JP2022118937A - 成形構造体、成形構造体の製造装置、および、成形構造体の製造方法 - Google Patents

成形構造体、成形構造体の製造装置、および、成形構造体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】成形時の位置ずれが抑制可能な基材および基材の製造方法を提供する。【解決手段】繊維及び熱可塑性樹脂を含み、第1面10Aおよび前記第1面10Aと反対側の第2面10Bを有する板状の成形構造体1であって、前記第1面10Aが外側となるように折り曲げられた屈曲部13と、前記屈曲部13の前記第1面10Aに設けられ、少なくとも一部が切り欠かれた切欠部15と、前記屈曲部13以外の部分に設けられた孔部16,17と、を有する基材10を備え、前記孔部16,17内に熱可塑性樹脂が充填されている。【選択図】図2

Description

本明細書に開示される技術は、成形構造体、成形構造体の製造装置、および、成形構造体の製造方法に関する。
従来、成形構造体の製造方法として、特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1には、樹脂繊維と植物系繊維とを配合したものをマット状に形成した熱成形用繊維板を加熱・冷却してプレボードを作製し、そのプレボードを樹脂が溶ける温度に再加熱した後、コールドプレス成形用上下型によりプレス成形することで、車両の内装材を製造する方法が記載されている。
特開2001-179716号公報
特許文献1に開示の成形構造体の製造方法では、プレボード作製時と、基材成形時の2回にわたって加熱処理を行うため、加工費が増大したり、サイクルタイムが長くなり、製造コストが高くなる。また、加熱処理時には、プレボードから特有の臭いが発生したり、プレボード中の揮発性有機化合物が発生して、環境に好ましくないという問題がある。
そこで、基材成形時の加熱処理を省略するために、プレボードのうち屈曲部の外周となる部分に予め切欠部となる部分を設け、成形時、プレボードを屈曲する際に、硬く延び難いプレボードが屈曲部以外で裂けたり割れたりすることを抑制することが考えられる。
ところが、プレボードの屈曲される部分に予め切欠部となる部分を設ける構成では、プレボードを成形機の成形型にセットする際に、切欠部となる部分が正しい位置に配されるよう、成形型に対して厳密に位置決めを行う必要がある。また、屈曲成形時、プレボードをプレスする直前に成形型がプレボードの一部に接触する等の原因で、成形ずれが生じる懸念もあった。
本明細書に開示される技術は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、プレボードを成形型にセットする際や成形時に、成形型に対して位置ずれが生じることが抑制可能な成形構造体、成形構造体の製造装置、および、成形構造体の製造方法を提供することを目的とするものである。
本明細書に開示される技術は、繊維及び熱可塑性樹脂を含み、第1面および前記第1面と反対側の第2面を有する板状の成形構造体であって、前記第1面が外側となるように折り曲げられた屈曲部と、前記屈曲部の前記第1面に設けられ、少なくとも一部が切り欠かれた切欠部と、前記屈曲部以外の部分に設けられた孔部と、を有する基材を備え、前記孔部内に熱可塑性樹脂が充填されている。
繊維及び熱可塑性樹脂からなるプレボードをプレス成形して基材を形成する場合、プレボードが所定の位置以外で裂けたり割れたりすることを回避するべく、屈曲部の外側となる第1面に、予め切欠部となる部分を設ける場合がある。このような場合には、プレス成形時の位置決め精度を高める必要がある。成形型に対するプレボードの位置決め精度を高める方法として、プレボードに孔部を設け、孔部に成形型に設けた位置決め用の突部を嵌め入れる方法がある。しかし、このような方法では、完成した基材に孔部が残る。このような問題に対し、上記構成によれば、孔部が熱可塑性樹脂によって充填されるようになっているから、例えば、成形構造体の表面を表皮材で被覆する場合に、孔部に重ねられた位置に孔部の縁部に沿った凹部が形成されることが回避される。
前記切欠部内に、前記孔部内に充填された樹脂と同一の熱可塑性樹脂が充填されていてもよい。
このような構成によれば、切欠部により板厚が薄くなった屈曲部の剛性を、切欠部内に充填された熱可塑性樹脂により向上させることができる。また、切欠部内に充填された熱可塑性樹脂により、基材の屈曲形状を保持することができるから、成形構造体の製造時、基材成形前にプレボード中の熱可塑性樹脂を溶融させなくてもよく、加熱処理を省略することができる。さらに、切欠部に充填される熱可塑性樹脂は、孔部に充填される熱可塑性樹脂と同一とされているから、孔部内に溶融樹脂を充填するのと同時に、切欠部内に溶融樹脂を充填することができる。
前記基材は相手部品と組み付けるための組付部を有し、前記孔部は前記組付部に隣接して設けられていてもよい。
相手部品と組み付ける部分には、特に高い成形精度が要求される。上記構成によれば、孔部が組付部に隣接して設けられるから、組付部のセットずれや成形ずれを効果的に抑制することができる。つまり、組付部の成形精度を向上させることができる。
前記孔部は複数設けられており、複数の前記孔部のうち少なくとも二つは、前記基材において互いに反対側に位置する端部に配されていてもよい。
上記構成によれば、基材の成形時に、セットずれや成形ずれをより効果的に抑制することができる。
前記第2面に熱可塑性樹脂により成形された成形体が設けられており、前記成形体は、前記孔部内に充填された樹脂と同一の熱可塑性樹脂から構成されていてもよい。
上記構成によれば、成形構造体の製造時に、孔部内に溶融樹脂を射出するのと同時に、第2面に設けられる成形体を射出成形することができる。
また本明細書に開示される技術は、上述したいずれか1つに記載の成形構造体を製造する製造装置であって、下型と、前記下型に対して鉛直方向の上方に位置する上型とを備え、前記下型は、該下型の主体となる下側主分割型と、該下側主分割型に対して昇降可能な位置決め分割型とを備えており、前記位置決め分割型は、その型面が、前記下側主分割型の型面から上方に突出した突出状態と、前記下側主分割型の型面と同じ高さもしくは前記下側主分割型の型面より下方に位置する退避状態との間で変位可能とされており、前記上型および前記下型が型締めされ、前記位置決め分割型が退避した状態において、前記位置決め分割型の型面と前記上型の型面との間に形成される空間に、溶融した熱可塑性樹脂を射出するための射出装置に連なる樹脂供給路が連通している。
上記構成によれば、位置決め分割型を突出させた状態で、所定の位置に孔部を有するプレボードを位置決め可能であり、基材成形後、位置決め分割型を退避させることにより形成される空間(基材の孔部内)に、溶融樹脂を充填させることが可能である。
前記上型は、該上型の主体となる上側主分割型と、該上側主分割型に対して昇降可能な先行押さえ分割型とを備えており、前記先行押さえ分割型は、前記成形構造体における前記屈曲部より内側の部分に対応する位置に設けられていてもよい。
上記構成によれば、上型全体が下型に対して型締め状態とされるのに先立って、先行押さえ分割型を下降させることにより、下型に載置されたプレボードを下型に押さえつけて、位置ずれを抑制することができる。
また、本明細書に開示される技術は、上述した製造装置により成形構造体を製造する方法であって、繊維および熱可塑性樹脂を含むマットをプレス型によって熱プレスしてプレボードを成形するプレボード成形工程と、前記プレボードの板面の所定箇所に切込みを入れるとともに前記孔部を形成する切削工程と、前記位置決め分割型を前記下側主分割型の型面から上方に突出した状態とし、前記位置決め分割型を前記プレボードの前記孔部内に挿入しつつ、前記プレボードを前記下型に対して位置決めする位置決め工程と、前記下型の型面と前記上型の型面とにより、前記プレボードを前記切込みに沿いかつ前記切込みが形成された面が外側となる形で折り曲げるようプレスして、前記屈曲部、および、前記切込みが開かれてなる前記切欠部を有する前記基材を成形する基材成形工程と、前記位置決め分割型の型面が前記下側主分割型の型面と同じ高さもしくは前記下側主分割型の型面より下方に位置するように前記位置決め分割型を退避させる退避工程と、前記位置決め分割型が退避したことにより形成された前記孔部内の空間に熱可塑性樹脂を充填する孔部充填工程と、を順に実行する成形構造体の製造方法である。
上記製造方法によれば、プレボードに設けられた孔部を成形型に設けられた突出状態の位置決め分割型に嵌め入れるようになっているから、プレボードを下型に対して正確に位置決めすることができ、成形時のずれも抑制することができる。しかも、孔部は位置ずれの役割を果たした後、熱可塑性樹脂により充填されるようになっているから、孔部による基材表面の凹凸を解消することができる。
前記上型は、該上型の主体となる上側主分割型と、前記上側主分割型に対して昇降可能とされ、前記成形構造体における前記屈曲部より内側の部分に対応する位置に設けられた先行押さえ分割型とを備えており、前記位置決め工程の後、前記基材成形工程に先立って、前記上側主分割型を下降させずに前記先行押さえ分割型を下降させて、前記先行押さえ分割型により前記プレボードを前記下型の型面に押さえ付ける押さえ工程を実行してもよい。
上記製造方法によれば、下型に対するプレボードの成形時の位置ずれをより確実に抑制することができる。
前記切欠部内の空間に前記孔部内に充填された樹脂と同一の熱可塑性樹脂を充填する切欠部充填工程を含み、前記切欠部充填工程は、前記孔部充填工程と同時に実行されてもよい。上記製造方法によれば、孔部を充填するのと同時に切欠部を充填することができる。
前記切欠部充填工程において、前記屈曲部の内側から前記切欠部に前記熱可塑性樹脂を充填するようにしてもよい。
上記製造方法によれば、切欠部の外周にゲート(射出口)の跡が形成されてしまうことがなく、外周を美しく成形することができる。
前記プレボードの下面に、前記孔部内に充填された樹脂と同一の熱可塑性樹脂からなる成形体を射出成形する成形体成形工程を含み、前記成形体成形工程は、前記孔部充填工程と同時に実行されてもよい。
上記製造方法によれば、孔部を充填するのと同時に成形体を射出成形することができる。
本明細書に開示される技術によれば、プレボードを成形型にセットする際や成形時に位置ずれが生じることが抑制可能な成形構造体、成形構造体の製造装置、および、成形構造体の製造方法を提供することができる。
一実施形態のシートバックボードを表側から視た状態を示す斜視図。 シートバックボードの背面図 プレボード成形工程を説明するための図であって、繊維マットをプレス型によってプレスしている最中の状態を示す断面図 切削工程を説明するための図であって、プレボードを切削した状態を示す斜視図 プレボードを下型に載置する前の状態を示す断面図(上型及び下型が型開き状態) 位置決め工程を説明するための図であって、図5に示す状態からプレボードを下型に位置決めした状態を示す断面図 押さえ工程を説明するための図であって、図6に示す状態から先行押さえ分割型を下降させた状態を示す断面図 基材成形工程を説明するための図であって、図7に示す状態から成形装置において型閉じを行った状態を示す一部拡大断面図 図8に示す状態において、第1孔部に位置決め分割型が挿入された状態を示す説明図 図8に示す状態において、第2孔部に位置決め分割型が挿入された状態を示す説明図 退避工程を説明するための図であって、図8に示す状態から位置決め分割型を退避させた状態を示す一部拡大断面図 樹脂部成形工程(孔部充填工程)を説明するための図であって、図11に示す状態から溶融樹脂を射出した後の状態を示す一部拡大断面図 樹脂部成形工程(孔部充填工程)を説明するための図であって、図11に示す状態から溶融樹脂を射出した後の状態を示す、図12とは異なる方向の一部拡大断面図(図2のII-II線に相当する部分の断面図) 図12に示す状態から成形装置において上型及び下型が型開きされてシートバックボードが完成した状態を示す断面図(図2のI-I線に相当する部分の断面図)
一実施形態を図1から図14によって説明する。本実施形態の成形構造体、成形構造体の製造方法、および、成形構造体の製造装置は、自動車等の乗物用シートを構成するシートバックボード1に採用されるものである。より詳しくは、乗物用シートは、シートクッションおよびシートバックを備えており、シートバックボード1は、シートバックの背面を構成するものである。なお、各図面の一部にはX軸およびY軸及びZ軸を示しており、各軸方向が各図面で示した方向となるように描かれている。表裏方向については図1を基準とし、図1の上側を表側、下側を裏側とする。また、上下方向について、図1,2,4,9,10ではシートバックボード1を基準としてY方向を上下方向として説明し、図5~図8、図11~図14については、成形装置40を基準として、Z方向を上下方向として説明する。さらに、複数の同一部位については、一の部位に符号を付し、他の部位については符号を省略することがある。
シートバックボード1は、図1の斜視図に示すように、全体としては略矩形の浅皿状をなしている。シートバックボード1の一部には、上端部から下方に向けて凹状に切り欠かれた形状の組付部2が形成されている。組付部2は、シートバックをシートクッションに対して起立した状態と、倒した状態との間で回動させるためのレバー(相手側部材の一例)が取り付けられる部分である。
シートバックボード1は、板状の基材10と、基材10の所定部分に設けられた後述する樹脂部20と、を備えて構成されている。以下、各部位について詳細に説明する。
基材10は、平坦な略矩形の板状部材の周縁部が裏側に向けて立ち上がるように屈曲された形状をなしている。以下、基材10の中央の平坦な部分を平板部11とし、平板部11の周縁から裏側に向けて立ち上がる部分を立壁部12とし、平板部11と立壁部12の境界部分を屈曲部13とする。
平板部11は、全体としては平面視矩形の板状をなしている。平板部11は、詳細には、図2に示す上端部の左端に近接した位置に、平面視略U字形状に切り欠かれた形状の組付凹部14が形成されている。平板部11は、上下方向(Y方向)の寸法が、左右方向(X方向)の寸法よりやや大きいものとされる。
立壁部12は、平板部11の周縁部の全体にわたって設けられている。すなわち、平板部11における組付凹部14の縁部にも設けられており、組付凹部14と、組付凹部14の縁部から立ち上がる立壁部12により、上述したシートバックボード1の組付部2が構成されている。
基材10のうち、屈曲部13の表面10A(角の外側)には、屈曲部13の全体にわたって断面V字形状のV溝(切欠部の一例)15が形成されている(図11参照)。V溝15は、屈曲部13に沿う方向に延びている。
基材10の平板部11のうち、図2における組付凹部14の下方の当該組付凹部14に隣接した部分には、平板部11の表裏に貫通する第1孔部16が設けられている。換言すると、第1孔部16は、平板部11の図2における左上に設けられている。一方、平板部11の上下方向に延びる一対の側端部のうち、組付凹部14から遠い方に位置する側端部、すなわち、図2における右側の側端部の下方部分に隣接した部分には、平板部11の表裏に貫通する第2孔部17が設けられている。換言すると、第2孔部17は、平板部11の図2における右下に設けられている。つまり、第1孔部16および第2孔部17は、平板部11において、概ね対角線上の両端部付近(互いに反対側に位置する端部)に位置している。第1孔部16は円形をなしている。一方、第2孔部17は上下方向に長い楕円形状をなしている。第2孔部17は、第1孔部16を内側に含むことが可能な大きさとされている。
基材10は、繊維及び熱可塑性樹脂を含むものとされる。基材10に含まれる繊維としては、例えば、ケナフ繊維が用いられるが、繊維の種類はこれに限定されない。基材10に用いられる繊維として、木質繊維、熱可塑性樹脂繊維、ガラス繊維や炭素繊維などを用いてもよい。また、基材10において、繊維は、バインダーとしての熱可塑性樹脂により結着されている。基材10に用いられるバインダーとしての熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリエステル系樹脂を例示することができる。
基材10の所定位置には、熱可塑性樹脂からなる樹脂部20が設けられている。樹脂部20は、平板部11の裏面10Bにおいて立壁部12に沿うように並んで設けられた複数のクリップ座(成形体の一例)21と、上述した屈曲部13の表面10A(角の外側)のV溝15を埋める補填部22と、上述した第1孔部16および第2孔部17を充填する充填部23と、平板部11の裏面10Bに形成された複数のリブ24,25,26と、を備えている(図1、図2参照)。
複数のクリップ座21は、基材10の平板部11の裏面10Bから突出する形で形成されている。詳細には、クリップ座21は、図2における平板部11の上端部に隣接して2つと、下端部に隣接して2つと、右側端部に隣接して1つと、左側端部に隣接して1つの、合計6つ設けられている。クリップ座21は平面視半円形をなしており、それぞれ、平板部11の中央から外側に向けてクリップが嵌め入れられるようになっている。クリップ座21は、例えば、熱可塑性樹脂であるポリプロピレンによって形成されている。
屈曲部13の表面10A(角の外側)には、屈曲部13の全体にわたって延びる補填部22が設けられている(図1参照)。補填部22は、屈曲部13の表面10Aに形成されたV溝15内に充填されている、補填部22は、例えば、熱可塑性樹脂であるポリプロピレンによって形成されている。
また、本実施形態において、第1孔部16および第2孔部17の内部には、充填部23が設けられている。充填部23は、第1孔部16および第2孔部17を埋めるように設けられており、それらの端面のうち表面23Aは、平板部11の表面10Aと面一とされている。一方、裏面23Bは、平板部11の裏面10Bからやや突出している(図14参照)。充填部23は、例えば、熱可塑性樹脂であるポリプロピレンによって形成されている。
さらに、上述した基材10の屈曲部13の裏面10B(角の内側)には、屈曲部13の全体にわたって、第1リブ24が設けられている。つまり、第1リブ24は環状をなしている。また、複数の各クリップ座21と第1リブ24との間は、第2リブ25により連結されている。さらに、充填部23と第1リブ24との間は、第3リブ26によって連結されている(図2参照)。
第1リブ24は、後述するように、成形型50に設けられた溶融樹脂を流通するための第1ランナー64内に充填された溶融樹脂が冷却されることで形成されたもの(第1ランナー64の跡)である。
また、第2リブ25は、クリップ座21を成形する際に、成形型50に設けられた溶融樹脂を流通するための第2ランナー(図示せず)内に充填された溶融樹脂が冷却されることで形成されたもの(第2ランナーの跡)である。
さらに、第3リブ26は、孔部16,17を充填する際に、成形型50に設けられた溶融樹脂を流通するための第3ランナー66内に充填された溶融樹脂が冷却されることで形成されたもの(第3ランナー66の跡)である。なお、上述した充填部23の、平板部11の裏面10Bからの突出寸法は、第3リブ26の平板部11からの突出寸法と同等とされている(図14参照)。
これら第1リブ24、第2リブ25、第3リブ26は、例えば、熱可塑性樹脂であるポリプロピレンによって形成されている。
シートバックボード1の構成は上述した通りであって、続いて、シートバックボード1を製造するための製造装置について説明する。シートバックボード1の製造装置は、大別すると、植物性繊維と熱可塑性樹脂とから作製された繊維マット10Fを加熱しつつ押圧してプレボード10Pを作製するプレス型30,31と、切削装置によって切削されたプレボード10Pを製品形状にプレス成形する成形装置40(製造装置の一例)と、を備えて構成される。
図3に示す一対のプレス型30,31は、図示しない駆動装置(例えば、電動モータ、エアシリンダ、油圧シリンダなど)によって、互いに型閉じ及び型開きが可能な構成となっている。一対のプレス型30,31(プレス板、熱板)には、例えば、通電によって発熱するヒータなどの発熱手段が内蔵されている。これにより、プレス型30,31は、所定の温度に加熱可能な構成となっており、繊維マット10Fを加熱プレスすることができる。なお、このようなヒータは、プレス型30,31のうちいずれか一方のみに設けられていてもよい。
成形装置40は、図5に示すように、射出装置41と、成形型50(上型51及び下型61)とを備えている。射出装置41は、例えば、スクリュータイプのものとされ、本実施形態では下型61に設けられている。
上型51は、図示しない駆動装置(例えば、電動モータ、エアシリンダ、油圧シリンダなど)によって、下型61(固定型)に対して移動が可能な可動型とされる。上型51を下型61に対して接近離間させることで上型51及び下型61の型閉じ及び型開きが可能な構成となっている。
下型61は、上型51との対向面である型面61Aが上型51に向かって突き出す形状をなしている。また、上型51は、下型61との対向面である型面51Aが、下型61の形状に対応して凹む形状をなしている。上型51は、図8等に示すように、上型51及び下型61が型閉じされた閉状態では、下型61に対して、基材10板厚に等しい距離だけ離間して対向配置される。つまり、閉状態では上型51と下型61との間には基材10を成形するための基材成形空間S1が形成される。これにより、上型51及び下型61でプレボード10Pをプレスすると、プレボード10Pが基材成形空間S1の形状に対応する形に圧縮され、基材10が成形される構成となっている。なお、基材10の板厚、すなわち、閉状態における上型51および下型61の離間距離は、プレボード10Pの板厚よりも小さいものとされる。
図5に示すように、下型61は、該下型61の主体となる下側主分割型63と、該下側主分割型63に対して昇降可能な位置決め分割型62とを備える。位置決め分割型62は細長い円柱形状をなしており、下側主分割型63に対して、その型面62Aが下側主分割型63の型面63Aから上方に突出した突出状態(図5参照)と、下側主分割型63の型面63Aより下方に位置する退避状態(図11参照)との間で変位可能とされている。位置決め分割型62は、プレボード10Pが下型61に対して位置決めされた状態(図6参照)において、上述した第1孔部16および第2孔部17に対応する位置に設けられている。また2つの位置決め分割型62の直径は、第1孔部16の直径と同等あるいは僅かに小さい寸法とされている。プレボード10Pが下型61に載置され、位置決め分割型62が第1孔部16に挿入された状態において、位置決め分割型62と第1孔部16との間には、大きい隙間が生じないように設定されている(図9参照)。一方、同状態において、位置決め分割型62と第2孔部16との間には、第2孔部16の延び方向(図10の上下方向)において若干の隙間が形成されるようになっている(図10参照)。
下側主分割型63の型面63Aには、上述したクリップ座21を成形するための複数のクリップ座成形凹部(図示せず)が、外部へ開口するように凹設されている。下側主分割型63は、クリップ座21を形成するための図示しないスライド機構を備えている。
また、下側主分割型63の型面63Aには、外部へ開口する溝状の第1ランナー64、第2ランナー(図示せず)、および、第3ランナー66が形成されている。
第1ランナー64は、下側主分割型63の上方に突き出した部分の端部(角部)に沿って、周回するように設けられている(図5参照)。つまり、第1ランナー64は、上述したシートバックボード1の屈曲部13に対応する位置に延びている。
第2ランナーは、クリップ座成形凹部と第1ランナー64との間を連結するように、第1ランナー64の延び方向と交差する方向に延びている。
また、第3ランナー66は、退避状態とされた位置決め分割型62により形成される退避凹部68(位置決め分割型62の型面62Aと下側主分割型63の内周面とで構成される凹部、図11参照)と第1ランナー64との間を連結可能なように、第1ランナー64の延び方向と交差する方向に延びている。この第3ランナー66には、射出装置41からの樹脂が射出される射出口であるゲート42が設けられている(図11参照)。
つまり、図11に示すように、成形型50が型閉じ状態とされ、かつ、位置決め分割型62が退避状態とされた状態(退避凹部68が形成された状態)において、ゲート42から第3ランナー66に射出された溶融樹脂は、第3ランナー66に連なる退避凹部68(充填部成形空間S3)内に射出されるとともに、第3ランナー66から第1ランナー64内に射出され、ひいては、第1ランナー64から第2ランナーを通じて、クリップ座成形空間に対して射出されるようになっている。
一方、上型51は、該上型51の主体となる上側主分割型53と、上側主分割型53に対して昇降可能な先行押さえ分割型52とを備える。先行押さえ分割型52は、基材10における屈曲部13より内側の部分に対応する位置に設けられている。また先行押さえ分割型52は、上側主分割型53の型面53Aから下方に突出した突出状態において、その型面53Aと下型61の型面61Aとの間の距離が基材10の厚み寸法と同等となるように設定されている。
次に車両用シートを構成するシートバックボード1の製造方法の一例について説明する。本実施形態のシートバックボード1の製造方法は、プレボード10Pを成形するプレボード成形工程と、プレボード10Pを所定の寸法および形状にカットし、所定箇所に切込み18を入れるとともに孔部16,17を形成する切削工程と、プレボード10Pを下型61に対して位置決めする位置決め工程と、プレボード10Pを下型61に押さえつける押さえ工程と、プレボード10Pを上型51および下型61によってプレスして基材10を成形する基材成形工程と、位置決め分割型62を退避させる退避工程と、第3ランナー66、第1ランナー64、および、第2ランナー内に溶融樹脂を射出することで、孔部16,17およびV溝15を充填するとともに、基材10と接合する形でクリップ座21を成形する、樹脂部成形工程(孔部充填工程、切欠部充填工程、および、成形体成形工程、の一例)と、が順に実行されるものである。
<プレボード成形工程>
プレボード成形工程では、図3に示すように、繊維と熱可塑性樹脂とからなる繊維マット10Fを、一対の平坦なプレス型30,31によって加熱プレスする。これにより、繊維マット10Fが圧縮されると共に、繊維マット10Fに含まれる熱可塑性樹脂が溶融することで互いの接触面において混ざり合う。その後、繊維マット10Fに含まれる熱可塑性樹脂が冷却固化することで、プレボード10Pが成形される。
<切削工程>
切削工程では、プレボード10Pを所定の寸法および形状に裁断機によりにカットする。本実施形態は、図4に示すように、全体として矩形状とされたプレボード10Pの一端縁部に、組付部2を形成するための凹部19を切り欠いて設けた形状とされる。また、成形後に屈曲部13とされる位置(端部に沿った位置)に、連続的に直線状の切込み18を形成する。切込み18は、プレボード10Pの表面10A側から形成するものとする。また、その深さ寸法については、後述する通りの寸法とする。さらに、所定位置に第1孔部16および第2孔部17を貫通形成する。
<位置決め工程>
位置決め工程では、冷却状態のプレボード10Pを、常温(加熱しない状態)で、下型61に対して位置決めする(図5および図6参照)。詳細には、下型61の型面61Aから上方に突出した状態とされた昇降可能な2つの位置決め分割型62を第1孔部16および第2孔部17の内部に挿入しつつ、プレボード10Pを下型61に載置する。
この時、例えば、プレボード10Pに反りやうねりが生じていたり、孔部16,17を形成する位置に公差や誤差が生じていたとしても、第2孔部17は第1孔部16よりも大きい寸法とされているから、第1孔部16が設けられている部分を正確に位置決めしつつ、第2孔部17により公差や誤差を吸収することができる(図9および図10参照)。またこの第2孔部17は、上述したように、略矩形のプレボード10Pの長手方向に延びる楕円形状とされているから、より公差や誤差が生じ易い長手方向において、効果的に位置ずれを吸収できるようになっている。
この位置決め工程においては、プレボード10Pは、切込み18が設けられた面が上面(表面10A)となるように、下型61に載置するものとする。
<押さえ工程>
続いて、型閉じに先立って、図7に示すように、上側主分割型53を下降させずに先行押さえ分割型52だけを下降させて、先行押さえ分割型52によりプレボード10Pを下型61の型面61Aに対して押し付ける。このようにすることにより、プレボード10Pが下型61から位置ずれすることが確実に抑制される。
<基材成形工程>
続いて、図8に示すように、成形型50を型閉じする(上側主分割型53を下降させる)ことで、プレボード10Pを上型51および下型61の各型面51A,61Aによってプレス成形する。これにより、プレボード10Pが基材成形空間S1の形状に倣う形状とされ、基材10が完成する。
このプレス成形により、プレボード10Pは複数の切込み18に沿って屈曲され、屈曲部13が形成される。本実施形態において、このプレス成形時にプレボード10Pは加熱されておらず、硬く延びに難いが、屈曲部13の表面10Aには切込み18が形成されているため、屈曲部13(切込み18)の表面10A(角の外側)が容易に開いて、断面楔形のV溝15(切欠部の一例)が形成される。屈曲部13が形成された状態(上型51および下型61が型閉じされた状態)において、V溝15と上型51の型面51Aとの間には、断面三角形状の空間が形成される。この空間は、補填部22を成形するための補填部成形空間S2とされる。また、V溝15の底部(溝の深さが最も深い部分)は、基材10の裏面10Bに隣接しているか、基材10の裏面10Bにまで到達している。つまり、上述した切削工程において、切込み18の深さ寸法を、屈曲時に形成されるV溝15の底部が基材10の裏面10Bに隣接するか、あるいは、裏面10Bにまで到達するように、予め設定しておく。
また、この型閉じ状態において、基材10と下型61との間には、クリップ座21を形成するためのクリップ座成形空間(図示せず)が形成されている。
<退避工程>
次に、図11に示すように、上型51の型面51A及び下型61の型面61Aによって基材10がプレスされた状態(型締めした状態)を保ちつつ、位置決め分割型62を、その型面62Aが下側主分割型63の型面63Aから窪むように退避させる(以下、下側主分割型63の型面63Aから窪むことにより形成される凹部を、退避凹部68とする。)これにより、基材10の第1孔部16および第2孔部17の内部に、退避凹部68から連なる充填部成形空間S3が形成される。なお、この退避状態の位置決め分割型62の型面62Aは、第3ランナー66の底部と面一となるように設定されている。
<樹脂部成形工程>
退避工程の後、樹脂部成形工程(孔部充填工程、成形体成形工程、および、切欠部充填工程の一例)が実施される。樹脂部成形工程では、上型51の型面51A及び下型61の型面61Aによって基材10がプレスされた状態(型締めした状態)で、射出装置41により溶融樹脂をランナー64,66内に射出するとともに、各空間内を充填する。具体的には、ゲート42から第3ランナー66内に射出された溶融樹脂は、充填部成形空間S3内に射出されるとともに、第1ランナー64および第2ランナーを通してクリップ座成形空間内に射出される。
また、第1ランナー64内の溶融樹脂は、第1ランナー64内から基材10に浸み込み、裏面10Bに隣接しているV溝15の底部から補填部成形空間S2内に流通されるとともに、充填される。あるいは、溶融樹脂は、シートバックボード1の裏面10Bに到達しているV溝15の底部、または、裏面10Bまで貫通した貫通孔から、補填部成形空間S2内に射出され、充填される。すなわち、溶融樹脂はシートバックボード1の裏面10B側からV溝15内に供給されるようになっている。
このようにして、第1ランナー64、第2ランナー、第3ランナー66、充填部成形空間S3、クリップ座成形空間、補填部成形空間S2が、溶融樹脂により充填される。
その後、これらに充填された溶融樹脂が冷却されることで、基材10および樹脂部20から構成されたシートバックボード1が完成する。シートバックボード1に含まれる熱可塑性樹脂(樹脂部20)が冷却固化された後、上型51及び下型61を開き、シートバックボード1を脱型する(図14参照)。これにより、シートバックボード1の製造が完了する。
続いて、本実施形態の作用効果について説明する。本実施形態は、繊維及び熱可塑性樹脂を含み、表面10Aおよび裏面10Bを有する板状のシートバックボード1であって、表面10Aが外側となるように折り曲げられた屈曲部13と、屈曲部13の表面10Aに設けられたV溝15と、屈曲部13以外の部分である平板部11に設けられた第1孔部16および第2孔部17と、を有する基材10を備え、第1孔部16および第2孔部17内に熱可塑性樹脂からなる充填部23が充填されている。
上記構成によれば、成形型50に対するプレボード10Pの位置決め精度を高めるために、プレボード10Pに、成形型50に設けた位置決め用の突部(位置決め分割型62)を嵌め入れるための孔部16,17を設ける場合でも、孔部16,17は、基材10の成形後に熱可塑性樹脂によって充填される(充填部23)ようになっている。したがって、例えば、シートバックボード1の表面10Aを表皮材で被覆する場合に、孔部16,17に重ねられた位置に孔部16,17の縁部に沿った凹部が形成されることが回避される。
また、V溝15内に、孔部16,17内に充填された樹脂と同一の熱可塑性樹脂からなる補填部22が充填されている。
このような構成によれば、V溝15により板厚が薄くなった屈曲部13の剛性を、補填部22により向上させることができる。また、V溝15内に充填された補填部22により、基材10の屈曲形状を保持することができるから、プレボード10Pの製造時、基材10を成形する前にプレボード10P中の熱可塑性樹脂を溶融させなくてもよく、加熱処理を省略することができる。さらに、V溝15に充填される熱可塑性樹脂は、孔部16,17に充填される熱可塑性樹脂と同一とされているから、孔部16,17内に溶融樹脂を充填するのと同時に、V溝15内に溶融樹脂を充填することができる。
また、シートバックボード1(基材10)は、シートバックを回動操作するためのレバーを取り付けるための組付部2を有し、孔部16,17は組付部2(組付凹部14)に隣接して設けられている。
相手部品と組み付ける部分には、特に高い成形精度が要求される。上記構成によれば、孔部16,17が組付部2に隣接して設けられるから、組付部2のセットずれや成形ずれを効果的に抑制することができる。つまり、組付部2の成形精度を向上させることができる。
また、2つの孔部16,17が設けられており、2つの孔部16,17は、基材10において互いに反対側に位置する端部(図2の左上および右下)に配されている。
上記構成によれば、基材10の成形時に、セットずれや成形ずれをより効果的に抑制することができる。
裏面10Bに熱可塑性樹脂により成形されたクリップ座21が設けられており、クリップ座21は、孔部16,17内に充填された樹脂と同一の熱可塑性樹脂から構成されている。
上記構成によれば、シートバックボード1の製造時に、孔部16,17内に溶融樹脂を射出するのと同時に、クリップ座21を射出成形することができる。
また本実施形態の成形装置40は、下型61と、下型61に対して鉛直方向の上方に位置する上型51とを備え、下型61は、該下型61の主体となる下側主分割型63と、該下側主分割型63に対して昇降可能な位置決め分割型62とを備え、位置決め分割型62は、その型面62Aが、下側主分割型63の型面63Aから上方に突出した突出状態と下側主分割型63の型面63Aから下方に位置する退避状態との間で変位可能とされており、上型51および下型61が型締めされ、位置決め分割型62が退避した状態において、位置決め分割型62の型面62Aと上型51の型面51Aとの間に形成される空間に、溶融した熱可塑性樹脂を射出するための射出装置41に連なる第3ランナー66が連通している。
上記構成によれば、位置決め分割型62を突出させた状態でプレボード10Pを位置決め可能であり、基材10の成形後、位置決め分割型62を退避させることにより形成される空間(基材10の孔部16,17内)に、溶融樹脂を充填させることが可能である。
また、上型51は、該上型51の主体となる上側主分割型53と、該上側主分割型53に対して昇降可能な先行押さえ分割型52とを備え、先行押さえ分割型52は、シートバックボード1における屈曲部13より内側の部分に対応する位置に設けられている。
上記構成によれば、上型51全体が下型61に対して型締め状態とされるのに先立って、先行押さえ分割型52を下降させることにより、下型61に載置されたプレボード10Pを下型61に押さえつけて、位置ずれを抑制することができる。
また、本実施形態は、繊維および熱可塑性樹脂を含むマットをプレス型30,31によって熱プレスしてプレボード10Pを成形するプレボード成形工程と、プレボード10Pの板面の所定箇所に切込み18を入れるとともに孔部16,17を形成する切削工程と、位置決め分割型62を下側主分割型63の型面63Aから上方に突出した状態とし、位置決め分割型62をプレボード10Pの孔部16,17内に挿入しつつ、プレボード10Pを下型61に対して位置決めする位置決め工程と、上側主分割型53を下降させずに先行押さえ分割型52を下降させて、先行押さえ分割型52によりプレボード10Pを下型61の型面61Aに押さえ付ける押さえ工程と、下型61の型面61Aと上型51の型面51Aとにより、プレボード10Pを切込み18に沿いかつ切込み18が形成された面が外側(表面10A)となる形で折り曲げるようプレスして、屈曲部13、および、切込み18が開かれてなるV溝15を有する基材10を成形する基材成形工程と、位置決め分割型62の型面62Aが下側主分割型63の型面63Aから下方に位置するように位置決め分割型62を退避させる退避工程と、位置決め分割型62が退避したことにより形成された孔部16,17内の空間および退避凹部68内と、クリップ座21を形成する空間と、V溝15内に熱可塑性樹脂を充填する樹脂部成形工程(孔部充填工程、成形体充填工程、切欠部充填工程)と、を順に実行するシートバックボード1の製造方法である。
上記製造方法によれば、プレボード10Pに設けられた孔部16,17を成形型50に設けられた突出状態の位置決め分割型62に嵌め入れるようになっているから、プレボード10Pを下型61に対して正確に位置決めすることができ、成形時のずれも抑制することができる。しかも、孔部16,17は位置ずれの役割を果たした後、熱可塑性樹脂により充填されるようになっているから、孔部16,17による基材10の表面10Aの凹凸を解消することができる。
また、押さえ工程により、下型61に対するプレボード10Pの成形時の位置ずれをより確実に抑制することができる。
また、孔部16,17内の空間、退避凹部68、クリップ座成形空間、および、V溝15内には、同一の熱可塑性樹脂が充填されるようになっているから、これらの空間に対して同時に溶融樹脂を射出し、空間内を充填することができる。
また、V溝15には、屈曲部13の内側から熱可塑性樹脂を充填するようになっているから、補填部22の外周にゲート42(射出口)の跡が形成されてしまうことがなく、外周を美しく成形することができる。
<他の実施形態>
本明細書に開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、基材10に設ける孔部16,17は板面を貫通する形態としたが、孔部は、裏面10Bから窪む有底の凹状のものとしてもよい。
(2)上記実施形態では、2つの孔部16,17が、基材の互いに反対側に位置する端部に設けられる形態を示したが、孔部は1つや3つ以上であってもよく、孔部を設ける位置も、上記実施形態に限るものではない。
(3)上記実施形態では、孔部16,17を充填する充填部23と、V溝15を充填する補填部22と、クリップ座21とが、同一の熱可塑性樹脂で構成される形態を示したが、これらは異なる種類の熱可塑性樹脂で構成されていてもよい。
(4)上記実施形態では、補填部22を、基材10の裏面10Bから溶融樹脂をV溝15内に流通させて成形する方法を示したが、補填部22は、基材10の表面10Aから溶融樹脂をV溝15内に直接射出して成形してもよい。つまり、上型51に樹脂射出用のゲートを設け、補填部成形空間S2内に溶融樹脂を直接射出することにより補填部22を成形してもよい。
(5)上記実施形態では、シートバックボード1の裏面10Bにクリップ座21を一体的に射出成形する例を示したが、クリップ座以外の成形体を一体に設けたり、クリップ座等の成形体を設けない構成のシートバックボードにも本明細書に開示される技術を適用することができる。
(6)上記製造方法において、押さえ工程は省略することもできる。
(7)上記実施形態では、位置決め分割型62の型面62Aは、下側主分割型63の型面63Aから上方に突出した突出状態(図5参照)と、下側主分割型63の型面63Aより下方に位置する退避状態(図11参照)との間で変位可能とする構成を示したが、位置決め分割型は、退避状態において、下側主分割型の型面と面一になる形態としてもよい。
1:シートバックボード(成形構造体)、2:組付部、10:基材、10A:表面(第1面)、10B:裏面(第2面)、10F:繊維マット、10P:プレボード、11:平板部、12:立壁部、13:屈曲部、15:V溝(切欠部)、16:第1孔部、17:第2孔部、18:切込み、20:樹脂部、21:クリップ座(成形体、熱可塑性樹脂)、22:補填部(熱可塑性樹脂)、23:充填部(熱可塑性樹脂)、23A:表面、23B:裏面、24:第1リブ、25:第2リブ、26:第3リブ、30,31:プレス型、40:成形装置(製造装置)、41:射出装置、42:ゲート、50:成形型、51:上型、51A:型面、52:先行押さえ分割型、52A:型面、53:上側主分割型、53A:型面、61:下型、61A:型面、62:位置決め分割型、62A:型面、63:下側主分割型、63A:型面、64:第1ランナー、66:第3ランナー(樹脂供給路)、68:退避凹部、S1:基材成形空間、S2:補填部成形空間、S3:充填部成形空間

Claims (12)

  1. 繊維及び熱可塑性樹脂を含み、第1面および前記第1面と反対側の第2面を有する板状の成形構造体であって、
    前記第1面が外側となるように折り曲げられた屈曲部と、
    前記屈曲部の前記第1面に設けられ、少なくとも一部が切り欠かれた切欠部と、
    前記屈曲部以外の部分に設けられた孔部と、を有する基材を備え、
    前記孔部内に熱可塑性樹脂が充填されている成形構造体。
  2. 前記切欠部内に、前記孔部内に充填された樹脂と同一の熱可塑性樹脂が充填されている請求項1に記載の成形構造体。
  3. 前記基材は相手部品と組み付けるための組付部を有し、前記孔部は前記組付部に隣接して設けられている請求項1または請求項2に記載の成形構造体。
  4. 前記孔部は複数設けられており、複数の前記孔部のうち少なくとも二つは、前記基材において互いに反対側に位置する端部に配されている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の成形構造体。
  5. 前記第2面に熱可塑性樹脂により成形された成形体が設けられており、前記成形体は、前記孔部内に充填された樹脂と同一の熱可塑性樹脂から構成されている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の成形構造体。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の成形構造体を製造する製造装置であって、
    下型と、前記下型に対して鉛直方向の上方に位置する上型とを備え、
    前記下型は、該下型の主体となる下側主分割型と、該下側主分割型に対して昇降可能な位置決め分割型とを備えており、
    前記位置決め分割型は、その型面が、前記下側主分割型の型面から上方に突出した突出状態と、前記下側主分割型の型面と同じ高さもしくは前記下側主分割型の型面より下方に位置する退避状態との間で変位可能とされており、
    前記上型および前記下型が型締めされ、前記位置決め分割型が退避した状態において、前記位置決め分割型の型面と前記上型の型面との間に形成される空間に、溶融した熱可塑性樹脂を射出するための射出装置に連なる樹脂供給路が連通している成形構造体の製造装置。
  7. 前記上型は、該上型の主体となる上側主分割型と、該上側主分割型に対して昇降可能な先行押さえ分割型とを備えており、
    前記先行押さえ分割型は、前記成形構造体における前記屈曲部より内側の部分に対応する位置に設けられている請求項6に記載の成形構造体の製造装置。
  8. 請求項6または請求項7に記載の製造装置により成形構造体を製造する方法であって、
    繊維および熱可塑性樹脂を含むマットをプレス型によって熱プレスしてプレボードを成形するプレボード成形工程と、
    前記プレボードの板面の所定箇所に切込みを入れるとともに前記孔部を形成する切削工程と、
    前記位置決め分割型を前記下側主分割型の型面から上方に突出した状態とし、前記位置決め分割型を前記プレボードの前記孔部内に挿入しつつ、前記プレボードを前記下型に対して位置決めする位置決め工程と、
    前記下型の型面と前記上型の型面とにより、前記プレボードを前記切込みに沿いかつ前記切込みが形成された面が外側となる形で折り曲げるようプレスして、前記屈曲部、および、前記切込みが開かれてなる前記切欠部を有する前記基材を成形する基材成形工程と、
    前記位置決め分割型の型面が前記下側主分割型の型面と同じ高さもしくは前記下側主分割型の型面より下方に位置するように前記位置決め分割型を退避させる退避工程と、
    前記位置決め分割型が退避したことにより形成された前記孔部内の空間に熱可塑性樹脂を充填する孔部充填工程と、を順に実行する成形構造体の製造方法。
  9. 前記上型は、該上型の主体となる上側主分割型と、前記上側主分割型に対して昇降可能とされ、前記成形構造体における前記屈曲部より内側の部分に対応する位置に設けられた先行押さえ分割型とを備えており、
    前記位置決め工程の後、前記基材成形工程に先立って、
    前記上側主分割型を下降させずに前記先行押さえ分割型を下降させて、前記先行押さえ分割型により前記プレボードを前記下型の型面に押さえ付ける押さえ工程を実行する請求項8に記載の成形構造体の製造方法。
  10. 前記切欠部内の空間に前記孔部内に充填された樹脂と同一の熱可塑性樹脂を充填する切欠部充填工程を含み、前記切欠部充填工程は、前記孔部充填工程と同時に実行される請求項8または請求項9に記載の成形構造体の製造方法。
  11. 前記切欠部充填工程において、前記屈曲部の内側から前記切欠部に前記熱可塑性樹脂を充填する請求項10に記載の成形構造体の製造方法。
  12. 前記プレボードの下面に、前記孔部内に充填された樹脂と同一の熱可塑性樹脂からなる成形体を射出成形する成形体成形工程を含み、
    前記成形体成形工程は、前記孔部充填工程と同時に実行される請求項8から請求項11のいずれか一項に記載の成形構造体の製造方法。
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