬送中の被検査材についてのアレイ探触子から出力される探傷信号の2次元画像を用いた超音波探傷方法において、きずの検出精度を高くすることができる。
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の第1の実施形態に係る超音波探傷方法について説明する。
図2は、本実施形態の超音波探傷方法に用いる超音波探傷装置の構成図である。
超音波探傷装置1は、アレイ探触子2と、アレイ探触子2にケーブルを介して接続された本体部3とを備えている。
アレイ探触子2は、一列に配列された複数の振動子21を具備している。
本体部3は、信号発生部31と、振動子駆動部32と、信号検出部33と、増幅部34と、A/D変換部35と、補正部36と、合成処理部37と、表示部38と、これら各部の動作を統括する制御部39とを具備している。
振動子21は、圧電体から成っており、電気信号が入力されると超音波を送信し、逆に超音波を受信すると電気信号を出力する。
信号検出部33は、振動子21でエコー信号から変換された電気信号(探傷信号)を検出するものである。この検出された微弱なアナログの電気信号は、増幅部34で増幅された後に、A/D変換部35においてデジタル信号に変換される。
また、補正部36には、後述する補正係数が記憶されており、合成処理部37は、制御部39からの指示により、合成処理した2次元画像を補正部36が記憶している補正係数を用いて補正し、表示部38に表示する。
アレイ探触子2に対向する面から所定の深さにおける該アレイ探触子2の振動子配列方向に沿った複数の位置に同寸法の人工きずが設けられた対比試験片を、該アレイ探触子によって所定の設定条件で探傷して、該人工きずが設けられた断面についての探傷信号の2次元画像を形成し、該2次元画像における該各人工きずに対応する画素の濃度を測定する(人工きず測定ステップ)。
人工きず測定ステップは、具体的には、次のようにして行なう。
図3は、超音波探傷装置1と対比試験片4の概略図である。
アレイ探触子2を対比試験片4にセットする。この対比試験片4の材質は、その材質中での超音波の伝搬速度が、探傷を行う被検査材中での超音波の伝搬速度と同等である材質が望ましい。
対比試験片4には、複数の人工きず41が設けられている。複数の人工きず41は、アレイ探触子2がセットされる対比試験片4の面(アレイ探触子設置面42)から所定の深さで、アレイ探触子設置面42に平行な方向に穿孔された深い穴であり、その穴の深さ方向が、設置されたアレイ探触子2の振動子配列方向と垂直になるように形成されている。また、これらの人工きず41はアレイ探触子2に対向する方向の断面と交差する位置で、アレイ探触子2の振動子配列方向に沿って形成されている。
人工きず41の径は、被検査材で検出の対象とする自然きずの大きさと加工のし易さに応じて決めればよく、例えば外径2mmである。人工きず41の穴の深さは、アレイ探触子2からの超音波が搬送方向に広がる範囲を超える深さになっている。
アレイ探触子2には、搬送中の被検査材を探傷するアレイ探触子2自体を用いる。
対比試験片4を探傷するとき、アレイ探触子2の下記の設定条件は、搬送中の被検査材を探傷する場合と同じにする。
(1)超音波探傷方法において、開口合成法や、ゾーンフォーカス法や、ダイナミックデプスフォーカス法等のような探傷信号を2次元画像化する手法の種類
(2)上記(1)の手法で探傷信号を2次元画像化するときの振動子の制御方法
本実施形態では、開口合成法を用いる。
図4は、アレイ探触子2による対比試験片4の超音波探傷方法を説明する図であり、図4(a)は、対比試験片4についての探傷する断面の断面図であり、図4(b)は、図4(a)の断面の開口合成像であり、図4(c)は、図4(b)における直線L上の位置での画素濃度の分布図であり、図4(d)は、アレイ探触子の振動子配列方向のきず画素濃度分布を示す図であり、図4(e)は、アレイ探触子の振動子配列方向の補正係数分布を示す図である。以下、アレイ探触子の振動子配列方向を、適宜、振動子配列方向と略す。
図4(b)では、画素濃度の高さを黒色の濃淡で表しており、画素濃度が高い程、黒く示す。以下の開口合成像においても同様にして画素濃度を示す。
開口合成像では、人工きず41が在る位置に対応した画素の濃度が高くなっている(図4(b))。
人工きず41のきず画素濃度は、例えば、次のように定める。
人工きず41の中心の位置に対応する画素を中心とした所定の範囲内にある画素の濃度の内で最も高い濃度をきず画素濃度とする。また、人工きず41の中心の位置に対応する画素を中心とした所定の範囲内にある画素の濃度の平均値をきず画素濃度としてもよい。
ここでは、人工きず41の中心の位置に対応する画素を中心とした所定の範囲内にある画素の濃度の内で最も高い濃度をきず画素濃度とする。
同寸法の人工きず41のきず画素濃度のバラツキが振動子配列方向で生じており、中央に位置する人工きず41のきず画素濃度が高く、端部側に位置する人工きず41のきず画素濃度が低くなっている。
ここで、人工きず41a、41b、41c、41d、41eのそれぞれのきず画素濃度を、S1、S2、S3、S4、S5とする。
きず画素濃度の補間には、周知の補間方法である線形補間、多項式補間、スプライン補間等の方法を用いればよい。
補正係数は、例えば次のようにして算出する。
きず画素濃度の基準値(以下、きず画素濃度基準値という)を定める。そして、きず画素濃度基準値をきず画素濃度で除算した値が補正係数になる。
この補正係数を、後述する被検査材の探傷で検出された自然きずのきず画素濃度に乗算して自然きずのきず画素濃度を補正するが、補正した後のきず画素濃度が、表示部38で表示できるきず信号強度の範囲内に入らないと推定される場合には、きず画素濃度基準値を低く定め直せばよい。
具体的には、きず信号強度基準値をaとし、補正係数分布を表す式をg(X)とすると、補正係数分布は、
g(X)=a/f(X)
の式で求める。
図4(e)は、振動子配列方向での補正係数分布を示す。
そして、取得した補正係数分布を補正部36に記憶させる。補正係数分布は式として記憶させてもよいし、テーブルとして記憶させてもよい。
図5は、被検査材Hである角ビレットの鋼材を搬送しながら探傷している状況を示す概略図である。
そして、探傷ステップによって形成した開口合成像を構成する各画素の濃度に、補正係数分布取得ステップで取得した補正係数分布のうち該各画素のアレイ探触子2の振動子配列方向の位置に対応する補正係数を乗算して、該各画素の濃度を補正する(補正ステップ)。
具体的には、開口合成像の各画素についての振動子配列方向の各位置を算出する。そして、算出した振動子配列方向の各位置に対応する各補正係数を補正部36が記憶している補正係数分布から取得し、開口合成像の各画素に対応する各補正係数を取得する。そして、開口合成像の各画素の濃度に、各画素に対応する補正係数を乗算して各画素の濃度を補正する。
図6は、搬送中の被検査材Hの探傷における開口合成像の各画素濃度の補正を説明する概略図であり、図6(a)は、被検査材Hについての探傷する断面の断面図であり、図6(b)は、該断面の補正前の開口合成像であり、図6(c)は、該断面の補正後の開口合成像である。
被検査材Hに、同寸法の自然きずが振動子配列方向に4個あり(図6(a))、補正前の開口合成像では、4個の自然きずが異なった画素濃度で表示されている(図6(b))。しかしながら、画素濃度の補正後には、略同一の強さのきず画素濃度となっている(図6(c))。
このように、振動子配列方向でのきず画素濃度のバラツキが補正されるので、搬送中の被検査材に対するアレイ探触子から出力される探傷信号の開口合成像を用いた超音波探傷方法において、きずの検出精度を高くすることができる。
人工きず測定ステップでの対比試験片の探傷時と探傷ステップでの被検査材の探傷時とで同じアレイ探触子を用いるので、アレイ探触子が有する振動子毎の電気回路の特性のバラツキによるきず画素濃度のバラツキも補正できるので、きずの検出精度を高くすることができる。
また、被検査材の肉厚が厚い場合等には、深さに応じて予め定めた補正係数を開口合成像を構成する各画素の濃度に更に乗算するようにしてもよい。振動子配列方向と深さ方向でのきず画素濃度のバラツキを小さくすることができる。
第2の実施形態では、第1の実施形態で行なわれる開口合成像の画素濃度についての振動子配列方向の位置による補正に加え、アレイ探触子に対向する面からの深さによる補正を行う。
しかし、深さ方向についてのきず画素濃度のバラツキを調べるために、対比試験片に複数の人工きずを超音波の進行方向、つまりアレイ探触子に対向する面からの深さ方向に重なる位置に形成すると、振動子から送信された超音波が浅い位置の人工きずで遮断され、深い位置の人工きずに到達し難くなり、深い位置の人工きずが検出され難くなる。
図7は、対比試験片4に複数の人工きず41を超音波の進行方向に重なる位置に形成した場合のきず画素濃度を説明する図であり、図7(a)は対比試験片とアレイ探触子の正面図であり、図7(b)は対比試験片とアレイ探触子の側面図であり、図7(c)は探傷する断面の開口合成像であり、図7(d)は図7(c)での直線L1及びL2上の位置での画素濃度の分布図である。
同寸法の人工きず41が、アレイ探触子に対向する方向の同一断面の上段(アレイ探触子2に近い側)と下段(アレイ探触子2から遠い側)に設けられており、上段と下段の各人工きず41は、深さ方向、つまり超音波の進行方向に重なる位置にある。
下段の人工きず41のきず画素濃度は、振動子配列方向の位置が同じである上段の人工きず41のきず画素濃度よりもかなり低くなっている(図7(c)、図7(d))。これは、振動子から送信された超音波が上段の人工きず41で遮断され、下段の人工きず41に到達し難くなるためである。
図8及び図9は、本実施形態に係る超音波探傷方法を説明する図である。図8(a)は対比試験片とアレイ探触子の正面図であり、図8(b)は対比試験片とアレイ探触子の側面図であり、図8(c)は上段の人工きず41が設けられた断面の開口合成像であり、図8(d)は下段の人工きず41が設けられた断面の開口合成像であり、図8(e)は、図8(c)での直線L3及び図8(d)でのL4上の位置での画素濃度の分布図である。
図9(a)は、上段の人工きずのきず画素濃度の分布図であり、図9(b)は、下段の人工きずのきず画素濃度の分布図であり、図9(c)は、上段と下段の人工きずのきず画素濃度を、振動子配列方向の位置と深さとの関係で示す3次元図であり、図9(d)は、振動子配列方向及び深さ方向の2次元のきず画素濃度分布図である。
本実施形態においてアレイ探触子2は、対比試験片4aのアレイ探触子設置面42aにおける人工きず41の穴の深さ方向に位置が異なる2箇所(Y1、Y2)に設置される。
対比試験片4aにおいて、第1の実施形態の対比試験片4と同様の人工きず41が上段(アレイ探触子2に近い側)と下段(アレイ探触子2から遠い側)に形成されている。
上段と下段のそれぞれの段の複数の人工きず41は、異なる2箇所に設置されるアレイ探触子2に対向し得る方向のそれぞれ異なる断面に形成されている。
アレイ探触子設置面42aからの深さがD1の上段には、対比試験片の振動子配列方向のX1、X2、X3、X4、X5の位置に同寸法の人工きず411a、411b、411c、411d、411eが設けられている(図8(a))。
アレイ探触子設置面42aからの深さがD2の下段には、対比試験片の振動子配列方向のX1、X2、X3、X4、X5の位置に同寸法の人工きず412a、412b、412c、412d、412eが設けられている(図8(a))。
人工きず測定ステップにおいては、アレイ探触子2を上段の人工きず41を探傷する位置(Y1)と、下段の人工きず41を探傷する位置(Y2)のそれぞれに順にセットして探傷し、開口合成像からきず画素濃度を得る(図8(c)、図8(d)、図8(e))。
ここで、人工きず411a、411b、411c、411d、411eのそれぞれのきず画素濃度を、M11、M12、M13、M14、M15とし(図9(a))、人工きず412a、412b、412c、412d、412eのそれぞれのきず画素濃度を、M21、M22、M23、M24、M25とする(図9(b))。
そして、きず画素濃度分布推定ステップにおいて、上段の人工きず411a、411b、411c、411d、411eの振動子配列方向位置ときず画素濃度のデータ、つまり、(X1,M11)、(X2,M12)、(X3,M13)、(X4,M14)、(X5,M15)のデータを基に補間演算し、深さD1でのきず画素濃度分布f1(X)を推定する(図9(a))。上段と同様に下段の人工きず412a、412b、412c、412d、412eの振動子配列方向位置ときず画素濃度のデータ、つまり、(X1,M21)、(X2,M22)、(X3,M23)、(X4,M24)、(X5,M25)のデータを基に補間演算し、深さD2でのきず画素濃度分布f2(X)を推定する(図9(b))。
具体的には、例えば、振動子配列方向の位置がX3で、深さがD1とD2の間であるD12の位置でのきず画素濃度を推定するには、次のようにする。
振動子配列方向の位置がX3で、深さがD1でのきず画素濃度をきず画素濃度分布f1(X)から求め、振動子配列方向の位置がX3で、深さがD2でのきず画素濃度をきず画素濃度分布f2(X)から求める。
そして、振動子配列方向の位置がX3で、深さがD1でのきず画素濃度M13と、振動子配列方向の位置がX3で、深さがD2でのきず画素濃度M23とを用いて補間演算をすることにより、振動子配列方向の位置がX3で深さがD12の位置でのきず画素濃度M33を推定することができる。
また、きず画素濃度分布f1(X)及びきず画素濃度分布f2(X)から求めたきず画素濃度を用い、周知の補間手法であるバイリニア法やバイキュービック法によって振動子配列方向及び深さ方向の2次元のきず画素濃度分布を推定してもよい。
このようにして求めた振動子配列方向及び深さ方向の2次元のきず画素濃度分布図を図9(d)に示す。きず画素濃度を黒色の濃淡で示している。
振動子配列方向の中央側が端部側よりもきず画素濃度が高くなっており、また、深さが浅い程きず画素濃度が高くなっている。
を定め、きず画素濃度基準値を振動子配列方向及び深さ方向の2次元のきず画素濃度分布から得られる振動子配列方向及び深さ方向の2次元の各位置でのきず画素濃度で除算することにより、振動子配列方向及び深さ方向の2次元の分布である補正係数分布を取得する。
具体的には、振動子配列方向の位置をX、深さをD、きず画素濃度基準値をa1、振動子配列方向及び深さ方向の2次元のきず画素濃度分布の式をf(X,D)、振動子配列方向及び深さ方向の2次元の補正係数分布の式をg(X,D)とすると、
g(X,D)=a1/f(X,D)
の式で補正係数分布を取得する。
補正ステップにおいては、探傷ステップによって形成した開口合成像を構成する各画素の濃度に、補正係数分布取得ステップで取得した補正係数分布のうち該各画素のアレイ探触子の振動子配列方向及び深さ方向の各位置に対応する補正係数を乗算して、該各画素の濃度を補正する。
そして、きず検出ステップにおいては、第1の実施形態と同様にして、補正ステップによって各画素の濃度を補正された開口合成像を用いてきずを検出する。
このようにして、振動子配列方向と深さ方向でのきず画素濃度のバラツキを小さくすることができるので、搬送中の被検査材についてのアレイ探触子から出力される探傷信号の2次元画像を用いた超音波探傷方法において、きずの検出精度を高くすることができる。
本実施形態では、対比試験片に設けた人工きずの深さを上段と下段の2つの深さとしたが、人工きずを設ける深さの数は、いくつでもよい。人工きずを設ける深さの数を多くするほど、深さ方向の補正の精度を高くすることができる。
第2の実施形態の超音波探傷方法の実施例を下記に示す。
実施においては下記のアレイ探触子と対比試験片を用いた。図10はアレイ探触子と対比試験片の概略図である。
アレイ探触子の構成を下記に示す。
振動子数:64
超音波周波数:3MHz
2次元画像の形成方法には、開口合成法を用いた。
対比試験片の構成を下記に示す。
160mm×160mmの角ビレットの鋼材に図10のように、人工きずを設けた。
アレイ探触子2に対向し得る方向の互いに異なる2つの断面で、一方の断面についてはアレイ探触子2に対向する面から80mmの深さで、他方の断面には150mmの深さで、振動子配列方向に5個の人工きずを35mmの間隔を空けて形成した。
人工きずの寸法は、φ2mm×25mmである。
探傷にあたっては、アレイ探触子の内の受信用振動子がある部分が対比試験片に対向するように、アレイ探触子と対比試験片の位置を定めた。
図11は、実施例での開口合成像と各人工きずのきず画素濃度の図であり、図11(a)は人工きず測定ステップでの、上段の人工きずの開口合成像であり、図11(b)は図11(a)の開口合成像での各人工きずのきず画素濃度のグラフであり、図11(c)は人工きず測定ステップでの、下段の人工きずの開口合成像であり、図11(d)は図11(c)の開口合成像での各人工きずのきず画素濃度のグラフであり、図11(e)は補正ステップでの、補正後の上段の人工きずの開口合成像であり、図11(f)は図11(e)の開口合成像での各人工きずのきず画素濃度のグラフであり、図11(g)は補正ステップでの、補正後の下段の人工きずの開口合成像であり、図11(h)は図11(g)の開口合成像での各人工きずのきず画素濃度のグラフである。
図11(b)、図11(d)、図11(f)、図11(h)のそれぞれのきず画素濃度のグラフは、それぞれ2回の測定データ(超音波探傷してきず画素濃度を測定することを2回行なっている)をグラフ化しており、きず毎の2回のデータの平均値をグラフに数値で記載している。
なお、図11(b)、図11(d)、図11(f)、図11(h)でのきず画素濃度は、所定の濃度を基準としたdBで表示している。
そして、この得られた上段と下段のきず画素濃度から、アレイ探触子の振動子配列方向及び深さ方向の2次元のきず画素濃度分布を取得した。そして、きず画素濃度基準値を定めてきず画素濃度分布からアレイ探触子の振動子配列方向及び深さ方向の2次元の補正係数分布を取得した。
そして、探傷ステップとして、上記対比試験片を再度超音波探傷した。そして、得られた開口合成像を構成する各画素の濃度に、各画素に対応する補正係数を乗算して画素濃度を補正し、開口合成像を形成した(図11(e)、図11(f)、図11(g)、図11(h))。
補正した結果、上段、下段の各人工きずのきず画素濃度が略同一となり、アレイ探触子の振動子配列方向及び深さ方向でのきず画素濃度のバラツキが減少し、きずの検出精度が高くなった。
21・・・振動子21
4・・・対比試験片4
41・・・人工きず41
H・・・被検査材
Claims (2)
- 複数の振動子を一列に配列したアレイ探触子を用い、該振動子から出力される探傷信号に対して信号処理を施すことにより、被検査材の該アレイ探触子に対向する方向の断面についての探傷信号の2次元画像を形成し、該2次元画像を用いてきずを検出する超音波探傷方法であって、
前記アレイ探触子に対向する面から所定の深さにおける該アレイ探触子の振動子配列方向に沿った複数の位置に同寸法の人工きずが設けられた対比試験片を、該アレイ探触子によって所定の設定条件で探傷して、該人工きずが設けられた断面についての探傷信号の2次元画像を形成し、該2次元画像における該各人工きずに対応する画素の濃度を測定する人工きず測定ステップと、
前記人工きず測定ステップによって測定した前記各人工きずに対応する画素の濃度を用いて補間演算をすることにより、前記所定の深さにおける前記アレイ探触子の振動子配列方向に沿った任意の位置に該人工きずと同寸法のきずが存在すると仮定した場合の当該きずに対応する画素の濃度の該アレイ探触子の振動子配列方向の分布であるきず画素濃度分布を推定するきず画素濃度分布推定ステップと、
前記きず画素濃度推定ステップにより推定された前記きず画素濃度分布を構成する各画素の濃度に乗算することにより該きず画素濃度分布を略均一な分布にする補正係数を該きず画素濃度分布を構成する各画素毎に算出し、該算出した補正係数の該アレイ探触子の振動子配列方向の分布である補正係数分布を取得する補正係数分布取得ステップと、
前記アレイ探触子をその振動子配列方向が被検査材の搬送方向に垂直になるように設置し、該被検査材を搬送しながら該アレイ探触子によって前記所定の設定条件で探傷して、該アレイ探触子に対向する方向の断面についての探傷信号の2次元画像を形成する探傷ステップと、
前記探傷ステップによって形成した2次元画像を構成する各画素の濃度に、前記補正係数分布取得ステップで取得した前記補正係数分布のうち該各画素の前記アレイ探触子の振動子配列方向の位置に対応する前記補正係数を乗算して、該各画素の濃度を補正する補正ステップと、
前記補正ステップによって各画素の濃度を補正された前記2次元画像を用いてきずを検出するきず検出ステップとを含むことを特徴とする超音波探傷方法。 - 前記人工きず測定ステップにおいて用いられる前記対比試験片は、前記アレイ探触子に対向する面から複数の所定の深さにおける該アレイ探触子の振動子配列方向に沿った複数の位置に同寸法の人工きずが設けられ、該各所定の深さに設けられた人工きずは、該アレイ探触子に対向し得る方向の互いに異なる複数の断面にそれぞれ形成されており、
前記人工きず測定ステップにおいて、前記対比試験片を前記複数の断面毎に探傷して、該複数の断面についての探傷信号の2次元画像を形成し、該各2次元画像における該各人工きずに対応する画素の濃度を測定し、
前記きず画素濃度分布推定ステップにおいて、前記アレイ探触子の振動子配列方向の前記きず画素濃度分布を前記人工きずが設けられた各所定の深さ毎に推定し、推定した各所定の深さ毎の前記振動子配列方向の該きず画素濃度分布を用いて前記深さ方向の補間演算をすることにより、該振動子配列方向及び該深さ方向の任意の位置に前記人工きずと同寸法のきずが存在すると仮定した場合の当該きずに対応する画素の濃度の該振動子配列方向及び該深さ方向の2次元のきず画素濃度分布を推定し、
前記補正係数分布取得ステップにおいて、前記2次元のきず画素濃度分布を構成する各画素の濃度に乗算することにより該2次元のきず画素濃度分布を略均一な分布にする補正係数を該2次元のきず画素濃度分布を構成する各画素毎に算出し、該算出した補正係数の該アレイ探触子の該振動子配列方向及び該深さ方向の2次元の分布である補正係数分布を取得し、
前記補正ステップにおいて、前記探傷ステップによって形成した2次元画像を構成する各画素の濃度に、前記補正係数分布取得ステップで取得した前記補正係数分布のうち該各画素の前記アレイ探触子の振動子配列方向及び前記深さ方向の各位置に対応する前記補正係数を乗算して、該各画素の濃度を補正することを特徴とする請求項1に記載の超音波探傷方法。
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