JP2022049740A - 鍵盤楽器、鍵盤楽器の製造方法及び部材 - Google Patents
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Abstract
Description
このような光沢感を有する部材を外装各部に用いることにより、鍵盤楽器等の外観を高級感のあるものとすることができる。
また、一般的に基材に光沢加工を施す手法として、基材に光沢シートを貼着する手法も知られている。
このため、特に面積の広い面を有する鍵盤楽器用部材を製造する場合には、光沢加工にかなりの時間と手間を要し、コストが増加するとともに発注から納期までにかかる時間(L/T;リードタイム)が長くなるという問題がある。
また、一繋がりのシートを基材の表面及び側面等に一体的に貼る場合、一繋がりのシートで覆われた稜線部分(角稜線)にはシートの隙間を生じないが、基材の全面を1枚のシートで隙間なく被うことはできないため、例えば裏面と側面との間等、いずれかの稜線部分(角稜線)にシートの隙間が生じるおそれがある。
さらに、一繋がりのシートで覆われた稜線(角稜線)部分においてシートが浮いてしまい、きれいな仕上がりとならないおそれもある。またこのような稜線(角稜線)部分での浮き上がりを防ぐためにシートを伸ばしながら貼ると、側面等におけるシートの光沢度が著しく落ちて意匠性を損なうおそれがある。
第1の面と、前記第1の面に隣接する第2の面と、を有する基材と、
前記基材の前記第1の面側に貼着されている貼着部材と、
前記基材の前記第2の面側及び、前記貼着部材の貼着面とは異なる側面側に設けられている塗膜と、
を備える塗膜ことを特徴とする。
基材の第1の面側に貼着部材を貼着する貼着工程と、
前記基材の前記第1の面に隣接する第2の面側及び、前記貼着部材の貼着面とは異なる側面側に、塗料を積層させる塗装工程と、
を含むことを特徴とする。
第1の面と、前記第1の面に隣接する第2の面と、を有する基材と、
前記基材の前記第1の面側に貼着されている貼着部材と、
前記基材の前記第2の面側及び、前記貼着部材の貼着面とは異なる側面側に設けられている塗膜と、
を備えることを特徴とする。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。すなわち、基材の第1の面にシート等が貼着され、前記基材の第2の面に塗装されることにより塗膜が配置される部材(ハイブリッド部材ともいう)及び、このような部材を含んでいれば、用途は鍵盤楽器に限定されず、その他の装置や機器等であってもよく、家具や道具等であってもよい。
図1に示すように、本実施形態の鍵盤楽器100は、複数の鍵11を備える楽器本体1と、この楽器本体1を収容する外装部2と、を備えている。
譜面立て3a、本体側板3b、脚部3c、脚部側板3d等は光沢感のある仕上がりとすることが好ましい光沢部材である。このため、本実施形態では、譜面立て3a、本体側板3b、脚部3c、脚部側板3d等の光沢部材に適用される後述の貼着部材35として、表面に光沢感を有する光沢シート部材が適用される。また、後述する塗膜35も表面に光沢感が出るような仕上がりとする。
第1の面32a,32bと第2の面33との間には稜線34(角稜線)が形成される。
また、図4(a)は、図2(b)における矢視A方向から基材を見た場合の側面図であり、図4(b)は、図3(a)における矢視B方向から基材を見た場合の側面図である。
図2(a)は、鍵盤楽器用部材としての各形状に切出される前の状態の基材を例示したものである。なお、図2(a)では、基材31の一部分のみを切り欠いて示している。
図4(a)及び図4(b)に示すように、基材31における第1の面は、板表面32a(図2(b)及び図3(a)において図面に現れている面)及び板裏面32bである。
基材31は、第1の面である板表面32a及び板裏面32bに後述の貼着部材35を貼着した後、図2(b)や図3(a)に例示するように、鍵盤楽器用部材3としての各形状に切出される。図2(b)では、譜面立て3aとして切り出された鍵盤楽器用部材3の例を示し、図3(a)では、本体側板3bとして切り出された鍵盤楽器用部材3の例を示している。
第2の面33は、このような各形状に切出された状態の基材31において、第1の面32a,32bに隣接する面である。図2(b)や図3(a)に示すように、第2の面33は、第1の面32a,32bと交わり第1の面32a,32bとの間で稜線(角稜線)34を形成する面である。
本実施形態において、第1の面である板表面32a及び板裏面32bは、第2の面33よりも表面積が広くなっている。
塗装を施すことで光沢感を出すためには手間やコストがかかる。特に塗装によって広い範囲に均一に光沢を出すことは難しい。このため、塗装を施す面はなるべく狭い方が好ましい。
他方で、貼着部材35を細かい部分に貼着するのは手間がかかり、効率が悪い。また切断面等では切断を行っていない面よりも表面が粗くなっている。このため、貼着部材35を貼っても貼着面の凹凸等を拾いやすく、美しい仕上がりとなりにくい。このような面においては塗装によって塗膜38を形成し、表面を覆う方が光沢感のある仕上がりとすることができる。
このため本実施形態では、基材31の板表面32aや板裏面32bを、貼着部材35を貼着する第1の面とし、基材31の側面、切断面を、塗装を施し塗膜38を形成する第2の面33とする。
なお、基材31は板状のものに限定されない。基材31の形状によっては、第1の面とこれに隣接する第2の面とがほぼ同じ面積である場合もある。また板表面32aや板裏面32bと基材31の側面とがほぼ同じ面積である場合もある。さらにボードの種類等によりいずれの面も表面の粗さにあまり差がないような場合等もある。このような場合には、隣り合ういずれかの面(稜線34を挟むいずれかの面)を貼着部材35を貼着する第1の面とし、他方の面を塗装を施す第2の面33としてもよい。
貼着部材35は、切断前の基材31と同じ(すなわち、例えば幅900mm~1820mm、長さ1820mm~4000mm程度)か、それよりも大きな面積を有する比較的大判のシートであることが好ましい。貼着部材35は、例えば長尺のシート材がロール状に巻かれたものであってもよい。
また、貼着部材35は、その厚み(シート厚)が、0.4mm~0.8mm程度であることが好ましく、より好ましくは0.5mm程度である。貼着部材35としてある程度シート厚の厚いものを用いることによって、基材31の第1の面32a,32bに多少の木目等の凹凸がある場合や、接着剤の液溜まり等がある場合でも、これを拾わずにシートを均一に貼着することができ、貼着後のシート表面が平滑で美しい仕上がりとなる。なお、貼着部材35のシート厚はこれに限定されない。
また、本実施形態の貼着部材35は、第1の面32a,32bに貼着される光沢層36と、第1の面32a,32bへの貼着面361(図9(a)~(d)参照)とは逆側の面(すなわち光沢層36の外装面)上に積層された保護層37と、を有している(図5(a)等参照)。後述するように、保護層37は基材31の第2の面33に塗装が施された後、剥離・除去されるようになっている。
例えば貼着部材35における基材31に貼着される側の面(貼着面361)に接着層・粘着層等を設けて、別途接着剤等を塗布しなくても基材31に貼着できるように構成されていてもよい。
また、貼着部材35は、貼着対象物に光沢感を出す光沢層36を有する光沢シート部材である場合に限定されない。貼着部材35を貼着する部分や、貼着対象によっては、光沢していないシート部材が貼着部材35として適用されてもよい。
例えば、背面板4のように、第1の面として貼着部材35を用いた表面加工処理を行うことが好ましい広い面があるが、特に光沢感が求められない部材(鍵盤楽器用部材)の場合には、光沢していないシート部材を貼着部材35として適用してもよい。
この場合も、塗装を行ったのでは手間のかかる広い面を貼着部材35により、簡易かつ迅速に表面加工することができる。
また、貼着部材35が保護層37を備えていることは必須ではない。
光沢層36を備える貼着部材の上に別途保護層37を貼り付けて光沢層36の表面を保護するようにしてもよい。また、貼着部材35が上記の光沢していないシート部材である場合には、保護層37を設けなくてもよい。光沢していないシート部材の場合には、光沢シート部材ほど表面の汚れや傷が気にならないため、保護層37を設けたり、これを剥離する工程を設けたりする手間を省いてもそれほど外観に影響しない。
図2(c)では、譜面立て3aとして切り出された鍵盤楽器用部材3の第2の面33に塗膜38が形成された状態を示し、図3(b)では、本体側板3bとして切り出された鍵盤楽器用部材3の第2の面33に塗膜38が形成された状態を示している。
なお、本体側板3bにおける第2の面33である基材31の側面部分は曲線的な個所を含み、角にRが設けられている部分等もある。このため、貼着部材35を第2の面33である側面部分に貼着することは、図2(c)に示す譜面立て3aの場合以上に難しい。本実施形態では、このような貼着部材35を貼り辛い部分でも、塗装によって仕上げることで、隅々まで歪みのない美しい仕上がりの鍵盤楽器用部材3を形成することができる。
図5(a)は、図3(a)において一点鎖線で囲んだ部分Vaの拡大図であり、図5(b)は、図3(b)において一点鎖線で囲んだ部分Vaの拡大図である。また、図6(a)は、図3(a)において一点鎖線で囲んだ部分Vbの拡大図であり、図6(b)は、図3(b)において一点鎖線で囲んだ部分Vbの拡大図である。
さらに図6(a)において一点鎖線で囲んだ段差部分333のように、基材31の表面に段差があるような場合にも、貼着部材35を貼った場合に皺や撚れを生じやすい。また、特に比較的厚みのあるシート材を貼着部材35として用いる場合には、貼着部材35が段差部分333で浮いてしまい、美観に欠けるとともに、貼着した後の部材において段差が表現されない場合も生じ得る。
この点、本実施形態では、第1の面32には貼着部材35を貼着し、第1の面32と隣り合う第2の面33には塗膜を形成することで対応する。
このため、上記いずれの場合にもシート状の貼着部材35を無理に延ばしながら貼る必要がなく、また第1の面32及び第2の面33の隣接部分(稜線34)に隙間が生じることもなく、図5(b)及び図6(b)に示すように、各面(第1の面32及び第2の面33)ともに光沢感のある美しい外観に仕上げることができる。
塗膜38は、例えばポリエステル(PE)樹脂等の樹脂材料を含む樹脂塗料を基材31に塗装することによって形成される。塗料の具体的な組成等は適宜選択される。また、塗装の手法は特に限定されないが、例えばスプレー等を用いて塗料を噴霧する手法が用いられる。
塗膜38についても、貼着部材35と同様にある程度の厚みがある方が下の凹凸(切断面等である第2の面33の表面の粗さ等)を拾わず仕上がり状態において平滑となり、美しい光沢感を得ることができる。
このため、塗膜38は、その厚み(層厚)が、0.4mm~0.8mm程度であることが好ましく、より好ましくは0.8mm程度である。
なお、塗膜38の膜厚は一定でなくてよい。本実施形態では後述のように塗膜38を形成する塗料の表面張力が働き、基材31の第2の面側33側及び貼着部材35の貼着面とは異なる側面側に設けられている塗膜38の厚みは、この塗料の表面張力により異なる部分を含む。
塗料は、スプレー等を用いて噴霧することのできる程度の粘度のものが好適に用いられるが、ある程度粘度の高いものを用いることによって、塗装した際に塗膜の表面張力が保たれ、塗膜38が形成される第2の面33の端部から塗料がだれる(塗装が流れ落ちる)のを防ぐことができる。
このため、貼着部材35が貼着された第1の面32a,32bと接する稜線の際まで塗装を施した場合に、塗膜38の端部が貼着部材35の端面(すなわち貼着部材35の貼着面とは異なる側面側)まで回り込むとともに表面張力によって第2の面33の上にとどまり、第1の面32a,32bと第2の面33とのつなぎ目である稜線(角稜線)34を目立たなくすることができる。
図7は、本実施形態における鍵盤楽器用部材の製造方法を示すフローチャートであり、図8(a)~図8(d)は、本実施形態における鍵盤楽器用部材の製造方法を構成する各工程における基材の状態を示す鍵盤楽器用部材の要部側断面図である。また、図9(a)~図9(d)は、図8(a)~図8(d)における領域a~領域dの拡大図である。
そして基材31及び基材31の表裏に配置した貼着部材35をともに図示しないローラで挟み込み、ローラを所定方向に回転させる。
これにより、基材31及び貼着部材35がローラに挟み込まれた状態で所定方向に流れていき、流れながら、基材31の第1の面である板表面32a及び板裏面32bに貼着部材35が貼り合わされていく(シート貼着工程、図7のステップS1)。このようにローラで流しながら貼り合わせていくことで、貼着部材35が撚れたりずれたりすることなく、第1の面32a,32bに均一に貼着される。
例えば図2(b)は、譜面立てとしての鍵盤楽器用部材を切り出した例を示す斜視図であり、図3(a)は、本体側板としての鍵盤楽器用部材を切り出した例を示す斜視図である。
なお、基材31を貼着部材35ともに切断する手法は特に限定されないが、例えば図示しないNCルーター等の切断装置を用いて、1枚の基材31から複数の鍵盤楽器用部材3の切り出しを行う。
図8(a)は、図2(b)におけるa-a線に沿う断面を矢視方向から見た要部断面図である。また図9(a)は、図8(a)に示す領域aの拡大図である。図8(a)及び図9(a)に示すように、切断後の基材31の第1の面である板表面32a及び板裏面32bにはその端部まで貼着部材35が貼着されている。
この状態において、基材31の第2の面33(すなわち、基材31の側面、小口面、切断面)側には、貼着部材35の貼着面361とは異なる側面(貼着部材35の光沢層36の側面362及び保護層37の側面372)が現れる。
例えば図2(c)は、譜面立てとしての鍵盤楽器用部材の第2の面に塗装を施した状態を示す斜視図であり、図3(a)は、本体側板としての鍵盤楽器用部材の第2の面に塗装を施した状態を示す斜視図である。本実施形態では、この塗装工程において、基材31の第1の面32に隣接する第2の面側33及び、貼着部材35の貼着面361とは異なる側面362,372側に、塗料を積層させる。
なお、塗装時間(すなわち、何秒間スプレーするか)等は、塗料の種類や塗膜38として求められる厚み(層厚、膜厚)等に応じて適宜設定される。
また第2の面33に形成された塗膜38は、塗布された塗料(樹脂塗料)の塗装溜りが第1の面32a,32bに貼着された貼着部材35の端面(すなわち貼着部材35の貼着面とは異なる側面362,372側)に乗る程度まで回り込む。これにより、貼着部材35の側面362,372側にも塗料が積層され、塗膜38が形成される。そして塗料は、その表面張力により第2の面33からだれずにとどまり、また塗料は表面張力により中央部に集まりやすいために塗膜38は端部よりも中央部の方が多少盛り上がって厚みのある状態となる(図8(b)及び図9(b)参照)。
乾燥工程をどの程度の時間行うか等は、塗料の種類や塗装面(すなわち第2の面33)の面積、塗装の厚み等によって適宜設定される。
研磨工程における研磨の手法は特に限定されないが、例えば羽布(バフ)を用いて艶出しを行う。なお、研磨に用いる羽布(バフ)は、塗料の種類や研磨の程度等に応じて適宜好適な材料のものが選択される。
所定の回数は塗料の種類や塗膜38として求められる厚み(層厚、膜厚)等に応じて適宜設定されるが、例えば3回である。なお、各工程は機械を用いて自動的に行われるものであってもよいし、手作業で行われるものであってもよい。
拭取り工程は、所定回数繰り返して行われるようになっている。本実施形態では、所定の回数繰り返されたかを判断し(ステップS8)、まだ所定の回数に達していない場合(ステップS8;NO)には、ステップS7に戻って拭取り工程を繰り返す。
所定の回数は塗料の種類等に応じて適宜設定されるが、例えば2回である。なお、拭取り工程は手作業で行われるが、これに限定されず、機械を用いて行われてもよい。
図8(c)は、保護層を剥離した状態の鍵盤楽器用部材を示す要部断面図である。また図9(c)は、図8(c)に示す領域bの拡大図である。
図8(c)及び図9(c)に示すように、保護層37を剥離すると、光沢層36及び保護層37を合わせた貼着部材35全体の端面(貼着部材35の光沢層36の側面362及び保護層37の側面372)にまで乗っていた塗膜38のうち保護層37の側面372の上に載っていた部分がバリ39となってはみ出した状態となる。
なお、保護層37は貼着部材35全体に対してごく薄い層であるため、保護層37を剥離しても塗膜38がそれほどはみ出すことはないが、図8(c)及び図9(c)ではバリ39の部分を多少誇張して図示している。
このため、最後に、布等で稜線34部分を拭き上げて余分なバリ39を除去し、第1の面32a,32bに施された貼着部材35(貼着部材35のうちの光沢層36)と第2の面33に形成された塗膜38とをなじませる稜線仕上げを行う(稜線仕上げ工程、ステップS10)。
これにより、図8(d)及び図9(d)に示すように、第1の面32a,32bと第2の面33とが自然とつながり稜線34が目立たなくなる。
このように、鍵盤楽器100の外装部2を構成する鍵盤楽器用部材3のように稜線34部分が外観に現れるような部材について、貼着部材35と塗装とを使い分けることにより、全面塗装する場合のような手間やコストをかけることなく、全面塗装によって製造した場合と遜色ない美しい仕上がりの鍵盤楽器用部材3及びこれを備える鍵盤楽器100を得ることができる。
塗装により光沢感を出すためには塗装、乾燥、研磨といった複数の工程を繰り返し行うことが必要であり、表面積の広い部分に光沢加工を施すには、非常に多くの手間やコストがかかる。
この点、塗装では手間やコストがかかる面積の広い面を、貼着部材35を貼着する第1の面32a,32bとすることにより、大幅に手間やコストを削減することが可能となる。また、貼着部材35を貼着する場合には広い面積の部分の方が効率よく作業を行うことができ、効率的かつ効果的に鍵盤楽器用部材3及びこれを備える鍵盤楽器100を製造することができる。
切断面には、基材31の表面や裏面と比較して切断による凹凸が多く生じている可能性があり、凹凸を拾わないように貼着部材35を平滑に貼ることが難しい。
この点切断面には塗装を施して光沢感を出すとした場合には、切断面を含めた基材31の全面について効率的かつ効果的に光沢感を出す加工を行うことができる。
このように曲面を含まない第1の面32a,32bについては貼着部材35を貼着し、曲面を含み貼着部材35を貼着し辛い第2の面33には塗膜38を形成することで、手間を省きつつ、第1の面32a,32b、第2の面33ともに美しい仕上がりとすることができる。
このように塗料の表面張力を利用することで、第1の面32a,32bと第2の面33との境界部分(稜線34)等についても美しく仕上げることができる。
貼着部材35として光沢シート部材を適用した場合には鍵盤楽器用部材3及びこれを備える鍵盤楽器100の表面を光沢感のある仕上がりとすることができる。また貼着部材35として光沢していないシート部材を適用した場合には鍵盤楽器用部材3及びこれを備える鍵盤楽器100をマットな仕上がりとすることができる。
貼着部材35を貼着する部材等によってシートを使い分けることで、所望の仕上がりの鍵盤楽器用部材3及びこれを備える鍵盤楽器100を実現することができる。
樹脂材料は、木質ボード等である基材31への定着性もよく、また、カバー力にも優れている。
このため、何層か塗り重ねることで基材31の第2の面33に凹凸等がある場合にもこれを覆い隠すことができ、凹凸等を拾うことによる光沢度の低下を防いで美しい仕上がりを実現することができる。
このため、保護層37によって光沢層36が表面に露出するのを防ぎ、塗装工程や研磨工程等において光沢層36が傷つくのを防止することができる。
また、保護層37を剥離・除去する保護層除去工程は、塗装工程の後であるため、塗装工程において生じるミスト等が光沢層36に付着することも回避できる。
これにより、光沢層36の光沢度を維持することができ、美しい仕上がりを実現できる。
さらに、本実施形態では、貼着部材35を貼着した後も保護層37を剥離・除去する最終段階までは光沢層36が保護された状態が維持される。このため、貼着部材35貼着後の鍵盤楽器用部材3の取り扱いが容易であり、簡易かつ効率的に美しい仕上がりの鍵盤楽器用部材3を製造することができる。
このため、貼着部材35を貼着する段階では、大判の基材31と大判の貼着部材35とを貼り合わせることができ、基材31を細かい部品に細分化してから貼着部材35を貼着する場合と比較して作業効率に優れている。
本発明の鍵盤楽器用部材及びその製造方法は、第1の面と、第1の面と交わり第1の面との間で稜線を形成する第2の面と、を有するような基材の各面に、光沢加工を施す場合に広く適用することができる。
これにより、普段は外観に現れないところにも意匠性を持たせることができ、どこから見ても細部まで美しい外観を実現することができる。
例えば、基材31を所定の形状に切断した後に貼着部材35を貼着してもよい。
貼着部材35のシート厚が比較的薄く、直角的に曲がる角部分であれば貼着部材35が浮き上がらないように貼着することが可能であるような場合には、基材31の表裏だけでなく、側面の一部にも貼着部材35を貼ることで、塗装によって仕上げる部分を減らすことができる。
これにより、より効率的に鍵盤楽器用部材3を含む部材3を形成することが可能となる。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
第1の面と、前記第1の面に隣接する第2の面と、を有する基材と、
前記基材の前記第1の面側に貼着されている貼着部材と、
前記基材の前記第2の面側及び、前記貼着部材の貼着面とは異なる側面側に設けられている塗膜と、
を備える鍵盤楽器。
<請求項2>
前記基材の前記第1の面は、前記第2の面よりも表面積が大きい、請求項1に記載の鍵盤楽器。
<請求項3>
前記基材の前記第1の面は曲面を含まず、前記第2の面は曲面を含む、請求項1又は請求項2に記載の鍵盤楽器。
<請求項4>
前記基材の前記第2の面側及び前記貼着部材の前記側面側に設けられている前記塗膜の厚みは、塗料の表面張力により異なる部分を含む、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の鍵盤楽器。
<請求項5>
前記貼着部材は、光沢シート部材及び光沢していないシート部材のいずれかを含む、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の鍵盤楽器。
<請求項6>
基材の第1の面側に貼着部材を貼着する貼着工程と、
前記基材の前記第1の面に隣接する第2の面側及び、前記貼着部材の貼着面とは異なる側面側に、塗料を積層させる塗装工程と、
を含む鍵盤楽器の製造方法。
<請求項7>
前記貼着工程の後、前記塗装工程の前に、前記基材を前記貼着部材とともに切断する切断工程、
を含む請求項6に記載の鍵盤楽器の製造方法。
<請求項8>
第1の面と、前記第1の面に隣接する第2の面と、を有する基材と、
前記基材の前記第1の面側に貼着されている貼着部材と、
前記基材の前記第2の面側及び、前記貼着部材の貼着面とは異なる側面側に設けられている塗膜と、
を備える部材。
2 外装部
3 鍵盤楽器用部材
31 基材
32a 板表面(第1の面)
32b 板裏面(第1の面)
33 板側面(第2の面)
34 稜線
35 貼着部材
36 光沢層
37 保護層
38 塗膜
100 鍵盤楽器
Claims (8)
- 第1の面と、前記第1の面に隣接する第2の面と、を有する基材と、
前記基材の前記第1の面側に貼着されている貼着部材と、
前記基材の前記第2の面側及び、前記貼着部材の貼着面とは異なる側面側に設けられている塗膜と、
を備える鍵盤楽器。 - 前記基材の前記第1の面は、前記第2の面よりも表面積が大きい、請求項1に記載の鍵盤楽器。
- 前記基材の前記第1の面は曲面を含まず、前記第2の面は曲面を含む、請求項1又は請求項2に記載の鍵盤楽器。
- 前記基材の前記第2の面側及び前記貼着部材の前記側面側に設けられている前記塗膜の厚みは、塗料の表面張力により異なる部分を含む、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の鍵盤楽器。
- 前記貼着部材は、光沢シート部材及び光沢していないシート部材のいずれかを含む、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の鍵盤楽器。
- 基材の第1の面側に貼着部材を貼着する貼着工程と、
前記基材の前記第1の面に隣接する第2の面側及び、前記貼着部材の貼着面とは異なる側面側に、塗料を積層させる塗装工程と、
を含む鍵盤楽器の製造方法。 - 前記貼着工程の後、前記塗装工程の前に、前記基材を前記貼着部材とともに切断する切断工程、
を含む請求項6に記載の鍵盤楽器の製造方法。 - 第1の面と、前記第1の面に隣接する第2の面と、を有する基材と、
前記基材の前記第1の面側に貼着されている貼着部材と、
前記基材の前記第2の面側及び、前記貼着部材の貼着面とは異なる側面側に設けられている塗膜と、
を備える部材。
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