以下、添付図面を参照して、本願の開示する接合装置および接合方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態により本開示が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。さらに、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
従来、半導体ウェハなどの基板同士を接合する手法として、基板の接合される表面を改質し、改質された基板の表面を親水化し、親水化された基板同士をファンデルワールス力および水素結合(分子間力)によって接合する手法が知られている。
一方で、親水化された基板同士を接合して重合基板を形成する際に、かかる重合基板の周縁部にボイド(以下、エッジボイドと呼称する。)が発生する場合がある。また、かかる重合基板を形成する際に、接合界面の状態にばらつきが生じた結果、重合基板の歪み(ディストーション)が大きくなってしまう場合もある。
そして、これらのように重合基板の接合品質が悪化してしまうと、かかる重合基板内に形成される素子の歩留まりが低下する恐れがある。
そこで、上述の問題点を克服し、重合基板の接合品質を向上させることができる技術の実現が期待されている。
<接合システムの構成>
まず、実施形態に係る接合システム1の構成について、図1~図3を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係る接合システム1の構成を示す模式平面図であり、図2は、同模式側面図である。また、図3は、実施形態に係る上ウェハおよび下ウェハの模式側面図である。なお、以下参照する各図面では、説明を分かりやすくするために、鉛直上向きをZ軸の正方向とする直交座標系を示す場合がある。
図1に示す接合システム1は、第1基板W1と第2基板W2とを接合することによって重合ウェハTを形成する。
第1基板W1は、たとえばシリコンウェハや化合物半導体ウェハなどの半導体基板に複数の電子回路が形成された基板である。また、第2基板W2は、たとえば電子回路が形成されていないベアウェハである。第1基板W1と第2基板W2とは、略同径を有する。なお、第2基板W2に電子回路が形成されていてもよい。
以下では、第1基板W1を「上ウェハW1」と記載し、第2基板W2を「下ウェハW2」と記載する。すなわち、上ウェハW1は第1基板の一例であり、下ウェハW2は第2基板の一例である。また、上ウェハW1と下ウェハW2とを総称する場合、「ウェハW」と記載する場合がある。
また、以下では、図3に示すように、上ウェハW1の板面のうち、下ウェハW2と接合される側の板面を「接合面W1j」と記載し、接合面W1jとは反対側の板面を「非接合面W1n」と記載する。また、下ウェハW2の板面のうち、上ウェハW1と接合される側の板面を「接合面W2j」と記載し、接合面W2jとは反対側の板面を「非接合面W2n」と記載する。
図1に示すように、接合システム1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2および処理ステーション3は、X軸正方向に沿って、搬入出ステーション2および処理ステーション3の順番で並べて配置される。また、搬入出ステーション2および処理ステーション3は、一体的に接続される。
搬入出ステーション2は、載置台10と、搬送領域20とを備える。載置台10は、複数の載置板11を備える。各載置板11には、複数枚(たとえば、25枚)の基板を水平状態で収容するカセットC1、C2、C3がそれぞれ載置される。たとえば、カセットC1は上ウェハW1を収容するカセットであり、カセットC2は下ウェハW2を収容するカセットであり、カセットC3は重合ウェハTを収容するカセットである。
搬送領域20は、載置台10のX軸正方向側に隣接して配置される。かかる搬送領域20には、Y軸方向に延在する搬送路21と、この搬送路21に沿って移動可能な搬送装置22とが設けられる。
搬送装置22は、Y軸方向だけでなく、X軸方向にも移動可能かつZ軸周りに旋回可能である。そして、搬送装置22は、載置板11に載置されたカセットC1~C3と、後述する処理ステーション3の第3処理ブロックG3との間で、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTの搬送を行う。
なお、載置板11に載置されるカセットC1~C3の個数は、図示のものに限定されない。また、載置板11には、カセットC1、C2、C3以外に、不具合が生じた基板を回収するためのカセットなどが載置されてもよい。
処理ステーション3には、各種装置を備えた複数の処理ブロック、たとえば3つの処理ブロックG1、G2、G3が設けられる。たとえば、処理ステーション3の正面側(図1のY軸負方向側)には、第1処理ブロックG1が設けられ、処理ステーション3の背面側(図1のY軸正方向側)には、第2処理ブロックG2が設けられる。また、処理ステーション3の搬入出ステーション2側(図1のX軸負方向側)には、第3処理ブロックG3が設けられる。
第1処理ブロックG1には、上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j、W2jを処理ガスのプラズマによって改質する表面改質装置30が配置される。表面改質装置30は、上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j、W2jにおけるSiO2の結合を切断して単結合のSiOとすることで、その後親水化されやすくするように当該接合面W1j、W2jを改質する。
なお、表面改質装置30では、たとえば、減圧雰囲気下において所与の処理ガスが励起されてプラズマ化され、イオン化される。そして、かかる処理ガスに含まれる元素のイオンが、上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j、W2jに照射されることにより、接合面W1j、W2jがプラズマ処理されて改質される。かかる表面改質装置30の詳細については後述する。
第2処理ブロックG2には、表面親水化装置40と、接合装置41とが配置される。表面親水化装置40は、たとえば純水によって上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j、W2jを親水化するとともに、接合面W1j、W2jを洗浄する。
表面親水化装置40では、たとえばスピンチャックに保持された上ウェハW1または下ウェハW2を回転させながら、当該上ウェハW1または下ウェハW2上に純水を供給する。これにより、上ウェハW1または下ウェハW2上に供給された純水が上ウェハW1または下ウェハW2の接合面W1j、W2j上を拡散し、接合面W1j、W2jが親水化される。
接合装置41は、上ウェハW1と下ウェハW2とを接合する。かかる接合装置41の詳細については後述する。
第3処理ブロックG3には、図2に示すように、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTのトランジション(TRS)装置50、51が下から順に2段に設けられる。
また、図1に示すように、第1処理ブロックG1、第2処理ブロックG2および第3処理ブロックG3に囲まれた領域には、搬送領域60が形成される。搬送領域60には、搬送装置61が配置される。搬送装置61は、たとえば鉛直方向、水平方向および鉛直軸周りに移動自在な搬送アームを有する。
かかる搬送装置61は、搬送領域60内を移動し、搬送領域60に隣接する第1処理ブロックG1、第2処理ブロックG2および第3処理ブロックG3内の所与の装置に上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTを搬送する。
また、接合システム1は、制御装置4を備える。制御装置4は、接合システム1の動作を制御する。かかる制御装置4は、たとえばコンピュータであり、制御部5および記憶部6を備える。記憶部6には、接合処理などの各種処理を制御するプログラムが格納される。制御部5は、記憶部6に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって接合システム1の動作を制御する。
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体に記録されていたものであって、その記録媒体から制御装置4の記憶部6にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記録媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
<表面改質装置の構成>
次に、表面改質装置30の構成について、図4を参照しながら説明する。図4は、表面改質装置30の構成を示す模式断面図である。
図4に示すように、表面改質装置30は、内部を密閉可能な処理容器70を有する。処理容器70の搬送領域60(図1参照)側の側面には、上ウェハW1または下ウェハW2の搬入出口71が形成され、当該搬入出口71にはゲートバルブ72が設けられる。
処理容器70の内部には、ステージ80が配置される。ステージ80は、たとえば下部電極であり、たとえばアルミニウムなどの導電性材料で構成される。ステージ80の下方には、たとえばモータなどを備えた複数の駆動部81が設けられる。複数の駆動部81は、ステージ80を昇降させる。
ステージ80と処理容器70の内壁との間には、複数のバッフル孔が設けられた排気リング103が配置される。排気リング103により、処理容器70内の雰囲気が処理容器70内から均一に排気される。
ステージ80の下面には、導体で形成された給電棒104が接続される。給電棒104には、たとえばブロッキングコンデンサなどからなる整合器105を介して、第1の高周波電源106が接続される。プラズマ処理時には、第1の高周波電源106から所与の高周波電圧がステージ80に印加される。
処理容器70の内部には、上部電極110が配置される。ステージ80の上面と上部電極110の下面とは、互いに平行に、所与の間隔をあけて対向して配置されている。ステージ80の上面と上部電極110の下面との間隔は、駆動部81により調整される。
上部電極110は接地され、グランド電位に接続されている。このように上部電極110が接地されているため、プラズマ処理中、上部電極110の下面の損傷を抑制することができる。
このように、第1の高周波電源106から下部電極であるステージ80に、高周波電圧が印加されることにより、処理容器70の内部にプラズマが発生する。
実施形態において、ステージ80、給電棒104、整合器105、第1の高周波電源106、上部電極110、および整合器は、処理容器70内に処理ガスのプラズマを発生させるプラズマ発生機構の一例である。なお、第1の高周波電源106は、上述の制御装置4の制御部5によって制御される。
上部電極110の内部には中空部120が形成されている。中空部120には、ガス供給管121が接続されている。ガス供給管121は、内部に処理ガスや除電用ガスを貯留するガス供給源122に連通している。また、ガス供給管121には、処理ガスや除電用ガスの流れを制御するバルブや流量調整部などを含む供給機器群123が設けられている。
そして、ガス供給源122から供給された処理ガスや除電用ガスは、供給機器群123で流量制御され、ガス供給管121を介して、上部電極110の中空部120に導入される。処理ガスには、たとえば酸素ガス、窒素ガス、アルゴンガスなどが用いられる。また、除電用ガスには、たとえば窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスが用いられる。
中空部120の内部には、処理ガスや除電用ガスの均一拡散を促進するためのバッフル板124が設けられている。バッフル板124には、多数の小孔が設けられている。上部電極110の下面には、中空部120から処理容器70の内部に処理ガスや除電用ガスを噴出させる多数のガス噴出口125が形成されている。
処理容器70には、吸気口130が形成される。吸気口130には、処理容器70の内部の雰囲気を所与の真空度まで減圧する真空ポンプ131に連通する吸気管132が接続される。
ステージ80の上面、すなわち上部電極110との対向面は、上ウェハW1および下ウェハW2よりも大きい径を有する平面視円形の水平面である。かかるステージ80の上面にはステージカバー90が載置され、上ウェハW1または下ウェハW2は、かかるステージカバー90の載置部91上に載置される。
<接合装置の構成>
次に、接合装置41の構成について、図5および図6を参照しながら説明する。図5は、実施形態に係る接合装置41の構成を示す模式平面図であり、図6は、実施形態に係る接合装置41の構成を示す模式側面図である。
図5に示すように、接合装置41は、内部を密閉可能な処理容器190を有する。処理容器190における搬送領域60側の側面には、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTの搬入出口191が形成され、当該搬入出口191には開閉シャッタ192が設けられる。
処理容器190の内部は、内壁193によって搬送領域T1と処理領域T2に区画される。上述した搬入出口191は、搬送領域T1における処理容器190の側面に形成される。また、内壁193にも、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTの搬入出口194が形成される。
また、処理容器190の内部は、図示しない湿度保持機構によって、所与の一定の湿度に維持されている。これにより、接合装置18は、上ウェハW1と下ウェハW2との接合処理を安定した環境で実施することができる。
搬送領域T1のY軸負方向側には、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTを一時的に載置するためのトランジション200が設けられる。トランジション200は、たとえば2段に形成され、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTのいずれか2つを同時に載置することができる。
搬送領域T1には、搬送機構201が設けられる。搬送機構201は、たとえば鉛直方向、水平方向および鉛直軸周りに移動自在な搬送アームを有する。そして、搬送機構201は、搬送領域T1内、または搬送領域T1と処理領域T2との間で上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTを搬送する。
搬送領域T1のY軸正方向側には、上ウェハW1および下ウェハW2の水平方向の向きを調整する位置調整機構210が設けられる。かかる位置調整機構210では、図示しない保持部に吸着保持された上ウェハW1および下ウェハW2を回転させながら図示しない検出部で上ウェハW1および下ウェハW2のノッチ部の位置を検出する。
これにより、位置調整機構210は、当該ノッチ部の位置を調整して上ウェハW1および下ウェハW2の水平方向の向きを調整する。また、搬送領域T1には、上ウェハW1の表裏面を反転させる反転機構220が設けられる。
また、図6に示すように、処理領域T2には、上チャック230と下チャック231とが設けられる。上チャック230は、上ウェハW1を上方から吸着保持する。また、下チャック231は、上チャック230の下方に設けられ、下ウェハW2を下方から吸着保持する。上チャック230は第1保持部の一例であり、下チャック231は第2保持部の一例である。
上チャック230は、図6に示すように、処理容器190の天井面に設けられた支持部材300に支持される。支持部材300には、下チャック231に保持された下ウェハW2の接合面W2jを撮像する図示しない上部撮像部が設けられる。かかる上部撮像部は、上チャック230に隣接して設けられる。
また、図5および図6に示すように、下チャック231は、当該下チャック231の下方に設けられた第1下チャック移動部310に支持される。第1下チャック移動部310は、後述するように下チャック231を水平方向(Y軸方向)に移動させる。また、第1下チャック移動部310は、下チャック231を鉛直方向に移動自在、且つ鉛直軸回りに回転可能に構成される。
図5に示すように、第1下チャック移動部310には、上チャック230に保持された上ウェハW1の接合面W1jを撮像する図示しない下部撮像部が設けられている。かかる下部撮像部は、下チャック231に隣接して設けられる。
また、図5および図6に示すように、第1下チャック移動部310は、当該第1下チャック移動部310の下面側に設けられ、水平方向(Y軸方向)に延伸する一対のレール315に取り付けられる。第1下チャック移動部310は、レール315に沿って移動自在に構成される。
一対のレール315は、第2下チャック移動部316に設けられる。第2下チャック移動部316は、当該第2下チャック移動部316の下面側に設けられ、水平方向(X軸方向)に延伸する一対のレール317に取り付けられる。
そして、第2下チャック移動部316は、レール317に沿って移動自在に、すなわち下チャック231を水平方向(X軸方向)に移動させるように構成される。なお、一対のレール317は、処理容器190の底面に設けられた載置台318上に設けられる。
次に、接合装置41における上チャック230と下チャック231の構成について、図7を参照しながら説明する。図7は、実施形態に係る接合装置41の上チャック230および下チャック231の構成を示す模式側面図である。
上チャック230は、略円板状であり、図7に示すように、複数、たとえば3つの領域230a、230b、230cに区画される。これらの領域230a、230b、230cは、上チャック230の中心部から周縁部(外周部)に向けてこの順で設けられる。領域230aは平面視において円形状を有し、領域230b、230cは平面視において環状形状を有する。
各領域230a、230b、230cには、図7に示すように上ウェハW1を吸着保持するための中央部吸引管240a、中間部吸引管240b、周縁部吸引管240cがそれぞれ独立して設けられる。
中央部吸引管240aは、上ウェハW1の中央部を吸着保持する。周縁部吸引管240cは、上ウェハW1の周縁部W1eを吸着保持する。中間部吸引管240bは、上ウェハW1の中央部と周縁部W1eとの中間にあたる中間部を吸着保持する。
中央部吸引管240aには、真空ポンプ241aが接続され、中間部吸引管240bには、真空ポンプ241bが接続され、周縁部吸引管240cには、真空ポンプ241cが接続される。このように、上チャック230は、各領域230a、230b、230c毎に上ウェハW1の真空引きを設定可能に構成されている。
また、接合装置41では、それぞれの位置の吸引管の吸引状況を監視することにより、上ウェハW1と下ウェハW2とがそれぞれの位置で接合されているか否かを判定することができる。たとえば、真空ポンプ241bを動作させている場合に、中間部吸引管240b内が負圧から大気圧に変化すると、中間部吸引管240bから上ウェハW1が離間したとみなすことができる。
そして、制御部5は、中間部吸引管240bから上ウェハW1が離間したことから、ウェハWの中間部において上ウェハW1が下ウェハW2に接合されたと判定することができる。
上チャック230の中心部には、当該上チャック230を厚み方向に貫通する貫通孔243が形成される。この上チャック230の中心部は、当該上チャック230に吸着保持される上ウェハW1の中心部W1cに対応している。そして、貫通孔243には、ストライカー250の押圧ピン253が挿通するようになっている。
ストライカー250は、上チャック230の上面に設けられ、押圧ピン253によって上ウェハW1の中心部W1cを押圧する。押圧ピン253は、シリンダ部251およびアクチュエータ部252によって鉛直軸沿いに直動可能に設けられ、先端部において対向する基板(実施形態では上ウェハW1)をかかる先端部で押圧する。
具体的には、押圧ピン253は、後述する上ウェハW1および下ウェハW2の接合時に、まず上ウェハW1の中心部W1cと下ウェハW2の中心部W2cとを当接させるスタータとなる。
下チャック231は、略円板状であり、複数、たとえば2つの領域231a、231bに区画される。これらの領域231a、231bは、下チャック231の中心部から周縁部に向けてこの順で設けられる。そして、領域231aは平面視において円形状を有し、領域231bは平面視において環状形状を有する。
各領域231a、231bには、図7に示すように下ウェハW2を吸着保持するための吸引管260a、260bがそれぞれ独立して設けられる。各吸引管260a、260bには、異なる真空ポンプ261a、261bがそれぞれ接続される。このように、下チャック231は、各領域231a、231b毎に下ウェハW2の真空引きを設定可能に構成されている。
下チャック231の周縁部には、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTが当該下チャック231から飛び出したり、滑落したりすることを防止するストッパ部材263が複数箇所、たとえば5箇所に設けられる。
また、接合装置41は、互いに向かい合う上ウェハW1と下ウェハW2との間の雰囲気を吸引し、さらに互いに向かい合う上ウェハW1と下ウェハW2との間に低湿度ガスを吐出する吸引吐出機構270を備える。
吸引吐出機構270は、本体部271と、ガス吸引部272(図8参照)と、ガス吐出部273とを有する。本体部271は、たとえば円環形状を有し、上チャック230の周縁部を取り囲むように配置される。
ガス吸引部272は、互いに向かい合う上ウェハW1と下ウェハW2との間の雰囲気を吸引する。かかるガス吸引部272の詳細については後述する。
ガス吐出部273は、本体部271に形成される複数の吐出口273d(図8参照)から、互いに向かい合う上ウェハW1と下ウェハW2との間に低湿度ガスを吐出する。実施形態において、低湿度ガスは、処理容器190内の雰囲気よりも湿度が低いガスであり、たとえば、処理容器190内の雰囲気よりも湿度が低い不活性ガス(たとえば、窒素ガスなど)である。
ガス吐出部273は、ガス供給源273aと、バルブ273bと、流量調整器273cと、複数の吐出口273dとを有する。そして、ガス供給源273aから供給された低湿度ガスは、バルブ273bおよび流量調整器273cで流量制御され、吐出口273dから吐出される。
<吸引吐出機構の構成>
つづいて、吸引吐出機構270の詳細な構成について、図8を参照しながら説明する。図8は、実施形態に係る吸引吐出機構270の構成を示す拡大側面図である。なお、図8は、上チャック230に保持された上ウェハW1と、下チャック231に保持された下ウェハW2との間が予め設定された距離に近づけられ、下チャック231がホーム位置に位置した場合の拡大断面図である。
上述のように、吸引吐出機構270は、本体部271と、ガス吸引部272と、ガス吐出部273とを有する。また、吸引吐出機構270は、さらに、支持部274と、封止部275と、センサ部276とを有する。
本体部271は、たとえば円環形状を有し、上チャック230の周縁部と所与の距離を保ちながら、かかる上チャック230の周縁部を取り囲むように配置される。
ガス吸引部272は、複数の吸引口272aと、バルブ272bと、吸引機構272cとを有する。複数の吸引口272aは、本体部271における内周側の面に周方向に均等に複数形成されている。
吸引機構272cは、たとえばポンプであり、バルブ272bを介して複数の吸引口272aに接続される。制御部5は、バルブ272bおよび吸引機構272cを動作させることにより、互いに向かい合う上ウェハW1と下ウェハW2との間の雰囲気を複数の吸引口272aから吸引することができる。
ガス吐出部273は、ガス供給源273a(図7参照)と、バルブ273bと、流量調整器273c(図7参照)と、複数の吐出口273dとを有する。複数の吐出口273dは、本体部271における内周側の面に周方向に均等に複数形成されている。なお、図8の例では、吐出口273dと吸引口272aとが互いに近接して配置される。
制御部5は、バルブ273bおよび流量調整器273cを動作させることにより、複数の吐出口273dから互いに向かい合う上ウェハW1と下ウェハW2との間に低湿度ガスを吐出することができる。
支持部274は、本体部271を上チャック230に支持する。封止部275は、たとえば円環形状を有し、本体部271の下面に取り付けられる。封止部275は、弾性変形が可能な材料で構成される。
ここで、実施形態に係る接合装置41では、上チャック230に保持された上ウェハW1に対して、下チャック231に保持された下ウェハW2がホーム位置に位置する場合に、上ウェハW1および下ウェハW2が外部から封止される。
すなわち、下ウェハW2がホーム位置に位置する場合に、上ウェハW1および下ウェハW2は、上チャック230と、下チャック231と、本体部271と、支持部274と、封止部275とで外部(処理容器190(図5参照)内の雰囲気)から遮蔽される。
なお、封止部275は弾性変形するため、図8に示す状態から上ウェハW1と下ウェハW2とがさらに近づけられて下ウェハW2がボンド位置に位置する場合に、かかる封止部275が阻害要因となることはない。
なお、本開示において、ボンド位置とは、ストライカー250によって上ウェハW1の中心部W1cを押圧する処理を実施する際の下チャック231の位置である。下チャック231がボンド位置にある場合、上ウェハW1と下ウェハW2との間の間隔は、たとえば、50μm程度である。
また、本開示において、ホーム位置とは、下チャック231をボンド位置に配置する処理を開始する際に、いったん下チャック231を待機させる位置である。下チャック231がホーム位置にある場合、上ウェハW1と下ウェハW2との水平方向の位置調整は完了しており、上ウェハW1と下ウェハW2との間の間隔は、たとえば、80μm~100μm程度である。
センサ部276は、上ウェハW1および下ウェハW2の少なくとも一方(図では上ウェハW1)に近接して設けられる。センサ部276は、たとえば、上チャック230において上ウェハW1に近接する位置に設けられる。センサ部276は、湿度センサなどを有する。
制御部5は、センサ部276を動作させることにより、互いに向かい合う上ウェハW1と下ウェハW2との間の雰囲気の湿度を測定することができる。
<接合システムが実行する処理>
つづいて、図9~図11を参照しながら、実施形態に係る接合システム1が実行する処理の詳細について説明する。なお、以下に示す各種処理は、制御装置4の制御部5による制御に基づいて実行される。
図9は、実施形態に係る接合システム1が実行する処理の処理手順の一部を示すフローチャートである。まず、複数枚の上ウェハW1を収容したカセットC1、複数枚の下ウェハW2を収容したカセットC2、および空のカセットC3が、搬入出ステーション2の所与の載置板11に載置される。
その後、搬送装置22によりカセットC1内の上ウェハW1が取り出され、処理ステーション3の第3処理ブロックG3のトランジション装置50に搬送される。
次に、上ウェハW1は、搬送装置61によって第1処理ブロックG1の表面改質装置30に搬送される。このとき、ゲートバルブ72が開かれており、処理容器70内が大気圧に開放されている。表面改質装置30では、所与の減圧雰囲気下において、処理ガスが励起されてプラズマ化され、イオン化される。
このように発生したイオンが上ウェハW1の接合面W1jに照射されて、当該接合面W1jがプラズマ処理される。これにより、接合面W1jの最表面にシリコン原子のダングリングボンドが形成され、上ウェハW1の接合面W1jが改質される(ステップS101)。
次に、上ウェハW1は、搬送装置61によって第2処理ブロックG2の表面親水化装置40に搬送される。表面親水化装置40では、スピンチャックに保持された上ウェハW1を回転させながら、当該上ウェハW1上に純水を供給する。
そうすると、供給された純水は上ウェハW1の接合面W1j上を拡散する。これにより、表面改質装置30では、改質された上ウェハW1の接合面W1jにおけるシリコン原子のダングリングボンドにOH基(シラノール基)が付着して当該接合面W1jが親水化される(ステップS102)。また、当該純水によって、上ウェハW1の接合面W1jが洗浄される。
次に、上ウェハW1は、搬送装置61によって第2処理ブロックG2の接合装置41に搬送される。接合装置41に搬入された上ウェハW1は、トランジション200を介して位置調整機構210に搬送される。そして位置調整機構210によって、上ウェハW1の水平方向の向きが調整される(ステップS103)。
その後、位置調整機構210から反転機構220に上ウェハW1が受け渡される。続いて搬送領域T1において、反転機構220を動作させることにより、上ウェハW1の表裏面が反転される(ステップS104)。すなわち、上ウェハW1の接合面W1jが下方に向けられる。
その後、反転機構220が回動して上チャック230の下方に移動する。そして、反転機構220から上チャック230に上ウェハW1が受け渡される。上ウェハW1は、上チャック230にその非接合面W1nが吸着保持される(ステップS105)。
上ウェハW1に上述したステップS101~S105の処理が行われている間、下ウェハW2の処理が行われる。まず、搬送装置22によりカセットC2内の下ウェハW2が取り出され、処理ステーション3のトランジション装置50に搬送される。
次に、下ウェハW2は、搬送装置61によって表面改質装置30に搬送され、下ウェハW2の接合面W2jが改質される(ステップS106)。なお、かかるステップS106は、上述のステップS101と同様の処理である。
その後、下ウェハW2は、搬送装置61によって表面親水化装置40に搬送され、下ウェハW2の接合面W2jが親水化される(ステップS107)。なお、かかるステップS107は、上述のステップS102と同様の処理である。
その後、下ウェハW2は、搬送装置61によって接合装置41に搬送される。接合装置41に搬入された下ウェハW2は、トランジション200を介して位置調整機構210に搬送される。そして位置調整機構210によって、下ウェハW2の水平方向の向きが調整される(ステップS108)。
その後、下ウェハW2は、下チャック231に搬送され、下チャック231に吸着保持される(ステップS109)。下ウェハW2は、ノッチ部を予め決められた方向に向けた状態で、下チャック231にその非接合面W2nが吸着保持される。
次に、上チャック230に保持された上ウェハW1と下チャック231に保持された下ウェハW2との水平方向の位置調整が行われる(ステップS110)。
次に、第1下チャック移動部310によって下チャック231を鉛直上方に移動させて、上チャック230と下チャック231の鉛直方向位置の調整を行う。これにより、当該上チャック230に保持された上ウェハW1と下チャック231に保持された下ウェハW2との鉛直方向位置の調整が行われる(ステップS111)。
このとき、下ウェハW2の接合面W2jと上ウェハW1の接合面W1jとの間の間隔は予め設定された距離、たとえば80μm~100μmになっている。
そして、所与の間隔が保たれた上ウェハW1と下ウェハW2とを接合する接合処理が行われ(ステップS112)、接合装置41での接合処理が終了する。
図10は、実施形態に係る接合処理における各部の動作を示すタイミングチャートである。なお、図10には、上述のステップS110(上ウェハW1と下ウェハW2との水平方向の位置調整)が終了した時点からのタイミングチャートを示している。
最初に、制御部5は、時間T11から、ガス吸引部272を制御することにより、互いに向かい合う上ウェハW1と下ウェハW2との間の雰囲気を吸引する。
また、制御部5は、時間T11から、下チャック231をホーム位置からボンド位置に上昇させる動作と、下チャック231をボンド位置からホーム位置に下降させる動作とを繰り返す。すなわち、制御部5は、時間T11から、上ウェハW1と下ウェハW2との間の間隔を伸縮させる。
このように、上ウェハW1と下ウェハW2との間の間隔を伸縮させることにより、制御部5は、上ウェハW1と下ウェハW2との間の雰囲気を効率よく吸引することができる。
そして、制御部5は、時間T11から所与の時間経過した時間T12で、ガス吸引部272を停止させるとともに、ガス吐出部273を動作させて、上ウェハW1と下ウェハW2との間に低湿度ガスを吐出する。これにより、制御部5は、上ウェハW1と下ウェハW2との間を低湿度の雰囲気に置換することができる。
また、制御部5は、時間T12以降においても、上ウェハW1と下ウェハW2との間の間隔を伸縮させる動作を継続する。これにより、制御部5は、上ウェハW1と下ウェハW2との間の雰囲気を効率よく低湿度の雰囲気に置換することができる。
次に、制御部5は、上ウェハW1と下ウェハW2との間の湿度が所与の湿度に到達した時間T13で、ガス吐出部273を停止させるとともに、下チャック231をボンド位置に上昇させる。
なお、制御部5は、上ウェハW1と下ウェハW2との間の湿度が所与の湿度に到達したか否かについての情報を、センサ部276から得ることができる。すなわち、制御部5は、センサ部276の検出結果に基づいて、上ウェハW1と下ウェハW2との間の間隔を伸縮させる処理を終了させる。
そして、制御部5は、下チャック231がボンド位置に到達したタイミングで、ストライカー250の押圧ピン253を下降させる。これにより、ストライカー250は、上ウェハW1の中心部W1cを押し下げて、上ウェハW1の中心部W1cと下ウェハW2の中心部W2cとを所与の力で押圧する。
これにより、押圧された上ウェハW1の中心部W1cと下ウェハW2の中心部W2cとの間で接合が開始される。具体的には、上ウェハW1の接合面W1jと下ウェハW2の接合面W2jはそれぞれステップS101、S106において改質されているため、まず、接合面W1j、W2j間にファンデルワールス力(分子間力)が生じ、当該接合面W1j、W2j同士が接合される。
さらに、上ウェハW1の接合面W1jと下ウェハW2の接合面W2jはそれぞれステップS102、S107において親水化されているため、接合面W1j、W2j間のOH基が水素結合し、接合面W1j、W2j同士が強固に接合される。
その後、上ウェハW1と下ウェハW2との接合領域は、上ウェハW1の中心部W1cおよび下ウェハW2の中心部W2cから外周部へ拡大していく。すなわち、上述した接合面W1j、W2j間のファンデルワールス力と水素結合による接合が中心部W1c、W2cから外周部に向けて順次拡がる。
まずは、時間T13で、ストライカー250で上ウェハW1の中心部W1cを押し下げることにより、中央部吸引管240aから上ウェハW1が離間する。すなわち、時間T13で、ウェハWの中央部において上ウェハW1が下ウェハW2に接合される。
そして、接合領域が外周部に向けて順次拡がった結果、時間T14で、周縁部吸引管240cから上ウェハW1が離間する。この時点で、ウェハWの周縁部W1e、W2eまで接合領域が達していることから、上ウェハW1と下ウェハW2とは全面で接合され、重合ウェハTが形成されている。
次に、制御部5は、時間T14から所与の時間経過した時間T15で、下チャック231の位置をボンド位置からホーム位置に下降させる。そして、時間T16で、下チャック231をホーム位置まで下降させることにより、制御部5は、下チャック231に吸着保持された重合ウェハTを接合装置41から取り出すことができる。
実施形態では、ここまで説明した各種処理によって、重合ウェハTの接合品質を向上させることができる。その理由について以下に述べる。
図11は、実施形態に係る接合処理の詳細を説明するための図である。図11の(a)に示すように、上ウェハW1と下ウェハW2とが互いに向かい合うように配置された後、図11の(b)に示すように、ガス吐出部273から低湿度ガスが上ウェハW1と下ウェハW2との間に吐出される。
これにより、上ウェハW1と下ウェハW2との間が低湿度の雰囲気に置換されることから、図11の(c)に示すように、上ウェハW1の接合面W1jおよび下ウェハW2の接合面W2jに吸着する水分が揮発する。
そして、実施形態では、接合面W1j、W2jに吸着する水分が少なくなることにより、接合面W1j、W2jの水素結合が少なくなることから、上ウェハW1と下ウェハW2とを接合する際の接合領域の進行速度を遅くすることができる。
これにより、実施形態では、重合ウェハTに発生するエッジボイドを低減することができる。かかるエッジボイドを低減することができる理由について、以下に説明する。
上ウェハW1と下ウェハW2とを接合する際に、中心部W1cと中心部W2cとが分子間力によって接合し接合領域が形成された後、ウェハWの周縁部W1e、W2eに向けて接合領域が拡大していく際に波(いわゆるボンディングウェーブ)が発生する。
ここで、エッジボイドの発生要因の1つとして、かかるボンディングウェーブがウェハWの周縁部W1e、W2eに到達した場合に、ウェハWの周縁部W1e、W2eにおいて急激な圧力の変動が起こることが考えられる。
なぜなら、かかる急激な圧力の変動により周縁部W1e、W2e近傍の雰囲気温度が急激に低下することから、上ウェハW1の周縁部W1eと下ウェハW2の周縁部W2eとで結露が発生し、かかる発生した結露に起因してエッジボイドが形成されるからである。
一方で、実施形態では、上ウェハW1と下ウェハW2とを接合する際の接合領域の進行速度を遅くしていることから、ウェハWの周縁部W1e、W2e近傍において急激な圧力の変動が起こることを抑制することができる。
これにより、制御部5は、ウェハWの周縁部W1e、W2eにおいて温度が急激に低下することを抑制することができることから、上ウェハW1の周縁部W1eおよび下ウェハW2の周縁部W2eにおいて、結露の発生を抑制することができる。
したがって、実施形態によれば、重合ウェハTに発生するエッジボイドを低減することができることから、重合ウェハTの接合品質を向上させることができる。
また、実施形態では、ガス吐出部273で低湿度ガスを上ウェハW1と下ウェハW2との間に吐出する処理に先立って、ガス吸引部272で上ウェハW1と下ウェハW2との間の雰囲気を吸引するとよい。
これにより、制御部5は、間隔が比較的狭く、そのままでは低湿度ガスへの置換が進行しにくい上ウェハW1と下ウェハW2との間の隙間に対して、効率よく低湿度ガスを投入することができる。
したがって、実施形態によれば、接合処理全体の時間を短くすることができることから、重合ウェハTを効率よく製造することができる。
また、実施形態では、下チャック231に保持された下ウェハW2がホーム位置に位置する場合に、弾性変形が可能な材料で構成される封止部275によって、上ウェハW1および下ウェハW2を外部から封止するとよい。
これにより、制御部5は、ガス吸引部272で上ウェハW1と下ウェハW2との間の雰囲気を吸引する際に、上ウェハW1と下ウェハW2との間の隙間を陰圧にすることができる。すなわち、制御部5は、間隔が比較的狭い上ウェハW1と下ウェハW2との間の隙間に対して、さらに効率よく低湿度ガスを投入することができる。
したがって、実施形態によれば、接合処理全体の時間をさらに短くすることができることから、重合ウェハTをさらに効率よく製造することができる。
また、実施形態では、吸引吐出機構270から上ウェハW1と下ウェハW2との間の雰囲気を吸引、または上ウェハW1と下ウェハW2との間にガスを吐出する際に、上ウェハW1と下ウェハW2との間の間隔を伸縮させるとよい。
これにより、制御部5は、上ウェハW1と下ウェハW2との間の雰囲気が循環するポンピング効果を得ることができることから、間隔が比較的狭い上ウェハW1と下ウェハW2との間の隙間に対して、さらに効率よく低湿度ガスを投入することができる。
したがって、実施形態によれば、接合処理全体の時間をさらに短くすることができることから、重合ウェハTをさらに効率よく製造することができる。
なお、上記の実施形態では、制御部5が、時間T11から時間T13までのすべての期間で上ウェハW1と下ウェハW2との間の間隔を伸縮させる処理を実施しているが、必ずしも時間T11から時間T13までのすべての期間でこの伸縮処理を実施しなくともよい。
たとえば、制御部5は、時間T11から時間T13までの一部の期間で上ウェハW1と下ウェハW2との間の間隔を伸縮させる処理を実施してもよい。たとえば、制御部5は、時間T11から時間T12までの期間で上ウェハW1と下ウェハW2との間の間隔を伸縮させる処理を実施してもよいし、時間T12から時間T13までの期間で上ウェハW1と下ウェハW2との間の間隔を伸縮させる処理を実施してもよい。
また、制御部5は、時間T11から時間T13までの間、上ウェハW1と下ウェハW2との間の間隔を伸縮させる処理を実施しなくてもよい。
なお、上述の場合において、かかる伸縮処理を実施しない期間では、制御部5は、下チャック231の位置をホーム位置に維持しながら吸引吐出機構270を動作させるとよい。
これにより、下チャック231の位置がボンド位置である場合と比べて上ウェハW1と下ウェハW2との間隔を拡げることができることから、この伸縮処理を実施しない場合でも、低湿度ガスへの置換を進めることができる。
また、上記の実施形態では、センサ部276から得られる上ウェハW1と下ウェハW2との間の湿度の情報に基づいて、ストライカー250による上ウェハW1の押圧処理を実施しているが、実施形態におけるストライカー250の制御方法はかかる例に限られない。
たとえば、制御部5は、吸引吐出機構270の動作時間(時間T11~T13に対応)が所与の時間に達した場合に、上ウェハW1と下ウェハW2との間が所望の低湿度に達したとみなして、ストライカー250による上ウェハW1の押圧処理を実施してもよい。なお、かかる所与の時間は、あらかじめ記憶部6に記憶されているとよい。
また、上記の実施形態では、吸引吐出機構270のガス吐出部273から、処理容器190内の雰囲気よりも湿度が低い低湿度ガスを吐出する例について示しているが、処理容器190内の雰囲気よりも湿度が高い高湿度ガスをガス吐出部273から吐出してもよい。
これにより、接合処理直前の上ウェハW1および下ウェハW2における接合面W1j、W2jの水素結合を多くすることができることから、たとえば、重合ウェハTの歪み(ディストーション)を小さくすることができる。
すなわち、実施形態では、吸引吐出機構270のガス吐出部273から、処理容器190内の雰囲気とは湿度が異なるガス(低湿度ガスまたは高湿度ガス)をガス吐出部273から吐出するとよい。
これにより、接合処理直前の上ウェハW1および下ウェハW2における接合面W1j、W2jの水素結合に関する状態をさまざまに制御することができることから、重合ウェハTの接合品質をさまざまに向上させることができる。
<変形例>
つづいて、図12~図14を参照しながら、実施形態の変形例について説明する。図12は、実施形態の変形例に係る接合処理における各部の動作を示すタイミングチャートである。なお、図12には、上述のステップS110(上ウェハW1と下ウェハW2との水平方向の位置調整)が終了した時点からのタイミングチャートを示している。
最初に、制御部5は、時間T21から、ガス吸引部272を制御することにより、互いに向かい合う上ウェハW1と下ウェハW2との間の雰囲気を吸引するとともに、ガス吐出部273を動作させて、上ウェハW1と下ウェハW2との間に低湿度ガスを吐出する。
すなわち、この変形例では、制御部5が、時間T21から、上ウェハW1と下ウェハW2との間から雰囲気を吸引する処理と、上ウェハW1と下ウェハW2との間に低湿度ガスを吐出する処理とを並行して実施する。
これにより、制御部5は、間隔が比較的狭い上ウェハW1と下ウェハW2との間の隙間に対して、さらに効率よく低湿度ガスを投入することができる。したがって、変形例によれば、接合処理全体の時間をさらに短くすることができることから、重合ウェハTをさらに効率よく製造することができる。
また、制御部5は、時間T21から、下チャック231をホーム位置からボンド位置に上昇させる動作と、下チャック231をボンド位置からホーム位置に下降させる動作とを繰り返す。すなわち、制御部5は、時間T21から、上ウェハW1と下ウェハW2との間の間隔を伸縮させる。
このように、上ウェハW1と下ウェハW2との間の間隔を伸縮させることにより、制御部5は、上ウェハW1と下ウェハW2との間の雰囲気をさらに効率よく低湿度ガスに置換することができる。
次に、制御部5は、上ウェハW1と下ウェハW2との間の湿度が所与の湿度に到達した時間T22で、ガス吸引部272およびガス吐出部273を停止させるとともに、下チャック231をボンド位置に上昇させる。
なお、制御部5は、吸引吐出機構270の動作時間が所与の時間に達した場合に、上ウェハW1と下ウェハW2との間が所望の低湿度に達したとみなして、次の処理(ストライカー250による上ウェハW1の押圧処理)を実施してもよい。
そして、制御部5は、下チャック231がボンド位置に到達したタイミングで、ストライカー250の押圧ピン253を下降させる。これにより、ストライカー250は、上ウェハW1の中心部W1cを押し下げて、上ウェハW1の中心部W1cと下ウェハW2の中心部W2cとを所与の力で押圧する。
これにより、押圧された上ウェハW1の中心部W1cと下ウェハW2の中心部W2cとの間で接合が開始される。以下の処理については実施形態と同様の処理であることから、詳細な説明は省略する。
なお、この変形例では、雰囲気を吸引する処理と、低湿度ガスを吐出する処理とを並行して実施することから、ガス吸引部272の吸引口272aとガス吐出部273の吐出口273dとが互いに離間して配置されるとよい。
これにより、吐出口273dから吐出される低湿度ガスが近接する吸引口272aからすぐに吸引されて、低湿度ガスへの置換が進まなくなる現象を抑制することができる。
たとえば、図13に示すように、平面視において、複数の吸引口272aを周方向にひとかたまりに並べて配置するとともに、複数の吐出口273dを周方向にひとかたまりに並べて配置してもよい。また、図14に示すように、平面視において、吸引口272aと吐出口273dとを周方向に交互に並べて配置してもよい。
図13は、実施形態の変形例に係るガス吸引部272およびガス吐出部273の配置の一例を示す上面図であり、図14は、実施形態の変形例に係るガス吸引部272およびガス吐出部273の配置の別の一例を示す上面図である。
これらのような配置により、上ウェハW1と下ウェハW2との間の空間全体に低湿度ガスの流れを形成することができることから、制御部5は、上ウェハW1と下ウェハW2との間の雰囲気をさらに効率よく低湿度ガスに置換することができる。
なお、変形例において、吸引口272aおよび吐出口273dの配置は、図13の例および図14の例に限られない。
実施形態に係る接合装置41は、第1保持部(上チャック230)と、第2保持部(下チャック231)と、ストライカー250と、処理容器190と、ガス吐出部273と、制御部5と、を備える。第1保持部(上チャック230)は、第1基板(上ウェハW1)を上方から吸着保持する。第2保持部(下チャック231)は、第2基板(下ウェハW2)を下方から吸着保持する。ストライカー250は、第1基板(上ウェハW1)の中心部W1cを上方から押圧して第2基板(下ウェハW2)に接触させる。処理容器190は、第1保持部(上チャック230)、第2保持部(下チャック231)およびストライカー250を収容する。ガス吐出部273は、処理容器190内の雰囲気とは湿度が異なるガスを吐出する。制御部5は、各部を制御する。また、制御部5は、第2基板(下ウェハW2)と向かい合った第1基板(上ウェハW1)がストライカー250で押圧される直前に、第1基板(上ウェハW1)と第2基板(下ウェハW2)との間にガス吐出部273からガスを吐出する。これにより、重合ウェハTの接合品質を向上させることができる。
また、実施形態に係る接合装置41において、ガス吐出部273は、処理容器190内の雰囲気よりも湿度が低い低湿度ガスを第1基板(上ウェハW1)と第2基板(下ウェハW2)との間に吐出する。これにより、重合ウェハTに発生するエッジボイドを低減することができる。
また、実施形態に係る接合装置41において、制御部5は、第2基板(下ウェハW2)と向かい合った第1基板(上ウェハW1)がストライカー250で押圧される直前に、第1基板(上ウェハW1)と第2基板(下ウェハW2)との間の間隔を伸縮させる。これにより、重合ウェハTをさらに効率よく製造することができる。
また、実施形態に係る接合装置41は、互いに向かい合う第1基板(上ウェハW1)と第2基板(下ウェハW2)との間の雰囲気の湿度を検出するセンサ部276をさらに備える。また、制御部5は、センサ部276の検出結果に基づいて、第1基板(上ウェハW1)と第2基板(下ウェハW2)との間の間隔を伸縮させる処理を終了する。これにより、上ウェハW1と下ウェハW2との間の湿度が所与の湿度に到達した後に押圧処理を実施することができることから、重合ウェハTの接合品質をさらに向上させることができる。
また、実施形態に係る接合装置41において、制御部5は、第2保持部(下チャック231)の位置がボンド位置にある場合に、第1基板(上ウェハW1)と第2基板(下ウェハW2)との間にガス吐出部273からガスを吐出する。ボンド位置は、第2基板(下ウェハW2)と向かい合った第1基板(上ウェハW1)がストライカー250で押圧される際の第2保持部(下チャック231)の位置である。これにより、重合ウェハTに発生するエッジボイドを低減することができる。
また、実施形態に係る接合装置41は、互いに向かい合った第1基板(上ウェハW1)と第2基板(下ウェハW2)との間の雰囲気を吸引するガス吸引部272をさらに備える。これにより、重合ウェハTを効率よく製造することができる。
また、実施形態に係る接合装置41において、制御部5は、ガス吸引部272で第1基板(上ウェハW1)と第2基板(下ウェハW2)との間の雰囲気を吸引した後に、ガス吐出部273からガスを吐出する。これにより、重合ウェハTを効率よく製造することができる。
また、実施形態に係る接合装置41において、制御部5は、ガス吸引部272で第1基板(上ウェハW1)と第2基板(下ウェハW2)との間の雰囲気を吸引する動作と並行して、ガス吐出部273からガスを吐出する。これにより、重合ウェハTをさらに効率よく製造することができる。
また、実施形態に係る接合装置41は、互いに向かい合う第1基板(上ウェハW1)と第2基板(下ウェハW2)との間の雰囲気の湿度を検出するセンサ部276をさらに備える。また、制御部5は、センサ部276の検出結果に基づいて、第2基板(下ウェハW2)と向かい合った第1基板(上ウェハW1)をストライカー250で押圧する。これにより、上ウェハW1と下ウェハW2との間の湿度が所与の湿度に到達した後に押圧処理を実施することができることから、重合ウェハTの接合品質をさらに向上させることができる。
<接合処理の詳細>
つづいて、図15を参照しながら、実施形態に係る接合装置41が実行する接合処理の詳細について説明する。図15は、実施形態に係る接合装置41が実行する接合処理の処理手順を示すフローチャートである。
なお、図15には、図9に示したステップS110(上ウェハW1と下ウェハW2との水平方向の位置調整)が終了した時点からのフローチャートを示している。
最初に、制御部5は、接合装置41を制御して、下チャック231をホーム位置に移動させる(ステップS201)。次に、制御部5は、接合装置41を制御して、下チャック231をホーム位置からボンド位置に上昇させる動作と、下チャック231をボンド位置からホーム位置に下降させる動作とを繰り返す。すなわち、制御部5は、上ウェハW1と下ウェハW2との間の間隔を伸縮させる(ステップS202)。
また、制御部5は、かかるステップS202の処理と並行して、ガス吸引部272を制御して、互いに向かい合う上ウェハW1と下ウェハW2との間の雰囲気を吸引する(ステップS203)。
次に、制御部5は、ガス吸引部272を制御して、上ウェハW1と下ウェハW2との間の雰囲気の吸引を停止する(ステップS204)。そして、制御部5は、ガス吐出部273を制御して、互いに向かい合う上ウェハW1と下ウェハW2との間にガス(低湿度ガスまたは高湿度ガス)を吐出する(ステップS205)。
次に、制御部5は、上ウェハW1と下ウェハW2との間が所与の湿度に到達したか否かを判定する(ステップS206)。ここで、上ウェハW1と下ウェハW2との間が所与の湿度に到達していない場合(ステップS206,No)、かかるステップS206の処理を繰り返す。
一方で、上ウェハW1と下ウェハW2との間が所与の湿度に到達している場合(ステップS206,Yes)、制御部5は、ガス吐出部273を制御して、上ウェハW1と下ウェハW2との間へのガスの吐出を停止する(ステップS207)。
そして、制御部5は、接合装置41を制御して、下チャック231をボンド位置に移動させる(ステップS208)。最後に、制御部5は、ストライカー250で上ウェハW1の中心部を押圧して(ステップS209)、一連の処理を終了する。
実施形態に係る接合方法は、第1保持工程(ステップS105)と、第2保持工程(ステップS109)と、基板対向工程(ステップS110)と、ガス吐出工程(ステップS205)と、押圧工程(ステップS209)とを含む。第1保持工程(ステップS105)は、第1基板(上ウェハW1)を上方から吸着保持する第1保持部(上チャック230)を用い、第1基板(上ウェハW1)を上方から吸着保持する。第2保持工程(ステップS109)は、第2基板(下ウェハW2)を下方から吸着保持する第2保持部(下チャック231)を用い、第2基板(下ウェハW2)を下方から吸着保持する。基板対向工程(ステップS110)は、第1保持部(上チャック230)に保持された第1基板(上ウェハW1)と第2保持部(下チャック231)に保持された第2基板(下ウェハW2)とを互いに向かい合わせる。ガス吐出工程(ステップS205)は、第1保持部(上チャック230)および第2保持部(下チャック231)を収容する処理容器190内の雰囲気とは湿度が異なるガスを、第1基板(上ウェハW1)と第2基板(下ウェハW2)との間に吐出する。押圧工程(ステップS209)は、ガス吐出工程(ステップS205)の直後に、ストライカー250で第1基板(上ウェハW1)の中心部W1cを上方から押圧する。これにより、重合ウェハTの接合品質を向上させることができる。
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。