JP2022029080A - 水中油型乳化物 - Google Patents
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Abstract
【課題】乳風味を維持しつつ、乳脂肪および乳タンパク質由来の加熱劣化臭が抑制された水中油型乳化物を提供する。【解決手段】ヨウ素価が33以下であり、パーム系油脂とラウリン系油脂とのエステル交換油脂を、全油脂中に0.1質量%以上2.0質量%未満含有し、かつ、乳脂肪を全油脂中に1.5質量%以上60質量%以下含有することを特徴とする水中油型乳化物。【選択図】なし
Description
本発明は、水中油型乳化物に関する。
水中油型乳化物において、風味を良好にするために乳製品または乳脂肪を配合する技術が従来から提案されている。しかし、例えば生産時における釜の加熱または殺菌時の加熱により、乳製品や乳脂肪が配合された水中油型乳化物から乳脂肪や乳タンパク質由来の加熱劣化臭が発生することが問題となっていた。加熱劣化臭の発生は、乳脂肪の酸化、分解により生じる、アルデヒド、ケトン、アルコールおよびギ酸をはじめとする有機酸、または、乳タンパク質中のポリペプチド鎖中の‐SH基を有するアミノ酸から生じる硫化化合物などに起因すると考えられている。
以上の通り、水中油型乳化物における乳脂肪や乳タンパク質由来の加熱劣化臭を抑制することが所望されている。そこで、加熱劣化臭を抑制する各種の技術が提案されている。例えば、製品中の溶存酸素を窒素ガスと置換し、加熱殺菌工程においてジメチルスルフィドやジメチルジスルフィドなどの生成を抑制することで、加熱劣化臭を抑制する方法がある。しかし、以上の方法では、特殊な窒素ガス置換装置等を必要とし、加熱劣化臭を抑制する設備が複雑化する。
また、特許文献1には、乳または乳製品にα-グリコシルトレハロースを含有させることで、当該乳または乳製品における乳加熱臭を抑制する方法が開示されている。しかし、乳脂肪を含有する水中油型乳化物における乳脂肪や乳タンパク質由来の加熱劣化臭を抑制することについては開示されていない。本発明の発明者らは、水中油型乳化物の油脂中に、乳脂肪、および、パーム系油脂とラウリン系油脂とを原料とする所定のエステル交換油を添加することで、加熱劣化臭を抑制するに至った。
なお、特許文献2および特許文献3には、パーム系油脂とラウリン系油脂とのエステル交換油とを含む水中油型乳化物が開示されている。しかし、特許文献2は、乳脂肪のコクおよび後味を改善するために想起された技術であり、特許文献3は、乳化安定性、ホイップ時間および保形を改善するために想起された技術である。以上の通り、特許文献2および特許文献3には、乳脂肪や乳タンパク質由来の加熱劣化臭の抑制については示唆されていない。
そればかりか、特許文献2の技術では、水中油型乳化物に乳脂とともに配合されるエステル交換油脂のヨウ素価が高いため、乳脂肪や乳タンパク質由来の加熱劣化臭を抑制することができない。同様に、特許文献3の技術においても、水中油型乳化物に乳脂とともに配合されるエステル交換油脂の配合量が多いため、加熱劣化臭を抑制することができない。
なお、乳脂肪の配合量が低ければ乳脂肪由来の加熱劣化臭を抑制することは可能であるが、乳風味が低下するという問題がある。
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、乳風味を維持しつつ、乳脂肪や乳タンパク質由来の加熱劣化臭が抑制された水中油型乳化物を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明の水中油型乳化物は、ヨウ素価が33以下であり、パーム系油脂とラウリン系油脂とのエステル交換油脂を、全油脂中に0.1質量%以上2.0質量%未満含有し、かつ、乳脂肪を全油脂中に1.5質量%以上60質量%以下含有する、ことを特徴とする。
本発明によれば、乳風味を維持しつつ、乳脂肪や乳タンパク質由来の加熱劣化臭が抑制された水中油型乳化物を提供することが可能である。
<水中油型乳化物>
本発明に係る水中油型乳化物(A)は、各種の食品の材料として利用される。水中油型乳化物(A)は、例えば起泡性を有する起泡性水中油型乳化物である。水中油型乳化物(A)を起泡させることでホイップドクリームが作製できる。
本発明に係る水中油型乳化物(A)は、各種の食品の材料として利用される。水中油型乳化物(A)は、例えば起泡性を有する起泡性水中油型乳化物である。水中油型乳化物(A)を起泡させることでホイップドクリームが作製できる。
具体的には、水中油型乳化物(A)は、油脂(a)を含む。油脂(a)は、エステル交換油脂(a1)と乳脂肪(a2)と油脂(a3)とを含む。
エステル交換油脂(a1)は、パーム系油脂(a11)とラウリン系油脂(a12)とをエステル交換することで製造される油脂である。
パーム系油脂(a11)には、全構成脂肪酸中の炭素数16以上の脂肪酸含有量が35質量%以上の油脂が使用される。具体的には、パーム系油脂(a11)としては、パーム油、パーム分別油、これらの硬化油などが使用され、これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。パーム分別油としては、パーム分別硬質油、パーム分別軟質油、パーム分別中融点油などを用いることができる。硬化油の場合、水素添加量によってトランス脂肪酸の含有量が増加する虞があるため、硬化油を用いる場合には微水素添加したものか、低温硬化したもの、または完全水素添加した極度硬化油が好適で、極度硬化油が特に好適である。
ラウリン系油脂(a12)には、例えば、全構成脂肪酸中のラウリン酸の含有量が30質量%以上であり、好適には40質量%以上である油脂が使用される。ラウリン系油脂(a12)には、パーム核油、ヤシ油、これらの分別油、または、硬化油などが使用されこれらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。硬化油の場合、水素添加量によってトランス脂肪酸の含有量が増加する虞があるため、硬化油を用いる場合には微水素添加したものか、低温硬化したもの、または完全水素添加した極度硬化油が好適で、極度硬化油が特に好適である。
なお、パーム系油脂(a11)とラウリン系油脂(a12)の割合を超えない範囲でその他の油脂(a13)を混合してエステル交換油脂(a1)を得ることもできる。その他の油脂(a13)は食用に適するものであれば特に制限はないが、例えばシア脂、サル脂、マンゴー油、イリッペ脂、カカオ脂、豚脂(ラード)、牛脂、菜種油、大豆油、コーン油、綿実油、ヒマワリ油、米油、サフラワー油、オリーブ油、ゴマ油、およびこれらの分別油、硬化油、エステル交換油が挙げられる。その他の油脂(a13)の割合はエステル交換油脂(a1)のうち0~33質量%が好適で、0~20質量%がより好適で、0~10質量%がさらに好適で、配合しないことが最も好適である。パーム系油脂(a11)とラウリン系油脂(a12)およびその他の油脂(a13)とのエステル交換油脂(a1)を使用することで、水中油型乳化物(A)の乳化安定性および起泡性が良好になる。
エステル交換油脂(a1)はパーム系油脂(a11)とラウリン系油脂(a12)のほかにその他の油脂(a13)を含むことができるが、乳タンパク質の加熱劣化臭が良好になるという観点から、エステル交換油脂(a1)はパーム系油脂(a11)とラウリン系油脂(a12)のみの組み合わせであることが好ましい。
エステル交換油脂(a1)のヨウ素価は、33以下であり、好適には2~30であり、さらに好適には10~30であり、最も好適には15~30である。エステル交換油脂(a1)におけるヨウ素価が33以下であると、水中油型乳化物における乳化安定性や起泡性が良好になる。
なお、エステル交換油脂(a1)は、1種のエステル交換油脂を単独で使用してもよいが、2種以上のエステル交換油脂を混合して使用してもよい。例えば、ヨウ素価が相異なる2種以上のエステル交換油脂を混合してエステル交換油脂(a1)として使用できる。この場合、エステル交換油脂(a1)のヨウ素価が33以下になるように2種以上のエステル交換油脂を混合する。
パーム系油脂(a11)とラウリン系油脂(a12)とその他の油脂(a13)とを任意の触媒を利用してエステル交換反応することで、エステル交換油脂(a1)が製造される。エステル交換反応における触媒には、例えば化学触媒または酵素触媒が使用される。以下にエステル交換油製造の一例を示すが、本発明に有効なエステル交換油脂(a1)の製造方法はこれに限定されるものではない。
化学触媒は、例えばナトリウムメチラートや水酸化ナトリウムである。酵素触媒は、例えばリパーゼである。リパーゼには、例えばアスペルギルス属またはアルカリゲネス属等由来の各種のリパーゼが挙げられる。なお、イオン交換樹脂、ケイ藻土またはセラミック等の担体上に固定化された形態、または、粉末の形態のリパーゼが使用される。また、位置選択性のあるリパーゼ、および、位置選択性のないリパーゼのいずれも使用できるが、位置選択性のないリパーゼを用いることが好適である。
エステル交換反応に化学触媒を用いる場合、油脂の質量に対して0.05質量%~0.15質量%の化学触媒を添加する。次に、減圧下で80℃~120℃に加熱し、0.5時間~1.0時間攪拌することでエステル交換反応を行う。そして、ラウリン系油脂(a12)とパーム系油脂(a11)とのエステル交換反応が平衡状態になると、エステル交換油脂(a1)を得ることができる。
一方で、エステル交換反応に酵素触媒を用いる場合、油脂の質量に対して0.01質量%~10質量%の酵素触媒を添加する。そして、40℃~80℃でエステル交換反応を行い、当該エステル交換反応が平衡状態となると、エステル交換油脂(a1)を得ることができる。エステル交換反応は、カラムによる連続反応またはバッチ反応等の公知の任意の方法により実行される。なお、エステル交換反応の後に、必要に応じて脱色、脱臭などの精製を行ってもよい。
なお、エステル交換油脂(a1)には、2個の飽和脂肪酸(S)と1個の不飽和脂肪酸(U)とを構成脂肪酸として含む2飽和トリグリセリドが含有される。エステル交換触媒として化学触媒または位置選択性のない酵素触媒を用いて製造されるエステル交換油脂(a1)中においては、2飽和トリグリセリドのうち対称型トリグリセリド(SUS)と非対称型トリグリセリド(SSU)との質量比(SUS/SSU)が0.45~0.55の範囲内となる。
エステル交換油脂(a1)は、例えば、油脂(a)中に2質量%未満含有され、好適には0.1質量%以上2質量%未満含有され、さらに好適には0.3質量%以上2質量%未満含有され、さらに好適には0.5質量%以上2質量%未満含有され、最も好適には1質量%以上1.8質量%以内である。
乳脂肪(a2)は、油脂(a)中に1.5質量%~60質量%(1.5質量%以上60質量%以下)含有され、好適には3質量%~50質量%含有され、さらに好適には5質量%~35質量%含有され、さらに好適には12質量%~28質量%含有され、最も好適には、16質量%~28質量%含有される。また、乳脂肪(a2)は、乳脂肪を分別した液状部または硬質部であってもよい。
乳脂肪(a2)が油脂(a)中に2質量%以上含有される水中油型乳化物(A)によれば、水中油型乳化物(A)における乳風味がより良好になる。乳脂肪(a2)に対するエステル交換油脂(a1)の質量比(a1)/(a2)は、例えば、0.003~0.8であり、好適には0.02~0.5であり、さらに好適には0.05~0.2であり、さらに好適には0.05~0.1であり、最も好適には0.06~0.07である。
水中油型乳化物(A)には用途に応じて任意の油脂(a3)が使用される。例えば、パーム系油脂(a31)またはラウリン系油脂(a32)などが油脂(a3)として使用される。なお、油脂(a3)が2種以上の油脂を含んでもよい。
パーム系油脂(a31)には、全構成脂肪酸中の炭素数16以上の脂肪酸含有35質量%以上の油脂、例えば、パーム油、パーム分別油、これらの硬化油などが挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。パーム分別油としては、硬質部、軟質部、中融点部などが挙げられる。パーム系油脂としては、例えば、パーム油、エステル交換パーム分別軟質油またはパーム分別中融点油が使用され、好適にはパーム分別中融点油が使用される。なお、パーム系油脂(a31)が2種以上のパーム系油脂を含んでもよい。パーム系油脂(a31)は、例えば、油脂(a)中に25質量%~90質量%含有され、好適には35質量%~70質量%含有される。
ラウリン系油脂(a32)には、全構成脂肪酸中のラウリン酸の含有量が30質量%以上であり、好適には40質量%以上である油脂が使用される。ラウリン系油脂(a12)には、パーム核油、ヤシ油、これらの分別油、または、硬化油などが使用されこれらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。ラウリン系油脂としては例えば、エステル交換パーム核極度硬化油、パーム核極度硬化油、パーム核油、ヤシ油またはヤシ極度硬化油などが使用され、好適にはパーム核極度硬化油またはヤシ極度硬化油が使用される。なお、ラウリン系油脂(a32)が2種以上のラウリン系油脂を含んでもよい。ラウリン系油脂(a32)は、例えば、油脂(a)中に5質量%~20質量%含有される。
ラウリン系油脂(a32)に対するパーム系油脂(a31)の質量比(a31)/(a32)は、例えば、1~9であり、好適には2~8であり、さらに好適には5~7であり、最も好適には6~7である。
ただし、油脂(a3)に、パーム系油脂(a31)およびラウリン系油脂(a32)以外の油脂を使用してもよい。例えば、シア脂、サル脂、マンゴー油、イリッペ脂、カカオ脂、豚脂(ラード)、牛脂などがあげられ、さらに菜種油、大豆油、コーン油、綿実油、ヒマワリ油、米油、サフラワー油、オリーブ油、ゴマ油などの液状油を用いることもできる。液状油を用いる場合、液状油の含有量は、油脂(a)の質量に対して0質量%~25質量%が好適で、0質量%~15質量%がより好適で、0質量%~10質量%がさらに好適である。
エステル交換油脂(a1)において、エステル交換油脂(a1)に含まれるラウリン酸の含有量は、例えば10質量%~40質量%であり、好適には10質量%~30質量%であり、さらに好適には10質量%~18質量%である。エステル交換油脂(a1)のラウリン酸量がこの範囲であると、トリグリセリド中の短鎖脂肪酸(炭素数12)と長鎖脂肪酸(炭素数16、18)のバランスにより、好適に加熱劣化臭を抑制することができる。
また、油脂(a)における全構成脂肪酸中のラウリン酸の含有量は、例えば、4質量%~10質量%であり、好適には5質量%~8質量%であり、さらに好適には5.5質量%~6質量%未満である。
ラウリン酸の含有量は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.4.2.2-2013 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)」で測定することができる。
本発明の水中油型乳化物(A)は、油脂(a)の構成脂肪酸としてトランス脂肪酸を含んでもよく、含まなくてもよいが、トランス脂肪酸の摂取量が多くなると、血液中におけるLDLコレステロール量が増加しうる。よって、これを抑制しやすい点から、本発明においては油脂(a)の構成脂肪酸中のトランス脂肪酸の含有量は、油脂(a)の構成脂肪酸全体の質量に対して、10質量%未満であることが好適で、5質量%未満であることがより好適で、3質量%未満であることが最も好適である。油脂(a)におけるトランス脂肪酸の含有量は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.4.4.3-20-13トランス脂肪酸量(キャピラリーガスクロマトグラフ法)」で測定することができる。なお、トランス脂肪酸の含有量は、添加量既知の内部標準物質(へプタデカン酸)との面積比により算出できる。本発明の水中油型乳化物(A)は、トランス脂肪酸の含有量を上記の範囲とするために部分硬化油を含有しないことが好適である。
水中油型乳化物(A)は、油脂(a)に加えて、用途に応じて任意の成分(b)を含有してもよい。成分(b)は、例えば、水、乳化剤、pH調整剤、糖質、増粘多糖類、または、乳製品(b1)である。なお、フレーバー、着色成分または酸化防止剤などを成分(b)として水中油型乳化物(A)に配合してもよい。
成分(b)として配合される乳化剤は、例えば、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、または、ステアロイル乳酸カルシウムなどである。なお、2種以上の乳化剤を成分(b)として使用してもよい。
なお、水中油型乳化物(A)を起泡させる場合、起泡前の乳化安定性と、起泡時に迅速にクリーム中の脂肪を凝集させて部分的に乳化状態を破壊させ、かつ解乳化させた状態を長時間維持させる観点から、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリンなどのリン脂質が主成分であるレシチンに、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルなどを組み合わせて使用すること好適である。
成分(b)として配合されるpH調整剤は、例えば、リン酸塩、メタリン酸塩、ポリリン酸塩、ピロリン酸塩などの無機塩類、クエン酸塩、酒石酸塩などの有機酸塩類などである。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
成分(b)として配合される糖質は、例えば、単糖(グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノースなど)、二糖類(ラクトース(乳糖)、スクロース、マルトース、トレハロースなど)、オリゴ糖、糖アルコールなどの甘味料、デンプン、デンプン分解物、デキストリン、イヌリン、多糖類、難消化性糖質(難消化性デンプン、難消化性デキストリン等)などである。また、糖質以外の甘味料としてステビア、アスパルテームなどを用いることもできる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
成分(b)として配合される増粘多糖類は、例えば、寒天、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、グァーガム、グルコマンナン、ジェランガム、大豆多糖類、タラガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、タマリンドシードガム、サクシノグリカン、ペクチン、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、アルギン酸プロピレングリコールエステル(PGA)などである。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
成分(b)として配合される乳製品(b1)は、例えば、バター、分別乳脂肪(液状部、硬質部)、調整脂、生クリーム、脱脂乳、チーズ(ナチュラルチーズ、プロセスチーズまたはホエイチーズなど)、発酵乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、加糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖脱脂れん乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、蛋白濃縮ホエイパウダー、ホエイ蛋白コンセントレート(WPC)、ホエイ蛋白アイソレート(WPI)、バターミルクパウダー、トータルミルクプロテイン、カゼインナトリウム、または、カゼインカリウムである。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、水中油型乳化物(A)は乳脂のコクを得る観点からは、乳製品(b1)としてバター、調整脂、生クリーム、チーズ、濃縮乳、全脂粉乳、クリームパウダー、または、バターミルクパウダーを含有することが好適である。
ここで、成分(b)として乳製品(b1)が配合される場合、当該乳製品(b1)中の乳脂肪は油脂(a)における乳脂肪(a2)として合算される。すなわち、本願における乳脂肪(a2)は、乳脂肪そのものとして油脂(a)に配合されるものと、水中油型乳化物(A)に乳製品(b1)として配合される乳脂肪との双方を含む。以上の説明から理解される通り、水中油型乳化物(A)の油脂(a)には、水中油型乳化物(A)に含有されるその他の成分(b)中の油脂(典型的には乳製品(b1)の乳脂肪)も含まれる。言い換えれば、油脂(a)は水中油型乳化物(A)における全油脂に相当する。
なお、乳製品(b1)中の乳脂肪の含有量は、FDB%(percentage Fat in Dry Matter)を用いて算出される。FDB%は、CODEXに定める乳製品の脂肪含量を表す値であり、次式で表される。
FDB%={(乳脂肪分量)/(全重量-水分量)}×100
FDB%={(乳脂肪分量)/(全重量-水分量)}×100
水中油型乳化物(A)における油脂(a)の含有量は、乳化安定性および起泡性を良好にする観点から、例えば20質量%~50質量%が好適であり、30質量%~45質量%がより好適である。なお、油脂(a)の含有量を以上の範囲にすることで、水中油型乳化物(A)をホイップドクリームにした場合、機械耐性、保形性および保水性も良好になる。
ここで、従来から提案されている、エステル交換油脂と乳脂肪とを含む水中油型乳化物(例えば特許文献2または特許文献3)は、水中油型乳化物を製造する工程において乳脂肪に起因する加熱劣化臭の発生が問題となる。それに対して、本発明の水中油型乳化物(A)によれば、エステル交換油脂(a1)を油脂(a)中に0.1質量%以上2.0質量%未満含有し、かつ、乳脂肪(a2)を油脂(a)中に1.5質量%以上60質量%以下含有することで、乳風味を維持しつつ、乳脂肪由来の加熱劣化臭を抑制することができる。
さらには、本発明の水中油型乳化物(A)によれば、成分(b)として乳製品(b1)が配合される場合において、乳製品(b1)中に含まれる乳タンパク質に起因する加熱劣化臭も抑制することが可能になる。
<水中油型乳化物の製造方法>
以上に説明した水中油型乳化物(A)は、例えば、以下の工程1-工程3により製造することができる。ただし、本発明に有効な水中油型乳化物(A)の製造方法はこれに限定されるものではない。
以上に説明した水中油型乳化物(A)は、例えば、以下の工程1-工程3により製造することができる。ただし、本発明に有効な水中油型乳化物(A)の製造方法はこれに限定されるものではない。
(工程1)
油脂(a)および各種の成分(b)を混合し、乳化することで乳化物を作製する。上述した通り、油脂(a)は、エステル交換油脂(a1)と乳脂肪(a2)と油脂(a3)とを含み、成分(b)は、水、乳化剤または乳製品等である。乳化は、公知の任意の方法により行われる。例えばホモミキサーが乳化に使用される。具体的には、乳化は、例えば60℃~70℃に維持した状態で、水相に油相を混合することで行う。油相については油脂(a)が完全に溶解する温度に加温し、水相については混合後の油相が温度低下を起こさない温度に加温した状態で、水相に油相を混合する。なお、通常は、親油性の乳化剤は油相に添加し、親水性の乳化剤は水相に添加する。また、親水性の乳製品または塩類などは、予め水に溶解して用いる。
油脂(a)および各種の成分(b)を混合し、乳化することで乳化物を作製する。上述した通り、油脂(a)は、エステル交換油脂(a1)と乳脂肪(a2)と油脂(a3)とを含み、成分(b)は、水、乳化剤または乳製品等である。乳化は、公知の任意の方法により行われる。例えばホモミキサーが乳化に使用される。具体的には、乳化は、例えば60℃~70℃に維持した状態で、水相に油相を混合することで行う。油相については油脂(a)が完全に溶解する温度に加温し、水相については混合後の油相が温度低下を起こさない温度に加温した状態で、水相に油相を混合する。なお、通常は、親油性の乳化剤は油相に添加し、親水性の乳化剤は水相に添加する。また、親水性の乳製品または塩類などは、予め水に溶解して用いる。
(工程2)
工程1より作製した乳化物の均質化を行う。均質化は、公知の任意の方法により行われる。例えば高圧ホモジナイザーが均質化に使用される。なお、高圧ホモジナイザーにおける圧力等の各種の条件は適宜に設定される。工程2では、油滴のメディアン径を調整することができる。また、均質化処理は1回ないし複数回行うことができる。均質化後の乳化物のメディアン径は、0.8μm~5.0μmが好適であり、1.0μm~3.0μmがさらに好適である。また、工程2の前後に、殺菌または滅菌処理をしてもよい。
工程1より作製した乳化物の均質化を行う。均質化は、公知の任意の方法により行われる。例えば高圧ホモジナイザーが均質化に使用される。なお、高圧ホモジナイザーにおける圧力等の各種の条件は適宜に設定される。工程2では、油滴のメディアン径を調整することができる。また、均質化処理は1回ないし複数回行うことができる。均質化後の乳化物のメディアン径は、0.8μm~5.0μmが好適であり、1.0μm~3.0μmがさらに好適である。また、工程2の前後に、殺菌または滅菌処理をしてもよい。
(工程3)
工程2の後の乳化物を冷却することで、水中油型乳化物(A)が製造される。冷却は、短時間で目的の温度(例えば0℃~10℃)まで冷却できる設備により行うことが好適である。例えば、プレート式熱交換器またはチューブ式熱交換器などが冷却に利用される。そして、冷却後の乳化物を冷蔵下で攪拌することで、水中油型乳化物(A)が製造される。なお、工業的スケールにおいては、タンク中で目的の温度まで冷却された水中油型乳化物(A)を所定の期間(例えば1時間~48時間)にわたり攪拌することで安定化させる(いわゆるエージング)。安定化の後に水中油型乳化物(A)が容器に充填されて製品となる。
工程2の後の乳化物を冷却することで、水中油型乳化物(A)が製造される。冷却は、短時間で目的の温度(例えば0℃~10℃)まで冷却できる設備により行うことが好適である。例えば、プレート式熱交換器またはチューブ式熱交換器などが冷却に利用される。そして、冷却後の乳化物を冷蔵下で攪拌することで、水中油型乳化物(A)が製造される。なお、工業的スケールにおいては、タンク中で目的の温度まで冷却された水中油型乳化物(A)を所定の期間(例えば1時間~48時間)にわたり攪拌することで安定化させる(いわゆるエージング)。安定化の後に水中油型乳化物(A)が容器に充填されて製品となる。
<ホイップドクリームの製造方法>
水中油型乳化物(A)を起泡させることでホイップドクリームを製造することができる。例えば、泡立器具または専用のミキサー(開放式縦型ミキサーまたは密閉式連続ミキサーなど)を用いて空気を抱き込ませるように攪拌することで、水中油型乳化物(A)を起泡させる。なお、起泡させる際に、例えば、糖質(例えばグラニュー糖、砂糖または液糖)、アルコール類、フレーバー、増粘安定剤、または、生クリームなどを添加してもよい。水中油型乳化物(A)により作製されたホイップドクリームは、機械耐性、保形性および保水性が良好である。
水中油型乳化物(A)を起泡させることでホイップドクリームを製造することができる。例えば、泡立器具または専用のミキサー(開放式縦型ミキサーまたは密閉式連続ミキサーなど)を用いて空気を抱き込ませるように攪拌することで、水中油型乳化物(A)を起泡させる。なお、起泡させる際に、例えば、糖質(例えばグラニュー糖、砂糖または液糖)、アルコール類、フレーバー、増粘安定剤、または、生クリームなどを添加してもよい。水中油型乳化物(A)により作製されたホイップドクリームは、機械耐性、保形性および保水性が良好である。
以上の方法により製造されたホイップドクリームは、食品に関する各種の用途に利用される。例えば、必要に応じて冷蔵保存した後に、ホイップドクリームを成形する二次加工に利用される。ホイップドクリームは、専用の機械(例えばナッペマシーンまたはデポジッター)、または、手作業(例えばスパテラを用いたナッペまたはしぼり袋を用いた注入)により成形される。例えば、ケーキなどのナッペ用、パン、パイ、シュー、デニッシュ、クッキー、ビスケットおよびケーキなどのサンド用、または、デザートおよびコーヒーなどのトッピング用としてホイップドクリームが利用される。また、ホイップドクリームは冷凍し、そのまま、または解凍し喫食することができる。
なお、本発明の水中油型乳化物(A)は、起泡させずに利用することも可能である。例えば、ホワイトソースまたはシチューなどの調理用として水中油型乳化物(A)を使用してもよい。また、パイ、シュー、デニッシュ、クッキー、ビスケットまたはケーキ等の製菓、および、製パンの生地に直接的に水中油型乳化物(A)を添加してもよい。なお、以上に例示する用途において、水中油型乳化物(A)は5質量%~20質量%添加することが好適である。以上の説明から理解される通り、水中油型乳化物(A)における起泡性の有無は用途に応じて適宜に変更され得る。
以下、本発明の実施例について詳述する。ただし、本発明は以下の実施例には限定されない。
表1および表2は、実施例1-26および比較例1-8の水中油型乳化物に関する表である。実施例1-26および比較例1-8は、表1および表2に示される配合で作製された。
<エステル交換油脂>
表1-2におけるエステル交換油脂1-10は、以下の通りに作製した。エステル交換油脂1-10は、エステル交換油脂(a1)の例示である。ただし、エステル交換油脂10は、ヨウ素価が本発明で規定する範囲外にある。なお、エステル交換油脂1-10のヨウ素価は、基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.3.4 .1-2013ヨウ素価(ウィイス-シクロヘキサン法)」で測定した。
表1-2におけるエステル交換油脂1-10は、以下の通りに作製した。エステル交換油脂1-10は、エステル交換油脂(a1)の例示である。ただし、エステル交換油脂10は、ヨウ素価が本発明で規定する範囲外にある。なお、エステル交換油脂1-10のヨウ素価は、基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.3.4 .1-2013ヨウ素価(ウィイス-シクロヘキサン法)」で測定した。
(エステル交換油脂1)
原料:パーム油37質量%,パーム核油63質量%
製法:原料を混合して110℃に加熱し、十分に脱水させた後に、化学触媒としてナトリウムメチラートを油脂量の0.08質量%添加し、減圧下において100℃で0.5時間攪拌しながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応後に、水洗して触媒を除去し、活性白土を用いて脱色し、さらに脱臭を行ってエステル交換油脂1を得た。
ヨウ素価:31.0
ラウリン酸量:30.1質量%
原料:パーム油37質量%,パーム核油63質量%
製法:原料を混合して110℃に加熱し、十分に脱水させた後に、化学触媒としてナトリウムメチラートを油脂量の0.08質量%添加し、減圧下において100℃で0.5時間攪拌しながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応後に、水洗して触媒を除去し、活性白土を用いて脱色し、さらに脱臭を行ってエステル交換油脂1を得た。
ヨウ素価:31.0
ラウリン酸量:30.1質量%
(エステル交換油脂2)
原料:パーム油50質量%,パーム核極度硬化油25質量%,パーム極度硬化油25質量%
製法:エステル交換油脂1と同様。
ヨウ素価:27.5
ラウリン酸量:12.1質量%
原料:パーム油50質量%,パーム核極度硬化油25質量%,パーム極度硬化油25質量%
製法:エステル交換油脂1と同様。
ヨウ素価:27.5
ラウリン酸量:12.1質量%
(エステル交換油脂3)
原料:パーム油27質量%,パーム核油73質量%
製法:エステル交換油脂1と同様。
ヨウ素価:27.5
ラウリン酸量:34.9質量%
原料:パーム油27質量%,パーム核油73質量%
製法:エステル交換油脂1と同様。
ヨウ素価:27.5
ラウリン酸量:34.9質量%
(エステル交換油脂4)
原料:パーム油36質量%,パーム核極度硬化油32質量%,パーム極度硬化油32質量%
製法:エステル交換油脂1と同様。
ヨウ素価:20.4
ラウリン酸量:15.4質量%
原料:パーム油36質量%,パーム核極度硬化油32質量%,パーム極度硬化油32質量%
製法:エステル交換油脂1と同様。
ヨウ素価:20.4
ラウリン酸量:15.4質量%
(エステル交換油脂5)
原料:パーム油20質量%,パーム核極度硬化油40質量%,パーム極度硬化油40質量%
製法:エステル交換油脂1と同様。
ヨウ素価:12.2
ラウリン酸量:19.2質量%
原料:パーム油20質量%,パーム核極度硬化油40質量%,パーム極度硬化油40質量%
製法:エステル交換油脂1と同様。
ヨウ素価:12.2
ラウリン酸量:19.2質量%
(エステル交換油脂6)
原料:パーム核極度硬化油50質量%,パーム極度硬化油50質量%
製法:エステル交換油脂1と同様。
ヨウ素価:2.0
ラウリン酸量:24.0質量%
原料:パーム核極度硬化油50質量%,パーム極度硬化油50質量%
製法:エステル交換油脂1と同様。
ヨウ素価:2.0
ラウリン酸量:24.0質量%
(エステル交換油脂7)
原料:パーム油43質量%,パーム核極度硬化油25質量%,パーム極度硬化油25質量%,牛脂7質量%
製法:エステル交換油脂1と同様。
ヨウ素価:27.3
ラウリン酸量:12.3質量%
原料:パーム油43質量%,パーム核極度硬化油25質量%,パーム極度硬化油25質量%,牛脂7質量%
製法:エステル交換油脂1と同様。
ヨウ素価:27.3
ラウリン酸量:12.3質量%
(エステル交換油脂8)
原料:パーム油33質量%,パーム核極度硬化油25質量%,パーム極度硬化油25質量%,牛脂17質量%
製法:エステル交換油脂1と同様。
ヨウ素価:27.0
ラウリン酸量:12.5質量%
原料:パーム油33質量%,パーム核極度硬化油25質量%,パーム極度硬化油25質量%,牛脂17質量%
製法:エステル交換油脂1と同様。
ヨウ素価:27.0
ラウリン酸量:12.5質量%
(エステル交換油脂9)
原料:パーム油21質量%,パーム核油5質量%,パーム核極度硬化油28質量%,パーム極度硬化油16質量%,牛脂30質量%
製法:エステル交換油脂1と同様。
ヨウ素価:27.9
ラウリン酸量:16.7質量%
原料:パーム油21質量%,パーム核油5質量%,パーム核極度硬化油28質量%,パーム極度硬化油16質量%,牛脂30質量%
製法:エステル交換油脂1と同様。
ヨウ素価:27.9
ラウリン酸量:16.7質量%
(エステル交換油脂10)
原料:パーム油50質量%,パーム核油50質量%
製法:エステル交換油脂1と同様。
ヨウ素価:35.5
ラウリン酸量:24.0質量%
原料:パーム油50質量%,パーム核油50質量%
製法:エステル交換油脂1と同様。
ヨウ素価:35.5
ラウリン酸量:24.0質量%
<水中油型乳化物の作製>
表1~2に示す配合で、油脂にグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、油性フレーバーを添加し油相とした。一方、水に脱脂粉乳、デキストリン、乳化剤のショ糖脂肪酸エステル、リン酸ナトリウム、増粘多糖類を添加し水相とした。水相と油相を65℃に加温し、水相に油相を添加し攪拌して乳化したのち、高圧ホモジナイザーで均質化した。その後、1℃~5℃まで急冷し、さらに、攪拌しながら冷蔵下で10時間エージングし、水中油型乳化物を得た。
表1~2に示す配合で、油脂にグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、油性フレーバーを添加し油相とした。一方、水に脱脂粉乳、デキストリン、乳化剤のショ糖脂肪酸エステル、リン酸ナトリウム、増粘多糖類を添加し水相とした。水相と油相を65℃に加温し、水相に油相を添加し攪拌して乳化したのち、高圧ホモジナイザーで均質化した。その後、1℃~5℃まで急冷し、さらに、攪拌しながら冷蔵下で10時間エージングし、水中油型乳化物を得た。
水中油型乳化物における配合量は次のとおりである。なお、残部を水とし、全体を100質量%とした。
<水中油型乳化物の配合>
油脂 表1~2記載
脱脂粉乳(乳脂肪1質量%) 4質量%
デキストリン 1質量%
乳化剤
グリセリン脂肪酸エステル 0.1質量%
レシチン 0.3質量%
ショ糖脂肪酸エステル 0.1質量%
リン酸ナトリウム 0.1質量%
増粘多糖類 0.3質量%
フレーバー 0.5質量%
なお、以上の方法により作製された水中油型乳化物(A)は、起泡性を有する起泡性水中油型乳化物である。
<水中油型乳化物の配合>
油脂 表1~2記載
脱脂粉乳(乳脂肪1質量%) 4質量%
デキストリン 1質量%
乳化剤
グリセリン脂肪酸エステル 0.1質量%
レシチン 0.3質量%
ショ糖脂肪酸エステル 0.1質量%
リン酸ナトリウム 0.1質量%
増粘多糖類 0.3質量%
フレーバー 0.5質量%
なお、以上の方法により作製された水中油型乳化物(A)は、起泡性を有する起泡性水中油型乳化物である。
<ホイップドクリームの作製>
上記のようにして得られた水中油型乳化物20kgに2kgのグラニュー糖を加え、5℃に調温後、縦型ミキサー(関東混合機工業(株)製 90コートボウル)を使用し、起泡させ、ホイップドクリームを得た。
上記のようにして得られた水中油型乳化物20kgに2kgのグラニュー糖を加え、5℃に調温後、縦型ミキサー(関東混合機工業(株)製 90コートボウル)を使用し、起泡させ、ホイップドクリームを得た。
<評価>
実施例1-26および比較例1-8に係る水中油型乳化物に関する評価を行った。
実施例1-26および比較例1-8に係る水中油型乳化物に関する評価を行った。
評価パネルは五味(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)の識別テスト、味の濃度差識別テスト、食品の味の識別テスト、基準嗅覚テストを実施し、その各々のテストで適合と判断された20~40代の男性8名、女性12名を選抜した。
評価を実施するにあたりパネル全体で討議し、各評価項目の特性に対してすり合わせを行って、各パネルが共通認識を持つようにした。また、官能評価におけるパネルの偏りを排除し、評価の精度を高めるために、サンプルの試験区番号や内容はパネルに知らせず、ランダムに掲示した。
(1)乳脂肪の加熱劣化臭
評価基準
◎+:パネル20名中の16名以上が、乳脂肪の加熱劣化臭を感じないと評価した。
◎:パネル20名中の13~15名が、乳脂肪の加熱劣化臭を感じないと評価した。
○:パネル20名中の10~12名が、乳脂肪の加熱劣化臭を感じないと評価した。
△:パネル20名中の7~9名が、乳脂肪の加熱劣化臭を感じないと評価した。
×:乳脂肪の加熱劣化臭を感じないと評価したのは20名中の6名以下であった。
(1)乳脂肪の加熱劣化臭
評価基準
◎+:パネル20名中の16名以上が、乳脂肪の加熱劣化臭を感じないと評価した。
◎:パネル20名中の13~15名が、乳脂肪の加熱劣化臭を感じないと評価した。
○:パネル20名中の10~12名が、乳脂肪の加熱劣化臭を感じないと評価した。
△:パネル20名中の7~9名が、乳脂肪の加熱劣化臭を感じないと評価した。
×:乳脂肪の加熱劣化臭を感じないと評価したのは20名中の6名以下であった。
(2)乳タンパク質の加熱劣化臭
評価基準
◎+:パネル20名中の16名以上が、乳タンパク質の加熱劣化臭を感じないと評価した。
◎:パネル20名中の13~15名が、乳タンパク質の加熱劣化臭を感じないと評価した。
○:パネル20名中の10~12名が、乳タンパク質の加熱劣化臭を感じないと評価した。
△:パネル20名中の7~9名が、乳タンパク質の加熱劣化臭を感じないと評価した。
×:乳タンパク質の加熱劣化臭を感じないと評価したのは20名中の6名以下であった。
評価基準
◎+:パネル20名中の16名以上が、乳タンパク質の加熱劣化臭を感じないと評価した。
◎:パネル20名中の13~15名が、乳タンパク質の加熱劣化臭を感じないと評価した。
○:パネル20名中の10~12名が、乳タンパク質の加熱劣化臭を感じないと評価した。
△:パネル20名中の7~9名が、乳タンパク質の加熱劣化臭を感じないと評価した。
×:乳タンパク質の加熱劣化臭を感じないと評価したのは20名中の6名以下であった。
(3)乳風味
評価基準
◎+:パネル20名中の16名以上が、良好な乳風味があると評価した。
◎:パネル20名中の13~15名が、良好な乳風味があると評価した。
○:パネル20名中の10~12名が、良好な乳風味があると評価した。
△:パネル20名中の7~9名が、良好な乳風味があると評価した。
×:良好な乳風味があると評価したのは20名中の6名以下であった。
評価基準
◎+:パネル20名中の16名以上が、良好な乳風味があると評価した。
◎:パネル20名中の13~15名が、良好な乳風味があると評価した。
○:パネル20名中の10~12名が、良好な乳風味があると評価した。
△:パネル20名中の7~9名が、良好な乳風味があると評価した。
×:良好な乳風味があると評価したのは20名中の6名以下であった。
(4)機械耐性
水中油型乳化物を起泡させた後に、バースポンプにて押し出したホイップドクリームについて、レオメーター(サン科学、CR-500DX)により測定した。バースポンプ通過前のレオメーター値を基準としたときの、バースポンプ通過後のレオメーター値の変化率を評価した。
評価基準
◎+:-5%以上+10%未満であった。
◎:-10%以上-5%未満、または+10%以上+25%未満であった。
○:-20%以上-10%未満、または+25%以上+50%未満であった。
△:-30%以上-20%未満、または+50%以上+100%未満であった。
×:-30%未満、または+100%以上であった。
水中油型乳化物を起泡させた後に、バースポンプにて押し出したホイップドクリームについて、レオメーター(サン科学、CR-500DX)により測定した。バースポンプ通過前のレオメーター値を基準としたときの、バースポンプ通過後のレオメーター値の変化率を評価した。
評価基準
◎+:-5%以上+10%未満であった。
◎:-10%以上-5%未満、または+10%以上+25%未満であった。
○:-20%以上-10%未満、または+25%以上+50%未満であった。
△:-30%以上-20%未満、または+50%以上+100%未満であった。
×:-30%未満、または+100%以上であった。
(5)保形性
水中油型乳化物を起泡させた直後に花形状に造形したものを17.5℃のクールニクスで1日静置した。そして、花形状に造形にした直後の形状を基準として、1日静置した後の形状がどの程度変化したかを目視により観測した。
評価基準
◎+:形状の変化なし。
◎:わずかに形状の変化がある。
○:やや形状の変化がある。または若干「しわ」のようなものが見える。
△:かなり形が崩れている。または「しわ」のようなものが見える。
×:完全に形が崩れている。または「ひび」が入っている。
水中油型乳化物を起泡させた直後に花形状に造形したものを17.5℃のクールニクスで1日静置した。そして、花形状に造形にした直後の形状を基準として、1日静置した後の形状がどの程度変化したかを目視により観測した。
評価基準
◎+:形状の変化なし。
◎:わずかに形状の変化がある。
○:やや形状の変化がある。または若干「しわ」のようなものが見える。
△:かなり形が崩れている。または「しわ」のようなものが見える。
×:完全に形が崩れている。または「ひび」が入っている。
(6)総合評価
総合評価は、各評価の「◎+」「◎」「○」「△」「×」をそれぞれ5、4、3、2、1と点数化し、その合計値にて評価した。ただし、評価対象外の項目「-」がある例については、その項目以外の評価の平均値に5を乗じて点数化した。例えば、比較例4の「-」「△」「△」「△」「○」の場合は、(2+2+2+3)÷4×5=11.25となる。
評価基準
◎+:24~25点
◎:19~23点
○:14~18点
△:9~13点
×:5~8点
総合評価は、各評価の「◎+」「◎」「○」「△」「×」をそれぞれ5、4、3、2、1と点数化し、その合計値にて評価した。ただし、評価対象外の項目「-」がある例については、その項目以外の評価の平均値に5を乗じて点数化した。例えば、比較例4の「-」「△」「△」「△」「○」の場合は、(2+2+2+3)÷4×5=11.25となる。
評価基準
◎+:24~25点
◎:19~23点
○:14~18点
△:9~13点
×:5~8点
実施例1-26に係る水中油型乳化物は、水中油型乳化物(A)の例示である。実施例1-9では、エステル交換油脂(a1)の種類をそれぞれ相違させた。実施例10-13では、実施例2とはエステル交換油脂(a1)の含有量をそれぞれ相違させた。実施例14-20では、実施例2とは乳脂肪(a2)の含有量をそれぞれ相違させた。実施例21,22では、実施例2とは油脂パーム系油脂(a31)およびラウリン系油脂(a32)の種類をそれぞれ相違させた。実施例23では、実施例2とは製品中油分を相違させた。また、実施例24では、2種のエステル交換油脂(a1)を使用した。実施例25では、実施例20とはパーム系油脂(a31)の含有量を相違させた。実施例26では、実施例2とはパーム系油脂(a31)の種類を相違させた。
一方で、比較例1-8に係る水中油型乳化物は、本願の水中油型乳化物(A)で規定される要件の少なくとも一部を充足しない。比較例1-8の概要は以下の通りである。比較例1は、エステル交換油脂2の含有量が全油脂に対して0.05質量%であり、水中油型乳化物(A)におけるエステル交換油脂(a1)の含有量の要件を充足しない。同様に、比較例2は、エステル交換油脂2の含有量が全油脂に対して2.2質量%であり、エステル交換油脂(a1)の含有量の要件を充足しない。比較例3は、乳脂肪の含有量が全油脂に対して1.0質量%であり、乳脂肪(a2)の含有量の要件を充足しない。比較例4および比較例5は、乳脂肪を含有しないから、水中油型乳化物(A)における乳脂肪(a2)の含有量の要件を充足しない。同様に、比較例6は、乳脂肪の含有量が全油脂に対して65質量%であり、乳脂肪(a2)の含有量の要件を充足しない。比較例7は、エステル交換油脂10のヨウ素価が35.5であり、水中油型乳化物(A)におけるエステル交換油脂(a1)のヨウ素価の要件を充足しない。同様に、比較例8は、エステル交換油脂1-10の何れも含有しないから、エステル交換油脂(a1)の含有量の要件を充足しない。
表2から把握される通り、比較例1-8の総合評価は、全ての実施例1-26における総合評価を下回る。特に、比較例2-5では、乳脂肪および乳タンパク質由来の加熱劣化臭を抑制するという効果が十分でないばかりか、乳風味も乏しい。また、比較例1,6-8では、乳風味に関する評価は悪くないものの、乳脂肪および乳タンパク質由来の加熱劣化臭を抑制するという効果が十分ではない。以上の説明から理解される通り、比較例1-8に係る水中油型乳化物では、乳風味を維持しつつ、加熱劣化臭を抑制できないという知見が得られた。
それに対して、実施例1-26に係る水中油型乳化物によれば、表1にから把握される通り、ほぼ全ての評価について高い(「〇」以上)ことが確認できる。すなわち、実施例1-26では、乳風味を維持しつつ、乳脂肪および乳タンパク質由来の加熱劣化臭を抑制することが可能である。さらには、機械耐性および保形性についても良好である。すなわち、エステル交換油脂1-9を全油脂中に0.1質量%以上2.0質量%未満含有し、かつ、乳脂肪を全油脂中に1.5質量%以上60質量%以下含有することで、比較例1-8では得られない有意な効果が確認できた。
なお、実施例1-9から把握される通り、エステル交換油脂2,4-5(すなわちパーム油,パーム核極度硬化油およびパーム極度硬化油を原料としたエステル交換油脂)を使用すると、全ての項目について評価が非常に高い(「◎」以上)ことが確認できる。実施例10-13から把握される通り、全油脂に対するエステル交換油脂が0.8質量%~1.9質量%含有されると、全ての項目について評価が非常に高いことが確認できる。実施例2および実施例14-20から把握される通り、全油脂に対して乳脂肪が15質量%~23質量%含有されると、全ての項目について評価が非常に高い。
なお、実施例2および実施例21-22から把握される通り、全油脂中に配合される油脂(乳脂肪およびエステル交換油脂1-9を除く)としてラウリン系油脂およびパーム系油脂の種類を変更しても、効果に影響がないことが確認できた。また、実施例2および実施例23から把握される通り、水中油型乳化物における油分の含有量を変更しても、効果に影響がないことが確認でき、さらに実施例2および実施例24から、エステル交換油脂(a1)を複数種使用しても、効果に影響がない事が確認できた。また、実施例2、20、25からパーム系油脂(a31)は、一定量以上配合されると、評価がさらに高くなることが確認できた。さらに実施例2および実施例26から、パーム系油脂(a13)の油脂をパーム分別中融点油からエステル交換パーム分別軟質油に変更しても、効果に影響がない事も確認できた。
Claims (5)
- ヨウ素価が33以下であり、パーム系油脂とラウリン系油脂とのエステル交換油脂を、全油脂中に0.1質量%以上2.0質量%未満含有し、
かつ、乳脂肪を全油脂中に1.5質量%以上60質量%以下含有する
ことを特徴とする水中油型乳化物。 - パーム系油脂を、全油脂中に25質量%以上含有する
請求項1に記載の水中油型乳化物。 - 前記乳脂肪を、全油脂中に2質量%以上含有する
請求項1または請求項2に記載の水中油型乳化物。 - 前記乳脂肪に対する前記エステル交換油脂の質量比(エステル交換油脂/乳脂肪)が0.004~0.75である
請求項1から請求項3の何れかに記載の水中油型乳化物。 - 起泡性水中油型乳化物である
請求項1から請求項4の何れかに記載の水中油型乳化物。
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