JP2022119746A - 金属粉末 - Google Patents

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Abstract

【課題】平均粒子径1.50μm以下の金属粉末で圧粉体を製造しても、渦電流損が低位でインダクタ用の磁心として使用可能な圧粉体となる金属粉末を提供する。【解決手段】質量濃度で、Si:1.0~13.0%、Cr:0.10~8.00%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる金属粉末である。そして、前記金属粉末の表面に金属酸化物の絶縁被膜を有するものであり、さらに、SEM測定の個数基準一次粒子径のD50をX(μm)とし、レーザー回析粒度測定による体積基準二次粒子径のD50をY(μm)としたときに、Xが0.10~1.50μmで、YとXの比(Y/X)が1.50以下であることを特徴とする金属粉末である。これにより、低保磁力、高飽和磁化で、耐錆性に優れた金属粉末が得られ、さらに、コアロスの低い圧粉体が容易に得られる。【選択図】なし

Description

本発明は、金属粉末に関し、特にインダクタ向けとして好適な鉄合金からなる金属粉末に関する。
近年、スマートフォンやタブレットPC等に代表される小型携帯機器では、高機能化・多機能化が進んでいる。それに伴い、搭載する電源回路のインダクタにも搭載台数の増加や集積回路ICの高機能化に伴う大電流化への対応という要求が強くなっている。また、携帯機器の更なる小型化・薄型化の要求に対応して、インダクタの小型化・低背化という要求も強くなっている。
インダクタの磁心には、従来から、フェライト材料が用いられてきた。しかし、フェライトの飽和磁束密度が低いため、小型化すると飽和磁気により直流重畳特性が悪化し、大電流を流せなかった。このため、最近では、小型インダクタ用の磁心材料として、飽和磁束密度が高い鉄ベースの金属磁性微粒子である金属粉末が注目されている。さらに、インダクタを含む受動素子の小型・軽量化の実現、インダクタの磁歪などによる騒音の低下などの目的から電気回路の作動の高周波化がなされる方向にあり、それに伴って金属粉末を圧縮成形して作られる圧粉体を磁心として使用するインダクタでの渦電流損増加によるエネルギーのコアロス(「磁心損失」ともいう。)を改善することが重要である。
例えば、特許文献1には、「軟磁性合金粉末」が開示されている。この軟磁性合金粉末は、粉末表面にアルキルシリケートの加水分解によって得られるシリカ膜またはシリカの微粒子を付着させて絶縁層を形成することで、軟磁性合金粉末を圧縮成形して作られる圧粉体の比抵抗が増加し、渦電流損が低減することが記載されている。
また、特許文献2には、「Si酸化膜被覆軟磁性粉末」が開示されている。このSi酸化膜被覆軟磁性粉末は、鉄粉末の表面にSi、FeおよびOからなるSi-Fe-O三元系酸化物の拡散層を介してSiOx(x=1~2)堆積酸化膜が形成されており、Si-Fe-O三元系酸化物の拡散層は、鉄粉末との界面ではFeの濃度が高くかつSiの濃度が低く、SiOx(x=1~2)堆積酸化膜との界面ではFeの濃度が低くかつSiの濃度が高くなっている濃度勾配を有することで、軟磁性粉末表面に酸化膜が強固に密着し、従来のシリケート膜を被覆した軟磁性粉末をプレス成形し焼成して軟磁性材を製造する工程で、プレス成形中にシリケート膜が剥離したり破れたりして十分な絶縁効果が発揮できず、十分な高比抵抗が得られないという欠点を解決することが記載されている。
また、特許文献3には、「軟磁性粉末材料」が開示されている。この軟磁性粉末材料は、Feを主成分とする鉄粉粒子の表面に被覆されたシリコン酸化物を主成分とする被覆層を具備することを特徴とするものである。これにより、軟磁性粉末材料を使用した軟磁性成形体の比抵抗を高め、交流磁場で使用される場合であっても軟磁性成形体に発生する渦電流を抑えることができ、渦電流によるエネルギー損失を抑えられることが記載されている。
さらに、特許文献4には、「軟磁性材料粉末」が開示されている。この軟磁性材料粉末は、Fe系の軟磁性材料を含むコアとその表面を被覆する絶縁膜を有し、絶縁膜には無機酸化物と水溶性高分子とを含有する、軟磁性材料粒子を含むものである。この軟磁性材料粉末を使用して磁心に成形することで十分な密度が得られ磁心の透磁率を高くすることができると共に、軟磁性材料粉末に含まれる絶縁膜及び結合剤によって高い電気抵抗を有する磁心を得ることができることが記載されている。
特開2003-282317号公報 特開2007-123703号公報 特開2007-254768号公報 国際公開WO2016/056351号
金属粉末を圧縮成形して作られる圧粉体を磁心として使用するインダクタの更なる小型化を実現するためには、使用する金属粉末の細粒化が重要である。従来は、平均粒子径が2~50μmの金属粉末を使用してインダクタの磁心用の圧粉体を製造し、例えば積層型インダクタでは、縦1.0mm×横0.5mm×高さ0.5mmのサイズの小型インダクタが製造されているが、更なるサイズの小さいインダクタの製造では、1μm以下の微細な金属粉末を必要とする。
しかしながら、特許文献1~4に記載された技術では、圧粉体を製造する際に、平均粒子径1μm以下の金属粉末は、凝集し易く、また一旦凝集すると分散させにくいため、分散が不十分な金属粉末に表面被覆を実施すると、凝集体の上に表面被覆がなされ、凝集体の上に表面被覆をした金属粉末で圧粉体を製造すると、プレス成型時の圧力で凝集体が解れ、表面被覆されていない粒子の面同士が接触して電気の導通が発生するため、渦電流損が低減できないという問題があった。
本発明は、かかる従来技術の問題を解決し、平均粒子径1.50μm以下の金属粉末で圧粉体を製造しても、渦電流損が低位でインダクタ用の磁心として使用可能な圧粉体となる金属粉末を提供することを目的とする。ここで、「平均粒子径」とは、後述するように、金属粉末の粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し撮像して倍率2万倍で測定粒子数1000~2000個のSEM画像解析により求めた個数基準のD50のことをいう。
本発明者らは、上記した目的を達成するために、鉄粉を主成分として金属粉末の組成、粒子同士の絶縁を目的とする酸化物被覆量および金属粉末の粒度について鋭意検討した。その結果、Fe中に適正量のSi、Crを含有し、適正量の酸化物で金属粉末を被覆し、さらに酸化物で被覆された金属粉末の凝集体の粒度を一定以下の大きさとすることが肝要であることを見出した。特に、酸化物で被覆された金属粉末の凝集体の粒度を一定以下の大きさとすることで、圧粉体に成形した時のプレスによる凝集体の解れに起因した圧粉体の電気抵抗の低下を抑えることで、酸化物の被覆による電気抵抗を確保して、渦電流によるコアロスの少ない圧粉体の製造を容易にすることを新規に知見した。
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨は、次のとおりである。
(1)質量濃度で、Si:1.0~13.0%、Cr:0.10~8.00%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる金属粉末であって、前記金属粉末の表面に、金属酸化物の絶縁被膜を有し、SEM測定の個数基準一次粒子径のD50をX(μm)とし、レーザー回析粒度測定による体積基準二次粒子径のD50をY(μm)としたときに、Xが0.10~1.50μmで、YとXの比(Y/X)が1.50以下であることを特徴とする金属粉末。
(2)(1)において、前記金属粉末に、さらに、質量濃度で、S(硫黄):100~2000ppmを含有することを特徴とする金属粉末。
(3)(1)または(2)において、前記金属粉末に、さらに、質量濃度で、Ni:10.0%以下および/またはAl:5.0%以下を含有することを特徴とする金属粉末。
(4)(1)ないし(3)のいずれか一つにおいて、前記金属酸化物の絶縁被膜に、Si、TiおよびAlのうちの少なくとも1つの元素が前記金属粉末の表面積当たり0.001~0.100mol/m2含有することを特徴とする金属粉末。
(5)(1)ないし(4)のいずれか一つにおいて、前記金属粉末のSEM測定における全観測粒子数に対する球形粒子の個数率が45%以上であることを特徴とする金属粉末。
本発明によれば、平均粒子径1.50μm以下の金属粉末が、凝集の少ない状態で表面を酸化物で被覆しているため、圧粉体に成形することで、小型で高い電気抵抗を有するインダクタ用の磁心が得られるという効果を奏する。
以下、本発明の実施態様について詳細に説明する。
[金属粉末の組成、特徴]
本発明の金属粉末は、Feを主成分とする金属粉末(Fe合金粉末)である。つまり、本発明の金属粉末は、質量濃度で、Si:1.0~13.0%、Cr:0.10~8.00%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる金属粉末である。そして、前記金属粉末の表面に金属酸化物の絶縁被膜を有するものであり、さらに、SEM測定の個数基準一次粒子径のD50をX(μm)とし、レーザー回析粒度測定による体積基準二次粒子径のD50をY(μm)としたときに、Xが0.10~1.50μmで、YとXの比(Y/X)が1.50以下であることを特徴とする金属粉末である。ここで、「一次粒子径」とは、SEM画像において粒子の輪郭が識別できる粒子のサイズのことであり、「二次粒子径」とは、一次粒子が凝集して一つの粒子のように振る舞う凝集体のサイズのことである。また、「個数基準」とは、粒度分布を作成する際の基準であって、粒子の全個数中に占める範囲別の個数%の分布を示すものであり、「体積基準」とは、同様に、粒子の全体積中に占める範囲別の体積%の分布を示すものである。
また、前記金属粉末に、質量濃度で、S(硫黄):100~2000ppmを含有することが好ましい。そして、前記金属酸化物の絶縁被膜には、Si、TiおよびAlのうちの少なくとも1つの元素が前記金属粉末の表面積当たり0.001~0.100mol/m2含有することが好ましい。さらに、前記金属粉末のSEM測定における全観測粒子数に対する球形粒子の個数率が50%以上であることが好ましい。以下、組成における%およびppmは、質量濃度であることを意味する。
次に、組成限定の理由について説明する。
[Si:1.0~13.0%]
Feを主成分とする金属粉末では、Siは、ベースとなるFe中に固溶して、金属粉末の保磁力の低下に寄与する元素である。所望の低い保磁力を達成するためには、Siは、1.0%以上含有する必要がある。一方、13.0%を超えて含有すると、保磁力は増加し、飽和磁化が低下する。このため、Siは、1.0~13.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは、3.0~11.0%である。より好ましくは、6.0~9.0%である。
[Cr:0.10~8.00%]
Crは、金属粉末の磁気特性を低下させるが、耐食性を向上させる元素であり、本発明の金属粉末においては、0.10%以上含有させる必要がある。Crが0.10%未満と少ない場合には、粒子表面に錆が発生しやすくなる。一方、8.00%を超えて多量に含有すると、飽和磁化が低下する。このため、Crは、0.10~8.00%の範囲に限定した。なお、好ましくは、0.50~6.00%である。より好ましくは、0.70~4.00%である。ここで、耐食性とは、後述する耐錆性のことである。
[任意的選択元素]
さらに、混合可能な任意的選択元素としては、S(硫黄)、NiおよびAlが挙げられる。
[S(硫黄):100~2000ppm]
本発明の金属粉末は、混合可能な任意的選択元素として、S(硫黄)を100~2000ppm含有してもよい。本発明のFeを主成分としSiとCrを上述のように含有する金属粉末(Fe-Si-Cr合金粉末)は、SEM測定の個数基準一次粒子径のD50が、0.10~1.50μmの金属磁性微粒子であり、主に後述するCVD法またはPVD法で製造できる。CVD法、PVD法は、高温で気相にて粒子を形成させる方法であるが、金属粉末がガス中を飛翔して結晶成長する際に、特定の結晶面が優先して成長した多面体の粒子が混在してしまう。S(硫黄)は、生成した粒子の表面に濃化するが、このSの表面濃化層は、特定結晶面の優先成長を抑制するため、全方位に均等な結晶成長が生じ、球形に成長した粒子の存在率が高くできる。Sが100ppm未満では、この多面体発生の抑制効果が不十分であり、2000ppm超では、粒子の表面のS濃化量が過多となり粒子の成長が極端に抑制されて、目的とする粒度範囲より細かい粒子しか得られなくなる。このため、S(硫黄)は、100~2000ppm含有することが好ましい。なお、より好ましくは、300~1500ppmであり、さらに好ましくは、500~1000ppmである。
[Ni:10.0%以下]
本発明の金属粉末は、混合可能な任意的選択元素として、Niを10.0%以下(0%を含まない)含有してもよい。Niは、金属粉末に混合し、Fe含有量が減少すると、金属粉末の飽和磁化を低下させる元素であり、できるだけ低減することが好ましいが、Niは、他の元素に比べ、Fe合金粉末の酸化による発熱を抑制する効果があり、Fe合金粉末のハンドリングの安全性を確保することができ、飽和磁化を低下させる作用が緩慢であるため、10.0%以下の含有であれば許容できる。なお、コアとしての飽和磁束密度の向上のために、より好ましくは、5.0%以下である。さらに好ましくは、3.0%以下である。
[Al:5.0%以下]
また、本発明の金属粉末は、混合可能な任意的選択元素として、Alを0%超5.0%以下(0%を含まない)添加してもよい。Alは、Niと同様に、金属粉末に混合して、Fe含有量が低下すると、金属粉末の飽和磁化を低下させることになり、できるだけ低減することが好ましいが、Alは、他の元素に比べ、Fe合金粉末の酸化による発熱を抑制する効果があるため、Fe合金粉末のハンドリングの安全性を確保するために、5.0%以下の含有であれば許容できる。より好ましくは、1.0%以下である。さらに好ましくは、0.5%以下である。
[残部組成]
上記した組成以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。
不可避的不純物元素としては、C、N、P、MnおよびCuなどの元素が挙げられる。これらの元素は、金属粉末の飽和磁化を低下させる元素であり、合計で3%以下の含有であれば、実用上致命的とまで言える磁気特性の低下は生じないため、許容できる。なお、コアの飽和磁束密度の向上という観点からは、上記した元素の含有は、合計で1%以下とすることがより好ましい。さらに好ましくは、0.5%以下である。
[金属粉末の粒度(平均粒子径)]
[SEM測定の個数基準一次粒子径のD50:0.10~1.50μm]
金属粉末を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し撮像して倍率2万倍で測定粒子数1000~2000個のSEM画像解析(以下、「SEM測定」ともいう。)により求めた個数基準の累積50%の一次粒子径であるD50は、0.10~1.50μmの範囲に限定した。この範囲に限定した理由は、D50が、0.10μm未満では、保磁力が大きくなりすぎ、さらに表面被覆する工程において凝集の分散が困難となるからである。また、平均粒子径が1.50~50μmの金属粉末を磁心材として使用した従来のインダクタよりも更なる小型化のインダクタを製造するためには、磁心のサイズを下げるために磁心に使用する金属粉末の一次粒子径のD50は、1.50μm以下にする必要があるからである。なお、好ましくは0.20~1.00μmである。より好ましくは、0.30~0.90μmである。
[レーザー回折粒度測定による体積基準二次粒子径と前記SEM測定の一次粒子径の比]
レーザー回折式粒度分布測定装置(以下、「レーザー回折粒度測定」ともいう。)により得られる粒度は、金属粉末が凝集した状態での二次粒子径である。このレーザー回折粒度測定による体積基準の累積50%の二次粒子径であるD50をY(μm)とし、前述のSEM測定の個数基準一次粒子径のD50をX(μm)としたときに、YとXの比(Y/X)を1.50以下の範囲に限定した。Y/Xが1.50を超えると、酸化物で被覆された金属粉末を圧粉体に成形するプレスの圧力で凝集体が解れ、表面被覆されていない粒子の面同士が接触して電気の導通が発生する現象が圧粉体内で多数発生するため、圧粉体の電気抵抗が下がってインダクタの渦電流損が低減できないからである。なお、好ましくは、1.45以下である。より好ましくは、1.40以下である。
[球形粒子の個数率]
また、本発明の金属粉末は、前述のSEM測定により得られる全観測粒子数に対する球形粒子の個数率が45%以上であることが好ましい。ここでいう「球形粒子の個数率」とは、金属粉末をSEM観察し撮像して、1000個の粒子を目視観察して目視で球と判定する個数の割合(%)である。金属粉末の各粒子の形状が多面体であれば、粒子間で多面体の平面部分同士が接触してできた凝集体(凝集粒子)は、結合力が強いために分散させることが困難である。粒子を容易に分散させるためには、球形の粒子の存在率(個数率)が高い方が望ましい。球形粒子の個数率が45%未満であると、凝集体を分散させるために、分散させるための時間を延長するなどの処置が必要となり煩雑となる。このため、本発明の金属粉末の球形粒子の個数率は、45%以上の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、60%以上である。さらに好ましくは、70%以上である。
[絶縁被膜]
本発明の金属粉末の表面は、無機酸化物からなる絶縁被膜で被覆されている。その被膜中には、Si、TiおよびAlのうちの少なくとも1つの元素が金属粉末の表面積当たり0.001~0.100mol/m2含有することが好ましい。Si、TiまたはAlは、金属表面に酸化物として容易で安価に被覆させることができる元素である。それらの元素がその金属粉末の表面積当たり0.001mol/m2未満では、被膜の量が不足して絶縁効果が十分得られず、また、0.100mol/m2を超えると、被覆を行う時に粒子同士の接着を招き、分散が困難な凝集体を形成することがあるからである。より好ましい範囲は、0.002~0.080mol/m2である。さらに好ましくは、0.005~0.070mol/m2である。
また、上述の酸化物による表面被覆するための薬剤としては、Siを含む酸化物用としてエチルシリケート、アルコキシシランなど、Tiを含む酸化物用としてチタネート系カップリング剤、有機チタネートなど、また、Alを含む酸化物用としてAl系カップリング剤などが適用できる。
[金属粉末の製造方法]
次に、本発明の金属粉末の製造方法について説明する。
本発明の金属粉末は、化学的気相法(Chemical Vapor Deposition:以下、CVDともいう)を用いて製造することが好ましい。CVDでは、Fe、SiおよびCr等の合金元素を、高温の塩素ガスと反応させて生成した各元素の塩化物ガス、あるいは、Fe、SiおよびCr等の各元素の塩化物を高温に加熱して気化させた塩化物ガスを所定の比率で混合させた混合ガスに、さらにS(硫黄)を高温で気化させたガスを所定の比率で混合し、それぞれ適した温度で、水素を反応させて塩化物を還元し、Si、Cr、S(硫黄)等を含有する所望組成の金属粉末を得る。本発明の金属粉末の製造方法では、塩化物ガスの濃度、反応温度および反応時間を所望の粒子径となるように、調整することが好ましい。
反応(還元反応)後、得られた金属粉末は、さらに脱塩素工程を施される。脱塩素工程は、溶剤を用いて、得られた金属粉末を洗浄し、塩素濃度を低減し調整する工程である。使用する溶剤としては、未反応の塩化物や還元反応によって生成した副生成物を溶解する溶剤を用いることが好ましい。このような溶剤としては、水などの水溶性無機溶剤、あるいは、エチルアルコールなどの脂肪族アルコール類のような有機溶剤が例示される。脱塩素工程の終了時に金属粉末を含むスラリーが出来上がる。
なお、上述のCVDの代わりに、PVD(物理的気相法:Physical Vapor Deposition)を用いて製造しても良い。PVDには、真空蒸着法、スパッタリング法やイオンプレーティング法があり原料となる物質を真空下で加熱蒸発させたり、イオン化して微細な粒子を生成する技術である。PVDでは脱塩素工程は不要であるが、表面被覆工程に進む前に溶媒中に金属粉末を入れてスラリーを作る。
次に、酸化物による表面被覆工程は、前の工程の終了時にできる金属粉末を含むスラリーを湿式の分散機で分散させてから酸化物で表面被覆するための薬剤を上記スラリーに添加して湿式の分散機で分散させながら所定時間攪拌し、溶剤を排出して真空中で乾燥する。乾燥した金属粉末となった時に乾燥凝集が生じているので、乾式の分散機(例えば、ピンミル、乾式ジェットミルが適用できる。)または分級機(例えば、乾式サイクロンが適用できる。)に掛けて粗大な凝集体を解し、あるいは除去する。この工程で使用する湿式の分散機としては、例えば、薄膜旋回型高速ミキサー(プライミクス株式会社製 商品名 フィルミックス)や湿式ジェットミル(株式会社スギノマシン製 商品名 スターバースト)などの超音波分散機よりも分散力が高い分散機が好ましい。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
原料として、Feの塩化物、Siの塩化物、Crの塩化物およびS(硫黄)をそれぞれ準備した。そして、これら塩化物とS(硫黄)を、反応装置内で高温(1100℃)に加熱し、塩化物とS(硫黄)を気化させて、各元素の塩化物ガスおよびS(硫黄)ガスを生成した。生成した各元素の塩化物ガスを、以下に示す表1に記載の各金属粉末の組成となるように、混合比率を変化させて混合し、各種混合ガスとした。得られた混合ガスに、所定の反応温度(1100~1200℃)で、水素と反応させて、塩化物ガスを還元して金属粉末(Fe-Si-Cr合金粉末)を生成させながらS(硫黄)を金属粉末に含有させた。そして、得られた各種金属粉末に、純水を用いて洗浄する脱塩素工程を施し、残留する塩素物を除去した。
ついで、脱塩素工程が完了した金属粉末の水スラリーを湿式ジェットミルで分散させた後、酸化物による表面被覆をするための薬剤として、Siを含む酸化物用としてエチルシリケート、Tiを含む酸化物用としてチタネート系カップリング剤、または、Alを含む酸化物用としてAl系カップリング剤を上記金属粉末の水スラリーに添加し、湿式ジェットミルまたは超音波分散機で金属粉末を分散させながら、そのスラリーを所定時間攪拌した後、脱水して真空中で50℃に加熱しながら乾燥させ、Si、TiまたはAlの酸化物の被膜を金属粉末の表面に形成させた。その後、乾燥が完了した各種金属粉末を乾式のジェットミルで分散させた後、乾式のサイクロンで分級して粗大な凝集体を除去した。
得られた各種金属粉末について、金属粉末の元素含有量、絶縁被膜中の含有量、粒子径D50、球形個数率、磁気特性、耐錆性、さらに圧粉体のコアロスを調査した。調査方法は次のとおりとした。
(1)金属粉末の元素含有量、絶縁被膜中の含有量
金属粉末に含まれる合金元素のSi含有量は、湿式分析(二酸化ケイ素重量法)を用いて測定した。合金元素のCr量は、ICP(誘導結合プラズマ)を用いて測定した。さらに、金属粉末に含まれるS(硫黄)は、燃焼法を用いて測定した。
また、絶縁被膜中のSi含有量(金属粉末の表面積当たりの含有量)は、絶縁被膜で被覆させた粉末のSi含有分析値と絶縁被膜を被覆させる前の粉末のSi含有量分析値の差分を絶縁被膜中のSi含有量としてmol/g単位に換算した値を、絶縁被膜を被覆させる前の粉末のBET比表面積m2/gで割り算することで求めた。
(2)粒子径D50および球形個数率
得られた金属粉末について、SEM観察し撮像して画像解析により、個数基準の一次粒子径D50を求め、球形粒子の個数率を求めた。また、レーザー回折粒度測定にて体積基準の二次粒子径D50を測定し、前記SEM測定の個数基準一次粒子径との比を求めた。
(3)磁気特性
得られた各種金属粉末について、振動試料型磁力計(東英工業社製)を用いて、保磁力、飽和磁化を測定した。
(4)耐錆性
得られた各種金属粉末(磁性粉)を、樹脂に埋め込み固定した後、断面を鏡面研磨して、耐錆性測定用試験片とした。これら試験片を、恒温恒湿槽中に所定時間保持したのち、試験片内の粒子について、ランダムに20個を選定し、発錆の有無を観察し、発錆している粒子の割合を算出した。なお、恒温恒湿槽は、温度:60℃、相対湿度:95%の条件で保持した。また、恒温恒湿槽中の保持時間は、2000時間とした。
(5)圧粉体のコアロス
得られた各種金属粉末を、樹脂(エポキシ樹脂)中に混合し分散させ、各種混合粉とした。これら混合粉を、リング状金型(外径:13mm、内径:8mm)に充填し、プレス成型したのち、樹脂を硬化させて、厚さ:3mmのトロイダルコアを製造した。得られたコアに、1次側20ターン、2次側20ターンの巻線を与えて、B-Hアナライザ(岩通計測株式会社製SY-8218)を用いて、磁束密度0.025T、周波数1MHzの条件で、コアロスを測定した。
以上の得られた結果を、表1に併記する。
Figure 2022119746000001
本発明例は、いずれも、10Oe以下の低保磁力で、180emu/g以上の高い飽和磁化を保持し、耐錆性に優れた金属粉末であり、さらに、圧粉体とした場合に、コアロスが1000kW/m3以下である、コアロスの低い圧粉体を製造できるという顕著な効果を奏する。
一方、本発明の範囲を外れる比較例は、保磁力が10Oeを超えて高いか、飽和磁化が180emu/g未満と低いか、あるいは耐錆性が低下している金属粉末であり、圧粉体とした場合に、コアロスが1000kW/m3を超えてコアロスが高い圧粉体となっている。
表1の金属粉末No.1は、酸化物で表面被覆する工程において、湿式ジェットミルで分散した結果であり、Si含有量が過少であるために、保磁力が大きくなりコアロスが大きくなっている。
No.5は、酸化物で表面被覆する工程において、湿式ジェットミルで分散した結果であり、Si含有量が過多であるために、保磁力が大でコアロスも大となっている。
No.6は、酸化物で表面被覆する工程において、湿式ジェットミルで分散した結果であり、Cr含有量が過少であり、錆が多くなって、マグネタイト生成により低抵抗で渦電流損増加によるコアロス増となっている。
No.9は、酸化物で表面被覆する工程において、湿式ジェットミルで分散した結果であり、Cr含有量が過多で、保磁力が大となり、また、Fe含有量が少ないことにより飽和磁化が低く、コアロスが大となっている。
No.10は、酸化物で表面被覆する工程において、湿式ジェットミルで分散した結果であり、S(硫黄)含有量が過少であり、球形個数率が低いことから、充填密度が低く、飽和磁化が低くなっており、面接触によって低抵抗となりコアロスが大となっている。
なお、No.21は、このNo.10と比較すると、S(硫黄)を含有していない以外は、ほぼ同じ内容であるが、それにもかかわらず、球形個数率が高くなったのは、CVDでの反応温度がNo.10よりも高温(1200℃)で製造したからであり、その結果、飽和磁化が高く、低コアロスとなっている。
No.13は、酸化物で表面被覆する工程において、湿式ジェットミルで分散した結果であるが、S(硫黄)含有量が過多で保磁力が大であり、一次粒子径(X)が小さく、微細粒は凝集の分散が困難であるため、二次粒子径(Y)との比(Y/X)が大きくなっていることから、充填密度が低く飽和磁化も低く、コアロスが大となっている。
No.14は、酸化物で表面被覆する工程において、湿式ジェットミルで分散した結果であり、表面の絶縁被膜内のSi含有量が過少であるため、低抵抗でコアロスが大となっている。
No.15は、酸化物で表面被覆する工程において、湿式ジェットミルで分散した結果であるが、絶縁被膜内のSi含有量が過多であるため、表面被覆する工程において分散し難い凝集体が形成され、二次粒子径比(Y/X)が高く凝集体が増えて飽和磁化が低く、凝集体が解れてできる絶縁被膜を有さない新しい面による接触が起こって低抵抗となりコアロスが大となっている。
No.16は、酸化物で表面被覆する工程において、超音波分散機で分散した結果であるが、二次粒子径比(Y/X)が高く凝集体が多くなっているが、これは、金属粉末製造時の超音波分散機の能力(分散力)が小さかったために、二次粒子径(Y)が大きくなったからであり、それによって、充填密度が低く飽和磁化が低くなり、低抵抗によってコアロスが大となっている。
なお、No.3は、各元素の含有量や一次粒子径(X)などは、No.16と同じであるが、それにもかかわらず、二次粒子径(Y)が小さくなったのは、金属粉末製造時の湿式ジェットミルの分散力が大きく、凝集体ができなかったことによるものであり、その結果、低保磁力で低コアロスとなっている。
No.17は、酸化物で表面被覆する工程において、湿式ジェットミルで分散した結果であり、球形個数率が低いために、充填密度が低く飽和磁化が低くなり、面接触によって低抵抗となりコアロスが大となっている。
No.18は、酸化物で表面被覆する工程において、湿式ジェットミルで分散した結果であり、一次粒子径(X)が細かく、保磁力が大であり、微細粒は表面被覆する工程において凝集の分散が困難であるため二次粒子径比(Y/X)が高いことから凝集体が多く、充填密度が低く飽和磁化低くなっている。
No.20は、酸化物で表面被覆する工程において、湿式ジェットミルで分散した結果であり、一次粒子径(X)が大きく、二次粒子径(Y)も大きくなっているので、コアロスが大となっている。
No.24は、酸化物で表面被覆する工程において、湿式ジェットミルで分散した結果であり、Ni含有量が過多で、保磁力が大となり、また、Fe含有量が少ないことにより飽和磁化が低く、コアロスが大となっている。
No.27は、酸化物で表面被覆する工程において、湿式ジェットミルで分散した結果であり、Al含有量が過多で、保磁力が大となり、また、Fe含有量が少ないことにより飽和磁化が低く、コアロスが大となっている。
No.29および32は、酸化物で表面被覆する工程において、湿式ジェットミルで分散した結果であり、表面被覆量が過少であり、低抵抗によってコアロスが大となっている。
No.30および33は、酸化物で表面被覆する工程において、湿式ジェットミルで分散した結果であり、表面被覆量が過多であり、表面被覆する工程において分散し難い凝集体が増えて飽和磁化が低く、凝集体が解れてできる絶縁被膜を有さない新しい面による接触が起こって低抵抗となりコアロスが大となっている。

Claims (5)

  1. 質量濃度で、Si:1.0~13.0%、Cr:0.10~8.00%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる金属粉末であって、前記金属粉末の表面に、金属酸化物の絶縁被膜を有し、SEM測定の個数基準一次粒子径のD50をX(μm)とし、レーザー回析粒度測定による体積基準二次粒子径のD50をY(μm)としたときに、Xが0.10~1.50μmで、YとXの比(Y/X)が1.50以下であることを特徴とする金属粉末。
  2. 前記金属粉末に、さらに、質量濃度で、S(硫黄):100~2000ppmを含有することを特徴とする請求項1に記載の金属粉末。
  3. 前記金属粉末に、さらに、質量濃度で、Ni:10.0%以下および/またはAl:5.0%以下を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の金属粉末。
  4. 前記金属酸化物の絶縁被膜に、Si、TiおよびAlのうちの少なくとも1つの元素が前記金属粉末の表面積当たり0.001~0.100mol/m2含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の金属粉末。
  5. 前記金属粉末のSEM測定における全観測粒子数に対する球形粒子の個数率が45%以上であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の金属粉末。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2024048499A1 (ja) * 2022-08-31 2024-03-07 戸田工業株式会社 軟磁性金属粉末及びその製造方法並びに樹脂組成物

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