JP2022028414A - フッ素回収方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】フッ素イオンと硫酸イオンを吸着した吸着剤をアルカリ溶液と接触させた際に、硫酸イオンができるだけ含まれず、フッ素イオンがより多く含まれるようにしたフッ素イオン含有液を得ることができるフッ素回収方法を提供する。【解決手段】フッ素イオンと硫酸イオンを吸着した吸着剤が充填された吸着塔に、アルカリ溶液を導入またはアルカリ溶液と水を順次導入して、吸着塔からの排出液を得る脱着工程を有し、pHが所定値A(ただしAは4.5~7.0の範囲のいずれかの値)以上の排出液をフッ素イオン含有液として分取して、フッ素を回収する。【選択図】図1

Description

本発明は、フッ素イオンと硫酸イオンを吸着した吸着剤をアルカリ溶液と接触させてフッ素イオン含有液を回収するフッ素回収方法に関するものである。
従来、フッ素イオンと硫酸イオンを含有する被処理水を吸着剤と接触させて、被処理水中のフッ素イオンを吸着除去する方法が知られている(例えば、特許文献1、2)。フッ素イオンと硫酸イオンを含有する被処理水と接触させた吸着剤は、アルカリ溶液と接触させることにより、吸着剤からフッ素イオンを脱着させることができ、フッ素イオンを含有する脱離液が得られる。
特開2018-130677号公報 特開2019-198826号公報
上記のようにフッ素イオンと硫酸イオンを含有する被処理水を吸着剤と接触させると、通常フッ素イオンとともに硫酸イオンの一部も吸着剤に吸着される。そのため、その後この吸着剤を再生するためにアルカリ溶液と接触させると、吸着剤からはフッ素イオンとともに硫酸イオンも脱着し、得られる脱離液中にはフッ素イオンとともに硫酸イオンが多く含まれるものとなる。フッ素イオンは、環境省の定めた一律排水基準や下水道法の下水排除基準等に規制物質として定められているため、フッ素イオンを多く含む脱離液はそのまま処分することはできない。そのため、フッ素イオンを多く含む脱離液は、通常、フッ素イオンを分離・回収するための更なる処理が必要となる。しかし、脱離液中にフッ素イオンとともに硫酸イオンが多く含まれていると、脱離液の処理を効率的に行うことが難しくなり、脱離液の処理コストの増大につながるとともに、回収したフッ素をフッ素源として利用する際の妨げとなる。そのため、脱離液中には硫酸イオンができるだけ含まれないことが望まれる。
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、フッ素イオンと硫酸イオンを吸着した吸着剤をアルカリ溶液と接触させた際に、硫酸イオンができるだけ含まれず、フッ素イオンがより多く含まれるようにしたフッ素イオン含有液を得ることができるフッ素回収方法を提供することにある。
前記課題を解決することができた本発明のフッ素回収方法とは、フッ素イオンと硫酸イオンを吸着した吸着剤が充填された吸着塔に、アルカリ溶液を導入またはアルカリ溶液と水を順次導入して、吸着塔からの排出液を得る脱着工程を有し、pHが所定値A(ただしAは4.5~7.0の範囲のいずれかの値)以上の排出液をフッ素イオン含有液として分取して、フッ素を回収するところに特徴を有する。本発明のフッ素回収方法によれば、pHが所定値A(ただしAは4.5~7.0の範囲のいずれかの値)以上の排出液をフッ素イオン含有液として分取することにより、硫酸イオンの含有量が低減され、フッ素イオンがより多く含まれるフッ素イオン含有液を得ることができる。
脱着工程では、アルカリ溶液またはアルカリ溶液と水の吸着塔への通液倍率が2.5vol/vol以下の範囲で、排出液のpHが4.5未満であることが好ましい。このように脱着工程の初期に排出液のpHが4.5未満となることで、脱着工程の初期に硫酸イオンを優先的に吸着剤から脱着させることができる。その結果、その後、排出液のpHが4.5~7.0の範囲の所定値A以上となってから排出液をフッ素イオン含有液として分取することにより、フッ素イオンをより選択的に回収することができる。
脱着工程では、排出液のpHが一旦12.0以上となるまで、アルカリ溶液またはアルカリ溶液と水を吸着塔に導入することが好ましい。このようにアルカリ溶液またはアルカリ溶液と水を吸着塔に導入することで、吸着剤からより多くのフッ素イオンが脱着し、フッ素イオンの回収率を高めることができる。
排出液のpHが12.0となるときのアルカリ溶液またはアルカリ溶液と水の吸着塔への通液倍率は、4.0vol/vol以上20.0vol/vol以下であることが好ましい。これにより、フッ素イオン含有液に含まれる硫酸イオンの量を低減することができるとともに、フッ素イオン含有液に含まれるフッ素イオン濃度をより高めることができる。
脱着工程では、アルカリ溶液を吸着塔に通液倍率2.5vol/vol以上導入し、アルカリ溶液の吸着塔への通液倍率が2.5vol/vol以下の範囲で、排出液のpHが4.5未満であることが好ましい。このように脱着工程の初期にアルカリ溶液をある程度の量吸着塔に導入することで、速やかに吸着剤から硫酸イオンを脱着させることができる。そのため、脱着工程に要する時間の短縮化を図ることができる。また、脱着工程の初期に硫酸イオンを優先的に吸着剤から脱着させることができる。
脱着工程では、吸着塔にアルカリ溶液と水を順次導入する、または、吸着塔に濃度C1のアルカリ溶液と濃度C2(ただしC2<C1)のアルカリ溶液を順次導入することが好ましい。これにより、脱着工程におけるトータルのアルカリ使用量を減らすことができる。また、排出液のpHを任意に調整することが容易になり、例えば排出液のpHを、ある程度の通液倍率の範囲において、所定の範囲内に維持することが容易になる。
脱着工程では、吸着塔に導入する水の通液速度がアルカリ溶液の通液速度よりも大きいことが好ましい、または、吸着塔に導入する濃度C2のアルカリ溶液の通液速度が濃度C1のアルカリ溶液の通液速度よりも大きいことが好ましい。これにより、吸着剤からの硫酸イオンまたはフッ素イオンの脱着が促進されるとともに、脱着工程に要する時間の短縮化を図ることができる。
脱着工程に供する吸着剤のフッ素イオン吸着量は硫酸イオン吸着量の0.1倍以上10倍以下であることが好ましい。これにより、フッ素イオンと硫酸イオンを吸着した吸着剤からフッ素イオンを優先して回収するという本発明の効果をより奏効させることができる。また、脱着工程に供する吸着剤の単位乾燥質量当たりのフッ素イオン吸着量は5g-F/kg以上50g-F/kg以下であり、硫酸イオン吸着量は5g-SO4/kg以上50g-SO4/kg以下であることが好ましい。吸着塔に導入するアルカリ溶液の濃度は0.05N以上0.5N以下であることが好ましい。また、吸着剤として、セリウム系吸着剤を用いることが好ましい。
本発明のフッ素回収方法によれば、pHが所定値A(ただしAは4.5~7.0の範囲のいずれかの値)以上の排出液をフッ素イオン含有液として分取することにより、フッ素イオン含有液における硫酸イオンの含有量が低減され、フッ素イオンがより多く含まれるフッ素イオン含有液を得ることができる。
実施例の処理No.3における排出液のpHとフッ素イオン脱着率と硫酸イオン脱着率の推移の結果を表す。 実施例の処理No.6における排出液のpHとフッ素イオン脱着率と硫酸イオン脱着率の推移の結果を表す。
本発明のフッ素回収方法は、フッ素イオンと硫酸イオンを吸着した吸着剤が充填された吸着塔に、アルカリ溶液を導入またはアルカリ溶液と水を順次導入して、吸着塔からの排出液を得る脱着工程を有するものである。脱着工程では、フッ素イオンと硫酸イオンを吸着した吸着剤がアルカリ溶液と接触することにより、吸着剤からフッ素イオンと硫酸イオンが脱着する。そのため、フッ素イオンと硫酸イオンを吸着した吸着剤が充填された吸着塔にアルカリ溶液を導入すると、吸着塔からはフッ素イオンと硫酸イオンが含まれる排出液が得られる。本発明のフッ素回収方法は、このようにして得られる吸着塔からの排出液について、硫酸イオンができるだけ含まれず、フッ素イオンがより多く含まれるようにしたフッ素イオン含有液として、フッ素を回収するようにしたものである。
脱着工程では、硫酸イオンができるだけ含まれず、フッ素イオンがより多く含まれるフッ素イオン含有液を得るために、吸着塔から排出される排出液のうち、pHが所定値A(ただしAは4.5~7.0の範囲のいずれかの値)以上の排出液をフッ素イオン含有液として分取し、フッ素を回収する。フッ素イオンと硫酸イオンを吸着した吸着剤は、フッ素イオンと硫酸イオンが吸着剤の吸着サイトに静電的に捕捉されているため、この吸着剤にアルカリ溶液を接触させると、吸着剤の吸着サイトでアルカリ溶液の水酸化物イオンとフッ素イオンまたは硫酸イオンとのイオン交換反応が起こり、吸着剤からフッ素イオンまたは硫酸イオンが脱着する。そのため、フッ素イオンと硫酸イオンを吸着した吸着剤が充填された吸着塔にアルカリ溶液を導入すると、吸着塔から排出される排出液は、初期は水酸化物イオンがより多くイオン交換され、pHが低下し、通常4.5を下回るものとなる。そして、吸着塔にアルカリ溶液をさらに導入する、あるいはアルカリ溶液に続いて水を導入すると、吸着塔からの排出液のpHは徐々に上がる傾向を示す。
脱着工程では、このように排出液のpHが変化する中で、pHが所定値A(ただしAは4.5~7.0の範囲のいずれかの値)以上の排出液をフッ素イオン含有液として分取する。すなわち、排出液のpHが4.5~7.0の範囲の所定値A以上となってから、pHが所定値A以上の排出液をフッ素イオン含有液として分取する。硫酸イオンは、排出液のpHが4.5未満でも吸着剤から脱着するが、フッ素イオンは、排出液のpHが4.5未満では吸着剤からの脱着率が低く、排出液のpHが4.5以上となってから多くが吸着剤から脱着する。一方、フッ素イオンの回収量をできるだけ確保する観点から、排出液をフッ素イオン含有液として分取するのは排出液のpHが7.0以下の時点から開始することが好ましい。このように、pHが所定値A(ただしAは4.5~7.0の範囲のいずれかの値)以上の排出液をフッ素イオン含有液として分取することにより、硫酸イオンの含有量が低減され、フッ素イオンがより多く含まれるフッ素イオン含有液を得ることができる。
所定値Aは、4.5以上7.0以下の範囲のいずれかの値であれば限定されないが、5.0以上がより好ましく、5.3以上がさらに好ましい。これによりフッ素イオン含有液として分取した排出液中の硫酸イオン含有量を低減することができる。一方、所定値Aは6.6以下が好ましく、6.3以下がさらに好ましく、これによりフッ素イオン含有液へのフッ素回収量を増やすことができる。
脱着工程では、吸着塔から出てくる排出液のpHを計測し、当該pHの値が所定値A以上となったら、排出液をフッ素イオン含有液として分取すればよい。なお、脱着工程を同じ条件で繰り返し行うような場合は、例えばいったん排出液のpHと通液倍率との関係を把握すれば、通液倍率に基づき排出液をフッ素イオン含有液として分取することも可能である。この場合も、pHが所定値A以上の排出液がフッ素イオン含有液として分取されるものとなる。
脱着工程では、吸着剤からの脱離溶媒として、吸着塔にアルカリ溶液のみを導入してもよく、アルカリ溶液と水を順次導入してもよい。アルカリ溶液を導入する場合は、単一の濃度のアルカリ溶液を導入してもよく、濃アルカリ溶液(濃度C1のアルカリ溶液)と希アルカリ溶液(濃度C1よりも低い濃度C2のアルカリ溶液)を順次導入してもよい。濃アルカリと希アルカリ溶液を使用する場合は、濃度が異なる同種のアルカリ溶液を使用することが好ましい。アルカリ溶液と水を順次導入する場合は、アルカリ溶液と水を順次導入することを繰り返し行ってもよい。濃アルカリ溶液と希アルカリ溶液を順次導入する場合は、濃アルカリ溶液と希アルカリ溶液を順次導入することを繰り返し行ってもよい。なお、吸着塔に水を導入する場合も、吸着塔内に残存したアルカリ溶液の影響によって、排出液のpHは通常徐々に上がる傾向を示す。
アルカリ溶液としては、アルカリ性を示す溶液であれば特に限定されないが、アルカリ金属水酸化物の溶液を用いることが好ましい。アルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等を用いることができ、これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、アルカリ金属水酸化物としては、コスト面から水酸化ナトリウムを用いることが好ましい。
脱着工程で用いるアルカリ溶液は、水酸化物イオン濃度が高いほど、水酸化物イオンとフッ素イオンまたは硫酸イオンとのイオン交換反応が速やかに起こり、フッ素イオンを高濃度に含む排出液が得られることから、ある程度高い水酸化物イオン濃度を有するアルカリ溶液を使用することが好ましい。アルカリ溶液の濃度(すなわち水酸化物イオン濃度)は、例えば0.05N以上が好ましく、0.1N以上がより好ましい。一方、アルカリ溶液の濃度が高すぎると、硫酸イオンとフッ素イオンの脱離ピークの重なりが大きくなり、フッ素イオンと硫酸イオンの分離能が低下するおそれがあることから、アルカリ溶液の濃度は0.5N以下が好ましく、0.4N以下がより好ましい。なお、アルカリ溶液として濃アルカリ溶液と希アルカリ溶液を用いる場合は、濃アルカリ溶液の濃度がこのような範囲にあることが好ましい。
脱着工程の初期は、排出液のpHが4.5未満であることが好ましい。例えば、アルカリ溶液またはアルカリ溶液と水の吸着塔への通液倍率が少なくとも2.5vol/vol以下の範囲で、排出液のpHが4.5未満であることが好ましい。このように脱着工程の初期に排出液のpHが4.5未満を維持することで、脱着工程の初期に硫酸イオンを優先的に吸着剤から脱着させることができる。その結果、その後、排出液のpHが4.5~7.0の範囲の所定値A以上となってから排出液をフッ素イオン含有液として分取することにより、フッ素イオンをより選択的に回収することができる。脱着工程では、より好ましくは前記通液倍率が3.0vol/vol以下の範囲で、排出液のpHが4.5未満となる。なお、通液倍率は、吸着塔に導入したアルカリ溶液と水の体積を、吸着塔に充填した吸着剤の見掛け体積で除することにより求めることができる。
脱着工程の初期は、上記のように、アルカリ溶液またはアルカリ溶液と水の吸着塔への通液倍率が2.5vol/vol以下の範囲で排出液のpHが4.5未満を維持するように、処理条件を適宜設定することが好ましい。そのために脱着工程では、例えば、吸着塔に導入するアルカリ溶液の濃度が過度に高くならないようにしたり、アルカリ溶液の吸着塔の通液速度が過度に大きくならないようにすることが好ましい。
脱着工程の初期は、アルカリ溶液を吸着塔に通液倍率2.5vol/vol以上導入し、アルカリ溶液の吸着塔への通液倍率が少なくとも2.5vol/vol以下の範囲で、排出液のpHが4.5未満となることが好ましい。このように脱着工程の初期にアルカリ溶液をある程度の量吸着塔に導入することで、速やかに吸着剤から硫酸イオンを脱着させることができる。そのため、脱着工程に要する時間の短縮化を図ることができる。より好ましくは、アルカリ溶液を吸着塔に通液倍率3.0vol/vol以上導入し、アルカリ溶液の吸着塔への通液倍率が3.0vol/vol以下の範囲で、排出液のpHが4.5未満となる。
脱着工程では、排出液のpHが一旦12.0以上となるまで、アルカリ溶液またはアルカリ溶液と水を吸着塔に導入することが好ましい。このようにアルカリ溶液またはアルカリ溶液と水を吸着塔に導入することで、吸着剤からより多くのフッ素イオンが脱着し、フッ素イオンの回収率を高めることができる。排出液のpHが一旦12.0以上となるのは、アルカリ溶液を吸着塔に導入しているときでもよく、水を導入しているときでもよい。なお、排出液のpHが一旦12.0以上となった後も、吸着塔へのアルカリ溶液または水の導入を継続することが好ましく、この場合、それ以降の排出液のpHは12.0以上を維持してもよく、12.0を下回ってもよい。排出液のpHは一旦12.5以上となることがより好ましい。
排出液のpHが一旦12.0以上となるようにするためには、吸着塔に導入するアルカリ量(すなわち水酸化物イオンの量)が所定値以上となるように、吸着塔に導入するアルカリ溶液の濃度と量を適宜設定することが好ましい。吸着塔に導入するアルカリ量は、吸着剤のフッ素イオン吸着量と硫酸イオン吸着量に基づき設定することができる。例えば、脱着工程では、アルカリ溶液として、吸着剤のフッ素イオン吸着量と硫酸イオン吸着量の合計の1.0倍モル以上の量の水酸化物イオンを導入することが好ましく、1.2倍モル以上がより好ましい。なお、アルカリ量は、アルカリ溶液の水酸化物イオン濃度とアルカリ溶液の量の積から求めることができる。
排出液のpHが一旦12.0となるとき、すなわち脱着工程において排出液のpHが初めて12.0未満から12.0となるとき、アルカリ溶液またはアルカリ溶液と水の吸着塔への通液倍率は、4.0vol/vol以上20.0vol/vol以下であることが好ましい。これにより、フッ素イオン含有液に含まれる硫酸イオンの量を低減することができるとともに、フッ素イオン含有液に含まれるフッ素イオン濃度をより高めることができる。具体的には、排出液のpHが12.0となるときの通液倍率が4.0vol/vol以上であれば、吸着剤からの硫酸イオンとフッ素イオンの脱離ピークの重なりを減らすことができ、フッ素イオンをより選択的に回収することができる。排出液のpHが12.0となるときの通液倍率が20.0vol/vol以下であれば、フッ素イオン含有液の溶媒量、すなわちフッ素イオン含有液に含まれるアルカリ溶液と水の量を少なくして、フッ素イオン含有液のフッ素イオン濃度を高めて、より効率的なフッ素回収が可能となる。排出液のpHが12.0となるときの通液倍率は、5.0vol/vol以上が好ましく、5.5vol/vol以上がより好ましく、6.0vol/vol以上がさらに好ましく、また18.0vol/vol以下が好ましく、16.0vol/vol以下がより好ましく、15.0vol/vol以下がさらに好ましい。
脱着工程では、上記のように、排出液のpHが12.0となるときのアルカリ溶液またはアルカリ溶液と水の吸着塔への通液倍率が4.0vol/vol以上20.0vol/vol以下となるように、処理条件を適宜設定することが好ましい。例えば、吸着塔に導入するアルカリ溶液の濃度やアルカリ溶液の吸着塔の通液速度を適切に設定することにより、排出液のpHが12.0となるときの通液倍率を調整することができる。また、吸着塔にアルカリ溶液と水を順次導入し、その際のアルカリ溶液の導入量と水の導入量を適宜設定することによっても、排出液のpHが12.0となるときの通液倍率を調整することができる。この場合、排出液のpHが12.0となるときの通液倍率が比較的高くなるように調整することが容易になる。
脱着工程において、排出液をフッ素イオン含有液として分取するのを止めるタイミングは、吸着塔からの排出液のフッ素イオン濃度に基づき適宜設定すればよい。吸着塔からの排出液のフッ素イオン濃度が十分に低くなったところで、排出液をフッ素イオン含有液として分取するのを止めればよく、同じタイミングで脱着工程を終了することができる。あるいは、吸着塔からの排出液のフッ素イオン濃度と相関のある指標として排出液の電気伝導度(EC)を計測し、排出液の電気伝導度が十分に低くなったところで、排出液をフッ素イオン含有液として分取するのを止めるタイミングを決めることもできる。通常、排出液のpHが一旦12.0以上となってからしばらくの間、吸着塔へのアルカリ溶液または水の導入を継続し、排出液をフッ素イオン含有液として分取する。
脱着工程では、吸着塔にアルカリ溶液と水を順次導入する、または、吸着塔に濃アルカリ溶液(濃度C1のアルカリ溶液)と希アルカリ溶液(濃度C1よりも低い濃度C2のアルカリ溶液)を順次導入することが好ましい。なお、アルカリ溶液の濃度C1と濃度C2は水酸化物イオンの濃度を意味し、濃度C2は濃度C1の1/10以下であることが好ましい。このように脱離溶媒を使用することにより、脱着工程におけるトータルのアルカリ使用量を減らすことができる。また、排出液のpHを任意に調整することが容易になり、例えば排出液のpHを、ある程度の通液倍率の範囲において、所定の範囲内に維持することが容易になる。その結果、吸着剤からの硫酸イオンとフッ素イオンの脱離ピークの重なりを減らすことができ、フッ素イオンをより選択的に回収することが可能となる。この場合、吸着塔への導入量(あるいは通液倍率)は、アルカリ溶液よりも水の方が多い方が好ましく、濃アルカリ溶液よりも希アルカリ溶液の方が多い方が好ましい。
脱着工程では、吸着塔にアルカリ溶液と水を順次導入することを繰り返し行ったり、吸着塔に濃アルカリ溶液と希アルカリ溶液を順次導入することを繰り返し行うことも好ましい。これにより、吸着剤からの硫酸イオンとフッ素イオンの脱離ピークの重なりをさらに減らすことができ、フッ素イオンをより選択的に回収することが可能となる。この場合、2回目またはそれ以降にアルカリ溶液と水または濃アルカリ溶液と希アルカリ溶液を順次導入する際に得られる排出液を、フッ素イオン含有液として分取することが好ましい。
脱離溶媒は、吸着塔を上向流式で通液させてもよく、下向流式で通液させてもよい。このときの通液速度は、例えば空間速度(SV)として1hr-1~50hr-1の範囲で適宜調整すればよい。なお、吸着塔内において、安定して水酸化物イオンと硫酸イオンまたはフッ素イオンとのイオン交換反応が行われるようにする観点から、脱離溶媒の空間速度(SV)は40hr-1以下が好ましく、30hr-1以下がより好ましい。
脱着工程において吸着塔にアルカリ溶液と水を順次導入する場合、吸着塔に導入する水の通液速度はアルカリ溶液の通液速度よりも大きくすることが好ましい。アルカリ溶液は、比較的小さい通液速度で吸着塔に導入することで、吸着剤の吸着サイトにおける水酸化物イオンと硫酸イオンまたはフッ素イオンとのイオン交換反応が促進される。一方、水の通液速度は、得られる排出液の性状に大きな影響を及ぼさない。そのため、水の通液速度を大きくすることで、脱着工程に要する時間の短縮化を図ることができる。同様に、脱着工程において吸着塔に濃アルカリ溶液と希アルカリ溶液を順次導入する場合は、吸着塔に導入する希アルカリ溶液の通液速度は濃アルカリ溶液の通液速度よりも大きくすることが好ましい。
上記の場合、アルカリ溶液または濃アルカリ溶液の通液速度は1hr-1以上が好ましく、2hr-1以上がより好ましく、3hr-1以上がさらに好ましく、また25hr-1以下が好ましく、20hr-1以下がより好ましく、15hr-1以下がさらに好ましい。水または希アルカリ溶液の通液速度は、アルカリ溶液または濃アルカリ溶液の通液速度の1.2倍以上が好ましく、1.5倍以上がより好ましく、また5.0倍以下が好ましく、4.0倍以下がより好ましい。
吸着剤としては、フッ素イオンと硫酸イオンの両方を吸着できるものであれば、特に制限なく用いることができる。なお、本発明ではできるだけ多くのフッ素を回収できることが望ましいことから、吸着剤としてはフッ素吸着剤を用いることが好ましい。フッ素吸着剤であれば、通常、硫酸イオンも吸着することができる。そのような吸着剤としては、アルミナ系吸着剤、フェライト鉄系吸着剤、ジルコニウム系吸着剤、セリウム系吸着剤等が挙げられる。なかでも、フッ素イオンを高度に吸着できる吸着剤として、セリウム系吸着剤を用いることが好ましい。セリウム系吸着剤としては、酸化セリウム(CeO2)、特に含水酸化セリウム(CeO2・nH2O)を含む吸着剤が挙げられる。当該吸着剤は樹脂を含有し、酸化セリウムまたは含水酸化セリウムが樹脂によって固定化あるいは補強されていてもよい。
脱着工程に供する吸着剤のフッ素イオン吸着量は、吸着剤の単位乾燥質量当たりのフッ素イオン吸着量として、5g-F/kg-吸着剤以上が好ましく、8g-F/kg-吸着剤以上がより好ましく、10g-F/kg-吸着剤以上がさらに好ましい。脱着工程で脱離溶媒と接触させる吸着剤がこのような量のフッ素イオンを吸着していれば、脱着工程においてフッ素イオンを効率的に回収することができる。一方、脱着工程に供する吸着剤のフッ素イオン吸着量の上限は特に限定されないが、通常は50g-F/kg-吸着剤以下であり、40g-F/kg-吸着剤以下、または35g-F/kg-吸着剤以下であってもよい。なお、ここで説明した脱着工程に供する吸着剤のフッ素イオンの吸着量は、脱着工程に供する吸着剤に吸着されたフッ素イオンの量を意味する。また、吸着剤の乾燥質量は、フッ素イオンと硫酸イオンが脱着した吸着剤を110℃で乾燥処理した後の吸着剤の質量を意味する。
脱着工程に供する吸着剤の硫酸イオン吸着量は特に限定されない。なお、フッ素イオンと硫酸イオンを吸着した吸着剤からフッ素イオンを優先して回収するという本発明の効果がより奏効される点から、脱着工程に供する吸着剤の硫酸イオン吸着量は、吸着剤の単位乾燥質量当たりの硫酸イオン吸着量として、5g-SO4/kg-吸着剤以上50g-SO4/kg-吸着剤以下であることが好ましい。脱着工程に供する吸着剤の硫酸イオン吸着量は、8g-SO4/kg-吸着剤以上であってもよく、10g-SO4/kg-吸着剤以上であってもよく、また40g-SO4/kg-吸着剤以下、または35g-SO4/kg-吸着剤以下であってもよい。なお、ここで説明した脱着工程に供する吸着剤の硫酸イオンの吸着量は、脱着工程に供する吸着剤に吸着された硫酸イオンの量を意味する。
脱着工程に供する吸着剤のフッ素イオン吸着量は硫酸イオン吸着量の0.1倍以上10倍以下であることが好ましい。これにより、フッ素イオンと硫酸イオンを吸着した吸着剤からフッ素イオンを優先して回収するという本発明の効果をより奏効させることができる。脱着工程に供する吸着剤のフッ素イオン吸着量は硫酸イオン吸着量の0.3倍以上が好ましく、0.5倍以上がより好ましく、また5倍以下が好ましく、3倍以下がより好ましい。
脱着工程で得られたフッ素イオン含有液、すなわちpHが所定値A以上となってから分取した排出液は、フッ素イオンを高濃度に含む液として回収してもよく、フッ素イオンを固形物に変換して回収してもよい。後者の場合、例えばフッ素イオンをカルシウム化合物と反応させることにより、フッ素をフッ化カルシウムとして簡便に回収することができる。フッ化カルシウムはフッ素を高濃度に含む固形物であるため、フッ素イオンをフッ化カルシウムに変換することにより、フッ素を効率的に回収することができる。従って、本発明のフッ素回収方法は、脱着工程の後に、フッ素イオン含有液にカルシウム化合物を加えてフッ化カルシウムを生成させ、濃縮または固液分離することにより、フッ素イオンをフッ化カルシウムとして回収する回収工程を設けてもよい。上記に説明したように、脱着工程で得られたフッ素イオン含有液は、吸着剤から脱着した硫酸イオンができるだけ含まれず、フッ素イオンがより多く回収されるものとなるため、カルシウム化合物を加えた際に、硫酸カルシウム(石膏)の生成量が抑えられ、フッ化カルシウムがより多く含まれるものとなる。また、硫酸カルシウムの生成が抑えられるため、カルシウム化合物の添加量の削減を図ることができる。
回収工程でフッ素イオン含有液に加えるカルシウム化合物としては、塩化カルシウムや炭酸カルシウム等のカルシウム塩を用いることが好ましい。なお、フッ素イオン含有液に加えたときにフッ化カルシウム以外の固形物の生成をできるだけ抑える観点から、塩化カルシウムを用いることがより好ましい。カルシウム化合物は、固体(例えば粉体)としてフッ素イオン含有液に添加したり、溶液または分散液としてフッ素イオン含有液に添加すればよい。
フッ素イオン含有液にカルシウム化合物を加えることにより、フッ素イオン含有液中のフッ素イオンがフッ化カルシウムとして析出し、フッ化カルシウムを含有する懸濁液が得られる。この際、フッ化カルシウムの溶解を抑える点から、カルシウム化合物を加えたフッ素イオン含有液のpHは3以上とすることが好ましく、4以上がより好ましい。
回収工程では、フッ化カルシウムを含有する懸濁液を濃縮または固液分離する。フッ化カルシウムを含有する懸濁液を濃縮した場合は、フッ化カルシウムを含有する濃縮スラリーが得られるとともに、フッ素イオン濃度が低減されたフッ素希薄液が得られる。フッ化カルシウムを含有する懸濁液を固液分離した場合は、フッ化カルシウムを含有するケーキが得られるとともに、分離液としてフッ素希薄液が得られる。フッ化カルシウムを含有する懸濁液の濃縮または固液分離は、沈降分離、遠心分離、ろ過分離等の公知の手段により行えばよい。このようにして得られたフッ化カルシウムの濃縮スラリーやケーキは、系外に排出して、フッ素原料として再利用してもよく、廃棄物として処分してもよい。
一方、脱着工程でフッ素イオン含有液として分取されなかった排出液、すなわちpHが所定値A未満のときに分取した排出液は、硫酸イオンを多く含み、フッ素イオンの含有量が少ないものであるため、そのまま公共用水域に排出したり、下水排除することができる。例えば環境省の定めた一律排水基準や下水道法に定められた下水排除基準によれば、フッ素イオンは基準が定められているが、硫酸イオンは基準が定められていない。そのため、pHが所定値A未満のときに分取した排出液のフッ素イオン濃度が十分に低い場合は、それ以外の項目が基準内に収まっていることを確認した上で、これをそのまま公共用水域に排出したり、下水排除することができる。もちろん、pHが所定値A未満の排出液にカルシウム化合物を加えて、硫酸カルシウムとして硫酸イオンを回収することも可能である。
脱着工程に供する吸着剤、すなわちフッ素イオンと硫酸イオンを吸着した吸着剤は、フッ素イオンと硫酸イオンを含有する被処理水を吸着剤と接触させることにより容易に得ることができる。従って、本発明のフッ素回収方法は、脱着工程の前に、吸着剤が充填された吸着塔に、フッ素イオンと硫酸イオンを含有する被処理水を導入して、被処理水中のフッ素イオンと硫酸イオンの少なくとも一部が除去された処理水を得る吸着工程を有することが好ましい。吸着工程と脱着工程を行うことにより、フッ素イオンと硫酸イオンを含有する被処理水から、フッ素イオンを優先的に回収することができる。
被処理水は、フッ素イオンと硫酸イオンを含有するものであれば特に限定されず、これら各イオンの濃度も特に限定されない。例えばフッ素イオンと硫酸イオンを比較的高濃度に含む被処理水としては、石炭火力発電所やコークス工場や製鉄工場等の排煙脱硫排水が挙げられる。石炭火力発電所やコークス工場や製鉄工場等では、石炭やコークスを燃焼させることにより硫黄分やフッ素分を含む排ガスが排出されるが、当該排ガスを排煙脱硫装置により脱硫処理を行うと、硫酸イオンとフッ素イオンを高濃度に含む排煙脱硫排水が発生する。従って、吸着工程では、フッ素イオンと硫酸イオンを含有する被処理水として、排煙脱硫設備から排出される排煙脱硫排水を吸着塔に導入してもよい。
被処理水のフッ素イオン濃度は、10mg/L以上であってもよく、20mg/L以上、または30mg/L以上であってもよい。被処理水として排煙脱硫排水を用いるような場合は、被処理水のフッ素イオン濃度は50mg/L以上、70mg/L以上、または90mg/L以上となる場合もある。一方、被処理水のフッ素イオン濃度の上限は、安定してフッ素イオン濃度の低減された処理水を得る点から、200mg/L以下が好ましく、150mg/L以下がより好ましく、135mg/L以下がさらに好ましく、120mg/L以下がさらにより好ましい。フッ素イオン濃度は、イオンクロマトグラフィー等により求めることができる。
被処理水の硫酸イオン濃度は、30,000mg/L以上であってもよく、35,000mg/L以上、40,000mg/L以上、または50,000mg/L以上であってもよい。被処理水の硫酸イオン濃度の上限は特に限定されないが、例えば150,000mg/L以下であってもよく、100,000mg/L以下、または80,000mg/L以下であってもよい。硫酸イオン濃度は、イオンクロマトグラフィー等により求めることができる。
被処理水は、マグネシウムイオンやナトリウムイオン等を含有していてもよい。被処理水が石炭火力発電所やコークス工場や製鉄工場等の排煙脱硫排水を含む場合は、硫酸イオンとともにマグネシウムイオンやナトリウムイオンも被処理水中に含まれうる。
吸着工程ではフッ素イオンができるだけ多く吸着除去されることが好ましく、これによりフッ素イオン濃度が低減された処理水が得られる。そのため、それ以外の項目が基準内に収まっていることを確認した上で、当該処理水を公共用水域に排出したり、下水排除することが可能となる。また、吸着工程でフッ素イオンをできるだけ多く吸着除去することにより、後段の脱着工程においてより多くのフッ素を回収することが可能となる。従って、被処理水のpHは、吸着剤によるフッ素イオンの吸着除去が好適に行われるようにする点から、2.0以上が好ましく、2.1以上がより好ましく、2.2以上がさらに好ましく、また3.5以下が好ましく、3.3以下がより好ましく、3.1以下がさらに好ましい。被処理水のpHが高い場合は、酸を添加することにより被処理水のpHを調整すればよく、当該酸としては塩酸や硫酸を用いることが好ましい。逆に被処理水のpHが低い場合は、アルカリを添加することにより被処理水のpHを調整すればよく、当該アルカリとしてはアルカリ金属水酸化物を用いることが好ましく、水酸化ナトリウムを用いることがより好ましい。
吸着工程では、被処理水は、吸着塔を上向流式で通液させてもよく、下向流式で通液させてもよい。このときの通液速度は、例えば空間速度(SV)として1hr-1~50hr-1の範囲で適宜調整すればよい。なお、吸着塔設備が過大にならないようにする観点から、空間速度(SV)は3hr-1以上が好ましく、5hr-1以上がより好ましく、8hr-1以上がさらに好ましく、12hr-1以上がさらにより好ましい。また、安定してフッ素イオン濃度が低減された処理水が得やすくなる観点から、空間速度(SV)は40hr-1以下が好ましく、30hr-1以下がより好ましく、25hr-1以下がさらに好ましい。
吸着塔による吸着処理は1段で行ってもよく、多段(2段以上)で行ってもよい。特に、被処理水のフッ素イオン濃度が高い場合は、多段接続した吸着塔により被処理水を処理したり、吸着塔1段による処理と多段接続した吸着塔による処理を組み合わせて被処理水を処理することが好ましい。これにより処理水のフッ素イオン濃度を安定して低減させることが可能となる。多段接続する吸着塔の数は2以上であればよいが、直列接続する吸着塔の数(すなわち被処理水が通過する吸着塔の数)が多すぎても吸着塔の管理が煩雑になることから、5以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下がさらに好ましい。
本発明のフッ素回収方法は、脱着工程の後に、吸着塔に酸溶液を導入する酸処理工程を行うことが好ましい。脱着工程でフッ素イオンと硫酸イオンを脱着させた吸着剤は、次に酸処理工程で酸溶液と接触させることにより、再びフッ素イオンや硫酸イオンを吸着する吸着剤として使用することができる。
酸処理工程では、酸として、塩酸や硫酸を用いることが好ましい。酸溶液の水素イオン濃度は、例えば0.01mol/L以上が好ましく、0.03mol/L以上がより好ましく、また2.0mol/L以下が好ましく、1.0mol/L以下がより好ましい。なお、酸処理工程の前に、脱着工程でフッ素イオンと硫酸イオンを脱着させた吸着剤を水洗してもよい。また、酸処理工程の後に吸着剤を水洗してもよい。
上記のように脱着工程に続いて酸処理工程を行うことにより吸着剤が再生され、再び吸着工程を行うことができる。これにより吸着剤を繰り返し利用することができ、フッ素イオンと硫酸イオンを含有する被処理水から効率的にフッ素イオンを回収することができる。
以下に、実施例を示すことにより本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
(1)実験方法
直径45mmのカラムに見掛け体積で150mLとなるようにセリウム系吸着剤を充填し、吸着剤にフッ素イオンと硫酸イオンを吸着させた状態で、脱着工程前の吸着塔とした。そこに、表1に示す条件で脱離溶媒として水酸化ナトリウム溶液と水を下向流で順次導入し、吸着塔から排出される排出液のpHとフッ素イオン濃度と硫酸イオン濃度を測定した。処理No.1~5では、吸着塔に水酸化ナトリウム溶液と水を順次1回ずつ導入し、使用する吸着剤のフッ素イオン吸着量と硫酸イオン吸着量の条件およびアルカリ通液条件を変えて検討した。処理No.6では、吸着塔に水酸化ナトリウム溶液と水を順次導入することを2回繰り返して処理を行った。フッ素イオンと硫酸イオンの濃度はイオンクロマトグラフィーにより測定した。各処理において、排出液をフッ素イオン含有液として採取するタイミングを変えて、フッ素イオン回収率と硫酸イオン回収率を調べた。なお、フッ素イオン濃度の通液倍率に対する推移変化はガウス近似により曲線回帰させ、硫酸イオン濃度の通液倍率に対する推移変化はローレンツ近似により曲線回帰させ、このときの決定係数(相関係数)は0.97以上であった。
表1に、各処理の処理条件とpHの測定結果を示し、表2に、各処理においてフッ素イオン含有液の採取開始のタイミングを変えたときのフッ素イオン回収率と硫酸イオン回収率の結果を示す。表1において、処理No.6のアルカリ通液条件と水通液条件は、1回目の通液条件と2回目の通液条件がそれぞれ示されている。また、図1に、処理No.3における排出液のpHとフッ素イオン脱着率と硫酸イオン脱着率の結果を示し、図2に、処理No.6における排出液のpHとフッ素イオン脱着率と硫酸イオン脱着率の結果を示す。
Figure 2022028414000002
Figure 2022028414000003
(2)実験結果
表2に示した結果から分かるように、いずれの処理においても、排出液を最初から全部採取するとフッ素イオン回収率と硫酸イオン回収率が100%となったが、排出液のpHが4.5~7.0範囲の所定値Aとなってから、それ以降の排出液、すなわち所定値A以上のpHの排出液をフッ素イオン含有液として分取することにより、フッ素イオン回収率をできるだけ確保しつつ、硫酸イオン回収率を抑えることができた。具体的には、フッ素イオン回収率を95%以上としつつ、硫酸イオン回収率を50%以下としたり、フッ素イオン回収率を90%以上としつつ、硫酸イオン回収率を40%以下あるいは30%以下とすることができた。その結果、フッ素イオンと硫酸イオンを吸着した吸着剤から、フッ素イオンを優先的に回収することができた。特に、吸着塔に水酸化ナトリウム溶液と水を順次導入することを2回繰り返して処理を行った処理No.6では、フッ素イオン回収率を99%、硫酸イオン回収率を3%とすることができ、フッ素イオンを高い選択性で回収することができた。
本発明は、フッ素イオンと硫酸イオンを含有する水の吸着剤による処理に用いることができ、例えば、石炭火力発電所、コークス工場、製鉄工場等の排煙脱硫排水の処理に用いることができる。

Claims (11)

  1. フッ素イオンと硫酸イオンを吸着した吸着剤が充填された吸着塔に、アルカリ溶液を導入またはアルカリ溶液と水を順次導入して、前記吸着塔からの排出液を得る脱着工程を有し、
    pHが所定値A(ただしAは4.5~7.0の範囲のいずれかの値)以上の排出液をフッ素イオン含有液として分取して、フッ素を回収することを特徴とするフッ素回収方法。
  2. アルカリ溶液またはアルカリ溶液と水の吸着塔への通液倍率が2.5vol/vol以下の範囲で、排出液のpHが4.5未満である請求項1に記載のフッ素回収方法。
  3. 排出液のpHが一旦12.0以上となるまで、アルカリ溶液またはアルカリ溶液と水を吸着塔に導入する請求項1または2に記載のフッ素回収方法。
  4. 排出液のpHが12.0となるときのアルカリ溶液またはアルカリ溶液と水の吸着塔への通液倍率が4.0vol/vol以上20.0vol/vol以下である請求項3に記載のフッ素回収方法。
  5. アルカリ溶液を吸着塔に通液倍率2.5vol/vol以上導入し、
    アルカリ溶液の吸着塔への通液倍率が2.5vol/vol以下の範囲で、排出液のpHが4.5未満である請求項1~4のいずれか一項に記載のフッ素回収方法。
  6. 吸着塔にアルカリ溶液と水を順次導入する、または、
    吸着塔に濃度C1のアルカリ溶液と濃度C2(ただしC2<C1)のアルカリ溶液を順次導入する請求項1~5のいずれか一項に記載のフッ素回収方法。
  7. 吸着塔に導入する前記水の通液速度が前記アルカリ溶液の通液速度よりも大きい、または、
    吸着塔に導入する濃度C2の前記アルカリ溶液の通液速度が濃度C1の前記アルカリ溶液の通液速度よりも大きい請求項6に記載のフッ素回収方法。
  8. 脱着工程に供する吸着剤のフッ素イオン吸着量は硫酸イオン吸着量の0.1倍以上10倍以下である請求項1~7のいずれか一項に記載のフッ素回収方法。
  9. 脱着工程に供する吸着剤の単位乾燥質量当たりのフッ素イオン吸着量は5g-F/kg以上50g-F/kg以下であり、硫酸イオン吸着量は5g-SO4/kg以上50g-SO4/kg以下である請求項1~8のいずれか一項に記載のフッ素回収方法。
  10. 吸着塔に導入するアルカリ溶液の濃度は0.05N以上0.5N以下である請求項1~9のいずれか一項に記載のフッ素回収方法。
  11. 前記吸着剤がセリウム系吸着剤である請求項1~10に記載のフッ素回収方法。
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