以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲の記載内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが必須構成要件であるとは限らない。
1.デジタル出力温度センサー
図1に本実施形態のデジタル出力温度センサー80の構成例を示す。デジタル出力温度センサー80は、温度センサー回路90とカレントミラー回路100とチョッピング回路110とA/D変換回路60を含む。なお本実施形態のデジタル出力温度センサー80は、図1の構成に限定されるものではなく、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加したり、その構成要素を他のタイプの構成要素に変更するなどの種々の変形実施が可能である。
温度センサー回路90は温度を検出するセンサー回路である。具体的には温度センサー回路90は、温度を検出して、温度検出電流IPTを出力する。例えば温度センサー回路90は、環境の温度に応じて変化する温度依存電圧を、温度検出情報である温度検出電流IPTとして出力する。例えば温度センサー回路90は、温度依存性を有する回路素子を利用して温度検出電流を生成する。具体的には温度センサー回路90は、PN接合の順方向電圧が有する温度依存性を用いることで、温度に依存して電流値が変化する温度検出電流IPTを出力する。例えば温度センサー回路90は、正又は負の温度特性の温度検出電流IPTを出力する。なおPN接合の順方向電圧としては、例えばバイポーラートランジスターのベース・エミッター間電圧などを用いることができる。
カレントミラー回路100は、温度センサー回路90からの温度検出電流IPTと基準電流IRFをミラーリングするカレントミラー動作を行って、差分電流ID1、ID2を出力する。差分電流ID1は第1差分電流であり、差分電流ID2は第2差分電流である。差分電流ID1は、例えばID1=IPT-IRFと表すことができ、例えば正極性側の差分電流である。差分電流ID2は、例えばID2=IRF-IPTと表すことができ、例えば負極性側の差分電流である。これらの差分電流ID1、ID2は、差動入力のA/D変換回路60に入力されて差動増幅される。基準電流IRFは、例えばA/D変換回路60の差動増幅の際の基準となる電流である。
具体的にはカレントミラー回路100は、温度検出電流IPTのミラー電流をソース電流として出力ノードN1に流し、基準電流IRFのミラー電流をシンク電流として出力ノードN1から引き込むことで、出力ノードN1から第1差分電流であるID1=IPT-IRFを出力する。またカレントミラー回路100は、基準電流IRFのミラー電流をソース電流として出力ノードN2に流し、温度検出電流IPTのミラー電流をシンク電流として出力ノードN2から引き込むことで、出力ノードN2から第2差分電流であるID2=IRF-IPTを出力する。出力ノードN1は、カレントミラー回路100の第1出力ノードであり、例えば正極性側の出力ノードである。出力ノードN2は、カレントミラー回路100の第2出力ノードであり、例えば負極性側の出力ノードである。温度検出電流IPTのミラー電流は、温度検出電流IPTをミラーリングした電流であり、基準電流IRFのミラー電流は、基準電流IRFをミラーリングした電流である。
チョッピング回路110は、カレントミラー回路100のトランジスターに対するチョッピング動作を行う。例えばチョッピング回路110は、カレントミラー回路100において温度検出電流IPTや基準電流IRFをミラーリングするトランジスターに対するチョッピング動作を行う。例えばチョッピング回路110は、カレントミラー回路100のトランジスターの一端の接続先をスイッチにより切り替えるチョッピング動作を行う。
A/D変換回路60は、差動の差分電流ID1、ID2のA/D変換を行う。そして例えばA/D変換回路60は、差動入力の第1端子に第1差分電流であるID1が入力され、差動入力の第2端子に第2差分電流であるID2が入力され、差分電流ID1、ID2の差動増幅を行って、ADC出力デジタル値dを出力する。A/D変換回路60としては、例えば逐次比較型のA/D変換回路を用いることが望ましい。この場合には、逐次比較型のA/D変換回路の前段側に電流/電圧変換回路を設ければよい。なおA/D変換回路60として、逐次比較型以外の他の方式のA/D変換回路を用いることも可能である。例えば逐次比較型以外のパイプライン型やデルタシグマ型などの他の方式のA/D変換回路を用いることも可能である。
そしてチョッピング回路110は、第1状態において温度検出電流IPTのミラー電流が流れるカレントミラー回路100のトランジスターに、第2状態では基準電流IRFのミラー電流を流すチョッピング動作を行う。またチョッピング回路110は、第1状態において基準電流IRFのミラー電流が流れるカレントミラー回路100のトランジスターに、第2状態では温度検出電流IPTのミラー電流を流すチョッピング動作を行う。即ち、カレントミラー回路100のチョッピング対象のトランジスターにおいて、第1状態では温度検出電流IPTのミラー電流が流れていた場合に、チョッピング回路110は、第2状態では当該トランジスターに基準電流IRFのミラー電流が流れるようにするチョッピング動作を行う。またチョッピング対象のトランジスターにおいて、第1状態では基準電流IRFのミラー電流が流れていた場合に、チョッピング回路110は、第2状態では当該トランジスターに温度検出電流IPTのミラー電流が流れるようにするチョッピング動作を行う。
以上のように本実施形態では、温度センサー回路90が温度を検出して、温度検出結果を温度検出電流IPTとして出力する。即ち温度センサー回路90から温度依存性のある温度検出電流IPTがカレントミラー回路100に入力される。またカレントミラー回路100には例えば温度依存性のない基準電流IRFが入力される。そしてカレントミラー回路100が、温度検出電流IPT、基準電流IRFのミラーリングを行って、差分電流ID1、ID2を出力ノードN1、N2に出力し、A/D変換回路60が、差分電流ID1、ID2のA/D変換を行う。このときにチョッピング回路110は、第1状態において温度検出電流IPTのミラー電流が流れるカレントミラー回路100のトランジスターに、第2状態では基準電流IRFのミラー電流を流すチョッピング動作を行う。またチョッピング回路110は、第1状態において基準電流IRFのミラー電流が流れるカレントミラー回路100のトランジスターに、第2状態では温度検出電流IPTのミラー電流を流すチョッピング動作を行う。このようにすれば、例えばカレントミラー回路100のチョッピング対象となるトランジスターは、例えば第1状態では温度検出電流IPTのミラー電流が流れ、第2状態では基準電流IRFのミラー電流が流れるようになる。またカレントミラー回路100のチョッピング対象となる他のトランジスターは、例えば第1状態では基準電流IRFのミラー電流が流れ、第2状態では温度検出電流IPTのミラー電流が流れるようになる。従って、例えばチョッピング動作の周波数で第1状態と第2状態等を切り替えることで、チョッピングの変調等が行われるようになり、低ノイズ化を実現できるようになる。
例えばデジタル出力温度センサー80には高精度の温度検出結果を出力することが要望されており、そのためにはノイズの影響をできる限り低減する必要がある。特にデジタル出力温度センサー80では、低周波の帯域でのノイズを低減できることが望まれる。しかしながら、カレントミラー回路100を構成するトランジスターは、1/fノイズを発生するため、この1/fノイズがデジタル出力温度センサー80の主要なノイズとなって、デジタル出力温度センサー80の高精度化が妨げられてしまう。この点、本実施形態では、カレントミラー回路100のトランジスターに対してチョッピング動作が行われることで、トランジスターの1/fノイズ等のノイズを、高周波のチョッピング周波数に変調するチョッピングの変調が行われる。そして第1状態と第2状態の切り替えがあった場合にもカレントミラー回路100の出力ノードN1、N2から差分電流ID1=IPT-IRF、ID2=IRF-IPTが適正に出力されるチョッピングの復調が行われることで、カレントミラー回路100の1/fノイズ等のノイズが、後段のA/D変換回路60に伝達されるのが抑制され、デジタル出力温度センサー80の低ノイズ化を実現できるようになる。
次に図2~図6を用いてカレントミラー回路100のチョッピング動作について具体的に説明する。カレントミラー回路100の構成が示される図2~図5ではカレントミラー回路100の出力段の部分の回路構成の一例が示されており、カレントミラー回路100は、トランジスターT1、T2、T3、T4を含む。トランジスターT1、T2、T3、T4は、各々、第1トランジスター、第2トランジスター、第3トランジスター、第4トランジスターである。ここでトランジスターT1、T2は例えばMOSトランジスターである。MOSトランジスターはMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)とも呼ばれる。具体的にはトランジスターT1、T2はP型のMOSトランジスターである。一方、トランジスターT3、T4はバイポーラートランジスターである。なお本実施形態はこれに限定されず、トランジスターT1、T2としてバイポーラートランジスターを用いたり、トランジスターT3、T4としてN型のMOSトランジスターを用いるなどの種々の変形実施が可能である。
そしてチョッピング回路110は、ソース電流を流すトランジスターに対するチョッピング動作であるソース側チョッピング動作と、シンク電流を引き込むトランジスターに対するチョッピング動作であるシンク側チョッピング動作の少なくとも一方を行う。例えばチョッピング回路110は、ソース側チョッピング動作、シンク側チョッピング動作の一方のみを行ってもよいし、両方を行ってもよい。
具体的にはチョッピング回路110は、トランジスターT1が温度検出電流IPTのミラー電流をソース電流として流しトランジスターT2が基準電流IRFのミラー電流をソース電流として流すソース側第1状態と、トランジスターT1が基準電流IRFのミラー電流をソース電流として流しトランジスターT2が温度検出電流IPTのミラー電流をソース電流として流すソース側第2状態とを切り替えるソース側チョッピング動作を行う。またチョッピング回路110は、トランジスターT3が基準電流IRFのミラー電流を引き込み、トランジスターT4が温度検出電流IPTのミラー電流を引き込むシンク側第1状態と、トランジスターT3が温度検出電流IPTのミラー電流を引き込み、トランジスターT4が基準電流IRFのミラー電流を引き込むシンク側第2状態とを切り替えるシンク側チョッピング動作を行う。
例えば図2~図6において、φ1はソース側チョッピング動作を切り替えるチョッピング制御信号であり、φ2はシンク側チョッピング動作を切り替えるチョッピング制御信号である。即ち図6に示すように、チョッピング制御信号φ1により、ソース側第1状態SC1とソース側第2状態SC2が切り替わる。またチョッピング制御信号φ2により、シンク側第1状態SK1とシンク側第2状態SK2が切り替わる。ここでチョッピング制御信号φ1、φ2は、Lレベルがアクティブなレベルであり、Hレベルが非アクティブなレベルの信号になっている。
図2~図5に示すように、チョッピング回路110は、スイッチS1A、S1B、S2A、S2B、S3A、S3B、S4A、S4Bを含む。これらのスイッチは例えばMOSトランジスター等により実現できる。そしてスイッチS1A、S1B、S2A、S2Bは、ソース側のチョッピング制御信号φ1、Xφ1によりオン又はオフにされ、スイッチS3A、S3B、S4A、S4Bは、シンク側のチョッピング制御信号φ2、Xφ2によりオン又はオフにされる。なおφ1、φ2は正論理の信号であり、Xφ1、Xφ2は負論理の信号である。
例えば図2は、チョッピング制御信号φ1、φ2が共にアクティブである場合の状態が示されている。図2、図6に示すようにチョッピング制御信号φ1がアクティブになるソース側第1状態SC1では、チョッピング回路110のスイッチS1A、S2Aがオンになり、スイッチS1B、S2Bがオフになる。またチョッピング制御信号φ2がアクティブになるシンク側第1状態SK1では、チョッピング回路110のスイッチS3A、S4Aがオンになり、スイッチS3B、S4Bがオフになる。
このようにチョッピング制御信号φ1、φ2が共にアクティブであるソース側第1状態SC1、シンク側第1状態SK1では、図2に示すように、トランジスターT1での温度検出電流IPTのミラー電流が、オンになったスイッチS1Aを介してソース電流として例えば出力ノードN1に流れる。またトランジスターT3での基準電流IRFのミラー電流が、オンになったスイッチS3Aを介してシンク電流として例えば出力ノードN1から引き込まれる。これにより出力ノードN1からは、差分電流ID1=IPT-IRFが出力されるようになる。またトランジスターT2での基準電流IRFのミラー電流が、オンになったスイッチS2Aを介してソース電流として例えば出力ノードN2に流れる。またトランジスターT4での温度検出電流IPTのミラー電流が、オンになったスイッチS4Aを介してシンク電流として例えば出力ノードN2から引き込まれる。これにより出力ノードN2からは、差分電流ID2=IRF-IPTが出力されるようになる。
また図3は、チョッピング制御信号φ1が非アクティブであり、チョッピング制御信号φ2がアクティブである場合の状態が示されている。φ1が非アクティブとは負論理のXφ1がアクティブになることである。図3、図6に示すようにチョッピング制御信号φ1が非アクティブになるソース側第2状態SC2では、スイッチS1A、S2Aがオフになり、スイッチS1B、S2Bがオンになる。またチョッピング制御信号φ2がアクティブになるシンク側第1状態SK1では、スイッチS3A、S4Aがオンになり、スイッチS3B、S4Bがオフになる。
このようにφ1が非アクティブ(Xφ1がアクティブ)であり、φ2がアクティブであるソース側第2状態SC2、シンク側第1状態SK1では、図3に示すように、トランジスターT2での温度検出電流IPTのミラー電流が、オンになったスイッチS2Bを介してソース電流として例えば出力ノードN1に流れる。またトランジスターT3での基準電流IRFのミラー電流が、オンになったスイッチS3Aを介してシンク電流として例えば出力ノードN1から引き込まれる。これにより出力ノードN1からは、差分電流ID1=IPT-IRFが出力されるようになる。またトランジスターT1での基準電流IRFのミラー電流が、オンになったスイッチS1Bを介してソース電流として例えば出力ノードN2に流れる。またトランジスターT4での温度検出電流IPTのミラー電流が、オンになったスイッチS4Aを介してシンク電流として例えば出力ノードN2から引き込まれる。これにより出力ノードN2からは、差分電流ID2=IRF-IPTが出力されるようになる。
また図4は、チョッピング制御信号φ1がアクティブであり、チョッピング制御信号φ2が非アクティブである場合の状態が示されている。φ2が非アクティブとは負論理のXφ2がアクティブになることである。図4、図6に示すようにチョッピング制御信号φ1がアクティブになるソース側第1状態SC1では、スイッチS1A、S2Aがオンになり、スイッチS1B、S2Bがオフになる。またチョッピング制御信号φ2が非アクティブになるシンク側第2状態SK2では、スイッチS3A、S4Aがオフになり、スイッチS3B、S4Bがオンになる。
このようにφ1がアクティブであり、φ2が非アクティブ(Xφ2がアクティブ)であるソース側第1状態SC1、シンク側第2状態SK2では、図4に示すように、トランジスターT1での温度検出電流IPTのミラー電流が、オンになったスイッチS1Aを介してソース電流として例えば出力ノードN1に流れる。またトランジスターT4での基準電流IRFのミラー電流が、オンになったスイッチS4Bを介してシンク電流として例えば出力ノードN1から引き込まれる。これにより出力ノードN1からは、差分電流ID1=IPT-IRFが出力されるようになる。またトランジスターT2での基準電流IRFのミラー電流が、オンになったスイッチS2Aを介してソース電流として例えば出力ノードN2に流れる。またトランジスターT3での温度検出電流IPTのミラー電流が、オンになったスイッチS3Bを介してシンク電流として例えば出力ノードN2から引き込まれる。これにより出力ノードN2からは、差分電流ID2=IRF-IPTが出力されるようになる。
また図5は、チョッピング制御信号φ1、φ2が共に非アクティブである場合の状態が示されている。図5、図6に示すようにチョッピング制御信号φ1が非アクティブになるソース側第2状態SC2では、スイッチS1A、S2Aがオフになり、スイッチS1B、S2Bがオンになる。またチョッピング制御信号φ2が非アクティブになるシンク側第2状態SK2では、スイッチS3A、S4Aがオフになり、スイッチS3B、S4Bがオンになる。
このようにφ1、φ2が共に非アクティブ(Xφ1、Xφ2がアクティブ)であるソース側第2状態SC2、シンク側第2状態SK2では、図5に示すように、トランジスターT2での温度検出電流IPTのミラー電流が、オンになったスイッチS2Bを介してソース電流として例えば出力ノードN1に流れる。またトランジスターT4での基準電流IRFのミラー電流が、オンになったスイッチS4Bを介してシンク電流として例えば出力ノードN1から引き込まれる。これにより出力ノードN1からは、差分電流ID1=IPT-IRFが出力されるようになる。またトランジスターT1での基準電流IRFのミラー電流が、オンになったスイッチS1Bを介してソース電流として例えば出力ノードN2に流れる。またトランジスターT3での温度検出電流IPTのミラー電流が、オンになったスイッチS3Bを介してシンク電流として例えば出力ノードN2から引き込まれる。これにより出力ノードN2からは、差分電流ID2=IRF-IPTが出力されるようになる。
このように本実施形態では、チョッピング回路110は、ソース側のチョッピング制御信号φ1により、図2、図4のソース側第1状態SC1と、図3、図5のソース側第2状態SC2とを切り替えるソース側チョッピング動作を行う。即ち図2、図4のソース側第1状態SC1では、トランジスターT1が温度検出電流IPTのミラー電流をソース電流として流し、トランジスターT2が基準電流IRFのミラー電流をソース電流として流す。一方、図3、図5のソース側第2状態SC2では、トランジスターT1が基準電流IRFのミラー電流をソース電流として流し、トランジスターT2が温度検出電流IPTのミラー電流をソース電流として流す。このようにソース側第1状態SC1とソース側第2状態SC2を切り替えるソース側チョッピング動作により、温度検出電流IPTを流すトランジスターと基準電流IRFを流すトランジスターが交互に切り替わるようになる。これによりソース側のトランジスターT1、T2で発生する1/fノイズ等のノイズが、チョッピング制御信号φ1の高周波のチョッピング周波数に変調されるようになり、当該ノイズが後段のA/D変換回路60に伝達されるのが抑制され、高精度化なデジタル出力温度センサー80を実現できるようになる。
また本実施形態では、チョッピング回路110は、シンク側のチョッピング制御信号φ2により、図2、図3のシンク側第1状態SK1と、図4、図5のシンク側第2状態SK2とを切り替えるシンク側チョッピング動作を行う。即ち図2、図3のシンク側第1状態SK1では、トランジスターT3が基準電流IRFのミラー電流をシンク電流として引き込み、トランジスターT4が温度検出電流IPTのミラー電流をシンク電流として引き込む。一方、図4、図5のシンク側第2状態SK2では、トランジスターT3が温度検出電流IPTのミラー電流をシンク電流として引き込み、トランジスターT4が基準電流IRFのミラー電流をシンク電流として引き込む。このようにシンク側第1状態SK1とシンク側第2状態SK2を切り替えるシンク側チョッピング動作により、基準電流IRFを流すトランジスターと温度検出電流IPTを流すトランジスターが交互に切り替わるようになる。これによりシンク側のトランジスターT3、T4で発生する1/fノイズ等のノイズが、チョッピング制御信号φ2の高周波のチョッピング周波数に変調されるようになり、当該ノイズが後段のA/D変換回路60に伝達されるのが抑制され、高精度なデジタル出力温度センサー80を実現できるようになる。
また本実施形態では、チョッピング回路110がソース側チョッピング動作及びシンク側チョッピング動作を行う場合において、ソース側チョッピング動作の周波数をfcp1とし、シンク側チョッピング動作の周波数をfcp2とし、mを2以上の整数としたとき、fcp1=m×fcp2、又はm×fcp1=fcp2の関係が成り立つ。例えば図6では、fcp1=24kHz、fcp2=12kHzとなっており、fcp1=m×fcp2=2×fcp2の関係が成り立っている。この場合にfcp1の周波数を更に高くして、fcp1≧3×fcp2としてもよい。即ち、mを2以上の整数としたとき、fcp1=m×fcp2の関係が成り立てばよい。或いは逆にシンク側チョッピング動作の周波数fcp2が、ソース側チョッピング動作の周波数fcp1よりも高くなるようにしてもよい。即ち、mを2以上の整数としたとき、fcp2=m×fcp1の関係が成り立ってもよい。このようにfcp1=m×fcp2又はm×fcp1=fcp2の関係が成り立つことで、図2~図6に示すように、ソース電流を流すトランジスターとシンク電流を引き込むトランジスターとの様々な組み合わせで、温度検出電流IPTと基準電流IRFを切り替えて流すチョッピング動作を実現できるようになる。例えば図2ではソース側のトランジスターT1にIPT、トランジスターT2にIRFが流れ、シンク側のトランジスターT3にIRF、トランジスターT4にIPTが流れる組み合わせになる。図3ではソース側のトランジスターT1にIRF、トランジスターT2にIPTが流れ、シンク側のトランジスターT3にIRF、トランジスターT4にIPTが流れる組み合わせになる。また図4ではソース側のトランジスターT1にIPT、トランジスターT2にIRFが流れ、シンク側のトランジスターT3にIPT、トランジスターT4にIRFが流れる組み合わせとなる。図5ではソース側のトランジスターT1にIRF、トランジスターT2にIPTが流れ、シンク側のトランジスターT3にIPT、トランジスターT4にIRFが流れる組み合わせになる。このようにソース側とドレイン側の様々なトランジスターの組み合わせで温度検出電流IPTと基準電流IRFを切り替えて流すチョッピング動作が行われることで、カレントミラー回路100のトランジスターが発生する1/fノイズ等の低周波ノイズが後段のA/D変換回路60に伝達されるのが更に抑制され、デジタル出力温度センサー80の更なる高精度化を実現できるようになる。
またチョッピング回路110は、トランジスターT1がIPTのミラー電流を出力ノードN1に流しトランジスターT2がIRFのミラー電流を出力ノードN2に流すソース側第1状態SC1と、トランジスターT1がIRFのミラー電流を出力ノードN2に流しトランジスターT2がIPTのミラー電流を出力ノードN1に流すソース側第2状態SC2とを切り替えるソース側チョッピング動作を行う。即ち図2、図4のソース側第1状態SC1では、トランジスターT1が温度検出電流IPTを出力ノードN1に流し、トランジスターT2が基準電流IRFを出力ノードN2に流し、図3、図5のソース側第2状態SC2では、トランジスターT1が基準電流IRFを出力ノードN2に流し、トランジスターT2が温度検出電流IPTを出力ノードN1に流す。このようにすれば、温度検出電流IPT、基準電流IRFを流すトランジスターを切り替える変調が行われた場合に、図2、図4のソース側第1状態SC1、図3、図5のソース側第2状態SC2のいずれにおいても、出力ノードN1にはソース電流として温度検出電流IPTが流れ、出力ノードN2にはソース電流として基準電流IRFが流れるようになる。従って、温度検出電流IPT、基準電流IRFを流すソース側のトランジスターを切り替えるチョッピングの変調と、出力ノードN1、N2から適正な差分電流ID1、ID2を出力するチョッピングの復調とが行われるようになる。これによりカレントミラー回路100の例えばソース側のトランジスターT1、T2が発生する1/fノイズ等のノイズが、後段のA/D変換回路60に伝達されるのが抑制され、高精度なデジタル出力温度センサー80を実現できるようになる。
またチョッピング回路110は、トランジスターT3がIRFのミラー電流を出力ノードN1から引き込み、トランジスターT4がIPTのミラー電流を出力ノードN2から引き込むシンク側第1状態SK1と、トランジスターT3がIPTのミラー電流を出力ノードN2から引き込み、トランジスターT4がIRFのミラー電流を出力ノードN1から引き込むシンク側第2状態SK2とを切り替えるシンク側チョッピング動作を行う。即ち図2、図3のシンク側第1状態SK1では、トランジスターT3が基準電流IRFを出力ノードN1から引き込み、トランジスターT4が温度検出電流IPTを出力ノードN2から引き込み、図4、図5のシンク側第2状態SK2では、トランジスターT3が温度検出電流IPTを出力ノードN2から引き込み、トランジスターT4が基準電流IRFを出力ノードN1から引き込む。このようにすれば、基準電流IRF、温度検出電流IPTを引き込むシンク側のトランジスターを切り替える変調が行われた場合に、図2、図3のシンク側第1状態SK1、図4、図5のシンク側第2状態SK2のいずれにおいても、出力ノードN1からはシンク電流として基準電流RFが引き込まれ、出力ノードN2からはシンク電流として温度検出電流IPTが引き込まれるようになる。従って、基準電流IRF、温度検出電流IPTを流すトランジスターを切り替えるチョッピングの変調と、出力ノードN1、N2から適正な差分電流ID1、ID2を出力するチョッピングの復調とが行われるようになる。これによりカレントミラー回路100の例えばシンク側のトランジスターが発生する1/fノイズ等のノイズが、後段のA/D変換回路60に伝達されるのが抑制され、高精度なデジタル出力温度センサー80を実現できるようになる。
次に図7、図8、図9、図10を用いて、カレントミラー回路100のチョッピング動作について更に詳細に説明する。図7~図10にはカレントミラー回路100の詳細な構成例が示されている。図7~図10では、図2~図5のトランジスターT1、T2、T3、T4に加えて、トランジスターT5、T6、T7、T8、T9、T10の接続構成が示されている。トランジスターT5、T6、T7、T8、T9、T10は、各々、第5トランジスター、第6トランジスター、第7トランジスター、第8トランジスター、第9トランジスター、第10トランジスターである。トランジスターT5、T6、T7、T8は、例えばMOSトランジスターであり、例えばP型のMOSトランジスターである。トランジスターT9、T10は例えばバイポーラートランジスターである。なおトランジスターT5~T8として例えばバイポーラートランジスターを用いたり、トランジスターT9、T10として例えばN型のMOSトランジスターを用いるなどの種々の変形実施が可能である。
図7ではトランジスターT5のドレインに温度検出電流IPTが入力されている。そしてトランジスターT5のドレインとゲートが接続されると共に、トランジスターT5のゲートがトランジスターT7、T1のゲートに接続されることで、トランジスターT5に流れる温度検出電流IPTのカレントミラーが行われて、温度検出電流IPTのミラー電流がトランジスターT7、T1に流れるようになる。またトランジスターT7のドレインのノードND1と、トランジスターT9のコレクターのノードNC1及びベースのノードとトランジスターT4のベースのノードとが接続されることで、温度検出電流IPTのミラー電流がトランジスターT9、T4に流れるようになる。
また図7ではトランジスターT6のドレインに基準電流IRFが入力されている。そしてトランジスターT6のドレインとゲートが接続されると共に、トランジスターT6のゲートがトランジスターT8、T2のゲートに接続されることで、トランジスターT6に流れる基準電流IRFのカレントミラーが行われて、基準電流IRFのミラー電流がトランジスターT8、T2に流れるようになる。またトランジスターT8のドレインのノードND4と、トランジスターT10のコレクターのノードNC4及びベースのノードとトランジスターT3のベースのノードとが接続されることで、基準電流IRFのミラー電流がトランジスターT10、T3に流れるようになる。
なお本実施形態では、温度検出電流IPTのミラー電流を、適宜、単に温度検出電流IPTと記載し、基準電流IRFのミラー電流を、適宜、単に基準電流IRFと記載することとする。また図7~図10に示すチョッピング回路110は、図2~図5と同様に、各スイッチが対応する2つのトランジスターを接続する複数のスイッチにより構成される。
図7は、チョッピング制御信号φ1、φ2が共にアクティブであり、図2、図6のソース側第1状態SC1、シンク側第1状態SK1の場合の状態を示している。図7ではトランジスターT1、T4に温度検出電流IPTが流れ、トランジスターT2、T3に基準電流IRFが流れる。そしてトランジスターT1からの温度検出電流IPTがソース電流として出力ノードN1に流れ、トランジスターT3からの基準電流IRFがシンク電流として出力ノードN1から引き込まれる。これにより出力ノードN1から差分電流ID1=IPT-IRFが出力されるようになる。またトランジスターT2からの基準電流IRFがソース電流として出力ノードN2に流れ、トランジスターT4からの温度検出電流IPTがシンク電流として出力ノードN2から引き込まれる。これにより出力ノードN2から差分電流ID2=IRF-IPTが出力されるようになる。
図8は、チョッピング制御信号φ1が非アクティブであり、チョッピング制御信号φ2がアクティブであり、図3、図6のソース側第2状態SC2、シンク側第1状態SK1の場合の状態を示している。図8ではトランジスターT2、T4に温度検出電流IPTが流れ、トランジスターT1、T3に基準電流IRFが流れる。そしてトランジスターT2からの温度検出電流IPTがソース電流として出力ノードN1に流れ、トランジスターT3からの基準電流IRFがシンク電流として出力ノードN1から引き込まれる。これにより出力ノードN1から差分電流ID1=IPT-IRFが出力されるようになる。またトランジスターT1からの基準電流IRFがソース電流として出力ノードN2に流れ、トランジスターT4からの温度検出電流IPTがシンク電流として出力ノードN2から引き込まれる。これにより出力ノードN2から差分電流ID2=IRF-IPTが出力されるようになる。
図9は、チョッピング制御信号φ1がアクティブであり、チョッピング制御信号φ2が非アクティブであり、図4、図6のソース側第1状態SC1、シンク側第2状態SK2の場合の状態を示している。図9ではトランジスターT1、T3に温度検出電流IPTが流れ、トランジスターT2、T4に基準電流IRFが流れる。そしてトランジスターT1からの温度検出電流IPTがソース電流として出力ノードN1に流れ、トランジスターT4からの基準電流IRFがシンク電流として出力ノードN1から引き込まれる。これにより出力ノードN1から差分電流ID1=IPT-IRFが出力されるようになる。またトランジスターT2からの基準電流IRFがソース電流として出力ノードN2に流れ、トランジスターT3からの温度検出電流IPTがシンク電流として出力ノードN2から引き込まれる。これにより出力ノードN2から差分電流ID2=IRF-IPTが出力されるようになる。
図10は、チョッピング制御信号φ1、φ2が共に非アクティブであり、図5、図6のソース側第2状態SC2、シンク側第2状態SK2の場合の状態を示している。図10ではトランジスターT2、T3に温度検出電流IPTが流れ、トランジスターT1、T4に基準電流IRFが流れる。そしてトランジスターT2からの温度検出電流IPTがソース電流として出力ノードN1に流れ、トランジスターT4からの基準電流IRFがシンク電流として出力ノードN1から引き込まれる。これにより出力ノードN1から差分電流ID1=IPT-IRFが出力されるようになる。またトランジスターT1からの基準電流IRFがソース電流として出力ノードN2に流れ、トランジスターT3からの温度検出電流IPTがシンク電流として出力ノードN2から引き込まれる。これにより出力ノードN2から差分電流ID2=IRF-IPTが出力されるようになる。
このように図7~図10では、カレントミラー回路100は、ゲートがトランジスターT1のゲートに接続されるP型のトランジスターT5と、ゲートがトランジスターT2のゲートに接続されるP型のトランジスターT6を含む。トランジスターT5は第5トランジスターであり、トランジスターT6は第6トランジスターである。また第1トランジスターであるT1及び第2トランジスターであるT2も、P型トランジスターとなっている。そしてチョッピング回路110は、図7、図9に示すソース側第1状態SC1では、温度検出電流IPTの供給ノードNPDにトランジスターT5のゲート及びドレインを接続し、基準電流IRFの供給ノードNRDにトランジスターT6のゲート及びドレインを接続する。またチョッピング回路110は、図8、図10に示すソース側第2状態SC2では、基準電流IRFの供給ノードNRDにトランジスターT5のゲート及びドレインを接続し、温度検出電流IPTの供給ノードNPDにトランジスターT6のゲート及びドレインを接続する。このようにすることで、ソース側第1状態SC1において、トランジスターT1に温度検出電流IPTのミラー電流を流すと共にトランジスターT2に基準電流IRFのミラー電流を流し、ソース側第2状態SC2において、トランジスターT1に基準電流IRFのミラー電流を流すと共にトランジスターT2に温度検出電流IPTのミラー電流を流すことが可能になる。
即ち図7、図9のようにチョッピング制御信号φ1がアクティブになるソース側第1状態SC1では、チョッピング回路110により、温度検出電流IPTの供給ノードNPDに、トランジスターT5のゲート及びドレインとトランジスターT1のゲートが接続され、基準電流IRFの供給ノードNRDに、トランジスターT6のゲート及びドレインとトランジスターT2のゲートが接続される。これによりトランジスターT1に温度検出電流IPTのミラー電流が流れ、トランジスターT2に基準電流IRFのミラー電流が流れるようになる。一方、図8、図10のようにチョッピング制御信号φ1が非アクティブになるソース側第2状態SC2では、チョッピング回路110により、基準電流IRFの供給ノードNRDに、トランジスターT5のゲート及びドレインとトランジスターT1のゲートが接続され、温度検出電流IPTの供給ノードNPDに、トランジスターT6のゲート及びドレインとトランジスターT2のゲートが接続される。これによりトランジスターT1に基準電流IRFのミラー電流が流れ、トランジスターT2に温度検出電流IPTのミラー電流が流れるようになる。これにより、ソース側第1状態SC1において温度検出電流IPTが流れるトランジスターT1に対して、ソース側第2状態SC2では基準電流IRFを流し、ソース側第1状態SC1において基準電流IRFが流れるトランジスターT2に対して、ソース側第2状態SC2では温度検出電流IPTを流すソース側チョッピング動作を実現できるようになる。このようにT1、T2の各トランジスターに流れる電流を、温度検出電流IPTと基準電流IRFとで切り替えるチョッピングの変調を行うことで、トランジスターT1、T2の1/fノイズ等のノイズが後段のA/D変換回路60に伝達されるのが抑制され、デジタル出力温度センサー80の高精度化を実現できるようになる。
図11に本実施形態のデジタル出力温度センサー80の詳細な構成例を示す。図11では図1の温度センサー回路90、カレントミラー回路100、チョッピング回路110、A/D変換回路60の構成要素に加えて、更にD/A変換回路40と制御回路70が設けられている。
D/A変換回路40は、DAC入力デジタル値nをD/A変換して、DAC入力デジタル値nに応じた基準電流IRFを出力する。即ちD/A変換回路40は、DAC入力デジタル値nに応じて電流値が設定される基準電流IRFを出力する。制御回路70は、DAC入力デジタル値nをD/A変換回路40に出力する。
そしてA/D変換回路60は、差動の差分電流ID1、ID2のA/D変換を行って、ADC出力デジタル値dを出力する。即ちA/D変換回路60は、第1差分電流であるID1=IPT-IRFと、第2差分電流であるID2=IRF-IPTが入力されて、ADC出力デジタル値dを制御回路70に出力する。制御回路70は、DAC入力デジタル値nとしてDAC入力デジタル値n1と、DAC入力デジタル値n1とは異なるDAC入力デジタル値n2を出力する。そして制御回路70は、DAC入力デジタル値n1に対応して得られたADC出力デジタル値dであるADC出力デジタル値d1と、DAC入力デジタル値n2に対応して得られたADC出力デジタル値dであるADC出力デジタル値d2と、DAC入力デジタル値nとに基づいて、温度検出電流IPTに対応した温度検出データを求めて、ADC結果データDQとして出力する。このようにすることで、A/D変換回路60の分解能よりも高い分解能での温度検出電流IPTのA/D変換が可能になり、高精度なデジタル出力温度センサー80を実現できるようになる。なお図11の構成及び動作の具体例については後述の図13~図19において詳細に説明する。
図12もデジタル出力温度センサー80の詳細な構成例を示す図である。図12に示すように温度センサー回路90は、バイポーラートランジスターBT1、BT2と抵抗RPTを含む。バイポーラートランジスターBT1、抵抗RPTは、温度検出電流IPTの供給ノードNPDと、低電位側の電源ノードであるVSSのノードとの間に直列に設けられる。例えばバイポーラートランジスターBT1は、コレクターが温度検出電流IPTの供給ノードNPDに接続され、エミッターが抵抗RPTの一端に接続される。そして抵抗RPTの他端がVSSのノードに接続される。またバイポーラートランジスターBT2は、トランジスターT11のドレインとVSSのノードとの間に設けられる。トランジスターT11のゲートは、トランジスターT5のゲートのノードNPGに接続される。具体的にはバイポーラートランジスターBT2は、コレクターがトランジスターT11のドレインに接続され、ベースがバイポーラートランジスターBT1のベースに接続され、エミッターがVSSのノードに接続される。これによりバイポーラートランジスターBT1、BT2には温度検出電流IPTが流れるようになる。そしてバイポーラートランジスターBT1、BT2の各々は、複数のユニットトランジスターにより構成されており、これらのユニットトランジスターの個数が互いに異なっている。これにより温度センサー回路90は、ユニットトランジスターの個数の比と抵抗RPTの抵抗値に応じた例えば正の温度特性の温度検出電流IPTを生成できるようになる。
またD/A変換回路40は、例えば電圧出力型のD/A変換回路と、電圧出力型のD/A変換回路の出力電圧VDACを基準電流IRFに変換する電圧/電流変換回路48を含む。そして図12に示すように電圧/電流変換回路48は、演算増幅器OPVと抵抗RCTを含む。例えば抵抗RCTの抵抗値をRとした場合に、電圧/電流変換回路48は、IRF=VDAC/Rで表される基準電流IRFを出力する。なお電圧出力型のD/A変換回路としては、例えば抵抗ラダー型のD/A変換回路などがある。また図12では、電圧/電流変換回路48の演算増幅器OPVにおいてもチョッピングの変調と復調が行われている。このようにすることで演算増幅器OPVで発生した1/fノイズ等のノイズが基準電流IRFに重畳されてしまうのを抑制でき、デジタル出力温度センサー80の高精度化を実現できるようになる。
2.A/D変換の高精度化
次にA/D変換の高精度化を実現する本実施形態の手法について、図13~図19を用いて説明する。なお以下では、説明の便宜のために、図13に示すD/A変換回路40、差分出力回路50、A/D変換回路60、制御回路70を含む回路を、A/Dコンバーター30と記載する。本実施形態の手法では、A/D変換回路60の分解能よりも高い分解能の高精度のA/Dコンバーター30を実現できる。また以下では、説明の便宜のために、D/A変換回路40のDAC出力信号VNが電圧信号であるとして説明するが、実際には、D/A変換回路40のDAC出力信号VNは、図11に示すように電流信号である基準電流IRFである。また図13の入力信号VINは温度検出電流IPTに対応し、差分出力回路50はカレントミラー回路100に対応する。
図13において、D/A変換回路40は、DAC入力デジタル値nをD/A変換して、DAC出力信号VNを出力する。D/A変換回路40としては、例えば抵抗ラダー型のD/A変換回路を用いることが望ましい。但し本実施形態ではD/A変換回路40として、例えば容量アレイ型、デルタシグマ型又は電流出力型等の他の方式のD/A変換回路を用いることも可能である。
差分出力回路50は、入力信号VINとDAC出力信号VNの差分に基づく差分信号DSを出力する。前述したように入力信号VINは温度検出電流IPTに対応し、DAC出力信号VNは基準電流IRFに対応し、差分出力回路50はカレントミラー回路100に対応する。差分出力回路50は、例えば差動入力の第1入力端子に入力信号VINが入力され、差動入力の第2入力端子にDAC出力信号VNが入力され、入力信号VINとDAC出力信号VNの差分信号DSを例えば差動出力端子に出力する。第1入力端子は例えば非反転入力端子であり、第2入力端子は例えば反転入力端子である。差分信号DSは、例えばVIN-VNに対応する第1差分信号とVN-VINに対応する第2差分信号により構成される。第1差分信号は前述の差分電流ID1=IPT-IRFに対応し、第2差分信号は差分電流ID2=IRF-IPTに対応する。
A/D変換回路60は、差分信号DSをA/D変換して、ADC出力デジタル値dを出力する。例えばA/D変換回路60は、差動入力の第1入力端子に差分信号DSの第1差分信号が入力され、差動入力の第2入力端子に差分信号DSの第2差分信号が入力され、第1差分信号と第2差分信号の差分をA/D変換することで得られるADC出力デジタル値dを出力する。A/D変換回路60としては、例えば逐次比較型のA/D変換回路を用いることが望ましい。但し本実施形態ではA/D変換回路60として、例えばデルタシグマ型や、逐次比較型以外のパイプライン型等の他の方式のA/D変換回路を用いることも可能である。
制御回路70はDAC入力デジタル値nを出力する。例えば制御回路70は、A/D変換回路60からのADC出力デジタル値dに基づいてDAC入力デジタル値nを出力する。例えば制御回路70は、ADC出力デジタル値dに基づく演算処理を行ってD/A変換回路40にDAC入力デジタル値nを出力する。また制御回路70は最終的なADC結果データDQを出力する。即ちADC結果データDQのデジタル値を出力する。このADC結果データDQはデジタル出力温度センサー80の温度検出データに対応する。制御回路70はロジック回路により実現できる。
具体的には制御回路70は、DAC入力デジタル値nとして、DAC入力デジタル値n1と、DAC入力デジタル値n1とは異なるDAC入力デジタル値n2を出力する。DAC入力デジタル値n1は第1DAC入力デジタル値であり、DAC入力デジタル値n2は第2DAC入力デジタル値である。そして制御回路70は、DAC入力デジタル値n1に対応して得られたADC出力デジタル値dであるADC出力デジタル値d1と、DAC入力デジタル値n2に対応して得られたADC出力デジタル値dであるADC出力デジタル値d2と、DAC入力デジタル値nとに基づいて、ADC結果データDQを求める。例えばDAC入力デジタル値n1、n2の一方から他方の値が求められる場合に、制御回路70は、ADC出力デジタル値d1と、ADC出力デジタル値d2と、DAC入力デジタル値n1又はDAC入力デジタル値n2とから、ADC結果データDQを求める。ADC出力デジタル値d1は第1ADC出力デジタル値であり、ADC出力デジタル値d2は第2ADC出力デジタル値である。
例えば制御回路70がDAC入力デジタル値n1を出力すると、D/A変換回路40がDAC入力デジタル値n1のD/A変換を行って、DAC出力信号VN=Vn1を出力する。すると差分出力回路50が、入力信号VINとDAC出力信号Vn1の差分に基づく差分信号DSを出力し、A/D変換回路60が差分信号DSのA/D変換を行うことで、ADC出力デジタル値d=d1を制御回路70に出力する。また制御回路70がDAC入力デジタル値n2を出力すると、D/A変換回路40がDAC入力デジタル値n2のD/A変換を行って、DAC出力信号VN=Vn2を出力する。すると差分出力回路50が、入力信号VINとDAC出力信号Vn2の差分に基づく差分信号DSを出力し、A/D変換回路60が差分信号DSのA/D変換を行うことで、ADC出力デジタル値d=d2を制御回路70に出力する。そして制御回路70は、ADC出力デジタル値d1、d2と、DAC入力デジタル値nとに基づいてADC結果データDQを求める。例えば制御回路70は、ADC出力デジタル値d1、d2と、DAC入力デジタル値n1又はDAC入力デジタル値n2とに基づいてADC結果データDQを求めて、最終的なADC結果のデジタル値として出力する。
このように本実施形態のA/Dコンバーター30は、DAC入力デジタル値n1に基づくA/D変換とDAC入力デジタル値n2に基づくA/D変換というように例えば2回のA/D変換を行う。そしてDAC入力デジタル値n1に基づくA/D変換結果であるADC出力デジタル値d1と、DAC入力デジタル値n2に基づくA/D変換結果であるADC出力デジタル値d2とに基づいて、最終的なADC結果データDQを算出している。そしてADC出力デジタル値d1については、入力信号VINと、DAC入力デジタル値n1をD/A変換回路40によりD/A変換したDAC出力信号Vn1との差分を、A/D変換回路60によりA/D変換することで求められる。またADC出力デジタル値d2については、入力信号VINと、DAC入力デジタル値n2をD/A変換回路40によりD/A変換したDAC出力信号Vn2との差分を、A/D変換回路60によりA/D変換することで求められる。このようにすれば、A/D変換回路60とD/A変換回路40とを用いて、A/D変換回路60の分解能よりも高い精度のA/D変換が可能なA/Dコンバーター30を実現できるようになる。一例としては、A/D変換回路60の分解能が例えば15~16ビットである場合に、分解能を例えば2ビット程度向上し、例えば17~18ビットの分解能のA/Dコンバーター30を実現できるようになる。そして本実施形態によれば、例えばCoarse ADCとFine ADCというような2つのA/D変換回路を用いなくても、例えば1つのA/D変換回路60を用いて、A/D変換回路60の分解能よりも高い精度のA/Dコンバーター30を実現することが可能になる。例えばA/D変換回路60とD/A変換回路40の設定を変えて2回変換することで、Coarse ADCとFine ADCを使うTwo-Step ADCで課題となるアナログゲインの精度要求を緩和することが可能になり、例えば線形性改善やミッシングコードの防止を実現できるようになる。
図14に、差分出力回路50としてアンプ回路51を設けた場合の本実施形態のA/Dコンバーター30の構成例を示す。図14では入力信号VINは入力電圧となる。そしてD/A変換回路40は、DAC入力デジタル値nをD/A変換したDAC出力電圧を、DAC出力信号VNとして出力する。具体的にはD/A変換回路40は、DAC入力デジタル値n=n1をD/A変換したDAC出力電圧を、DAC出力信号VN=Vn1として出力し、DAC入力デジタル値n=n2をD/A変換したDAC出力電圧を、DAC出力信号VN=Vn2として出力する。そして差分出力回路50として、入力電圧である入力信号VINと、DAC出力電圧であるDAC出力信号VNを差動増幅するアンプ回路51が設けられている。図14では、アンプ回路51は、増幅率Gで入力信号VINとDAC出力信号VNを差動増幅して、差動電圧信号である差分信号DSをA/D変換回路60に出力する。このようなアンプ回路51を設ければ、入力信号VINとDAC出力信号VNの差分をアンプ回路51により増幅した差分信号DSを、A/D変換回路60に入力できるようになる。従って、A/D変換回路60は、アンプ回路51により増幅された広い振幅範囲の差分信号DSに対して、例えばフルスケールでA/D変換を行うことが可能になり、高精度のA/D変換を実現できるようになる。例えばアンプ回路51により増幅した信号をA/D変換回路60によりA/D変換することで、A/D変換回路60の分解能よりも高い分解能のA/Dコンバーター30を実現できるようになる。なおアンプ回路51の信号のゲインである増幅率Gは、例えば10~20倍程度とすることができる。
図15は本実施形態のA/Dコンバーター30の動作説明図である。図15のA1は、入力電圧とDAC出力電圧の関係を示している。入力電圧は入力信号VINの電圧であり、DAC出力電圧はDAC出力信号VNの電圧である。図15のA1の横軸のDAC入力デジタル値nはD/A変換回路40に入力されるデジタル値であり、デジタル値はデジタルコードとも呼ばれる。図15のA1に示すように、D/A変換回路40は、DAC入力デジタル値n1が入力されたときに、Vn1のDAC出力電圧をアンプ回路51に出力し、DAC入力デジタル値n2が入力されたときに、Vn2のDAC出力電圧をアンプ回路51に出力する。図15のA1では、A/Dコンバーター30の入力電圧であるVINは、例えばDAC出力電圧であるVn1とVn2の間の電圧になっている。なお、本実施形態では、入力信号VINを、適宜、入力電圧と記載し、D/A変換回路40を、適宜、DACと記載し、A/D変換回路60を、適宜、ADCと記載する。
図15のA2は、アンプ回路51の増幅後における入力電圧とADC入力電圧の関係を示している。ADC入力電圧は差分信号DSの電圧である差分電圧である。図15のA2では、アンプ回路51により、G倍(G>1)の信号増幅が行われている。
図15のA1に示すように、D/A変換回路40は、DAC入力デジタル値n1が入力されると、Vn1の出力電圧を出力する。そして図15のA2に示すように、アンプ回路51は、VINの入力電圧とVn1のDAC出力電圧の差分電圧であるVIN-Vn1をG倍に増幅して、A/D変換回路60に出力し、A/D変換回路60は、(VIN-Vn1)×Gの電圧をA/D変換して、ADC出力デジタル値d1を制御回路70に出力する。また図15のA1に示すように、D/A変換回路40は、DAC入力デジタル値n2が入力されると、Vn2の出力電圧を出力する。そして図15のA2に示すように、アンプ回路51は、VINの入力電圧とVn2の出力電圧の差分電圧であるVIN-Vn2をG倍に増幅して、A/D変換回路60に出力し、A/D変換回路60は、(VIN-Vn2)×Gの電圧をA/D変換して、ADC出力デジタル値d2を制御回路70に出力する。
そして制御回路70は、DAC入力デジタル値n1をD/A変換回路40に出力したときにA/D変換回路60から入力されるADC出力デジタル値d1と、DAC入力デジタル値n2をD/A変換回路40に出力したときにA/D変換回路60から入力されるADC出力デジタル値d2とに基づいて、ADC結果データDQを求める。例えば図15のA3に示す差分電圧は、(VIN-Vn1)×Gと表され、これはADC出力デジタル値d1に対応する。A4に示す差分電圧は、(VIN-Vn2)×Gと表され、これはADC出力デジタル値d2に対応する。またA5に示す差分電圧は(Vn2-Vn1)×G=(VIN-Vn1)×G-(VIN-Vn2)×Gと表され、これはADC出力デジタル値d1、d2の差分であるd1-d2に対応する。従って、A5の差分電圧に対するA3の差分電圧とA4の差分電圧の比率から、A/Dコンバーター30の入力電圧であるVINを特定できる。具体的にはVINは下式(1)のように特定できる。
従って、制御回路70は、ADC結果データDQを下式(2)のように演算して、出力できるようになる。
例えばVINがVn1とVn2の間の電圧である場合には、VINは、Vn1とVn2との間において、d1/(d1-d2)の比率で表される電圧になる。例えばd1/(d1-d2)が0.5である場合には、VIN=Vn1+(Vn2-Vn1)×0.5になり、VINはVn1とVn2の中央の電圧になる。d1/(d1-d2)が0.6である場合には、VIN=Vn1+(Vn2-Vn1)×0.6になり、VINは、Vn2とVn1の間において60%の比率で表される電圧になる。なおVINがVn1とVn2の間の電圧ではない場合にも、上式(1)によりVINを特定し、上式(2)のように制御回路70はADC結果データDQを求めて出力できる。
本実施形態によれば、例えばA/D変換の分解能を向上するためにA/D変換回路60の前段にアンプ回路51を設ける場合であっても、増幅回路であるアンプ回路51の回路特性がA/D変換の結果に影響しにくくなる。例えば上式(1)、(2)に示すように、理論上はアンプ回路51の増幅率GはA/D変換の結果に全く影響しない。また本実施形態では制御回路70は、A/D変換回路60からのADC出力デジタル値dに基づいて、DAC入力デジタル値nを生成している。例えば制御回路70は、フィードバック制御によりDAC入力デジタル値nを生成している。このようなフィードバック制御を行うことで、D/A変換回路40のDAC出力電圧であるVNを、入力電圧であるVINに近づけることが可能になる。例えばVNとVINが離れすぎると、正確なA/D変換結果を得ることが難しくなるが、VNをVINに近づけることで、A/D変換の結果を高精度化することが可能になる。
以上のように本実施形態では、第1DAC入力デジタル値をn1とし、第2DAC入力デジタル値をn2とし、第1ADC出力デジタル値をd1とし、第2ADC出力デジタル値をd2とし、ADC結果データをDQとしたときに、制御回路70は、DQ=n1+(n2-n1)×d1/(d1-d2)によりADC結果データDQを求める。即ち制御回路70は、DAC入力デジタル値であるn1、n2と、ADC出力デジタル値であるd1、d2に基づいて、DQ=n1+(n2-n1)×d1/(d1-d2)の演算処理を行うことで、ADC結果データDQを求める。このようにすれば、A/D変換回路60とD/A変換回路40が、DAC入力デジタル値n1に基づく変換と、DAC入力デジタル値n2に基づく変換を行い、制御回路70が、DQ=n1+(n2-n1)×d1/(d1-d2)の演算処理を行うことで、A/D変換回路60の分解能よりも高い精度のA/Dコンバーター30を実現できるようになる。
図16に本実施形態のA/Dコンバーター30の詳細な構成例を示す。図16では制御回路70の具体的な構成例が示されている。また図17にA/Dコンバーター30の詳細な動作説明図を示す。ここでは図18に示すように例えば0.88VのVINが入力されたものとする。
図17のB1に示すk回目の処理(kは1以上の整数)では、図16の制御回路70の遅延器76がn=20を出力している。そして制御回路70のセレクター78により、B2、B3に示すように1回目はn=20がD/A変換回路40に出力され、2回目はn=21がD/A変換回路40に出力される。D/A変換回路40にn=20が入力されると、A/D変換回路60に例えば+0.08Vが入力され、A/D変換回路60は例えば80のデジタル値を出力する。ここでは1LSBを例えば1mVとしている。またD/A変換回路40にn=21が入力されると、A/D変換回路60に例えば-0.02Vが入力され、A/D変換回路60は例えば-20のデジタル値を出力する。すると制御回路70の演算回路72は、d=d1/(d1-d2)の演算処理を行って、d=80/{80-(-20)}=0.8を出力する。このd=0.8に対して、制御回路70のゲイン乗算器73により例えばa1=0.5のゲインが乗算され、制御回路70の積分器74には、0.8×0.5=0.4が入力される。このとき積分器74は、積分結果である21.1を出力しており、制御回路70の量子化器75が、この21.1を整数にする量子化を行って、B4に示すように、k+1回目の処理に用いられるnとして、n=21を出力する。またB5に示すように、制御回路70の加算器77は、k回目の処理に用いられたn=20と、k回目の処理での演算回路72の出力であるd=0.8との加算処理を行って、ADC結果データとしてDQ=20.8を出力する。
またB4に示すように、k+1回目の処理において、遅延器76は、k回目の処理での量子化により求められたn=21を出力する。そしてセレクター78により、B6、B7に示すように1回目はn=21がD/A変換回路40に出力され、2回目はn=22がD/A変換回路40に出力される。D/A変換回路40にn=21が入力されると、A/D変換回路60に例えば-0.02Vが入力され、A/D変換回路60は例えば-20のデジタル値を出力する。またD/A変換回路40にn=22が入力されると、A/D変換回路60に例えば-0.12Vが入力され、A/D変換回路60は例えば-120のデジタル値を出力する。すると演算回路72は、d=d1/(d1-d2)の演算処理を行って、d=-20/{-20-(-120)}=-0.2を出力する。このd=-0.2に対して、ゲイン乗算器73によりa1=0.5のゲインが乗算され、積分器74には、-0.2×0.5=-0.1が入力される。このとき積分器74は、k回目の積分結果である21.1に対してk回目の積分器入力である0.4を加算した値である21.5を出力している。そして量子化器75が、この21.5を整数にする量子化を行って、B8に示すように、k+2回目の処理に用いられるnとして、n=22を出力する。またB9に示すように、加算器77は、k+1回目の処理に用いられたn=21と、k+1回目の処理での演算回路72の出力であるd=-0.2との加算処理を行って、ADC結果データとしてDQ=20.8を出力する。
このように本実施形態では、図17のB1、B4、B8、B10、B11に示すように、DAC入力デジタル値nに対するデルタシグマ変調等の変調が行われて、変調されたDAC入力デジタル値nがD/A変換回路40に入力されるようになる。そしてB5、B9、B12、B12、B13、B14に示すように、図18のVIN=0.88Vの入力電圧に対応するADC結果データDQが制御回路70から出力されるようになる。例えば図15において、DAC入力デジタル値nに対応するDAC出力電圧と、VINの入力電圧との電圧差が大きくなると、A/D変換回路60に入力される差分信号DSの差分電圧が大きくなる。そしてA/D変換回路60のフルスケールの範囲を超えてしまうと、正確なA/D変換ができなくなる問題が生じる。この点、図16、図17では、DAC出力電圧とVINの入力電圧との電圧差が大きい場合には、積分器74等による積分処理により、DAC出力電圧とVINの入力電圧との電圧差が近づくようにフィードバック制御が行われて、DAC入力デジタル値nが制御回路70から出力される。従って、差分信号DSの差分電圧が大きくなってA/D変換回路60のフルスケールの範囲を超えてしまう事態を抑制でき、A/Dコンバーター30の高精度化を実現できるようになる。
以上のように本実施形態では、制御回路70は、ADC出力デジタル値d1とADC出力デジタル値d2とに基づいて、d=d1/(d1-d2)を求める演算を行う演算回路72と、演算回路72の出力に対する積分処理を行う積分器74と、積分処理の結果に対する量子化処理を行って、DAC入力デジタル値nを出力する量子化器75を含む。このようにすれば、DAC入力デジタル値nに対してデルタシグマ変調等の変調を行うことが可能になる。これにより、D/A変換回路40へのDAC入力デジタル値nが1つの値に固定されないようになり、D/A変換回路40の直線性や微分特性を改善できる。またDAC入力デジタル値nを自律的に自動的に決定できるようになる。
なお図16のH1では、1次のデルタシグマ変調に対応する変調を行っているが、本実施形態における変調処理はこれに限定されない。例えば図19に示すような2次のデルタシグマ変調に対応する変調を行うなどの種々の変形実施が可能である。
また制御回路70は、DAC入力デジタル値n1に所定値を加算したDAC入力デジタル値n2を出力する。例えば図16では制御回路70は、DAC入力デジタル値n1に対して、所定値である+1を加算したDAC入力デジタル値n2を出力している。ここで所定値は+1には限定されず、2以上の値であってもよいし、負の値であってもよい。このようにすれば、所定値を加算するという簡素な処理により、DAC入力デジタル値n1、n2をD/A変換回路40に出力して、DAC入力デジタル値n1に対応するADC出力デジタル値d1と、DAC入力デジタル値n2に対応するADC出力デジタル値d2を、A/D変換回路60から出力させることが可能になる。
また本実施形態ではD/A変換回路40は、抵抗ラダー型のD/A変換回路であることが望ましい。抵抗ラダー型のD/A変換回路は、ラダー抵抗回路とスイッチアレイを含む。ラダー抵抗回路は、高電位側の電源ノードと低電位側の電源ノードとの間に直列に設けられる複数の抵抗を含む。電圧選択回路であるスイッチアレイは、制御回路70からのDAC入力デジタル値nによりオン又はオフにされる複数のスイッチを含む。そしてスイッチアレイは、ラダー抵抗回路の複数の分割電圧ノードからの複数の分割電圧が入力されて、DAC入力デジタル値nによる複数のスイッチのオン、オフ制御により選択された電圧を、出力電圧VDACとして出力する。
例えば、上式(1)、(2)や図3から明らかなように、D/A変換回路40のINL(Integral Non-Linearity)などの直線性の特性が悪いと、A/Dコンバーター30の精度が低下してしまう。例えば上式(2)に示すようにADC結果データはDQ=n1+(n2-n1)×d1/(d1ーd2)の演算式により求められるが、D/A変換回路40の直線性の特性が悪いと、この演算式の前提が崩れてしまい、高精度なA/Dコンバーター30の実現が難しくなる。この点、本実施形態では電圧出力型のD/A変換回路40として抵抗ラダー型のD/A変換回路を用いている。抵抗ラダー型のD/A変換回路40は、ラダー抵抗回路の複数の抵抗の抵抗値の比に基づくD/A変換を行っているため、INLなどの直線性の特性が、他の方式のD/A変換回路に比べて良好である。例えば複数の抵抗のレイアウト配置等を適正にすることで、良好な直線性の特性を実現できる。従って、D/A変換回路40として抵抗ラダー型のD/A変換回路を用いることで、上式(1)、(2)の理論式に応じた正確な変換が可能になり、高精度なA/Dコンバーター30の実現が可能になる。
また本実施形態では、A/D変換回路60として、逐次比較型のA/D変換回路を用いることが望ましい。このようにA/D変換回路60として、逐次比較型のA/D変換回路を用いれば、例えばデルタシグマ型のA/D変換回路を用いる場合に比べて、広帯域のA/D変換が可能になり、広帯域で高精度なデジタル出力温度センサー80の実現が容易になる。
以上のように本実施形態の手法によれば高精度のA/D変換を実現できる。例えばデジタル出力温度センサー80では、高精度な温度検出結果を出力する必要がある。この点、本実施形態の手法によれば、A/D変換回路60の分解能よりも高い精度のA/D変換が可能になるため、このような高精度の温度検出結果の出力の要望に応えることができる。またデジタル出力温度センサー80では、広い帯域で高精度の温度検出結果を出力する必要があるが、本実施形態の手法によれば、広帯域化も容易であるため、広い帯域での高精度の温度検出結果を出力の要望にも応えることができる。
図20に本実施形態のデジタル出力温度センサー80の詳細な構成例を示し、図21にその動作を説明する信号波形図を示す。
制御信号φS1、φS2が共にHレベルになりアクティブになると、図20のスイッチSW1、SW2、SW3、SW4、SW5、SW6がオンになり、サンプリング用のキャパシターCS1、CS2の両端がコモン電圧VCOMに設定され、キャパシターCS1、CS2のリセットが行われる。次に制御信号φS2がLレベルになり非アクティブになると、カレントミラー回路100からの差分電流ID1=IPT-IRF、ID2=IRF-IPTが、各々、オン状態のスイッチSW1、SW2を介してキャパシターCS1、CS2の一端に流れ、キャパシターCS1、CS2が差分電流ID1、ID2により充電されるサンプリング動作が行われる。これにより図21に示すように、時間経過に応じて電圧VPTは例えば上昇し、電圧VCTが下降する。次に制御信号φS1がLレベルになり非アクティブになると、キャパシターCS1、CS2にサンプリングされた電圧VPT、VCTのホールド動作が行われて、A/D変換回路60により電圧VPT、VCTのA/D変換が行われる。このように図20では、スイッチSW1~SW6、キャパシターCS1、CS2により構成される回路は、差分電流ID1、ID2を電圧VPT、VCTに変換する電流/電圧変換回路としての機能と、図14のアンプ回路51としての機能を有する。例えばキャパシターCS1、CS2のサンプリング期間の長さの設定により、アンプ回路51の増幅率Gを設定できるようになる。
図22はデジタル出力温度センサー80の動作説明図である。ステート1、ステート2、ステート3、ステート4でチョッピング動作のステートの切り替えが行われる。ここではチョッピング動作の周波数は例えばfcp1=24kHzである。そして例えばチョッピング動作のステート1では、図17で説明したk回目の処理が行われて、制御回路70が、DAC入力デジタル値n(k)としてn1(k)、n2(k)を出力し、D/A変換回路40がn1(k)、n2(k)のD/A変換を行う。そしてA/D変換回路60が2回のA/D変換を行って、n1(k)、n2(k)に対応するd1(k)、d2(k)を制御回路70に出力し、制御回路70が、ADC結果データDQを温度検出データとして出力する。またチョッピング動作のステート2では、図17で説明したk+1回目の処理が行われて、制御回路70が、DAC入力デジタル値n(k+1)としてn1(k+1)、n2(k+1)を出力し、D/A変換回路40がn1(k+1)、n2(k+1)のD/A変換を行う。そしてA/D変換回路60が2回のA/D変換を行って、n1(k+1)、n2(k+1)に対応するd1(k+1)、d2(k+1)を制御回路70に出力し、制御回路70が、ADC結果データDQを温度検出データとして出力する。ステート3、ステート4での動作も同様である。
図22では、A/D変換回路60の変換周波数はfad=48kHzであり、チョッピング動作の周波数であるfcp1=24kHzの例えば2倍になっている。A/D変換回路60の変換周波数はサンプリング周波数又は変換レートとも呼ばれる。そしてADC結果データDQである温度検出データは、fcp1=24kHzに対応する周期でA/Dコンバーター30から出力されるようになる。
例えばチョッピング回路110が、ソース側チョッピング動作及びシンク側チョッピング動作を行う場合において、A/D変換回路60の変換周波数をfadとし、ソース側チョッピング動作の周波数をfcp1とし、シンク側チョッピング動作の周波数をfcp2とし、mを2以上の整数としたとする。この場合に本実施形態では例えば図22に示すように、fad=2×fcp1の関係が成り立っている。ここで前述の図6で説明したように、fcp1=m×fcp2となるため、fad=2×fcp1=2×(m×fcp1)の関係が成り立つ。例えば図6では、m=2となっているが、mは3以上であってもよい。また前述したように、シンク側チョッピング動作の周波数fcp2が、ソース側チョッピング動作の周波数fcp1よりも高くなるようにしてもよく、この場合にはfad=2×fcp2=2×(m×fcp1)の関係が成り立つ。即ち本実施形態では、fad=2×fcp1=2×(m×fcp2)、又はfad=2×fcp2=2×(m×fcp1)の関係が成り立つ。
このようにfad=2×fcp1又はfad=2×fcp2の関係が成り立つことで、図22に示すように、A/D変換回路60が2回の変換を行う期間をチョッピング動作の期間として、カレントミラー回路100のトランジスターのチョッピング動作を行うことが可能になる。そして前述の図13~図19で説明したようにA/D変換回路60及びD/A変換回路40が2回の変換を行って、ADC結果データDQを出力することで、高精度なA/D変換を実現でき、デジタル出力温度センサー80の高精度化を実現できる。また前述したように、fcp1=m×fcp2又はm×fcp1=fcp2の関係が成り立つことで、ソース電流を流すトランジスターとシンク電流を引き込むトランジスターとの様々な組み合わせで、温度検出電流IPTと基準電流IRFを切り替えて流すチョッピング動作を実現できるようになる。このようにソース側とドレイン側の様々なトランジスターの組み合わせで温度検出電流IPTと基準電流IRFを切り替えて流すチョッピング動作が行われることで、カレントミラー回路100のトランジスターが発生する1/fノイズ等のノイズが後段のA/D変換回路60に伝達されるのが更に抑制され、デジタル出力温度センサー80の更なる高精度化を実現できるようになる。
3.回路装置
図23に本実施形態の回路装置20の第1構成例を示す。回路装置20は、本実施形態のデジタル出力温度センサー80と、振動子10を発振させる発振回路21を含む。また回路装置20は、発振回路21からの発振信号OSCに基づいてクロック信号CKを出力する出力回路23を含むことができる。また本実施形態の発振器4は、振動子10と回路装置20を含む。振動子10は回路装置20に電気的に接続されている。例えば振動子10及び回路装置20を収納するパッケージの内部配線、ボンディグワイヤー又は金属バンプ等を用いて、振動子10と回路装置20は電気的に接続されている。
振動子10は、電気的な信号により機械的な振動を発生する素子である。振動子10は、例えば水晶振動片などの振動片により実現できる。例えば振動子10は、カット角がATカットやSCカットなどの厚みすべり振動する水晶振動片、音叉型水晶振動片、或いは双音叉型水晶振動片などにより実現できる。例えば振動子10は、恒温槽を備えない温度補償型水晶発振器(TCXO)に内蔵されている振動子であってもよいし、恒温槽を備える恒温槽型水晶発振器(OCXO)に内蔵されている振動子であってもよい。或いは振動子10は、SPXO(Simple Packaged Crystal Oscillator)の発振器に内蔵される振動子であってもよい。なお本実施形態の振動子10は、例えば厚みすべり振動型、音叉型、又は双音叉型以外の振動片や、水晶以外の材料で形成された圧電振動片などの種々の振動片によっても実現できる。例えば振動子10として、SAW(Surface Acoustic Wave)共振子や、シリコン基板を用いて形成されたシリコン製振動子としてのMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)振動子等を採用してもよい。
回路装置20は、例えば半導体プロセスにより製造されるIC(Integrated Circuit)であり、半導体基板上に回路素子が形成された半導体チップである。図23では回路装置20は、発振回路21と出力回路23とデジタル出力温度センサー80を含む。
発振回路21は振動子10を発振させる回路である。発振回路21は、例えば振動子接続用の第1端子、第2端子を介して振動子10に電気的に接続され、振動子10を発振させることで発振信号OSCを生成する。第1端子、第2端子は例えば回路装置20のパッドである。例えば発振回路21は、振動子接続用の第1端子と第2端子との間に設けられた発振用の駆動回路と、キャパシターや抵抗などの受動素子により実現できる。駆動回路は、例えばCMOSのインバーター回路やバイポーラートランジスターにより実現できる。駆動回路は、発振回路21のコア回路であり、駆動回路が、振動子10を電圧駆動又は電流駆動することで、振動子10を発振させる。発振回路21としては、例えばインバーター型、ピアース型、コルピッツ型、又はハートレー型などの種々のタイプの発振回路を用いることができる。なお本実施形態における接続は電気的な接続である。電気的な接続は、電気信号が伝達可能に接続されていることであり、電気信号による情報の伝達が可能となる接続である。電気的な接続は受動素子等を介した接続であってもよい。
出力回路23は、発振信号OSCに基づくクロック信号CKを出力する。例えば出力回路23は、発振信号OSCをバッファリングしてクロック信号CKとして外部に出力する。例えば出力回路23は、シングルエンドのCMOSの信号形式でクロック信号CKを出力する。なお出力回路23が、CMOS以外の信号形式でクロック信号CKを出力するようにしてもよい。例えば出力回路23は、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)、PECL(Positive Emitter Coupled Logic)、HCSL(High Speed Current Steering Logic)、又は差動のCMOS(Complementary MOS)等の信号形式で、差動のクロック信号を外部に出力してもよい。
デジタル出力温度センサー80は、例えば振動子10の周囲温度を検出して、ADC結果データDQを温度検出データとして出力する。例えばデジタル出力温度センサー80は、周囲の温度を検出することで、振動子10の周囲温度を検出して、ADC結果データDQを温度検出データとして外部に出力する。このようにすれば振動子10の周囲温度を検出して、温度検出データとして出力できる回路装置20を実現できるようになる。なお、この場合に、例えば外部のシステムによりPLLのループ等を組んで、温度検出データに基づいて振動子10の発振周波数の温度補償を行って、クロック信号CKの温度補償を実現するようにしてもよい。
図24に回路装置20の第2構成例を示す。図24では回路装置20は、デジタル出力温度センサー80のADC結果データDQである温度検出データに基づいて周波数制御データDFCを出力する処理回路24を含む。そして発振回路21は、周波数制御データDFCに対応した発振周波数の発振信号OSCを出力する。このようにすれば、デジタル出力温度センサー80の温度検出データにより振動子10の周囲温度を検出して、発振回路21の発振周波数を制御できるようになる。例えば振動子10の発振周波数の温度補償を行って、クロック信号CKの温度補償等を実現することが可能になる。
具体的には処理回路24は温度補償回路25を含む。温度補償回路25は、デジタル出力温度センサー80からのADC結果データDQである温度検出データに基づいて、温度補償処理を行って、周波数制御データDFCを出力する。温度補償処理は、例えば温度変動による発振周波数の変動を抑制して補償する処理である。即ち温度補償回路25は、温度変動があった場合にも周波数が一定になるように、発振回路21の発振周波数の温度補償処理を行う。例えば温度補償回路25は、温度検出データと周波数制御データDFCの対応を表すルックアップテーブルを用いて、温度検出データから周波数制御データDFCを求める温度補償処理を行う。具体的には発振回路21は可変容量回路22を含み、処理回路24からの周波数制御データDFCに基づいて、可変容量回路22の容量値が調整されることで、発振回路21の発振周波数の温度補償処理が実現される。ここで可変容量回路22は、例えば複数のキャパシターを有するキャパシターアレイと、複数のスイッチを有するスイッチアレイを含み、複数のキャパシターの各キャパシターと複数のスイッチの各スイッチは、振動子接続用の第1端子又は第2端子のノードと例えばグランドノードとの間に直列接続されている。またキャパシターアレイの複数のキャパシターは、その容量値がバイナリーに重み付けされている。そしてスイッチアレイの複数のスイッチは、処理回路24からの周波数制御データDFCに基づいてオン、オフされる。これにより可変容量回路22の容量値が制御されて、発振回路21の発振周波数が調整されて、温度補償処理が実現される。
図25に本実施形態の発振器4の構造例を示す。本実施形態の発振器4は、回路装置20と振動子10を含む。具体的には発振器4は、振動子10と、回路装置20と、振動子10及び回路装置20を収容するパッケージ15を有する。パッケージ15は、例えばセラミック等により形成され、その内側に収容空間を有しており、この収容空間に振動子10及び回路装置20が収容されている。収容空間は気密封止されており、望ましくは真空に近い状態である減圧状態になっている。パッケージ15により、振動子10及び回路装置20を衝撃、埃、熱、湿気等から好適に保護することができる。
パッケージ15はベース16とリッド17を有する。具体的にはパッケージ15は、振動子10及び回路装置20を支持するベース16と、ベース16との間に収容空間を形成するようにベース16の上面に接合されたリッド17とにより構成されている。そして振動子10は、ベース16の内側に設けられた段差部に端子電極を介して支持されている。また回路装置20は、ベース16の内側底面に配置されている。具体的には回路装置20は、能動面がベース16の内側底面に向くように配置されている。能動面は回路装置20の回路素子が形成される面である。また回路装置20の端子であるパッドにバンプBMPが形成されている。そして回路装置20は、導電性のバンプBMPを介してベース16の内側底面に支持される。導電性のバンプBMPは例えば金属バンプであり、このバンプBMPやパッケージ15の内部配線や端子電極などを介して、振動子10と回路装置20が電気的に接続される。また回路装置20は、バンプBMPやパッケージ15の内部配線を介して、発振器4の外部接続端子である外部端子18、19に電気的に接続される。外部端子18、19は、パッケージ15の外側底面に形成されている。外部端子18、19は、外部配線を介して外部デバイスに接続される。外部配線は、例えば外部デバイスが実装される回路基板に形成される配線などである。これにより外部デバイスに対してクロック信号などを出力できるようになる。
なお図25では、回路装置20の能動面が下方に向くように回路装置20がフリップ実装されているが、本実施形態はこのような実装には限定されない。例えば回路装置20の能動面が上方に向くように回路装置20を実装してもよい。即ち能動面が振動子10に対向するように回路装置20を実装する。或いは、発振器4は、ウェハレベルパッケージ(WLP)の発振器であってもよい。この場合には発振器4は、半導体基板と、半導体基板の第1面と第2面との間を貫通する貫通電極とを有するベースと、半導体基板の第1面に対して、金属バンプ等の導電性の接合部材を介して固定される振動子10と、半導体基板の第2面側に再配置配線層等の絶縁層を介して設けられる外部端子を含む。そして半導体基板の第1面又は第2面に、回路装置20となる集積回路が形成される。この場合には、振動子10及び集積回路が配置された複数のベースが形成された第1半導体ウェハーと、複数のリッドが形成された第2半導体ウェハーとを貼りつけることで、複数のベースと複数のリッドを接合し、その後にダイシングソー等によって発振器4の個片化を行う。このようにすれば、ウェハレベルパッケージの発振器4の実現が可能になり、高スループット、且つ、低コストでの発振器4の製造が可能になる。
以上に説明したように、本実施形態のデジタル出力温度センサーは、温度を検出して、温度検出電流を出力する温度センサー回路を含む。また温度検出電流のミラー電流をソース電流として第1出力ノードに流し、基準電流のミラー電流をシンク電流として第1出力ノードから引き込むことで、第1出力ノードから第1差分電流を出力し、基準電流のミラー電流をソース電流として第2出力ノードに流し、温度検出電流のミラー電流をシンク電流として第2出力ノードから引き込むことで、第2出力ノードから第2差分電流を出力するカレントミラー回路を含む。またデジタル出力温度センサーは、カレントミラー回路のトランジスターに対するチョッピング動作を行うチョッピング回路と、差動の第1差分電流及び第2差分電流のA/D変換を行うA/D変換回路を含む。そしてチョッピング回路は、第1状態において温度検出電流のミラー電流が流れるカレントミラー回路のトランジスターに、第2状態では基準電流のミラー電流を流し、第1状態において基準電流のミラー電流が流れるカレントミラー回路のトランジスターに、第2状態では温度検出電流のミラー電流を流すチョッピング動作を行う。
本実施形態では、温度センサー回路からの温度検出電流と、基準電流とに基づいて、カレントミラー回路が、第1出力ノード、第2出力ノードから第1差分電流、第2差分電流を出力し、A/D変換回路が、第1差分電流、第2差分電流のA/D変換を行う。そしてチョッピング回路は、第1状態において温度検出電流のミラー電流が流れるトランジスターに、第2状態では基準電流のミラー電流を流し、第1状態において基準電流のミラー電流が流れるトランジスターに、第2状態では温度検出電流のミラー電流を流すチョッピング動作を行う。このようにすれば、例えばカレントミラー回路のチョッピング対象となるトランジスターは、例えば第1状態では温度検出電流のミラー電流が流れ、第2状態では基準電流のミラー電流が流れるようになり、カレントミラー回路のチョッピング対象となる他のトランジスターは、例えば第1状態では基準電流のミラー電流が流れ、第2状態では温度検出電流のミラー電流が流れるようになる。従って、例えばチョッピング動作の周波数で第1状態と第2状態等を切り替えることで、チョッピングの変調等が行われるようになり、低ノイズ化を実現できるようになる。
また本実施形態では、カレントミラー回路は、第1トランジスター、第2トランジスター、第3トランジスター及び第4トランジスターを含んでもよい。そしてチョッピング回路は、第1トランジスターが温度検出電流のミラー電流をソース電流として流し、第2トランジスターが基準電流のミラー電流をソース電流として流すソース側第1状態と、第1トランジスターが基準電流のミラー電流をソース電流として流し、第2トランジスターが温度検出電流のミラー電流をソース電流として流すソース側第2状態とを切り替えるソース側チョッピング動作を行ってもよい。またカレントミラー回路は、第3トランジスターが基準電流のミラー電流をシンク電流として引き込み、第4トランジスターが温度検出電流のミラー電流をシンク電流として引き込むシンク側第1状態と、第3トランジスターが温度検出電流のミラー電流をシンク電流として引き込み、第4トランジスターが基準電流のミラー電流をシンク電流として引き込むシンク側第2状態とを切り替えるシンク側チョッピング動作を行ってもよい。
このようにすれば、ソース側第1状態とソース側第2状態を切り替えるソース側チョッピング動作により、温度検出電流を流すトランジスターと基準電流を流すトランジスターが交互に切り替わるようになる。これによりソース側の第1トランジスター、第2トランジスターで発生する1/fノイズ等のノイズが、チョッピング周波数に変調されるようになり、当該ノイズが後段のA/D変換回路に伝達されるのが抑制され、高精度化なデジタル出力温度センサーを実現できるようになる。或いは、シンク側第1状態とシンク側第2状態を切り替えるシンク側チョッピング動作により、基準電流を流すトランジスターと温度検出電流を流すトランジスターが交互に切り替わるようになる。これによりシンク側の第3トランジスター、第4トランジスターで発生する1/fノイズ等のノイズが、チョッピング周波数に変調されるようになり、当該ノイズが後段のA/D変換回路に伝達されるのが抑制され、高精度なデジタル出力温度センサーを実現できるようになる。
また本実施形態では、チョッピング回路がソース側チョッピング動作及びシンク側チョッピング動作を行う場合において、ソース側チョッピング動作の周波数をfcp1とし、シンク側チョッピング動作の周波数をfcp2とし、mを2以上の整数としたとき、fcp1=m×fcp2、又はm×fcp1=fcp2であってもよい。
このようにfcp1=m×fcp2又はm×fcp1=fcp2の関係が成り立つことで、ソース電流を流すトランジスターとシンク電流を引き込むトランジスターとの様々な組み合わせで、温度検出電流と基準電流を切り替えて流すチョッピング動作を実現できるようになる。
また本実施形態では、チョッピング回路は、第1トランジスターが温度検出電流のミラー電流を第1出力ノードに流し、第2トランジスターが基準電流のミラー電流を第2出力ノードに流すソース側第1状態と、第1トランジスターが基準電流のミラー電流を第2出力ノードに流し、第2トランジスターが温度検出電流のミラー電流を第1出力ノードに流すソース側第2状態と、を切り替えるソース側チョッピング動作を行ってもよい。
このようにすれば、温度検出電流、基準電流を流すソース側のトランジスターを切り替えるチョッピングの変調と、第1出力ノード、第2出力ノードから適正な第1差分電流、第2差分電流を出力するチョッピングの復調とが行われるようになり、カレントミラー回路のトランジスターが発生する1/fノイズ等のノイズが、後段のA/D変換回路に伝達されるのが抑制されるようになる。
またチョッピング回路が、第3トランジスターが基準電流のミラー電流を第1出力ノードから引き込み第4トランジスターが温度検出電流のミラー電流を第2出力ノードから引き込むシンク側第1状態と、第3トランジスターが温度検出電流のミラー電流を第2出力ノードから引き込み第4トランジスターが基準電流のミラー電流を第1出力ノードから引き込むシンク側第2状態を切り替えるシンク側チョッピング動作を行ってもよい。
このようにすれば、温度検出電流、基準電流を引き込むシンク側のトランジスターを切り替えるチョッピングの変調と、第1出力ノード、第2出力ノードから適正な第1差分電流、第2差分電流を出力するチョッピングの復調とが行われるようになり、カレントミラー回路のトランジスターが発生する1/fノイズ等のノイズが、後段のA/D変換回路に伝達されるのが抑制されるようになる。
また本実施形態では、カレントミラー回路は、ゲートが第1トランジスターのゲートに接続されるP型の第5トランジスターと、ゲートが第2トランジスターのゲートに接続されるP型の第6トランジスターと、を含み、第1トランジスター及び第2トランジスターは、P型トランジスターであってもよい。そしてチョッピング回路は、ソース側第1状態では、温度検出電流の供給ノードに第5トランジスターのゲート及びドレインを接続し、基準電流の供給ノードに第6トランジスターのゲート及びドレインを接続し、ソース側第2状態では、基準電流の供給ノードに第5トランジスターのゲート及びドレインを接続し、温度検出電流の供給ノードに第6トランジスターのゲート及びドレインを接続してもよい。
このようにすれば、ソース側第1状態において、第1トランジスターに、温度検出電流のミラー電流を流すと共に第2トランジスターに基準電流のミラー電流を流し、ソース側第2状態において、第1トランジスターに基準電流のミラー電流を流すと共に第2トランジスターに温度検出電流のミラー電流を流すことが可能になる。
また本実施形態では、DAC入力デジタル値をD/A変換して、DAC入力デジタル値に応じた基準電流を出力するD/A変換回路と、DAC入力デジタル値を出力する制御回路と含んでもよい。そしてA/D変換回路は、差動の第1差分電流及び第2差分電流をA/D変換して、ADC出力デジタル値を出力てもよい。また制御回路は、DAC入力デジタル値として第1DAC入力デジタル値と、第1DAC入力デジタル値とは異なる第2DAC入力デジタル値とを出力してもよい。そして制御回路は、第1DAC入力デジタル値に対応して得られたADC出力デジタル値である第1ADC出力デジタル値と、第2DAC入力デジタル値に対応して得られたADC出力デジタル値である第2ADC出力デジタル値と、DAC入力デジタル値とに基づいて、温度検出電流に対応した温度検出データを求めてもよい。
本実施形態によれば、第1DAC入力デジタル値に基づくA/D変換と第2DAC入力デジタル値に基づくA/D変換が行われる。そして第1DAC入力デジタル値に基づくA/D変換結果である第1ADC出力デジタル値と、第2DAC入力デジタル値に基づくA/D変換結果である第2ADC出力デジタル値とに基づいて、最終的なADC結果データである温度検出データが求められる。このようにすれば、A/D変換回路とD/A変換回路とを用いて、A/D変換回路の分解能よりも高い精度のA/D変換を実現できるようになり、デジタル出力温度センサーの高精度化を実現できる。
また本実施形態では、チョッピング回路が、ソース側チョッピング動作及びシンク側チョッピング動作を行う場合において、A/D変換回路の変換周波数をfadとし、ソース側チョッピング動作の周波数をfcp1とし、シンク側チョッピング動作の周波数をfcp2とし、mを2以上の整数としたとき、fad=2×fcp1=2×(m×fcp2)、又はfad=2×fcp2=2×(m×fcp1)であってもよい。
このようにfad=2×fcp1又はfad=2×fcp2の関係が成り立つことで、A/D変換回路が例えば2回の変換を行う期間をチョッピング動作の期間として、カレントミラー回路のチョッピング動作を行うことが可能になる。これにより、高精度なA/D変換を実現でき、デジタル出力温度センサーの高精度化を実現できる。
また本実施形態は、上記に記載のデジタル出力温度センサーと、振動子を発振させる発振回路と、を含み、デジタル出力温度センサーは、振動子の周囲温度を検出して、ADC結果データを温度検出データとして出力する回路装置に関係する。
このようにすれば、振動子の周囲温度を検出して、温度検出データとして出力できる回路装置を実現できるようになる。
また本実施形態では、温度検出データに基づいて周波数制御データを出力する処理回路を含み、発振回路は、周波数制御データに対応した発振周波数の発振信号を生成してもよい。
このようにすれば、デジタル出力温度センサーの温度検出データにより振動子の周囲温度を検出して、発振回路の発振周波数を制御できるようになる。
また本実施形態は、上記に記載の回路装置と、振動子と、を含む発振器に関係する。
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本開示の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本開示の範囲に含まれる。またデジタル出力温度センサー、回路装置及び発振器の構成・動作等も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。