JP2022061664A - 制御装置および制御方法 - Google Patents

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Abstract

Figure 2022061664000001
【課題】フィードフォワード制御のトリガーが入力されなかった場合にフィードフォワード制御の効果が損なわれるのを抑制する。
【解決手段】制御装置は、フィードフォワード量MV_Xを算出するフィードフォワード算出部2と、操作量MVにフィードフォワード量MV_Xを加算するフィードフォワード実行部3と、制御量PVの変化に基づいて外乱印加を検出する外乱印加検出部5と、フィードフォワード制御の開始のためのトリガー信号FF_Xが入力されていない状態で外乱印加が検出された場合に、フィードフォワード制御の初期時点におけるフィードフォワード量MV_Xの配分がトリガー信号FF_Xが入力された状態で外乱が印加された場合よりも多くなるように、フィードフォワード算出部2の設定変更を行なうフィードフォワード修正部6を備える。
【選択図】 図1

Description

本発明は、フィードバック制御とフィードフォワード制御とを併用する制御装置および制御方法に関するものである。
代表的なフィードバック(Feedback)制御であるPID制御に、フィードフォワード(Feedforward)分を加算する方法(以下、フィードフォワード+フィードバック制御とする)が提案されている(特許文献1参照)。
発明者は、このようなフィードフォワード+フィードバック制御を特に図15のような加熱装置に適用する場合において、実用性を向上させるために、操作量MVの下限値OL、上限値OHを通常値に漸近的に収束させる形式のフィードフォワード方法(特許文献2)と、フィードフォワード量MV_Pをゼロに漸近的に収束させる形式のフィードフォワード方法(特許文献3)とを提案した。
図15の加熱装置は、処理対象のワークを加熱する熱処理炉100と、電気ヒータ101と、熱処理炉100内の温度を計測する温度センサ102と、熱処理炉100内の温度を制御する温調計103と、電力調整器104と、電力供給回路105と、加熱装置全体を制御するPLC(Programmable Logic Controller)106とから構成される。温調計103は、温度センサ102が計測した温度PV(制御量)が温度設定値SPと一致するように操作量MVを算出する。電力調整器104は、操作量MVに応じた電力を決定し、この決定した電力を電力供給回路105を通じて電気ヒータ101に供給する。
発明者が特許文献3で提案したフィードフォワード+フィードバック制御は、典型的なフィードフォワード制御に近い。図16の制御系のブロック線図を用いて、発明者が特許文献3で提案した技術について説明する。図16のPは制御対象を示している。
操作量算出部201は、設定値SPと制御量PVとを入力として、制御量PVが設定値SPと一致するように、例えば以下の伝達関数式のようなPID制御演算を行って操作量MV(本発明では、基本操作量MVとする)を算出する。
MV=(100/Pb){1+(1/Tis)+Tds}(SP-PV)
・・・(1)
Pbは比例帯、Tiは積分時間、Tdは微分時間、sはラプラス演算子である。
加算量算出部204は、基本操作量MVに対するフィードフォワード分の加算量の目標値である操作量加算値FF_P(FF_P≠0)が入力されると、操作量加算値FF_Pに近づいた後にゼロ値へと徐々に収束する操作量加算量MV_Pを算出する。具体的には、加算量算出部204は、下記のような伝達関数式で操作量加算量MV_Pを算出する。
MV_P={Kxs/(1+Tfs)2}FF_P ・・・(2)
式(2)のTfは、操作量加算量MV_Pを徐々に収束させる時間を規定するパラメータである。Kxはフィードフォワードの大きさを規定するパラメータである。操作量加算量MV_Pの変化の1例を図17に示す。図17の例では、操作量加算値FF_P=50%、パラメータTf=100sec.、パラメータKx=275としている。
減算量算出部205は、基本操作量MVに対するフィードフォワード分の減算量の目標値である操作量減算値FF_M(FF_M≠0)が入力されると、操作量減算値FF_Mに近づいた後にゼロ値へと徐々に収束する操作量減算量MV_Mを算出する。具体的には、減算量算出部205は、下記のような伝達関数式で操作量減算量MV_Mを算出する。
MV_M={Kxs/(1+Tfs)2}FF_M ・・・(3)
式(3)のTfは、操作量減算量MV_Mを徐々に収束させる時間を規定するパラメータである。操作量変更部206は、操作量算出部201で算出された基本操作量MVに、加算量算出部204によって算出された操作量加算量MV_Pを加算し、さらに減算量算出部205によって算出された操作量減算量MV_Mを減算した結果を操作量MV_F(本発明では、実操作量MV_Fとする)として算出する。
MV_F=MV+MV_P-MV_M ・・・(4)
リミット処理部207は、操作量変更部206によって算出された実操作量MV_Fを所定の操作量下限値OL以上の値に制限する下限リミット処理と、実操作量MV_Fを所定の操作量上限値OH以下の値に制限する上限リミット処理とを行なう。このリミット処理部207でリミット処理された実操作量MV_F’が制御対象Pに出力される。
特許文献3で提案した技術によれば、基本操作量MVにフィードフォワード分の変更を施して、一定時間経過後にフィードフォワード分を0%に戻すような不連続な制御で発生する不具合を低減することができる。
ただし、特許文献3で提案した技術では、フィードフォワード制御を外乱印加前に開始する場合、外乱印加の予定(あるいは予測)を通知する信号の役割を果たす操作量加算値FF_P、操作量減算値FF_Mを、フィードフォワード制御のトリガーとして入力する必要がある。しかしながら、通信障害などによりトリガーが入力されない場合があり得る。その場合、フィードフォワード制御の効果が得られなくなるので、改善が求められている。
特開2007-102816号公報 特開2019-101846号公報 特開2019-101847号公報
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、フィードフォワード制御のトリガーが入力されなかった場合に、フィードフォワード制御の効果が損なわれるのを抑制することができる制御装置および制御方法を提供することを目的とする。
本発明の制御装置は、設定値と制御量とを入力として第1の操作量をフィードバック制御演算により算出するように構成された操作量算出部と、外乱の印加前に有意の値となり外乱の印加後に非有意の値となるトリガー信号の入力に応じて、前記外乱の抑制に必要なフィードフォワード量を算出するように構成されたフィードフォワード算出部と、前記操作量算出部によって算出された前記第1の操作量に前記フィードフォワード量を加算するように構成されたフィードフォワード実行部と、前記第1の操作量に前記フィードフォワード量を加算した第2の操作量を制御対象に出力するように構成された操作量出力部と、前記制御量の変化に基づいて外乱印加を検出するように構成された外乱印加検出部と、前記トリガー信号が入力されていない状態で前記外乱印加が検出された場合に、フィードフォワード制御の初期時点における前記フィードフォワード量の配分が前記トリガー信号が入力された状態で前記外乱が印加された場合よりも多くなるように、前記第1の操作量の余裕に応じて前記フィードフォワード算出部の設定変更を行なうように構成されたフィードフォワード修正部とを備え、前記フィードフォワード算出部は、前記トリガー信号が入力されていない状態で前記外乱印加が検出された場合に、前記設定変更がなされた後に前記フィードフォワード量の算出を開始することを特徴とするものである。
また、本発明の制御装置の1構成例において、前記フィードフォワード算出部は、前記フィードフォワード量を徐々に収束させる時間を規定する時定数をTf、前記フィードフォワード量の総量を規定するパラメータをKx、ラプラス演算子をsとしたとき、前記フィードフォワード量をKxs/(1+Tfs)2により算出し、前記フィードフォワード修正部は、予め規定された操作量上下限値と外乱印加前の整定時の前記第1の操作量との差を余裕量MV_Cとしたとき、前記時定数Tfの設定をKx/(2.718MV_C)に変更することを特徴とするものである。
また、本発明の制御方法は、設定値と制御量とを入力として第1の操作量をフィードバック制御演算により算出する第1のステップと、外乱の印加前に有意の値となり外乱の印加後に非有意の値となるトリガー信号の入力に応じて、前記外乱の抑制に必要なフィードフォワード量を算出する第2のステップと、前記第1の操作量に前記フィードフォワード量を加算する第3のステップと、前記第1の操作量に前記フィードフォワード量を加算した第2の操作量を制御対象に出力する第4のステップと、前記制御量の変化に基づいて外乱印加を検出する第5のステップと、前記トリガー信号が入力されていない状態で前記外乱印加が検出された場合に、フィードフォワード制御の初期時点における前記フィードフォワード量の配分が前記トリガー信号が入力された状態で前記外乱が印加された場合よりも多くなるように、前記第1の操作量の余裕に応じて設定変更を行なう第6のステップと、前記トリガー信号が入力されていない状態で前記外乱印加が検出された場合に、前記設定変更がなされた後に前記フィードフォワード量の算出を開始する第7のステップとを含むことを特徴とするものである。
また、本発明の制御方法の1構成例において、前記第2のステップと前記第7のステップは、前記フィードフォワード量を徐々に収束させる時間を規定する時定数をTf、前記フィードフォワード量の総量を規定するパラメータをKx、ラプラス演算子をsとしたとき、前記フィードフォワード量をKxs/(1+Tfs)2により算出するステップを含み、前記第6のステップは、予め規定された操作量上下限値と外乱印加前の整定時の前記第1の操作量との差を余裕量MV_Cとしたとき、前記時定数Tfの設定をKx/(2.718MV_C)に変更するステップを含むことを特徴とするものである。
本発明によれば、外乱印加検出部とフィードフォワード修正部とを設けることにより、トリガー信号が入力されていない状態で外乱が印加された場合にフィードフォワード制御の効果が損なわれるのを抑制することができる。
図1は、本発明の実施例に係る制御装置の構成を示すブロック図である。 図2は、本発明の実施例に係る制御系のブロック線図である。 図3は、本発明の実施例に係る制御装置の動作を説明するフローチャートである。 図4は、本発明の実施例に係る制御装置の動作を説明するフローチャートである。 図5は、本発明の実施例に係るフィードフォワード量の変化の1例を示す図である。 図6は、本発明の実施例においてフィードフォワード制御を実行せずにフィードバック制御のみを実行した場合の制御量と実操作量のシミュレーション結果を示す図である。 図7は、本発明の実施例においてフィードフォワード制御とフィードバック制御を実行した場合の制御量と実操作量のシミュレーション結果を示す図である。 図8は、本発明の実施例においてフィードフォワード制御とフィードバック制御を実行した場合のフィードフォワード量のシミュレーション結果を示す図である。 図9は、外乱印加から遅れてフィードフォワード制御を開始した場合の制御量と実操作量のシミュレーション結果を示す図である。 図10は、本発明の実施例においてトリガー信号が入力されずに外乱印加を検出した場合の制御量と実操作量のシミュレーション結果を示す図である。 図11は、本発明の実施例においてトリガー信号が入力されずに外乱印加を検出した場合のフィードフォワード量のシミュレーション結果を示す図である。 図12は、外乱印加から遅れてフィードフォワード制御を開始した場合の制御量と実操作量のシミュレーション結果を示す図である。 図13は、外乱印加から遅れてフィードフォワード制御を開始した場合のフィードフォワード量のシミュレーション結果を示す図である。 図14は、本発明の実施例に係る制御装置を実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。 図15は、加熱装置の構成を示すブロック図である。 図16は、フィードバック+フィードフォワードの制御系のブロック線図である。 図17は、フィードバック+フィードフォワード制御における操作量加算量の変化の1例を示す図である。
[発明の原理]
発明者は、フィードフォワード制御を外乱印加前に開始する場合、フィードフォワード量の時系列的な配分(時間を規定するパラメータTfにより設定される)が、外乱印加後の経過のフィードバック制御との協調も踏まえたものになっており、全てのフィードフォワード量を外乱印加前に配分するものではないことに着眼した。
つまり、フィードフォワード量の時系列的な配分には特定の時点に集中させる余地(パラメータTfを短くできる余地)がある。一方で、フィードフォワード量の1制御周期における可能な最大量は、フィードフォワード制御実行前の操作量MVと操作量上限値OH(あるいは操作量下限値OL)との差で決まる。この差は、フィードフォワード量を加えられる余裕量に相当する。
そこで、発明者は、フィードフォワード制御のトリガーが入力されなかった場合に、外乱印加に対して事後にはなるが、制御量PVの外乱による変化を検出するようにして、外乱による変化を検出した時点で、操作量MVの余裕に応じて制御周期毎のフィードフォワード量の配分を前倒しにした変更(パラメータTfを短くする変更)を行ない、フィードフォワード制御を実行することに想到した。これにより、全てのフィードフォワード制御の実行が手遅れ傾向になるのを緩和することができる。
[実施例]
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施例に係る制御装置の構成を示すブロック図である。制御装置は、設定値SPと制御量PVとを入力として基本操作量MV(第1の操作量)をPID演算(フィードバック制御演算)により算出する操作量算出部1と、外乱の印加前に有意の値となり外乱の印加後に非有意の値となるトリガー信号FF_Xの入力に応じて、外乱の抑制に必要なフィードフォワード量MV_Xを算出するフィードフォワード算出部2と、操作量算出部1によって算出された基本操作量MVにフィードフォワード量MV_Xを加算して実操作量MV_F(第2の操作量)とするフィードフォワード実行部3とを備えている。
また、制御装置は、外乱印加の前にトリガー信号FF_Xが入力されるトリガー信号入力部4と、制御量PVの変化に基づいて外乱印加を検出する外乱印加検出部5と、トリガー信号FF_Xが入力されていない状態で外乱印加が検出された場合に、フィードフォワード制御の初期時点におけるフィードフォワード量MV_Xの配分がトリガー信号FF_Xが入力された状態で外乱が印加された場合よりも多くなるように、基本操作量MVの余裕に応じてフィードフォワード算出部2の設定変更を行なうフィードフォワード修正部6と、フィードフォワード実行部3で算出された実操作量MV_Fを操作量下限値OL以上で操作量上限値OH以下の値に制限するリミット処理を行なうリミット処理部7と、リミット処理された実操作量MV_F’(第2の操作量)を制御対象に出力する操作量出力部8とを備えている。
図2は本実施例の制御系のブロック線図である。図2のPは制御対象を示している。
次に、本実施例の制御装置の動作を図3、図4を参照して説明する。設定値SP(例えば温度設定値)は、制御装置のオペレータなどによって設定され、操作量算出部1に入力される(図3ステップS100)。
制御量PV(例えば温度計測値)は、図示しない計測器(例えば被加熱物の温度を計測する温度センサ)によって計測され、操作量算出部1に入力される(図3ステップS101)。
操作量算出部1は、設定値SPと制御量PVとを入力として、制御量PVが設定値SPと一致するように、例えば以下の伝達関数式のようなPID演算を行って基本操作量MVを算出する(図3ステップS102)。
MV=(100/Pb){1+(1/Tis)+Tds}(SP-PV)
・・・(5)
Pbは比例帯、Tiは積分時間、Tdは微分時間、sはラプラス演算子である。
フィードフォワード算出部2は、フィードフォワード制御の実行時にフィードフォワード量MV_Xを算出するが、外乱の印加前に1(有意の値)となり外乱の印加後に0(非有意の値)となるトリガー信号FF_Xが0の場合(図3ステップS103においてNO)、フィードバック制御のみでフィードフォワード制御を実行しないものとして、フィードフォワード量MV_Xを0にする(図3ステップS105)。
トリガー信号FF_Xが0の状態で外乱印加を検出した場合の動作(図3ステップS104,S114~S119)については後述する。
フィードフォワード実行部3は、操作量算出部1によって算出された基本操作量MVに、フィードフォワード算出部2によって算出されたフィードフォワード量MV_Xを加算した結果を実操作量MV_Fとして算出する(図3ステップS106)。
MV_F=MV+MV_X ・・・(6)
ここでは、MV_X=0なので、MV_F=MVである。リミット処理部7は、フィードフォワード実行部3によって算出された実操作量MV_Fを所定の操作量下限値OL以上の値に制限する下限リミット処理と、実操作量MV_Fを所定の操作量上限値OH以下の値に制限する上限リミット処理とを行なう(図3ステップS107)。
IF MV_F<OL THEN MV_F’=OL ・・・(7)
IF MV_F>OH THEN MV_F’=OH ・・・(8)
つまり、リミット処理部7は、実操作量MV_Fが操作量下限値OLより小さい場合、実操作量MV_F’=OLとし、実操作量MV_Fが操作量上限値OHより大きい場合、実操作量MV_F’=OHとする。
操作量出力部8は、リミット処理部7でリミット処理された実操作量MV_F’を制御対象に出力する(図3ステップS108)。実操作量MV_F’の出力先は、ヒータやバルブなどの操作部(不図示)である。ヒータの場合には、実操作量MV_F’の実際の出力先は、ヒータに電力を供給する電力調整器(不図示)となる。
こうして、制御装置は、トリガー信号FF_Xが0のときに、ステップS100~S102,S105~S108の処理を例えばオペレータの指示によって制御が終了するまで(図3ステップS109においてYES)、制御周期毎に実行する。
次に、トリガー信号FF_Xが1(有意の値)になったときの動作を説明する。本実施例では、外乱印加のタイミングが既知であることにより、フィードフォワード制御の実行のタイミングを自動決定できることを前提としており、本実施例の制御装置が適用されるシステムにおいて、制御中に想定される外乱を抑制するために、外部機器から制御装置に対して規定のタイミングでトリガー信号FF_X=1が自動的に入力される。このトリガー信号FF_Xは、トリガー信号入力部4を通じてフィードフォワード算出部2とフィードフォワード修正部6とに入力される。
例えば薬品の製造装置において、薬品製造の炉の扉が開くことによって炉内の温度が変動するという状況がある。この場合、炉の温度を制御する制御装置(外部機器)は、炉の扉が開くタイミング(外乱印加のタイミング)よりも前の時点で本実施例の制御装置に対してトリガー信号FF_X=1を送信する。
同様に、設定値SP(温度設定値)が一定のリフロー炉において、はんだ付けの対象となるプリント基板が定期的に投入されることによって温度が変動するという状況がある。この場合、プリント基板の搬送を制御する制御装置(外部機器)は、リフロー炉にプリント基板が投入されるタイミング(外乱印加のタイミング)よりも前の時点で本実施例の制御装置に対してトリガー信号FF_X=1を送信する。
また、外部機器は、外乱の印加が終了した時点から所定時間後にトリガー信号FF_Xを0(非有意の値)にする。このトリガー信号FF_Xを0にするタイミングは、外乱印加後に実操作量MV_F’が整定するタイミングよりも後のタイミングに設定する必要がある。
なお、外乱印加のタイミングに対してトリガー信号FF_Xを1にするタイミングをどの程度前にすべきかについては後述する。
フィードフォワード算出部2は、トリガー信号FF_Xが0から1になったとき(ステップS103においてYES)、フィードフォワード+フィードバック制御を実行するため、下記の式(9)によりフィードフォワード量MV_Xを算出する(図4ステップS110)。
MV_X={Kxs/(1+Tfs)2}FF_X ・・・(9)
式(9)において、Tfはフィードフォワード量MV_Xを徐々に収束させる時間を規定するパラメータ(時定数)である。Kxはフィードフォワード量(総量)を規定するパラメータである。1制御周期での最大フィードフォワード量MF_maxは、Kx/(2.718Tf)になる。時定数TfとパラメータKxは、フィードバック制御系などの情報に基づいて事前に設定しておくことができる。
図5は、フィードフォワード量MV_Xの変化の例を示す図である。図5の例では、Kx=3262.0、Tf=15.0sec.としている。なお、前述の総量(各制御周期の積算値)とは、図5における曲線により囲まれる面積に相当する量である。
次に、フィードフォワード実行部3は、ステップS106と同様に、操作量算出部1によって算出された基本操作量MVに、フィードフォワード算出部2によって算出されたフィードフォワード量MV_Xを加算した結果を実操作量MV_Fとして算出する(図4ステップS111)。
図4のステップS112,S113の処理は、ステップS107,S108の処理と同じである。
こうして、制御装置は、トリガー信号FF_Xが1のときに、ステップS100~S102,S110~S113の処理を制御周期毎に実行する。
次に、トリガー信号FF_Xが0の状態で外乱印加を検出した場合の動作について説明する。外乱印加検出部5は、制御量PVの変化に基づき、外乱印加を検出する。外乱印加検出部5は、制御量PVが設定値SPから離れる方向に変化したとき外乱が印加されたと判定するが、制御量PVが設定値SPから離れる状況には以下の2種類がある。
(I)設定値SPと制御量PVとの偏差Er=SP-PVが正の値で、その絶対値|Er|が増大する場合(制御量PVが設定値SPより小さくなっていく場合)、すなわちEr>0で、かつEr>Er’(Er’は1制御周期前の偏差)が成立する場合。
(II)偏差Erが負の値で、その絶対値|Er|が増大する場合(制御量PVが設定値SPより大きくなっていく場合)、すなわちEr<0で、かつEr<Er’が成立する場合。
外乱印加検出部5は、上記(I)、(II)の何れかの状況が生じたとき外乱が印加されたと判定する。外乱印加検出部5は、このような判定を制御周期毎に実行する。なお、例えば制御量PVが設定値SPに整定している状態から、予め規定された整定範囲Er_Sから外れたときというように、シンプルな方法でも外乱印加を検出可能である。
フィードフォワード修正部6は、トリガー信号FF_Xが0の状態で外乱印加が検出された場合に、フィードフォワード制御の初期時点におけるフィードフォワード量MV_Xの配分がトリガー信号FF_Xが1の状態で外乱が印加された場合よりも多くなるように、基本操作量MVの余裕に応じて時定数Tfの設定変更を行なう。
より具体的には、フィードフォワード修正部6は、想定している外乱が設定値SPに対して制御量PVが下降する外乱で、この外乱に対して基本操作量MVを上昇させるフィードフォワード制御の実行を予定している場合、操作量上限値OHと外乱印加前の整定時の基本操作量MV_Sとの差を余裕量MV_Cとして算出する(図3ステップS114)。
MV_C=OH-MV_S ・・・(10)
また、フィードフォワード修正部6は、想定している外乱が設定値SPに対して制御量PVが上昇する外乱で、この外乱に対して基本操作量MVを下降させるフィードフォワード制御の実行を予定している場合、外乱印加前の整定時の基本操作量MV_Sと操作量下限値OLとの差を余裕量MV_Cとして算出する(ステップS114)。
MV_C=MV_S-OL ・・・(11)
そして、フィードフォワード修正部6は、上記のパラメータKxと余裕量MV_Cとに基づいて時定数Tfの変更値Tf_Cを次式により算出して、フィードフォワード算出部2に設定されている時定数Tfを変更値Tf_Cに変更する(図3ステップS115)。
Tf_C=(MF_max/MV_C)Tf=Kx/(2.718MV_C)
・・・(12)
フィードフォワード算出部2は、トリガー信号FF_Xが0の状態で外乱印加が検出された場合に、フィードフォワード+フィードバック制御を実行するため、次式によりフィードフォワード量MV_Xを算出する(図3ステップS116)。
MV_X={Kxs/(1+Tf_Cs)2}FF_X ・・・(13)
図3のステップS117~S119の処理は、ステップS111~S113の処理と同じである。
こうして、制御装置は、トリガー信号FF_Xが0の状態で外乱印加が検出された場合に、ステップS100~S102,S114~S119の処理を制御周期毎に実行する。
なお、フィードフォワード修正部6は、外乱印加検出部5によって外乱印加が検出された時点から所定の終了時間経過後に、フィードフォワード算出部2に設定されている時定数Tf_Cを、変更前の値Tfに戻す。この時定数Tfを元に戻すタイミングは、外乱印加後に実操作量MV_F’が整定するタイミングよりも後のタイミングに設定する必要がある。
また、フィードフォワード算出部2は、外乱印加検出部5によって外乱印加が検出された時点から所定の終了時間経過後に、式(13)の算出を停止してフィードフォワード量MV_Xを0にする。こうして、制御装置は、フィードバック制御のみの動作(ステップS100~S102,S105~S108)に戻る。
なお、実際にはフィードフォワード算出部2が式(13)の算出を停止する前に、フィードフォワード量MV_Xは0に収束しているので、終了時間が経過する前に制御装置はフィードバック制御のみの動作に戻る。
以下、シミュレーションにより本実施例の効果を検証する。以下の例では、制御対象を、プロセスゲイン10.0、プロセス時定数400.0sec.、プロセスむだ時間20.0sec.の1次遅れ伝達関数で近似できる制御系とする。すなわち、制御対象のモデル数式Gpは次式のように記述できる。
Gp=10.0exp(-20.0s)/(1+400.0s) ・・・(14)
また、操作量算出部1に設定されるPIDパラメータを、比例帯Pb=60%、積分時間Ti=120.0sec.、微分時間Td=10.0sec.とした。操作量上限値OHは100.0%、操作量下限値OLは0.0%、制御周期dtは1.0sec.である。
正常な場合のフィードフォワード制御の開始タイミング、すなわちトリガー信号FF_Xを0から1にするタイミングは、微分時間Tdに基づいて設定できる。具体的には、外乱印加の時点よりαTd前(係数αは0より大きい実数であり、例えば0.7)であることが妥当である。微分時間Td=10.0sec.の場合、フィードフォワード制御の開始タイミングは、外乱印加の時点より7.0sec.前となる。ただし、係数αは、適宜微調整され得る値である。
同様に、時定数Tfは、微分時間Tdに基づいて設定できる。具体的には、Tf=βTd(係数βは0より大きい実数であり、例えば0.4)であることが妥当である。微分時間Td=10.0sec.の場合、時定数Tf=4.0sec.となる。ただし、係数βは、適宜微調整され得る値である。
図6は、外乱リカバリー応答の例を示す図であり、フィードフォワード制御を実行せずにフィードバック制御のみで温度制御した場合の制御量PVと実操作量MV_F’(=操作量MV)の変化の例を示す図である。この図6の例は、100sec.の時点で外乱が印加された場合のフィードバック制御による外乱リカバリー応答のシミュレーション結果を示している。
図7は、100sec.の時点で外乱が印加された場合のフィードフォワード制御とフィードバック制御による外乱リカバリー応答のシミュレーション結果を示し、図8は、図7の場合のフィードフォワード量MV_Xのシミュレーション結果を示している。図7、図8の例は、フィードフォワード算出部2にパラメータKx=652.3、時定数Tf=4.0sec.が予め設定されていた場合を示している。正常なフィードフォワード制御の開始タイミング、すなわちトリガー信号FF_Xを0から1にするタイミングは、外乱印加の時点より7.0sec.前の93sec.の時点である。
図9は、トリガー信号FF_Xが入力されずに(FF_X=0)、100sec.の時点で外乱が印加され、外乱印加から1.0sec.遅れてフィードフォワード制御を開始した場合の外乱リカバリー応答のシミュレーション結果を示している。図9の例は、フィードフォワード算出部2にパラメータKx=652.3、時定数Tf=4.0sec.が予め設定されていた場合を示している。すなわち、本実施例と異なり、時定数はTf=4.0sec.のままであり、Tf_Cへの変更は行なっていない。
図10は、トリガー信号FF_Xが入力されずに(FF_X=0)、100sec.の時点で外乱が印加されたときに、本実施例の動作によって外乱印加から1.0sec.遅れてフィードフォワード制御を開始した場合の外乱リカバリー応答のシミュレーション結果を示している。図11は、図10の場合のフィードフォワード量MV_Xのシミュレーション結果を示している。
図10、図11の例は、フィードフォワード算出部2にパラメータKx=652.3、時定数Tf=4.0sec.が予め設定されていた場合を示している。
フィードフォワード修正部6は、トリガー信号FF_Xが0の状態で外乱印加が検出されたことにより、以下の計算を行う。
MV_C=OH-MV_S=100.0%-5.0%=95.0% ・・・(15)
Tf_C=Kx/(2.718MV_C)
=652.3/(2.718×95.0)=2.5sec.・・・(16)
フィードフォワード修正部6は、フィードフォワード算出部2に設定されている時定数Tf=4.0sec.をTf_C=2.5sec.に変更する。こうして、外乱印加の検出に応じて時定数が変更され、外乱印加から1.0sec.遅れてフィードフォワード制御が開始される。
本実施例によれば、外乱印加から1.0sec.遅れてフィードフォワード制御が開始されるが、フィードフォワード制御の初期時点におけるフィードフォワード量MV_Xの配分がトリガー信号FF_Xが入力された状態で外乱が印加された場合(図7、図8の場合)よりも多くなるように時定数Tfを変更している。その結果、図9の場合よりもフィードフォワード制御の効果が損なわれるのを抑制できている。
図12は、トリガー信号FF_Xが入力されずに(FF_X=0)、100sec.の時点で外乱が印加されたときに、外乱印加から1.0sec.遅れてフィードフォワード制御を開始した場合の外乱リカバリー応答のシミュレーション結果を示している。図13は、図12の場合のフィードフォワード量MV_Xのシミュレーション結果を示している。
図12、図13の例は、フィードフォワード算出部2にパラメータKx=652.3、時定数Tf=4.0sec.が予め設定され、外乱印加から1.0sec.遅れて時定数をTf=0.5sec.に変更してフィードフォワード制御を開始した場合を示している。この図12、図13の例では、本実施例と比較して時定数Tfが過剰に修正されており、操作量上限値OHまでの操作量MVの余裕を超えてフィードフォワード量の配分を前倒しにしているため、結果的に図10、図11の場合よりもフィードフォワード制御の効果が損なわれることになる。
なお、本実施例では、設定値SPに対して制御量PVが下降する外乱の例で説明しているが、本発明は設定値SPに対して制御量PVが上昇する外乱にも対応可能である。制御量PVが上昇する外乱が発生する場合には、パラメータKxとフィードフォワード量MV_Xとが負の値となる。
本実施例で説明した制御装置は、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このコンピュータの構成例を図14に示す。
コンピュータは、CPU300と、記憶装置301と、インタフェース装置(I/F)302とを備えている。I/F302には、例えば温度センサや電力調整器が接続される。このようなコンピュータにおいて、本実施例の制御方法を実現させるためのプログラムは記憶装置301に格納される。CPU300は、記憶装置301に格納されたプログラムに従って本実施例で説明した処理を実行する。
本発明は、制御装置に適用することができる。
1…操作量算出部、2…フィードフォワード算出部、3…フィードフォワード実行部、4…トリガー信号入力部、5…外乱印加検出部、6…フィードフォワード修正部、7…リミット処理部、8…操作量出力部。

Claims (4)

  1. 設定値と制御量とを入力として第1の操作量をフィードバック制御演算により算出するように構成された操作量算出部と、
    外乱の印加前に有意の値となり外乱の印加後に非有意の値となるトリガー信号の入力に応じて、前記外乱の抑制に必要なフィードフォワード量を算出するように構成されたフィードフォワード算出部と、
    前記操作量算出部によって算出された前記第1の操作量に前記フィードフォワード量を加算するように構成されたフィードフォワード実行部と、
    前記第1の操作量に前記フィードフォワード量を加算した第2の操作量を制御対象に出力するように構成された操作量出力部と、
    前記制御量の変化に基づいて外乱印加を検出するように構成された外乱印加検出部と、
    前記トリガー信号が入力されていない状態で前記外乱印加が検出された場合に、フィードフォワード制御の初期時点における前記フィードフォワード量の配分が前記トリガー信号が入力された状態で前記外乱が印加された場合よりも多くなるように、前記第1の操作量の余裕に応じて前記フィードフォワード算出部の設定変更を行なうように構成されたフィードフォワード修正部とを備え、
    前記フィードフォワード算出部は、前記トリガー信号が入力されていない状態で前記外乱印加が検出された場合に、前記設定変更がなされた後に前記フィードフォワード量の算出を開始することを特徴とする制御装置。
  2. 請求項1記載の制御装置において、
    前記フィードフォワード算出部は、前記フィードフォワード量を徐々に収束させる時間を規定する時定数をTf、前記フィードフォワード量の総量を規定するパラメータをKx、ラプラス演算子をsとしたとき、前記フィードフォワード量をKxs/(1+Tfs)2により算出し、
    前記フィードフォワード修正部は、予め規定された操作量上下限値と外乱印加前の整定時の前記第1の操作量との差を余裕量MV_Cとしたとき、前記時定数Tfの設定をKx/(2.718MV_C)に変更することを特徴とする制御装置。
  3. 設定値と制御量とを入力として第1の操作量をフィードバック制御演算により算出する第1のステップと、
    外乱の印加前に有意の値となり外乱の印加後に非有意の値となるトリガー信号の入力に応じて、前記外乱の抑制に必要なフィードフォワード量を算出する第2のステップと、
    前記第1の操作量に前記フィードフォワード量を加算する第3のステップと、
    前記第1の操作量に前記フィードフォワード量を加算した第2の操作量を制御対象に出力する第4のステップと、
    前記制御量の変化に基づいて外乱印加を検出する第5のステップと、
    前記トリガー信号が入力されていない状態で前記外乱印加が検出された場合に、フィードフォワード制御の初期時点における前記フィードフォワード量の配分が前記トリガー信号が入力された状態で前記外乱が印加された場合よりも多くなるように、前記第1の操作量の余裕に応じて設定変更を行なう第6のステップと、
    前記トリガー信号が入力されていない状態で前記外乱印加が検出された場合に、前記設定変更がなされた後に前記フィードフォワード量の算出を開始する第7のステップとを含むことを特徴とする制御方法。
  4. 請求項3記載の制御方法において、
    前記第2のステップと前記第7のステップは、前記フィードフォワード量を徐々に収束させる時間を規定する時定数をTf、前記フィードフォワード量の総量を規定するパラメータをKx、ラプラス演算子をsとしたとき、前記フィードフォワード量をKxs/(1+Tfs)2により算出するステップを含み、
    前記第6のステップは、予め規定された操作量上下限値と外乱印加前の整定時の前記第1の操作量との差を余裕量MV_Cとしたとき、前記時定数Tfの設定をKx/(2.718MV_C)に変更するステップを含むことを特徴とする制御方法。
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