JP7168342B2 - モリブデンジチオカルバメート組成物及びモリブデンジチオカルバメートの製造方法 - Google Patents

モリブデンジチオカルバメート組成物及びモリブデンジチオカルバメートの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、潤滑性添加剤として優れた特性を有するモリブデンジチオカルバメート及びモリブデンジチオカルバメートの製造方法に関する。
自動車分野における燃費規制、排ガス規制など、地球温暖化、大気汚染、酸性雨といった環境問題や有限である石油エネルギーなどの資源保護に起因する規制は年々厳しくなっている。これらの対策として、例えば自動車の省燃費化を進める上では、自動車本体の軽量化、エンジンの改良等、自動車自体の改良と共に、エンジンでの摩擦ロスを防ぐ為のエンジン油の低粘度化、良好な摩擦調整剤の添加等、エンジン油の改善も重要な要素となっている。
有機モリブデン化合物は優れた潤滑性及び摩擦低減作用を有しており、中でもモリブデンジチオカルバメートは、金属に対する腐食性も少ないことから種々の潤滑油に添加されている。特にエンジン油においては、エンジン各部の摩擦抵抗を低減しその結果燃料の使用量を節減する、いわゆる省燃費化に効果的であり、省燃費油には必須の添加剤となってきている。
例えば、特許文献1には、炭素数1~24のアルキル基を有し、硫黄原子と酸素原子の比が特定の割合である硫化オキシモリブデンジアルキルジチオカーバメートを潤滑剤として利用することが記載されている。特許文献2には、炭素原子数4~13の炭化水素基と、炭素原子数8~24の炭化水素基とを有するモリブデンジチオカーバメートとして、具体的に、2-エチルヘキシル基と、トリデシル基、ドデシル基またはオクタデシル基とを有するモリブデンジチオカーバメートが記載されている。
近年では、自動車の低燃費化・省燃費化のためにエンジンや駆動系の改良も進められており、結果として使用時のエンジン回転数の広範化が進んでいる。そのような状況下で、従来のモリブデンジチオカルバメート化合物は、一般的に特定の潤滑領域、例えばエンジン回転数が550~800rpm程度の低い領域においては高い摩擦低減効果を発揮できることがエンジントルク試験などにより知られているものの、それ以外の領域、例えばエンジン回転数が800rpmよりも高い領域(例えば1200~2000rpm程度の領域)では、その摩擦低減効果が十分ではない場合が生じている。よって市場では、内燃機関用の添加剤として実際の使用条件として想定される幅広い条件下や、またグリース用添加剤としても同様に、幅広い使用条件下で優れた摩擦低減効果を発揮することができるモリブデンジチオカルバメートが求められている。
特開昭52-019702号公報 特開昭62-081396号公報
従って、本発明の目的は、幅広い使用条件下で摩擦低減効果を発揮するモリブデンジチオカルバメートを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の構造を有するモリブデンジチオカルバメートが幅広い使用条件下で優れた摩擦低減効果を発揮することを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は下記の一般式(1)で表されるモリブデンジチオカルバメートを50モル%以上含有してなる、モリブデンジチオカルバメート組成物である。
Figure 0007168342000001
(式中、R 及びR は分岐数1のβ分岐トリデシル基であり、R 及びR は分岐数1の2-エチルヘキシル基であり、X~Xはそれぞれ独立して酸素原子または硫黄原子を表す。)
本発明によれば、幅広い使用条件下で優れた摩擦低減効果を発揮するモリブデンジチオカルバメートおよびモリブデンジチオカルバメートの製造方法を提供することができる。特に、本発明のモリブデンジチオカルバメートは、使用頻度が非常に高い領域で優れた摩擦低減効果を示す。
本発明のモリブデンジチオカルバメートは、下記の一般式(1)で表されるモリブデンジチオカルバメートである。
Figure 0007168342000002
一般式(1)において、Rは炭素数10~14の直鎖または分岐アルキル基を表す。炭素数10~14の直鎖または分岐アルキル基としては、例えば、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基といった直鎖アルキル基や、2級デシル基、イソデシル基、2級ウンデシル基、イソウンデシル基、2級ドデシル基、イソドデシル基、2級トリデシル基、イソトリデシル基、2級テトラデシル基、イソテトラデシル基といった分岐アルキル基が挙げられる。Rがこのようなアルキル基であることで、本発明のモリブデンジチオカルバメートは幅広い使用条件下で優れた摩擦低減効果を発揮することができる。
これらの中でも、特に幅広い使用条件下で優れた摩擦低減効果を発揮する観点から、Rは炭素数10~13の直鎖または分岐アルキル基であることが好ましく、炭素数10または13の直鎖または分岐アルキル基であることがより好ましく、炭素数13の直鎖または分岐アルキル基であることがさらに好ましく、炭素数13の分岐アルキル基であることがさらにより好ましい。ここで、分岐アルキル基とは、分岐構造を有するアルキル基のことを指すが、このときの分岐アルキル基の分岐数に特に制限はなく、例えば分岐数は1~4程度であってもよい。特に使用時に分解して二硫化モリブデンに類似した皮膜を形成する条件および速度を適切な範囲に設定することができ、幅広い使用条件下で優れた摩擦低減効果を発揮する観点から、Rは分岐数が1~2の分岐アルキル基であることがより好ましく、分岐数が1の分岐アルキル基であることが特に好ましい。さらに、分岐数が1の分岐アルキル基としては、その分岐位置が異なる複数種類のアルキル基が存在するが、特に優れた摩擦低減効果を発揮する観点から、Rはβ位に分岐を有する(窒素原子に結合している炭素原子の隣の炭素原子に分岐構造を有する)分岐アルキル基であることが特に好ましい。Rの構造は、モリブデンジチオカルバメートの製造に用いる原料の選定等により調節することができる。
一般式(1)において、R~Rはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい炭素数8~14の直鎖または分岐アルキル基を表す。また、R~RはRと同一のアルキル基を含んでいてもよい。炭素数8~14の直鎖または分岐アルキル基としては、例えば、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基といった直鎖アルキル基、2級オクチル基、イソオクチル基、2級ノニル基、イソノニル基、2級デシル基、イソデシル基、2級ウンデシル基、イソウンデシル基、2級ドデシル基、イソドデシル基、2級トリデシル基、イソトリデシル基、2級テトラデシル基、イソテトラデシル基等の分岐アルキル基が挙げられる。R~Rがこのようなアルキル基であることで、Rのアルキル基構造との組合せにより、本発明のモリブデンジチオカルバメートは優れた摩擦低減効果を発揮することができる。これらの中でも、Rのアルキル基との組合せにより特に優れた摩擦低減効果を発揮する観点から、R~Rは炭素数8~13の直鎖または分岐アルキル基であることが好ましく、炭素数8または13の直鎖または分岐アルキル基であることがより好ましく、炭素数8または13の分岐アルキル基であることがさらにより好ましい。このときの分岐アルキル基の分岐数に特に制限はなく、例えば、分岐数は1~4程度であってもよい。特に幅広い使用条件下で優れた摩擦低減効果を発揮する観点からは、R~Rの少なくともいずれかが分岐数1~2の分岐アルキル基であることがより好ましく、R~Rの少なくともいずれかが分岐数1の分岐アルキル基であることがさらに好ましく、R~Rのすべてが分岐数1の分岐アルキル基であることが特に好ましい。また、R~Rのいずれかのアルキル基が分岐アルキル基である場合の、分岐アルキル基の分岐位置はいずれも特に限定されない。R~Rが分岐アルキル基を含んでなる場合において、特に優れた摩擦低減効果を発揮する観点から、分岐アルキル基はβ位に分岐を有する分岐アルキル基であることが好ましい。R~Rの構造は、モリブデンジチオカルバメートの製造に用いる原料の選定等により調節することができる。
一般式(1)において、R~Rの分岐数の平均値は0.75~1.25である。ここで、R~Rの分岐数の平均値とは、モリブデンジチオカルバメートのR~Rのそれぞれのアルキル基の分岐の数の値の平均値である。例えば、一般式(1)において、R~Rの分岐数がそれぞれ1である場合のR~Rの分岐数の平均値は1.0であり、また、R~Rの分岐数がそれぞれ1であり、Rの分岐数が0である場合のR~Rの分岐数の平均値は0.75であり、また、RとRの分岐数がそれぞれ1であり、RとRの分岐数がそれぞれ2である場合のR~Rの分岐数の平均値は1.5である。R~Rの分岐数の平均値がこの範囲にあることで、使用時に分解して二硫化モリブデンに類似した皮膜を形成する条件および速度を適切な範囲に設定することができ、本発明のモリブデンジチオカルバメートは幅広い使用条件下で優れた摩擦低減効果を発揮することができる。これらの中でも、R~Rの分岐数の平均値は1.0であることがより好ましく、さらには、R~Rの分岐数がそれぞれ1であることが好ましい。
一般式(1)において、X~Xは酸素原子又は硫黄原子を表す。潤滑性に優れることから、X~Xのうち2~3つが硫黄原子で残りが酸素原子であることが好ましく、硫黄原子と酸素原子でそれぞれ2であることが更に好ましく、X~Xが硫黄原子でX~Xが酸素原子であることが最も好ましい。
一般式(1)で表されるモリブデンジチオカルバメートとしては、摩擦低減効果の観点から、アルキル基が対称型のモリブデンジチオカルバメートであってもよく、アルキル基が非対称型のモリブデンジチオカルバメートであってもよい。対称型のモリブデンジチオカルバメートとしては、R~Rがすべて同一のアルキル基であるモリブデンジチオカルバメート、または、RとRが同一のアルキル基であり、RとRがRおよびRとは異なる同一のアルキル基であるモリブデンジチオカルバメートが挙げられる。非対称型のモリブデンジチオカルバメートとしては、R~Rがすべて異なるアルキル基であるモリブデンジチオカルバメート、R~Rが同一のアルキル基でありRが異なるアルキル基であるモリブデンジチオカルバメート、少なくともRとRが異なるアルキル基であるか、RとRが異なるアルキル基であるモリブデンジチオカルバメート(例えば、RとRが同一のアルキル基であり、RとRが同一のアルキル基であり、RとRが異なるアルキル基であるモリブデンジチオカルバメート)等が挙げられる。これらの中でも、摩擦低減効果の観点から、RとRが同一のアルキル基であり、RとRが同一のアルキル基(このときRとRは同一でも異なっていてもよい)である対称型のモリブデンジチオカルバメートであることが好ましい。
一般式(1)で表されるモリブデンジチオカルバメートを製造する方法は、公知のモリブデンジチオカルバメートの製造方法において、アルキル基の構造が特定の構造となるように原料を適宜変更して製造する方法が挙げられる。例えば、三酸化モリブテン、モリブデン酸のアルカリ金属塩などのモリブデン酸塩等の6価のモリブデン化合物と、水硫化アルカリ又は硫化アルカリとの水溶液又は水懸濁液に、還元剤を添加して、モリブデンを還元処理した後、下記一般式(2)で表されるジアルキルアミン及び必要に応じて下記一般式(3)で表されるジアルキルアミンを含んでなるジアルキルアミン原料と、二硫化炭素とを加えて還元処理されたモリブデン化合物と反応させることにより製造できる。
Figure 0007168342000003
(式中、R11は炭素数10~14の直鎖または分岐アルキル基であり、R12は炭素数8~14の直鎖または分岐アルキル基であり、R13~R14は同一であっても異なっていてもよい炭素数8~9の直鎖または分岐アルキル基である。)
モリブデン酸塩としては、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸ヘテロポリ酸等を挙げられ、水硫化アルカリとしては硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化アンモニウム等が挙げられる。
水硫化アルカリとしては、例えば水硫化ナトリウム、水硫化カリウム等が挙げられ、硫化アルカリとしては、例えば、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化アンモニウム等が挙げられる。これらの中でも、反応性が良好で、工業的な入手も良好であることから、硫化アルカリが好ましく、硫化ナトリウムが更に好ましい。硫化カリウム、硫化アンモニウム等これらの水溶液や、水酸化アルカリ水溶液中に硫化ガスを導入して得られる硫化アルカリ水溶液も同様に用いることができる。本発明のモリブデンジチオカルバメートが収率よく製造できることから、水硫化アルカリ又は硫化アルカリの使用量は、6価のモリブデン化合物のモリブデン1モルに対して、1~2モルが好ましく、1.2~1.8モルが更に好ましい。
還元剤としては、例えば、ヨウ化水素、硫化水素、水素化ホウ素ナトリウム等の水素化物;亜硫酸ナトリウム、二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム(ハイドロサルファイド)、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等の低級酸素酸の塩;硫化ナトリウム、ポリ硫化ナトリウム、硫化アンモニウム等の硫黄化合物;鉄(II)、スズ(II)、チタン(III)、クロム(II)等の低原子価状態にある金属の塩類;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等のアルデヒド類、ヒドラジン、ボラン、ジボラン、ギ酸、シュン酸、アスコルビン酸等が挙げられる。反応性が良好で、工業的な入手が容易であることから、低級酸素酸のアルカリ金属塩が好ましく、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムが更に好ましい。本発明のモリブデンジチオカルバメートが収率よく製造できることから、還元剤の使用量は、6価のモリブデン化合物のモリブデン1モルに対して、0.05~2モルが好ましく、0.1~1モルが更に好ましい。
一般式(2)で表されるジアルキルアミンは、R11が炭素数10~14の直鎖または分岐アルキル基であり、R12が炭素数8~14の直鎖または分岐アルキル基である。これらの中でも、得られるモリブデンジチオカルバメートが幅広い使用条件下で優れた摩擦低減効果を発揮できる観点から、R11は炭素数10~13の直鎖または分岐アルキル基であることが好ましく、炭素数13の直鎖または分岐アルキル基であることがさらに好ましく、炭素数13の分岐アルキル基であることがさらにより好ましい。このとき、R11とR12は同一であっても異なっていてもよいが、得られるモリブデンジチオカルバメートが優れた摩擦低減効果を発揮できる観点から、R11とR12が同一であること、すなわちR11およびR12のいずれもが同一の炭素数10~14の直鎖または分岐アルキル基であることが好ましい。
一般式(3)で表されるジアルキルアミンは、R13~R14が同一であっても異なっていてもよい炭素数8~9の直鎖または分岐アルキル基である。得られるモリブデンジチオカルバメートが優れた摩擦低減効果を発揮できる観点から、R13~R14が同一であっても異なっていてもよい炭素数8の直鎖または分岐アルキル基であることが好ましい。
一般式(2)や一般式(3)で表されるジアルキルアミンは、公知の方法により製造してもよく、また市販品を用いてもよい。このうち、分岐数が1であるアルキル基を有するジアルキルアミンの製造方法としては、例えば、特開平04-312555号に記載の方法により得られるβ-分岐アルキル第一級アミンや特開2013-139416号に記載の方法により得られるβ分岐アルコールを原料として、特開平02-202855号に記載の製造方法により製造する方法等が挙げられる。また、高分岐アルキル基を有するジアルキルアミンの製造方法としては例えば、特表2014-514407号に記載のジトリデシルアミンの製造方法を参照することができる。すなわち具体的には、ブチレン、エチレン、プロピレンといった軽質オレフィン供給原料をオリゴマー化することで、分岐数が2~4程度の分岐アルキル基を有するジアルキルアミン原料を得ることができ、例えば、ブチレンを主体とした原料をオリゴマー化することで、炭素数が13の分岐数が2~4である分岐アルキル基からなるジアルキルアミンを主成分とする原料を得ることができる。
一般式(1)で表されるモリブデンジチオカルバメートの製造に用いるジアルキルアミン原料としては、一般式(2)で表されるジアルキルアミン及び必要に応じて一般式(3)で表されるジアルキルアミンを含んでなるが、得られるモリブデンジチオカルバメートが幅広い使用条件下で優れた摩擦低減効果を発揮できる観点から、一般式(2)で表されるジアルキルアミンと一般式(3)で表されるジアルキルアミンとをモル比で、100~25:0~75の比で含んでなることが好ましく、100~50:0~50の比で含んでなることがより好ましく、100~75:0~25の比で含んでなることがさらに好ましく、実質的に一般式(2)で表されるジアルキルアミンのみからなることが最も好ましい。
一般式(1)で表されるモリブデンジチオカルバメートが収率よく製造できることから、ジアルキルアミン原料と二硫化炭素とは同じモル数で使用することが好ましく、ジアルキルアミン原料と二硫化炭素の使用量は6価のモリブデン化合物のモリブデン1モルに対して、それぞれ0.9~2モルであることが好ましく、1~1.5モルであることが更に好ましい。また、ジアルキルアミン原料と二硫化炭素はそれぞれ、反応に用いる全量を一度に加えて反応させてもよく、2回以上に分けて反応に用いる全量を加えて反応させてもよい。
一般式(1)で表されるモリブデンジチオカルバメートが収率よく製造できることから、例えば、ジアルキルアミン原料と二硫化炭素とを添加した後の反応温度は20~110℃が好ましく、60~100℃が更に好ましく、また反応時間は2~15時間程度であることが好ましい。反応終了後、反応液を硫酸等で中和した後、生成物を分離することにより、一般式(1)で表されるモリブデンジチオカルバメートを得ることができる。
本発明のモリブデンジチオカルバメート組成物は、一般式(1)で表される単一または複数のモリブデンジチオカルバメートのみからなってもよく、一般式(1)で表されるモリブデンジチオカルバメートと異なる構造を有するその他のモリブデンジチオカルバメート(以下、その他のモリブデンジチオカルバメートという)をさらに含んでいてもよい。このとき、その他のモリブデンジチオカルバメートの種類に制限はなく、例えば、特開昭62-081396号公報や特開平8-176579号公報等にて製造されたモリブデンジチオカルバメートに例示されるような下記の一般式(4)で表されるモリブデンジチオカルバメート等が挙げられる。
Figure 0007168342000004
(式中、R~Rはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい炭素数3~18の直鎖または分岐アルキル基を表し、X~Xはそれぞれ独立して酸素原子または硫黄原子を表す(ただしRが炭素数10~14の直鎖または分岐アルキル基を表し、R~Rがそれぞれ同一であっても異なっていてもよい炭素数8~14の直鎖または分岐アルキル基を表し、R~Rの分岐数の平均値が0.75~1.25であり、X~Xがそれぞれ独立して酸素原子または硫黄原子を表す場合を除く)。)
本発明のモリブデンジチオカルバメート組成物に含まれるその他のモリブデンジチオカルバメートとしては、一般式(1)で表されるモリブデンジチオカルバメートと共に使用する際の摩擦低減効果の均一性を高め、組成物として優れた摩擦低減効果を発揮することができる観点から、一般式(4)で表わされるモリブデンジチオカルバメートであることが好ましい。一般式(4)で表わされるモリブデンジチオカルバメートの中でも、モリブデンジチオカルバメート組成物の摩擦低減効果の観点から、R~Rがそれぞれ同一であっても異なっていてもよい炭素数8~13の直鎖または分岐アルキル基であるものがより好ましく、R~Rがそれぞれ同一であっても異なっていてもよい炭素数8または13の直鎖または分岐アルキル基であるものがさらにより好ましい。一般式(4)で表わされるモリブデンジチオカルバメートは、公知の方法により製造することができる。
本発明のモリブデンジチオカルバメート組成物は、摩擦低減効果の均一性を高め、よって組成物として優れた摩擦低減効果を発揮することができる観点から、組成物中に一般式(1)で表されるモリブデンジチオカルバメートを少なくとも25モル%以上含んでなることが好ましく、50モル%以上含んでなることがより好ましく、75モル%以上含んでなることがさらに好ましく、90モル%以上含んでなることが特に好ましい。より好ましくは、本発明のモリブデンジチオカルバメート組成物は、一般式(1)で表されるモリブデンジチオカルバメートと一般式(4)で表されるモリブデンジチオカルバメートとのモル比率が25~100:75~0からなる組成物であることが好ましく、50~100:50~0からなる組成物であることがより好ましく、75~100:25~0からなる組成物であることがさらに好ましく、90~100:10~0からなる組成物であることが特に好ましい。
本発明のモリブデンジチオカルバメート組成物の、一般式(1)で表されるモリブデンジチオカルバメートのR~Rの分岐数と、その他のモリブデンジチオカルバメートに含まれるアルキル基の分岐数(例えば、一般式(4)で表されるモリブデンジチオカルバメートのR~Rの分岐数)およびそれらのモル比率によって算出される、モリブデンジチオカルバメート組成物中の全アルキル基の分岐数の平均値は特に限定されないが、モリブデンジチオカルバメート組成物が使用時に分解して二硫化モリブデンに類似した皮膜を形成する条件および速度を適切な範囲に設定することができ、幅広い条件下で優れた摩擦低減効果を発揮する観点から、組成物中の全アルキル基の分岐数の平均値は、0.25~2.5であることが好ましく、0.30~2.0であることがより好ましく、0.40~1.75であることがさらに好ましく、0.50~1.50であることがさらにより好ましく、0.60~1.40であることが特に好ましい。モリブデンジチオカルバメート組成物中の全アルキル基の分岐数の平均値は、一般式(1)で表されるモリブデンジチオカルバメートのR~Rの分岐数、その他のモリブデンジチオカルバメートのアルキル基の分岐数、およびそれらの組成物中の含有比率を調節することで調節することができる。
なお、「全アルキル基の分岐数の平均値」は、一般式(1)で表されるモリブデンジチオカルバメートのR~Rやその他のモリブデンジチオカルバメートの各アルキル基が有する分岐鎖の数の平均値を表す。
本発明のモリブデンジチオカルバメートおよび本発明のモリブデンジチオカルバメート組成物は、従来のモリブデンジチオカルバメートと比べ、幅広い使用条件下で摩擦損失を低減し、より優れた潤滑性添加剤として有用である。
本発明のモリブデンジチオカルバメートの製造方法は、6価のモリブデン化合物を還元処理する工程と、分岐数が1である炭素数10~14のアルキル基を有するジアルキルアミンと二硫化炭素とを還元処理されたモリブデン化合物と反応させる工程と、を含むモリブデンジチオカルバメートの製造方法である。このとき、6価のモリブデン化合物の選定および各反応方法ならびに条件については、前述した方法等の公知の方法を適用することができ、また、必要に応じてその他の原料や追加の操作を含んでいてもよい。
本発明のモリブデンジチオカルバメートの製造方法に用いる分岐数が1である炭素数10~14のアルキル基を有するジアルキルアミンは、下記一般式(5)で表されるジアルキルアミンである。
Figure 0007168342000005
(式中、R15は分岐数が1である炭素数10~14のアルキル基であり、R16は炭素数1~18の直鎖アルキル基または炭素数3~18の分岐アルキル基である。)
一般式(5)において、R15は分岐数が1である炭素数10~14のアルキル基であり、例えば、分岐数が1である炭素数10のアルキル基、分岐数が1である炭素数11のアルキル基、分岐数が1である炭素数12のアルキル基、分岐数が1である炭素数13のアルキル基、および分岐数が1である炭素数14のアルキル基が挙げられる。R16は、炭素数1~18の直鎖アルキル基または炭素数3~18の分岐アルキル基であり、得られるモリブデンジチオカルバメートが幅広い使用条件下で優れた摩擦低減効果を発揮できる観点から、炭素数8~14の直鎖または分岐アルキル基であることが好ましく、炭素数10~14の直鎖または分岐アルキル基であることがより好ましい。
得られるモリブデンジチオカルバメートの使用時の二硫化モリブデンに類似した皮膜を形成する条件および速度を適切な範囲に設定し、摩擦低減効果を高める観点から、本発明のモリブデンジチオカルバメートの製造方法に用いるジアルキルアミンは、一般式(5)において、R15およびR16が分岐数が1である炭素数10~14のアルキル基であることが好ましい。R15およびR16が分岐数が1である炭素数10~14のアルキル基であるジアルキルアミンとしては、例えば、R15およびR16がそれぞれ同一であっても異なっていてもよい、分岐数が1である炭素数10のアルキル基、分岐数が1である炭素数11のアルキル基、分岐数が1である炭素数12のアルキル基、分岐数が1である炭素数13のアルキル基、および分岐数が1である炭素数14のアルキル基からなる群から選ばれるアルキル基であるジアルキルアミンが挙げられ、R15とR16は同一のアルキル基であっても異なるアルキル基であってもよい。これらの中でも、R15およびR16が、炭素数が10~14のいずれかであり分岐数が1である同一のアルキル基であるジアルキルアミンであることがより好ましく、R15およびR16が、炭素数13の分岐数が1である同一のアルキル基であるジアルキルアミンであることが特に好ましい。
また本発明のモリブデンジチオカルバメートの製造方法においては、得られるモリブデンジチオカルバメートが特に幅広い使用条件下で摩擦低減効果を発揮できる観点から、アルキル基の分岐数が1であり、分岐位置がβ位である炭素数10~14のアルキル基を有するジアルキルアミンを用いることが好ましい。アルキル基の分岐数が1であり、分岐位置がβ位である炭素数10~14のアルキル基を有するジアルキルアミンは、一般式(5)で表されるジアルキルアミンのうち、R15およびR16の少なくとも一方が、分岐数が1であり分岐位置がβ位である炭素数10~14のアルキル基であるジアルキルアミンである。分岐数が1であり分岐位置がβ位である炭素数10~14のアルキル基としては、アミノ基のβ位炭素上に分岐(側鎖)を有し、主鎖および側鎖の炭素数の合計が10~14であるアルキル基であれば特に制限されないが、例えば、炭素数が13の場合、2-メチルドデシル基、2-エチルウンデシル基、2-プロピルデシル基、2-ブチルノニル基、2-ペンチルオクチル基が挙げられる。本発明のモリブデンジチオカルバメートの製造方法においては、分岐数が1であり、分岐位置がβ位である炭素数10~14のアルキル基である1種類のジアルキルアミンを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
本発明のモリブデンジチオカルバメートの製造方法においては、一般式(5)で表されるジアルキルアミン以外のその他のジアルキルアミン(以下、その他のジアルキルアミンという)を併せて用いてもよい。その他のジアルキルアミンとしては、例えば、2つの炭素数1~7の直鎖または分岐アルキル基を有するジアルキルアミン、飽和または不飽和環状アルキル基を有し炭素数が4~18であるアルキル基を有するジアルキルアミン、一般式(2)で表されるジアルキルアミン(ただしR11およびR12の少なくともいずれかが分岐数が1である炭素数10~14のアルキル基であるものを除く)、一般式(3)で表されるジアルキルアミン等が挙げられる。これらの中でも、その他のジアルキルアミンとしては、一般式(2)で表されるジアルキルアミン(ただしR11およびR12の少なくともいずれかが分岐数が1である炭素数10~14のアルキル基であるものを除く)または、一般式(3)で表されるジアルキルアミンであることが好ましく、具体的には、前述した構造のジアルキルアミンが挙げられる。
本発明のモリブデンジチオカルバメートの製造方法においては、分岐数が1である炭素数10~14のアルキル基を有するジアルキルアミンと、その他のジアルキルアミンとを、モル比で100~25:0~75の比で用いることが好ましく、100~50:0~50の比で用いることがより好ましく、100~75:0~25の比で用いることがさらに好ましく、実質的に分岐数が1である炭素数10~14のアルキル基を有するジアルキルアミンのみを用いることが特に好ましい。なお本発明においては、ジアルキルアミンの製造方法に起因する微量の異構造体を原料に含む場合、例えば分岐数が1である炭素数10~14のアルキル基を有するジアルキルアミン原料において製造方法に起因する微量の異構造体を含む場合、実質的に主成分であるジアルキルアミンのみからなるジアルキルアミン原料として、具体的には分岐数が1である炭素数10~14のアルキル基を有するジアルキルアミンのみからなるジアルキルアミン原料として扱う。
本発明のモリブデンジチオカルバメートの製造方法に用いる分岐数が1である炭素数10~14のアルキル基を有するジアルキルアミンは、公知の方法により製造してもよく、また市販品を用いてもよい。同様に、その他のジアルキルアミンについても、公知の方法により製造してもよく、また市販品を用いてもよい。分岐数が1である炭素数10~14のアルキル基を有するジアルキルアミンの製造方法としては、例えば、前述した分岐数が1であるアルキル基を有するジアルキルアミンの製造方法において、炭素数10~14の分岐数が1であるアルコールを原料として用いることで製造する方法が挙げられる。
本発明のモリブデンジチオカルバメートの製造方法によれば、幅広い使用条件下で摩擦低減効果を発揮できるモリブデンジチオカルバメートを高収率で得ることができる。
本発明のモリブデンジチオカルバメートまたはモリブデンジチオカルバメート組成物(以下まとめて、本発明のモリブデンジチオカルバメートという場合がある)を潤滑性添加剤として使用可能な用途としては特に限定されず、例えば、エンジン油、ギヤ油、タービン油、作動油、難燃性作動液、冷凍機油、コンプレッサー油、真空ポンプ油、軸受油、絶縁油、摺動面油、ロックドリル油、金属加工油、塑性加工油、熱処理油等の潤滑油;軸受用グリース、歯車用グリース、ギヤ用グリース、ジョイント用グリース、ベアリング用グリース等のグリース等が挙げられる。
本発明のモリブデンジチオカルバメートを基油に添加して潤滑油組成物またはグリースとする場合のモリブデンジチオカルバメートの基油への溶解・分散方法は限定されず、例えば、基油にモリブデンジチオカルバメートを添加し、必要に応じて加熱・撹拌することにより溶解させてもよいし、モリブデンジチオカルバメートを基油中に粒子状で分散させる場合は、分散安定性を向上させるために必要に応じて基油への添加前または添加後にモリブデンジチオカルバメートを微粉砕して分散させてもよい。粒子状のモリブデンジチオカルバメートを基油に分散させる際のモリブデンジチオカルバメートの粒子径は特に限定されないが、例えばレーザー回折光散乱法により測定される50%粒子径が10~450nmであることが好ましい。また粒子状のモリブデンジチオカルバメートを微粉砕する方法も特に限定されないが、例えば、分散安定性が良好で50%粒子径の小さい分散物が得られることから、基油にモリブデンジチオカルバメートを添加してからローラーミル、ハンマーミル、回転ミル、振動ミル、遊星ミル、アトライター、ビーズミル等により微粉砕する方法等を用いることができる。
モリブデンジチオカルバメートを基油に分散させる場合、例えば、基油に対しできるだけ多量のモリブデンジチオカルバメートを添加して分散させた後、目標とする濃度になるように基油で希釈してもよい。ただし、モリブデンジチオカルバメートの量が過剰であると、増粘して分散が不十分になる虞があることから、ローラーミル、ハンマーミルでは、基油100質量部に対して、モリブデンジチオカルバメートを、好ましくは10~180質量部、より好ましくは20~150質量部添加し、回転ミル、振動ミル、遊星ミル、アトライター、ビーズミルでは、基油100質量部に対して、モリブデンジチオカルバメートを、好ましくは1~40質量部、より好ましくは1.5~30質量部添加する。
本発明のモリブデンジチオカルバメートを基油に添加して潤滑油組成物に用いる場合、モリブデンジチオカルバメートの特性を発揮しやすくするためには、基油と添加剤を含めた潤滑油組成物全量に対してモリブデンジチオカルバメート由来のモリブデン含量が50~3,000質量ppmとなる量であることが好ましく、100~2,500質量ppmとなる量であることがより好ましく、300~2,000質量ppmとなる量であることが更に好ましく、500~1,800質量ppmとなる量であることが更により好ましく、特に、摩擦低減効果を期待して使用する場合は、600~1,500ppmとなる量が最も好ましい。50ppm未満であると摩擦低減効果が見られない場合があり、3,000ppmより多いと添加量に見合った摩擦低減効果が得られない場合や、基油への溶解性が著しく低下する場合がある。このとき、潤滑油組成物中にはモリブデンジチオカルバメート以外の添加剤(例えば酸化防止剤、分散剤として等)由来のモリブデンを含んでいてもよく、また潤滑油組成物中の総モリブデン含量に特に制限はないが、潤滑油組成物中の総モリブデン含量は、50~4,000質量ppmが好ましく、100~3,000質量ppmがより好ましく、300~2,500質量ppmが更に好ましく、500~2,000質量ppmが更により好ましく、600~1,800ppmが最も好ましい。
潤滑油組成物に用いる基油としては、特に制限はなく、使用目的や条件に応じて適宜、鉱物基油、化学合成基油、動植物基油及びこれらの混合基油等から選ぶことができる。ここで、鉱物基油としては、例えば、パラフィン基系原油、ナフテン基系原油、中間基系原油、芳香族基系原油があり、更にこれらを常圧蒸留して得られる留出油、或いは常圧蒸留の残渣油を減圧蒸留して得られる留出油があり、また更にこれらを常法に従って精製することによって得られる精製油、具体的には溶剤精製油、水添精製油、脱ロウ処理油及び白土処理油等が挙げられる。
化学合成基油としては、例えば、ポリ-α-オレフィン、ポリイソブチレン(ポリブテン)、モノエステル、ジエステル、ポリオールエステル、ケイ酸エステル、ポリアルキレングリコール、ポリフェニルエーテル、シリコーン、フッ素化化合物、アルキルベンゼン及びGTL基油等が挙げられる。これらの中でも、ポリ-α-オレフィン、ポリイソブチレン(ポリブテン)、ジエステル及びポリオールエステル等は汎用的に使用することができる。ポリ-α-オレフィンとしては例えば、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン及び1-テトラデセン等をポリマー化又はオリゴマー化したもの、或いはこれらを水素化したもの等が挙げられる。ジエステルとしては例えば、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸及びドデカン二酸等の2塩基酸と、2-エチルヘキサノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール及びトリデカノール等のアルコールのジエステル等が挙げられる。ポリオールエステルとしては例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及びトリペンタエリスリトール等のポリオールと、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びオレイン酸等の脂肪酸とのエステル等が挙げられる。
動植物基油としては、例えば、ヒマシ油、オリーブ油、カカオ脂、ゴマ油、コメヌカ油、サフラワー油、大豆油、ツバキ油、コーン油、ナタネ油、パーム油、パーム核油、ひまわり油、綿実油及びヤシ油等の植物性油脂、牛脂、豚脂、乳脂、魚油及び鯨油等の動物性油脂が挙げられる。上記に挙げたこれらの各種基油は、一種を用いてもよく、二種以上を適宜組み合せて用いてもよい。また、モリブデンジチオカルバメートの特性が発揮しやすいことから、少なくとも鉱物基油または化学合成基油を含んでなる基油を使用することが好ましく、パラフィン系の高度精製鉱物油、ポリ-α-オレフィン系または、GTL系の化学合成基油を含んでなる基油ならびにこれらの混合基油を使用することがより好ましい。このとき、基油の全量のうちこれらの基油を50質量%以上含んでなることで、モリブデンジチオカルバメートの特性をより発揮できるため好ましく、基油の全量のうち90質量%以上含んでなることがさらに好ましい。
潤滑油組成物の基油の粘度は、モリブデンジチオカルバメートの分散安定性の点からは高い方が好ましいが、あまりに高い場合にはモリブデンジチオカルバメートの分散が困難になる場合があることから、基油の粘度は、40℃の動粘度が1~800mm/sであることが好ましく、3~250mm/sであることが更に好ましく、8~80mm/sであることが最も好ましい。なお本発明において、動粘度は、JIS K 2283に記載の方法により測定して得られる値である。
潤滑油組成物には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、公知の潤滑油添加剤を使用目的に応じて適宜使用することが可能であり、例えば、金属系清浄剤、無灰型分散剤、耐摩耗剤、酸化防止剤、リン系耐摩耗剤又はリン系酸化防止剤、硫黄系極圧剤、チオリン酸系極圧剤、油性向上剤、防錆剤、粘度指数向上剤、金属不活性化剤、消泡剤、固体潤滑剤等が挙げられる。これら添加剤は、1種又は2種以上の化合物を使用してもよい。
〔金属系清浄剤〕
金属系清浄剤としては、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属フェネート、アルカリ土類金属サリシレート、アルカリ土類金属ホスホネート等が使用されており、アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム等が挙げられる。これらの中でも、カルシウム系清浄剤及びマグネシウム系清浄剤からなる群から選択される少なくとも1つの金属系清浄剤を、カルシウム原子とマグネシウム原子の合計で、潤滑油組成物全量に対し、0.05~0.4質量%で含有することが好ましい。金属系清浄剤は、TBN(ASTM D2896に準拠する全塩基価(Total Base Number))が、20~600mgKOH/gのものが知られているが、TBNが低すぎる場合は、多量に添加する必要があり、TBNが高すぎる場合は、(A)成分の潤滑性の持続に悪影響が出る場合がある。(C)成分のTBNは、50~500mgKOH/gであることが好ましく、100~400mgKOH/gであることがさらに好ましく、100~200mgKOH/gであることが最も好ましい。
〔無灰型分散剤〕
潤滑油組成物には一般に、スラッジの分散及び可溶化、スラッジ・デポジット(スラッジの分安定な前駆体)の可溶化等により、スラッジの堆積を防ぐために無灰型分散剤が配合されている。無灰型分散剤としては、アルケニル無水コハク酸とポリアミン化合物との縮合反応によって得られるコハク酸イミド型分散剤、アルケニル無水コハク酸とポリオール化合物との縮合反応によって得られるコハク酸エステル型分散剤、アルケニル無水コハク酸とアルカノールアミンとの縮合反応によって得られるコハク酸エステルアミド型分散剤、アルキルフェノールとポリアミンをホルムアルデヒドで縮合させて得られるマンニッヒ塩基系分散剤及びこれらのホウ酸変性物が挙げられる。潤滑油組成物は、無灰型分散剤を、潤滑油組成物全量に対し0.5~10質量%含有することが好ましい。
〔亜鉛ジチオフォスフェート化合物〕
潤滑油組成物には、腐食防止、耐荷重性の向上、摩耗防止能等を目的として亜鉛ジチオフォスフェート化合物が配合されていてもよく、亜鉛ジチオフォスフェート化合物を潤滑油組成物全量に対し、リン原子として200~800質量ppm含有することが好ましい。亜鉛ジチオフォスフェート化合物の含量がリン原子として200質量ppmよりも少ないと腐食防止、耐荷重性の向上、摩耗防止能効果が十分得られない場合があり、800質量ppmよりも多いと、排ガス浄化触媒を被毒したりする場合がある。亜鉛ジチオフォスフェート化合物の含有量は、350~800質量ppmであることが更に好ましく、500~800質量ppmであることが最も好ましい。
〔酸化防止剤〕
潤滑油組成物用の酸化防止剤として、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、フェノチアジン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、亜リン酸エステル系酸化防止剤等が配合されていてもよく、好ましくは、フェノール系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤からなる群からなる少なくとも1つの酸化防止剤を潤滑油組成物全量に対し、0.1~10質量%で配合してもよい。
〔リン系耐摩耗剤又はリン系酸化防止剤〕
リン系耐摩耗剤又はリン系酸化防止剤としては、例えば、有機ホスフィン、有機ホスフィンオキシド、有機ホスフィナイト、有機ホスホナイト、有機ホスフィネート、有機ホスファイト、有機ホスホネート、有機ホスフェート、有機ホスホロアミデート等が挙げられる。リン系耐摩耗剤又はリン系酸化防止剤の好ましい配合量は、その合計量が潤滑油組成物全体に対して0.1~20質量%程度である。
〔硫黄系極圧剤〕
硫黄系極圧剤としては、例えば、硫化油脂、硫化鉱油、有機モノ又はポリスルフィド、ポリオレフィンの硫化物、1,3,4―チアジアゾール誘導体、チウラムジスルフィド、ジチオカルバミン酸エステル等が挙げられる。硫黄系極圧剤の好ましい配合量は、潤滑油組成物全体に対して0.1~20質量%程度である。
〔チオリン酸系極圧剤〕
チオリン酸系極圧剤としては、例えば、有機トリチオホスファイト、有機チオホスフェート等が挙げられる。チオリン酸系極圧剤の好ましい配合量は、潤滑油組成物全体に対して0.1~20質量%程度である。但し、排ガス浄化触媒を被毒する場合があることから、組成物全体のリン含量が1000質量ppm、硫黄含有量が5000質量ppmをそれぞれ超えないことが好ましい。
〔油性向上剤〕
油性向上剤としては、例えば、脂肪酸、油脂或いはこれらの水素添加物又は部分ケン化物、エポキシ化エステル、ヒドロキシステアリン酸の重縮合物又は該重縮合物と脂肪酸とのエステル、高級アルコール、高級アミド、グリセリド、ポリグリセリンエステル、ポリグリセリンエーテル、および上記の化合物にα-オレフィンオキシドを付加したもの等が挙げられる。油性向上剤の好ましい配合量は、潤滑油組成物全体に対して0.05~15質量%程度である。油性向上剤の配合量が0.05質量%未満では、充分な添加効果が得られない場合があり、15質量%を超えると、配合量に見合う効果は得られず、更に粘度指数等の粘度特性を低下させる場合がある。
〔防錆剤〕
防錆剤としては、例えば、酸化パラフィンワックスカルシウム塩、酸化パラフィンワックスマグネシウム塩、牛脂脂肪酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はアミン塩、アルケニルコハク酸又はアルケニルコハク酸ハーフエステル(アルケニル基の分子量は100~300程度)、ソルビタンモノエステル、ペンタエリスリトールモノエステル、グリセリンモノエステル、ノニルフェノールエトキシレート、ラノリン脂肪酸エステル、ラノリン脂肪酸カルシウム塩等が挙げられる。防錆剤の好ましい配合量は、防錆効果が充分に発揮される範囲として、潤滑油組成物全体に対して0.1~15質量%程度である。
〔粘度指数向上剤〕
粘度指数向上剤としては、例えば、ポリ(C1~18)アルキルメタクリレート、(C1~18)アルキルアクリレート/(C1~18)アルキルメタクリレート共重合体、ジエチルアミノエチルメタクリレート/(C1~18)アルキルメタクリレート共重合体、エチレン/(C1~18)アルキルメタクリレート共重合体、ポリイソブチレン、ポリアルキルスチレン、エチレン/プロピレン共重合体、スチレン/マレイン酸エステル共重合体、スチレン/マレイン酸アミド共重合体、スチレン/ブタジエン水素化共重合体、スチレン/イソプレン水素化共重合体等が挙げられる。平均分子量は10,000~1,500,000程度である。粘度指数向上剤の好ましい配合量は、潤滑油組成物全体に対して0.1~20質量%程度である。
〔金属不活性化剤〕
金属不活性化剤としては、例えば、N,N’-サリチリデン-1,2-プロパンジアミン、アリザリン、テトラアルキルチウラムジスルフィド、ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、2-アルキルジチオベンゾイミダゾール、2-アルキルジチオベンゾチアゾール、2-(N,N-ジアルキルチオカルバモイル)ベンゾチアゾール、2,5-ビス(アルキルジチオ)-1,3,4-チアジアゾール、2,5-ビス(N,N-ジアルキルチオカルバモイル)-1,3,4-チアジアゾール等が挙げられる。金属不活性化剤の好ましい配合量は、潤滑油組成物全体に対して0.01~5質量%程度である。
〔消泡剤〕
消泡剤としては、例えば、ポリジメチルシリコーン、トリフルオロプロピルメチルシリコーン、コロイダルシリカ、ポリアルキルアクリレート、ポリアルキルメタクリレート、アルコールエトキシ/プロポキシレート、脂肪酸エトキシ/プロポキシレート、ソルビタン部分脂肪酸エステル等が挙げられる。消泡剤の好ましい配合量は、潤滑油組成物全体に対して1~1000質量ppm程度である。
〔固体潤滑剤〕
固体潤滑剤としては、例えば、グラファイト、二硫化モリブデン、ポリテトラフルオロエチレン、脂肪酸アルカリ土類金属塩、雲母、二塩化カドミウム、二ヨウ化カドミウム、フッ化カルシウム、ヨウ化鉛、酸化鉛、チタンカーバイド、窒化チタン、ケイ酸アルミニウム、酸化アンチモン、フッ化セリウム、ポリエチレン、ダイアモンド粉末、窒化ケイ素、窒化ホウ素フッ化炭素、メラミンイソシアヌレート等が挙げられる。固体潤滑剤の好ましい配合量は、潤滑油組成物全体に対して0.005~2質量%程度である。0.005質量%未満では添加効果は得られず、2質量%を超えると、エンジン油の流動性に悪影響を与える場合がある。
本発明のモリブデンジチオカルバメートを潤滑性添加剤として用いた潤滑油組成物は、内燃機関用潤滑油(例えば、自動車やオートバイ等のガソリンエンジン油、ディーゼルエンジン油等)、工業用潤滑油(例えば、ギヤ油、タービン油、油膜軸受油、冷凍機用潤滑油、真空ポンプ油、圧縮用潤滑油、多目的潤滑油等)等に使用することができる。中でも、本発明の効果が得られやすいことから、ガソリンエンジンやディーセルエンジン等の内燃機関用潤滑油用の潤滑性添加剤として使用することが好ましい。
本発明のモリブデンジチオカルバメートを基油に添加してグリース組成物とする場合は、必要に応じて、公知の添加剤を併用してもよい。添加剤としては、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等の酸化防止剤;カルシウム、マグネシウム、バリウムなどのスルホネート、フェネート、サリシレート、ホスフェート及びこれらの過塩基性塩等の清浄剤;高級アルコール類、高級脂肪酸類、高級脂肪酸グリセリンエステル類、高級脂肪酸アミド類、高級アルキルアミン類等の油性向上剤;アルケニルコハク酸イミド等の分散剤;リン酸エステル、亜鉛ジアルキルジチオフォスフェート(ZnDTP)、亜鉛ジアルキルジチオカルバメート等の極圧剤;ジアルキルジチオフォスフェート、モリブデン長鎖アミン塩、モリブデンアルケニルコハク酸イミド錯体等の他の有機モリブデン化合物;粘度指数向上剤、流動点降下剤、防錆剤、腐食防止剤、消泡剤等が挙げられる。またこれらの添加剤は、本発明のモリブデンジチオカルバメートと配合し、添加剤組成物としてから、グリースに使用してもよい。
本発明のモリブデンジチオカルバメートを基油に添加してグリース組成物とする場合の基油としては、例えば、潤滑油組成物の場合に例示した基油が挙げられる。グリース組成物に使用する基油としては、モリブデンジチオカルバメートの潤滑性向上効果が出やすいことから、少なくとも鉱物油または炭化水素系合成油を含んでなることが好ましく、パラフィン系の高度精製鉱物油、ポリ-α-オレフィン系またはGTL系の化学合成基油ならびにこれらの混合基油を含んでなる基油を使用することが更に好ましい。このとき、基油の全量のうちこれらの基油を50質量%以上含んでなることで、モリブデンジチオカルバメートの特性をより発揮できるため好ましく、基油の全量のうち90質量%以上含んでなることがさらに好ましい。
本発明のモリブデンジチオカルバメートを基油に添加してグリース組成物とする場合、増稠剤を更に含有してもよい。増稠剤としては、石鹸系又はコンプレックス石鹸系増稠剤、有機非石鹸系増稠剤、無機非石鹸系増稠剤等が挙げられる。なお、基油と増稠剤からなり、他の添加剤を含有しないグリースを基グリースという場合がある。
石鹸系増稠剤としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、ゾーマリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノレイン酸等の高級脂肪酸とリチウム、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、バリウム、カルシウム等の塩基を反応させた石鹸や、上記脂肪酸と塩基に更に酢酸、安息香酸、セバシン酸、アゼライン酸、リン酸、ホウ酸等を反応させたコンプレックス石鹸増稠剤等が挙げられる。
有機非石鹸系増稠剤としては、例えば、テレフタレメート系増稠剤、ウレア系増稠剤、ポリテトラフルオロエチレン、フルオロ化エチレン-プロピレン共重合体等のフッ素系等が挙げられるが、ウレア系増稠剤が好ましい。ウレア系増稠剤としては、例えば、モノイソシアネートとモノアミンを反応させたモノウレア系化合物、ジイソシアネートとモノアミンを反応させたジウレア系化合物、ジイソシアネートとモノアミンとモノオールを反応させたウレアウレタン系化合物、ジイソシアネートとジアミンとモノイソシアネートを反応させたテトラウレア系化合物等が挙げられる。
本発明のモリブデンジチオカルバメートのグリース組成物に対する添加量があまりに少ない場合は十分な摩擦低減性及び磨耗防止性が得られず、またあまりに多い場合には、添加量に見合う性能の向上が得られないだけでなく、グリース組成物の物性に悪影響を与える場合がある。本発明のモリブデンジチオカルバメートの添加量は、グリース組成物全量に対して、0.1~10質量%が好ましく、0.2~7質量%が更に好ましく、0.3~5質量%が最も好ましい。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。尚、以下の実施例中、%は特に記載が無い限り質量基準である。
なお、以下の実施例1は参考例である。
<実施例1>
攪拌機、温度計、窒素管及び還流冷却器を取り付けたフラスコに、三酸化モリブデン144g(1.00モル)を水500mlに懸濁させ攪拌した。これに30%硫化ソーダ水溶液280g(1.50モル)を加えて溶解させた後、無水重亜硫酸ソーダ24g(0.13モル)を添加した。次いで、ジアルキルアミン原料として、ジ-トリデシルアミン(トリデシル基は、β位に分岐を有する分岐数1のトリデシル基である)400g(1.05モル)及び二硫化炭素80g(1.05モル)を常温で加えて2時間反応させた後、35%希硫酸154g(0.55モル)で中和し、80℃で5時間還流させた。これを冷却して水層を除去した後、温水で洗浄し、脱水、ろ過して茶褐色粘稠液体560gを得た。ハンドリング改善のためにナフテン油で希釈し、Mo元素含有比率が9.8%のサンプルを得た。得られたモリブデンジチオカルバメートは、一般式(1)で表され、R=R=R=R=分岐数1のトリデシル基であり、X~Xが酸素原子:硫黄原子を2:2のモル比率で含有してなる構造のモリブデンジチオカルバメートであった。
<実施例2>
ジアルキルアミン原料として、ジ-トリデシルアミン(トリデシル基は、β位に分岐を有する分岐数1のトリデシル基である)200g(0.53モル)とジ-2-エチルヘキシルアミン127g(0.53モル)とを用いた以外は実施例1と同様の方法によりモリブデンジチオカルバメートを製造した。得られたモリブデンジチオカルバメートは、一般式(1)または一般式(4)で表される下記3種類のモリブデンジチオカルバメートの下記モル比率の混合物(それぞれ、X~XまたはX~Xが酸素原子:硫黄原子を2:2のモル比率で含有してなる)であり、本発明のモリブデンジチオカルバメートを75モル%含有するモリブデンジチオカルバメート組成物(全アルキル基の分岐数の平均値は1.0である)であり、Mo元素含有比率は9.9%であった。
25% R=R=R=R=分岐数1のβ分岐トリデシル基
50% R=R=分岐数1のβ分岐トリデシル基、
=R=分岐数1の2-エチルヘキシル基
25% R=R=R=R=分岐数1の2-エチルヘキシル基
<比較例1>
ジアルキルアミン原料として、特開昭62-081396号に記載のジ-イソトリデシルアミン(イソトリデシル基は、分岐数2のイソトリデシル基60モル%と分岐数3のイソトリデシル基40モル%からなる)を用いた以外は実施例1と同様の方法によりモリブデンジチオカルバメートを製造した。得られたモリブデンジチオカルバメートは、一般式(4)で表され、R=R=R=R=分岐数2または3のイソトリデシル基であり、X~Xが酸素原子:硫黄原子を2:2のモル比率で含有してなる構造のモリブデンジチオカルバメート組成物(全アルキル基の分岐数の平均値は2.4)であり、Mo元素含有比率は10.0%であった。
<比較例2>
ジアルキルアミン原料として、ジ-2-エチルヘキシルアミンとジ-イソトリデシルアミン(イソトリデシル基は、分岐数2のイソトリデシル基60モル%と分岐数3のイソトリデシル基40モル%からなる)とを1:1のモル比で用いた以外は実施例1と同様の方法によりモリブデンジチオカルバメートを製造した。得られたモリブデンジチオカルバメートは、一般式(4)で表される下記3種類のモリブデンジチオカルバメートの下記モル比率のモリブデンジチオカルバメート組成物(全アルキル基の分岐数の平均値は1.7である)であり、X~Xが酸素原子:硫黄原子を2:2のモル比率で含有してなり、Mo元素含有比率は9.9%であった。
25% R=R=R=R=分岐数2または3のイソトリデシル基
50% R=R=分岐数2または3のイソトリデシル基、
=R=分岐数1の2-エチルヘキシル基
25% R=R=R=R=分岐数1の2-エチルヘキシル基
<エンジントルク試験>
得られたモリブデンジチオカルバメート(MoDTC)を用い、潤滑油組成物1~4および基油のみからなる基準油を調製し、下記試験条件でエンジントルク試験を行った。各エンジン回転数での電動モーターにかかるトルクをトルクメーターで測定し、基準油にて測定されたトルク値を基準値(トルク低減率0%)として、基準値に対する潤滑油組成物1~4のトルクの減少率(%)をそれぞれ計算により求め、トルク低減率とした。これらの結果を表1および表2に示す。なお、トルク低減率が高いほど、すなわちトルクが低いほど、摩擦低減特性が高い省燃費油であることを示す。
<試験条件1>
試験エンジン:直列4気筒1.8L ガソリンエンジン(トヨタ自動車製)
基油:基油1(トヨタ純正キャッスルモーターオイル SN 0W-20)
合成油ベース(100℃動粘度 8.7mm/s)
MoDTC以外の化合物に由来するMoを100ppm含む
エンジン回転方法:電動モーターによる回転
測定条件:無負荷、定置試験
オイル温度:80℃
測定エンジン回転数:800rpm、1200rpm、1600rpm
Figure 0007168342000006
<試験条件2>
試験エンジン:直列4気筒2.0L ガソリンエンジン(日産自動車製)
基油:基油2(トヨタ純正キャッスルモーターオイル 0W-16)
合成油ベース(100℃動粘度 7.1mm/s)
MoDTC以外の化合物に由来するMoを100ppm含む
エンジン回転方法:電動モーターによる回転
測定条件:無負荷、定置試験
オイル温度:80℃
測定エンジン回転数:800rpm、1200rpm、1600rpm
Figure 0007168342000007
表1~2から明らかなように、本発明のモリブデンジチオカルバメートおよびモリブデンジチオカルバメート組成物は、トルク低減率が従来のモリブデンジチオカルバメートに比べて高く、各種条件下で摩擦低減効果が高いことがわかる。特に、本発明のモリブデンジチオカルバメートは、内燃機関用潤滑油において摩擦低減効果が高いとされるエンジン回転数の低い潤滑領域のみならず、潤滑条件がマイルドであり、最も使用頻度の高い回転領域(1200rpm、1600rpm)でも高いトルク低減率を示すことから、従来のモリブデンジチオカルバメートに比べて幅広い使用条件下で摩擦損失を低減することができ、例えば内燃機関用潤滑油用添加剤として、優れた省燃費効果を発揮することができることがわかる。

Claims (2)

  1. 下記の一般式(1)で表されるモリブデンジチオカルバメートを50モル%以上含有してなる、モリブデンジチオカルバメート組成物
    Figure 0007168342000008
    (式中、R 及びR は分岐数1のβ分岐トリデシル基であり、R 及びR は分岐数1の2-エチルヘキシル基であり、X~Xはそれぞれ独立して酸素原子または硫黄原子を表す。)
  2. 6価のモリブデン化合物を還元処理する工程と、ジ-トリデシルアミン及びジ-2-エチルヘキシルアミンと二硫化炭素とを還元処理されたモリブデン化合物と反応させる工程とを含み、前記ジ-トリデシルアミンのトリデシル基はβ位に分岐を有する分岐数1のトリデシル基である、モリブデンジチオカルバメートの製造方法。
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