JP2022045295A - 潤滑油用添加剤組成物およびこれを含有する潤滑油組成物 - Google Patents

潤滑油用添加剤組成物およびこれを含有する潤滑油組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】潤滑油用基油に対して、耐荷重性および耐金属腐食性を付与できるとともに、これらの経時安定性に優れた潤滑用添加剤油組成物の提供。【解決手段】式(1)で示されるモノエステルカルボン酸塩(A)と、硫黄系極圧剤(B)とを含有し、モノエステルカルボン酸塩(A)と硫黄系極圧剤(B)の質量比が99:1~1:99である潤滑油用添加剤組成物。TIFF2022045295000007.tif38105[式(1)において、R1はカルボニル基の炭素同士が結合している単結合、または炭素数1~4の2価の炭化水素基を示し、R2は炭素数1~22の炭化水素基を示す。AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基から選ばれる1種の単独オキシアルキレン基または2種以上の混合オキシアルキレン基を示し、nはAOで示されるオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、0~5を示す。Mは有機アンモニウムを示す。]【選択図】なし

Description

本発明は潤滑油用添加剤組成物およびこれを含有する潤滑油組成物に関する。より詳しくは、潤滑油用基油(以下単に「基油」とも言う。)に対して、耐荷重性および耐金属腐食性を付与できるとともに、これらの経時安定性に優れた潤滑用添加剤油組成物およびこれを含有する潤滑油組成物に関する。
エンジン油、油圧作動油、金属加工油などに用いられる潤滑油は、基油(ベースオイル)と様々な機能を持つ添加剤とから成り立っている。潤滑油の性能の中でも耐荷重性が重要視されており、耐荷重性を付与する極圧剤として、塩素化パラフィン等の塩素系極圧剤、硫化オレフィンや硫化油脂等の硫黄系極圧剤が一般的に用いられている。
これらの中でも塩素系極圧剤は優れた耐荷重性を付与することができるが、皮膚に対して刺激を与えるおそれがあることから使用が避けられている。このような観点から、塩素系極圧剤を使用せず、耐荷重性を向上させる取り組みとして、例えば特許文献1には、アルキルジチオリン酸亜鉛と硫黄系極圧剤とを組み合わせて含有する非塩素系潤滑油剤が開示され、また特許文献2には、リン酸化合物もしくはチオリン酸化合物の金属塩またはアミン塩と硫黄系極圧剤とを組み合わせて含有する金属加工油組成物が開示されている。
一方、近年の産業機械の高速化・高圧化・小型化に伴い、油圧機械、圧縮機械、軸受などの機械要素がより過酷な条件下で運転されるようになっている。そのため、これらの機械に使用する潤滑油には、高圧、高荷重、高温度条件下であっても長期間にわたって優れた潤滑性能を発揮することが求められている。
また、潤滑油は機械の省エネルギー化や金属加工精度向上の観点から低粘度化が進んでいる。しかし、粘度が下がると金属同士の間で形成される油膜が薄くなるため潤滑条件が過酷化し、金属摩耗のリスクが高まる。そのため、耐荷重性の更なる向上が望まれており、耐荷重性を更に向上させる方法の一つとして、極圧剤の添加量を増やすことが挙げられる。しかし、硫黄系極圧剤の添加量を増加させることにより、耐金属腐食性を大幅に低下させる場合があった。そのため、複数の添加剤を配合することにより、硫黄系極圧剤の添加量の増加を抑制し、耐荷重性を向上させる工夫がなされている。
例えば特許文献3には、コレステリルエステルと多価アルコール部分脂肪酸エステルと硫黄系極圧剤とを組み合わせて含有する潤滑油組成物が開示され、また特許文献4にはチアジアゾール化合物と硫黄系極圧剤とを組み合わせて含有する潤滑油組成物が開示されている。しかし、これら潤滑油組成物は、耐荷重性が十分でなく、耐金属腐食性や経時安定性に関しても更なる改善が望まれていた。
したがって、基油に対して耐荷重性を相乗的に向上させ、耐金属腐食性を付与できるとともに、これらの経時安定性に優れた潤滑用添加剤油組成物の開発が望まれていた。
特開2006-206655号公報 特開2004-059658号公報 特開2010-120994号公報 特開2018-119059号公報
本発明の目的は、上記課題を解決することであり、詳しくは、基油に対して、耐荷重性および耐金属腐食性を付与できるとともに、これらの経時安定性に優れた潤滑用添加剤油組成物およびこれを含有する潤滑油組成物を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、モノオールおよび二塩基酸からなるモノエステルカルボン酸と有機アミンとの中和塩を用い、この中和塩と硫黄系極圧剤を特定の比率で組み合わせた潤滑油用添加剤組成物が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。この知見に基づく本発明は下記の〔1〕および〔2〕である。
〔1〕
式(1)で示されるモノエステルカルボン酸塩(A)と、硫黄系極圧剤(B)とを含有し、モノエステルカルボン酸塩(A)と硫黄系極圧剤(B)の質量比が99:1~1:99である潤滑油用添加剤組成物。
Figure 2022045295000001
[式(1)において、
はカルボニル基の炭素同士が結合している単結合、または炭素数1~4の2価の炭化水素基を示し、Rは炭素数1~22の炭化水素基を示す。AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基から選ばれる1種の単独オキシアルキレン基または2種以上の混合オキシアルキレン基を示し、nはAOで示されるオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、0~5を示す。Mは有機アンモニウムを示す。]
〔2〕
上記〔1〕の潤滑油用添加剤組成物を0.01~30質量%含有する潤滑油組成物。
本発明の潤滑油用添加剤組成物は、基油に対して耐荷重性および耐金属腐食性を付与できるとともに、これら特性を経時安定的に付与できるので、本発明の潤滑油用添加剤組成物と潤滑油用基油を含有する潤滑油組成物は、耐荷重性、耐金属腐食性、およびこれらの経時安定性に優れる。
以下、本発明の潤滑油用添加剤組成物(以下単に「本添加剤組成物」ともいう。)、ならびに本添加剤組成物および潤滑油用基油を含有する潤滑油組成物の実施形態について詳しく説明する。
なお、記号「~」を用いて規定された数値範囲は「~」の両端(上限および下限)の数値を含む。例えば「2~10」は2以上10以下を表す。
また濃度または量を特定した場合、任意のより高い方の濃度または量と、任意のより低い方の濃度または量とを関連づけることができる。例えば「2~10質量%」および「好ましくは4~8質量%」の記載がある場合、「2~4質量%」、「2~8質量%」、「4~10質量%」および「8~10質量%」の記載も包含される。
〔潤滑油用添加剤組成物〕
本添加剤組成物は、式(1)で示されるモノエステルカルボン酸塩(A)と、硫黄系極圧剤(B)とを含有する。各化合物について説明する。
<モノエステルカルボン酸塩(A)>
モノエステルカルボン酸塩(A)は下記の式(1)で示され、モノエステルカルボン酸塩(A)として、式(1)に包含される複数の化合物から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。
Figure 2022045295000002
式(1)において、Rはカルボニル基の炭素同士が結合している単結合、または炭素数1~4の2価の炭化水素基を示す。炭素数1~4の2価の炭化水素基は、炭素原子と水素原子からなる官能基であり、アルキレン基およびアルケニレン基から選ばれる1種であり、直鎖状および分岐状のいずれの形態であっても良い。炭化水素基の炭素数が5以上である場合は、鎖長が長く、十分な耐荷重性が得られないことがある。
として好ましくは炭素数2のアルキレン基またはアルケニレン基であり、具体的にはエチレン基またはエテニレン基が挙げられるが、より好ましくはエチレン基である。
式(1)において、Rは炭素数1~22の飽和または不飽和の炭化水素基を示し、直鎖状及び分岐状のいずれの形態であっても良い。Rとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、ベヘニル基などの直鎖状飽和炭化水素基;イソプロピル基、イソブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、イソノニル基、3,5,5-トリメチルヘキシル基、イソデシル基、イソステアリル基、2-オクチルデシル基、2-オクチルドデシル基、2-ヘキシルデシル基などの分岐状飽和炭化水素基;アリル基、(メタ)アクリル基、パルミトイル基、オレイル基、リノレイル基などの不飽和炭化水素基;などが挙げられる。これら炭化水素基を有する化合物のうち1種を単独で、または2種以上を混合して用いても良い。炭素数が23以上の場合、十分な耐荷重性が得られないことがある。
は、耐荷重性の観点から、好ましくは炭素数4~18の直鎖もしくは分岐状飽和炭化水素基または直鎖もしくは分岐状不飽和炭化水素基であり、より好ましくは炭素数8~18の直鎖もしくは分岐状飽和炭化水素基または直鎖もしくは分岐状不飽和炭化水素基であり、さらに好ましくは炭素数16~18の直鎖または分岐状不飽和炭化水素基である。例えば、2-エチルヘキシル基、イソデシル基、イソステアリル基、オレイル基が好ましく、オレイル基が特に好ましい。
式(1)において、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、直鎖状および分岐状のいずれの形態であっても良い。AOとしては、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシテトラメチレン基などが挙げられる。好ましくは炭素数2~3のオキシアルキレン基であり、より好ましくは炭素数2のオキシエチレン基である。
nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、nは0~5である。耐荷重性や経時安定性の観点から、nは1以上が好ましい。またnは4以下であることが好ましく、3以下であることが特に好ましい。nが2~5のとき、1種のオキシアルキレン基が複数結合していてもよく(単独オキシアルキレン基)、2種以上のオキシアルキレン基が混合して複数結合していてもよい(混合オキシアルキレン基)。
式(1)において、Mは有機アンモニウムを示す。有機アンモニウムとしては、窒素原子に炭素数1~24の飽和もしくは不飽和の炭化水素基が結合した第一級、第二級、第三級または第四級アンモニウムカチオンが挙げられ、これらアンモニウムカチオンは直鎖状、分岐状および環状のいずれであっても良い。また第二級、第三級および第四級アンモニウムカチオンにおける複数の炭化水素基は同一であっても良く、または少なくとも1つの炭化水素基が異なっていても良い。有機アンモニウムとしては、例えば、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、ジオクチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリオクチルアンモニウム、ジメチルラウリルアンモニウム、ジメチルステアリルアンモニウムなどが挙げられる。耐金属腐食性および経時安定性の観点から、第三級アンモニウムが好ましい。
式(1)における上記のR、AOおよびM(有機アンモニウム)に含まれる炭素数の総数に関して、耐荷重性および耐金属腐食性の観点から、下記式(2)の値が0.5~2.0であることが好ましく、より好ましくは0.6~1.8、特に好ましくは0.7~1.5である。
〔(有機アンモニウムの炭素数)〕/〔(Rの炭素数)+(AOの炭素数)×n〕 ・・・ 式(2)
次に、式(1)で示されるモノエステルカルボン酸塩(A)の製法について説明する。
式(1)で示されるモノエステルカルボン酸塩(A)の製造法としては特に限定されず、例えば、モノエステルカルボン酸を製造する第一の工程と、第一の工程で得られたモノエステルカルボン酸をアミン化合物により中和させる第二の工程とを経て、式(1)で示されるモノエステルカルボン酸塩(A)を製造することができる。
第一の工程に関して説明する。
炭素数が4~22の炭化水素基を有するアルコール、または前記アルコールにアルキレンオキサイドを付加させることによって得られるポリエーテル化合物と、二塩基酸とを、例えば60~180℃でエステル化反応を行う方法が挙げられる。本化合物を製造するためのエステル化反応では、反応性の観点から、二塩基酸として酸無水物を用いることが好ましい。また、酸無水物に対してモル比で等量のアルコールを用いて行うことが好ましい。
次に第二の工程に関して説明する。
上記製造法で製造したモノエステルカルボン酸と、アミン化合物とを、例えば20~60℃で中和反応を行うことで、モノエステルカルボン酸塩(A)を製造することができる。耐荷重性の観点から、モノエステルカルボン酸に対してモル比で等量のアミン化合物を用いて中和反応を行うことが好ましい。
<硫黄系極圧剤(B)>
硫黄系極圧剤(B)としては、活性型および不活性型の公知の硫黄系極圧剤を用いることができ、例えば、ポリサルファイド、硫化油脂、硫化脂肪酸が挙げられる。硫黄系極圧剤(B)として、これらから選ばれる1種または2種以上を用いることができるが、耐荷重性の観点から、好ましくはポリサルファイド、硫化油脂であり、より好ましくはポリサルファイドである。
ポリサルファイドは、炭化水素基を有する硫化物であり、例えば一般式R11-Sx-R12で示される。上記一般式におけるR11およびR12は、それぞれ独立して、炭素数3~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアルキルアリール基、炭素数7~20のアリールアルキル基、および炭素数3~20のアルケニル基から選択される炭化水素基であって、これらは互いに同一でも異なっていてもよい。R11およびR12におけるアルキル基およびアルケニル基は、直鎖状または分岐状のいずれでもよい。R11およびR12の炭素数は6~18が好ましい。上記一般式におけるxは2~10の整数であり、好ましくは2~8、より好ましくは3~7である。
ポリサルファイドの具体例としては、例えば、ジアルキルポリサルファイド、オレフィンポリサルファイド、ジベンジルポリサルファイド等が挙げられ、これらの中でもオレフィンポリサルファイドが好ましい。
オレフィンポリサルファイドとしては、炭素数3~20のオレフィンまたはその2~4量体と、硫黄やハロゲン化硫黄などの硫化剤と反応させて得られたものが挙げられる。オレフィンとしては、例えば、プロピレン、イソブチレン、ジイソブチレンなどが挙げられる。オレフィンポリサルファイドとしては、上記一般式におけるR11およびR12のうち一方がアルケニル基であり、他方がアルケニル基またはアルキル基のものが挙げられる。
ポリサルファイドについて商業的に入手できるものとしては、例えば、DIC社製のDAILUBE IS-30、DAILUBE IS-35、DAILUBE GS-440L、DAILUBE GS-420、ラインケミー社製のAdditin RC2520、Additin RC2540、Additin RC2541、Additin RC2940などが挙げられる。なお、「DAILUBE」および「Additin」はいずれも登録商標である。
硫化油脂は、油脂と硫黄との反応生成物であり、油脂としてラード、牛脂、鯨油、パーム油、ヤシ油、ナタネ油、ヒマシ油、大豆油などの動植物油脂を使用し、これを硫化反応させて得られるものである。なお、本明細書において硫化油脂は、上記油脂と各種アルコールとの反応により得られる脂肪酸グリセリンエステルや脂肪酸エステルを硫化することにより得られる硫化エステルも包含する。
硫化油脂について商業的に入手できるものとしては、例えば、DIC社製のDAILUBE GS-110、DAILUBE GS-210、DAILUBE GS-240、DAILUBE GS-215、DAILUBE GS-225、DAILUBE GS-235、DAILUBE GS-235S、DAILUBE GS-245、DAILUBE FS-200、ラインケミー社製のAdditin RC2411、Additin RC2415、Additin RC2418、Additin RC2310、Additin RC2315、Additin RC2317などが挙げられる。
硫化脂肪酸は脂肪酸の硫化物であり、例えば、炭素数6~20の飽和または不飽和脂肪酸の硫化物が挙げられる。かかる脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、リノレン酸、リノール酸などが挙げられ、これらの混合脂肪酸を用いることもできる。混合脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、牛脂脂肪酸、パーム核脂肪酸などが挙げられる。
硫化脂肪酸について商業的に入手できるものとしては、例えば、DIC社製のDAILUBE GS-550、DAILUBE GS-520、ラインケミー社製のAdditin RC2715、マルニ製油社製のSOR-Bなどが挙げられる。
式(1)で示されるモノエステルカルボン酸塩(A)と硫黄系極圧剤(B)との混合比は、質量比で99:1~1:99であり、好ましくは90:10~20:80であり、より好ましくは80:20~30:70であり、さらに好ましくは60:40~40:60である。モノエステルカルボン酸塩(A)の含有量が多すぎる場合は、耐荷重性が低下することがあり、モノエステルカルボン酸塩(A)の含有量が少なすぎる場合は、耐金属腐食性が低下することがある。
本発明の添加剤組成物は、モノエステルカルボン酸塩(A)および硫黄系極圧剤(B)を少なくとも含有し、本添加剤組成物による効果を阻害しない範囲において、硫黄系極圧剤(B)以外の他の極圧剤、耐摩耗剤、酸化防止剤などの他の添加剤を更に含有していてもよい。
〔潤滑油組成物〕
本発明の潤滑油組成物は本添加剤組成物を少なくとも含有する。
本発明の潤滑油組成物における本添加剤組成物の含有量は、0.01~30質量%であり、好ましくは0.05~20質量%、より好ましくは0.1~10質量%である。本発明の潤滑油組成物における本添加剤組成物の含有量が少なすぎる場合は、十分な耐荷重性が得られないことがある。また本添加剤組成物の含有量が多すぎる場合は、添加量に見合った耐荷重性および耐金属腐食性が得られないことがある。
なお、本添加剤組成物がモノエステルカルボン酸塩(A)および硫黄系極圧剤(B)以外に他の添加剤を含有する場合、本添加剤組成物に関する上記の含有量はモノエステルカルボン酸塩(A)および硫黄系極圧剤(B)の各含有量の総和である。
本発明の潤滑油組成物は潤滑油用基油を更に含有する。
本発明において潤滑油用基油としては、種々の潤滑油用基油を使用することができる。例えば、鉱物油、高度精製鉱物油、動植物油脂、合成エステル、ポリαオレフィン、GTL(ガスツーリキッド)油などの従来から使用される潤滑油用基油が挙げられる。
本発明の潤滑油組成物における潤滑油用基油の含有量は、好ましくは70~99.99質量%であり、より好ましくは80~99.95質量%、更に好ましくは90~99.9質量%である。
なお、潤滑油用基油および本添加剤組成物の各含有量の合計は100質量%である。
本発明の潤滑油組成物は、清浄分散剤、粘度指数向上剤、防錆剤、腐食防止剤、流動点降下剤、金属不活性化剤などの添加剤も必要に応じて含有させることができる。
各添加剤の配合、混合、添加の順序については特に限定されず、種々の方法を採ることができる。例えば、潤滑油用基油に、モノエステルカルボン酸塩(A)および硫黄系極圧剤(B)、場合により各種添加剤を添加し、加熱混合する方法や、あらかじめ各添加剤の高濃度溶液を調製し、これを潤滑油用基油と混合する方法などを用いても良い。
以下、実施例および比較例を示して本発明を更に詳細に説明する。式(1)で示されるモノエステルカルボン酸塩(A)の製造例を下記合成例1に示す。またモノエステルカルボン酸塩(A)および硫黄系極圧剤(B)からなる添加剤組成物の調製例を下記配合例1に示す。更に、配合例1で調製した添加剤組成物を含有する潤滑油組成物の調製例を下記配合例2に示す。
〔合成例1、式(1)の化合物A-1〕
攪拌機、圧力計、温度計、安全弁、ガス吹き込み管、排気管、冷却用コイル、および蒸気ジャケットを装備したステンレス製の5リットル容の耐圧容器に、オレイルアルコール1,070g(4mol)および水酸化カリウム1.3gを仕込み、窒素置換後、攪拌しながら120℃に昇温した。攪拌下、120℃、0.05~0.50MPa(ゲージ圧)の条件で、別に用意した耐圧容器からエチレンオキサイド180g(4mol)を、ガス吹き込み管を通して、窒素ガスにより加圧しながら添加した。添加終了後、同条件で内圧が一定となるまで反応させた。その後、耐圧容器から反応物を取り出し、塩酸で中和して、pH6~7とし、含有する水分を除去するため、100℃、1時間、減圧処理を行い、最後に濾過により塩を除去して、1,200gのポリエーテル化合物を得た。得られたポリエーテル化合物の水酸基価は180であり、水酸基から求められる分子量は312であった。
次に攪拌装置、温度計および窒素導入管を装備したガラス製の1リットル容の反応容器に、上記で得られたポリエーテル312g(1mol)と無水コハク酸100g(1mol)を仕込み、100℃で2時間反応させた。酸価の測定で99%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認した後、室温まで冷却した。その後、N,N-ジメチルラウリルアミン213g(1mol)を仕込み、60℃以下で0.5時間、攪拌し中和した。これにより化合物A-1を得た。
なお、合成例1におけるオレイルアルコールを他の化合物に適宜変更し、また化合物A-3についてはN,N-ジメチルラウリルアミンを添加しないこと以外は合成例1に準じて操作を行うことにより、表1の化合物A-2、A-3およびA-4を合成した。
化合物A-1~A-4について、式(1)における各記号との関係および上記式(2)の値を併せて表1に示す。
Figure 2022045295000003
〔硫黄系極圧剤:化合物B-1、B-2〕
硫黄系極圧剤として、DIC社製のDAILUBE GS-420(化合物B-1)およびDAILUBE GS-245(化合物B-1)を使用した。
〔配合例1、添加剤組成物の調製〕
300mL~1Lの4つ口フラスコに、温度計および窒素導入管を差し込み、表2および表3に記載の各添加剤を25℃で1時間攪拌配合して、実施例1~5および比較例1~5の添加剤組成物を調製した。
〔配合例2、潤滑油組成物の調製〕
潤滑油用基油(ポリαオレフィン、動粘度(40℃):約50mm/s)に対して上記の添加剤組成物をそれぞれ0.5質量%(実施例1~5および比較例1~4)あるいは5質量%(比較例5)配合した。
得られた潤滑油組成物(試験油)について下記の評価試験を行なった。評価結果を下記表2および表3に示す。
耐荷重性試験
シェル4球試験機にて焼付荷重を評価した。試験片はSUJ-2製を用いた。試験条件は試験温度25℃、回転数1,800rpm、試験時間10秒とし、荷重を50kg、63kg、80kg、100kg、126kg、140kg、160kg、200kgの順にかける試験を実施した。試験中に摩擦トルクの急増、異常音の発生などの現象が起き、かつ摩耗面に焼付条痕が生成した荷重をもって焼付荷重とし、2回の平均値を算出して評価した。
評価は、◎:160kg以上、○:126kg以上かつ160kg未満、×:126kg未満、とした。
また、100mLガラス瓶へ試験油を100ml入れ、空気雰囲気下で密閉し、40℃の恒温槽にて7日間静置後の試験油の耐荷重性を上記と同一の条件で評価した。
耐金属腐食性試験
JIS K 2513-2000に則り、銅腐食性を評価した。銅片をP150番研磨布で研磨した。100mlスクリュー管へ試験油を70ml入れ、そこへ銅片を浸し、100℃で3時間加熱した。試験前後での表面状態を比較し、変色の度合いを評価した。
評価は銅板腐食標準と比較し、◎:わずか~中程度に変色(1a~2e)、〇:濃く変色(3a~3b)、×:腐食(4a以上)、とした。
また、100mLガラス瓶へ試験油を100ml入れ、空気雰囲気下で密閉し、40℃の恒温槽にて7日間静置後の試験油の銅腐食性を上記と同一の条件で評価した。
Figure 2022045295000004
Figure 2022045295000005
表2に示す結果から明らかなように、実施例1~5の添加剤組成物は、潤滑油用基油(ポリαオレフィン)に対して優れた耐荷重性および耐金属腐食性を持続的に付与することができる。
これに対して、表3に示すとおり、比較例1~5では耐荷重性、耐金属腐食性、およびこれら経時安定性のすべてについて満足できる結果が得られなかった。
具体的には、式(1)におけるMが水素原子である化合物A-3が添加された比較例1では、調製直後の耐荷重性や耐金属腐食性は良好であったが、経時持続性が劣っていた。また、オキシアルキレン基の平均付加モル数nが本発明の規定範囲外である化合物A-4が添加された比較例2、モノエステルカルボン酸塩(A)か硫黄系極圧剤(B)かのいずれか一方のみが添加された比較例3および4では、耐荷重性が調製直後から劣っていた。硫黄系極圧剤の化合物B-1だけを用いた比較例4の添加量を10倍にした比較例5では耐荷重性は良好となるものの、耐金属腐食性が不十分となった。

Claims (2)

  1. 式(1)で示されるモノエステルカルボン酸塩(A)と、硫黄系極圧剤(B)とを含有し、モノエステルカルボン酸塩(A)と硫黄系極圧剤(B)の質量比が99:1~1:99である潤滑油用添加剤組成物。
    Figure 2022045295000006
    [式(1)において、
    はカルボニル基の炭素同士が結合している単結合、または炭素数1~4の2価の炭化水素基を示し、Rは炭素数1~22の炭化水素基を示す。AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基から選ばれる1種の単独オキシアルキレン基または2種以上の混合オキシアルキレン基を示し、nはAOで示されるオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、0~5を示す。Mは有機アンモニウムを示す。]
  2. 請求項1に記載の潤滑油用添加剤組成物を0.01~30質量%含有する潤滑油組成物。
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