以下、添付図面に従って本開示の技術に係る磁気テープカートリッジ、磁気テープドライブ、磁気テープシステム、及び磁気テープドライブの動作方法の実施形態の一例について説明する。
先ず、以下の説明で使用される文言について説明する。
CPUとは、“Central Processing Unit”の略称を指す。RAMとは、“Random Access Memory”の略称を指す。DRAMとは、“Dynamic Random Access Memory”の略称を指す。SRAMとは、“Static Random Access Memory”の略称を指す。NVMとは、“Non-Volatile Memory”の略称を指す。ROMとは、“Read Only Memory”の略称を指す。EEPROMとは、“Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory”の略称を指す。SSDとは、“Solid State Drive”の略称を指す。HDDとは、“Hard Disk Drive”の略称を指す。ASICとは、“Application Specific Integrated Circuit”の略称を指す。PLDとは、“Programmable Logic Device”の略称を指す。FPGAとは、“Field-Programmable Gate Array”の略称を指す。SoCとは、“System-on-a-Chip”の略称を指す。ICとは、“Integrated Circuit”の略称を指す。RFIDとは、“Radio Frequency Identifier”の略称を指す。LTOとは、“Linear Tape-Open”の略称を指す。IBMとは、“International Business Machines Corporation”の略称を指す。IDとは、“Identification Data”の略称を指す。BOTとは、“Beginning Of Tape”の略称を指す。EOTとは、“End Of Tape”の略称を指す。MFMとは、“Magnetic Force Microscope”の略称を指す。SEMとは、“Scanning Electron Microscope”の略称を指す。QRとは、“Quick Response”の略称を指す。
一例として図1に示すように、磁気テープシステム2は、磁気テープカートリッジ10及び磁気テープドライブ30を備えている。磁気テープドライブ30には、磁気テープカートリッジ10が装填される。磁気テープカートリッジ10は磁気テープMTを収容している。磁気テープドライブ30は、装填された磁気テープドライブ30から磁気テープMTを引き出し、引き出した磁気テープMTを走行させながら、磁気テープMTに対してデータを記録したり、磁気テープMTからデータを読み取ったりする。
次に、図2~図4を参照しながら、磁気テープカートリッジ10の構成の一例について説明する。なお、以下の説明では、説明の便宜上、図2~図4において、磁気テープカートリッジ10の磁気テープドライブ30(図5参照)への装填方向を矢印Aで示し、矢印A方向を磁気テープカートリッジ10の前方向とし、磁気テープカートリッジ10の前方向の側を磁気テープカートリッジ10の前側とする。以下に示す構造の説明において、「前」とは、磁気テープカートリッジ10の前側を指す。
また、以下の説明では、説明の便宜上、図2~図4において、矢印A方向と直交する矢印B方向を右方向とし、磁気テープカートリッジ10の右方向の側を磁気テープカートリッジ10の右側とする。以下に示す構造の説明において、「右」とは、磁気テープカートリッジ10の右側を指す。
また、以下の説明では、説明の便宜上、図2~図4において、矢印B方向と逆の方向を左方向とし、磁気テープカートリッジ10の左方向の側を磁気テープカートリッジ10の左側とする。以下に示す構造の説明において、「左」とは、磁気テープカートリッジ10の左側を指す。
また、以下の説明では、説明の便宜上、図2~図4において、矢印A方向及び矢印B方向と直交する方向を矢印Cで示し、矢印C方向を磁気テープカートリッジ10の上方向とし、磁気テープカートリッジ10の上方向の側を磁気テープカートリッジ10の上側とする。以下に示す構造の説明において、「上」とは、磁気テープカートリッジ10の上側を指す。
また、以下の説明では、説明の便宜上、図2~図4において、磁気テープカートリッジ10の前方向と逆の方向を磁気テープカートリッジ10の後方向とし、磁気テープカートリッジ10の後方向の側を磁気テープカートリッジ10の後側とする。以下に示す構造の説明において、「後」とは、磁気テープカートリッジ10の後側を指す。
また、以下の説明では、説明の便宜上、図2~図4において、磁気テープカートリッジ10の上方向と逆の方向を磁気テープカートリッジ10の下方向とし、磁気テープカートリッジ10の下方向の側を磁気テープカートリッジ10の下側とする。以下に示す構造の説明において、「下」とは、磁気テープカートリッジ10の下側を指す。
また、以下の説明では、磁気テープカートリッジ10の仕様としてLTOを例に挙げて説明するが、これはあくまでも一例に過ぎず、IBM3592の磁気テープカートリッジの仕様に準じていてもよい。
また、以下の説明において、特に断りがない限り、角度が深い(大きい)又は浅い(小さい)とは、現時点の角度に比べて角度が深い又は浅い、ということを意味する。また、以下の説明において、特に断りがない限り、磁気テープMTの幅が広い又は狭いとは、基準の幅に比べて広い又は狭い、ということを意味する。基準の幅は、固定値又は可変値である。また、以下の説明において、特に断りがない限り、走行中の磁気テープMTにかかる張力が強い又は弱いとは、基準の張力に比べて強い又は弱い、ということを意味する。基準の張力は、固定値又は可変値である。ここで、可変値とは、例えば、外部から与えられた指示、及び/又は、予め定められた条件に応じて変動する値である。
一例として図2に示すように、磁気テープカートリッジ10は、平面視略矩形であり、かつ、箱状のケース12を備えている。ケース12は、本開示の技術に係る「ケース」の一例である。ケース12には、磁気テープMTが収容される。ケース12は、ポリカーボネート等の樹脂製であり、上ケース14及び下ケース16を備えている。上ケース14及び下ケース16は、上ケース14の下周縁面と下ケース16の上周縁面とを接触させた状態で、溶着(例えば、超音波溶着)及びビス止めによって接合されている。接合方法は、溶着及びビス止めに限らず、他の接合方法であってもよい。
ケース12の内部には、カートリッジリール18が回転可能に収容されている。カートリッジリール18は、リールハブ18A、上フランジ18B1、及び下フランジ18B2を備えている。リールハブ18Aは、円筒状に形成されている。リールハブ18Aは、カートリッジリール18の軸心部であり、軸心方向がケース12の上下方向に沿っており、ケース12の中央部に配置されている。上フランジ18B1及び下フランジ18B2の各々は円環状に形成されている。リールハブ18Aの上端部には上フランジ18B1の平面視中央部が固定されており、リールハブ18Aの下端部には下フランジ18B2の平面視中央部が固定されている。なお、リールハブ18Aと下フランジ18B2が一体として成型されていてもよい。
リールハブ18Aの外周面には、磁気テープMTが巻き回されており、磁気テープMTの幅方向の端部は上フランジ18B1及び下フランジ18B2によって保持されている。
ケース12の右壁12Aの前側には、開口12Bが形成されている。磁気テープMTは、開口12Bから引き出される。
一例として図3に示すように、下ケース16にはカートリッジメモリ19が設けられている。具体的には、下ケース16の右後端部に、カートリッジメモリ19が収容されている。カートリッジメモリ19は、本開示の技術に係る「非接触式通信媒体」の一例である。本実施形態では、いわゆるパッシブ型のRFIDタグがカートリッジメモリ19として採用されている。
カートリッジメモリ19には、磁気テープMTに関する情報が記憶されている。磁気テープMTに関する情報とは、例えば、磁気テープカートリッジ10を管理する管理情報を指す。管理情報には、例えば、カートリッジメモリ19に関する情報、磁気テープカートリッジ10を特定可能な情報、磁気テープMTの記録容量、磁気テープMTに記録されているデータの概要、データの項目、及びデータの記録形式等を示す情報が含まれている。
カートリッジメモリ19は、非接触式読み書き装置との間で非接触通信を行う。非接触式読み書き装置としては、例えば、磁気テープカートリッジ10の製造工程で使用される非接触式読み書き装置、及び、磁気テープドライブ(例えば、図5に示す磁気テープドライブ30)内で使用される非接触式読み書き装置(例えば、図5~図7に示す非接触式読み書き装置50)が挙げられる。
非接触式読み書き装置は、カートリッジメモリ19に対して、非接触式で各種情報の読み書きを行う。詳しくは後述するが、カートリッジメモリ19は、非接触式読み書き装置から与えられた磁界MF(図6等参照)に対して電磁的に作用することで電力を生成する。そして、カートリッジメモリ19は、生成した電力を用いて作動し、磁界MFを介して非接触式読み書き装置と通信を行うことで非接触式読み書き装置との間で各種情報の授受を行う。なお、通信方式は、例えば、ISO14443又はISO18092等の公知の規格に準じる方式であってもよいし、ECMA319のLTO仕様に準じる方式等であってもよい。
一例として図3に示すように、下ケース16の右後端部の底板16Aの内面には、支持部材20が設けられている。支持部材20は、カートリッジメモリ19を傾斜させた状態で下方から支持する一対の傾斜台である。一対の傾斜台は、第1傾斜台20A及び第2傾斜台20Bである。第1傾斜台20A及び第2傾斜台20Bは、ケース12の左右方向に間隔を隔てて配置されており、下ケース16の後壁16Bの内面及び底板16Aの内面に一体化されている。第1傾斜台20Aは、傾斜面20A1を有しており、傾斜面20A1は、後壁16Bの内面から底板16Aの内面に向けて下り傾斜している。また、第2傾斜台20Bは、傾斜面20B1を有しており、傾斜面20B1も、後壁16Bの内面から底板16Aの内面に向けて下り傾斜している。
支持部材20の前方側には、一対の位置規制リブ22が左右方向に間隔を隔てて配置されている。一対の位置規制リブ22は、底板16Aの内面に立設されており、支持部材20に配置された状態のカートリッジメモリ19の下端部の位置を規制する。
一例として図4に示すように、底板16Aの外面には基準面16A1が形成されている。基準面16A1は、平面である。ここで、平面とは、底板16Aを下側にして下ケース16を水平面に置いた場合において、水平面に対して平行な面を指す。ここで、「平行」とは、完全な平行の他に、本開示の技術が属する技術分野で一般的に許容される誤差であって、本開示の技術の趣旨に反しない程度の誤差を含めた意味合いでの平行を指す。支持部材20の傾斜角度θ、すなわち、傾斜面20A1及び傾斜面20B1(図3参照)の傾斜角度は、基準面16A1に対して45度である。なお、45度は、あくまでも一例に過ぎず、“0度<傾斜角度θ<45度”であってもよいし、45度以上であってもよい。
カートリッジメモリ19は、基板26を備えている。基板26は、基板26の裏面26Aを下側に向けて支持部材20上に置かれ、支持部材20は、基板26の裏面26Aを下方から支持する。基板26の裏面26Aの一部は、支持部材20の傾斜面、すなわち、傾斜面20A1及び20B1(図3参照)に接触しており、基板26の表面26Bは、上ケース14の天板14Aの内面14A1側に露出している。
上ケース14は、複数のリブ24を備えている。複数のリブ24は、ケース12の左右方向に間隔を隔てて配置されている。複数のリブ24は、上ケース14の天板14Aの内面14A1から下側に突設されており、各リブ24の先端面24Aは、傾斜面20A1及び20B1(図3参照)に対応した傾斜面を有する。すなわち、各リブ24の先端面24Aは、基準面16A1に対して45度に傾斜している。
カートリッジメモリ19が支持部材20に配置された状態で、上述したように上ケース14が下ケース16に接合されると、各リブ24の先端面24Aは、基板26に対して表面26B側から接触し、基板26は、各リブ24の先端面24Aと支持部材20の傾斜面20A1及び20B1(図3参照)とで挟み込まれる。これにより、カートリッジメモリ19の上下方向の位置がリブ24によって規制される。
一例として図5に示すように、磁気テープドライブ30は、搬送装置34、記録ヘッド36A、読取ヘッド36B、及び制御装置38を備えている。磁気テープドライブ30には、磁気テープカートリッジ10が装填される。磁気テープドライブ30は、磁気テープカートリッジ10から磁気テープMTを引き出し、引き出した磁気テープMTに記録ヘッド36Aの複数の読取素子DR(図13参照)を用いてデータを記録し、かつ、引き出した磁気テープMTから読取ヘッド36Bの複数の記録素子DW(図13参照)を用いてデータをリニアサーペンタイン方式で読み取る装置である。また、詳しくは後述するが、記録ヘッド36A及び読取ヘッド36Bは何れも、磁気テープMT上でスキューするスキューヘッドである。本実施形態において、データの読み取りとは、換言すると、データの再生を指す。なお、以下では、説明の便宜上、特に区別して説明する必要がない場合、記録ヘッド36A及び読取ヘッド36Bを磁気ヘッド36と表記する。
制御装置38は、磁気テープドライブ30の全体の動作を制御する。本実施形態において、制御装置38は、ASIC120(図12参照)によって実現されているが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、制御装置38は、FPGAによって実現されるようにしてもよい。また、制御装置38は、CPU、ROM、及びRAMを含むコンピュータによって実現されるようにしてもよい。また、ASIC120、FPGA、及びコンピュータのうちの2つ以上を組み合わせて実現されるようにしてもよい。すなわち、制御装置38は、ハードウェア構成とソフトウェア構成との組み合わせによって実現されるようにしてもよい。
搬送装置34は、磁気テープMTを順方向及び逆方向に選択的に搬送する装置であり、送出モータ40、巻取リール42、巻取モータ44、複数のガイドローラGR、及び制御装置38を備えている。なお、ここで、順方向とは、磁気テープMTの送り出し方向を指し、逆方向とは、磁気テープMTの巻き戻し方向を指す。
送出モータ40は、制御装置38の制御下で、磁気テープカートリッジ10内のカートリッジリール18を回転させる。制御装置38は、送出モータ40を制御することで、カートリッジリール18の回転方向、回転速度、及び回転トルク等を制御する。
磁気テープMTが巻取リール42によって巻き取られる場合(ロードする場合)には、制御装置38は、磁気テープMTが順方向に走行するように送出モータ40を回転させる。送出モータ40の回転速度及び回転トルク等は、巻取リール42によって巻き取られる磁気テープMTの速度に応じて調整される。
巻取モータ44は、制御装置38の制御下で、巻取リール42を回転させる。制御装置38は、巻取モータ44を制御することで、巻取リール42の回転方向、回転速度、及び回転トルク等を制御する。
磁気テープMTが巻取リール42によって巻き取られる場合には、制御装置38は、磁気テープMTが順方向に走行するように巻取モータ44を回転させる。巻取モータ44の回転速度及び回転トルク等は、巻取リール42によって巻き取られる磁気テープMTの速度に応じて調整される。このようにして送出モータ40及び巻取モータ44の各々の回転速度及び回転トルク等が制御装置38によって調整されることで、磁気テープMTに張力が付与される。なお、送出モータ40及び巻取モータ44は、本開示の技術に係る「張力付与機構」の一例である。
なお、磁気テープMTをカートリッジリール18に巻き戻す場合(アンロードする場合)には、制御装置38は、磁気テープMTが逆方向に走行するように送出モータ40及び巻取モータ44を回転させる。
本実施形態では、送出モータ40及び巻取モータ44の回転速度及び回転トルク等が制御されることにより磁気テープMTに掛けられる張力が制御されているが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、磁気テープMTに掛けられる張力は、ダンサローラを用いて制御されるようにしてもよいし、バキュームチャンバに磁気テープMTを引き込むことによって制御されるようにしてもよい。
複数のガイドローラGRの各々は、磁気テープMTを案内するローラである。磁気テープMTの走行経路は、複数のガイドローラGRが磁気テープカートリッジ10と巻取リール42との間において磁気ヘッド36を跨ぐ位置に分けて配置されることによって定められている。
記録ヘッド36Aは、磁気素子ユニット46A及びホルダ48Aを備えている。磁気素子ユニット46Aは、走行中の磁気テープMTに接触するようにホルダ48Aによって保持されている。磁気素子ユニット46Aは、後述するサーボ読取素子WSR1及びWSR2と、後述する記録素子DW1、DW2、DW3、DW4、DW5、DW6、DW7及びDW8と、を有する。磁気素子ユニット46Aは、搬送装置34によって搬送される磁気テープMTにデータを記録したり、搬送装置34によって搬送される磁気テープMTからサーボパターン51(図13参照)を読み取ったりする。
読取ヘッド36Bは、磁気素子ユニット46B及びホルダ48Bを備えている。磁気素子ユニット46Bは、走行中の磁気テープMTに接触するようにホルダ48Bによって保持されている。磁気素子ユニット46Bは、後述するサーボ読取素子RSR1及びRSR2と、後述する読取素子DR1、DR2、DR3、DR4、DR5、DR6、DR7及びDR8と、を有する。磁気素子ユニット46Bは、搬送装置34によって搬送される磁気テープMTにデータを記録したり、搬送装置34によって搬送される磁気テープMTからサーボパターン51(図13参照)を読み取ったりする。
磁気テープドライブ30は、非接触式読み書き装置50を備えている。非接触式読み書き装置50は、磁気テープカートリッジ10が装填された状態の磁気テープカートリッジ10の下側にてカートリッジメモリ19の裏面26Aに正対するように配置されている。なお、磁気テープカートリッジ10が磁気テープドライブ30に装填された状態とは、例えば、磁気ヘッド36による磁気テープMTに対するデータの読み取りを開始する位置として事前に定められた位置に、磁気テープカートリッジ10が到達した状態を指す。
一例として図6に示すように、非接触式読み書き装置50は、磁気テープカートリッジ10の下側からカートリッジメモリ19に向けて磁界MFを放出する。磁界MFは、カートリッジメモリ19を貫通する。
一例として図7に示すように、非接触式読み書き装置50は、制御装置38に接続されている。制御装置38は、制御信号を非接触式読み書き装置50に出力する。制御信号は、カートリッジメモリ19を制御する信号である。非接触式読み書き装置50は、制御装置38から入力された制御信号に従って、磁界MFをカートリッジメモリ19に向けて放出する。磁界MFは、カートリッジメモリ19の裏面26A側から表面26B側に貫通する。
非接触式読み書き装置50は、カートリッジメモリ19との間で非接触通信を行うことで、制御信号に応じたコマンド信号をカートリッジメモリ19に与える。より詳しく説明すると、非接触式読み書き装置50は、制御装置38の制御下で、コマンド信号をカートリッジメモリ19に空間伝送する。詳しくは後述するが、コマンド信号は、カートリッジメモリ19に対する指令を示す信号である。
コマンド信号が非接触式読み書き装置50からカートリッジメモリ19に空間伝送される場合、磁界MFには、非接触式読み書き装置50によって、制御装置38からの指示に応じたコマンド信号が含まれる。換言すると、磁界MFには、非接触式読み書き装置50によってコマンド信号が重畳される。すなわち、非接触式読み書き装置50は、制御装置38の制御下で、磁界MFを介してコマンド信号をカートリッジメモリ19に送信する。
カートリッジメモリ19の表面26Bには、ICチップ52及びコンデンサ54が搭載されている。ICチップ52及びコンデンサ54は、表面26Bに接着されている。また、カートリッジメモリ19の表面26Bにおいて、ICチップ52及びコンデンサ54は封止材56によって封止されている。ここでは、封止材56として、紫外線に反応して硬化する紫外線硬化樹脂が採用されている。なお、紫外線硬化樹脂は、あくまでも一例に過ぎず、紫外線以外の波長域の光に反応して硬化する光硬化樹脂を封止材56として使用してもよいし、熱硬化性樹脂を封止材56として使用してもよいし、他の接着剤を封止材56として使用してもよい。
一例として図8に示すように、カートリッジメモリ19の裏面26Aには、コイル60がループ状に形成されている。ここでは、コイル60の素材として、銅箔が採用されている。銅箔は、あくまでも一例に過ぎず、例えば、アルミニウム箔等の他種類の導電性素材であってもよい。コイル60は、非接触式読み書き装置50から与えられた磁界MF(図6及び図7参照)が作用することで誘導電流を誘起する。
カートリッジメモリ19の裏面26Aには、第1導通部62A及び第2導通部62Bが設けられている。第1導通部62A及び第2導通部62Bは、はんだを有しており、表面26BのICチップ52(図7及び図9参照)及びコンデンサ54(図7及び図9参照)に対してコイル60の両端部を電気的に接続している。
一例として図9に示すように、カートリッジメモリ19の表面26Bにおいて、ICチップ52及びコンデンサ54は、ワイヤ接続方式で互いに電気的に接続されている。具体的には、ICチップ52の正極端子及び負極端子のうちの一方の端子が配線64Aを介して第1導通部62Aに接続されており、他方の端子が配線64Bを介して第2導通部62Bに接続されている。また、コンデンサ54は、一対の電極を有する。図9に示す例では、一対の電極は、電極54A及び54Bである。電極54Aは、配線64Cを介して第1導通部62Aに接続されており、電極54Bは、配線64Dを介して第2導通部62Bに接続されている。これにより、コイル60に対して、ICチップ52及びコンデンサ54は並列に接続される。
一例として図10に示すように、ICチップ52は、内蔵コンデンサ80、電源回路82、コンピュータ84、クロック信号生成器86、及び信号処理回路88を備えている。ICチップ52は、磁気テープカートリッジ10以外の用途にも使用可能な汎用タイプのICチップである。
カートリッジメモリ19は、電力生成器70を備えている。電力生成器70は、非接触式読み書き装置50から与えられた磁界MFがコイル60に対して作用することで電力を生成する。具体的には、電力生成器70は、共振回路92を用いて交流電力を生成し、生成した交流電力を直流電力に変換して出力する。
電力生成器70は、共振回路92及び電源回路82を有する。共振回路92は、コンデンサ54、コイル60、及び内蔵コンデンサ80を備えている。内蔵コンデンサ80は、ICチップ52に内蔵されているコンデンサであり、電源回路82もICチップ52に内蔵されている回路である。内蔵コンデンサ80は、コイル60に対して並列に接続されている。
コンデンサ54は、ICチップ52に対して外付けされたコンデンサである。ICチップ52は、本来、磁気テープカートリッジ10とは異なる用途でも用いることが可能な汎用のICチップである。そのため、内蔵コンデンサ80の容量は、磁気テープカートリッジ10で用いられるカートリッジメモリ19で要求される共振周波数を実現するには不足している場合がある。そこで、カートリッジメモリ19では、磁界MFが作用することで共振回路92を予め定められた共振周波数で共振させる上で必要な容量値を有するコンデンサとして、ICチップ52に対してコンデンサ54が後付けされている。なお、予め定められた共振周波数に相当する周波数(例えば、13.56MHz)であり、カートリッジメモリ19及び/又は非接触式読み書き装置50の仕様等によって適宜決定されればよい。また、コンデンサ54の容量は、内蔵コンデンサ80の容量の実測値に基づいて定められている。また、ここでは、コンデンサ54が外付けされている形態例を挙げているが、本開示の技術はこれに限定されず、ICチップ52に対してコンデンサ54が事前に組み込まれていてもよい。
共振回路92は、磁界MFがコイル60を貫通することでコイル60によって誘起された誘導電流を用いて、予め定められた共振周波数の共振現象を発生させることで交流電力を生成し、生成した交流電力を電源回路82に出力する。
電源回路82は、整流回路及び平滑回路等を有する。整流回路は、複数のダイオードを有する全波整流回路である。全波整流回路は、あくまでも一例に過ぎず、半波整流回路であってもよい。平滑回路は、コンデンサ及び抵抗を含んで構成されている。電源回路82は、共振回路92から入力された交流電力を直流電力に変換し、変換して得た直流電力(以下、単に「電力」とも称する)をICチップ52内の各種の駆動素子に供給する。各種の駆動素子としては、コンピュータ84、クロック信号生成器86、及び信号処理回路88が挙げられる。このように、電力生成器70によってICチップ52内の各種の駆動素子に対して電力が供給されることで、ICチップ52は、電力生成器70によって生成された電力を用いて動作する。
コンピュータ84は、カートリッジメモリ19の全体の動作を制御する。クロック信号生成器86は、クロック信号を生成して信号処理回路88等に出力する。信号処理回路88等は、クロック信号生成器86から入力されたクロック信号に従って動作する。クロック信号生成器86は、コンピュータ84の指示に従って、クロック信号の周波数を変更する。
信号処理回路88は、共振回路92に接続されている。信号処理回路88は、復号回路(図示省略)及び符号化回路(図示省略)を有する。信号処理回路88の復号回路は、コイル60によって受信された磁界MFからのコマンド信号を抽出して復号し、コンピュータ84に出力する。コンピュータ84は、コマンド信号に対する応答信号を信号処理回路88に出力する。すなわち、コンピュータ84は、信号処理回路88から入力されたコマンド信号に応じた処理を実行し、処理結果を応答信号として信号処理回路88に出力する。コンピュータ84から応答信号が入力されると、信号処理回路88の符号化回路は、応答信号を符号化することで変調して共振回路92に出力する。共振回路92は、信号処理回路88の符号化回路から入力された応答信号を、磁界MFを介して非接触式読み書き装置50に送信する。
一例として図11に示すように、コンピュータ84は、CPU94、NVM96、及びRAM98を備えている。CPU94、NVM96、及びRAM98は、バス100に接続されている。
CPU94は、コンピュータ84の動作を制御する。NVM96は、本開示の技術に係る「記憶媒体」及び「内蔵メモリ」の一例である。NVM96の一例としては、EEPROMが挙げられる。EEPROMは、これはあくまでも一例に過ぎず、例えば、EEPROMに代えて強誘電体メモリであってもよく、ICチップ52に搭載可能な不揮発性メモリであれば如何なるメモリであってもよい。NVM96には、管理情報等が記憶されている。RAM98は、各種情報を一時的に記憶し、ワークメモリとして用いられる。RAM98の一例としては、DRAM又はSRAM等が挙げられる。
CPU94は、信号処理回路88から入力されたコマンド信号に応じて、ポーリング処理、読出処理、及び書込処理等を選択的に行う。ポーリング処理は、非接触式読み書き装置50との間で通信を確立する処理であり、例えば、読出処理及び書込処理の前段階の準備処理として行われる。読出処理は、NVM96から管理情報等を読み出す処理である。書込処理は、NVM96に管理情報等を書き込む処理である。
一例として図12に示すように制御装置38は、ASIC120及びストレージ122を備えている。ASIC120及びストレージ122は、バス124に接続されている。この接続方式は、あくまでも一例に過ぎず、ストレージ122等の各種デバイスはASIC120に対して個別に直接接続されていてもよい。また、バス124には、送出モータ40、巻取モータ44、及び非接触式読み書き装置50も接続されている。ASIC120は、送出モータ40及び巻取モータ44を制御する。送出モータ40及び巻取モータ44は、ASIC120の制御下で、磁気テープMTを順方向及び逆方向に選択的に搬送する。また、送出モータ40及び巻取モータ44は、ASIC120の制御下で、磁気テープMTに対して許容範囲内の張力を付与し、かつ、許容範囲内で磁気テープMTにかかる張力を調整する。
なお、ここで、許容範囲とは、磁気ヘッド36によるデータの記録及び/又は読み取りを問題なく行うことが可能な張力の範囲として、コンピュータ・シミュレーション及び/又は実機による試験等により予め得られた範囲を指す。許容範囲は、例えば、テーブル形式で規定されており、磁気テープカートリッジ10の新製品がリリースされる度に更新されるようにしてもよいし、外部から与えられた指示、又は、予め定められた条件等によって変更されるようにしてもよいし、固定されていてもよい。
ASIC120は、非接触式読み書き装置50を制御する。非接触式読み書き装置50は、ASIC120の制御下で、コマンド信号をカートリッジメモリ19に送信する。また、非接触式読み書き装置50は、カートリッジメモリ19に送信したコマンド信号に応じてカートリッジメモリ19から送信された応答信号を受信する。
バス124には、記録ヘッド36A及び読取ヘッド36Bも接続されており、ASIC120は、記録ヘッド36A及び読取ヘッド36Bを制御する。記録ヘッド36Aは、ASIC120の制御下で、磁気テープMTに対してデータを記録するデータ記録動作、及び磁気テープMTからサーボパターン51(図14参照)を読み取るサーボ読取動作等を行う。読取ヘッド36Bは、ASIC120の制御下で、磁気テープMTからデータを読み取るデータ読取動作、及びサーボ読取動作等を行う。
磁気テープドライブ30は、第1移動機構129Aを備えている。第1移動機構129Aは、第1移動アクチュエータ129A1を有する。第1移動アクチュエータ129A1としては、例えば、ボイスコイルモータ及び/又はピエゾアクチュエータが挙げられる。第1移動アクチュエータ129A1は、バス124に接続されており、ASIC120は、第1移動アクチュエータ129A1を制御する。第1移動アクチュエータ129A1は、ASIC120の制御下で動力を生成する。第1移動機構129Aは、第1移動アクチュエータ129A1によって生成された動力を受けることで動作する。ASIC120は、第1移動機構129Aを用いたサーボ制御を行う。ここで、第1移動機構129Aを用いたサーボ制御とは、記録ヘッド36Aによるサーボ読取動作によって磁気テープMTから読み取られたサーボパターン51に従って第1移動機構129Aを動作させることで記録ヘッド36Aを磁気テープMTの幅方向に移動させる制御を指す。
磁気テープドライブ30は、第2移動機構129Bを備えている。第2移動機構129Bは、第2移動アクチュエータ129B1を有する。第2移動アクチュエータ129B1としては、例えば、ボイスコイルモータ及び/又はピエゾアクチュエータが挙げられる。第2移動アクチュエータ129B1は、バス124に接続されており、ASIC120は、第2移動アクチュエータ129B1を制御する。第2移動アクチュエータ129B1は、ASIC120の制御下で動力を生成する。第2移動機構129Bは、第2移動アクチュエータ129B1によって生成された動力を受けることで動作する。ASIC120は、第2移動機構129Bを用いたサーボ制御を行う。ここで、第2移動機構129Bを用いたサーボ制御とは、読取ヘッド36Bによるサーボ読取動作によって磁気テープMTから読み取られたサーボパターン51に従って第2移動機構129Bを動作させることで読取ヘッド36Bを磁気テープMTの幅方向に移動させる制御を指す。
磁気テープドライブ30は、第1傾斜機構131Aを備えている。第1傾斜機構131Aは、本開示の技術に係る「傾斜機構」の一例である。第1傾斜機構131Aは、第1傾斜アクチュエータ131A1を有する。第1傾斜アクチュエータ131A1としては、例えば、ボイスコイルモータ及び/又はピエゾアクチュエータが挙げられる。第1傾斜アクチュエータ131A1は、バス124に接続されており、ASIC120は、第1傾斜アクチュエータ131A1を制御する。第1傾斜アクチュエータ131A1は、AISC120の制御下で動力を生成する。第1傾斜機構131Aは、第1傾斜アクチュエータ131A1によって生成された動力を受けることで、記録ヘッド36Aを磁気テープMTの幅方向WD(図13参照)に対して磁気テープMTの全長方向側に傾斜させる。
磁気テープドライブ30は、第2傾斜機構131Bを備えている。第2傾斜機構131Bは、本開示の技術に係る「傾斜機構」の一例である。第2傾斜機構131Bは、第2傾斜アクチュエータ131B1を有する。第2傾斜アクチュエータ131B1としては、例えば、ボイスコイルモータ及び/又はピエゾアクチュエータが挙げられる。第2傾斜アクチュエータ131B1は、バス124に接続されており、ASIC120は、第2傾斜アクチュエータ131B1を制御する。第2傾斜アクチュエータ131B1は、AISC120の制御下で動力を生成する。第2傾斜機構131Bは、第2傾斜アクチュエータ131B1によって生成された動力を受けることで、読取ヘッド36Bを磁気テープMTの幅方向WD(図13参照)に対して磁気テープMTの全長方向側に傾斜させる。なお、以下では、特に区別して説明する必要がない場合、第1傾斜機構131A及び第2傾斜機構131Bを傾斜機構131と表記する。
一例として図13に示すように、磁気テープMTの表面139には、サーボバンドSB1、SB2及びSB3と、データバンドDB1及びDB2と、が形成されている。なお、以下では、説明の便宜上、特に区別する必要がない場合、サーボバンドSB1~SB3をサーボバンドSBと称し、データバンドDB1及びDB2をデータバンドDBと称する。
サーボバンドSB1~SB3とデータバンドDB1及びDB2は、磁気テープMTの全長方向に沿って形成されている。ここで、磁気テープMTの全長方向とは、換言すると、磁気テープMTの長手方向(順方向及び逆方向)を指す。
サーボバンドSB1~SB3は、磁気テープMTの幅方向WDで離間した位置に配列されている。例えば、サーボバンドSB1~SB3は、幅方向WDに沿って等間隔に配列されている。なお、本実施形態において、「等間隔」とは、完全な等間隔の他に、本開示の技術が属する技術分野で一般的に許容される誤差であって、本開示の技術の趣旨に反しない程度の誤差を含めた意味合いでの等間隔を指す。
データバンドDB1は、サーボバンドSB1とサーボバンドSB2との間に配されており、データバンドDB2は、サーボバンドSB2とサーボバンドSB3との間に配されている。つまり、サーボバンドSBとデータバンドDBとは、磁気テープMTの幅方向WDに沿って交互に配列されている。
サーボバンドSBには、磁気テープMTの全長方向に沿ってサーボパターン51が既定の間隔毎に形成されている。サーボパターン51は、磁化領域51A及び51Bを有する。磁化領域51A及び51Bは、幅方向WDに沿った仮想的な直線に対して線対称に傾けられた一対の線状の磁化領域である。磁化領域51A及び51Bは、互いに非平行であり、かつ、磁気テープMTの全長方向側の相反する方向に既定角度だけ傾いて形成されている。
なお、図13に示す例では、3本のサーボバンドSBと2本のデータバンドDBとが示されているが、これはあくまでも一例に過ぎず、2本のサーボバンドSBと1本のデータバンドDBであってもよいし、4本以上のサーボバンドSBと3本以上のデータバンドDBであっても本開示の技術は成立する。
記録ヘッド36Aは、磁気テープMTの全長方向において読取ヘッド36Bよりも巻取リール42側に配置されている。記録ヘッド36Aは、複数の磁気素子を備えている。記録ヘッド36Aは、複数の磁気素子として、複数のサーボ読取素子WSR及び複数の記録素子DWを有する。
記録ヘッド36Aは、長尺方向に沿って磁気テープMTよりも幅広に形成されている。例えば、記録ヘッド36Aの長尺方向の長さは、最大の傾斜角度として予め定められた角度で記録ヘッド36Aを傾斜させた状態で、磁気素子ユニット46Aによって磁気テープMTの何れかのデータバンドDBに対してデータの書き込み(記録)が行われる場合に、少なくとも磁気テープMTを幅方向WDに沿って覆う程度の長さである。複数のサーボ読取素子WSR及び複数の記録素子DWは、記録ヘッド36Aの平面視中央部に設けられており、記録ヘッド36Aの長尺方向に沿って直線状に間隔を空けて配置されている。
図13に示す例では、複数のサーボ読取素子WSRとして、サーボ読取素子WSR1及びWSR2が例示されている。以下では、説明の便宜上、特に区別して説明する必要がない場合、サーボ読取素子WSR1及びWSR2をサーボ読取素子WSRと表記する。また、以下では、説明の便宜上、特に区別して説明する必要がない場合、サーボ読取素子WSR及び記録素子DWを、符号を付さずに「記録ヘッド側磁気素子」と表記する。
サーボ読取素子WSRは、サーボバンドSBに対応する位置に設けられている。図13に示す例では、サーボ読取素子WSR1は、サーボバンドSB1に対応する位置に設けられており、サーボ読取素子WSR2は、サーボバンドSB2に対応する位置に設けられている。第1移動機構129Aは、ASIC120(図12参照)の制御下で、サーボバンドSBによって読み取られたサーボパターン51に従って記録ヘッド36Aを幅方向WDに移動させる。
また、磁気素子ユニット46Aによるデータの書き込み対象とされるデータバンドDBが変更される場合(図13に示す例では、磁気素子ユニット46Aによるデータの書き込み対象とされるデータバンドDBがデータバンドDB1及びDB2のうちの一方から他方に変更される場合)、第1移動機構129Aは、ASIC120(図12参照)の制御下で、記録ヘッド36Aを幅方向WDに移動させることで、サーボ読取素子WSRの位置を変更する。すなわち、第1移動機構129Aは、記録ヘッド36Aを幅方向WDに移動させることで、サーボ読取素子WSR1を、サーボバンドSB1に対応する位置及びサーボバンドSB2に対応する位置のうちの一方から他方に移動させ、サーボ読取素子WSR2を、サーボバンドSB2に対応する位置及びサーボバンドSB3に対応する位置のうちの一方から他方に移動させる。そして、トラッキング制御が行われることで、少なくとも1つの記録素子DWによってデータバンドDB内の指定箇所に対するデータの書き込みが行われる。
複数の記録素子DWは、サーボ読取素子WSR1とサーボ読取素子WSR2との間に設けられている。すなわち、複数の記録素子DWは、隣接するサーボ読取素子WSR間に設けられている。複数の記録素子DWは、記録ヘッド36Aの長手方向に沿って間隔を空けて(例えば、記録ヘッド36Aの長手方向に沿って等間隔に)配置されている。隣接するサーボバンドSB間のデータバンドDBには、複数の記録素子DWによってデータの記録が行われる。例えば、図13に示すように、サーボ読取素子WSR1の位置がサーボバンドSB1の位置に対応しており、サーボ読取素子WSR2の位置がサーボバンドSB2の位置に対応している場合、複数の読取素子DWは、データバンドDB1へのデータの記録を行う。
読取ヘッド36Bは、複数の磁気素子を備えている。読取ヘッド36Bは、複数の磁気素子として、複数のサーボ読取素子RSR及び複数の読取素子DRを有する。読取ヘッド36Bは、記録ヘッド36Aと同様に、長尺方向に沿って磁気テープMTよりも幅広に形成されている。例えば、読取ヘッド36Bの長尺方向の長さは、最大の傾斜角度として予め定められた角度(例えば、記録ヘッド36Aと同一の角度)で読取ヘッド36Bを傾斜させた状態で、磁気素子ユニット46Bによって磁気テープMTの何れかのデータバンドDBに対してデータの読み取りが行われる場合に、少なくとも磁気テープMTを幅方向WDに沿って覆う程度の長さである。複数のサーボ読取素子RSR及び複数の読取素子DRは、読取ヘッド36Bの平面視中央部に設けられており、読取ヘッド36Bの長尺方向に沿って直線状に間隔を空けて配置されている。
図13に示す例では、複数のサーボ読取素子RSRとして、サーボ読取素子RSR1及びRSR2が例示されている。以下では、説明の便宜上、特に区別して説明する必要がない場合、サーボ読取素子RSR1及びRSR2をサーボ読取素子RSRと表記する。また、以下では、説明の便宜上、特に区別して説明する必要がない場合、サーボ読取素子WSR及びサーボ読取素子RSRをサーボ読取素子SRと表記する。また、以下では、説明の便宜上、特に区別して説明する必要がない場合、サーボ読取素子RSR及び読取素子DRを、符号を付さずに「読取ヘッド側磁気素子」と表記する。
サーボ読取素子RSRは、サーボバンドSBに対応する位置に設けられている。図13に示す例では、サーボ読取素子RSR1は、サーボバンドSB1に対応する位置に設けられており、サーボ読取素子RSR2は、サーボバンドSB2に対応する位置に設けられている。第2移動機構129Bは、ASIC120(図12参照)の制御下で、サーボバンドSBによって読み取られたサーボパターン51に従って読取ヘッド36Bを幅方向WDに移動させる。
また、磁気素子ユニット46Bによるデータの読み取り対象とされるデータバンドDBが変更される場合(図13に示す例では、磁気素子ユニット46Bによるデータの読み取り対象とされるデータバンドDBがデータバンドDB1及びDB2のうちの一方から他方に変更される場合)、第2移動機構129Bは、ASIC120(図12参照)の制御下で、読取ヘッド36Bを幅方向WDに移動させることで、サーボ読取素子RSRの位置を変更する。すなわち、第2移動機構129Bは、読取ヘッド36Bを幅方向WDに移動させることで、サーボ読取素子RSR1を、サーボバンドSB1に対応する位置及びサーボバンドSB2に対応する位置のうちの一方から他方に移動させ、サーボ読取素子RSR2を、サーボバンドSB2に対応する位置及びサーボバンドSB3に対応する位置のうちの一方から他方に移動させる。そして、トラッキング制御が行われることで、少なくとも1つの読取素子DRによってデータバンドDB内の指定箇所に対するデータの読み取りが行われる。
複数の読取素子DRは、サーボ読取素子RSR1とサーボ読取素子RSR2との間に設けられている。すなわち、複数の読取素子DRは、隣接するサーボ読取素子RSR間に設けられている。複数の読取素子DRは、読取ヘッド36Bの長手方向に沿って間隔を空けて(例えば、読取ヘッド36Bの長手方向に沿って等間隔に)配置されている。隣接するサーボバンドSB間のデータバンドDBには、複数の読取素子DRによってデータの読み取りが行われる。例えば、図13に示すように、サーボ読取素子RSR1の位置がサーボバンドSB1の位置に対応しており、サーボ読取素子RSR2の位置がサーボバンドSB2の位置に対応している場合、複数の読取素子DRは、データバンドDB1からのデータの読み取りを行う。
記録ヘッド36Aは、回転軸RA1を備えている。回転軸RA1は、記録ヘッド36Aの平面視中央部に設けられている。記録ヘッド36Aは、回転軸RA1を介して第1傾斜機構131Aに回転可能に保持されている。記録ヘッド36Aは、複数の記録ヘッド側磁気素子の配置方向が磁気テープMTの幅方向WDに対して磁気テープMTの全長方向側に傾斜した状態で第1傾斜機構131Aによって保持されている。図13に示す例では、複数の記録ヘッド側磁気素子の配置方向が、磁気テープMTの幅方向WDに対して巻取リール42側に傾斜している。
第1傾斜機構131Aは、第1傾斜アクチュエータ131A1(図12参照)の動力を受けることで、磁気テープMTの表面139上で回転軸RA1を中心にして記録ヘッド36Aを回転させる。第1傾斜機構131Aは、ASIC120(図12参照)の制御下で、磁気テープMTの表面139上で回転軸RA1を中心にして記録ヘッド36Aを回転させることで、複数の記録ヘッド側磁気素子の配置方向の幅方向WDに対する傾斜の方向(アジマス)及び傾斜の角度を変更する。
読取ヘッド36Bは、回転軸RA2を備えている。回転軸RA2は、読取ヘッド36Bの平面視中央部に設けられている。読取ヘッド36Bは、回転軸RA2を介して第2傾斜機構131Bに回転可能に保持されている。読取ヘッド36Bは、複数の読取ヘッド側磁気素子の配置方向が磁気テープMTの幅方向WDに対して磁気テープMTの全長方向側に傾斜した状態で第2傾斜機構131Bによって保持されている。図13に示す例では、複数の読取ヘッド側磁気素子の配置方向が、磁気テープMTの幅方向WDに対して巻取リール42側に傾斜している。
第2傾斜機構131Bは、第2傾斜アクチュエータ131B1(図12参照)の動力を受けることで、磁気テープMTの表面139上で回転軸RA2を中心にして読取ヘッド36Bを回転させる。第2傾斜機構131Bは、ASIC120(図12参照)の制御下で、磁気テープMTの表面139上で回転軸RA2を中心にして読取ヘッド36Bを回転させることで、複数の読取ヘッド側磁気素子の配置方向の幅方向WDに対する傾斜の方向(アジマス)及び傾斜の角度を変更する。以下では、説明の便宜上、回転軸RA1及びRA2を区別して説明する必要がない場合、回転軸RAと表記する。
なお、図13に示す例では、3本のサーボバンドSBが磁気テープMTに形成されているが、これはあくまでも一例に過ぎない。例えば、2本のサーボバンドSBのみが磁気テープMTに形成されているようにしてもよいし、4本以上のサーボバンドSBが磁気テープMTに形成されているようにしてもよい。また、サーボバンドSBの本数分だけサーボバンドSBに対応する位置にサーボ読取素子RSRが読取ヘッド36Bに設けられ、サーボバンドSBの本数分だけサーボバンドSBに対応する位置にサーボ読取素子WSRが記録ヘッド36Aに設けられるようにしてもよい。
一例として図14に示すように、データバンドDB1には、データトラックDT1、DT2、DT3、DT4、DT5、DT6、DT7及びDT8が形成されている。データトラックDT1、DT2、DT3、DT4、DT5、DT6、DT7及びDT8は、本開示の技術に係る「複数のトラック」の一例である。
記録ヘッド36Aは、複数の記録素子DWとして、幅方向WDに沿って、サーボ読取素子WSR1とサーボ読取素子WSR2との間に、記録素子DW1、DW2、DW3、DW4、DW5、DW6、DW7及びDW8を有する。記録素子DW1~DW8は、データトラックDT1~DT8に1対1で対応している。
図14に示す例では、複数の記録ヘッド側磁気素子の配置方向が、磁気テープMTの幅方向WDに対して巻取リール42側に傾斜している。複数の記録ヘッド側磁気素子の配置方向が、磁気テープMTの幅方向WDに対してどの程度傾斜しているかは、例えば、サーボ読取素子WSR2によってサーボバンドSB2のサーボパターン51が読み取られることで得られる信号と、サーボ読取素子WSR1によってサーボバンドSB1のサーボパターン51が読み取られることで得られる信号との位相差からASIC120によって特定される。これ以外にも、サーボ読取素子WSR2によってサーボバンドSB2の磁化領域51Aが読み取られたタイミングと、サーボ読取素子WSR1によってサーボバンドSB1の磁化領域51Aが読み取られたタイミングとの時間差、及び/又は、サーボ読取素子WSR2によってサーボバンドSB2の磁化領域51Bが読み取られたタイミングと、サーボ読取素子WSR1によってサーボバンドSB1の磁化領域51Bが読み取られたタイミングとの時間差等からASIC120によって特定される、という方法もある。
一例として図14に示すように、複数の記録ヘッド側磁気素子の配置方向が磁気テープMTの幅方向WDに対して巻取リール42側に傾斜している状態では、磁気テープMTが順方向に沿って走行する。そして、磁気テープMTが順方向に沿って走行している間に記録素子DW1~DW8によってデータの記録が行われる。
なお、図示は省略するが、データバンドDB2にも、データトラックDT1、DT2、DT3、DT4、DT5、DT6、DT7及びDT8に相当する複数のデータトラックDTが形成されている。
また、以下では、特に区別する必要がない場合、データトラックDT1、DT2、DT3、DT4、DT5、DT6、DT7及びDT8をデータトラックDTと表記し、記録素子DW1、DW2、DW3、DW4、DW5、DW6、DW7及びDW8を記録素子DWと表記する。また、以下では、特に区別する必要がない場合、読取素子DR1、DR2、DR3、DR4、DR5、DR6、DR7及びDR8を記録素子DRと表記する。
一例として図15に示すように、複数の記録ヘッド側磁気素子の配置方向が磁気テープMTの幅方向WDに対してカートリッジリール18側に傾斜している状態では、磁気テープMTが逆方向に沿って走行する。そして、磁気テープMTが逆方向に沿って走行している間に記録素子DW1~DW8によってデータの記録が行われる。
ここで、複数の記録ヘッド側磁気素子の配置方向が磁気テープMTの幅方向WDに対してカートリッジリール18側に傾斜している状態とは、図14に示す記録ヘッド36Aが、幅方向WDに沿って回転軸RA1(図13参照)を通る仮想的な直線を軸にして線対称となる位置に傾斜している状態を指す。すなわち、磁気テープMTの全長方向において、図15に示す記録ヘッド36A内の複数の記録ヘッド側磁気素子の配置方向の幅方向WDに対する傾斜の方向は、図14に示す記録ヘッド36A内の複数の記録ヘッド側磁気素子の配置方向の幅方向WDに対する傾斜の方向と相反する方向である。
一例として図16に示すように、データトラックDTの各々は、データトラック群DTGを1つずつ有する。すなわち、データトラックDT1、DT2、DT3、DT4、DT5、DT6、DT7、及びDT8は、データトラック群DTG1、DTG2、DTG3、DTG4、DTG5、DTG6、DTG7、及びDTG8に対応している。
データトラック群DTG1は、データトラックDT1_1、DT1_2、DT1_3、DT1_4、・・・及びDT1_12が含まれている。記録素子DW1は、データトラック群DTG1へのデータの記録、すなわち、データトラックDT1_1、DT1_2、DT1_3、DT1_4、・・・及びDT1_12へのデータの記録を担う。
具体的に言えば、データトラックDT1_1に対してデータの記録を行う場合、第1移動機構129Aは記録ヘッド36Aを磁気テープMTの幅方向WDに移動させることで、記録素子DW1をデータトラックDT1_1上の位置(例えば、磁気テープMTのデータトラックDT1_1と正対する位置)まで移動させる。また、データトラックDT1_2に対してデータの記録を行う場合、第1移動機構129Aは記録ヘッド36Aを磁気テープMTの幅方向WDに移動させることで、記録素子DW1をデータトラックDT1_2上の位置まで移動させる。データトラック群DTG2~DTG8、及び記録素子DW2~DW8についても同様である。
なお、以下では、説明の便宜上、データトラックDT1、DT2、DT3、DT4、DT5、DT6、DT7、及びDT8の末尾の符号を特に区別して説明する必要がない場合、“n”と表記する。また、以下では、説明の便宜上、データトラックDTn_1、DTn_2、DTn_3、DTn_4、・・・・DTn_12のうちの末尾の符号を特に区別して説明する必要がない場合、“m”と表記し、データトラックDTn_mと称する。また、また、以下では、説明の便宜上、データトラックDTn_1、DTn_2、DTn_3、DTn_4、・・・・DTn_12のうちの末尾の符号が偶数の符号を特に区別して説明する必要がない場合、“mE”と表記し、偶数データトラックDTn_mEと称する。また、以下では、説明の便宜上、データトラックDTn_1、DTn_2、DTn_3、DTn_4、・・・・DTn_12のうちの末尾の符号が奇数の符号を特に区別して説明する必要がない場合、“mO”と表記し、奇数データトラックDTn_mO“と称する。
ここで、複数の記録ヘッド側磁気素子の配置方向が磁気テープMTの幅方向WDに対して巻取リール42側に傾斜している状態で、磁気テープMTが順方向に沿って走行している場合、記録素子DW1~DW8によって奇数データトラックDTn_mOに対してデータの記録が行われる。また、複数の記録ヘッド側磁気素子の配置方向が磁気テープMTの幅方向WDに対してカートリッジリール18側に傾斜している状態で、磁気テープMTが逆方向に沿って走行している場合、記録素子DW1~DW8によって偶数データトラックDTn_mEに対してデータの記録が行われる。
なお、このようなデータの記録方法はあくまでも一例に過ぎず、複数の記録ヘッド側磁気素子の配置方向が磁気テープMTの幅方向WDに対して巻取リール42側に傾斜している状態で、磁気テープMTが順方向に沿って走行している場合に、記録素子DW1~DW8によって偶数データトラックDTn_mEに対してデータの記録が行われ、複数の記録ヘッド側磁気素子の配置方向が磁気テープMTの幅方向WDに対してカートリッジリール18側に傾斜している状態で、磁気テープMTが逆方向に沿って走行している場合に奇数データトラックDTn_mOに対してデータの記録が行われるようにしてもよい。
また、磁気テープMTが順方向に沿って走行している状態でデータトラックDTn_1、DTn_2、DTn_3、DTn_4、・・・・DTn_12のうちのデータトラックDTn_1~DTn_6に対してデータの記録が行われ、磁気テープMTが逆方向に沿って走行している状態でデータトラックDTn_1、DTn_2、DTn_3、DTn_4、・・・・DTn_12のうちのデータトラックDTn_7~DTn_12に対してデータの記録が行われる場合、偶数データトラックDTn_mEに対してデータの記録が行われる場合と奇数データトラックDTn_mOに対してデータの記録が行われる場合とで、複数の記録ヘッド側磁気素子の配置方向を磁気テープMTの幅方向WDに対して巻取リール42側に傾斜させる態様と複数の記録ヘッド側磁気素子の配置方向を磁気テープMTの幅方向WDに対してカートリッジリール18側に傾斜させる態様とを切り替えるようにすればよい。
図14~図16に示したように、奇数データトラックDTn_mOに対してデータの記録が行われる場合には、複数の記録ヘッド側磁気素子の配置方向が磁気テープMTの幅方向WDに対して巻取リール42側に傾斜している状態とされるのに対し(図14参照)、偶数データトラックDTn_mEに対してデータの記録が行われる場合には、複数の記録ヘッド側磁気素子の配置方向が磁気テープMTの幅方向WDに対してカートリッジリール18側に傾斜している状態とされる(図15参照)。これは、複数のデータトラックDTのうちの隣接トラック、すなわち、奇数データトラックDTn_mO及び偶数データトラックDTn_mEの各々に対して、複数の記録ヘッド側磁気素子の配置方向の幅方向WDに対する傾斜の方向として、相反する方向が割り当てられていることを意味する。
一例として図17に示すように、読取ヘッド36Bは、複数の読取素子DRとして、幅方向WDに沿って、サーボ読取素子RSR1とサーボ読取素子RSR2との間に、読取素子DR1、DR2、DR3、DR4、DR5、DR6、DR7及びDR8を有する。読取素子DR1~DR8は、データトラックDT1~DT8に1対1で対応している。
図17に示す例では、複数の読取ヘッド側磁気素子の配置方向が、磁気テープMTの幅方向WDに対して巻取リール42側に傾斜している。複数の読取ヘッド側磁気素子の配置方向が、磁気テープMTの幅方向WDに対してどの程度傾斜しているかは、例えば、サーボ読取素子RSR2によってサーボバンドSB2のサーボパターン51が読み取られることで得られる信号と、サーボ読取素子RSR1によってサーボバンドSB1のサーボパターン51が読み取られることで得られる信号との位相差からASIC120によって特定される。これ以外にも、サーボ読取素子RSR2によってサーボバンドSB2の磁化領域51Aが読み取られたタイミングと、サーボ読取素子RSR1によってサーボバンドSB1の磁化領域51Aが読み取られたタイミングとの時間差、及び/又は、サーボ読取素子RSR2によってサーボバンドSB2の磁化領域51Bが読み取られたタイミングと、サーボ読取素子RSR1によってサーボバンドSB1の磁化領域51Bが読み取られたタイミングとの時間差等からASIC120によって特定される、という方法もある。
一例として図17に示すように、複数の読取ヘッド側磁気素子の配置方向が磁気テープMTの幅方向WDに対して巻取リール42側に傾斜している状態では、磁気テープMTが順方向に沿って走行する。そして、磁気テープMTが順方向に沿って走行している間に読取素子DR1~DR8によってデータの読み取りが行われる。
一例として図18に示すように、複数の読取ヘッド側磁気素子の配置方向が磁気テープMTの幅方向WDに対してカートリッジリール18側に傾斜している状態では、磁気テープMTが逆方向に沿って走行する。そして、磁気テープMTが逆方向に沿って走行している間に読取素子DR1~DR8によってデータの読み取りが行われる。
読取素子DR1は、データトラック群DTG1からのデータの読み取り、すなわち、データトラックDT1_1、DT1_2、DT1_3、DT1_4、・・・、DT1_11及びDT1_12からのデータの読み取りを担う。具体的に言えば、データトラックDT1_mに対してデータの記録を行う場合、第2移動機構129Bは読取ヘッド36Bを磁気テープMTの幅方向WDに移動させることで、読取素子DR1をデータトラックDT1_m上の位置(例えば、磁気テープMTの厚さ方向側でデータトラックDT1_1と正対する位置)まで移動させる。データトラック群DTG2~DTG8、及び記録素子DR2~DR8についても同様である。
ここで、複数の読取ヘッド側磁気素子の配置方向が磁気テープMTの幅方向WDに対して巻取リール42側に傾斜している状態で、磁気テープMTが順方向に沿って走行している場合、読取素子DR1~DR8によって奇数データトラックDTn_mOからデータの読み取りが行われる。また、複数の読取ヘッド側磁気素子の配置方向が磁気テープMTの幅方向WDに対してカートリッジリール18側に傾斜している状態で、磁気テープMTが逆方向に沿って走行している場合、読取素子DR1~DR8によって偶数データトラックDTn_mEからデータの読み取りが行われる。
なお、このようなデータの読み取り方法はあくまでも一例に過ぎず、複数の読取ヘッド側磁気素子の配置方向が磁気テープMTの幅方向WDに対して巻取リール42側に傾斜している状態で、磁気テープMTが順方向に沿って走行している場合に、読取素子DR1~DR8によって偶数データトラックDTn_mEからデータの読み取りが行われ、複数の読取ヘッド側磁気素子の配置方向が磁気テープMTの幅方向WDに対してカートリッジリール18側に傾斜している状態で、磁気テープMTが逆方向に沿って走行している場合に奇数データトラックDTn_mOからデータの読み取りが行われるようにしてもよい。
また、磁気テープMTが順方向に沿って走行している状態でデータトラックDTn_1、DTn_2、DTn_3、DTn_4、・・・・DTn_12のうちのデータトラックDTn_1~DTn_6からデータの読み取りが行われ、磁気テープMTが逆方向に沿って走行している状態でデータトラックDTn_1、DTn_2、DTn_3、DTn_4、・・・・DTn_12のうちのデータトラックDTn_7~DTn_12からデータの読み取りが行われる場合、偶数データトラックDTn_mEからデータの読み取りが行われる場合と奇数データトラックDTn_mOからデータの読み取りが行われる場合とで、複数の読取ヘッド側磁気素子の配置方向を磁気テープMTの幅方向WDに対して巻取リール42側に傾斜させる態様と複数の読取ヘッド側磁気素子の配置方向を磁気テープMTの幅方向WDに対してカートリッジリール18側に傾斜させる態様とを切り替えるようにすればよい。
図17~図19に示したように、奇数データトラックDTn_mOからデータの読み取りが行われる場合には、複数の読取ヘッド側磁気素子の配置方向が磁気テープMTの幅方向WDに対して巻取リール42側に傾斜している状態とされるのに対し(図17参照)、偶数データトラックDTn_mEからデータの読み取りが行われる場合には、複数の読取ヘッド側磁気素子の配置方向が磁気テープMTの幅方向WDに対してカートリッジリール18側に傾斜している状態とされる(図18参照)。これは、複数のデータトラックDTのうちの隣接トラック、すなわち、奇数データトラックDTn_mO及び偶数データトラックDTn_mEの各々に対して、複数の読取ヘッド側磁気素子の配置方向の幅方向WDに対する傾斜の方向として、相反する方向が割り当てられていることを意味する。
ところで、一例として図20に示すように、複数のサーボバンドSBが形成された磁気テープMTの幅は、時間の経過と共に縮まる。図20に示す例では、磁気テープMTの幅方向WDの幅が縮まる態様が示されているが、逆に、磁気テープMTの幅方向WDの幅が拡がることもあり得る。磁気テープMTの幅が縮んだり拡がったりする要因としては、磁気テープMTの保存環境、及び磁気テープカートリッジ10に装填された磁気テープMTにかかる応力等が考えられる。
例えば、磁気テープMTの幅方向WDの幅が時間の経過と共に縮まると、サーボ読取素子SRのサーボパターン51に対する位置が設計的に定められた既定位置(例えば、磁化領域51A及び磁化領域51Bの中心位置)から外れてしまう。サーボ読取素子SRのサーボパターン51に対する位置が設計的に定められた既定位置から外れてしまうと、サーボ制御の精度が低下し、記録素子DWとデータトラックDTとの位置がずれ、読取素子DRとデータトラックDTとの位置もずれてしまう。
このような事情に鑑み、磁気テープシステム2では、図21以降に示す処理が行われる。一例として図21に示すように、磁気テープドライブ30のASIC120は、第1位置検出部120A、第2位置検出部120B、及びピッチ算出部120Dを有する。
第1位置検出部120Aには、データバンドDBにデータが記録される前段階で、サーボ読取素子WSR1によって読み取られたサーボバンドSB1のサーボパターン51に基づく第1サーボ信号が入力される。第1サーボ信号は、サーボバンドSB1の磁化領域51A及び51Bに対応する断続的なパルスである。第1位置検出部120Aは、サーボ読取素子WSR1から入力された第1サーボ信号のパルスの間隔に基づいて、磁気テープMTの全長にわたって間隔を空けた複数の箇所(例えば、数メートル~数十メートルの一定間隔を空けた複数の箇所)で、サーボ読取素子WSR1がサーボバンドSB1の幅方向WDのどの位置にあるかを検出し、検出結果をピッチ算出部120Dに出力する。
第2位置検出部120Bには、データバンドDBにデータが記録される前段階で、サーボ読取素子WSR2によって読み取られたサーボバンドSB2のサーボパターン51に基づく第2サーボ信号が入力される。第2サーボ信号は、サーボバンドSB2の磁化領域51A及び51Bに対応する断続的なパルスである。第2位置検出部120Bは、サーボ読取素子WSR2から入力された第2サーボ信号のパルスの間隔に基づいて、磁気テープMTの全長にわたって間隔を空けた複数の箇所で、サーボ読取素子WSR2がサーボバンドSB2の幅方向WDのどの位置にあるかを検出し、検出結果をピッチ算出部120Dに出力する。
ここで、サーボ読取素子WSRがサーボバンドSBの幅方向WDのどの位置にあるかを検出する具体的手法について説明する。
一例として図22は、図13に示したサーボパターン51の1つを示している。サーボパターン51の磁化領域51A及び51Bは、幅方向WDに沿った仮想的な直線に対して線対称に傾けられた一対の線状の磁化領域である。サーボ読取素子WSRは、磁化領域51A及び51Bを読み取るとそれぞれ磁化領域51A及び51Bに対応したパルスを発生する。従って、磁気テープMTが順方向又は逆方向に走行している状態で、サーボ読取素子WSRがサーボパターン51を読み取った場合、サーボ読取素子WSRの幅方向WDに沿った位置により、磁化領域51A及び51Bによって発生するパルスの間隔に時間差が生じることになる。なお、サーボパターン51は、必ずしも幅方向WDに沿った仮想的な直線に対して線対称に傾けられた一対の線状である必要はない。サーボパターン51は非平行な一対の線状の磁化領域であればよく、例えば磁化領域51Aが幅方向WDに沿った仮想的な直線に対して平行で、磁化領域51Bが幅方向WDに沿った仮想的な直線に対して傾斜してもよい。
一方、送出モータ40及び巻取モータ44の回転速度及び回転トルクはASIC120によって制御されることから、ASIC120によって磁気テープMTの速度が算出可能である。従って、磁化領域51A及び51Bに対応したパルスの間隔と磁気テープMTの速度とから、サーボ読取素子SRの幅方向WDに沿った位置における磁化領域51Aから磁化領域51Bまでの距離Dが得られる。なお、距離Dは、磁気テープMTの全長方向に沿った磁化領域51Aから磁化領域51Bまでの距離である。
本実施形態では、複数のサーボ位置の各々について、距離Dが予め規定されている。複数のサーボ位置とは、例えば、各々のサーボバンドSB内における幅方向WDに沿った複数の位置を指す。例えば、サーボ位置は、幅方向WDの一端側から他端側にかけてサーボバンドSB毎に“1”から昇順に並ぶ番号により表される。各々のサーボバンドSB内におけるサーボ読取素子WSRの幅方向WDに沿った位置は、距離Dに基づいて特定される。本実施形態では、サーボ位置毎に予め規定されている距離Dを含む情報として、サーボパターン距離情報148が用いられる。サーボパターン距離情報148は、磁気テープカートリッジ10が製造される段階で磁気テープカートリッジ10のNVM96に記憶される。なお、距離Dは、本開示の技術に係る「複数のサーボバンドの各々に形成されているサーボパターンを構成する一対の磁化領域間の複数の位置における磁気テープの全長方向の距離」の一例である。また、サーボ位置は、本開示の技術に係る「複数のサーボバンド内における幅方向の複数の位置」の一例である。
ところで、サーボパターン51は、サーボライタ(図示省略)によってサーボバンドSBに記録される。サーボライタは、サーボ信号書込ヘッド(図示省略)を有しており、サーボ信号書込ヘッドによってサーボバンドSBに磁化領域51A及び51Bが形成される。一例として図22に示すように、サーボバンドSB上のサーボパターン51は、直線状に記録されることが理想である。しかしながら、実際には、サーボ信号書込ヘッドの加工誤差により、一例として図23に示すように、サーボパターン51の磁化領域51A及び51Bは直線状にならず湾曲することがある。なお、図23に示したサーボパターン51の例は、説明の便宜上、磁化領域51A及び51Bの歪みをわかりやすく模式化して示したものであり、磁化領域51A及び51Bの実際の歪みよりも強調している。
サーボバンドSB内にサーボパターン51を記録するサーボ信号書込ヘッドのギャップパターンは、サーボ信号書込ヘッドに形成されている。ギャップパターンは、サーボパターン51と同じく一対の線状のパターンである。ギャップパターンの一対のパターンはサーボパターン51と同じく互いに非平行であり、かつ、磁気テープMTの全長方向側の相反する方向に既定角度だけ傾いてサーボ信号書込ヘッドに形成されている。すなわち、ギャップパターンからの漏れ磁束が磁気テープMTの各々のサーボバンドSBを磁化することで、ギャップパターンと同じ形のサーボパターン51が各々のサーボバンドSBに記録される。従って、サーボ信号書込ヘッドの加工誤差によりギャップパターンが湾曲していると、磁気テープMT上に記録されるサーボパターン51も湾曲することとなる。サーボ信号書込ヘッドのギャップパターンにおける磁気テープMTの全長方向に沿った一対のパターン間の距離が測定されることで、各々のサーボバンドSB内における幅方向WDに沿った複数のサーボ位置毎の距離Dが測定される。
一例として図24は、サーボパターン距離情報148を示している。図24に示す例では、サーボパターン距離情報148の一例として、サーボバンドSB毎にサーボ位置、距離D、及びサーボ距離が定められた情報が示されている。図24に示すサーボパターン距離情報148の例では、サーボバンドSBを識別する識別番号毎に、サーボ位置、距離D、及びサーボ距離が対応付けられている。換言すると、サーボパターン距離情報148には、各サーボバンドSBに対して複数のサーボ位置が対応付けられており、各サーボ位置に対して距離D及びサーボ距離が対応付けられている。すなわち、サーボパターン距離情報148には、サーボバンドSBとサーボ位置との組み合わせの各々に対する距離Dと、各々のサーボ位置に対応するサーボ距離が含まれている。サーボ距離は、サーボバンドSBの幅方向WDにおける中点149の位置を基準とする各サーボ位置に対応した幅方向WDにおける距離である。
図24に示すサーボパターン距離情報148の例では、各々のサーボバンドSB上にそれぞれ19個のサーボ位置が設定されているが、サーボバンドSB上に設定されるサーボ位置の数に制約はなく、複数のサーボ位置が設定されていればよい。また、図24に示すサーボパターン距離情報148の例では、例えばサーボバンドSBの幅方向WDにおける中点149に対応したサーボ位置のサーボ距離を0μmとしている。その上で、中点149からの幅方向WDに沿った距離が遠くにあるサーボ位置ほど、各サーボ位置におけるサーボ距離は長くなる。図24に示すサーボパターン距離情報148の例では、中点149に対応したサーボ位置の距離Dより距離Dが短くなるサーボ位置のサーボ距離は正値(+)で表され、中点に対応したサーボ位置の距離Dより距離Dが長くなるサーボ位置のサーボ距離は負値(-)で表される。
第1位置検出部120A(図21参照)は、第1サーボ信号のパルスの間隔から距離Dを算出し、サーボパターン距離情報148を参照することで、算出した距離Dに対応したサーボ読取素子WSR1のサーボ位置を検出する。
第2位置検出部120B(図21参照)は、第2サーボ信号のパルスの間隔から距離Dを算出し、サーボパターン距離情報148を参照することで、算出した距離Dに対応したサーボ読取素子WSR2のサーボ位置を検出する。
ピッチ算出部120Dは、第1位置検出部120A及び第2位置検出部120Bの各々から入力された検出結果に基づいて、磁気テープMTの全長にわたって間隔を空けた複数の箇所で、幅方向WDのサーボパターン51のピッチを算出する。幅方向WDのサーボパターン51のピッチとは、サーボバンドSB1のサーボパターン51とサーボバンドSB2のサーボパターン51とのピッチ、及び、サーボバンドSB2のサーボパターン51とサーボバンドSB3のサーボパターン51とのピッチを指す。
図21に示す例では、サーボバンドSB1のサーボパターン51とサーボバンドSB2のサーボパターン51とのピッチがピッチ算出部120Dによって算出される態様が示されているが、これはあくまでも一例に過ぎない。例えば、磁気ヘッド36を幅方向WDに沿って移動させることで、サーボ読取素子WSR1をサーボバンドSB2上に位置させ、かつ、サーボ読取素子WSR2をサーボバンドSB3上に位置させれば、サーボバンドSB2のサーボパターン51とサーボバンドSB3のサーボパターン51とのピッチを、ピッチ算出部120Dに対して第1サーボ信号及び第2サーボ信号に基づいて算出させることが可能となる。
また、図21に示す例では、サーボ読取素子WSR1及びWSR2によってサーボパターン51が読み取られた結果に基づく第1及び第2サーボ信号が第1及び第2位置検出部120A及び120Bに入力され、第1及び第2位置検出部120A及び120Bが第1及び第2サーボ信号に基づいてサーボ読取素子WSR1及びWSR2がサーボバンドSBの幅方向WDのどの位置にあるかを検出する形態例を挙げて説明したが、サーボ読取素子RSR1及びRSR2によってサーボパターン51が読み取られた場合も、第1及び第2位置検出部120A及び120Bによって同様の処理が行われる。すなわち、サーボ読取素子RSR1及びRSR2がサーボバンドSBの幅方向WDのどの位置にあるかが検出される。
なお、以下では、特に区別して説明する必要がない場合は、第1位置検出部120A及び第2位置検出部120Bを位置検出部121と表記し、第1サーボ信号及び第2サーボ信号をサーボ信号と表記する。
一例として図25に示すように、ピッチ算出部120Dは、磁気テープMTの全長にわたって間隔を空けた複数の箇所での幅方向WDのサーボバンドSB間のピッチを特定可能なピッチ情報142(例えば、サーボバンドSB間のピッチそのものを示す情報)を非接触式読み書き装置50に出力する。非接触式読み書き装置50は、データバンドDBにデータが記録される前段階で、ピッチ情報142の書込指令を、コマンド信号としてカートリッジメモリ19に空間伝送する。CPU94は、非接触式読み書き装置50からのコマンド信号に応じて、ピッチ情報142をNVM96に書き込む書込処理を行う。これにより、磁気テープMTの全長にわたって間隔を空けた複数の箇所でのピッチ情報142がNVM96に記憶される。
ここで、データバンドDBにデータが記録される前段階としては、例えば、磁気テープカートリッジ10が製造される段階が挙げられるが、本開示の技術はこれに限定されず、データバンドDBにデータが記録される前段階は、ユーザが初めて磁気テープドライブ30に磁気テープカートリッジ10を装填して初期化が行われた直後であってもよいし、磁気テープドライブ30に磁気テープカートリッジ10が装填される毎であってもよいし、磁気テープドライブ30に磁気テープカートリッジ10が装填されてからデータの記録が行われる前に磁気テープMTを1往復させながらピッチ情報142が取得され、取得されたピッチ情報142がNVM96に記憶されるようにしてもよい。
図26はピッチ情報142の一例を示す図である。ピッチ情報142は、サーボバンドSB毎にサーボ位置及びピッチが定められた情報である。図26に示す例では、サーボバンドSBを識別する識別番号毎に、サーボ位置及びピッチが対応付けられている。換言すると、ピッチ情報142には、各サーボバンドSBに対して複数のサーボ位置が対応付けられており、各サーボ位置に対してピッチが対応付けられている。すなわち、ピッチ情報142には、サーボバンドSBとサーボ位置の組み合わせの各々に対するピッチが含まれている。ピッチ情報142は、磁気テープMTの全長にわたって間隔を空けた複数の箇所毎に測定され、NVM96に記憶される。
なお、NVM96に記憶されるピッチ情報142は、複数の磁気テープドライブ30のうち、基準となる磁気テープドライブ30(以下、「基準ドライブ」とも称する)から得られた情報である。なお、ここで言う「基準ドライブ」とは、世の中の標準的な磁気テープドライブ30という意味ではない。如何なる磁気テープドライブ30であっても、磁気テープカートリッジ10にとって初回に使用される磁気テープドライブ30であれば、ピッチを測定することが可能な「基準ドライブ」になり得る。
なお、磁気テープドライブ30は、磁気テープドライブ30によってデータの記録が行われる前段階で、複数のサーボ読取素子SRによって複数のサーボバンドSBが読み取られた結果と、複数のサーボ読取素子SR間の距離に基づいて算出したピッチを用いてピッチ情報142を生成してもよい。
具体的には、第1移動機構129A及び第2移動機構は、磁気テープMTの全長にわたって間隔を空けた複数の箇所で、それぞれサーボ読取素子WSR1及びサーボ読取素子WSR2、並びに、サーボ読取素子RSR1及びサーボ読取素子RSR2をサーボバンドSB上の位置に移動させる。位置検出部121は、複数の箇所で各サーボバンドSBの幅方向WDに沿ったサーボ読取素子SRのそれぞれの位置における距離Dを算出し、距離Dに対応したサーボ位置を検出する。ASIC120は、サーボ読取素子SRのサーボ位置におけるサーボ距離と、サーボ読取素子間距離を用いて、磁気テープMTの全長にわたって間隔を空けた複数の箇所におけるサーボ位置毎のピッチ情報142を生成する。距離Dに対応したサーボ位置は、本開示の技術に係る「複数のサーボ読取素子によって複数のサーボバンドが読み取られた結果」の一例である。
例えば、サーボ読取素子間距離が2858.6μmで、サーボ読取素子WSR1及びサーボ読取素子WSR2のサーボ距離がそれぞれ23.555μm及び23.455μmであるとする。この場合、サーボ読取素子WSRのサーボ位置におけるピッチは2858.5μm(2858.5=2858.6-(23.555-23・455))となる。
このようにして、ASIC120は、サーボパターン距離情報148に規定されるサーボ位置毎のサーボ読取素子SRのサーボ距離と、磁気テープドライブ30のストレージ122に格納されているサーボ読取素子間距離を用いて、図26に示すピッチ情報142を生成してもよい。
磁気テープドライブ30の制御装置38(図12参照)において、一例として図27に示すように、ASIC120は、位置検出部121、サーボ制御部123、記録制御部125、データ取得部130、読取制御部132、データ出力部134、傾斜制御部136、及び走行制御部140を有する。
走行制御部140は、送出モータ40及び巻取モータ44の各々の駆動を制御することで磁気テープMTを順方向及び逆方向に選択的に走行させる。送出モータ40の駆動は、送出モータ制御信号(図示省略)に従って制御され、巻取モータ44の駆動は、巻取モータ制御信号(図示省略)に従って制御される。送出モータ制御信号及び巻取モータ制御信号は、走行制御部140によって生成される。送出モータ制御信号は、走行制御部140によって送出モータ40に供給され、巻取モータ制御信号は、走行制御部140によって巻取モータ44に供給される。なお、以下では、特に区別する必要がない場合、送出モータ制御信号及び巻取モータ制御信号をモータ制御信号と称する。
走行制御部140は、カートリッジメモリ19からピッチ情報142を取得し、取得したピッチ情報142をストレージ122に格納する。詳しくは後述するが、走行制御部140は、ストレージ122内のピッチ情報142によって特定される磁気ヘッド36の幅方向WDでの位置におけるピッチに従って、送出モータ40及び巻取モータ44の各々の回転速度及び回転トルクを調整することで、磁気テープMTの走行速度及び張力を適値に調整する。磁気テープMTの走行速度及び張力の調整は、磁気テープMTの全長にわたって間隔を空けた複数の箇所の各々について行われる。このように磁気テープMTの張力が調整されることによって磁気テープMTの幅が調整される。送出モータ40及び巻取モータ44の各々の回転速度及び回転トルクの調整は、送出モータ制御信号及び巻取モータ制御信号が走行制御部140によってピッチ情報142に従って補正されることで実現される。
走行制御部140は、ピッチ情報142によって特定される磁気ヘッド36の幅方向WDでの位置におけるピッチに従って補正されたモータ制御信号に基づいて、磁気テープMTにかかっている張力(以下、単に「張力」とも称する)を算出する。走行制御部140による張力の算出は、例えば、磁気テープMTの全長にわたって間隔を空けた複数の箇所の各々について行われる。この場合、例えば、走行制御部140は、モータ制御信号を独立変数とし、張力を従属変数とした演算式を用いて張力を算出する。ここで用いられる演算式は、実機による試験及び/又はコンピュータ・シミュレーションによって予め得られた演算式である。
走行制御部140は、磁気テープMTの全長にわたって間隔を空けた複数の箇所の各々について、モータ制御信号に基づいて算出した張力を示す張力情報を傾斜制御部136に出力する。
位置検出部121には、サーボ読取素子WSR1及びWSR2により読み取られたサーボパターン51に基づく2通りのサーボ信号(以下、「記録ヘッド側サーボ信号」とも称する)と、サーボ読取素子RSR1及びRSR2により読み取られたサーボパターン51に基づく2通りのサーボ信号(以下、「読取ヘッド側サーボ信号」とも称する)とが入力される。位置検出部121は、サーボ読取素子WSR1のサーボバンドSB内の位置及びサーボ読取素子WSR2のサーボバンドSB内の位置を検出し、検出した位置の平均値を算出する。そして、位置検出部121は、算出した平均値に基づいて、記録ヘッド36Aの幅方向WDでの位置を検出する。
なお、位置検出部121には、カートリッジメモリ19からサーボパターン距離情報148が入力されてもよい。この場合、位置検出部121は、記録ヘッド側サーボ信号を用いて、サーボ読取素子WSR1及びWSR2で読み取りを行った各々のサーボバンドSBにおけるサーボパターン51の距離Dを算出する。位置検出部121は、サーボパターン距離情報148を参照し、算出した各々の距離Dに対応するサーボ位置を、サーボ読取素子WSR1のサーボバンドSB内の位置及びサーボ読取素子WSR2のサーボバンドSB内の位置として検出し、検出した位置の平均値を算出する。そして、位置検出部121は、算出した平均値に基づいて、記録ヘッド36Aの幅方向WDでの位置を検出してもよい。
例えば、サーボバンドSB1におけるサーボ読取素子WSR1のサーボ位置が“1”で、サーボバンドSB2におけるサーボ読取素子WSR2のサーボ位置が“3”であれば、“2”によって表されるサーボ位置が、記録ヘッド36Aの幅方向WDでの位置となる。なお、図24のサーボパターン距離情報148の例では、19個のサーボ位置が設定されているが、サーボ位置の検出においては、サーボ位置を距離D及びサーボパターン距離情報148に基づいて演算し、サーボパターン距離情報148に設定されているサーボ位置の中間の値としてもよい。
また、位置検出部121は、サーボ読取素子RSR1のサーボバンドSB内の位置及びサーボ読取素子RSR2のサーボバンドSB内の位置を検出し、検出した位置の平均値を算出する。そして、位置検出部121は、算出した平均値に基づいて、読取ヘッド36Bの幅方向WDでの位置を検出する。
なお、位置検出部121は、読取ヘッド側サーボ信号を用いて、サーボ読取素子RSR1及びRSR2で読み取りを行った各々のサーボバンドSBにおけるサーボパターン51の距離Dを算出してもよい。この場合、位置検出部121は、サーボパターン距離情報148を参照し、算出した各々の距離Dに対応するサーボ位置を、サーボ読取素子RSR1のサーボバンドSB内の位置及びサーボ読取素子RSR2のサーボバンドSB内の位置として検出し、検出した位置の平均値を算出する。そして、位置検出部121は、算出した平均値に基づいて、読取ヘッド36Bの幅方向WDでの位置を検出してもよい。
例えば、サーボバンドSB1におけるサーボ読取素子RSR1のサーボ位置が“1”で、サーボバンドSB2におけるサーボ読取素子RSR2のサーボ位置が“2”であれば、“1.5”によって表されるサーボ位置が、読取ヘッド36Bの幅方向WDでの位置となる。サーボ位置=“1.5”は、図24に示したサーボパターン距離情報148の例に設定されているサーボ位置の中間の値の一例である。
位置検出部121は、検出した記録ヘッド36Aの幅方向WDでの位置、及び検出した読取ヘッド36Bの幅方向WDでの位置をそれぞれサーボ制御部123及び走行制御部140に出力する。
以降では、磁気ヘッド36の幅方向WDでの位置の検出結果を、単に「磁気ヘッド36の幅方向位置」ということにする。
サーボ制御部123は、位置検出部121からの記録ヘッド36Aの幅方向WDでの位置の検出結果(以下、「記録ヘッド側検出結果」とも称する)と、記録ヘッド36Aの幅方向WDでの目標位置(以下、「記録ヘッド側目標位置」とも称する)とを比較する。また、サーボ制御部123は、位置検出部121から読取ヘッド36Bの幅方向WDでの位置の検出結果(以下、「読取ヘッド側検出結果」とも称する)と、読取ヘッド36Bの幅方向WDでの目標位置(以下、「読取ヘッド側目標位置」とも称する)とを比較する。なお、記録ヘッド側目標位置及び読取ヘッド側目標位置は、例えば、磁気テープドライブ30で磁気テープカートリッジ10にデータの記録及び/又は読み取りを行う毎に、ASIC120によってサーボ位置を用いて指定される。
サーボ制御部123は、記録ヘッド側検出結果が記録ヘッド側目標位置と同じであった場合、第1移動機構129Aに対して何もしない。サーボ制御部123は、記録ヘッド側検出結果が記録ヘッド側目標位置からずれていた場合、サーボ制御部123は、サーボ制御信号を第1移動機構129Aに出力する。第1移動機構129Aは、サーボ制御部123から入力されたサーボ制御信号に従って作動することで、記録ヘッド36Aの幅方向WDでの位置を記録ヘッド側目標位置に合わせる。
サーボ制御部123は、読取ヘッド側検出結果が読取ヘッド側目標位置と同じであった場合、第2移動機構129Bに対して何もしない。サーボ制御部123は、読取ヘッド側検出結果が読取ヘッド側目標位置からずれていた場合、サーボ制御部123は、サーボ制御信号を第2移動機構129Bに出力する。第2移動機構129Bは、サーボ制御部123から入力されたサーボ制御信号に従って作動することで、読取ヘッド36Bの幅方向WDでの位置を読取ヘッド側目標位置に合わせる。
データ取得部130は、記録ヘッド36AによりデータバンドDBに記録するデータを外部装置(図示省略)から取得する。外部装置としては、例えば、複数の磁気テープドライブ30を管理するホストコンピュータ、又は、磁気テープドライブ30に対して通信可能に接続されたパーソナル・コンピュータ等が挙げられる。データ取得部130は、外部装置から取得したデータを記録制御部125に出力する。
記録制御部125は、データ取得部130から入力されたデータを記録用のデジタル信号にエンコードする。そして、記録制御部125は、デジタル信号に応じたパルス電流を記録ヘッド36Aに含まれる複数の記録素子DWに対して選択的に供給することで、データバンドDB内の指定されたデータトラックDTにデータを記録させる。
読取制御部132は、読取ヘッド36Bの読取素子DRの動作を制御することで、読取素子DRに対して、データバンドDB内の指定されたデータトラックDTからデータを読み取らせる。読取素子DRによってデータトラックDTから読み取られたデータは、パルス状のデジタル信号である。読取制御部65は、パルス状のデジタル信号をデータ出力部134に出力する。
データ出力部134は、読取制御部132から入力されたパルス状のデジタル信号をデコードする。データ出力部134は、デコードして得たデータを既定の出力先(例えば、ホストコンピュータ、パーソナル・コンピュータ、ディスプレイ(図示省略)、及び/又は記憶装置(例えば、ストレージ122等))に出力する。
詳しくは後述するが、傾斜制御部136は、磁気テープMTの全長にわたって間隔を空けた複数の箇所の各々について、走行制御部140から入力された張力情報に基づいて傾斜特徴情報144を算出し、算出した傾斜特徴情報144をストレージ122に格納する。
傾斜特徴情報144は、磁気テープMTの幅方向WDに対する磁気ヘッドの長手方向の傾斜の特徴を示す情報である。磁気テープMTの幅方向WDに対する磁気ヘッドの長手方向の傾斜の特徴とは、磁気テープMTの幅方向WDに対する記録ヘッド36Aの長手方向の傾斜の特徴、及び磁気テープMTの幅方向WDに対する読取ヘッド36Bの長手方向の傾斜の特徴を指す。記録ヘッド36Aの長手方向の傾斜の特徴とは、複数の記録ヘッド側磁気素子の配列方向の磁気テープMTの幅方向WDに対する磁気テープMTの全長方向側への傾斜の特徴を意味する。また、読取ヘッド36Bの傾斜の特徴とは、複数の読取ヘッド側磁気素子の配列方向の磁気テープMTの幅方向WDに対する磁気テープMTの全長方向側への傾斜の特徴を意味する。ここで、傾斜の特徴とは、傾斜の方向及び傾斜の角度を指す。
傾斜特徴情報144は、第1傾斜特徴情報及び第2傾斜特徴情報を含む。第1傾斜特徴情報は、傾斜制御部136によって第1傾斜機構制御信号に基づいて算出される。第2傾斜特徴情報は、傾斜制御部136によって第2傾斜機構制御信号に基づいて算出される。
第1傾斜特徴情報は、磁気テープMTの幅方向WDに対する複数の記録ヘッド側磁気素子の配列方向の傾斜の特徴を示す情報である。第1傾斜特徴情報には、記録ヘッド36Aの傾斜の方向、すなわち、磁気テープMTの幅方向WDに対する複数の記録ヘッド側磁気素子の配列方向の傾斜の方向(例えば、カートリッジリール18側であるか、或いは、巻取リール42側であるか)を示す第1傾斜方向情報が含まれる。また、第1傾斜特徴情報には、記録ヘッド36Aの傾斜の角度、すなわち、磁気テープMTの幅方向WDに対する複数の記録ヘッド側磁気素子の配列方向の傾斜の角度を示す第1傾斜角度情報が含まれる。
第2傾斜特徴情報は、磁気テープMTの幅方向WDに対する複数の読取ヘッド側磁気素子の配列方向の傾斜の特徴を示す情報である。第2傾斜特徴情報には、読取ヘッド36Bの傾斜の方向、すなわち、磁気テープMTの幅方向WDに対する複数の読取ヘッド側磁気素子の配列方向の傾斜の方向(例えば、カートリッジリール18側であるか、或いは、巻取リール42側であるか)を示す第2傾斜方向情報が含まれる。また、第2傾斜特徴情報には、読取ヘッド36Bの傾斜の角度、すなわち、磁気テープMTの幅方向WDに対する複数の読取ヘッド側磁気素子の配列方向の傾斜の角度を示す第2傾斜角度情報が含まれる。
傾斜制御部136は、第1傾斜特徴情報に基づいて第1傾斜機構制御信号を生成し、第2傾斜特徴情報に基づいて第2傾斜機構制御信号を生成する。傾斜制御部136は、生成した第1傾斜機構制御信号を第1傾斜機構131Aに出力し、生成した第2傾斜機構制御信号を第2傾斜機構131Bに出力する。第1傾斜機構制御信号は、第1傾斜アクチュエータ131A1(図12参照)の駆動を制御する信号であり、第2傾斜機構制御信号は、第2傾斜アクチュエータ131B1(図12参照)の駆動を制御する信号である。以下では、特に区別して説明する必要がない場合、第1傾斜機構制御信号及び第2傾斜機構制御信号を傾斜機構制御信号と称する。
第1傾斜機構131Aは、磁気テープMTの全長にわたって間隔を空けた複数の箇所の各々について、第1傾斜機構制御信号に基づいて第1傾斜機構131Aを作動させることで記録ヘッド36Aの傾斜の方向及び傾斜の角度を調整する。すなわち、第1傾斜機構131Aは、記録ヘッド36Aの傾斜の方向及び傾斜の角度を、第1傾斜特徴情報により示される傾斜の方向及び傾斜の角度にするように、回転軸RA1(図13参照)を中心にして記録ヘッド36Aを回転させる。
第2傾斜機構131Bは、磁気テープMTの全長にわたって間隔を空けた複数の箇所の各々について、第2傾斜機構制御信号に基づいて第2傾斜機構131Bを作動させることで読取ヘッド36Bの傾斜の方向及び傾斜の角度を調整する。すなわち、第2傾斜機構131Bは、読取ヘッド36Bの傾斜の方向及び傾斜の角度を、第2傾斜特徴情報により示される傾斜の方向及び傾斜の角度にするように、回転軸RA2(図13参照)を中心にして読取ヘッド36Bを回転させる。
一例として図28に示すように、走行制御部140は、ストレージ122内のピッチ情報142から特定される磁気ヘッド36の幅方向位置におけるピッチを独立変数とし、送出モータ制御信号を補正する補正値(以下、「送出モータ制御信号補正値」とも称する)及び巻取モータ制御信号を補正する補正値(以下、「巻取モータ制御信号補正値」とも称する)を従属変数とした演算式146を用いて、送出モータ制御信号補正値及び巻取モータ制御信号補正値を算出する。
送出モータ制御信号補正値及び巻取モータ制御信号補正値は、磁気テープMTの幅が目標の幅になるように磁気テープMTに付与する許容範囲内の張力を実現する上で必要な送出モータ制御信号及び巻取モータ制御信号を得るために送出モータ制御信号及び巻取モータ制御信号に対して用いられる補正値である。
なお、ここで、目標の幅とは、磁気ヘッド36の記録素子DW又は読取素子DRがデータの記録又は読み取りの対象となっているデータバンドDB内の指定されたデータトラックDT上に位置するように磁気テープMTに張力を加えた場合の磁気テープMTの幅である。目標の幅は、実機による試験及び/又はコンピュータ・シミュレーション等によって予め得られた固定値であってもよいし、外部から与えられた指示、及び/又は、予め定められた条件等に応じて変更される可変値であってもよい。
また、走行制御部140によって用いられる演算式146は、磁気テープMTの幅が目標の幅になるように磁気テープMTに付与する許容範囲内の張力を実現する上で必要な送出モータ制御信号及び巻取モータ制御信号を得るために送出モータ制御信号及び巻取モータ制御信号に対して用いられる補正値を算出するための演算式として、実機による試験及び/又はコンピュータ・シミュレーション等によって予め得られた演算式である。
走行制御部140は、算出した送出モータ制御信号補正値で送出モータ制御信号を補正してから送出モータ40に供給することで送出モータ40の駆動を制御し、かつ、算出した巻取モータ制御信号補正値で巻取モータ制御信号を補正してから巻取モータ44に供給することで巻取モータ44の駆動を制御する。これにより、許容範囲内の張力が磁気テープMTに付与されて磁気テープMTの幅が目標の幅に一致するように又は近付くように調整される。
例えば、データバンドDB1の各データトラック群DTGの中央に位置するデータトラックDTに対してデータの記録及び/又は読み取りを行うものとする。この場合、磁気テープMTのサーボバンドSB1の幅方向WDの中央(例えば、磁化領域51A及び51Bの中心位置)にサーボ読取素子WSR1(RSR1)が位置し、磁気テープMTのサーボバンドSB2の幅方向WDの中央にサーボ読取素子WSR2(RSR2)が位置するように磁気テープMTにかかる張力を許容範囲内で調整する制御が走行制御部140によって行われることで磁気テープMTの幅が調整される。
なお、ここでは、磁気テープMTのサーボバンドSB1の幅方向WDの中央にサーボ読取素子WSR1(RSR1)を位置させ、磁気テープMTのサーボバンドSB2の幅方向WDの中央にサーボ読取素子WSR2(RSR2)を位置させる形態例を挙げているが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、データバンドDB2の各データトラック群DTGの中央に位置するデータトラックDTに対してデータの記録及び/又は読み取りを行うものとする。この場合、磁気テープMTのサーボバンドSB2の幅方向WDの中央にサーボ読取素子WSR1(RSR1)が位置し、磁気テープMTのサーボバンドSB3の幅方向WDの中央にサーボ読取素子WSR2(RSR2)が位置するように磁気テープMTにかかる張力を許容範囲内で調整する制御が走行制御部140によって行われることで磁気テープMTの幅が調整されるようにしてもよい。
一例として図29に示すように、傾斜制御部136は、走行制御部140から入力された張力情報(図27参照)により示される張力が許容範囲内であるか否かを判定する。許容範囲の上限値は、例えば、磁気テープMTに対して塑性変形等の不可逆的なダメージが与えられる虞がない張力の最大値として予め定められた値であり、許容範囲の下限値は、走行中の磁気テープMTがばたつく虞がない張力の最小値として予め定められた値である。
傾斜制御部136は、張力情報により示される張力が許容範囲外の場合に演算式148を用いて傾斜特徴情報144を算出する。張力情報により示される張力が許容範囲外の場合とは、張力情報により示される張力が許容範囲の上限値を超えている場合、及び張力情報により示される張力が許容範囲の下限値を下回っている場合を指す。
傾斜制御部136は、張力情報により示される張力が許容範囲の上限値を超えている場合に、張力情報により示される張力と許容範囲の上限値との差分(ここでは、一例として、張力情報により示される張力から許容範囲の上限値を減じて得た値)を算出する。
一方、傾斜制御部136は、張力情報により示される張力が許容範囲の下限値を下回っている場合に、張力情報により示される張力と許容範囲の下限値との差分(ここでは、一例として、張力情報により示される張力から許容範囲の下限値を減じて得た値)を算出する。なお、以下では、説明の便宜上、張力情報により示される張力と許容範囲の上限値との差分と、張力情報により示される張力と許容範囲の下限値との差分とを区別して説明する必要がない場合、「張力差分」と称する。
演算式148は、張力差分を独立変数とし、傾斜特徴情報144を従属変数とした演算式である。傾斜制御部136は、張力差分を演算式148に代入することで傾斜特徴情報144を算出する。なお、演算式148は、例えば、回転軸RAを中心にして磁気ヘッドを回転させることによって磁気テープMTの指定されたサーボバンドSB1の幅方向WDの位置にサーボ読取素子WSR1(RSR1)を位置させ、磁気テープMTの指定されたサーボバンドSB2の幅方向WDの位置にサーボ読取素子WSR2(RSR2)を位置させる上で必要な傾斜特徴情報144を得るための演算式として、実機による試験及び/又はコンピュータ・シミュレーション等によって予め得られた演算式である。
一例として図30に示すように、ASIC120は、ストレージ122から傾斜特徴情報144を取得し、取得した傾斜特徴情報144を非接触式読み書き装置50に出力する。非接触式読み書き装置50は、データバンドDBにデータが記録される前段階(例えば、磁気テープカートリッジ10が製造される段階)で、傾斜特徴情報144の書込指令を、コマンド信号としてカートリッジメモリ19に空間伝送する。CPU94は、非接触式読み書き装置50からのコマンド信号に応じて、傾斜特徴情報144をNVM96に書き込む書込処理を行う。これにより、磁気テープMTの全長にわたって間隔を空けた複数の箇所での傾斜特徴情報144がNVM96に記憶される。なお、NVM96に記憶される傾斜特徴情報144は、ピッチ情報142と同様に、基準ドライブから得られた情報である。
このように、カートリッジメモリ19のNVM96に傾斜特徴情報144が記憶されており、かつ、ストレージ122に傾斜特徴情報144が記憶されていない場合、傾斜制御部136は、演算式148を用いて傾斜特徴情報144を算出する必要はなく、NVM96から傾斜特徴情報144を取得する。そして、傾斜制御部136は、NVM96から取得した傾斜特徴情報144をストレージ122に格納する。傾斜制御部136は、ストレージ122内の傾斜特徴情報144に従って傾斜機構信号を生成し、生成した傾斜機構信号に基づいて傾斜機構131を作動させる。
次に、磁気テープシステム2の作用について図31A及び図31Bを参照しながら説明する。
図31A及び図31Bは、磁気テープドライブ30のASIC120によって実行されるテープ幅制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図31Aに示すテープ幅制御処理では、先ず、ステップST10で、走行制御部140は、カートリッジメモリ19のNVM96に傾斜特徴情報144が記憶されていないか否かを判定する。ステップST10において、カートリッジメモリ19のNVM96に傾斜特徴情報144が記憶されている場合は、判定が否定されて、図31Bに示すステップST36へ移行する。ステップST10において、カートリッジメモリ19のNVM96に傾斜特徴情報144が記憶されていない場合は、判定が肯定されて、テープ幅制御処理はステップST12へ移行する。
ステップST12で、走行制御部140は、カートリッジメモリ19のNVM96からCPU94及び非接触式読み書き装置50を介してピッチ情報142及びサーボパターン距離情報148の少なくとも一方を取得する。走行制御部140は、取得したピッチ情報142及びサーボパターン距離情報148をストレージ122に格納する。このようにストレージ122にピッチ情報142を格納させておけば、走行制御部140は、再びカートリッジメモリ19のNVM96からピッチ情報142を取得する必要がなくなる。また、ストレージ122にパターン距離情報148を格納させておけば、位置検出部121は、再びカートリッジメモリ19のNVM96からサーボパターン距離情報148を取得する必要がなくなる。
次のステップST14で、走行制御部140は、送出モータ40及び巻取モータ44を制御することで磁気テープMTの走行を開始させる。
次のステップST16で、走行制御部140は、磁気テープMTに対する磁気ヘッド36の位置が既定位置に到達したか否かを判定する。既定位置とは、磁気テープMTの全長にわたって間隔を空けた複数の箇所のうちの1つの箇所の位置を指す。なお、既定位置に到達したか否かは、例えば、サーボ読取素子WSRから位置検出部121に入力されたサーボ信号に基づいて判定されるようにしてもよいし、磁気テープMTが走行を開始してから経過した時間に基づいて判定されるようにしてもよいし、送出モータ40及び巻取モータ44の駆動量に基づいて判定されるようにしてもよい。
ステップST16において、磁気テープMTに対する磁気ヘッド36の位置が既定位置に到達していない場合は、判定が否定されて、テープ幅制御処理はステップST32へ移行する。ステップST16において、磁気テープMTに対する磁気ヘッド36の位置が既定位置に到達した場合は、判定が肯定されて、テープ幅制御処理はステップST17へ移行する。
ステップST17で、位置検出部121は、記録ヘッド側サーボ信号を用いて、サーボ読取素子WSR1及びWSR2で読み取りを行った各々のサーボバンドSBにおけるサーボパターン51の距離Dを算出する。
位置検出部121は、算出した距離Dに対応するサーボ位置をステップS12で取得したサーボパターン距離情報148から取得する。取得したサーボ位置が、各サーボバンドSBにおけるサーボ読取素子WSRのサーボ位置となる。位置検出部121は、サーボ読取素子WSR1のサーボ位置とサーボ読取素子WSR2のサーボ位置の平均値を、記録ヘッド36Aの幅方向位置として検出する。
なお、位置検出部121は、算出した距離Dに一致するサーボ位置がサーボパターン距離情報148に規定されていない場合、算出した距離Dと、サーボパターン距離情報148に規定されているサーボ位置の距離Dを用いたサーボ位置の補間を行うことで、算出した距離Dに対応するサーボ位置を検出することができる。
例えば、算出した距離Dが“22.001μm”であれば、図24に示したサーボパターン距離情報148において、算出した距離Dはサーボ位置が“1”と“2”に対応した距離Dの範囲に含まれる。従って、位置検出部121は、サーボ位置が“1”に対応した距離D、及びサーボ位置が“2”に対応した距離Dの間を補間することで、算出した距離Dに対応するサーボ位置を求めればよい。サーボ位置の補間には公知の補間手法が用いられる。具体的には、例えば線形補間の他、ラグランジュ補間及びスプライン補間といった非線形補間が用いられる。
なお、位置検出部121は、算出した距離Dに一致するサーボ位置がサーボパターン距離情報148に規定されていない場合、算出した距離Dに最も近い距離Dに対応したサーボ位置を、算出した距離Dに対応するサーボ位置としてもよい。
更に、位置検出部121は、読取ヘッド側サーボ信号を用いて、サーボ読取素子RSR1及びRSR2で読み取りを行った各々のサーボバンドSBにおけるサーボパターン51の距離Dを算出する。以下、位置検出部121は、上述した記録ヘッド36Aの幅方向位置の検出に係る処理と同じ処理を行って、読取ヘッド36Bの幅方向位置を検出する。
サーボ制御部123は、検出した記録ヘッド36Aの幅方向位置が記録ヘッド側目標位置に近づくように第1移動機構129Aを制御することで、記録ヘッド36Aの位置決め制御を行う。これにより、記録ヘッド36Aの幅方向位置が記録ヘッド側目標位置に移動する。
また、サーボ制御部123は、検出した読取ヘッド36Bの幅方向位置が読取ヘッド側目標位置に近づくように第2移動機構129Bを制御することで、読取ヘッド36Bの位置決め制御を行う。これにより、読取ヘッド36Bの幅方向位置が読取ヘッド側目標位置に移動する。
ステップST18で、走行制御部140は、ステップST12で取得したピッチ情報142から特定されるピッチを演算式146に代入することで演算式146から送出モータ制御信号補正値及び巻取モータ制御信号補正値を算出する。
ピッチ情報142から特定されるピッチとは、ピッチ情報142を用いて得られるピッチであって、ステップST17で検出した磁気ヘッド36の幅方向位置を表すサーボ位置に対応したピッチのことである。すなわち、走行制御部140は、磁気ヘッド36の幅方向位置毎に、データバンドDB内の指定されたデータトラックDTからデータの記録及び/又は読み取りを正しく行うためのピッチを取得する。
したがって、演算式146によって、ステップST17で移動した磁気ヘッド36の幅方向位置で、データバンドDB内の指定されたデータトラックDTからデータの記録及び/又は読み取りを正しく行うための送出モータ制御信号補正値及び巻取モータ制御信号補正値が算出される。
次のステップST20で、走行制御部140は、ステップST18で算出した送出モータ制御信号補正値で送出モータ制御信号を補正し、ステップST18で算出した巻取モータ制御信号補正値で巻取モータ制御信号を補正する。走行制御部140は、ステップST18で補正して得たモータ制御信号に基づいて、磁気テープMTにかかる張力を算出し、算出した張力を示す張力情報を傾斜制御部136に出力する。
なお、補正済みの送出モータ制御信号は送出モータ40に供給され、補正済みの巻取モータ制御信号は巻取モータ44に供給される。これにより、送出モータ40及び巻取モータ44の駆動が制御されて磁気テープMTの幅が調整される。
次のステップST22で、傾斜制御部136は、走行制御部140から入力された張力情報により示される張力が許容範囲外であるか否かを判定する。ステップST22において、走行制御部140から入力された張力情報により示される張力が許容範囲内の場合は、判定が否定されて、テープ幅制御処理はステップST32へ移行する。ステップST22において、走行制御部140から入力された張力情報により示される張力が許容範囲外の場合は、判定が肯定されて、テープ幅制御処理はステップST24へ移行する。
ステップST24で、傾斜制御部136は、張力差分を算出する。すなわち、張力情報により示される張力が許容範囲の上限値を上回っている場合は、張力差分として、張力情報により示される張力と許容範囲の上限値との差分が算出される。また、張力情報により示される張力が許容範囲の下限値を下回っている場合は、張力差分として、張力情報により示される張力と許容範囲の下限値との差分が算出される。
次のステップT26で、傾斜制御部136は、張力差分に基づいて傾斜特徴情報144を算出する。すなわち、演算式148に張力差分が代入されることによって傾斜特徴情報144が算出される。
次のステップST28で、傾斜制御部136は、ステップST26で算出した傾斜特徴情報144を用いて傾斜機構131を制御する。すなわち、傾斜制御部136は、傾斜特徴情報144に応じた傾斜機構制御信号を生成し、生成した傾斜機構制御信号を傾斜機構131に供給することで傾斜機構131を作動させて磁気ヘッド36を傾斜させる(磁気ヘッド36の傾斜の方向及び傾斜の角度を調整する)。
次のステップST30で、傾斜制御部136は、ステップST26で算出した傾斜特徴情報144をストレージに格納する。
次のステップST32で、走行制御部140は、磁気ヘッド36の基準位置(例えば、読取ヘッド36B内のサーボ読取素子RSR1)が磁気テープMTの終端に到達したか否かを判定する。ステップST32において、磁気ヘッド36の基準位置が磁気テープMTの終端に到達していない場合は、判定が否定されて、テープ幅制御処理はステップST16へ移行する。ステップST32において、磁気ヘッド36の基準位置が磁気テープMTの終端に到達した場合は、判定が肯定されて、テープ幅制御処理はステップST34へ移行する。
ステップST34で、ASIC120は、ストレージ122から傾斜特徴情報144を取得し、取得した傾斜特徴情報144を非接触式読み書き装置50に出力する。非接触式読み書き装置50は、傾斜特徴情報144の書込指令を、コマンド信号としてカートリッジメモリ19に空間伝送する。カートリッジメモリ19のCPU94は、非接触式読み書き装置50からのコマンド信号に応じて、傾斜特徴情報144をNVM96に書き込む書込処理を行う。これにより、傾斜特徴情報144がNVM96に記憶される。ステップST34の処理が実行された後、テープ幅制御処理が終了する。
図31Bに示すステップST36で、ASIC120は、カートリッジメモリ19のNVM96からCPU94及び非接触式読み書き装置50を介してピッチ情報142、傾斜特徴情報144、及びサーボパターン距離情報148を取得する。
次のステップST38で、走行制御部140は、送出モータ40及び巻取モータ44を制御することで磁気テープMTの走行を開始させる。
次のステップST40で、走行制御部140は、磁気テープMTに対する磁気ヘッド36の位置が既定位置に到達したか否かを判定する。ステップST40において、磁気テープMTに対する磁気ヘッド36の位置が既定位置に到達していない場合は、判定が否定されて、テープ幅制御処理はステップST50へ移行する。ステップST40において、磁気テープMTに対する磁気ヘッド36の位置が既定位置に到達した場合は、判定が肯定されて、テープ幅制御処理はステップST41へ移行する。
ステップST41で、走行制御部140は、ステップS36で取得したサーボパターン距離情報148とサーボ信号を用いて、磁気ヘッド36の幅方向位置を検出する。更に、サーボ制御部123は、磁気ヘッド36の幅方向位置が目標位置に近づくように第1移動機構129A及び第2移動機構129Bを制御することで、磁気ヘッド36の位置決め制御を行う。
ステップST42で、走行制御部140は、ステップST36で取得したピッチ情報142から特定されるピッチを演算式146に代入することで演算式146から送出モータ制御信号補正値及び巻取モータ制御信号補正値を算出する。
次のステップST44で、走行制御部140は、ステップST18で算出した送出モータ制御信号補正値で送出モータ制御信号を補正し、ステップST18で算出した巻取モータ制御信号補正値で巻取モータ制御信号を補正する。
次のステップST46で、傾斜制御部136は、ステップST36で取得した傾斜特徴情報144を参照して、磁気ヘッド36を傾斜させる必要があるか否か(磁気ヘッド36の傾斜の方向及び傾斜の角度を調整する必要があるか否か)を判定する。ステップST46において、磁気ヘッド36を傾斜させる必要がない場合は、判定が否定されて、テープ幅制御処理はステップST50へ移行する。ステップST46において、磁気ヘッド36を傾斜させる必要がある場合は、判定が肯定されて、テープ幅制御処理はステップST48へ移行する。
ステップST48で、傾斜制御部136は、ステップST36で取得した傾斜特徴情報144を用いて傾斜機構131を制御する。
次のステップST50で、走行制御部140は、磁気ヘッド36の基準位置が磁気テープMTの終端に到達したか否かを判定する。ステップST50において、磁気ヘッド36の基準位置が磁気テープMTの終端に到達していない場合は、判定が否定されて、テープ幅制御処理はステップST40へ移行する。ステップST50において、磁気ヘッド36の基準位置が磁気テープMTの終端に到達した場合は、判定が肯定されて、テープ幅制御処理が終了する。
以上説明したように、本実施形態では、傾斜特徴情報144がカートリッジメモリ19のNVM96に記憶されている。傾斜特徴情報144が記憶されたNVM96を有するカートリッジメモリ19が搭載された磁気テープカートリッジ10は、基準ドライブ以外の磁気テープドライブ30にも装填されて使用される。
このように構成された磁気テープカートリッジ10が磁気テープドライブ30に装填されて、磁気テープカートリッジ10内の磁気テープMTが引き出されて磁気ヘッド36によって記録動作又は読取動作が行われる場合、磁気テープドライブ30の傾斜制御部136によってカートリッジメモリ19のNVM96から傾斜特徴情報144が取得される。そして、傾斜制御部136によって、磁気ヘッド36の傾斜が傾斜特徴情報144に応じた傾斜となるように傾斜機構131が制御される。従って、本構成によれば、磁気テープMTが幅方向WDに変形したとしても、磁気テープMTと複数の磁気素子との位置関係の補正に寄与することができる。
また、本実施形態では、傾斜特徴情報144に磁気ヘッド36の傾斜の方向を示す情報が含まれている。従って、本構成によれば、傾斜特徴情報144に磁気ヘッド36の傾斜の方向を示す情報が含まれていない場合に比べ、磁気テープMTが幅方向WDに変形したとしても、磁気テープMTと複数の磁気素子との位置関係の高精度な補正に寄与することができる。
また、本実施形態では、傾斜特徴情報144に磁気ヘッド36の傾斜の角度を示す情報が含まれている。従って、本構成によれば、傾斜特徴情報144に磁気ヘッド36の傾斜の角度を示す情報が含まれていない場合に比べ、磁気テープMTが幅方向WDに変形したとしても、磁気テープMTと複数の磁気素子との位置関係の高精度な補正に寄与することができる。
また、本実施形態では、複数のデータトラックDTのうちの隣接トラック、すなわち、奇数データトラックDn_mO及び偶数データトラックDn_mEの各々に対して、複数の記録ヘッド側磁気素子の配置方向の幅方向WDに対する傾斜の方向として、相反する方向が割り当てられている。これにより、データトラックDT毎に記録ヘッド36Aの傾斜の方向(アジマス)を変えながら読み書きが行われることになる。また、複数のデータトラックDTのうちの隣接トラック、すなわち、奇数データトラックDn_mO及び偶数データトラックDn_mEの各々に対して、複数の読取ヘッド側磁気素子の配置方向の幅方向WDに対する傾斜の方向として、相反する方向が割り当てられている。従って、読取時(再生時)に、読取素子DRが、本来読み取るべきデータトラックDTに隣接するデータトラックDTに対して磁気的な影響を及ぼし難くなる(クロストークが発生し難くなる)。換言すると、読取素子DRとアジマスが一致しているデータトラックDTに対する読み取りが行われる場合は、アジマス損失は少なく(ほぼゼロ)、読取素子DRとアジマスが一致していないデータトラックDT(例えば、隣接するデータトラックDT)に対する読み取りが行われる場合は、アジマス損失が多くなる。
また、本実施形態では、カートリッジメモリ19が、非接触式読み書き装置50によって非接触でデータの読み書きが行われるNVM96を有している。従って、本構成によれば、何らかのメモリ等と接触式でデータの読み書きが行われる場合に比べ、カートリッジメモリ19に対して物理的な損傷を与えることなくピッチ情報142及び傾斜特徴情報144を記憶させることができる。
更に、本実施形態では、磁気テープMTにかかる張力がピッチ情報142に基づいて調整される。従って、本構成によれば、磁気テープMTが幅方向WDに変形したとしても、磁気テープMTと複数の磁気素子との位置関係を補正することができる。また、傾斜特徴情報144に基づいて磁気ヘッド36の傾斜も調整されるので、磁気テープMTにかかる張力のみが調整される場合に比べ、磁気テープMTと複数の磁気素子との位置関係を高精度に補正することができる。
本実施形態では、複数のサーボバンドSB内におけるサーボ位置毎のピッチがピッチ情報142に含まれる。従って、本構成によれば、磁気ヘッド36の幅方向位置にかかわらずピッチを固定値とした場合と比べ、磁気テープMTと複数の磁気素子との位置関係を高精度に補正することができる。
また、本実施形態では、サーボバンドSB内におけるサーボ位置が、各々のサーボバンドSB内における複数のサーボ位置と、サーボバンドSBの各々に形成されているサーボパターン51を構成する一対の磁化領域51A及び51B間の各サーボ位置における距離Dとを対応付けたサーボパターン距離情報148を用いて特定される。従って、本構成によれば、サーボ読取素子SRで読み取ったパルスの変化を用いて磁化領域51Aから磁化領域51Bまでの距離Dを測定することで、各々のサーボバンドSB内におけるサーボ読取素子SRのサーボ位置を特定することができる。
また、本実施形態では、磁気テープMTに対して磁気テープドライブ30によってデータの記録が行われる前段階で、複数のサーボ読取素子SRによって、幅方向WDに隣接するサーボバンドSBのサーボパターン51が読み取られた結果と、複数のサーボ読取素子間の距離に基づいて、幅方向WDのサーボパターン51間のピッチが算出される。従って、本構成によれば、サーボ読取素子間の距離が予め測定されていれば、複数のサーボ読取素子SRが位置するサーボ位置での距離Dを用いてピッチ情報142を生成することができる。
なお、上記実施形態では、記憶媒体としてカートリッジメモリ19のNVM96を例示したが、これに限らない。例えば、図32に示すように、磁気テープカートリッジ10が最初に装填された場合、又は磁気テープMTが初期化された場合のいずれかのタイミングで、制御装置38のASIC120は、磁気ヘッド36の動作を制御することで、傾斜特徴情報144を磁気テープMTの先頭に設けられたBOT領域158に書き込むようにしてもよい。BOT領域158に傾斜特徴情報144が書き込まれた場合、ASIC120は、磁気ヘッド36の動作を制御することで、BOT領域158から傾斜特徴情報144を読み取る。なお、BOT領域158は、本開示の技術に係る「磁気テープの一部領域」の一例である。
このように、図32に示す例では、記憶媒体として、磁気テープMTのBOT領域158が用いられる。従って、本構成によれば、カートリッジメモリ19を用意したり、カートリッジメモリ19のNVM96に傾斜特徴情報144を記憶したりする手間を省くことができる。
図32に示す例では、BOT領域158に傾斜特徴情報144が書き込まれる形態例が示されているが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、BOT領域158にピッチ情報142、サーボパターン距離情報148、及び/又は傾斜特徴情報144を書き込むようにしてもよい。
なお、磁気テープカートリッジ10が製造される段階、磁気テープカートリッジ10が検品される段階、又は磁気テープカートリッジ10が出荷される段階のいずれかのタイミングで、工場に配置された磁気テープドライブ30の磁気ヘッド36により、ピッチ情報142、サーボパターン距離情報148、及び/又は傾斜特徴情報144をBOT領域158に記憶するようにしてもよい。
また、一例として図33に示すように、非接触式読み書き装置50によりカートリッジメモリ19から読み出した傾斜特徴情報144がASIC120によりBOT領域158に書き込まれるようにしてもよい。この場合、NVM96とBOT領域158の両方に傾斜特徴情報144が記憶されることになる。このため、NVM96に記憶された傾斜特徴情報144と、BOT領域158に記憶された傾斜特徴情報144とを突き合わせて、傾斜特徴情報144の信頼性を確かめることができる。また、NVM96とBOT領域158の何れか一方に不具合が生じたとしても、他方から傾斜特徴情報144を得ることができる。
また、カートリッジメモリ19にピッチ情報142、サーボパターン距離情報148、及び/又は傾斜特徴情報144が記憶されている場合、非接触式読み書き装置50によりカートリッジメモリ19から読み出したピッチ情報142、サーボパターン距離情報148、及び/又は傾斜特徴情報144がASIC120によりBOT領域158に書き込まれるようにしてもよい。
なお、BOT領域158に代えて、あるいは加えて、磁気テープMTの後尾に設けられたEOT領域(図示省略)にピッチ情報142、サーボパターン距離情報148、及び/又は傾斜特徴情報144が記憶されるようにしてもよい。また、磁気テープMTのBOT領域158及びEOT領域に限らず、例えば、二次元バーコード又はマトリクス型二次元コード(例えば、QRコード(登録商標))等を記憶媒体として用いてもよい。
上記実施形態では、磁気テープMTにかかる張力と磁気ヘッド36の傾斜との両方を調整する形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、基本的に磁気ヘッド36を傾斜させずに(例えば、図21に示す記録ヘッド36Aと磁気テープMTとの位置関係を参照)、磁気テープMTにかかる張力が調整されるようにし、磁気テープMTにかかる張力が許容範囲の下限値を下回る場合にのみ、磁気ヘッド36を傾斜させるようにしてもよい。
また、例えば、基本的に磁気テープMTにかかる張力を調整せずに、磁気ヘッド36をデータトラックDTの位置に応じて傾斜させるようにしてもよい。この場合、傾斜制御部136は、磁気テープMTの全長の幅変化に応じて、幅が広い位置では磁気ヘッド36の傾斜の角度を浅くし、幅が狭い位置では磁気ヘッド36の傾斜の角度を深くするように傾斜機構131を制御する。但し、磁気ヘッド36の傾斜の角度を変化させる度合いが予め定められた上限を超える場合、走行制御部140によって、磁気テープMTにかかる張力が調整されるようにする。すなわち、磁気テープMTの幅が広い位置で磁気ヘッド36の傾斜の角度を浅くしたとしても足りない場合(データトラックDTに磁気素子を位置させることができない場合)は、磁気テープMTにかかる張力を強める。逆に、磁気テープMTの幅が狭い位置で磁気ヘッド36の傾斜の角度を深くしたとしても足りない場合(データトラックDTに磁気素子を位置させることができない場合)は、磁気テープMTにかかる張力を弱める。
上記実施形態では、磁気テープMTにデータが記録される前段階で傾斜特徴情報144が傾斜制御部136によって取得される形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、磁気テープドライブ30は、磁気テープMTにかかる張力を規定値に保持した状態で磁気テープMTに対するデータの記録動作を開始し、サーボ読取素子で磁気テープMTの幅を特定する情報を随時取得しながらリアルタイムで磁気テープMTにかかる張力を調整し(磁気テープMTの幅が広ければ張力を強め、磁気テープMTの幅が狭ければ張力を弱くし)つつ、磁気テープMTにかかる張力が許容範囲の上下限値近くになったら磁気ヘッド36の傾斜の角度を調整するようにしてもよい。この場合、磁気テープドライブ30は、磁気テープMTに対するデータの記録動作が終了してから、カートリッジメモリ19及び/又はBOT領域158等に傾斜特徴情報144に書き込むようにすればよい。
上記実施形態では、記録ヘッド36A及び読取ヘッド36Bを例示したが、本開示の技術はこれに限定されず、記録ヘッド36Aと読取ヘッド36Bとを一体化した磁気ヘッドであってもよい。すなわち、記録素子DWと読取素子DRとが一体化した磁気素子(記録素子DWと読取素子DRとが対を成す磁気素子)を有する磁気ヘッドであっても本開示の技術は成立する。
上記実施形態では、磁気ヘッド36によって磁気テープMTに対するデータの読み取りとデータの書き込みとの両方が行われる形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されず、磁気テープMTに対してデータの読み取り及びデータの書き込みのうちの一方が行われるようにしてもよい。
上記実施形態では、カートリッジメモリ19がケース12に収容されている形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されず、カートリッジメモリ19は、ケース12の外面に貼り付けられていてもよい。
制御装置38の処理を実行するハードウェア資源としては、次に示す各種のプロセッサを用いることができる。プロセッサとしては、例えば、ソフトウェア、すなわち、プログラムを実行することで処理を実行するハードウェア資源として機能する汎用的なプロセッサであるCPUが挙げられる。また、プロセッサとしては、例えば、FPGA、PLD、又は例示のASIC120等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路が挙げられる。いずれのプロセッサにもメモリが内蔵又は接続されており、いずれのプロセッサもメモリを使用することで処理を実行する。
制御装置38の処理を実行するハードウェア資源は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせ、又はCPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、制御装置38の処理を実行するハードウェア資源は1つのプロセッサであってもよい。
1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが処理を実行するハードウェア資源として機能する形態がある。第2に、SoC等に代表されるように、処理を実行する複数のハードウェア資源を含むシステム全体の機能を1つのICチップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、制御装置38の処理は、ハードウェア資源として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて実現される。
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路を用いることができる。また、上記の制御装置38の処理はあくまでも一例である。従って、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよいことは言うまでもない。
本開示の技術は、上述の種々の実施形態及び/又は種々の変形例を適宜組み合わせることも可能である。また、上記実施形態に限らず、要旨を逸脱しない限り種々の構成を採用し得ることはもちろんである。さらに、本開示の技術は、プログラムに加えて、プログラムを非一時的に記憶する記憶媒体にもおよぶ。
以上に示した記載内容及び図示内容は、本開示の技術に係る部分についての詳細な説明であり、本開示の技術の一例に過ぎない。例えば、上記の構成、機能、作用、及び効果に関する説明は、本開示の技術に係る部分の構成、機能、作用、及び効果の一例に関する説明である。よって、本開示の技術の主旨を逸脱しない範囲内において、以上に示した記載内容及び図示内容に対して、不要な部分を削除したり、新たな要素を追加したり、置き換えたりしてもよいことはいうまでもない。また、錯綜を回避し、本開示の技術に係る部分の理解を容易にするために、以上に示した記載内容及び図示内容では、本開示の技術の実施を可能にする上で特に説明を要しない技術常識等に関する説明は省略されている。
本明細書において、「A及び/又はB」は、「A及びBのうちの少なくとも1つ」と同義である。つまり、「A及び/又はB」は、Aだけであってもよいし、Bだけであってもよいし、A及びBの組み合わせであってもよい、という意味である。また、本明細書において、3つ以上の事柄を「及び/又は」で結び付けて表現する場合も、「A及び/又はB」と同様の考え方が適用される。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願及び技術規格は、個々の文献、特許出願及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。