JP2022117927A - 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】熱可塑性樹脂本来の耐衝撃性などの機械的特性を保持ないし向上させつつ、外観にも優れる上に、さらに、ミリ波特性をも高い領域で安定的に発現する成形品を得ることができる熱可塑性樹脂組成物を提供する。【解決手段】ポリプロピレン樹脂(A)100質量部と酸変性オレフィン樹脂(B)5~25質量部とを含む、体積平均粒子径が50~850nmのポリプロピレン系樹脂粒子(C)に、ビニル系単量体(D1)をグラフト重合してなるポリプロピレン系グラフト重合体(E)1~80質量部と、エチレン単位量が50~95質量%であるエチレン・α-オレフィン系ゴム重合体(F)にビニル系単量体(D2)をグラフト重合してなるグラフト重合体(G)20~99質量部とを含む熱可塑性樹脂組成物(ポリプロピレン系グラフト重合体(E)とグラフト重合体(G)との合計は100質量部)。【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性樹脂本来の耐衝撃性などの機械的特性を保持ないし向上させつつ、外観にも優れる上に、さらに、ミリ波特性をも高い領域で安定的に発現する成形品を提供することができる熱可塑性樹脂組成物およびその成形品と、この成形品を含むミリ波用レドームおよびミリ波レーダーに関する。
近年、ミリ波を送受信するミリ波レーダーを備える無線通信や、センサー等の開発が活発になされ、その応用例も広く提案されている。中には、動きのある人や物体等の位置及び速度を瞬時に検知するセンサー、セキュリティチェック用イメージング装置等のように、既に実用化されたものもある。
ミリ波レーダーは、通常、ミリ波を送信若しくは受信するアンテナモジュールと、これを格納又は保護するレドーム(アンテナカバー)とを備える。レドームは、通常、樹脂成形品よりなり、用途により種々の形状を有するが、その全体を電波を透過しやすい材料により形成したものや、電波の経路に相当する特定部分のみを電波を透過しやすい材料により形成したものがある。
従来、ミリ波用レドームを構成するミリ波透過性の成形材料については種々検討がなされており、例えば、下記の特許文献1や特許文献2などが提案されている。
特許文献1には、特定のエチレン単位含有量のエチレン・α-オレフィン系ゴムに由来する重合体部とビニル系樹脂部とを有するゴム質重合体強化ビニル系樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物からなるミリ波を透過する樹脂部品が開示されている。
特許文献2には、AES樹脂とポリカーボネート樹脂に、ポリプロピレン系グラフト重合体(PP-g-AS)をブレンドした、レーダー装置が発するビームの経路に配置される樹脂部品が開示されている。
特開2016-121334号公報 国際公開第2017/104714号
上記のように、従来、ミリ波用レドームのミリ波透過性成形材料については種々提案がなされているが、特許文献1の成形材料は、ミリ波特性をある程度有するものの未だ不十分である。
特許文献2は、PP-g-AS体を配合することでミリ波特性の更なる向上を図るものであるが、ミリ波特性の安定性が十分ではないため、高次元のレーダー装置として使用するには、ばらつきも多く不良品も多く出る可能性があった。
レーダー装置としての不具合は安全性への懸念につながるため、不良品による製造エネルギーの無駄だけでなく、レーダーとしての性能のばらつきで安全性の低下にも波及する可能性がある。
本発明は、熱可塑性樹脂本来の耐衝撃性などの機械的特性を保持ないし向上させつつ、外観にも優れる上に、さらに、ミリ波特性をも高い領域で安定的に発現する成形品を提供することができる熱可塑性樹脂組成物と、その成形品を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、ポリプロピレン樹脂(A)と酸変性オレフィン樹脂(B)とを所定の割合で含む特定の粒子径のポリプロピレン系樹脂粒子(C)に、ビニル系単量体(D1)をグラフト重合してなるポリプロピレン系グラフト重合体(E)と、エチレン単位含有量が50~95質量%であるエチレン・α-オレフィン系ゴム重合体(F)にビニル系単量体(D2)をグラフト重合してなるグラフト重合体(G)とを所定の割合で配合することで、上記課題を解決し得ることを見出した。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
[1] ポリプロピレン樹脂(A)100質量部と酸変性オレフィン樹脂(B)5~25質量部とを含む、体積平均粒子径が50~850nmのポリプロピレン系樹脂粒子(C)に、ビニル系単量体(D1)をグラフト重合してなるポリプロピレン系グラフト重合体(E)1~80質量部と、エチレン単位含有量が50~95質量%であるエチレン・α-オレフィン系ゴム重合体(F)に、ビニル系単量体(D2)をグラフト重合してなるグラフト重合体(G)20~99質量部とを含む熱可塑性樹脂組成物(ただし、ポリプロピレン系グラフト重合体(E)とグラフト重合体(G)との合計は100質量部)。
[2] 前記ポリプロピレン系グラフト重合体(E)のグラフト率が10~70質量%である、[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[3] 前記ビニル系単量体(D1)100質量%のうち50~90質量%が芳香族ビニル化合物で10~50質量%がシアン化ビニル化合物である、[1]又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[4] 前記ポリプロピレン系グラフト重合体(E)は、ポリプロピレン系樹脂粒子(C)30~80質量%の存在下に、ビニル系単量体(D1)20~70質量%(ただし、ポリプロピレン系樹脂粒子(C)とビニル系単量体(D1)との合計は100質量%)をグラフト重合して得られる、[1]ないし[3]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[5] 前記ポリプロピレン系樹脂粒子(C)は前記ポリプロピレン樹脂(A)と前記酸変性オレフィン樹脂(B)とを溶融混練し、得られた混練物を水性媒体中に分散させてなる、[1]ないし[4]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[6] 前記ビニル系単量体(D2)100質量%のうち50~90質量%が芳香族ビニル化合物で10~50質量%がシアン化ビニル化合物である、[1]ないし[5]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[7] 前記グラフト重合体(G)は、エチレン・α-オレフィン系ゴム重合体(F)とビニル系単量体(D2)に由来するグラフト重合体部と、ビニル系樹脂部とを有するゴム質重合体強化ビニル系樹脂であり、該グラフト重合体部及びビニル系樹脂部の含有割合が、これらの合計100質量%に対してそれぞれ10~90質量%及び90~10質量%であり、グラフト率が20~65%である、[1]ないし[6]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[8] [1]ないし[7]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。
[9] [8]に記載の成形品を含むミリ波用レドーム。
[10] [9]に記載のミリ波用レドームを備えるミリ波レーダー。
本発明の熱可塑性樹脂組成物によれば、熱可塑性樹脂本来の耐衝撃性などの機械的特性を保持ないし向上させつつ、外観にも優れる上に、さらに、ミリ波特性をも高い領域で安定的に発現する成形品を提供することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物よりなる熱可塑性樹脂成形品によれば、耐衝撃性などの機械的特性、外観等に優れると共に、ミリ波特性及びその安定性にも優れた、高品質で信頼性の高いミリ波用レドーム及びミリ波レーダーを提供することができる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
〔熱可塑性樹脂組成物〕
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、
ポリプロピレン樹脂(A)100質量部と酸変性オレフィン樹脂(B)5~25質量部とを含む、体積平均粒子径が50~850nmのポリプロピレン系樹脂粒子(C)に、ビニル系単量体(D1)をグラフト重合してなるポリプロピレン系グラフト重合体(E)(以下、「本発明のポリプロピレン系グラフト重合体(E)」と称す場合がある。)1~80質量部と、
エチレン単位含有量が50~95質量%であるエチレン・α-オレフィン系ゴム重合体(F)に、ビニル系単量体(D2)をグラフト重合してなるグラフト重合体(G)(以下、「本発明のグラフト重合体(G)」と称す場合がある。)20~99質量部と
を含むことを特徴とする(ただし、ポリプロピレン系グラフト重合体(E)とグラフト重合体(G)との合計は100質量部)。
[ポリプロピレン系グラフト重合体(E)]
本発明のポリプロピレン系グラフト重合体(E)は、ポリプロピレン樹脂(A)100質量部と酸変性オレフィン樹脂(B)5~25質量部とを含む、体積平均粒子径が50~850nmのポリプロピレン系樹脂粒子(C)に、ビニル系単量体(D1)をグラフト重合してなるものであり、本発明のポリプロピレン系グラフト重合体(E)によれば、耐衝撃性、外観に優れた熱可塑性樹脂成形品を得ることができ、これを含む熱可塑性樹脂組成物は、さらに、ミリ波特性を安定化させつつ向上させることができる。
<ポリプロピレン樹脂(A)>
ポリプロピレン樹脂(A)としては、プロピレン単位を主成分として、全構成単位中に50モル%以上、好ましくは80~100モル%含むものであればよく、プロピレンの単独重合体であるホモ重合体(ホモポリマー)、プロピレンとエチレン、1-ブテン等のα-オレフィンなどの共重合成分とを共重合させたランダム共重合体、プロピレンの単独重合後、プロピレンとエチレン、1-ブテン等のα-オレフィンなどの共重合成分を共重合させたブロック共重合体が挙げられ、これらの何れも用いることができる。
ポリプロピレン樹脂(A)のホモ重合体としては、市販品を使用することができる。上記市販品としては、例えば、(株)プライムポリマー製の製品名:プライムポリプロJ105G、プライムポリプロJ106G、プライムポリプロJ106MG、プライムポリプロJ108M、プライムポリプロJ-700GP、住友化学(株)製の製品名:ノーブレンFS2011DG3、ノーブレンWF836DG3、ノーブレンD101、ノーブレンW101、ノーブレンZ101A等がある。
ポリプロピレン樹脂(A)のランダム共重合体としては、市販品を使用することができる。上記市販品としては、例えば、(株)プライムポリマー製の製品名:プライムポリプロJ226T、プライムポリプロJ229E、プライムポリプロJ-721GR、プライムポリプロJ-2021GR、プライムポリプロJ-2023GR、プライムポリプロJ-2041GA、プライムポリプロJ-3021GR、住友化学(株)製の製品名:ノーブレンFL6632G、ノーブレンFL6737、ノーブレンS131等がある。
ポリプロピレン樹脂(A)のブロック共重合体としては、市販品を使用することができる。上記市販品としては、例えば、(株)プライムポリマー製の製品名:プライムポリプロBJS-MU、プライムポリプロJ704LB、プライムポリプロJ704UG、プライムポリプロU705UG、プライムポリプロJ715M、プライムポリプロJ707G、プライムポリプロJ707EG、プライムポリプロJ830HV、プライムポリプロJ708UG、プライムポリプロJ709QG、住友化学(株)製の製品名:ノーブレンAD571、ノーブレンAW564、ノーブレンAZ564等がある。
ポリプロピレン樹脂(A)の重合度(分子量)は特に限定されないが、JIS K7210に準拠して測定温度230℃、荷重50Nで測定されたメルトマスフローレート(以下、MFRとも記す。)は、40~70g/10分であることが好ましく、45~65g/10分であることがより好ましい。MFRがこの範囲にあることで、ポリプロピレン系樹脂粒子(C)製造時の乳化状態をより安定的に実現できる。MFRがこの範囲から外れると乳化の形成が不十分となりやすく、乳化状態の安定時間が短くなりやすい。
このようなポリプロピレン樹脂(A)は、1種のみを用いてもよく、物性や共重合成分の種類や共重合組成等の異なるものを2種以上混合して用いることも可能である。
用いるポリプロピレン樹脂(A)は目的に応じて選択することができるが、本発明のポリプロピレン系グラフト重合体(E)の製造に際しては、乳化安定性の面からランダム共重合体、特にプロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・1-ブテンランダム共重合体を用いることが好ましい。
<酸変性オレフィン樹脂(B)>
酸変性ポリオレフィン樹脂(B)は、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、2-ペンテン、シクロペンテン、1-ヘキセン、2-ヘキセン、シクロヘキセン、1-ヘプテン、2-ヘプテン、シクロヘプテン、1-オクテン、2-オクテン、シクロオクテン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘプテン、ビニルシクロオクテン等のオレフィンの1種又は2種以上の重合体又は共重合体であるポリオレフィン樹脂を酸変性したものである。ポリオレフィン樹脂としては、これらの1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよいが、これらの中でも特にポリプロピレンを用いることが好ましい。
上記ポリオレフィン樹脂の酸変性により導入される変性基としては、スルホ基、カルボキシル基、リン酸基、ヒドロキシ基、チオール基等が好ましく、特にカルボキシル基が好ましい。
酸変性基としてカルボキシル基を導入した酸変性オレフィン樹脂(B)は、ポリオレフィン樹脂をカルボキシル基を有する飽和もしくは不飽和カルボン酸およびその酸無水物基含有化合物により変性することで得ることができる。
カルボキシル基を有する飽和もしくは不飽和カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、アクリル酸、メタクリル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。酸無水物基含有化合物としては、例えば、無水マレイン酸、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水コハク酸、無水フタル酸等が挙げられる。これらは、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
酸変性ポリオレフィン樹脂(B)の酸価は1~60mgKOH/gであることが好ましく、5~50mgKOH/gがより好ましい。酸価が1mgKOH/g以上であると乳化状態での安定性が良好となり、60mgKOH/g以下であれば優れた相溶性を得やすい。
また、同様の観点から、例えば、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂の場合、その無水マレイン酸のグラフト量は1~20質量%であることが好ましく、1~10質量%がより好ましい。無水マレイン酸のグラフト量が1質量%以上であると乳化状態での安定性が良好となり、20質量%以下であれば優れた相溶性を得やすい。
酸変性ポリオレフィン樹脂(B)としては市販品を用いることができる。酸変性ポリオレフィン樹脂(B)の市販品としては、例えば、三洋化成工業(株)製の製品名:ユーメックス1001、三井化学(株)製の製品名:ハイワックスNP0555A、ハイワックスNP50605A等が挙げられる。
酸変性ポリオレフィン樹脂(B)は1種のみを用いてもよく、導入された酸変性基の種類や導入量、酸価、ポリオレフィン樹脂の種類等の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
酸変性ポリオレフィン樹脂(B)は、ポリプロピレン樹脂(A)100質量部に対して5~25質量部用い、この配合量は好ましくは7~22質量部である。ポリプロピレン樹脂(A)100質量部に対して酸変性ポリオレフィン樹脂(B)を5~25質量部含むことで乳化状態が安定化し、これにより熱可塑性樹脂組成物に配合された際の特性の影響を小さくすることができる。
<ポリプロピレン系樹脂粒子(C)>
本発明に係るポリプロピレン系樹脂粒子(C)は、ポリプロピレン樹脂(A)100質量部と酸変性オレフィン樹脂(B)を5~25質量部、好ましくは7~22質量部含むポリプロピレン系樹脂組成物を特定範囲の体積平均粒子径をもった状態で、水性媒体に乳化分散させたものである。
ポリプロピレン系樹脂粒子(C)の調製方法は、特に限定されない。ポリプロピレン系樹脂粒子(C)の調製方法としては、例えば、公知の溶融混練手段(ニーダー、バンバリーミキサー、多軸スクリュー押出機等)でポリプロピレン樹脂(A)と酸変性オレフィン樹脂(B)を溶融混練し、機械的せん断力を与えて分散させ、乳化剤を含む水性媒体に添加する方法;ポリプロピレン樹脂(A)と酸変性オレフィン樹脂(B)を炭化水素溶媒(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等)に乳化剤とともに溶解し、これを水性媒体に添加して乳化させた後、十分に撹拌し、その後炭化水素溶媒を留去する方法;等が挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂粒子(C)の製造方法としては、有機溶媒を使用せずに生産することで、残留溶媒の臭気や、揮発性物質による健康及び環境への影響を回避できること、さらに、製造中の有機溶媒成分の換気などの特別な設備を必要としないことから、ポリプロピレン樹脂(A)と酸変性オレフィン樹脂(B)を180~240℃程度の温度で溶融混練し、機械的せん断力を与えて分散させ、乳化剤を含む水性媒体に添加する方法が好ましい。
乳化剤としては、公知のものが挙げられる。例えば、長鎖アルキルカルボン酸塩、スルホコハク酸アルキルエステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等が挙げられる。
乳化剤の添加量は、得られるポリプロピレン系樹脂粒子(C)の熱着色を抑制でき、ポリプロピレン系樹脂粒子(C)の粒子径制御が容易である点から、例えば、乳化剤としてオレイン酸カリウム等のアニオン系乳化剤を用いる場合、ポリプロピレン樹脂(A)100質量部に対して1~15質量部が好ましい。
なお、乳化剤は、溶融混練に先立ち、ポリプロピレン樹脂(A)及び酸変性オレフィン樹脂(B)と共に予め混合しておくことが、ポリプロピレン系樹脂粒子(C)の分散性の向上、乳化状態の安定性の観点から好ましい。
また、溶融混練に際しては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリを水溶液として添加する。アルカリ水溶液を添加することで、得られるポリプロピレン系樹脂粒子(C)の体積平均粒子径を制御し易くなる。アルカリは5~20質量%程度の濃度の水溶液として添加することが好ましく、その添加量は、他の条件や所望とする体積平均粒子径によっても異なるが、ポリプロピレン樹脂(A)100質量部に対して1~10質量部程度とすることが好ましい。
ポリプロピレン樹脂(A)と酸変性オレフィン樹脂(B)を溶融混練し、機械的せん断力を与えて分散させて得られる混練物は、60~120℃に冷却した後、水性媒体に添加して乳化させる。水性媒体としては通常水が用いられる。混練物を添加する際の水性媒体の温度は分散性の観点から80~90℃とすることが好ましい。
このようにして得られるポリプロピレン系樹脂粒子(C)の水性分散体の固形分濃度(ポリプロピレン系樹脂粒子(C)濃度)は20~60質量%程度であることが、その後のグラフト重合反応時の取り扱い性、生産性、長期乳化安定性等の観点から好ましい。
本発明において、ポリプロピレン系樹脂粒子(C)の体積平均粒子径は、乳化安定性、熱可塑性樹脂に対する分散性、得られる成形品の物性が優れる点から、50~850nmであり、好ましくは150~750nm、より好ましくは250~650nmである。
ここで、ポリプロピレン系樹脂粒子(C)の体積平均粒子径は、後掲の実施例の項に記載の方法で測定された値である。
ポリプロピレン系樹脂粒子(C)の体積平均粒子径を制御する方法としては、乳化剤の種類または添加量、溶融混練時のアルカリ添加や、混練時に加えるせん断力、温度条件等を調整する方法が挙げられる。
<ビニル系単量体(D1)>
ビニル系単量体(D1)としては、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、不飽和酸無水物、カルボキシル基含有不飽和化合物、アミノ基含有不飽和化合物、アミド基含有不飽和化合物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、オキサゾリン基含有不飽和化合物等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ビニル系単量体(D1)として、好ましくは芳香族ビニル化合物を含むものであり、さらに、シアン化ビニル化合物を含む単量体混合物であることがより好ましい。
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-,m-またはp-メチルスチレン、ビニルキシレン、p-t-ブチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられる。得られる成形品の耐衝撃性、外観の点から、スチレン、α-メチルスチレンが好ましい。芳香族ビニル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シアン化ビニル化合物としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。シアン化ビニル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
芳香族ビニル化合物の含有率は、ビニル系単量体(D1)100質量%のうち50~90質量%が好ましく、60~85質量%がより好ましく、70~80質量%がさらに好ましい。芳香族ビニル化合物の含有率が上記範囲内であれば、得られる成形品の発色性、耐衝撃性がさらに優れる。
シアン化ビニル化合物の含有率は、ビニル系単量体(D1)100質量%のうち10~50質量%が好ましく、15~40質量%がより好ましく、20~30質量%がさらに好ましい。シアン化ビニル化合物の含有率が上記範囲内であれば、成形品の耐衝撃性、外観がさらに優れる。
ビニル系単量体(D1)としては、芳香族ビニル化合物およびシアン化ビニル化合物の他に、これらと共重合可能な他の単量体を、本発明の効果を損なわない範囲で、例えばビニル系単量体(D1)100質量%中に30質量%以下の範囲で含んでもよい。
他の単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル化合物(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル等)、マレイミド系化合物(N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド等)等が挙げられる。他の単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<ポリプロピレン系グラフト重合体(E)>
本発明のポリプロピレン系グラフト重合体(E)は、ポリプロピレン系樹脂粒子(C)の存在下に、ビニル系単量体(D1)をグラフト重合することによって得られる。
本発明のポリプロピレン系グラフト重合体(E)は、ポリプロピレン系樹脂粒子(C)30~80質量%の存在下に、ビニル系単量体(D1)20~70質量%(ただし、ポリプロピレン系樹脂粒子(C)とビニル系単量体(D1)との合計は100質量%)をグラフト重合して得られたものが、得られる成形品の耐衝撃性、外観に優れる点から好ましい。
ポリプロピレン系グラフト重合体(E)のグラフト率は、得られる成形品の耐衝撃性、外観に優れる点から好ましくは10~70質量%、より好ましくは15~60質量%、さらに好ましくは20~50質量%である。
ここで、グラフト率は、後掲の実施例の項に記載の方法で測定された値である。
ポリプロピレン系樹脂粒子(C)へのビニル系単量体(D1)のグラフト重合法としては、公知の重合法(乳化重合法、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、或いはこれらの組み合わせ等)が挙げられる。グラフト重合法としては、得られる成形品の耐衝撃性、外観がより一層優れる点から、乳化重合法が特に好ましい。
乳化重合法によるポリプロピレン系グラフト重合体(E)の製造方法としては、例えば、ビニル系単量体(D1)に有機過酸化物を混合した上で、ビニル系単量体(D1)をポリプロピレン系樹脂粒子(C)の水性分散体に連続的に添加して70~95℃程度でグラフト重合させる方法が挙げられる。有機過酸化物は、有機過酸化物と遷移金属と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤として用いるのが好ましい。グラフト重合の際には、連鎖移動剤、乳化剤等を状況に応じて用いてもよい。
レドックス系開始剤としては、重合反応条件を高温下にする必要がなく、ポリプロピレン系樹脂粒子(C)の劣化等を避け、得られる成形品の耐衝撃性の低下を回避できる点から、有機過酸化物と硫酸第一鉄-キレート剤-還元剤を組み合わせたものが好ましい。
有機過酸化物としては、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド等が挙げられ、その添加量は、ビニル系単量体(D1)100質量部に対して0.5~4質量部程度が好ましい。
レドックス系開始剤としては、クメンヒドロペルオキシドと、硫酸第一鉄と、ピロリン酸ナトリウムと、デキストロース及び/又はラクトースとからなるものがより好ましい。
連鎖移動剤としては、メルカプタン類(オクチルメルカプタン、n-またはt-ドデシルメルカプタン、n-ヘキサデシルメルカプタン、n-またはt-テトラデシルメルカプタン等)、アリル化合物(アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、これらのナトリウム塩等)、α-メチルスチレンダイマー等が挙げられる。分子量を調整することが容易な点から、メルカプタン類が好ましい。連鎖移動剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
連鎖移動剤の添加方法は、一括、分割、連続のいずれでもよい。
連鎖移動剤の添加量は、ビニル系単量体(D1)100質量部に対して2.0質量部以下が好ましい。
乳化剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸スルホン酸塩、リン酸系塩、脂肪酸塩、アミノ酸誘導体塩等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、通常のポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルエーテル型、アルキルフェニルエーテル型等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、アニオン部にカルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩等を有し、カチオン部にアミン塩、第4級アンモニウム塩等を有するものが挙げられる。
乳化剤の添加量は、ビニル系単量体(D1)100質量部に対して10質量部以下が好ましい。
乳化重合法によって得られたポリプロピレン系グラフト重合体(E)は、水性媒体中に分散した状態である。ポリプロピレン系グラフト重合体(E)を含む水性分散体からポリプロピレン系グラフト重合体(E)を回収する方法としては、例えば、該水性分散体に析出剤を添加し、加熱、撹拌した後、析出剤を分離し、析出したポリプロピレン系グラフト重合体(E)を水洗、脱水、乾燥する析出法が挙げられる。
析出剤としては、例えば、硫酸、酢酸、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム等の水溶液が挙げられる。析出剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリプロピレン系グラフト重合体(E)を含む水性分散体には、必要に応じて酸化防止剤を添加してもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ポリプロピレン系グラフト重合体(E)の1種のみを含むものであってもよく、物性や共重合成分の種類や共重合組成等の異なるものを2種以上含むものであってもよい。
[グラフト重合体(G)]
本発明のグラフト重合体(G)は、エチレン単位含有量が50~95質量%であるエチレン・α-オレフィン系ゴム重合体(F)にビニル系単量体(D2)をグラフト重合してなるグラフト重合体であり、エチレンに由来する構造単位と、α-オレフィンに由来する構造単位とを含む共重合体ゴムであって、エチレン単位含有量(エチレンに由来する構造単位の含有割合)が50~95質量%であるエチレン・α-オレフィン系ゴム重合体(F)とビニル系単量体(D2)に由来するグラフト重合体部と、ビニル系単量体(D2)に由来するビニル系樹脂部を有する。
<エチレン・α-オレフィン系ゴム重合体(F)>
エチレン・α-オレフィン系ゴム重合体(F)は、エチレンに由来する構造単位と、α-オレフィンに由来する構造単位とからなる共重合ゴム、又は、これらの構造単位に加えて、更に、非共役ジエンに由来する構造単位を含む共重合ゴムである。
エチレン・α-オレフィン系ゴム重合体(F)を構成するエチレン単位量は、本発明の熱可塑性樹脂組成物における機械特性、成形性、得られる成形品の外観の観点から、50~95質量%であり、好ましくは30~85質量%、より好ましくは40~80質量%、更に好ましくは45~75質量%である。
上記α-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセン等が挙げられる。これらのα-オレフィンは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。α-オレフィンの炭素数は、本発明の熱可塑性樹脂組成物の機械特性、成形性、得られる成形品の外観の観点から、好ましくは3~20、より好ましくは3~12、更に好ましくは3~8である。
上記非共役ジエンとしては、アルケニルノルボルネン、環状ジエン、脂肪族ジエン等が挙げられる。これらの非共役ジエンは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
エチレン・α-オレフィン系ゴム重合体(F)が、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合ゴムである場合、非共役ジエンに由来する構造単位の含有割合の上限は、エチレン・α-オレフィン系ゴム重合体(F)を構成する構造単位の全量を100質量%とした場合に、好ましくは15質量%、より好ましくは10質量%、更に好ましくは5質量%である。
エチレン・α-オレフィン系ゴム重合体(F)は、ミリ波透過性の観点から、好ましくはエチレン単位と炭素数が3~8のα-オレフィン単位とからなる共重合体であり、より好ましくはエチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体及びエチレン・1-オクテン共重合体であり、特に好ましくはエチレン・プロピレン共重合体である。
上記のエチレン・α-オレフィン系ゴム重合体(F)は、ポリプロピレン系グラフト重合体(E)におけるポリプロピレン系樹脂粒子(C)と同様に、前述の酸変性オレフィン樹脂(B)で処理して用いることもできる。
この場合、エチレン・α-オレフィン系ゴム重合体(F)100質量部に対して酸変性オレフィン樹脂(B)を通常5~25質量部、好ましくは7~22質量部用いて前述のポリプロピレン系樹脂粒子(C)と同様に反応を行うことができる。
<ビニル系単量体(D2)>
ビニル系単量体(D2)としては、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、不飽和酸無水物、カルボキシル基含有不飽和化合物、アミノ基含有不飽和化合物、アミド基含有不飽和化合物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、オキサゾリン基含有不飽和化合物等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ビニル系単量体(D2)として、好ましくは芳香族ビニル化合物を含むものであり、さらに、シアン化ビニル化合物を含む単量体混合物であることがより好ましい。
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-,m-またはp-メチルスチレン、ビニルキシレン、p-t-ブチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられる。得られる成形品の耐衝撃性、外観の点から、スチレン、α-メチルスチレンが好ましい。芳香族ビニル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シアン化ビニル化合物としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。シアン化ビニル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
芳香族ビニル化合物の含有率は、ビニル系単量体(D2)100質量%のうち50~90質量%が好ましく、60~85質量%がより好ましく、70~80質量%がさらに好ましい。芳香族ビニル化合物の含有率が上記範囲内であれば、得られる成形品の発色性、耐衝撃性がさらに優れる。
シアン化ビニル化合物の含有率は、ビニル系単量体(D2)100質量%のうち10~50質量%が好ましく、15~40質量%がより好ましく、20~30質量%がさらに好ましい。シアン化ビニル化合物の含有率が上記範囲内であれば、成形品の耐衝撃性、外観がさらに優れる。
ビニル系単量体(D2)としては、芳香族ビニル化合物およびシアン化ビニル化合物の他に、これらと共重合可能な他の単量体を、本発明の効果を損なわない範囲で、例えばビニル系単量体(D2)100質量%中に30質量%以下の範囲で含んでもよい。
他の単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル化合物(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル等)、マレイミド系化合物(N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド等)等が挙げられる。他の単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<グラフト重合体(G)>
本発明のグラフト重合体(G)は、エチレン・α-オレフィン系ゴム重合体(F)の存在下に、ビニル系単量体(D2)をグラフト重合することによって得られる。
このようにして得られるグラフト重合体(G)はエチレン・α-オレフィン系ゴム重合体(F)とビニル系単量体(D2)に由来するグラフト重合体部と、ビニル系単量体(D2)に由来するビニル系樹脂部とを有する。
グラフト重合体(G)を構成する、ゴム質重合体部及びビニル系樹脂部の含有割合は、機械特性、成形性及び得られる成形品の外観の観点から、これらの合計を100質量%とした場合、それぞれ、好ましくは10~90質量%及び90~10質量%、より好ましくは20~80質量%及び80~20質量%、更に好ましくは25~75質量%及び75~25質量%である。
また、グラフト重合体(G)のグラフト率は、機械特性、成形性及び得られる成形品の外観の観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、特に好ましくは35~65質量%である。
ここで、グラフト重合体(G)のグラフト率は、後掲の実施例の項に記載の方法で測定された値である。
エチレン・α-オレフィン系ゴム重合体(F)へのビニル系単量体(D2)のグラフト重合法としては、公知の重合法(乳化重合法、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、或いはこれらの組み合わせ等)が挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト重合体(G)の1種のみを含むものであってもよく、物性や共重合成分の種類や共重合組成等の異なるものを2種以上含むものであってもよい。
[熱可塑性樹脂]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明のポリプロピレン系グラフト重合体(E)とグラフト重合体(G)を含む熱可塑性樹脂組成物である。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明のポリプロピレン系グラフト重合体(E)及びグラフト重合体(G)以外のその他の熱可塑性樹脂を含むものであってもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物が本発明のポリプロピレン系グラフト重合体(E)及びグラフト重合体(G)以外に含んでもよい熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、ASA樹脂、シリコン系ゴムに由来するSAS樹脂、AS共重合体、アクリロニトリル-スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル-N-フェニルマレイミド共重合体、α-メチルスチレン-アクリロニトリル共重合体、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル-スチレン共重合体、メタクリル酸メチル-N-フェニルマレイミド共重合体、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリフェニレンエーテル-ポリスチレン複合体などの1種または2種以上が挙げられる。
[各成分の含有量]
本発明の熱可塑性樹脂組成物におけるポリプロピレン系グラフト重合体(E)とグラフト重合体(G)の含有量は、これらの合計100質量部中において、ポリプロピレン系グラフト重合体(E)1~80質量部、グラフト重合体(G)20~99質量部であり、好ましくは、ポリプロピレン系グラフト重合体(E)10~80質量部、グラフト重合体(G)20~90質量部、より好ましくは、ポリプロピレン系グラフト重合体(E)20~75質量部、グラフト重合体(G)25~80質量部で、特に好ましくは、ポリプロピレン系グラフト重合体(E)35~75質量部、グラフト重合体(G)25~65質量部である。
この配合割合は、目的や用途によって選定することができるが、ポリプロピレン系グラフト重合体(E)とグラフト重合体(G)の含有割合を上記範囲内とすることで、本発明の熱可塑性樹脂組成物として、耐衝撃性などの機械的特性や外観の低下を抑制ないし向上させた上で、ミリ波特性の効果やその安定性を有効に発揮させることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物が本発明のポリプロピレン系グラフト重合体(E)及びグラフト重合体(G)以外のその他の熱可塑性樹脂を含む場合、その含有量は、ポリプロピレン系グラフト重合体(E)とグラフト重合体(G)との合計100質量部に対して、0~200質量部、特に10~190質量部、とりわけ20~150質量部とすることが好ましい。
熱可塑性樹脂の配合量は、目的や用途によって選定することができるが、上記範囲内とすることで本発明の熱可塑性樹脂組成物として、耐衝撃性などの機械的特性や外観の低下を抑制ないし向上させた上で、さらにミリ波特性の効果やその安定性を有効に発揮させることができる。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物中の全樹脂成分100質量%に占めるポリプロピレン樹脂成分の合計の割合(ポリプロピレン系グラフト重合体(E)中のポリプロピレン樹脂(A)とその他の熱可塑性樹脂として、熱可塑性樹脂組成物に含まれるプロピレン樹脂の合計の割合)は5~40質量%、特に10~35質量%、とりわけ13~32質量%であることが、耐衝撃性などの機械的特性や外観、ミリ波特性の効果を効率よく、安定的に発揮させることができる等の観点から好ましい。
[添加剤]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて添加剤を含有していてもよく、添加剤としては、例えば顔料、染料等の着色剤、充填剤(カーボンブラック、シリカ、酸化チタン等)、難燃剤、安定剤、補強剤、加工助剤、耐熱剤、酸化防止剤、耐候剤、離型剤、可塑剤、帯電防止剤等の1種又は2種以上が挙げられる。
〔成形品〕
本発明の成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなるものであり、耐衝撃性及び外観に優れる上に、ミリ波特性及びその安定性に優れる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物よりなる成形品の成形外観の良否は後掲の実施例の項に記載の方法で評価することができる。ここで評価される発色性(カーボンブラック着色時のL*値)や表面光沢などの成形外観は、後掲の実施例の項に記載の方法で得られる透過型電子顕微鏡像(10,000倍)で観察されるポリプロピレン樹脂成分(未染色部分)の分散状態とも関連する。すなわち、本発明の熱可塑性樹脂組成物よりなる成形品の成形外観は、後掲の実施例の項に記載の方法で測定される未染色部分1μmあたりの総面積ΣS(μm)に対する総周囲長ΣL(μm)の比によっても評価することができ、この値が大きいほど、ポリプロピレン樹脂成分がマトリックス中に微分散し、外観に優れる。本発明の熱可塑性樹脂組成物よりなる成形品の未染色部分1μmあたりの総周囲長ΣL(μm)/総面積ΣS(μm)比は、成形外観の観点から0.08以上であることが好ましく、0.1以上であることがより好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の成形方法としては、例えば、射出成形法、射出圧縮成形機法、押出法、ブロー成形法、真空成形法、圧空成形法、カレンダー成形法およびインフレーション成形法等が挙げられる。これらのなかでも、量産性に優れ、高い寸法精度の成形品を得ることができるため、射出成形法、射出圧縮成形法が好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる本発明の成形品は、耐衝撃性及び外観に優れ、ミリ波特性も安定的に発現できることから、この特性を必要とするミリ波レーダー部品、ミリ波レーダー用レドーム、ミリ波レーダーに好適であり、車両部品として用いることもでき、さらには、船舶部材および通信機器、OA機器、モバイル機器、玩具、掃除機、テレビジョン、エアコン等の家電部品等にも好適に利用できる。
〔ミリ波用レドームおよびミリ波レーダー〕
本発明の熱可塑性樹脂組成物よりなる成形品はミリ波特性及びその安定性に優れることから、ミリ波を透過する樹脂部品としてミリ波用レドームに用いることができる。具体的には、本発明の熱可塑性樹脂成形品のみでミリ波用レドームを構成することができる。また、本発明の熱可塑性樹脂成形品をミリ波透過性樹脂部品として用い、他の樹脂部品と組み合わせてミリ波用レドームを構成することができる。
本発明の熱可塑性樹脂成形品を用いたミリ波用レドームにより、ミリ波特性及びその安定性に優れ、高精度で信頼性に優れたミリ波レーダーを提供することができる。
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら制限されるものではない。
なお、以下において、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を意味する。
[測定・評価・操作方法]
以下の実施例および比較例における各種測定、評価及びそのための操作方法は以下の通りである。
<平均粒子径の測定>
マイクロトラック(日機装社製「ナノトラック150」)を用い、測定溶媒として純水を用いて測定した体積平均粒子径(MV)を平均粒子径とした。
<グラフト率の算出-1>
ポリプロピレン系グラフト重合体(E)の1gを80mLのアセトンに添加し、65~70℃にて3時間加熱還流し、得られた懸濁アセトン溶液を遠心分離機(日立工機社製、「CR21E」)にて14,000rpm、30分間遠心分離して、沈殿成分(アセトン不溶成分)とアセトン溶液(アセトン可溶成分)を分取した。そして、沈殿成分(アセトン不溶成分)を乾燥させてその質量(Ya(g))を測定し、下記式(1)からグラフト率を算出した。
なお、式(1)におけるYaは、ポリプロピレン系グラフト重合体(E)のアセトン不溶成分の質量(g)、XaはYaを求める際に用いたポリプロピレン系グラフト重合体(E)の全質量(g)、粒子質量分率は、ポリプロピレン系グラフト重合体(E)中のポリプロピレン系樹脂粒子(C)の固形分換算での含有割合である。
グラフト率(%)=
{(Ya-Xa×粒子質量分率)/Xa×粒子質量分率}×100・・・(1)
<グラフト率の算出-2>
グラフト重合体(G)の1gを80mLのアセトンに添加し、65~70℃にて3時間加熱還流し、得られた懸濁アセトン溶液を遠心分離機(日立工機社製、「CR21E」)にて14,000rpm、30分間遠心分離して、沈殿成分(アセトン不溶成分)とアセトン溶液(アセトン可溶成分)を分取した。そして、沈殿成分(アセトン不溶成分)を乾燥させてその質量(Yb(g))を測定し、下記式(2)からグラフト率を算出した。
なお、式(2)におけるYbは、グラフト重合体(G)のアセトン不溶成分の質量(g)、XbはYbを求める際に用いたエチレン・α-オレフィン系ゴム重合体(F)の全質量(g)、ゴムの質量分率は、グラフト重合体(G)中のエチレン・α-オレフィン系ゴム重合体(F)の固形分換算での含有割合である。
グラフト率(%)=
{(Yb-Xb×ゴムの質量分率)/Xb×ゴムの質量分率}×100・・・(2)
<溶融混練>
表1に示す樹脂成分配合で各成分を混合し、30mmφの真空ベント付き二軸押出機(池貝社製「PCM30」)で、シリンダー温度200~260℃、93.325kPa真空にて溶融混練を行い、透明の熱可塑性樹脂組成物を得た。溶融混練後に、ペレタイザー(創研社製「SH型ペレタイザー」)を用いてペレット化を行った。
<メルトボリュームレート(MVR)の測定>
溶融混練で得られた熱可塑性樹脂組成物について、ISO 1133規格に従って、220℃、10kgfでMVRを測定した。なお、MVRは熱可塑性樹脂組成物の流動性の目安となる。
<射出成形1(物性評価)>
溶融混練で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを、射出成形機(東芝機械社製「IS55FP-1.5A」)によりシリンダー温度200~270℃、金型温度60℃の条件で、縦80mm、横10mm、厚さ4mmの成形品を成形し、物性測定用成形品1とした。
<射出成形2(外観評価)>
溶融混練で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレット100部とカーボンブラック0.8部とをヘンシェルミキサーを用いて混合し、この混合物を240℃に加熱した押出機に供給し、混練して黒色ペレットを得、この黒色ペレットを用いて、射出成形機(東芝機械社製「IS55FP-1.5A」)によりシリンダー温度200~270℃、金型温度60℃の条件で、縦100mm、横100mm、厚さ1mmのプレートを成形し、外観評価用成形品2とした。
<射出成形3(誘電特性評価)>
溶融混練で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを、射出成形機(東芝機械社製「IS55FP-1.5A」)によりシリンダー温度200~270℃、金型温度60℃の条件で、縦80mm、横10mm、厚さ4mmの成形品を成形し、反ゲート側の流動末端部を10mm×10mmに切削した後、平面研削盤にて厚さ0.244mmに加工して、誘電特性測定用成形品3とした。
<射出成形4(引張特性評価)>
溶融混練で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを、射出成形機(東芝機械社製「IS55FP-1.5A」)によりシリンダー温度200~270℃、金型温度60℃の条件で、全長170mm、平行部の長さ80mm、中央部の平行部の幅10mm、厚さ4mmのダンベル形引張試験片の成形品を成形し、引張特性測定用成形品4とした。
<密度の測定>
射出成形1で得られた成形品1について、ISO1183規格に従い、密度を測定した。
<シャルピー衝撃強度の測定>
射出成形1で得られた成形品1について、ISO179規格に従い、23℃の条件でシャルピー衝撃試験(ノッチあり)を行い、シャルピー衝撃強度を測定した。
<引張破断ひずみの測定>
射出成形4で得られた成形品4について、ISO527に準じて、ダンベル形引張試験片をチャック間115mm、引張速度50mm/分にて、引張破壊ひずみ(%)を測定した。
<曲げ弾性率の測定>
射出成形1で得られた成形品1について、ISO 178に準じて、試験片(幅10mm、厚さ4mm、長さ80mm)を支点間距離64mm、曲げ速度2mm/分にて、3点曲げ試験を行い、曲げ弾性率を測定した。
<成形品の外観評価>
(目視評価)
射出成形2で得られた成形品2について、成形品表層部とゲート周辺部を目視評価し、評価結果を以下の通り示した。
問題なし:成形外観の不良がなく、実用上問題ない。
剥離あり:成形品表層に剥離が発生しており、実用不可能である。
白ボケ・もや:成形品表面に白くボケあるいはもやがかったところがあり、実用不可能である。
また、この成形品2について、以下の測定を行った。
(発色性の評価)
成形品2について、分光測色計(コニカミノルタオプティプス社製「CM-3500d」)を用いて、SCE方式にて明度L*を測定した。測定されたL*を「L*(ma)」とする。L*が低いほど黒色となり、発色性が良好と判定した。
「明度L*」とは、JIS Z8729において採用されているL*a*b*表色系における色彩値のうちの明度の値(L*)を意味する。
「SCE方式」とは、JIS Z8722に準拠した分光測色計を用い、光トラップによって正反射光を除去して色を測る方法を意味する。
(表面光沢の測定)
成形品2について、スガ試験機株式会社製の「デジタル変角光沢計UGV-5D」を用い、JIS K7105に準拠して、入射角60°、反射角60°における成形品表面の反射率(%)を測定した。反射率が高いほど表面外観に優れることを意味する。
(TEM像の解析)
外観評価用成形品2から切り出した試料で、厚さ100nmの薄膜を作製し、この薄膜を四酸化ルテニウム(RuO)で染色処理して、透過型電子顕微鏡(TEM)観測用の薄膜とした。
このTEM観測用薄膜について、透過型電子顕微鏡JEM-1400plus(日本電子株式会社)にて、10,000倍で観察し、TEM像を得た。
このTEM像について、染色部分(スチレン含有成分)と未染色部分(ポリプロピレン樹脂成分)の2値化画像処理を行い、未染色部分(ポリプロピレン樹脂成分)の総面積ΣS(μm)を測定した。
また、得られたTEM像の2値化後、未染色成分(ポリプロピレン樹脂成分)の相界面の長さを測定し、これを合計した値を未染色部分(ポリプロピレン樹脂成分)の総周囲長ΣL(μm)とした。
これらの値から、未染色部分1μmあたりの総周囲長ΣL(μm)/総面積ΣS(μm)の比を算出した。
<比誘電率及び誘電正接(tanδ)の測定>
射出成形3で得られた成形品3について、アジレントテクノロジー社製装置を用い、遮断円筒導波管法(JIS R1660-1)により、周波数約77GHzにおける比誘電率及び誘電正接を測定した。周波数は、試験片の厚さと比誘電率により決まるため、試験片とする成形品3の厚さは0.244mmとして測定を行った。なお、試験片は10個作成してそれぞれ測定した。比誘電率については10個の測定値の最小値、最大値と、各測定結果の平均値を記した。誘電正接については平均値を記した。
<ポリプロピレン樹脂(A)>
ポリプロピレン樹脂(A)として、以下を用いた。
(株)プライムポリマー製:プロピレンランダム共重合体
「プライムポリプロJ229E」
MFR:50g/10分(230℃/荷重50N)
<酸変性ポリオレフィン樹脂(B)>
酸変性オレフィン重合体(B-1)として以下を用いた。
三井化学(株)製:無水マレイン酸変性ポリプロピレン
「ハイワックスNP0555A」
無水マレイン酸グラフト量:3質量%
酸価:45mgKOH/g
酸変性オレフィン重合体(B-2)として以下を用いた。
三井化学(株)製:無水マレイン酸変性ポリプロピレン
「ハイワックス2203A」
質量平均分子量:2,700
酸価:30mgKOH/g
<ポリプロピレン系樹脂粒子(C)の製造>
ポリプロピレン樹脂(A)100部、酸変性オレフィン重合体(B-1)20部と、アニオン系乳化剤としてオレイン酸カリウム5部とを混合した。
この混合物を二軸スクリュー押出機(池貝社製、「PCM30」、L/D=40)のホッパーから4kg/hで供給し、該二軸スクリュー押出機のベント部に設けた供給口より、水酸化カリウム0.63部とイオン交換水3.87部を混合した水溶液を連続的に供給しながら、220℃に加熱して溶融混練して押出した。溶融混練物を二軸スクリュー押出機の先端に取り付けた冷却装置に連続的に供給し、90℃まで冷却した。そして、二軸スクリュー押出機先端より吐出させた固体を、80℃の温水中に投入し、連続的に分散させて、固形分濃度40%付近まで希釈して、ポリプロピレン系樹脂粒子(C)の水性分散体を得た。このポリプロピレン系樹脂粒子(C)の体積平均粒子径は500nmであった。
<ポリプロピレン系グラフト重合体(E-1)の製造>
撹拌機付きステンレス重合槽に、ポリプロピレン系樹脂粒子(C)の水性分散体を固形分として60部を入れ、固形分濃度が30%になるようにイオン交換水を加え、硫酸第一鉄0.008部、ピロリン酸ナトリウム0.35部およびフラクトース0.35部を仕込み、温度を80℃とした。スチレン30部、アクリロニトリル10部およびクメンヒドロペルオキシド0.62部を150分間連続的に添加し、重合温度を80℃に保ち乳化重合を行い、体積平均粒子径510nmのポリプロピレン系グラフト重合体を含む水性分散体を得た。
このポリプロピレン系グラフト重合体を含む水性分散体に酸化防止剤を添加し、硫酸にて固形分の析出を行い、洗浄、脱水、乾燥の工程を経て、粉状のポリプロピレン系グラフト重合体を得た。
このポリプロピレン系グラフト重合体のグラフト率を測定したところ30%であった。
この粉状のポリプロピレン系グラフト重合体は、有機溶剤を使用していないため、溶剤臭はしなかった。
<ポリプロピレン系グラフト重合体(e-1)の製造>
トルエン溶媒中100部、ポリプロピレン樹脂(A)の30部存在下、スチレン49部及びアクリロニトリル21部を溶液重合してポリプロピレン系グラフト重合体(e-1)を得た。このグラフト共重合体(e-1)のグラフト率は38.2%であった。なお、本グラフト重合体(e-1)のポリプロピレン系樹脂部分の粒子径は特定できなかった。
<グラフト重合体(G-1)の製造>
トルエン溶媒中、エチレン単位量が56%であり、プロピレン単位量が44%であるエチレン・プロピレン共重合ゴムの存在下、スチレン及びアクリロニトリルを溶液重合し、エチレン・α-オレフィン系ゴムを用いたグラフト重合体(G-1)を得た。このグラフト重合体(G-1)は、エチレン・プロピレン共重合ゴムにスチレンとアクリロニトリルがグラフト重合したグラフト重合体部45%と、未グラフトのアクリロニトリル・スチレン共重合樹脂53.4%とを含むゴム強化樹脂である。グラフト重合体(G-1)におけるグラフト率は50%であり、エチレン・プロピレン共重合ゴム部の含有量は30%、アクリロニトリル単位の含有量は21%、スチレン単位の含有量は49%であった。
<グラフト重合体(G-2)の製造>
エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体(三井化学社製:EPT3012P、エチレン単位含有量73%で非共役ジエン成分として5-エチリデン-2-ノルボルネンを4%含む)100部と、酸変性オレフィン重合体(B-2)20部と、アニオン系乳化剤として牛脂脂肪酸カリウム(オレイン酸カリウム、ステアリン酸カリウム、パルミチン酸カリウムの混合物)5部とを混合した。
この混合物を2軸スクリュー押出機(池貝社製、「PCM30」、L/D=40)のホッパーから4kg/Hrで供給し、この2軸スクリュー押出機のベント部に設けた供給口より、水酸化カリウム0.5部とイオン交換水2.4部を混合した水溶液を連続的に供給しながら、220℃に加熱して溶融混練して押出した。溶融混練物を2軸スクリュー押出機の先端に取り付けた冷却装置に連続的に供給し、90℃まで冷却した。そして、2軸スクリュー押出機先端より吐出させた固体を、80℃の温水中に投入し、連続的に分散させて、固形分濃度40質量%付近まで希釈して、オレフィン樹脂水性分散体を得た。
次いで、撹拌機付きステンレス重合槽に、このオレフィン樹脂水性分散体(エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体の固形分として60部)を入れ、オレフィン樹脂水性分散体に固形分濃度が30%になるようにイオン交換水を加え、硫酸第一鉄0.006部、ピロリン酸ナトリウム0.3部、フラクトース0.35部及び牛脂脂肪酸カリウム(オレイン酸カリウム,ステアリン酸カリウム、パルミチン酸カリウムの混合物)1.0部を仕込み、温度を80℃とした。ここへ、スチレン30部、アクリロニトリル10部及びクメンヒドロペルオキシド1.0部を150分間連続的に添加し、重合温度を80℃に保ち乳化重合を行い、グラフト重合体(G-2)を含む水性分散体を得た。グラフト重合体(G-2)を含む水性分散体に酸化防止剤を添加し、硫酸にて固形分の析出を行い、脱水、洗浄、乾燥の工程を経て、粉状のグラフト重合体(G-2)を得た。
このグラフト重合体(G-2)は、エチレン・プロピレン共重合ゴムにスチレンとアクリロニトリルがグラフト重合したグラフト重合体部84%と、未グラフトのアクリロニトリル・スチレン共重合樹脂15.2%とを含むゴム強化樹脂である。グラフト重合体(G-2)におけるグラフト率は40%であり、エチレン・プロピレン共重合ゴム部の含有量は60%、アクリロニトリル単位の含有量は10%、スチレン単位の含有量は30%であった。
<ABS樹脂の製造>
ポリブタジエン(ゲル含有率94%、平均粒子径290nm)50部、スチレン35部、アクリロニトリル15部(単量体成分中の5%)、t-ドデシルメルカプタン0.1部、ロジン酸ナトリウム1.0部、水酸化カリウム0.05部、純水160部を反応器に仕込み、60℃に昇温して60分間含浸させた後、t-ヘキシルパーオキシピバレイト0.3部を添加し、75℃まで昇温して2時間重合を行った。得られたラテックスに酸化防止剤を添加し、塩化カルシウム水溶液中に投入して凝固させ、洗浄、脱水、乾燥してABS樹脂を得た。
<AS共重合体の製造>
窒素置換した撹拌機付きステンレス重合槽に、イオン交換水120部、ポリビニルアルコール0.1部、アゾビスイソブチロニトリル0.3部、アクリロニトリル25部、スチレン75部、t-ドデシルメルカプタン0.35部を仕込み、開始温度60℃として5時間反応させた。120℃に昇温し、4時間反応させた後、内容物を取り出し、洗浄、乾燥することによって粉状のAS共重合体を得た。
<芳香族ポリカーボネート樹脂(PC)>
芳香族ポリカーボネート樹脂としては、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製「ユーピロンS-2000F」(粘度平均分子量(Mv):22,000)を用いた。
[実施例1]
ポリプロピレン系グラフト重合体(E-1)と、AS共重合体及びグラフト重合体(G-1)を表1に示す配合量で混合し、30mmφの真空ベント付き二軸押出機(池貝社製「PCM30」)で、シリンダー温度200~260℃、93.325kPa真空にて溶融混練を行い、透明の熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた熱可塑性樹脂組成物中のポリプロピレン樹脂成分の含有量は15質量%となる。溶融混練後に、ペレタイザー(創研社製「SH型ペレタイザー」)を用いてペレット化を行った。
なお、得られたペレットの形状は、直径3mm、長さ3mmの円柱形状であり、1粒あたりの重さは21mgであった。
[実施例2~5]
樹脂成分配合を表1に示す通りとしたこと以外は実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。得られた熱可塑性樹脂組成物中のポリプロピレン樹脂成分の含有量は、実施例2、4は30質量%、実施例3、5は15質量%である。
[比較例1、2]
ポリプロピレン系グラフト重合体の代わりにポリプロピレン樹脂(A)を用い、表1に示す樹脂成分配合としたこと以外は実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。得られた熱可塑性樹脂組成物中のポリプロピレン樹脂成分の含有量は、比較例1は15質量%、比較例2は30質量%である。
[比較例3]
ポリプロピレン系グラフト重合体(E-1)の代りにポリプロピレン系グラフト重合体(e-1)を用い、表1に示す樹脂成分配合としたこと以外は実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。
[比較例4]
ポリプロピレン系グラフト重合体(E-1)を用いず、グラフト共重合体(G-1)と(G-2)のみを用い、表1に示す樹脂成分配合としたこと以外は実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。
実施例1~4及び比較例1~4の各ペレットの比重(密度)とMVRを測定した。また、熱可塑性樹脂組成物のペレットを各種成形品に成形し、前述の評価を行った。
これらの結果を表1に示す。
また、実施例1,2及び比較例1,2について行ったTEM像の解析結果を、TEM像と共に、表2に示す。
Figure 2022117927000001
Figure 2022117927000002
表1より、以下のことが分かる。
実施例1~5は、外観不良や剥離も生じず、さらに、ミリ波特性のばらつきも小さく安定した性能を発揮できる。
これに対して、ポリプロピレン系グラフト重合体(E-1)の代りにポリプロピレン樹脂(A)を配合した比較例1、2のうち、ポリプロピレン15%の比較例1は平均的にはミリ波特性が得られるが、ばらつきが見受けられる。比較例2のミリ波特性は、ばらつきは小さくなるが、比較例1、2は、いずれも外観不良が顕著であり、また、試験片のゲート部のカット部周辺の表層面について、樹脂層が簡単に手で剥がせるため、樹脂との剥離が生じており、実用性に欠ける。
また、比較例3は溶液重合により粒子径が確認できないポリプロピレン系グラフト重合体(e-1)を用いているため、平均的にはミリ波特性は出ているようであるが、ばらつきが見受けられる。
比較例1~3は、ポリプロピレン系グラフト重合体(E-1)やポリプロピレン樹脂(A)を含まない比較例4のミリ波特性を改善してはいるが、外観不良や剥離、ミリ波特性のばらつきから、実用性や機能面に問題があると考えられる。
また、表2より、本発明の熱可塑性樹脂組成物によれば、ポリプロピレン樹脂成分がマトリックス中に微分散し、外観に優れた成形品が得られることが分かる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる本発明の成形品は、耐衝撃性及び外観に優れ、ミリ波特性も安定的に発現できることから、この特性を必要とするミリ波レーダー部品、ミリ波レーダー用レドーム、ミリ波レーダーに好適であり、車両部品として用いることもでき、さらには、船舶部材および通信機器、OA機器、モバイル機器、玩具、掃除機、テレビジョン、エアコン等の家電部品等にも好適に利用できる。

Claims (10)

  1. ポリプロピレン樹脂(A)100質量部と酸変性オレフィン樹脂(B)5~25質量部とを含む、体積平均粒子径が50~850nmのポリプロピレン系樹脂粒子(C)に、ビニル系単量体(D1)をグラフト重合してなるポリプロピレン系グラフト重合体(E)1~80質量部と、
    エチレン単位含有量が50~95質量%であるエチレン・α-オレフィン系ゴム重合体(F)に、ビニル系単量体(D2)をグラフト重合してなるグラフト重合体(G)20~99質量部と
    を含む熱可塑性樹脂組成物(ただし、ポリプロピレン系グラフト重合体(E)とグラフト重合体(G)との合計は100質量部)。
  2. 前記ポリプロピレン系グラフト重合体(E)のグラフト率が10~70質量%である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 前記ビニル系単量体(D1)100質量%のうち50~90質量%が芳香族ビニル化合物で10~50質量%がシアン化ビニル化合物である、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 前記ポリプロピレン系グラフト重合体(E)は、ポリプロピレン系樹脂粒子(C)30~80質量%の存在下に、ビニル系単量体(D1)20~70質量%(ただし、ポリプロピレン系樹脂粒子(C)とビニル系単量体(D1)との合計は100質量%)をグラフト重合して得られる、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 前記ポリプロピレン系樹脂粒子(C)は前記ポリプロピレン樹脂(A)と前記酸変性オレフィン樹脂(B)とを溶融混練し、得られた混練物を水性媒体中に分散させてなる、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. 前記ビニル系単量体(D2)100質量%のうち50~90質量%が芳香族ビニル化合物で10~50質量%がシアン化ビニル化合物である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  7. 前記グラフト重合体(G)は、エチレン・α-オレフィン系ゴム重合体(F)とビニル系単量体(D2)に由来するグラフト重合体部と、ビニル系樹脂部とを有するゴム質重合体強化ビニル系樹脂であり、
    該グラフト重合体部及びビニル系樹脂部の含有割合が、これらの合計100質量%に対してそれぞれ10~90質量%及び90~10質量%であり、
    グラフト率が20~65%である、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  8. 請求項1ないし7のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。
  9. 請求項8に記載の成形品を含むミリ波用レドーム。
  10. 請求項9に記載のミリ波用レドームを備えるミリ波レーダー。
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