図1乃至図14は本発明の一実施形態を示すもので、橋桁を橋軸方向に送り出すことにより橋脚または橋台に架設する橋梁架設方法及びこれに用いる橋梁架設用手延べ機を示すものである。
本実施形態の手延べ機1は、橋軸方向に送り出される橋桁2の送り出し方向の先端に取り付けられ、橋桁2と共に送り出されるとともに、先端側を架け渡し先の橋脚3で支持されるものである。
手延べ機1は、橋軸方向に延びる手延べ機本体10と、撓みにより下方に変位した手延べ機本体10の先端側を上方へ押し上げるための支持部材20とを備えている。
手延べ機本体10は、互いに幅方向(橋軸直角方向)に間隔をおいて配置された複数の上弦材11と、互いに幅方向(橋軸直角方向)に間隔をおいて配置された複数の下弦材12とを有するトラス構造からなり、各上弦材11が水平方向に延びるように形成されるとともに、各下弦材12が手延べ機本体10の基端側から先端側に向かって上り勾配で延びるように形成されている。また、各上弦材11及び各下弦材12はそれぞれ橋軸方向に分割された複数の分割部材13を橋軸方向に接合することよって形成されている。
各分割部材13は、上フランジ13a、下フランジ13b及びウェブ13cを有するH形鋼からなり、互いに高力ボルト等の締結部材からなるボルト14及びナット15によって橋軸方向に締結されている。分割部材13の長手方向の端部には四角形状の接合板16が溶接され、接合板16は分割部材13と同等の高さ寸法及び幅寸法を有する鋼板からなる。接合板16はボルト14を挿通する複数のボルト挿通孔16aを有し、ボルト挿通孔16aは接合板16の中央側と外縁側にそれぞれ4箇所ずつ設けられている。尚、ボルト挿通孔16aは、H形鋼のサイズによって任意の数や位置に設けられる。また、分割部材13の幅方向両側には補強板17が設けられ、補強板17は上フランジ13a及び下フランジ13bと平行な鋼板からなる。補強板17は上フランジ13a及び下フランジ13b間の中間に配置され、ウェブ13c及び接合板16に溶接されている。各分割部材13は、互いに接合板16同士が面接触するように当接され、各接合板16のボルト挿通孔16aを挿通するボルト14とナット15とを螺合することにより締結されている。
分割部材13を接合することによって形成された上弦材11及び下弦材12は、それぞれ横方向に延びるトラス部材18によって幅方向に連結され、上下方向に延びるトラス部材19によって上下方向に連結されている。この場合、各分割部材13はボルト14及びナット15によって橋軸方向に締結されているため、上弦材11の上面及び下弦材12の下面は突起物のない面一の連続した平面となる。
支持部材20は、所定の長さを有する柱状の部材からなり、手延べ機本体10の先端側の幅方向両側にそれぞれ設けられている。支持部材20は一端を手延べ機本体10の先端側に回動自在に連結され、図1に示すように鉛直方向に延びる位置から水平方向に延びる位置まで前後方向に回動するようになっている。支持部材20の下端には架け渡し先に固定される固定部材21が設けられ、固定部材21は支持部材20に回動自在に取り付けられている。支持部材20には、一端を手延べ機本体10に連結され、他端を支持部材20に連結された油圧ジャッキからなる駆動機構22が設けられ、駆動機構22によって支持部材20が回動するようになっている。
また、手延べ機本体10の上面には、手延べ機本体10の長手方向(橋軸方向)に延びる台車移動手段としての軌条30が設けられ、軌条30は上弦材11の上面に敷設されている。この軌条30には、クレーンAの移動及び機材Bの運搬を行う複数の台車31を走行させるようになっている。台車31には、モータ等の駆動源を有する自走型のものが用いられる。
次に、前記手延べ機1を用いた橋梁架設方法について、図7乃至図14を参照して説明する。
まず、図7に示すように、仮組みした橋桁2を既設橋体4上にエンドレスジャッキ等の送り出し装置5を介して支持するとともに、橋桁2の送り出し方向の先端に連結構40を介して手延べ機本体10を連結することにより、既設橋体4上で橋桁2に手延べ機1を取り付ける。この場合、手延べ機1の支持部材20は水平方向に延びる位置に回動しておく。尚、本実施形態では、既設橋体4上で橋桁2を支持する場合を例示しているが、土工上で橋桁を支持する場合もある。
次に、図8に示すように手延べ機本体10の先端側が架け渡し先の橋脚3のやや手前に位置するまで橋桁2を橋軸方向に送り出す。その際、手延べ機本体10は片持ち状態となるため自重により撓み、その先端側は水平状態よりも下方に高さHだけ変位している。
ここで、図9に示すように、手延べ機1の支持部材20を駆動機構22によって下方に回動し、支持部材20の固定部材21をアンカー等で橋脚3の上面に固定する。この場合、支持部材20は、撓みにより下方に変位した手延べ機本体10の先端側と架け渡し先の橋脚3との鉛直方向の間隔よりも大きい長さを有し、且つ水平状態の手延べ機本体10の先端側と架け渡し先の橋脚3との鉛直方向の間隔とほぼ等しい長さに形成されている。これにより、支持部材20は、その他端を橋脚3の上面に固定部材21を介して当接した状態で、手延べ機本体10の先端側と橋脚3との間に斜めの状態で介在する。
次に、図10に示すように、橋桁2を橋軸方向に送り出し、支持部材20が垂直状態となるまで支持部材20を回動させる。これにより、垂直状態になるように回動する支持部材20によって手延べ機本体10の先端側が押し上げられ、手延べ機本体10が水平状態となるように手延べ機本体10の先端側が上方へ変位した状態で支持される。
ここで、図11に示すように、手延べ機本体10の上面を移動する台車31を用いてクレーンAを手延べ機本体10の先端側まで移動するとともに、橋脚3上に設置される脚上設備の機材Bを他の台車31を用いて手延べ機本体10の先端側まで搬送する。
続いて、図12に示すようにクレーンA及び機材Bを用いて橋脚3上に仮受台6や送り出し装置5等の脚上設備を構築し、仮受台6及び送り出し装置5によって手延べ機本体10の先端側を支持する。
そして、支持部材20の固定部材21と橋脚3との固定を解除し、図13に示すように支持部材20を水平方向に延びる位置まで回動した後、図14に示すように次の架け渡し先(橋脚または橋台)に向けて橋桁2を送り出す。
このように、本実施形態によれば、手延べ機本体10の先端側に一端を回動自在に連結され且つ撓みにより下方に変位した手延べ機本体10の先端側と架け渡し先の橋脚3との鉛直方向の間隔よりも大きい長さを有する支持部材20の他端を架け渡し先に回動自在に固定するとともに、橋桁2を送り出して支持部材20を回動させながら手延べ機本体10の先端側を支持部材20で押し上げて上方へ変位させるようにしたので、手延べ機本体10の先端側を押し上げるための機材を橋脚3上に別途設置したり、或いは地上から大型クレーンで手延べ機本体10の先端側を引き上げる必要がなく、手延べ機1の撓みの調整を容易且つ迅速に行うことができる。
また、手延べ機本体10は、水平方向に延びる上弦材11と、手延べ機本体10の基端側から先端側に向かって上り勾配をなすように延びる下弦材12とを有するトラス構造からなるので、下弦材12の勾配により手延べ機本体10を先端側が軽量になるように形成することができ、自重による手延べ機本体10の撓み量を少なくすることができる。更に、手延べ機本体10の上面側を上弦材11によって水平に形成することができるので、手延べ機本体10の上面を機材の運搬経路として用いることができ、地上に機材搬入用のクレーンを別途設置せずとも橋脚3上に脚上設備の機材を搬入することができる。
この場合、手延べ機本体10上に台車31を移動させる軌条30を設け、台車31によってクレーンAの移動及び機材Bの運搬を行うようにしたので、クレーンA及び機材Bを用いて手延べ機本体10上から橋脚3上に脚上設備を設置することができ、脚上設備の設置作業を効率よく行うことができる。
また、上弦材11及び下弦材12を、橋軸方向に分割された複数の分割部材13によって形成し、各分割部材13の端面同士をボルト14及びナット15によって橋軸方向に締結するようにしたので、上弦材11の上面及び下弦材12の下面を突起物のない面一の連続した平面にすることができる。即ち、従来では、弦材を接合する際にはH形鋼の上フランジ及び下フランジに連結板を重ねて弦材の長手方向に直交する方向からボルト及びナットで締結するようにしているため、橋桁送り出し時に連結板やボルトに送り出し装置を乗り越えさせるための他のジャッキを用いた盛替えが必要となり、盛替え時に送り出しが中断するが、本実施形態では下弦材12の下面に突起物がないので、盛替えを必要とすることがなく、橋桁2の送り出しを連続して行うことができる。また、上弦材11の上面にも突起物がないので、上弦材11の上に軌条30を容易に敷設することができる。
尚、前記実施形態は本発明の一実施例であり、本発明は前記実施形態に記載されたものに限定されない。