JP2022081947A - 非水電解質二次電池の電極用結合剤用のカルボキシメチルセルロース又はその塩。 - Google Patents

非水電解質二次電池の電極用結合剤用のカルボキシメチルセルロース又はその塩。 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明によれば、電極用結合剤に用いた際に乾燥収縮が少なく、電極形成時にクラックの発生が低減されうる、カルボキシメチルセルロース又はその塩を得ることを課題とする。【解決手段】非水電解質二次電池の電極用結合剤として使用されるカルボキシメチルセルロース又はその塩であって、下記条件(I)~(II)を満たすことを特徴とするカルボキシメチルセルロース又はその塩。条件(I):乾燥質量Bの該カルボキシメチルセルロースまたはその塩の0.3質量%水溶液2リットルを調製して-200mmHgの減圧条件にて250メッシュのフィルターですべて濾過し、濾過後の前記フィルター上の残渣の乾燥質量Aを測定した際に、前記乾燥質量Bに対する乾燥質量Aの比率が50ppm未満である。条件(II):粘度平均分子量が35万以下であること。【選択図】なし

Description

近年、電子機器、特に携帯電話、PDA(personal digital assistant)、ノート型パソコンなどの携帯機器が、小型化、軽量化、薄型化、高性能化し、携帯機器の普及が進んでいる。このような携帯機器の利用範囲の多様化に伴い、これらを駆動させる電池が非常に重要な部品となっている。電池のうち、高いエネルギー密度を有し高容量である、リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池が広く利用されている。
通常、非水電解質二次電池は以下のようにして作製される。すなわち、リチウムイオンを吸蔵・放出することが可能な炭素材料などからなる負極活物質を含有する負極と、リチウム含有遷移金属複合酸化物(例えばLiCoO2、LiNiO2、LiMn24など)からなる正極活物質を含有する正極が、集電基材(集電体)としての金属箔の表面にそれぞれシート状に形成され、シート状正極およびシート状負極を得る。そしてシート状正極及びシート状負極が、同じくシート状に形成されたセパレーターを介して、巻回あるいは積層され、ケース内に収納される。シート状正極およびシート状負極は、集電基材(集電体)となる金属箔と、その表面に形成される、活物質を含む合剤層を備える構造であり、負極活物質スラリー(あるいはペースト)または正極活物質スラリー(あるいはペースト)が集電材上に塗布、乾燥され形成され得る。
負極活物質スラリー(ペースト)は、リチウムイオンを吸蔵・放出することが可能な炭素材料などからなる負極活物質のほかに結合剤(バインダー)を含む。結合剤として、スチレン/ブタジエンラテックス(SBR)を主成分とする負極用の結合剤が特許文献1(特開平5-74461号公報)に開示されている。
特許文献1によると、水溶性増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースを水に溶解させて水溶液を調製し、これにSBRと負極活物質を混合してスラリーが製造される。当該スラリーは塗工液として基材上に塗布、乾燥されることによって、シート状負極が形成される。
一方、非水電解質二次電池の正極の製造では、溶剤には従来N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等の有機系溶剤が用いられてきた。しかし、取り扱いに要するコストの低減や排出時の環境負荷への影響から、近年、溶剤として水が使用されてきている。
正極活物質スラリー(ペースト)は、正極活物質としてのリチウム含有遷移金属複合酸化物(例えばLiCoO2、LiNiO2、LiMn24など)、導電材としてのカーボン等のほかに、結合剤を含む。結合剤としては、カルボキシメチルセルロースなどの、1%水溶液における粘度が4000mPa・s以上のセルロースが特許文献2(特開2003-157847号公報)に記載されている。特許文献2には、カルボキシメチルセルロースを、導電材やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などとともに純水に投入し、活物質ペーストを調製することが記載されている。
さらに特許文献3では、カルボキシメチルセルロースの未溶解物の発生を減少させ、溶解性に優れる電極用結合剤が提案されている。
特開平5-74461号公報 特開2003-157847号公報 国際公開WO2010-061871号公報
しかしながら特許文献3では、特許文献1及び2で懸念された未溶解物によるストリークなどは改善されたものの、集電体上に電極を形成した際に、結合剤成分などの乾燥収縮によりクラックが発生する懸念があり、改善が望まれていた。
そこで本発明では、電極用結合剤に用いた際に乾燥収縮が少なく、電極形成時にクラックの発生が低減されうる、カルボキシメチルセルロース又はその塩を得ることを目的とする。
本発明者らは鋭意努力の結果、下記の(1)~(7)で課題を解決できることを見出した。
(1)非水電解質二次電池の電極用結合剤として使用されるカルボキシメチルセルロース又はその塩であって、下記条件(I)~(II)を満たすことを特徴とするカルボキシメチルセルロース又はその塩。
条件(I):乾燥質量Bの該カルボキシメチルセルロースまたはその塩の0.3質量%水溶液2リットルを調製して-200mmHgの減圧条件にて250メッシュのフィルターですべて濾過し、濾過後の前記フィルター上の残渣の乾燥質量Aを測定した際に、前記乾燥質量Bに対する乾燥質量Aの比率が50ppm未満である。
条件(II):粘度平均分子量が35万以下であること。
(2)さらに下記条件(III)を満たすことを特徴とする(1)に記載のカルボキシメチルセルロース又はその塩。
条件(III):カルボキシメチルセルロース又はその塩の濃度1重量%水溶液を、直径5cmのプラスチックシャーレに30g加え、熱風乾燥機にて80℃/7時間乾燥し得られるフィルムの、25℃/相対湿度50%における端面のカール高さが、2cm以下であること。
(3)カルボキシメチルセルロースまたはその塩の機械的な粉砕処理物である、(1)~(2)いずれかに記載のカルボキシメチルセルロース又はその塩。
(4)メタノールを分散媒としてレーザー回折・散乱式粒度分布計で測定される体積累計100%粒子径が、50μm未満である、(1)~(3)いずれかに記載のカルボキシメチルセルロース又はその塩。
(5)(1)~(4)いずれかに記載のカルボキシメチルセルロース又はその塩を含むことを特徴とする、非水電解質二次電池用電極組成物。
(6)(5)に記載の電極組成物により形成される、非水電解質二次電池用電極。
(7)(6)に記載の電極を備える、非水電解質二次電池
本発明によれば、電極用結合剤に用いた際に乾燥収縮が少なく、電極形成時にクラックの発生が低減されうる、カルボキシメチルセルロース又はその塩を得ることができる。
すなわち本発明は、非水電解質二次電池の電極用結合剤として使用されるカルボキシメチルセルロース又はその塩であって、下記条件(I)~(II)を満たすことを特徴とするカルボキシメチルセルロース又はその塩である。
条件(I):乾燥質量Bの該カルボキシメチルセルロースまたはその塩の0.3質量%水溶液2リットルを調製して-200mmHgの減圧条件にて250メッシュのフィルターですべて濾過し、濾過後の前記フィルター上の残渣の乾燥質量Aを測定した際に、前記乾燥質量Bに対する乾燥質量Aの比率が50ppm未満である。
条件(II):重量平均分子量が35万以下であること。
[カルボキシメチルセルロース]
本発明において、カルボキシメチルセルロース又はその塩は、セルロースを構成するグルコース残基中の水酸基がカルボキシメチルエーテル基に置換された構造を持つ。カルボキシメチルセルロースは、塩の形態であってもよい。カルボキシメチルセルロースの塩としては、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム塩などの金属塩などを挙げ得る。
本発明においてセルロースとは、D-グルコピラノース(単に「グルコース残基」、「無水グルコース」とも言う。)がβ,1-4結合で連なった構造の多糖を意味する。セルロースは、一般に起源、製法等から、天然セルロース、再生セルロース、微細セルロース、非結晶領域を除いた微結晶セルロース等に分類される。
天然セルロースとしては、晒パルプまたは未晒パルプ(晒木材パルプまたは未晒木材パルプ);リンター、精製リンター;酢酸菌等の微生物によって生産されるセルロース、等が例示される。晒パルプ又は未晒パルプの原料は特に限定されず、例えば、木材、木綿、わら、竹等が挙げられる。また、晒パルプ又は未晒パルプの製造方法も特に限定されず、機械的方法、化学的方法、あるいはその中間で二つを組み合わせた方法でもよい。製造方法により分類される晒パルプまたは未晒パルプとしては例えば、メカニカルパルプ、ケミカルパルプ、砕木パルプ、亜硫酸パルプ、クラフトパルプ等が挙げられる。さらに、製紙用パルプの他に溶解パルプを用いてもよい。溶解パルプとは、化学的に精製されたパルプであり、主として薬品に溶解して使用され、人造繊維、セロハンなどの主原料となる。
再生セルロースとしては、セルロースを銅アンモニア溶液、セルロースザンテート溶液、モルフォリン誘導体など何らかの溶媒に溶解し、改めて紡糸されたものが例示される。
微細セルロースとしては、上記天然セルロースや再生セルロースをはじめとする、セルロース系素材を、解重合処理(例えば、酸加水分解、アルカリ加水分解、酵素分解、爆砕処理、振動ボールミル処理等)して得られるものや、前記セルロース系素材を、機械的に処理して得られるものが例示される。
カルボキシメチルセルロース又はその塩は、0.3質量%の該カルボキシメチルセルロース又はその塩の水溶液2リットルを-200mmHgの減圧条件にて250メッシュのフィルターですべて濾過した際のフィルター上の残渣の乾燥質量を質量Aとし、前記水溶液に溶解したカルボキシメチルセルロース又はその塩の質量を質量Bとした場合に、質量Bに対する質量Aの比率が50ppm未満である。50ppm以上であると、カルボキシメチルセルロース又はその塩を用いて電極を形成した際に、電極にストリークやピンホールなどの外観不良が発生し、電池の品質が低下するおそれがある。前記質量Bに対する前記質量Aの比率の下限は特に限定されず、少なければ少ないほどよい。
カルボキシメチルセルロース又はその塩は、水溶性であることが好ましい。すなわち、カルボキシメチルセルロースまたはその塩は、その無水グルコース単位当りのカルボキシメチル置換度が、0.45以上であることが好ましく、0.6以上であることがより好ましい。カルボキシメチル置換度が0.45未満であると、水への溶解が十分でなくなるおそれがある。本発明において無水グルコース単位とは、セルロースを構成する個々の無水グルコース(グルコース残基)を意味する。また、カルボキシメチル置換度(エーテル化度ともいう)とは、セルロースを構成するグルコース残基中の水酸基(-OH)のうちカルボキシメチルエーテル基(-OCH2COOH)に置換されているものの割合を示す。なお、カルボキシメチル置換度はDSと略すことがある。
カルボキシメチルセルロースまたはその塩の無水グルコース単位当りのカルボキシメチル置換度の上限は特には限定されないが、2.0以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1.0以下であることがさらにより好ましい。
当該カルボキシメチル置換度は、試料中のカルボキシメチルセルロースを中和するのに必要な水酸化ナトリウム等の塩基の量を測定して確認することができる。この場合、カルボキシメチルセルロース又はその塩のカルボキシメチルエーテル基が塩の形態である場合には、測定前に予めカルボキシメチルセルロースに変換しておく。測定の際には、塩基、酸を用いた逆滴定、フェノールフタレイン等の指示薬を適宜組み合わせることができる。
本発明において、カルボキシメチルセルロース又はその塩は、25℃でのB型粘度計で測定された1質量%水溶液の粘度が100~2,000mPa・sのものが好ましく、500~2,000mPa・sのものがより好ましく、1,000~2,000mPa・sのものがさらにより好ましい。
また本発明のカルボキシメチルセルロース又はその塩は、条件(I)として0.3質量%の該カルボキシメチルセルロース又はその塩の水溶液2リットルを-200mmHgの減圧条件にて250メッシュのフィルターですべて濾過した際のフィルター上の残渣の乾燥質量を質量Aとし、前記水溶液に溶解したカルボキシメチルセルロース又はその塩の質量を質量Bとした場合に、質量Bに対する質量Aの比率が50ppm未満であることが重要である。50ppm以上であると、カルボキシメチルセルロース又はその塩を用いて電極を形成した際に、電極にストリークやピンホールなどの外観不良が発生し、電池の品質が低下するおそれがある。またさらに、50ppm以上であると、電極を形成した際に未溶解物に起因するストリーク箇所が、乾燥収縮の応力が強くかかってしまうためクラックが発生しやすくなってしまうため不適である。前記質量Bに対する前記質量Aの比率の下限は特に限定されず、少なければ少ないほどよい。
そのような本発明のカルボキシメチルセルロース又はその塩は、条件(II)として粘度平均分子量が35万以下であることが重要である。そのような粘度平均分子量は32万以下が好ましく、30万以下がより好ましい。下限としては、20万以上が好ましく、25万以上がより好ましく、27万以上がさらに好ましい。粘度平均分子量の範囲が本範囲であることで、乾燥収縮における応力と形態保持とのバランスが保たれ易くなるため、本発明の効果を得るに望ましい。
さらに本発明のカルボキシメチルセルロース又はその塩は、条件(III)として、以下を満たすことが好ましい。
条件(III):カルボキシメチルセルロース又はその塩の濃度1重量%水溶液を調整し、直径5cm/高2cmのプラスチックシャーレに30g加え、シャーレにまんべんなく広げた後熱風乾燥機にて80℃/7時間乾燥し得られるフィルムの、25℃/相対湿度50%における端面のカール高さが、2cm以下であること。
そのようなフィルム端面のカール高さは、得られたフィルムを水平な面に、カールした端面が上になるように設置し測定を行う。測定は、最大のカール高さを示す箇所の測定値を、本発明のカール高さとみなす。
なお、フィルム端面がカールにより折れ曲がったり、収縮により織り込まれた状態となっている場合、端面カール高さは測定不能と判断し、条件(III)の範囲外とみなす。
本発明において、カルボキシメチルセルロース又はその塩の製法は限定されず、公知のカルボキシメチルセルロース又はその塩の製法を適用することができる。即ち、原料であるセルロースをマーセル化剤(アルカリ)で処理してマーセル化セルロース(アルカリセルロース)を調製した後に、エーテル化剤を添加してエーテル化反応させることで本発明におけるカルボキシメチルセルロース又はその塩を製造することができる。
原料のセルロースとしては、上述のセルロースであれば特に制限なく用いることができるが、セルロース純度が高いものが好ましく、特に、溶解パルプ、リンターを用いることが好ましい。これらを用いることにより、純度の高いカルボキシメチルセルロース又はその塩を得ることができる。
マーセル化剤としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属塩等を使用することができる。エーテル化剤としてはモノクロロ酢酸、モノクロロ酢酸ソーダ等を使用することができる。
水溶性の一般的なカルボキシメチルセルロースの製法の場合のマーセル化剤とエーテル化剤のモル比は、エーテル化剤としてモノクロロ酢酸を使用する場合では2.00~2.45が一般的に採用される。その理由は、2.00未満であるとエーテル化反応が不十分に行われない可能性があるため、未反応のモノクロロ酢酸が残って無駄が生じる可能性があること、及び2.45を超えると過剰のマーセル化剤とモノクロロ酢酸による副反応が進行してグリコール酸アルカリ金属塩が生成するおそれがあるため、不経済となる可能性があることにある。
本発明において、カルボキシメチルセルロース又はその塩は、市販のものをそのまま、或いは必要に応じて処理してから用いてもよい。市販品としては、例えば、日本製紙ケミカル(株)製の商品名「サンローズ」(カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩)が挙げられる。
[粉砕処理]
本発明において、カルボキシメチルセルロース又はその塩は、上述したようなカルボキシメチルセルロース又はその塩をそのまま用いてもよいが、さらに粉砕処理が施されたもの(粉砕処理物)であってもよい。粉砕処理は、通常は機械を用いて行われる機械的粉砕処理である。カルボキシメチルセルロース又はその塩の粉砕処理の方法としては、粉体の状態で処理する乾式粉砕法と、液体に分散、あるいは溶解させた状態で処理する湿式粉砕法との両方法が例示される。本発明においてはこれらのいずれを選択してもよい。
カルボキシメチルセルロースまたはその塩の水溶液を調製すると、カルボキシメチルセルロースまたはその塩に由来するゲル粒子が未溶解物として、水溶液中に残存する。カルボキシメチルセルロース又はその塩を機械的に乾式あるいは湿式粉砕処理することで、カルボキシメチルセルロースまたはその塩の機械的な粉砕処理物の水溶液においては、上記のゲル粒子が微細化される。その結果、カルボキシメチルセルロースまたはその塩の機械的な粉砕処理物の水溶液を用いて電極を形成すると、電極の表面に発生するスジ状の欠陥(ストリーク)や剥がれ、ピンホール等の原因となる粗大な未溶解物を抑制することができると考えられる。
本発明で機械的な粉砕処理のために使用可能な粉砕装置としては以下の様な乾式粉砕機および湿式粉砕機が挙げられる。
乾式粉砕機は、カッティング式ミル、衝撃式ミル、気流式ミル、媒体ミルが例示される。これらは単独あるいは併用して、さらには同機種で数段処理することができるが、気流式ミルが好ましい。
カッティング式ミルとしては、メッシュミル((株)ホーライ製)、アトムズ((株)山本百馬製作所製)、ナイフミル(パルマン社製)、グラニュレータ(ヘルボルト製)、ロータリーカッターミル((株)奈良機械製作所製)、等が例示される。
衝撃式ミルとしては、パルペライザ(ホソカワミクロン(株)製)、ファインイパクトミル(ホソカワミクロン(株)製)、スーパーミクロンミル(ホソカワミクロン(株)製)、サンプルミル((株)セイシン製)、バンタムミル((株)セイシン製)、アトマイザー((株)セイシン製)、トルネードミル(日機装(株))、ターボミル(ターボ工業(株))、ベベルインパクター(相川鉄工(株))等が例示される。
気流式ミルとしては、CGS型ジェットミル(三井鉱山(株)製)、ジェットミル(三庄インダストリー(株)製)、エバラジェットマイクロナイザ((株)荏原製作所製)、セレンミラー(増幸産業(株)製)、超音速ジェットミル(日本ニューマチック工業(株)製)等が例示される。
媒体ミルとしては、振動ボールミル等が例示される。
湿式粉砕機としては、マスコロイダー(増幸産業(株)製)、高圧ホモジナイザー(三丸機械工業(株)製)、媒体ミルが例示される。媒体ミルとしては、ビーズミル(アイメックス(株)製)等を例示できる。
[カルボキシメチルセルロースの粒径]
本発明において、カルボキシメチルセルロース又はその塩の粒径は、小さい方が好ましい。すなわち、メタノールを分散剤としてレーザー回折・散乱式粒度分布計で測定される体積累計100%粒子径の値(本明細書においては、以降「最大粒子径」ということがある)が50μm未満であることが望ましく、45μm未満であることがより望ましい。カルボキシメチルセルロース又はその塩の最大粒子径が50μm以上であるとカルボキシメチルセルロース又はその塩の水溶液中の未溶解物が増加する傾向がある。
また、本発明においてカルボキシメチルセルロース又はその塩は、造粒処理が施されていてもよい。これにより、取り扱いが容易となる。造粒処理を施すことによりカルボキシメチルセルロース又はその塩の最大粒子径は50μm以上となることがあるが、造粒処理前のカルボキシメチルセルロース又はその塩の最大粒子径は50μm未満であることが好ましい。
なお、最大粒子径の下限は特には限定されない。小さければ小さいほど好ましく、0を超えていればよい。
カルボキシメチルセルロースまたはその塩の、メタノールを分散媒としてレーザー回折・散乱式粒度分布計で測定される体積累計50%粒子径(以下、平均粒子径という。)は、通常は30μm以下であり、20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。また、平均粒子径の下限は特に限定されないが、通常は5μm以上であり、10μm以上であることが好ましく、12μm以上であることがより好ましい。
本発明においては、カルボキシメチルセルロース又はその塩を粒子径の大きさ(好ましくは最大粒子径の大きさ)に基づき分級し得る。分級とは、分級の対象である粒子を、ある粒子径の大きさ以上のものとそれ以下のものとを篩い分けする処理を意味する。
分級は、最大粒子径が50μm未満であるか50μm以上であるかを基準として行うことが好ましい。これにより、最大粒子径が50μm未満のカルボキシメチルセルロース又はその塩を選択的に収集することができる。
カルボキシメチルセルロースまたはその塩として、カルボキシメチルセルロースまたはその塩の粉砕処理物を用いる場合、上記の分級の時期は特に限定されず、粉砕処理の途中に設けてもよいし、粉砕処理の終了後に設けてもよい。
分級の方法は、公知の方法、例えば乾式分級機、湿式分級機を用いる方法を用いればよい。乾式分級機としては、サイクロン式分級機、DSセパレーター、ターボクラシフィア、ミクロセパレータ、エアーセパレータ等が挙げられる。一方湿式分級機としては、液体サイクロン方式の分級機、遠心沈降機、ハイドロッシレーター等が挙げられる。このうち乾式分級機が好ましく、サイクロン式分級機がより好ましい。
[非水電解質二次電池]
本発明において、カルボキシメチルセルロース又はその塩は、非水電解質二次電池の電極用結合剤として好ましい性質を持つ。通常は、カルボキシメチルセルロース又はその塩を含む水溶液が、非水電解質二次電池の電極用結合剤として用いられる。
カルボキシメチルセルロース又はその塩の水溶液における、カルボキシメチルセルロース又はその塩の濃度は、通常は0.1~10質量%であり、0.2~4質量%が好ましく、0.5~2質量%がより好ましい。
カルボキシメチルセルロース又はその塩の水溶液の製造条件は特に制限はない。例えば、カルボキシメチルセルロース又はその塩を、水(例えば蒸留水、精製水、水道水など)に添加し、必要に応じて撹拌などを行い溶解させて調製される。
本発明において、カルボキシメチルセルロース又はその塩は電極用結合剤として、電極の活物質と共に電極組成物を構成し得る。電極組成物の性状は特に限定されず、スラリー状、ペースト状のいずれであってもよい。
本発明において、電極組成物中のカルボキシメチルセルロース又はその塩の含有量は、電極組成物の全体に対して、好ましくは0.1~4.0質量%である。
電極組成物には、該組成物により形成される電極が負極および正極のいずれかに応じて様々な成分が含まれ得る。
負極用の電極組成物の場合には、通常、負極活物質が含まれる。負極活物質としては、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛)、コ-クス、炭素繊維のような黒鉛質材料;リチウムと合金を形成することが可能な元素、すなわち例えばAl、Si、Sn、Ag、Bi、Mg、Zn、In、Ge、Pb、Tiなどの元素;前記リチウムと合金を形成することが可能な元素を含む化合物;前記リチウムと合金を形成することが可能な元素及び前記化合物と、炭素及び/又は前記黒鉛質材料との複合化物;リチウムを含む窒化物が使用できる。このうち黒鉛質材料が好ましく、黒鉛がより好ましい。
正極用の電極組成物の場合には、通常、正極活物質が含まれる。正極活物質としては、LiMexOy(MeはNi、Co、Mnの少なくとも1種を含む遷移金属を意味する。x、yは任意の数を意味する。)系の正極活物質が好ましい。LiMexOy系の正極活物質は、特に限定されるものではないが、LiMn2O4系、LiCoO2系、LiNiO2系の正極活物質が好ましい。LiMn2O4系、LiCoO2系、LiNiO2系の正極活物質としては、たとえば、LiMnO2、LiMn2O4、LiCoO2、LiNiO2、を主骨格として、各種金属元素が置換した化合物が例示される。LiMn2O4系、LiCoO2系、LiNiO2系の正極活物質は、電子とリチウムイオンの拡散性能に優れるなど正極活物質としての性能に優れているため、高い充放電効率と良好なサイクル特性とを有するリチウムイオン二次電池が得られる。このうちLiCoO2系の正極活物質が好ましく、LiCoO2がより好ましい。一方、材料コストの低さからは、LiMn2O4系の正極活物質を用いることが好ましい。
電極組成物中の活物質の含有量は、通常は90~99質量%、好ましくは91~99質量%、より好ましくは92~99質量%である。
正極用の電極組成物の場合には、電極組成物は導電材を有することが好ましい。電極組成物が導電材を有することで、製造される正極の特性が向上する。また、導電材は、正極の電気伝導性を確保し得る。導電材としては、たとえば、カーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛等の炭素物質の1種または2種以上を混合したものが挙げられる。このうちカーボンブラックが好ましい。
また、電極組成物には、カルボキシメチルセルロース又はその塩の水溶液以外の結合剤が含まれ得る。負極用の電極組成物の場合の結合剤としては、合成ゴム系結合剤が例示される。合成ゴム系結合剤としては、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルブタジエンゴム、メチルメタクリレートブタジエンゴム、クロロプレンゴム、カルボキシ変性スチレンブタジエンゴム及びこれら合成ゴムのラテックスよりなる群から選択された1種以上が使用できる。このうち、スチレンブタジエンゴム(SBR)が好ましい。また、正極用の電極組成物の場合の結合剤としては、前記負極用の結合剤として挙げた合成ゴム系結合剤のほか、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が例示され、このうちポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましい。
電極組成物中の結合剤の含有量は、通常は1~10質量%、好ましくは1~6質量%、より好ましくは1~2質量%である。
電極組成物の製造条件は特に限定はない。例えば、カルボキシメチルセルロースまたはその塩の水溶液に、電極組成物を構成する他の成分を添加し、必要に応じて撹拌しながら混合する。
電極組成物の性状も特に限定されない。例えば、液状、ペースト状、スラリー状などが挙げられ、いずれであってもよい。
電極組成物は、非水電解質二次電池のための電極の製造に用いられる。非水電解質二次電池用の電極の製造は、前記電極組成物を集電基材(集電体)上に積層する方法によればよい。積層の方法としては例えば、ブレード塗工、バー塗工、ダイ塗工が挙げられ、ブレード塗工が好ましい。例えばブレード塗工の場合には、ドクターブレードなどの塗工装置を用いて電極組成物を集電基材上にキャスティングする方法が例示される。また、積層の方法は上記具体例に限定されず、バックアップロールに巻回して走行する集電基材上に、スロットノズルを有するエクストルージョン型注液器より前記電極組成物を吐出させ塗布する方法も例示される。ブレード塗工においては、キャスティング後さらに必要に応じて加熱(温度は例えば80~120℃、加熱時間は例えば4~12時間)などによる乾燥、ロールプレスなどによる加圧を行い得る。
集電基材としては、構成された電池において致命的な化学変化を起こさない電気伝導体であれば何れも使用可能である。
負極活物質用の集電基材としては、ステンレス鋼、ニッケル、銅、チタン、炭素、銅や前記ステンレス鋼の表面にカ-ボン、ニッケル、チタンまたは銀を付着処理させたもの等が利用できる。これらのうち、銅または銅合金が好ましいが、銅が最も好ましい。
正極用の集電基材の材料としては、たとえば、アルミニウム、ステンレスなどの金属が例示され、アルミニウムが好ましい。集電基材の形状としては、網、パンチドメタル、フォームメタル、板状に加工された箔などを用いることができ、板状に加工された箔が好ましい。
電極組成物により形成された非水電解質二次電池用電極の形状は特に限定されないが、通常はシート状である。シート状の極板の場合の厚さ(集電基材部分を除く、電極組成物から形成される合剤層の厚さ)は、組成物の組成や製造条件などにもよるので規定することは困難であるが、通常は30~150μmである。
前記組成物により形成される電極は非水電解質二次電池の電極として用いられる。すなわち本発明は、前記組成物により形成される電極を備える、非水電解質二次電池をも提供する。非水電解質二次電池は、正電極及び負電極が交互に、セパレータを介して積層され、多数回巻回された構造を取りうる。前記セパレータは通常、非水電解質で含浸される。
この負電極および/または正電極として、前記した電極組成物により形成された負電極および/または正電極が用いられうる。かかる非水電解質二次電池は、溶解性に優れるカルボキシメチルセルロースまたはその塩が用いられ、フィルターによる濾過などの工程を省略できるので生産性に優れると共に、初期不可逆容量が顕著に改善され、高い電池特性を発揮しうるものである。
以下、本発明の実施の形態を実施例により説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
本明細書において、各指標の測定は以下の方法による。
<水溶液に溶解させたカルボキシメチルセルロースの乾燥質量に対する濾過残渣の質量の質量比の測定>
カルボキシメチルセルロース又はその塩の0.3質量%(カルボキシメチルまたはその塩の乾燥質量を基準とした質量%)水溶液2リットルを調製した。この水溶液2リットルを-200mmHgの減圧条件にて、濾過器(「セパロート」桐山製作所製)を用いて、250メッシュのフィルター(ステンレス製、目開き63μm)にて濾過した。250メッシュのフィルターに残存した残渣を、温度105℃で、16時間送風乾燥させた後、乾燥した残渣の質量を測定し、カルボキシメチルセルロース水溶液中のカルボキシメチルセルロースの質量に対する質量パーセント(ppm)で表示した。
<最大粒子径、平均粒子径および粒度分布の測定>
カルボキシメチルセルロースの最大粒子径、及び平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分布計(マイクロトラック Model-9220-SPA、日機装(株)製)により行った。ここで、最大粒子径とは体積類型100%粒子径の値を、平均粒子径とは体積累計50%粒子径の値を示した。測定に当たっては、試料をメタノールに分散させた後、超音波処理を少なくとも1分以上行ったものについて測定を行った。
<粘度>
カルボキシメチルセルロース又はその塩を、1000ml容ガラスビーカーに測りとり、蒸留水900mlに分散し、固形分1%(w/v)となるように水分散体を調製する。水分散体を25℃で撹拌機を用いて600rpmで3時間撹拌する。その後、JIS-Z-8803の方法に準じて、B型粘度計(東機産業社製)を用いて、No.1ローター/回転数30rpmで3分後の粘度を測定した。
<粘度平均分子量>
カルボキシメチルセルロース又はその塩の粘度平均分子量は、ウベローデ粘度計あるいは他の毛細管粘度計を用いて測定した固有粘度(極限粘度)の値から下記のStaudingerの粘度則に基づく算出式により決定する。
[η] = lim{(η-η0)/cη0} = KMα (C→0)
[η]:固有粘度
η:溶液の絶対粘度
η0:溶媒の絶対粘度
K, α: Staudinger恒数
M:粘度平均分子量
(実施例1)
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーに、イソプロパノール650部と水酸化ナトリウム60部を水100部に溶解したものとを加え、リンターパルプを100℃60分間乾燥した際の乾燥重量で100部仕込んだ。30℃で90分間攪拌、混合しマーセル化セルロースを調製した。更に攪拌しつつモノクロロ酢酸70部を添加し、30分間攪拌した後、70℃に昇温して90分間カルボキシメチル化反応をさせた。反応終了後、酢酸でpH7程度になるよう中和し、脱液、乾燥、粉砕して、カルボキシメチル置換度0.90のカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩(CMC1)を得た。
得られたCMC1を気流式ミルを用いて乾式粉砕処理を行い、その後、サイクロン式分級機によって、平均粒子径13.7μm、最大粒子径45.7μmのカルボキシメチルセルロース粉砕処理物を得た。この粉砕処理物の前記質量比は48ppmであり、前記粘度は1890mPa・sであり、前記粘度平均分子量は294,500であった。
(比較例1)
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーに、イソプロパノール600部と水酸化ナトリウム38部を水80部に溶解したものとを加え、リンターパルプを100℃60分間乾燥した際の乾燥重量で100部仕込んだ。30℃で90分間攪拌、混合しマーセル化セルロースを調製した。更に攪拌しつつモノクロロ酢酸46部を添加し、30分間攪拌した後、70℃に昇温して90分間カルボキシメチル化反応をさせた。反応終了後、酢酸でpH7程度になるよう中和し、脱液、乾燥、粉砕して、カルボキシメチル置換度0.70のカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩(CMC2)を得た。
得られたCMC2を気流式ミルを用いて乾式粉砕処理を行い、その後、サイクロン式分級機によって、平均粒子径15.0μm、最大粒子径49.0μmのカルボキシメチルセルロース粉砕処理物を得た。この粉砕処理物の前記質量比は48ppmであり、前記粘度は7900mPa・sであり、前記粘度平均分子量は414,000であった。
(比較例2)
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーに、イソプロパノール550部と水酸化ナトリウム35部を水80部に溶解したものとを加え、針葉樹パルプ(日本製紙(株)製、NDP-S)を100℃60分間乾燥した際の乾燥重量で100部仕込んだ。30℃で90分間攪拌、混合しマーセル化セルロースを調製した。更に攪拌しつつモノクロロ酢酸41部を添加し、30分間攪拌した後、70℃に昇温して90分間カルボキシメチル化反応をさせた。反応終了後、酢酸でpH7程度になるよう中和し、脱液、乾燥、粉砕して、カルボキシメチル置換度0.62のカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩(CMC3)を得た。
得られたCMC3(平均粒子径48.4μm、最大粒子径182μm)の前記質量比は250ppmであり、前記粘度は1500mPa・sであり、前記粘度平均分子量は261,500であった。
<CMCフィルム評価>)
得られたカルボキシメチルセルロース又はその塩(CMC1~3、及びその粉砕処理物)の濃度1重量%水溶液をそれぞれ調整し、直径5cm/高さ2cmのプラスチックシャーレに該水溶液を30g加え、シャーレにまんべんなく広げた。
その後、シャーレごと熱風乾燥機にて80℃/7時間乾燥した後、乾燥により形成されたCMCフィルム1~3を得た。得られたCMCフィルムをシャーレから取り出し、常温に戻しながら目視観察を行った。その後すぐに25℃/相対湿度50%におけるCMCフィルム端面の水平面からのカール高さを計測した。
Figure 2022081947000001

Claims (7)

  1. 非水電解質二次電池の電極用結合剤として使用されるカルボキシメチルセルロース又はその塩であって、下記条件(I)~(II)を満たすことを特徴とするカルボキシメチルセルロース又はその塩。
    条件(I):乾燥質量Bの該カルボキシメチルセルロースまたはその塩の0.3質量%水溶液2リットルを調製して-200mmHgの減圧条件にて250メッシュのフィルターですべて濾過し、濾過後の前記フィルター上の残渣の乾燥質量Aを測定した際に、前記乾燥質量Bに対する乾燥質量Aの比率が50ppm未満である。
    条件(II):粘度平均分子量が35万以下であること。
  2. さらに下記条件(III)を満たすことを特徴とする請求項1に記載のカルボキシメチルセルロース又はその塩。
    条件(III):カルボキシメチルセルロース又はその塩の濃度1重量%水溶液を、直径5cmのプラスチックシャーレに30g加え、熱風乾燥機にて80℃/7時間乾燥し得られるフィルムの、25℃/相対湿度50%における端面のカール高さが、2cm以下であること。
  3. カルボキシメチルセルロースまたはその塩の機械的な粉砕処理物である、請求項1~2いずれかに記載のカルボキシメチルセルロース又はその塩。
  4. メタノールを分散媒としてレーザー回折・散乱式粒度分布計で測定される体積累計100%粒子径が、50μm未満である、請求項1~3いずれかに記載のカルボキシメチルセルロース又はその塩。
  5. 請求項1~4いずれかに記載のカルボキシメチルセルロース又はその塩を含むことを特徴とする、非水電解質二次電池用電極組成物。
  6. 請求項5に記載の電極組成物により形成される、非水電解質二次電池用電極。
  7. 請求項6に記載の電極を備える、非水電解質二次電池。
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