JP2022053150A - ポリエステルフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】柔軟性と生産性を両立する薄膜のポリエステルフィルムを提供する。【解決手段】厚みが0.5~5μmであるポリエステルフィルムであって、粒子をフィルム全体に対して0.5~20重量%含有しており、当該粒子の粒度分布測定を行い、横軸を粒径、縦軸を粒子の存在比率としてプロットしたときに得られる粒子の存在比率のチャートにおいて0.3~5μmに少なくとも1つ以上の極値を有し、密度が0.6~1.2g/cm3であるポリエステルフィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、柔軟性と生産性を両立する薄膜のポリエステルフィルムに関する。
ポリエステルはその加工性の良さから、様々分野に利用されている。また、これらポリエステルをフィルム状に加工した製品は工業用途、光学製品用途、包装用途、民生用途など今日の生活において重要な役割を果たしている。
昨今の感染症流行の影響を受けて、ポリエステルフィルムを用いたカバーやパーテーションが接触感染・飛沫感染予防のため用いられている。
例えば、表面に抗菌剤を塗布し粘着剤によって共用の機器やドアノブ・壁に添付し、細菌やウイルスの繁殖を防ぐフィルムが提案されている(特許文献1および特許文献2)。また、共用の機器やパーテーション、フェイスシールドとして用いられるフィルムが提案されている(特許文献3)。
特開2020-128555号公報 特開2020-40358号公報 特許第6695734号公報
特許文献1および特許文献2に記載されているようなフィルムでは、不特定多数が接触すること共用部位の菌の付着有無は民間人では把握することが困難であり、接触感染の不安はぬぐえないといった課題があった。また、特許文献3に記載されているようなシートはフィルムが厚いため柔軟性に乏しく日常生活で接触感染対策として用いることができる範囲が限定的であることや、廃棄する際の環境対策(例えばCO排出量の低減)が不十分であるためシートが汚染された場合に気安く交換できないといった課題があった。
本発明の課題は、上記した問題を解決することにある。すなわち、柔軟性と生産性を両立する薄膜のポリエステルフィルムを提供することである。
厚みが0.5~5.0μmであるポリエステルフィルムであって、粒子をフィルム全体に対して0.5~20重量%含有しており、当該粒子の粒度分布測定を行い、横軸を粒径、縦軸を粒子の存在比率としてプロットしたときに得られる粒子の存在比率のチャートにおいて0.3~5.0μmに少なくとも1つ以上の極値を有し、密度が0.6~1.2g/cmであるポリエステルフィルムである。
本発明のポリエステルフィルムは、柔軟性と生産性を両立し、薄膜で廃棄時の環境負荷が少ないことから、医療機関・公共機関・オフィス・家庭での感染予防フィルムあるいは防汚フィルムとして好適に用いることができる。
本発明でいうポリエステルとは、ジオール構成成分とジカルボン酸構成成分の縮重合により得られる樹脂である。本発明において、構成成分とはポリエステルを加水分解することで得ることが可能な最小単位のことを示す。ジオール構成成分とは、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコールなどが挙げられる。また、ジカルボン酸構成成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸、もしくはそのエステル誘導体などが挙げられるがこれに限定されない。ポリエステルの具体的な例としては、ポリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレン-p-オキシベンゾエート、ポリ-1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレートを挙げることができる。本発明に用いるポリエステルはホモポリマーでもよいしコポリマーであってもよい。また、上記のポリエステルを2種類以上ブレンドして用いてもよい。ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂のジオール構成成分として、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4―ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-シクロヘキシレンジメタノールから選ばれる少なくとも2種を含むと、柔軟性が良好となるため好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは上記のポリエステルの内、ポリエチレンテレフタレート(PET)主成分として用いることが生産性の観点から好ましい。ここで主成分とするとはフィルムを構成する成分のうち60重量%以上を占める成分をさす。ここでいう主成分として用いるPETとは、ジカルボン酸構成成分としてテレフタル酸を最も多く含み、ジオール構成成分としてエチレングリコールを最も多く含むポリエステルを表す。
本発明のポリエステルフィルムの主成分としてPETを用いる場合、ジオール構成成分としてはエチレングリコールを含むが、エチレングリコール以外のグリコール成分を含んでいることが好ましい。エチレングリコール以外のグリコール成分として例えば、クロルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、4、4´-ジヒドロキシビフェニル、4、4´-ジヒドロキシジフェニルスルフォン、4、4´-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4、4´-ジヒドロキシベンゾフェノン、p-キシレングリコールなどの芳香族ジオール、1、3-プロパンジオール、1、4-ブタンジオール、1、6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1、4-シクロヘキサンジメタノールなど、1、4-ブタンジオール、1、6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族、脂環式ジオールを挙げることができる。
本発明のポリエステルフィルムの主成分としてPETを用いる場合は、ジカルボン酸構成成分としてテレフタル酸を含むが、テレフタル酸以外のジカルボン酸構成成分をさらに含むことが好ましい。テレフタル酸以外のジカルボン酸構成成分としては、例えばナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニルスルフォンジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、4、4´-ジフェニルジカルボン酸、3、3´-ジフェニルジカルボン酸、などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、コハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、1、3-アダマンタンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸が挙げられ、上記の中から選ばれる少なくとも1種以上を共重合することが好ましい。上記の中でもイソフタル酸をテレフタル酸以外のジカルボン酸構成成分として含むと、ポリエステルフィルムを構成する樹脂の結晶性および後述するフィルムの軟化性を効率よく制御することができるため特に好ましい。
また、さらに上記のジカルボン酸構成成分、ジオール構成成分以外にも、p-ヒドロキシ安息香酸、m-ヒドロキシ安息香酸、2、6-ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸や、p-アミノフェノール、p-アミノ安息香酸などを本発明の目的を損なわない程度の少量であればさらに含んでいてもよい。
本発明のポリエステルフィルムの主成分としてPETを用いる場合において、ジカルボン酸構成成分の一部にテレフタル酸以外のジカルボン酸構成成分を共重合させる場合、その共重合成分の組成比はポリエステル樹脂のジカルボン酸成分全体100mol%とした場合に10~35mol%であることが好ましい。上記の共重合比とすることでポリエステルフィルムを構成する樹脂の結晶性および後述するフィルムの軟化性を効率よく制御し、製膜および加工に適する範囲とすることができる。共重合成分の組成比が10mol%を下回るとポリエステルフィルムを実用した際に十分な加工性が発現できない場合やフィルムの加工性が低下する場合がある。共重合成分の組成比が35mol%より多くなると製膜性が劣り生産性が低下する場合がある。ポリエステルフィルム中の組成物はフィルム自体を溶媒抽出した後、プロトン核磁気共鳴分光法(H-NMR)やカーボン核磁気共鳴分光法(13C-NMR)によって分析を行うことができる。
本発明のポリエステルフィルムは、本発明の効果を損なわない範囲でフィルムを構成する樹脂組成物として添加剤を配合して使用することも可能である。かかる添加剤の具体例としては有機化合物、熱分解防止剤、熱安定剤、可塑剤、光安定剤および酸化防止剤などが挙げられる。
本発明のポリエステルフィルムの主成分にPETを用いる場合、ポリブチレンテレフタレート(PBT)を好ましくは1~40重量%、より好ましくは5~30重量%を含むことが好ましい。上記の濃度のPBTを含有することでPBTが可塑化効果を発現し製膜性と柔軟性を向上することができる。PBTが1重量%より少なくなると、ポリエステルフィルムとしての柔軟性に劣る場合がある。PBTが40重量%よりも多くなるとフィルムとして結晶化しやすくなり製膜の際に破れやすくなるため生産性に劣る場合がある。ポリエステルフィルム中のPBTのブレンドの有無およびその濃度は赤外分光分析で確認することができる。本発明のポリエステルフィルムにPBTを含める方法は特に限られるものでは無いが、特にPBTを溶融混錬にて主成分となるPETにブレンドする方法がPBTの配合による柔軟性向上効果が最も高くなることから好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、有機粒子および/また無機粒子を含有する。本発明で用いる有機粒子としてはメラミン樹脂、ポリスチレン、有機シリコーン樹脂、アクリル-スチレン共重合体等の有機粒子が挙げられる。また本発明のポリエステルフィルムに用いる無機粒子としてはアルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄などの酸化物系セラミックスや窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の窒化物系セラミックス、シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリンクレー、カオリナイト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂等のセラミックス、ガラス繊維等のなどの無機化合物があげられる。用いる粒子は1種でもよく、複数種を混合して用いてもかまわない。フィルム中に含まれる粒子の種類はフィルムの断面について赤外分光分析や蛍光分光分析を行うことで確認できる。
本発明のポリエステルフィルムは、粒子をフィルム全体に対して0.5~20質量%含有する。粒子種としては特に限られるものでは無く、有機粒子、無機粒子を用いることができる。上記の濃度の粒子をフィルムに含有することでフィルム中に効率的に空孔を形成することができフィルムに柔軟性を付与することができる。粒子の含有量が0.5質量%を下回ると空孔が形成されにくく、柔軟性が低下する場合がある。粒子の含有量が20質量%を超えるとフィルム中の樹脂量が低下することから延伸時に破れやすくフィルムの製膜性が低下する場合がある。粒子の含有量は3~15質量%であることが好ましく、5~15質量%であることがより好ましい。
本発明のポリエステルフィルムに含まれる粒子の粒度分布測定を行った際に、横軸を粒径、縦軸を粒子の存在比率としてプロットしたときに得られる粒子の存在比率のチャートは0.3~5.0μmに少なくとも1つ以上の極値を有する。この極値を有する粒子を用いることでポリエステルフィルムの製膜性を損なうことなく密度を低減することができる。極値が0.3μmよりも小さいとフィルムの原料として用いた際に溶融押出時に粒子が凝集しやすくなるため異物が増加し製膜性が低下する場合がある。極値が5.0μmより大きくなるとフィルムの厚みに対して粒子が大きく粒子自体が製膜中の破れを誘発するため好ましくない。極値の範囲は0.3~3.0μmであることがより好ましく、0.5~3.0μmであることがさらに好ましい。フィルムに含まれる粒子の含有量および粒度分布の極値は後述する分析手法にて確認することができる。
本発明のポリエステルフィルムに用いられる粒子は、レーザー回折法(粒子にレーザービームを照射することで得られる回折光の強度分布を解析して粒子径を求める手法)によって得られる粒度分布(累積分布)の中央値に対応する50%数値の粒子径(D50:メジアン径)が0.3~5.0μmであることが好ましく、0.3~3.0μmであることがより好ましく、0.5~3.0μmであることがさらに好ましい。
本発明のポリエステルフィルムに用いる粒子は、粒度分布測定で得られる累積分布の90%数値の粒子径(D90)が5.0μm以下であることが好ましく、3.0μm以下であることがより好ましい。D90が上記の範囲を満たすことで、粒度分布の幅を狭くでき、延伸時の応力分散を均一化できることから微小な空孔の発生を抑制することができる。D90が5.0μmよりも大きくなると、延伸時に応力集中しやすい大径粒子の含有率が増加することから、延伸の不均一化が起こり、延伸応力が伝達されにくい小径粒子の近傍に微小な空孔が増加し、機械特性が低下する場合がある。D90の下限は粒子径の均一化の観点からD50に近ければ近いほど好ましい。(
本発明のポリエステルフィルムに含まれる粒子の粒度分布測定で得られる累積分布の90%数値の粒子径(D90)と50%数値の粒子径(D50)との比(D90/D50)は6.0以下であることが好ましく、3.0以下であることが好ましい。D90/D50を上記の範囲とすることで粒度分布の幅を狭くでき、延伸時の応力分散を均一化でき、効率よくフィルム中に空孔を形成し密度を低減することができる。D90/D50が5.0よりも大きくなると、含まれるD90以上の粒子の周辺に延伸時の応力が集中し、D50よりも小径側の粒子への応力の均一伝搬が困難となり、空孔形成による密度の低減が抑制される場合がある。D90/D50の下限は粒子径の均一化の観点から1に近ければ近いほど好ましい。フィルムに含まれる粒子の粒度分布測定で得られる累積分布の50、90%数値の粒子径は後述する手法を用いて確認することができる。
本発明のポリエステルフィルムは、後述する測定方法において求められる示差走査熱量測定(DSC)の1st run昇温過程において1つ以上の融解ピーク(Tm)を有することが好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、後述する測定方法において求められる示差走査熱量測定(DSC)の1st run昇温過程において観察される最も高い融点(融点ピークのピークトップ温度)が250℃以下であることが好ましい。最も高い融点を250℃以下とすることで加工性を向上せしめることができる。より好ましくは245℃以下であり、さらに好ましくは240℃以下であり、特に好ましくは180℃以上235℃以下である。
本発明のポリエステルフィルムは、任意の方向およびその直角方向の二軸に延伸した二軸配向フィルムであることが好ましい。二軸配向させることでフィルムの平面性および耐熱性を改善し、加工性を向上させることができる。二軸配向フィルムを得る方法としては、逐次二軸延伸法(長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行う方法などの一方向ずつの延伸を組み合わせた延伸法)、同時二軸延伸法(長手方向と幅方向を同時に延伸する方法)、又はそれらを組み合わせた方法が挙げられる。中でも逐次二軸延伸法が生産性の観点から特に好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは厚み(μm)と単位面積当たりの重量(g)から算出される密度が0.6~1.2g/cmである。上記の密度を有することで、フィルムの単位面積当たりに含まれる樹脂量を低減し、フィルムに効率よく柔軟性を付与することができる。密度が1.2g/cmを上回ると体積当たりの樹脂量が上昇し、屈曲した際に弾性率が上昇しフィルムのごわつく場合がある。また、密度が0.6g/cm以下となるとフィルム中の樹脂量が極端に低下するため製膜時に破れが発生しやすくなり生産性が低下する場合がある。ポリエステルフィルムの密度は0.6~1.0g/cmであることがより好ましく、0.7~1.0g/cmであることがより好ましい。フィルムの密度は前述する処方にて二軸延伸することで達成できる。フィルムの密度は後述する手法で評価することができる。
本発明のポリエステルフィルムは、厚みが0.5~5.0μmである。0.5μm以上3.0μm以下であることがより好ましい。上記の範囲とすることでフィルムを実用性と環境負荷の低減を両立することができる。フィルムの厚みは製膜条件で調整することができる。また厚みは後述する手法で評価することができる。
本発明のポリエステルフィルムはフィルムの任意の方向とそれに直行する方向の25℃65%RHにおける引張弾性率の平均値が1.0~3.0GPaであることが好ましく、1.0~2.5GPaであることがより好ましく、1.5~2.2GPaであることがさらに好ましく、1.5~2.0GPaであることが特に好ましい。上記の引張弾性率を有すること柔軟性が発現しフィルムの手触りを向上することができる。引張弾性率が3.0GPaを超えるとフィルムの柔軟性が低下しフィルムを実用した際にごわつきや手触りが損なわれる場合がある。フィルムの引張弾性率が1.0GPaを下回ると、フィルム自体が脆化し実用時に破断する場合がある。フィルムの引張弾性率を上記の範囲にするためには前述する処方を用いることで達成できる。フィルムの引張弾性率は後述する手法で評価することができる。
本発明のポリエステルフィルムは、フィルム1cmを燃焼した際に排出されるCO発生量が4.5×10-2mgCO/cm以下であることが好ましく、3.5×10-2mgCO/cm以下であることがより好ましく、3.0×10-2mgCO/cmであることが特に好ましい。燃焼時のフィルムからのCO発生量はフィルム廃棄時の環境負荷に比例する。燃焼時のCO発生量を低減することで環境保護に貢献することができる。ポリエステルフィルム1cmあたりのCO発生量が4.5×10-2mgCO/cmより大きくなると、従来のPETフィルム同等の環境負荷を有することとなるため好ましくない。COの発生量の下限値は好ましくは0mgCO/cmである。フィルム1cmを燃焼した際のCO発生量を前述の範囲とするために前述する処方の適用と二軸延伸による密度の低減によって達成できる。フィルム1cmを燃焼した際のCO発生量は後述する手法にて評価できる。
本発明のポリエステルフィルムは、単層で構成されてもよいし2層以上の積層構成を有することもできる。2層以上の層構成を有する場合、異なる組成(例えば組成(I)および組成(II))からなるとすると、積層構成としては(I)/(II)の2層、(I)/(II)/(I)、(II)/(I)/(II)、(II)/(I)/(II)/(I)、(II)/(I)/(II)/(I)/(II)などの多層構成が挙げられるが、これに限定されない。また、(I)~(II)とは異なる組成からなる層をさらに追加した層構成にすることもできる。
本発明のポリエステルフィルムは構成する少なくとも1つ以上の層に抗菌剤を含むことが好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは表面の片面または両面に上記以外のフィルムやフィルムとは異なる素材と複合して用いることもできる。本発明のポリエステルフィルムと複合することのできる素材としては、樹脂製フィルム、繊維シート、各種コーティング層、粘着剤や接着剤、樹脂および/または金属成形体などが例として挙げられるがこれに限定されない。
本発明のポリエステルフィルムの製造方法について、ポリエステルフィルムを構成する樹脂としてPETを用いる処方例を挙げて説明するが、本発明はこの例に限定されるものではない。
本発明に用いられるポリエステルを得る方法としては、常法による重合方法が採用できる。例えば、テレフタル酸等のジカルボン酸構成成分またはそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコール等のジオール構成成分またはそのエステル形成性誘導体、およびそれらを複数種類混合したものを、公知の方法でエステル交換反応あるいはエステル化反応させた後、溶融重合反応を行うことによって得ることができる。また、必要に応じ、溶融重合反応で得られたポリエステルを、ポリエステルの融点温度以下にて、固相重合反応を行っても良い。
上記で得られたポリマーと子を任意の割合で混合し230~260℃に設定したベント付き押出機に投入してストランド状に溶融押出し、温度25℃の水で冷却した後、カッティングしてチップを作製し、粒子を含有する原料とする。このとき粒子の添加濃度は前述に示す濃度で配合する。この粒子を含む原料を必要に応じて110~180℃にて3時間減圧下で乾燥した後に加熱されたフルフライトの単軸押出機に供給しフィルターに通過させた後、その溶融ポリマーをTダイの口金を用いてシート状に吐出する。この時シリンダー・フィルター温度およびスクリューアレンジを調整し、Tダイから押し出した樹脂の樹脂温の実測値を示差走査熱量測定(DSC)の1st run昇温過程において観察される最も高い融点より5~30℃高い温度にすることが好ましい。240~260℃にすることが好ましく、240~250℃にすることがより好ましい。樹脂温を前述の範囲に調整することで樹脂の溶融押出前後での熱特性の変化を抑制できる。このシート状物を表面温度20~70℃の冷却ドラム上に密着させて冷却固化し、実質的に無配向状態の未延伸フィルムを得る。次に上記で得られた未延伸フィルムを二軸延伸した後、1段もしくは多段熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。二軸に延伸する方法としては、逐次二軸延伸法(長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行う方法などの一方向ずつの延伸を組み合わせた延伸法)、同時二軸延伸法(長手方向と幅方向を同時に延伸する方法)、又はそれらを組み合わせた方法を用いることができる。ここでは、最初に長手方向、次に幅方向の延伸を行う逐次二軸延伸法を例示する。未延伸フィルムを{(ポリエステルのTg}-10℃)}~Tgの範囲で予熱した後、Tg~(Tg+30)℃、好ましくは(Tg)~(Tg+15)℃の範囲にて加熱ロールで加熱しながらフィルムの長手方向(MD方向)に3.0~6.0倍、より好ましくは3.5~5.0倍に1段もしくは2段以上の多段で延伸する(MD延伸)。その後20~50℃の冷却ロール群で冷却する。
MD延伸に続く幅方向(TD方向)の延伸方法としては、例えば、テンターを用いる方法が一般的である。一軸に延伸したフィルムの両端部をクリップで把持して、テンターに導き、幅方向の延伸を行う(TD延伸)。延伸時に十分に配向させ、平面性を向上させる観点から延伸温度はTg~(Tg+30)℃が好ましく、より好ましくは(Tg)~(Tg+15)℃の範囲で3.0~6.0倍、好ましくは3.5~5.0倍に延伸することが好ましい。
次に、この延伸フィルムを緊張下で熱固定する操作(熱固定処理)を行う。熱固定処理の温度は熱処理ゾーンの始終で同一温度にて加熱処理を行う1段熱固定または熱処理ゾーンの前半と後半で異なる温度で加熱処理を行う多段熱固定の何れかで処理を行う。熱固定温度はポリエステルのTg+10~ポリエステルの最も高い融点-10℃であり、好ましくはポリエステルのTg+20℃~ポリエステルの最も高い融点-20℃である。上記の温度とすることで効率的に熱収縮率を低下するとともに良好な平面性を保つことができる。熱固定温度がポリエステルの最も高い融点-10℃を超えるとポリエステルフィルムを構成するポリエステルが融解し、製膜の際にフィルムの両端を固定するクリップに融着し、延伸装置からフィルムを採取することが困難となる場合がある。また熱固定温度がポリエステルのTgを下回ると、熱固定処理時にフィルムの結晶化が進まずフィルムの平面性が悪化する場合がある。熱固定処理後は、フィルムを室温まで、必要ならば、長手および幅方向に好ましくは0~15%の弛緩処理を施しながら、フィルムを冷やして巻き取り、二軸配向フィルムを得る。
本発明のポリエステルフィルムは、医療・公共機関・オフィス・家庭での感染予防・防汚フィルムとして好適に用いることができる。
[特性の測定方法]
(1)ポリエステルフィルムの融点Tm(℃)
JIS K7121-1987に従って示差走査熱量計として、セイコーインスツルメンツ社製DSC(RDC220)、データ解析装置として同社製ディスクステーション(SSC/5200)を用いて、任意の箇所から試料5mg切り出し、大気雰囲気下でアルミニウム製受皿上で室温から300℃まで昇温速度10℃/分で昇温する(1st Run)。1st RunのDSCチャートからガラス転移点Tg(℃)、融解の吸熱ピークのピークトップ温度(融点Tm(℃))を読み取った。
(2)厚み(μm)
フィルム厚みは、ダイヤルゲージを用い、JIS K7130(1992年)A-2法に準じて、フィルムを10枚重ねた状態で任意の5ヶ所について厚さを測定した。その平均値を10で除してフィルム厚みとした。
(3)フィルムの構成成分量
試料50mgを秤量し、重ヘキサフルオロイソプロパノール0.21ml/重クロロホルム0.49mlを加えて溶解させた溶液を測定試料として、ECA-400((株)JEOL RESONANCE製)を用いてH-NMRを測定する。各構成成分に帰属されるプロトンピークの面積からモル比率を算出し、ジオール構成成分の合計とジカルボン酸構成成分の合計がそれぞれ100mol%となるようにして構成成分量(mol%)を求める。
(4)フィルムに含まれる粒子濃度、粒度分布測定
a.粒子濃度
フィルムを秤量したるつぼに入れた後、再度秤量し、サンプルの加熱前の重量を秤量する。次にサンプルが入ったるつぼをマッフル炉(ヤマト科学社製)にて500℃/6hで加熱しサンプルを灰化さる。るつぼを冷却した後に秤量し、加熱後の重量をはかりとり、加熱前後の重量を下記式に挿入し、フィルムに含まれる粒子濃度を算出した。測定はn=3で実施し、その平均値をそのサンプルの粒子濃度とした。また、試料量は残存物の質量が100~200mgの範囲となるように調整した。
粒子濃度(質量%)=加熱後の重量(mg)/加熱前の重量(mg)×100。
b.粒子の存在比率のチャートの極値および累積分布の50、90%数値の粒子径
a.で得られた残存物を精製水と混合し、透過率が90%前後になるように調整した。この分散液をレーザー光回折散乱粒度分布測定装置(マイクロトラックMT3000、日機装製)をもちいて、レーザー光波長780nm、測定温度25℃の条件にて、測定前に超音波処理を4分間行なったのちJIS Z8825-1:2001に準じて測定し、サンプルの粒度分布より粒子径の極値を、累積分布より5%、50%、90%数値の粒子径(D5、D50、D90)を求めた。
(6)フィルムの密度
フィルムを100×100mm角に切取り、(2)の方法で厚みを測定する。また、このフィルムを直示天秤にて秤量し、重さw(g)を10-4gの単位まで読み取る。下記の式で計算される値を密度とする。評価はn=5で行い、その平均値をそのサンプルの密度とした。
密度=w/d×100 (g/cm)。
(7)フィルムの弾性率
フィルムの任意の方向およびそれに直交する方向の2方向それぞれについて、幅10mm×試長間100mm の短冊上のサンプルを切り出した。切り出したサンプルをオリエンテック(株)製フィルム強伸度自動測定装置“テンシロンAMF/RTA-100”にてASTM-D882に規定された方法に従って、引張り速度:300mm/分で25℃・65%RHの環境下で引張試験時の弾性率を求めた。評価は各方向についてそれぞれ10回測定を行い、その平均値をそのサンプルの弾性率(GPa)とした。
(8)フィルムの製膜性(生産性)
実施例および比較例に記載の製膜を10時間連続して行い、フィルム破れ(縦延伸時の破断および横延伸、熱固定処理時のいずれも含む)の発生回数を以下の基準で判定し生産性を確認した。
A:破れなし
B:破れの発生頻度が1~5回
C:破れの発生頻度が6回以上
製膜不可:二軸延伸による製膜が不可であった。
(9)フィルム1cmあたりの燃焼時のCO発生量(mgCO/cm
自動試料燃焼装置 マクロシステム(株式会社三菱化学アナリテック製、AQF-2100M)を用いてJIS K7217A(1983)に準拠した条件にて測定を行った。試料は0.1gを秤量し、燃焼温度は750℃、支燃焼ガス(空気)の流量は0.5L/minにて保持時間10分にてサンプルを燃焼させ、発生したガスをガス捕集袋に補修し、ガスクロマトグラフ質量分析計(アジレントテクノジー株式会社製、5977B GC/MSD)を用いてCO量を分析した。測定は各サンプルで3回ずつ実施し、その平均を1gあたりに換算しその値をフィルム1gを燃焼した際のCO発生量(mgCO/g)を求めた。得られた数値を下記式にあてはめ、フィルム1cmあたりの燃焼時のCO発生量を算出した。
フィルム1cmあたりの燃焼時のCO発生量(mgCO/cm)=フィルム1gを燃焼した際のCO発生量(mgCO/g)×密度(g/cm)×厚み(cm)
(参考例1)PET1-1原料
エチレングリコール100重量部、テレフタル酸ジメチル125重量部、イソフタル酸ジメチル31重量部を出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.11重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去と共に徐々に反応温度を上昇させ3時間後に230℃とした。4時間後実質的にエステル交換反応の終了したこの反応混合物にリン酸トリメチル0.04重量部、三酸化アンチモン0.04重量部を加えて、温度を230℃から徐々に280℃まで昇温し一方で圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとなるように調整し重縮合反応を行った。反応開始後4時間を経た時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させてジカルボン酸構成成分全体に対するイソフタル酸成分の含有量が20mol%のPET-1原料のチップを得た。ポリエステルの固有粘度は0.60dl/gであった。
(参考例2)PET1-2原料
エチレングリコール100重量部、テレフタル酸ジメチル156重量部を出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.11重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去と共に徐々に反応温度を上昇させ3時間後に230℃とした。4時間後実質的にエステル交換反応の終了したこの反応混合物にリン酸トリメチル0.04重量部、三酸化アンチモン0.04重量部を加えて、温度を230℃から徐々に280℃まで昇温し一方で圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとなるように調整し重縮合反応を行った。反応開始後4時間を経た時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させてPET-2原料のチップを得た。ポリエステルの固有粘度は0.60dl/gであった。
(実施例1)
参考例1得たPET-1原料と99質量%と、粒子として後述するSiO-1 1質量%を計量した後ドライブレンドし、ベント付き同方向回転式二軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に供給し、ダイスから吐出された樹脂の溶融状態での樹脂温が250℃になるように押出条件を調整しストランド状に吐出し、25℃の水でペレタイズして温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてペレットを得る。得られたペレットを140℃で3時間減圧乾燥した後、フルフライトの単軸押出機に供給した。次いで押出機で溶融したポリマーを10μmカットフィルターで濾過した後、Tダイの口金から溶融押出した後、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、厚み45μmの未延伸シートを作製した。この時、口金から吐出される樹脂の溶融状態での樹脂温が250℃となるように押出機・フィルターの温度を調整した。次いで、得られた未延伸シートを、表面温度70℃に加熱された複数の加熱ロールで予熱した後、表面温度75℃に加熱された加熱ロールと、加熱ロールの次に設けられた周速の異なる30℃の冷却ロールとの間で長手方向(MD方向)に4.0倍延伸した。このようにして得られた1軸延伸シートを、テンターを用いて長手方向と垂直方向(TD方向)に80℃の温度で4.0倍に延伸し、続いて100℃の熱処理を行い、二軸に延伸した厚み2.0μmのポリエステルフィルムを作製した。
(実施例2~8、比較例2~3)
表1に示す濃度・組み合わせでPET-1原料と粒子を計量した以外は実施例1と同様にして2.0μmのポリエステルフィルムを作製した。
(実施例9)
参考例1で得たPET-1原料 81質量%とSiO-1 10質量%とPBT(東レ(株)製、”トレコン”(登録商標)1200M、MFR8g/10min)9質量%を計量した以外は実施例1と同様にして厚み2.0μmのポリエステルフィルムを作製した。
(比較例1)
参考例1で得たPET-1原料を140℃で3時間減圧乾燥した後、フルフライトの単軸押出機に供給した以外は実施例1と同様にして厚み2.0μmのポリエステルフィルムを作製した。
(比較例4)
参考例2で得たPET-2原料を180℃で3時間減圧乾燥した後、280℃に加熱したフルフライトの単軸押出機に供給した。次いで押出機で溶融したポリマーを10μmカットフィルターで濾過した後、Tダイの口金から溶融押出した後、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、厚み200μmの未延伸シートを作製した。次いで、得られた未延伸シートを、表面温度75℃に加熱された複数の加熱ロールで予熱した後、表面温度85℃に加熱された加熱ロールと、加熱ロールの次に設けられた周速の異なる30℃の冷却ロールとの間で長手方向(MD方向)に4.0倍延伸した。このようにして得られた1軸延伸シートを、テンターを用いて長手方向と垂直方向(TD方向)に90℃の温度で4.0倍に延伸し、続いて100℃の熱処理を行い、二軸に延伸した厚み10.0μmのポリエステルフィルムを作製した。
(参考例3、4)
表1に示す濃度・組み合わせでPET-1原料と粒子を計量した以外は実施例1と同様に2軸延伸による製膜を試みたが、破れが頻発しフィルム採取は不可であった。
実施例1~9、比較例2~3、参考例3~4で使用した粒子を下記に示す。
SiO-1:株市会社アドマテックス製、SC4500(D50=1.1μm、D90=2.7μm
SiO-2:株市会社アドマテックス製、SOC2(D50=0.5μm、D90=1.1μm)
SiO-3:デンカ株式会社製、SFP30(D50=0.6μm、D90=2.8μm)
SiO-4:株市会社アドマテックス製、SOC1(D50=0.3μm、D90=0.5μm)
SiO-5:株市会社アドマテックス製、FE9(D50=6.1μm、D90=11.0μm)
BaSO-1:堺化学工業株式会社制、B55(D50=0.6μm、D90=1.1μm)
BaSO-2:堺化学工業株式会社制、BMH40(D50=5.0μm、D90=8.5μm)
BaSO-3:堺化学工業株式会社制、BARIFINE-BF(D50=0.1μm、D90=11μm)
実施例1~9、比較例1~4で採取したポリエステルフィルムの評価結果を表1に示す。
Figure 2022053150000001

Claims (5)

  1. 厚みが0.5~5.0μmであるポリエステルフィルムであって、粒子をフィルム全体に対して0.5~20重量%含有しており、当該粒子の粒度分布測定を行い、横軸を粒径、縦軸を粒子の存在比率としてプロットしたときに得られる粒子の存在比率のチャートにおいて0.3~5.0μmに少なくとも1つ以上の極値を有し、密度が0.6~1.2g/cmであるポリエステルフィルム。
  2. 前記粒子の粒度分布測定で得られる累積分布の90%数値の粒子径(D90)と50%数値の粒子径(D50)との比(D90/D50)が6.0以下である、請求項1に記載のポリエステルフィルム。
  3. 粒子の含有量がフィルム全体に対して5~15質量%である、請求項1または2のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  4. ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂のジオール構成成分として、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4―ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-シクロヘキシレンジメタノールから選ばれる少なくとも2種を含む請求項1~3のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  5. 感染予防フィルムまたは防汚フィルムに用いられる請求項1~4のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
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