JP4580957B2 - コンクリート構造物の非破壊検査方法 - Google Patents

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本発明は、コンクリート構造物の内部に存在している非コンクリート体を検出(位置及び/又は厚み)する非破壊検査方法関する。
従来、トンネル、橋梁等のコンクリート構造物中に発生しているクラック等の欠陥を検出する非破壊検査方法としては、熟練検査員がハンマーでコンクリート構造物に衝撃を与え、そのときの反力や音などにより異常を検知し診断する、いわゆる打音検査方法が採用されている。しかし、この打音検査はクラック等の欠陥の検出における信頼性が低いのに加え、診断に主観的な要素が強く反映し個人差が大きいという欠点がある。かつ、連続して検査できる時間は30分程度が限界といわれており、検査員の肉体的負担が大きい検査方法である。更に、近年熟練検査員の数が急減し、あるいは建築物を長寿命化して使用するという観点から、診断対象の数が急増する等の社会的背景があって、非熟練検査員でも高精度な診断が可能な診断方法の開発が望まれている。このため、打音検査に代わる検査方法として、赤外線法、X線法、超音波法、電磁波法等の各種検査方法の開発が試みられてきた。
赤外線法では、例えばクラックとクラックの周囲との温度の差によりクラックの有無の診断を行うため、トンネル内部等のように日照がない検査対象物の場合では、クラックの検出が困難であった。そのため、ハロゲンランプで検査対象物の表面を暖めるという方法も考えられるが、検査に時間がかかるだけでなく、表面から5mmまでの深さに存在するクラックしか検出できないという欠点を持つ。X線法は、検査に使用する機器の取り扱いが煩わしいだけでなく、有資格者しか検査ができず、かつリスクが伴い検査が高コストとなる。そして、トンネルのように片側からしか診断ができないものには適用できない。
超音波法は、例えば、超音波がコンクリート構造物の表面とクラックの間を往復する際の伝播時間によりクラックの有無の判定や位置の計測を行なう手法である。一般に、超音波法では、クラック等の欠陥で反射して得られたそれぞれの最初の反射波(第1次反射波)を検出することによりクラック等の欠陥までの往復伝播時間を求め、これによりクラック等の欠陥の検出を行う方法が採用されている。そのため、クラック等の欠陥と表面との間に多重反射が生じるような条件下では、第1次反射波の検出による往復伝播時間の計測が困難となっていた。このため、多重反射波の存在を前提とした多重反射波モデル、あるいは定在波を活用した定在波モデルに基づくコンクリート構造物の超音波診断方法が提案されている。しかし、多重反射波モデル、あるいは定在波モデルに基づくコンクリート構造物の超音波診断では、超音波センサをコンクリート構造物の表面にいちいち接触させる必要がある。そのため、面積が小さな検査対象物であれば問題ないが、長大なトンネル等では検査に時間がかかり過ぎるという問題が生じる。
このため、検査時間の短縮と検査装置の稼働率を上げる方法として、送受信アンテナを取付けた台車にトンネル壁面上を走行させたり、電磁波レーダの装置を搭載した車両をトンネル内に走行させる電磁波を利用した検査方法が提案されている。
しかしながら、これまでの電磁波レーダを使用した検査では、受信電磁波の強度変化の状態を計測・画像化して、この強度変化を診ることにより診断を行っていたため、必ずしも良好な結果が得られなかった。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、電磁波を用いた短時間で高精度、高信頼性を有するコンクリート構造物非破壊検査方法を提供することを目的とする。
前記目的に沿う第1の発明に係るコンクリート構造物の非破壊検査方法は、コンクリート構造物の表面に対向して設けた送信アンテナから電磁波を前記コンクリート構造物に向けて発信し、前記コンクリート構造物の内部に存在するクラック又はクラックと空洞からなる非コンクリート体で反射した電磁波を前記コンクリート構造物の表面に対向して設けた受信アンテナで受波信号として検出することにより行うコンクリート構造物の非破壊検査方法において、
前記コンクリート構造物の内部の一つ以上の前記非コンクリート体で反射した電磁波の反射波から形成される前記受波信号の波形と、前記コンクリート構造物の内部の一つ以上の前記非コンクリート体の存在から、理論的及び/又は実験的に予測される予測受波信号の波形とのパターンマッチングを行うことにより、前記クラックの検出を行い、しかも、
前記予測受波信号の波形は、前記一つ以上の非コンクリート体でそれぞれ反射した基本反射波の一次結合として表示し、前記クラックの反射波が1反射波であって、前記空洞からの反射波が該空洞の上面と底面からの2反射波である
コンクリート構造物中に鉄骨、鉄筋、クラック、空洞等の非コンクリート体が存在すると、これらの非コンクリート体で電磁波は反射する。従って、非コンクリート体がコンクリート構造物中に種々の状態で存在すると仮定して作成した予測受波信号の波形と、実際に受信アンテナで受信した受波信号の波形とのパターンマッチングを図り、パターンマッチングが最も良好になる予測受波信号の波形を求めると、この予測受波信号の波形を与える非コンクリート体の状態が、現実のコンクリート構造物中に生起している非コンクリート体の状態であると判断することができる。
第1の発明に係るコンクリート構造物の非破壊検査方法において、前記予測受波信号の波形を前記一つ以上の非コンクリート体でそれぞれ反射した基本反射波の波形の一次結合として表示す
コンクリート構造物中に一つ以上の非コンクリート体が存在すると、電磁波は各非コンクリート体でそれぞれ反射する。このとき、各非コンクリート体で1度反射した電磁波がコンクリート体内を伝播する際に反射を何度も繰り返すと、電磁波の伝播距離が長くなって電磁波の減衰が大きくなる。このため、各非コンクリート体で1度反射して受信アンテナで検出された電磁波に対して、2度以上反射を繰り返して受信アンテナで検出された電磁波の強度は小さく、一般に無視できる。そこで、受信アンテナに受信される1箇所からの代表的な反射波、すなわち基本反射波を予め求めておくと、内部に一つ以上の非コンクリート体が存在するコンクリート構造物からの予測受波信号の波形は、各非コンクリート体でそれぞれ反射した基本反射波の波形の一次結合により作成することができる。従って、この予測受波信号の波形と、実際の受波信号の波形とのパターンマッチングを図れば、その結果求まる反射波の往復伝播時間、及び一次結合係数の値や正負の符号から各非コンクリート体の種類の識別や位置を決定することができる。
第1の発明に係るコンクリート構造物の非破壊検査方法において、前記パターンマッチングの判定に、前記コンクリート構造物の物理パラメータ及び伝播時間を用いて予測される前記予測受波信号と前記受波信号とのマッチング角度を採用し、比較的少ない基本反射波の数の下で該マッチング角度を最小とする前記予測受波信号の波形のパラメータである前記伝播時間及び前記物理パラメータの値から前記非コンクリート体の位置を決定することができる。
第1の発明に係るコンクリート構造物の非破壊検査方法において、前記パターンマッチングの判定に、伝播時間を変えた幾つかの基本反射波の波形で張られる空間に前記受波信号の波形を直交射影したときの最適近似誤差に対して求まるマッチング角度を採用し、該マッチング角度を最小とする前記予測受波信号の波形のパラメータである伝播時間及び一次結合係数の値から前記非コンクリート体の位置を決定することができる。
なお、これらのことを一般的に行おうとすると、計算に時間がかかり実用的でなくなる。そのため、計算時間に制約がある場合は、非コンクリート体の種類や数(つまり、状態のこと)を常識的なものに限定することもできる。
すなわち、コンクリート構造物中の非コンクリート体の状態(種類や数のこと)を想定し、各基本反射波の往復伝播時間を変数として予測受波信号の波形を作成し、この予測受波信号の波形と実際に得られた受波信号の波形とを最適パターンマッチングさせる。このとき、予測受波信号の波形と実際の受波信号の波形との類似度(パターンマッチング度)を評価する関数として、前記のいずれかのマッチング角度を採用する。ここで、マッチング角度は、各非コンクリート体の位置を示す伝播時間の関数となっているので、マッチング角度を最小とする各非コンクリート体の位置を示す伝播時間を求めると、受波信号の波形に対して非コンクリート体の状態を想定したときの予測受波信号の波形の最適パターンマッチングが完了する。最後に、こうして得られた非コンクリート体の各状態の下での最適マッチング角度の中で、マッチング角を最小にする状態を選べば、受波信号の波形と予測受波信号の波形との間の最終的な最適パターンマッチングが完了する。このときの非コンクリート体の状態及びそのときの予測受波信号の波形のパラメータである往復伝播時間が、上記非破壊検査に際して求めるべきものである。
請求項1〜4記載のコンクリート構造物の非破壊検査方法においては、コンクリート構造物の内部の一つ以上の非コンクリート体で反射した電磁波の反射波から形成される受波信号の波形と、コンクリート構造物の内部の一つ以上の非コンクリート体の存在から理論的及び/又は実験的に予測される予測受波信号の波形とのパターンマッチングを行うことにより、非コンクリート体の検出を行うので、鉄骨、鉄筋、クラック、穴等の非コンクリート体がコンクリート構造物中に存在した場合、これらの位置の計測を、短時間で高精度に行うことが可能となる。更に、非コンクリート体が深さの方向に複数存在しても、各非コンクリート体を個別に検出して、それぞれの位置を計測することが可能である。
特に、このコンクリート構造物の非破壊検査方法においては、予測受波信号の波形を一つ以上の非コンクリート体でそれぞれ反射した基本反射波の波形の一次結合として表示するので、各基本反射波の往復伝播時間、一次結合係数の値及び符号を求めることにより、非コンクリート体の識別、位置、寸法を計測することが可能となる。
請求項記載のコンクリート構造物の非破壊検査方法においては、パターンマッチングの判定に、コンクリート構造物の物理パラメータ及び伝播時間を用いて予測される予測受波信号と受波信号とのマッチング角度を採用し、マッチング角度を最小とする予測受波信号の波形のパラメータである伝播時間及び物理パラメータの値から非コンクリート体の位置を決定するので、短時間にコンクリート構造物の非破壊検査が可能になる。
請求項記載のコンクリート構造物の非破壊検査方法においては、パターンマッチングの判定に、伝播時間を変えた幾つかの基本反射波の波形で張られる空間に受波信号の波形を直交射影したときの最適近似誤差に対して求まるマッチング角度を採用し、マッチング角度を最小とする予測受波信号の波形のパラメータである伝播時間及び一次結合係数の値から非コンクリート体の位置を決定するので、短時間に、かつ高信頼性を有したコンクリート構造物の非破壊検査が可能になる。
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここに、図1は本発明の第1の実施の形態に係るコンクリート構造物の非破壊検査方法に適用した非破壊検査装置のブロック図、図2は受波信号の波形に対して往復伝播時間の関数としての予測受波信号の波形を最適パターンマッチングする際の説明図、図3はコンクリート表面からの反射波形を示す説明図、図4は本発明の実施例2及び実施例3において非破壊検査するコンクリート構造物の説明図、図5は本発明の実施例2における受波信号の波形と最適パターンマッチングして得られた予測受波信号の波形の類似性を示す説明図、図6は本発明の実施例3における受波信号の波形と最適パターンマッチングして得られた予測受波信号の波形の類似性を示す説明図である。
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るコンクリート構造物の非破壊検査方法に適用した非破壊検査装置10は、コンクリート構造物11の表面12に対向して設けた送信アンテナ13から電磁波をコンクリート構造物11に向けて発信する送信機14と、コンクリート構造物11の内部に存在する非コンクリート体の一例である欠陥15で反射した反射波をコンクリート構造物11の表面12に対向して設けた受信アンテナ16で受信して増幅する増幅器17と、増幅器17によって増幅された反射波の信号を処理する演算処理手段18とを有している。以下、これらについて詳細に説明する。
コンクリート構造物11の非破壊検査に使用する電磁波としては、例えば、数百MHzオーダ〜数GHzオーダの周波数を有する電磁波を使用することができるが、原則的にはどのような周波数の電磁波であっても使用することができる。もっとも、対象に応じて、あるいは同一対象であっても、検出しようとする欠陥15の深さに応じて周波数を可変にするようにした方がよい。また、送信アンテナ13、及び受信アンテナ16としては、周知の構造を有するものを使用できる。
演算処理手段18には、例えば、増幅器17からの出力信号をA/D変換するA/D変換部19と、A/D変換部19の出力信号に基づいて受波信号の波形R(t)を作成する受波信号処理部20が設けられている。更に、演算処理手段18には、コンクリート構造物11中に存在する欠陥15から理論的に予測される予測受波信号の波形r(t)を合成する波形合成器21、及び予測受波信号の波形r(t)と受波信号の波形R(t)とのパターンマッチングを行うパターンマッチング器22を備えた波形処理部23が設けられている。
送信機14からは電磁波の発信に同期して時間信号が出力されA/D変換部19を介して受波信号処理部20に入力されて受波信号の波形R(t)の時間起点を決定している。また、演算処理手段18には、パターンマッチング器22から出力されるパターンマッチングの結果を表示するディスプレイ24、及びプリンタ25に出力するための出力処理部26が設けられている。なお、演算処理手段18は、A/D変換部19の出力信号に基づいて受波信号の波形R(t)を作成する機能、コンクリート構造物11中に存在する欠陥15から理論的に予測受波信号の波形r(t)を合成する機能、及び予測受波信号の波形r(t)と受波信号の波形R(t)とのパターンマッチングを行う機能、パターンマッチングの結果をディスプレイ24、及びプリンタ25に出力する機能をそれぞれ発現させるプログラムを、例えばパーソナルコンピュータに搭載することにより構成することができる。
次に、非破壊検査装置10を用いた本発明の第1の実施の形態に係るコンクリート構造物の非破壊検査方法について説明する。
先ず、波形処理部23の波形合成器21に、コンクリート構造物11中に想定されるクラック、空洞等の欠陥の種類、その個数、及び欠陥の組合せを入力し、コンクリート構造物11の表面12に対向して送信アンテナ13を設けてコンクリート構造物11に向けて電磁波を発信する。そして、コンクリート構造物11から反射した電磁波をコンクリート構造物11の表面12に対向して設けた受信アンテナ16で検出する。受信アンテナ16で検出された反射波は増幅器17で増幅され、A/D変換部19を介して受波信号処理部20に送られて、受波信号の波形R(t)が作成される。そして、この受波信号の波形R(t)はパターンマッチング器22に送られる。
ここで、波形合成器21で行う予測受波信号の波形r(t)の合成は、以下に説明する考えに基づいて行われる。
例えば、図1に示すように、コンクリート構造物11の内部に欠陥15が一つ存在する場合を考える。いま、送信アンテナ13から送信された電磁波がコンクリート構造物11の表面12に対して垂直に入射したとすると、電磁波は先ずコンクリート構造物11の表面12で反射され、この反射波が受信アンテナ16に受信される。なお、一部の電磁波はコンクリート構造物11の表面12を透過してコンクリート構造物11の内部に存在する欠陥15で反射される。この反射波は、コンクリート構造物11の表面12を透過して受信アンテナ16で受信される。更に、欠陥15に到達した電磁波の一部は欠陥15を透過してコンクリート構造物11の背面27で反射し、欠陥15とコンクリート構造物11の表面12を透過して受信アンテナ16で受信される。なお、コンクリート構造物11中を伝播する電磁波は、伝播距離に応じて強度(振幅)が減衰する。このため、表面12の近くで反射した電磁波の振幅は、背面27で反射した電磁波の強度に比較して大きい。
以上のように、コンクリート構造物11中に欠陥15が一つだけ存在している場合について電磁波の送受信を説明したが、例えば、コンクリート構造物11中の欠陥15が空洞である場合では、電磁波は空洞の前面及び後面でそれぞれ反射され、これらの反射波がそれぞれ異なった時刻で受信アンテナ16で受信される。この際、受信される反射波の強度は、伝播経路の長さ、及びどのような欠陥で反射あるいは透過したかによって異なるが、反射波の波形は実質的に同一である。そこで、この実質的に同一波形を有する反射波を基本反射波と呼びその波形をr0(t)で表示する。いま、送、受信アンテナ13、16の直下に複数の欠陥15が存在する場合を考えると、それぞれの欠陥15で反射した各反射波は各欠陥15の位置に応じて決まる伝播時間をもって受信アンテナ16に順次受信されるので、予測される予測受波信号の波形r(t)は次のように各基本反射波の波形の一次結合として表すことができる。
r(t)=c10(t−T1)+c20(t−T2
+c30(t−T3)+・・・ (1)
ここに、T1は電磁波の送信時からコンクリート構造物11の表面12で反射した電磁波が受信アンテナ16に到達するまでの時間を、またT2、T3、・・・はコンクリート構造物11の表面12を透過した電磁波が各欠陥15で反射して得られるそれぞれの最初の反射波(第1次反射波)がコンクリート構造物11の表面12を透過して受信アンテナ16に到達するまでの時間(往復伝播時間)を示す。なお、送受信アンテナ13、16とコンクリート構造物11の表面12の間の距離は既知としている。
ここで、コンクリート構造物11に透過した電磁波のうち内部の欠陥15で反射した第1次反射波が表面12で再び反射されて再度各欠陥15で反射して反射波(第2次反射波)となってコンクリート構造物11の表面12を透過して受信アンテナ16に到達する場合、この第2次反射波が表面12で再び反射されて再度各欠陥15で反射して反射波(第3次反射波)となってコンクリート構造物11の表面12を透過して受信アンテナ16に到達する場合等の高次反射波の影響も考えられるが、第1次反射波以外の反射波は伝播に際して反射、透過を何度も繰り返すだけでなく、長距離の伝播となって減衰が大きくなる。このため、第1次反射波に比較して振幅が実質的に無視できるので、予測受波信号の波形r(t)は第1次反射波の波形のみで表示することができる。
よって、波形合成器21では、受信アンテナ16に受信される代表的な反射波を実験から求めておき、これを基に基本反射波の波形r0(t)を予め作成し、これに基づいて往復伝播時間を変数とした複数の基本反射波の波形r0(t)の一次結合として予測受波信号の波形r(t)を作成する。ここで、実験から基本反射波の波形r0(t)を決めるには、例えば、内部に欠陥を含まない厚さが500mm程度のコンクリートブロックを作製し、これに電磁波を送信し、このときの反射波を求めればよい。すなわち、このコンクリートブロックからの反射波はコンクリートブロックの表面からだけの反射波となって他の反射源からの影響を受けない真性の反射波と考えられ基本反射波と見なすことができ、その波形を基本反射波の波形r0(t)とすることができる。なお、基本反射波はコンクリートブロックの電磁気的特性から理論的に推定することも、種々の実験データを基に理論的に推定することもできる。
続いて、まず電磁波の伝播及び受信特性について説明し、次にパターンマッチング器22におけるパターンマッチングの処理方法について説明する。
受波信号処理部20で作成された受波信号の波形R(t)が基本反射波r0(t)とほぼ形状が一致した場合、その箇所ではコンクリート構造物11の内部に欠陥は存在しないと判定できる。一方、受波信号の波形が基本反射波r0(t)の形状とある程度異なる場合、コンクリート構造物11中に欠陥が存在していると判定し、(1)式に示す予測受波信号の波形とのパターンマッチングを図る。そして、予測受波信号の波形r(t)と、受波信号の波形R(t)とのパターンマッチングを図れば、このとき得られる往復伝播時間T1、T2、T3、・・・、及び一次結合係数c1、c2、c3、・・・の値から、欠陥15の識別(例えば、クラックなのか、空洞なのか)、欠陥15の位置、欠陥15の寸法を求めることができる。
一般に、コンクリート構造物11の非破壊検査を行う目的の一つは、コンクリート構造物11中に存在するクラックや空洞といった欠陥15の検出である。このような場合の非破壊検査では、実際問題として、コンクリート構造物11の厚さ方向に関して言えば、クラックが1個の場合、クラックが2個の場合、空洞が1個の場合、クラックと空洞がそれぞれ1個ずつの場合の計4個の場合を考えておけば、パターンマッチングを行う際には十分である。従って、(1)式を使用して一般的な波形のパターンマッチングを行うのではなく、上記の4つの欠陥の場合を想定(仮説とも言う)して作成した予測受波信号の波形と、受波信号の波形R(t)との最適パターンマッチングを図り、最適パターンマッチングが最も良好に行える欠陥の内容を、コンクリート構造物11中に生起している欠陥15の状況であると判定する。そして、このときの往復伝播時間T1、T2、T3、・・・から各欠陥15の位置を計算する。
また、電磁波がコンクリート構造物11の表面12を透過し、内部に存在するクラックで反射して、再び表面を透過する場合における一連の電磁波の挙動は以下のように扱った。
異なった媒質間の境界面における電磁波の透過係数は常に正とし、反射係数は伝播媒質の相対的な関係により正負の符号を付けた。すなわち、コンクリート中から空気層に伝播する場合は正、空気層からコンクリート中に伝播する場合は負とした。従って、例えば、図1に示すように、コンクリート構造物11の表面12からの反射係数は負となる。一方、コンクリート構造物11内部の欠陥15がクラックの場合では、クラックからの反射では、クラックの厚みを介してクラックの表面12側の境界面と、背面27側の境界面からの反射を考える必要がある。ここで、クラックの厚みが非常に薄い場合、往復伝播時間の差は実質的に無視でき、透過率、反射率への寄与を考えると、表面12側の境界面での反射率は0.48、背面27側の境界面での反射による寄与は、−(コンクリートからクラック15への透過率0.52)×(背面27側の境界面での反射率0.48)×(クラック15からコンクリート中への透過率1.48)=−0.369・・・となって、約−0.37となる。このため、クラック全体としての反射係数は、0.48−0.37=0.11となる。従って、クラックの厚みが非常に薄い場合、クラックでの反射は、表面12側の境界面での反射のみと見なしてデータを処理することができる。
なお、上記の反射係数、透過係数は、いずれも電磁波がコンクリート構造物11の表面12や欠陥15に垂直に入射する場合についての取り扱いである。電磁波がこれらに任意の角度で入射する場合は以下のように扱う必要がある。
電磁波の伝播に際し、誘電率ε1透磁率μ1を有する媒質1から、誘電率ε2透磁率μ2を有する媒質2へ電磁波が入射角θiで入射するとき、電磁波の一部は媒質1と媒質2の接触面で同一角θr=θiで反射する。このときの反射係数は(2)式により表される。ここで、Z1=(ε1/μ11/2、Z2=(ε2/μ21/2であり、θtは屈折角である。
Figure 0004580957
なお、θiとθtの間には(3)式で示すスネルの法則が成立する。
Figure 0004580957
一方、透過係数τは(4)式で与えられる。
Figure 0004580957
強磁性体以外は、ほとんどの媒質では、μ1=μ2なので、(2)、(4)式は(5)、(6)式のように簡略化される。ここで、入射角θiを0度とした場合が、コンクリート構造物11の表面12や欠陥15に対して電磁波が垂直に入射する場合となる。
Figure 0004580957
コンクリート構造物11の厚さ方向に、クラックが1個の場合、クラックが2個の場合、空洞が1個の場合、クラックと空洞がそれぞれ1個ずつの場合の計4個の欠陥に対して最適パターンマッチングを行う場合、(1)式のT1、T2、T3、・・・の往復伝播時間、c1、c2、c3、・・・の一次結合係数を最適化する必要がある。
ここで、パターンマッチングの処理方法について説明するが、この処理方法には、厳密方式と簡易方式の2通りの方法があるので、ここでは、まず、厳密方式について説明し、続いて簡易方式について説明する。
各条件下で最適なパターンマッチングを行う際、一次結合係数に対して(仮定した欠陥内容に応じて)制約をつけなければならない。これは、いったん仮説を与えると、その下での各反射部位からの第1反射波は往きと帰りで異なった媒質を通ってくるため、一次結合係数は幾つかの透過係数とひとつの反射係数、更にはコンクリート伝播中の減衰係数を乗じたものになるからである。なお、空気層伝播中の減衰は無視できるとしており、コンクリート伝播中の減衰は減衰率γ(dB/m)を用いて算出することとする。
結局、仮説及びその仮説の下での往復伝播時間T1、T2、T3、・・・を与えることにより、(1)式の一次結合係数は、コンクリート(コンクリート構造物の一例)の物理パラメータである比誘電率εと減衰率γとの関数として求められることになる。
なお、受信信号のモデル化におけるクラック(エアーギャップ)の扱いであるが、クラックの場合は、薄いエアーギャップをはさんで両側にコンクリート面がある。従って、厳密には最初のコンクリート面で最初の反射があり、次にエアーギャップを透過していったものが、もう一方のコンクリート面でもう一度反射するわけであるが、エアーギャップは薄く、往復伝播時間の差はほとんど無視できる。従って、クラック上面と底面からの反射波は、同時に帰ってくるとして定式化しても差し支えないので、ここでは、このアプローチを採る。勿論、一次結合係数の値としては、クラックの上面と底面からの影響を考慮したものを考える。
上記したように、各仮説の下に往復伝播時間T1、T2、T3、・・・を与えれば、各部位からの第1反射波の一次結合係数の値が、コンクリートの比誘電率εとコンクリート中の減衰率γ(dB/m)をパラメータにして一意的に決まる。よって、こうして得られた予測受波信号の波形r(t)と、実際の受波信号の波形R(t)との最適パターンマッチングが実現できるように、ε、γ、更にはT1、T2、T3、・・・を、各仮説毎に求める。なお、その際のパターンマッチング度を評価する評価関数としては、2つの波形の幾何学的角度を表わす(7)式を採用する。
Figure 0004580957
ここで、(・,・)及び‖・‖は、それぞれヒルベルト空間の内積及びノルムを表わす(なお、計算に当たっては、サンプリングデータを用いたユークリッド空間のそれで近似する)。このようにして求まった各仮説の下での最適パターンマッチング角の最小値を与える仮説を、最終的に実現している異常形態として採用すればよい。更に、このときの往復伝播時間T1、T2、T3、・・・により、異常位置(空洞の場合はその厚みも)が求められる。
上記した厳密方式は、あくまで理論的な考察に基づくものであるが、実際には、一次結合係数が常に上記したような厳密な関係に従うとは限らない。そこで、次に実際的な状況を考え、絶対値の相対的な関係に対する制約を緩め、符号制約だけを課す簡易方式について説明する。
なお、簡易方式においては、往復伝播時間と一次結合係数の全てを変数として最適化を行う場合、真の最適解の周囲に存在する局所解に陥る危険性があることに加えて、計算に膨大な時間を要し実際的でなくなる。このため、T1、T2、T3、・・・の往復伝播時間の最適化については数値的に探索を行ない、c1、c2、c3、・・・の一次結合係数の最適化には解析解を採用することにした。ここで、議論の簡潔さのため、各基本反射波の波形r0(t−T1)、r0(t−T2)、r0(t−T3)、・・・、r0(t−Tk)をそれぞれr1(t)、r2(t)、r3(t)、・・・、rk(t)と表示する。そして、各基本反射波の波形の一次結合係数が負のものは、負号を基本反射波の波形に含めて、各一次結合係数は全て正という制約条件を付して扱うことにする。
先ず、最適パターンマッチングを実現する最適な一次結合係数の値c1、c2、c3、・・・、ck(全て、正数)を、各往復伝播時間T1、T2、T3、・・・、Tkの関数として求める。ここで、図2に示すように、上記のように定義した各基本反射波の波形rj(t)(1≦j≦k)で張られる空間に、実際の受波信号の波形R(t)を直交射影した場合、直交射影点r*がS#(ハッチング領域、一次結合係数を正としたrj(t)(1≦j≦k)で張られる空間)に含まれれば、この点が最適解となることが知られている。そして、このときの最適近似誤差δは(8)式で表される。なお、g(r1、r2、・・・、rk)は引数を成分とするグラム行列式である。
Figure 0004580957
従って、このときのマッチング角度θは(9)式で与えられる。ここで、‖R‖はRのノルムである。
Figure 0004580957
更に、このときの一次結合係数c1、c2、c3、・・・、ckは、(10)式を展開することにより得られる。
Figure 0004580957
従って、(10)式を展開計算し、このとき得られる一次結合係数c* 1、c* 2、c* 3、・・・、c* kが全て正であれば(10)式で与えられるr*が最適パターンマッチング解となり、このときの(9)式のθがそのときの波形の類似度を与えるマッチング角度となる。
一方、一次結合係数c1、c2、c3、・・・、ckの一部が負の場合、図2に示すように、直交射影点r*はS#外の点となり、制約条件の下で求められる解とは異なる。この場合の解は、r*を凸錐体S#の各境界面のうち近接した境界面に直交射影したときの点r#を求めれば、これが制約条件下での実際の受波信号の波形に最近接した波形となる。そして、このときのマッチング角度θは(11)式により求められる。
Figure 0004580957
なお、r#を求めるための近接境界面は、(10)式の計算で求まる一次結合係数のうち、負になったものに対応する基本反射波の波形rj(t)を除く残りの基本反射波の波形rj(t)で張られる空間に直交射影することにより求まる。
このようにして、パターンマッチング器22において、波形合成器21で合成され(1)式で表示される予測受波信号の波形r(t)におけるT1、T2、T3、・・・、Tkの往復伝播時間を変数としたときの最適一次結合係数c* 1、c* 2、c* 3、・・・、c* k及びそのときのマッチング角度θが、コンクリート構造物11の厚さ方向に、クラックが1個の場合、クラックが2個の場合、空洞が1個の場合、クラックと空洞がそれぞれ1個ずつの場合の計4個の欠陥に対してそれぞれ求められている。次いで、求めたθをT1、T2、T3、・・・、Tkの往復伝播時間について最小化して、各欠陥毎にそのときの確からしさをマッチング角度θ*で評価する。続いて、このときのマッチング角度θ*を最小にする欠陥を求めて、この欠陥をコンクリート構造物11中に生起している欠陥15として診断する。更に、このときの欠陥15に対応するT1、T2、T3、・・・、Tkの往復伝播時間を用いて欠陥15の位置(空洞の場合はその厚みも)を求める。得られた欠陥15の特定と位置及び厚みに関するデータは、出力処理部26を介してディスプレイ24に表示され、プリンタ25から出力される。
[実施例1]
先ず、基本反射波を求める実験を行った。
正常なコンクリート供試体に対して、送信アンテナと受信アンテナをコンクリート供試体の表面から10mm離してコンクリート表面に対向させた。なお、コンクリート供試体の厚さは500mmとし、コンクリート表面からだけの反射波が実質的に独立に得られるようにした。このときの受信アンテナで得られる受波信号の波形を図3に示す。なお、電磁波はコンクリート表面で反射するとき位相が180度シフトするため、受信アンテナで得られた波形を図3では縦軸に対して反転して(破線の波形)、これを基本反射波とした。なお、クラック等の位置の決定に際しては、電磁波の伝播速度vは伝播媒質であるコンクリート供試体の比誘電率をεとして、v=s/(ε)1/2で表されるので(sは光速)、空気中及びコンクリート中の伝播速度はそれぞれ3.0×108m/秒、1.1×108m/秒とした(空気及びコンクリートの比誘電率波それぞれ1及び8)。
[実施例2]
厚みが60mm、横、縦の幅がそれぞれ300mmのコンクリートブロックを作製して図4に示すように基盤上に4層積み上げてコンクリート構造物を作製した。これは、深さ方向の複数のクラック及び空洞とクラックが並存する場合の状態を模擬的に作製したためである。
先ず、クラックの検出の有効性を検討するため、図中のA点にコンクリート表面から10mm離して送受信アンテナを設置した。このときのコンクリート構造物からの受波信号の波形を図5に示す。
なお、パターンマッチングは、図5で信号と思われる0〜6nsの間のデータD1に対し、それぞれ1)欠陥無し、2)クラック1個、3)クラック2個、4)空洞1個、5)クラック1個と空洞1個の5種類の欠陥のケースに対して行った。各欠陥のケースに対応する最適マッチング角度、及びそのときのクラック、空洞の位置の計算結果を表1に示す。
Figure 0004580957
表1では、何個のクラックまで検出できるかを調べるため、クラックが3個の欠陥の場合(6番のケース)の計算結果も併せて示している。また、各ケースに対し、一次結合係数を示すと、次のようになる。1)−1.13、2)−1.12、0.38、3)−1.07、0.61、0.39、4)−1.11、0.43、−1.00、5)−1.05、0.55、0.38、−0.61、6)−1.03、0.73、0.97、2.03。なお、負の符号がついているものは、反射波の位相が基本反射波の位相と逆相になっていることを示す。
表1より、コンクリート構造物中にクラックが3個あるとした6番目のケースの場合に最適マッチング角度が最小値18.3度をとり、受波信号の波形を予測受波信号の波形で最も正確に表現できることが判る。このときの予測受波信号の波形を図5に示す。従って、コンクリート構造物内の欠陥は6番目のケースであるクラック数が3個の場合と判定できる。また、このときのクラック位置の計測結果は、それぞれ72.0mm、117.0mm、171.0mmとなり、実測値60mm、120mm、180mmに極めて近い値が得られ、本コンクリート構造物の非破壊検査方法の有効性が確認できた。
また、2番目に最適マッチング角度が小さい5番目のケースについては、クラックが3個の場合と往復伝播時間は最初の2つはほぼ同じであるが、空洞ではコンクリートの約3倍伝播速度が速いため、コンクリート表面から空洞底面までの距離が337.0mmと深い位置に存在することになる。また、最適マッチング角度が3番目に小さい3番目のケース、つまりクラック数が2つと仮定した場合でも、表面に近い2つのクラック位置がほぼ正確に求まっていることが判る。
[実施例3]
クラックと空洞が深さ方向に並存する場合について検討した。図4のB点にコンクリート構造物の表面から10mm離して送受信アンテナを設置し、実験を行った。これは、コンクリート表面から60mmの位置にクラック、表面から120mmの位置に厚さ120mm空洞を模擬した場合である。
なお、パターンマッチングにおいては、図6で信号と思われる0〜8.5nsの間のデータD2を使用した。このデータに対し、1)欠陥無し、2)クラック1個、3)クラック2個、4)空洞1個、5)クラック1個と空洞1個、6)クラック3個の6種類の欠陥のケースの下にそれぞれの最適マッチング角度及びそのときのクラック及び空洞の位置を求めた。その結果を表2に示す。なお、このときの一次結合係数は次のようになった。1)−1.46、2)−1.48、1.43、3)−1.28、0.39、1.40、4)−1.30、1.28、−2.71、5)−1.20、0.49、1.12、−0.58、6)−1.27、0.39、1.39、0.19。
Figure 0004580957
表2より、コンクリート中にクラックと空洞が1個ずつ存在する5番目のケースの場合に受波信号の波形と予測受波信号の波形の最適マッチング角度が最小値28.9度をとり、予測受波信号の波形で実際の受波信号の波形を最も正確に表現できることが判った。従って、コンクリート構造物内の欠陥は5番目のケース、つまりクラックと空洞が1個ずつ存在する場合と判定できる。かつ、このときのクラック、空洞上面、空洞底面の位置は、表面からそれぞれ49.5mm、135.0mm、262.0mmとなり、実測値60mm、120mm、240mmに近い値が得られ、本コンクリート構造物の非破壊検査方法の有効性が確認できた。
第2の発明に係るコンクリート以外の構造物の非破壊検査方法は、第1の発明に係るコンクリート構造物の非破壊検査方法において、「コンクリート構造物」を「コンクリート以外の構造物」に、「コンクリート構造物の内部に存在する非コンクリート体」を「コンクリート以外の構造物の内部に存在するコンクリート以外の構造物と性質の異なる異性物」に、それぞれ読み替えることによって同様に適用できる。そのため、本発明の第2の実施の形態に係るコンクリート以外の構造物の非破壊検査方法を適用した非破壊検査装置、及びコンクリート以外の構造物の非破壊検査方法についての説明は省略する。
なお、コンクリート以外の構造物としては、例えば、溶銑(溶融状態の銑鉄)上に浮いているスラグが挙げられる。このスラグと溶銑の場合に対して本発明のコンクリート以外の構造物の非破壊検査方法を適用することによって、例えば、スラグの厚みや溶銑の位置を、高信頼度、高精度に求めることができる。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではなく、例えば、コンクリート構造物内のクラック、空洞の検出及びそれらの位置計測だけでなく、鉄筋のかぶり、つまり、コンクリート表面と鉄筋との距離等の計測にも適用できる。なお、その際、コンクリート中の比誘電率はある範囲内にあるものの、その値は未知である。このため、鉄筋のかぶりを正確に計測するためには、この比誘電率も合わせて計測する必要がある。これに対しては、電磁波の送受信機の位置データに加え、鉄筋の位置、方向、径、更にはコンクリート内の比誘電率等をパラメータ値として与え、これらにホイヘンスの原理を適用し、電磁波伝播時間を理論的に求め、これらが先述の方法により求めた実測伝播時間に一致するようにパラメータ調整をすることが必要となる。これによって、かぶりだけでなく、鉄筋の配置間隔や位置(深さ、方向も含めて)、径等が正確に計測できる。ところで、先に述べたコンクリート内欠陥の検出、位置計測を行う場合、電磁波が垂直ではなく、ある角度をもってコンクリート表面あるいは欠陥に入射することを考えざるを得ない場合は、鉄筋のかぶりの計測のときと同様、先に提案した方式にホイヘンスの原理あるいはスネルの法則を結合すればよい。
また、電磁波の送信インパルスを一つだけでなく、ある適切な時間をおいた一連のインパルス列とすることなどにより、各非コンクリート体からの基本反射波の形状を変えた場合にも本発明は有効である。
更に、実際の受波信号の波形と予測受波信号の波形との最適パターンマッチングにおいては、実験から決定した同一の波形、つまり、基本反射波の一次結合を採用したが、コンクリート中の伝播距離が長ければ長い程、高周波成分の減衰が大きいため、一般に伝播波形も変化する。従って、このことを考慮して、クラックや空洞の深度に応じて形状を少しずつ変えた基本反射波を理論的及び/又は実験的に求めてこれらの一次結合でパターンマッチングを行うようにすれば、更に精度の高いコンクリート構造物の非破壊検査方法を構築することができる。
なお、非破壊検査を行う場合、コンクリート表面等からの第1次反射波が必ず受波されることから、実際の非破壊検査においてはこのコンクリート表面等からの第1次反射波を予め記憶しておき、実際の受波信号からこれを差し引いた信号に対して先述の方法を適用すれば、一次結合する基本反射波の数を1つ少なくできるので好都合である。のみならず、コンクリート表面等からの第1次反射波は、非破壊対象を透過、反射してくる反射波と若干形状が異なることが考えられるので、この工夫は提案システムの計測精度を高めるのにもよい。
また、本実施の形態では、非破壊検査方法を簡単化する観点から、各部位からの第1反射波のみを用いた場合について説明したが、実際にはクラックと空洞の数はあまり多くないと考えられる。従って、その場合は、本発明の非破壊検査方法を、第2反射波、第3反射波まで考えた非破壊検査方法へと拡張することで、コンクリート構造物の診断を、より高信頼度で、より高精度に行うことができる。
そして、本実施の形態では、欠陥の形態として4つの形態を採用した場合について説明したが、勿論必要に応じて、これ以外の形態を追加することも可能である。
更に、本実施の形態では、波形のパターンマッチングに、パターンマッチング角(マッチング角度又はマッチング角とも言う)を採用した場合について説明したが、類似度に関わるものであれば、これに限定されるものではない。
前記実施の形態では、予測受波信号の波形r(t)と実際の受波信号の波形R(t)とのマッチング角度の計算を、採用する常識的な仮説に応じて、例えば、1〜10の比較的少ない基本反射波の数で行っている。
本発明の第1の実施の形態に係るコンクリート構造物の非破壊検査方法に適用した非破壊検査装置のブロック図である。 受波信号の波形に対して往復伝播時間の関数としての予測受波信号の波形を最適パターンマッチングする際の説明図である。 コンクリート表面からの反射波形を示す説明図である。 本発明の実施例2及び実施例3において非破壊検査するコンクリート構造物の説明図である。 本発明の実施例2における受波信号の波形と最適パターンマッチングして得られた予測受波信号の波形の類似性を示す説明図である。 本発明の実施例3における受波信号の波形と最適パターンマッチングして得られた予測受波信号の波形の類似性を示す説明図である。
符号の説明
10:非破壊検査装置、11:コンクリート構造物、12:表面、13:送信アンテナ、14:送信機、15:欠陥、16:受信アンテナ、17:増幅器、18:演算処理手段、19:A/D変換部、20:受波信号処理部、21:波形合成器、22:パターンマッチング器、23:波形処理部、24:ディスプレイ、25:プリンタ、26:出力処理部、27:背面

Claims (4)

  1. コンクリート構造物の表面に対向して設けた送信アンテナから電磁波を前記コンクリート構造物に向けて発信し、前記コンクリート構造物の内部に存在するクラック又はクラックと空洞からなる非コンクリート体で反射した電磁波を前記コンクリート構造物の表面に対向して設けた受信アンテナで受波信号として検出することにより行うコンクリート構造物の非破壊検査方法において、
    前記コンクリート構造物の内部の一つ以上の前記非コンクリート体で反射した電磁波の反射波から形成される前記受波信号の波形と、前記コンクリート構造物の内部の一つ以上の前記非コンクリート体の存在から、理論的及び/又は実験的に予測される予測受波信号の波形とのパターンマッチングを行うことにより、前記クラックの検出を行い、しかも、
    前記予測受波信号の波形は、前記一つ以上の非コンクリート体でそれぞれ反射した基本反射波の一次結合として表示し、前記クラックの反射波が1反射波であって、前記空洞からの反射波が該空洞の上面と底面からの2反射波であることを特徴とするコンクリート構造物の非破壊検査方法。
  2. 請求項記載のコンクリート構造物の非破壊検査方法において、前記パターンマッチングの判定に、前記コンクリート構造物の物理パラメータ及び伝播時間を用いて予測される前記予測受波信号と前記受波信号とのマッチング角度を採用し、比較的少ない基本反射波の数の下で該マッチング角度を最小とする前記予測受波信号の波形のパラメータである前記伝播時間及び前記物理パラメータの値から前記クラックの位置を決定することを特徴とするコンクリート構造物の非破壊検査方法。
  3. 請求項記載のコンクリート構造物の非破壊検査方法において、前記パターンマッチングの判定に、伝播時間を変えた幾つかの基本反射波の波形で張られる空間に前記受波信号の波形を直交射影したときの最適近似誤差に対して求まるマッチング角度を採用し、該マッチング角度を最小とする前記予測受波信号の波形のパラメータである伝播時間及び一次結合係数の値から前記クラックの位置を決定することを特徴とするコンクリート構造物の非破壊検査方法。
  4. 請求項記載のコンクリート構造物の非破壊検査方法において、前記基本反射波の一次結合係数の符号により、前記クラックと前記空洞を区別したことを特徴とするコンクリート構造物の非破壊検査方法。
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