JP2022108649A - 環状オレフィン系樹脂組成物および成形体 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来の環状オレフィン系樹脂材料よりも高い耐湿熱性を有する環状オレフィン系樹脂組成物を提供すること。【解決手段】環状オレフィン系共重合体(A)と、カルボキシ基と炭素原子数5~40の長鎖アルキル基とを有する化合物(B)と、を含む環状オレフィン系樹脂組成物であって、前記化合物(B)が、アミン化合物またはアミド化合物のいずれかであり、前記化合物(B)の量が、前記環状オレフィン系共重合体(A)100質量部に対して、1.0質量部以上10質量部以下である、環状オレフィン系樹脂組成物。【選択図】なし
Description
本発明は、環状オレフィン系樹脂組成物および成形体に関する。
撮像レンズ、fθレンズ、ピックアップレンズ等の光学レンズには、環状オレフィン系重合体が用いられている。このような光学レンズ等の成形体に用いられる環状オレフィン系重合体には、透明性が高いこと、寸法安定性に優れること、耐熱性に優れること、耐湿性に優れること等の特性が要求される。
このような光学レンズに用いられる環状オレフィン系重合体は、例えば、特許文献1に記載の環状オレフィン系樹脂が挙げられる。特許文献1には、炭素原子数が2~20のα―オレフィン由来の構造単位(A)と、芳香環を有さない環状オレフィンから導かれる単位(B)と、芳香環を有する環状オレフィンから導かれる構造単位(C)と、を有する環状オレフィン系重合体が記載されている。
近年、湿熱条件下での耐久性が要求されている。環状オレフィン系重合体は、親水剤を含まないと、高温高湿下で微細なクラックが発生してしまい、内部ヘイズが上昇してしまう問題があった。しかし、親水剤の種類によっては環状オレフィン系樹脂との相溶性が悪い問題があった。
特許文献2には、親水剤として同一分子中に親水基と疎水基とを有する化合物において、上記化合物の親水基がヒドロキシアルキル基であり、疎水基が炭素原子数6以上のアルキル基であるアミン化合物またはアミド化合物が開示されている。
本発明者らの検討によれば、例えば光学レンズ等の用途において、特許文献2に開示されている発明には、耐湿熱性についてさらなる改善の余地があることを見出した。
本発明は上記事情を鑑みなされたものであり、内部ヘイズが低く、かつ、従来の環状オレフィン系樹脂材料よりも高い耐湿熱性を有する環状オレフィン系樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、親水剤をヒドロキシアルキル基ではなくカルボキシル基(COOH基)とし、特定の量を用いることで、高い耐湿熱性を有する環状オレフィン系樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明によれば、以下に示す環状オレフィン系樹脂組成物および成形体が提供される。
[1]
環状オレフィン系共重合体(A)と、
カルボキシ基と炭素原子数5~40の長鎖アルキル基とを有する化合物(B)と、
を含む環状オレフィン系樹脂組成物であって、
上記化合物(B)が、アミン化合物またはアミド化合物のいずれかであり、
上記化合物(B)の量が、前記環状オレフィン系共重合体(A)100質量部に対して、1.0質量部以上10質量部以下である、環状オレフィン系樹脂組成物。
[2]
上記[1]に記載の環状オレフィン系樹脂組成物であって、
上記環状オレフィン系共重合体(A)が、下記繰り返し単位(a)と下記繰り返し単位(b)とを有する、環状オレフィン系樹脂組成物。
繰り返し単位(a):下記一般式(I)で表される少なくとも1種のオレフィン由来の繰り返し単位。
繰り返し単位(b):下記一般式(II)と、下記一般式(III)と、下記一般式(IV)とからなる群より選択される少なくとも1種の環状オレフィン由来の繰り返し単位。
上記一般式(I)において、R300は水素原子、または炭素原子数1~29の直鎖または分岐状の炭化水素基を示す。
上記一般式(II)において、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1である。R61~R78ならびにRa1およびRb1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3~15のシクロアルキル基、または炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基である。R75~R78は、互いに結合して単環または多環を形成してもよい。
上記一般式(III)において、xおよびdはそれぞれ独立に0または1以上の整数である。yおよびzはそれぞれ独立に0~2の整数である。R81~R99は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20のアルキル基若しくは炭素原子数3~15のシクロアルキル基である脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基またはアルコキシ基である。R89およびR90が結合している炭素原子と、R93が結合している炭素原子またはR91が結合している炭素原子とは、直接あるいは炭素原子数1~3のアルキレン基を介して結合していてもよい。また、y=z=0のとき、R95とR99とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。
上記一般式(IV)において、R100、R101は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数1~5の炭化水素基を示す。fは、1≦f≦18である。
[3]
上記[2]に記載の環状オレフィン系樹脂組成物であって、
上記環状オレフィン系重合体(A)が、
上記一般式(II)で表される繰り返し単位(II)および芳香環を有する環状オレフィンから導かれる構造単位(C)を有し、
上記繰り返し単位(II)が芳香環を含まず、
上記芳香環を有する環状オレフィンが、下記(C-1)式で表される化合物、下記(C-2)式で表される化合物および下記(C-3)式で表される化合物からなる群より選択される一種または二種以上を含む、環状オレフィン系樹脂組成物。
上記(C-1)式中、nおよびqはそれぞれ独立に0、1または2である。R1~R17はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、R10~R17の内1つは結合手である。また、q=0のとき、R10とR11、R11とR12、R12とR13、R13とR14、R14とR15、R15とR10は互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。また、q=1または2のときR10とR11、R11とR17、R17とR17、R17とR12、R12とR13、R13とR14、R14とR15、R15とR16、R16とR16、R16とR10は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、また上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。
上記(C-2)式中、nおよびmはそれぞれ独立に0、1または2であり、qは1、2または3である。R18~R31はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基である。また、q=1のときR28とR29、R29とR30、R30とR31は互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。また、q=2または3のときR28とR28、R28とR29、R29とR30、R30とR31、R31とR31は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、また上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。
上記(C-3)式中、qは1、2または3であり、R32~R39はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基である。また、q=1のときR36とR37、R37とR38、R38とR39は互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。また、q=2または3のときR36とR36、R36とR37、R37とR38、R38とR39、R39とR39は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、また上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。
[4]
上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の環状オレフィン系樹脂組成物であって、
上記化合物(B)は、カルボキシ基と、炭素原子数5~40の長鎖アルキル基を、各々分子末端に有する、環状オレフィン系樹脂組成物。
[5]
上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の環状オレフィン系樹脂組成物であって、
示差走査熱量計で測定される、上記環状オレフィン系樹脂(A)のガラス転移温度が130℃以上170℃以下である、環状オレフィン系樹脂組成物。
[6]
上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の環状オレフィン系樹脂組成物を含む、成形体。
[7]
光学部材である、上記[6]に記載の成形体。
環状オレフィン系共重合体(A)と、
カルボキシ基と炭素原子数5~40の長鎖アルキル基とを有する化合物(B)と、
を含む環状オレフィン系樹脂組成物であって、
上記化合物(B)が、アミン化合物またはアミド化合物のいずれかであり、
上記化合物(B)の量が、前記環状オレフィン系共重合体(A)100質量部に対して、1.0質量部以上10質量部以下である、環状オレフィン系樹脂組成物。
[2]
上記[1]に記載の環状オレフィン系樹脂組成物であって、
上記環状オレフィン系共重合体(A)が、下記繰り返し単位(a)と下記繰り返し単位(b)とを有する、環状オレフィン系樹脂組成物。
繰り返し単位(a):下記一般式(I)で表される少なくとも1種のオレフィン由来の繰り返し単位。
繰り返し単位(b):下記一般式(II)と、下記一般式(III)と、下記一般式(IV)とからなる群より選択される少なくとも1種の環状オレフィン由来の繰り返し単位。
[3]
上記[2]に記載の環状オレフィン系樹脂組成物であって、
上記環状オレフィン系重合体(A)が、
上記一般式(II)で表される繰り返し単位(II)および芳香環を有する環状オレフィンから導かれる構造単位(C)を有し、
上記繰り返し単位(II)が芳香環を含まず、
上記芳香環を有する環状オレフィンが、下記(C-1)式で表される化合物、下記(C-2)式で表される化合物および下記(C-3)式で表される化合物からなる群より選択される一種または二種以上を含む、環状オレフィン系樹脂組成物。
[4]
上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の環状オレフィン系樹脂組成物であって、
上記化合物(B)は、カルボキシ基と、炭素原子数5~40の長鎖アルキル基を、各々分子末端に有する、環状オレフィン系樹脂組成物。
[5]
上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の環状オレフィン系樹脂組成物であって、
示差走査熱量計で測定される、上記環状オレフィン系樹脂(A)のガラス転移温度が130℃以上170℃以下である、環状オレフィン系樹脂組成物。
[6]
上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の環状オレフィン系樹脂組成物を含む、成形体。
[7]
光学部材である、上記[6]に記載の成形体。
本発明の環状オレフィン系樹脂組成物であれば、従来の環状オレフィン系樹脂よりも高い耐湿熱性を有する成形体を形成できる。このような成形体であれば、内部ヘイズが低くかつ、耐湿熱試験前後での内部ヘイズの増加を抑制することができ、主に光学用途やレンズに好適に用いることができる。また、耐湿熱試験前後で透明性を維持できるため、透明性が要求される用途にも好適に用いることができる。
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。なお、実施形態では、数値範囲を示す「A~B」は、特に断りがなければ、A以上B以下を示す。
上述のように、本発明者らの検討によれば、従来の環状オレフィン系重合体や樹脂は、高温多湿環境下に長時間曝されると、内部ヘイズ等が増加するなど信頼性の面でさらなる改善の余地があった。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、親水剤としてカルボキシル基(COOH)と長鎖アルキル基とを有する、アミン化合物またはアミド化合物を、環状オレフィン系樹脂に対して特定の量を含む環状オレフィン系樹脂組成物を見出し、当該樹脂組成物の成形体が高い信頼性を有することを明らかにした。
すなわち、本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物は、以下である。
<環状オレフィン系樹脂組成物>
本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物は、
環状オレフィン系共重合体(A)と、
カルボキシ基と炭素原子数5~40の長鎖アルキル基とを有する化合物(B)と、
を含む環状オレフィン系樹脂組成物であって、
上記化合物(B)が、アミン化合物またはアミド化合物のいずれかであり、
上記化合物(B)の量が、上記環状オレフィン系共重合体(A)100質量部に対して、1.0質量部以上10質量部以下である、環状オレフィン系樹脂組成物である。
本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物は、
環状オレフィン系共重合体(A)と、
カルボキシ基と炭素原子数5~40の長鎖アルキル基とを有する化合物(B)と、
を含む環状オレフィン系樹脂組成物であって、
上記化合物(B)が、アミン化合物またはアミド化合物のいずれかであり、
上記化合物(B)の量が、上記環状オレフィン系共重合体(A)100質量部に対して、1.0質量部以上10質量部以下である、環状オレフィン系樹脂組成物である。
本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物であれば、環状オレフィン系樹脂と親水剤の相溶性を維持できる。また、本実施形態の環状オレフィン系樹脂組成物の成形体であれば、内部ヘイズが低くかつ、耐湿熱試験前後での内部ヘイズの変化を少なくすることができる。さらに、成形体は耐湿熱試験前後で透明性を維持できるため、透明性が要求される用途にも好適に用いることができる。
[環状オレフィン系共重合体(A)]
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体(A)は、通常、エチレンまたはα―オレフィンと環状オレフィンとの共重合体である。本実施形態に係る環状オレフィン共重合体(A)を構成する環状オレフィン系化合物は特に限定されないが、例えば、国際公開第2006/0118261号の段落0037~0063に記載の環状オレフィンモノマーを挙げることができる。
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体(A)は、通常、エチレンまたはα―オレフィンと環状オレフィンとの共重合体である。本実施形態に係る環状オレフィン共重合体(A)を構成する環状オレフィン系化合物は特に限定されないが、例えば、国際公開第2006/0118261号の段落0037~0063に記載の環状オレフィンモノマーを挙げることができる。
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体(A)を用いて得られる成形体を用いた光学部品の透明性および屈折率の性能バランスを良好に保ちつつ耐湿熱性をさらに向上する観点、および成形性を向上できる観点から、環状オレフィン系共重合体(A)は、後述する繰り返し単位(a)と繰り返し単位(b)を有する環状オレフィン系共重合体であることが好ましい。
(繰り返し単位(a))
繰り返し単位(a)は、下記一般式(I)で表される少なくとも1種のオレフィン由来の繰り返し単位である。
繰り返し単位(a)は、下記一般式(I)で表される少なくとも1種のオレフィン由来の繰り返し単位である。
(繰り返し単位(b))
繰り返し単位(b)は、下記一般式(II)と、下記一般式(III)と、下記一般式(IV)とからなる群より選択される少なくとも1種の繰り返し単位である。
繰り返し単位(b)は、下記一般式(II)と、下記一般式(III)と、下記一般式(IV)とからなる群より選択される少なくとも1種の繰り返し単位である。
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体(A)の共重合原料の1つであるオレフィンモノマーは、付加共重合して上記一般式(I)で表される構造単位を形成するものである。具体的には、上記一般式(I)に対応する、下記一般式(Ia)で表されるモノマーを例示できる。
上記一般式(Ia)において、R300は水素原子または炭素原子数1~29の直鎖または分岐鎖の炭化水素基を表す。上記一般式(Ia)で表されるオレフィンモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等が挙げられる。より優れた耐熱性、機械的特性および光学特性を有する光学部品を得る観点から、これらのなかでも、エチレンとプロピレンが好ましく、エチレンが特に好ましい。上記一般式(Ia)で表されるオレフィンモノマーは、2種類以上を用いてもよい。
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体を構成する構成単位の全体を100モル%としたとき、オレフィン由来の繰り返し単位(a)の割合が、好ましくは5モル%以上95モル%以下、より好ましくは20モル%以上90モル%以下、さらに好ましくは40モル%以上80モル%以下、特に好ましくは50モル%以上70モル%以下である。
オレフィン由来の繰り返し単位(a)の割合は、13C-NMRにより測定できる。
オレフィン由来の繰り返し単位(a)の割合は、13C-NMRにより測定できる。
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体(A)の共重合原料の1つである環状オレフィレンモノマーを付加重合して、上記一般式(II)、上記一般式(III)または上記一般式(IV)で表される環状オレフィン由来の繰り返し単位(b)を形成することが好ましい。具体的には、上記一般式(II)~(IV)にそれぞれ対応する(IIa)、(IIIa)、(IVa)で表される環状オレフィンモノマーが挙げられる。
共重合成分として、上述した一般式(Ia)で表されるオレフィンモノマー、一般式(IIa)、一般式(IIIa)、一般式(IVa)で表される環状オレフィンモノマーを用いることにより、環状オレフィン系共重合体(A)の溶媒への溶解性が向上するため、成形性が良好となり、製品の歩留まりが向上する。
一般式(IIa)、一般式(IIIa)、一般式(IVa)で表される環状オレフィンモノマーの具体例については、国際公開2006/0118261号の段落0037~0063に記載の化合物を用いることができる。
具体的には、ビシクロ-2-ヘプテン誘導体(ビシクロヘプト-2-エン誘導体)、トリシクロ-3-デセン誘導体、トリシクロ-3-ウンデセン誘導体、テトラシクロ-3-ドデセン誘導体、ペンタシクロ-4-ペンタデセン誘導体、ペンタシクロペンタデカジエン誘導体、ペンタシクロ-3-ペンタデセン誘導体、ペンタシクロ-4-ヘキサデセン誘導体、ペンタシクロ-3-ヘキサデセン誘導体、ヘキサシクロ-4-ヘプタデセン誘導体、ヘプタシクロ-5-エイコセン誘導体、ヘプタシクロ-4-エイコセン誘導体、ヘプタシクロ-5-ヘンエイコセン誘導体、オクタシクロ-5-ドコセン誘導体、ノナシクロ-5-ペンタコセン誘導体、ノナシクロ-6-ヘキサコセン誘導体、シクロペンタジエン-アセナフチレン付加物、1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロフルオレン誘導体、1,4-メタノ-1,4,4a,5,10,10a-ヘキサヒドロアントラセン誘導体、炭素原子数3~20のシクロアルキレン誘導体が挙げられる。
一般式(IIa)~(IVa)で表される環状オレフィンモノマーの中でも、一般式(IIa)で表される環状オレフィンが好ましい。
上記一般式(IIa)で表される環状オレフィンモノマー(b)として、ビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテン(ノルボルネンとも呼ぶ)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン(テトラシクロドデセンとも呼ぶ)を用いることが好ましく、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンを用いることがより好ましい。これらの環状オレフィンは剛直な環構造を有するため共重合体および光学部品の弾性率が保持され易くなる利点がある。
本実施形態に係る共重合体(A)を構成する構成単位の全体を100モル%としたとき、繰り返し単位(b)の割合は、好ましくは5モル%以上95モル%以下、より好ましくは10モル%以上80モル%以下、さらに好ましくは20モル%以上60モル%以下、特に好ましくは30モル%以上50モル%以下である。
このとき、環状オレフィン系重合体(A)が、上記一般式(II)で表される繰り返し単位(II)および芳香環を有する環状オレフィンから導かれる構造単位(C)を有し、上記繰り返し単位(II)が芳香環を含まず、上記芳香環を有する環状オレフィンが、下記(C-1)式で表される化合物、下記(C-2)式で表される化合物および下記(C-3)式で表される化合物からなる群より選択される一種または二種以上を含むことが好ましい。
上記(C-1)式の中でも、下記(C-1A)式で示される化合物が好ましい。下記(C-1A)式の各置換基は、上記(C-1)式の定義と同じである。
また、炭素原子数1~20の炭化水素基としては、それぞれ独立に、例えば炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数3~15のシクロアルキル基、および芳香環炭化水素基が挙げられる。より具体的には、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基およびオクタデシル気等が挙げられる。シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基等が挙げられる。芳香族炭化水素基としてはフェニル基、トリル基、ナフチル基、ベンジル基およびフェニルエチル基等のアリール基またはアラルキル基等が挙げられる。これらの炭化水素基はフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい。
これらの中でも、本実施形態に係る芳香族環を有する環状オレフィンとしては、芳香族を1つ有しているものが好ましく、例えば、ベンゾノルボルナジエン、インデンノルボルネンおよびメチルフェニルノルボルネンから選択される少なくとも1種が好ましい。
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体(A)の全構造単を100モル%としたときの、一般式(II)で表される繰り返し単位(II)および芳香環を有する環状オレフィンから導かれる構造単位(C)の含有量は、好ましくは5モル%以上95モル%以下、より好ましくは10モル%以上90モル%以下、さらにこのましくは20モル%以上80モル%以下、さらにより好ましくは30モル%以上80モル%以下、より一層好ましくは40モル%以上78モル%以下である。
本実施形態において、繰り返し単位(II)および構造単位(C)の含有量は、例えば、1H-NMRまたは13C-NMRによって測定することができる。
本実施形態において、繰り返し単位(II)および構造単位(C)の含有量は、例えば、1H-NMRまたは13C-NMRによって測定することができる。
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体(A)の共重合タイプは特に限定されないが、例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体等を挙げることができる。本実施形態においては、透明性、屈折率および複屈折率等の光学物性に優れ、高精度の光学部品を得ることができる観点から、環状オレフィン系共重合体(A)としては、ランダム共重合体を用いることが好ましい。
本実施形態に係る共重合体(A1)としては、エチレンとテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンとのランダム共重合体およびエチレンとビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテンとのランダム共重合体であることが好ましく、エチレンとテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンとのランダム共重合体がより好ましい。
本実施形態において、環状オレフィン系共重合体(A)は、1種類を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態に係る共重合体(A)は、例えば、特開昭60-168708号公報、特開昭61-120816号公報、特開昭61-115912号公報、特開昭61-115916号公報、特開昭61-271308号公報、特開昭61-272216号公報、特開昭62-252406号公報、特開昭62-252407号公報等の方法に従い適宜条件を選択することにより製造することができる。
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、130℃以上170℃以下の範囲にあることが好ましい。ガラス転移温度がこのような範囲にあると、車載カメラレンズや携帯機器用カメラレンズ等の耐熱性が求められる光学部品として使用する際に、十分な耐熱性を得ることができるとともに、良好な成形性を得ることができる。
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定計(DSC)を用いて測定することができる。例えば、SIIナノテクノロジー社製RDC220を用いて、窒素雰囲気下で常温から10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温した後に、5分間保持し、次いで10℃/分の降温速度で30℃まで降温した後に、5分保持し、次いで10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温する際にガラス転移温度を測定することができる。
[化合物(B)]
本実施形態に係る化合物(B)は、カルボキシ基と炭素原子数5~40の長鎖アルキル基とを有する、アミン化合物またはアミド化合物のいずれかである。
化合物(B)が長鎖アルキル基を有することで、環状オレフィン系共重合体との相溶性をより向上する。また、化合物(B)が、カルボキシル基を有し、アミノ基またはアミド基を有することで、水素結合を形成し、耐湿熱性がより向上する。また、高温高湿試験において、環状オレフィン系共重合体(A)中に取り込まれた水と、化合物(B)との間で水素結合が形成され、環状オレフィン系共重合体(A)内部の水の凝集が抑制されると考えられる。これにより、クラックの発生がより抑制される。
本実施形態に係る化合物(B)は、カルボキシ基と炭素原子数5~40の長鎖アルキル基とを有する、アミン化合物またはアミド化合物のいずれかである。
化合物(B)が長鎖アルキル基を有することで、環状オレフィン系共重合体との相溶性をより向上する。また、化合物(B)が、カルボキシル基を有し、アミノ基またはアミド基を有することで、水素結合を形成し、耐湿熱性がより向上する。また、高温高湿試験において、環状オレフィン系共重合体(A)中に取り込まれた水と、化合物(B)との間で水素結合が形成され、環状オレフィン系共重合体(A)内部の水の凝集が抑制されると考えられる。これにより、クラックの発生がより抑制される。
また、上記化合物(B)の含有量は、上記環状オレフィン系共重合体(A)100質量部に対して、1.0質量部以上10質量部であり、好ましくは1.3~5.0質量部、更に好ましくは1.5~3.0質量部である。
上記化合物(B)の含有量が、上記下限値よりも少ないと、耐湿熱試験前後での内部ヘイズの変化が大きくなる。また、上記上限値よりも多いと、耐湿熱試験前の内部ヘイズが大きくなる。
上記化合物(B)の含有量が、上記下限値よりも少ないと、耐湿熱試験前後での内部ヘイズの変化が大きくなる。また、上記上限値よりも多いと、耐湿熱試験前の内部ヘイズが大きくなる。
長鎖アルキル基は、炭素原子数5~40の長鎖アルキル基であり、好ましくは炭素原子数10~25のアルキル基である。長鎖アルキル基は、上記炭素原子数の基であれば直鎖であっても分岐鎖であってもよい。
このとき、カルボキシル基(COOH)および炭素原子数5~40の長鎖アルキル基は、それぞれ分子末端に位置することが好ましい。このように、各々各分子末端に位置することで、相溶性をより向上させることができる。
このような化合物(B)としては、例えば、オレオイルサルコシン(HOOC-CH2-NHCO-C17H33)、ラウリルアスパラギン酸(HOOC-CH2-CH(COOH)-NHCO-C11H23)、ミリスチルアスパラギン酸(HOOC-CH2-CH(COOH)-NHCO-C13H27)等が挙げられる。
(その他の成分)
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体組成物は、必要に応じて、耐候安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、金属不活性剤、塩酸吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、天然油、合成油、ワックス、有機または無期の充填剤等を、本実施形態の目的を損なわない範囲で配合することができ、その配合割合は適宜量である。
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体組成物は、必要に応じて、耐候安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、金属不活性剤、塩酸吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、天然油、合成油、ワックス、有機または無期の充填剤等を、本実施形態の目的を損なわない範囲で配合することができ、その配合割合は適宜量である。
本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物は、成形体とすることができる。環状オレフィン系樹脂組成物を成形して、成形体を得る方法としては特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。その用途および形状にもよるが、例えば、押出成形、射出成形、インフレーション成形、ブロー成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、プレス成形、真空成形、パウダースラッシュ成形、カレンダー成形、発泡成形等が適用可能である。これらの中でも、成形性、生産性の観点から射出成形法が好ましい。また、成形条件は使用目的、または成形方法により適宜選択されるが、例えば射出成形における樹脂温度は、通常150℃~400℃、好ましくは200℃~350℃、より好ましくは230℃~330℃の範囲で適宜選択される。
本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物は、例えば、環状オレフィン系共重合体(A)および必要に応じて添加されるその他の成分を、押出機およびバンバリーミキサー等の公知の混練装置を用いて溶融混練する方法;環状オレフィン系共重合体(A)および必要に応じて添加されるその他の成分を共通の溶媒に溶解した後、溶媒を蒸発させる方法;貧溶媒中に環状オレフィン系共重合体(A)および必要に応じて添加されるその他の成分の溶液を加えて析出させる方法;等の方法により得ることができる。
次いで、得られた成形体を、例えば、(環状オレフィン系共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)-40)℃~(環状オレフィン系共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)-5)℃の範囲で、2~8時間アニール処理をすることにより、光学部品を得ることができる。上記アニール処理をすることにより、成形体中の環状オレフィン系共重合体(A)の分子が緩和し、自由体積が減少する。そのため加熱処理しても比重の変化(体積の変化)が起きにくくなる。
ここで、アニール処理の条件を厳しくすると、成形体が変形してしまい、戻らなくなってしまうため、上記の条件で、かつ、成形体が変形しない範囲で行うことが好ましい。すなわち、成形体の変形が起きないような温度および時間でアニール処理を行うことが好ましい。
ここで、アニール処理の条件を厳しくすると、成形体が変形してしまい、戻らなくなってしまうため、上記の条件で、かつ、成形体が変形しない範囲で行うことが好ましい。すなわち、成形体の変形が起きないような温度および時間でアニール処理を行うことが好ましい。
以上のようにして得られた光学部材は、耐湿熱性に優れる。そのため、耐湿熱試験前後での内部ヘイズの増加を抑制することができ、主に光学用途やレンズに好適に用いることができる。また、耐湿熱試験前後で透明性を維持できるため、透明性が要求される用途にも好適に用いることができる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
また、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
また、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
以下、本実施形態を、実施例・比較例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
(触媒の調製)
VO(OC2H5)Cl2をシクロヘキサンで希釈し、バナジウム濃度が6.7mmol/Lであるバナジウム触媒のシクロヘキサン溶液を調製した。エチルアルミニウムセスキクロリド(Al(C2H5)1.5Cl1.5)をシクロヘキサンで希釈し、アルミニウム濃度が107mmol/Lである有機アルミニウム化合物触媒のシクロヘキサン溶液を調製した。
(触媒の調製)
VO(OC2H5)Cl2をシクロヘキサンで希釈し、バナジウム濃度が6.7mmol/Lであるバナジウム触媒のシクロヘキサン溶液を調製した。エチルアルミニウムセスキクロリド(Al(C2H5)1.5Cl1.5)をシクロヘキサンで希釈し、アルミニウム濃度が107mmol/Lである有機アルミニウム化合物触媒のシクロヘキサン溶液を調製した。
(重合)
攪拌式重合器(内径500mm、反応容積100L)を用いて、連続的にエチレンとテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンとの共重合反応を行った。この共重合反応を行う際には、上記方法によって調製されたバナジウム触媒のシクロヘキサン溶液を、重合器内のシクロヘキサンに対するバナジウム触媒濃度が0.6mmol/Lになるように重合器内に供給した。
攪拌式重合器(内径500mm、反応容積100L)を用いて、連続的にエチレンとテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンとの共重合反応を行った。この共重合反応を行う際には、上記方法によって調製されたバナジウム触媒のシクロヘキサン溶液を、重合器内のシクロヘキサンに対するバナジウム触媒濃度が0.6mmol/Lになるように重合器内に供給した。
また、有機アルミニウム化合物であるエチルアルミニウムセスキクロリドを、アルミニウムとバナジウムの質量比(Al/V)が18.0になるように重合器内に供給した。重合温度を8℃とし、重合圧力を1.8kg/cm2Gとして連続的に共重合反応を行い、エチレンとテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンとの共重合体(エチレン・テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン共重合体)を得た。
(脱灰)
重合器より抜出した、エチレン・テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン共重合体溶液に、水およびpH調節剤として、濃度25質量%のNaOH溶液を添加し、重合反応を停止させた。また、エチレン・テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン共重合体中に存在する触媒残渣を除去(脱灰)し、ポリマー溶液Aを得た。
上記脱灰処理を行った、エチレン・テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン共重合体のシクロヘキサン溶液(ポリマー溶液A、ポリマー濃度7.7質量%)に、安定剤としてペンタエリスリチル‐テトラキス[3‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を、上記共重合体100質量部に対して0.4質量部となるように添加した後、一旦、有効容積1.0cm3の攪拌槽を用いて1時間混合した。
重合器より抜出した、エチレン・テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン共重合体溶液に、水およびpH調節剤として、濃度25質量%のNaOH溶液を添加し、重合反応を停止させた。また、エチレン・テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン共重合体中に存在する触媒残渣を除去(脱灰)し、ポリマー溶液Aを得た。
上記脱灰処理を行った、エチレン・テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン共重合体のシクロヘキサン溶液(ポリマー溶液A、ポリマー濃度7.7質量%)に、安定剤としてペンタエリスリチル‐テトラキス[3‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を、上記共重合体100質量部に対して0.4質量部となるように添加した後、一旦、有効容積1.0cm3の攪拌槽を用いて1時間混合した。
(脱溶媒)
熱源として20kg/cm2Gの水蒸気を用いた二重管式加熱器(外管径2B、内管径3/4B、長さ21m)に、濃度を5質量%とした上記共重合体のシクロヘキサン溶液を150kg/Hの量で供給して、180℃に加熱した。
熱源として25kg/cm2Gの水蒸気を用いた二重管式フラッシュ乾燥器(外管径2B、内管径3/4B、長さ27m)とフラッシュホッパー(容積200L)とを用いて、上記加熱工程を経た上記共重合体のシクロヘキサン溶液から重合溶媒であるシクロヘキサンとともに大半の未反応モノマーを除去することでフラッシュ乾燥された溶融状態の環状オレフィンランダム共重合体(樹脂A)を得た。示差走査熱量計で測定した、樹脂Aのガラス転移温度(Tg)は161℃であった。
熱源として20kg/cm2Gの水蒸気を用いた二重管式加熱器(外管径2B、内管径3/4B、長さ21m)に、濃度を5質量%とした上記共重合体のシクロヘキサン溶液を150kg/Hの量で供給して、180℃に加熱した。
熱源として25kg/cm2Gの水蒸気を用いた二重管式フラッシュ乾燥器(外管径2B、内管径3/4B、長さ27m)とフラッシュホッパー(容積200L)とを用いて、上記加熱工程を経た上記共重合体のシクロヘキサン溶液から重合溶媒であるシクロヘキサンとともに大半の未反応モノマーを除去することでフラッシュ乾燥された溶融状態の環状オレフィンランダム共重合体(樹脂A)を得た。示差走査熱量計で測定した、樹脂Aのガラス転移温度(Tg)は161℃であった。
(押出)
ベント付二軸混練押出機を用い、上記の溶融状態の樹脂Aを押出機の樹脂装入部より装入した後、揮発物を除去する目的でベント部分からトラップを介し真空ポンプで吸引しつつ、ベント部よりも下流側のシリンダー部に、親水剤としてオレオイルザルコシン(オレオイルザルコシン221P、日油株式会社製、親水剤1。主成分:オレイルザルコシン)を、樹脂A 100質量部に対し1.2質量部を添加し、押出機のベント部より下流側で混練した。
この時、押出機ダイバーター部樹脂温度の最大値と最小値の差が3℃以内になるように押出機条件を調整した。次いで、押出機出口に取り付けられたアンダーウォーターペレタイザーにより樹脂Aとオレオイルザルコシン(HOOC-CH2-NHCO-C17H33)の混錬物をペレット化し、得られたペレットを温度100℃の熱風にて4時間乾燥した。
さらに重合器内の平均滞留時間から計算される樹脂量の3~5倍程度の樹脂を洗浄のために流し、その後サンプルを採取する操作を行うことによって、樹脂Aを含む樹脂組成物を得た。鉄原子(Fe)の混入を抑えるため、ポリマー製造設備にはステンレス製の配管や重合装置を用いた。
ベント付二軸混練押出機を用い、上記の溶融状態の樹脂Aを押出機の樹脂装入部より装入した後、揮発物を除去する目的でベント部分からトラップを介し真空ポンプで吸引しつつ、ベント部よりも下流側のシリンダー部に、親水剤としてオレオイルザルコシン(オレオイルザルコシン221P、日油株式会社製、親水剤1。主成分:オレイルザルコシン)を、樹脂A 100質量部に対し1.2質量部を添加し、押出機のベント部より下流側で混練した。
この時、押出機ダイバーター部樹脂温度の最大値と最小値の差が3℃以内になるように押出機条件を調整した。次いで、押出機出口に取り付けられたアンダーウォーターペレタイザーにより樹脂Aとオレオイルザルコシン(HOOC-CH2-NHCO-C17H33)の混錬物をペレット化し、得られたペレットを温度100℃の熱風にて4時間乾燥した。
さらに重合器内の平均滞留時間から計算される樹脂量の3~5倍程度の樹脂を洗浄のために流し、その後サンプルを採取する操作を行うことによって、樹脂Aを含む樹脂組成物を得た。鉄原子(Fe)の混入を抑えるため、ポリマー製造設備にはステンレス製の配管や重合装置を用いた。
(実施例2)
親水剤1(オレオイルザルコシン221P:日油株式会社製)の添加量を、樹脂A 100質量部に対して1.5質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を製造した。
親水剤1(オレオイルザルコシン221P:日油株式会社製)の添加量を、樹脂A 100質量部に対して1.5質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を製造した。
(実施例3)
親水剤1(オレオイルザルコシン221P:日油株式会社製)の添加量を、樹脂A 100質量部に対して1.8質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を製造した。
親水剤1(オレオイルザルコシン221P:日油株式会社製)の添加量を、樹脂A 100質量部に対して1.8質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を製造した。
(実施例4)
親水剤1(オレオイルザルコシン221P:日油株式会社製)の添加量を、樹脂A 100質量部に対して2.8質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を製造した。
親水剤1(オレオイルザルコシン221P:日油株式会社製)の添加量を、樹脂A 100質量部に対して2.8質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を製造した。
(比較例1)
親水剤1(オレオイルザルコシン221P:日油株式会社製)の添加量を、樹脂A 100質量部に対して0.8質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を製造した。
親水剤1(オレオイルザルコシン221P:日油株式会社製)の添加量を、樹脂A 100質量部に対して0.8質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を製造した。
(比較例2)
親水剤1(オレオイルザルコシン221P:日油株式会社製)の添加量を、樹脂A 100質量部に対して0.5質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を製造した。
親水剤1(オレオイルザルコシン221P:日油株式会社製)の添加量を、樹脂A 100質量部に対して0.5質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を製造した。
(比較例3)
親水剤1(オレオイルザルコシン221P:日油株式会社製)の添加量を、樹脂A 100質量部に対して0.2質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を製造した。
親水剤1(オレオイルザルコシン221P:日油株式会社製)の添加量を、樹脂A 100質量部に対して0.2質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を製造した。
(比較例4)
親水剤1(オレオイルザルコシン221P:日油株式会社製)の代わりに、親水剤2(ナイミッドMF-210:日油株式会社製。主成分:ポリオキシエチレンウラリン酸モノエタノールアミド)を用いて、実施例3と同様にして樹脂Aと混錬したが、親水剤2と樹脂Aとの相溶性が悪く、均一な混錬物が得られなかった。
親水剤1(オレオイルザルコシン221P:日油株式会社製)の代わりに、親水剤2(ナイミッドMF-210:日油株式会社製。主成分:ポリオキシエチレンウラリン酸モノエタノールアミド)を用いて、実施例3と同様にして樹脂Aと混錬したが、親水剤2と樹脂Aとの相溶性が悪く、均一な混錬物が得られなかった。
(比較例5)
親水剤1(オレオイルザルコシン221P:日油株式会社製)の代わりに、親水剤2(ナイミッドMF-210:日油株式会社製)を、樹脂A 100質量部に対して0.8質量部添加した以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を製造した。
親水剤1(オレオイルザルコシン221P:日油株式会社製)の代わりに、親水剤2(ナイミッドMF-210:日油株式会社製)を、樹脂A 100質量部に対して0.8質量部添加した以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を製造した。
(比較例6)
親水剤2(ナイミッドMF-210:日油株式会社製)を、樹脂A 100質量部に対して0.5質量部添加した以外は比較例5と同様にして、樹脂組成物を製造した。
親水剤2(ナイミッドMF-210:日油株式会社製)を、樹脂A 100質量部に対して0.5質量部添加した以外は比較例5と同様にして、樹脂組成物を製造した。
(比較例7)
親水剤2(ナイミッドMF-210:日油株式会社製)を、樹脂A 100質量部に対して0.2質量部添加した以外は比較例5と同様にして、樹脂組成物を製造した。
親水剤2(ナイミッドMF-210:日油株式会社製)を、樹脂A 100質量部に対して0.2質量部添加した以外は比較例5と同様にして、樹脂組成物を製造した。
<評価>
[内部ヘイズ]
射出成形機(ファナック社製 ROBOSHOT S2000i-30α)を用いて、シリンダー温度275℃、金型温度120℃で、得られた樹脂組成物を射出成形し、光学面を持つ35mm×65mm×厚み3mmtのテストピースを成形した。
テストピースの内部ヘイズはベンジルアルコールを使用し、JIS K-7105に基づいて測定した。
[内部ヘイズ]
射出成形機(ファナック社製 ROBOSHOT S2000i-30α)を用いて、シリンダー温度275℃、金型温度120℃で、得られた樹脂組成物を射出成形し、光学面を持つ35mm×65mm×厚み3mmtのテストピースを成形した。
テストピースの内部ヘイズはベンジルアルコールを使用し、JIS K-7105に基づいて測定した。
[耐湿熱試験]
内部ヘイズ測定で作製したテストピースを、温度85℃、相対湿度85%の雰囲気下に168時間放置した。その後、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気に取り出して48時間後に内部ヘイズを測定した。
耐湿熱試験後の内部ヘイズから耐湿熱試験前の内部ヘイズを差し引いた変化量(以下、Δ内部ヘイズ)を測定した。
内部ヘイズ測定で作製したテストピースを、温度85℃、相対湿度85%の雰囲気下に168時間放置した。その後、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気に取り出して48時間後に内部ヘイズを測定した。
耐湿熱試験後の内部ヘイズから耐湿熱試験前の内部ヘイズを差し引いた変化量(以下、Δ内部ヘイズ)を測定した。
表1に、実施例1~4、比較例1~7の結果を示す。
親水剤が特定の量以下である比較例1~3では、Δ内部ヘイズを抑制することができなかった。親水剤2を用いた比較例4では、相溶性が悪く、均一な混錬物が得られなかった。また、親水剤2を用いた比較例5~7は相溶したものの、Δ内部ヘイズを抑制することができなかった。
一方、本実施形態の実施例1~4では、親水剤1を用いることにより、Δ内部ヘイズを抑えることができた。また、環境試験前後で透明性も維持できた。
Claims (7)
- 環状オレフィン系共重合体(A)と、
カルボキシ基と炭素原子数5~40の長鎖アルキル基とを有する化合物(B)と、
を含む環状オレフィン系樹脂組成物であって、
前記化合物(B)が、アミン化合物またはアミド化合物のいずれかであり、
前記化合物(B)の量が、前記環状オレフィン系共重合体(A)100質量部に対して、1.0質量部以上10質量部以下である、環状オレフィン系樹脂組成物。 - 請求項1に記載の環状オレフィン系樹脂組成物であって、
前記環状オレフィン系共重合体(A)が、下記繰り返し単位(a)と下記繰り返し単位(b)とを有する、環状オレフィン系樹脂組成物。
繰り返し単位(a):下記一般式(I)で表される少なくとも1種のオレフィン由来の繰り返し単位。
繰り返し単位(b):下記一般式(II)と、下記一般式(III)と、下記一般式(IV)とからなる群より選択される少なくとも1種の環状オレフィン由来の繰り返し単位。
- 請求項2に記載の環状オレフィン系樹脂組成物であって、
前記環状オレフィン系重合体(A)が、
前記一般式(II)で表される繰り返し単位(II)および芳香環を有する環状オレフィンから導かれる構造単位(C)を有し、
前記繰り返し単位(II)が芳香環を含まず、
前記芳香環を有する環状オレフィンが、下記(C-1)式で表される化合物、下記(C-2)式で表される化合物および下記(C-3)式で表される化合物からなる群より選択される一種または二種以上を含む、環状オレフィン系樹脂組成物。
- 請求項1~3のいずれか1項に記載の環状オレフィン系樹脂組成物であって、
前記化合物(B)は、カルボキシ基と、炭素原子数5~40の長鎖アルキル基を、各々分子末端に有する、環状オレフィン系樹脂組成物。 - 請求項1~4のいずれか1項に記載の環状オレフィン系樹脂組成物であって、
示差走査熱量計で測定される、前記環状オレフィン系樹脂(A)のガラス転移温度が130℃以上170℃以下である、環状オレフィン系樹脂組成物。 - 請求項1~5のいずれか1項に記載の環状オレフィン系樹脂組成物を含む、成形体。
- 光学部材である、請求項6に記載の成形体。
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