JP2022030784A - 時計用部品および時計 - Google Patents

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Abstract

【課題】傷や打痕等の凹みを付きにくくすることができ、かつ、筋目等の加飾領域が見えにくくなってしまうことを抑制できる時計用部品を提供する。【解決手段】時計用部品は、ビッカース硬度が、320Hv以上、かつ、540Hv未満の金属材料で構成され、表面の少なくとも一部に加飾領域を有する基材100と、加飾領域を含む基材の表面の少なくとも一部に設けられる表面処理層110と、を備え、表面処理層110の厚さは、0.2μm以上、かつ、0.6μm未満である。【選択図】図2

Description

本発明は、時計用部品および時計に関する。
特許文献1には、外装部品の一部、または、全部を黒色部材にて構成した時計が開示されている。
特許文献1では、外装部品を構成する黒色部材を、基材と当該基材上に積層された黒色層とを含んで構成している。そして、黒色層を、窒化チタンアルミニウム、窒化チタンシリコン、または窒化チタンアルミニウムシリコンにて構成することで、高級感のある黒色と、高い生産性および再現性とが両立できるようにしている。
特開2019-35133号公報
しかしながら、特許文献1では、黒色層の厚さ0.6μm以上であるため、例えば、外装部品の表面に筋目加工を施した際に、筋目が見えにくくなってしまうことから、意匠性が低下してしまうといった問題がある。また、筋目を見えやすくするために、黒色層の厚さを小さくすることが考えられるが、そうすると、耐傷性が低下してしまうので、傷つきやすくなってしまうといった問題がある。
本開示の時計用部品は、ビッカース硬度が、320Hv以上、かつ、540Hv未満の金属材料で構成され、表面の少なくとも一部に加飾領域を有する基材と、前記加飾領域を含む前記基材の表面の少なくとも一部に設けられる表面処理層と、を備え、前記表面処理層の厚さは、0.2μm以上、かつ、0.6μm未満である。
本開示の時計は、上記時計用部品を備える。
第1実施形態の時計を示す正面図。 第1実施形態のケースの要部を示す断面図。 変形例のケースの要部を示す断面図。
[第1実施形態]
以下、本開示の第1実施形態の時計1を図面に基づいて説明する。
図1は、時計1を示す正面図である。本実施形態では、時計1は、ユーザーの手首に装着される腕時計として構成される。
図1に示すように、時計1は、金属製のケース10を備える。そして、ケース10の内部には、円板状の文字板2と、秒針3、分針4、時針5と、りゅうず6と、Aボタン7と、Bボタン8とを備える。また、ケース10には、バンド9が取り付けられている。
なお、ケース10は、本開示の時計用部品の一例である。
[ケース]
ケース10は、ケース本体11と、かん12とを備える。
ケース本体11は、前述した文字板2、秒針3、分針4、時針5等を内部に収納する。本実施形態では、ケース本体11の表面には鏡面加工が施されており、表面の算術平均高さSaは、40nmとされている。すなわち、ケース本体11の表面は、本開示の鏡面領域の一例である。
なお、本開示において、算術平均高さSaとは、ISO25178に規定される面粗さを示す指標であり、接触式粗さ計(接触式)や白色干渉計(非接触式)等にて測定される。
かん12は、ケース本体11の6時方向および12時方向にそれぞれ設けられている。そして、それぞれのかん12には、図示略のバネ棒等にて、バンド9が取り付けられている。
図2は、ケース10の要部を示す断面図である。なお、図2では、ケース10のかん12において、表面から深さ方向に切断した断面図を示している。
図2に示すように、ケース10のかん12は、基材100と、表面処理層110とを備えて構成される。
基材100は、フェライト相で構成された基部101と、オーステナイト化相で構成された表面層102と、フェライト相とオーステナイト化相とが混在する混在層103とを備え、オーステナイト化フェライト系ステンレス鋼により構成される。そして、本実施形態では、基材100を構成するオーステナイト化フェライト系ステンレス鋼は、ビッカース硬度が320Hv以上、かつ、540Hv未満となるように形成されている。
また、基材100の表面には、筋目加工が施されている。これにより、かん12において、意匠性を高くしている。なお、かん12の表面は、本開示の加飾領域の一例である。
[基部]
基部101は、質量%で、Cr:18~22%、Mo:1.3~2.8%、Nb:0.05~0.50%、Cu:0.1~0.8%、Ni:0.5%未満、Mn:0.8%未満、Si:0.5%未満、P:0.10%未満、S:0.05%未満、N:0.05%未満、C:0.05%未満を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼により構成される。
Crは、窒素吸収処理において、フェライト相への窒素の移動速度およびフェライト相における窒素の拡散速度を高める元素である。Crが18%未満であると、窒素の移動速度および拡散速度が低くなる。さらに、Crが18%未満であると、表面層102の耐食性が低下する。一方、Crが22%を超えると、硬質化して、材料としての加工性が悪化する。さらに、Crが22%を超えると、美的外観が損なわれる。そのため、Crの含有量は、18~22%であるのが好ましく、20~22%とするのがより好ましく、19.5~20.5%とするのがさらに好ましい。
Moは、窒素吸収処理において、フェライト相への窒素の移動速度およびフェライト相における窒素の拡散速度を高める元素である。Moが1.3%未満であると、窒素の移動速度および拡散速度が低くなる。さらに、Moが1.3%未満であると、材料としての耐食性が低下する。一方、Moが2.8%を超えると、硬質化して、材料としての加工性が悪化する。さらに、Moが2.8%を超えると、表面層102の構成組織の不均質化が顕著になり、美的外観が損なわれる。そのため、Moの含有量は、1.3~2.8%であるのが好ましく、1.8~2.8%であるのがより好ましく、2.25~2.35%とするのがさらに好ましい。
Nbは、窒素吸収処理において、フェライト相への窒素の移動速度およびフェライト相における窒素の拡散速度を高める元素である。Nbが0.05%未満であると、窒素の移動速度および拡散速度が低くなる。一方、Nbが0.50%を超えると、硬質化して、材料としての加工性が悪化する。さらに、析出部が生成され、美的外観が損なわれる。そのため、Nbの含有量は、0.05~0.50%であるのが好ましく、0.05~0.35%であるのがより好ましく、0.15~0.25%であるのがさらに好ましい。
Cuは、窒素吸収処理において、フェライト相での窒素の吸収を制御する元素である。Cuが0.1%未満であると、フェライト相における窒素含有量のばらつきが大きくなる。一方、Cuが0.8%を超えると、フェライト相への窒素の移動速度が低くなる。そのため、Cuの含有量は、0.1~0.8%であるのが好ましく、0.1~0.2%であるのがより好ましく、0.1~0.15%であるのがさらに好ましい。
Niは、窒素吸収処理において、フェライト相への窒素の移動およびフェライト相における窒素の拡散を阻害する元素である。Niが0.5%以上であると、窒素の移動速度および拡散速度が低下する。さらに、耐食性が悪化するとともに、金属アレルギーの発生等を防止するのが困難になる可能性がある。そのため、Niの含有量は、0.5%未満であるのが好ましく、0.2%未満であるのがより好ましく、0.1%未満であるのがさらに好ましい。
Mnは、窒素吸収処理において、フェライト相への窒素の移動およびフェライト相における窒素の拡散を阻害する元素である。Mnが0.8%以上であると、窒素の移動速度および拡散速度が低下する。そのため、Mnの含有量は、0.8%未満であるのが好ましく、0.5%未満であるのがより好ましく、0.1%未満であるのがさらに好ましい。
Siは、窒素吸収処理において、フェライト相への窒素の移動およびフェライト相における窒素の拡散を阻害する元素である。Siが0.5%以上であると、窒素の移動速度および拡散速度が低下する。そのため、Siの含有量は、0.5%未満であるのが好ましく、0.3%未満であるのがより好ましい。
Pは、窒素吸収処理において、フェライト相への窒素の移動およびフェライト相における窒素の拡散を阻害する元素である。Pが0.10%以上であると、窒素の移動速度および拡散速度が低下する。そのため、Pの含有量は、0.10%未満であるのが好ましく、0.03%未満であるのがより好ましい。
Sは、窒素吸収処理において、フェライト相への窒素の移動およびフェライト相における窒素の拡散を阻害する元素である。Sが0.05%以上であると、窒素の移動速度および拡散速度が低下する。そのため、Sの含有量は、0.05%未満であるのが好ましく、0.01%未満であるのがより好ましい。
Nは、窒素吸収処理において、フェライト相への窒素の移動およびフェライト相における窒素の拡散を阻害する元素である。Nが0.05%以上であると、窒素の移動速度および拡散速度が低下する。そのため、Nの含有量は、0.05%未満であるのが好ましく、0.01%未満であるのがより好ましい。
Cは、窒素吸収処理において、フェライト相への窒素の移動およびフェライト相における窒素の拡散を阻害する元素である。Cが0.05%以上であると、窒素の移動速度および拡散速度が低下する。そのため、Cの含有量は、0.05%未満であるのが好ましく、0.02%未満であるのがより好ましい。
[表面層]
表面層102は、基部101に窒素吸収処理を施すことにより形成されている。本実施形態では、表面層102における窒素の含有量は質量%で1.0~1.6%とされている。
[混在層]
混在層103は、表面層102の形成過程において、フェライト相で構成された基部101に進入する窒素の移動速度のばらつきによって生じる。すなわち、窒素の移動速度の速い箇所では、基部101の深い箇所まで窒素が進入してオーステナイト化され、窒素の移動速度の遅い箇所では、基部101の浅い箇所までしかオーステナイト化されないので、深さ方向に対してフェライト相とオーステナイト化相とが混在した混在層103が形成される。
[表面処理層]
表面処理層110は、基材100の表面に設けられている。本実施形態では、表面処理層110は、ケース本体11およびかん12のいずれにおいても、基材100に設けられている。すなわち、表面処理層110は、鏡面領域および加飾領域に設けられている。
また、本実施形態では、表面処理層110は、TiC、TiN、TiCNのいずれかで構成される。そして、表面処理層110の厚さは、0.2μm以上、かつ、0.6μm未満、好ましくは、0.2μm以上、かつ、0.4μm以下とされる。これにより、傷や打痕等の凹みを付きにくくすることができ、かつ、加飾領域において筋目加工が見えにくくなってしまうことを抑制できる。
次に、本開示の実施例について説明する。
[実施例1]
先ず、Cr:20%、Mo:2.1%、Nb:0.2%、Cu:0.1%、Ni:0.05%、Mn:0.5%、Si:0.3%、P:0.03%、S:0.01%、N:0.01%、C:0.02%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼からなる母材を製造した。
次に、当該母材に窒素吸収処理を施すことで、基部の表面にオーステナイト化された表面層が形成された金属材料から成る基材を得た。そして、当該基材の表面に筋目加工を施し、その後、表面処理を施すことで表面処理層を形成した。
窒素吸収処理は、以下に説明する方法により行った。
先ず、グラスファイバー等の断熱材で囲まれた処理室と、処理室内を加熱する加熱手段と、処理室内を減圧する減圧手段と、処理室内に窒素ガスを導入する窒素ガス導入手段とを有する窒素吸収処理装置を用意した。
次に、この窒素吸収処理装置の処理室内に前述の母材を設置し、その後、減圧手段により処理室内を2Paまで減圧した。
次に、減圧手段により処理室内の排気を行いつつ、窒素ガス導入手段により窒素ガスを導入し、処理室内の圧力を0.08~0.12MPaに保持した。この状態で、加熱手段により処理室内の温度を5℃/分の速度で1200℃まで上昇させ、その後、1200℃の温度を4時間保持させた。
最後に、当該母材を水冷により急冷した。これにより、オーステナイト化された表面層が形成され、基部と表面層との間に、オーステナイト化相とフェライト相とが混在する混在層が形成された金属材料から成る基材を得た。
なお、表1に示すように、当該基材のビッカース硬度は350Hvであった。
表面処理は、以下に説明する方法により行った。
先ず、上記の手順にて形成した基材を洗浄した。基材の洗浄としては、アルカリ電解脱脂を30秒間行い、次いで、アルカリ浸漬脱脂を30秒間行った。その後、中和を10秒間、純水洗浄を10秒間行った。
上記のようにして洗浄した基材に対して、イオンプレーティング装置を用いて、以下のようにしてTiNで構成される表面処理層を形成した。なお、表1に示すように、実施例1では、平均厚さが0.2μmとなるように、表面処理層を形成した。
先ず、イオンプレーティング装置の処理室内を予熱しながら、処理室内を3×10-3Paまで減圧した。
次に、クリーニング用アルゴンガスを処理室内に導入して、5分間のクリーニング処理を行った。クリーニング処理は、350Vの直流電圧を印加することにより行った。
次に、処理室内を2×10-3Paまで減圧した後、アセチレンガスを導入し、処理室内における雰囲気圧を4.0×10-3Paとした。そして、アセチレンガスを導入し続けた状態で、ターゲットとしてTiを用い、所定時間気相成膜を行った。
これにより、TiNで構成され、平均厚さが0.2μmの表面処理層が形成した。
[実施例2、3]
表1に示すように、上記実施例1と同様の金属材料から成る基材を製造した。そして、当該基材の表面に筋目加工を施し、その後、上記の表面処理と同様の手順にて、TiNで構成され、平均厚さが0.4μm、0.5μmの表面処理層を形成した。
[実施例4~6]
表1に示すように、上記実施例1と同様のフェライト系ステンレス鋼からなる母材を製造し、当該母材に窒素吸収処理を施すことで、ビッカース硬度が380Hvの金属材料から成る基材を製造した。そして、当該基材の表面に筋目加工を施し、その後、上記の表面処理と同様の手順にて、TiNで構成され、平均厚さが0.2μm、0.4μm、0.5μmの表面処理層を形成した。
[実施例7、8]
表1に示すように、ビッカース硬度が320Hvの金属材料から成る基材を準備した。そして、当該基材の表面に筋目加工を施し、その後、上記の表面処理と同様の手順にて、TiNで構成され、平均厚さが0.2μm、0.5μmの表面処理層を形成した。
[比較例1~6]
表1に示すように、上記実施例1と同様のフェライト系ステンレス鋼からなる母材を製造し、当該母材に窒素吸収処理を施すことで、ビッカース硬度が350Hv、380Hvの金属材料から成る基材を製造した。そして、当該基材の表面に筋目加工を施し、その後、上記の表面処理と同様の手順にて、TiNで構成され、平均厚さが0.1μm、0.8μm、1.0μmの表面処理層を形成した。
[比較例7~12]
表1に示すように、ビッカース硬度が180Hv、200Hvの金属材料から成る基材を準備した。そして、当該基材の表面に筋目加工を施し、その後、上記の表面処理と同様の手順にて、TiNで構成され、平均厚さが0.2μm、0.6μm、1.0μmの表面処理層を形成した。
[比較例13]
表1に示すように、ビッカース硬度が320Hvの金属材料から成る基材を準備した。そして、当該基材の表面に筋目加工を施し、その後、上記の表面処理と同様の手順にて、TiNで構成され、平均厚さが0.6μmの表面処理層を形成した。
[比較例14~16]
表1に示すように、ビッカース硬度が540Hvの金属材料から成る基材を準備した。そして、当該基材の表面に筋目加工を施し、その後、上記の表面処理と同様の手順にて、TiNで構成され、平均厚さが0.2μm、0.6μm、1.0μmの表面処理層を形成した。
Figure 2022030784000002
[筋目加工性評価試験]
前記各実施例および各比較例で製造した金属材料から成る基材について、表面に筋目加工を施す際の加工性について、以下の基準にて評価した。
-基準-
A:筋目加工の加工性優良。
B:筋目加工の加工性良い。
C:筋目加工の加工性不良。
[筋目の外観評価]
前記各実施例および各比較例で製造した金属材料から成る基材について、筋目加工後に表面処理層を形成した状態を目視にて観察し、筋目の外観を以下の基準にて評価した。
-基準-
A:筋目の外観が優良。
B:筋目の外観が良い。
C:筋目がやや薄く感じる。
D:筋目が薄くなっている。
[耐擦傷性評価]
前記各実施例および各比較例で製造した金属材料から成る基材について、以下に示す手順にて耐擦傷性を評価した。
先ず、ステンレス鋼製のブラシを、表面処理層が形成された側の表面上に押し付け、50往復摺動させた。この際の押し付け荷重は、0.2kgfとした。
そして、基材の表面を目視により観察し、表面の外観を以下の基準にて評価した。
A:表面処理層の表面に、傷の発生が全く認められない。
B:表面処理層の表面に、傷の発生がほとんど認められない。
C:表面処理層の表面に、傷の発生がわずかに認められる。
D:表面処理層の表面に、傷の発生が顕著に認められる。
[評価結果:筋目加工性評価]
表2に示すように、本開示の実施例1~8では、筋目加工性の評価結果が「A」となっている。これに対し、基材のビッカース硬度が540Hvであった比較例14~16では、筋目加工性が「C」となっていた。このことから、ビッカース硬度540Hv以上の金属材料から成る基材では、筋目加工性が悪くなることが示唆された。
[評価結果:筋目の外観評価]
表2に示すように、本開示の実施例1~8では、筋目の外観評価の評価結果が「A」となっている。特に、表面処理層の平均厚さが0.2μm、0.4μmの実施例1、2、4、6では、筋目の外観が顕著に優れていた。これに対し、比較例2、5、8、11では、筋目の外観評価の評価結果が「B」であり、比較例3、6、9、12~15では、筋目の外観評価の評価結果が「C」でたあり、比較例16では、筋目の外観評価の評価結果が「D」であった。このことから、表面処理層の平均厚さを、0.6μm未満、好ましくは、0.4μm未満とした場合、筋目の外観が良くなることが示唆された。
[評価結果:耐擦傷性評価]
表2に示すように、本開示の実施例1~8では、耐擦傷性評価の評価結果が「A」となっている。これに対し、比較例13、14では、耐擦傷性評価の評価結果が「B」であり、比較例1、4、11、12では、耐擦傷性評価の評価結果が「C」であり、比較例7~10では、耐擦傷性評価の評価結果が「D」であった。このことから、ビッカース硬度が320Hv以上の基材に対して、表面処理層の平均厚さを0.2μm以上とした場合、耐擦傷性が良くなることが示唆された。
上記より、ビッカース硬度が、320Hv以上、かつ、540Hv未満の金属材料で構成される基材に対して、TiNで構成され、平均厚さが0.2μm以上、かつ、0.6μm未満の表面処理層を形成することで、傷や打痕等の凹みを付きにくくすることができ、かつ、筋目加工が見えにくくなってしまうことを抑制できることが示唆された。
Figure 2022030784000003
[加飾領域の算術平均高さSaに対する表面処理層の厚さの比]
前述したように、本開示では、平均厚さが0.2μm以上、かつ、0.6μm未満の表面処理層を形成することで、基材に加工された筋目が見えにくくなってしまうことを抑制できることが示唆された。
また、筋目の意匠性および加工性を考慮すると、算術平均高さSaとして、0.97μm以上、かつ、5.17μm以下となるように、筋目加工を施すことが好ましい。なお、本開示では、算術平均高さSaは、ISO 25178-2(2012)に準拠する方法で測定されたものである。
そうすると、例えば、算術平均高さSaとして0.97μmの筋目加工を施した場合において、平均厚さが0.6μmの表面処理層を形成した場合、加飾領域の算術平均高さSaに対する表面処理層の厚さの比は0.62程度となる。つまり、適正な範囲内において、最も算術平均高さSaが小さくなるように筋目加工を施し、かつ、最も厚くなるように表面処理層を形成した場合、加飾領域の算術平均高さSaに対する表面処理層の厚さの比は0.62程度となる。
一方、例えば、算術平均高さSaとして5.17μmの筋目加工を施した場合において、平均厚さが0.2μmの表面処理層を形成した場合、加飾領域の算術平均高さSaに対する表面処理層の厚さの比は0.04程度となる。つまり、適正な範囲内において、最も算術平均高さSaが大きくなるように筋目加工を施し、かつ、最も薄くなるように表面処理層を形成した場合、加飾領域の算術平均高さSaに対する表面処理層の厚さの比は0.04程度となる。
このことから、本開示では、加飾領域の算術平均高さSaに対する、前記表面処理層の厚さの比が、0.1以上、かつ、0.6以下であることが好ましいことが示唆された。
[変形例]
なお、本開示は前述の実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本開示に含まれるものである。
図3は、変形例のケース10Aのかん12Aの要部を示す断面図である。
図3に示すように、変形例のケース10Aは、基材100Aの表面と表面処理層110Aとの間に中間層115Aを有する。中間層115Aとしては特に限定されないが、例えば、TiC、TiN、TiCN等により構成される。このように構成することで、基材100Aと表面処理層110Aとの密着性をより優れたものにすることができ、基材100Aの表面から表面処理層110Aが剥離してしまうことを抑制できる。
前述した実施形態では、かん12における基材100の表面、つまり、加飾領域に筋目加工が施されていたが、これに限定されない。例えば、加飾領域に放射状の模様が施されていてもよい。
前述した実施形態では、本開示の時計用部品はケース10として構成されていたが、これに限定されない。例えば、本開示の時計用部品は、ベゼル、裏蓋、バンド、りゅうず、ボタン等として構成されていてもよい。
[本開示のまとめ]
本開示の時計用部品は、ビッカース硬度が、320Hv以上、かつ、540Hv未満の金属材料で構成され、表面の少なくとも一部に加飾領域を有する基材と、前記加飾領域を含む前記基材の表面の少なくとも一部に設けられる表面処理層と、を備え、前記表面処理層の厚さは、0.2μm以上、かつ、0.6μm未満である。
これにより、傷や打痕等の凹みを付きにくくすることができ、かつ、筋目等の加飾領域が見えにくくなってしまうことを抑制できる。
本開示の時計用部品において、前記表面処理層の厚さは、0.2μm以上、かつ、0.4μm以下であってもよい。
これにより、筋目等の加飾領域が見えにくくなってしまうことをより抑制できる。
本開示の時計用部品において、前記加飾領域の算術平均高さSaに対する、前記表面処理層の厚さの比が、0.1以上、かつ、0.6以下であってもよい。
本開示の時計用部品において、前記表面処理層は、窒化膜、炭化膜、および、炭窒化膜のいずれかを備えて構成されてもよい。
本開示の時計用部品において、前記基材の表面と前記表面処理層との間に中間層を有していてもよい。
これにより、基材と表面処理層との密着性をより優れたものにすることができ、基材の表面から表面処理層が剥離してしまうことを抑制できる。
本開示の時計用部品において、前記基材の表面の少なくとも一部に、前記加飾領域とは別に鏡面領域を有し、前記鏡面領域の算術平均高さSaは、40nm以下であってもよい。
これにより、時計用部品の意匠性をより高くすることができる。
本開示の時計用部品において、前記加飾領域には筋目加工が施されていてもよい。
本開示の時計用部品において、前記基材は、フェライト相で構成された基部と、オーステナイト化相で構成された表面層と、前記基部と前記表面層との間に形成され前記フェライト相と前記オーステナイト化相とが混在する混在層と、を備えるオーステナイト化フェライト系ステンレス鋼で構成されていてもよい。
これにより、窒素吸収処理において、フェライト相への窒素の移動速度およびフェライト相における窒素の拡散速度を高めることができる。
本開示の時計用部品において、前記表面層の窒素の含有量は、質量%で1.0~1.6%であってもよい。
これにより、表面層における耐食性能を向上することができる。
本開示の時計用部品を備えることを特徴とする時計。
1…時計、2…文字板、3…秒針、4…分針、5…時針、6…りゅうず、7…Aボタン、8…Bボタン、9…バンド、10,10A…ケース、11…ケース本体(鏡面領域)、12,12A…かん(加飾領域)、100,100A…基材、101…基部、102…表面層、103…混在層、110,110A…表面処理層、115A…中間層。

Claims (10)

  1. ビッカース硬度が、320Hv以上、かつ、540Hv未満の金属材料で構成され、表面の少なくとも一部に加飾領域を有する基材と、
    前記加飾領域を含む前記基材の表面の少なくとも一部に設けられる表面処理層と、を備え、
    前記表面処理層の厚さは、0.2μm以上、かつ、0.6μm未満である
    ことを特徴とする時計用部品。
  2. 請求項1に記載の時計用部品において、
    前記表面処理層の厚さは、0.2μm以上、かつ、0.4μm以下である
    ことを特徴とする時計用部品。
  3. 請求項1または請求項2に記載の時計用部品において、
    前記加飾領域の算術平均高さSaに対する、前記表面処理層の厚さの比が、0.1以上、かつ、0.6以下である
    ことを特徴とする時計用部品。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の時計用部品において、
    前記表面処理層は、窒化膜、炭化膜、および、炭窒化膜のいずれかを備えて構成される
    ことを特徴とする時計用部品。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の時計用部品において、
    前記基材の表面と前記表面処理層との間に中間層を有する
    ことを特徴とする時計用部品。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の時計用部品において、
    前記基材の表面の少なくとも一部に、前記加飾領域とは別に鏡面領域を有し、
    前記鏡面領域の算術平均高さSaは、40nm以下である
    ことを特徴とする時計用部品。
  7. 請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の時計用部品において、
    前記加飾領域には筋目加工が施されている
    ことを特徴とする時計用部品。
  8. 請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の時計用部品において、
    前記基材は、フェライト相で構成された基部と、オーステナイト化相で構成された表面層と、前記基部と前記表面層との間に形成され前記フェライト相と前記オーステナイト化相とが混在する混在層と、を備えるオーステナイト化フェライト系ステンレス鋼で構成される
    ことを特徴とする時計用部品。
  9. 請求項8に記載の時計用部品において、
    前記表面層の窒素の含有量は、質量%で1.0~1.6%である
    ことを特徴とする時計用部品。
  10. 請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の時計用部品を備えることを特徴とする時計。
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