JP2022037132A - 筋萎縮性側索硬化症患者の下位集団の治療のためのマシチニブの使用 - Google Patents

筋萎縮性側索硬化症患者の下位集団の治療のためのマシチニブの使用 Download PDF

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Abstract

【課題】非侵攻性または中度侵攻性の筋萎縮性側索硬化症(ALS)を治療するための方法を提供する。【解決手段】治療の開始前の筋萎縮性側索硬化症機能評価スケール改訂版(ALSFRS-R)の変化の速度が1ケ月あたり1.1ポイント未満である、非侵攻性または中度侵攻性の筋萎縮性側索硬化症(ALS)を罹患した患者を治療するための方法であって、チロシンキナーゼ阻害剤またはマスト細胞阻害剤、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を、任意に少なくとも1つの薬学的に有効な成分と併用して投与することを含む、方法を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、治療の開始前の筋萎縮性側索硬化症機能評価スケール改訂版(ALSFRS-R)の変化の速度が1ケ月あたり1.1ポイント未満である、非侵攻性または中度侵攻性の筋萎縮性側索硬化症(ALS)を罹患した患者を治療するための方法であって、チロシンキナーゼ阻害剤またはマスト細胞阻害剤、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を、任意に少なくとも1つの薬学的に有効な成分と併用して投与することを含む、方法に関する。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、一次運動野、皮質脊髄路、脳幹、および脊髄の運動ニューロンの変性を反映している進行性の筋肉の麻痺を特徴とする、神経変性疾患である[Wijesekera LC,et al.Orphanet J Rare Dis.2009 Feb 3;4:3]。
典型的なALS患者のおよそ2/3が、この疾患の脊髄型(肢での発症)を有し、限局的な筋力低下および筋肉萎縮に関連した症状を呈しており、この症状の発症は、上肢および下肢の遠位または近位のいずれかで開始し得る。徐々に、筋力低下した萎縮性の肢で痙縮が発症し、手先の器用さおよび歩行に影響を及ぼし得る。延髄での発症のALSを伴う患者は、通常、構音障害、および固体または液体の嚥下障害を呈する。肢の症状は、延髄の症状とほぼ同時に発達する場合があり、症例の大部分では1~2年以内に起こる。麻痺は進行性であり、延髄での発症のALSでは2~3年以内に、肢での発症のALSでは3~5年以内に呼吸性障害によって死に至る。
大部分のALSの症例は孤発性であるが、症例の5~10%は家族性であり、これらのうち20%がSOD1遺伝子(21q22.11)の変異に関与し、約2~5%が、TAR DNA結合タンパク質43(TDP-43)をコードするTARDBP遺伝子(1p36.22)の変異に関与し、1~2%が、バロシン含有タンパク質をコードするVCP遺伝子(9p13.3)の変異に関与している。明らかに孤発性の症例のうち2%が、SOD1の変異に関与しており、また、TARDBPの変異も孤発性の症例で同定されている。
ALSの原因は、いくつかの遺伝的なリスク因子が同定されてはいるが、解明されていない。ALSの因果関係における環境上のリスク因子の役割に関する近年の考察では、単一の環境上の要因と発達していくALSのリスクとの間に一貫した関連はないことが結論付けられた。ほとんどの著者が、運動ニューロンの変性の原因となる要因として、複雑な遺伝的―環境上の相互作用の仮説を好んでいる。
ALSにおいて運動ニューロンの変性を引き起こす正確な分子経路は知られていないが、他の神経変性疾患と同様に、相互排他的ではない可能性のある、複数の病因となる細胞機構間の複雑な相互作用が関与している可能性がある。これらは、遺伝的な要因、興奮毒性、酸化ストレス、ミトコンドリア機能不全、軸索輸送の異常、神経フィラメントの凝集、タンパク質の凝集、炎症性機能不全、および非神経細胞の寄与を含む。
炎症性機能不全および非神経細胞が、ALSの発病にある役割を果たし得るとのエビデンスが増加している[Wijesekera LC,et al.Orphanet J Rare Dis.2009 Feb 3;4:3]。ミクログリア細胞および樹状細胞の活性化は、ヒトのALSおよびトランスジェニックSOD1マウスにおいて顕著な病態である。これらの活性化した非神経細胞は、インターロイキン、COX-2、TNFα、およびMCP-1などの炎症性サイトカインを産生しており、アップレギュレーションのエビデンスが、ALS患者またはin vitroのモデルの脳脊髄液または脊髄の試料で見いだされている。グリアの活性化を介した神経炎症は、現在では、ALSの発病の重要な態様として確立されている[Philips T,et al.Lancet Neurol.2011;10:253-263]。in vivoでのヒトの特定の疾患状態では、ミクログリアおよびアストロサイトの両方が、顕著に活性化または増殖している[Turner MR,et al.Neurobiol Dis 2004;15:601-9]。同様に、ALSの患者および動物モデルの両方において、血液脳関門および血液脊髄関門を含むすべての神経血管部の構成要素の異常を表すエビデンスが存在している[Garbuzova-Davis S.Amyotroph Lateral Scler.2008 Dec;9(6):375-6]。
新たに重要な別の非神経細胞として、マスト細胞がある。マスト細胞は、通常炎症反応に関与する分子の受容体の発現を介してすべての炎症工程に大きな役割を果たしていることがよく知られている。さらに、マスト細胞は、炎症性ネットワークを維持し、血液脳関門(BBB)の透過性を調節する、大量の様々なメディエーターを放出する[Skaper SD,et al.Immunol 2014;141:314-327]。重要なことに、マスト細胞および神経細胞は、マスト細胞から放出される炎症性サイトカインに応答するミクログリアの活性化を介して関連している[Skaper SD,et al.Immunol 2014;141:314-327]。
臨床診療において、ALS患者が、異なる速度の疾患の進行を経験していることが観察されている。異なる速度の疾患の進行は、ALSの病因が異なることを反映しており、特定のいずれかの疾患の機構を目的とする治療の有効性に関して複雑な結果を伴うとの仮説が立てられている。すなわち、疾患進行の観点からのALS集団全体における不均一性は、ALS患者のうちで区別できる下位集団によって説明することができる。
ALS集団全体の中に、少なくとも2つのはっきりと区別されるALS患者の下位集団が存在し、これらは、疾病負荷の適切な臨床マーカーの進行を介して測定される、比較的速い速度で進行する「速い進行者」の患者(「侵攻性ALS」とも呼ばれている)、および比較的遅い速度で進行する「通常の進行者」の患者(「非侵攻性または中度侵攻性ALS」とも呼ばれている)の観点から、互いに区別することができる。前者の下位集団は、死亡(有意に短い生存期間中央値)または気管切開のリスクが高い患者の高い侵攻性および異質な形態の疾患を表している[Kimura F,et al.Neurology 2006;66:265- 267]。後者の「通常の進行者」の下位集団は、ALS患者の大部分を表している。
ALSの進行の過程を停止または反転するための治療は、非侵攻性もしくは中度侵攻性ALSであるか、または侵攻性ALSかどうかに関わらず、利用可能なものは存在しない。ALSに関して認可された唯一の医薬品であるリルゾールの登録から過去20年にわたり、利用可能な治療薬の有効性は進歩していない。このことは、リルゾール(100mg)が、単に、若干の生存の手助け、非常に若干の機能的な改善を提供する高価な薬物であり、米国では患者当たり1年に約10,000ドルかかると推定されるとの事実にも関わらず、進歩していない。
ALSへのリルゾールの使用についてのMillerらによる包括的な論評は、リルゾールで治療した1477名のALS患者を含む4つの無作為の臨床試験からのエビデンスを検討したものであった[Miller RG,et al.Cochrane Database Syst Rev.2012 Mar 14;3:CD001447]。このメタ解析からの結果は、リルゾール100mgが、おそらくは、プラセボを摂取した参加者に関して、ALS患者の生存中央値を2~3か月間延長し、この薬物の安全性は主要な関心ごとではないことを示していた。公開された実験からクオリティオブライフを直接測定したデータは存在していない。さらに、別々に考慮される無作為化試験のいずれかにおいて、患者の機能に及ぼすリルゾールの有益な効果は存在しなかった。データが組み合わされる場合のみ、観察した延髄および肢の機能に小さな有益な効果があったが、筋肉の強度に関しては効果がなかった。しかしながら著者は、これらの機能の結果を慎重に解釈すべきと警告している。
疾患の進行を遅らせるものではないが、クオリティオブライフに影響を与える多くの対症療法が、臨床現場で個体に役立っていると思われる(表1は、ALSの管理に一般に使用されている様々な対症療法を列挙している[Jenkins TM,et al.Curr Opin Neurol.2014 Oct;27(5):524-31])。しかしながら、重要な利益のエビデンスは弱く、より強力なエビデンスの基礎を提供するために、さらなる無作為化臨床試験が必要とされている。この意見は、AshworthらによるALSの痙縮の治療のCochraneの系統的なレビューに反映されている(2006年に公開、2011年に更新)[Ashworth NL,et al.Cochrane Database of Systematic Reviews 2006,Issue 1.Art.No.:CD004156]。
Figure 2022037132000001
結論として、ALSの治療は、疾患自体の多様性および複雑さのため、ならびに、標準的かつ臨床的に意味のある有効な治療がないため、臨床者にとって課題となったままである。
さらに、既存の治療は、疾患の進行速度、すなわち非侵攻性もしくは中度侵攻性ALS対侵攻性ALSを考慮していない。
ALSの治癒を表すことが明らかな承認済みの薬物または試験中の薬物は、知られていない。さらに、既知の薬物の有効性は限定されており、時間が経過することにより有効性が減少する可能性があり、望ましくない副作用が報告されている。よって、ALS、特にALS患者の大部分が罹患している非侵攻性または中度侵攻性のALSを治療するための顕著な有効性を有する新規の標的薬物を同定することが、引き続き必要とされている。
よって、本発明は、非侵攻性または中度侵攻性の筋萎縮性側索硬化症(ALS)を治療するための方法であって、チロシンキナーゼ阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を、任意に少なくとも1つの薬学的に有効な成分と併用して、その必要がある対象に投与することを含む、方法に関する。
また本発明は、非侵攻性または中度侵攻性ALSを治療するための方法であって、c-Kit、Lyn、Fyn、PDGFR、およびCSF1Rから選択される少なくとも1つのチロシンキナーゼの阻害剤、またはそれらのいずれかの組み合わせを、任意に少なくとも1つの薬学的に有効な成分と併用して、その必要がある対象に投与することを含む、方法に関する。
本発明は、非侵攻性または中度侵攻性ALSを罹患した患者の治療のための有効成分を提供する技術的な問題を解決することを目的とする。
一実施形態では、非侵攻性または中度侵攻性ALSは、1ケ月あたり1.1ポイント未満の、治療開始前の筋萎縮性側索硬化症機能評価スケール改訂版(ALSFRS-R)スコアの進行として定義されている。
別の実施形態では、非侵攻性または中度侵攻性ALSは、1ケ月あたり1.1ポイント未満の、最初のALS関連の症状の日から最初の治療時間(ベースライン)までのALSFRS-Rスコアの変化の速度として定義されている。
一実施形態では、非侵攻性ALSは、1ケ月あたり0.8ポイント未満の、治療開始前の筋萎縮性側索硬化症機能評価スケール改訂版(ALSFRS-R)スコアの進行として定義されている。別の実施形態では、非侵攻性ALSは、1ケ月あたり0.8ポイント未満の、最初のALS関連の症状の日から最初の治療時間(ベースライン)までのALSFRS-Rスコアの変化の速度として定義されている。
一実施形態では、中度侵攻性ALSは、1ケ月あたり0.8ポイント以上1.1ポイント未満(1ケ月あたり0.8≦ポイント<1.1)の、治療開始前の筋萎縮性側索硬化症機能評価スケール改訂版(ALSFRS-R)スコアの進行として定義されている。別の実施形態では、中度侵攻性ALSは、1ケ月あたり0.8ポイント以上1.1ポイント未満(1ケ月あたり0.8≦ポイント<1.1)の、最初のALS関連の症状の日から最初の治療時間(ベースライン)までのALSFRS-Rスコアの変化の速度として定義されている。
よって本発明は、非侵攻性または中度侵攻性ALS患者(すなわち治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行が1ケ月あたり1.1ポイント未満の患者)を治療するための方法であって、チロシンキナーゼ阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、好ましくはマシチニブまたはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を、任意に少なくとも1つの薬学的に有効な成分と併用して、その必要がある対象に投与することを含む、方法にも関する。
本発明は、1ケ月あたり1.1ポイント未満の、治療開始前でのALSFRS-Rスコアの進行を有する筋萎縮性側索硬化症(ALS)を罹患した患者を治療するための方法であって、チロシンキナーゼ阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、好ましくはマシチニブまたはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を、任意に少なくとも1つの薬学的に有効な成分と併用して、その必要がある対象に投与することを含む、方法に関する。
一実施形態では、患者は、1ケ月あたり0.8ポイント未満の、治療開始前でのALSFRS-Rスコアの進行を有する。別の実施形態では、患者は、1ケ月あたり0.8ポイント以上1.1ポイント未満(1ケ月あたり0.8≦ポイント<1.1)の、治療開始前でのALSFRS-Rスコアの進行を有する。
さらに本発明は、非侵攻性または中度侵攻性ALS患者(すなわち治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行が1ケ月あたり1.1ポイント未満の患者)の治療に使用するための、c-Kit、Lyn、Fyn、PDGFR、およびCSF1Rから選択される少なくとも1つのチロシンキナーゼの阻害剤、またはそれらのいずれかの組み合わせ、好ましくはマシチニブまたはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物に関する。
よって本発明は、1ケ月あたり1.1ポイント未満の、治療開始前でのALSFRS-Rスコアの進行を有する筋萎縮性側索硬化症(ALS)を罹患した患者の治療に使用するための、c-Kit、Lyn、Fyn、PDGFR、およびCSF1Rから選択される少なくとも1つのチロシンキナーゼの阻害剤、またはそれらのいずれかの組み合わせ、好ましくはマシチニブまたはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物に関する。
一実施形態では、上記患者は、1ケ月あたり0.8ポイント未満の、治療開始前でのALSFRS-Rスコアの進行を有する。別の実施形態では、上記患者は、1ケ月あたり0.8ポイント以上1.1ポイント未満(1ケ月あたり0.8≦ポイント<1.1)の、治療開始前でのALSFRS-Rスコアの進行を有する。
また本発明は、非侵攻性または中度侵攻性ALSの治療のため、より具体的には、治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行が1ケ月あたり1.1ポイント未満のALS患者を治療するための、従来技術を向上させる有効成分を提供する技術的な問題を解決することを目的とする。
一実施形態では、上記患者は、1ケ月あたり0.8ポイント未満の、治療開始前でのALSFRS-Rスコアの進行を有する。別の実施形態では、上記患者は、1ケ月あたり0.8ポイント以上1.1ポイント未満(1ケ月あたり0.8≦ポイント<1.1)の、治療開始前でのALSFRS-Rスコアの進行を有する。
一実施形態では、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、c-Kit、Lyn、Fyn、PDGFR、およびCSF1Rから選択される少なくとも1つのチロシンキナーゼの阻害剤、またはそれらの組み合わせである。
一実施形態では、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、マスト細胞の活性の阻害剤である。別の実施形態では、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、ミクログリア細胞の活性の阻害剤である。別の実施形態では、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、マスト細胞の活性およびミクログリア細胞の活性の阻害剤である。
一実施形態では、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、マシチニブ、イマチニブ、クロモリンナトリウム、ミドスタウリン、BLU-285、ボスチニブ、イブルチニブ、LAS189386、DP-2618、フォスタマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、スニチニブ、アキシチニブ、パゾパニブ、およびトセラニブを含む群から選択されるマスト細胞の阻害剤である。
別の実施形態では、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、マシチニブ、GW2580、ペキシダルチニブ、BLZ945、リニファニブ、OSI-930、イマチニブ、スニチニブ、ニロチニブ、パゾパニブ、エマクツズマブ(emactuzumab)、FPA008、キザルチニブ、アキシチニブ、モテサニブ、セジラニブ、JNJ-28312141、Ki-20227、MLN-518、ソラフェニブ、およびSU-14813を含む群から選択されるミクログリア細胞阻害剤である。
一実施形態では、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物である。一実施形態では、上記チロシンキナーゼ阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、マシチニブまたはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物である。一実施形態では、上記チロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、メシル酸マシチニブである。
よって本発明は、非侵攻性または中度侵攻性ALS、特に、1ケ月あたり1.1ポイント未満の、治療開始前でのALSFRS-Rスコアの進行と定義された非侵攻性または中度侵攻性ALSの治療のための方法であって、上記方法が、マシチニブまたはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を、その必要があるヒトの患者に投与することを含む、方法に関する。
一実施形態では、本発明の方法は、1ケ月あたり0.8ポイント未満の、治療開始前でのALSFRS-Rスコアの進行を有する患者の治療のための方法である。別の実施形態では、本発明の方法は、1ケ月あたり0.8ポイント以上1.1ポイント未満(1ケ月あたり0.8≦ポイント<1.1)の、治療開始前でのALSFRS-Rスコアの進行を有する患者の治療のための方法である。
一実施形態では、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、少なくとも1つの薬学的に有効な成分と併用して投与する。上記薬学的に有効な成分は、好ましくはALSの治療に有効である。上記薬学的に有効な成分は、好ましくは、抗グルタミン酸化合物、特にリルゾール(6-(トリフルオロメトキシ)ベンゾチアゾール-2-アミン);トピラマート(2,3:4,5-ビス-O-(1-メチルエチリデン)-β-D-フルクトピラノーススルファマート);ガバペンチン(2-[1-(アミノメチル)シクロヘキシル]酢酸);ラモトリギン(6-(2,3-ジクロロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3,5-ジアミン);タランパネル((8R)-7-アセチル-5-(4-アミノフェニル)-8,9-ジヒドロ-8-メチル-7H-1,3-ジオキソロ[4,5-h][2,3]ベンゾジアゼピン);セフトリアキソン((6R,7R)-7-[[(2Z)-2-(2-アミノ-1,3-チアゾール-4-イル)-2-メトキシイミノアセチル]アミノ]-3-[(2-メチル-5,6-ジオキソ-1H-1,2,4-トリアジン-3-イル)スルファニルメチル]-8-オキソ-5-チア-1-アザビシクロ[4.2.0]オクタ-2-エン-2-カルボン酸);グルタミン酸カルボキシペプチダーゼIIの阻害剤である。好ましくは、上記他の薬学的に有効な成分は、リルゾールである。
本発明は、適切な用量、投与経路、および一日摂取量での、非侵攻性または中度侵攻性ALSへの効率的な治療を提供することを目的とする。
一実施形態では、上記チロシンキナーゼ阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、好ましくはマシチニブまたはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、より好ましくはメシル酸マシチニブを、経口投与する。
一実施形態では、上記チロシンキナーゼ阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、好ましくはマシチニブまたはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、より好ましくはメシル酸マシチニブを、1日2回投与する(すなわち1日2回摂取)。
一実施形態では、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、好ましくはマシチニブまたはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、より好ましくはメシル酸マシチニブを、約1.0~9.0mg/kg(mg/kg体重)の範囲の一日用量で投与する。別の実施形態では、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、好ましくはマシチニブまたはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、より好ましくはメシル酸マシチニブを、1.5、3.0、4.5、6.0、または7.5mg/kgの用量、より好ましくは3.0、4.5、または6mg/kg/日(mg/kg体重/日)の用量で投与する。
一実施形態では、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を、少なくとも4週間の間、初回用量3.0mg/kg/日、次いで少なくとも4週間の間、4.5mg/kg/日、その後6.0mg/kg/日で投与し、ここで各用量の増大は、毒性コントロールに供されている。
また本発明は、本明細書中上述されているように治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行が1ケ月あたり1.1ポイント未満である非侵攻性または中度侵攻性ALSのヒトの患者の治療に使用するための、メシル酸マシチニブである、チロシンキナーゼ阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物に関する。
一実施形態では、上記患者は、1ケ月あたり0.8ポイント未満の、治療開始前でのALSFRS-Rスコアの進行を有する。別の実施形態では、上記患者は、1ケ月あたり0.8ポイント以上1.1ポイント未満(1ケ月あたり0.8≦ポイント<1.1)の、治療開始前でのALSFRS-Rスコアの進行を有する。
一実施形態では、上記チロシンキナーゼ阻害剤を、少なくとも1つの薬学的に有効な成分と、同時、別々、または順次使用するために組み合わせた調製で、併用して投与する。
また本発明は、非侵攻性または中度侵攻性ALSの治療に使用するための、本発明で定義されている、チロシンキナーゼ阻害剤、好ましくはマシチニブ、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物に関する。
また本発明は、少なくとも薬学的に有効な成分、好ましくは抗グルタミン酸化合物、特にリルゾール;トピラマート;ガバペンチン;ラモトリギン;タランパネル;セフトリアキソン;グルタミン酸カルボキシペプチダーゼIIの阻害剤と併用した、非侵攻性または中度侵攻性ALSの治療に使用するための、本発明で定義されたチロシンキナーゼ阻害剤、好ましくはマシチニブ、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物に関する。好ましくは上記他の薬学的に有効な成分はリルゾールである。
また本発明は、本発明で定義されている非侵攻性または中度侵攻性ALSの治療のための方法に使用するための、c-Kit、Lyn、Fyn、PDGFR、およびCSF1Rから選択される少なくとも1つのチロシンキナーゼの阻害剤、またはそれらのいずれかの組み合わせ、好ましくはマシチニブまたはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を含む医薬組成物、または薬物、またはキットに関する。
一実施形態では、本発明の医薬組成物、または薬物、またはキットは、少なくとも1つの他の薬学的に有効な成分、好ましくは抗グルタミン酸化合物、特にリルゾール;トピラマート;ガバペンチン;ラモトリギン;タランパネル;セフトリアキソン;グルタミン酸カルボキシペプチダーゼIIの阻害剤をも含み、好ましくは上記他の薬学的に有効な成分はリルゾールである。
また本発明は、任意に少なくとも1つの他の薬学的に有効な成分、好ましくは抗グルタミン酸化合物、特にリルゾール;トピラマート;ガバペンチン;ラモトリギン;タランパネル;セフトリアキソン;グルタミン酸カルボキシペプチダーゼIIの阻害剤と併用した、非侵攻性または中度侵攻性ALSの治療用の薬物または医薬組成物の調製のための、本発明で定義されている、チロシンキナーゼ阻害剤、好ましくはマシチニブまたはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の使用に関する。好ましくは、上記他の薬学的に有効な成分はリルゾールである。
チロシンキナーゼ阻害剤および任意の少なくとも1つの薬学的に有効な成分は、治療上有効量を含む投与レジメンで投与される。
定義
本発明では、以下の用語は以下の意味を有する。
上記で開示されているように、本願で使用されている「治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行の速度が1ケ月あたり1.1ポイント未満のALS患者」との表現は、ALS患者集団全体由来の、患者の下位集団を包有する。
用語「ALSFRS-Rスコア」は、筋萎縮性側索硬化症機能評価スケール改訂版を意味する。ALSFRS-Rは、身体障害を評価する0~48のスコアである。ALSFRS-Rは、12個の質問を含み、それぞれが、0=できない~4=正常な能力の、5つのポイントの尺度で格付けされている。個々の項目のスコアは、0=最悪と、48=最良との間で記録されるスコアを作製するためにまとめられる。ALSFRS-Rスコアは、SIP(Sickness Impact Profile)により測定されるクオリティオブライフと有意に相関しており、機能の質がALSのクオリティオブライフの強力な決定因子であることを表している[Cedarbaum JM.The ALSFRS-R:a revised ALS functional rating scale that incorporates assessments of respiratory function.BDNF ALS Study Group(Phase III).J Neurol Sci 1999;169:13-21]。
用語「ALSFRS-Rスコアの進行」は、時間単位(たとえば月)あたりのポイントで表現されている、治療開始前のALSFRS-Rスコアの変化の速度を意味する。疾患が進行すると、ALSFRS-Rスコアは減少し、すなわちALSFRS-Rスコアの変化の速度は、ポイントの喪失である。
「ALSFRS-Rスコアの進行」(ポイント/月)は、最初のALS関連の症状の日から最初の治療時間(ベースライン)までとして定義されている。言い換えると、一実施形態では、治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行は、最初のALS関連の症状の日から最初の治療時間(ベースライン)までのALSFRS-Rスコアの変化の速度に対応している。最初のALS関連の症状の日のALSFRS-Rスコアが知られていない場合、条件を満たした評価者が、上限値48(最小疾病負荷)を代わりに用いるものである。
用語「ベースライン」は、治療開始の直前または試験への無作為化の直前の時間を意味する。
所定のALS患者に関する「ALSFRS-Rスコアの進行」の計算は、以下の式:{(最初のALS関連の症状の日のALSFRS-Rスコア)-(ベースラインでのALSFRS-Rスコア)}/{(最初のALS関連の症状とベースラインとの間の時間)}を使用して行われる。最初のALS関連の症状の日のALSFRS-Rスコアが知られていない場合、条件を満たした評価者が、上限値48(最小疾病負荷)を代わりに用いるものである。
用語「通常の進行者」、または「非侵攻性もしくは中度侵攻性のALS」は、治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行が、1ケ月あたり1.1ポイント未満である患者を意味する。よって、「通常の進行者」または非侵攻性もしくは中度侵攻性のALSを罹患している患者は、1ケ月あたり1.1ポイント未満減少するALSFRS-Rスコアを有する。「通常の進行者」または非侵攻性もしくは中度侵攻性のALSを罹患している患者の中で、
1ケ月あたり0.8ポイント未満(1ケ月あたりポイント<0.8)減少するALSFRS-Rスコアを有する非侵攻性ALSを罹患した患者、および
1ケ月あたり0.8ポイント以上1.1ポイント未満(1ケ月あたり0.8≦ポイント<1.1)減少するALSFRS-Rスコアを有する中度侵攻性ALSを罹患した患者
を、さらに区別することが可能である。
非侵攻性ALSを罹患した患者および中度侵攻性ALSを罹患した患者は、両方とも、治療開始より前のALSFRS-Rの進行が、1ケ月あたり1.1ポイント未満のALS患者である。言い換えると、治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行速度が1ケ月あたり1.1ポイント未満であるALS患者は、非侵攻性ALSを罹患した患者および中度侵攻性ALSを罹患した患者の両方を含む。
用語「非侵攻性ALS」は、治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行が、1ケ月あたり0.8ポイント未満である患者を意味する。よって、非侵攻性ALS患者は、1ケ月あたり0.8ポイント未満減少するALSFRS-Rスコアを有する。
用語「中度侵攻性ALS」は、治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行が、1ケ月あたり0.8ポイント以上1.1ポイント未満(1ケ月あたり0.8≦ポイント<1.1)である患者を意味する。よって、中度侵攻性ALSの患者は、1ケ月あたり0.8ポイント以上1.1ポイント未満(1ケ月あたり0.8≦ポイント<1.1)減少するALSFRS-Rスコアを有する。
用語「速い進行者」または「侵攻性ALS」は、治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行が、1ケ月あたり1.1ポイント以上である患者を意味する。よって、「速い進行者」または侵攻性ALSを罹患した患者は、1ケ月あたり1.1ポイント以上減少するALSFRS-Rスコアを有する。
用語「治療開始前のALSFRS-Rの進行が1ケ月あたり1.1ポイント未満であるALS患者」は、「治療開始前のALSFRS-Rの進行の速度が1ケ月あたり1.1ポイント未満であるALS患者」との表現と互換可能に使用され得る。
用語「FVC」は、努力性肺活量を意味する。FVC(予測される正常値の百分率)は、患者が最大限の速度および努力で呼息する際に測定される肺活量(VC)である。VCは、試験前に較正の確認を行った従来の肺活量計を使用して測定することができる。
用語「CAFS」は、機能および生存の組み合わせ評価(Combined Assessment of Function and Survival)(Berry JD et al.,The Combined Assessment of Function and Survival(CAFS):a new endpoint for ALS clinical trials.Amyotroph Lateral Scler Frontotemporal Degener.2013 Apr;14(3):162-8)を意味する。
用語「全生存期間」は、臨床試験への無作為化から記録される死亡時までの時間として定義されている。
用語「気管切開未施行での生存期間(tracheostomy free survival)」は、臨床試験への無作為化から、報告される死亡日または最初の気管切開術の日までの時間として定義されている。
用語「対象」は、哺乳類、好ましくはヒトを表す。一実施形態では、対象は、「患者」、すなわち、ALSの発達に関して、医療の受診を待機しているもしくは医療を受診している、または過去/現在/将来医療の対象である、またはモニタリングされている温血動物、より好ましくはヒトであり得る。
用語「治療する」または「治療」は、治療上の処置および防止的または予防的な手段の両方を表す。この目的は、非侵攻性または中度侵攻性ALSを予防または遅らせる(弱める)ことである。治療の必要のある対象は、すでに非侵攻性または中度侵攻性ALSを有する対象、および非侵攻性もしくは中度侵攻性ALSを有する傾向のある対象、または非侵攻性もしくは中度侵攻性ALSを予防すべき対象を含む。本発明の方法に係るチロシンキナーゼ阻害剤の治療量を投与した後、対象が、非侵攻性または中度侵攻性ALSに関連する症状のうちの1つまたは複数のある程度の観察可能および/または測定可能な軽減;疾病率および死亡率の低下、ならびにクオリティオブライフの問題の改善を示す場合、非侵攻性または中度侵攻性ALSに関して、対象は成功理に「治療されている」。疾患の成功した治療および改善を評価するための上記パラメータは、医師によく知られている所定の手段により容易に測定可能である。
用語「マシチニブ」は、たとえ明記されていなくても、その許容可能な塩または溶媒和物、特にメシル酸マシチニブをも指す。
用語「本発明で定義されている」は、限定するものではないが、チロシンキナーゼ阻害剤、好ましくはマシチニブ、非侵攻性または中度侵攻性ALSの治療方法、医薬組成物、および他の薬学的に有効な成分(複数可)、好ましくはリルゾールとのいずれかの組み合わせに関連するいずれかの実施形態および特性を含む、いずれかの好ましい実施形態および異形を含む、単独または組み合わせの、本発明のいずれかの実施形態または態様を表す。
用語「治療上有効量」は、標的に顕著な負の作用または有害な副作用を引き起こすことなく、(1)非侵攻性もしくは中度侵攻性ALSの発症の遅延もしくは予防;(2)非侵攻性もしくは中度侵攻性ALSのうち1つもしくは複数の症状の進行、憎悪、もしくは悪化の遅延もしくは停止;(3)ALSの症状の寛解をもたらすこと;(4)非侵攻性もしくは中度侵攻性ALSの重症度もしくは発生頻度の低下;または(5)非侵攻性もしくは中度侵攻性ALSの治癒を目的とする薬剤のレベルまたは量を意味する。治療上有効量は、防止作用または予防作用のために、非侵攻性または中度侵攻性のALSの発症の前に投与されてもよい。あるいはまたはさらに、治療上有効量は、治療作用または治療作用の維持のために、非侵攻性または中度侵攻性ALSの開始後に、投与されてもよい。
用語「薬学的に許容可能な担体または賦形剤」は、動物、好ましくはヒトに投与する場合に、有害な反応、アレルギー性反応、または他の望ましくない反応をもたらさない賦形剤または担体を表す。これは、あらゆる溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。ヒトへの投与では、注射される調製物は、たとえばFDA局またはEMAなどの規制局により要求される、無菌性、発熱性、一般的な安全性、および純度の基準を満たさなければならない。
用語「溶媒和物」は、本明細書中、本発明の化合物および1つまたは複数の薬学的に許容可能な溶媒分子を含む分子の複合体を表すように使用されている。
数字の前の用語「約」は、上記数字の値の±10%を意味する。
本明細書中使用される用語「アリール基」は、炭素原子および水素原子を含む、単環式または多環式の芳香族ラジカルを意味する。適切なアリール基の例として、限定するものではないが、フェニル、トリル、アントラセニル、フルオレニル、インデニル、アズレニル、およびナフチル、ならびにベンゾ縮合型炭素環式部分、たとえば5,6,7,8-テトラヒドロナフチルが挙げられる。アリール基は、置換していなくてもよく、または1つもしくは複数の置換基と置換してもよい。一実施形態では、アリール基は単環であって、上記環は、6個の炭素原子を含み、本明細書中「(C)アリール」と呼ばれている。
本明細書中使用される用語「アルキル基」は、1~10個の炭素原子を有する飽和型直鎖状または分岐状の非環式の炭化水素を意味する。代表的な飽和型の直鎖状アルキルとして、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニルおよびn-デシルが挙げられ、飽和型分岐状アルキルとして、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、イソペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、2-メチルヘキシル、3-メチルヘキシル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシル、2,3-ジメチルブチル、2,3-ジメチルペンチル、2,4-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルヘキシル、2,4-ジメチルヘキシル、2,5-ジメチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,2-ジメチルヘキシル、3,3-ジメチル(dimtheyl)ペンチル、3,3-ジメチルヘキシル、4,4-ジメチルヘキシル、2-エチルペンチル、3-エチルペンチル、2-エチルヘキシル、3-エチルヘキシル、4-エチルヘキシル、2-メチル-2-エチルペンチル、2-メチル-3-エチルペンチル、2-メチル-4-エチルペンチル、2-メチル-2-エチルヘキシル、2-メチル-3-エチルヘキシル、2-メチル-4-エチルヘキシル、2,2-ジエチルペンチル、3,3-ジエチルヘキシル、2,2-ジエチルヘキシル、3,3-ジエチルヘキシルなどが挙げられる。本発明の化合物に含まれるアルキル基は、任意に1つまたは複数の置換基で置換されてもよい。
本明細書中使用される用語「アルコキシ」は、酸素原子により別の部分に結合しているアルキル基を表す。アルコキシ基の例として、メトキシ、イソプロポキシ、エトキシ、tert-ブトキシなどが挙げられる。アルコキシ基は、任意に1つまたは複数の置換基で置換されてもよい。
本明細書中使用される用語「ヘテロアリール」または同様の用語は、環に炭素原子および1つまたは複数のヘテロ原子(たとえば酸素、硫黄、または窒素など)を含む単環式または多環式芳香族複素環を意味する。概して、ヘテロアリール基は、環に1~約5個のヘテロ原子および1~約14個の炭素原子を有する。代表的なヘテロアリール基として、ピリジル、1-オキソ-ピリジル、フラニル、ベンゾ[1,3]ジオキソリル、ベンゾ[1,4]ジオキシニル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、イソオキサゾリル、キノリニル、ピラゾリル、イソチアゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、トリアゾリル、チアジアゾリル、イソキノリニル、インダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾフリル、インドリジニル、イミダゾピリジル、テトラゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンズオキサジアゾリル、インドリル、テトラヒドロインドリル、アザインドリル、イミダゾピリジル、キナゾリニル、プリニル、ピロロ[2,3]ピリミジニル、ピラゾロ[3,4]ピリミジニル、イミダゾ[1,2-a]ピリジル、およびベンゾ(b)チエニルが挙げられる。ヘテロ原子は、当業者に知られている保護基で置換されてもよく、たとえば、窒素上の水素が、tert-ブトキシカルボニル基で置換されてもよい。ヘテロアリール基は、任意に、1つまたは複数の置換基で置換されてもよい。さらに、環内の窒素または硫黄のヘテロ原子は、酸化されてもよい。一実施形態では、芳香族複素環は、5~8員の単環式ヘテロアリール環から選択される。芳香族複素環またはヘテロアリール環が別の基に結合する点は、芳香族複素環またはヘテロアリール環の炭素原子またはヘテロ原子のいずれかであってもよい。
本明細書中使用される用語「ヘテロ環」は、ヘテロシクロアルキル基およびヘテロアリール基を集合的に表す。
本明細書中使用される用語「ヘテロシクロアルキル」は、O、N、またはSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を有する単環式または多環式の基を意味し、2~11個の炭素原子を有し、飽和型または非飽和型であってもよいが、芳香族ではない。ヘテロシクロアルキル基の例として、(限定するものではないが)、ピペリジニル、ピペラジニル、2-オキソピペラジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロリジニル、4-ピペリドニル、ピロリジニル、ヒダントイニル、バレロラクタミル、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロピリンジニル(pyrindinyl)、テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロチオピラニルスルホン、テトラヒドロチオピラニルスルホキシド、モルホリニル、チオモルホリニル、チオモルホリニルスルホキシド、チオモルホリニルスルホン、1,3-ジオキソラン、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル-2-オン、テトラヒドロチエニル、およびテトラヒドロ-1,1-ジオキソチエニルが挙げられる。概して、単環式ヘテロシクロアルキル基は、3~7個の員を有する。好ましい3~7員の単環式ヘテロシクロアルキル基は、5~6個の環原子を有する。ヘテロ原子は、当業者に知られている保護基で置換されてもよく、たとえば、窒素上の水素を、tert-ブトキシカルボニル基で置換してもよい。さらに、ヘテロシクロアルキル基は、任意に、1つまたは複数の置換基で置換されてもよい。さらに、複素環の別の基との結合点は、複素環の炭素原子またはヘテロ原子のいずれかであってもよい。このような置換された複素環の基の安定したアイソマーのみが、この定義に包有されている。
本明細書中で使用される用語「置換基」または「置換された」は、化合物または基の水素ラジカルが、保護されていない形態での反応条件または保護基を使用して保護される場合の反応条件に対して実質的に安定であるいずれかの望ましい基で置換されることを意味する。好ましい置換基の例として、本明細書中開示される例示的な化合物および実施形態で見いだされる置換基、ならびにハロゲン(クロロ、ヨード、ブロモ、またはフルオロ);アルキル;アルケニル;アルキニル;ヒドロキシ;アルコキシ;ニトロ;チオール;チオエーテル;イミン;シアノ;アミド;ホスホナト;ホスフィン;カルボキシル;チオカルボニル;スルホニル;スルホンアミド;ケトン;アルデヒド;エステル;酸素(-O);ハロアルキル(たとえばトリフルオロメチル);シクロアルキル(単環式、または縮合型もしくは非縮合型の多環式(たとえばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、またはシクロヘキシル)であり得る)、またはヘテロシクロアルキル(単環式、または縮合型もしくは非縮合型の多環式(たとえばピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、またはチアジニル)であり得る)、単環式、または縮合型もしくは非縮合型の多環式アリールまたはヘテロアリール(たとえばフェニル、ナフチル、ピロリル、インドリル、フラニル、チオフェニル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、アクリジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチオフェニル、またはベンゾフラニル);アミノ(1級、2級、3級);COCH;CONH;OCHCONH;NH;SONH;OCHF;CF;OCFがあり、また、このような部分は、たとえば-OCHOのように、縮合環構造または架橋により任意に置換され得る。これらの置換基は、任意に、このような群から選択された置換基でさらに置換されてもよい。特定の実施形態では、用語「置換基」または形容詞の「置換された」は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル(heteraralkyl)、ハロアルキル、-C(O)NR1112、-NR13C(O)R14、ハロ、-OR13、シアノ、ニトロ、ハロアルコキシ、-C(O)R13、-NR1112、-SR13、-C(O)OR13、-OC(O)R13、-NR13C(O)NR1112、-OC(O)NR1112、-NR13C(O)OR14、-S(O)rR13、-NR13S(O)rR14、-OS(O)rR14、S(O)rNR1112、-O、-S、および-N-R13からなる群から選択される置換基を表し、式中、rは1または2であり、R11およびR12は、それぞれの出現に対して独立して、H、任意選択で置換されるアルキル、任意選択で置換されるアルケニル、任意選択で置換されるアルキニル、任意選択で置換されるシクロアルキル、任意選択で置換されるシクロアルケニル、任意選択で置換されるヘテロシクロアルキル、任意選択で置換されるアリール、任意選択で置換されるヘテロアリール、任意選択で置換されるアラルキル、または任意選択で置換されるヘテロアラルキルであり;またはR11およびR12は、結合する窒素と共に、任意選択で置換されるヘテロシクロアルキル、もしくは任意選択で置換されるヘテロアリールであり、R13およびR14は、それぞれの出現に対して独立して、H、任意選択で置換されるアルキル、任意選択で置換されるアルケニル、任意選択で置換されるアルキニル、任意選択で置換されるシクロアルキル、任意選択で置換されるシクロアルケニル、任意選択で置換されるヘテロシクロアルキル、任意選択で置換されるアリール、任意選択で置換されるヘテロアリール、任意選択で置換されるアラルキル、または任意選択で置換されるヘテロアラルキルである。特定の実施形態では、用語「置換基」または形容詞の「置換された」は、可溶化基を表す。
用語「可溶化基」は、実質的にイオン化でき、たとえば、水または水含有溶媒などの望ましい溶媒に化合物を溶解できるいずれかの基を意味する。さらに、可溶化基は、化合物または複合体の親油性を増大させる基とすることができる。概して、可溶化基は、N、O、Sなどの1つまたは複数のヘテロ原子で置換されたアルキル基から選択され、それぞれが、任意に、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボキシル、シアノで独立して置換されたアルキル基で置換され、またはシクロヘテロアルキルもしくはヘテロアリールもしくはリン酸塩もしくは硫酸塩もしくはカルボン酸で置換されている。たとえば、本明細書中、「可溶化基」は、以下のうちの1つを表す:
少なくとも1つの窒素または酸素のヘテロ原子を含み、または基が、少なくとも1つのアミノ基もしくはオキソ基により置換されている、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール基;
アルキル、アルコキシカルボニル、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルバモイル、モノアルキルカルバモイル、およびジアルキルカルバモイルからなる群により置換され得る飽和型環状アミノ基であり得る、アミノ基;
以下に示される構造a)~i)
Figure 2022037132000002
のうちの1つ(波線および矢印の線は、式[A]のコア構造への結合点に対応する)。
用語「シクロアルキル」は、3~10個の炭素原子を有する飽和型環状アルキルラジカルを意味する。代表的なシクロアルキルとして、シクロプロピル、1-メチルシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、およびシクロデシルが挙げられる。シクロアルキル基は、任意に、1つまたは複数の置換基で置換することができる。
用語「ハロゲン」は、-F、-Cl、-Br、または-Iを意味する。
詳細な説明
よって、本発明は、対象、好ましくはヒトの患者における非侵攻性または中度侵攻性筋萎縮性側索硬化症(ALS)を治療するための方法であって、チロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を、その必要がある対象または患者に投与することを含む、方法に関する。好ましくは、チロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の治療上有効量を、対象に投与する。
一実施形態では、患者の非侵攻性または中度侵攻性ALSは、上記患者のALSFRS-Rスコアの計算から診断されている。所定のALS患者におけるALSFRS-Rスコアの進行の計算は、以下の式:{(最初のALS関連の症状の日のALSFRS-Rスコア)-(ベースラインでのALSFRS-Rスコア)}/{(最初のALS関連の症状とベースラインとの間の時間)}を使用して行われる。最初のALS関連の症状の日のALSFRS-Rスコアが知られていない場合、条件を満たした評価者が、上限値48(最小疾病負荷)を代わりに用いるものである。
よって、一実施形態では、治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行は、最初のALS関連の症状の日から最初の治療時間(ベースライン)までのALSFRS-Rスコアの変化の速度に対応する。
治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行が1ケ月あたり1.1ポイント未満である患者は、非侵攻性または中度侵攻性ALSを罹患しており、「通常の進行者」として定義されている。よって、「通常の進行者」、すなわち、治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行が1ケ月あたり1.1ポイント未満(1ケ月あたりポイント<1.1)である患者は、
治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行が1ケ月あたり0.8ポイント未満(1ケ月あたりポイント<0.8)である非侵攻性ALSを罹患した患者、および
治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行が1ケ月あたり0.8ポイント以上1.1ポイント未満(1ケ月あたり0.8≦ポイント<1.1)である中度侵攻性ALSを罹患した患者
を含む。
よって、一実施形態では、非侵攻性または中度侵攻性ALSは、1ケ月あたり1.1ポイント未満の、治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行として定義されている。別の実施形態では、非侵攻性または中度侵攻性(ALS)は、1ケ月あたり1.1ポイント未満の、最初のALS関連の症状の日から最初の治療時間(ベースライン)までのALSFRS-Rスコアの変化の速度として定義されている。
一実施形態では、非侵攻性ALSは、1ケ月あたり0.8ポイント未満の、治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行として定義されている。別の実施形態では、非侵攻性ALSは、1ケ月あたり0.8ポイント未満の、最初のALS関連の症状の日から最初の治療時間(ベースライン)までのALSFRS-Rスコアの変化の速度として定義されている。
一実施形態では、中度侵攻性ALSは、1ケ月あたり0.8ポイント以上1.1ポイント未満(1ケ月あたり0.8≦ポイント<1.1)の、治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行として定義されている。別の実施形態では、中度侵攻性ALSは、1ケ月あたり0.8ポイント以上1.1ポイント未満(1ケ月あたり0.8≦ポイント<1.1)の、最初のALS関連の症状の日から最初の治療時間(ベースライン)までのALSFRS-Rスコアの変化の速度として定義されている。
最初のALS関連の症状の日のALSFRS-Rスコアが知られていない場合、条件を満たした評価者が、上限値48(最小疾病負荷)を代わりに用いるものである。
ALSFRS-Rは、身体障害を評価する0~48のスコアである。ALSFRS-Rは、12個の質問を含み、それぞれが、0=できない~4=正常な能力の、5つのポイントの尺度で格付けされている。個々の項目のスコアは、0=最悪と、48=最良との間で記録されるスコアを作製するためにまとめられる。ALSFRS-Rスコアは、SIPにより測定されるクオリティオブライフと有意に相関しており、機能の質がALSのクオリティオブライフの強力な決定因子であることを表している[Cedarbaum JM.J Neurol Sci 1999;169:13-21]。
ALSFRS-Rは、12個の機能的な活動/質問における対象の能力および自立の評価を決定するために使用される順序評価スケール(評価0~4)を迅速に行う(5分間)。12個の活動はすべてALSに関連している。最初の有効性は、ALS患者において、ALSFRS-Rスコアの変化が、経時的な強度の変化と相関し、クオリティオブライフの測定値、および生存予測と密接に関連したことを実証することにより、確立された[Traynor B,et al.,Neurology,2004.63:1933-35]。
試験―再試験の信頼度は、すべての試験項目で0.88超である。ALSFRS-Rの利点は、分類がALSと関連しており、この手段がALS患者の毎日の生活機能の活動を評価するための高精度の信頼可能なツールであり、迅速に行われることである。適切な訓練を通して、ALSFRS-Rは、高い評価者間の信頼度および試験/再試験の信頼度を伴い行うことができる。
ALSFRS-Rの12個の質問および評価スケールを以下に記載する。
ALSFRS-Rの手段
1.言語
対象が発話の変化に気づいているかどうかを質問する。対象で、ALSのいずれかの症状の前の機能と現在の機能を比較する。
4 正常な発話行為
発話は、疾病の発症の前のようであった:対象が完全に正常な発話と指摘する場合、レートは4
3 検出可能な発話の障害
いくらかの検出可能な発話の変化
2 繰り返すと理解できる
発話を理解するためにいくらかの反復が必要とされる
1 声以外のコミュニケーションと組み合わせた発話
ハンドジェスチャーもしくは点頭を含むジェスチャー、またはコミュニケーションに必要とされるローテクもしくはハイテク機器を含む通信手段と組み合わせた発話
0 有用な発話の喪失
対象が言語で伝達することが不可能
2.唾液分泌
対象が唾液分泌に関する投薬を受けているかどうかに関わらず、ALSの発症前と比較した現在の状態のレート。現在の状態は、使用されるすべての薬物または治療を含む。
4 正常
3 口内においてわずかではあるが、明らかに過剰な唾液;夜間に流涎を有し得る
2 中程度に過剰な唾液;最小限の流涎を有し得る
1 いくらかの流涎を伴う顕著に過剰な唾液
0 顕著な流涎
常にティッシュまたはハンカチーフを必要とする
3.嚥下
4 正常な食習慣
嚥下は困難ではなく、選択したどのような食品または液体も摂取できる
3 初期の食事に関する問題―場合によりむせる
食品がのどに詰まるためなんらかの食品を対象が回避しているかどうかを尋ねる;まだすべての食品を選択できるが、場合によりむせる場合がある
2 食事の堅さの変化
特定の食品を回避、または食品の堅さを変化させることが必要
1 補助的な経管栄養が必要
0 NPO
もっぱら非経口または経腸での供給
4.書字
手または指の弱さによるfoam tubingおよび/または機械的な補助手段などのいずれかの補助装置を用いることない、ALS発症前の利き手での手書きについて質問を行う。
4 正常
3 ゆっくりまたは雑:すべての用語は判読可能
2 すべての用語が判読可能ではない
1 判読可能ではないが、まだペンを握ることができる
0 ペンを握ることができない
5a.食品を切るおよび器具の操作
胃瘻造設を行っていない患者において
注:栄養の50%超がgチューブを介する場合は5bを使用
対象が、何等かの理由で食品を切断しないまたは一人で食べることを選択しない場合、彼/彼女は、これら行為ができないと評価する。できないことは、0と評価される。
4 正常
疾患の発症前に使用した方法による切断または器具の扱いが困難ではない
3 いくらかゆっくりまたは雑ではあるが、介助を必要としない
疾患の発症前に使用した方法による切断または器具の扱いが一部困難ではあるが、対象は独立してこれら行為を行い続ける
2 大部分の食品(>50%)を切断できるが、ゆっくりかつ雑であり、一部介助を必要とする
疾患の発症前に使用した方法による切断または器具の扱いが一部困難であり;対象は介助を必要とするが、なおもいくらかの食品を切断しようとし、さらに課題の50%超を成功させる
1 食品を誰かに切断してもらわなければならないが、ゆっくりと供給することができる
患者は、疾患の発症前に使用した方法により食品を切断することができないが、なおも自分で摂取しようとし、少なくとも時折成功する
0 供給することができない
5b.食品の切断および器具の操作
胃瘻造設を伴う患者において
注:5bの選択は、対象が主な食事方法として胃瘻造設を用いる場合に限り使用される。対象が将来を見越して胃瘻造設を有しているが、栄養の大部分を経口で行っている場合(50%超)、5bが適切な選択となるまで5aを使用する。質問5bに対する応答は、経管栄養の手法および操作を表す。
4 正常
3 雑であるが、すべての操作を独立して行うことができる
2 閉じるおよび止めることは、一部介助が必要
1 介助者に最小限の介助を依頼
0 いずれの課題の態様も行うことができない
6.身支度および衛生
対象が、何等かの理由で、自分で身支度または入浴することを選択しない場合、彼/彼女はこれらができないと評価される。できないことは0と評価される。
4 正常な機能
患者は、疾患の発症前に使用した方法による身支度および衛生において苦労することはなく、未だ完全に独立して行う
3 独立している:努力するかまたは低い効率で完全に自分で行うことができる
患者は、未だ身支度を完全に独立して行うが、身支度により努力を必要とし、身支度を行うための代替方法を使用しない
2 断続的な介助または代替方法
患者は、身支度および衛生において、場合により介助または補助装置もしくは代替方法の使用(たとえばプルオン式の衣服、ベルクロ式の閉鎖または靴、前ボタンのシャツ、ズボンを履くために横たわる(lying down to don pants)、シャワーチェアまたはベンチの使用)を必要とする。現在使用されている方法は、疾患発症前に使用した方法とは異なっている
1 セルフケアに介助が必要
対象が、身支度に毎日介助者による介助を必要とするが、対象はいくらかの機能レベルを有することを意味する
0 全面的な介助
7.ベッドでの回転および寝具の調節
対象が、何等かの理由でベッドでの回転または寝具の調節をしないと選択する場合、彼/彼女はこれらができないと評価される。回転および寝具の調節の両方を行う能力は、3または4と評価される。1つの活動を行うことは2と評価される。
4 正常な機能
3 いくらかゆっくりおよび雑ではあるが、介助を必要としない
患者は、ベッドの横板、ヘッドボード、または電気ベッドを使用してもよい。
2 一人で回転できるまたはシーツを調節できるが、非常に苦労する
患者は、一人で回転またはシーツを調節することができるが、課題を完全に行うためには非常に苦労を伴う;介助を必要としない。患者はベッドの横板、ヘッドボード、または電動ベッドを使用してもよい。
1 開始できるが、一人では回転またはシーツを調節することができない
0 何もできない
8.歩行
歩行の定義は対象により定義される。
4 正常
3 初期の歩行困難
いくらかの努力を要するが、介助なしに歩行する
2 介助を伴い歩行
AFO、杖、歩行器、または介助者を伴う
1 歩行はできず、機能的な運動のみ
患者は、機能的な運動のために下肢を部分的に動かすことができ;立ち、移動のため体重を支えることができるが、歩行することができない
0 意図して足を動かすことができない
9.階段の昇降
対象が、何等かの理由で階段を昇降しないと選択する場合、彼/彼女は「0-できない」と評価される。
4 正常
3 ゆっくり
2 軽度の不安定性または疲労
患者は、階段の間で休息を必要としまたは不安定さを感じているが、手すりを必要としない
1 介助を必要
患者は、手すりまたは介助者を含む介助を必要とする;介助は、安定性および安全のために必要とされる
0 できない
ALSFRS-Rの呼吸性の下位尺度
10.呼吸困難
4 なし
3 歩行時に起こる
2 以下:食事、入浴、身支度のうちの1つまたは複数で起こる
1 休息時に起こる:座っているまたは横たわっている際に呼吸が困難
0 著しく困難:機械的な呼吸支援の使用を検討
11.起座呼吸
夜間のBiPAPを使用する場合および対象が装置なしに睡眠しない場合、レートは0。対象がBiPAPを使用するが、場合によりこれを用いることなく眠る(これを用いることなく眠ることができる)場合、装置なしに眠る場合の対象の起坐呼吸を最良に説明する数を選択。
4 なし
3 呼吸が短いことにより夜間の睡眠がいくらか困難であり、2超の枕を定期的に使用しない
2 睡眠のために追加の枕を必要とする(2超)
1 起坐でのみ睡眠できる
0 機械的な支援なしに眠ることができない
12.呼吸不全
4 なし
3 断続的なBiPAPの使用
2 夜間の連続したBiPAPの使用
1 日中および夜間の連続したBiPAPの使用
0 挿管または気管切開術による侵襲的な機械的人工呼吸
よって、全体のALS集団内に少なくとも2つのはっきりと区別されるALS患者の下位集団が存在し、これらは、治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行が1ケ月あたり1.1ポイント以上である「速い進行者」の患者(「侵攻性ALS」とも呼ばれる)、および、治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行が1ケ月あたり1.1ポイント未満である「通常の進行者」の患者(「非侵攻性または中度侵攻性ALS」とも呼ばれる)の観点から、互いを区別することができる。前者の下位群は、侵攻性かつ異質な疾患形態を、死亡(有意に生存期間中央値が短い)または気管切開術のリスクが高い患者で表す[Kimura F,et al.Neurology 2006;66:265- 267]。「通常の進行者」または非侵攻性もしくは中度侵攻性ALSを罹患した患者の中で、
1ケ月あたり0.8ポイント未満(1ケ月あたりポイント<0.8)減少するALSFRS-Rスコアを有する非侵攻性ALSを罹患した患者、および
1ケ月あたり0.8ポイント以上1.1ポイント未満(1ケ月あたり0.8≦ポイント<1.1)減少するALSFRS-Rスコアを有する中度侵攻性ALSを罹患した患者
を、さらに区別することが可能である。
チロシンキナーゼは、受容体型または非受容体型のタンパク質であり、タンパク質のチロシン残基に、ATPの末端のリン酸を移行させることにより、シグナル伝達経路を活性化または不活性化する。これらのタンパク質は、多くの細胞機構に関与していることが知られており、破壊される場合、異常な細胞の増殖および移動、ならびに炎症などの障害を引き起こす。よって、本発明の意味の中での「チロシンキナーゼ阻害剤」は、チロシンキナーゼを阻害することにより、細胞内のシグナリング処理に干渉する薬物である。このような処理を阻害することにより、細胞の増殖および分割を止めることができる。
一実施形態では、本発明の対象における非侵攻性または中度侵攻性ALSを治療するための方法に使用するためのチロシンキナーゼ阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、野生型のc-Kit、Lyn、Fyn、PDGFR、およびCSF1Rのキナーゼ活性の阻害剤、またはそれらのいずれかの組み合わせである。別の実施形態では、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、既知の毒性に関連するキナーゼ(すなわち、ABL、KDR、およびSrcを含む、潜在的なチロシンキナーゼ阻害剤の心毒性に起因するこれらチロシンキナーゼまたはチロシンキナーゼ受容体)を治療用量で阻害することなく、野生型のc-Kit、Lyn、Fyn、PDGFR、および/またはCSF1Rを阻害する[Dubreuil et al.,2009,PLoS ONE 2009.4(9):e7258][Davis et al.,Nat Biotechnol 2011,29(11):1046-51]。
よって、一実施形態では、本発明の方法に使用するためのチロシンキナーゼ阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、c-Kitシグナリングに依存する細胞株の細胞周期の停止およびアポトーシスを誘導できる[Dubreuil et al.,2009,PLoS ONE,4(9):e7258]。幹細胞因子の、c-Kit受容体のリガンドは、マスト細胞にとって重要な増殖因子であり、よって、本発明の方法に使用するためのチロシンキナーゼ阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、c-Kitシグナリングの阻害を介してマスト細胞に及ぼす直接的な抗増殖性およびアポトーシス促進性作用を発揮する、有効な抗マスト細胞物質(anti-mastocyte)である。同様に、LynおよびFynキナーゼは、IgE誘導型のマスト細胞の脱顆粒をもたらす伝達経路の鍵となる成分として役割を果たすことが知られており、よって、本発明の方法に使用するためのチロシンキナーゼ阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、LynおよびFynの標的化を介してマスト細胞の活性化をも調節する。
マスト細胞は、それ自体で中枢神経系の炎症性ネットワークの維持に重要な役割を果たしている。ここで、マスト細胞―ミクログリアのクロストークは、さらに、炎症応答の維持に寄与している。
マスト細胞は、組織での位置および構造に関してだけではなく、機能的および組織化学的なレベルでの異成分を特徴とする。マスト細胞の活性化の後に、侵入した病原体に対する臓器の防御に重要な様々なメディエーターが制御放出される。マスト細胞は、本明細書中では、3つの群:
あらかじめ形成された顆粒関連メディエーター(ヒスタミン、プロテオグリカン、および中性プロテアーゼ)
脂質由来のメディエーター(プロスタグランジン、トロンボキサン、およびロイコトリエン);
様々なサイトカイン(インターロイキン:IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8および腫瘍壊死因子α(TNF-α)、GM-CSF、MIP-1α、MIP-1β、およびIFN-γを含む)
に分類される、多種多様なメディエーターを産生する。
ヒトのマスト細胞は、異なる生物学的な分子に関する多くの受容体を恒常的に発現する。これらの受容体のうち、ライゲーションがマスト細胞の活性化を誘導する、IgEに関する高親和性受容体(FcεRI)が、最も知られている。FcεRIにIgE-多価抗原複合体が結合すると、受容体の凝集およびインターナリゼーション、シグナリング、ならびに脱顆粒がもたらされる。このことは、サイトカイン遺伝子の転写によって達成され、よって、炎症性応答が永続化し得る。さらに、マスト細胞の誘発は、様々なあらかじめ形成されたおよび/または新たに合成されたメディエーター、たとえば上述のような、血管作動性アミン(ヒスタミン、セロトニン)、硫酸化プロテオグリカン、脂質メディエーター(プロスタグランジンD2、ロイコトリエン)、増殖因子、プロテアーゼ、サイトカイン、およびケモカインの分泌をもたらす。これらメディエーターは、単独で、またはマクロファージ由来およびT細胞由来のサイトカインと相乗的に組み合わせて、複雑な炎症性応答をもたらし、脱顆粒部位へ炎症細胞の動員および活性化を誘導する場合がある。
マスト細胞は、BBBの両側で見いだされており、またBBBを迅速に通る能力を有していることにより、生理的な刺激に応答してマスト細胞の数が増加する[Nautiyal K,et al.Proc Natl Acad Sci USA.2008 November;18;105(46):18053-18057][Theoharides TC,et al.J Neuroimmunol.2004 Jan;146(1-2):1-12][Silverman AJ,et al.J Neurosci 2000,20:401-408]。これら炎症促進性メディエーターの中枢神経系への放出は、神経および血管の要素の両方の機能を変える可能性がある[Skaper SD,et al.Immunol 2014;141:314-327]。幹細胞因子のc-Kit受容体のリガンドは、マスト細胞にとって重要な増殖因子である。同様に、LynおよびFynキナーゼは、マスト細胞のIgE誘導型脱顆粒をもたらす伝達経路の鍵となる構成要素の役割を果たすことが知られており、よって、c-Kit、Lyn、およびFynは、マスト細胞の活性を調節するための標的である。
よって、一実施形態では、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、マスト細胞の活性の阻害剤である。
一実施形態では、上記マスト細胞活性の阻害剤は、イマチニブ(STI571、Novartis)、より好ましくはメシル酸イマチニブである。よって、特定の実施形態では、本発明は、哺乳類、特にはヒトの患者の非侵攻性または中度侵攻性ALSの治療のための方法であって、イマチニブ(STI571、CGP57148B):4-[(4-メチル-1-ピペラジニル)メチル]-N-(4-メチル-3-{[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ}フェニル)ベンズアミドとして当該分野で知られている化合物の有効量を投与することを含む、方法に関する。この化合物の調製は、欧州特許第564409号の実施例21に記載されており、特に有用な形態は、国際特許公開公報第99/03854号に記載されている。
別の実施形態では、マスト細胞活性の阻害剤は、ミドスタウリン(PKC412;Novartis)、ダサチニブ(BMS354825;Bristol-Myers Squibb)、スニチニブ(SU11248;Pfizer)、ニロチニブ(AMN107;Novartis)、アキシチニブ(AG013736;Pfizer)、パゾパニブ(GlaxoSmithKline)、トセラニブ(SU11654;Pfizer)、BLU-285(Blueprint Medicines)、ボスチニブ(SKI-606;Pfizer)、イブルチニブ(PCI-32765;Pharmacyclics)、LAS189386(Almirall R&D Center)、DP-2618(Deciphera Pharmaceuticals)、フォスタマチニブ(R788;Rigel)、およびクロモリンナトリウムから選択することができる。
別の実施形態では、マスト細胞活性の阻害剤は、マシチニブ、イマチニブ、クロモリンナトリウム、ミドスタウリン、BLU-285、ボスチニブ、イブルチニブ、LAS189386、DP-2618、フォスタマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、スニチニブ、アキシチニブ、パゾパニブ、およびトセラニブから選択することができる。
CSF-1Rを介したニューロン由来のCSF-1は、脊髄におけるミクログリア増殖の引き金となる機構として認識されている。損傷を受けた運動ニューロンは、CSF-1を発現することにより、脊髄のミクログリアの拡大を誘導することが観察されている[Guan Z,et al.(2016)Nature Neuroscience 19(1):94-101];よって、CSF-1Rは、ミクログリアの活性を調節するための標的である。さらに、ミクログリアは、非神経細胞から放出される炎症促進性シグナル、主にマスト細胞などの免疫起源のシグナルに応答する。免疫系と中枢神経系との間に大規模な伝達が存在しており、ここで炎症性サイトカインがこの伝達において鍵となる役割を果たしていることを示すエビデンスがある[Skaper SD,et al.Immunol 2014;141:314-327]。よって、このマスト細胞―ミクログリアのクロストークは、慢性神経炎症の作用をさらに強化し、長期化させる。
本発明の方法に使用するためのチロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物はまた、CSF-1Rの標的化を介して、ミクログリア細胞の活性化をも調節する。
よって、一実施形態では、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、ミクログリア細胞の活性の阻害剤である。
一実施形態では、上記ミクログリア細胞の活性の阻害剤は、GW2580(GlaxoSmithKline)、ペキシダルチニブ(PLX3397;Plexxikon)、BLZ945(Novartis)、リニファニブ(ABT-869;Abbott)、OSI-930(OSI Pharmaceuticals Inc)、イマチニブ(STI571,Novartis)、スニチニブ(SU11248;Pfizer)、ニロチニブ(AMN107;Novartis)、パゾパニブ(GlaxoSmithKline)、エマクツズマブ(RG7155;Roche)、FPA008(Five Prime Therapeutics,Inc)、キザルチニブ(AC220;Daiichi Sankyo)、アキシチニブ(AG-013736;Pfizer)、モテサニブ(AMG-706;Takeda)、セジラニブ(AZD-2171;AstraZeneca)、JNJ-28312141(Johnson & Johnson)、Ki-20227(Kirin Pharma Company Limited)、MLN-518(Millennium)、ソラフェニブ(Bayer)、およびSU-14813(Pfizer)から選択することができる。
別の実施形態では、上記ミクログリア細胞活性の阻害剤は、マシチニブ、GW2580、ペキシダルチニブ、BLZ945、リニファニブ、OSI-930、イマチニブ、スニチニブ、ニロチニブ、パゾパニブ、エマクツズマブ、FPA008、キザルチニブ、アキシチニブ、モテサニブ、セジラニブ、JNJ-28312141、Ki-20227、MLN-518、ソラフェニブ、およびSU-14813から選択することができる。
さらに、免疫系と、たとえばマスト細胞を介して中枢神経系との間に大規模な伝達が存在しており、ここで炎症性サイトカインは、この伝達において鍵となる役割を果たしている[Skaper SD,et al.Immunol 2014;141:314-327]。結果として得られるマスト細胞―ミクログリアのクロストークは、慢性神経炎症の作用をさらに増強および延長し;よって本発明の方法に使用するためのチロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物はまた、マスト細胞―ミクログリアのクロストークの阻害を介して神経炎症をも調節する。
一実施形態では、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、マスト細胞の活性およびミクログリア細胞の活性の阻害剤である。
一実施形態では、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、2-アミノアリールチアゾール誘導体である。
一実施形態では、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、式[A]の2-アミノアリールチアゾール誘導体である。別の実施形態では、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、式[B]の2-アミノアリールチアゾール誘導体である。
一実施形態では、本発明の対象(すなわち、治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行が1ケ月あたり1.1ポイント未満のヒトのALS患者)の非侵攻性または中度侵攻性ALSを治療するための方法に使用するためのチロシンキナーゼ阻害剤は、以下の式[A]:
Figure 2022037132000003
(式中、
およびRは、独立して、水素、ハロゲン、直鎖状または分岐状アルキル、1~10個の炭素原子を含むシクロアルキル基、トリフルオロメチル、アルコキシ、シアノ、ジアルキルアミノ、および可溶化基から選択され、mが0~5であり、nが0~4であり;
基Rが、以下:
(i)フェニルなどのアリール基、またはハロゲン、1~10個の炭素原子を含むアルキル基、トリフルオロメチル、シアノ、およびアルコキシなどの1つもしくは複数の置換基の、任意の1つの環の位置でいずれかの組み合わせを有する、その置換された変異体;
(ii)ハロゲン、1~10個の炭素原子を含むアルキル基、トリフルオロメチル、およびアルコキシなどの1つまたは複数の置換基のいずれかの組み合わせをさらに有し得る、2、3、または4-ピリジル基などのヘテロアリール基;
(iii)ハロゲン、1~10個の炭素原子を含むアルキル基、トリフルオロメチル、およびアルコキシなどの1つまたは複数の置換基のいずれかの組み合わせをさらに有し得る、たとえば2-チエニル、3-チエニル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリルなどの5員環の芳香族複素環基;
のうちの1つである)
、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を有する。
一実施形態では、本発明の対象(すなわち、治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行が1ケ月あたり0.8ポイント未満のヒトALS患者)の非侵攻性ALSを治療するための方法に使用するためのチロシンキナーゼ阻害剤は、本明細書中上記に定義されている式[A]を有する。
一実施形態では、本発明の対象(すなわち、治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行が1ケ月あたり0.8≦ポイント<1.1であるヒトALS患者)の中度侵攻性ALSを治療するための方法に使用するためのチロシンキナーゼ阻害剤は、本明細書中上記に定義されている式[A]を有する。
特定の実施形態では、本発明の対象(すなわち、治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行が1ケ月あたり1.1ポイント未満であるヒトALS患者)の非侵攻性または中度侵攻性ALSを治療するための方法に使用するためのチロシンキナーゼ阻害剤は、一般式[B]
Figure 2022037132000004
(式中、
が、独立して、水素、ハロゲン、直鎖状または分岐状アルキル、1~10個の炭素原子を含むシクロアルキル基、トリフルオロメチル、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、可溶化基から選択され、
mが、0~5である)
、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を有する。
特定の実施形態では、本発明の対象(すなわち、治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行が1ケ月あたり0.8ポイント未満であるヒトALS患者)の非侵攻性ALSを治療するための方法に使用するためのチロシンキナーゼ阻害剤は、本明細書中上記に定義されている一般式[B]を有する。
特定の実施形態では、本発明の対象(すなわち、治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行が1ケ月あたり0.8≦ポイント<1.1であるヒトALS患者)の中度侵攻性ALSを治療するための方法に使用するためのチロシンキナーゼ阻害剤は、本明細書中上記に定義されている一般式[B]を有する。
薬学的に許容可能な塩は、好ましくは、たとえば、塩酸、硫酸、もしくはリン酸などの無機酸、または適切な有機カルボン酸もしくはスルホン酸、たとえば脂肪族モノカルボン酸もしくはジカルボン酸、たとえばトリフルオロ酢酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、ヒドロキシマレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸もしくはシュウ酸、もしくはアルギニンもしくはリジンなどのアミノ酸、芳香族カルボン酸、たとえば安息香酸、2-フェノキシ-安息香酸、2-アセトキシ-安息香酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、芳香性脂肪族カルボン酸、たとえばマンデル酸もしくはケイ皮酸、複素環式芳香族カルボン酸、たとえばニコチン酸もしくはイソニコチン酸、脂肪族スルホン酸、たとえばメタン-、エタン-、もしくは2-ヒドロキシエタン-スルホン酸、特にメタンスルホン酸もしくは芳香族スルホン酸、たとえばベンゼン-、p-トルエン-、もしくはナフタレン-2-スルホン酸を含むものなどの、薬学的に許容可能な酸付加塩である。
特段他の記載がない限り、本発明で使用される「メシル酸塩」への言及は、名付けられた薬学的な物質(式[A]または[B]の化合物など)を伴うメタンスルホン酸の塩を表す。メシル酸塩(mesylate)よりもメシル酸塩(mesilate)の使用が、WHOにより発行されたINNM(修正された国際一般名称(International nonproprietary names modified))に準拠している(たとえばWorld Health Organization(February 2006).International Nonproprietary Names Modified.INN Working Document 05.167/3.WHO.)。たとえば、メシル酸マシチニブまたはメシル酸イマチニブは、マシチニブおよびイマチニブのメタンスルホン酸塩をそれぞれ意味する。
非常に好ましい一実施形態では、本発明の方法に使用するための式[B]のチロシンキナーゼ阻害剤は、マシチニブ、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、より好ましくはメシル酸マシチニブである。
好ましくは「メシル酸マシチニブ」は、経口で生物学的に利用可能なマシチニブのメシル酸塩―CAS 1048007-93-7(MsOH);C2830OS.CHSOH;MW 594.76:
Figure 2022037132000005
を意味する。
マシチニブの化学名は、4-(4-メチルピペラジン-1-イルメチル)-N-[4-メチル-3-(4-ピリジン-3イルチアゾール-2-イルアミノ)フェニル]ベンズアミド-CAS番号790299-79-5である。
マシチニブは、米国特許第7,423,055号および欧州特許第1525200号に記載されている。メシル酸マシチニブの合成に関する詳細な手法は、国際特許公開公報第2008/098949号に提供されている。
チロシンキナーゼ阻害剤、好ましくは式[A]もしくは[B]のチロシンキナーゼ阻害剤、またはメシル酸マシチニブは、好ましくは、野生型のc-Kit、Lyn、Fyn、PDGFR、およびCSF1Rのキナーゼ活性の阻害剤、またはそれらのいずれかの組み合わせとして使用することができる。
本発明と関連して、理論により拘束されることを望むものではないが、c-Kit/SCFシグナリング経路、よってマスト細胞の生存および/もしくは活性化を阻害できる分子、またはマスト細胞の脱顆粒、よってマスト細胞―ミクログリアのクロストークを調節できる分子、またはCSF-1/CSF-1Rシグナリング経路、よってミクログリアの増殖を阻害できる分子、またはそれらのいずれかの組み合わせは、ALSの症状および進行を制御でき得ると思われる。本発明と関連して、上記に明らかに定義されているチロシンキナーゼ阻害剤、特にマシチニブは、野生型のc-Kit、Lyn、Fyn、PDGFR、およびCSF1Rのチロシンキナーゼの活性の阻害を介して、限定するものではないが、マスト細胞の負荷の全体的な低減、マスト細胞の全体的な活性の阻害、マスト細胞―ミクログリアのクロストークの阻害、およびミクログリアの増殖の阻害を介して、非侵攻性または中度侵攻性ALS、特に治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行が1ケ月あたり1.1ポイント未満の患者の治療においてこの役割を果たし、よって、総合的な炎症カスケードに影響を与える。予想外なことに、理論により拘束されることを望むものではないが、これは、本発明に係るチロシンキナーゼ阻害剤の使用が非侵攻性または中度侵攻性ALS患者において応答を誘発し得るこの多面的な作用機構を介している。
一実施形態では、上記患者で、治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行が1ケ月あたり0.8ポイント未満である。別の実施形態では、上記患者で、治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行が1ケ月あたり0.8ポイント以上1.1ポイント未満である(1ケ月あたり0.8≦ポイント<1.1)。
本発明は、ヒトの患者における非侵攻性または中度侵攻性ALSの治療のための方法であって、上記方法が、チロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、特にマシチニブまたはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を、その必要のあるヒトの患者に投与することを含む、方法に関する。
本発明に関連して、ヒトの患者における非侵攻性または中度侵攻性ALSは、1ケ月あたり1.1ポイント未満の治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行により、定義されている。本発明では、ヒトの患者の非侵攻性ALSは、1ケ月あたり0.8ポイント未満の治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行により、さらに定義されている。本発明では、ヒトの患者の中度侵攻性ALSは、1ケ月あたり0.8ポイント以上1.1ポイント未満の(1ケ月あたり0.8≦ポイント<1.1)、治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行により、さらに定義されている。
よって、本発明は、1ケ月あたり1.1ポイント未満の、治療開始前でのALSFRS-Rスコアの進行を有する筋萎縮性側索硬化症(ALS)を罹患した患者を治療するための方法に関する。
また本発明は、1ケ月あたり1.1ポイント未満の、治療開始前でのALSFRS-Rスコアの進行を有する筋萎縮性側索硬化症(ALS)を罹患した患者を治療に使用するためのc-Kit、Lyn、Fyn、PDGFR、およびCSF1Rから選択される少なくとも1つのチロシンキナーゼの阻害剤、またはそれらのいずれかの組み合わせ、好ましくはマシチニブまたはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物に関する。
また本発明は、1ケ月あたり1.1ポイント未満の、治療開始前でのALSFRS-Rスコアの進行を有する筋萎縮性側索硬化症(ALS)を罹患した患者を治療するための薬物の調製のための、c-Kit、Lyn、Fyn、PDGFR、およびCSF1Rから選択される少なくとも1つのチロシンキナーゼの阻害剤、またはそれらのいずれかの組み合わせ、好ましくはマシチニブまたはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の使用に関する。
一実施形態では、上記患者は、1ケ月あたり0.8ポイント未満の、治療開始前でのALSFRS-Rスコアの進行を有する。別の実施形態では、上記患者は、1ケ月あたり0.8ポイント以上1.1ポイント未満の(1ケ月あたり0.8≦ポイント<1.1)、治療開始前でのALSFRS-Rスコアの進行を有する。
本発明に関連して、用語「治療」(およびその様々な文法上の形態)は、疾患状態、疾患の進行、疾患を引き起こす物質(たとえば細菌もしくはウイルス)、または他の異常な状態の有害な作用を予防、治癒、反転、減弱、軽減、最小化、抑制、または停止することを表す。たとえば治療は、疾患の症状を軽減することを含んでもよく(すなわち必ずしもすべての症状を軽減しない)、または疾患の進行を減弱することを含んでもよい。
驚くべきことに、本発明者らは、マシチニブが、ALS患者のはっきりと区別される下位集団に対して治療効果を提供し、ここで、治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行が治療の有効性に関する独立した予測因子として作用することを示した。
ALSを罹患した患者の治療において、リルゾールを併用したプラセボに対して、リルゾールと併用したマシチニブの有効性および安全性を比較するために、フェーズ3の無作為化プラセボ対照試験(AB10015)を行った(実施例1参照)。
申告した前向きのAB10015試験の中間解析の後、驚くべきことに、本発明者らは、ALSの下位集団において、マシチニブが、プラセボと比較して臨床上の利点をもたらすことを示した(実施例2参照)。この下位集団は、限られた適格基準で定義されており、治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行が1ケ月あたり1.1ポイント未満であるALS患者から構成されており、非侵攻性もしくは中度侵攻性ALSの下位集団、または、本明細書中上記に定義されている非侵攻性ALSもしくは中度侵攻性ALSを罹患した患者を含む、ALS全体の集団の中の「通常の進行者」である下位集団と、集合的に呼ばれる。この結果は新規の知見を表しており、従来技術からの教示により予測できるものではなかった。
マシチニブは、疾患進行の速度における統計的に有意な遅延を伴い、プライマリーエンドポイントにおいてプラセボを超える改善を示した(P=0.0032、表4)。予想外なことに、この正の治療効果は、非侵攻性または中度侵攻性ALS(通常の進行者)の下位集団により強くもたらされ(P=0.0004、表5)、ここで侵攻性ALS(本明細書中上記に定義されているように、速い進行者または迅速な進行者)患者では、プラセボと比較して、マシチニブの有効性は限定的または効果がなかった(P=0.4327、表6)ことが示された。まとめると、これらのデータは、マシチニブが、非侵攻性または中度侵攻性ALSである限定された集団(通常の進行者)において他の患者コホートよりも予想外に優れた臨床的な利点をもたらすことを例証している。これらの知見は、マシチニブの治療の有効性およびALS集団全体からの患者の選択に関して独立した予測因子としての、治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行(1ケ月あたり1.1ポイント未満の閾値を伴う)の使用を支援している。
よって驚くべきことに、本発明者らは、区別できる下位集団がマシチニブ治療に応答し、ここで上記区別は、1ケ月あたり1.1ポイント未満の(本明細書中上記に定義されている非侵攻性ALSおよび中度侵攻性ALSの下位集団を含む)、最初のALS関連の症状の日から試験への無作為化の時間(ベースライン)までのALSFRS-Rスコアの変化の速度を介して計算される疾患の侵攻性によるものであり、これは、時間単位あたりのポイントで表現されている、治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行として一般化することができることを、示した。
本発明の方法は、好適には、非侵攻性または中度侵攻性ALS患者(通常の進行者)に有意に有益な効果を提供することを示した。一実施形態では、「通常の進行者」または「非侵攻性もしくは中度侵攻性」との表現は、実際には、ALSを罹患した治療を経験した患者が、1ケ月あたり1.1ポイント未満のALSFRS-Rスコアの進行の観点から表されている疾患進行の病歴を示す臨床状況を表すと考えられる。
一実施形態では、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、少なくとも1つの薬学的に有効な成分と併用して投与される。上記薬学的に有効な成分は、好ましくは、ALSの治療に有効である。
薬学的に有効な成分の例として、限定するものではないが、抗グルタミン酸化合物、特に、リルゾール(6-(トリフルオロメトキシ)ベンゾチアゾール-2-アミン);トピラマート(2,3:4,5-ビス-O-(1-メチルエチリデン)-β-D-フルクトピラノーススルファマート);ガバペンチン(2-[1-(アミノメチル)シクロヘキシル]酢酸);ラモトリギン(6-(2,3-ジクロロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3,5-ジアミン);タランパネル((8R)-7-アセチル-5-(4-アミノフェニル)-8,9-ジヒドロ-8-メチル-7H-1,3-ジオキソロ[4,5-h][2,3]ベンゾジアゼピン);セフトリアキソン((6R,7R)-7-[[(2Z)-2-(2-アミノ-1,3-チアゾール-4-イル)-2-メトキシイミノアセチル]アミノ]-3-[(2-メチル-5,6-ジオキソ-1H-1,2,4-トリアジン-3-イル)スルファニルメチル]-8-オキソ-5-チア-1-アザビシクロ[4.2.0]オクタ-2-エン-2-カルボン酸);グルタミン酸カルボキシペプチダーゼIIの阻害剤が挙げられる。
一実施形態では、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、抗グルタミン酸化合物と併用して投与する。
一実施形態では、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、リルゾールと併用して投与する。
一実施形態では、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、c-Kit、Lyn、Fyn、PDGFR、およびCSF1Rから選択される少なくとも1つのチロシンキナーゼの阻害剤、またはそれらのいずれかの組み合わせであり、リルゾールと併用して投与する。
一実施形態では、本発明のマスト細胞活性の阻害剤を、リルゾールと併用して投与する。一実施形態では、本発明のミクログリア細胞活性の阻害剤を、リルゾールと併用して投与する。
また、本発明は、対象、好ましくはヒトの患者における非侵攻性または中度侵攻性ALSを治療するための方法であって、マシチニブまたはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を、リルゾールと併用して、その必要がある対象または患者に投与することを含む、方法に関する。
一実施形態では、上記本発明の方法は、1ケ月あたり0.8ポイント未満の、治療開始前でのALSFRS-Rスコアの進行を有する患者の治療のための方法である。別の実施形態では、上記本発明の方法は、1ケ月あたり0.8ポイント以上1.1ポイント未満(1ケ月あたり0.8≦ポイント<1.1)の、治療開始前でのALSFRS-Rスコアの進行を有する患者の治療のための方法である。
リルゾールは、50~200mg/日の用量、たとえば50、100、または200mg/日の用量で投与されてもよく、好ましくは50mgで1日2回投与されてもよい。
一実施形態では、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、トピラマートと併用して投与する。
一実施形態では、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、ガバペンチンと併用して投与する。
一実施形態では、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、ラモトリギンと併用して投与する。
一実施形態では、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、タランパネルと併用して投与する。
一実施形態では、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、セフトリアキソンと併用して投与する。
一実施形態では、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、グルタミン酸カルボキシペプチダーゼIIの阻害剤と併用して投与する。
一実施形態では、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、少なくとも1つの薬学的に有効な成分と同時、別々、または連続して投与する。
一実施形態では、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、同時に使用するため、別々に使用するため、または連続して使用するために、組み合わせた調製物において、上記少なくとも1つの薬学的に有効な成分と併用して投与する。
最良の投与レジメンについては、本発明の方法に使用するためのチロシンキナーゼ阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、特にマシチニブまたはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、約1.0~約9.0mg/kg/日(mg/kg体重/日)の範囲の一日用量で投与すべきである。一実施形態では、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、好ましくはマシチニブまたはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、より好ましくはメシル酸マシチニブを、約1.5~約7.5mg/kg/日、たとえば約1.5、約3.0、約4.5、約6.0、または約7.5mg/kg/日、より好ましくは約3.0、約4.5または約6.0mg/kg/日(mg/kg体重/日)の一日用量で投与する。
とはいえ、上記チロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、特にマシチニブまたはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、最大約7.5mg/kg/日、より好ましくは約4.5または約6.0mg/kg/日に達するまで、低いレスポンダー患者において約1.5mg/kg/日の増分で用量を増加させることができる。各用量の増加は、用量の増加を行うことを許可でき、いずれの毒性事象も存在しないように、毒性コントロールに供されている。
一実施形態では、上記チロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の用量の増加は、初回用量が投与されてから少なくとも4週間後、および初回用量が投与されてから26週間後より前のいずれかの時点、たとえば第4週、第8週、第12週、第16週、第20週、または第24週で、行われる。各用量の増加は、限定するものではないが、その前の一定した用量の試験治療での4週間の治療期間を含む毒性コントロールに供されており、重症度に関わらず、疑わしい重篤な有害事象が報告されず、疑わしい有害事象が治療中断をもたらさず、疑わしい有害事象が、用量増加時に行われてない。上述の毒性事象のいずれも存在せずに、所定の用量の増加が起こり得る。治療再開時に用量の減少を伴わない、用量増加時または治療中断時で進行中の重篤ではない疑わしい有害事象の場合、いずれかの用量の増加を、追加的な4週間の治療期間の後まで遅延する。用量の増加は、安全上の理由のため用量を低下した患者には認められていない。
一実施形態では、上記チロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、好ましくはマシチニブまたはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、最初に好ましくは、6週間の間3mg/kg/日、次いで6週間の間4.5mg/kg/日、次いでその後4.5mg/kg/日の1日2回摂取の用量で経口投与する。別の実施形態では、上記チロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、好ましくはマシチニブまたはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を、最初に、好ましくは12週間の間3.0mg/kg/日、次いでその後4.5mg/kg/日の1日2回摂取の用量で経口投与する。
別の例では、マシチニブまたはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、好ましくは、最初に、4週間の間3mg/kg/日、次いで4週間の間4.5mg/kg/日、およびその後6mg/kg/日の1日2回摂取の用量で経口投与され、ここで各用量の増加は、毒性コントロールに供されている。
一実施形態では、チロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、好ましくはマシチニブまたはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、より好ましくはメシル酸マシチニブを、最初に、少なくとも6週間の間4.5mg/kg/日、次いで少なくとも6週間の間6.0mg/kg/日、およびその後6.0mg/kg/日の用量で投与する。ここで各用量の増加は、毒性コントロールに供されている。
本明細書中示されているいずれかの用量は、有効成分それ自体の量を表すものであり、その塩の形態を表すものではない。
記載されている用量レジメンで使用されるmg/kg/日でのマシチニブの用量が、有効成分のマシチニブの量を表す場合、メシル酸マシチニブといった薬学的に許容可能な塩の組成物のバリエーションは、上記用量レジメンを変化させるものではない。
特定の実施形態では、マシチニブまたはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、さらに、異なる投与経路を介して投与されてもよいが、経口投与が好ましい。一実施形態では、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を、経口投与する。一実施形態では、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を、1日2回の摂取で投与する。よって、さらなる別の好ましい実施形態では、上記の使用または方法において、マシチニブ、またはその塩もしくは溶媒和物を、好ましくは長期間、たとえば6か月超、好ましくは12か月超にわたり、1日に2回経口投与する。マシチニブまたはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、100mgおよび200mgの錠剤の形態で投与することができる。
一実施形態では、チロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、好ましくはマシチニブまたはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、より好ましくはメシル酸マシチニブは、少なくとも50mgかつ600mg未満、好ましくは少なくとも100mgかつ400mg未満の量で医薬組成物に含まれている。
また本発明は、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を含む医薬組成物に関する。
また本発明は、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を含む薬物に関する。
また本発明は、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を含むキットに関する。
一実施形態では、本発明の医薬組成物、薬物、またはキットは、マシチニブ、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を含む。
一実施形態では、本発明の医薬組成物、薬物、またはキットは、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を、少なくとも1つの他の薬学的に有効な成分と併用して含む。一実施形態では、本発明の医薬組成物、薬物、またはキットは、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を、少なくとも1つの他の薬学的に有効な成分、好ましくは抗グルタミン酸化合物、特にリルゾール;トピラマート;ガバペンチン;ラモトリギン;タランパネル;セフトリアキソン;グルタミン酸カルボキシペプチダーゼIIの阻害剤と併用して含み、好ましくは、上記他の薬学的に有効な成分はリルゾールである。
一実施形態では、本発明の医薬組成物、薬物、またはキットは、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を、少なくとも1つの抗グルタミン酸化合物および/またはグルタミン酸カルボキシペプチダーゼIIの阻害剤と併用して含む。一実施形態では、本発明の医薬組成物、薬物、またはキットは、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を、リルゾール、トピラマート、ガバペンチン、ラモトリギン、タランパネル、およびセフトリアキソンを含む群から選択される少なくとも1つの他の薬学的に有効な成分と併用して含む。
一実施形態では、本発明の医薬組成物、薬物、またはキットは、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を、リルゾールと併用して含む。好ましい実施形態では、本発明の薬物またはキットは、マシチニブ、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を、リルゾールと併用して含む。
よって、特定の実施形態では、本発明の医薬組成物または薬物は、経口用組成物である。
当業者に知られているように、様々な形態の賦形剤を、投与形式に適合させて使用することができ、これらの一部は、たとえば、活性分子を望ましい治療のため全体的により有効にする放出プロファイルを促進することにより、この活性分子の有効性を促進することができる。
よって、本発明の方法に使用するための医薬組成物、薬物、または組成物は、たとえば筋肉内経路、静脈内経路、皮下経路、真皮内経路、経口経路、局所経路、直腸経路、膣経路、眼の経路、経鼻経路、経皮経路、または非経口経路を介して、様々な形態、より具体的には、たとえば注射可能、微粉化可能、または摂取可能な形態で投与することができる。好ましい経路は経口投与である。
特に、本発明は、医薬組成物または薬物の製造のための、本発明に係る化合物の使用を包有する。
当該薬物または医薬組成物は、適切な用量で当該分野でよく知られている薬学的に許容可能な担体を使用して製剤化することができる、経口投与用に適合された薬物または医薬組成物の形態を取ることができる。このような担体により、医薬組成物を、患者が摂取するために、錠剤、丸剤、糖衣剤、カプセル剤、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤などとして製剤化することができる。有効成分に加え、これら医薬組成物は、有効な化合物を薬学的に使用できる調製物へと処理することを促進する賦形剤および補助剤を含む適切な薬学的に許容可能な担体を含み得る。製剤化および投与の技術に関するさらなる詳細は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Maack Publishing Co.,Easton,Pa.)の最新版で見出すことができる。
実施例
本発明を、以下の実施例によりさらに例示する。
実施例1
AB10015試験
設計
AB10015試験は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を罹患した患者の治療において、リルゾールと併用したプラセボに対して、リルゾールと併用したマシチニブの有効性および安全性を比較するための、フェーズ2/3の、前向き、多施設型の、無作為化二重盲検並行群間プラセボ比較試験である。
無作為化
381名の患者を、3つの群:
群1:4.5mg/kg/日のマシチニブ+リルゾールを投与した127名の患者
群2:3mg/kg/日のマシチニブ+リルゾールを投与した127名の患者
群3:プラセボ+リルゾールを投与した127名の患者
に無作為化した。
下位群の解析(ALS患者の下位集団)
ALS患者には2つの区別できる集団:「通常の進行者」の下位集団および「速い進行者」の下位集団が、存在する。主要解析に関して標的となる集団は、「通常の進行者」の下位集団である。
「通常の進行者」の集団
「通常の進行者」は、無作為化前のALSFRS-Rスコアの進行が1ケ月あたり1.1ポイント未満であるALS患者として定義されている。この集団は、ALS患者の約80%を示すものである。
「通常の進行者+速い進行者」の集団
「通常の進行者+速い進行者」の集団は、すべてのALS患者、「通常の進行者」のALS患者、または「速い進行者」のALS患者を含む。「速い進行者」は、無作為化前のALSFRS-Rスコアの進行が1ケ月あたり1.1ポイント以上であるALS患者として定義されている。
主な選択基準
年齢が18~75歳、体重が50kg超、およびBMIが18~35kg/mの女性または男性患者;
家族性または孤発性ALS;
World Federation of Neurology Revised El Escorial criteria [Brooks BR.Journal of the Neurological Sciences 1994;124(Suppl):96-107]により、検査所見で裏付けられ、臨床的に可能性があり、または明確なALSと診断された患者;
スクリーニング訪問時に、長くても36ケ月の、症状の発症からの疾患の持続期間;
スクリーニングより前に、少なくとも30日間の安定した用量のリルゾール(100mg/日)で治療した患者;
スクリーニング訪問時に、性別、身長、および年齢に対する通常の予測値の60%以上のFVC(努力性肺活量)を伴う患者;
スクリーニングおよびベースライン時に、適切な臓器機能を伴う患者
主な除外基準
気管切開術および/または胃瘻造設を経た患者
治療投与
以下の表2および3に示されるように、登録された対象に、一日の総用量が4.5mg/kgまたは3mg/kgのマシチニブまたはこれに見合うプラセボを、食事の間に摂取させた。朝の投与では、錠剤を朝食の間に摂取させた。吐き気がある場合は、投与は昼食の間に行われた。夕方の投与では、錠剤を、夕食の間に摂取させた。
試験治療の一日用量である4.5mg/kgを、表2に示されるように分割した用量で投与した。
Figure 2022037132000006
試験治療の一日用量である3mg/kgを、表3に示されるように分割した用量で投与した。
Figure 2022037132000007
解析のデータセット
ITT(Intention-To-Treat)のデータセット―ITTの集団は、患者が試験治療を受けたかどうかに関わらず、少なくとも1つのベースライン後の有効性の評価を有する、全ての無作為化された患者として定義されている。
部分修正したITT(Modified Intent-To-Treat(mITT))のデータセット―mITTの集団は、試験治療(マシチニブまたはプラセボ)のうちの少なくとも1つの投与を受けた、潜在的なまたは明確な筋萎縮性側索硬化症を有するすべてのITT患者を含むものである。
Per Protocol(PP)のデータセット―PPの集団は、いずれの主要な治験実施計画書からも逸脱することのないmITT集団のすべての患者からなる。これは、企図される試験に参加した患者のセットである。試験を早期に終えた患者は、治験実施計画書からの逸脱がない場合には、PPの集団に含まれる。データベースを固定する前に、PPの集団から患者を除外する明確な理由は、Data Review Committeeにより完全に定義され、記録されている。
安全性解析対象集団―安全性解析対象集団(SAF)は、試験薬物(マシチニブまたはプラセボ)のうち少なくとも1つの投与を受けた、登録されたすべての患者からなる。
統計学的な方法
プライマリーエンドポイント
筋萎縮性側索硬化症機能評価スケール改訂版(ALSFRS-R)における、ベースラインから第48週までの変化
セカンダリーエンドポイント
二次的な解析は、以下のエンドポイントを含む:
9ポイント超のALSFRS-Rの悪化または死亡により定義されている無憎悪生存期間(PFS);
機能および生存の組み合わせ評価(CAFS:Combined Assessment of Function and Survival);
無作為化から死亡または最初の気管切開の記録日までの時間として定義される生存時間;
無作為化から最初の気管切開時までの時間として定義されている最初の気管切開までの時間;
ベースラインから各時点(第4週、第8週、第12週、第24週、第36週、第48週)までの努力性肺活量(FVC)の変化;
ALSFRS-Rにおけるベースラインから各時点(第4週、第8週、第12週、第24週、および第36週)までの変化;
各時点(第12週、第24週、第36週、および第48週)での気管切開を行うことなく生存している患者の比率として定義されている生存率。
中間解析
この試験における1つの中間解析が、無作為化された患者のおよそ50%で計画された。
中間解析は、盲検的に行われなかった。独立した医薬品開発業務受託機関(CRO)は、解析を行うことを義務付けられていた。この結果は、独立データモニタリング委員会(IDMC)のメンバーに直接送付された。
IDMCは、AB10015試験が、あらかじめ計画された中間解析に基づきこの主目的に一致するとの結論を下した。3名の小さなチームが、患者の無作為化リストにアクセスすることなく、研究の実行とは独立して、設定され、最も評判の良いデータを収集した。
実施例2
臨床データは、マシチニブが、ALS患者のうちはっきりと区別される下位集団に治療効果を提供することを示すものである。これら患者は、非侵攻性または中度侵攻性ALSを有すると同定されており(通常の進行者)、治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行が1ケ月あたり1.1ポイント未満のALS患者として定義されている。
AB10015試験の中間解析
方法
この試験のプロトコルおよび統計的な解析のプランは、患者の2つの下位群:「通常の進行者」(非侵攻性または中度侵攻性ALS患者とも呼ばれている、無作為化前のALSFRS-Rスコアの進行が1ケ月あたり1.1ポイント未満の患者)、および「速い進行者」(侵攻性ALS患者とも呼ばれている、無作為化前のALSFRS-Rスコアの進行が1ケ月あたり1.1ポイント以上の患者)を解析するための準備を含むものであった。
AB10015試験のプロトコルに従い、中間解析が、情報のおよそ50%が解析に利用可能となった後に行われるように計画された。中間解析時に、計画された、2015年2月12日より前に無作為化された381名の患者のうち192名(50%)が、第48週の訪問に到達することができた。この中間のITTの集団は、プラセボ、マシチニブ(4.5mg/kg/日)、およびマシチニブ(3.0mg/kg/日)のコホートにそれぞれ無作為化された65名、64名、および63名の患者からなるものであった。192名の患者のうち、161名(85%)が、プラセボ、マシチニブ(4.5mg/kg/日)、およびマシチニブ(3.0mg/kg/日)のコホートにそれぞれ無作為化された54名、53名、および54名の患者からなる「通常の進行者」の患者であった。用量(3mg/kg/日対4.5mg/kg/日)による無作為化の比率は1:1(50%)であり;結果として、中間解析に必要とされる患者の数は、全患者数、下位集団状態、および治療用量に関して達成された。
中間解析のプライマリーエンドポイントは、ALSFRS-Rにおけるベースラインから第48週までの変化に基づくものである。主要解析は、mITTの「通常の進行者」(すなわち、非侵攻性または中度侵攻性ALS)の下位集団で行った。この解析を、3.11%のα水準で、初回用量4.5mg/kg/日のマシチニブ(グループ1、n=52)対プラセボの患者(グループ3、n=46)に無作為化した患者で行った。試験の訪問日のALSFRS-Rの欠測値は、改訂版LOCF(mLOCF:Modified Last Observation Carried Forward)法に基づき置き換えられた。
ALSFRS-Rにおけるベースラインから第48週までの絶対的な変化を、以下の因子:治療(マシチニブまたはプラセボ)、ならびに、ALS患者の下位集団、最初の症状の日からベースラインまでのALSFRS-Rスコアの進行(ポイント/月)、ベースライン時のALSFRS-Rスコア、発症部位(延髄対その他)、ベースライン時の年齢、および地域の層別基準で調節した共分散分析(ANCOVA)のモデルを使用して推定した。
群間の、ベースラインから第48週までの平均値の変化の差異の両側(1-α)の信頼区間を計算した。主要解析に、再無作為化検定を使用した。再無作為化検定は、無作為化検定またはpermutation検定とも呼ばれており、帰無仮説下の検定統計量の分布が、観察データポイントに関する標識の再配置下の可能性のあるすべての検定統計量の値を計算することにより得られる、統計的有意性検定の一種である。治療因子のp値が、少なくとも元のデータ由来の治療因子のp値と同程度に小さい反復の割合を、計算した。この割合では、観察される治療因子のp値はまた、分子および分母における1つの反復として考慮されている。この割合が、無作為化検定のp値である。治療の差異の仮説は、無作為化のp値が3.11%以下である場合、3.11%の有意性で拒絶されなかった。
試験レベルでの全体的な第一種過誤のファミリーワイズエラー率を制御するために、有効性の解析を段階的な方法(固定順序法(fixed sequence method))で行った。固定順序法は、主張され、選択用量で治療された集団が、主要解析に関して0.0311の値の包括的なファミリーワイズエラー率を制御することにより行われることを確保する。順序1は、4.5mg/kg/日の無作為化された「通常の進行者」の患者コホートで行われた。主要解析は、ALSFRS-Rスコアにおけるベースラインから第48週までの絶対的な変化(「最小二乗平均」法により計算される)であった。解析は、0.0311の有意なレベルを決定的とみなした。
結果
概して、患者の人口統計データおよびベースラインの特徴は、治療アームと下位集団との間で良好に一致した。明確な下位群の非侵攻性または中度侵攻性ALS(すなわち通常の進行者)対侵攻性ALS(すなわち速い進行者)におけるALSFRS-Rスコアの進行に係るマシチニブの治療効果解析では、以下のコホート間で比較を行った。
i)治療アーム(マシチニブ対プラセボ)に係る、4.5mg/kg/日の無作為化した「通常の進行者」の患者コホートにおけるベースラインから第48週までのALSFRS-Rの変化(プライマリーエンドポイント)。これは、中間解析の主要解析、すなわち、段階的な固定順序法の順序1に対応する。
合計98名の患者は、中間解析のプライマリーエンドポイントの最初の順序、すなわち、マシチニブ(4.5mg/kg/日)の治療アーム(n=46)またはプラセボアーム(n=52)のいずれかに無作為化された、評価可能なベースラインおよび第48週のデータを伴う「通常の進行者」の下位群由来の患者に関して、評価可能であった。このコホートにおけるマシチニブ(4.5mg/kg/日)またはプラセボに対する曝露の平均値は、それぞれ9.5±2.8か月(1.7~11.5ケ月の範囲)および9.3±3.2ケ月(0.2~13.33か月)であった。
マシチニブは、プライマリーエンドポイントにおいてプラセボを超える有意な改善を示した。ここで、プラセボで治療した患者では、平均14.51ポイントのALSFRS-Rスコアの減少に対して、マシチニブで治療した患者では、9.02の減少であった(P=0.0032)(表4)。よって、4.5mg/kg/日で投与したマシチニブは、ALSの「通常の進行者」の下位集団において、ALSFRS-Rスコアにより測定される疾患進行の統計的に有意な遅延をもたらした。
Figure 2022037132000008
主要有効性解析で評価可能な患者。P値は再無作為化に基づく。有意性の中間解析の値は、<0.0311に設定。ΔALSFRS-R=ALSFRS-Rスコアにおけるベースラインから第48週までの変化(最小二乗平均)。マシチニブ(4.5)=4.5mg/kg/日のマシチニブ+リルゾールを投与した無作為化群1。Delta=治療アーム間の絶対差(マシチニブ-プラセボ)。[CI]=(1-α)信頼区間。mITT集団
ii)マシチニブで治療した「通常の進行者」対マシチニブで治療した「速い進行者」の下位集団間の治療効果を直接比較した、4.5mg/kg/日で無作為化した患者コホートにおける、ベースラインから第48週までのALSFRS-Rの変化。
通常の進行者(非侵攻性または中度侵攻性ALS)患者のマシチニブでの治療は、ALSFRS-Rスコアの観点から、速い進行者(侵攻性ALS)患者と比較して優れている、極めて統計学的に有意な改善を示した。ここで、ALSFRS-Rスコアの減少の平均値は、それぞれ、5.57ポイント対17.9ポイントであった(P=0.0004)(表5)。よって、4.5mg/kg/日で投与されるマシチニブは、予想を超えて、ALSの「速い進行者」の下位集団と比較して、ALSの「通常の進行者」の下位集団におけるALSFRS-Rスコアにより測定さるように、強力な疾患進行の遅延をもたらした。
よって予想外なことに、これらデータは、主要解析におけるマシチニブ対プラセボに関して例証された正の治療効果が、「通常の進行者」の下位集団により強力にもたらされることを示している。よって、マシチニブは、非侵攻性または中度侵攻性ALS患者(通常の進行者)の下位集団には極めて有効であり、侵攻性ALS患者(速い進行者)では効果がない、または限定的に有効である。
Figure 2022037132000009
主要有効性解析で評価可能な患者。有意性の中間解析の値は、<0.0311に設定。ΔALSFRS-R=ALSFRS-Rスコアにおけるベースラインから第48週までの変化(最小二乗平均)。Delta=治療アーム間の絶対差(通常の進行者-速い進行者)。[CI]=(1-α)信頼区間。mITT集団
iii)治療アーム(マシチニブ対プラセボ)に係る、4.5mg/kg/日の無作為化された「速い進行者」の患者コホートにおける、ベースラインから第48週までのALSFRS-Rの変化。
マシチニブが、侵攻性ALS患者において限定的に有効であるとの知見(上記の表5参照)は、治療アーム(マシチニブ対プラセボ)に係る4.5mg/kg/日の無作為化された「速い進行者」の患者コホートにおける、ベースラインから第48週までのALSFRS-Rの変化の解析により、確認される。
「速い進行者」の下位集団における治療アーム間で有意差はみられなかった。実際に、この患者の下位集団において疾患進行の遅延に向かう傾向はなかった(マシチニブで治療した患者は、プラセボで治療した患者と比較する場合、ALSFRS-Rスコアにおける顕著な減少の平均値を示した)(表6)。この知見は、マシチニブが、非侵攻性または中度侵攻性ALS患者(通常の進行者)でのみ有効であるとの予想外の結果を裏付けており、異なる疾患進行の機構が、全ALS集団内の生存に関する不均一性に部分的に関与しているとの仮説を裏付けている。
Figure 2022037132000010
主要有効性解析で評価可能な患者。有意性の中間解析の値は、<0.0311に設定。ΔALSFRS-R=ALSFRS-Rスコアにおけるベースラインから第48週までの変化(最小二乗平均)。マシチニブ(4.5)=4.5mg/kg/日のマシチニブ+リルゾールを投与した無作為化群1。Delta=治療アーム間の絶対差(マシチニブ-プラセボ)。[CI]=(1-α)信頼区間。mITT集団
まとめると、これらデータは、マシチニブが、侵攻性ALSを罹患した他の患者コホート(すなわち無作為化前のALSFRS-Rスコアの進行が1ケ月あたり1.1ポイント以上である患者)よりも予想を超えて優れて、限定された集団である非侵攻性または中度侵攻性ALS(すなわち無作為化前のALSFRS-Rスコアの進行が1ケ月あたり1.1ポイント未満である患者)に臨床的な利点をもたらすことを例証している。これらの知見は、マシチニブ治療の効力および全ALS集団からの患者選択に関する独立した予測因子としての、1ケ月あたり1.1ポイント未満の閾値を伴う治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行の使用を支援している。
実施例3
AB10015試験の最終的な解析を、情報の100%が利用可能となった際に行った。この最終的な解析からの臨床データは、マシチニブが、ALS患者のはっきりと区別される下位集団に治療効果を提供することを示す、AB10015の中間解析からの知見を確認するものであった。これら患者は、治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行が1ケ月あたり1.1ポイント未満であるALS患者(本明細書中上記で定義されている非侵攻性ALS患者および中度侵攻性ALS患者を含む)として定義されている、通常の進行者として同定されている。
AB10015試験の最終的な解析
データベースのカットオフは、2017年3月16日に行った。この実施例で提示されているデータは、予備的な分析から部分的にとられており、最終的に有効とされるデータセットに近い近似値をも表している。
ALS患者集団全体のうちの明確な下位集団におけるALSFRS-Rスコアの進行に係るマシチニブの投与の効果を判定するために、以下の解析を行った。
i)治療アーム(マシチニブ対プラセボ)における、4.5mg/kg/日の無作為化した患者のコホートのベースラインから第48週までのALSFRS-Rの変化(プライマリーエンドポイント)。これは、最終的な解析のプライマリーエンドポイントに対応する。
4.5mg/kg/日で投与したマシチニブは、ALSの「通常の進行者」の下位集団(1ケ月あたり1.1ポイント未満)において、ALSFRS-Rスコアにより測定される疾患進行の統計的に有意な遅延をもたらした。マシチニブは、プライマリーエンドポイントにおいてプラセボを超える有意な改善を示し(P=0.0142)、ここでマシチニブとプラセボとの間では、ALSFRS-Rスコアの減少の平均値が、それぞれ-8.7ポイント対-12.1ポイントであった(3.4ポイントの差に対応)(表7)。
Figure 2022037132000011
主要有効性解析で評価可能な患者。有意性の最終的な解析の値は、<0.05に設定。ΔALSFRS-R=ALSFRS-Rスコアにおけるベースラインから第48週までの変化(最小二乗平均)。マシチニブ(4.5)=4.5mg/kg/日のマシチニブ+リルゾールを投与した無作為化群1。Delta=治療アーム間の絶対差(マシチニブ-プラセボ)。[CI]=(1-α)信頼区間。mITT集団
「非侵攻性ALS」患者の下位群(1ケ月あたり0.8ポイント未満)を検討すると、マシチニブは、3.4ポイントの差に対応するALSFRS-Rスコアの遅延をもたらした(マシチニブおよびプラセボで、それぞれ-8.3ポイント対-11.7ポイント)(表8)
Figure 2022037132000012
有効性解析で評価可能な患者。有意性の最終的な解析の値は、<0.05に設定。ΔALSFRS-R=ALSFRS-Rスコアにおけるベースラインから第48週までの変化(最小二乗平均)。マシチニブ(4.5)=4.5mg/kg/日のマシチニブ+リルゾールを投与した無作為化群1。Delta=治療アーム間の絶対差(マシチニブ-プラセボ)。[CI]=(1-α)信頼区間。mITT集団
「中度侵攻性ALS」患者の下位群(1ケ月あたり0.8≦ポイント<1.1)を検討すると、マシチニブは、2.2ポイントの差に対応するALSFRS-Rスコアの遅延をもたらした(マシチニブおよびプラセボで、それぞれ、-11ポイント対-13.2ポイント)(表9)。中度侵攻性ALS患者のコホート(1ケ月あたり0.8≦ポイント<1.1のALSFRS-Rスコアの進行)が、非侵攻性ALS患者のコホート(1ケ月あたり0.8ポイント未満のALSFRS-Rスコアの進行)よりも小さいことに留意されたい。
Figure 2022037132000013
有効性解析で評価可能な患者。有意性の最終的な解析の値は、<0.05に設定。ΔALSFRS-R=ALSFRS-Rスコアにおけるベースラインから第48週までの変化(最小二乗平均)。マシチニブ(4.5)=4.5mg/kg/日のマシチニブ+リルゾールを投与した無作為化群1。Delta=治療アーム間の絶対差(マシチニブ-プラセボ)。[CI]=(1-α)信頼区間。mITT集団
「速い進行者」の下位集団(1ケ月あたり1.1ポイント以上)における治療アーム間では、有意差はみられなかった。これにより、マシチニブ(4.5mg/kg/日)が、速い進行者のALS患者では限定的に有効であり、ALS集団全体に適用可能ではないことが確認された(図10参照)。実際に、この患者の下位集団において疾患進行の遅延に向かう傾向はなかった。この知見は、マシチニブが、通常の進行者のALS患者(本明細書中上記に定義されている非侵攻性ALSおよび中度侵攻性ALSの下位集団を含む)にのみ有効であるとの予想外の結果を裏付けている。
Figure 2022037132000014
主要有効性解析で評価可能な患者。有意性の最終的な解析の値は、<0.05に設定。ΔALSFRS-R=ALSFRS-Rスコアにおけるベースラインから第48週までの変化(最小二乗平均)。マシチニブ(4.5)=4.5mg/kg/日のマシチニブ+リルゾールを投与した無作為化群1。Delta=治療アーム間の絶対差(マシチニブ-プラセボ)。[CI]=(1-α)信頼区間。mITT集団
重要なことに、試験集団全体(すなわち治療開始前のALSFRS-Rスコアの進行とは無関係に、通常の進行者および速い進行者の患者を含むコホート)において、治療アーム間で有意差(P=0.11)が見られなかったことが示された(表11)。よって、ALS集団全体の治療に基づくいずれの研究デザインもが、治療効果の立証の失敗をもたらしたと考えられる。この知見は、マシチニブが、ALS患者の限定された下位集団でのみ有効であり、かつ、応答した患者の同定が、新規の知見を提示し、従来技術からの教示により予測できなかったという予期しない結果を裏付けている。
Figure 2022037132000015
主要有効性解析で評価可能な患者。有意性の最終的な解析の値は、<0.05に設定。ΔALSFRS-R=ALSFRS-Rスコアにおけるベースラインから第48週までの変化(最小二乗平均)。マシチニブ(4.5)=4.5mg/kg/日のマシチニブ+リルゾールを投与した無作為化群1。Delta=治療アーム間の絶対差(マシチニブ-プラセボ)。[CI]=(1-α)信頼区間。mITT集団
ii)ALS下位集団間でマシチニブの治療効果を直接比較する、4.5mg/kg/日の無作為化した患者コホートにおけるベースラインから第48週までのALSFRS-Rの変化。
通常の進行者のALS患者のマシチニブでの治療は、ALSFRS-Rスコアの観点から、速い進行者(侵攻性ALS)患者を超える統計的に有意な強い治療効果を示した(P<0.001)。ここで、通常の進行者および速い進行者の間のALSFRS-Rスコアの減少の平均値は、それぞれ8.4ポイント対19.6ポイント(11.2ポイント差に対応)であった(表12)。よって、4.5mg/kg/日で投与したマシチニブは、ALSの「速い進行者」の下位集団と比較して、ALSの「通常の進行者」の下位集団においてALSFRS-Rスコアにより測定される疾患進行の強力な遅延を予想外にもたらした。よって、マシチニブは、「通常の進行者」の下位集団(本明細書中上記で定義されている非侵攻性ALSおよび中度侵攻性ALSの下位集団を含む)において非常に有効であり、速い進行者のALS患者においては有効性がないかまたは限定的に有効である。
Figure 2022037132000016
主要有効性解析で評価可能な患者。有意性の最終的な解析の値は、<0.05に設定。ΔALSFRS-R=ALSFRS-Rスコアにおけるベースラインから第48週までの変化(最小二乗平均)。Delta=治療アーム間の絶対差(通常の進行者-速い進行者)。[CI]=(1-α)信頼区間。mITT集団
同様に、統計的に有意な結果が、非侵攻性ALS患者(1ケ月あたり0.8ポイント未満)対侵攻性ALS患者(1ケ月あたり1.1ポイント以上)の比較(表13参照)、ならびに非侵攻性ALS患者(1ケ月あたり0.8ポイント未満)対中度侵攻性および侵攻性ALS患者(1ケ月あたり0.8ポイント以上)の比較(図14参照)で示された。
Figure 2022037132000017
Figure 2022037132000018
主要有効性解析で評価可能な患者。有意性の最終的な解析の値は、<0.05に設定。ΔALSFRS-R=ALSFRS-Rスコアにおけるベースラインから第48週までの変化(最小二乗平均)。Delta=治療アーム間の絶対差(通常の進行者-速い進行者)。[CI]=(1-α)信頼区間。mITT集団
中度侵攻性ALS患者(1ケ月あたり0.8≦ポイント<1.1)のマシチニブでの治療は、ALSFRS-Rスコアの観点から、侵攻性ALS患者(1ケ月あたり1.1ポイント以上)より優れた治療効果における強力な傾向を示した(表15参照)。
Figure 2022037132000019
主要有効性解析で評価可能な患者。有意性の最終的な解析の値は、<0.05に設定。ΔALSFRS-R=ALSFRS-Rスコアにおけるベースラインから第48週までの変化(最小二乗平均)。Delta=治療アーム間の絶対差(通常の進行者-速い進行者)。[CI]=(1-α)信頼区間。mITT集団
結論として、AB10015試験からの最終的な解析データは、以下を証明している:
マシチニブは、1ケ月あたり1.1ポイント未満の、治療開始前でのALSFRS-Rスコアの進行を有するALS患者(この下位集団は、非侵攻性または中度侵攻性ALSと集合的に呼ばれている)に有効な治療である。
マシチニブは、1ケ月あたり0.8ポイント未満の、治療開始前でのALSFRS-Rスコアの進行を有する患者(この下位集団は、非侵攻性ALSと集合的に呼ばれている)の治療に最も有効である。
マシチニブは、1ケ月あたり0.8ポイント以上1.1ポイント未満の、治療開始前でのALSFRS-Rスコアの進行を有する患者(この下位集団は、中度侵攻性ALSと集合的に呼ばれている)の治療に、非侵攻性の下位集団よりは弱い度合ではあるが、有効である。
マシチニブは、1ケ月あたり少なくとも1.1ポイントの、治療開始前でのALSFRS-Rスコアの進行を有するALS患者(この下位集団は、侵攻性ALSと集合的に呼ばれている)に有効な治療ではない。

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