JP2021031577A - 潤滑油組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】低温安定性及び各種条件下での摩擦低減特性に優れる潤滑油組成物の提供。【解決手段】特定のモリブデンジチオカルバメートを含むモリブデンジチオカルバメート組成物(A)と、特定のジアルキルジチオリン酸亜鉛(B)と、コハク酸イミド系無灰分散剤(C)と、基油(D)と、を含み、モリブデンジチオカルバメート組成物(A)に含まれるモリブデン原子の含有量とジアルキルジチオリン酸亜鉛(B)に含まれるリン原子の含有量の質量比[Mo/P]が0.7以上3以下であり、100℃動粘度が1.0〜8.0mm2/sである、潤滑油組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、低温安定性及び各種条件下での摩擦低減特性に優れる潤滑油組成物に関する。
自動車分野における燃費規制、排ガス規制など、地球温暖化、大気汚染、酸性雨といった環境問題や有限である石油エネルギーなどの資源保護に起因する規制は年々厳しくなっている。これらの対策として、例えば自動車の省燃費化を進める上では、自動車本体の軽量化、エンジンの改良等、自動車自体の改良と共に、エンジンでの摩擦ロスを防ぐ為のエンジン油の低粘度化、良好な摩擦調整剤の添加等、エンジン油の改善も重要な要素となっており、同様に、エンジン油以外の内燃機関用潤滑油や工業用潤滑油においても使用性や各種特性の改善が重要となっている。
有機モリブデン化合物は優れた潤滑性及び摩擦低減作用を有しており、中でもモリブデンジチオカルバメートは、金属に対する腐食性も少ないことから種々の潤滑油に添加されている。特にエンジン油においては、エンジン各部の摩擦抵抗を低減しその結果燃料の使用量を節減する、いわゆる省燃費化に効果的であり、省燃費油には必須の添加剤となってきている。
例えば、特許文献1には、炭素数1〜24のアルキル基を有し、硫黄原子と酸素原子の比が特定の割合である硫化オキシモリブデンジアルキルジチオカーバメートを潤滑剤として利用することが記載されている。特許文献2には、炭素原子数4〜13の炭化水素基と、炭素原子数8〜24の炭化水素基とを有するモリブデンジチオカーバメートとして、具体的に、2−エチルヘキシル基と、トリデシル基、ドデシル基またはオクタデシル基とを有するモリブデンジチオカーバメートが記載されている。
しかし、特許文献1や特許文献2に記載のモリブデンジチオカーバメートを用いて配合された潤滑油組成物は、特定条件下では優れた摩擦特性を発揮するものの、より高いレベルの省燃費効果を実現するために潤滑油に求められる幅広い環境下での摩擦特性を発揮することはできておらず、改善が求められていた。さらには、従来のモリブデンジチオカルバメートを含む潤滑油は、例えば−5℃等の低温環境下にて置かれた場合、モリブデンジチオカルバメートが沈殿したりする場合があるなど、その取り扱い性や各種特性に劣る場合があった。
特開昭52−019702号公報 特開昭62−081396号公報
従って、本発明の目的は、低温安定性及び各種条件下での摩擦低減特性に優れる潤滑油組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の潤滑油組成物が優れた低温安定性及び各種条件下での摩擦低減特性を発揮することを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は、下記の一般式(1)で表されるモリブデンジチオカルバメートを含むモリブデンジチオカルバメート組成物(A)と、下記の一般式(2)で表されるジアルキルジチオリン酸亜鉛(B)と、コハク酸イミド系無灰分散剤(C)と、基油(D)と、を含み、前記モリブデンジチオカルバメート組成物(A)に含まれるモリブデン原子の含有量と前記ジアルキルジチオリン酸亜鉛(B)に含まれるリン原子の含有量の質量比[Mo/P]が0.7以上3以下であり、100℃動粘度が1.0〜8.0mm/sである、潤滑油組成物である。
Figure 2021031577
(式中、Rは炭素数10〜14の直鎖又は分岐アルキル基を表し、R〜Rはそれぞれ独立して炭素数8〜14の直鎖又は分岐アルキル基を表し、R〜Rのアルキル基の分岐数の平均値は0.75〜1.25であり、X〜Xはそれぞれ独立して酸素原子又は硫黄原子を表す。)
Figure 2021031577
(式中、R〜Rはそれぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)
本発明の潤滑油組成物は、優れた低温安定性及び各種条件下で優れた摩擦低減特性を示す。
本発明に用いるモリブデンジチオカルバメート組成物(A)は、下記の一般式(1)で表されるモリブデンジチオカルバメートを含むモリブデンジチオカルバメート組成物である。
Figure 2021031577
一般式(1)において、Rは炭素数10〜14の直鎖又は分岐アルキル基を表す。炭素数10〜14の直鎖又は分岐アルキル基としては、例えば、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基といった直鎖アルキル基や、2級デシル基、イソデシル基、2級ウンデシル基、イソウンデシル基、2級ドデシル基、イソドデシル基、2級トリデシル基、イソトリデシル基、2級テトラデシル基、イソテトラデシル基といった分岐アルキル基が挙げられる。Rがこのようなアルキル基であることで、一般式(1)で表されるモリブデンジチオカルバメートは幅広い使用条件下で優れた摩擦低減特性を発揮することができる。
これらの中でも、特に幅広い使用条件下で優れた摩擦低減特性を発揮する観点から、Rは炭素数10〜13の直鎖又は分岐アルキル基であることが好ましく、炭素数10又は13の直鎖又は分岐アルキル基であることがより好ましく、炭素数13の直鎖又は分岐アルキル基であることがさらに好ましく、炭素数13の分岐アルキル基であることがさらにより好ましい。ここで、分岐アルキル基とは、分岐構造を有するアルキル基のことを指すが、このときの分岐アルキル基の分岐数に特に制限はなく、例えば分岐数は1〜4程度であってもよい。特に使用時に分解して二硫化モリブデンに類似した皮膜を形成する条件及び速度を適切な範囲に設定することができ、幅広い使用条件下で優れた摩擦低減特性を発揮する観点から、Rは分岐数が1〜2の分岐アルキル基であることがより好ましく、分岐数が1の分岐アルキル基であることが特に好ましい。さらに、分岐数が1の分岐アルキル基としては、その分岐位置が異なる複数種類のアルキル基が存在するが、特に優れた摩擦低減特性を発揮する観点から、Rはβ位に分岐を有する(窒素原子に結合している炭素原子の隣の炭素原子に分岐構造を有する)分岐アルキル基であることが特に好ましい。Rの構造は、モリブデンジチオカルバメートの製造に用いる原料の選定等により調節することができる。
一般式(1)において、R〜Rはそれぞれ独立して炭素数8〜14の直鎖又は分岐アルキル基を表し、このときR〜Rは同一であっても異なっていてもよい。また、R〜RはRと同一のアルキル基を含んでいてもよい。炭素数8〜14の直鎖又は分岐アルキル基としては、例えば、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基といった直鎖アルキル基、2級オクチル基、イソオクチル基、2級ノニル基、イソノニル基、2級デシル基、イソデシル基、2級ウンデシル基、イソウンデシル基、2級ドデシル基、イソドデシル基、2級トリデシル基、イソトリデシル基、2級テトラデシル基、イソテトラデシル基等の分岐アルキル基が挙げられる。R〜Rがこのようなアルキル基であることで、Rのアルキル基構造との組合せにより、一般式(1)で表されるモリブデンジチオカルバメートは優れた摩擦低減特性を発揮することができる。これらの中でも、Rのアルキル基との組合せにより特に優れた摩擦低減特性を発揮する観点から、R〜Rは炭素数8〜13の直鎖又は分岐アルキル基であることが好ましく、炭素数8又は13の直鎖又は分岐アルキル基であることがより好ましく、炭素数8又は13の分岐アルキル基であることがさらにより好ましい。このときの分岐アルキル基の分岐数に特に制限はなく、例えば、分岐数は1〜4程度であってもよい。特に幅広い使用条件下で優れた摩擦低減特性を発揮する観点からは、R〜Rのいずれか1以上が分岐数1〜2の分岐アルキル基であることがより好ましく、R〜Rのいずれか1以上が分岐数1の分岐アルキル基であることがさらに好ましく、R〜Rのすべてが分岐数1の分岐アルキル基であることが特に好ましい。また、R〜Rのいずれかのアルキル基が分岐アルキル基である場合、分岐アルキル基の分岐位置は特に限定されない。R〜Rが分岐アルキル基を含む場合に、特に優れた摩擦低減特性を発揮する観点から、分岐アルキル基はβ位に分岐を有する分岐アルキル基であることが好ましい。R〜Rの構造は、モリブデンジチオカルバメートの製造に用いる原料の選定等により調節することができる。
一般式(1)において、R〜Rのアルキル基の分岐数の平均値(全アルキル基の分岐数の平均値)は0.75〜1.25である。ここで、R〜Rのアルキル基の分岐数の平均値とは、モリブデンジチオカルバメートのR〜Rのそれぞれのアルキル基の分岐数の値の平均値である。例えば、一般式(1)において、R〜Rのアルキル基の分岐数がそれぞれ1である場合のR〜Rのアルキル基の分岐数の平均値は1.0であり、また、R〜Rのアルキル基の分岐数がそれぞれ1であり、Rのアルキル基の分岐数が0である場合のR〜Rのアルキル基の分岐数の平均値は0.75であり、また、RとRのアルキル基の分岐数がそれぞれ1であり、RとRのアルキル基の分岐数がそれぞれ2である場合のR〜Rのアルキル基の分岐数の平均値は1.5である。R〜Rのアルキル基の分岐数の平均値がこの範囲にあることで、潤滑油組成物の使用時にモリブデンジチオカルバメートが分解して二硫化モリブデンに類似した皮膜を形成する条件及び速度を適切な範囲に設定することができ、本発明の潤滑油組成物は幅広い使用条件下で優れた摩擦低減特性を発揮することができる。これらの中でも、R〜Rのアルキル基の分岐数の平均値は1.0であることがより好ましく、さらには、R〜Rのアルキル基の分岐数がそれぞれ1であることが更により好ましい。
一般式(1)において、X〜Xは酸素原子又は硫黄原子を表す。潤滑油組成物の摩擦低減特性の観点から、X〜Xのうち2〜3つが硫黄原子で残りが酸素原子であることが好ましく、硫黄原子と酸素原子でそれぞれ2であることが更に好ましく、X〜Xが硫黄原子でX〜Xが酸素原子であることが最も好ましい。
一般式(1)で表されるモリブデンジチオカルバメートとしては、アルキル基が対称型のモリブデンジチオカルバメートであってもよく、アルキル基が非対称型のモリブデンジチオカルバメートであってもよい。対称型のモリブデンジチオカルバメートとしては、R〜Rがすべて同一のアルキル基であるモリブデンジチオカルバメート、又は、RとRが同一のアルキル基であり、RとRがR及びRとは異なる同一のアルキル基であるモリブデンジチオカルバメートが挙げられる。非対称型のモリブデンジチオカルバメートとしては、R〜Rがすべて異なるアルキル基であるモリブデンジチオカルバメート、R〜Rが同一のアルキル基でありRが異なるアルキル基であるモリブデンジチオカルバメート、少なくともRとRが異なるアルキル基であるか、RとRが異なるアルキル基であるモリブデンジチオカルバメート(例えば、RとRが同一のアルキル基であり、RとRが同一のアルキル基であり、RとRが異なるアルキル基であるモリブデンジチオカルバメート)等が挙げられる。これらの中でも、潤滑油組成物の摩擦低減特性の観点から、RとRが同一のアルキル基であり、RとRが同一のアルキル基(このときRとRは同一であっても異なっていてもよい)である対称型のモリブデンジチオカルバメートであることが好ましい。
一般式(1)で表されるモリブデンジチオカルバメートの製造方法は、公知のモリブデンジチオカルバメートの製造方法において、アルキル基の構造が特定の構造となるように原料を適宜変更して製造する方法が挙げられる。例えば、三酸化モリブテン、モリブデン酸のアルカリ金属塩などのモリブデン酸塩等の6価のモリブデン化合物と、水硫化アルカリ又は硫化アルカリとの水溶液又は水懸濁液に、還元剤を添加して、モリブデンを還元処理した後、下記一般式(3)で表されるジアルキルアミン及び必要に応じて下記一般式(4)で表されるジアルキルアミンを含むジアルキルアミン原料と、二硫化炭素とを加えて還元処理されたモリブデン化合物と反応させることにより製造できる。なお、目的に応じてその他の原料や追加の操作を含んでもよい。
Figure 2021031577
一般式(3)において、Rは炭素数10〜14の直鎖又は分岐アルキル基を表し、R10は炭素数8〜14の直鎖又は分岐アルキル基を表す。これらの中でも、潤滑油組成物の摩擦低減特性の観点から、Rは炭素数10〜13の直鎖又は分岐アルキル基であることが好ましく、炭素数13の直鎖又は分岐アルキル基であることがさらに好ましく、炭素数13の分岐アルキル基であることがさらにより好ましい。このとき、RとR10は同一であっても異なっていてもよいが、潤滑油組成物の摩擦低減特性の観点から、RとR10が同一であること、すなわちR及びR10のいずれもが同一の炭素数10〜14の直鎖又は分岐アルキル基であることが特に好ましい。
一般式(4)において、R11、R12はそれぞれ独立して炭素数8〜9の直鎖又は分岐アルキル基を表し、このときR11とR12は同一であっても異なっていてもよい。潤滑油組成物の摩擦低減特性の観点から、R11、R12がそれぞれ独立して炭素数8の直鎖又は分岐アルキル基であることが好ましく、R11及びR12が同一の炭素数8の直鎖又は分岐アルキル基であることがより好ましい。
一般式(1)で表されるモリブデンジチオカルバメートの製造に用いるジアルキルアミン原料としては、一般式(3)で表されるジアルキルアミン及び必要に応じて一般式(4)で表されるジアルキルアミンを含むが、潤滑油組成物の摩擦低減特性の観点から、一般式(3)で表されるジアルキルアミンと一般式(4)で表されるジアルキルアミンとをモル比で、100:0〜25:75の比で含むことが好ましく、100:0〜50:50の比で含むことがより好ましく、100:0〜75:25の比で含むことがさらに好ましく、一般式(3)で表されるジアルキルアミンのみからなることが最も好ましい。
一般式(1)で表されるモリブデンジチオカルバメートの製造においては、アミン原料として、一般式(3)で表されるジアルキルアミンの中でも、下記一般式(5)で表されるジアルキルアミンを用いることが好ましい。
Figure 2021031577
一般式(5)において、R13は分岐数が1である炭素数10〜14のアルキル基であり、このような基としては例えば、分岐数が1である炭素数10のアルキル基、分岐数が1である炭素数11のアルキル基、分岐数が1である炭素数12のアルキル基、分岐数が1である炭素数13のアルキル基、及び分岐数が1である炭素数14のアルキル基が挙げられる。R14は、炭素数8〜14の直鎖又は分岐アルキル基であり、潤滑油組成物の摩擦低減特性の観点から、炭素数10〜14の直鎖又は分岐アルキル基であることが好ましい。
得られるモリブデンジチオカルバメート及び潤滑油組成物の摩擦低減特性の観点から、一般式(1)で表されるモリブデンジチオカルバメートの製造方法に用いるジアルキルアミンは、一般式(5)において、R13及びR14は分岐数が1である炭素数10〜14のアルキル基であることが好ましい。R13及びR14として分岐数が1である炭素数10〜14のアルキル基であるジアルキルアミンとしては、例えば、R13及びR14がそれぞれ分岐数が1である炭素数10のアルキル基、分岐数が1である炭素数11のアルキル基、分岐数が1である炭素数12のアルキル基、分岐数が1である炭素数13のアルキル基、及び分岐数が1である炭素数14のアルキル基からなる群から選ばれるアルキル基であるジアルキルアミンが挙げられ、このときR13とR14は同一のアルキル基であっても異なるアルキル基であってもよい。これらの中でも、R13及びR14が、炭素数が10〜14のいずれかであり分岐数が1である同一のアルキル基であるジアルキルアミンであることがより好ましく、R13及びR14が、炭素数13の分岐数が1である同一のアルキル基であるジアルキルアミンであることが特に好ましい。
また、一般式(1)で表されるモリブデンジチオカルバメートの製造方法においては、得られるモリブデンジチオカルバメート及び潤滑油組成物の摩擦低減特性の観点から、アルキル基の分岐数が1であり、分岐位置がβ位である炭素数10〜14のアルキル基を有するジアルキルアミンを用いることが好ましい。アルキル基の分岐数が1であり、分岐位置がβ位である炭素数10〜14のアルキル基を有するジアルキルアミンは、一般式(5)で表されるジアルキルアミンのうち、R13及びR14の少なくとも一方が、分岐数が1であり分岐位置がβ位である炭素数10〜14のアルキル基であるジアルキルアミンである。分岐数が1であり分岐位置がβ位である炭素数10〜14のアルキル基としては、アミノ基のβ位炭素上に分岐(側鎖)を有し、主鎖及び側鎖の炭素数の合計が10〜14であるアルキル基であれば特に制限されないが、例えば、炭素数が13の場合、2−メチルドデシル基、2−エチルウンデシル基、2−プロピルデシル基、2−ブチルノニル基、2−ペンチルオクチル基が挙げられる。一般式(1)で表されるモリブデンジチオカルバメートの製造方法においては、分岐数が1であり、分岐位置がβ位である炭素数10〜14のアルキル基である1種類のジアルキルアミンを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
一般式(1)で表されるモリブデンジチオカルバメートの製造方法においては、好ましくは、分岐数が1である炭素数10〜14のアルキル基を有するジアルキルアミンと、その他のジアルキルアミン(例えば、2つの炭素数1〜7の直鎖又は分岐アルキル基を有するジアルキルアミン、飽和又は不飽和環状アルキル基を有し炭素数が4〜18であるアルキル基を有するジアルキルアミン、一般式(3)で表されるジアルキルアミン(ただしR11及びR12の少なくともいずれかが分岐数が1である炭素数10〜14のアルキル基である化合物を除く)、一般式(4)で表されるジアルキルアミン等)とを、モル比で100:0〜25:75の比で用いることが好ましく、100:0〜50:50の比で用いることがより好ましく、100:0〜75:25の比で用いることがさらに好ましく、実質的に分岐数が1である炭素数10〜14のアルキル基を有するジアルキルアミンのみを用いることが特に好ましい。なお、ジアルキルアミンの製造方法に起因する微量の異構造体を原料に含む場合、例えば分岐数が1である炭素数10〜14のアルキル基を有するジアルキルアミン原料において製造方法に起因する微量の異構造体を含む場合、実質的に主成分であるジアルキルアミンのみからなるジアルキルアミン原料として、具体的には分岐数が1である炭素数10〜14のアルキル基を有するジアルキルアミンのみからなるジアルキルアミン原料として扱う。
一般式(3)、一般式(4)、一般式(5)で表されるジアルキルアミンは、公知の方法により製造してもよく、また市販品を用いてもよい。このうち、分岐数が1であるアルキル基を有するジアルキルアミンの製造方法としては、例えば、特開平04−312555号公報に記載の方法により得られるβ−分岐アルキル第一級アミンや特開2013−139416号公報に記載の方法により得られるβ分岐アルコールを原料として、特開平02−202855号公報に記載の製造方法により製造する方法等が挙げられる。また、高分岐アルキル基を有するジアルキルアミンの製造方法としては例えば、特表2014−514407号公報に記載のジトリデシルアミンの製造方法や、特開2001−262172号公報に記載のジトリデシルアミンの製造方法を参照することができる。すなわち具体的には、特表2014−514407号公報に記載の、ブチレン、エチレン、プロピレンといった軽質オレフィン供給原料をオリゴマー化することで分岐数が2〜6程度の分岐アルキル基を有するジアルキルアミン原料を得る方法や、特開2001−262172号公報に記載の、イソブテンをトリマー化して得られるドデセンを用いて分岐数が2〜6程度の分岐アルキル基を有するジアルキルアミン原料を得る方法等を用いることができる。
一般式(1)で表されるモリブデンジチオカルバメートの製造方法に用いるモリブデン酸塩としては、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸ヘテロポリ酸等を挙げられ、水硫化アルカリとしては硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化アンモニウム等が挙げられる。
一般式(1)で表されるモリブデンジチオカルバメートの製造方法に用いる水硫化アルカリとしては、例えば水硫化ナトリウム、水硫化カリウム等が挙げられ、硫化アルカリとしては、例えば、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化アンモニウム等が挙げられる。これらの中でも、反応性が良好で、工業的な入手も良好であることから、硫化アルカリが好ましく、硫化ナトリウムが更に好ましい。硫化カリウム、硫化アンモニウム等これらの水溶液や、水酸化アルカリ水溶液中に硫化ガスを導入して得られる硫化アルカリ水溶液も同様に用いることができる。モリブデンジチオカルバメートが収率よく製造できることから、水硫化アルカリ又は硫化アルカリの使用量は、6価のモリブデン化合物のモリブデン1モルに対して、1〜2モルが好ましく、1.2〜1.8モルが更に好ましい。
一般式(1)で表されるモリブデンジチオカルバメートの製造方法に用いる還元剤としては、例えば、ヨウ化水素、硫化水素、水素化ホウ素ナトリウム等の水素化物;亜硫酸ナトリウム、二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム(ハイドロサルファイド)、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等の低級酸素酸の塩;硫化ナトリウム、ポリ硫化ナトリウム、硫化アンモニウム等の硫黄化合物;鉄(II)、スズ(II)、チタン(III)、クロム(II)等の低原子価状態にある金属の塩類;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等のアルデヒド類、ヒドラジン、ボラン、ジボラン、ギ酸、シュン酸、アスコルビン酸等が挙げられる。反応性が良好で、工業的な入手が容易であることから、低級酸素酸のアルカリ金属塩が好ましく、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムが更に好ましい。モリブデンジチオカルバメートが収率よく製造できることから、還元剤の使用量は、6価のモリブデン化合物のモリブデン1モルに対して、0.05〜2モルが好ましく、0.1〜1モルが更に好ましい。
モリブデンジチオカルバメートが収率よく製造できることからジアルキルアミン原料と二硫化炭素とは同じモル数で使用することが好ましく、ジアルキルアミン原料と二硫化炭素の使用量は6価のモリブデン化合物のモリブデン1モルに対して、それぞれ0.9〜2モルであることが好ましく、1〜1.5モルであることが更に好ましい。また、ジアルキルアミン原料と二硫化炭素はそれぞれ、反応に用いる全量を一度に加えて反応させてもよく、2回以上に分けて反応に用いる全量を加えて反応させてもよい。
モリブデンジチオカルバメートが収率よく製造できることから、例えば、ジアルキルアミン原料と二硫化炭素とを添加した後の反応温度は20〜110℃が好ましく、60〜100℃が更に好ましく、また反応時間は2〜15時間程度であることが好ましい。反応終了後、反応液を硫酸等で中和した後、生成物を分離することにより、モリブデンジチオカルバメートを得ることができる。
本発明に用いるモリブデンジチオカルバメート組成物(A)は、一般式(1)で表される単一又は複数のモリブデンジチオカルバメートのみからなってもよく、一般式(1)で表されるモリブデンジチオカルバメートと異なる構造を有するその他のモリブデンジチオカルバメート(以下、その他のモリブデンジチオカルバメートという)を含んでいてもよい。このとき、その他のモリブデンジチオカルバメートの種類に制限はなく、例えば、特開昭62−081396号公報や特開平8−176579号公報等に例示されるような下記の一般式(6)で表されるモリブデンジチオカルバメート等が挙げられる。
Figure 2021031577
一般式(6)において、R15〜R18はそれぞれ独立して炭素数3〜18の直鎖又は分岐アルキル基を表し(このとき、R15〜R18は同一であっても異なっていてもよい)、X〜Xはそれぞれ独立して酸素原子又は硫黄原子を表す(ただしR15が炭素数10〜14の直鎖又は分岐アルキル基を表し、R16〜R18がそれぞれ同一であっても異なっていてもよい炭素数8〜14の直鎖又は分岐アルキル基を表し、R15〜R18の分岐数の平均値(全アルキル基の分岐数の平均値)が0.75〜1.25であり、X〜Xがそれぞれ独立して酸素原子又は硫黄原子を表す場合を除く)。
モリブデンジチオカルバメート組成物(A)に含まれるその他のモリブデンジチオカルバメートとしては、一般式(1)で表されるモリブデンジチオカルバメートと共に使用する際の摩擦低減特性の観点から、一般式(6)で表わされるモリブデンジチオカルバメートであることが好ましい。一般式(6)で表わされるモリブデンジチオカルバメートの中でも、モリブデンジチオカルバメート組成物の摩擦低減特性の観点から、R15〜R18がそれぞれ独立して炭素数8〜13の直鎖又は分岐アルキル基である化合物がより好ましく、R15〜R18がそれぞれ独立して炭素数8又は13の直鎖又は分岐アルキル基である化合物がさらにより好ましい。一般式(6)で表わされるモリブデンジチオカルバメートは、公知の方法により製造することができる。
本発明に用いるモリブデンジチオカルバメート組成物(A)は、潤滑油組成物の摩擦低減特性及び低温安定性の観点から、モリブデンジチオカルバメート組成物中の一般式(1)で表されるモリブデンジチオカルバメートの含有比率がモリブデン原子基準で25〜100質量%であることが好ましく、50〜100質量%であることがより好ましく、75〜100質量%であることがさらに好ましく、90〜100質量%であることが特に好ましい。また、より好ましくは、モリブデンジチオカルバメート組成物(A)は、一般式(1)で表されるモリブデンジチオカルバメートと一般式(6)で表されるモリブデンジチオカルバメートとのモル比率が100:0〜25:75である(モリブデン原子基準の含有比率が100:0〜25:75である)組成物であることが好ましく、100:0〜50:50である(モリブデン原子基準の含有比率が100:0〜50:50である)組成物であることがより好ましく、100:0〜75:25である(モリブデン原子基準の含有比率が100:0〜75:25である)組成物であることがさらに好ましく、100:0〜90:10である(モリブデン原子基準の含有比率が100:0〜90:10である)組成物であることが特に好ましい。
本発明の潤滑油組成物の低温安定性及び摩擦低減特性の観点から、本発明の潤滑油組成物全量に対するモリブデンジチオカルバメート組成物(A)由来のモリブデン原子含有量が200〜2,000質量ppmであることが好ましく、250〜1,800質量ppmであることがより好ましく、300〜1,500質量ppmであることが更に好ましく、350〜1,200質量ppmであることが更により好ましい。本発明の潤滑油組成物全量に対するモリブデンジチオカルバメート組成物(A)由来のモリブデン原子含有量が200質量ppm未満であると、潤滑油組成物の摩擦低減特性が十分でない場合があり、2,000質量ppmより多いと添加量に見合った摩擦低減特性が得られない場合や、低温安定性が低下する場合がある。また、潤滑油組成物中にはモリブデンジチオカルバメート以外の添加剤(例えば酸化防止剤、分散剤として等)由来のモリブデンを含んでいてもよく、このとき潤滑油組成物中の総モリブデン原子含有量に特に制限はないが、潤滑油組成物中の総モリブデン原子含有量は、250〜4,000質量ppmが好ましく、300〜3,000質量ppmがより好ましく、400〜2,500質量ppmが更に好ましく、500〜2,000質量ppmが更により好ましい。
本発明に用いるジアルキルジチオリン酸亜鉛(B)は、下記の一般式(2)で表されるジアルキルジチオリン酸亜鉛である。
Figure 2021031577
一般式(2)において、R〜Rはそれぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基を表す。このような基としては、例えば、炭素数1〜20の直鎖アルキル基、炭素数3〜20の分岐アルキル基、炭素数2〜20の直鎖又は分岐アルケニル基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基等が挙げられる。本発明の潤滑油組成物の摩擦低減特性及び低温安定性の観点から、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(B)として、一般式(2)においてR〜Rが炭素数3〜14の炭化水素基であるジアルキルジチオリン酸亜鉛を用いることが好ましく、R〜Rが炭素数3〜10の炭化水素基であるジアルキルジチオリン酸亜鉛を用いることがより好ましく、R〜Rが炭素数4〜8の炭化水素基であるジアルキルジチオリン酸亜鉛を用いることが更により好ましい。また、前記炭化水素基は直鎖アルキル基又は分岐アルキル基であることが好ましい。
潤滑油組成物中のジアルキルジチオリン酸亜鉛(B)の含有量は特に限定されないが、潤滑油組成物の摩擦低減特性、摩耗防止性能等の観点から、潤滑油組成物中のジアルキルジチオリン酸亜鉛(B)に含まれるリン原子含有量が100〜800質量ppmとなる量であることが好ましく、200〜800質量ppmとなる量であることがより好ましく、300〜800質量ppmとなる量であることが更により好ましい。
本発明に用いるコハク酸イミド系無灰分散剤(C)は、例えば、モノアルケニルコハク酸イミド、ビスアルケニルコハク酸イミド等のアルケニルコハク酸イミド、及び、これらがホウ酸、アルコール、アルデヒド、ケトン、アルキルフェノール、環状カーボネート、有機酸等により変性された変性アルケニルコハク酸イミド等が挙げられる。モノアルケニルコハク酸イミド及びビスアルケニルコハク酸イミドのアルケニル基としては、例えば、炭素数40〜400のアルケニル基であってもよい。本発明においては、潤滑油組成物の低温安定性及び摩擦低減特性の観点から、コハク酸イミド系無灰分散剤(C)として、モノアルケニルコハク酸イミド、ビスアルケニルコハク酸イミド、ホウ素変性アルケニルコハク酸イミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。用いるコハク酸イミド系無灰分散剤の重量平均分子量は特に限定されないが、例えば、1,000〜20,000であることが好ましい。このようなコハク酸イミド系無灰分散剤は公知の方法により製造することができ、例えば、アルケニル無水コハク酸とポリアミン化合物との縮合反応により得ることができる。本発明の潤滑油組成物中のコハク酸イミド系無灰分散剤(C)の含有量は特に限定されないが、潤滑油組成物の低温安定性及び摩擦低減特性の観点から、潤滑油組成物全量に対して0.1〜10質量%であることが好ましく、1〜8質量%であることがより好ましく、2〜6質量%であることが更により好ましい。
本発明に用いる基油(D)は、使用目的や条件に応じて適宜、鉱物基油、化学合成基油、動植物基油及びこれらの混合基油等から選ぶことができる。ここで、鉱物基油としては、例えば、パラフィン基系原油、ナフテン基系原油、中間基系原油、芳香族基系原油があり、更にこれらを常圧蒸留して得られる留出油、或いは常圧蒸留の残渣油を減圧蒸留して得られる留出油があり、また更にこれらを常法に従って精製することによって得られる精製油、具体的には溶剤精製油、水添精製油、脱ロウ処理油及び白土処理油等が挙げられる。
化学合成基油としては、例えば、ポリ−α−オレフィン、ポリイソブチレン(ポリブテン)、モノエステル、ジエステル、ポリオールエステル、ケイ酸エステル、ポリアルキレングリコール、ポリフェニルエーテル、シリコーン、フッ素化化合物、アルキルベンゼン及びGTL基油等が挙げられる。これらの中でも、ポリ−α−オレフィン、ポリイソブチレン(ポリブテン)、ジエステル及びポリオールエステル等は汎用的に使用することができる。
ポリ−α−オレフィンとしては例えば、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン及び1−テトラデセン等をポリマー化又はオリゴマー化したもの、或いはこれらを水素化したもの等が挙げられる。ジエステルとしては例えば、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸及びドデカン二酸等の2塩基酸と、2−エチルヘキサノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール及びトリデカノール等のアルコールのジエステル等が挙げられる。ポリオールエステルとしては例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及びトリペンタエリスリトール等のポリオールと、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びオレイン酸等の脂肪酸とのエステル等が挙げられる。
動植物基油としては、例えば、ヒマシ油、オリーブ油、カカオ脂、ゴマ油、コメヌカ油、サフラワー油、大豆油、ツバキ油、コーン油、ナタネ油、パーム油、パーム核油、ひまわり油、綿実油及びヤシ油等の植物性油脂、牛脂、豚脂、乳脂、魚油及び鯨油等の動物性油脂が挙げられる。上記に挙げたこれらの各種基油は、一種を用いてもよく、二種以上を適宜組み合せて用いてもよい。
本発明においては、得られる潤滑油組成物の低温安定性及び摩擦低減特性の観点から、基油(D)として、鉱物基油又は化学合成基油のいずれかを含む基油を使用することが好ましく、パラフィン系の高度精製鉱物油、ポリ−α−オレフィン系又は、GTL系の化学合成基油を含む基油を使用することがより好ましい。このとき、パラフィン系の高度精製鉱物油、ポリ−α−オレフィン系、GTL系の化学合成基油を、合計量で、基油(D)の全量のうち50質量%以上含むことで、潤滑油組成物の摩擦低減特性をより発揮できるため好ましく、90質量%以上含むことがさらに好ましい。また、本発明の潤滑油組成物中の基油(D)の含有量は特に限定されず、使用目的によって調整することができるが、潤滑油組成物の低温安定性等の観点から、例えば、潤滑油組成物全量に対して20〜98質量%であることが好ましい。
基油(D)の粘度は特に限定されないが、潤滑油組成物の低温安定性及び摩擦低減特性の観点から、100℃の動粘度が0.8〜8.0mm/sであることが好ましく、1.0〜7.0mm/sであることがよりに好ましく、1.2〜6.0mm/sであることが更により好ましい。なお本発明において、100℃動粘度は、JIS K 2283に記載の方法により測定して得られる値である。
本発明の潤滑油組成物中の、モリブデンジチオカルバメート組成物(A)に含まれるモリブデン原子の含有量とジアルキルジチオリン酸亜鉛(B)に含まれるリン原子の含有量の質量比[Mo/P]は、0.7以上3以下である。モリブデンジチオカルバメート組成物(A)に含まれるモリブデン原子の含有量とジアルキルジチオリン酸亜鉛(B)に含まれるリン原子の含有量の質量比[Mo/P]が0.7未満では、得られる潤滑油組成物は低温安定性に劣る場合や摩擦低減特性が十分ではない場合があり、3より大きいと、モリブデンジチオカルバメート組成物(A)とジアルキルジチオリン酸亜鉛(B)の併用による摩擦低減効果が得られず、得られる潤滑油組成物は各種条件下での摩擦低減特性が十分ではない場合がある。本発明においては、前述したモリブデンジチオカルバメート組成物(A)とジアルキルジチオリン酸亜鉛(B)とをこの条件下で含むことで、低温安定性及び摩擦低減特性に優れる潤滑油組成物を得ることができるが、より摩擦低減特性に優れる潤滑油組成物を得る観点から、モリブデンジチオカルバメート組成物(A)に含まれるモリブデン原子の含有量とジアルキルジチオリン酸亜鉛(B)に含まれるリン原子の含有量の質量比[Mo/P]は、0.75以上2以下であることが好ましく、0.8以上1.8以下であることがより好ましく、0.9以上1.5以下であることが更により好ましい。
本発明の潤滑油組成物は、JIS K 2283に記載の方法により測定される100℃動粘度が1.0〜8.0mm/sである。潤滑油組成物の摩擦低減特性の観点からは、本発明の潤滑油組成物は、100℃動粘度が2.0〜7.8mm/sであることが好ましく、3.0〜7.6mm/sであることがより好ましく、3.5〜7.4mm/sであることが更により好ましい。
本発明の潤滑油組成物は、モリブデンジチオカルバメート組成物(A)と、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(B)と、コハク酸イミド系無灰分散剤(C)と、基油(D)とを公知の方法により混合することで製造することができる。この際の混合条件は特に限定されないが、例えば、常温〜150℃で混合する方法等を用いることができる。
本発明の潤滑油組成物には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、公知の潤滑油添加剤を使用目的に応じて適宜使用することが可能であり、例えば、金属系清浄剤、酸化防止剤、耐摩耗剤(但し、モリブデンジチオカルバメート及びジアルキルジチオリン酸亜鉛を除く)、極圧剤、無灰型分散剤(但し、コハク酸イミド系無灰分散剤を除く)、油性向上剤、防錆剤、粘度指数向上剤、金属不活性化剤、消泡剤、固体潤滑剤等が挙げられる。これら添加剤は、それぞれ1種又は2種以上の化合物を使用してもよい。
金属系清浄剤としては、例えば、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属フェネート、アルカリ土類金属サリシレート、アルカリ土類金属ホスホネート等が挙げられ、アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム等が挙げられる。これらの中でも、カルシウム系清浄剤及びマグネシウム系清浄剤からなる群から選択される少なくとも1つの金属系清浄剤を用いることが好ましい。本発明の潤滑油組成物中の金属系清浄剤の含有量は特に限定されず、使用目的等に応じて適宜調整することができるが、例えば、カルシウム原子とマグネシウム原子の合計で、潤滑油組成物全量に対し、0.05〜0.50質量%含有することが好ましく、0.10〜0.40質量%含有することがより好ましい。また、金属系清浄剤のTBNは特に限定されないが、例えば、50〜500mgKOH/gであることが好ましく、100〜400mgKOH/gであることがより好ましく、100〜200mgKOH/gであることが更により好ましい。
酸化防止剤としては、例えば、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、フェノチアジン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、亜リン酸エステル系酸化防止剤等が挙げられ、これらの中でも、フェノール系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤からなる群からなる少なくとも1つの酸化防止剤を用いることが好ましい。本発明の潤滑油組成物中の酸化防止剤の含有量は特に限定されず、使用目的等に応じて適宜調整することができるが、例えば、潤滑油組成物全量に対し、0.01〜10質量%含有することができる。
耐摩耗剤としては、例えば、有機ホスフィン、有機ホスフィンオキシド、有機ホスフィナイト、有機ホスホナイト、有機ホスフィネート、有機ホスファイト、有機ホスホネート、有機ホスフェート、有機ホスホロアミデート等のリン系耐摩耗剤等が挙げられる。潤滑油組成物中の耐摩耗剤(モリブデンジチオカルバメート及びジアルキルジチオリン酸亜鉛を除く)の含有量は特に限定されないが、例えば、潤滑油組成物全量に対して0.01〜10質量%含有することができる。
極圧剤としては、例えば、硫化油脂、硫化鉱油、有機モノ又はポリスルフィド、ポリオレフィンの硫化物、1,3,4―チアジアゾール誘導体、チウラムジスルフィド、ジチオカルバミン酸エステル等の硫黄系や、有機トリチオホスファイト、有機チオホスフェート等のチオリン酸系極圧剤等が挙げられる。本発明の潤滑油組成物中の極圧剤の含有量は特に限定されず、使用目的等に応じて適宜調整することができるが、例えば、潤滑油組成物全量に対し、0.01〜10質量%含有することができる。
無灰分散剤としては、アルケニルコハク酸無水物、アルケニルコハク酸エステル、アルキルメタクリレート系ポリマー、高分子量アミド及びポリアミド、ポリエステル、ポリビニルポリステアレート、マンニッヒ塩基系分散剤、ポリステアルアミド、及びこれらをホウ酸等で変性した変性物等が挙げられる。本発明の潤滑油組成物中の無灰分散剤(コハク酸イミド系無灰分散剤を除く)の含有量は特に限定されず、使用目的等に応じて適宜調整することができるが、例えば、潤滑油組成物全量に対し、0.01〜10質量%含有することができる。
油性向上剤としては、例えば、脂肪酸、油脂或いはこれらの水素添加物又は部分ケン化物、エポキシ化エステル、ヒドロキシステアリン酸の重縮合物又は該重縮合物と脂肪酸とのエステル、高級アルコール、高級アミド、グリセリド、ポリグリセリンエステル、ポリグリセリンエーテル、及び上記の化合物にα−オレフィンオキシドを付加したもの等が挙げられる。本発明の潤滑油組成物中の油性向上剤の含有量は特に限定されず、使用目的等に応じて適宜調整することができるが、例えば、潤滑油組成物全量に対し、0.01〜30質量%含有することができる。
防錆剤としては、例えば、酸化パラフィンワックスカルシウム塩、酸化パラフィンワックスマグネシウム塩、牛脂脂肪酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はアミン塩、アルケニルコハク酸又はアルケニルコハク酸ハーフエステル(アルケニル基の分子量は100〜300程度)、ソルビタンモノエステル、ペンタエリスリトールモノエステル、グリセリンモノエステル、ノニルフェノールエトキシレート、ラノリン脂肪酸エステル、ラノリン脂肪酸カルシウム塩等が挙げられる。本発明の潤滑油組成物中の防錆剤の含有量は特に限定されず、使用目的等に応じて適宜調整することができるが、例えば、潤滑油組成物全量に対し、0.01〜20質量%含有することができる。
粘度指数向上剤としては、例えば、ポリ(C1〜18)アルキルメタクリレート、(C1〜18)アルキルアクリレート/(C1〜18)アルキルメタクリレート共重合体、ジエチルアミノエチルメタクリレート/(C1〜18)アルキルメタクリレート共重合体、エチレン/(C1〜18)アルキルメタクリレート共重合体、ポリイソブチレン、ポリアルキルスチレン、エチレン/プロピレン共重合体、スチレン/マレイン酸エステル共重合体、スチレン/マレイン酸アミド共重合体、スチレン/ブタジエン水素化共重合体、スチレン/イソプレン水素化共重合体等が挙げられ、平均分子量は10,000〜1,500,000程度であってもよい。本発明の潤滑油組成物中の粘度指数向上剤の含有量は特に限定されず、使用目的等に応じて適宜調整することができるが、例えば、潤滑油組成物全量に対し、0.01〜20質量%含有することができる。
金属不活性化剤としては、例えば、N,N’−サリチリデン−1,2−プロパンジアミン、アリザリン、テトラアルキルチウラムジスルフィド、ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、2−アルキルジチオベンゾイミダゾール、2−アルキルジチオベンゾチアゾール、2−(N,N−ジアルキルチオカルバモイル)ベンゾチアゾール、2,5−ビス(アルキルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(N,N−ジアルキルチオカルバモイル)−1,3,4−チアジアゾール等が挙げられる。本発明の潤滑油組成物中の金属不活性化剤の含有量は特に限定されず、使用目的等に応じて適宜調整することができるが、例えば、潤滑油組成物全量に対し、0.1〜10質量%含有することができる。
消泡剤としては、例えば、ポリジメチルシリコーン、トリフルオロプロピルメチルシリコーン、コロイダルシリカ、ポリアルキルアクリレート、ポリアルキルメタクリレート、アルコールエトキシ/プロポキシレート、脂肪酸エトキシ/プロポキシレート、ソルビタン部分脂肪酸エステル等が挙げられる。本発明の潤滑油組成物中の消泡剤の含有量は特に限定されず、使用目的等に応じて適宜調整することができるが、例えば、潤滑油組成物全量に対し、0.01〜10質量%含有することができる。
固体潤滑剤としては、例えば、グラファイト、二硫化モリブデン、ポリテトラフルオロエチレン、脂肪酸アルカリ土類金属塩、雲母、二塩化カドミウム、二ヨウ化カドミウム、フッ化カルシウム、ヨウ化鉛、酸化鉛、チタンカーバイド、窒化チタン、ケイ酸アルミニウム、酸化アンチモン、フッ化セリウム、ポリエチレン、ダイアモンド粉末、窒化ケイ素、窒化ホウ素フッ化炭素、メラミンイソシアヌレート等が挙げられる。本発明の潤滑油組成物中の固体潤滑剤の含有量は特に限定されず、使用目的等に応じて適宜調整することができるが、例えば、潤滑油組成物全量に対し、0.01〜5質量%含有することができる。
本発明の潤滑油組成物は、潤滑油用途であれば特に限定されず使用することができるが、例えば、内燃機関用潤滑油(例えば、自動車やオートバイ等のガソリンエンジン油、ディーゼルエンジン油等)、工業用潤滑油(例えば、ギヤ油、タービン油、コンプレッサー油、油膜軸受油、絶縁油、冷凍機油、作動油、真空ポンプ油、ロックドリル油、圧縮用潤滑油、金属加工油、塑性加工油、熱処理油、多目的潤滑油等)等として使用することができる。中でも、本発明の効果が得られやすいことから、ガソリンエンジンやディーセルエンジン等の内燃機関用潤滑油として使用することが好ましい。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。尚、以下の実施例中、%は特に記載が無い限り質量基準である。
<モリブデンジチオカルバメート組成物の製造>
製造例1
攪拌機、温度計、窒素管及び還流冷却器を取り付けたフラスコに、三酸化モリブデン144g(1.00モル)を水500mlに懸濁させ攪拌した。これに30%硫化ソーダ水溶液280g(1.50モル)を加えて溶解させた後、無水重亜硫酸ソーダ24g(0.13モル)を添加した。次いで、ジアルキルアミン原料として、ジ−トリデシルアミン(トリデシル基は、β位に分岐を有する分岐数1のトリデシル基である)400g(1.05モル)及び二硫化炭素80g(1.05モル)を常温で加えて2時間反応させた後、35%希硫酸154g(0.55モル)で中和し、80℃で5時間還流させた。これを冷却して水層を除去した後、温水で洗浄し、脱水、ろ過して茶褐色粘稠液体560gを得た。ハンドリング改善のためにナフテン油で希釈し、モリブデンジチオカルバメート組成物1を得た。得られたモリブデンジチオカルバメート組成物は、一般式(1)で表され、R=R=R=R=分岐数1のβ分岐トリデシル基であり、X〜Xが酸素原子:硫黄原子を2:2のモル比率で含有する構造のモリブデンジチオカルバメート(全アルキル基の分岐数の平均値は1.0)からなるモリブデンジチオカルバメート組成物であり、Mo原子含有比率は9.8質量%であった。
製造例2
ジアルキルアミン原料として、ジ−トリデシルアミン(トリデシル基は、β位に分岐を有する分岐数1のトリデシル基である)200g(0.53モル)とジ−2−エチルヘキシルアミン127g(0.53モル)とを用いた以外は製造例1と同様の方法により、モリブデンジチオカルバメート組成物2を製造した。得られたモリブデンジチオカルバメート組成物は、一般式(1)又は一般式(6)で表される下記3種類のモリブデンジチオカルバメート(それぞれ、X〜X又はX〜Xが酸素原子:硫黄原子を2:2のモル比率で含有し、各モリブデンジチオカルバメートの全アルキル基の分岐数の平均値はそれぞれ1.0である)を、モリブデン原子基準で下記含有比率で含むモリブデンジチオカルバメート組成物(モリブデンジチオカルバメート組成物2中の一般式(1)で表されるモリブデンジチオカルバメートの含有比率は、モリブデン原子基準で75質量%である)であり、Mo原子含有比率は9.9質量%であった。
25%:一般式(1)において、R〜Rが分岐数1のβ分岐トリデシル基である化合物
50%:一般式(1)において、R及びRが分岐数1のβ分岐トリデシル基であり、R及びRが分岐数1の2−エチルヘキシル基である化合物
25%:一般式(6)において、R15〜R18が分岐数1の2−エチルヘキシル基である化合物
比較製造例1
ジアルキルアミン原料として、ジ−2−エチルヘキシルアミンとジ−イソトリデシルアミン(イソトリデシル基は、分岐数2のイソトリデシル基60モル%と分岐数3のイソトリデシル基40モル%からなる)とを1:1のモル比で用いた以外は製造例1と同様の方法によりモリブデンジチオカルバメート組成物3を製造した。得られたモリブデンジチオカルバメート組成物は、下記3種類の一般式(6)で表されるモリブデンジチオカルバメート(それぞれ、X〜Xが酸素原子:硫黄原子を2:2のモル比率で含有する)を、モリブデン原子基準で下記含有比率で含むモリブデンジチオカルバメート組成物であり、Mo原子含有比率は9.9質量%であった。
25%:R15=R16=R17=R18=分岐数2又は3のイソトリデシル基である化合物(全アルキル基の分岐数の平均値は2.4)
50%:R15=R16=分岐数2又は3のイソトリデシル基、R17=R18=分岐数1の2−エチルヘキシル基である化合物(全アルキル基の分岐数の平均値は1.7)
25%:R15=R16=R17=R18=分岐数1の2−エチルヘキシル基である化合物(全アルキル基の分岐数の平均値は1.0)
比較製造例2
ジアルキルアミン原料として、特開昭62−081396号公報に記載のジ−イソトリデシルアミン(イソトリデシル基は、分岐数2のイソトリデシル基60モル%と分岐数3のイソトリデシル基40モル%からなる)を用いた以外は製造例1と同様の方法によりモリブデンジチオカルバメート組成物4を製造した。得られたモリブデンジチオカルバメート組成物は、一般式(6)で表され、R15=R16=R17=R18=分岐数2又は3のイソトリデシル基であり、X〜Xが酸素原子:硫黄原子を2:2のモル比率で含有する構造のモリブデンジチオカルバメート(全アルキル基の分岐数の平均値は2.4)からなるモリブデンジチオカルバメート組成物であり、Mo原子含有比率は10.0質量%であった。
<潤滑油組成物の調製>
以下の化合物を用いて、表1〜3に記載の組成の潤滑油組成物を調製した。なお表1〜3において、モリブデンジチオカルバメート組成物(A)の含有量は潤滑油組成物中のモリブデン原子質量ppmを、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(B)の含有量は潤滑油組成物中のリン原子質量ppmを、コハク酸イミド系無灰分散剤の含有量は潤滑油組成物中の質量%を表す。また、調製した各潤滑油組成物の、JIS K 2283に準拠してキャノン−フェンスケ粘度計により測定された100℃動粘度を表1〜3に併せて示す。
モリブデンジチオカルバメート組成物(A)
A−1:製造例1で得られたモリブデンジチオカルバメート組成物1
A−2:製造例2で得られたモリブデンジチオカルバメート組成物2
A’−3:比較製造例1で得られたモリブデンジチオカルバメート組成物3(比較成分)
A’−4:比較製造例2で得られたモリブデンジチオカルバメート組成物4(比較成分)
ジアルキルジチオリン酸亜鉛(B)
B−1:一般式(2)において、R、Rが炭素数4の2級アルキル基であり、R、Rが炭素数6の2級アルキル基であるジアルキルジチオリン酸亜鉛
B’−2:トリクレジルホスフェート(比較成分)
コハク酸イミド系無灰分散剤(C)
C−1:コハク酸イミド
C−2:ホウ素変性コハク酸イミド
C’−3:ベンジルアミン(比較成分)
基油(D)
D−1:鉱物基油(100℃動粘度:4.2mm/s)
D−2:鉱物基油(100℃動粘度:8.9mm/s)
Figure 2021031577
Figure 2021031577
Figure 2021031577
<低温安定性評価>
調製した潤滑油組成物20gをそれぞれ透明ガラス瓶に入れ、−5℃で1週間静置した後の外観を目視で観察し、下記低温安定性評価基準に基づき評価することで、潤滑油組成物の低温安定性を評価した。この低温安定性評価が×である潤滑油組成物は、低温環境下及び低温環境下にさらされた後の潤滑油組成物の取り扱い性や、摩擦低減特性等の各種特性の発揮に問題が生じるため、実用性に乏しい潤滑油組成物である。各潤滑油組成物の評価結果を表1〜3にそれぞれ示す。
低温安定性評価基準
○:濁りや沈殿がなく、透明状態を保っていた
×:濁りや沈殿が見られた
<摩擦係数測定>
調製した潤滑油組成物について、MTM試験機(メーカー名 PCS Instruments)を用いて下記測定条件により摩擦係数を測定した。なお各摩擦係数の値は、55〜60minの平均摩擦係数である。摩擦係数測定結果を表1〜3にそれぞれ示す。
試験条件
荷重 10N、30N、50N
転がり速度 20mm/s、100mm/s、3000mm/s
すべり率 50%
温度 80℃
測定時間 60min
<摩擦低減特性評価>
各潤滑油組成物の摩擦係数について、各試験条件(使用環境)にて求められる要求特性に基づき、下記評価基準を設定し、各潤滑油組成物の摩擦係数を評価した。
20mm/sでの摩擦係数評価
◎:摩擦係数が0.055未満である
○:摩擦係数が0.055以上0.065未満である
×:摩擦係数が0.065以上である
100mm/sでの摩擦係数評価
◎:摩擦係数が0.055未満である
○:摩擦係数が0.055以上0.065未満である
×:摩擦係数が0.065以上である
3000mm/sでの摩擦係数評価
◎:摩擦係数が0.030未満である
○:摩擦係数が0.030以上0.034未満である
×:摩擦係数が0.034以上である
さらに、各摩擦係数評価結果に基づき、下記摩擦低減特性評価基準に基づき各潤滑油組成物の摩擦低減特性評価を行った。各潤滑油組成物の評価結果を表1〜3に示す。
摩擦低減特性評価基準
◎:摩擦係数評価結果が全て◎である
○:摩擦係数評価結果が○を含み、×を含まない
×:摩擦係数評価結果の1つ以上が×である
表1〜3から明らかなように、本発明の潤滑油組成物は、低温安定性に優れると共に、各種条件下での摩擦低減特性に優れることがわかる。よって本発明の潤滑油組成物は、低温環境を含む各種条件での保存や使用が可能であり、かつ様々な使用条件下において安定的に摩擦低減特性を発揮できる潤滑油組成物であると言える。

Claims (6)

  1. 下記の一般式(1)で表されるモリブデンジチオカルバメートを含むモリブデンジチオカルバメート組成物(A)と、下記の一般式(2)で表されるジアルキルジチオリン酸亜鉛(B)と、コハク酸イミド系無灰分散剤(C)と、基油(D)と、を含み、前記モリブデンジチオカルバメート組成物(A)に含まれるモリブデン原子の含有量と前記ジアルキルジチオリン酸亜鉛(B)に含まれるリン原子の含有量の質量比[Mo/P]が0.7以上3以下であり、100℃動粘度が1.0〜8.0mm/sである、潤滑油組成物。
    Figure 2021031577
    (式中、Rは炭素数10〜14の直鎖又は分岐アルキル基を表し、R〜Rはそれぞれ独立して炭素数8〜14の直鎖又は分岐アルキル基を表し、R〜Rのアルキル基の分岐数の平均値は0.75〜1.25であり、X〜Xはそれぞれ独立して酸素原子又は硫黄原子を表す。)
    Figure 2021031577
    (式中、R〜Rはそれぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)
  2. モリブデンジチオカルバメート組成物(A)が、一般式(1)のRのアルキル基の分岐数が1であるモリブデンジチオカルバメートを含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
  3. モリブデンジチオカルバメート組成物(A)が、一般式(1)のR〜Rがそれぞれ独立して、炭素数8又は13の直鎖又は分岐アルキル基であるモリブデンジチオカルバメートを含む、請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
  4. モリブデンジチオカルバメート組成物(A)中の、一般式(1)で表されるモリブデンジチオカルバメートの含有比率が、モリブデン原子基準で25〜100質量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
  5. 潤滑油組成物中のモリブデンジチオカルバメート組成物(A)に含まれるモリブデン原子含有量が200〜2000質量ppmである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
  6. 潤滑油組成物中のジアルキルジチオリン酸亜鉛(B)に含まれるリン原子含有量が100〜800質量ppmである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
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