JP2022119978A - 接着性基体、接合体、多層接合体および接着方法 - Google Patents

接着性基体、接合体、多層接合体および接着方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高い接着強度を実現する、または、接着困難な素材を接着させることのできる、新規な接着システムを提供する。【解決手段】被着体に接着させて構造体を形成する用途に用いられる接着性基体。この接着性基体は、基体と、基体の表面に吸着または結合して表面に束縛された熱可塑性樹脂により構成された、厚み1~20nmの束縛ポリマー層と、を含む。ここでの熱可塑性樹脂は、ラジカル反応性基または付加反応性基からなる反応性基を有する反応性熱可塑性樹脂を含む。反応性基は、束縛ポリマー層の表面に分布して反応活性部を形成している。【選択図】図1

Description

本発明は、接着性基体、接合体、多層接合体、接着方法などの接着技術に関する。
近年、先進的運転者支援システムや自動運転等の次世代モビリティの技術開発が盛んに進められている。こうした技術開発において、接着技術は重要な基盤技術の一つとして位置付けられている。
人命に関わる次世代モビリティに適用される接着技術には、高度な信頼性が求められる。従来の接着技術よりも数段高い接着強度と耐久性を実現することが必須となる。また、従来の接着技術では十分に接着することが困難であった被着体も接着できる技術が求められる。
接着の技術分野においては、接着力を向上させるための様々な検討が行われてきた。
特許文献1には、エポキシ基を有するシランカップリング剤とアミノアルコールの反応生成物からなることを特徴とする変性シランカップリング剤が記載されている。特許文献1の記載によれば、この変性シランカップリング剤は、無機物への優れた接着促進性を有するとされている。
特許文献2には、基板層、金属酸化物表面を有する金属層、特定の一般式で表されるベンゾフェノン骨格とシランカップリング基を有する化合物層および熱可塑性高分子層とをこの順で有するウェットエッチング用基板が記載されている。特許文献2の記載によれば、金属酸化物表面を有する金属層と熱可塑性高分子層間を強固に接着することができるとされている。
特許文献3には、金属の表面にトリアジンチオール化合物を被覆した後、その金属の表面に硬化剤を混合したエポキシ接着剤を塗布し、その金属の表面に上記エポキシ接着剤を介して被着材を接着する金属と被着材との接着方法において、上記エポキシ接着剤を塗布する前に、上記トリアジンチオール化合物を被覆した金属の表面に、1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を含むエポキシ化合物を塗布し、次に、そのエポキシ化合物を加熱処理することを特徴とする金属と被着材との接着方法が記載されている。特許文献3の記載によれば、この接着方法により、金属に対してエポキシ接着剤を強固に接着できるとされている。
特許文献4には、有機チタン化合物および溶媒を含むプライマー組成物が記載されている。特許文献4の記載によれば、このプライマー組成物を用いることで、シリコーンゴムを各種被着体に良好に接着させることができるとされている。
特開2001-192619号公報 特開2011-111636号公報 特開2006-273955号公報 特許第6191571号公報
しかしながら、特許文献1~4に記載された従来の接着技術では、次世代モビリティに求められるような高い接着強度を実現することは困難である。また、これらの従来の接着技術は、接着困難な素材を接着させるという技術課題に対して充分な解決を提供するものではなかった。
以上を踏まえ、本発明は、従来にない高い接着強度を実現する、または、接着困難な素材を接着させることのできる、新規な接着システムを提供することを目的とする。
接着の技術分野においては、破壊モードとして、接着剤と被着体の接合界面での破壊を「界面破壊」、接着剤の内部での破壊を「凝集破壊」と区別し、「凝集破壊」の破壊モードがより強い接着を示すと考えられている。接着力を高めるためには、被着体と接着剤の界面の結合を強めて「凝集破壊」の破壊モードが生じるようにすることが重要であると考えられている。
これに対して、本発明者は、接着力を高めるためにキーファクターは、被着体と接着剤の界面以外の場所にあると考えた。本発明者は、これまで、接着剤と被着体の接合体を破壊した後の被着体表面の分析や、接着剤硬化体の内部のモルホロジ解析等について多くの研究を行ってきた。この結果、以下の(i)および(ii)に示す新規な知見を得た。
(i)従来、「界面破壊」とされている破壊モードの多くは、接着剤と被着体の接合界面での破壊ではなく、その接合界面から接着剤の内部方向に離れた箇所での破壊である。破壊後の被着体表面には接着剤の構成材料が分子レベルの厚み(ナノメートルオーダー)で残存する。
(ii)接着剤の内部には、接合界面から接着剤の内部方向に、典型的には1~20nm離れた箇所、具体的には1~10nm離れた箇所に、接着力の弱い層状の領域が生成される(以下、本明細書では、この層状の領域を「易破壊層」とも記載する)。接着剤と被着体の接合体が界面破壊モードで破壊するとき、接着剤と被着体の接合界面ではなく、「易破壊層」が破壊していると考えられる。
上記のような易破壊層が生成されることや、易破壊層で破壊が起こることは、従来、知られていなかった。
本発明者によって見いだされた上記知見を踏まえ、本発明者は、易破壊層の強度を高めることが、接着力を高めるためのキーファクターであるとの結論に至った。
本発明は、上記易破壊層の強度を高めることにより、接着力を高めるものである。
本発明によれば、
被着体に接着させて構造体を形成する用途に用いられる接着性基体であって、
基体と、
前記基体の表面に吸着または結合して前記表面に束縛された熱可塑性樹脂により構成された、厚み1~20nmの束縛ポリマー層と、
を含み、
前記熱可塑性樹脂は、ラジカル反応性基または付加反応性基からなる反応性基を有する反応性熱可塑性樹脂を含み、
前記反応性基は、前記束縛ポリマー層の表面に分布して反応活性部を形成している、接着性基体
が提供される。
この接着性基体は、基体の表面に強固に束縛された束縛ポリマー層を備えるとともに、この束縛ポリマー層の表面に分布して反応活性部が形成されている。このため、被着体に接着させて構造体を形成すると、得られる構造体は、基体と、被着体とが厚み1~20nmの束縛ポリマー層を介して接合する構造を有するものとなる。
前述したとおり、接着剤の内部には、接合界面から接着剤の内部方向に1~20nm離れた箇所に、接着力の弱い層状の領域(易破壊層)が生成される。上記構造体においては、この易破壊層が反応活性部を介した結合により強固に補強され、従来技術を超える高い接着力が発現する。
また、本発明によれば、
接着性基体と被着体とが接着してなる接合体であって、
前記接着性基体が上記接着性基体であり、
前記接着性基体の前記束縛ポリマー層の表面と、前記被着体の一表面とが接着しており、
前記被着体は、前記接着性基体における前記反応性基に対して反応性を有する官能基を含有する化合物を前記一表面に備え、
前記反応性基と前記官能基が反応して共有結合を形成している、接合体、
が提供される。
また、本発明によれば、
第1の接着性基体と、第2の接着性基体と、これらの接着性基体の間に介在する被着体とが積層した多層接合体であって、
前記第1の接着性基体および前記第2の接着性基体は、上記接着性基体であり、
前記第1の接着性基体の前記束縛ポリマー層の表面と、前記被着体の一表面と、が接着しており、
前記被着体は、前記第1の接着性基体における前記反応性基に対して反応性を有する官能基を含有する第1化合物を前記一表面に備え、
前記第1の接着性基体の反応性基と前記第1化合物の官能基とが反応して共有結合を形成しており、
前記第2の接着性基体の前記束縛ポリマー層の表面と、前記被着体の他の表面とが接着しており、
前記被着体は、前記第2の接着性基体における前記反応性基に対して反応性を有する官能基を含有する第2化合物を前記他の表面に備え、
前記第2の接着性基体の反応性基と前記第2化合物の官能基とが反応して共有結合を形成している、多層接合体、
が提供される。
また、本発明によれば、
上記接着性基体における前記束縛ポリマー層の露出面と、被着体とを当接させた状態で、加熱またはエネルギー線照射により前記反応性基と前記被着体表面とを反応させて前記接着性基体と前記被着体とを接着する、接着方法、
が提供される。
上記接合体および多層接合体においては、易破壊層が反応活性部を介した結合により強固に補強され、従来技術を超える高い接着力が発現する。
本発明により、従来とは異なる接着システムが提供される。また、本発明により、従来満足に接着できなかった被着体を接着させることができる。
接着機構を説明するための図である。 束縛ポリマー層の形態について説明するための図である。 第1実施形態について説明するための図である。 第2実施形態について説明するための図である。 第2実施形態について説明するための図である。 第3実施形態について説明するための図である。 第4実施形態について説明するための図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図面はあくまで説明用のものであり、必ずしも現実と対応しないことに留意されたい。
本明細書中、数値範囲の説明における「X~Y」との表記は、特に断らない限り、X以上Y以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換か無置換かを記していない表記は、置換基を有しないものと置換基を有するものの両方を包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書における「(メタ)アクリル」との表記は、アクリルとメタクリルの両方を包含する概念を表す。「(メタ)アクリレート」等の類似の表記についても同様である。
[接着性基体]
はじめに、本発明の基本構成である接着性基体の実施形態について説明する。
接着性基体は、被着体に接着させて構造体を形成する用途に用いられる。接着性基体は、基体と、束縛ポリマー層とにより構成されている。束縛ポリマー層の、基体とは反対側の面は、典型的には露出している。
本実施形態の接着性基体は、前述した本発明者の提唱する新規な接着の考え方に基づく。
硬化した接着剤の内部には、被着体との接合界面から接着剤の内部方向に1~20nm離れた箇所、典型的には1~10nm離れた箇所に、接着力の弱い易破壊層が生成される。この易破壊層の強度を高めることが、接着力を高めるためのキーファクターとなる。
本実施形態では、上記易破壊層の強度を高めることにより、接着力を高める。本実施形態においては、基体表面に設けられた束縛ポリマー層に、被着体と反応する官能基を導入することで、束縛ポリマー層-被着体間の界面の強度を向上させることとした。具体的な設計としては、基体と束縛ポリマー層とにより構成されている接着性基体において、束縛ポリマー層が、ラジカル反応性基または付加反応性基からなる反応性基を有する反応性熱可塑性樹脂を含み、かつ、反応性基が、束縛ポリマー層の表面に分布して反応活性部を形成するようにした。この反応性基が被着体と反応して結合が形成されることにより、束縛ポリマー層-被着体間の界面の強度が向上し、接着強度が高まる。
上記内容について、図1を参照しつつ説明を加える。
図1は、本実施形態において、反応性基がラジカル反応性基のベンゾフェノン基であり、被着体がC-H結合を有するポリマーを含有する場合の接着性発現メカニズムを説明するための模式図である。
図1において、束縛ポリマー層は、基体の表面に吸着または結合して、基体に束縛されている。つまり、基体-束縛ポリマー層の間の界面の強度は非常に大きい。
束縛ポリマー層の上に被着体を接触させて光を照射すると、ベンゾフェノン基からラジカルが発生する。そのラジカルが被着体の水素原子を引き抜くなどすることで、束縛ポリマー層-被着体の間に共有結合が形成される。これにより、束縛ポリマー層-被着体の間の界面の強度も大きくなる。
すなわち、基体に強く束縛された束縛ポリマー層が、被着体と結合形成することにより、基体と被着体とが強く接着される。
上記のような「束縛ポリマー層と被着体との間の結合形成」による接着メカニズムにより、本実施形態の接着性基体は、従来は満足な接着強度が得られなかった被着体、例えばポリプロピレンの接着にも好ましく用いられる。
本実施形態の接着性基体は、被着体との強い接着力により、例えば、電子装置の構成部品の接着に好ましく適用される。具体的には、半導体チップ、素子搭載基板/インターポーザ基板、マザーボード、放熱部材、リードフレームなどの製造の際の部材同士の接着に、本実施形態の接着性基体を好ましく適用することができる。
また、本実施形態の接着性基体は、樹脂と金属の接合など、異種素材の部材間の接着にも好ましく適用されうる。本実施形態の接着性基体は、例えば自動車部品などの製造に好ましく適用することができる。
本実施形態の接着性基体に関する説明を続ける。
(基体)
基体の形状は特に限定されない。基体は、粒子基体または非粒子基体であることができる。
このうち非粒子基体に適用した場合、本発明の効果がより顕著に得られる。非粒子基体の場合、易破壊層による接着力の向上効果がより顕著となるからである。基体の表面の大きさについては特に制限がないが、1mm×1mm以上の領域を有する面に適用した場合、本発明の効果がより顕著に得られる。
粒子基体としては、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化チタン、窒化アルミ、窒化ホウ素等の無機粒子;金属酸化物粒子;磁性粉などが挙げられる。
非粒子基体の一例としては、板状またはシート状の部材、平面または曲面を有する立体形状の部品等が挙げられる。
非粒子基体の別の例としては、繊維基体を挙げることができる。具体的には、樹脂成形材料の分野で繊維状フィラーとして知られている有機または無機繊維を挙げることができる。より具体的には、アラミド繊維、ガラス繊維、全芳香族ポリエステル、ウォラストナイトなどを挙げることができる。
基体の素材は特に限定されない。基体は、有機ポリマー、セラミックス、半導体または金属により形成されたものであることができる。基体の素材としてより具体的には、単結晶シリコン、ガラス、セラミックス、窒化ケイ素、二酸化ケイ素(石英、水晶)などの無機素材;銅、アルミニウム、鉄、各種合金などの金属素材;エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロンなどの熱可塑性樹脂;などを挙げることができる。
ちなみに、基体は、カーボンブラック粒子ではないことが好ましい。また、基体は、カーボンナノチューブ等の炭素材を含まないことが好ましい。
束縛ポリマー層の吸着/結合性を高める目的や、その他の目的のために、束縛ポリマー層が形成される前の基体の表面を洗浄するなどにより、基体表面の異物/汚染を除去しておくことが好ましい。また、束縛ポリマー層の吸着/結合性を高める目的や、その他の目的のために、束縛ポリマー層が形成される前の基体の表面に任意の表面処理を施してもよい。
洗浄または表面処理の例としては、硫酸と過酸化水素の混合物による処理(ピラニア処理)を挙げることができる。
(束縛ポリマー層)
束縛ポリマー層は、束縛ポリマーにより構成された層である。束縛ポリマーとは、基体の表面に吸着または結合して、基体の表面に束縛された状態で存在するポリマーをいう。束縛ポリマー層は、通常、基体の表面を覆う形態で形成された層としての形態を有する。本実施形態の接着性基体において、束縛ポリマー層の基体とは反対側の面は、通常、露出している。別の言い方として、本実施形態の接着性基体(被着体と接着させる前のもの)において、束縛ポリマー層の基体とは反対側の面には、通常、他の層は存在しない。ただし、表面保護などを目的に、易剥離/除去性の保護層、保護フィルムなどが設けられていてもよい。
ここで、「吸着」とは、ファンデルワールス力等による物理吸着をいい、基体の表面を構成する材料に対して束縛ポリマーが物理的に吸着することをいう。また、「結合」とは、束縛ポリマーが基体の表面を構成する材料に対して束縛ポリマーが化学的に結合することをいう。結合の種類については、特に制限はなく、共有結合、水素結合、イオン結合のいずれであってもよい。
束縛ポリマーが基体の表面に吸着または結合する態様としては、例えば、束縛ポリマーに含まれる一または二以上の官能基が、基体自体の表面を構成する材料または基体表面に付着した材料に対して吸着または結合する態様が挙げられる。束縛ポリマー層は、基体に対して強固に接着する分子構造を有していることが好ましい。そのような分子構造として、基体に対して吸着または共有結合する結合基を有する分子構造が挙げられる。分子内に結合基を複数有する、マルチサイト型の熱可塑性樹脂とすればより好適である。
本実施形態においては、束縛ポリマーが基体の表面に束縛されている程度を、クロロホルム溶解指数Rで定量化している。クロロホルム溶解指数Rの詳細については後述する。
束縛ポリマー層は、基体に対して強固に接着していない部分があってもよいが、束縛ポリマー層全体が基体に対して強固に接着していることが好ましい。束縛ポリマー層を構成する熱可塑性樹脂が複数種類である場合、それらのいずれもが基体に対して強固に接着していることが好ましい。
束縛ポリマー層の厚みは、1nm以上、好ましくは3nm以上、より好ましくは5nm以上である。また、束縛ポリマー層の厚みは、20nm以下、好ましくは15nm以下、より好ましくは12nm以下である。このような厚みであることにより、基体-束縛ポリマー層の間の十分な接着力を得やすく、また、束縛ポリマー層の上に他の層が接着した際、束縛ポリマー層-他の層との間で充分な界面接着がなされやすい。
束縛ポリマー層は、少なくともその一部領域において上記厚みを有していればよい。例えば、1mm×1mmかそれ以上の領域において束縛ポリマー層が上記厚みを有していれば、少なくともその領域における束縛ポリマー層は被着体と良好に接合することができ、結果、高い接着強度が実現される。
束縛ポリマー層の厚みは、例えば、X線反射率測定および偏光解析測定に基づき求めることができる。
(熱可塑性樹脂/反応性熱可塑性樹脂)
束縛ポリマー層は、熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂とは、適当な温度に加熱すると軟化して可塑性を持ち、冷却すると固化する樹脂の総称である。熱可塑性樹脂は、通常、ガラス転移温度または融点に達すると軟化する。
熱可塑性樹脂は、ラジカル反応性基または付加反応性基からなる反応性基を有する反応性熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂は反応性熱可塑性樹脂以外の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。
束縛ポリマー層が熱可塑性樹脂を含むことにより、例えば、接着の際の加熱により束縛ポリマーが適度に運動することができ、束縛ポリマー層-被着体間の反応が促進される。また、基体と被着体とが接合した後の構造体においては、束縛ポリマー層が熱可塑性樹脂を含んで構成されているため、束縛ポリマー層中の各熱可塑性樹脂の高分子鎖が熱力学的に安定なコンフォーメーションをとることができ、この結果、束縛ポリマー層中に蓄積される内部応力が低減される。
反応性熱可塑性樹脂は、基体の表面に吸着または結合して基体表面に束縛されており、その分子構造中に、ラジカル反応性基または付加反応性基からなる反応性基を有する。反応性基は、接着性基体と接着させる対象の被着体の表面を構成する材料に対して反応性を有する官能基である。この反応性基を介して被着体の表面と反応し共有結合を形成することで強固な接着力が発現する。
基体の表面を修飾するとともに反応性基を有する化合物ではあるが、本実施形態の反応性熱可塑性樹脂とは異なるものとして、背景技術の項で述べたシランカップリング剤がある。シランカップリング剤は、分子内に無機材料と結合するSi-O-CH基やSi-O-C基を有するとともに有機材料と結合するアミノ基、エポキシ基等の官能基を有する。シランカップリング剤は、熱可塑性樹脂ではない点で本実施形態の反応性熱可塑性樹脂とは異なる。本実施形態における反応性熱可塑性樹脂は、熱可塑性という性質により、基体と被着体との間に介在して両者の応力緩和層として機能するため、高度な接着力をもたらす。
また、シランカップリング剤は、基体表面との結合基としてSi-O-CH基やSi-O-C基を有する。これらの基のメチル基やエチル基が脱離してSiOHが生じ、これが基体表面に対して吸着または反応し、Si-O-[基体表面]の形態で結合する。しかし、この形態の結合は、結合界面に水分が侵入すると加水分解を起こしやすく、接着力が低下するという課題を有していた。
本実施形態の反応性熱可塑性樹脂は、末端に-M-O-基(Mは、SiまたはTi)を有する分子構造のものを含まないことが好ましい。
反応性熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは1万~100万、より好ましくは3万~50万である。反応性熱可塑性樹脂の分子量分布Mw/Mnは、好ましくは1~5、より好ましくは1~3である。
束縛ポリマー層を構成する樹脂の主成分は熱可塑性樹脂であることが好ましい。束縛ポリマー層を構成する樹脂のうち熱可塑性樹脂が占める割合は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、最も好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。このようにすれば、束縛ポリマー層が実質的に熱可塑性樹脂により構成されることとなるため、基体-束縛ポリマー層の異種材料界面の接合によって生じる応力を効果的に緩和できる。
束縛ポリマー層は、反応性熱可塑性樹脂と反応性熱可塑性樹脂以外の熱可塑性樹脂とを含んで構成されていてもよい。このようにすれば、反応性熱可塑性樹脂が被着体と結合する一方、反応性熱可塑性樹脂以外の熱可塑性樹脂が占める部分によって基体-束縛ポリマー層の異種材料界面の接合によって生じる応力をさらに効果的に緩和することができる。
熱可塑性樹脂の種類は特に限定されない。基体の表面に吸着または結合して束縛ポリマー層を形成可能である限り任意の熱可塑性樹脂を用いることができる。
熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、スチレンアクリロニトリルコポリマー、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリヒドロキシスチレン、ノボラック型フェノール樹脂などを挙げることができる。
熱可塑性樹脂の一部または全部は、ラジカル反応性基または付加反応性基からなる反応性基を有する反応性熱可塑性樹脂である。反応性熱可塑性樹脂が有することができるラジカル反応性基および付加反応性基については、追って詳細に説明する。
熱可塑性樹脂は、反応性熱可塑性樹脂と、反応性熱可塑性樹脂以外の束縛ポリマーとを含むことができる。別の言い方として、束縛ポリマー層は、反応性熱可塑性樹脂と、反応性熱可塑性樹脂以外の束縛ポリマーとにより構成されることができる。
良好な混ざりやすさなどの観点から、束縛ポリマーは、反応性熱可塑性樹脂と共通の主鎖骨格を有する熱可塑性樹脂であることが好ましい。束縛ポリマーが反応性熱可塑性樹脂と共通の主鎖骨格を有するとは、束縛ポリマーの主鎖を構成する構造単位のうちモル比が最も大きな構造単位の骨格と、反応性熱可塑性樹脂の主鎖を構成する構造単位のうちモル比が最も大きな構造単位の骨格と、が共通することを意味する。
(反応性熱可塑性樹脂が有する官能基)
反応性熱可塑性樹脂は、基体と相互作用する吸着性基を有することが好ましい。吸着性基の存在により、反応性熱可塑性樹脂が基体に束縛されやすくなる。
具体的には、反応性熱可塑性樹脂は、-COOR(Rはメチル基またはエチル基)で表される基、エステル結合、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、エポキシ基、イソシアネート基(-NCO)、酸無水物基(具体的には、無水マレイン酸骨格のような環状酸無水物骨格を有する基)、マレイミド基(5員環のマレイミド骨格を含む基)およびベンゼン環含有基(フェニル基、フェニレン基など)からなる群から選ばれる一または二以上の吸着性基を、分子内に少なくとも二以上有することが好ましい。なお、吸着性基は、後述する反応性基(特に、付加反応性基)を兼ねることがある。
これら吸着性基は、反応性熱可塑性樹脂のいずれの位置に存在してもよい。基体との相互作用を一層高める観点では、これら吸着性基は、反応性熱可塑性樹脂の側鎖および/または末端に存在することが好ましい。
吸着性基は、基体に物理吸着するものでも、化学吸着するものでもよい。吸着性基と基体との間に共有結合が形成されてもよい。
反応性熱可塑性樹脂の好ましい形態として、基体と吸着ないし結合する官能基を複数有し、これらの複数の官能基を介して反応性熱可塑性樹脂が基体に吸着ないし結合する、マルチサイト型反応性熱可塑性樹脂が挙げられる。このような反応性熱可塑性樹脂を用いることで、基体表面に対して反応性熱可塑性樹脂が強力に付着し、優れた接着性、耐水・耐湿性、ヒートサイクル性などを得やすい。
上記のような観点で、反応性熱可塑性樹脂としては、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリヒドロキシスチレン、ノボラック型フェノール樹脂などが好ましい。念のため述べておくと、これら反応性熱可塑性樹脂は、共重合体であってもよい。一例として、ポリ(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル酸エステルモノマーの単独重合体であってもよいし、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、それ以外のモノマーとの共重合体であってもよい。また一例として、ポリ酢酸ビニルは、酢酸ビニル構造単位のみを含んでもよいし、酢酸ビニル構造単位と、塩化ビニル等の他の構造単位を含んでもよい。
また、反応性熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルも好ましい。ポリエステルの主鎖中のエステル結合は、基体と吸着ないし結合する官能基として働くと考えられる。
これら反応性熱可塑性樹脂の主鎖、側鎖、末端の少なくともいずれかに反応性基が導入される。
また、反応性熱可塑性樹脂として、公知または市販の熱可塑性接着剤(ホットメルト型接着剤)を利用することも考えられる。すなわち、公知または市販の熱可塑性接着剤の中から、ラジカル反応性基または付加反応性基からなる反応性基を有する反応性熱可塑性樹脂を含み、かつ、基体の表面に吸着または結合してクロロホルム溶解指数Rが3%以下となりうるものを適宜選択して用いることもできる。
熱可塑性接着剤としては、酢酸ビニル樹脂系、ポリビニルアルコール系、エチレン酢酸ビニル樹脂系、塩化ビニル樹脂系、ポリオレフィン系、アクリル樹脂系、ポリエステル系、ポリアミド系、セルロース系、ポリビニルピロリドン系、ポリスチレン系、シアノアクリレート系、ポリビニルアセタール系などが知られている。
(クロロホルム溶解指数R)
本実施形態においては、ポリマーが基体に束縛されている程度を、以下手順で求められるクロロホルム溶解指数Rによって定量化することができる。クロロホルム溶解指数Rは、好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下である。
以下手順は、室温(25℃)で行うことができる。
<手順>
・工程1
束縛ポリマー層の層厚を測定して得られた測定値をDとする。
・工程2
以下の手順によりクロロホルム処理を行う。
(i)容器内にクロロホルムを収容し、クロロホルムの温度を25℃に維持する。
(ii)束縛ポリマー層の表面を上記クロロホルムに接液させた状態で30分間保持する。
(iii)上記(ii)の状態から前記束縛ポリマー層の表面をクロロホルムから離隔させ、次いでその表面をクロロホルムで洗い流した後、その表面に残ったクロロホルムをウエスで吸い取り、そして真空乾燥させる。
・工程3
工程2を実施した後に残る束縛ポリマー層の膜厚を測定して得られた測定値をD'とし、{(D-D')/D}×100をクロロホルム溶解指数R(%)とする。
工程1および3において、DおよびD'の値は、X線反射率測定および偏光解析測定に基づき求めることができる。
工程2の(i)において、容器の種類やクロロホルムの量は、基体の大きさや形状に応じて適宜選択すればよい。すなわち、基体が入る十分な大きさの容器に、基体に束縛されていないポリマーが溶解するのに十分な量のクロロホルムが収容されればよい。後掲の実施例においては、基体の大きさなどを考慮し、250mLのガラスビーカーにクロロホルムを50mL入れている。
工程2の(ii)においては、少なくとも束縛ポリマー層がクロロホルムに接した状態にあればよい。このとき、束縛ポリマー層がクロロホルムに接液している限り、攪拌は必要ではない。
工程2の(iii)においては、不織布ウエス、例えば旭化成社のベンコットクリーンワイプを用いて、表面に残ったクロロホルムを吸い取る。このとき、できるだけ束縛ポリマー層に圧力がかからないようにする。
工程2の(iii)における真空乾燥の条件は、クロロホルムが十分に除去される限り特に限定されない。
束縛ポリマー層は、例えば後述のように、反応性熱可塑性樹脂と、反応性熱可塑性樹脂以外の束縛ポリマーとにより構成されることができる。この場合、束縛ポリマー層中の、反応性熱可塑性樹脂以外の束縛ポリマーにより設けられる層(S鎖、例えば後掲の実施例1のPMMA吸着層)のクロロホルム溶解指数Rは、接着力の観点から好ましくは3%以下であるが、3%を超えてもよい。「束縛ポリマー層のクロロホルム溶解指数Rの値は3%以下である」とは、複数種のポリマーで構成されることがある束縛ポリマー層「全体として」のクロロホルム溶解指数Rが3%以下であることを意味する。
(反応性基および反応活性部)
反応性熱可塑性樹脂が含む反応性基の少なくとも一部は、束縛ポリマー層の表面に位置し、反応活性部を形成することが好ましい。束縛ポリマー層の表面に反応性基が位置することで、束縛ポリマー層と、その上方に位置する他の層との間の接着性が一層向上する。
反応活性部とは、束縛ポリマー層の上部に位置する被着体との反応性を有する部位をいう。反応活性部は、例えば加熱や光照射により被着体と反応しうる。
束縛ポリマー層の表面に反応性基を位置させる方法としては、例えば、まず、反応性熱可塑性樹脂ではない熱可塑性樹脂による束縛ポリマー層を形成し、その後、その束縛ポリマー層の上に、反応性熱可塑性樹脂による束縛ポリマー層を形成する方法がある。
(ラジカル反応性基)
反応性熱可塑性樹脂が有する反応性基は、ラジカル反応性基、すなわち、熱および/または光の作用によりラジカルが生成されて被着体と反応しうる基であることができる。発生したラジカルが被着体中の化学構造(例えばC-H結合)と反応することで、束縛ポリマー層と被着体との間に共有結合が形成される。
反応性基は、反応性熱可塑性樹脂の主鎖、側鎖、末端のいずれに存在してもよい。
好ましいラジカル反応性基として、ベンゾフェノン骨格、ベンゾイル骨格、アントラキノン骨格、チオキサントン骨格からなる群より選ばれる少なくともいずれかの骨格を含む基(ベンゾイル骨格含有基)を挙げることができる。光(典型的には紫外線)の照射により、これら基からはラジカルが発生する。
別の好ましいラジカル反応性基としては、チオール基、ビニル基、アルコキシアミン骨格を含む基などを挙げることができる。これら基については、典型的には熱によりラジカルが発生する。
さらに別の好ましいラジカル反応性基としては、ジスルフィド結合、パーオキシ結合、アゾ結合からなる群より選ばれる少なくともいずれかの結合を含む基を挙げることができる。ジスルフィド結合とパーオキシ結合については、典型的には熱または光によりラジカルが発生する。アゾ結合については、典型的には光の照射によりラジカルが発生する。
上述したラジカル反応性基について、参考のため、以下に構造骨格の例を記載しておく。以下はあくまで「骨格」を示すものであり、光または熱によりラジカルを発生する限り、任意の置換基を有していたり、他の原子団と結合したりしていてもよい。
Figure 2022119978000002
Figure 2022119978000003
Figure 2022119978000004
(付加反応性基)
付加反応性基とは、被着体中の官能基と付加反応を起こすことで共有結合を形成することができる基である。具体的には、付加反応性基は、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、オキセタニル基、チオール基、イソシアネート基、酸無水物基およびマレイミド基からなる群から選択されるいずれかの官能基であることができる。
付加反応性基については、いわゆるクリックケミストリーの知見を応用することもできる。具体的には、付加反応性基は、アジド基(-N)、チオール基などであることもできる。アジド基はアルキン(炭素-炭素三重結合)と付加環化反応を起こして1,2,3-トリアゾール環を形成する。チオール基はアルケン(炭素-炭素二重結合)と反応する。すなわち、接着性基体の反応性基としてアジド基(-N)やチオール基を採用し、被着体にアルキン構造やアルケン構造を含めておくことで、接着性基体と被着体とが強く接着されうる。一方、接着性基体の側に反応性基としてアルケンまたはアルキン構造を導入し、被着体の側にアジド基やチオール基を導入することも考えられる。
また、付加反応性基としては、アジド基(特にフェニルアジド基)や、ジアジリン骨格を含む基なども挙げることができる。アジド基については、光または熱を作用させることでナイトレン(カルベンに類似)が生じ、このナイトレンが、被着体の炭素-炭素二重結合、C-H結合、N-H結合などと反応して共有結合を形成しうる。ジアジリン骨格を含む基については、光または熱を作用させることでカルベンが生じ、このカルベンが、被着体の炭素-炭素二重結合、C-H結合、N-H結合などと反応して共有結合を形成しうる。アジド基やジアジリン骨格を含む基は、ポリマー末端への導入が容易であるという特徴を有する。
(束縛ポリマー層の形態)
前述のように、束縛ポリマー層は、反応性熱可塑性樹脂と、反応性熱可塑性樹脂以外の束縛ポリマーとにより構成されることができる。
基体表面領域においては、反応性熱可塑性樹脂以外の束縛ポリマーが吸着した領域以外の基体表面領域に、反応性熱可塑性樹脂が吸着ないし結合していることが好ましい。
これについて、図2を参照しつつ説明する。
過去の知見によれば、束縛ポリマー層は、基体と特に強く相互作用(吸着ないし結合)して分子運動が制限されているポリマー鎖(S鎖)と、それよりは基体との相互作用が弱く、ある程度の分子運動が可能なポリマー鎖(L鎖)とを含むことができる。L鎖の基体との相互作用の大きさは、S鎖と基体との相互作用の大きさよりも小さいが、L鎖自体もその一部が基体と吸着ないし結合しうる。つまり、束縛ポリマー層においては、S鎖が吸着ないし結合した領域以外の基体表面領域に、L鎖が吸着ないし結合しうる。
L鎖は、その一部が基体と吸着ないし結合しつつも、比較的自由に分子運動しうる。よって、少なくともL鎖を反応性熱可塑性樹脂とすることで、反応性熱可塑性樹脂が有する反応性基が、被着体中の化学構造と反応しやすくなり、より強い接着力が得られると考えられる。この場合、S鎖は、反応性熱可塑性樹脂であってもよいし、反応性熱可塑性樹脂ではない樹脂であってもよい。
基体表面領域において、反応性熱可塑性樹脂以外の束縛ポリマーが吸着した領域以外の基体表面領域に、反応性熱可塑性樹脂を吸着ないし結合させる方法としては、例えば後掲の実施例のように、まず、熱可塑性樹脂としては反応性熱可塑性樹脂ではない熱可塑性樹脂のみを用いて、基体表面に、束縛ポリマー層を形成し、その後、反応性熱可塑性樹脂を用いて束縛ポリマー層を形成する方法が挙げられる。このような方法により、図2におけるS鎖が反応性熱可塑性樹脂以外の束縛ポリマーであり、L鎖が反応性熱可塑性樹脂である接着性基体を得ることができる。
別の方法としては、反応性熱可塑性樹脂と反応性熱可塑性樹脂ではない熱可塑性樹脂とをブレンドした組成物を準備し、この組成物を基体に塗布する方法が挙げられる。2つの樹脂を適切に選択することにより、塗布の際に反応性熱可塑性樹脂が反応性熱可塑性樹脂ではない熱可塑性樹脂よりも表面にマイグレートする。具体的には、反応性熱可塑性樹脂の分子量を、反応性熱可塑性樹脂ではない熱可塑性樹脂の分子量よりも小さくすることで、マイグレートを促進できる。
束縛ポリマー層が、反応性熱可塑性樹脂(L鎖)と、反応性熱可塑性樹脂以外の束縛ポリマー(S鎖)とにより構成される場合、反応性熱可塑性樹脂(L鎖)の厚みTと、束縛ポリマー(S鎖)の厚みTは、以下のうちの1または2以上を満たすことが好ましい。これら値を適切に調整することにより、基体との相互作用と、被着体との相互作用とを高度にバランスさせることができる。
・T:好ましくは0.5~10nm、より好ましくは0.5~5nm、さらに好ましくは0.5~3nm
・T:好ましくは0.5~10nm、より好ましくは0.5~8nm、さらに好ましくは1~5nm
・T/T:好ましくは0.1~2、より好ましくは0.2~1.5、さらに好ましくは0.3~1.5
念のため述べておくと、本実施形態の接着性基体のミクロな描像としては、図2に示されるとおり、反応性熱可塑性樹脂(L鎖)と反応性熱可塑性樹脂以外の束縛ポリマー(S鎖)とは、ともに基体に吸着することができる。換言すると、反応性熱可塑性樹脂(L鎖)と反応性熱可塑性樹脂以外の束縛ポリマー(S鎖)とは「混ざりあっている」ということもでき、反応性熱可塑性樹脂(L鎖)と反応性熱可塑性樹脂以外の束縛ポリマー(S鎖)とは、必ずしも、それぞれ明確に分離された「層」とはならないと考えられる。
ただし、X線反射率測定および偏光解析測定に基づけば、束縛ポリマー層が設けられた一定の広さの領域の中での一種の「平均値」としてTおよびTを測定することが可能である。後掲の実施例に記載した各層の厚みも、X線反射率測定および偏光解析測定に基づく、一種の「平均値」である。ちなみに、後掲の実施例においては、基体に、まず第1工程として、反応性熱可塑性樹脂以外の束縛ポリマー(S鎖)を吸着させ、その後の第2工程として、反応性熱可塑性樹脂(L鎖)を吸着させている。この場合、第1工程終了後にX線反射率測定および偏光解析測定を行うことで、Tを測定することが可能である。また、第1工程終了後にX線反射率測定および偏光解析測定を行うことで、TとTの和を測定することができ、このTとTの和から第1工程終了後に求めたTを引き算することでTを求めることができる。
、TおよびT/Tの値は、例えば、各層を構成する樹脂(ポリマー)の種類や分子量を変更することで調整することができる。通常の傾向としては、樹脂(ポリマー)の分子量を大きくすると、層の厚みは大きくなる。
また、樹脂(ポリマー)を基体に塗布した後に、十分に加熱することによっても、T、TおよびT/Tの値を調整することができる。本発明者らの知見によれば、加熱により、樹脂(ポリマー)と基体との吸着がより促進されて、膜厚は増加する傾向がある。加熱は、用いる樹脂(ポリマー)のガラス転移温度をT℃としたとき、T~T+100℃程度で行うことが好ましい。また、加熱時間は、例えば1~48時間の範囲内とすることができる。加熱の際の雰囲気は、好ましくは真空または減圧下であるが、常圧下であってもよい。
[被着体]
本実施形態において、被着体は、接着性基体と接着させる対象である。
被着体は、接着性基体における束縛ポリマー層の表面に分布する反応性基と反応して結合を形成しうるものである限り、特に限定されない。
被着体は、非粒子状または粒子状のいずれであってもよいが、代表的には非粒子状の固形状のものである。非粒子に適用した場合、本発明の効果がより顕著に得られる。
被着体の例としては、例えば、板状またはシート状の部材、平面または曲面を有する立体形状の部品等が挙げられる。
被着体は、複数の層が積層した積層体であってもよい。また、接着性基体との接着面において複数の異種材料が露出したものであってもよい。
被着体の表面の大きさについては特に制限がないが、1mm×1mm以上の領域を有する面に適用した場合、本発明の効果がより顕著に得られる。
被着体は、接着性基体に含まれる反応性基の種類に応じて適宜に選択される。
被着体における接着性基体との接着面には、接着性基体側の反応性基と反応して共有結合を形成する活性基が存在していることが好ましい。すなわち、接着性基体が反応性基としてラジカル反応性基を有する場合には、そのラジカル反応性基と共有結合を形成する活性基が被着体に存在することが好ましい。また、接着性基体が反応性基として付加反応性基を有する場合には、その付加反応性基と共有結合を形成する活性基が被着体に存在することが好ましい。このような活性基が存在すると、接着性基体と被着体との接着力が安定的に向上する。
活性基の一例として、C-H結合が挙げられる。具体的には、接着性基体における反応性熱可塑性樹脂が、反応性基としてラジカル反応性基を有する場合、ラジカル反応性基から発生したラジカルが水素を引き抜くことで共有結合が形成されうる。共有結合が形成されることで高い接着力が得られる。この観点で、被着体の表面(接着性基体との接着面)は、C-H結合を有するポリマー(有機ポリマーなど)により形成されていることが好ましい。
特に、ラジカル反応性基が、前述のベンゾフェノン骨格を含む基などのようなベンゾイル骨格含有基である場合、そのラジカルの反応性の高さからC-H結合と容易に反応して共有結合が形成され、その結果高い接着強度が得られる。
別観点として、被着体は、α水素を含有する有機ポリマーを含むことが好ましい。α水素とは、α炭素に結合した水素原子のことである。一般的な傾向として、α水素はラジカルとの反応性が良好である。
さらに別観点として、Christensen,S.K.;Chiappelli,M.C.;Hayward,R.C. Macromolecules 2012,45,5237-5246に記載された知見などに基づけば、被着体は、以下(i)~(iv)の少なくともいずれかの水素を含むことが好ましく、以下(i)~(iii)の少なくともいずれかの水素を含むことがより好ましく、以下(i)および/または(ii)の水素を含むことがさらに好ましく、以下(i)の水素を含むことが特に好ましい。これら水素はラジカルにより容易に引き抜かれて共有結合を形成しやすい。
(i)窒素原子に結合した炭素原子が有する水素
(ii)3級水素、すなわち、3級炭素に結合した水素
(iii)2級水素、すなわち、2級炭素に結合した水素
(iv)1級水素、すなわち、1級炭素に結合した水素
上記観点に基づけば、被着体は、ポリ(N-アルキル(メタ)アクリルアミド)、ポリ(N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド)、ナイロン(ポリアミド)などのうちいずれかのポリマーを含むことが好ましい。また、エポキシ樹脂と硬化剤を含む樹脂組成物の未反応物または半硬化物(Bステージ状態)の膜であってもよい。この場合の硬化剤としては、アミン化合物やカルボキシ基を有する化合物などが挙げられる。
好ましい例として、被着体は、ナイロン(ポリアミド)であることができる。アミド結合中の水素原子と、接着性基体に含まれる反応性基(具体的にはエポキシ基などの付加反応性基)とが反応して接着力が発現する。
また、被着体は、上記以外のポリマーを含んでもよい。そのようなポリマーとしては、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリ(α-オレフィン)などのポリオレフィン、ポリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
被着体は、好ましくは、接着性基体における束縛ポリマー層が含む反応性熱可塑性樹脂とは異なるポリマーを含む。ここで、「異なる」とは、具体的には、以下(i)および(ii)の一方または両方を意味する。
(i)被着体が含むポリマーは、反応性熱可塑性樹脂が有する反応性基(ラジカル反応性基または付加反応性基)を有しない。例えば、反応性熱可塑性樹脂が反応性基としてエポキシ基を有する場合、被着体が含むポリマーは、エポキシ基を有しない。
(ii)被着体が含むポリマーの主鎖骨格と、反応性熱可塑性樹脂との主鎖骨格とが異なる。すなわち、被着体が含むポリマーの主鎖を構成する構造単位のうちモル比が最も大きな構造単位の骨格と、反応性熱可塑性樹脂の主鎖を構成する構造単位のうちモル比が最も大きな構造単位の骨格と、が異なる。
接着性基体における反応性熱可塑性樹脂が、反応性基として付加反応性基を有する場合、被着体は、付加反応性基に対して反応性を有する官能基を含有する有機ポリマーであることが好ましい。付加反応性基と、その付加反応性基と反応する官能基との組み合わせ例については、以下の第1実施形態で挙げる。
[接合体]
接合体は、接着性基体と被着体とが接着してなる接合体である。この接合体においては、上述の接着性基体の束縛ポリマー層の表面と、被着体の一表面とが接着している。
被着体は、接着性基体における反応性基に対して反応性を有する官能基を含有する化合物を一表面に備える。
接着性基体における反応性基と、被着体における官能基とが反応して共有結合を形成することで、接着性基体と被着体とは接合する。
接着性基体と被着体との接着は、典型的には光(好ましくは紫外線)および/または熱により行う。光照射や加熱の条件については、束縛ポリマー層のラジカル反応性基または付加反応性基からなる反応性基が活性化して被着体と結合が形成される限り、特に限定されない。なお、光により接着性基体と被着体とを接着する場合、接着性基体と被着体との少なくとも一方は透光性を有することが好ましい。
接合体の製造方法としては、表面に束縛ポリマー層が形成された接着性基体を作製した後、この接着性基体と被着体とを接着させる方法が挙げられる。また、基体表面に束縛ポリマー層形成材料と被着体形成材料とを含む組成物を付着させ、その後、束縛ポリマー層形成材料を基体表面にマイグレートさせ、さらにその後、束縛ポリマー層の反応性基を活性化させて被着体形成材料との間で共有結合を形成させることで、接着性基体と被着体とが接着してなる接合体を作製することもできる。
接合体に関するより具体的な態様については、後掲の第3実施形態において詳述する。
[多層接合体]
第1の接着性基体と第2の接着性基体との間に被着体を介在させることなどにより、第1の接着性基体と、第2の接着性基体と、これらの接着性基体の間に介在する被着体とが積層した多層接合体を得ることができる。
多層接合体において、第1の接着性基体および第2の接着性基体は、上述の接着性基体である。
被着体は、第1の接着性基体における反応性基に対して反応性を有する官能基を含有する第1化合物を一表面に備える。
多層接合体においては、第1の接着性基体の反応性基と第1化合物の官能基とが反応して共有結合を形成している。
多層接合体においては、第2の接着性基体の束縛ポリマー層の表面と、被着体の他の表面とが接着している。
被着体は、第2の接着性基体における反応性基に対して反応性を有する官能基を含有する第2化合物を他の表面に備える。
多層接合体においては、第2の接着性基体の反応性基と第2化合物の官能基とが反応して共有結合を形成している。
多層接合体に関するより具体的な態様については、後掲の第4実施形態において詳述する。
[第1実施形態]
接着性基体の一例を図3に示す。
図3において、接着性基体1は、基板11と、基板11の一表面に接して設けられた束縛ポリマー層12とを備える。
基板11は、有機ポリマー、セラミックス、半導体または金属により形成された基板とすることができる。
束縛ポリマー層12は、基板11の一表面に吸着して束縛された熱可塑性樹脂により構成されている。基板11の一表面に吸着して束縛された熱可塑性樹脂により構成された層のうち、厚みが1~20nmである箇所を束縛ポリマー層とよぶ。本実施形態では、上記層全体が厚み1~20nmとなっているので、図示したように、基板11の一表面に接して設けられた層全体を束縛ポリマー層12としている。第1実施形態における束縛ポリマー層12の平均厚みは、好ましくは1~20nmである。
束縛ポリマー層は、溶剤に不溶ないし難溶の層である。クロロホルム溶解指数Rの値は、3%以下である。
束縛ポリマー層12を構成する熱可塑性樹脂は、反応性熱可塑性樹脂を含んでいる。反応性熱可塑性樹脂は、分子中に、基板11に吸着する複数の吸着性基と、ラジカル反応性基または付加反応性基からなる反応性基とを有している。このため、反応性熱可塑性樹脂は、複数の吸着性基を介して基板11に吸着して固定されるとともに、基板11に固定されない部位にある反応性基が束縛ポリマー層12の表面に分布して反応活性部を形成する。
一例として、反応性基は、反応性熱可塑性樹脂の高分子鎖の末端または末端近傍に存在することが好ましい。また、別の例として、反応性基は、反応性熱可塑性樹脂の高分子鎖のループ鎖部に存在することが好ましい(「ループ鎖部」とは、複数の吸着性基を介して基板11に吸着して固定されている高分子鎖において、互いに隣接する吸着性基間にあるループ状の鎖部のことをいう)。これら例のようにすれば、反応性基がより一層、束縛ポリマー層12の表面に分布しやすくなり、効果的に反応活性部を形成することができる。
接着性基体1は、被着体に接着させて構造体を形成する用途に用いられる。接着性基体1に被着体(被着体)を当接させた状態で、加熱する、あるいは、紫外光などのエネルギー線を照射する等の接着処理を施すことで両者を接着させることができる。接着処理は、反応性基および被着体の種類に応じて適宜に選択される。
反応性基および被着体表面材料の組合せとしては、以下のものが挙げられる。
・例1
反応性基:
ベンゾフェノン骨格、ベンゾイル骨格、アントラキノン骨格、チオキサントン骨格からなる群より選ばれる少なくともいずれかの骨格を含む基
被着体表面材料:
(i)α水素(α炭素に結合した水素)を有する化合物
(ii)ラジカル重合性二重結合を有する化合物
この例では、反応性基に対して、光(典型的には紫外線)の照射または加熱処理によりラジカルが発生する。このラジカルが(i)のα水素または(ii)のラジカル重合性二重結合に作用することで、反応性基と被着体表面材料とが共有結合する。
・例2
反応性基:
アミノ基(1級アミンまたは2級アミン)、カルボキシ基、水酸基、エポキシ基、オキセタニル基、チオール基からなる群より選ばれるいずれかの基
被着体表面材料:
上記反応性基と反応する官能基を有する化合物
例2の具体的組合せとして、例えば以下のものが挙げられる。
Figure 2022119978000005
例2では、反応性熱可塑性樹脂の反応性基と被着体表面材料の上記官能基とが付加反応して共有結合を生成する。
本実施形態の接着性基体においては、反応性基が被着体と反応することで共有結合が形成され、この結果、束縛ポリマー層-被着体間の界面の強度が向上する。これにより、本実施形態の接着性基体は、被着体との強い接着力を示す。
本実施形態の接着性基体は、以下のようにして作製することができる。
まず、反応性熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を基板11表面に塗布する。この樹脂組成物は、反応性熱可塑性樹脂からなるものとしてもよいし、反応性熱可塑性樹脂を溶剤に溶解ないし分散させたものとしてもよい。また、反応性熱可塑性樹脂以外の他の熱可塑性樹脂や他のポリマーを含んでいてもよいし、適宜、他の添加剤や無機フィラーなどを含んでいてもよい。塗布の方式は、薄膜を形成できる方式であればよく、例えば、スピンコート、ディスペンサー、インクジェット、スリットコート、スクリーン印刷等の手法を用いることができる。
次いで、基板11表面に形成されたウエット状態の塗布膜を乾燥させた後、加熱処理して反応性熱可塑性樹脂の薄膜を得る。
その後、反応性熱可塑性樹脂の薄膜を、膜厚がほとんど変わらなくなるまで溶剤で複数回洗浄する。あるいは、反応性熱可塑性樹脂の薄膜を溶剤に接触させた状態で所定時間、例えば30分~5時間程度放置し、この後、純水などの洗浄液を用いて洗浄する。溶剤としては、例えばクロロホルムやトルエンを用いることができる。
以上により、反応性熱可塑性樹脂により構成された束縛ポリマー層を備える接着性基体が得られる。
[第2実施形態]
第2実施形態について図4および図5に基づいて説明する第2実施形態における層構造は図3に示したものと同様である。第2実施形態の接着性基体が第1実施形態の接着性基体と異なる点は、束縛ポリマー層12の構成である。
図4において、接着性基体1は、基板11と、基板11の一表面に接して設けられた束縛ポリマー層12とを備える。
基板11は、有機ポリマー、セラミックス、半導体または金属により形成された基板とすることができる。
束縛ポリマー層12は、基板11の一表面に吸着して束縛された熱可塑性樹脂により構成されている。束縛ポリマー層12の平均厚みは、好ましくは1~20nmである。
束縛ポリマー層は、溶剤に不溶ないし難溶の層である。クロロホルム溶解指数Rの値は、3%以下である。
束縛ポリマー層12は、基板11の一表面に吸着して束縛された、第1熱可塑性樹脂41および第2熱可塑性樹脂42を含む。
第1熱可塑性樹脂41は、その分子内に、基板11の一表面に吸着する吸着性基Aを有するが、ラジカル反応性基または付加反応性基からなる反応性基は有していなくてもよい。一方、第2熱可塑性樹脂42は、その分子内に、ラジカル反応性基または付加反応性基からなる反応性基Bを有するとともに、基板11の一表面に吸着する吸着性基Aを有する。
基板11の一表面における第1領域に第1熱可塑性樹脂41が吸着しており、同表面における第1領域以外の第2領域に第2熱可塑性樹脂42が吸着している。反応性基を有する第2熱可塑性樹脂42が、基板11表面の一部の限られた領域に吸着しているため、第2熱可塑性樹脂42の分子鎖の一部が基板11表面に吸着して束縛され、残りの部分が基板11表面から離れた形態をとりやすくなる。これにより、図4に示すように、第2熱可塑性樹脂42の反応性基Bが基板11表面と離れた場所に位置する形態となる。すなわち、第2熱可塑性樹脂42は、複数の吸着性基Aを介して基板11に吸着して固定されるとともに、基板11に固定されない部位にある反応性基Bが束縛ポリマー層12の表面に分布して反応活性部を形成する。
第2熱可塑性樹脂42の好ましい例として、例えばポリ(メタ)アクリル酸エステルのような、吸着性基(ポリ(メタ)アクリル酸エステルの場合は、エステル基)を有する構造単位を備えるポリマーが挙げられる。
このようなポリマーは、前述したように、基板表面に吸着するサイトを複数備えるマルチサイト型のポリマーとして機能し、基板11表面に強力に吸着する。しかし、このようなマルチサイト型のポリマーを用いた場合、第2熱可塑性樹脂42のみをそのまま基板11表面に吸着させると、基板11に吸着する第2熱可塑性樹脂42の形態は、図5(a)に示す形態となりやすい。一方、基板11の表面に対して第1熱可塑性樹脂41を吸着させ、第1熱可塑性樹脂41の吸着していない領域に第2熱可塑性樹脂42を制限的に吸着させると、基板11に吸着する第2熱可塑性樹脂42の形態は図5(b)に示す形態となりやすい。すなわち、第2熱可塑性樹脂42の高分子鎖の一部分に含まれる複数の吸着性基が基板11に吸着し、高分子鎖の他の部分が基板11に束縛されずにフリーな状態となる。
第2熱可塑性樹脂42の高分子鎖のうち、基板11に束縛されない部分に反応性基が存在するため、被着体の表面に存在する官能基との反応性が顕著に向上する。この結果、基板11と被着体との間の接着力が向上する。
また、図4に示される構造では、第2熱可塑性樹脂42が占める部分によって基板11-束縛ポリマー層の異種材料界面の接合によって生じる応力を効果的に緩和することができ、この点からも基板11と被着体との間の接着力が向上する。
第2実施形態において、第1熱可塑性樹脂41および第2熱可塑性樹脂42は、いずれもマルチサイト型のポリマーであることが好ましい。マルチサイト型のポリマーを用いれば、基板11表面に強く密着した束縛ポリマー層を実現することができ、この結果、束縛ポリマー層のクロロホルム溶解指数Rが顕著に低減する。このようなマルチサイト型のポリマーの例は前述したとおりである。
基板11の表面に対して第1熱可塑性樹脂41を吸着させ、第1熱可塑性樹脂41の吸着していない領域に第2熱可塑性樹脂42を制限的に吸着させる形態は、以下のようにして作製することができる。
まず、第1熱可塑性樹脂41を含む樹脂組成物を基板11表面に塗布する。この樹脂組成物は、第1熱可塑性樹脂41からなるものとしてもよいし、第1熱可塑性樹脂41を溶剤に溶解ないし分散させたものとしてもよい。また、第1熱可塑性樹脂41以外の他の熱可塑性樹脂や他のポリマーを含んでいてもよいし、適宜、他の添加剤や無機フィラーを含んでいてもよい。
塗布の方式は、薄膜を形成できる方式であればよく、例えば、スピンコート、ディスペンサー、インクジェット、スリットコート、スクリーン印刷等の手法を用いることができる。
次いで、基板11表面に形成されたウエット状態の塗布膜を乾燥させた後、加熱処理して第1熱可塑性樹脂41の薄膜を得る。
その後、第1熱可塑性樹脂41の薄膜に対して、膜厚がほとんど変わらなくなるまで溶剤で複数回洗浄する。以上により、第1熱可塑性樹脂41からなる束縛層が形成される。溶剤としては、たとえばクロロホルムを用いることができる。
上記の束縛層の上から、第2熱可塑性樹脂42を含む樹脂組成物を基板11表面に塗布する。この樹脂組成物は、第2熱可塑性樹脂42からなるものとしてもよいし、第2熱可塑性樹脂42を溶剤に溶解ないし分散させたものとしてもよい。また、第2熱可塑性樹脂42以外の他の熱可塑性樹脂や他のポリマーを含んでいてもよいし、適宜、他の添加剤や無機フィラーを含んでいてもよい。
塗布の方式は、薄膜を形成できる方式であればよく、例えば、スピンコート、ディスペンサー、インクジェット、スリットコート、スクリーン印刷等の手法を用いることができる。
次いで、第2熱可塑性樹脂42の塗布膜を乾燥させた後、加熱処理して第2熱可塑性樹脂42の薄膜を得る。
第1熱可塑性樹脂41からなる束縛層は、分子スケールでみれば間隙があり、この間隙に第2熱可塑性樹脂42の高分子鎖が侵入した形態で第2熱可塑性樹脂42の薄膜が形成される。
次に、第2熱可塑性樹脂42の薄膜に対して、膜厚がほとんど変わらなくなるまで溶剤で複数回洗浄する。溶剤としては、たとえばクロロホルムを用いることができる。
以上により、第1熱可塑性樹脂41および第2熱可塑性樹脂42により構成された束縛ポリマー層12が形成される。
得られた束縛ポリマー層12は、図4に模式的に示した構造を備える。前述したとおり、第1熱可塑性樹脂41からなる束縛層は、分子スケールでみれば間隙があり、この間隙に第2熱可塑性樹脂42の高分子鎖が侵入する。このため、第2熱可塑性樹脂42の高分子鎖の一部分に含まれる複数の吸着性基が基板11に吸着し、高分子鎖の他の部分が基板11に束縛されずにフリーな状態となる。
[第3実施形態]
第3実施形態について図6に基づいて説明する。第3実施形態は、接合体に関する。
図6は、接合体の層構造を模試的に説明する図である。同図において、接合体300は、接着性基体100と、接着性基体100と接合する被着体150からなる層構造を有する。
接合体300は、第2実施形態で説明した接着性基体1を用意し、この接着性基体に被着体を接合させたものである。
第2実施形態で説明した接着性基体1の表面には、第2熱可塑性樹脂42の有する反応性基からなる反応活性部が形成されている。
一方、被着体150の少なくとも一表面には、上記反応性基と反応して化学結合を形成する官能基を有する化合物が存在する。
したがって、第2実施形態で説明した接着性基体を用意し、この接着性基体に被着体を当接させた状態で光照射または熱処理させることで、接着性基体の反応活性部と被着体の表面にある官能基とが反応して共有結合を形成する。このようにして得られた構造体が本実施形態の接合体300である。
接合体300の製造方法としては、表面に束縛ポリマー層が形成された接着性基体100を作製した後、この接着性基体100と被着体150とを接着させる方法が挙げられる。
また、束縛ポリマー層形成材料と、被着体形成材料とを含む接着性樹脂組成物を基体表面に付着させた後、束縛ポリマー層形成材料を基体表面にマイグレートさせ、さらに、束縛ポリマー層の反応性基を活性化させて被着体形成材料との間で共有結合を形成させることで、接着性基体と被着体とが接着してなる接合体300を作製することもできる。
束縛ポリマー層形成材料と被着体形成材料とを含む接着性樹脂組成物とは、束縛ポリマー層形成成分および被着体形成成分を含むものである。この樹脂組成物は、液状または固体のいずれであってもよい。
接着性樹脂組成物が液状組成物である場合、束縛ポリマー層形成材料と被着体形成材料の両方を含む一液型組成物としてもよいし、束縛ポリマー層形成材料を含むA液と被着体形成材料を含むB液とを含む二液型組成物としてもよい。
接着性樹脂組成物が液状組成物である場合、接着性樹脂組成物は、束縛ポリマー層形成材料および/または被着体形成材料を溶剤に溶解ないし分散したワニス状組成物であってよいし、これらが水中に懸濁ないしエマルジョンの形態で分散した組成物であってもよい。
接着性樹脂組成物が固体組成物である場合、その形態としては、シート、板状、粒子等が挙げられる。
[第4実施形態]
図7は、第4実施形態である多層接合体の層構造を模試的に説明する図である。同図において、多層接合体400は、第1の接着性基体100と、第2の接着性基体200と、これらの接着性基体の間に介在する被着体150からなる層構造を有する。
多層接合体300は、第2実施形態で説明した接着性基体を2枚用意し、これらの間に被着体を挟んで接着させたものである。すなわち、第1の接着性基体100および第2の接着性基体200は、いずれも、第2実施形態で説明した接着性基体と基本的には同一の構造を有し、接着性基体表面に存在する反応性基が被着体150表面と反応したものである。
第2実施形態で説明した接着性基体1の表面には、第2熱可塑性樹脂42の有する反応性基からなる反応活性部が形成されている。
一方、これらの間に挟む被着体の両表面には、上記反応性基と反応して化学結合を形成する官能基を有する化合物が存在する。
したがって、第2実施形態で説明した接着性基体を2枚用意し、これらの間に被着体を挟んで光照射または熱処理することで、接着性基体の反応活性部と被着体の表面にある官能基とが反応して共有結合を形成する。
このようにして得られる構造体が第4実施形態の多層接合体400である。
[適用分野]
本明細書に記載した接着技術の適用分野は特に限定されない。例えば、本明細書に記載した接着性基体は、基体と有機樹脂を接合する製品全般に適用できる。
適用分野の代表例としては、以下が挙げられる。もちろん、これら以外の適用分野にも本明細書に記載した接着技術を適用することは可能である。
・自動車、鉄道、航空機等の輸送機器に用いられる部品や部材の接着
・建築用建材、建築用資材等の建築用部材の接着
・道路、橋梁等の構造物に用いられる部材の接着
・半導体素子・パッケージおよびこれらを含む半導体製品を製造する際の部品や部材の接着
・配線基板、電子回路ユニット等の電子部品を製造する際の部品や部材の接着
・電化製品、日用品、家具等を製造する際の部品や部材の接着
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
本発明の実施態様を、実施例および比較例に基づき詳細に説明する。念のため述べておくと、本発明は実施例のみに限定されない。
[GPC測定条件]
用いた試料の重量平均分子量、数平均分子量およびそれらの分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置(日本分光社製、型式:EXTREMA)および標準ポリメタクリル酸メチル検量線を用いたGPC測定により決定した。GPC測定の具体的条件は以下のとおりである。
カラム:TSKgel guard column MP(XL)(内径6.0mm×長さ4cm、東ソー社製)、TSKgel MultiporeHXL-M×3(内径7.8mm×長さ30cm、東ソー社製)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
サンプル注入量:100μL
検出器:示差屈折検出器、紫外可視吸光度検出器
[実施例1]
(概要)
実施例1では、以下の接着性基体と、被着体とを接着した。
・接着性基体
基体であるSi基板の表面に、束縛ポリマー層として、L鎖およびS鎖のPMMAからなる熱可塑性樹脂層(ラジカル反応性基を含む)を用いて接着性基体を構成したもの
・被着体
ポリプロピレンシート
本実施例では、まず、PMMA吸着層(S鎖のPMMA)を形成し、次いでその表面に反応性基(ベンゾフェノン構造含有)を有するPBP吸着層を形成した。これにより、束縛ポリマー層を形成した。束縛ポリマー層のクロロホルム溶解指数Rは3%以下であった。
束縛ポリマー層は、模式的には、図1に示される構造であると考えられる。つまり、束縛ポリマー層の表面には、反応性基(ベンゾフェノン構造含有)が分布して反応活性部が形成され、接着性が発現する。
以下、詳細を説明する。
(使用素材について)
PMMA(ポリメチルメタクリレート)として、Polymer Source社製のElectronicsグレードのものを用いた。これの数平均分子量は300k、分散度は1.05であった。
また、ベンゾフェノン基を含有するメタクリレートポリマー(PBP)として、以下のようにモノマー合成およびポリマー合成を行って得られたものを用いた。
・モノマー合成
モノマーである3-methacryloxy-2-hydroxy-4-oxybenzophenone(BP)は、glycidyl methacrylate(GMA)のエポキシ基と4-hydroxybenzophenone(4-HBP)のヒドロキシ基の反応より合成した。具体的には、GMA(0.2mol、28.4g)、4-HBP(0.22mol、43.6g)、tetramethylammonium chloride(TMAC)(1.0wt%、0.72g)をナスフラスコ中に入れ、358Kにて5h撹拌した。得られた黄色の液体に100mLのジクロロメタンを添加して撹拌した後、0.10mol・L-1のNaOH水溶液400mLおよび水400mLを用いた分液操作により有機相を回収した。さらに、再度分液操作を行い、得られた有機相を硫酸ナトリウムで脱水すると、黄色の液体となった。その後、エバポレーターによりジクロロメタンを減圧留去すると、黄色の粘性液体が得られた。
・ポリマー合成
ポリマーであるPBPは、azobis(isobutyronitrile)(AIBN)を開始剤としたフリーラジカル重合にて合成した。具体的には、まず、アニソール(16mL)に、上記モノマー合成で得られたBP(10mmol、3.4g)とAIBN(9.9mg、0.06mmol)とを加え、窒素ガスでバブリングした。次に、これらの混合物をオイルバス中で343Kで2h撹拌し、重合を進行させた。その後、クロロホルムに溶解させ、ヘキサンに沈殿させた。再沈殿操作を2回繰り返し、最後に5h減圧乾燥した。
得られたポリマーの数平均分子量は65.4k、分散度は2.22であった。
(評価用基体の準備)
4cm×1cmのSi基板を準備した。これを、HSO/H=7:3のピラニア腐蝕液に80℃で120分間浸漬してピラニア処理を施し、その後、純水で十分に洗浄した。このようにして評価用基体を得た。
(PMMA吸着層の形成)
評価用基体上に、スピンコート法により、2000rpm、60sの条件で、PMMAのトルエン溶液(ポリマー濃度3wt%)を塗布し、真空下、455K(PMMAのガラス転移温度+50℃)で24時間熱処理した。これによりSi基板上に膜厚約100nmのPMMA薄膜を設けた。このPMMA薄膜を、膜厚がほとんど変わらなくなるまでトルエンで少なくとも4回洗浄した。
以上により、評価用基体の表面にPMMA吸着層を設けた。X線反射率測定および偏光解析測定に基づき評価したPMMA吸着層の厚みは7nmであった。
(PBP吸着層の形成)
上記のPMMA吸着層上に、スピンコート法により、2000rpm、60sの条件で、PBPのメチルエチルケトン溶液(ポリマー濃度3wt%)を塗布し、真空下、室温で12時間静置してメチルエチルケトンを乾燥させた。これによりPMMA吸着層上に膜厚約100nmのPBP薄膜を設けた。このPBP薄膜を、膜厚がほとんど変わらなくなるまでクロロホルムで少なくとも4回洗浄した。洗浄後、前述の手順によりクロロホルム溶解指数Rを求め、Rの値が0であることを確認した。
以上により、PMMA吸着層形成後、PBP吸着層を形成した。すなわち、まず反応性基を有しないPMMA吸着層を設け、その次に反応性基を有するPBP吸着層を設けることで、PMMAが吸着した領域以外の基体表面領域(PMMA吸着層を分子スケールで見たときの間隙部分)にPBPが吸着し、そして反応性基(ベンゾフェノン構造含有)が表面に分布して反応活性部を形成している束縛ポリマー層(束縛ポリマー層全体としてのクロロホルム溶解指数Rは3%以下である)を得た。X線反射率測定および偏光解析測定に基づき評価したこの束縛ポリマー層の厚みは11nmであった。
(接着試料の作製と評価)
ホットプレス成形したポリプロピレン製シート(日本ポリプロ社製のイソタクチックポリプロピレン「ノバテックPP」、厚み0.6mm)と、上記のPBP吸着層とを貼り合わせ、大気中、443Kにて、紫外光(365nm、120W)を15秒間照射した。これにより接着試料を作製した。その後、接着試料を室温まで徐冷した。
室温まで徐冷した後においても、接着試料の接着は維持された。ピンセットを用いてPBP吸着層-ポリプロピレン製シート間の剥離を試みたところ、Si基板が破断し、ポリプロピレン製シート上にSi基板が残存した。つまり、通常はSi基板に接着しにくいポリプロピレンがSi基板に強く接着したことが確認された。
[比較例1]
PBP吸着層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様の手順で、Si基板の処理、接着試料の作製と評価などを行った。すなわち、ホットプレス成形したポリプロピレン製シートと、PMMA吸着層とを貼り合わせることを試みた。しかし、接着試料を室温まで徐冷すると、ポリプロピレン製シートは直ちに剥離してしまった。
[実施例2]
(概要)
実施例2では、以下の第1接着性基体と第2接着性基体とにより被着体を挟み、接着することで、多層接合体を得た。
・第1接着性基体
基体としてシリコン基板を用い、束縛ポリマー層としてL鎖およびS鎖のPMMAからなる熱可塑性樹脂層を用いて第1接着性基体を構成した。
・第2接着性基体
基体として石英基板を用い、束縛ポリマー層としてL鎖およびS鎖のPMMAからなる熱可塑性樹脂層を用いて第2接着性基体を構成した。
・被着体
ナイロンシートを被着体として用いた。
第1接着性基体および第2接着性基体は、いずれも、以下の手順で作製される。まず、PMMA吸着層(S鎖のPMMA)を形成し、次いでその表面に反応性基(ベンゾフェノン構造含有)を有するPBP吸着層を形成する。これにより、束縛ポリマー層が得られる。
第1接着性基体および第2接着性基体の束縛ポリマー層の表面には、反応性基(ベンゾフェノン構造含有)が分布して反応活性部が形成され、接着性が発現する。後述するように、各束縛ポリマー層のクロロホルム溶解指数Rは、いずれも0%であった。
この接合体は、第1接着性基体と被着体の接着界面と、第2接着性基体と被着体の接着界面とを含む。見方を変えると、シリコン基板と石英基板が一対の被着体であり、これらに挟まれる部分が接着剤層であると把握することもできる。すなわち、第1接着性基体に含まれるPMMAからなる熱可塑性樹脂層、ナイロン、および、第2接着性基体に含まれるPMMAからなる熱可塑性樹脂層の積層体からなる接着剤層によって、シリコン基板と石英基板が接着された構造体であると把握することもできる。
以下、詳細を説明する。
(吸着層の形成)
石英基板上に、実施例1の手順に準じて、PMMA吸着層とPBP吸着層からなる束縛ポリマー層を設けた。
また、実施例1と同様にして、ピラニア処理が施されたSi基板上に、PMMA吸着層とPBP吸着層からなる束縛ポリマー層を設けた。
石英基板上の束縛ポリマー層、Si基板上の束縛ポリマー層、ともにクロロホルム溶解指数Rの値は0%であった。
(接着試料の作製と評価)
石英基板上に設けた上記の吸着層と、Si基板上に設けた上記の吸着層の間に、Nylon6膜を挟んで積層構造を得た。Nylon6としては、ヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFIP)のポリマー濃度3wt%の溶液から溶媒キャスト法により調製された、乾燥膜厚23.9±0.8μmのものを用いた。
上記積層構造を、大気中、210℃で10分間保持した(Nylon6の結晶が融解し、膜が透明になった)。
その後、210℃の加熱を維持したまま、石英基板の側から、波長365nmの光を10分間照射した。光源と石英基板との間の距離は7.4cmとした。
光照射の後、室温下で30分間放置し、徐冷した。
以上の手順により得られた積層体において、石英基板とSi基板とは、Nylon6を介して強力に接着していた。ピンセットで両者を引きはがそうとせん断力を印加すると、石英基板およびSi基板の凝集破壊が起こった。
[参考例]
反応性基が、束縛ポリマー層の表面に分布して反応活性部を形成することによる効果を検証するため、実施例1におけるPMMA吸着層とPBP吸着層の形成順序を逆にして束縛ポリマー層を形成した。具体的な手順は以下のとおりである。
以下において用いたPMMAとPBPは、実施例1と同様である。
(評価用基体の準備)
実施例1と同様の、ピラニア処理が施されたSi基板を評価用基体とした。
(PBP吸着層の形成)
評価用基体上に、スピンコート法により、2000rpm、60sの条件で、PBPのメチルエチルケトン溶液(ポリマー濃度3wt%)を塗布し、真空下、室温で12時間静置してメチルエチルケトンを乾燥させた。これにより膜厚約100nmのPBP薄膜を設けた。このPBP薄膜を、膜厚がほとんど変わらなくなるまでメチルエチルケトンで少なくとも4回洗浄した。
以上により、評価用基体の表面にPBP吸着層を設けた。X線反射率測定および偏光解析測定に基づき評価したPBP吸着層の厚みは3.7nmであった。
(PMMA吸着層の形成)
上記のPBP吸着層上に、スピンコート法により、2000rpm、60sの条件で、PMMAのトルエン溶液(ポリマー濃度3wt%)を塗布し、真空下、455K(PMMAのガラス転移温度+50℃)で60時間熱処理した。これによりPBP吸着層上に膜厚約100nmのPMMA薄膜を設けた。このPMMA薄膜を、膜厚がほとんど変わらなくなるまでクロロホルムで少なくとも4回洗浄した。複数回の洗浄後、前述の手順によりクロロホルム溶解指数Rを求め、Rの値が3%以下であることを確認した。
以上により、PBP吸着層形成後、PMMA吸着層を形成した。すなわち、まず反応性基を有するPBP吸着層を設け、その次に反応性基を有しないPMMA吸着層を設けることで、PBPが吸着した領域以外の基体表面領域(PBP吸着層を分子スケールで見たときの間隙部分)にPMMAが吸着し、反応性基(ベンゾフェノン構造含有)が表面に分布していない束縛ポリマー層(クロロホルム溶解指数Rは3%以下)を得た。
X線反射率測定および偏光解析測定に基づき評価した、PBP吸着層とPMMA吸着層とをあわせた束縛ポリマー層全体の厚みは4.8nmであった。
(接着試料の作製と評価)
ホットプレス成形したポリプロピレン製シート(日本ポリプロ社製のイソタクチックポリプロピレン「ノバテックPP」、厚み0.6mm)と、上記のPBP吸着層とを貼り合わせ、大気中、443Kにて、紫外光(365nm、120W)を15秒間照射した。これにより接着試料を作製した。その後、接着試料を室温まで徐冷した。
室温まで徐冷した後、ポリプロピレン製シートは容易に剥離した。剥離のしやすさは比較例1と同程度であった。この結果から、反応性基が束縛ポリマー層の表面に分布して反応活性部を形成することが、高い接着強度に関係していることが理解される。
[実施例3]
(概要)
実施例1および2では、熱可塑性樹脂層としてラジカル反応性基を含むものを用いて接着性基体を構成したが、実施例3では、熱可塑性樹脂層として付加反応性基(具体的にはエポキシ基)を含むものを用いて接着性基体を構成した。つまり、実施例3では、以下の接着性基体と、被着体とを接着した。
・接着性基体
基体であるSi基板の表面に、束縛ポリマー層を設けた接着性基体を作製した。
束縛ポリマー層は、反応性基を有しないポリスチレン吸着層と、反応性基を有するポリグリシジルメタクリレート吸着層とを含む。
・被着体
ナイロン6フィルム
以下、詳細を説明する。
(評価用基体の準備)
実施例1と同様にしてピラニア処理などを行い、評価用基体を得た。
(ポリスチレン吸着層の形成)
まず、ポリスチレンとして、Polymer Source社製のスタンダードのものを準備した。これの数平均分子量は235k、GPC測定に基づく分散度は1.05であった。
評価用基体上に、上記ポリスチレンのトルエン溶液(ポリマー濃度3wt%)を塗布し、真空下、417K(ポリスチレンのガラス転移温度+30℃)で24時間熱処理した。これによりSi基板上にポリスチレン薄膜を設けた。このポリスチレン薄膜が設けられたSi基板を、クロロホルムに30分浸漬することを7回繰り返した。このようにして、評価用基体の表面に、クロロホルム溶解指数Rが0%であるポリスチレン吸着層を設けた。X線反射率測定および偏光解析測定に基づき評価したポリスチレン吸着層の厚みは4.1nmであった。
(ポリグリシジルメタクリレート吸着層を形成するためのポリマー合成)
ポリグリシジルメタクリレート(PGMA)を、azobis(isobutyronitrile)(AIBN)を開始剤として用いるフリーラジカル重合にて合成した。具体的な手順は以下のとおりである。
まず、テトラヒドロフラン(66.8mL)に、市販のグリシジルメタクリレート(GMA)モノマー(150mmol、21.3g)とAIBN(0.25mg、1.5mmol)とを加え、窒素ガスでバブリングした。これにより混合物を得た。
次に、得られた混合物を、オイルバス中で、333K、2h撹拌し、重合を進行させた。これにより粗ポリマーを得た。
その後、得られた粗ポリマーをテトラヒドロフランに溶解させて溶液とした。この溶液を貧溶媒であるヘキサンに投入して再沈殿させた。この再沈殿操作を2回繰り返した。最後に得られた沈殿物を12h減圧乾燥した。以上によりポリマー(ポリグリシジルメタクリレート)を得た。
得られたポリマーの数平均分子量は95k、分散度は1.58であった。
(ポリグリシジルメタクリレート吸着層の形成)
上記のポリスチレン吸着層上に、スピンコート法により、2000rpm、60sの条件で、ポリグリシジルメタクリレートのクロロホルム溶液(ポリマー濃度3wt%)を塗布し、真空下、377K(PGMAのガラス転移温度+30℃)で12時間静置してクロロホルムを乾燥させた。このようにして設けたポリグリシジルメタクリレート薄膜について、クロロホルムに30分浸漬することを7回繰り返して、クロロホルム溶解指数Rが0%となるようにした。
以上により、基体の表面にポリスチレン吸着層を形成後、ポリグリシジルメタクリレート吸着層を形成した。すなわち、まず反応性基を有しないポリスチレン吸着層を設け、その次に反応性基を有するポリグリシジルメタクリレート吸着層を設けることで、ポリスチレンが吸着した領域以外の基体表面領域(ポリスチレン吸着層を分子スケールで見たときの間隙部分)にポリグリシジルメタクリレートが吸着し、そして反応性基(エポキシ基)が表面に分布して反応活性部を形成している束縛ポリマー層(束縛ポリマー層全体としてのクロロホルム溶解指数Rは3%以下である)を得た。X線反射率測定および偏光解析測定に基づき評価したこの束縛ポリマー層の厚み(ポリスチレン吸着層とポリグリシジルメタクリレート吸着層の合計)は15.1nmであった。
(接着試料の作製と評価)
・接着性試験1
上記で得られた接着性基体のポリグリシジルメタクリレート吸着層の上に、ナイロン6フィルムを置いた。さらにその上から、上記(ポリスチレン吸着層の形成)に記載のようにして得た、ポリスチレン吸着層を有する基体を、そのポリスチレン吸着層がナイロン6フィルムと接するようにして置き、ナイロン6フィルムを2枚の基体で挟み込んだ。そして、200℃、10分間熱処理した。このようにして評価用接合体を得た。すなわち、[基体-ポリスチレン吸着層-ポリグリシジルメタクリレート吸着層]-[ナイロン6]-[ポリスチレン吸着層-基体]の層構成を備える評価用接合体を得た。
得られた評価用接合体について、ピンセットで剥離(破壊)を試みた。剥離(破壊)はナイロン6フィルム-ポリスチレン吸着層の間で起こり、ナイロン6フィルム-ポリグリシジルメタクリレート吸着層の間では起こらなかった。ナイロン6フィルムはポリグリシジルメタクリレート吸着層と強固に接着していた。
・接着性試験2
ポリスチレン吸着層を有する基体の代わりに、ピラニア処理されたSiウエハ(ポリマー層は形成されていない)を用いた以外は、上記接着性試験1と同様にして、評価用接合体を得た。すなわち、[基体-ポリスチレン吸着層-ポリグリシジルメタクリレート吸着層]-[ナイロン6]-[基体]の層構成を備える評価用接合体を得た。
得られた評価用接合体について、ピンセットで剥離(破壊)を試みた。剥離(破壊)はナイロン6フィルム-Siウエハ間で起こり、ナイロン6フィルム-ポリグリシジルメタクリレート吸着層の間では起こらなかった。ナイロン6フィルムはポリグリシジルメタクリレート吸着層と強固に接着していた。
以上の試験結果から、熱可塑性樹脂層のエポキシ基とナイロン6フィルムのアミド基とが反応して結合が形成され、強い接着力が得られたことが理解される。
[実施例4]
実施例4は、実施例3と同様、熱可塑性樹脂層として付加反応性基(具体的にはエポキシ基)を含むものを用いて接着性基体を構成した。
ポリグリシジルメタクリレートの代わりにフェノールノボラック型エポキシ樹脂(DIC社製「EPICLON(登録商標)N-775」)を用いた以外は、実施例3と同様にして、接着性基体を得た。すなわち、Si基板上に、ポリスチレンが吸着した領域以外の基体表面領域(ポリスチレン吸着層を分子スケールで見たときの間隙部分)にフェノールノボラック型エポキシ樹脂が吸着し、そして反応性基(エポキシ基)が表面に分布して反応活性部を形成している束縛ポリマー層を得た。
X線反射率測定および偏光解析測定に基づき評価したこの束縛ポリマー層の厚み(ポリスチレン吸着層とフェノールノボラック型エポキシ樹脂吸着層の合計)は4.1nmであった。フェノールノボラック型エポキシ樹脂吸着層は極めて薄く形成されたと考えられる。また、この束縛ポリマー層のクロロホルム溶解指数Rは0%であった。
上記で得られた接着性基体を用いて、実施例3における(接着試料の作製と評価)と同様に、接着性試験1および接着性試験2を行った。
接着性試験1において、剥離(破壊)はナイロン6フィルム-ポリスチレン吸着層で起こり、ナイロン6フィルム-フェノールノボラック型エポキシ樹脂吸着層の間では起こらなかった。ナイロン6フィルムはフェノールノボラック型エポキシ樹脂吸着層と強固に接着していた。
また、接着性試験2において、剥離(破壊)はナイロン6フィルム-Siウエハ間で起こり、ナイロン6フィルム-フェノールノボラック型エポキシ樹脂吸着層の間では起こらなかった。ナイロン6フィルムはフェノールノボラック型エポキシ樹脂吸着層と強固に接着していた。
以上の試験結果から、実施例4においても、熱可塑性樹脂層のエポキシ基とナイロン6フィルムのアミド基とが反応して結合が形成され、強い接着力が得られたものと理解される。
[補足]
実施例1および2においては、束縛ポリマー層の反応性基としてラジカル反応性基を採用することで良好な結果を得ることができた。また、実施例3および4においては、束縛ポリマー層の反応性基として付加反応性基を採用することで良好な結果を得ることができた。
これらの結果から、束縛ポリマー層の反応性基としては、被着体と反応して結合形成可能なものである限り、幅広い化学構造を採用することができるといえる。
[比較例2]
(概要)
比較例2では、束縛ポリマー層が厚すぎる場合には満足な接着性が得られないことを示す。
以下、詳細を説明する。
(評価用基体の準備)
実施例1と同様にしてピラニア処理などを行い、評価用基体を得た。
(PMMA膜の形成)
トルエンでの洗浄を全く行わなかったこと以外は、実施例1の(PMMA吸着層の形成)と同様にして、Si基板上に膜厚100nmのPMMA膜を設けた。
(PBP膜の形成)
(1)Si基板(上記の評価用基体とは異なる)に、2wt%ポリスチレンスルホン酸水溶液を3000rpm、60sの条件でスピンコートした。室温、真空の下で水を蒸発させて、水溶性のポリスチレンスルホン酸膜を形成した(この膜は、後述のように「犠牲膜」として機能する)。
(2)上記ポリスチレンスルホン酸膜の上に、PBP(実施例1で用いたものと同じ)の1wt%溶液(溶媒:2-ブタノン)を、3000rpm、60sの条件でスピンコートした。室温、真空の下で溶媒を蒸発させた。これにより、ポリスチレンスルホン酸膜の上に、厚さ20nmのPBP膜を設けた。
(3)上記(2)で得られた、ポリスチレンスルホン酸膜およびPBP膜が設けられたSi基板を、純水中に静かに浸漬した。これにより、ポリスチレンスルホン酸膜は水に溶解して、PBP膜が純水に「浮く」ようにした。
(4)上記(3)で純水に浮いたPBP膜を、上記(PMMA膜の形成)で形成したPMMA膜の上に移しとった。
以上により、評価用基体の表面に、厚さ100nmのPMMA膜と、厚さ20nmのPBP膜と、がこの順に設けられた接着性基体を得た。
(接着試料の作製と評価)
ホットプレス成形したポリプロピレン製シート(日本ポリプロ社製のイソタクチックポリプロピレン「ノバテックPP」、厚み0.6mm)と、上記のPBP膜とを貼り合わせ、大気中、443Kにて、紫外光(365nm、120W)を10分間照射した。これにより接着試料を作製した。その後、接着試料を室温まで徐冷した。
ピンセットを用いてPBP膜-ポリプロピレン製シート間の剥離を試みたところ、実施例1とは異なり、Si基板(評価用基体)を破壊することなく、ポリプロピレン製シートを剥離することができた。つまり、実施例1と比べて接着力は劣っていた。
比較例2の結果から、束縛ポリマー層が厚すぎると満足な接着力が得られないことが理解される。
[実施例5]
(概要)
この実施例では、熱可塑性樹脂が、反応性熱可塑性樹脂と、反応性熱可塑性樹脂以外の束縛ポリマーと、を含む場合において、束縛ポリマー(S鎖)の厚みを変えた例を示す。
以下、詳細を説明する。
(具体的手順)
(PMMA吸着層の形成)において以下3点を変更した以外は実施例1と同様にして、評価用基体の表面に、クロロホルム溶解指数Rの値が0%である束縛ポリマー層が形成された接着性基体を得た。ちなみに、以下(iii)の条件変更により、PMMA吸着層のクロロホルム溶解指数Rも0%となった。
(i)スピンコートの回転数を2000rpmではなく3000rpmにしたこと
(ii)熱処理時間を24時間ではなく0~80時間に変更したこと
(iii)PMMA薄膜の洗浄を、トルエンではなくクロロホルムで行ったこと
処理時間の変更により、PMMA吸着層の厚みはおおよそ2.0~3.4nmの範囲内で変化した。基本的に処理時間を長くするとPMMA吸着層は厚くなる傾向がみられた。
上記のようにして得られた、様々な厚みのPMMA吸着層を有する評価用基体を用いて、実施例1の(接着試料の作製と評価)と同様にして接着性を評価した。実施例1と同様、ポリプロピレン製シートがSi基板に強く接着する結果が得られた。つまり、実施例5においても、優れた接着力が得られた。
[実施例6]
(概要)
この実施例では、熱可塑性樹脂が、反応性熱可塑性樹脂と、反応性熱可塑性樹脂以外の束縛ポリマーと、を含む場合において、反応性熱可塑性樹脂(L鎖)の厚み、および/または、束縛ポリマー(S鎖)の厚みを変えた例を示す。
以下、詳細を説明する。
(具体的手順)
以下(i)および(ii)を変更したこと以外は実施例1と同様にして、評価用基体の表面に、クロロホルム溶解指数Rの値が0%である束縛ポリマー層が形成された接着性基体を得た。
(i)PBPとして、実施例1で用いた数平均分子量が65.4kで分散度が2.22のものではなく、数平均分子量が119kで分散度が2.11のものを用いたこと
(ii)(PMMA吸着層の形成)において、スピンコートの回転数を2000rpmではなく3000rpmにしたこと、熱処理時間を24時間ではなく0~80時間に変更したこと、および、PMMA薄膜の洗浄を、トルエンではなくクロロホルムで行ったこと
ちなみに、PMMA薄膜の洗浄をクロロホルムで行ったことにより、PMMA吸着層のクロロホルム溶解指数Rも0%となった。
上記のようにして形成した接着性基体における、PMMA吸着層の厚み、PBP吸着層の厚みおよびこれら厚みの比(PBP吸着層/PMMA吸着層)を下表に示す。
Figure 2022119978000006
また、上記とは別に、(PMMA吸着層の形成)において、スピンコートの回転数を2000rpmではなく3000rpmにしたこと、熱処理時間を24時間ではなく0~80時間に変更したこと、および、PMMA薄膜の洗浄を、トルエンではなくクロロホルムで行ったこと以外は、実施例1と同様(用いた材料は実施例1とすべて同じ)にして、クロロホルム溶解指数Rの値が0%である束縛ポリマー層が形成された接着性基体を得た。ちなみに、PMMA薄膜の洗浄をクロロホルムで行ったことで、PMMA吸着層のクロロホルム溶解指数Rも0%となった。
得られた接着性基体における、PMMA吸着層の厚み、PBP吸着層の厚みおよびこれら厚みの比(PBP吸着層/PMMA吸着層)を下表に示す。
Figure 2022119978000007
表2および表3のそれぞれから理解されるとおり、PMMA吸着層の形成の際の熱処理時間を変えることで、PMMA吸着層の厚みを変えることができた。具体的には、熱処理時間を長くするほど厚いPMMA層を得ることができた。これは、熱処理により基体へのPMMAの吸着吸着が促進されたためと考えられる。
また、表2におけるPBP吸着層の厚みは、表3におけるPBP吸着層の厚みの2倍程度であった。用いるポリマーの分子量を変更することでPBP吸着層(L鎖)の厚みを変えられることが理解される。
上記の様々な厚みのPMMA吸着層およびPBP吸着層を有する評価用基体を用いて、実施例1の(接着試料の作製と評価)と同様にして接着性を評価した。実施例1と同様、ポリプロピレン製シートがSi基板に強く接着する結果が得られた。つまり、実施例6においても、優れた接着力が得られた。
この出願は、2020年8月28日に出願された日本出願特願2020-144312号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
1 接着性基体
11 基板
12 束縛ポリマー層
41 第1熱可塑性樹脂
42 第2熱可塑性樹脂
100 接着性基体(第1の接着性基体)
150 被着体
200 接着性基体(第2の接着性基体)
300 接合体
400 多層接合体
A 吸着性基
B 反応性基

Claims (22)

  1. 被着体に接着させて構造体を形成する用途に用いられる接着性基体であって、
    基体と、
    前記基体の表面に吸着または結合して前記表面に束縛された熱可塑性樹脂により構成された、厚み1~20nmの束縛ポリマー層と、
    を含み、
    前記熱可塑性樹脂は、ラジカル反応性基または付加反応性基からなる反応性基を有する反応性熱可塑性樹脂を含み、
    前記反応性基は、前記束縛ポリマー層の表面に分布して反応活性部を形成している、接着性基体。
  2. 請求項1に記載の接着性基体であって、
    前記束縛ポリマー層の、以下の工程1~3からなる手順で得られるクロロホルム溶解指数Rの値は3%以下である、接着性基体。
    <手順>
    ・工程1
    前記束縛ポリマー層の層厚を測定して得られた測定値をDとする。
    ・工程2
    以下の手順によりクロロホルム処理を行う。
    (i)容器内にクロロホルムを収容し、クロロホルムの温度を25℃に維持する。
    (ii)前記束縛ポリマー層の表面を上記クロロホルムに接液させた状態で30分間保持する。
    (iii)上記(ii)の状態から前記束縛ポリマー層の表面をクロロホルムから離隔させ、次いで前記表面をクロロホルムで洗い流した後、前記表面に残ったクロロホルムをウエスで吸い取り、そして真空乾燥させる。
    ・工程3
    前記工程2を実施した後に残る束縛ポリマー層の膜厚を測定して得られた測定値をD'とし、{(D-D')/D}×100をクロロホルム溶解指数R(%)とする。
  3. 請求項1または2に記載の接着性基体であって、
    前記反応性基はラジカル反応性基であり、
    前記ラジカル反応性基は、ベンゾフェノン骨格、ベンゾイル骨格、アントラキノン骨格、チオキサントン骨格からなる群より選ばれる少なくともいずれかの骨格を含む、接着性基体。
  4. 請求項1または2に記載の接着性基体であって、
    前記反応性基が付加反応性基であり、
    前記付加反応性基は、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、オキセタニル基、チオール基、イソシアネート基、酸無水物基およびマレイミド基からなる群から選択されるいずれかの官能基である、接着性基体。
  5. 請求項1~4のいずれか一項に記載の接着性基体であって、
    前記基体が、有機ポリマー、セラミックス、半導体または金属により形成されたものである、接着性基体。
  6. 請求項1~5のいずれか一項に記載の接着性基体であって、
    前記反応性基は、ラジカル反応性基であり、
    前記被着体の表面が、C-H結合を有するポリマーにより形成されている、接着性基体。
  7. 請求項1~6のいずれか一項に記載の接着性基体であって、
    前記反応性基は、付加反応性基であり、
    前記被着体の表面が、前記付加反応性基に対して反応性を有する官能基を含有する熱可塑性樹脂により形成されている、接着性基体。
  8. 請求項1~7のいずれか一項に記載の接着性基体であって、
    前記反応性熱可塑性樹脂は、-COOR(Rはメチル基またはエチル基)で表される基、エステル結合、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、エポキシ基、イソシアネート基、酸無水物基、マレイミド基およびベンゼン環含有基からなる群から選ばれる一または二以上の吸着性基を、分子内に少なくとも二以上有する、接着性基体。
  9. 請求項1~8のいずれか一項に記載の接着性基体であって、
    前記反応性熱可塑性樹脂は、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエステルおよびノボラック型フェノール樹脂からなる群より選ばれる少なくともいずれかを含む、接着性基体。
  10. 請求項1~9のいずれか一項に記載の接着性基体であって、
    前記基体の表面に吸着または結合して前記表面に束縛された前記熱可塑性樹脂は、前記反応性熱可塑性樹脂と、前記反応性熱可塑性樹脂以外の束縛ポリマーと、を含み、
    前記束縛ポリマーが吸着または結合した領域以外の基体表面領域に、前記反応性熱可塑性樹脂が吸着ないし結合している、接着性基体。
  11. 請求項10に記載の接着性基体であって、
    前記束縛ポリマーは、前記反応性熱可塑性樹脂と共通の主鎖骨格を有する熱可塑性樹脂である、接着性基体。
  12. 請求項10または11に記載の接着性基体であって、
    X線反射率測定および偏光解析測定に基づき求められる、前記基体上の前記反応性熱可塑性樹脂の厚みTは0.5~10nmである、接着性基体。
  13. 請求項10~12のいずれか1項に記載の接着性基体であって、
    X線反射率測定および偏光解析測定に基づき求められる、前記基体上の前記束縛ポリマーの厚みTは0.5~10nmである、接着性基体。
  14. 請求項10~13のいずれか1項に記載の接着性基体であって、
    X線反射率測定および偏光解析測定に基づき求められる、前記基体上の前記束縛ポリマーの厚みTに対する、前記基体上の前記反応性熱可塑性樹脂の厚みTの比(T/T)は、0.1~2である、接着性基体。
  15. 請求項1~14のいずれか一項に記載の接着性基体であって、
    前記基体は、非粒子基体である、接着性基体。
  16. 接着性基体と被着体とが接着してなる接合体であって、
    前記接着性基体が請求項1~15のいずれか一項に記載の接着性基体であり、
    前記接着性基体の前記束縛ポリマー層の表面と、前記被着体の一表面とが接着しており、
    前記被着体は、前記接着性基体における前記反応性基に対して反応性を有する官能基を含有する化合物を前記一表面に備え、
    前記反応性基と前記官能基とが反応して共有結合を形成している、接合体。
  17. 請求項16に記載の接合体であって、
    前記反応性基は、ベンゾフェノン骨格、ベンゾイル骨格、アントラキノン骨格、チオキサントン骨格からなる群より選ばれる少なくともいずれかの骨格を含む基であり、
    前記官能基は、α水素を含む基およびラジカル重合性二重結合を含む基からなる群より選ばれる少なくともいずれかの基である接合体。
  18. 請求項16に記載の接合体であって、
    前記反応性基と前記官能基の組み合わせが、下表の1~11のいずれかである接合体。
    Figure 2022119978000008
  19. 第1の接着性基体と、第2の接着性基体と、これらの接着性基体の間に介在する被着体とが積層した多層接合体であって、
    前記第1の接着性基体および前記第2の接着性基体は、請求項1~15のいずれか一項に記載の接着性基体であり、
    前記第1の接着性基体の前記束縛ポリマー層の表面と、前記被着体の一表面と、が接着しており、
    前記被着体は、前記第1の接着性基体における前記反応性基に対して反応性を有する官能基を含有する第1化合物を前記一表面に備え、
    前記第1の接着性基体の反応性基と前記第1化合物の官能基とが反応して共有結合を形成しており、
    前記第2の接着性基体の前記束縛ポリマー層の表面と、前記被着体の他の表面とが接着しており、
    前記被着体は、前記第2の接着性基体における前記反応性基に対して反応性を有する官能基を含有する第2化合物を前記他の表面に備え、
    前記第2の接着性基体の反応性基と前記第2化合物の官能基とが反応して共有結合を形成している、多層接合体。
  20. 請求項19に記載の多層接合体であって、
    前記反応性基は、ベンゾフェノン骨格、ベンゾイル骨格、アントラキノン骨格、チオキサントン骨格からなる群より選ばれる少なくともいずれかの骨格を含む基であり、
    前記官能基は、α水素を含む基およびラジカル重合性二重結合を含む基からなる群より選ばれる少なくともいずれかの基である多層接合体。
  21. 請求項19に記載の多層接合体であって、
    前記反応性基と前記官能基の組み合わせが、下表の1~11のいずれかである多層接合体。
    Figure 2022119978000009
  22. 請求項1~15のいずれか一項に記載の接着性基体における前記束縛ポリマー層の露出面と、被着体とを当接させた状態で、加熱またはエネルギー線照射により前記反応性基と前記被着体表面とを反応させて前記接着性基体と前記被着体とを接着する、接着方法。
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