JP2022072590A - 無段変速機 - Google Patents

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孝典 吉原
Takanori Yoshihara
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Abstract

【課題】変速動作やクラッチ動作の応答性を確保しつつ、オイルポンプの小型化を図ることができる、無段変速機を提供する。【解決手段】オイルポンプPが吐出する油の供給系統は、プライマリレギュレータ系統71とセカンダリレギュレータ系統72との2系統に分かれている。セカンダリプーリ34の油室には、プライマリレギュレータ系統71から油が供給される。プライマリプーリ33とセカンダリプーリ34とに巻き掛けられるベルトには、セカンダリプーリ34のセカンダリ軸とセカンダリ可動シーブとの間のクリアランスからリークした油が供給される。一方、ベルトには、セカンダリレギュレータ系統72から油が供給される。セカンダリレギュレータ系統72に流量調整バルブ85が設けられており、流量調整バルブ85の動作により、リーク量分、セカンダリレギュレータ系統72に流れる油の流量が小さくなる。【選択図】図3

Description

本発明は、無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)に関する。
車両に搭載される変速機として、ベルト式の無段変速機が広く知られている。
ベルト式の無段変速機は、プライマリプーリとセカンダリプーリとに無端状のベルトが巻き掛けられた構成を有している。エンジンからの動力がプライマリプーリに入力されると、プライマリプーリからベルトに動力が伝達され、ベルトからセカンダリプーリに動力が伝達される。プライマリプーリおよびセカンダリプーリは、いずれも、固定シーブと、固定シーブにベルトを挟んで対向配置され、その対向方向に移動可能に設けられた可動シーブとを備えている。プライマリプーリおよびセカンダリプーリに供給される油圧により各可動シーブが移動して、プライマリプーリおよびセカンダリプーリの各溝幅が変わり、プライマリプーリおよびセカンダリプーリに対するベルトの巻きかけ径が変化する。これにより、無段変速機の変速比が連続的に無段階で変化する。
無段変速機には、オイルパンに溜まったオイルを吸い上げて吐出するオイルポンプが備えられている。オイルポンプが吐出する油は、プライマリレギュレータ系統とセカンダリレギュレータ系統との2系統に分かれて、無段変速機の各部に供給される。
具体的には、オイルポンプが吐出する油は、油圧回路に供給される。油圧回路には、オイルポンプの吐出圧をライン圧に調圧するプライマリレギュレータバルブと、プライマリレギュレータバルブから出力される油圧を調圧して一定圧を出力するセカンダリレギュレータバルブとが含まれる。プライマリレギュレータ系統は、プライマリレギュレータバルブからの油が供給される系統であり、供給先には、無段変速機のプライマリプーリ、セカンダリプーリおよび前後進の切り替えのためのクラッチが含まれる。セカンダリレギュレータ系統は、セカンダリレギュレータバルブからの油が供給される系統であり、その油は、ベルトやギヤなど、他部材との摩擦が生じる部分に潤滑油として供給される。
特開平11-247981号公報
燃費の向上を図るため、機械損失が比較的大きいオイルポンプは、小型化の傾向にある。しかし、オイルポンプを小型化すると、車両の発進時や変速とクラッチの係合とが同時に行われる場合などに、プライマリレギュレータ系統の油量が不足し、変速動作やクラッチ動作の応答性が低下するおそれがある。
本発明の目的は、変速動作やクラッチ動作の応答性を確保しつつ、オイルポンプの小型化を図ることができる、無段変速機を提供することである。
前記の目的を達成するため、本発明に係る無段変速機は、軸と、軸に固定的に設けられる固定部材、軸に軸線方向に移動可能に支持される可動部材および可動部材に対して固定部材と反対側に可動部材を移動させる作動油が供給される油室を備える回転体と、オイルポンプと、オイルポンプが吐出する油の一部を作動油として油室に供給する第1油供給系統と、オイルポンプが吐出する油の一部を潤滑油として固定部材と可動部材との間に供給する第2油供給系統とを含み、軸および可動部材間のクリアランスに基づいて、第2油供給系統における油の流量がクリアランスからの油のリーク量を考慮した流量に設定される。
この構成によれば、オイルポンプが吐出する油の供給系統は、第1油供給系統と第2油供給系統との2系統に分かれている。回転体の油室には、第1油供給系統から油が供給される。可動部材が軸に移動可能に支持されるため、軸と可動部材との間にクリアランスが生じ、油室内の油がクリアランスからリークする。クリアランスからリークした油は、固定部材と可動部材との間に供給される。一方、固定部材と可動部材との間には、第2油供給系統から油が供給される。そのため、軸と可動部材との間のクリアランスからの油のリーク量を考慮すれば、そのリーク量分、第2油供給系統の油の流量を減らして、第1油供給系統の油の流量を増やすことができる。
そこで、軸および可動部材間のクリアランスに基づいて、第2油供給系統における油の流量がクリアランスからの油のリーク量を考慮した流量に設定される。これにより、第2油供給系統の油の流量を固定部材と可動部材との間に配される部材などの潤滑不足が生じない範囲で減らして、その分、第1油供給系統の油の流量を増やすことができる。その結果、変速動作やクラッチ動作の応答性を確保しつつ、オイルポンプの小型化を図ることができる。
回転体は、プーリであり、プーリは、軸に固定的に設けられる固定シーブ、軸に軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持される可動シーブおよび可動シーブに対して固定シーブと反対側に可動シーブを移動させる作動油が供給される油室とを備えていてもよい。
また、回転体は、クラッチであり、クラッチは、軸に固定的に設けられるクラッチハブ、軸に軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持されるピストンおよびピストンに対してクラッチハブと反対側にピストンを移動させる作動油が供給される油室とを備えていてもよい。
第2油供給系統における油の流量は、クリアランスからの油のリーク量を考慮した固定値に設定されていてもよいが、第2油供給系統に油の流量を調整する流量調整バルブが設けられて、クリアランスからの油のリーク量を考慮した可変値に設定されてもよい。
可動部材に作用する油圧が大きいほど、クリアランスからの油のリーク量が多くなるので、流量調整バルブが設けられる場合、流量調整バルブは、その設計により、可動部材に作用する油圧が大きいほど、固定部材と可動部材との間に供給される油の流量が小さくなるように動作することが好ましい。
本発明によれば、変速動作やクラッチ動作の応答性を確保しつつ、オイルポンプの小型化を図ることができる。
本発明の一実施形態に係る無段変速機が搭載された車両の駆動系の構成を示すスケルトン図である。 車両の制御系の構成を示すブロック図である。 油圧回路の一部の構成を示す回路図である。 セカンダリシーブ圧と、クリアランスと、クリアランスからの油のリーク量との関係を示す図である。 流量調整バルブの動作を制御する構成を示すブロック図である。
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
<車両の駆動系>
図1は、本発明の一実施形態に係る無段変速機9が搭載された車両1の駆動系の構成を示すスケルトン図である。
車両1は、エンジン2を駆動源として搭載し、たとえば、FR(Front-engine Rear-wheel-drive:フロントエンジン・リヤドライブ)レイアウトを採用している。エンジン2は、クランクシャフト3が車両1の前後方向(以下、単に「前後方向」という。)に対して縦向きになる縦置きで車両1の前部に搭載される。
エンジン2は、たとえば、3気筒4ストロークエンジンであるが、3気筒4ストロークエンジンに限定されない。すなわち、エンジン2の気筒数は、3気筒に限らず、4気筒以上であってもよいし、2気筒以下であってもよい。また、エンジン2のストローク数は、4ストロークに限らず、2ストロークであってもよい。エンジン2には、エンジン2の燃焼室への吸入空気量を調整するための電子スロットルバルブ、燃料を吸入空気に噴射するインジェクタ(燃料噴射装置)および燃焼室内に電気放電を生じさせる点火プラグなどが備えられている。また、エンジン2のクランキングのためのスタータモータがエンジン2に付随して設けられている。
エンジン2の動力は、変速ユニット4に入力される。変速ユニット4から出力される動力は、プロペラシャフト5を介して、デファレンシャルギヤ6に伝達され、デファレンシャルギヤ6から左右の駆動輪(後輪)7L,7Rに伝達される。
変速ユニット4は、外殻をなすユニットケース内に、トルクコンバータ8および無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)9を備えている。
トルクコンバータ8は、ロックアップ機構付きのトルクコンバータであり、フロントカバー11、ポンプインペラ12、タービンランナ13およびロックアップクラッチ(ロックアップピストン)14を備えている。
フロントカバー11は、前後方向に延びる回転軸線を中心に略円板状に延び、その外周端部がエンジン2側と反対側である後側に屈曲した形状をなしている。フロントカバー11の中心部には、エンジン2のクランクシャフト3が相対回転不能に結合される。
ポンプインペラ12は、フロントカバー11の後側に配置されている。ポンプインペラ12の外周端部は、フロントカバー11の外周端部に接続され、ポンプインペラ12は、フロントカバー11と一体回転可能に設けられている。
タービンランナ13は、フロントカバー11とポンプインペラ12との間に配置されている。
ロックアップクラッチ14は、フロントカバー11とタービンランナ13との間に位置している。ロックアップクラッチ14に対してタービンランナ13側の係合側油室15の油圧がフロントカバー11側の解放側油室16の油圧よりも高いと、その差圧により、ロックアップクラッチ14がフロントカバー11側に移動し、ロックアップクラッチ14がフロントカバー11に押し付けられて、ポンプインペラ12とタービンランナ13とが直結(ロックアップオン)される。
逆に、解放側油室16の油圧が係合側油室15の油圧よりも高いと、その差圧により、ロックアップクラッチ14がタービンランナ13側に移動する。ロックアップクラッチ14がフロントカバー11から離間した状態では、ポンプインペラ12とタービンランナ13との直結が解除(ロックアップオフ)される。ロックアップオフの状態において、エンジントルクによりポンプインペラ12が回転すると、ポンプインペラ12からタービンランナ13に向かうオイルの流れが生じる。このオイルの流れがタービンランナ13で受けられて、タービンランナ13が回転する。このとき、トルクコンバータ8の増幅作用が生じ、タービンランナ13には、エンジントルクよりも大きなトルクが発生する。
無段変速機9は、インプット軸21、無段変速機構22、リバース伝達機構23およびアウトプット軸24を備えている。無段変速機9は、インプット軸21が前後方向に延びる縦向きとなるように設けられている。
インプット軸21は、トルクコンバータ8の回転軸線上を延び、トルクコンバータ8のタービンランナ13と一体的に回転可能に設けられている。インプット軸21には、インプット軸ギヤ25が一体に形成されるか、または、別体に形成されたインプット軸ギヤ25が相対回転不能に支持されている。インプット軸21の後端部は、機械式のオイルポンプPのポンプ軸に結合されている。
無段変速機構22は、プライマリ軸31、セカンダリ軸32、プライマリ軸31に支持されたプライマリプーリ33、セカンダリ軸32に支持されたセカンダリプーリ34およびプライマリプーリ33とセカンダリプーリ34とに巻きかけられたベルト35を備えている。
プライマリ軸31は、その軸心がインプット軸21の軸心に対して後側から見て右下方に離間した位置に配置されて、インプット軸21と平行に延びている。セカンダリ軸32は、その軸心がインプット軸21の軸心に対して後側から見て左上方に離間した位置に配置されて、インプット軸21と平行に延びている。このように、インプット軸21に対して、プライマリ軸31とセカンダリ軸32とが左右に分かれて配置されている。
プライマリプーリ33は、プライマリ軸31に固定されたプライマリ固定シーブ41と、プライマリ固定シーブ41にベルト35を挟んで対向配置され、プライマリ軸31にその軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持されたプライマリ可動シーブ42とを備えている。プライマリ可動シーブ42は、プライマリ固定シーブ41に対して前側に配置されている。
プライマリ可動シーブ42に対してプライマリ固定シーブ41側と反対側、つまり前側には、シリンダ43が設けられている。シリンダ43は、内周端がプライマリ軸31に固定され、プライマリ軸31から軸径方向に延び、外周端部が後側に屈曲して延びている。プライマリ可動シーブ42の外周端は、シリンダ43の外周端部に回転径方向の内側から液密的に当接している。プライマリ可動シーブ42とシリンダ43との間は、油室(ピストン室)44として形成されている。
セカンダリプーリ34は、セカンダリ軸32に固定されたセカンダリ固定シーブ45と、セカンダリ固定シーブ45にベルト35を挟んで対向配置され、セカンダリ軸32にその軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持されたセカンダリ可動シーブ46とを備えている。セカンダリ可動シーブ46は、セカンダリ固定シーブ45に対して後側に配置されており、前後方向において、セカンダリ固定シーブ45とセカンダリ可動シーブ46との位置関係は、プライマリプーリ33のプライマリ固定シーブ41とプライマリ可動シーブ42との位置関係と逆転している。
セカンダリ可動シーブ46に対してセカンダリ固定シーブ45と反対側、つまり後側には、ピストン47が設けられている。ピストン47は、内周端がセカンダリ軸32に固定され、セカンダリ軸32から軸径方向に延びている。セカンダリ可動シーブ46の外周端部は、後側に延出しており、ピストン47の外周端は、そのセカンダリ可動シーブ46の外周端部に回転径方向の内側から液密的に当接している。セカンダリ可動シーブ46とピストン47との間は、油室48として形成されている。
無段変速機構22では、プライマリプーリ33およびセカンダリプーリ34の各油室44,48に供給される油圧が制御されて、プライマリプーリ33およびセカンダリプーリ34の各溝幅が変更されることにより、ベルト変速比(プライマリプーリ33とセカンダリプーリ34とのプーリ比)が一定の変速比範囲内で連続的に無段階で変更される。
具体的には、ベルト変速比が小さくされるときには、プライマリプーリ33の油室44に供給される油圧が上げられる。これにより、プライマリプーリ33のプライマリ可動シーブ42がプライマリ固定シーブ41側に移動し、プライマリ固定シーブ41とプライマリ可動シーブ42との間隔(溝幅)が小さくなる。これに伴い、プライマリプーリ33に対するベルト35の巻きかけ径が大きくなり、セカンダリプーリ34のセカンダリ固定シーブ45とセカンダリ可動シーブ46との間隔(溝幅)が大きくなる。その結果、ベルト変速比が小さくなる。
ベルト変速比が大きくされるときには、プライマリプーリ33の油室44に供給される油圧が下げられる。これにより、ベルト35に対するセカンダリプーリ34の推力がベルト35に対するプライマリプーリ33の推力よりも大きくなり、セカンダリプーリ34のセカンダリ固定シーブ45とセカンダリ可動シーブ46との間隔が小さくなるとともに、プライマリ固定シーブ41とプライマリ可動シーブ42との間隔が大きくなる。その結果、ベルト変速比が大きくなる。
なお、図示されていないが、セカンダリプーリ34の油室48には、バイアススプリングが設けられている。バイアススプリングは、一端がセカンダリ可動シーブ46に弾性的に当接し、他端がピストン47に弾性的に当接している。バイアススプリングの弾性力により、セカンダリ可動シーブ46およびピストン47が互いに離間する方向に付勢されている。セカンダリ可動シーブ46には、油室48内の油圧およびバイアススプリングによる付勢力が付与され、ベルト35には、それに応じた挟圧力が付与される。
プライマリ軸31の前側の端部には、プライマリ入力ギヤ51が相対回転可能に支持されている。
プライマリ入力ギヤ51とその後側に配置されるプライマリプーリ33との間に、前進クラッチ52が設けられている。前進クラッチ52は、油圧式の摩擦クラッチであり、油圧により係合し、プライマリ軸31に対するプライマリ入力ギヤ51の回転を禁止する。したがって、前進クラッチ52の係合状態では、プライマリ入力ギヤ51が回転すると、プライマリ軸31がプライマリ入力ギヤ51と一体に回転する。この係合状態の前進クラッチ52から油圧が開放されると、前進クラッチ52が解放される。前進クラッチ52の解放により、プライマリ軸31に対するプライマリ入力ギヤ51の回転が許容され、プライマリ入力ギヤ51が回転しても、その回転がプライマリ軸31に伝達されない。
セカンダリ軸32の前側の端部には、セカンダリ入力ギヤ53が相対回転可能に支持されている。
セカンダリ入力ギヤ53とその後側に配置されるセカンダリプーリ34との間には、後進クラッチ54が設けられている。後進クラッチ54は、油圧式の摩擦クラッチであり、油圧により係合し、セカンダリ軸32に対するセカンダリ入力ギヤ53の回転を禁止する。したがって、セカンダリ入力ギヤ53が回転すると、セカンダリ軸32がセカンダリ入力ギヤ53と一体に回転する。この係合状態の後進クラッチ54から油圧が開放されると、後進クラッチ54が解放される。後進クラッチ54の解放により、セカンダリ軸32に対するセカンダリ入力ギヤ53の回転が許容され、セカンダリ入力ギヤ53が回転しても、その回転がセカンダリ軸32に伝達されない。
リバース伝達機構23は、インプット軸21の動力(回転)を無段変速機構22を経由せずにセカンダリ軸32に伝達する機構である。リバース伝達機構23は、リバースアイドラ軸55、第1リバースギヤ56および第2リバースギヤ57を含む。
リバースアイドラ軸55は、インプット軸21と平行をなす前後方向に延びている。
第1リバースギヤ56は、リバースアイドラ軸55と一体に形成されるか、または、リバースアイドラ軸55と別体に形成されて、リバースアイドラ軸55に相対回転不能に支持されている。
アウトプット軸24は、インプット軸21に対して後側に間隔を空けて、インプット軸21と同一軸線上に配置されている。アウトプット軸24には、アウトプット軸ギヤ58が一体に形成されるか、または、アウトプット軸24と別体に形成されたアウトプット軸ギヤ58が相対回転不能に支持されている。これに対応して、セカンダリ軸32には、セカンダリプーリ34のピストン47の後側に隣接して、セカンダリ出力ギヤ59がスプライン嵌合により相対回転不能に支持されている。アウトプット軸ギヤ58とセカンダリ出力ギヤ59とは、噛合している。
無段変速機9は、たとえば、Pレンジ(駐車レンジ)、Rレンジ(後進レンジ)、Nレンジ(中立レンジ)およびDレンジ(前進レンジ)を含む変速レンジを有している。変速レンジの切り替えを指示するため、車両1の車室内には、シフトレバー(セレクトレバー)が配設されている。シフトレバーの可動域には、Pレンジ、Rレンジ、NレンジおよびDレンジに対応して、それぞれPポジション、Rポジション、NポジションおよびDポジションが設定されている。
シフトレバーがPポジションに位置する状態では、前進クラッチ52および後進クラッチ54の両方が解放され、たとえば、アウトプット軸24に相対回転不能に支持されるパーキングギヤが固定されることにより、Pレンジが構成される。また、シフトレバーがNポジションに位置する状態では、前進クラッチ52および後進クラッチ54の両方が解放され、パーキングロックギヤが固定されないことにより、Nレンジが構成される。
シフトレバーがDポジションに位置する状態では、前進クラッチ52が係合されて、後進クラッチ54が解放されることにより、Dレンジが構成される。このとき、エンジン2からトルクコンバータ8を介してインプット軸21に入力される動力は、前進クラッチ52の係合により、インプット軸ギヤ25からプライマリ入力ギヤ51を介してプライマリ軸31に伝達される。一方、インプット軸21に入力される動力がインプット軸ギヤ25からセカンダリ入力ギヤ53に伝達されて、セカンダリ入力ギヤ53が回転しても、後進クラッチ54の解放により、セカンダリ入力ギヤ53がセカンダリ軸32に対して空転し、セカンダリ軸32に動力が伝達されない。
プライマリ軸31に伝達される動力は、プライマリプーリ33とセカンダリプーリ34とのプーリ比に応じたベルト変速比で変速されて、セカンダリ軸32に伝達される。そして、セカンダリ軸32に伝達される動力は、セカンダリ出力ギヤ59からアウトプット軸ギヤ58を介してアウトプット軸24に伝達され、アウトプット軸24からプロペラシャフト5に伝達される。
シフトレバーがRポジションに位置する状態では、前進クラッチ52が解放されて、後進クラッチ54が係合されることにより、Rレンジが構成される。このとき、エンジン2からトルクコンバータ8を介してインプット軸21に入力される動力は、後進クラッチ54の係合により、インプット軸ギヤ25からリバース伝達機構23およびセカンダリ入力ギヤ53を介してセカンダリ軸32に伝達される。このとき、セカンダリ軸32は、車両1の前進時と逆方向に回転する。一方、インプット軸21に入力される動力がインプット軸ギヤ25からプライマリ入力ギヤ51に伝達されて、プライマリ入力ギヤ51が回転しても、前進クラッチ52の解放により、プライマリ入力ギヤ51がプライマリ軸31に対して空転し、プライマリ軸31に動力が伝達されない。
セカンダリ軸32に伝達される動力は、セカンダリ出力ギヤ59からアウトプット軸ギヤ58を介してアウトプット軸24に伝達され、アウトプット軸24からプロペラシャフト5に伝達される。
<車両の制御系>
図2は、車両1の制御系の構成を示すブロック図である。
車両1には、複数のECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)が搭載されている。各ECUは、マイコン(マイクロコントローラユニット)を備えており、マイコンには、たとえば、CPU、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリおよびDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリが内蔵されている。複数のECUは、CAN(Controller Area Network)通信プロトコルによる双方向通信が可能に接続されている。図2には、複数のECUのうちの1つのECU61が示されている。
トルクコンバータ8および無段変速機9を含むユニットには、オイルポンプPによりオイルパンから組み上げられた油を各部に供給するための油圧回路62が備えられている。ECU61は、無段変速機9の変速制御などのため、油圧回路62に含まれる各種のバルブなどを制御する。
ECU61には、制御に必要な各種センサが接続されており、その接続されたセンサの検出信号が入力される。また、ECU61には、各種センサから入力される検出信号以外に制御に必要な情報が他のECUから入力される。
<油圧回路>
図3は、油圧回路62の一部の構成を示す回路図である。
オイルポンプPが吐出する油は、プライマリレギュレータ系統71とセカンダリレギュレータ系統72との2系統に分かれて、トルクコンバータ8および無段変速機9の各部に供給される。
具体的には、油圧回路62には、プライマリレギュレータバルブ、セカンダリレギュレータバルブおよびクラッチモジュレータバルブが含まれる。プライマリレギュレータバルブは、オイルポンプPの吐出圧をライン圧PLに調圧するバルブである。セカンダリレギュレータバルブは、プライマリレギュレータバルブから出力される油圧を調圧して一定のセカンダリレギュレータ圧Psrを出力するバルブである。クラッチモジュレータバルブは、ライン圧PLを一定のクラッチモジュレータ圧Pcに調圧して出力するバルブである。
プライマリレギュレータ系統71は、プライマリレギュレータバルブからの油、つまりライン圧PLが供給される系統である。無段変速機9のプライマリプーリ33、セカンダリプーリ34、前進クラッチ52および後進クラッチ54には、プライマリレギュレータ系統71からそれらの作動のための作動油(油圧)が供給される。
たとえば、プライマリプーリ33の油室44(プライマリ可動シーブ42)およびセカンダリプーリ34の油室48(セカンダリ可動シーブ46)にそれぞれプライマリシーブ圧Pinおよびセカンダリシーブ圧Pdを供給するため、油圧回路62には、プライマリレギュレータ系統71に含まれるバルブとして、プライマリソレノイドバルブ81、プライマリ調圧バルブ82、セカンダリソレノイドバルブ83およびセカンダリ調圧バルブ84が含まれる。
プライマリソレノイドバルブ81は、非通電時に全開となるノーマルオープンタイプ(常開式)のリニアソレノイドバルブからなる。プライマリソレノイドバルブ81には、クラッチモジュレータ圧Pcが入力される。プライマリソレノイドバルブ81に供給される電流が大きいほど、プライマリソレノイドバルブ81から出力されるプライマリソレノイド圧PSLPが小さくなる。
プライマリ調圧バルブ82には、プライマリソレノイド圧PSLPが信号圧として入力される。プライマリ調圧バルブ82は、ライン圧PLを信号圧であるプライマリソレノイド圧PSLPに応じたプライマリシーブ圧Pinに調圧して出力する。プライマリソレノイド圧PSLPが大きいほど、プライマリシーブ圧Pinが大きくなる。
セカンダリソレノイドバルブ83は、非通電時に全開となるノーマルオープンタイプ(常開式)のリニアソレノイドバルブからなる。セカンダリソレノイドバルブ83には、一定のクラッチモジュレータ圧Pcが入力される。セカンダリソレノイドバルブ83に供給されるセカンダリ電流が大きいほど、セカンダリソレノイドバルブ83から出力されるセカンダリソレノイド圧PSLSが小さくなる。
セカンダリ調圧バルブ84には、セカンダリソレノイド圧PSLSが信号圧として入力される。セカンダリ調圧バルブ84は、ライン圧PLを信号圧であるセカンダリソレノイド圧PSLSに応じたセカンダリシーブ圧Pdに調圧して出力する。セカンダリソレノイド圧PSLSが大きいほど、セカンダリシーブ圧Pdが大きくなる。
セカンダリレギュレータ系統72は、セカンダリレギュレータバルブからの油、つまりセカンダリレギュレータ圧Psrが供給される系統であり、その油は、トルクコンバータ8にロックアップクラッチ14の作動油として供給され、また、無段変速機9のベルト35など、他部材との摩擦が生じる部分に潤滑油として供給される。
油圧回路62には、セカンダリレギュレータ系統72に流れる油の流量を調整する流量調整バルブ85が含まれる。流量調整バルブ85には、セカンダリソレノイドバルブ83から出力されるセカンダリソレノイド圧PSLSが信号圧として入力される。流量調整バルブ85は、その設計により、信号圧であるセカンダリソレノイド圧PSLSが大きいほどセカンダリレギュレータ系統72に流れる油の流量が小さくなるように動作する。
<クリアランスからの油のリーク>
図4は、セカンダリシーブ圧Pdと、クリアランスと、クリアランスからの油のリーク量との関係を示す図である。
プライマリプーリ33のプライマリ可動シーブ42がプライマリ軸31に移動可能に支持されるため、プライマリ軸31とプライマリ可動シーブ42との間には、クリアランスが生じる。そのため、プライマリプーリ33の油室44内の油がクリアランスからリークする。クリアランスからリークする油は、プライマリ固定シーブ41とプライマリ可動シーブ42との間に達し、回転遠心力で飛散して、それらの間に挟まれるベルト35に降りかかる。
セカンダリプーリ34についても同様であり、セカンダリ可動シーブ46がセカンダリ軸32に移動可能に支持されるため、セカンダリ軸32とセカンダリ可動シーブ46との間には、クリアランスが生じる。そのため、セカンダリプーリ34の油室48内の油がクリアランスからリークする。クリアランスからリークする油は、セカンダリ固定シーブ45とセカンダリ可動シーブ46との間に達し、回転遠心力で飛散して、それらの間に挟まれるベルト35に降りかかる。
クリアランスからの油のリーク量は、クリアランスが大きいほど多くなり、また、プライマリプーリ33の油室44に供給されるプライマリシーブ圧Pinおよびセカンダリプーリ34の油室48に供給されるセカンダリシーブ圧Pdがそれぞれ大きいほど多くなる。
そのため、変速ユニット4の設計段階では、たとえば、セカンダリ軸32とセカンダリ可動シーブ46との間のクリアランスの設計上の値とその公差から、クリアランスの最大値(最大クリアランス)が求められ、その最大クリアランスからの油のリーク量がセカンダリシーブ圧Pdを用いた計算により求められる。一方、セカンダリ調圧バルブ84のバルブ特性から、セカンダリソレノイド圧PSLSとセカンダリシーブ圧Pdとの関係が求められる。そして、その関係およびセカンダリシーブ圧Pdとリーク量との関係から、セカンダリソレノイド圧PSLSに応じたリーク量分、セカンダリレギュレータ系統72に流れる油の流量が小さくなるように、流量調整バルブ85が設計される。
<作用効果>
以上のように、オイルポンプPが吐出する油の供給系統は、プライマリレギュレータ系統71とセカンダリレギュレータ系統72との2系統に分かれている。セカンダリプーリ34の油室48には、プライマリレギュレータ系統71から油が供給される。セカンダリ可動シーブ46がセカンダリ軸32に移動可能に支持されるため、セカンダリ軸32とセカンダリ可動シーブ46との間にクリアランスが生じ、油室48内の油がクリアランスからリークする。クリアランスからリークした油は、セカンダリ固定シーブ45とセカンダリ可動シーブ46との間のベルト35に供給される。一方、セカンダリ固定シーブ45とセカンダリ可動シーブ46との間のベルト35には、セカンダリレギュレータ系統72から油が供給される。そのため、クリアランスからの油のリーク量を考慮すれば、そのリーク量分、セカンダリレギュレータ系統72の油の流量を減らして、プライマリレギュレータ系統71の油の流量を増やすことができる。
そこで、セカンダリレギュレータ系統72に油の流量を調整する流量調整バルブ85が設けられて、セカンダリソレノイド圧PSLSに応じたリーク量分、セカンダリレギュレータ系統72に流れる油の流量が小さくなるように、流量調整バルブ85が設計される。これにより、セカンダリレギュレータ系統72の油の流量をベルト35などの潤滑不足が生じない範囲で減らして、その分、プライマリレギュレータ系統71の油の流量を増やすことができる。その結果、変速動作やクラッチ動作の応答性を確保しつつ、オイルポンプPの小型化を図ることができる。
また、セカンダリレギュレータ系統72に流量調整バルブ85が設けられることにより、セカンダリレギュレータ系統72における油圧脈動に対するダンピング効果も期待できる。
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
たとえば、プライマリソレノイドバルブ81から出力されるプライマリソレノイド圧PSLPが流量調整バルブ85に信号圧として入力されてもよい。この場合、変速ユニット4の設計段階では、プライマリ軸31とプライマリ可動シーブ42との間のクリアランスの設計上の値とその公差から、クリアランスの最大値(最大クリアランス)が求められ、その最大クリアランスからの油のリーク量がプライマリシーブ圧Pinを用いた計算により求められる。一方、プライマリ調圧バルブ82のバルブ特性から、プライマリソレノイド圧PSLPとプライマリシーブ圧Pinとの関係が求められる。そして、その関係およびプライマリシーブ圧Pinとリーク量との関係から、プライマリソレノイド圧PSLPに応じたリーク量分、セカンダリレギュレータ系統72に流れる油の流量が小さくなるように、流量調整バルブ85が設計されるとよい。
また、図5に示されるように、ソレノイドバルブ86が設けられて、ソレノイドバルブ86から出力される油圧が流量調整バルブ85に信号圧として入力されてもよい。ソレノイドバルブ86には、たとえば、非通電時に全閉となるノーマルクローズタイプ(常閉式)のリニアソレノイドバルブが用いられる。また、ECU61には、プライマリソレノイド圧PSLP、プライマリシーブ圧Pin、セカンダリソレノイド圧PSLSまたはセカンダリシーブ圧Pdのいずれかの油圧を検出する油圧センサ91が接続されて、その油圧センサ91の検出信号が入力される。そして、ECU61により、油圧センサ91によって検出される油圧が大きいほど、セカンダリレギュレータ系統72に流れる油の流量が小さくなるように、ソレノイドバルブ86に供給される電流が制御される。
流量調整バルブ85は、省略されてもよい。その場合、たとえば、プライマリ軸31とプライマリ可動シーブ42との間のクリアランスまたはセカンダリ軸32とセカンダリ可動シーブ46との間のクリアランスに基づいて、第2油供給系統における油の流量がクリアランスからの油のリーク量を考慮した固定値に設定されて、第2油圧供給系統にオリフィスなどが設けられてもよい。
また、回転体として、プライマリプーリ33およびセカンダリプーリ34を取り上げたが、回転体は、前進クラッチ52または後進クラッチ54であってもよい。
本発明は、エンジンが横置きで搭載される車両や、FF(Front-engine Front-wheel-drive:フロントエンジン・フロントドライブ)レイアウトが採用された車両用の無段変速機に適用することもできる。
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
9:無段変速機
31:プライマリ軸(軸)
32:セカンダリ軸(軸)
33:プライマリプーリ(回転体)
34:セカンダリプーリ(回転体)
41:プライマリ固定シーブ(固定部材)
42:プライマリ可動シーブ(可動部材)
44,48:油室
45:セカンダリ固定シーブ(固定部材)
46:セカンダリ可動シーブ(可動部材)
71:プライマリレギュレータ系統(第1油供給系統)
72:セカンダリレギュレータ系統(第2油供給系統)
85:流量調整バルブ
P:オイルポンプ

Claims (3)

  1. 軸と、
    前記軸に固定的に設けられる固定部材、前記軸に軸線方向に移動可能に支持される可動部材および前記可動部材に対して前記固定部材と反対側に前記可動部材を移動させる作動油が供給される油室を備える回転体と、
    オイルポンプと、
    前記オイルポンプが吐出する油の一部を前記作動油として前記油室に供給する第1油供給系統と、
    前記オイルポンプが吐出する油の一部を潤滑油として前記固定部材と前記可動部材との間に供給する第2油供給系統と、を含み、
    前記軸および前記可動部材間のクリアランスに基づいて、前記第2油供給系統における油の流量が前記クリアランスからの油のリーク量を考慮した流量に設定される、無段変速機。
  2. 前記第2油供給系統には、油の流量を調整する流量調整バルブが設けられている、請求項1に記載の無段変速機。
  3. 前記流量調整バルブは、前記可動部材に作用する油圧が大きいほど、前記固定部材と前記可動部材との間に供給される油の流量が小さくなるように動作する、請求項2に記載の無段変速機。
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