JP2022085300A - 電動車両 - Google Patents

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剛史 大山
Takashi Oyama
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Abstract

【課題】モータがロック状態であるときに、電流集中状態であるか否かをより適切に判定する。【解決手段】モータがロック状態であるときには、モータの各相の相電流のうち特定の一相の相電流の絶対値が第1閾値以上の状態が第2閾値以上の時間に亘って継続したときに、モータの各相のうち特定の一相に電流が集中する電流集中状態であると判定する。この場合、インバータの素子の温度に基づいて素子の累積ストレスを推定し、素子の累積ストレスが大きいほど閾値を小さくするおよび/または第2閾値を短くする。【選択図】図2

Description

本発明は、電動車両に関する。
従来、この種の電動車両としては、走行用のモータがロック状態であるときに、インバータの複数のスイッチング素子のうち連続通電状態となった特定のスイッチング素子に流れるロック時電流を、連続通電初期時には、瞬時許容電流閾値を上回らない一定電流値に制限し、一定電流値が、連続通電時間に応じて瞬時許容電流閾値から低下する連続許容電流閾値を上回ろうとする時点以降では、一定電流値の制限を解除して電流値の増減を繰り返させ、電流値を増減させているときの電流上側ピーク値が瞬時許容電流閾値以下であって連続許容電流閾値以上となるように制御し、かつ、電流値を増減させているときの平均電流値が連続許容電流閾値を上回らないように制御するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2010-11647号公報
こうした電動車両では、モータがロック状態であるときには、モータの各相の相電流のうち特定の一相の相電流の絶対値が第1閾値以上の状態が第2閾値以上の時間に亘って継続したときに、モータの各相のうち特定の一相に電流が集中する電流集中状態であると判定することが考えられている。このときに、電流集中状態であるか否かの判定をより適切に行なうために、第1閾値や第2閾値をどのように設定するかが課題とされている。
本発明の電動車両は、モータがロック状態であるときに、電流集中状態であるか否かをより適切に判定することを主目的とする。
本発明の電動車両は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
本発明の電動車両は、
モータと、
前記モータを駆動するインバータと、
前記モータがロック状態であるときには、前記モータの各相の相電流のうち特定の一相の相電流の絶対値が第1閾値以上の状態が第2閾値以上の時間に亘って継続したときに、前記モータの各相のうち前記特定の一相に電流が集中する電流集中状態であると判定する制御装置と、
を備える電動車両であって、
前記制御装置は、
前記インバータの素子の温度に基づいて前記素子の累積ストレスを推定し、
前記素子の累積ストレスが大きいほど前記第1閾値を小さくするおよび/または前記第2閾値を短くする、
ことを要旨とする。
本発明の電動車両では、モータがロック状態であるときには、モータの各相の相電流のうち特定の一相の相電流の絶対値が第1閾値以上の状態が第2閾値以上の時間に亘って継続したときに、モータの各相のうち特定の一相に電流が集中する電流集中状態であると判定する。この場合、インバータの素子の温度に基づいて素子の累積ストレスを推定し、素子の累積ストレスが大きいほど閾値を小さくするおよび/または第2閾値を短くする。ここで、インバータの素子の累積ストレスが大きいほど素子の劣化程度が進行していると想定される。したがって、こうした処理により、インバータの素子の累積ストレス(劣化程度)に応じて、電流集中状態であるか否かをより適切に判定することができる。
本発明の電動車両において、前記制御装置は、前記モータが前記ロック状態であるときに、前記電流集中状態であると判定したときには、前記電流集中状態でないと判定したときに比して、前記モータの許容上限トルクを制限するものとしてもよい。この場合、前記制御装置は、前記素子の累積ストレスが大きいほど小さくなるように前記モータの許容上限トルクを設定するものとしてもよい。こうすれば、インバータの素子の累積ストレスに応じて、モータの許容上限トルクをより適切に設定することができる。
本発明の電動車両において、前記制御装置は、前記素子の温度の極大値と極小値との差分に基づいて加算値を設定し、前記加算値の積算値に基づいて前記累積ストレスを推定するものとしてもよい。こうすれば、インバータの素子の累積ストレスをより適切に推定することができる。
本発明の電動車両において、冷却水を用いて前記インバータを冷却する冷却装置を更に備え、前記制御装置は、前記冷却水の温度に基づいて関インバータの素子の温度を推定するものとしてもよい。こうすれば、インバータの素子の温度を直接に検出する温度センサを省略することができる。
本発明の一実施例としての電気自動車20の構成の概略を示す構成図である。 電子制御ユニット50により実行される判定ルーチンの一例を示すフローチャートである。 電子制御ユニット50により実行される累積ストレスレベル推定ルーチンの一例を示すフローチャートである。 インバータ34の素子温度Tiの時間変化の様子の一例を示す説明図である。 加算値用マップの一例を示す説明図である。 判定閾値用マップの一例を示す説明図である。 判定時間用マップの一例を示す説明図である。 許容上限トルク用マップの一例を示す説明図である。
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施例としての電気自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例の電気自動車20は、図示するように、走行用のモータ32と、インバータ34と、冷却装置40と、蓄電装置としてのバッテリ36と、電子制御ユニット50とを備える。
モータ32は、同期発電電動機として構成されており、回転子コアに永久磁石が埋め込まれた回転子と、固定子コアに三相コイルが巻回された固定子とを備える。このモータ32の回転子は、駆動輪22a,22bにデファレンシャルギヤ24を介して連結された駆動軸26に接続されている。
インバータ34は、モータ32の駆動に用いられると共に電力ライン38を介してバッテリ36に接続されており、6つのスイッチング素子としてのトランジスタT11~T16と、6つのトランジスタT11~T16のそれぞれに並列に接続された6つのダイオードD11~D16とを有する。トランジスタT11~T16は、それぞれ、電力ライン38の正極側ラインと負極側ラインとに対してソース側とシンク側になるように2個ずつペアで配置されている。また、トランジスタT11~T16の対となるトランジスタ同士の接続点の各々には、モータ32の三相コイル(U相,V相,W相のコイル)の各々が接続されている。したがって、インバータ34に電圧が作用しているときに、電子制御ユニット50によって、対となるトランジスタT11~T16のオン時間の割合が調節されることにより、三相コイルに回転磁界が形成され、モータ32が回転駆動される。
冷却装置40は、冷却水を用いてインバータ34を冷却する装置として構成されており、循環流路42と、熱交換器44と、電動ポンプ46とを備える。循環流路42は、インバータ34と熱交換器44とに冷却水を循環させるための流路である。熱交換器44は、冷却水と外気との熱交換を行なう。電動ポンプ46は、循環流路42の冷却水を圧送する(循環させる)。
バッテリ36は、例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池として構成されており、上述したように、電力ライン38を介してインバータ34に接続されている。電力ライン38の正極側ラインと負極側ラインとには、コンデンサ39が取り付けられている。
電子制御ユニット50は、CPU52を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU52に加えて、処理プログラムを記憶するROM54や、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポート、通信ポートを備える。電子制御ユニット50には、各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。電子制御ユニット50に入力される信号としては、例えば、モータ32の回転子の回転位置を検出する回転位置センサ(例えばレゾルバ)32aからの回転位置θmや、モータ32のU相、V相の相電流を検出する電流センサ32u,32vからの相電流Iu,Ivを挙げることができる。冷却装置40の循環流路42に取り付けられた温度センサ48からの冷却水温Twも挙げることができる。バッテリ36の端子間に取り付けられた図示しない電圧センサからのバッテリ36の電圧Vbや、バッテリ36の出力端子に取り付けられた図示しない電流センサからのバッテリ36の電流Ib、コンデンサ39の端子間に取り付けられた電圧センサ39aからのコンデンサ39(電力ライン38)の電圧VHも挙げることができる。スタートスイッチ60からのイグニッション信号や、シフトレバー61の操作位置を検出するシフトポジションセンサ62からのシフトポジションSPも挙げることができる。アクセルペダル63の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ64からのアクセル開度Acc、ブレーキペダル65の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ66からのブレーキペダルポジションBP、車速センサ68からの車速Vも挙げることができる。電子制御ユニット50からは、各種制御信号が出力ポートを介して出力されている。電子制御ユニット50から出力される信号としては、例えば、インバータ34のトランジスタT11~T16へのスイッチング制御信号や、電動ポンプ46への制御信号を挙げることができる。
電子制御ユニット50は、回転位置センサ32aからのモータ32の回転子の回転位置θmに基づいてモータ32の電気角θeや回転数Nmを演算している。電子制御ユニット50は、電流センサ32u,32vからのモータ32のU相、V相の相電流Iu,Ivに基づいてモータ32のトルクTmを推定している。電子制御ユニット50は、モータ32の回転数NmとトルクTmとの積としてモータ32の消費電力Pmを推定している。電子制御ユニット50は、温度センサ48からの冷却水温Twに基づいて、インバータ34の素子(トランジスタT11~T16やダイオードD11~D16)の温度である素子温度Tiを推定している。インバータ34の素子温度Tiは、例えば、冷却水温Twとインバータ34のケース温度とが略等しいとみなして、冷却水温Twと、インバータ34の素子とケースとの間の熱抵抗(予め定められた値)と、インバータ34の消費電力Pmと、に基づいて推定される。
こうして構成された実施例の電気自動車20では、電子制御ユニット50は、アクセル開度Accおよび車速Vに基づいて駆動軸26に要求される要求トルクTd*を設定し、モータ32の許容上限トルクTlim以下の範囲内で要求トルクTd*が駆動軸26に出力されるようにモータ32のトルク指令Tm*を設定する。そして、モータ32がトルク指令Tm*で駆動されるようにインバータ34のトランジスタT11~T16のスイッチング制御を行なう。
次に、こうして構成された実施例の電気自動車20の動作、特に、モータ32がロック状態であるときにモータ32の各相のうち特定の一相に電流が集中する電流集中状態であるか否かを判定する処理について説明する。図2は、電子制御ユニット50により実行される判定ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、繰り返し実行される。
図2の判定ルーチンが実行されると、電子制御ユニット50は、最初に、モータ32の相電流Iu,Iv,Iwや回転数Nm、インバータ34の素子(トランジスタT11~T16およびダイオードD11~D16)の累積ストレスレベルLsなどのデータを入力する(ステップS100)。ここで、モータ32の相電流Iu,Ivは、電流センサ32u,32vにより検出された値が入力される。モータ32の相電流Iwは、モータ32の各相の相電流Iu,Iv,Iwの総和を値0として、相電流Iu,Ivに基づいて演算された値が入力される。インバータ34の素子の累積ストレスレベルLsは、図3の累積ストレスレベル推定ルーチンにより推定された値が入力される。ここで、図2の判定ルーチンの説明を中断し、図3の累積ストレスレベル推定ルーチンについて説明する。
図3の累積ストレスレベル推定ルーチンは、トリップ中(スタートスイッチ60がオンされてからオフされるまでの間)において、インバータ34の素子温度Tiの極大値Timaxまたは極小値Timinを取得したときに実行される。図4は、インバータ34の素子温度Tiの時間変化の様子の一例を示す説明図である。図中、時刻t1,t3のインバータ34の素子温度Ti[1],Ti[3]は、素子温度Tiの極小値であり、時刻t2,t4のインバータ34の素子温度Ti[2],Ti[4]は、素子温度Tiの極大値である。図3のルーチンは、インバータ34の素子温度Ti[1],Ti[2],・・・を取得したときに実行されるものとした。
図3の累積ストレスレベル推定ルーチンが実行されると、電子制御ユニット50は、最初に、インバータ34の素子温度Tiの最新の極大値Timaxおよび極小値Timinを入力する(ステップS200)。図4を参照すると、時刻t2でインバータ34の素子温度Ti[2]を取得した直後に本ルーチンが実行されたときには、インバータ34の素子温度Ti[1],Ti[2]をそれぞれ最新の極小値Timinおよび極大値Timaxとして入力することになる。また、時刻t3でインバータ34の素子温度Ti[3]を取得した直後に本ルーチンが実行されたときには、インバータ34の素子温度Ti[2],Ti[3]をそれぞれ最新の極大値Timaxおよび極小値Timinとして入力することになる。
こうしてデータを入力すると、インバータ34の素子温度Tiの極大値Timaxから極小値Timinを減じて、素子温度Tiの極値差ΔTiを演算する(ステップS210)。図4を参照すると、時刻t2でインバータ34の素子温度Ti[2]を取得した直後に本ルーチンが実行されたときには、素子温度Ti[1]と素子温度Ti[2]との極値差ΔTi[1]を極値差ΔTiとして演算し、時刻t3でインバータ34の素子温度Ti[3]を取得した直後に本ルーチンが実行されたときには、素子温度Ti[2]と素子温度Ti[3]との極値差ΔTi[2]を極値差ΔTiとして演算することになる。
続いて、インバータ34の素子温度Tiの極値差ΔTiに基づいて加算値αを設定し(ステップS220)、設定した加算値αを前回のインバータ34の素子の累積ストレスレベル(前回Ls)に加えた値をインバータ34の素子の新たな累積ストレスレベルLsに設定して(ステップS230)、本ルーチンを終了する。ここで、加算値αは、例えば、インバータ34の素子温度Tiの極値差ΔTiと加算値αとの関係を予め定めた加算値用マップにインバータ34の素子温度Tiの極値差ΔTiを適用して設定することができる。図5は、加算値用マップの一例を示す説明図である。加算値αは、図示するように、極値差ΔTiが大きいほど大きくなるように設定される。これは、極値差ΔTiが大きいほどインバータ34の素子に大きなストレスが作用していると想定されるためである。
図3の累積ストレスレベル推定ルーチンについて説明した。図2の判定ルーチンの説明に戻る。ステップS100でデータを入力すると、モータ32の相電流Iu,Iv,Iwおよび回転数Nmに基づいて、モータ32がロック状態であるか否かを判定する(ステップS110,S112)。実施例では、モータ32に通電中で且つモータ32の回転数Nmが閾値Nmref以下のときに、モータ32がロック状態であると判定するものとした。ステップS110,S112でモータ32がロック状態でないと判定したときには、モータ32の許容上限トルクTlimにモータ32の定格値Tmrを設定して(ステップS140)、本ルーチンを終了する。
ステップS110,S112でモータ32がロック状態であると判定したときには、インバータ34の素子の累積ストレスレベルLsに基づいて、モータ32が電流集中状態であるか否かの判定に用いる判定閾値Irefおよび判定時間Trefを設定する(ステップS120)。ここで、判定閾値Irefは、例えば、インバータ34の素子の累積ストレスレベルLsと判定閾値Irefとの関係を予め定めた判定閾値用マップにインバータ34の素子の累積ストレスレベルLsを適用して設定することができる。判定時間Trefは、例えば、インバータ34の素子の累積ストレスレベルLsと判定時間Trefとの関係を予め定めた判定時間用マップにインバータ34の素子の累積ストレスレベルLsを適用して設定することができる。図6は、判定閾値用マップの一例を示す説明図であり、図7は、判定時間用マップの一例を示す説明図である。判定閾値Irefは、図6に示すように、インバータ34の素子の累積ストレスレベルLsが大きいほど小さくなるように設定され、判定時間Trefは、図7に示すように、インバータ34の素子の累積ストレスレベルLsが大きいほど短くなるように設定される。判定閾値Irefや判定時間Trefをこのように設定する理由については後述する。
こうして判定閾値Irefや判定時間Trefを設定すると、モータ32の各相の相電流Iu,Iv,Iwと判定閾値Irefと判定時間Trefとを用いてモータ32が電流集中状態であるか否かを判定する(ステップS130,S132)。この判定では、モータ32の各相の相電流Iu,Iv,Iwのうちの何れかの絶対値が判定閾値Iref以上の状態が判定時間Tref以上に亘って継続する条件が成立しているときには、モータ32が電流集中状態であると判定し、この条件が成立していないときには、モータ32が電流集中状態でないと判定するものとした。
ステップS130,S132でモータ32が電流集中状態でないと判定したときには、モータ32の許容上限トルクTlimにモータ32の定格値Tmrを設定して(ステップS140)、本ルーチンを終了する。
ステップS130,S132でモータ32が電流集中状態であると判定したときには、インバータ34の素子の累積ストレスレベルLsに基づいて、モータ32の定格値Tmrよりも小さい範囲内でモータ32の許容上限トルクTlimを設定して(ステップS150)、本ルーチンを終了する。この場合のモータ32の許容上限トルクTlimは、インバータ34の素子の累積ストレスレベルLsとモータ32の許容上限トルクTlimとの関係を予め定めた許容上限トルク用マップにインバータ34の素子の累積ストレスレベルLsを適用して設定することができる。図8は、許容上限トルク用マップの一例を示す説明図である。モータ32の許容上限トルクTlimは、図示するように、インバータ34の素子の累積ストレスレベルLsが大きいほど小さくなるように設定される。
以下、インバータ34の素子の累積ストレスレベルLsに基づいて上述のように判定閾値Irefや判定時間Tref、モータ32の許容上限トルクTlimを設定する理由について説明する。インバータ34の素子の累積ストレスレベルLsが大きいほどインバータ34の劣化が進行しており、インバータ34の駆動時に過熱に至りやすくなっていると想定される。実施例では、これを考慮して、モータ32の各相の相電流Iu,Iv,Iwと、インバータ34の素子の累積ストレスレベルLsが大きいほど小さくなるように設定される判定閾値Irefと、素子の累積ストレスレベルLsが大きいほど短くなるように設定される判定時間Trefと、を用いてモータ32が電流集中状態であるか否かを判定するものとした。これにより、インバータ34の劣化がそれほど進行していないときには、モータ32が電流集中状態であると判定しにくくする(モータ32の許容上限トルクTlimを定格トルクTmrに対して制限するのを抑制する)と共に、インバータ34の劣化がある程度進行しているときには、モータ32が電流集中状態であると判定しやすくする(モータ32の許容上限トルクTlimを定格トルクTmrに対して制限しやすくする)ことができる。この結果、インバータ34の劣化がそれほど進行していないときには、モータ32の性能を発揮させることができ、インバータ34の劣化がある程度進行しているときには、インバータ34の過熱を抑制することができる。また、実施例では、モータ32が電流集中状態であると判定したときには、素子の累積ストレスレベルLsが大きいほど小さくなるようにモータ32の許容上限トルクTlimを設定するものとした。これにより、インバータ34の劣化がそれほど進行していないときには、モータ32の性能が大きく制限されるのを抑制することができ、インバータ34の劣化がある程度進行しているときには、インバータ34の過熱をより十分に抑制することができる。
以上説明した実施例の電気自動車20では、インバータ34の素子温度Tiに基づいて素子の累積ストレスレベルLsを推定する。そして、モータ32がロック状態であるときに、モータ32の各相の相電流Iu,Iv,Iwと、インバータ34の素子の累積ストレスレベルLsが大きいほど小さくなるように設定される判定閾値Irefと、素子の累積ストレスレベルLsが大きいほど短くなるように設定される判定時間Trefと、を用いてモータ32が電流集中状態であるか否かを判定する。これにより、インバータ34の素子の累積ストレスレベルLsに応じて、モータ32が電流集中状態であるか否かをより適切に判定することができる。
実施例の電気自動車20では、モータ32がロック状態であるときに、モータ32の各相の相電流Iu,Iv,Iwと、インバータ34の素子の累積ストレスレベルLsに基づく判定閾値Irefと、素子の累積ストレスレベルLsに基づく判定時間Trefと、を用いてモータ32が電流集中状態であるか否かを判定するものとした。しかし、判定閾値Irefおよび判定時間Trefのうちの何れかについて、インバータ34の素子の累積ストレスレベルLsに拘わらずに一律の値を用いるものとしてもよい。
実施例の電気自動車20では、モータ32が電流集中状態であると判定したときには、インバータ34の素子の累積ストレスレベルLsに基づいて、モータ32の定格値Tmrよりも小さい範囲内でモータ32の許容上限トルクTlimを設定するものとした。しかし、モータ32が電流集中状態であると判定したときには、インバータ34の素子の累積ストレスレベルLsに拘わらずに、モータ32の定格値Tmrよりも小さい範囲内で一律のモータ32の許容上限トルクTlimを設定するものとしてもよい。
実施例の電気自動車20では、モータ32が電流集中状態でないと判定したときには、モータ32の許容上限トルクTlimにモータ32の定格トルクTmrを設定し、モータ32が電流集中状態であると判定したときには、モータ32の許容上限トルクTlimにモータ32の定格トルクTmrよりも小さいトルクを設定するものとした。この場合において、モータ32の許容上限トルクTlimを定格トルクTmrとそれよりも小さいトルクとの間で変化させる際のレート値や、モータ32の許容上限トルクTlimを変化させるのに伴ってモータ32のトルク指令Tm*を変化させる際のレート値を、インバータ34の素子の累積ストレスレベルLsに基づいて設定するものとしてもよい。
実施例の電気自動車20では、冷却装置40の温度センサ48からの冷却水温Twに基づいてインバータ34の素子温度Tiを推定するものとした。しかし、インバータ34に温度センサを取り付けて、この温度センサによりインバータ34の素子温度Tiを検出するものとしてもよい。
実施例では、走行用のモータ32とインバータ34とバッテリ36とを備える電気自動車20の構成とした。しかし、走行用のモータとインバータとバッテリとに加えてエンジンを備えるパラレルタイプやシリーズタイプのハイブリッド自動車の構成としてものとしてもよい。また、走行用のモータとインバータとバッテリとに加えて燃料電池を備える燃料電池車の構成としてもよい。
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、モータ32が「モータ」に相当し、インバータ34が「インバータ」に相当し、電子制御ユニット50が「制御装置」に相当する。
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
本発明は、電動車両の製造産業などに利用可能である。
20 電気自動車、22a,22b 駆動輪、24 デファレンシャルギヤ、26 駆動軸、32 モータ、32a 回転位置センサ、32u,32v 電流センサ、34 インバータ、36 バッテリ、38 電力ライン、39 コンデンサ、39a 電圧センサ、40 冷却装置、42 循環流路、44 熱交換器、46 電動ポンプ、48 温度センサ、50 電子制御ユニット、52 CPU、54 ROM、60 スタートスイッチ、61 シフトレバー、62 シフトポジションセンサ、63 アクセルペダル、64 アクセルペダルポジションセンサ、65 ブレーキペダル、66 ブレーキペダルポジションセンサ、68 車速センサ。

Claims (1)

  1. モータと、
    前記モータを駆動するインバータと、
    前記モータがロック状態であるときには、前記モータの各相の相電流のうち特定の一相の相電流の絶対値が第1閾値以上の状態が第2閾値以上の時間に亘って継続したときに、前記モータの各相のうち前記特定の一相に電流が集中する電流集中状態であると判定する制御装置と、
    を備える電動車両であって、
    前記制御装置は、
    前記インバータの素子の温度に基づいて前記素子の累積ストレスを推定し、
    前記素子の累積ストレスが大きいほど前記第1閾値を小さくするおよび/または前記第2閾値を短くする、
    電動車両。
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