JP2022080053A - 窒化ケイ素粉末及びその製造方法、並びに、窒化ケイ素焼結体の製造方法 - Google Patents

窒化ケイ素粉末及びその製造方法、並びに、窒化ケイ素焼結体の製造方法 Download PDF

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【課題】高い熱伝導率と優れた高温強度を兼ね備える窒化ケイ素焼結体を製造することが可能な窒化ケイ素粉末を提供すること。【解決手段】ケイ素源を含む原料粉末を用いる窒化ケイ素粉末の製造方法であって、ケイ素源の合着温度をTm[℃]としたときに、下記式(1)を満たす温度Ta[℃]で原料粉末を50時間以上加熱して窒化ケイ素を含む仮焼体を得る第1工程と、仮焼体を、下記式(2)を満たす温度Tb[℃]で20時間以下加熱して窒化ケイ素を含む焼成物を得る第2工程と、を有し、ケイ素源におけるFe,Al,Ca及びMgの合計含有量が4000質量ppm以下である、窒化ケイ素粉末の製造方法を提供する。Tm-500℃ ≦ Ta < Tm (1)Tm ≦ Tb < Tm+200℃ (2)【選択図】なし

Description

本開示は、窒化ケイ素粉末及びその製造方法、並びに、窒化ケイ素焼結体の製造方法に関する。
窒化ケイ素は、強度、硬度、靭性、耐熱性、耐食性、耐熱衝撃性等に優れた材料である。このため、ガスタービン、ターボロータ、及びバルブ等の機械部品、並びに、自動車及び工作機械等のパワーモジュール等の絶縁基板として窒化ケイ素焼結体を用いることが検討されている。これらの用途に用いられる窒化ケイ素焼結体には、緻密且つ均質な組織を有することが求められる。このような窒化ケイ素焼結体を製造するために、高純度且つ均質な窒化ケイ素粉末を提供する技術が検討されている。
窒化ケイ素粉末の合成方法としては、金属ケイ素粉末を水素ガス又はアンモニアガスと窒素ガスとの混合雰囲気下で窒化する直接窒化法(直接反応法)、シリカ粉末の還元窒化法、及びイミド分解法等が知られている。特許文献1では、α型Siの含有率が高い窒化ケイ素粉末を製造する方法が提案されている。また、特許文献2では、イミド分解法によって、不純物の少ない窒化ケイ素粉末を製造することが提案されている。
特開平7-81910号公報 特開2000-302421号公報
窒化ケイ素焼結体は、高温環境下も用いられる場合があるため、高温下での強度(高温強度)に優れることが求められる。また、このように高温下で用いられる場合には、優れた放熱性を有することも求められる。高温強度向上及び放熱性向上のためには窒化ケイ素焼結体を緻密にするとともに、不純物を低減する必要があると考えられる。窒化ケイ素焼結体の緻密化及び不純物の量に影響する要因としては、原料、すなわち窒化ケイ素粉末に含まれる不純物と、窒化ケイ素粉末の塊状化が考えられる。
本開示では、高い熱伝導率と優れた高温強度を兼ね備える窒化ケイ素焼結体を製造することが可能な窒化ケイ素粉末を提供する。また、このような窒化ケイ素粉末を製造することが可能な窒化ケイ素粉末の製造方法を提供する。また、高い熱伝導率と優れた高温強度を兼ね備える窒化ケイ素焼結体を製造することが可能な窒化ケイ素焼結体の製造方法を提供する。
本開示の一側面に係る窒化ケイ素粉末の製造方法は、ケイ素源を含む原料粉末を用いる窒化ケイ素粉末の製造方法であって、ケイ素源の合着温度をTm[℃]としたときに、下記式(1)を満たす温度Ta[℃]で原料粉末を50時間以上加熱して窒化ケイ素を含む仮焼物を得る第1工程と、仮焼物を、下記式(2)を満たす温度Tb[℃]で20時間以下加熱して、窒化ケイ素を含む焼成物を得る第2工程と、を有する。そして、上記ケイ素源におけるFe,Al,Ca及びMgの合計含有量が4000質量ppm以下である。
Tm-500℃ ≦ Ta < Tm (1)
Tm ≦ Tb < Tm+200℃ (2)
上記製造方法では、上記式(1)を満たすTa[℃]で仮焼物を得る第1工程を有している。ここで、原料粉末に含まれるケイ素源のFe,Al,Ca及びMgの合計含有量が十分に低いことから、ケイ素源の結晶化又は融解温度が低くなることを抑制できる。このため、第1工程で式(1)を満たす温度Taで加熱することによって、原料粉末から窒化ケイ素を生成する反応が促進される。ここで、温度Taは、合着温度Tm未満であることから、ケイ素源の合着(融合)が抑制され、原料成分が未反応のまま窒化ケイ素粒子の内部に取り残されるのを抑制することができる。したがって、窒化ケイ素の生成を進行させつつ、原料成分に由来する成分が不純物として窒化ケイ素粒子内に残存することを抑制できる。
第2工程では、式(2)を満たす温度Tbで所定時間以下の加熱を行っているため、残存する原料成分による窒化ケイ素の生成を促進して焼成物に原料成分が残存することを抑制しつつ、焼成物が過度に塊状化することを抑制できる。このような焼成物は円滑に粉砕できるため焼結性にも優れる。上述のように、窒化ケイ素粉末を、温度Taで加熱する第1工程、及び温度Tbで加熱する第2工程を含む複数段階で加熱することによって、高い熱伝導率と優れた高温強度を兼ね備える窒化ケイ素焼結体を製造することが可能な窒化ケイ素粉末を製造することができる。
本開示における「合着温度Tm」とは、ケイ素源が非晶質を含む場合は当該非晶質が結晶質となる温度(結晶化温度)であり、ケイ素源が結晶質である場合は融点である。例えば、ケイ素源が、非晶質を含むシリカである場合、合着温度Tmは当該非晶質が結晶化する温度である。また例えば、ケイ素源が、結晶質のシリカ又は金属ケイ素である場合、合着温度Tmは融点である。
原料粉末は、ケイ素源としてシリカ粉末と、カーボン粉末と、を含み、第1工程における温度Taは1350~1480℃であり、第2工程における温度Tbは1500~1550℃であってよい。これによって、不純物が少なく且つ塊状化が抑制された窒化ケイ素粉末を低い製造コストで製造することができる。
上記製造方法は、第2工程で得られた焼成物から窒化ケイ素粉末を得る第3工程を有してもよい。第3工程で得られる窒化ケイ素粉末は、主成分として窒化ケイ素を含有し、全酸素量が1.1質量%以下、表面酸素量が0.6質量%以下、並びに、フッ素及び塩素の合計含有量が25質量ppm以下であってよい。このような窒化ケイ素粉末を用いて、優れた高温強度と高い熱伝導率を有する窒化ケイ素焼結体を円滑に得ることができる。
本開示の一側面に係る窒化ケイ素粉末は、主成分として窒化ケイ素を含有し、全酸素量が1.1質量%以下、表面酸素量が0.6質量%以下、並びに、フッ素及び塩素の合計含有量が25質量ppm以下である。このような窒化ケイ素粉末は、高温強度に影響する酸素とフッ素及び塩素の含有量が十分に低い。また、表面酸素量が十分に低いことから、窒化ケイ素焼結体としたときに粒界部分に析出する酸化物を低減できる。したがって、優れた高温強度と高い熱伝導率を有する窒化ケイ素焼結体を得ることができる。
なお、本開示において全酸素量とは、窒化ケイ素粉末の全体質量に対する酸素の質量の比率である。一方、表面酸素量とは、窒化ケイ素粉末の全体質量に対する表面の酸素の質量の比率である。また、内部酸素量とは、窒化ケイ素粉末の全体質量に対する内部の酸素の質量の比率である。したがって、以下の式が成立する。
全酸素量(質量%)=内部酸素量(質量%)+表面酸素量(質量%)
上記窒化ケイ素粉末のα化率は95質量%以上であることが好ましい。高いα化率を有することによって、窒化ケイ素粉末の焼結時における粒成長を促進することができる。これによって、十分に緻密化された窒化ケイ素焼結体を製造することができる。したがって、一層優れた高温強度と高い熱伝導率を有する窒化ケイ素焼結体を得ることができる。
本開示の一側面に係る窒化ケイ素焼結体の製造方法は、上述のいずれかの製造方法で得られる窒化ケイ素粉末を焼成して窒化ケイ素焼結体を得る焼結工程を有する。この製造方法では、不純物が低減され且つ塊状化が抑制された窒化ケイ素粉末を焼結することから、十分に緻密化されており、優れた高温強度と高い熱伝導率を有する窒化ケイ素焼結体を製造することができる。
本開示の一側面に係る窒化ケイ素焼結体の製造方法は、上述のいずれかの窒化ケイ素粉末を焼成して窒化ケイ素焼結体を得る焼結工程を有する。この製造方法では、不純物が低減された窒化ケイ素粉末を焼結することから、優れた高温強度と高い熱伝導率を有する窒化ケイ素焼結体を製造することができる。
本開示によれば、不純物を低減することによって、高い熱伝導率と優れた高温強度を兼ね備える窒化ケイ素焼結体を製造することが可能な窒化ケイ素粉末を提供することができる。また、このような窒化ケイ素粉末を製造することが可能な窒化ケイ素粉末の製造方法を提供することができる。また、高い熱伝導率と優れた高温強度を兼ね備える窒化ケイ素焼結体を製造することが可能な窒化ケイ素焼結体の製造方法を提供することができる。
酸素・窒素分析チャートの一例を示す図である。
以下、本開示の一実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。
[窒化ケイ素粉末の製造方法]
一実施形態に係る窒化ケイ素粉末の製造方法は、ケイ素源の合着温度をTm[℃]としたときに、下記式(1)を満たす温度Ta[℃]でケイ素源を含む原料粉末を50時間以上加熱して窒化ケイ素を含む仮焼物を得る第1工程と、仮焼物を、下記式(2)を満たす温度Tb[℃]で20時間以下加熱して、仮焼物よりも窒化ケイ素の含有量が高い焼成物を得る第2工程と、焼成物から窒化ケイ素粉末を得る第3工程と、を有する。
Tm-500℃ ≦ Ta < Tm (1)
Tm ≦ Tb < Tm+200℃ (2)
第1工程において窒化ケイ素の生成を十分に進行させる観点から、Tm-300℃≦Taであってよく、Tm-150℃≦Taであってもよい。同様の観点から、第1工程の温度Taでの加熱時間は、70時間以上であってよく、90時間以上であってよい。一方、ケイ素源が合着(融合)して原料成分が未反応のまま窒化ケイ素粒子の内部に取り残されるのを十分に抑制する観点から、Ta<Tm-30℃であってよく、Ta<Tm-100℃であってもよい。同様の観点から、第1工程の温度Taでの加熱時間は、200時間以下であってよく、150時間以下であってよい。
第2工程で残存する原料を反応させて、窒化ケイ素を十分に生成させる観点から、Tm+30℃≦Tbであってよく、Tm+50℃≦Tbであってもよい。同様の観点から、第2工程の温度Tb[℃]での加熱時間は3時間以上であってよく5時間以上であってもよい。一方、生成した窒化ケイ素粒子の塊状化を抑制する観点から、Tb<Tm+150℃であってよく、Tb<Tm+100℃であってもよい。同様の観点から温度Tb[℃]での加熱時間は15時間以下であってよく、12時間以下であってもよい。
本実施形態の製造方法では、原料粉末を、合着温度Tm未満の温度Taで加熱する第1工程と、合着温度Tm以上の温度Tbで加熱する工程とを有している。このような二段階加熱を行うことによって、不純物の低減が低減されるとともに、塊状化が抑制された窒化ケイ素粉末を製造することができる。このような窒化ケイ素粉末は、高い熱伝導率と優れた高温強度を兼ね備える窒化ケイ素焼結体を製造できることから、窒化ケイ素焼結体用として好適である。
温度Taと温度Tbの差(Tb-Ta)は、窒化ケイ素粒子の内部の不純物の低減と、塊状化の抑制を十分に高い水準で両立する観点から、20~300℃であってよく、30~250℃であってよく、40~200℃であってもよい。なお、温度Ta及び温度Tbが一定ではなく上記式(1)及び式(2)の範囲内で変化する場合は、温度Taの平均値と、温度Tbの平均値の差が上述の範囲にあればよい。
ケイ素源は、非晶質であるシリカ粉末であってよく、結晶質である金属シリカ粉末であってもよい。ケイ素源のFe,Al,Ca及びMgの合計含有量は4000質量ppm以下である。当該合計含有量が十分に低いことから、ケイ素源の結晶化温度又は融解温度が低くなることを抑制できる。ケイ素源のFe,Al,Ca及びMgの合計含有量は、第1工程における窒化ケイ素の生成反応を十分に促進する観点から、3000質量ppm以下であってよく、2000質量ppm以下であってよく、1000質量ppm以下であってもよい。
<シリカ粉末を用いる例>
以下、ケイ素源がシリカ粉末である場合について以下に説明する。原料粉末は、シリカ粉末とカーボン粉末とを含んでよい。この場合、炭素還元によって、窒化ケイ素を生成することができる。原料粉末は、窒化ケイ素の種結晶を含んでいてもよい。シリカ粉末としては、例えば、非晶質のシリカ粉末、及び結晶質のシリカ粉末が挙げられる。カーボン粉末としては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、及び黒鉛が挙げられる。種結晶として用いる窒化ケイ素は、焼結性を高くする観点から、α化率が高い(例えば、α化率が90質量%以上)ものが好ましい。
カーボン粉末の配合割合はシリカ粉末を還元するために所定の割合以上とする必要がある。ただし、カーボン粉末が過剰となると、フッ素及び塩素と反応するSiが少なくなり、窒化ケイ素粉末のフッ素及び塩素の含有量が高くなる傾向にある。シリカ粉末に対するカーボン粉末の配合比は、フッ素及び塩素の合計含有量と全酸素量が十分に低減された窒化ケイ素粉末を得る観点から、モル基準(C/SiO)で2.0~3.8であってよく、3.0~3.7であってもよい。シリカ粉末100質量部に対する窒化ケイ素の種結晶の配合量は、製造コストを低減しつつ純度が十分に高い窒化ケイ素粉末を得る観点から、10~20質量部であってよく、11~18質量部であってもよい。
原料粉末中のフッ素及び塩素の合計含有量は、製造される窒化ケイ素粉末のフッ素及び塩素の合計含有量を十分に低減する観点から、好ましくは50質量ppm以下であり、より好ましくは40質量ppm以下である。一方、原料粉末中のフッ素及び塩素の合計含有量は、窒化ケイ素粉末の製造コストを低減する観点から、10質量ppm以上であってよく、20質量ppm以上であってもよい。
ケイ素源が非晶質のシリカ粉末の場合、合着温度Tmは例えば1450℃以上となる。第1工程における温度Taは、好ましくは1350~1450℃であり、より好ましくは1370~1420℃である。ケイ素源が結晶質のシリカ粉末の場合、合着温度Tmは例えば1700℃以上となる。このとき、温度Taは、好ましくは1400~1500℃であり、より好ましくは1430~1480℃である。
このような温度Taで原料粉末を加熱することによって、炭素還元法による窒化ケイ素の生成を十分に進行させながら、ケイ素源が合着(融合)して原料成分が未反応のまま窒化ケイ素粒子の内部に取り残されるのを十分に抑制することができる。また、加熱当初はCOの分圧が高くなるが、合着温度Tmよりも低い温度Taで加熱することによって、SiCの副生を抑制することができる。
ケイ素源が非晶質のシリカ粉末の場合、第2工程における温度Tbは、好ましくは1480~1530℃である。ケイ素源が結晶質のシリカ粉末の場合、第2工程におけるTbは、好ましくは1500~1550℃である。このような温度Tbで仮焼物を加熱することによって、炭素還元法による窒化ケイ素の生成を十分に進行させるとともに、窒化ケイ素を含む焼成物の塊状化を十分に抑制することができる。
第1工程及び第2工程では、例えば電気炉を用いて原料粉末及び仮焼物をそれぞれ加熱することによって、以下の反応式(3)が進行する。加熱温度が高くなると、SiOとCOが反応してSiCが生成し易くなる傾向にある。本例では、温度Tbは温度Taよりも高いものの、第2工程ではCOの分圧が第1工程よりも低くなる傾向にあるため、SiCの副生を抑制することができる。
3SiO+6C+2N→Si+6CO↑ (3)
第1工程及び第2工程は、窒素雰囲気中で行ってよい。窒素雰囲気における酸素濃度は、100体積ppm以下であってよく、20体積ppm以下であってもよい。窒素雰囲気における酸素濃度を十分に低くすることによって、窒化ケイ素を含む焼成物の全酸素量を一層低減することができる。第2工程で得られた焼成物から窒化ケイ素粉末を得る第3工程では、第2工程で得られた焼成物を解砕して窒化ケイ素粉末を得ることができる。窒化ケイ素粉末が炭素又は炭化物を含む場合、解砕の前、又は解砕の後に脱炭を行ってもよい。脱炭は、例えば、窒化ケイ素粉末を大気中において650~900℃に加熱して行うことができる。これによって、窒化ケイ素粉末における炭素及び炭化物の合計含有量を低くすることができる。
<ケイ素粉末を用いる例>
次に、ケイ素源がケイ素粉末である場合について以下に説明する。ケイ素粉末における酸素濃度は、好ましくは0.4質量%以下である。第1工程の前に、弗酸を含む前処理液を用いる前処理工程を行って、ケイ素粉末の酸素濃度を低減してもよい。第1工程及び第2工程は、窒素と水素及びアンモニアからなる群より選ばれる少なくも一つとを含む混合雰囲気下で行う。このように所謂直接窒化法によって、窒化ホウ素粉末を得ることができる。
ケイ素源がケイ素粉末の場合、ケイ素粉末は結晶質であることから合着温度Tmはケイ素粉末の融点となる。このため、合着温度Tmは、約1414℃となる。第1工程における温度Taは、好ましくは1050~1350℃である。このような温度Taで原料粉末を加熱することによって、直接窒化法による窒化ケイ素の生成を十分に進行させながら、ケイ素粉末が合着(融合)して原料成分が未反応のまま窒化ケイ素粒子の内部に取り残されるのを十分に抑制することができる。
ケイ素源がケイ素粉末の場合、第2工程における温度Tbは、好ましくは1420~1550℃であり、より好ましくは1450~1500℃である。このような温度Tbで仮焼物を加熱することによって、直接窒化法による窒化ケイ素の生成を十分に進行させるとともに、窒化ケイ素粉末の塊状化を十分に抑制することができる。また、第2工程の温度Tbよりも低い温度Taで第1工程を有することによって、β-窒化ケイ素の生成を抑制し、α-窒化ケイ素の割合を高くすることができる。
第1工程及び第2工程では、窒素と水素及びアンモニアからなる群より選ばれる少なくも一つとを含む混合雰囲気下で原料粉末及び仮焼物をそれぞれ加熱して、仮焼物よりも窒化ケイ素の含有量が高い焼成物を得る。混合雰囲気における水素及びアンモニアの含有割合の合計は、10~40体積%であってよい。
第2工程で得られた焼成物がインゴット状になっている場合、焼成物を粉砕して窒化ケイ素粉末を得る工程を行ってよい。粉砕は、粗粉砕と微粉砕の複数段階に分けて行ってもよい。粉砕は、例えばボールミルを用いて湿式で行ってもよい。窒化ケイ素は、比表面積が8.0~15.0m/gになるまで粉砕してもよい。
粉砕して得られた窒化ケイ素粉末と弗化水素濃度が10~40質量%である弗酸とを配合して、不純物を溶解除去する工程を行ってもよい。弗酸における弗化水素濃度は12~30質量%であってよい。弗酸の温度は、例えば40~80℃にしてよい。また、窒化ケイ素粉末を弗酸に浸漬する時間は、例えば1~10時間であってよい。
本実施形態の製造方法によれば、塊状化を抑制しつつ、窒化ケイ素粒子の内部に残存する、原料成分に由来する不純物を十分に低減することができる。このような製造方法で得られる窒化ケイ素粉末を用いれば、高い熱伝導率と優れた高温強度を兼ね備える窒化ケイ素焼結体を製造することができる。
上述の例では、ケイ素源として結晶質又は非晶質のシリカを用いる場合と、結晶質のケイ素粉末を用いる場合を説明したが、ケイ素源はこれらのものに限定されない。なお、ケイ素源として、複数種類の物質を用いてもよい。この場合の合着温度には加成性が成立する。つまり、ケイ素源として、非晶質のシリカと結晶質のシリカとを、1:1の質量比で組み合わせて用いる場合の合着温度は、下記式(4)で算出される。
Tm=Tx×0.5+Ty×0.5 (4)
上式(4)中、Txは非晶質のシリカの結晶化温度(℃)であり、Tyは結晶質のシリカの融点(℃)である。
[窒化ケイ素粉末]
一実施形態に係る窒化ケイ素粉末は、主成分として窒化ケイ素を含有し、全酸素量が1.1質量%以下、表面酸素量が0.6質量%以下、並びに、フッ素及び塩素の合計含有量が25質量ppm以下である。窒化ケイ素粉末における窒化ケイ素の含有量は、例えば、88質量%以上であってよく、90質量%以上であってよく、92質量%以上であってもよい。
全酸素量は、一層優れた高温強度と高い熱伝導率を有する窒化ケイ素焼結体を製造可能とする観点から、1.0質量%以下であってよく、0.9質量%以下であってよい。窒化ケイ素粉末の全酸素量を低減することによって、窒化ケイ素粉末を焼結して得られる窒化ケイ素焼結体の内部の欠陥を低減することができる。同様の観点から、内部酸素量は0.9質量%以下であってよく、0.8質量%以下であってよい。
全酸素量は、窒化ケイ素粉末の製造コスト低減の観点から、0.1質量%以上であってよいし、0.5質量%以上であってもよい。窒化ケイ素粉末の全酸素量の一例は、0.1~1.1質量%であってよく、0.5~0.9質量%であってもよい。
表面酸素量は、一層優れた高温強度と高い熱伝導率を有する窒化ケイ素焼結体を製造可能とする観点から、0.5質量%以下であってよく、0.4質量%以下であってもよい。窒化ケイ素粉末の表面酸素量を低減することによって、窒化ケイ素粉末を焼結して得られる窒化ケイ素焼結体の粒界に析出する酸化物を低減することができる。
表面酸素量は、窒化ケイ素粉末の製造コスト低減の観点から、0.1質量%以上であってよいし、0.2質量%以上であってもよい。窒化ケイ素粉末の全酸素量の一例は、0.1~0.6質量%であってよく、0.2~0.5質量%であってもよい。
窒化ケイ素粉末の全酸素量、表面酸素量及び内部酸素量は、市販の酸素・窒素分析装置を用いて測定することができる。測定は、ヘリウムガスの雰囲気中、窒化ケイ素粉末を、8℃/秒の昇温速度で20℃から2400℃まで連続的に昇温して行う。得られた測定結果のうち、酸素の脱離に由来するピークの面積から酸素含有量を定量することができる。
図1は、窒化ケイ素粉末の酸素・窒素分析によって得られるチャートの一例である。ピーク1が表面酸素のピークであり、ピーク2が内部酸素のピークである。ピーク3は窒素のピークである。直線4は昇温直線を示している。ピーク1とピーク2は、窒化ケイ素が分解して窒素が発生し始める温度Tで区画される。温度Tは、ピーク3の検知が開始される温度であり、通常は1350~1500℃の間にある。ピーク1の検知が開始される温度(ピーク1の左端の温度)は、例えば750~1200℃である。ピーク2の検知が終了する温度(ピーク2の右端の温度)は、例えば1600~1800℃である。ピーク1,2の積算値(面積)から、検量線に基づいて内部酸素量と表面酸素量が求められる。また、内部酸素量と表面酸素量の合計が全酸素量となる。
図1では、ピーク3の左端(温度T)と、ピーク1,2の谷の最深部とが一致しているが、これらは完全に一致していなくてもよい。ただし、通常であれば、ピーク1とピーク2のそれぞれの頂部が検知される温度の間に、温度T(ピーク3の左端)が位置することとなる。図1では、ピーク1の積算値よりもピーク2の積算値の方が大きくなっているが、この大小関係に限定されない。例えば、ピーク1の積算値の方がピーク2の積算値よりも大きくてもよい。
窒化ケイ素粉末のフッ素及び塩素の合計含有量は、一層優れた高温強度を有する窒化ケイ素焼結体を製造可能とする観点から、20質量ppm以下であってよく、15質量ppm以下であってよい。窒化ケイ素粉末のフッ素及び塩素の合計含有量を低減することによって、窒化ケイ素粉末を焼結して得られる窒化ケイ素焼結体の粒界相に含まれるフッ素及び塩素が低減される。このため、高温下で窒化ケイ素焼結体の粒界相が軟化すること抑制できる。したがって、十分に高い高温強度を有する窒化ケイ素焼結体とすることができる。フッ素及び塩素の合計含有量は、窒化ケイ素粉末を製造する際に用いる出発原料の純度、原材料の配合比、及び加熱条件等に依存する傾向にある。
例えば、ケイ素源としてシリカ粉末を用いて炭素還元法で窒化ケイ素粉末を製造する場合、シリカ粉末とカーボン粉末の配合比(C/SiO)が小さくなり過ぎると、SiO又はSiOとClの反応によるSiClの脱離が進行し難くなる傾向にある。また、加熱時間が短くなり過ぎた場合も同様の傾向にある。
窒化ケイ素粉末のフッ素及び塩素の合計含有量は、窒化ケイ素粉末の製造コスト低減の観点から、1質量ppm以上であってよいし、3質量ppm以上であってもよい。窒化ケイ素粉末のフッ素及び塩素の合計含有量の例は、1~25質量ppmであってよく、3~20質量ppmであってもよい。窒化ケイ素粉末のフッ素及び塩素の合計含有量は、窒化ケイ素粉末を加熱し、発生したガスに含まれるフッ素及び塩素をイオンクロマトグラフで定量することによって測定することができる。
窒化ケイ素粉末のα化率は、好ましくは95質量%以上である。高いα化率を有することによって、窒化ケイ素粉末の焼結時に粒成長を促進することができる。これによって、十分に緻密化された窒化ケイ素焼結体を製造することができる。したがって、一層優れた高温強度と高い熱伝導率を有する窒化ケイ素焼結体を得ることができる。
窒化ケイ素粉末のα化率は、窒化ケイ素粉末の製造コスト低減の観点から、99質量%以下であってよいし、98質量%以下であってもよい。窒化ケイ素粉末のα化率の一例は、93~99質量%であってよい。窒化ケイ素粉末のα化率は、X線回折の回折線強度に基づいて求めることができる。
窒化ケイ素粉末は、窒化ケイ素以外の成分として、炭素又は炭化物を含んでいてもよい。窒化ケイ素粉末における炭素及び炭化物の合計含有量は、炭素換算で、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは7質量%以下である。
本実施形態に係る窒化ケイ素粉末は、高温強度に影響する酸素とフッ素及び塩素の含有量が十分に低い。また、表面酸素量が十分に低いことから、窒化ケイ素焼結体としたときに粒界部分に析出する酸化物を低減できる。したがって、優れた高温強度と高い熱伝導率を有する窒化ケイ素焼結体を得ることができる。このような窒化ケイ素粉末は、上述の製造方法によって製造することができる。ただし、製造方法は上述のものに限定されない。
一実施形態に係る窒化ケイ素焼結体の製造方法は、上述の窒化ケイ素粉末又は上述の製造方法で得られた窒化ケイ素粉末を焼成して窒化ケイ素焼結体を得る焼結工程を有する。この製造方法では、例えば、窒化ケイ素粉末を例えば3.0~10.0MPaの成形圧力で加圧して成形体を得る。成形体は一軸加圧して作製してもよいし、CIPによって作製してもよい。また、ホットプレスによって成形しながら焼成してもよい。
成形体の焼成は、窒素ガス又はアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気中で行ってよい。焼成時の圧力は、0.7~0.9MPaであってよい。焼成温度は1700~1900℃であってよい。当該焼成温度における焼成時間は4~20時間であってよく、8~16時間であってよい。焼成温度までの昇温速度は、例えば1.0~10.0℃/時間であってよい。
このようにして得られる窒化ケイ素焼結体は、全酸素量、表面酸素量、並びに、フッ素及び塩素の合計含有量が十分に低減されている。酸素含有量が十分に低減されているため、窒化ケイ素焼結体の内部の欠陥、及び粒界に析出する酸化物を抑制できる。このため、高温強度のみならず絶縁性及び熱伝導性にも優れる。窒化ケイ素焼結体に含まれる欠陥としては、転位等の格子欠陥及び気孔等が考えられる。また、フッ素及び塩素の合計含有量が十分に低減されているため、高温下で窒化ケイ素焼結体の粒界相が軟化することを抑制できる。したがって、十分に高い高温強度を有する窒化ケイ素焼結体を得ることができる。
本開示における高温強度とは、1300℃における強度をいう。このような温度範囲において高い強度を有する窒化ケイ素焼結体は、ガスタービン、自動車用のパワーモジュール、ベアリング等の用途に特に好適に用いることができる。一実施形態に係る窒化ケイ素焼結体の1300℃の温度における曲げ強度は、例えば700MPa以上であってよく、750MPa以上であってもよい。この強度は、市販の測定装置を用いて測定される4点曲げ強度(1300℃)である。
以上、幾つかの実施形態を説明したが、本開示は上述の実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、窒化ケイ素粉末は、窒化ケイ素焼結体の製造用以外の用途に用いてもよい。また、第1工程における温度Ta及び第2工程における温度Tbは、必ずしも一定である必要はなく、所定の範囲内で変動してもよく、所定の範囲内で連続的又は段階的に温度を変化させてもよい。ケイ素源は、シリカ粉末及びケイ素粉末に限定されない。例えば、シリカ粉末に代えて、結晶質又は非晶質のケイ酸塩化合物を用いてもよい。その場合の第1工程及び第2工程の各条件は、シリカ粉末を用いる例と同じであってよい。
実施例及び比較例を参照して本開示の内容をより詳細に説明するが、本開示は下記の実施例に限定されるものではない。
<窒化ケイ素粉末の調製>
(実施例1)
結晶質のシリカ粉末(平均粒径:5μm)、アセチレンブラック粉末、及び、窒化ケイ素粉末(種結晶)を配合して原料粉末を調製した。このシリカ粉末の合着温度Tmは、その融点である1700℃である。シリカ粉末のFe,Al,Ca及びMgの合計含有量は、580質量ppmであった。この合計含有量は、ICP発光分光分析装置を用いて測定した。また、原料粉末中のフッ素及び塩素の合計含有量は、40質量ppmであった。配合比(質量基準)は、シリカ粉末:アセチレンブラック粉末:窒化ケイ素粉末=55.2%:38.5%:6.3%とした。シリカ粉末に対するアセチレンブラックのモル比(C/SiO)は3.5であった。この原料粉末320gを、2Lのポリエチレン製容器に充填して窒化ケイ素製ボール(φ:15mm)を入れ、ボールミルで2時間混合した。
原料粉末を、電気炉を用いて大気圧の窒素雰囲気中、1450℃(温度Ta)で50時間加熱し、仮焼物を得た(第1工程)。50時間経過後、同じ電気炉を用いて昇温し、窒素雰囲気中、1520℃(温度Tb)で10時間加熱した(第2工程)。第1工程及び第2工程における窒素雰囲気中の酸素濃度は110体積ppm以下であった。得られた焼成物を窒化ケイ素製の乳鉢で解砕して窒化物粉末を得た。これをアルミナ坩堝に入れ、電気炉中、800℃で3時間加熱して脱炭した。脱炭して得られた脱炭粉を窒化ケイ素製のボールとともにアルミナポットに充填し、振動ミルで3時間粉砕して、窒化ケイ素粉末を得た。表1に、ケイ素源の種類、合着温度、不純物含有量、C/SiOのモル比及び加熱条件を纏めて示す。
(実施例2)
非晶質の溶融シリカ粉末(平均粒径:0.6μm)を用いたこと、第1工程における温度Taを1400℃、及び温度Taにおける加熱時間を100時間にしたこと以外は、実施例1と同様にして窒化ケイ素粉末を得た。溶融シリカ粉末が結晶化する温度は1450℃であるため、合着温度Tmは1450℃である。シリカ粉末のFe,Al,Ca及びMgの合計含有量は、473質量ppmであった。また、原料粉末中のフッ素及び塩素の合計含有量は、40質量ppmであった。表1に、ケイ素源の種類、合着温度、不純物含有量、C/SiOのモル比及び加熱条件を纏めて示す。
(比較例1)
実施例1で調製した原料粉末を、2段階で加熱するのではなく、1段階で加熱した。すなわち、原料粉末を、電気炉を用いて大気圧の窒素雰囲気中、1500℃で60時間加熱した。このように、原料粉末の加熱を1段階にしたこと以外は、実施例1と同様にして窒化ケイ素粉末を得た。表1に、ケイ素源の種類、合着温度、不純物含有量、C/SiOのモル比及び加熱条件を纏めて示す。
(比較例2)
原料粉末を調製する際の配合比(質量基準)を、結晶質のシリカ粉末:アセチレンブラック粉末:窒化ケイ素粉末=52.3%:41.7%:6.0%としたこと以外は、比較例1と同様にして窒化ケイ素粉末を得た。結晶質のシリカ粉末に対するアセチレンブラックのモル比(C/SiO)は4.0であった。表1に、ケイ素源の種類、合着温度、不純物含有量、C/SiOのモル比及び加熱条件を纏めて示す。
(比較例3)
実施例1で調製した原料粉末を、2段階で加熱するのではなく、1段階で加熱した。すなわち、原料粉末を、電気炉を用いて大気圧の窒素雰囲気中、1450℃で20時間加熱した。このように、原料粉末を1段階で加熱したこと以外は、実施例1と同様にして窒化ケイ素粉末を得た。表1に、ケイ素源の種類、合着温度、不純物含有量、C/SiOのモル比及び加熱条件を纏めて示す。
Figure 2022080053000001
<窒化ケイ素粉末の評価>
各実施例及び比較例の窒化ケイ素粉末に含まれる酸素含有量を以下の手順で測定した。酸素・窒素分析装置(株式会社堀場製作所製、装置名:EMGA-920W)に、窒化ケイ素粉末0.01gと炭素粉末0.01gをセットした。ヘリウムガスの雰囲気中、8℃/秒の昇温速度で20℃から2400℃まで昇温した。昇温に伴って生じる酸素及び窒素を検知した。その結果、図1に示すような酸素の脱離を示すピークが得られた。表面酸素及び内部酸素の脱離に由来するそれぞれのピーク面積から、表面酸素量と内部酸素量を求めた。また、これらの値の和に基づいて、全酸素量を算出した。全酸素量及び表面酸素量の測定結果は表2に示すとおりであった。
窒化ケイ素粉末に含まれるフッ素及び塩素の合計含有量を以下の手順で測定した。自動試料燃焼装置(三菱化学株式会社製、装置名:AQF-2100H型)を用いて窒化ケイ素粉末を加熱し、発生したガスを水に溶解させた。イオンクロマトグラフ(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、装置名:ICS-2100)を用いて、JIS R 1603:2007に準じて水中に溶解したフッ素及び塩素を測定した。この測定値に基づいて、窒化ケイ素粉末に含まれるフッ素及び塩素を定量した。測定結果は表2に示すとおりであった。表2中、「ハロゲン量」とは、フッ素と塩素の合計含有量である。
調製した窒化ケイ素粉末のα化率を以下の手順で測定した。X線回折装置(株式会社リガク製、装置名:Ultima IV)を用い、CuKα線で窒化ケイ素粉末のX線回折を行った。α相は(102)面の回折線強度Ia102と、(210)面の回折線強度Ia210、β相は(101)面の回折線強度Ib101と、(210)面の回折線強度Ib210で代表した。これらの回折線強度を用いて、以下の式によってα化率を算出した。結果は表2に示すとおりであった。
α化率(質量%)=
[(Ia102+Ia210)/(Ia102+Ia210+Ib101+Ib210)]×100
<窒化ケイ素焼結体の作製>
各実施例及び比較例の窒化ケイ素粉末を、それぞれ一軸加圧成形し、円柱形状の成形体を作製した。この成形体を、カーボンヒータを備える電気炉中に配置し、窒素雰囲気中、1850℃まで昇温した。1850℃の焼成温度で6時間焼成を行った後、冷却して窒化ケイ素焼結体を得た。
<窒化ケイ素焼結体の評価>
得られた窒化ケイ素焼結体の密度、1300℃における4点曲げ強度、及び熱伝導率を測定した。密度は、アルキメデス法によって測定し、1300℃における4点曲げ強度は、株式会社島津製作所製のオートグラフAG-2000(商品名)を用いて測定した。結果は、実施例1の測定結果を基準として、相対値で表2に示す。
窒化ケイ素焼結体を研削加工して、熱伝導率測定用の10mmφ×3mmの円盤体を作製した。レーザーフラッシュ法(JIS R1611に準拠)により熱拡散率と比熱容量を測定し、焼結体の密度、熱拡散率及び比熱容量の積を算出して、室温における熱伝導率とした。結果は、実施例1の測定結果を基準として、相対値で表2に示す。
Figure 2022080053000002
所定の温度Ta及び温度Tbの2段階で加熱した実施例1,2では、全酸素量、表面酸素量及びハロゲンの含有量が十分に低減された窒化ケイ素粉末を得ることができた。このような窒化ケイ素粉末を用いて作製した窒化ケイ素焼結体は、緻密化が十分に進んでおり、優れた高温強度と高い熱伝導率を有していた。
本開示によれば、高い熱伝導率と優れた高温強度を兼ね備える窒化ケイ素焼結体を製造することが可能な窒化ケイ素粉末が提供される。また、このような窒化ケイ素粉末を製造することが可能な窒化ケイ素粉末の製造方法が提供される。また、高い熱伝導率と優れた高温強度を兼ね備える窒化ケイ素焼結体を製造することが可能な窒化ケイ素焼結体の製造方法が提供される。

Claims (7)

  1. ケイ素源を含む原料粉末を用いる窒化ケイ素粉末の製造方法であって、
    前記ケイ素源の合着温度をTm[℃]としたときに、下記式(1)を満たす温度Ta[℃]で前記原料粉末を50時間以上加熱して窒化ケイ素を含む仮焼物を得る第1工程と、
    前記仮焼物を、下記式(2)を満たす温度Tb[℃]で20時間以下加熱して窒化ケイ素を含む焼成物を得る第2工程と、を有し、
    前記ケイ素源におけるFe,Al,Ca及びMgの合計含有量が4000質量ppm以下である、窒化ケイ素粉末の製造方法。
    Tm-500℃ ≦ Ta < Tm (1)
    Tm ≦ Tb < Tm+200℃ (2)
  2. 前記原料粉末は、前記ケイ素源としてシリカ粉末と、カーボン粉末と、を含み、
    前記第1工程における前記温度Taは1350~1480℃であり、
    前記第2工程における前記温度Tbは1500~1550℃である、請求項1に記載の窒化ケイ素粉末の製造方法。
  3. 前記第2工程で得られた前記焼成物から窒化ケイ素粉末を得る第3工程を有し、
    前記窒化ケイ素粉末は、主成分として窒化ケイ素を含有し、全酸素量が1.1質量%以下、表面酸素量が0.6質量%以下、並びに、フッ素及び塩素の合計含有量が25質量ppm以下である、請求項1又は2に記載の窒化ケイ素粉末の製造方法。
  4. 主成分として窒化ケイ素を含有し、
    全酸素量が1.1質量%以下、表面酸素量が0.6質量%以下、並びに、フッ素及び塩素の合計含有量が25質量ppm以下である、窒化ケイ素粉末。
  5. α化率が95質量%以上である、請求項4に記載の窒化ケイ素粉末。
  6. 請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法で得られる窒化ケイ素粉末を焼成して窒化ケイ素焼結体を得る焼結工程を有する、窒化ケイ素焼結体の製造方法。
  7. 請求項4又は5に記載の窒化ケイ素粉末を焼成して窒化ケイ素焼結体を得る焼結工程を有する、窒化ケイ素焼結体の製造方法。
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