JP2022109695A - チップ抵抗器およびチップ抵抗器の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】電力向上を図るのに好適なチップ抵抗器を提供する。【解決手段】本発明のチップ抵抗器1は、直方体形状の絶縁基板2と、絶縁基板2の表面の長手方向両端部に設けられた一対の表電極3と、これら一対の表電極3間に並列接続された2つの抵抗体4と、抵抗体4上に形成されたプリコート層5と、絶縁基板2の裏面の長手方向両端部に設けられた一対の裏電極6と、絶縁基板2の長手方向両端面に設けられた一対の端面電極7と、プリコート層5を覆うように形成された保護コート層8とを備えており、抵抗体4は表電極3との接続箇所に切欠き部10を有し、この切欠き部10を始点としてトリミング溝(トリミング痕)9が電極間方向へ直線状に形成されている。【選択図】図1
Description
本発明は、絶縁基板上に設けられた抵抗体にレーザー光を照射してトリミング溝(トリミング痕)を形成することで抵抗値が調整されるチップ抵抗器と、そのようなチップ抵抗器の製造方法に関するものである。
チップ抵抗器は、直方体形状の絶縁基板と、絶縁基板の表面に所定間隔を存して対向配置された一対の表電極と、絶縁基板の裏面に所定間隔を存して対向配置された一対の裏電極と、表電極と裏電極を橋絡する端面電極と、対をなす表電極どうしを橋絡する抵抗体と、抵抗体を覆う保護膜等によって主に構成されている。
一般的に、このようなチップ抵抗器を製造する場合、シート状の大判基板に対して多数個分の電極や抵抗体や保護膜等を一括して形成した後、この大判基板を格子状の分割ライン(例えば分割溝)に沿って分割してチップ抵抗器を多数個取りするようにしている。かかるチップ抵抗器の製造過程で、大判基板の片面には抵抗ペーストを印刷・焼成することにより多数の抵抗体が形成されるが、印刷時の位置ずれや滲み、あるいは焼成炉内の温度むら等の影響により、各抵抗体の大きさや膜厚に若干のばらつきを生じることは避け難いため、大判基板の状態で各抵抗体にトリミング溝を形成して所望の抵抗値まで切り上げるという抵抗値調整作業が行われる。
トリミング溝は抵抗体にレーザー光を照射することによって形成され、その形状としては、抵抗体の幅方向一辺側を始点として電極間方向と直交する方向へ直線状に延びるIカット(シングルカット)形状や、Iカットを途中から電極間方向に90度ターンして延ばしたLカット形状や、長さの異なる2本のIカットで構成されるWカット形状などが知られている。
このように構成されたチップ抵抗器に対して通電が行われた場合、抵抗体におけるトリミング溝の先端部は、電流が集中して局所的な発熱(ホットスポット:最も発熱が高い)を生じる部位となるため、長期間の使用等によって発熱部が集中的に劣化し易くなる。特に、チップ抵抗器が電力負荷の大きな使用に供された場合、発熱部を起点に破壊が発生し、結果的にチップ抵抗器全体の破壊に繋がるという問題がある。
そこで従来より、特許文献1に記載されているように、一対の電極間に2つの抵抗体を並列に接続することにより、発熱部となるホットスポットを分散するようにしたチップ抵抗器が提案されている。これら2つの抵抗体は抵抗ペーストをスクリーン印刷することにより形成され、焼成後の各抵抗体にトリミング溝を形成することにより、各抵抗体の抵抗値が実質的に同じになるように調整されている。
特許文献1に記載されたチップ抵抗器では、一対の電極間に2つの抵抗体を並列接続することにより、抵抗体を2つの素子に分割してホットスポットが分散されるため、1素子当たりの電力負荷を軽減することが可能となる。
しかし、特許文献1に記載されたチップ抵抗器は、絶縁基板上の限られた有効エリア内に2つの抵抗体をスクリーン印刷で形成しているため、印刷時のペーストダレ等によって抵抗体どうしが接触しないように、各抵抗体間に十分な隙間を確保してスクリーン印刷する必要がある。そのため上記隙間分だけ抵抗体全体の面積が制限されてしまい、特に、チップ抵抗器の小型化に伴って絶縁基板の有効エリア自体の面積が狭くなると、有効エリアに占める上記隙間の割合が増えていくため、相対的に抵抗体全体の面積を小さくせざるを得ず、電力の向上を図ることが困難になる。
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、電力向上を図るのに好適なチップ抵抗器を提供することにあり、第2の目的は、そのようなチップ抵抗器の製造方法を提供することにある。
上記第1の目的を達成するために、本発明のチップ抵抗器は、直方体形状の絶縁基板と、前記絶縁基板の相対向する両辺部に設けられた一対の電極と、これら一対の電極間を橋絡する抵抗体とを備え、前記抵抗体にレーザー光を照射することにより抵抗値調整用のトリミング痕が形成されているチップ抵抗器において、前記電極と前記抵抗体の接続箇所に切欠き部が形成されており、前記トリミング痕は前記切欠き部を始点として電極間方向へ直線状に延びていることを特徴としている。
このように構成されたチップ抵抗器では、一対の電極と抵抗体との接続箇所に存する切欠き部を始点として、レーザー光の照射によるトリミング痕(トリミング溝)が電極間方向へ直線状に延びるように形成されているため、トリミング痕によって抵抗体の抵抗値を高精度に調整することができると共に、トリミング痕の先端部への電流集中を緩和して電力向上を図ることができる。
また、上記第2の目的を達成するための一手段として、本発明によるチップ抵抗器の製造方法は、絶縁基板と、この絶縁基板上に所定間隔を存して対向配置された一対の電極と、これら一対の電極間を橋絡する抵抗体とを備え、前記抵抗体にレーザー光を照射してトリミングカットすることで抵抗値が調整されるチップ抵抗器の製造方法において、一対の前記電極に接続する両端部をそれぞれ幅狭部とし、これら幅狭部で挟まれた領域を幅広部とする形状の抵抗体を印刷形成する工程と、一方の前記幅狭部から前記幅広部を通って他方の前記幅狭部に至る範囲にレーザー光を電極間方向に沿って直線状に照射することにより、前記幅広部をスキャンカットして前記抵抗体の抵抗値を調整する工程と、を含むことを特徴としている。
このような工程を含むチップ抵抗器の製造方法では、抵抗体における両幅狭部で挟まれた幅広部をスキャンカットして抵抗値を調整するようにしたので、トリミング痕の先端部が抵抗体上に残らなくなって電流集中を回避できると共に、スキャンカットを行える範囲が広いため、高精度に抵抗値を調整することができる。
また、上記第2の目的を達成するための別手段として、本発明によるチップ抵抗器の製造方法は、絶縁基板と、この絶縁基板上に所定間隔を存して対向配置された一対の電極と、これら一対の電極間を橋絡する抵抗体とを備え、前記抵抗体にレーザー光を照射してトリミングカットすることで抵抗値が調整されるチップ抵抗器の製造方法において、一対の前記電極に接続する両端部の幅方向中央にそれぞれ切欠き部を有する矩形状の抵抗体を印刷形成する工程と、一方の前記切欠き部から他方の前記切欠き部に至る範囲にレーザー光を照射して前記抵抗体を2分割する工程と、2分割された個々の前記抵抗体に対して、一方の前記切欠き部を始点として電極間方向へ直線状に走査するようにレーザー光を照射して抵抗値を調整する工程と、を含むことを特徴としている。
このような工程を含むチップ抵抗器の製造方法では、両端部に切欠き部を有する矩形状の抵抗体を印刷形成した後、この抵抗体をレーザー光の照射によって2分割することにより、一対の電極間に2つの抵抗体を並列接続するようにしたので、抵抗体全体の有効面積を広くして電力の向上を図ることができる。しかも、分割後の個々の抵抗体は両端部に切欠き部を有しており、このような抵抗体の抵抗値を調整する際に、一方の切欠き部を始点として電極間方向へ延びる直線に沿ってレーザー光を照射するようにしたので、個々の抵抗体の抵抗値を高精度に調整することができると共に、トリミング痕の先端部への電流集中を緩和して電力向上を図ることができる。
本発明によれば、トリミング痕の先端部への電流集中を緩和することができるため、電力向上を図るのに好適なチップ抵抗器を提供することができる。
以下、発明の実施の形態について図面を参照しながら説明すると、図1は本発明の第1の実施形態に係るチップ抵抗器の平面図、図2は図1のII-II線に沿う断面図である。
図1と図2に示すように、第1の実施形態に係るチップ抵抗器1は、直方体形状の絶縁基板2と、絶縁基板2の表面の長手方向両端部に設けられた一対の表電極3と、これら一対の表電極3間に並列接続された2つの抵抗体4と、各抵抗体4上に形成されたプリコート層5と、絶縁基板2の裏面の長手方向両端部に設けられた一対の裏電極6と、絶縁基板2の長手方向両端面に設けられた一対の端面電極7と、プリコート層5を覆うように形成された保護コート層8等によって主に構成されており、各抵抗体4にはそれぞれトリミング溝9が形成されている。
絶縁基板2は、後述する大判基板を縦横に格子状に延びる1次分割溝と2次分割溝に沿って分割して多数個取りされたものであり、大判基板の主成分はアルミナを主成分とするセラミックス基板である。なお、以下の説明では、絶縁基板2の長手方向をX方向、絶縁基板2の短手方向をY方向とすることがある。
一対の表電極3は銀を主成分とする銀系ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成したものであり、これら表電極3は所定間隔を存して対向するように絶縁基板2の長手方向(X方向)両端部に形成されている。なお、一対の表電極3は、絶縁基板2の表面においてY方向の中央部で2分割されているが、絶縁基板2の端面に形成された端面電極7を介して電気的には導通状態となっている。
2つの抵抗体4は酸化ルテニウム等の抵抗体ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成したものであり、これら2つの抵抗体4は一対の表電極3間に並列接続されている。詳細については後述するが、2つの抵抗体4は、一対の表電極3間に1つの抵抗体を印刷形成した後、該抵抗体をレーザー光の照射によってY方向に2分割したものであり、これら抵抗体4と対応する表電極3との接続箇所には略円形状の切欠き部10が形成されている。
2つの抵抗体4にはそれぞれトリミング溝9が形成されており、このトリミング溝9によって個々の抵抗体4の抵抗値が所定値になるように調整されている。トリミング溝9はレーザー光の照射によって抵抗体4にできる切込み(トリミング痕)であり、2つの抵抗体4に形成されたトリミング溝9は、一方の切欠き部10を始点として互いに逆方向へ直線状に延びている。本実施形態の場合、図1中の上方に示す抵抗体4に形成されたトリミング溝9は右側の切欠き部10から左側の切欠き部10に向かって電極間方向(X方向)に延びており、下方に示す抵抗体4に形成されたトリミング溝9は左側の切欠き部10から右側の切欠き部10に向かって電極間方向(X方向)に延びている。
図3は、トリミング溝9を形成する前の抵抗体(図1中の下方の抵抗体4)を示す説明図である。図3に示すように、一対の表電極3と抵抗体4との接続端部にそれぞれ切欠き部10が形成されているため、抵抗体4は、切欠き部10によってY方向の寸法が狭められた一対の幅狭部Waと、これら幅狭部Waの間に位置して切欠き部10の存しない幅広部Wbとを有している。
前述したように、このような抵抗体4に対しレーザー光を左側の切欠き部10を始点として電極間方向(X方向)へ直線状に照射することにより、抵抗体4の抵抗値が所定値に調整される。その際、トリミング溝9は、幅広部Wbにおける一対の切欠き部10で挟まれた領域Wb-1(図3中にハッチングを施した部分)に形成されるが、この領域Wb-1は、トリミング溝9の切込み量増分に対する抵抗値増分の割合が小さい部分であるため、トリミング溝9の切込み量をX方向に延ばすことで抵抗値を高精度に微調整することができる。なお、図1中の上方の抵抗体4の抵抗値を調整する場合についても、トリミング溝9の始点が左側から右側の切欠き部10になるだけで基本的に同様である。
プリコート層5はガラスペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成したものであり、このプリコート層5は2分割する前の抵抗体4を覆うように形成される。抵抗体4を2分割するとき、および分割後の抵抗体4にトリミング溝9を形成するとき、レーザー光はプリコート層5の上から照射されるが、その際に、抵抗体4はガラス材料からなるプリコート層5によってレーザー光の熱から保護される。
一対の裏電極6は銀を主成分とする銀系ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成したものであり、これら裏電極6は絶縁基板2の表面側の表電極3と対応する位置に形成されている。
端面電極7は、絶縁基板2の端面にNi/Crをスパッタリングすることにより形成されている。この端面電極7により、絶縁基板2の表面においてY方向に2分割された表電極3が導通されると共に、絶縁基板2の表裏両面で対応する表電極3と裏電極6とが橋絡される。なお、図示は省略するが、この端面電極7と裏電極6および保護コート層8から露出する表電極3の表面は、Ni-Snメッキ層からなる外部電極によって被覆されている。
保護コート層8はエポキシやポリイミド等の樹脂ペーストをスクリーン印刷して加熱硬化させたものであり、この保護コート層8によってトリミング溝9を有する2つの抵抗体4は湿度や腐食ガス等の外部環境から保護される。
次に、第1の実施形態に係るチップ抵抗器1の製造工程について、図4に示すフローチャートと図5に示す平面図を用いて説明する。
まず、格子状に延びる1次分割溝と2次分割溝が設けられた大判基板2Aを準備する。これら1次分割溝と2次分割溝によって大判基板2Aの表裏両面は多数のチップ形成領域に区画され、これらチップ形成領域がそれぞれ1個分の絶縁基板2となる。図5には1つのチップ形成領域が代表的に示されているが、実際には、このようなチップ形成領域が格子状に多数配列されている。
次に、図4のステップS1において、この大判基板2Aの表面に銀系ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成することにより、図5(a)に示すように、各チップ形成領域の長手方向両端部に所定間隔を存して対向する一対の表電極3を形成する。これら表電極3はチップ形成領域の短手方向中央部でスリット3aを介して2分割されており、このスリット3aは半円状の切欠き部3bに繋がっている。また、これと同時あるいは前後して、大判基板2Aの裏面に銀系ペーストをスクリーン印刷した後、これを乾燥・焼成することにより、各チップ形成領域の長手方向両端部に所定間隔を存して対向する一対の裏電極(図2参照)を形成する(電極形成工程)。
次に、図4のステップS2において、大判基板2Aの表面に酸化ルテニウム等を含有した抵抗ペーストをスクリーン印刷した後、これを乾燥・焼成することにより、両端部を表電極3に重ね合わせた略長方形状の抵抗体4Aを形成する(抵抗体形成工程)。この抵抗体4Aは短手方向中央部に半円状の切欠き部4aを有し、この切欠き部4aと表電極3の切欠き部3bとが連続することにより、チップ形成領域の短手方向中央部に略円形状の切欠き部10が形成される。
次に、図4のステップS3において、抵抗体4Aの上にガラスペーストをスクリーン印刷した後、このガラスペーストを乾燥・焼成することにより、図5(c)に示すように、抵抗体4Aの全体を覆うプリコート層5を形成する(プリコート層形成工程)。
次に、図4のステップS4において、プリコート層5の上からレーザー光を照射して分割スリット5aを形成することにより、図5(d)に示すように、抵抗体4Aを2つの抵抗体4に分割する(抵抗体分割工程)。その際、表電極3の中央部にスリット3aが形成されているため、このスリット3a上に沿ってレーザー光を照射することにより、抵抗体4Aを簡単かつ確実に2つの抵抗体4に分割することができる。
次に、図4のステップS5において、プリコート層5から露出する表電極3に測定用のプローブ(不図示)を接触させ、この状態で抵抗体4の抵抗値を測定しながらプリコート層5の上からレーザー光を照射することにより、図5(e)に示すように、2つの抵抗体4にトリミング溝9を形成して目標抵抗値となるように抵抗値調整する(トリミング工程)。その際、レーザー光は一方の切欠き部10を始点として他方の切欠き部10に向かって直線状に走査するように照射されるため、トリミング溝9は、抵抗体4における両切欠き部10で挟まれた部分(図3の領域Wb-1)に形成される。抵抗体4の当該部分は、トリミング溝9の切込み量増分に対する抵抗値増分の割合が小さい部分であるため、トリミング溝9の切込み量をX方向に延ばすことで抵抗値を高精度に微調整することができる。
なお、抵抗体4Aを分割スリット5aに沿って2分割した時点で2つの抵抗体4の初期抵抗値が決定されるため、予め印刷時の抵抗体4Aの大きさを決めておけば、分割後の抵抗体4の初期抵抗値を目標抵抗値よりも幾分低い値に設定することがでる。したがって、その後にトリミング溝9を形成することにより、各抵抗体4の抵抗値を目標抵抗値となるように抵抗値調整すれば良い。ただし、分割スリット5aの幅を増減して抵抗体4の幅寸法(Y方向の長さ)を調整するようにしても良く、その場合、印刷時の抵抗体4Aの大きさや膜厚にばらつきがあったとしても、分割後の抵抗体4の初期抵抗値を目標抵抗値よりも低い値に調整(粗調整)することができる。
次に、図4のステップS6において、プリコート層5の上からエポキシやポリイミド等の樹脂ペーストをスクリーン印刷し、この樹脂ペーストを加熱硬化することにより、図5(f)に示すように、分割スリット5aを含めたプリコート層5の全体と表電極3の一部を覆う保護コート層8を形成する(保護コート層形成工程)。
これまでの工程は大判基板2Aに対する一括処理であるが、次に、図4のステップS7において、大判基板2Aを1次分割溝に沿って一次分割(ブレイク)することにより、大判基板2Aから複数の短冊状基板2Bを得る(一次分割工程)。
次に、図4のステップS8において、複数の短冊状基板2Bを上下方向に重ね合わせた後、この状態で各短冊状基板2Bの分割面にNi/Crをスパッタリングすることにより、図5(g)に示すように、表電極3と不図示の裏電極とを橋絡する端面電極7を形成する(端面電極形成工程)。この端面電極7により、絶縁基板2の表面においてスリット3aを介して2分割されている表電極3が導通される。
次に、図4のステップS9において、短冊状基板2Bを2次分割溝に沿って二次分割(ブレイク)することにより、チップ抵抗器1と同等の大きさの個片(チップ単体)を得る(二次分割工程)。
最後に、図4のステップS10において、個片化されたチップ単体に対して電解メッキを施すことにより、表電極3と裏電極6および端面電極7を覆うNi-Snメッキ層からなる外部電極を形成することにより、図1,2に示すチップ抵抗器1が完成する。
以上説明したように、第1の実施形態に係るチップ抵抗器1では、表電極3と抵抗体4との接続箇所に切欠き部10が形成されており、この切欠き部10を始点としてトリミング溝(トリミング痕)9が電極間方向へ直線状に延びるように形成されているため、トリミング溝9の先端部への電流集中を緩和して電力向上を図ることができる。
また、第1の実施形態に係るチップ抵抗器1では、抵抗体4の長手方向両端部に切欠き部10が形成されており、抵抗体4が、切欠き部10によって短手方向の寸法が狭められた一対の幅狭部Waと、これら幅狭部Waの間に位置して切欠き部10の存しない幅広部Wbとを有している。そして、このような抵抗体4に対してレーザー光を一方の切欠き部10から他方の切欠き部10に向かう走査線に沿って照射することにより、抵抗体4の幅広部Wbにおける一対の切欠き部10で挟まれた領域Wb-1にトリミング溝9が形成されるが、この領域Wb-1は、トリミング溝9の切込み量増分に対する抵抗値増分の割合が小さい部分であるため、トリミング溝9の切込み量をX方向に延ばすことで抵抗値を高精度に微調整することができる。
また、第1の実施形態に係るチップ抵抗器1では、一対の表電極3間に2つの抵抗体4が並列接続されており、これら2つの抵抗体4が電極間方向へ直線状に延びる分割スリット5aを介して分割されていると共に、2つの抵抗体4の両端部に形成された切欠き部10がそれぞれ分割スリット5aに連通しているため、抵抗体4を2つの素子に分割することでホットスポットが分散され、1素子当たりの電力負荷を軽減することができる。
しかも、2つの抵抗体4間に存する分割スリット5aはレーザー光の照射によって形成されたものであるため、2つの抵抗体4間に必要とされる隙間を極力狭くすることができ、その分、絶縁基板2の有効エリアに占める抵抗体4全体の面積を広く確保することができ、この点からも電力負荷を軽減することができる。
また、第1の実施形態に係るチップ抵抗器1では、表電極3の中央部にスリット3aが形成されているため、印刷形成後の抵抗体4Aを2つの抵抗体4に2分割する際に、表電極3のスリット3aを位置基準としてレーザー光を照射することにより、分割スリット5aを容易に形成することができる。ただし、表電極3をスリット3aのない形状とすることも可能であり、その場合は、分割スリット5aを形成する前に、抵抗体4Aを画像認識する等してレーザー光の照射位置を決定すれば良い。
なお、第1の実施形態に係るチップ抵抗器1においては、表電極3と抵抗体4との接続箇所に切欠き部10が形成され、この切欠き部10を始点としてトリミング溝(トリミング痕)9が電極間方向へ直線状に延びるように形成されていれば、種々の変形例が可能である。例えば、切欠き部10を分割スリット5aと接する抵抗体4の内側部位に形成する代わりに、分割スリット5aと反対側に位置する抵抗体4の外側部位に形成し、このような切欠き部10を始点としてトリミング溝9を形成するようにしても良い。また、切欠き部10の形状は円弧状に特定されず、矩形状など他の形状であっても良い。
また、図6に示す変形例のように、抵抗体4の全体形状を幅寸法が一定の矩形状(長方形)に形成すると共に、切欠き部10を抵抗体4との接続箇所における表電極3側に形成し、このような形状の抵抗体4に対してトリミング溝9を形成するようにしても良い。この場合、抵抗体4は幅寸法の狭い幅狭部を有していないが、抵抗体4におけるトリミング溝9が形成される領域(一対の切欠き部10で挟まれた領域)は、トリミング溝9の切込み量増分に対する抵抗値増分の割合が小さい部分であるため、トリミング溝9の切込み量を電極間方向に延ばすことで抵抗値を高精度に微調整することができる。
図7は本発明の第2の実施形態例に係るチップ抵抗器20の平面図、図8は該チップ抵抗器20に備えられる抵抗体の説明図である。
図7に示すように、第2の実施形態に係るチップ抵抗器20は、直方体形状の絶縁基板21と、絶縁基板21の表面の長手方向両端部に設けられた一対の表電極22と、これら一対の表電極22間に接続された抵抗体23と、抵抗体23上に形成されたプリコート層24と、プリコート層24を覆うように形成された保護コート層25と、絶縁基板21の裏面の長手方向両端部に設けられた一対の裏電極(図示せず)と、絶縁基板21の長手方向両端面に設けられた一対の端面電極26等によって主に構成されている。
抵抗体23は酸化ルテニウム等の抵抗体ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成したものであり、図8に示すように、印刷時における抵抗体23の四隅には切欠き部27が形成されている。これら切欠き部27により、抵抗体23は、幅方向(Y方向)の寸法が狭められた一対の幅狭部Waと、これら幅狭部Waの間に位置して切欠き部27の存しない幅広部Wbとを有している。
ここで、抵抗体23の幅広部Wbにおける幅方向(Y方向)の両端部は調整部23aとなっており、これら調整部23aにレーザー光を電極間方向(X方向)に照射してトリミング溝を形成することにより、調整部23aをスキャンカットして抵抗体23の抵抗値が所定値になるように調整されている。すなわち、図8中にハッチングが施された調整部23aは、スキャンカット時にトリミング溝が形成される抵抗体23の除去部分であり、図7に示すように、スキャンカット後の抵抗体23はトリミング溝の形成に伴う調整部23aの除去相当分だけ幅寸法が短くなる。
次に、第2の実施形態に係るチップ抵抗器20の製造工程について、図9に示すフローチャートと図10に示す平面図を用いて説明する。
まず、格子状に延びる1次分割溝と2次分割溝が設けられた大判基板21Aを準備したなら、図9のステップS30において、この大判基板21Aの表面に銀系ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成することにより、図10(a)に示すように、大判基板21Aの各チップ形成領域の長手方向両端部に所定間隔を存して対向する一対の表電極22を形成する。また、これと同時あるいは前後して、大判基板21Aの裏面に銀系ペーストをスクリーン印刷した後、これを乾燥・焼成することにより、各チップ形成領域の長手方向両端部に所定間隔を存して対向する一対の裏電極(図示せず)を形成する(電極形成工程)。
次に、図9のステップS31において、大判基板21Aの表面に酸化ルテニウム等を含有した抵抗ペーストをスクリーン印刷した後、これを乾燥・焼成することにより、両端部を表電極22に重ね合わせた抵抗体23を形成する(抵抗体形成工程)。この抵抗体23の四隅には切欠き部27が形成されており、抵抗体23は、左右の切欠き部27で挟まれた幅方向の両端部に調整部23aを有している(図8参照)。
次に、図9のステップS32において、抵抗体23の上にガラスペーストをスクリーン印刷した後、このガラスペーストを乾燥・焼成することにより、図10(c)に示すように、抵抗体23の全体を覆うプリコート層24を形成する(プリコート層形成工程)。
次に、図9のステップS33において、プリコート層24から露出する表電極22に測定用のプローブ(不図示)を接触させ、この状態で抵抗体23の抵抗値を測定しながらプリコート層24の上から抵抗体23の調整部23aにレーザー光を照射することにより、図10(d)に示すように、抵抗体23の調整部23aにスキャンカットを施して目標抵抗値となるように抵抗値調整する(トリミング工程)。このスキャンカットでは、レーザー光が調整部23aに対して左右いずれか一方の切欠き部27から他方の切欠き部27に至る範囲に照射され、レーザー光の照射によって形成されるトリミング溝の始端部と終端部はいずれも切欠き部27内に位置するため、トリミング溝(トリミング痕)の先端部が抵抗体23上に残らなくなって電流集中を回避することができる。しかも、抵抗体23の調整部23aはトリミング溝の切込み量増分に対する抵抗値増分の割合が小さい部分であり、このような調整部23aの全範囲に亘ってスキャンカットが行えるため、抵抗体23の抵抗値を高精度に調整することができる。
次に、図9のステップS34において、プリコート層24の上からエポキシやポリイミド等の樹脂ペーストをスクリーン印刷し、この樹脂ペーストを加熱硬化することにより、図10(e)に示すように、プリコート層24の全体と表電極22の一部を覆う保護コート層25を形成する(保護コート層形成工程)。
これまでの工程は大判基板21Aに対する一括処理であるが、次に、図9のステップS35において、大判基板21Aを1次分割溝に沿って一次分割(ブレイク)することにより、大判基板21Aから複数の短冊状基板21Bを得る(一次分割工程)。
次に、図9のステップS36において、複数の短冊状基板21Bを上下方向に重ね合わせた後、この状態で各短冊状基板21Bの分割面にNi/Crをスパッタリングすることにより、図10(f)に示すように、表電極22と不図示の裏電極とを橋絡する端面電極26を形成する(端面電極形成工程)。
次に、図9のステップS37において、短冊状基板21Bを2次分割溝に沿って二次分割(ブレイク)することにより、チップ抵抗器20と同等の大きさの個片(チップ単体)を得る(二次分割工程)。
最後に、図9のステップS38において、個片化されたチップ単体に対して電解メッキを施すことにより、表電極22と裏電極および端面電極26を覆うNi-Snメッキ層からなる外部電極を形成することにより、図7に示すチップ抵抗器20が完成する。
このように構成された第2の実施形態に係るチップ抵抗器20では、表電極22との接続箇所となる抵抗体23の四隅に切欠き部27が形成されており、左右の両切欠き部27で挟まれた抵抗体23の調整部23aをスキャンカットして抵抗値を調整するようにしたので、トリミング溝(トリミング痕)の先端部が抵抗体23上に残らなくなって電流集中を回避できると共に、スキャンカットを行える範囲が広いため、高精度に抵抗値を調整することができる。
なお、第2の実施形態に係るチップ抵抗器20では、表電極22と抵抗体23との接続箇所のうち、抵抗体23側の四隅に切欠き部27が形成されているが、このような切欠き部27を抵抗体23の代わりに表電極22側に形成したり、表電極22と抵抗体23の両方に形成しても良い。また、切欠き部27の形状も円弧状に特定されず、矩形状など他の形状であっても良い。
1 チップ抵抗器
2 絶縁基板
2A 大判基板
2B 短冊状基板
3 表電極(電極)
3a スリット
3b 切欠き部
4,4A 抵抗体
4a 切欠き部
5 プリコート層
5a 分割スリット
6 裏電極
7 端面電極
8 保護コート層
9 トリミング溝(トリミング痕)
10 切欠き部
20 チップ抵抗器
21 絶縁基板
21A 大判基板
21B 短冊状基板
22 表電極(電極)
23 抵抗体
23a 調整部
24 プリコート層
25 保護コート層
26 端面電極
27 切欠き部
Wa 幅狭部
Wb 幅広部
2 絶縁基板
2A 大判基板
2B 短冊状基板
3 表電極(電極)
3a スリット
3b 切欠き部
4,4A 抵抗体
4a 切欠き部
5 プリコート層
5a 分割スリット
6 裏電極
7 端面電極
8 保護コート層
9 トリミング溝(トリミング痕)
10 切欠き部
20 チップ抵抗器
21 絶縁基板
21A 大判基板
21B 短冊状基板
22 表電極(電極)
23 抵抗体
23a 調整部
24 プリコート層
25 保護コート層
26 端面電極
27 切欠き部
Wa 幅狭部
Wb 幅広部
Claims (9)
- 直方体形状の絶縁基板と、前記絶縁基板の相対向する両辺部に設けられた一対の電極と、これら一対の電極間を橋絡する抵抗体とを備え、前記抵抗体にレーザー光を照射することにより抵抗値調整用のトリミング痕が形成されているチップ抵抗器において、
前記電極と前記抵抗体の接続箇所に切欠き部が形成されており、
前記トリミング痕は前記切欠き部を始点として電極間方向へ直線状に延びていることを特徴とするチップ抵抗器。 - 前記切欠き部は前記抵抗体における前記電極との接続端部に形成されており、
前記抵抗体は、前記切欠き部によって狭められた幅狭部と、前記切欠き部の存しない幅広部と、を有していることを特徴とする請求項1に記載のチップ抵抗器。 - 前記切欠き部は、一対の前記電極に接続する前記抵抗体の両端部に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のチップ抵抗器。
- 前記トリミング痕は、一方の前記切欠き部を始点として前記幅広部の途中まで延びていることを特徴とする請求項2に記載のチップ抵抗器。
- 前記トリミング痕は、一方の前記切欠き部を始点として他方の前記切欠き部を終点とする範囲に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のチップ抵抗器。
- 一対の電極間に少なくとも2つの前記抵抗体が並列に接続されており、これら2つの抵抗体が電極間方向へ直線状に延びる分割スリットを介して分割されていると共に、前記2つの抵抗体の両端部に形成された前記切欠き部がそれぞれ前記分割スリットに連通していることを特徴とする請求項3に記載のチップ抵抗器。
- 前記2つの抵抗体に形成された前記トリミング痕は、前記スリットの長手方向に沿って逆向きに延びていることを特徴とする請求項6に記載のチップ抵抗器。
- 絶縁基板と、この絶縁基板上に所定間隔を存して対向配置された一対の電極と、これら一対の電極間を橋絡する抵抗体とを備え、前記抵抗体にレーザー光を照射してトリミングカットすることで抵抗値が調整されるチップ抵抗器の製造方法において、
一対の前記電極に接続する両端部をそれぞれ幅狭部とし、これら幅狭部で挟まれた領域を幅広部とする形状の抵抗体を印刷形成する工程と、
一方の前記幅狭部から前記幅広部を通って他方の前記幅狭部に至る範囲にレーザー光を電極間方向に沿って直線状に照射することにより、前記幅広部をスキャンカットして前記抵抗体の抵抗値を調整する工程と、
を含むことを特徴とするチップ抵抗器の製造方法。 - 絶縁基板と、この絶縁基板上に所定間隔を存して対向配置された一対の電極と、これら一対の電極間を橋絡する抵抗体とを備え、前記抵抗体にレーザー光を照射してトリミングカットすることで抵抗値が調整されるチップ抵抗器の製造方法において、
一対の前記電極に接続する両端部の幅方向中央にそれぞれ切欠き部を有する矩形状の抵抗体を印刷形成する工程と、
一方の前記切欠き部から他方の前記切欠き部に至る範囲にレーザー光を照射して前記抵抗体を2分割する工程と、
2分割された個々の前記抵抗体に対して、一方の前記切欠き部を始点として電極間方向へ直線状に走査するようにレーザー光を照射して抵抗値を調整する工程と、
を含むことを特徴とするチップ抵抗器の製造方法。
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